(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】メディア搬送装置、プリンタ、およびカッティング装置
(51)【国際特許分類】
B41J 13/02 20060101AFI20240617BHJP
B41J 11/66 20060101ALI20240617BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B41J13/02
B41J11/66
B41J2/01 301
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2021015072
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072990(JP,A)
【文献】特開2012-251822(JP,A)
【文献】特開2020-111427(JP,A)
【文献】特開2009-128575(JP,A)
【文献】特開2018-111262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-13/32
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアを支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記メディアを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前面パネルと、を備え、
前記搬送装置は、
前記支持台に設けられるとともに前記搬送方向に直交する直交方向に延び、前記搬送方向に回転する駆動ローラと、
前記支持台と対向するように設けられ、前記直交方向に延びるレールと、
前記駆動ローラに接触または離反させることが可能なピンチローラを備え、前記レールに沿って前記直交方向に移動可能なように前記レールに係合したピンチローラユニットと、を備え、
前記レールは、それぞれ前記前面パネルに固定され、前記直交方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成され、
前記複数のショートレールは、それぞれ、
前記前面パネルに当て付けられた平板状の平面部と、
前記平面部の下端に設けられるとともに前記直交方向に延び、前記平面部よりも前記直交方向の外方に突出した被係合部と、を備えて
おり、
前記ピンチローラユニットは、複数の前記被係合部に係合している、
メディア搬送装置。
【請求項2】
前記複数のショートレールは、
1つまたは複数の第1ショートレールと、
前記第1ショートレールとは前記直交方向の長さが異なる1つまたは複数の第2ショートレールと、を含む、
請求項1に記載のメディア搬送装置。
【請求項3】
前記支持台と対向するように設けられたプリントヘッドと、
請求項1または2に記載のメディア搬送装置と、を備えた、
プリンタ。
【請求項4】
前記支持台と対向するように設けられたカッティングヘッドと、
請求項1または2に記載のメディア搬送装置と、を備えた、
カッティング装置。
【請求項5】
メディアを支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記メディアを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記支持台と対向するように設けられたプリントヘッドと、
前記支持台に対向する面を有するとともに、前記搬送方向に直交する直交方向に延び、前記プリントヘッドが係合したガイドレールと、を備え、
前記搬送装置は、
前記支持台に設けられるとともに前記直交方向に延び、前記搬送方向に回転する駆動ローラと、
前記支持台と対向するように設けられ、前記直交方向に延びるレールと、
前記駆動ローラに接触または離反させることが可能なピンチローラを備え、前記レールに沿って前記直交方向に移動可能なように前記レールに係合したピンチローラユニットと、を備え、
前記レールは、前記直交方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成されており、
前記複数のショートレールは、前記ガイドレールの前記支持台に対向する面に当て付けられた位置決め面をそれぞれ有している、
プリンタ。
【請求項6】
前記複数のショートレールは、
1つまたは複数の第1ショートレールと、
前記第1ショートレールとは前記直交方向の長さが異なる1つまたは複数の第2ショートレールと、を含む、
請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
メディアを支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記メディアを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記支持台と対向するように設けられたカッティングヘッドと、
前記支持台に対向する面を有するとともに、前記搬送方向に直交する直交方向に延び、前記カッティングヘッドが係合したガイドレールと、を備え、
前記搬送装置は、
前記支持台に設けられるとともに前記直交方向に延び、前記搬送方向に回転する駆動ローラと、
前記支持台と対向するように設けられ、前記直交方向に延びるレールと、
前記駆動ローラに接触または離反させることが可能なピンチローラを備え、前記レールに沿って前記直交方向に移動可能なように前記レールに係合したピンチローラユニットと、を備え、
前記レールは、前記直交方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成されており、
前記複数のショートレールは、前記ガイドレールの前記支持台に対向する面に当て付けられた位置決め面をそれぞれ有している、
カッティング装置。
【請求項8】
前記複数のショートレールは、
1つまたは複数の第1ショートレールと、
前記第1ショートレールとは前記直交方向の長さが異なる1つまたは複数の第2ショートレールと、を含む、
請求項7に記載のカッティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア搬送装置と、それを備えたプリンタおよびカッティング装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メディアを搬送する搬送装置を備えたプリンタやカッティング装置が知られている。メディアは、印刷やカッティングの対象物である。メディア搬送装置を備えたプリンタとしては、プリントヘッドとカッティングヘッドとをともに備えたカッティングヘッド付きプリンタも知られている。例えば特許文献1には、プラテンに埋設された駆動ローラと、駆動ローラと向かい合うように配置されメディアの両端部を押さえる一対のサイドピンチローラユニットと、駆動ローラと向かい合うように配置されメディアの中央部を押さえるセンターピンチローラユニットとを有するメディア搬送装置を備えたカッティングヘッド付きプリンタが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたカッティングヘッド付きプリンタでは、一対のサイドピンチローラユニットおよび複数のセンターピンチローラユニットは、メディアの幅方向の位置を変えることができるように、メディアの幅方向に関してプラテンの外側まで延びるシャフトに対して摺動可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなプラテンの外側まで延びる長尺のシャフトは、ピンチローラユニットが滑らかに摺動するために、できるだけ真っ直ぐに形成されることが好ましい。しかし、このようないわゆる長物の部材は、高い剛性を有するように構成しなければ真っ直ぐに形成することが難しい。さらに、部材の加工精度も高精度が要求される。そのため、ピンチローラユニットを摺動可能に係合させる部材のコストは高くなりやすかった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メディアの幅方向に関するピンチローラユニットの位置を変更可能であって、より低コストなメディア搬送装置を提供することである。また、そのようなメディア搬送装置を備えたプリンタおよびカッティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するメディア搬送装置は、メディアを支持する支持台と、前記支持台に支持された前記メディアを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、を備えている。前記搬送装置は、駆動ローラと、レールと、ピンチローラユニットと、を備えている。前記駆動ローラは、前記支持台に設けられるとともに前記搬送方向に直交する直交方向に延び、前記搬送方向に回転する。前記レールは、前記支持台と対向するように設けられ、前記直交方向に延びている。前記ピンチローラユニットは、前記駆動ローラに接触または離反させることが可能なピンチローラを備え、前記レールに沿って前記直交方向に移動可能なように前記レールに係合している。前記レールは、前記直交方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成されている。
【0008】
上記メディア搬送装置によれば、メディアの搬送方向に直交する直交方向に摺動可能なようにピンチローラユニットが係合したレールは、直交方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成されている。このようにレールが複数のショートレールに分割されていることにより、個々のショートレールには、高い剛性や高度の加工精度が必要ではなくなる。そのため、レールのコストを抑えることができ、その結果、メディア搬送装置のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るカッティングヘッド付きプリンタの斜視図である。
【
図2】第1キャリッジおよび第2キャリッジが連結された状態のプリントヘッドおよびカッティングヘッドの正面図である。
【
図3】第1キャリッジおよび第2キャリッジが分離された状態のプリントヘッドおよびカッティングヘッドの正面図である。
【
図4】搬送装置の要部の前方側からの斜視図である。
【
図7】第1ショートレールおよび第2ショートレールの斜視図である。
【
図8】ピンチローラユニットの前方側からの斜視図である。
【
図9】ピンチローラユニットの後方側からの斜視図である。
【
図10】ピンチローラユニットの一部破断側面図である。
【
図11】副走査方向に縦切断したピンチローラユニットの斜視図である。
【
図13】操作部材がローラホルダに当接していないときのピンチローラユニットの背面図である。
【
図14】操作部材がローラホルダに当接しているときのピンチローラユニットの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[カッティングヘッド付きインクジェットプリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10)の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、シート状のメディア5に対して印刷およびカッティングを行う装置である。メディア5は、例えば、台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材であってもよく、記録紙や樹脂製のシート等であってもよい。メディア5は印刷およびカッティングのうちの少なくとも一方が可能であって、後述する搬送装置20によって搬送可能なメディアであれば足り、特に限定されない。
【0011】
プリンタ10は、メディア5を支持するプラテン11と、プラテン11に支持されたメディア5を所定の搬送方向に搬送する搬送装置20と、メディア5に対し印刷を行うプリントヘッド70と、メディア5を切断するカッティングヘッド80と、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80を移動させるヘッド移動装置90と、を備えている。
【0012】
詳細は後述するが、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80は、図示Y方向に移動可能に構成されている。また、メディア5は、図示X方向に搬送される。以下では、Y方向を主走査方向ともいい、X方向を副走査方向ともいう。主走査方向Yはメディア5の幅方向に対応し、副走査方向Xはメディア5の長手方向に対応している。主走査方向Yは、ここでは、左右方向である。副走査方向Xは、ここでは、前後方向である。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは互いに直交している。メディア5は、プリンタ10の背面側に設けられた図示しない供給ロールから供給され、搬送装置20によって前方に向かって搬送された後、プリンタ10の正面側に設けられた図示しない巻取ロールによって巻き取られる。図示X1方向は、メディア5の搬送方向である副走査方向Xの下流側である。X1方向は、ここでは、前方である。図示X2方向は、メディア5の搬送方向である副走査方向Xの上流側である。X2方向は、ここでは、後方である。ただし、これらの方向は説明の便宜上のものであり、プリンタ10の設置態様を限定するものではない。図面の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ、プリンタ10の前、後、左、右、上、下を表している。
【0013】
図1に示すように、搬送装置20は、複数のグリットローラ21と、図示しないフィードモータと、複数のピンチローラユニット40と、を備えている。複数のグリットローラ21は、それぞれプラテン11に設けられ、フィードモータに駆動されることによって副走査方向Xに回転する。複数のピンチローラユニット40は、プラテン11の上方に設けられている。各ピンチローラユニット40は、グリットローラ21に接触または離反させることが可能なピンチローラ41を備えている。ピンチローラ41は、メディア5を上方から押さえる部材である。ピンチローラ41が降ろされ、メディア5がピンチローラ41とグリットローラ21との間に挟み込まれた状態でグリットローラ21が回転すると、メディア5は副走査方向Xの下流X1側または上流X2側に搬送される。
【0014】
本実施形態では、搬送装置20は、全てのピンチローラ41を一斉に上昇または下降させる全体昇降機構60を備えている。また、本実施形態では、各ピンチローラユニット40は、全体昇降機構60とは別に、自身のピンチローラ41だけを個別に上昇下降させる操作部材45(
図9参照)を備えている。搬送装置20の詳細な構成については後述する。なお、搬送装置20は、もっと多数のグリットローラ21およびピンチローラユニット40を備えているが、
図1では図示を省略している。
【0015】
ヘッド移動装置90は、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80を主走査方向Yに移動させるように構成されている。
図2および
図3は、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80の正面図である。そのうち、
図2は、プリントヘッド70が搭載された第1キャリッジ95と、カッティングヘッド80が搭載された第2キャリッジ96とが連結された状態を示している。
図3は、第1キャリッジ95と第2キャリッジ96とが分離された状態を示している。ヘッド移動装置90は、第1キャリッジ95と第2キャリッジ96とが連結された状態では、両者を一体で移動させる。また、ヘッド移動装置90は、第1キャリッジ95と第2キャリッジ96とが分離された状態では、第2キャリッジ96だけを単独で移動させる。
【0016】
図2および
図3に示すように、ヘッド移動装置90は、ガイドレール91と、ベルト92と、図示しないスキャンモータとを備えている。ガイドレール91は、プラテン11の上方に設けられている。ガイドレール91は主走査方向Yに延びている。ガイドレール91には、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80が、それぞれ第1キャリッジ95および第2キャリッジ96を介して摺動可能に係合している。第2キャリッジ96の背面上部には、主走査方向Yに延びるベルト92が固定されている。ベルト92は、スキャンモータに接続されている。スキャンモータが回転すると、ベルト92が主走査方向Yに走行する。これにより、第2キャリッジ96は主走査方向Yに移動する。
【0017】
第1キャリッジ95と第2キャリッジ96とは、連結部材95a、96aによって連結され、または分離される。
図2および
図3に示すように、連結部材95a、96aは、第1キャリッジ95に設けられた第1連結部材95aと、第2キャリッジ96に設けられた第2連結部材96aとを有している。第1連結部材95aは、第1キャリッジ95の左側部分に設けられている。第2連結部材96aは、第2キャリッジ96の右側部分に設けられている。本実施形態では、連結部材95a、96aは、磁力を利用して第1キャリッジ95と第2キャリッジ96とを連結する。第1連結部材95aと第2連結部材96aのうちの一方は磁石を備え、他方は磁石に吸着する磁性体を備えている。ただし、連結部材95a、96aは磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。第1キャリッジ95と第2キャリッジ96とは、第1連結部材95aと第2連結部材96aとが接触することにより連結される。
【0018】
第1キャリッジ95の右側には、L字状に形成された受け金具95bが設けられている。また、ガイドレール91の右端付近には、第1キャリッジ95を固定するためのロック装置97が設けられている。ロック装置97は、受け金具95bに引っ掛けられるフック98と、フック98をロック位置(
図3参照)と非ロック位置(
図2参照)との間で移動させるロック用ソレノイド99とを備えている。
【0019】
図2に示すように、プリントヘッド70による印刷を行う際には、フック98が非ロック位置に設定される。第2キャリッジ96が右方に移動し、第1連結部材95aと第2連結部材96aとが接触すると、第2キャリッジ96と第1キャリッジ95とが連結される。その結果、第1キャリッジ95は、第2キャリッジ96と共に主走査方向Yに移動可能となる。ヘッド移動装置90は、第1キャリッジ95と第2キャリッジ96が連結された状態において、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80を主走査方向Yに移動させる。
【0020】
カッティングヘッド80によるカッティングの際には、
図3に示すように、第1キャリッジ95が可動範囲右端の待機位置に位置付けられ、ロック装置97のフック98がロック位置に設定される。これにより、第1キャリッジ95の移動が阻止される。この状態で第2キャリッジ96が左方へ移動すると、第1連結部材95aと第2連結部材96aとが離反し、第2キャリッジ96と第1キャリッジ95との連結が解除される。その結果、第1キャリッジ95が待機位置に待機した状態で、第2キャリッジ96が主走査方向Yに移動可能となる。
【0021】
プリントヘッド70は、第1キャリッジ95に搭載されている。プリントヘッド70は、プラテン11に対向するように設けられている。プリントヘッド70は、グリットローラ21およびピンチローラユニット40よりも副走査方向Xの下流X1側に設けられている。プリントヘッド70は、インクを吐出し、メディア5に対して印刷を行う。プリントヘッド70は、複数のインクヘッド71を備えている。複数のインクヘッド71の下面には、それぞれ、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が形成されている。インクヘッド71の数量は特に限定されず、インクヘッド71が吐出するインクの種類や色も何ら限定されない。
【0022】
カッティングヘッド80は、第2キャリッジ96に搭載されている。カッティングヘッド80も、グリットローラ21およびピンチローラユニット40よりも副走査方向Xの下流X1側に設けられ、プラテン11と対向している。カッティングヘッド80は、カッター81と、ソレノイド82とを備えている。ソレノイド82がON/OFFされると、カッター81は上下方向Zに移動してメディア5に接触し、あるいはメディア5から離反する。カッター81は、メディア5に接触することにより、メディア5を切断する。
【0023】
[搬送装置の構成]
以下では、搬送装置20の構成について詳細に説明する。前述したように、搬送装置20は、それぞれ副走査方向Xに回転する複数のグリットローラ21と、メディア5を上方から押さえる複数のピンチローラユニット40と、を備えている。
図4は、搬送装置20の要部の前方側からの斜視図である。
図5は、プリンタ10の正面図である。
図4に示すように、複数のグリットローラ21は、主走査方向Yに並んで設けられている。各グリットローラ21は、主走査方向Yに延びている。
【0024】
図4に示すように、複数のグリットローラ21は、それぞれ、一部がプラテン11上に露出するようにプラテン11に埋設されている。前述したように、各グリットローラ21は、図示しないフィードモータに接続されており、フィードモータの駆動により副走査方向Xに回転する。各グリットローラ21は、プラテン11に支持されたメディア5を副走査方向Xの下流X1方向と、X1方向の逆方向である上流X2方向とに移動させるように駆動する。
図4に示すように、右端のグリットローラ21の主走査方向Yの長さは、他のグリットローラ21よりも長く設定されている。これは、メディア5の右端の位置がメディア5の幅によって異なるためである。なお、ここではグリットローラ21の数量は複数であるが、グリットローラ21は、主走査方向Yに長い1つのグリットローラであってもよい。
【0025】
複数のピンチローラユニット40は、グリットローラ21と対向するように設けられている。ここでは、複数のピンチローラユニット40は、それぞれ、1つのグリットローラ21と向かい合っている。ただし、例えば1つのグリットローラ21の主走査方向Yの長さが長い場合などには、1つのグリットローラ21に対して複数のピンチローラユニット40が対向するように配置されてもよい。各ピンチローラユニット40は、グリットローラ21の主走査方向Yの位置に合わせて主走査方向Yの位置を変更することが可能なように構成されている。右端のピンチローラユニット40以外のピンチローラユニット40は、プリンタ10の製造時において主走査方向Yの位置を調整され、それぞれ1つのグリットローラ21と向かい合う位置に位置付けられる。これにより、これらのピンチローラユニット40は、
図5に示すように、それぞれ主走査方向Yの所定の位置に配置される。右端のピンチローラユニット40の主走査方向Yの位置は、メディア5の幅に合わせてユーザーが変更する。
【0026】
本実施形態では、主走査方向Yの両端のピンチローラユニット40は、他のピンチローラユニット40よりも高荷重でメディア5を押すように構成されている。全てのピンチローラユニット40の押圧力が同等であれば、幅の狭いメディア5の場合、右端の、または右端からいくつかのピンチローラユニット40は単にメディア5を押さえない。この場合、右端のピンチローラユニット40を主走査方向Yに移動させる必要は特にない。しかし、本実施形態に係るプリンタ10では、両端のピンチローラユニット40はメディア5の両端を高荷重で押さえることが想定されている。そのため、メディア5の幅に合わせて右端のピンチローラユニット40を主走査方向Yに移動させる必要が特に生じる。
図5に示すように、プリンタ10の正面側には、メディア5の幅によるピンチローラユニット40の位置の目安を示す目印22が表示されている。
【0027】
図4に示すように、搬送装置20は、複数のピンチローラユニット40が係合するピンチレール30を備えている。複数のピンチローラユニット40は、ピンチレール30に沿って主走査方向Yに摺動可能である。
図4に示すように、ピンチレール30は、プラテン11の上方にプラテン11に対向するように設けられ、主走査方向Yに延びている。
【0028】
図6は、搬送装置20の要部の縦断面図である。
図5および
図6に示すように、ピンチレール30は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる平板状の部材である。ただし、
図5に示すように、本実施形態では、ピンチレール30は、主走査方向Yに並んで配置された複数の第1ショートレール30Aと、複数の第2ショートレール30Bとによって構成されている。ピンチレール30は、複数の第1ショートレール30Aと複数の第2ショートレール30Bとの集合体である。
図5に示すように、第1ショートレール30Aと第2ショートレール30Bとは、ここでは、主走査方向Yに交互に配置されている。第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの詳細については後述するが、
図6に示すように、複数の第1ショートレール30Aおよび複数の第2ショートレール30Bは、それぞれ、プリンタ10の前面パネル12に当て付けられ、ボルトB1により前面パネル12に締結されている。複数の第1ショートレール30Aおよび複数の第2ショートレール30Bは、前面パネル12に対して別々に取り付けられている。ピンチレール30の副走査方向Xの位置は、前面パネル12に当て付けられることにより決まっている。
図6に示すように、前面パネル12は、ヘッド移動装置90のガイドレール91が固定される部材であり、強固かつ精密に作られている。
【0029】
図6に示すように、前面パネル12には、ガイドレール91が固定されている。ガイドレール91は、ピンチレール30の上方に設けられている。ピンチレール30を構成する複数の第1ショートレール30Aおよび複数の第2ショートレール30Bは、ガイドレール91のプラテン11に対向する面、ここでは下面91aに当て付けられている。詳細は後述するが、以下では、このガイドレール91の下面91aに当て付けられる第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの面を、それぞれ、位置決め面34A1および34B1とも呼ぶ。ピンチレール30の上下方向Zの位置は、位置決め面34A1および34B1がガイドレール91の下面91aに当て付けられることにより決まっている。ガイドレール91は、第1キャリッジ95および第2キャリッジ96を滑らかに摺動させるために、高い剛性と高い寸法精度を有している。さらに、ガイドレール91は、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80とプラテン11との間の距離が所定の距離となるように、プラテン11に対して高精度に位置決めされている。そのため、ピンチレール30の上下方向Zの位置決めにガイドレール91が利用されている。
【0030】
図6に示すように、ピンチレール30は、ピンチローラユニット40が係合する被係合部32を有している。被係合部32は、ピンチレール30の下端に設けられている。複数の第1ショートレール30Aと複数の第2ショートレール30Bとの集合体としてのピンチレール30の被係合部32は、複数の第1ショートレール30Aの各被係合部32Aと、複数の第2ショートレール30Bの各被係合部32Bとが主走査方向Yに並んで配置されることによって構成されている。ピンチローラユニット40は、被係合部32に沿って主走査方向Yにスライドすることにより、主走査方向Yに移動する。
【0031】
[第1ショートレールおよび第2ショートレールの構成]
図7は、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの斜視図である。以下の第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの説明では、方向について言及する場合、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bをプリンタ10に取り付けた場合の方向を適宜使用する。
図7に示すように、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bは、いずれも、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる平板状に構成されている。第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bは、ここでは、樹脂成形によって形成されている。ただし、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの材料は特に限定されない。第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bは、例えば、アルミダイキャストによって形成されていてもよい。
【0032】
第1ショートレール30Aは、平板状の平面部31Aと、平面部31Aの下端に設けられた被係合部32Aと、それぞれ平面部31Aを副走査方向Xに貫通する複数の貫通孔33Aと、平面部31Aの上端に設けられた複数の突出部34Aと、を備えている。平板状の平面部31Aは、前面31A1と背面31A2とを有している。第1ショートレール30Aがプリンタ10に取り付けられるときには、背面31A2がプリンタ10の前面パネル12に当て付けられる。被係合部32Aは、ピンチローラユニット40が係合される部位である。被係合部32Aは、主走査方向Yに延びる軸線を有する円柱状に構成されている。複数の貫通孔33Aは、第1ショートレール30Aが前面パネル12に固定される際にボルトB1が挿通される孔である。複数の貫通孔33Aは、それぞれ、平面部31Aの前面31A1と背面31A2とを貫通している。複数の貫通孔33Aは、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0033】
複数の突出部34Aは、主走査方向Yに並ぶように平面部31Aの上端に設けられ、それぞれ平面部31Aの上端から上方に向かって突出している。複数の突出部34Aの上面は、第1ショートレール30Aの不連続な上面を形成している。複数の突出部34Aの上面は、平坦かつ被係合部32Aに略平行に構成されている。複数の突出部34Aの上面は、ここでは、ガイドレール91の下面91aに当て付けられる複数の位置決め面34A1である。第2ショートレール30Bも、第1ショートレール30Aと同様の平面部31B(さらに詳しくは、前面31B1および背面31B2)、被係合部32B、複数の貫通孔33B、および複数の突出部34Bを備えている。
【0034】
図7に示すように、第2ショートレール30Bは、第1ショートレール30Aとは主走査方向Yの長さが異なっている。ここでは、第2ショートレール30Bの主走査方向Yの長さは、第1ショートレール30Aの主走査方向Yの長さよりも短く構成されている。第1ショートレール30Aの上下方向Zの高さと第2ショートレール30Bの上下方向Zの高さとは同じである。さらに詳しくは、第1ショートレール30Aと第2ショートレール30Bとは、被係合部の高さ、平面部の高さ、突出部の高さ、および貫通孔の上下方向Zの位置が同じである。
【0035】
図7に示すように、第1ショートレール30Aの被係合部32Aの直径は、平面部31Aの副走査方向Xの厚さよりも大きく形成されている。被係合部32Aは、平面部31Aよりも前後方向に張り出している。また、被係合部32Aは、平面部31Aよりも主走査方向Yの外方、ここでは左方および右方に突出している。第2ショートレール30Bの被係合部32Bも同様に構成されている。第2ショートレール30Bの平面部31Bの副走査方向Xの厚さは、第1ショートレール30Aの平面部31Aの副走査方向Xの厚さと同じである。第2ショートレール30Bの被係合部32Bの直径は、第1ショートレール30Aの被係合部32Aの直径と同じである。
【0036】
第1ショートレール30Aの複数の貫通孔33Aは、等間隔に配置されている。第1ショートレール30Aの複数の貫通孔33Aのピッチは、前面パネル12においてボルトB1が締結されるネジ孔12a(
図6参照)のピッチと同じである。図示は省略するが、前面パネル12には、第1ショートレール30Aの複数の貫通孔33Aと同じピッチでネジ孔12aが設けられている。第2ショートレール30Bの複数の貫通孔33Bのピッチは、第1ショートレール30Aの複数の貫通孔33Aのピッチと同じである。かかる構成により、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bを前面パネル12に取り付けることができる。なお、第2ショートレール30Bは主走査方向Yの長さが第1ショートレール30Aよりも短いため、第2ショートレール30Bの貫通孔33Bの数は、第1ショートレール30Aの貫通孔33Aの数よりも少ない。
【0037】
また、第1ショートレール30Aの主走査方向Yの端の貫通孔33A(例えば右端の貫通孔33A)と被係合部32Aの同方向の端部(例えば被係合部32Aの右端)との間の距離は、ネジ孔12aのピッチの半分である。第2ショートレール30Bにおいても、主走査方向Yの端の貫通孔33B(例えば左端の貫通孔33B)と被係合部32Bの同方向の端部(例えば被係合部32Bの左端)との間の距離は、ネジ孔12aのピッチの半分である。かかる構成により、第1ショートレール30Aと第2ショートレール30Bとを主走査方向Yに切れ目なく配置することができる。
【0038】
図7に示すように、第1ショートレール30Aの複数の貫通孔33Aの周囲には、ボルトB1の頭部を沈ませるためのザグリ35Aが形成されている。ザグリ35Aは、平面部31Aの前面31A1側に設けられている。同様に、第2ショートレール30Bも、平面部31Bの前面31B1側において各貫通孔33Aの周囲に形成されたザグリ35Bを有している。第1ショートレール30Aの貫通孔33Aおよびザグリ35Aと、第2ショートレール30Bの貫通孔33Bおよびザグリ35Bとは同じものであり、ボルトB1に対応している。
【0039】
部品としての第1ショートレール30Aは、多くの場合、平面部31Aの法線方向のいずれか(
図7で言うと、前方または後方)に向かって凸するように反っている。本実施形態では、第1ショートレール30Aの凸した側の面が前面31A1となるように、ザグリ35Aの向きが揃えられている。ザグリ35Aは、樹脂の成形によって形作られてもよく、その場合、成形時に反りの向きが制御される。または、ザグリ35Aは、樹脂成形後に切削加工によって形作られてもよく、その場合、成形時の第1ショートレール30Aの反りの向きを見て、ザグリ35Aを加工する面が決定される。第2ショートレール30Bについても同様である。
【0040】
第1ショートレール30Aにおいて、複数の突出部34Aは、それぞれ、貫通孔33Aの上方に設けられている。そのため、位置決め面34A1と貫通孔33Aとは、上下方向に並んでいる。また、位置決め面34A1の数と貫通孔33Aの数とは同数である。第2ショートレール30Bも同様に構成されている。そのため、第2ショートレール30Bが有する位置決め面34B1の数は、第1ショートレール30Aが有する位置決め面34A1の数よりも少ない。
【0041】
前述したように、複数の第1ショートレール30Aおよび複数の第2ショートレール30Bは、それぞれ別個に前面パネル12にネジ締結される。ここでは、複数の第1ショートレール30Aと複数の第2ショートレール30Bとは、主走査方向Yに交互に配置される。ただし、複数の第1ショートレール30Aと複数の第2ショートレール30Bとは、主走査方向Yに交互に配置されなくてもよい。第1ショートレール30Aの前面パネル12への固定では、例えば、位置決め面34A1をガイドレール91の下面91aに押し当てながら、貫通孔33Aに挿通されたボルトB1を締める。これにより、第1ショートレール30Aの副走査方向Xおよび上下方向Zの位置が決定する。第2ショートレール30Bについても同様である。
【0042】
固定された1つのショートレールに隣接する他のショートレールは、当該先に固定されたショートレールと主走査方向Yに連続するように位置合わせされる。かかる位置合わせのために、貫通孔およびザグリには、ボルトB1に対するガタが設けられていてもよい。詳しくは、隣接するショートレール同士は、被係合部の端部同士が接するように位置合わせされる。第1ショートレール30Aの被係合部32Aおよび第2ショートレール30Bの被係合部32Bは、平面部31Aおよび31Bよりも主走査方向Yの外方に突出している。そのため、被係合部32Aと32Bとを接触させることが可能である。隣り合った被係合部同士が接触することにより、切れ目のない被係合部32が形成される。
【0043】
反り方向に関しては、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bは、それぞれ、凹んだ面である背面31A2および31B2を前面パネル12の方に向けて固定される。第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bは、それぞれ、主走査方向Yの中央部に貫通孔33Aおよび32Bが形成されている。そのため、中央部の貫通孔33Aおよび32Bに挿通されたボルトB1を前面パネル12に締結することにより、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの反りが矯正される。
【0044】
[ピンチローラユニットの構成]
次に、ピンチローラユニット40の構成について説明する。ピンチローラユニット40は、前述したように、メディア5を押さえ、または解放するためのユニットであり、メディア5を押圧するピンチローラ41を備えている。
図8は、ピンチローラユニット40の前方側からの斜視図である。
図9は、ピンチローラユニット40の後方側からの斜視図である。
図10は、ピンチローラユニット40の縦断面図である。
図11は、副走査方向Xに縦切断したピンチローラユニット40の斜視図である。さらに、
図12は、プリンタ10の背面図であって、複数のピンチローラユニット40を背面側から見た図である。
図8~
図11に示すように、ピンチローラユニット40は、ピンチローラ41と、ピンチレール30に係合する本体部50と、本体部50に揺動自在に支持されるとともにピンチローラ41を支持するローラホルダ42と、ローラホルダ42の揺動軸43と、ローラホルダ42を付勢するスプリング44と、ローラホルダ42を昇降操作する操作部材45と、を備えている。ここでは、ピンチローラ41、ローラホルダ42、揺動軸43、およびスプリング44は、本体部50に直接または間接的に支持されている。
図9に示すように、本実施形態では、操作部材45は、プリンタ10の背面パネル13に支持されている。ただし、操作部材45は、本体部50に支持されていてもよい。なお、
図8および
図11では、操作部材45の図示は省略している。
【0045】
図8に示すように、本体部50は、中空の箱状に形成されている。本体部50は、前壁50Fと、左側壁50Lと、右側壁50Rと、上壁50Uとを備えている。前壁50F、左側壁50L、右側壁50R、および上壁50Uの内部には、内部空間50s(
図11参照)が形成されている。内部空間50sには、ローラホルダ42が収容される。また、内部空間50sには、全体昇降機構60の一斉昇降カム61(詳しくは後述)が収容される。
【0046】
前壁50Fには、ローラホルダ42の前端部が通る前面開口部51が設けられている。
図9に示すように、本体部50の後端部は開放され、ローラホルダ42の後端部が通る背面開口部52を構成している。ローラホルダ42の前端部は、前面開口部51から内部空間50sの外部に突出している。ローラホルダ42の後端部は、背面開口部52から内部空間50sの外部に突出している。
【0047】
上壁50Uは、本体部50の前端から副走査方向Xの中央部まで延びている。上壁50Uには、係合溝53と、上面開口部54とが設けられている。
図6に示すように、係合溝53は、ピンチレール30の被係合部32に係合する溝である。
図8に示すように、係合溝53は、上壁50Uの前端付近に設けられている。係合溝53は、ピンチレール30の被係合部32に対応する円柱孔状に構成され、主走査方向Yに延びている。係合溝53は、上壁50Uを左方および右方に切り抜けている。係合溝53は、左側壁50Lおよび右側壁50Rに到達している。本体部50がピンチレール30に装着される際には、この左右に切り抜けた係合溝53をピンチレール30の被係合部32に装着する。
【0048】
上面開口部54は、係合溝53よりも後方に設けられている。上面開口部54は、上壁50Uの後端に切り抜けている。
図11に示すように、上面開口部54は、一斉昇降カム61を本体部50の内部空間50sに挿入するための開口部である。
【0049】
図8に示すように、左側壁50Lおよび右側壁50Rは、それぞれ、後端部から上方に向かって突出した左支持アーム50L1および右支持アーム50R1を有している。左側壁50Lおよび右側壁50Rは、それぞれ、左支持アーム50L1および右支持アーム50R1が後端部から上方に延びることにより、L字型に構成されている。左支持アーム50L1と右支持アーム50R1とは、主走査方向Yに並んで設けられている。左支持アーム50L1および右支持アーム50R1の上面には、それぞれ、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びるように凹んだ溝50L2および50R2が設けられている。
【0050】
左支持アーム50L1および右支持アーム50R1と上壁50Uとの間は、上方が開放されている。左側壁50Lおよび右側壁50Rのうち、この上方が開放された空間の左右位置には、一対のカム軸受部55aが形成されている。一対のカム軸受部55aは、それぞれ、左側壁50Lおよび右側壁50Rを左右方向に貫通した略円形の貫通孔である。一対のカム軸受部55aの上方は開放されている。一対のカム軸受部55aは、一斉昇降カム61の軸部61a(後述)を受ける部位である。一対のカム軸受部55a、一対のカム軸受部55aの間の開放空間、および上面開口部54の下方の空間(以下、カム収容空間55b)は、一斉昇降カム61を収容するカム収容部55を構成している。
【0051】
左側壁50Lおよび右側壁50Rの前下方の隅付近には、一対の揺動軸受部56が設けられている。一対の揺動軸受部56は、それぞれ、左側壁50Lおよび右側壁50Rを主走査方向Yに貫通した貫通孔である。
【0052】
左支持アーム50L1と右支持アーム50R1との間には、スプリング係止部材57が架け渡されている。スプリング係止部材57は、平板状に形成され、左支持アーム50L1の上端の溝50L2と右支持アーム50R1の上端の溝50R2とに差し込まれている。ただし、左支持アーム50L1と右支持アーム50R1とスプリング係止部材57とは、一体に形成されていてもよい。スプリング係止部材57は、2つのスプリング係止部57aを有している。スプリング係止部57aは、ここでは、スプリング係止部材57を副走査方向Xに貫通する貫通孔である。一対のスプリング係止部57aは、主走査方向Yに並んで設けられている。
【0053】
図8に示すように、左側壁50Lおよび右側壁50Rの背面には、一対の回転止め58が形成されている。一対の回転止め58は、それぞれ、左側壁50Lおよび右側壁50Rの背面に形成され、主走査方向Yに延びる溝である。一対の回転止め58は、左側壁50Lおよび右側壁50Rの背面から前方に向かって凹んでいる。
図6に示すように、一対の回転止め58には、プリンタ10の背面パネル13のうち前方に向かうように折り返された折り返し部13aが挿入されている。これにより、本体部50が前後方向に回転することが防止されている。
【0054】
ローラホルダ42は、本体部50の内部空間50sに収容され、揺動軸43によって揺動可能に支持されている。
図8に示すように、揺動軸43は、一対の揺動軸受部56に挿入されている。揺動軸43は、ピンチローラユニット40の前方下部において主走査方向Yに延びている。
【0055】
ローラホルダ42は、グリットローラ21に接近または離反可能なようにピンチローラ41を支持する部材である。ローラホルダ42は、ピンチローラ41を支持した状態で揺動することにより、ピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させる。
図11に示すように、ローラホルダ42は、副走査方向Xに延びる板状の形状を有している。ローラホルダ42の前方側の約3分の2は、本体部50の内部空間50sにおいて略水平の姿勢を取るフラット部42aとなっている。ローラホルダ42のフラット部42aよりも後方部分は、上方に屈折したアーム部42bとなっている。アーム部42bは、後端部が再び略水平となるようにさらに屈折している。
図11に示すように、ローラホルダ42は、ローラ支持部42cと、揺動軸挿入部42dと、一斉昇降カム受部42eと、スプリング係止部42fと、個別昇降カム受部42gと、を備えている。このうち、ローラ支持部42c、揺動軸挿入部42d、一斉昇降カム受部42e、およびスプリング係止部42fは、フラット部42aに設けられている。個別昇降カム受部42gは、アーム部42bに設けられている。
【0056】
ローラ支持部42cは、フラット部42aの前端部、すなわちローラホルダ42の前端部に設けられている。ローラ支持部42cは、主走査方向に延びる回転軸42c1を備えている。ローラ支持部42cは、回転軸42c1周りに回転可能なようにピンチローラ41を支持している。それにより、ピンチローラ41は、副走査方向Xに回転可能である。ピンチローラ41は、円筒状の部材である。ピンチローラ41の軸線は主走査方向Yに延びている。ピンチローラ41は、ローラホルダ42に支持されることにより、グリットローラ21と対向するように配置される。また、ピンチローラ41は、ローラホルダ42が揺動することにより、グリットローラ21に接近または離反する。
【0057】
揺動軸挿入部42dは、ローラ支持部42cよりも後方に設けられている。揺動軸挿入部42dは、主走査方向Yに貫通した貫通孔であり、揺動軸43が挿通されている。ローラホルダ42は、揺動軸43周りに揺動可能に構成されている。ローラホルダ42が揺動軸43周りに揺動することにより、ローラホルダ42の前端部に支持されたピンチローラ41は、上下方向Zに移動する。詳しくは、ローラホルダ42の揺動軸43よりも後方の部分を下方に押し下げると、揺動軸43よりも前方に配置されたピンチローラ41は上方に移動する。ローラホルダ42の揺動軸43よりも後方の部分を上方に引き上げると、ピンチローラ41は下方に移動する。なお、フラット部42aの揺動軸挿入部42dよりも後方部分は、揺動軸挿入部42dよりも前方部分よりも長く構成されている。
【0058】
一斉昇降カム受部42eは、フラット部42aのうち揺動軸挿入部42dよりも後方に設けられている。ここでは、一斉昇降カム受部42eの揺動軸挿入部42dからの距離は、ピンチローラ41の揺動軸挿入部42dからの距離よりも長く構成されている。一斉昇降カム受部42eは、一斉昇降カム61に押される部位である。
図11に示すように、一斉昇降カム受部42eは、カム収容空間55bの下方に位置している。そのため、一斉昇降カム61は、ピンチローラユニット40に収容されると、一斉昇降カム受部42eの上方に配置される。一斉昇降カム受部42eは、一斉昇降カム61が回転したときに一斉昇降カム受部42eが一斉昇降カム61に対して摺動するよう、下方に曲面を描いて凹んでいる。一斉昇降カム61が回転することにより一斉昇降カム受部42eが下方に押されると、ピンチローラ41は上方に移動する。
【0059】
スプリング係止部42fは、フラット部42aのうち一斉昇降カム受部42eよりもさらに後方に設けられている。スプリング係止部42fは、一対のスプリング44のそれぞれ下端に設けられた下端フック44d(
図10参照)を引っ掛けることが可能なように構成されている。スプリング44が縮むことによりスプリング係止部42fが上方に向かって引っ張られると、ピンチローラ41は下方に移動する。
【0060】
アーム部42bの後端部には、個別昇降カム受部42gが設けられている。個別昇降カム受部42gは、アーム部42bの後端部に設けられた略水平な平坦面である。個別昇降カム受部42gは、操作部材45によって押される部位である。詳しくは後述するが、操作部材45をユーザーが操作すると、操作部材45は、個別昇降カム受部42gを下方に押す。個別昇降カム受部42gが下方に向かって押されると、ピンチローラ41は上方に移動する。
【0061】
一対のスプリング44は、スプリング係止部材57の一対のスプリング係止部57aと、ローラホルダ42のスプリング係止部42fとに係止されている。詳しくは
図10に示すように、スプリング44は立てて配置され、スプリング44の上端部に設けられた上端フック44uは、スプリング係止部57aに引っ掛けられている。スプリング44の下端部に設けられた下端フック44dは、ローラホルダ42のスプリング係止部42fに引っ掛けられている。スプリング44は、伸びた状態でスプリング係止部57aおよび42fに係止されている。そのため、スプリング44は、スプリング係止部42fを上方に向かって引っ張っている。これにより、スプリング44は、ピンチローラ41を下方に向かって付勢している。一斉昇降カム61または操作部材45がローラホルダ42を押していないときには、ピンチローラ41は、スプリング44の復元力によって下方に押し下げられている。
【0062】
操作部材45は、ピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させる部材である。操作部材45は、ピンチローラユニット40ごとに設けられており、設けられたピンチローラユニット40のピンチローラ41を個別に昇降させる。本実施形態では、操作部材45は、ピンチローラ41を保持したローラホルダ42をユーザーの操作に応じて揺動させることにより、ピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させる。
【0063】
図9に示すように、操作部材45は、ローラホルダ42の個別昇降カム受部42gに当接可能なように、個別昇降カム受部42gの上方に設けられている。操作部材45は、ここでは、プリンタ10の背面パネル13に設けられている。本実施形態では、
図12に示すように、背面パネル13は、ピンチローラ41よりも副走査方向Xの上流X2側に設けられ、X2方向に向かって露出している。背面パネル13に設けられた各ピンチローラユニット40の操作部材45は、プリンタ10の後方側から見えている。各ピンチローラユニット40の操作部材45は、後方からの操作が可能である。なお、本実施形態では、操作部材45は、ピンチローラユニット40の各部の中で最も後方に設けられているが、少なくともピンチローラ41よりも後方に設けられ、ユーザーによる手動操作が可能であればよい。
図9に示すように、操作部材45は、鉛直面に沿って広がる板状の形状を有している。
【0064】
図13は、ピンチローラユニット40の背面図である。
図13に示すように、操作部材45は、カム部45aと、レバー45bと、回転軸45cとを備えている。回転軸45cは、背面パネル13に設けられ、副走査方向Xに延びている。カム部45aは、回転軸45c周りに回転可能なように回転軸45cに支持されている。カム部45aは、回転軸45cからの距離が回転位置によって異なる外周部を有する偏心カムである。カム部45aは、ここでは、背面視において略三角形状の形状を有しており、回転軸45cは、カム部45aの中心を外れた位置に設けられている。カム部45aは、回転位置に応じてローラホルダ42に当接または離間する当接部45a1を有している。当接部45a1は、カム部45aの外周部、詳しくは、略三角形のカム部45aの1つの頂点に設けられている。当接部45a1は、ここでは、上記頂点が切り欠かれることによって形成された平面である。
図13に示すように、背面視において、当接部45a1が設けられた略三角形の頂点は、回転軸45cから最も遠い頂点である。そのため、当接部45a1の回転軸45cからの距離は、カム部45aの他の部位よりも長い。当接部45a1は、操作部材45を回転させることにより、ローラホルダ42の個別昇降カム受部42gに当接させることが可能である。
図14は、操作部材45がローラホルダ42に当接しているときのピンチローラユニット40の背面図である。
図14に示すように、当接部45a1は、操作部材45を図示A方向に回転させることにより、ローラホルダ42の個別昇降カム受部42gに当接する。
【0065】
レバー45bは、カム部45aの当接部45a1と向かい合う辺に沿うように延びている。レバー45bの伸長方向は、当接部45a1の伸長方向と略平行である。レバー45bは、上記した方向に延び、カム部45aの外部まで突出している。レバー45bは、カム部45aに接続され、カム部45aを回転操作可能な把持部の一例である。ユーザーは、レバー45bを把持して操作部材45を回転させることができる。レバー45bは、ここでは、カム部45aと一体に構成されている。ただし、レバー45bは、カム部45aと別部品として構成され、カム部45aに取り付けられていてもよい。カム部45aおよびレバー45bは、当接部45a1をローラホルダ42に押し当てることにより、グリットローラ21から離反する方向にピンチローラ41を移動させることが可能な操作部を構成している。
【0066】
図9に示すように、背面パネル13には、ストッパ46を着脱することが可能なストッパ装着部13bが設けられている。ストッパ46は、必要なときに、ユーザーによりストッパ装着部13bに装着される。ストッパ46は、必要でなくなった場合には、ストッパ装着部13bから取り外される。ストッパ装着部13bは、ここでは、ネジ孔である。ストッパ46は、ストッパ装着部13bに噛み合わされるネジである。ストッパ装着部13bは、レバー45bの移動経路上に設けられている。ストッパ46は、操作部材45が、
図14に示した位置から
図13に示した位置に戻ることを阻止する部材である。ストッパ46の使用方法については後述する。
【0067】
[全体昇降機構の構成]
全体昇降機構60は、複数のピンチローラユニット40の全てのピンチローラ41を一斉に昇降する機構である。全体昇降機構60は、複数のピンチローラユニット40の全てのピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させることが可能に構成されている。全体昇降機構60は、全てのピンチローラ41をグリットローラ21と離間した状態で保持することが可能である。後述するが、全体昇降機構60は、複数のピンチローラユニット40の各操作部材45による各ピンチローラ41の保持を一斉に解除できるようにも構成されている。
【0068】
図8に示すように、全体昇降機構60は、各ピンチローラユニット40に収容された複数の一斉昇降カム61と、複数の一斉昇降カム61に連結されたシャフト62と、シャフト62の回転操作を行うピンチローラレバー63(
図1参照)と、を備えている。シャフト62は、
図9に示すように、主走査方向Yに延びている。シャフト62は、軸方向視において矩形のシャフトである。シャフト62は、少なくともプラテン11の主走査方向Yの全域の上方を通るように設けられている。図示は省略するが、ピンチローラレバー63は、シャフト62に連結されている。ピンチローラレバー63を上げ下げすることにより、シャフト62を軸線周りに回転させることができる。また、全体昇降機構60は、図示しないピンチローラレバー63およびシャフト62を固定する機構を備えている。複数の一斉昇降カム61にはシャフト62が挿通され、複数の一斉昇降カム61は、シャフト62の回転とともに回転する。
【0069】
図8に示すように、一斉昇降カム61は、一対の軸部61aと、偏心部61bと、シャフト孔61cとを備えている。偏心部61bは、ピンチローラユニット40のカム収容空間55bに収容されている。一対の軸部61aは、偏心部61bからそれぞれ左右に延び、カム軸受部55aに装着されている。シャフト孔61cは、一対の軸部61aおよび偏心部61bを主走査方向Yに貫通している。シャフト孔61cは、軸線方向視において、シャフト62に対応する矩形の形状を有する孔である。シャフト62およびシャフト孔61cの断面が矩形に構成されているため、シャフト62が回転すると、一斉昇降カム61は、シャフト62に対して滑ることなく、シャフト62とともに回転する。
【0070】
軸部61aは、カム軸受部55aに対応するような円筒状に形成されている。軸部61aは、上方が開いたカム軸受部55aに対して上方から差し込まれている。シャフト孔61cは、軸部61aと中心が一致するように形成されている。そこで、シャフト62が回転すると、軸部61aは、偏心することなく回転する。軸部61aは、カム軸受部55aの内周面に沿って回転する。
【0071】
偏心部61bは、
図11に示すように、偏心カムとして構成されている。一対の軸部61aと偏心部61bとは、1つの部品として構成され、連続している。偏心部61bは、軸線方向視において軸部61aよりも径方向外方に張り出した突出部61b1を備えている。
図11に示すように、突出部61b1が後方に向かって延びるような回転位置に偏心部61bが位置しているとき、突出部61b1は、ローラホルダ42に接触していない。かかる状態は、ピンチローラレバー63が操作され、ピンチローラ41が降ろされた状態である。メディア5またはグリットローラ21に突き当たることによりピンチローラ41がもう下がらない状態となったとき、偏心部61bは、ローラホルダ42から離間している。このとき、ピンチローラ41は、スプリング44の収縮力により、下方に押されている。なお、ピンチローラ41の押圧力を得るため、スプリング係止部42fの揺動軸挿入部42dからの距離は、ピンチローラ41の揺動軸挿入部42dからの距離よりも長く設定されている。これにより、梃の原理に基づいて、スプリング44の収縮力よりも強い押圧力が得られる。
【0072】
突出部61b1は、シャフト孔61cの中心(一斉昇降カム61の回転中心)からの距離が周方向の位置によって異なるように形成されており、ピンチローラ41が下がりきった状態で一斉昇降カム受部42eに当接可能な当接部61b2を有している。ピンチローラレバー63を操作してシャフト62を
図10のB方向に回転させることにより、当接部61b2を一斉昇降カム受部42eに当接させることができる。これにより、ローラホルダ42が一斉昇降カム61により下方に押される。そうすると、一斉昇降カム受部42eの位置がスプリング44の収縮力に抗して下がり、ピンチローラ41が上昇する。さらに、ピンチローラレバー63を固定すれば、ピンチローラ41は、グリットローラ21から離間した状態のまま保持される。
【0073】
このように、全体昇降機構60は、全てのローラホルダ42を揺動させる全体揺動部材としてのシャフト62および複数の一斉昇降カム61を備えている。全体昇降機構60は、また、全体揺動部材としてのシャフト62に接続され、全体揺動部材としてのシャフト62および複数の一斉昇降カム61を操作可能に構成されたピンチローラレバー63を備えている。全体昇降機構60は、複数のピンチローラユニット40の全てのピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させるとともに、全てのピンチローラ41をグリットローラ21と離間した状態で保持することが可能に構成されている。
【0074】
[ピンチローラの個別昇降および個別保持の一斉解除]
以下では、ピンチローラ41の個別昇降と、ピンチローラ41の個別保持の一斉解除とについて説明する。全体昇降機構60によってピンチローラ41が持ち上げられていないときには、基本的に全てのピンチローラ41は、スプリング44の付勢力によって下降し、メディア5またはグリットローラ21に接触している。メディア5またはグリットローラ21に接触している状態のピンチローラ41の上下位置を、以下では、ダウン位置Pd(
図10参照)とも呼ぶ。
図10に示すように、ピンチローラ41がダウン位置Pdに位置しているとき、ローラホルダ42の個別昇降カム受部42gは、第1位置P1に位置している。印刷およびカッティングは、通常、全てのピンチローラ41をダウン位置Pdに位置させた状態で行われる。
【0075】
しかしながら、印刷中またはカッティング中に、一部のピンチローラ41を上昇させてメディア5から離間させたい場合が存在する。例えば、メディア5の一部に予想しない浮きが発生した場合などには、メディア5の浮きとの衝突を避けるために、浮きの経路上にあるピンチローラ41を上昇させる必要が生じる。本実施形態では、そのような場合に、ピンチローラユニット40の操作部材45を操作してピンチローラ41を上昇させることができる。
【0076】
ピンチローラ41を操作部材45によって持ち上げていないとき、操作部材45は、
図13に示す位置に位置付けられている。以下、このときの操作部材45の位置を離間位置R1と呼ぶ。
図13に示すように、離間位置R1では、操作部材45は、ローラホルダ42から離間している。
図13に示す状態では、ピンチローラ41は降ろされ、メディア5を上方から押さえている。離間位置R1では、操作部材45の下端は、第1位置P1にある個別昇降カム受部42gよりも上方に位置している。
図10に示すように、個別昇降カム受部42gは、第1位置P1よりも下方において移動するため、ピンチローラ41は、操作部材45が離間位置R1に位置している状態では移動自在である。ピンチローラ41は、全体昇降機構60により、印刷中またはカッティング中であれば通常は降ろされる。また、ピンチローラ41は、例えばメディア5の交換等の際には、全体昇降機構60により、メディア5またはグリットローラ21から離間される。
図13に示すように、離間位置R1では、レバー45bは、下方に向いている。
【0077】
ユーザーは、ピンチローラ41を個別に上昇させたいとき、レバー45bを
図13に示す状態から上方(
図14のA方向)に向かって回転させる。
図14に示すように、略水平になるまでレバー45bを回転させると、レバー45bと略平行な当接部45a1もまた略水平となる。このとき、当接部45a1は、第1位置P1にあるときの個別昇降カム受部42gよりも下方まで移動する。そのため、個別昇降カム受部42gは、操作部材45により下方に押される。以下、このときの操作部材45の位置を保持位置R2とも呼ぶ。操作部材45は、保持位置R2と離間位置R1との間をレバー45bの操作に応じて移動するように構成されている。
図10の位置P2は、操作部材45を保持位置R2に移動させた状態の個別昇降カム受部42gの位置である。以下、この個別昇降カム受部42gの位置を第2位置P2とも呼ぶ。
図10に示すように、個別昇降カム受部42gが第2位置P2に移動すると、ピンチローラ41は、ダウン位置Pdから上昇し、個別アップ位置Piに移動する。
【0078】
操作部材45が保持位置R2に位置付けられているとき、当接部45a1は、個別昇降カム受部42gから上向きの力を受ける。この力により、当接部45a1と個別昇降カム受部42gとの間に摩擦力が働く。そのため、操作部材45は、保持位置R2に保持される。ピンチローラ41は、操作部材45が保持位置R2に位置している状態では、個別アップ位置Piに、言い換えると、グリットローラ21から離間した状態に保持される。ピンチローラユニット40は、操作部材45を操作することによってピンチローラ41をグリットローラ21と離間した状態で保持することが可能に構成されている。
【0079】
なお、保持位置R2において、当接部45a1は、個別昇降カム受部42gと概ね平行である。そのため、当接部45a1は、ローラホルダ42からほぼ上向きの力しか受けない。そのため、操作部材45が保持位置R2から外れにくく、ピンチローラ41は、個別アップ位置Piに安定して保持される。また、
図10に示すように、本実施形態では、個別昇降カム受部42gの揺動軸挿入部42dからの距離は、スプリング係止部42fの揺動軸挿入部42dからの距離よりも長く設定されている。そのため、梃の原理に基づき、少ない力でピンチローラ41を上昇させることができる。その後、個別にピンチローラ41を下降させたいときには、操作部材45を離間位置R1に戻せばよい。
【0080】
かかるピンチローラ41の個別保持は、全体昇降機構60によって一斉に解除することもできる。前述したように、ピンチローラレバー63の上昇操作によって複数の一斉昇降カム61を回転させると、全てのピンチローラ41が上昇する。
図10の位置Ptは、全体昇降機構60によって上昇させたときのピンチローラ41の位置である。以下、このピンチローラ41の位置を一斉アップ位置Ptとも呼ぶ。
図10に示すように、本実施形態では、一斉アップ位置Ptは、個別アップ位置Piよりも上方である。そのとき、ピンチローラ41の一斉アップ位置Ptに対応する個別昇降カム受部42gの位置P3(第3位置P3と呼ぶ)は、第2位置P2よりも下方である。そのため、全体昇降機構60によってピンチローラ41を一斉アップ位置Ptに移動させると、操作部材45とローラホルダ42とは離間する。ピンチローラレバー63の操作によって全体揺動部材としての一斉昇降カム61が一斉昇降カム受部42eに押し当てられると、ローラホルダ42は、保持位置R2にある操作部材45(詳しくは、操作部材45が保持位置R2に位置している状態における当接部45a1)から離れるように構成されている。
【0081】
操作部材45は、当接部45a1がローラホルダ42から離れると、自重によって保持位置R2から離間位置R1に戻るように構成されている。
図14に示すように、操作部材45のレバー45bは、保持位置R2においては、カム部45aよりも右方に位置し、略水平に保たれている。この状態から操作部材45がローラホルダ42から離れると、操作部材45は、背面視において反時計回り(A方向の逆方向)に回転する。その結果、操作部材45は、離間位置R1に移動する。これにより、操作部材45による個別のピンチローラ41の保持が解除される。
【0082】
このように、ピンチローラユニット40による個別のピンチローラ41の保持は、全体昇降機構60によって全てのピンチローラ41を一斉アップ位置Ptに保持することにより解除される。そして、全てのピンチローラ41は、個別アップ状態を解除されつつ、全体昇降機構60によってアップ状態とされる。
【0083】
[ストッパの使用方法]
本実施形態では、ストッパ46をストッパ装着部13bに装着することにより、ピンチローラ41の個別の保持状態を維持することもできる。ピンチローラ41の個別の保持状態を維持することにより、例えばメディア5から常時離間させておきたいピンチローラ41を、その度に操作部材45を操作することなくメディア5から離間させておくことができる。
【0084】
ストッパ46を使用する際は、まず操作部材45を保持位置R2に位置付ける。その後、ストッパ46をストッパ装着部13bに装着する。そうすると、
図14に示すように、ストッパ46は、保持位置R2におけるレバー45bの下方に配置される。そのため、ストッパ46は、操作部材45が離間位置R1に移動することを阻止する。その結果、ピンチローラ41が個別のアップ状態に維持される。ユーザーは、ピンチローラ41を個別のアップ状態に維持する必要がなくなれば、ストッパ46を外すことにより、当該ピンチローラ41の個別アップ状態を解除することもできる。なお、ストッパ46は、操作部材45を保持位置R2に維持する必要はない。ストッパ46は、操作部材45が離間位置R1に移動することを阻止すれば足り、ピンチローラ41は、ストッパ46がストッパ装着部13bに装着され、操作部材45がストッパ46によって移動阻止された状態において、グリットローラ21と離間していればよい。
【0085】
[本実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10が奏する作用効果について説明する。
【0086】
[分割されたピンチレールの作用効果]
まず、分割されたピンチレール30の作用効果について説明する。従来、ピンチローラ―ユニットが主走査方向に移動可能に係合される部材(被係合部材と言う)は、本実施形態のように分割されることはなく、一部品として形成されていた。被係合部材は、例えば、金属材料を切削加工によって削り出して形成されていた。ピンチローラユニットが滑らかに摺動するためには、被係合部材はできるだけ真っ直ぐに形成されることが好ましい。そのため、被係合部材は、高い剛性と高い寸法精度を有するように構成されていた。そのため、被係合部材は、例えば強度の高い金属で、または大きな厚みを持って形成され、かつ、高い寸法精度を有するように製作された。従って、そのコストは高かった。被係合部材の主走査方向の長さが長いほど、この傾向は顕著であった。
【0087】
それに対し、本実施形態では、ピンチレール30は、主走査方向Yに並ぶ複数のショートレール30Aおよび30Bに分割されている。複数のショートレール30Aおよび30Bは、それぞれピンチレール30の全体よりも主走査方向Yの長さが短いため、ピンチレール30を一部品として形成する場合のような剛性を有さなくても曲がりを少なくすることができる。また、個々のショートレール30A、30Bは主走査方向Yの長さが短いため、、高い精度で加工しなくても寸法誤差は小さい。そのため、ピンチレール30のコストを抑えることができる。その結果、プリンタ10のコストを抑えることができる。
【0088】
本実施形態では、複数のショートレール30Aおよび30Bは、樹脂成形によって形成されている。個々のショートレール30A、30Bに高い剛性も高い寸法精度も求められないため、このようにショートレール30A、30Bを例えば樹脂によって形成することが可能となっている。そのため、ピンチレール30を例えばステンレス鋼の削り出しによって形成する場合などよりも、大幅にコストを低減することができる。なお、複数のショートレール30Aおよび30Bをアルミダイキャストによって形成する場合も、同様にコストを削減することができる。
【0089】
本実施形態では、複数のショートレール30A、30Bは、複数の(1つでもよい)第1ショートレール30Aと、第1ショートレール30Aとは主走査方向Yの長さが異なる複数の(1つでもよい)第2ショートレール30Bとを含んでいる。主走査方向Yの長さが異なる複数種類のショートレール30Aおよび30Bを準備しておくことにより、様々な主走査方向Yの長さを有するプリンタに対してピンチレールを分割する手法を適用することができる。また、様々な主走査方向Yの長さを有するプリンタに対して、部品としてのショートレールを共通化することができる。
【0090】
本実施形態では、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80が係合したガイドレール91はプラテン11に対向する面(ここでは下面91a)を備え、複数のショートレール30A、30Bの各位置決め面34A1、34B1は、ガイドレール91の下面91aに当接している。これにより、前述したように、ピンチレール30の上下方向Zの位置がより正確に位置決めされている。プラテン11に対するピンチレール30の上下方向Zの位置をより正確なものとすることにより、複数のピンチローラ41がそれぞれメディア5を押す力の間のばらつきが小さくなる。本実施形態では、ピンチレール30が複数のショートレール30Aおよび30Bに分割されているため、ピンチレール30のガイドレール91への当てつけがより正確かつ容易に可能である。ピンチレールが複数のショートレールに分割されていない場合には、例えばピンチレールの歪み等のために、ピンチレールをガイドレールに当てつけることが正確にできないこともあり得る。また、このような当てつけ作業はピンチレールが長いため難しい。それに対して、本実施形態の場合には、個々のショートレール30A、30Bの主走査方向Yの長さが短いため、個々のショートレール30A、30Bの歪みが小さく、ピンチレール30のガイドレール91への当てつけがより正確にできる。また、当てつけ作業も容易である。なお、ピンチレール30の前面パネル12への当てつけも、ピンチレール30が複数のショートレール30Aおよび30Bに分割されているため、より正確かつ容易に可能である。
【0091】
本実施形態では、ショートレール30A、30Bは、他の部分よりも上方に突出した複数の突出部34Aを備え、突出部34Aの上面である位置決め面34A1は、ショートレール30A、30Bの不連続な上面を構成している。かかる構成によれば、被係合部32Aおよび32Bに対する位置決め面34A1および34B1の位置精度を向上させることができる。例えば、第1ショートレール30Aの上面を連続面として形成すると、かかる上面の主走査方向Yの長さは長くなる。第1ショートレール30Aはここでは樹脂成形品であるため、上面の主走査方向Yの長さが長くなると、それに応じて、被係合部32Aに対する上面の上下方向Zの位置がばらつきやすくなる。それに対し、本実施形態では、他の部分よりも上方に突出した複数の突出部34Aを設けることによって、位置決め面34A1の主走査方向Yの長さを短くしている。そのため、被係合部32Aに対する位置決め面34A1の上下方向Zの位置のばらつきが少なくなる。第2ショートレール30Bについても同様である。被係合部32Aと位置決め面34A1との間の距離の精度、および、被係合部32Bと位置決め面34B1との間の距離の精度が高くなることにより、複数の被係合部32Aおよび32Bの上下方向Zの位置がより揃う。これにより、被係合部32全体としての直線性が向上し、ピンチローラユニット40をピンチレール30に沿ってより滑らかに移動させることができる。また、プラテン11に対するピンチローラ41の上下方向Zの位置の精度も高くなる。
【0092】
本実施形態では、第1ショートレール30Aの被係合部32Aおよび第2ショートレール30Bの被係合部32Bは、それぞれ、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの他の部分よりも主走査方向Yの外方に突出している。かかる構成によれば、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bを主走査方向Yに並べて配置する際に、被係合部32Aと被係合部32Bとを接触させることができる。その結果、被係合部32が切れ目なく続くようにすることができる。例えば、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bを主走査方向Yに並べて配置する際に、平面部31Aと31Bとが接触し、被係合部32Aと32Bとが接触しないと、被係合部32が連続しなくなる。このような状態になると、ピンチローラユニット40の滑らかな摺動が阻害されるおそれがある。本実施形態では、被係合部32Aおよび32Bを第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの他の部分よりも主走査方向Yの外方に突出させることにより、かかる問題を防止している。
【0093】
また、本実施形態では、前述したように、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bは、前面パネル12の側とは逆側に凸するように反り方向を合わせてから前面パネル12に固定されている。そのため、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの反りが矯正されている。なお、このような反りの矯正は、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの剛性があまり高くないために可能となるものである。
【0094】
[ピンチローラを個別昇降可能なピンチローラユニットの作用効果]
次に、ピンチローラ41を個別に昇降可能なピンチローラユニット40の作用効果について説明する。上記したように、本実施形態では、各ピンチローラユニット40は、ピンチローラ41を個別にグリットローラ21から離反させることが可能に構成された操作部材45を備えている。そのため、例えば、メディア5の一部にプラテン11からの浮きが発生した場合などには、当該浮きが発生したメディア5の一部が通る箇所に設けられたピンチローラ41を上昇させることができる。これにより、例えば、メディア5がピンチローラ41と絡んで詰まるような不具合を回避することができる。かつ、プリンタ10全体としては、メディア5を押さえ続けることができる。さらに、メディア5の浮きが発生した箇所の付近のピンチローラ41をメディア5から離間させることによりメディア5の浮きが解消される場合も多いため、そのようなときには浮き解消後、メディア5から離間させたピンチローラ41を再度メディア5に接触させることもできる。
【0095】
上記したようなピンチローラ41を個別に上昇下降させることが必要な事態は、多くの場合、印刷中またはカッティング中に発生する。しかし、複数のピンチローラユニット40の下流X1側には、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80が設けられており、印刷またはカッティング中にはプリントヘッド70またはカッティングヘッド80が走行・駆動している。そのため、副走査方向Xの下流X1側からピンチローラユニット40を操作する作業は危険であり、基本的にできない。また、印刷またはカッティングを一時停止すると、印刷品質またはカッティング品質に影響を及ぼす可能性が高い。印刷の場合には、印刷作業を一時停止すると、例えば、一時停止の前後で印刷状態が変わるおそれがある。カッティングの場合には、カッティング作業を一時停止すると、例えば、メディア5へインクの沁み込みが進行してメディア5の寸法が変化し、一時停止の前後でカッティング位置がずれるおそれがある。また、印刷またはカッティングを中断すると、印刷またはカッティングの生産性が低下する。
【0096】
そこで、本実施形態では、操作部材45は、ピンチローラ41よりも副走査方向Xの上流X2方向に設けられ、ユーザーによる操作が可能なように構成されている。かかる構成によれば、ユーザーは副走査方向Xの上流X2側からピンチローラ41の個別昇降操作を行うことができる。そのため、印刷中またはカッティング中であっても、プリントヘッド70およびカッティングヘッド80の走行・駆動による危険にユーザーが晒されることがない。そこで、印刷またはカッティング作業を中断することなく、ピンチローラ41の個別昇降操作を行うことができる。すなわち、本実施形態に係るプリンタ10によれば、複数のピンチローラ41の個々のピンチローラ41の昇降を印刷中およびカッティング中を含む所望のタイミングで行うことができる。
【0097】
さらに本実施形態に係るピンチローラユニット40は、ピンチローラ41を支持した状態で揺動することによりピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させるローラホルダ42を備え、操作部材45は、ローラホルダ42に当接または離間してローラホルダ42を揺動させることにより、ピンチローラ41を上下方向Zに移動させるように構成されている。より詳しくは、操作部材45は、回転位置に応じてローラホルダ42に当接または離間する当接部45a1を有するカム部45aと、カム部45aに接続されるとともにカム部45aを回転操作可能なレバー45bと、を備えている。かかる構成によれば、ユーザーは、レバー45bを把持してカム部45aを回転させるという簡単な操作でピンチローラ41を移動させることができる。
【0098】
本実施形態に係るプリンタ10は、全てのピンチローラ41をグリットローラ21に接近または離反させるとともに、全てのピンチローラ41をグリットローラ21と離間した状態で保持することが可能な全体昇降機構60をさらに備えている。本実施形態では、ピンチローラユニット40によるピンチローラ41の個別の保持は、全体昇降機構60によって全てのピンチローラ41を保持することにより解除される。かかる構成によれば、ピンチローラ41の個別の保持状態を全体昇降機構60の操作によって一斉に解除することができる。そのため、ピンチローラ41の保持状態を解除する作業が簡易化される。また、ユーザーによる保持状態の解除忘れも予防できる。
【0099】
より詳しくは、本実施形態では、ピンチローラレバー63の操作によって一斉昇降カム61がローラホルダ42に当接し、一斉昇降カム61によってローラホルダ42が保持されると、保持位置R2に位置する操作部材45からローラホルダ42が離れるように構成されている。ここでは、ローラホルダ42は、一斉昇降カム61によって保持されると、保持位置R2にある操作部材45よりも下方に移動する。操作部材45は、ローラホルダ42から離れると、保持位置R2から離間位置R1に移動する。これによって、操作部材45によるピンチローラ41の個別の保持が解除される。かかる構成によれば、全体昇降機構60と各操作部材45とを連結する特別な部材が不要なため、ピンチローラ41の個別保持の一斉解除を簡潔な構成で実現することができる。
【0100】
さらに、上記保持状態の解除において、操作部材45は、自重によって保持位置R2から離間位置R1に移動するように構成されている。かかる構成によれば、さらに簡易な構成で、ピンチローラ41の保持状態の一斉解除を行うことができる。なお、操作部材45がローラホルダ42から離れた後に保持位置R2から離間位置R1に移動するための構成は、自重によるものには限定されない。例えば、操作部材45は、ローラホルダ42から離れた後、スプリングなどの弾性体の力によって保持位置R2から離間位置R1に移動してもよい。
【0101】
本実施形態に係るプリンタ10は、操作部材45が離間位置R1に移動することを阻止するストッパ46と、ストッパ46を着脱可能なストッパ装着部13bと、をさらに備えている。ピンチローラ41は、ストッパ46がストッパ装着部13bに装着され、操作部材45がストッパ46によって移動阻止された状態では、グリットローラ21と離間するように構成されている。かかる構成によれば、ストッパ46をストッパ装着部13bに装着することにより、各ピンチローラ41を個別にグリットローラ21から離間した状態に維持することもできる。各ピンチローラ41がグリットローラ21から離間した状態を維持することにより、例えばメディア5から常時離間させておきたいピンチローラ41を、その度に操作部材45を操作することなくメディア5から離間させておくことができる。また、必要がなくなれば、ストッパ46を外すことにより、当該ピンチローラ41の保持状態を解除することもできる。
【0102】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。
【0103】
例えば上記した実施形態では、複数のショートレール30Aおよび30Bは、平板状に構成されていたが、ショートレールおよび、その集合体としてのピンチレールの形状は特に限定されない。ショートレールおよびピンチレールは、例えば、角柱状や円柱状に構成されていてもよい。ショートレールは必ずしもキャリッジが係合するガイドレールに当て付けて位置決めされる必要はなく、前面パネルに固定される必要もない。ショートレールの位置決め方法および固定方法は限定されない。
【0104】
上記した実施形態では、第1ショートレール30Aおよび第2ショートレール30Bの数量はいずれも複数であったが、一方の数量は1つまたは0であってもよい。また、両方の数量が1であってもよい。ピンチレールは、主走査方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成されていればよい。例えば、ピンチレールは、1種類のショートレールが主走査方向に並んで配置されることによって構成されていてもよい。
【0105】
上記した実施形態では、複数のショートレール30Aおよび30Bは互いに主走査方向Yに接するように配置され、ピンチレール30は主走査方向Yに連続していたが、ピンチレールは、主走査方向に断続的に延びるように設けられていてもよい。ピンチレールは主走査方向に並んで配置された複数のショートレールによって構成されていればよく、連続していなくてもよい。「主走査方向に延びるピンチレール」には、主走査方向に連続して並ぶ複数のショートレールによって構成されたピンチレールと、主走査方向に断続的に並ぶ複数のショートレールによって構成されたピンチレールとが含まれる。例えば、ピンチレールは、ピンチローラユニットを摺動させる必要のある範囲に断続的に存在し、その他の場所には存在しなくてもよい。また、ユーザーがピンチローラユニットを移動させる必要がない場合には、ピンチレールは断続的に設けられ、プリンタ製作時のピンチローラユニットの位置調整にのみ使用されてもよい。
【0106】
メディアを搬送するメディア搬送装置は、例えば、メディアを支持する支持台と、支持台に支持されたメディアを所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、を備え、搬送装置は、第1分割レールと、第2分割レールと、第1ピンチローラユニットと、第2ピンチローラユニットと、を備えていてもよい。第1分割レールは、支持台に設けられとともに搬送方向に直交する直交方向に延び、搬送方向に回転する駆動ローラと、支持台と対向するように設けられ搬送方向に直交する直交方向に延びていてもよい。第2分割レールは、第1分割レールと直交方向に並んで設けられ、直交方向に延びていてもよい。第1ピンチローラユニットは、駆動ローラに接触または離反させることが可能な第1ピンチローラを備え、第1分割レールに沿って直交方向に移動可能なように第1分割レールに係合していてもよい。第2ピンチローラユニットは、駆動ローラに接触または離反させることが可能な第2ピンチローラを備え、第2分割レールに沿って直交方向に移動可能なように第2分割レールに係合していてもよい。かかるメディア搬送装置によれば、第1ピンチローラユニットの摺動範囲に第1分割レールを設け、第2ピンチローラユニットの摺動範囲に第2分割レールを設け、第1分割レールと第2分割レールとの間には隙間が空いていてもよいため、第1ピンチローラユニットおよび第2ピンチローラユニットが係合する長いレールを設けるよりも、レールに係る部材を節減できる。また、メディア搬送装置のコストも削減できる。
【0107】
上記した実施形態では、ピンチローラ41は操作部材45のカム部45aによって昇降されたが、ピンチローラの移動方式は限定されない。ピンチローラは、例えば、スライドガイドなどに沿って上下方向に移動されてもよい。あるいは、ピンチローラは、例えば、ピンチローラの支持部材と、他の部材との間に楔状の部材を抜き差しすることにより移動されてもよい。上記した実施形態では、ピンチローラ41は操作部材45が当接することによって上昇したが、操作部材45が当接することよって下降してもよい。例えば、ピンチローラは弾性部材によって上方に向かって付勢され、操作部材の当接によって下方に移動してもよい。上記した実施形態では、ローラホルダ42は揺動軸43周りに揺動することによりピンチローラ41を上下方向Zに移動させたが、例えば、ローラホルダが上下方向に移動(例えばスライド)することによりピンチローラを上下方向に移動させてもよい。
【0108】
上記した実施形態では、プリンタ10は、複数のピンチローラユニット40の全てのピンチローラ41を上下方向Zに移動させる全体昇降機構60を備えていたが、全体昇降機構を備えなくてもよい。全体昇降機構を備える場合であっても、プリンタは、全体昇降機構の操作によりピンチローラの個別の保持状態が全て解除されるように構成されていなくてもよい。プリンタは、ピンチローラの個別の保持状態を一斉に解除する他の機構を備えていてもよく、ピンチローラの個別の保持状態を一斉に解除する機構を備えていなくてもよい。
【0109】
上記した実施形態では、操作部材45は、プリントヘッド70、カッティングヘッド80、およびピンチローラ41よりも副走査方向Xの上流X2方向にだけ設けられていた。しかし、ピンチローラユニットは、ピンチローラよりも副走査方向の下流側に設けられ、プリンタの前方から操作可能な他の操作部材をさらに備えていてもよい。
【0110】
上記した実施形態に係る装置はカッティングヘッド付きプリンタであったが、ここに開示する技術はカッティングヘッド付きプリンタ以外の装置にも適用できる。ここに開示した技術が適用される装置は、例えば、メディアに印刷を行うプリントヘッドを備えるがカッティングヘッドを備えないプリンタや、メディアを切断するカッティングヘッドを備えるがプリントヘッドを備えないカッティング装置などであってもよい。適用される装置がカッティングヘッド付きプリンタである場合でも、その構成は、実施形態に示したようなものには限定されない。ここに開示した技術が適用される装置は、例えば、プリントヘッドやカッティングヘッドのようなメディアに対して加工を行うヘッドを備えないメディア搬送装置であってもよい。
【0111】
その他、ここに記載された実施形態は、特に断らない限り、本発明を限定しない。例えば、上記したピンチローラユニットの構成や、全体昇降機構の構成は例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0112】
5 メディア
10 カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ
11 プラテン(支持台)
20 搬送装置
21 グリットローラ(駆動ローラ)
30 ピンチレール
30A 第1ショートレール
30B 第2ショートレール
70 プリントヘッド
80 カッティングヘッド
90 ヘッド移動装置
91 ガイドレール
X 副走査方向(搬送方向)
Y 主走査方向(直交方向)