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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】音反射構造体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20240617BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20240617BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/168
G10K11/172
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020571922
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 IB2020000116
(87)【国際公開番号】W WO2020165651
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/000171
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀部 哲史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 進
【合議体】
【審判長】畑中 高行
【審判官】千葉 輝久
【審判官】高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022245(WO,A1)
【文献】特開2013-174849(JP,A)
【文献】特開2004-042649(JP,A)
【文献】特開平10-054096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B60R13/01-13/04
B60R13/08
E04B1/62-1/99
G10K11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された音反射材と、
を有し、
前記音反射材が、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部と、を備え、
前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、かつ、
前記シートが前記基板と離隔するように、前記音反射材が前記基板上に配置されており、
前記支持部が前記シートとは反対の側に開口断面を有し、前記支持部の開口断面が前記基板に接するように、前記音反射材が前記基板上に配置されており、かつ、前記開口断面が前記基板と接着されていない状態で前記基板上に配置されており、
ホワイトノイズに対する挿入損失曲線が1500~2500[Hz]の周波数域に極大値を有する、音反射構造体。
【数1】
【請求項2】
前記面剛性(k)および前記面密度(m)が、(1/2π)*(k/m)1/2≧1400の関係を満足する、請求項1に記載の音反射構造体。
【請求項3】
前記極大値が50[dB]以上である、請求項1または2に記載の音反射構造体。
【請求項4】
前記支持部は前記シートを複数の区画部に区画しており、前記複数の区画部の少なくとも一部は、同一の外郭形状を有する前記複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成している、請求項1~のいずれか1項に記載の音反射構造体。
【請求項5】
前記支持部が、少なくとも1つの前記シートの一方の面に配置された第1の支持部と、前記シートの他方の面に配置された第2の支持部と、を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の音反射構造体。
【請求項6】
前記支持部は、高さが均一な単一の構造体である、請求項に記載の音反射構造体。
【請求項7】
前記第1の支持部および前記第2の支持部の一方の厚さが、他方の厚さの19/20~20/19倍である、請求項に記載の音反射構造体。
【請求項8】
前記第1の支持部および前記第2の支持部の一方の厚さが、他方の厚さの20/19倍超である、請求項に記載の音反射構造体。
【請求項9】
前記シートの両面に配置されるそれぞれの前記支持部の構成材料が互いに同一である、請求項1~のいずれか1項に記載の音反射構造体。
【請求項10】
前記シートの両面に配置されるそれぞれの前記支持部の構成材料が互いに異なる、請求項1~のいずれか1項に記載の音反射構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音反射構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内には多くの音源がある。車内および車外における騒音からの静粛性が要求されることから、自動車には様々な防音対策が施されている。特に、エンジンやトランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)については、発生源に近い位置で防音対策が必要である。このため、これらの音源に対しては吸遮音性能に優れる専用の防音カバーが使用されている。ここで、相次ぐ法改正による車外騒音レベル規制の強化や、車内騒音の静粛化が車の価値(高級感)に直結する点も相俟って、自動車における低騒音化部品の要求は非常に高い。特に、2013年度に欧州連合(EU)において導入された車外騒音規制は、最終的に従来規制値に対して-3dB(音圧エネルギーとして1/2に低減が必要)と厳しいものとなっている。これにはエンジンルーム内の主騒音発生源としてのエンジン本体およびトランスミッション等固有音源への騒音低減対策が不可欠である。これまでも、エンジン上面側のエンジントップカバー等の様々な防音部品が使用されているが、さらなる性能の向上が求められている。また、低燃費化の観点から、防音対策は軽量化の要請にも応えられるものであることが好ましい。
【0003】
防音を狙った防音構造体の構成は種々知られているが、なかでも「音響メタマテリアル」と称される材料がある。「音響メタマテリアル」とは、自然界に存在する物質が通常示さないような音響的性質を示すように設計された人工媒質である。従来、所望の防音効果を示す音響メタマテリアルの開発が鋭意行われており、各種の提案がなされている。
【0004】
ここで、均質な材料からなる一重壁にある周波数の音波が垂直に入射したときの当該一重壁による透過損失(TL;Transmission Loss)の値は、上記周波数(f)および上記一重壁の面密度(m)を用いて、TL≒20log10(m・f)-43[dB]と算出されることが知られている(質量則)。すなわち一般に、防音材料が軽量であるほど、また、音波の周波数が小さいほど、透過損失(TL)は小さくなり、防音性能が低下することとなる。例えば500Hzの音波の場合、20dBのSTLを達成するには、コンクリート壁では12cm、ウレタンフォーム遮音材では35cm超ものサイズが必要となる。
【0005】
このような状況に鑑み、例えばNi Sui et al.,Applied Physics Letters 106,171905(2015)では、連続的に形成された複数の筒状セルを有するアラミド繊維シート製ハニカムによってラテックスゴム製の膜が気密に支持されてなる格子状構造体からなる音響メタマテリアルが提案されている。ここで、Ni Sui et al.,Applied Physics Letters 106,171905(2015)に開示されている格子状構造体においては、ラテックスゴム製の膜が複数の筒状セルによって正六角形(一辺の長さが3.65mm)の形状を有する区画部に区画されている。
【0006】
Ni Sui et al.,Applied Physics Letters 106,171905(2015)によれば、このような音響メタマテリアルを用いることで、軽量でも特に低周波数の音波に対する防音性能に優れた材料を提供できるとされており、実験によって500Hz未満の周波数の音波については25dBを超えるSTLを達成可能であることも開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、Ni Sui et al.,Applied Physics Letters 106,171905(2015)に記載されているような上記音響メタマテリアルを防音材として用いた場合には、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって十分な防音性能を発揮することができるわけではないことが本発明者らの検討により判明した。
【0008】
そこで本発明者らは、2000Hz以下の周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮することを可能とする手段を提供することを目的として検討を行った。その結果、Ni Sui et al.,Applied Physics Letters 106,171905(2015)に開示されているような、弾性を有するシートと、当該シートを支持するとともに当該シートを区画部に区画する支持部とを有する音響メタマテリアルにおいて、当該区画部を構成するシートの面剛性および面密度が所定の関係を満足するように制御することによって400~1000Hzの周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能が発揮されうることを見出し、その発明について特許出願を行っている(PCT/JP2018/028326)。
【0009】
ここで、上述したような音響メタマテリアルを車両等に適用する際には、当該音響メタマテリアルを配置するための基板と積層することが一般的である。しかしながら、本発明者らがさらに検討したところによれば、音響メタマテリアルの使用時における適用形態によっては、特に1500~2500Hzの周波数域における音反射性能が十分に発揮されない場合があることが判明した。一方、人が聴くことのできる音の周波数範囲(可聴域)は20~20000Hzと広いものの、等ラウドネス曲線の理論によれば、特に1000~4000Hz付近の音に対して敏感であることが知られている。したがって、人の聴覚が敏感な周波数域に含まれる1500~2500Hzの周波数域における音反射性能の向上は、音反射材の開発において最も重要な位置を占めているといえる。
【0010】
そこで本発明は、1500~2500Hzの周波数域における音反射性能をよりいっそう向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、上述したような音響メタマテリアルにおいて、区画部を構成するシートの面剛性および面密度が所定の関係を満足するように制御するとともに、当該音響メタマテリアルを基板と離隔した位置に配置することで、特に1500~2500Hzの周波数域における音反射性能をよりいっそう向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本発明者らによるさらなる検討により、上記音響メタマテリアルは吸音材としての性能(吸音性能)を有しておらず、専ら入射音を反射することによって音反射性能を発揮していることも判明している。
【0012】
すなわち、本発明の一形態によれば、基板と、前記基板上の当該基板と離隔した位置に配置された音反射材とを有する音反射構造体が提供される。ここで、前記音反射材は、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部とを備える。そして、当該音反射材は、上記区画部におけるシートの面剛性(k)および面密度(m)が下記数式1の関係を満足する点に特徴を有している。
【0013】
【数1】
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る音反射構造体の外観を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る音反射材の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る音反射材の上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る音反射材を構成する筒状セルの断面形状およびそのサイズを説明するための拡大断面図である。
図5】本発明に係る音反射材の音反射性能を、従来公知の防音材における性能トレンドと対比して説明するためのグラフである。
図6】防音材の面密度を大きくした場合における質量則に従った防音性能(透過損失)の変化を説明するためのグラフである。
図7】本発明に係る音反射材の音反射性能(透過損失)を、ハニカム構造を有する格子状構造体(支持部)のみからなる音反射材、一重壁のみからなる音反射材、および鉄板からなる音反射材と対比して説明するためのグラフである。
図8】剛性則に従う音反射性能について説明するための図である。
図9】本発明に係る音反射材の音反射性能に質量則(図6)および剛性則(図8)の双方が関与していると仮定した場合のモデル式を、透過損失の実測値と対比して示すグラフである。
図10】本発明の他の実施形態に係る音反射構造体の外観を示す側面図である。
図11】後述する実施例の欄において音反射性能を評価するのに用いた測定系(遮音ボックスおよびマイク)の配置を説明するための写真である。
図12】後述する実施例の欄において作製した音反射材について、JIS A1409に規定される「残響室法吸音率の測定方法」に準拠した手法により垂直入射吸音率を測定した結果を示すグラフである。
図13】後述する実施例の欄において作製した音反射材について、残響室と無響室を組み合わせた方法を用いて音響強度を測定することにより音響透過損失(透過率)を測定した結果を示すグラフである。
図14】後述する実施例の欄において作製した音反射材について挿入損失を測定した結果を示すグラフである。図14は、比較例1-1~1-2および実施例1-1~1-2についての結果を示すグラフである。
図15】後述する実施例の欄において作製した音反射材について挿入損失を測定した結果を示すグラフである。図15は、比較例2-1~2-2および実施例2-1~2-2についての結果を示すグラフである。
図16】後述する実施例の欄において作製した音反射材について挿入損失を測定した結果を示すグラフである。図16は、比較例3-1~3-2および実施例3-1についての結果を示すグラフである。
図17】後述する実施例の欄において作製した音反射材について挿入損失を測定した結果を示すグラフである。図17は、比較例4-1および実施例4-1~4-4についての結果を示すグラフである。
図18】後述する実施例の欄において作製した音反射材について挿入損失を測定した結果を示すグラフである。図18は、実施例5-1~5-2についての結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一形態は、基板と、前記基板上に配置された音反射材とを有し、前記音反射材が、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部とを備え、前記区画部における前記シートの面剛性(k)および前記シートの面密度(m)が、下記数式1の関係を満足し、かつ、前記シートが前記基板と離隔するように、前記音反射材が前記基板上に配置されている、音反射構造体である。
【0016】
【数2】
【0017】
数式1における面剛性(k)および面密度(m)の算出方法については、後述する。
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%の条件で行う。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体の外観を示す側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体を構成する音反射材の外観を示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体を構成する音反射材の上面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る音反射構造体を構成する音反射材の支持部の断面形状およびそのサイズを説明するための拡大断面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る音反射構造体1は、音反射材10と、基板20とを有する。図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る音反射材10は、連続的(規則的)に配列された筒状セルから構成される格子状構造体100(支持部)と、弾性を有するラテックスゴムから構成されるラテックスゴムシート200とを備えている。このラテックスゴムシート200は、格子状構造体100の両側の開口部のうち一方の側を塞ぐように当該格子状構造体100に気密に接合されており、シート状基材として機能する。なお、本実施形態におけるラテックスゴムシート200の厚さは0.25mm(250μm)である。一方、本実施形態において、格子状構造体100は、ポリ塩化ビニル樹脂から構成されている。そして、格子状構造体100は、連続的(規則的)に形成された多数の筒状セル110を有している。
【0021】
また、図1に示すように、本実施形態に係る音反射構造体1においては、音反射材10を構成する格子状構造体100(支持部)の開口断面(ラテックスゴムシート200が配置されている側とは反対側の面)が基板に接触するように、音反射材10が基板20上に配置されている。言い換えれば、ラテックスゴムシート200が基板20と離隔するように(直接接触しないように)、音反射材10が基板20上に配置されている。ここで、本明細書において、「音反射材が基板上に配置される」とは、音反射材が基板の鉛直上方に配置されることのみを意味するわけではない。音反射材を構成するシートが基板と離隔するように音反射材と基板とが配置されている限り、音反射材は基板に対して任意の方向に配置されうる。例えば、図1に示すように、音反射材10が基板20の鉛直下方に配置されてもよい。
【0022】
このように音反射材を構成するシートが基板と離隔するような配置とすることで、音反射材(特に、これを構成する弾性を有するシート)の振動が、基板の振動の影響を受けにくくなる。その結果、音反射材(特に、これを構成する弾性を有するシート)が十分に振動することができ、音反射効果を十分に発揮することが可能となる。本形態に係る音反射構造体によれば、シートが基板と離隔するように音反射材を基板上に配置することで、そのような構成を有しない場合と比較して音反射効果の著しい向上が見られるが、そのメカニズムは完全には明らかではない。ただし、このような構成で配置されていることで、音反射材を構成するシートと基板との振動が互いに干渉しにくくなる。その結果、音反射材(特に、これを構成する弾性を有するシート)が十分に振動することができ、音反射効果を十分に発揮することが可能となるというメカニズムが考えられる。また、密閉された中空二重層による防音効果も知られているが、本形態に係る音反射構造体においては中空二重層のように密閉された空間が存在するわけではない。にもかかわらず、本形態に係る音反射構造体が中空二重層による防音効果よりも優れた音反射作用による音反射性能を示すことはまったく予想外のことであった。また、本形態に係る音反射構造体によって反射された音波(反射波)は対向して入射してくる音波(入射波)の一部の周波数域と干渉することによって当該入射波を打ち消すという作用も有する結果、相乗的に入射波を消音しているものと考えられる。なお、反射波の存在により、入射側(音源側)の大気の弾性波強度が増加する。よって、弾性波振動を電位に変換しうる素子(例えば、圧電素子など)を音源側に設置することで、反射された音波を電力へと変換し、エネルギー回生に利用することも可能である。
【0023】
なお、図2および図3に示すように、本実施形態に係る音反射材10において、格子状構造体100の延在方向に垂直な断面(図3の紙面)における筒状セル110の断面形状は正六角形である。すなわち、格子状構造体100はいわゆるハニカム構造を有している。これにより、本実施形態に係る格子状構造体100は、シート状基材としてのラテックスゴムシート200を支持するとともに、ラテックスゴムシート200を複数の(図2および図3では多数の)区画部に区画している。そして、当該複数の区画部は、同一の外郭形状を有する当該複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成している。
【0024】
また、ハニカム構造を構成する1つの筒状セル(図4に示す110a)のセルサイズ(断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離;図4に示す距離w)は4mmである。このような構成とすることにより、非常に簡単な構成で優れた遮音性能を実現することができる。さらに、図4に示すように、格子状構造体100は、周囲に壁を有する多数の筒状セル110が連結されることにより構成されているとみなすことができる。本実施形態において、この筒状セルの壁の厚さ(図4に示す距離t)は0.07mm(70μm)である。なお、格子状構造体(筒状セル)の延在方向の高さ(図2に示す距離h)は25mmであり、高さが均一な単一の構造体から構成されている。
【0025】
上述したように、図2および図3に示すような構成を有する音反射材は、非常に簡単な構成で優れた音反射性能を実現することができる。特に、軽量かつ簡便な構成であるにもかかわらず1500~2500Hzの周波数域において高い音反射性能を発揮することができるという従来の技術では達成し得なかった特性を発現することができる。
【0026】
本発明者らは、上述した実施形態のような音反射材がこのように優れた音反射性能を示すメカニズムについて精力的に検討を進めた。その結果、車両等に従来適用されていた防音材とは異なるメカニズムが関与していることを突き止め、本発明を完成させるに至った。そして、最終的に見出されたメカニズムは、車両等に適用される防音材に関する従来の常識を覆すものであった。以下、本実施形態に係る音反射材が優れた音反射性能を発揮するメカニズムと、本発明者らによって解明された当該メカニズムに基づき完成された本願発明の構成について、順を追って説明する。
【0027】
まず、本発明に係る音反射材の音反射性能を、従来公知の防音材における性能トレンドと対比する形で図5に示す。図5に示すように、従来公知の防音材では、構成材料の密度が大きくなるにつれて防音性能(透過損失)が向上するという性能トレンドが存在していた。このような従来公知の防音材における性能トレンドは「質量則」として知られているものである。この質量則に従う防音材における透過損失の理論値(TL)は、対象とする音波の周波数(f)および防音材の面密度(m;単位面積当たりの質量)を用いて、下記数式2に従って算出される。
【0028】
【数3】
【0029】
このため、防音材の面密度を大きくすれば防音性能(透過損失(TL))を向上できるが、その一方で、防音性能を向上させるには防音材の面密度を大きくせざるを得ない、というのが質量則に基づく従来技術における常識であった(図6)。言い換えれば、1500~2500Hzの周波数域の広い範囲にわたって高い防音性能を発揮する防音材を軽量の材料から構成することは不可能であると信じられていたのである。これに対し、本発明に係る音反射材は、この性能トレンドから大きく外れるようにして優れた音反射性能を示す(すなわち、低密度(軽量)でも相対的に高い音反射性能を示す)ものである(図7)。
【0030】
より詳細に説明すると、図7に示すように、ハニカム構造を有する格子状構造体(支持部)のみでは音反射性能はまったく発揮されない。また、一重壁からなる音反射材の場合、弾性を有するシート(ゴム膜)のみでは質量則に従った音反射性能(高周波数域では透過損失が増大するものの低周波数域では透過損失が低減する)が発揮されるに留まる。したがって、低周波数域(特に1500~2500Hzの領域)での音反射性能を発揮させるためには、例えば鉄板のように面密度が非常に大きい(つまり、重い)材料を用いる必要があった。これに対し、上述したような構成を有する本発明に係る音反射材は、高周波数域においては質量則に沿った音反射性能を発揮し、周波数の減少に伴って透過損失の値も減少する。一方、本発明に係る音反射材は軽量であるにもかかわらず、ある周波数(共振周波数)を境に低周波数域(特に1500~2500Hzの領域)側においても優れた音反射性能を発揮することができる。
【0031】
このような低周波数域における音反射性能の著しい向上は、質量則によっては説明することができない。そこで、本発明者らは、従来の技術からは説明のつかないこのような現象を説明するためのモデルとして、種々のパターンについて鋭意検討を行った。その過程で、本発明者らは、驚くべきことに、低周波数域における音反射性能が、質量則とは異なる遮音原理である「剛性則」に従って発揮されていることを発見した。以下、この点について説明する。
【0032】
剛性則に従う音反射材における透過損失の理論値(TL)は、対象とする音波の周波数(f)、音反射材の面密度(m;単位面積当たりの質量)および音反射材の面剛性(K)を用いて、下記数式3に従って算出される。なお、面剛性(K)は、支持部(格子状構造体)によって区画されたシートの区画部の1つを、質量mのマスを有し、音波の入射に対して振動するマスバネモデルに近似したときのバネ定数であり、Kが大きいほど入力に対する変形しにくさが大きいことに相当する。
【0033】
【数4】
【0034】
そして、この式をTLが極小値をとる条件で周波数(f)について解くと、共振周波数(f)の値は、下記数式4のように表される(図8)。
【0035】
【数5】
【0036】
このことに基づき、本発明者らは、質量則(図6)および剛性則(図8)の双方が音反射性能の発現に関与していると仮定した場合のモデル式の作成を試みた。そして、このモデル式が実際に測定された透過損失(TL)の結果と整合することを確認し、本形態に係る音反射材による音反射性能の発揮メカニズムには質量則および剛性則の双方が関与していることを検証するに至ったのである(図9)。
【0037】
本形態に係る音反射材による音反射性能の発揮メカニズムにおいて、質量則のみならず剛性則も関与している理由については完全には明らかとはなっていないが、弾性を有するシートの区画部はそれぞれ、支持部(筒状セルを有する格子状構造体)によって区画されていることによりシートの剛性が向上している(すなわち、振動しにくくなっている)と考えられる。したがって、本発明者らは、上述したマスバネモデルによる近似によって、メカニズムがうまく説明されうるのではないかと推測している。
【0038】
以上のようなメカニズムを前提として、本発明者らは、音反射材の音反射特性の設計に必要な要素についてさらに検討を進めた。その過程で、本発明者らは、弾性を有するシートの区画部のそれぞれを面積が等しくなる半径aの円板で近似し、荷重pが入力されたときの当該区画部の面剛性(k;本明細書では、本近似に従う場合の面剛性の値を小文字のkで表すものとする)を、当該円板が周辺固定・等分布荷重モードで振動するときの平均たわみ(wave)を用いて下記数式5のように算出した。本明細書では、このkの値が数式1において用いられるのである。
【0039】
【数6】
【0040】
なお、数式5において、νは区画部におけるシートのポアソン比であり、Eは区画部におけるシートのヤング率[Pa]であり、hは区画部におけるシートの膜厚[m]である。また、区画部を円板に近似した際の半径aは、区画部の面積等価円半径[m]である。一例として、区画部が1辺の長さがl(エル)の六角形である場合、当該区画部(六角形)の面積Shexは、下記数式6のように算出される。
【0041】
【数7】
【0042】
そうすると、この区画部(六角形)の等価円半径aeq(区画部(六角形)の面積と等しい面積を有する円の半径)は、下記数式7のように算出される。
【0043】
【数8】
【0044】
そして、このようにして算出された面剛性(k)の値を、上述した数式4における面剛性(K)の値として採用すると、共振周波数(f)の値は、下記数式8のように表すことができる。
【0045】
【数9】
【0046】
なお、区画部におけるシートの面密度(m)は、下記数式9のように表すことができる。
【0047】
【数10】
【0048】
数式9において、ρは前記区画部におけるシートの密度[kg/m]であり、hは前記区画部におけるシートの膜厚[m]である。
【0049】
このため、数式8と数式9とから、共振周波数(f)の値は、区画部におけるシートの密度(ρ;単位体積当たりの質量;kg/m)の値と、上述した区画部におけるシートの膜厚[m]の値を用いて、下記数式10のように表すことができる。このことは、区画部のサイズや形状、区画部におけるシートの材質および膜厚を種々変更することにより、音反射材が示す共振周波数(f)の値を制御可能であることを意味する。
【0050】
【数11】
【0051】
上述したように、本発明が解決しようとする課題は、1500~2500Hzの周波数域においてよりいっそう高い音反射性能を発揮しうる手段を提供するというものである。そして、図8および図9に示すように、共振周波数(f)を境にして、周波数が小さくなるほど剛性則に従う音反射性能(透過損失の値)は優れたものとなる。したがって、本発明者らは、共振周波数(f)をある程度以上の値に設定することで、2500Hz以下の周波数域の音に対する音反射性能を向上させることができるのではないかと考えた。そして、この考えのもと、上述した数式10に従い、弾性を有するシートと、前記シートを支持するとともに前記シートを区画部に区画する支持部とを備える音反射材において、区画部のサイズや形状、区画部におけるシートの材質および膜厚を種々変更することにより、異なる共振周波数(f)を有する音反射材を多数作製し、そのそれぞれについて(特に1500~2500Hzの周波数域における)音反射性能を評価した。その結果、上記区画部におけるシートの面剛性(k;上記数式5により算出される)およびシートの面密度(m;上記数式9により算出される)が下記数式1の関係を満足することで、特に2500Hz以下の周波数域においても優れた音反射性能を発揮しうることを確認した。下記数式1は、上述した近似に基づき算出される共振周波数(f)が900[Hz]よりも大きいことを意味している。
【0052】
【数12】
【0053】
ここで、数式1における左辺の値の形態は特に制限されず、音反射材に対して音反射性能を発揮させたい周波数領域に応じて適宜設定することができる。一般に、数式1における左辺の値を大きくするほど共振周波数は高周波数側にシフトすることから、このことを考慮して適宜設定すればよい。一例として、数式1における左辺の値は、好ましくは1400Hz以上であり、より好ましくは2000Hz以上であり、さらに好ましくは3000Hz以上であり、いっそう好ましくは4000Hz以上であり、特に好ましくは5000Hz以上である。数式1における左辺の値は、例えば10000Hz以上であり、例えば50000Hz以上であり、例えば100000Hz以上である。なお、本発明に係る技術的思想の範囲内で音反射性能を発揮する音反射材において、数式1における左辺の値の上限値としては、好ましくは1000000Hz以下であり、より好ましくは800000Hz以下であり、さらに好ましくは600000Hz以下である。
【0054】
上述したように、本発明に係る音反射構造体によれば、音反射材の区画部を構成するシートの面剛性および面密度が所定の関係を満足するように制御するとともに、弾性を有するシートが基板と離隔するように当該音反射材を基板上に配置することで、特に1500~2500Hzの周波数域における音反射性能をよりいっそう向上させることが可能である。したがって、本発明に係る音反射構造体は、ホワイトノイズに対する挿入損失曲線が1500~2500[Hz]の周波数域に極大値を有するものであることが好ましい。また、この際の挿入損失曲線の極大値は、45[dB]以上であることがより好ましく、50[dB]以上であることがさらに好ましい。
【0055】
ところで、非特許文献1に開示された技術においては、セルサイズが大きすぎる結果、弾性を有するシートの面剛性が小さくなり、(k/m)1/2/2πの値が900Hz以上とはならないため、特に2500Hz以下の周波数域において優れた音反射性能を発揮することができないと考えられる。
【0056】
また、従来、複数のセルが並設されてなるコア層と、当該コア層の両面に配置されたスキン層とからなる樹脂構造体が種々の用途で提案されており、当該樹脂構造体に吸音性や遮音性を持たせることも試みられている。しかしながら、このような樹脂構造体に吸音性や遮音性を持たせることを意図している従来の技術は、コア層を構成するセルの内外を連通させる連通孔をスキン層に設けることを前提としている。そして、このようにスキン層に連通孔が設けられている場合もまた、やはり弾性を有するシートの面剛性を十分に確保することができない。その結果、(k/m)1/2/2πの値が900Hz以上とはならないため、特に2500Hz以下の周波数域において優れた音反射性能を発揮することはできない。一方、上記と同様の構造を有する樹脂構造体において、上述したような連通孔をスキン層に設けることを前提としていない技術も従来提案されているが、これらの技術は音反射などに関するものではない。これらの技術の中には、例えば、曲げ剛性や曲げ強度といった機械的強度を向上させることを目的として、容器、棚、パレット、パネル等の剛性が求められる用途への適用を意図したものがある。さらに、同様の樹脂構造体を用いる別の提案では、スキン層に当該スキン層の弾性率を低下させるための耐衝撃性改良材を必須に含有させることとされていることから、当該スキン層は本願発明における「弾性を有するシート」には該当しない可能性が高い。また、同様の樹脂構造体を用いるさらに別の提案では、厚みが0.05~数mm程度の金属部材をスキン層として配置することとしており、やはり剛性が高い材料がスキン層に用いられている。このため、スキン層に連通孔を設けない樹脂構造体に関する従来技術においては、本願発明における面剛性の値が大きくなりすぎる結果、(k/m)1/2/2πの値が測定できない程度に大きい(高周波数側の)値になるものと考えられる。
【0057】
以下、音反射材10の構成要素について、より詳細に説明する。
【0058】
(弾性を有するシート)
弾性を有するシート(図1および図2に示すラテックスゴムシート200に相当)の構成材料について特に制限はなく、弾性を有する材料であれば種々の材料が用いられうる。本明細書において、シートが「弾性を有する」とは、ヤング率の値が0.001~70[GPa]の範囲内の値である材料から構成されていることを意味する。なお、ヤング率の値は、樹脂についてはJIS K7161-1(2014年)により測定されうる。また、金属のヤング率についてはJIS Z2241(2011年)により測定されうる。そして、ゴムのヤング率についてはJIS Z6251(2010年)により測定されうる。弾性を有するシートの構成材料としては、上述した実施形態において用いられているラテックスゴムのほか、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)などのゴム材料が同様に用いられうる。また、樹脂材料や金属材料、紙材料などが弾性を有するシートとして用いられてもよい。さらに、エアークッションなどの緩衝機能を有する材料もまた、用いられうる。これらの材料はいずれも、ゴム材料も含め、本形態に係る音反射材の効果を発現できる程度に高い弾性を有するものである。樹脂材料としては、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等が例示される。また、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が用いられうる。なお、これらの樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の樹脂前駆体が用いられてもよい。金属材料としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。弾性を有するシートの構成材料は上記のものに限定されず、その他の材料が用いられてももちろんよい。なお、弾性を有するシートの構成材料としてはゴム材料が好ましく、なかでもラテックスゴムまたはEPDMゴムがより好ましい。これらのゴム材料を弾性を有するシートの構成材料として用いることで、本発明に係る音反射材による音反射効果が好適に発現しうる。また、これらのゴム材料は軽量であるという点で、特に車両用途への適用を考慮すると、低燃費化への寄与も大きいため、特に好ましい材料であると言える。さらに、低コスト化の観点からは、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂もまた、弾性を有するシートの構成材料として好ましいものである。
【0059】
弾性を有するシートの膜厚は、音反射材の音反射効果の観点から、好ましくは10~1000μmであり、より好ましくは100~500μmである。
【0060】
(支持部(格子状構造体))
支持部は、上述した弾性を有するシートを支持するとともに当該シートを(気密的に区画された)区画部に区画するものである。このような機能を発現可能な構成を有するものであれば、支持部の具体的な構成について特に制限はない。図1図3は多数の区画部が存在するように記載されているが、区画部は1つのみであっても本発明の範囲内のものである。
【0061】
支持部の構成材料について特に制限はなく、上述した実施形態において用いられているポリ塩化ビニル樹脂のほか、従来公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられうる。また、金属材料やその他の材料が支持部の構成材料として用いられてもよい。これらの材料はいずれも、弾性を有するシートを保持してこれを区画部に区画するのに適した物性を有している。
【0062】
熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂のほか、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等が例示される。また、熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が用いられうる。なお、これらの樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の樹脂前駆体が用いられてもよい。なかでも、成形が容易であるという観点からは、熱可塑性樹脂が好ましく用いられ、特に塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂は軽量であって、かつ耐久性に優れ、安価であるという利点から、好ましい。
【0063】
上述したように、支持部は、連続的に形成された多数の筒状セルを有する格子状構造体であることが好ましい。この場合、支持部は、弾性を有するシートを複数の区画部に区画することとなる。そしてさらに、当該複数の区画部の少なくとも一部は、同一の外郭形状を有する複数の区画部が規則的に配列されてなる規則配列構造を構成するものであることがより好ましい。このような構成とすることにより、製造が容易で、かつ同一形状の多数の区画部の存在によって所望の周波数域の音波に対する音反射性能を特異的に発現させることができる。この際、音反射性能をよりいっそう発揮させるという観点から、弾性を有するシートの面積に占める上記規則配列構造の面積の割合は、好ましくは80~100%であり、より好ましくは90~100%であり、さらに好ましくは95~100%であり、いっそう好ましくは98~100%であり、特に好ましくは99~100%であり、最も好ましくは100%である。なお、1つの上記シートに対して少なくとも1つの格子状構造体(支持部)が、複数の部材に分割されていてもよい。このような構成とすることにより、本形態に係る音反射材は、全体として可撓性を有するものであることが好ましい。ただし、支持部が複数の部材に分割されていない形態であっても、音反射材が全体として可撓性を有することは好ましい実施形態である。このように音反射材が可撓性を有することで、種々の形状の音源に追従させた形で音反射材を配置することが可能となるため、好ましい。
【0064】
上述した規則配列構造における区画部の外郭形状(格子状構造体の延在方向に垂直な断面における筒状セルの断面形状)は、図2図4に示すような正六角形に限定されず、その他の形状であってもよい。同一の断面形状を有する正多角形を連続的に形成することによって多数の筒状セルを配置するのであれば、断面形状としては正六角形のほか、正四角形(正方形)、正三角形が採用されうる。これらの形状を採用することで、製造が容易でかつ優れた強度を示す支持体が提供されうる。なお、格子状構造体の断面を複数の正多角形が規則的に配置されたパターンとするのであれば、例えば、アルキメデスの平面充填法により、(正三角形4個,正六角形1個)、(正三角形3個,正四角形(正方形)2個)×2通り、(正三角形1個,正四角形(正方形)2個,正六角形1個)、(正三角形2個,正六角形2個)、(正三角形1個,正十二角形2個)、(正四角形(正方形)1個,正六角形1個,正十二角形1個)、(正四角形(正方形)1個,正八角形2個)のいずれかの組み合わせにより格子状構造体の断面が上記パターンを有するように構成することができる。なかでも、単位質量あたりの圧潰強度が最大となるという観点からは、図2図4に示すように、筒状セルの断面形状は正六角形である(すなわち、格子状構造体がハニカム構造を有する)ことが最も好ましい。
【0065】
格子状構造体を構成する筒状セルのサイズについては、上述した数式1を満足するものであれば具体的な値について特に制限はない。格子状構造体がハニカム構造を有する場合における好ましい実施形態においては、図2および図3に示すように、筒状セルのサイズ(断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離)は6.0mm以下であることが好ましい。このようなサイズを有することで、優れた音反射性能が発揮されうる。また、筒状セルのサイズ(断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離)は、5.9mm以下、5.8mm以下、5.7mm以下、5.6mm以下、5.5mm以下、5.4mm以下、5.3mm以下、5.2mm以下、5.1mm以下、5.0mm以下、4.9mm以下、4.8mm以下、4.7mm以下、4.6mm以下、4.5mm以下、4.4mm以下、4.3mm以下、4.2mm以下、4.1mm以下、4.0mm以下などであってもよく、これらの数値範囲は狭いものほどより好ましい。なお、筒状セルのサイズの下限値について特に制限はないが、筒状セルのサイズが小さすぎると格子状構造体(ひいては音反射材)の質量が増加することから、2.0mm以上であることが好ましい。
【0066】
また、筒状セルの壁の厚さ(図4に示す距離t)は、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは30~100μmである。
【0067】
図1図4に示す実施形態において、格子状構造体(支持部)は弾性を有するシートの片面のみに設けられている。ただし、図10に示すように、少なくとも1つの弾性を有するシートの両面に、格子状構造体(支持部)が設けられた形態であっても、やはり同様にして優れた音反射性能を発揮することが可能である。この場合、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(第1の格子状構造体(第1の支持部)100Aおよび第2の格子状構造体(第2の支持部)100B)の形態は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。なかでも、弾性を有するシートの両面にそれぞれ設けられる格子状構造体(第1の格子状構造体100A(第1の支持部)および第2の格子状構造体(第2の支持部)100B)の形態は互いに異なるものであることが好ましい。また、この際、格子状構造体(第1の格子状構造体100A(第1の支持部)および第2の格子状構造体(第2の支持部)100B)の筒状セルの形状が弾性を有するシートの両面でちょうど重なり合うようにそれぞれの格子状構造体を配置することがより好ましい。このような構成とすることで、特に優れた音反射性能が発揮されうるという利点がある。また、この際、第1の支持部および第2の支持部のそれぞれの厚さは、略同一でありうる。言い換えれば、第1の支持部および第2の支持部の一方の厚さは、他方の厚さの19/20~20/19倍でありうる。さらに、第1の支持部および第2の支持部のそれぞれの厚さは、実質的に異なっていてもよい。言い換えれば、第1の支持部および第2の支持部の一方の厚さは、他方の厚さの20/19倍超でありうる。このように第1の支持部および第2の支持部の厚さを制御することで、音反射効果を示す対象となる周波数域を精密に制御することが可能である。
【0068】
また、支持部の構成材料について特に制限はないことについては上述したが、第1の支持部および第2の支持部のそれぞれの構成材料は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。このように第1の支持部および第2の支持部の構成材料を選択することで、音反射効果を示す対象となる周波数域を精密に制御することが可能である。
【0069】
本形態においては、格子状構造体(支持部)の延在方向の高さが大きいほど、2000Hz以下の低周波数域の広い範囲にわたって特に優れた音反射性能が発揮されうる傾向にある。このような観点から、格子状構造体(支持部)は高さが均一な単一の構造体であることが好ましい。また、この場合において、格子状構造体の延在方向の高さ(図2に示す距離h)は、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは6mm以上であり、さらに好ましくは13mm以上であり、いっそう好ましくは19mm以上であり、特に好ましくは22mm以上であり、最も好ましくは25mm以上である。
【0070】
本形態に係る音反射材は、上述したように、軽量であることが好ましい。この観点から、本形態に係る音反射材の全体としての面密度は、好ましくは3.24kg/m未満であり、より好ましくは2.0kg/m以下であり、さらに好ましくは1.5kg/m以下であり、特に好ましくは1.0kg/m以下である。
【0071】
上述したように、本発明者らの検討によれば、本形態に係る音反射材は吸音材としての性能(吸音性能)を有しておらず、専ら入射音を反射することによって音反射性能を発揮していることも判明している。このことについては、後述する実施例の欄において図12および図13を参照しつつ詳細に説明している。
【0072】
本形態に係る音反射材は、基板上に配置されて音反射構造体を構成することで、種々の音源由来の騒音を遮蔽する用途に好適に用いられうる。
【0073】
音反射構造体を構成する基板としては、基本的に通気性のない金属板(鉄板、アルミニウム板など)や樹脂板などが用いられうる。基板の厚さは、金属板の場合には0.5~2.0mmの範囲が好ましく、樹脂板の場合には0.5~20mmの範囲が好ましい。
【0074】
本形態に係る音反射材およびこれを用いた音反射構造体は非常に軽量に構成することが可能である。本形態に係る音反射材および音反射構造体は、このように軽量化が可能であることから、車両に搭載されて用いられることが好ましい。特に、エンジンやトランスミッション、駆動系のような大きな音を発生する部分(固有音源)から発生する騒音に対する音反射用途に適用されることが最も好ましい。適用部位の一例として、エンジンコンパートメントにおいては、エンジンヘッドカバー、エンジンボディカバー、フードインシュレーター、ダッシュ前インシュレーター、エアボックスの隔壁、エアインテークのエアクリーナー、ダストサイドダクト、アンダーカバーなどに適用可能である。また、キャビンにおいては、ダッシュインシュレーター、ダッシュパネル、フロアのカーペット、スペーサー、ドアのドアトリム、ドアトリム内の音反射材、コンパートメント内の音反射材、インストパネル、インストセンターボックス、インストアッパーボックス、エアコンの筐体、ルーフのトリム、ルーフトリム内の音反射材、サンバイザー、後席向けエアコンダクト、電池搭載車両における電池冷却システムの冷却ダクト、冷却ファン、センターコンソールのトリム、コンソール内の音反射材、パーセルトリム、パーセルパネル、シートのヘッドレスト、フロントシートのシートバック、リアシートのシートバックなどに適用可能である。さらに、トランクにおいては、トランクフロアのトリム、トランクボード、トランクサイドのトリム、トリム内の音反射材、ドラフターカバーなどに適用可能である。また、車両の骨格内やパネル間にも適用することができ、例えば、ピラーのトリム、フェンダーに適用可能である。さらには、車外の各部材、例えば、フロア下のアンダーカバー、フェンダープロテクター、バックドア、ホイールカバー、サスペンションの空力カバーなどにも適用可能である。したがって、音反射構造体を構成する基板としては、上述した各種の適用部位の構成材料としての金属板や樹脂板等をそのまま用いることができる。
【0075】
ここで、本形態に係る音反射構造体の好ましい実施形態においては、上記支持部が弾性を有するシートとは反対の側に開口断面を有し、当該支持部の開口断面が基板に接するように、音反射材が基板上に配置されている。また、この際、上記支持部の開口断面が上記基板と接着されていない状態で基板上に配置されていることがより好ましい。このような構成とすることにより、1500~2500Hzの周波数域における音反射性能をよりいっそう向上させることができる。
【0076】
なお、本形態に係る音反射構造体を音源に対して配置する際の配置形態について特に制限はない。本形態に係る音反射構造体を音源に対して配置する際には、格子状構造体(支持部)を構成する筒状セルの延在方向に音源が位置するように配置することが好ましい。また、このように配置する際には、音反射材を構成する弾性を有するシートが音源側に位置するように配置してもよいし、音反射材を構成する筒状セルの開口部が音源側に位置するように配置してもよいが、より音反射性能に優れるという観点からは、前者の配置形態がより好ましい。
【実施例
【0077】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0078】
《音反射構造体の音反射性能の評価》
後述する実施例および比較例で作製した音反射構造体について、各周波数の音波に対する音反射性能を測定した。具体的には、図11に示すような鉄壺からなる遮音ボックスの内部にスピーカー(音源)を配置し、遮音ボックスの開口部にサンプル(音反射構造体)を配置した。また、遮音ボックスの開口部におけるサンプル(音反射構造体)の周囲からの音漏れを防止するために、サンプル(音反射構造体)の周囲にゴムシートを配置した。そして、遮音ボックスの内部に設置したスピーカー(音源)から音を発生させて、サンプル(音反射構造体)を配置しない場合(コントロール)に対する挿入損失[単位:dB]を測定することにより、音反射性能を評価した。ある周波数における挿入損失の値が大きいほど、当該周波数の音波に対する音反射性能に優れることを意味する。なお、以下の実施例および比較例の欄において特記しない限り、基板(鉄板)がマイクとは反対の側に位置するように音反射構造体を配置して評価を行った。また、音源の発生条件は以下のとおりとした:
スペクトルレベル:ホワイトノイズ(100~8192Hz)
max:8192Hz
平均値:300回の加算平均(1回の測定において時間を少しずつずらしながら300回の測定を行い、その加算平均を測定値とした)
オーバーラップ:75%。
【0079】
《音反射材の作製》
[製造例1]
弾性を有するシート(ラテックスゴムからなるシート;膜厚0.25mm)と、ポリ塩化ビニル(PVC)からなるハニカム構造体(多数の正六角形断面を有するハニカム支持体)(支持体厚さ25mm)とを準備した。ここで、ハニカム構造体を構成する筒状セルのサイズ(ハニカム構造体の断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離;図4に示す距離W)を4mmとした。次いで、上記シートの一方の面に、上記ハニカム構造体の開口断面を気密的に接着して、図2に示す構造を有する音反射材を作製した。
【0080】
[製造例2]
ハニカム構造体(支持体)の厚さを12.5mmとしたこと以外は、上述した製造例1と同様にして、本製造例の音反射材を作製した。
【0081】
[製造例3]
ハニカム構造体(支持体)の厚さを6mmとしたこと以外は、上述した製造例1と同様にして、本製造例の音反射材を作製した。
【0082】
[製造例4]
厚さがともに12.5mmのPVC製ハニカム構造体(セルサイズ4mm)を、弾性を有するシート(ラテックスゴムからなるシート)の両面に配置(接着)したこと以外は、上述した製造例1と同様にして、本製造例の音反射材を作製した。
【0083】
[製造例5]
弾性を有するシート(ラテックスゴムからなるシート)の各面に配置されるハニカム構造体(支持体)の厚さをともに6mmとしたこと以外は、上述した製造例4と同様にして、本製造例の音反射材を作製した。
【0084】
[製造例6]
弾性を有するシート(ラテックスゴムからなるシート)の各面に配置されるハニカム構造体(支持体)について、一方の厚さを6mmとし、他方の厚さを12.5mmとしたこと以外は、上述した製造例4と同様にして、本製造例の音反射材を作製した。
【0085】
上記各製造例で作製された音反射材の仕様を下記の表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
《吸音特性の有無の評価》
上記製造例1で作製した音反射材について、吸音特性の有無を評価した。
【0088】
具体的には、まず、上記音反射材について、400~5000Hzの周波数域の入射音に対する垂直入射吸音率をJIS A1409に規定される「残響室法吸音率の測定方法」に準拠して測定した。なお、垂直入射吸音率の測定時には、敷き詰めた粘土の表面に格子状構造体の開口断面が向き合うように配置することで、背後空気層の影響を排除した。一方、同様の入射音に対する透過率を、残響室と無響室を組み合わせた方法を用いて音響強度を測定することにより、音響透過損失(透過率)を測定した。この音響透過損失の測定においては、まず、残響室と無響室との間の開口に試料(音反射材)をセットする。次いで、残響室内のスピーカーから入射音を発生させ、残響室内の平均音圧レベルを試料(音反射材)に入射する音源側のパワーとして計測する。一方、受音側は、無響室内の試料(音反射材)の近傍にセットしたインテンシティープローブを用いて分割した測定面を測定し、試料から透過するパワーを推定する。そして、このようにして得られた入射パワーおよび透過パワーと、試料(音反射材)の面積とから音響透過損失を算出する。その結果、音響透過損失と各測定値との関係は、次式で表される。
【0089】
TL=SPL-PWL+10logS-6
式中、TLは音響透過損失[dB]であり、SPLは残響室内の平均音圧レベル[dB]であり、PWLは透過音のパワーレベル[dB]であり、Sは試料(音反射材)の面積[m]である。
【0090】
これらの測定結果のうち、吸音率の測定結果を図12に示し、透過率の測定結果を図13に示す。図12に示す吸音率の測定結果を示すグラフにおいて、縦軸(垂直入射吸音率)が0.3以上となる周波数域については吸音性能が発現していると一般的には解釈される。しかしながら、図13に示す透過率の測定結果によれば、図12においてピークが生じている1000~3000Hzの周波数域における透過率が上昇していることがわかる。ここで、入射音の帰趨としては反射されるか、吸収されて消失するか、透過するかのいずれかが考えられる。そして、このうち吸音率の測定においては、吸収された音のみを選択的に測定することはできず、吸収されて消失した音と透過した音との合計が入射音に対して占める割合としてしか測定することができない。この事実と、図13において1000~3000Hzの周波数域において透過率が上昇しているという結果に鑑みれば、図12における吸音ピークは実際には吸音率の上昇を反映しているわけではなく、透過率が上昇していることを反映しているに過ぎないということがわかる。
【0091】
以上のことから、本発明に係る音反射材は、吸音材としての性能(吸音性能)を有しておらず、専ら入射音を反射することによって音反射性能を発揮していることが理解される。
【0092】
《防音構造体(音反射構造体)の作製および評価》
[比較例1-1]
鉄板(厚さ1mm)を、そのまま本比較例の防音構造体とした。
【0093】
[比較例1-2]
上記製造例1で作製した音反射材を、鉄板(厚さ1mm)と積層して、本比較例の音反射構造体を作製した。この際、音反射材を構成するシートが鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置した。
【0094】
[実施例1-1]
音反射材を構成するシートが鉄板とは反対側に位置するように(すなわち、音反射材を構成する支持部の開口断面が鉄板に隣接するように)音反射材および鉄板を配置したこと以外は、上述した比較例1-2と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。
【0095】
[実施例1-2]
音反射材として、上記製造例4で作製したものを用いたこと以外は、上述した実施例1-1と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。この際、音反射材を構成する支持部の一方の開口断面が鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置した。
【0096】
上記実施例および比較例について、音反射性能を評価して得られた挿入損失の結果を図14に示す。これらの結果からわかるように、本発明に係る音反射構造体は、基板(鉄板)のみからなる音反射構造体や、本発明と同様の構成を有する音反射材を用いていても弾性を有するシートが基板(鉄板)と直接接触している音反射構造体と比較して、優れた音反射性能を示す。
【0097】
[比較例2-1]
鉄板(厚さ1mm)を、そのまま本比較例の防音構造体とした。
【0098】
[比較例2-2]
上記製造例2で作製した音反射材を、鉄板(厚さ1mm)と積層して、本比較例の音反射構造体を作製した。この際、音反射材を構成するシートが鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置した。
【0099】
[実施例2-1]
音反射材を構成するシートが鉄板とは反対側に位置するように(すなわち、音反射材を構成する支持部の開口断面が鉄板に隣接するように)音反射材および鉄板を配置したこと以外は、上述した比較例2-2と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。
【0100】
[実施例2-2]
音反射材として、上記製造例5で作製したものを用いたこと以外は、上述した実施例1-1と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。この際、音反射材を構成する支持部の一方の開口断面が鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置した。
【0101】
上記実施例および比較例について、音反射性能を評価して得られた挿入損失の結果を図15に示す。これらの結果からわかるように、本実施例に係る音反射構造体は、音反射材を構成する支持体の厚さが異なる場合であっても、基板(鉄板)のみからなる音反射構造体や、本発明と同様の構成を有する音反射材を用いていても弾性を有するシートが基板(鉄板)と直接接触している音反射構造体と比較して、優れた音反射性能を示す。
【0102】
[比較例3-1]
鉄板(厚さ1mm)を、そのまま本比較例の防音構造体とした。
【0103】
[比較例3-2]
上記製造例3で作製した音反射材を、鉄板(厚さ1mm)と積層して、本比較例の音反射構造体を作製した。この際、音反射材を構成するシートが鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置した。
【0104】
[実施例3-1]
音反射材を構成するシートが鉄板とは反対側に位置するように(すなわち、音反射材を構成する支持部の開口断面が鉄板に隣接するように)音反射材および鉄板を配置したこと以外は、上述した比較例3-2と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。
【0105】
上記実施例および比較例について、音反射性能を評価して得られた挿入損失の結果を図16に示す。これらの結果からわかるように、本実施例に係る音反射構造体は、音反射材を構成する支持体の厚さが異なる場合であっても、基板(鉄板)のみからなる音反射構造体や、本発明と同様の構成を有する音反射材を用いていても弾性を有するシートが基板(鉄板)と直接接触している音反射構造体と比較して、優れた音反射性能を示す。
【0106】
[比較例4-1]
鉄板(厚さ1mm)を、そのまま本比較例の防音構造体とした。
【0107】
[実施例4-1]
実施例1-2で作製した音反射構造体(製造例4で作製した音反射材を鉄板と積層したもの)を、そのまま本実施例の音反射構造体とした。
【0108】
[実施例4-2]
実施例2-2で作製した音反射構造体(製造例5で作製した音反射材を鉄板と積層したもの)を、そのまま本実施例の音反射構造体とした。
【0109】
[実施例4-3]
音反射材として、上記製造例6で作製したものを用いたこと以外は、上述した実施例4-1と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。この際、音反射材を構成する支持部のうち、厚さが12.5mmの支持部の開口断面が鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置した。
【0110】
[実施例4-4]
音反射材を構成する支持部のうち、厚さが6mmの支持部の開口断面が鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置したこと以外は、上述した実施例4-2と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。
【0111】
上記実施例および比較例について、音反射性能を評価して得られた挿入損失の結果を図17に示す。これらの結果からわかるように、本実施例に係る音反射構造体は、当該音反射構造体を構成する音反射材の支持部が弾性を有するシートの両側にそれぞれ配置されている場合であっても、基板(鉄板)のみからなる音反射構造体や、上記各比較例に記載した音反射構造体と比較して、優れた音反射性能を示す。
【0112】
[実施例5-1]
実施例1-1で作製した音反射構造体(製造例1で作製した音反射材を鉄板と積層したもの)を、そのまま本実施例の音反射構造体とした。
【0113】
[実施例5-2]
音反射材を構成する支持部の開口断面に接着剤を塗布し、接着剤を塗布された開口断面が鉄板に隣接するように音反射材および鉄板を配置して、支持部の開口断面と鉄板とを接着剤により接着させたこと以外は、上述した実施例5-1と同様にして、本実施例の音反射構造体を作製した。
【0114】
上記実施例について、音反射性能を評価して得られた挿入損失の結果を図18に示す。これらの結果からわかるように、支持部の開口断面が基板と接着されていない状態で音反射材が基板上に配置されることで、特に1500~2500Hzの周波数域における音反射性能がより一層向上する。
【符号の説明】
【0115】
1 音反射構造体、
10 音反射材、
20 基板、
100 格子状構造体(支持部)、
100A 第1の格子状構造体(第1の支持部)、
100B 第2の格子状構造体(第2の支持部)、
110、110a 筒状セル、
200 ラテックスゴムシート(弾性を有するシート)、
h 支持体(筒状セル)の延在方向の高さ、
w 筒状セルのサイズ(断面形状の正六角形における対向する平行な辺の距離)、
a 筒状セルの断面形状である正六角形の一辺の長さ、
t 筒状セルの内壁(格子壁)の厚さ。
図1
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