(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20240617BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240617BHJP
B60R 13/02 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
F16B19/00 E
F16B19/00 N
F16B5/06 D
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2021009364
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳永 睦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 準弥
(72)【発明者】
【氏名】神谷 晴久
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-052000(JP,A)
【文献】特開平08-061334(JP,A)
【文献】実開平05-083426(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 19/00
F16B 5/06
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材に被取付部材を取り付けるクリップであって、
前記被取付部材に装着される装着体と、前記装着体に一体的に形成された係止体と、を備え、
前記係止体は、
基部と、
前記基部から突出する支柱と、
前記支柱の先端に形成された頭部と、
前記支柱の側方から前記支柱の軸方向の軸回り方向に沿って弾性変形可能に形成された一対の係止脚と、を備え、
前記一対の係止脚が弾性変形していない初期状態において、
前記一対の係止脚と前記頭部との対向部位および/または前記一対の係止脚と前記基部との対向部位には、ノッチが形成され、
前記ノッチは、脆弱部を介して前記頭部および/または前記基部に接続されており、または、前記頭部および/または前記基部に当接されているクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
前記取付部材に形成されている取付孔に前記係止体を挿し込んでいくと、前記脆弱部が切断された後に前記ノッチの前記先端が前記頭部および/または前記基部に当接しながら前記一対の係止脚が弾性変形する、または、前記ノッチの前記先端が前記頭部および/または前記基部に当接されたまま前記一対の係止脚が弾性変形するクリップ。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のクリップであって、
前記ノッチは、前記先端に向けて先細り状に形成されているクリップ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のクリップであって、
前記ノッチは、前記一対の係止脚の先端に形成されているクリップ。
【請求項5】
請求項1に記載のクリップであって、
前記ノッチは、前記基部および/または前記頭部に形成され、
前記ノッチの内側には、前記基部および/または前記頭部に向けて傾斜する傾斜面が形成されているクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関し、詳しくは、取付部材に被取付部材を取り付けるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取付部材(例えば、自動車のドアパネル)に各種の被取付部材(例えば、ドアトリム等の内装部材)を取り付けるクリップが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、弾性脚および膨出部から成る4本の弾性係合脚を有する係止体を備えており、これら4本の弾性係合脚を撓ませて(縮径させて)取付部材に形成されている取付孔に係止体を係合させるクリップが開示されている。これにより、例えば、クリップに被取付部材を装着しておくと、取付部材に対して被取付部材を強固に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、4本の弾性係合脚を撓ませて(縮径させて)取付部材に形成されている取付孔に係止体を係合させるタイプのクリップである。そのため、この撓ませる挿入荷重を抑えるためにも、この係止体の軸方向において、この4本の弾性係合脚に一定の突出量(一定の長さ)が必要であった。すなわち、この係止体の軸方向において、この係止体に一定の突出量が必要であった。この問題を解決するために、係止体において、4本の弾性係合脚を一対の係止脚に替えて、この一対の係止脚を支柱の側方から支柱の軸方向の軸回り方向に沿って弾性変形可能に設けることが考案された。しかしながら、この考案では、係止体の挿抜時(挿し込みおよび引き抜き時)に一対の係止脚にバタつきが生じることがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、軸方向における係止体の突出量を抑えつつ、この係止体の挿抜時(挿し込みおよび引き抜き時)に一対の係止脚のバタつきを抑えることができるクリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると、クリップは、取付部材に被取付部材を取り付けるものであり、被取付部材に装着される装着体と、装着体に一体的に形成された係止体とを備えている。係止体は、基部と、基部から突出する支柱と、支柱の先端に形成された頭部と、支柱の側方から支柱の軸方向の軸回り方向に沿って弾性変形可能に形成された一対の係止脚とを備えている。一対の係止脚が弾性変形していない初期状態において、一対の係止脚と頭部との対向部位および/または一対の係止脚と基部との対向部位には、ノッチが形成されている。ノッチは、脆弱部を介して頭部および/または基部に接続されており、または、頭部および/または基部に当接されている。
【0007】
そのため、一対の係止脚を撓ませて取付部材の取付孔に係止体を係合させる場合でも、この係止体の軸方向において、この一対の係止脚に一定の突出量(一定の長さ)を必要としない。すなわち、軸方向における係止体の突出量を抑えることができる。このように抑えることができると、車室側の空間を広く確保できる。また、係止体の挿し込み時(挿入の初動時)に、一対の係止脚から作用する荷重を基部が受け止めることができる。したがって、取付部材の取付孔に対して一対の係止脚が逃げることを防止できる。また、係止体の引き抜き時(抜去の初動時)に、一対の係止脚から作用する荷重を頭部が受け止めることができる。したがって、一対の係止脚が浮き上がることを防止できる。したがって、係止体の挿抜時(挿し込みおよび引き抜き時)に一対の係止脚のバタつきを抑えることができる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、取付部材に形成されている取付孔に係止体を挿し込んでいくと、脆弱部が切断された後にノッチの先端が頭部および/または基部に当接しながら一対の係止脚が弾性変形する、または、ノッチの先端が頭部および/または基部に当接されたまま一対の係止脚が弾性変形する。
【0009】
そのため、ノッチの脆弱部が係止体の頭部、基部に摺動しながら、一対の係止脚を互いが近づく方向に撓ませることができる。したがって、この一対の係止脚をバタつきなく滑らかに撓ませることができる。
【0010】
また、本開示の他の特徴によると、ノッチは、先端に向けて先細り状に形成されている。
【0011】
そのため、係止体の頭部、基部に対する摺動抵抗を抑えることができる。したがって、一対の係止脚をよりバタつきなく滑らかに撓ませることができる。
【0012】
また、本開示の他の特徴によると、ノッチは、一対の係止脚の先端に形成されている。
【0013】
そのため、係止脚の基端(根本)寄りにノッチが形成されている場合と比較すると、上下にガタつくことなく、係止脚を撓ませることができる。
【0014】
また、本開示の他の特徴によると、ノッチは、基部および/または頭部に形成されている。ノッチの内側には、基部および/または頭部に向けて傾斜する傾斜面が形成されている。
【0015】
そのため、係止体の挿し込み時において、一対の係止脚が互いに近づく方向に撓んでいくとき、この一対の係止脚の下縁が基部のノッチの傾斜面に当接する。そのため、この係止体の挿し込み力を一対の係止脚の撓ませ力に変換できる。したがって、軽い操作荷重で係止体を挿し込むことができる。これとは逆に、係止体の引き抜き時において、一対の係止脚が互いに近づく方向に撓んでいくとき、この一対の係止脚の上縁が頭部のノッチの傾斜面に当接する。そのため、この係止体の引き抜き力を一対の係止脚の撓ませ力に変換できる。したがって、軽い操作荷重で係止体を引き抜くことができる。結果として、係止体(クリップ)の挿抜を繰り返しても、一対の係止脚の削れが抑制されるため、このクリップ繰り返して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るクリップの全体斜視図である。
【
図5】
図1のクリップをドアパネルに係合する手順を説明する図である。
【
図9】
図8の状態において、ドアパネルからクリップの係合を解消する手順を説明する図である。
【
図12】第2実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図13】
図12のクリップをドアパネルに係合する手順を説明する図である。
【
図17】
図16の状態において、ドアパネルからクリップの係合を解消する手順を説明する図である。
【
図20】第3実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図21】第4実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図22】第5実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図23】第6実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図24】第7実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図25】第8実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図26】第9実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図27】第10実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図28】第11実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図29】第12実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図30】第13実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図31】第14実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【
図32】第15実施形態に係るクリップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「取付部材」と「被取付部材」との例として、「自動車のドアパネル2」と「内装部材であるドアトリム3」とを説明する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を、
図1~11を用いて説明する。まず、
図1~4を参照して、第1実施形態に係るクリップ1を説明する。このクリップ1は、PP等の剛性を有する合成樹脂材による一体成形品であって、その構成は、主として、装着体10と係止体20とから構成されている。以下に、これら装着体10と係止体20とを個別に説明する。
【0019】
はじめに、装着体10から説明する(
図1~4参照)。この装着体10は、公知なものであり、上下に対向する円形状の一対の鍔部11、12(上鍔部11、下鍔部12)と、この一対の鍔部11、12より細い径の丸首形状の首部13とから構成されている。この一対の鍔部11、12の間隔は、後述するドアトリム3の取付座3aの厚みと略同一に形成されている。
【0020】
また、この首部13は、ドアトリム3の取付座3aに形成されている取付溝3bに挿し込み可能となっている。そのため、このクリップ1の首部13をドアトリム3の取付溝3bに挿し込むと、ドアトリム3にクリップ1を装着できる。
【0021】
次に、係止体20を説明する(
図1~4参照)。この係止体20は、円形状の基部21と、基部21から突出する支柱23と、支柱23の先端(
図2において、上端)に形成された円形状の頭部24と、支柱23の側方から支柱23の軸方向の軸回り方向(
図2において、上下方向)に沿って弾性変形可能に形成された一対の係止脚25とを備えている。この基部21の外周には、弾性変形可能な皿形状のスタビライザ22が形成されている。
【0022】
この係止脚25には、外方に向けて張り出す係止爪25aが形成されている。この係止脚25の先端の上縁には、脆弱部26aを介して頭部24に僅かに連結する上ノッチ26が形成されている。そのため、この一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の上縁と係止体20の頭部24との対向部位は、上ノッチ26の脆弱部26aを介して接続(保持)されている。この上ノッチ26は、先端に向けて先細り状に形成されている。
【0023】
また、この係止脚25の先端の下縁には、脆弱部27aを介して基部21に僅かに連結する下ノッチ27が形成されている。そのため、この一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の下縁と係止体20の基部21との対向部位は、下ノッチ27の脆弱部27aを介して接続(保持)されている。この下ノッチ27は、先端に向けて先細り状に形成されている。これら装着体10と係止体20とからクリップ1は構成されている。
【0024】
続いて、
図5~11を参照して、上述したクリップ1の作用として、クリップ1の挿入と、クリップ1の抜去とを個別に説明する。まず、
図5~8を参照して、クリップ1の挿入から説明する。この挿入の説明にあたって、
図5に示すように、予め、ドアトリム3にクリップ1を装着させた状態から説明する。
【0025】
はじめに、
図5に示す状態から、ドアパネル2の取付孔2aにクリップ1の係止体20を挿し込む作業を行う。すると、挿し込まれた係止体20の一対の係止脚25は、その各係止爪25aが取付孔2aの内壁2bの下縁2dに押し当てられる(
図6参照)。なお、既に説明したように、この一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の上下縁と係止体20の頭部24、基部21とは、上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aを介して接続(保持)されている。
【0026】
そのため、この挿し込み時(挿入の初動時)に、一対の係止脚25から作用する荷重を基部21が受け止めることができる。したがって、一対の係止脚25の各係止爪25aが取付孔2aの内壁2bの下縁2dに押し当てられても、まだ、一対の係止脚25は互いが近づく方向に撓むことがない。結果として、この係止体20の挿し込み時に、ドアパネル2の取付孔2aに対して一対の係止脚25が逃げることを防止できる。すなわち、この係止体20の挿し込み時に、この一対の係止脚25のバタつきを抑えることができる。
【0027】
次に、
図6に示す状態から、さらに、ドアパネル2の取付孔2aにクリップ1の係止体20を挿し込む作業を行う。すると、この一対の係止脚25は、互いが近づく方向に撓んでいき、この一対の係止脚25の上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aが切断される(
図7参照)。このとき、この切断された上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aは、係止体20の頭部24、基部21に当接している。
【0028】
そのため、この上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aが係止体20の頭部24、基部21に摺動しながら、この一対の係止脚25を互いが近づく方向に撓ませることができる。したがって、この一対の係止脚25をバタつきなく滑らかに撓ませることができる。やがて、この一対の係止脚25の各係止爪25aは、ドアパネル2の取付孔2aを通過する。すると、この一対の係止脚25は、撓みの復元力によって撓み前の状態に戻される。
【0029】
これにより、この戻された一対の係止脚25の各係止爪25aがドアパネル2の取付孔2aの内壁2bの上縁2cに引っ掛かると共に、ドアパネル2にスタビライザ22が押し当てられる。そのため、この一対の係止脚25とスタビライザ22との間でドアパネル2を挟み込んで保持できる。すなわち、ドアパネル2にクリップ1を係合できる(
図8参照)。
【0030】
したがって、ドアパネル2にクリップ1を介してドアトリム3を取り付けることができる。なお、既に説明したように、スタビライザ22は弾性変形可能な皿形状に形成されている。そのため、このドアパネル2にクリップ1を係合させた状態において、このスタビライザ22の弾性変形によりドアパネル2の板厚の違いも吸収できる。
【0031】
次に、
図8~11を参照して、クリップ1の抜去を説明する。はじめに、
図8に示す状態から、ドアパネル2からクリップ1の係止体20を引き抜く作業を行う。すると、引き抜かれる係止体20の一対の係止脚25は、その各係止爪25aが取付孔2aの内壁2bの上縁2cに押し当てられ、互いが近づく方向に撓んでいく(
図9参照)。このとき、係止体20の上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aは、係止体20の頭部24、基部21に当接している。
【0032】
そのため、この引き抜き時(抜去の初動時)に、一対の係止脚25から作用する荷重を頭部24が受け止めることができる。したがって、この一対の係止脚25が浮き上がることを防止できる。すなわち、この係止体20の引き抜き時に、この一対の係止脚25のバタつきを抑えることができる。また、この上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aが係止体20の頭部24、基部21に摺動しながら、この一対の係止脚25を互いが近づく方向に撓ませることができる。したがって、この一対の係止脚25をバタつきなく滑らかに撓ませることができる。
【0033】
次に、
図9に示す状態から、さらに、ドアパネル2からクリップ1の係止体20を引く抜く作業を行う。すると、この一対の係止脚25は、その各係止爪25aが取付孔2aの内壁2bに押し当てられ、さらに、互いが近づく方向に撓んでいく(
図10参照)。やがて、この一対の係止脚25の各係止爪25aは、ドアパネル2の取付孔2aを通過する。そのため、ドアパネル2に対するクリップ1の係合を解消できる(
図11参照)。したがって、ドアパネル2からドアトリム3を取り外すことができる。
【0034】
第1実施形態に係るクリップ1は、上述したように構成されている。この構成によれば、クリップ1の係止体20は、円形状の基部21と、基部21から突出する支柱23と、支柱23の先端に形成された円形状の頭部24と、支柱23の側方から支柱23の軸方向の軸回り方向に沿って弾性変形可能に形成された一対の係止脚25とを備えている。そのため、この一対の係止脚25を撓ませてドアパネル2の取付孔2aに係止体20を係合させる場合でも、この係止体20の軸方向において、この一対の係止脚25に一定の突出量(一定の長さ)を必要としない。すなわち、軸方向における係止体20の突出量を抑えることができる。このように抑えることができると、車室側の空間を広く確保できる。
【0035】
また、この一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の上縁と係止体20の頭部24との対向部位は、上ノッチ26の脆弱部26aを介して接続(保持)されている。また、この一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の下縁と係止体20の基部21との対向部位は、下ノッチ27の脆弱部27aを介して接続(保持)されている。そのため、係止体20の挿し込み時(挿入の初動時)に、一対の係止脚25から作用する荷重を基部21が受け止めることができる。したがって、ドアパネル2の取付孔2aに対して一対の係止脚25が逃げることを防止できる。すなわち、この係止体20の挿し込み時に、この一対の係止脚25がバタつくことを防止できる。また、係止体20の引き抜き時(抜去の初動時)に、一対の係止脚25から作用する荷重を頭部24が受け止めることができる。したがって、この一対の係止脚25が浮き上がることを防止できる。すなわち、この係止体20の引き抜き時に、この一対の係止脚25がバタつくことを防止できる。結果として、係止体20の挿抜時(挿し込みおよび引き抜き時)に一対の係止脚25のバタつきを抑えることができる。
【0036】
また、この構成によれば、係止脚25の先端の上縁には、脆弱部26aを介して頭部24に僅かに連結する上ノッチ26が形成されている。また、係止脚25の先端の下縁には、脆弱部27aを介して基部21に僅かに連結する下ノッチ27が形成されている。係止体20の挿し込みによって切断された上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aは、この係止体20の頭部24、基部21に当接している。そのため、この上下のノッチ26、27の各脆弱部26a、27aが係止体20の頭部24、基部21に摺動しながら、この一対の係止脚25を互いが近づく方向に撓ませることができる。したがって、この一対の係止脚25をバタつきなく滑らかに撓ませることができる。
【0037】
また、この構成によれば、上ノッチ26は、脆弱部26aに向けて先細り状に形成されている。また、下ノッチ27は、脆弱部27aに向けて先細り状に形成されている。そのため、係止体20の頭部24、基部21に対する摺動抵抗を抑えることができる。したがって、一対の係止脚25をよりバタつきなく滑らかに撓ませることができる。
【0038】
また、この構成によれば、係止脚25の先端の上縁には、脆弱部26aを介して頭部24に僅かに連結する上ノッチ26が形成されている。また、係止脚25の先端の下縁には、脆弱部27aを介して基部21に僅かに連結する下ノッチ27が形成されている。そのため、係止脚25の基端(根本)寄りに上下のノッチ26が形成されている場合と比較すると、上下にガタつくことなく、係止脚25を撓ませることができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、
図12~19を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、第1実施形態で説明した部材と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する。このことは、後述する全ての実施形態において同様である。
【0040】
第2実施形態のクリップ101も第1実施形態のクリップ1と同様に、PP等の剛性を有する合成樹脂材による一体成形品であって、その構成は、主として、装着体10と係止体20とから構成されている(
図12参照)。なお、このクリップ101では、クリップ1と異なり、上ノッチ26は、頭部24に形成されている。これと同様に、下ノッチ27は、基部21に形成されている。上ノッチ26の内側には、頭部24に向けて傾斜する傾斜面26bが形成されている。また、下ノッチ27の内側には、基部21に向けて傾斜する傾斜面27bが形成されている。
【0041】
このクリップ101においても、クリップ1と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、このクリップ101においても、クリップ1と同様に、ドアパネル2にクリップ1を係合できる(
図13~16参照)。したがって、ドアパネル2にクリップ101を介してドアトリム3を取り付けることができる。また、このクリップ101においても、クリップ1と同様に、ドアパネル2に対するクリップ1の係合を解消できる(
図16~19参照)。したがって、ドアパネル2からドアトリム3を取り外すことができる。
【0042】
なお、このクリップ101では、係止体20の挿し込み時において、一対の係止脚25が互いに近づく方向に撓んでいくとき、この一対の係止脚25の下縁が基部21の下ノッチ27の傾斜面27bに当接する(
図14参照)。そのため、この係止体20の挿し込み力を一対の係止脚25の撓ませ力に変換できる。したがって、軽い操作荷重で係止体20を挿し込むことができる。
【0043】
これとは逆に、このクリップ101では、係止体20の引き抜き時において、一対の係止脚25が互いに近づく方向に撓んでいくとき、この一対の係止脚25の上縁が頭部24の上ノッチ26の傾斜面26bに当接する(
図17参照)。そのため、この係止体20の引き抜き力を一対の係止脚25の撓ませ力に変換できる。したがって、軽い操作荷重で係止体20を引き抜くことができる。結果として、係止体20(クリップ101)の挿抜を繰り返しても、一対の係止脚25の各係止爪25aの削れが抑制されるため、このクリップ101繰り返して使用できる。
【0044】
また、第3実施形態~第15実施形態のクリップ201、301、401、501、601、701、801、901、1001、1101、1201、1301、1401を
図20~32として開示する。これら第3実施形態~第15実施形態のクリップ201、301、401、501、601、701、801、901、1001、1101、1201、1301、1401においても、第1実施形態~第2実施形態のクリップ1、101と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【0046】
各実施形態では、「取付部材」と「被取付部材」との例として、「自動車のドアパネル2」と「内装部材であるドアトリム3」とを説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「取付部材」と「被取付部材」との例として、「各種のパネル材」と「各種の内装部材」であっても構わない。
【0047】
第1実施形態では、一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の上縁と係止体20の頭部24との対向部位は、上ノッチ26の脆弱部26aを介して接続(保持)されている形態を説明した。また、一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の下縁と係止体20の基部21との対向部位は、下ノッチ27の脆弱部27aを介して接続(保持)されている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の上縁と係止体20の頭部24との対向部位は、上ノッチ26を介して当接(接触状態であるが、接続されていない状態)されている形態でも構わない。また、一対の係止脚25が撓んでいない初期状態において、この一対の係止脚25の先端の下縁と係止体20の基部21との対向部位は、下ノッチ27を介して当接(接触状態であるが、接続されていない状態)されている形態でも構わない。このことは、全ての実施形態においても同様である。
【符号の説明】
【0048】
1 クリップ(第1実施形態)
2 ドアパネル(取付部材)
3 ドアトリム(被取付部材)
10 装着体
20 係止体
21 基部
23 支柱
24 頭部
25 係止脚
26 上ノッチ(ノッチ)
26a 脆弱部
27 下ノッチ(ノッチ)
27a 脆弱部