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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】コンテナ輸送船及びコンテナの搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B63B25/00 101G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021033287
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134260
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 崇
(72)【発明者】
【氏名】木下 達弥
(72)【発明者】
【氏名】岡 沙織
(72)【発明者】
【氏名】宅野 正夫
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-007354(JP,B1)
【文献】特表2013-534191(JP,A)
【文献】特開2006-213229(JP,A)
【文献】特開2010-001143(JP,A)
【文献】特開2019-210113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0150606(US,A1)
【文献】米国特許第04890565(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0045963(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
B60P 7/00- 7/18
B65G 63/00-63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の全長方向、幅方向及び高さ方向に複数個設けられ、コンテナが設置されるコンテナ設置スペースと、
前記コンテナ設置スペースにそれぞれ設けられ、前記コンテナを設置するコンテナ設置機構と、
前記コンテナを搬送するコンテナ搬送装置が通行する搬送路と、
前記コンテナ搬送装置が船体の高さ方向に移動するための船内ランプウェイと、
前記コンテナ搬送装置が船体内外を行き来するサイドランプウェイ及びスターンランプウェイの少なくとも一方と、を有し、
前記コンテナ設置スペースは、底部、複数の支柱及び天井部を備えており、
前記コンテナ設置機構は、前記コンテナ設置スペースに設けられ前記コンテナが設置されるコンテナサポートであって、複数の前記支柱からそれぞれ内側に張り出した複数の張出部を備えており、
前記搬送路は、前記底部と前記張出部との間において、前記コンテナ搬送装置が通り抜けられるように設けられており、
前記コンテナが直接載置された前記コンテナ搬送装置が、陸上から前記サイドランプウェイ及び前記スターンランプウェイの少なくとも一方を介してそのまま船内に進入し、当該コンテナ搬送装置のリフト部を上昇させて前記コンテナを支持した状態で、複数の前記コンテナ設置スペース間を通り抜けできるように前記張出部の高さ位置が設定されていることを特徴とするコンテナ輸送船。
【請求項2】
複数のコンテナをコンテナ輸送船内へ搬送するコンテナの搬送方法であって、
船外に配置されたコンテナをコンテナ搬送装置に直接載置する載置工程と、
前記コンテナ輸送船内に複数の前記コンテナ搬送装置で前記コンテナを搬送する搬送工程と、
前記コンテナが設置される複数のコンテナ設置スペースにそれぞれ設けられるとともに前記コンテナを支持する複数の張出部を備えたコンテナ設置機構に前記コンテナ搬送装置から前記コンテナを設置する設置工程と、
前記設置工程の後、空になった前記コンテナ搬送装置を船外に移動させる移動工程と、を含み、
前記コンテナ設置スペースを、コンテナ輸送船の全長方向、幅方向及び高さ方向に複数個設け、
前記コンテナ設置スペースは、底部、複数の支柱及び天井部を備えており、
前記コンテナ設置機構は、前記コンテナ設置スペースに設けられ前記コンテナが設置されるコンテナサポートであって、複数の前記支柱からそれぞれ内側に張り出した複数の張出部を備えており、
前記コンテナ搬送装置が走行する搬送路が、前記底部と前記張出部との間において、前記コンテナ搬送装置が通り抜けられるように設けられており、
前記搬送工程では、前記コンテナが直接載置された前記コンテナ搬送装置が、陸上からサイドランプウェイ又はスターンランプウェイを介してそのまま船内に進入し、当該コンテナ搬送装置のリフト部を上昇させて前記コンテナを支持した状態で、複数の前記コンテナ設置スペース間を通り抜けることを特徴とするコンテナの搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ輸送船及びコンテナの輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナターミナルに配置された複数のコンテナをコンテナ輸送船に搬送する搬送方法が知られている(例えば、特許文献1)。この搬送方法では、ヤードクレーンでコンテナを搬送車両に載置する第一工程と、コンテナが配置された搬送車両をコンテナ輸送船に横付けする第二工程と、ガントリークレーンでコンテナをコンテナ輸送船内に搬送する第三工程と、を連続的に行う。コンテナ同士を高さ方向に複数層積み上げることで多くのコンテナを積載することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-210113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の搬送方法であると、数台のガントリークレーンで数千個のコンテナの荷下ろしを行うため、全てのコンテナの搬送が完了するまでに多くの時間を要するという問題がある。ガントリークレーンでコンテナを吊り上げ、コンテナ輸送船の所定の位置にコンテナを設置し、また、搬送車両の待機位置に戻るまでの間、次のコンテナを載せた搬送車両は待機位置で待機しなければならない。数千個のコンテナを搬送するため、この待機時間が長いと全体の荷役時間も長くなる。また、ガントリークレーンを操作するには熟練を要するため、オペレーターの人員に制限があるという問題がある。
【0005】
また、コンテナは複数層に積み上げられるため、寄港地で搬送するコンテナの上に搬送しないコンテナが積載されている場合、上段のコンテナを一旦搬送した後、下段のコンテナを搬送し、改めて上段のコンテナを設置し直すという積み替え工程が発生し、全体の荷役時間が長くなるという問題も生じる。
【0006】
また、港湾の荷役能力の向上、あるいは新たなコンテナターミナルの建設のためにはガントリークレーンの増設や新設が必要となるが、ガントリークレーンの購入費用やガントリークレーン設置に耐え得る地盤整備費用など莫大な初期投資が必要となる。また、コンテナ輸送船は、そのサイズに見合ったガントリークレーンが設置されている港湾にのみしか入港することができず、現状の輸送システムでは荷役できる港湾が限定され物流効率が悪化するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために創案されたものであり、短時間で容易にコンテナを搬送することができるコンテナ輸送船及びコンテナの搬送方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のコンテナ輸送船は、船体の全長方向、幅方向及び高さ方向に複数個設けられ、コンテナが設置されるコンテナ設置スペースと、前記コンテナ設置スペースにそれぞれ設けられ、前記コンテナを設置するコンテナ設置機構と、前記コンテナを搬送するコンテナ搬送装置が通行する搬送路と、前記コンテナ搬送装置が船体の高さ方向に移動するための船内ランプウェイと、前記コンテナ搬送装置が船体内外を行き来するサイドランプウェイ及びスターンランプウェイの少なくとも一方と、を有し、前記コンテナ設置スペースは、底部、複数の支柱及び天井部を備えており、前記コンテナ設置機構は、前記コンテナ設置スペースに設けられ前記コンテナが設置されるコンテナサポートであって、複数の前記支柱からそれぞれ内側に張り出した複数の張出部を備えており、前記搬送路は、前記底部と前記張出部との間において、前記コンテナ搬送装置が通り抜けられるように設けられており、前記コンテナが直接載置された前記コンテナ搬送装置が、陸上から前記サイドランプウェイ及び前記スターンランプウェイの少なくとも一方を介してそのまま船内に進入し、当該コンテナ搬送装置のリフト部を上昇させて前記コンテナを支持した状態で、複数の前記コンテナ設置スペース間を通り抜けできるように前記張出部の高さ位置が設定されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数のコンテナをコンテナ輸送船内へ搬送するコンテナの搬送方法であって、船外に配置されたコンテナをコンテナ搬送装置に直接載置する載置工程と、前記コンテナ輸送船内に複数の前記コンテナ搬送装置で前記コンテナを搬送する搬送工程と、前記コンテナが設置される複数のコンテナ設置スペースにそれぞれ設けられるとともに前記コンテナを支持する複数の張出部を備えたコンテナ設置機構に前記コンテナ搬送装置から前記コンテナを設置する設置工程と、前記設置工程の後、空になった前記コンテナ搬送装置を船外に移動させる移動工程と、を含み、前記コンテナ設置スペースを、コンテナ輸送船の全長方向、幅方向及び高さ方向に複数個設け、前記コンテナ設置スペースは、底部、複数の支柱及び天井部を備えており、前記コンテナ設置機構は、前記コンテナ設置スペースに設けられ前記コンテナが設置されるコンテナサポートであって、複数の前記支柱からそれぞれ内側に張り出した複数の張出部を備えており、前記コンテナ搬送装置が走行する搬送路が、前記底部と前記張出部との間において、前記コンテナ搬送装置が通り抜けられるように設けられており、前記搬送工程では、前記コンテナが直接載置された前記コンテナ搬送装置が、陸上からサイドランプウェイ又はスターンランプウェイを介してそのまま船内に進入し、当該コンテナ搬送装置のリフト部を上昇させて前記コンテナを支持した状態で、複数の前記コンテナ設置スペース間を通り抜けることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、船体に設けられた複数のコンテナ設置スペースに、複数のコンテナ搬送装置で連続的にコンテナを搬送するため、コンテナの搬送サイクルを短くすることができるとともに、搬送時の待機時間を無くすか、短くすることができる。これにより、コンテナの荷役時間を短縮することができる。
【0011】
また、本発明によれば、コンテナ設置スペースはコンテナを独立に設置できるため、例えば船内に搭載したコンテナ搬送装置を用いて航海中にコンテナの位置を移動させることで荷役時のコンテナ積み替え作業を省き、荷役時間の短縮を図ることができる。
また、本発明によれば、コンテナを設置するためにガントリークレーンのような設備は必要なく、コンテナ搬送装置が船体内外に行き来するためのスターンランプウェイ又はサイドランプウェイが横付けできる設備さえあれば十分荷役作業を行うことができるため、初期投資を抑えて既存の港湾に対してコンテナ荷役が行えるようになる。
【0012】
また、本発明によれば、コンテナ搬送装置にコンテナを搬送させるため、ガントリークレーンのような大型機械が不要となり、オペレーターの技術の制限を受けることもない。また、本発明によれば、コンテナサポートにコンテナを設置するだけで、コンテナを船内に容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンテナ輸送船及びコンテナの搬送方法によれば、短い荷役時間で容易にコンテナを搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るコンテナ輸送船を示す概略側面図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3】本実施形態に係るコンテナ設置スペースを示す縦断面図である。
図4】本実施形態に係るコンテナ設置スペースを示す側断面図である。
図5】本実施形態に係るコンテナ搬送装置を示す斜視図である。
図6】本実施形態に係る設置工程を示す縦断面図である。
図7】本実施形態に係るコンテナの搬送システムを示すブロック図である。
図8】本実施形態に係るコンテナの搬送システム及びコンテナの搬送方法を示す概略平面図である。
図9】本実施形態に係るコンテナの搬送方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態に係るコンテナ輸送船、コンテナの搬送システム及びコンテナの搬送方法について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1,2に示すように、本実施形態に係るコンテナ輸送船100は、複数のコンテナCを輸送する船舶である。
【0018】
コンテナ輸送船100は、本体部1と、居住部2と、推進部3とを主に備えている。本体部1は、船体の大部分を占める部分であって、コンテナCを設置する複数のコンテナ設置スペース10が設けられる部位である。居住部2は、船員が居住する居住区となる部位である。推進部3は、船体を推進させる駆動源となる部位である。推進部3は、バッテリを用いた駆動方式でも、スクリューとエンジンで構成される駆動方式であってもよい。
【0019】
船体の船弦には、船内と船外とを結ぶ連結傾斜路5(スターンランプウェイ5A及びサイドランプウェイ5B)が設けられている。スターンランプウェイ5A及びサイドランプウェイ5Bは、後記するコンテナ搬送装置30が船体内外を行き来するための出入り口である。コンテナCの荷役を行う場合はスターンランプウェイ5A及びサイドランプウェイ5Bを開いて岸壁と接続し、出航する際にはスターンランプウェイ5A及びサイドランプウェイ5Bを閉じる。なお、本実施形態では、スターンランプウェイ5A及びサイドランプウェイ5Bを設けたが、数を限定するものではない。スターンランプ5A及びサイドランプウェイ5Bの少なくとも一方を備えた形態であってもよい。
【0020】
図8に示すように、本体部1の内部には、船内ランプウェイ6が設けられている。船内ランプウェイ6は、後記するコンテナ搬送装置30が上階及び下階のデッキを昇り降りするための走路である。船内ランプウェイ6は、後記する各デッキの搬送路25に連通している。船内ランプウェイ6は、本実施形態では一箇所に設けているが、複数箇所に設けてもよいし、どの位置に設けてもよい。
【0021】
図1及び図2に示すように、コンテナ設置スペース10は、コンテナCが設置されるスペースであって、本体部1の内部において全長方向、幅方向及び高さ方向に格子状に複数個設けられている。図1及び図2に描画したコンテナ設置スペース10の個数はあくまで例示であって、個数を限定するものではない。コンテナ設置スペース10は、図3及び図4に示すように、複数の支柱18と、底部21と、天井部23とで囲まれて構成されており、これらは船体構造の一部で構成されていてもよい。
【0022】
船体には、全長方向、幅方向に底部21と天井部23が延在し、それらを繋ぐように複数の支柱18が設けられている。隣り合う支柱18同士には、張出部24が設けられている。コンテナ設置スペース10の周りに壁は設けられておらず連通している。つまり、隣り合うコンテナ設置スペース10,10同士は連通している。
【0023】
底部21は、コンテナ設置スペース10の下部を形成するとともに、後記するコンテナ搬送装置30が通行する部位である。底部21は、階下のコンテナ設置スペース10の天井部を兼用している。コンテナ設置スペース10を構成する4つの支柱18には、内側に向けて張り出す張出部24がそれぞれ形成されている。4つの張出部24はコンテナCの四角を支持する部位である。なお、本実施形態では4つの張出部24でコンテナCを支持したが、コンテナCを支持できれば個数を制限するものではない。
【0024】
張出部24でコンテナCを支持するため、張出部24,24間の最短距離は、コンテナCの全長方向の寸法及び幅方向の寸法よりも短くなっている。張出部24の断面形状は、本実施形態では全長方向断面では長方形、幅方向断面では三角形になっているが、コンテナCを設置可能であれば他の形状であってもよい。4つの張出部24でコンテナCが設置される「コンテナサポート(コンテナ設置機構)」を構成している。天井部23は、コンテナCの上面と隙間をあけて平行に配置される部位である。天井部23は、上階のコンテナ設置スペース10の底部21を兼用している。
【0025】
天井部23の上面は、上階のコンテナ設置スペース10の底部21を兼用するデッキとなっており、天井部23の下面にはデッキを支持する全長方向に縦通する骨材G1や桁材H1(ロンジやガーダー)がコンテナCの上面と十分な隙間をあけて配置され、それらの骨材G1や桁材H1を支持するための幅方向に配置される桁材H2が支柱18と等間隔で配置される。一般に船内ランプウェイを設ける船では貨物の搬入搬出の自由度を高めるために、極力支柱や隔壁といった構造部材を削減しているため、結果としてデッキを支持するための骨材や桁材が大型化し、船内の高さ方向のスペースを犠牲にしてしまうことがある。
【0026】
この点、本実施形態ではコンテナ設置のための支柱18が格子状に密に船内に設けられているため、通常の船内ランプウェイを設ける船に比べて骨材G1や桁材H1,H2の高さ方向のサイズを小さくすることができ、船内スペースをより有効に活用する、あるいはコンテナを設置する階層の底部21から天井部23の距離を最小限にすることで船自体の高さを低く抑えることが可能となる。なお、後記のコンテナ搬送装置30が全長方向及び幅方向へ自由に移動できる機構を持つため、支柱などの構造部材を削減する必要はなく、支柱18や骨材G1、桁材H1,H2は移動経路と干渉しない配置とできればよい。
【0027】
コンテナ設置スペース10のうち、張出部24よりも下の空間が、搬送路25となる。搬送路25は、後記するコンテナ搬送装置30が通行するスペースである。張出部24の形状及び高さ位置(搬送路25の高さ寸法)は、コンテナCが設置されたコンテナ搬送装置30が干渉しないように形成されている。搬送路25は、船体の全長方向及び幅方向に直線状に連続して形成されている。つまり、コンテナ搬送装置30は、搬送路25を通ることで、船体の全長方向及び幅方向に移動することができるため、スターンランプウェイ5A又はサイドランプウェイ5Bに効率よくたどり着くことができる。
【0028】
図5は、本実施形態に係るコンテナ搬送装置を示す斜視図である。図5に示すように、コンテナ搬送装置30は、スターンランプウェイ5A若しくはサイドランプウェイ5B、船内ランプウェイ6及び搬送路25を通り、コンテナCをコンテナターミナルCTからコンテナ輸送船100へ搬送する装置である。また、コンテナ搬送装置30は、コンテナCをコンテナ輸送船100内に設置した後、搬送路25、船内ランプウェイ6及びスターンランプウェイ5A若しくはサイドランプウェイ5Bを通り、空になった状態でコンテナターミナルCTに戻ってくる装置である。
【0029】
なお、コンテナ搬送装置30は、本実施形態では無人で稼働するものであるが、有人であってもよい。また、コンテナ搬送装置30は、本実施形態では電池で稼働するものであるが、他の駆動源で稼働する形態であってもよい。
【0030】
コンテナ搬送装置30は、本体31と、複数のタイヤ32と、制御部33と、リフト部34とを有している。本体31は、コンテナCを搬送可能な幅と長さを備えている。本体31の内部には、コンテナ搬送装置30を駆動させるためのバッテリなどが搭載されている。制御部33は、コンテナ搬送装置30を制御する部位であって、制御装置50と制御信号の送受信が可能な通信部を備えている。
【0031】
リフト部34は、コンテナCが載置される部位であるとともに、本体31に対してコンテナCを昇降させることができる部位である。つまり、リフト部34を上昇させると数十センチほどコンテナCが上昇し、リフト部34を降下させると元の高さ位置まで戻る。当該元の高さ位置は、張出部24の上面よりも低い位置に設定されている。リフト部34の全長寸法及び幅寸法は、張出部24,24間(全長方向及び幅方向の間)の各最短距離よりも短くなっている。
【0032】
図6に示すように、コンテナCをコンテナ設置スペース10に設置する場合(設置工程)は、リフト部34を上昇させた状態でコンテナ設置スペース10に進入し、コンテナ搬送装置30を停止させる。その後、リフト部34を降下させるだけで、4つの張出部24にコンテナCを設置させることができる。より詳しくは、リフト部34の上面が、張出部24,24の上面よりも下方に位置するまでリフト部34を降下させてコンテナCを4つの張出部24に設置する。
【0033】
コンテナ搬送装置30は、前方向又は後方向に加え、左右方向に旋回する構成であってもよい。また、例えば、マテリアルハンドリングで用いられる搬送装置(搬送車両、搬送ロボット)のように、前進、後進に加え、真横方向に移動可能な構成であってもよい。また、一つのコンテナCについて、複数の搬送装置を用いて搬送してもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係るコンテナの搬送システム200及びコンテナの搬送方法について説明する。コンテナの搬送システム200は、図7及び図8に示すように、コンテナターミナルCTに載置された複数のコンテナCを、コンテナ輸送船100に自動で搬送するシステムである。図7に示すように、搬送システム200は、複数のコンテナ搬送装置30(30A,30B・・・30n)と、ヤードクレーン40と、制御装置50とを備えている。
【0035】
ここでは、図8のコンテナターミナルCTに載置されたコンテナC1,C2,C3,C4を、船内に設けられたコンテナ設置スペース10A,10B,10C,10Dにそれぞれ搬送する場合を例示する。
【0036】
図7及び図8に示すように、制御装置50は、コンテナターミナルCTに設けられた制御室Nに設けられている。制御装置50は、演算部51(CPU(Central Processing Unit))と、キーボード、タッチパネル等の入力部52と、モニター、ディスプレイ等の表示部53と、SSD(Solid State Drive )、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)等の記憶部54とを備えている。また、制御装置50は、各コンテナ搬送装置30との間で制御信号を送受信可能な通信部を備えている。記憶部54には、例えば、搬送プログラム55が記憶されている。
【0037】
搬送プログラム55は、各コンテナ搬送装置30を、予め設定された所定のコンテナ設置スペース10に搬送するプログラムである。コンテナターミナルCTに載置された各コンテナCは、船体のどのコンテナ設置スペース10に設置されるか予め設定されている。図8に示すように、例えば、コンテナC1はコンテナ設置スペース10Aに、コンテナC2はコンテナ設置スペース10Bに、コンテナC3はコンテナ設置スペース10Cに、コンテナC4はコンテナ設置スペース10Dに設置されるように予め設定されている。
【0038】
搬送システム200では、制御装置50が搬送プログラム55を実行することにより、図9に示すように、載置工程(S1)と、搬送工程(S2)と、設置工程(S3)と、移動工程(S4)とを行う。
【0039】
載置工程(S1)は、ヤードクレーン40でコンテナCをコンテナ搬送装置30に載置する工程である。コンテナ搬送装置30は、ヤードクレーン40の下に設定されたコンテナ受け取り位置40aで待機する。ヤードクレーン40でコンテナC1を吊り上げ、コンテナ搬送装置30にコンテナC1が載置されるとともに、コンテナ搬送装置30とコンテナC1とがロック状態となったことを契機にコンテナ搬送装置30が発進する。
【0040】
なお、ヤードクレーン40は、本実施形態ではオペレーターが操作することでコンテナCをコンテナ搬送装置30に載置したが、これに限定されるものではない。例えば、ヤードクレーン40に読み取り部を設け、コンテナCに付与されたコンテナ識別情報(コンテナ番号、2次元コード(バーコード、QRコード)等)を読み取って、無人(自動)で所定のコンテナCの吊り上げ作業及びコンテナ搬送装置30への載置作業を行ってもよい。
【0041】
搬送工程(S2)は、コンテナCが載置されたコンテナ搬送装置30を用いて、コンテナCを予め設定されたコンテナ設置スペース10まで搬送する工程である。つまり、コンテナC1の場合、搬送工程では、コンテナ受け取り位置40aからスターンランプウェイ5Aを介して、コンテナ設置スペース10Aまで搬送する工程である。コンテナ搬送装置30の走行ルートは予め設定されており、コンテナ搬送装置30はその走行ルートに沿って自動(無人)で走行する。
【0042】
まず、コンテナ搬送装置30は、コンテナ受け取り位置40aから所定の搬送路25へコンテナCを搬送する。コンテナC1の場合、コンテナ搬送装置30は、コンテナ設置スペース10Aに対応する搬送路25(例えば、N階の左からn番目の搬送路)を通行する。
【0043】
次に、コンテナ搬送装置30は、所定のコンテナ設置スペース10で停止する。コンテナC1の場合、コンテナ搬送装置30は、コンテナ設置スペース10Aの中央で停止する(図6の状態)。
【0044】
設置工程(S3)は、コンテナ設置スペース10にそれぞれ設けられたコンテナ設置機構(4つの張出部24)でコンテナCを設置する工程である。コンテナ搬送装置30は、コンテナ設置スペース10に到着したことを契機に、リフト部34を降下させる。これにより、コンテナCが張出部24に設置される。本実施形態では、コンテナC1が、コンテナ設置スペース10Aの張出部24に設置される。
【0045】
移動工程(S4)は、設置工程の後、空になったコンテナ搬送装置30を船外に移動させる工程である。移動工程では、コンテナ搬送装置30は、リフト部34を最下位置まで降下させた(コンテナCを設置させた)ことを契機に、搬送路25を全長方向又は幅方向に制限されることなく通り、船内ランプウェイ6、サイドランプウェイ5Bを経由して再びコンテナ受け取り位置40aまで戻る。空荷のコンテナ搬送装置30は、積荷状態のコンテナ搬送装置30と異なるルートを通ることができるので自動車運搬船の自動車のように連続的にコンテナCを搬送することができる。
【0046】
サイドランプウェイ5Bからコンテナ受け取り位置40aまでの走行ルートも予め設定されており、コンテナ搬送装置30は、当該走行ルートに沿って走行する。ここまでが、コンテナ搬送装置30の1サイクルである。本実施形態では、このサイクルを複数台のコンテナ搬送装置30(30A,30B・・・30n)を用いて連続的に行う。これにより、コンテナC2,C3,C4を、コンテナ設置スペース10B,10C,10Dにそれぞれ連続的に搬送することができる。
【0047】
なお、コンテナ設置スペース10に設置されたコンテナCを船内から船外へ搬送する場合は、リフト部34を降下させた状態で、空のコンテナ搬送装置30を所定のコンテナ設置スペース10に移動させて停止させる。そして、リフト部34を上昇させてコンテナCと張出部24とを離間させる。その状態を維持したまま、コンテナ搬送装置30で搬送路25を走行させれば、当該コンテナCを船外へ搬送することができる。
【0048】
また、コンテナ設置スペース10に読み取り部及びセンサを設けて、各コンテナ搬送装置30又は各コンテナCに付与された識別情報(コンテナ搬送装置番号、コンテナ番号、2次元コード(バーコード、QRコード)等)を読み取って、コンテナCと搬送先との整合を行うようにしてもよい。また、センサを設けてコンテナ搬送装置30が所定の位置に到達したか否かを判定するようにしてもよい。
【0049】
以上説明した本実施形態に係るコンテナ輸送船、コンテナの搬送システム及びコンテナの搬送方法によれば、この搬送サイクルを複数台のコンテナ搬送装置30で連続的に行うことで、荷役時間を大幅に短縮することができる。つまり、従来は、コンテナ輸送船100に搬送車両などを横付けしてコンテナCが船内に吊り上げられるまで待機しなければならなかったが、本実施形態ではコンテナCを載置したまま船内に進入することができるため、待機時間を無くすか、短くすることができる。
【0050】
また、コンテナ搬送装置30でコンテナCを搬送させるため、ガントリークレーンが不要となる。これにより、ガントリークレーンの購入費用やガントリークレーン設置に耐え得る地盤整備費用などの初期投資が不要となるため、設備コストを低減することができる。また、従来、コンテナ輸送船は、そのサイズに見合ったガントリークレーンが設置されている港湾にのみしか入港することができなかったが、本実施形態であれば、コンテナ搬送装置30が船体内外に行き来するためのスターンランプウェイ5A又はサイドランプウェイ5Bが横付けできる設備さえあれば、そのような制約を受けることもないため物流効率を高めることができる。
【0051】
また、コンテナ設置スペース10は、複数の支柱18、底部21及び天井部23で構成されており、コンテナ設置機構(コンテナサポート)は、各支柱18からそれぞれ内側に張り出した4つの張出部24で構成している。かかる構成によれば、張出部24にコンテナCを設置するだけで、コンテナCを船内に容易に設置することができる。また、本実施形態の設置工程によれば、コンテナCを上昇させた状態からリフト部34を降下させるだけでコンテナCを張出部24に設置できるため、設置作業を容易かつ短時間で行うことができる。また、リフト部34が降下した状態から上昇させるだけで、船内に設置されたコンテナCを船外に容易かつ短時間で搬送することができる。
【0052】
また、図3及び図4に示すように、リフト部34の全長寸法及び幅寸法は、張出部24,24間(全長方向及び幅方向の間)の各最短距離よりも短くなっている。換言すると、全長方向及び幅方向に隣り合うコンテナ設置スペース10,10間において、コンテナ搬送装置30が全長方向及び幅方向に移動可能に構成されている。これにより、コンテナCを載置してリフト部34を上昇させた状態で、コンテナ搬送装置30をコンテナ設置スペース10,10間の全長方向及び幅方向の両方で走行することができる。これにより、搬送効率をより高めることができる。
【0053】
また、従来、コンテナCは複数層に積み上げられるため、寄港地で搬送するコンテナCの上に搬送しないコンテナが積載してある場合、上段のコンテナを一旦搬送した後、下段のコンテナを搬送し、改めて上段のコンテナを設置し直すという積み替え工程が発生するという問題があった。しかし、本実施形態によれば、コンテナ搬送装置30が搬送路25を全長方向及び幅方向に走行することができるため、コンテナ搬送経路を確保するための積み替え作業を行うのみで所定のコンテナCを船外に搬送することできる。これにより、荷役の作業効率を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、コンテナ設置スペース10はコンテナCを独立に設置できるため、例えば、船内に搭載されたコンテナ搬送装置30を用いて、航海中にコンテナCの位置を移動させることで荷役時のコンテナ積み替え作業を省き、荷役時間の短縮を図ることができる。また、本実施形態によれば、コンテナ搬送装置30にコンテナCを搬送させるため、ガントリークレーンのような大型機械が不要となり、オペレーターの技術の制限を受けることもない。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、コンテナ設置機構は、コンテナCに形成された係合部と、コンテナ設置スペース10に形成された被係合部とを係合又は解除させることで構成してもよい。また、コンテナ設置機構は、磁力を用いてコンテナ設置スペース10にコンテナCを脱着させるように構成してもよい。
【0056】
また、船外のコンテナCをコンテナ設置スペース10に設置した後、空になった当該コンテナ搬送装置30を、他のコンテナ設置スペース10に移動させ、当該位置のコンテナCを船外に運び出すような制御を行ってもよい。
【0057】
また、前記した搬送プログラム55は、あくまで一例であって、他の制御方法でコンテナCを搬送してもよい。また、制御装置50と、コンテナ搬送装置30との通信は、インターネット、イントラネット等の通信ネットワークを通じて行ってもよい。つまり、制御装置50は、記録媒体から搬送プログラムを読みだしたり、通信ネットワークを介して搬送プログラムを受信したりすることで、搬送プログラムを取得して実行することができる。また、各コンテナ搬送装置30に読み取り部を設け、各コンテナCに付与された識別情報(コンテナ番号、2次元コード(バーコード、QRコード)等)とコンテナ搬送装置30に付与された識別情報(コンテナ搬送装置番号、2次元コード(バーコード、QRコード)等)を関連付けて、当該コンテナ搬送装置30の走行記録とともに記憶部54に記憶させてもよい。これにより、コンテナCの搬送管理を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
100 コンテナ輸送船
1 本体部
2 居住部
3 推進部
5A スターンランプウェイ
5B サイドランプウェイ
6 船内ランプウェイ
10 コンテナ設置スペース
21 底部
18 支柱
23 天井部
24 張出部
C コンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9