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特許7504823情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240617BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240617BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J13/00 311R
H02J13/00 301B
H02J3/00 130
H02J13/00 311U
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021039447
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139181
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知史
(72)【発明者】
【氏名】葛西 智広
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 道彦
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207745(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136419(WO,A1)
【文献】特開2019-134522(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215967(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家が電力系統から供給される電力の上限値と、前記電力系統から前記需要家に供給される電力の下限値とに基づき、前記需要家が有する蓄電池の充放電計画を作成する処理部と、
前記充放電計画に基づき前記蓄電池に放電又は充電を指示する充放電指令を送信する送信部と、を備え、
前記充放電指令は、前記放電及び前記充電の実行有無を含み、
少なくとも1つの前記需要家の前記蓄電池へ送信する前記充放電指令は、前記放電を実行する場合の放電電力の値及び前記充電を実行する場合の充電電力の値を含まない、
情報処理装置。
【請求項2】
前記蓄電池の前記放電電力の値は第1電力値であり、前記蓄電池の前記充電電力の値は第2電力値である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記需要家へ供給する電力の合計の目標値に基づき、前記充放電計画を作成する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記需要家の電力メータの測定値の合計と、前記目標値との差分に基づいて、前記充放電計画を作成する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記需要家の電力需給を制御する制御指令が受信された場合に、前記充放電計画を作成し、
前記制御指令は、前記需要家に供給する電力の減少量又は増加量を示す制御量を含み、
前記目標値は、基準となる電力量から前記制御量を減算した値、又は前記基準となる電力量に前記制御量を加算した値である
請求項3又は4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記需要家の電力需給を制御する制御指令が受信された場合に、前記充放電計画を作成し、
前記充放電指令の送信後、前記需要家の電力メータから測定値を受信し、
前記需要家間の前記測定値の合計と、前記目標値とに基づき、前記制御指令の実行が成功したか否かを決定する
請求項3~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記需要家の電力需要に基づき、前記充放電計画を作成する
請求項1~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記需要家の電力メータの測定値の履歴と、前記蓄電池の充電及び放電の少なくとも一方の履歴とに基づいて、前記需要家の前記電力需要を予測する
を備えた請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記電力需要の予測値と、前記上限値と、前記下限値とに基づき、前記需要家に放電を要請した場合に前記蓄電池から放電される放電量及び前記需要家に充電を要請した場合に前記蓄電池に充電される充電量を推定し、
前記処理部は、推定した前記放電量及び前記充電量に基づいて前記充放電計画を作成する
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記蓄電池に蓄積されている電力量及び前記蓄電池に充電可能な空き容量の少なくとも一方に基づいて、前記充放電計画を作成する
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記需要家の電力需要が低い第1条件を満たす期間に対して前記蓄電池に放電指示を送信し、前記放電指示の送信後、前記需要家の電力メータの測定値を取得し、取得した前記測定値に基づき、前記下限値を推定する
請求項1~10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記需要家の電力需要が高い第2条件を満たす期間に対して前記蓄電池に放電指示を送信し、前記放電指示の送信後、前記下限値よりも大きくなった時刻の測定値と、前記放電指示で放電を指示する前の前記電力メータの測定値とに基づき、前記蓄電池の放電電力値を推定する
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記需要家の電力需要が高い第3条件を満たす期間に対して前記蓄電池の充電指示を送信し、前記充電指示の送信後、前記需要家の電力メータの測定値を取得し、取得した前記測定値に基づき、前記上限値を推定する
請求項1~12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記需要家の電力需要が低い第4条件を満たす期間に対して前記蓄電池の放電指示を送信し、前記放電指示の送信後、前記下限値よりも大きくなった時刻の測定値と、前記放電指示で放電を指示する前の前記電力メータの測定値とに基づき、前記蓄電池の充電電力値を推定する
を備えた請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記電力系統を管理する上位システムから、前記需要家の電力需給を制御する制御指令を受信する受信部を備え、
前記処理部は、前記制御指令が受信された場合に、前記充放電計画を作成する、
請求項1~14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に係る情報処理装置と、
前記情報処理装置と前記蓄電池とに関する情報を送受信可能な前記需要家のゲートウェイと、
前記蓄電池と
を備えた情報処理システム。
【請求項17】
需要家が電力系統から供給される電力の上限値と、前記電力系統から前記需要家に供給される電力の下限値とに基づき、前記需要家が有する蓄電池の充放電計画を作成し、
前記充放電計画に基づき前記蓄電池に放電又は充電を指示する充放電指令を送信し、
前記充放電指令は、前記放電及び前記充電の実行有無を含み、
少なくとも1つの前記需要家の前記蓄電池へ送信する前記充放電指令は、前記放電を実行する場合の放電電力の値及び前記充電を実行する場合の充電電力の値を含まない、
情報処理方法。
【請求項18】
需要家が電力系統から供給される電力の上限値と、前記電力系統から前記需要家に供給される電力の下限値とに基づき、前記需要家が有する蓄電池の充放電計画を作成するステップと、
前記充放電計画に基づき前記蓄電池に放電又は充電を指示する充放電指令を送信するステップと
をコンピュータに実行させ、
前記充放電指令は、前記放電及び前記充電の実行有無を含み、
少なくとも1つの前記需要家の前記蓄電池へ送信する前記充放電指令は、前記放電を実行する場合の放電電力の値及び前記充電を実行する場合の充電電力の値を含まない、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
需要家群の合計需要を上下限範囲内に収めることで需給バランスを調整し、電力系統の安定を維持することが求められる。需要家(たとえば住宅)の蓄電池は、有休の容量(使用されずに蓄電池に蓄積されている充電量)が大きいため、住宅の蓄電池を多数集めれば一定規模のリソースが得られる。したがって、住宅の蓄電池を多数集めて電力量を確保することが考えられる。しかしながら、電力量の総量の変動が大きく、需給調整は難しい場合がある。
【0003】
また、住宅の蓄電池に対しては充電及び放電の指示(充放電指示)しかできず、充電電力値又は放電電力値の制御(例えばkW単位の制御)を行うことができない場合が多い。また需要家における実際の充放電量は、蓄電池の出力特性ではなく、(蓄電池の可能な出力より小さいことが多い)契約電力や逆潮流の制約により決まる。このため、需給調整の要請であるDR(デマンドレスポンス)要請時における需要家の電力調整量は事前に分からないことが多い。このため、需要家の合計需要量(合計電力量)を、精度高く目標値に合わせることとは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6716070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、需給調整を高精度に行うことを可能にする情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の情報処理装置は、需要家が電力系統から供給される電力の上限値と、前記電力系統から前記需要家に供給される電力の下限値とに基づき、前記需要家が有する蓄電池の充放電計画を作成する充放電計画作成部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に関わる全体システム構成の概略を示す図。
図2】需給調整市場の商品区分を示す図。
図3】三次調整力[1]、及び三次調整力[2]の要件を詳細に示す図。
図4】VPP実証における制御指示のフローとRA(リソースアグリゲータ)の位置づけを示す図。
図5】VPP実証における実績値算出のフローを示す図。
図6A】三次調整力[2]の事前審査方法を説明する図。
図6B】三次調整力[2]の事前審査方法を説明する図。
図7】三次調整力[1]における成功判定の例を説明するための図。
図8】滞在率評価のベースとなる基準値の申告に関する説明図。
図9】本実施形態に係るアグリゲーション装置と需要家のブロック図。
図10】需要家情報の一例を示す図。
図11】メータ値、及び蓄電池の充放電値の一例を示す図。
図12】メータ値が系統供給上限電力および系統供給下限電力の影響を受けることを模式的に表した図。
図13】電力削減指令の例を示す図。
図14】充放電計画の一例を示す図。
図15】充放電計画を作成する手順を概略的に示すフローチャート。
図16】DR最適化処理の概略図。
図17】放電時メータ予測値及び充電時メータ予測値との例を示す図。
図18】充放電計画の例を示す図。
図19】DR出力情報を画面に表示した一例を示す図。
図20】第2実施形態に係るアグリゲーション装置と需要家のブロック図。
図21】アグリゲーション装置のハードウェア構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に関わる全体システム構成の概略を示す図である。本実施形態は、大きく、電力を使用しかつ蓄電池27を保有する需要家10と、それぞれの需要家10に対して電力を供給する電力会社700と、電力需給の制御指令(図の例では電力削減指令)を出すDRAS(Demand Response Application Server)等の上位システム600と、需要家10を仲介するアグリゲーター200とを備える。図の例では需要家全体の需要(消費電力量)を減らすことを要請する「下げDR」を想定し、制御指令として削減指令を出しているが、需要家全体の需要(消費電力量)を増やすことを要請する「上げDR」の場合には、電力の消費指令を出すことになる。アグリゲーター200は、電力系統の運用に際して、発電又は配電を行う電力供給業者等の電力会社700と、電力を使用する需要家10とを仲介して、電力削減を目指す。アグリゲーター200は、電力会社700に対し電力削減を約束する一方で、配下の需要家10に電力削減計画(蓄電池27の充放電計画)を作成し、計画に沿って充電又は放電を要請(デマンドレスポンス(DR)要請)する。これにより、アグリゲーター200は、需要家全体としての電力削減の目標を確実に達成することを目指す。
【0010】
需要家10としては、主に住宅(低圧需要家)を想定するが、オフィスビル、商業ビル、公共施設、工場、等の高圧需要家や特別高圧需要家などであっても良い。また、電力会社700と上位システム600は一体であっても良い。また、電力会社700は、発電から配電までを一体的に運営する事業者であってもよいし、電力送配電事業者、小売事業者及び発電事業者の少なくともいずれか1つの事業者であっても良い。
【0011】
アグリゲーター200は、上位システム600からの削減指令に従って、需要家10に対してDRを要請(充電又は放電を要請)する。アグリゲーター200は本実施形態に係るアグリゲーション装置100を用いて、上位システム600からの削減指令と需要家10の情報(需要家情報)とに基づき、需要家10が保有する蓄電池27の充放電計画(DR計画)を作成する。アグリゲーター200は、DR計画に基づき、配下の需要家10(管理需要家とも呼ぶ)に、蓄電池27に対する制御指令であるDR要請(充電又は放電の要請)を行う。これにより、アグリゲーター200は、需要家全体としての電力の削減目標を達成する。需要家10の蓄電池27は、アグリゲーター200からの充電又は放電の要請に従って、充放電を制御する。
【0012】
アグリゲーター200が上位システム600及び電力会社700の少なくとも1つに含まれていても良い。またアグリゲーター200が2階層以上の構造となっており、上位システム600の代わりに、親アグリゲーターが子アグリゲーターに指令し、子アグリゲーターのアグリゲーション装置100が、親アグリゲーターと需要家10の間を仲介する構造であってもよい。
【0013】
以下では、本実施形態に係るアグリゲーション装置100の詳細について、2021年度開始予定の需給調整市場を想定して説明する。
【0014】
図2は、需給調整市場の商品区分を示す。図2は、第13回需給調整市場検討小委員会資料2より抜粋した資料に基づく。2021年度開始予定の需給調整市場では、応動時間等の違いに応じて、5種類の商品が提供される予定となっている。応動時間は、上位システム600から削減指令(削減要請とも呼ぶ)が出されてから、削減指令に反応までの時間である。5種類の商品は、一次調整力、二次調整力[1]、二次調整力[2]、三次調整力[1]、三次調整力[2]を含む。ネットワーク経由で需要家(住宅)を束ねるアグリゲーションの場合、少なくとも1分程度の通信遅延が想定されるため、三次調整力[1]、三次調整力[2]の2種類が主なターゲットと考えられる。
【0015】
図3は、三次調整力[1]、及び三次調整力[2]の要件を詳細に示す。図3は、令和2年度VPP事業共通実証仕様書より抜粋した資料に基づく。
【0016】
たとえば三次調整力[2]は、図3又は前述の図2に示すように、応動時間が45分以内となっている。また、継続時間(持続時間)は商品ブロック時間(3時間)、指令間隔(指令値変更間隔)が30分となっている。
【0017】
ここで商品ブロックとは、
・0時00分から3時00分まで
・3時00分から6時00分まで
・6時00分から9時00分まで
・9時00分から12時00分まで
・12時00分から15時00分まで
・15時00分から18時00分まで
・18時00分から21時00分まで
・21時00分から24時00分まで
のいずれかのことである。いずれの商品ブロックにおいても、継続時間は3時間である。
【0018】
指令間隔(指令値変更間隔)が30分であるため、たとえば、15時00分から18時00分までの商品ブロックの場合には、
・15時00分から15時30分まで
・15時30分から16時00分まで
・16時00分から16時30分まで
・16時30分から17時00分まで
・17時00分から17時30分まで
・17時30分から18時00分まで
の30分帯ごとに指令値(削減指令値等)が決定される。
【0019】
さらに応動時間45分以内であることから、たとえば、15時00分から15時30分までの期間に対する削減指令値は、14:15までに決定される。なお45分前までに上位システム600から削減指令をアグリゲーターが受信しない場合には、指令値は0(削減指令は無い)とみなされる。
【0020】
図4及び図5を用いてVPP(Virtual Power Plant)実証実験(https://sii.or.jp/vpp02/) などで行われている典型的なアグリゲーションの例を説明する。
図4は、VPP実証における制御指示のフローとRA(リソースアグリゲータ)の位置づけを示す図である。
図5は、VPP実証における実績値算出のフローを示す図である。
【0021】
図4において、制御指令であるDR指令(電力削減指令等)は、電力事業者が保有する最上位のDRAS600から、例えば、DR開始の15分前に、上位のアグリゲーションコーディネーター(AC)161を経由して、リソースアグリゲーター(RA)162に通知される。AC161及びRA162の組はアグリゲーター200に対応する。制御指令は、例えば19:00~22:00の間、10kW削減する指令を含む。RA162は、随時各需要家10から電力メータの測定値(メータ値と呼ぶこともある)や、蓄電池27の充放電量等の情報を収集している。RA162は、DR指令(制御指令)を通知されると、収集した情報に基づき、例えばDR開始2分前に、配下の各需要家の需要予測(デマンド予測)を行い、DR最適化処理を行う。DR最適化処理では、各需要家に要請する充放電の内容を決定し、DR指令(放電指令又は充電指令)を生成する。RA162は、算出したDR指令を制御要請として、例えばDR開始1分前に、各需要家に通知する。DR最適化処理と各需要家への制御要請の通知は、例えば5分毎に行う。図5に示すように、DR実施後におけるRA162配下の需要家10のメータ値を取得し、取得したメータ値の合計値により、DRの実績(DRの成功可否)が判定される。具体的には合計値がDRの目標値にどれだけ近いかでDRの実績が判定される。したがってRA162としては、各需要家の電力メータのメータ値の合計を目標値にできるだけ近づけるように、各需要家にDR要請(充放電の要請)を行うことで、配下の需要家の電力メータのメータ値を適切に制御することが求められる。
【0022】
次に、令和2年度VPP事業共通実証仕様書(https://sii.or.jp/vpp02/uploads/R2VPP kyoutujishousiyou.pdf)に基づき、現状想定される三次調整力の成功条件に関して述べる。
【0023】
上述の図3に示したようにVPP実証事業仕様書においては三次調整力[1]および三次調整力[2]の成功判定条件は、入札量(需給調整市場のΔkW約定量に相当)に対して実績需要量が±10%以内に滞在することと定められている。評価単位は三次調整力[1]では1分、三次調整力[2]では30分と定められている。一方、需給調整市場検討小委員会においては、三次調整力[2]の事前審査において、5分毎の電力削減量(電力調整量)を、上位システムから制御指令で指示する制御指示量(例えば削減指示量)に対して、約定量の±10%以内の範囲に収めることが要件として検討されている。
図6A及び図6Bは、三次調整力[2]の事前審査方法を説明する図である。図6A及び図6Bは、第10回需給調整市場検討小委員会資料3より抜粋した資料に基づく。図6Aにおける「応札を予定しているΔkW」が約定量に対応する。図6Bに示すように、ΔkW値以下の範囲で、上位システムからの電力の制御指示量に対して当該ΔkW値の±10%以内の範囲に、需要家全体の電力削減量を30分単位で調整する必要がある。換言すれば、目標値(後述する基準値から制御指示量だけ電力を調整した場合の電力)と、需要家全体の30分単位の平均電力値(30分値)との差分を、ΔkW約定量の±10%以内に収める必要がある(三次調整力[2]の場合。三次調整力[1]の場合は1分値を用いる)。
【0024】
図7は、三次調整力[1]における成功判定の例を説明するための図である。図7は、命和2年度VPP事業共通実証仕様書より抜粋した資料に基づいている。グラフG1は需要家全体の需要量(電力)の予測値に相当する基準値(詳細は図8を用いて後述)を表す。実線グラフG2は実際の需要量(電力)を表す。グラフG3は制御指示量を表す。
【0025】
たとえば三次調整力[1]の場合、制御時刻15分前に実際の制御量の指示が与えられる。その場合に、応動評価に関して、1分値(1分の平均電力値)が、目標値(=基準値-制御指示量)に対して、ΔkW約定量の±10%以内の幅に収まっていれば成功と判定する。換言すれば、需要削減量が(制御指示量+約定量の10%)~(制御指示量-約定量の10%)であれば、成功とする。
【0026】
図の例では、ΔkW約定量(ΔkW入札量)は1,000kWである。1,000kWの10%は100kWである。制御対象時刻9:00の15分前に制御指示が与えられ、制御指示量(削減指示量)が1,000kWである。(基準値-1,000)kWが目標値であり、アグリゲーターの需要調整後の電力値が目標値に対して±100kWであれば、すなわち需要削減量が1,100~900kWであれば、成功が判定される。商品ブロック時間に相当する制御対象時間(9:00~12:00)内における変更指示時刻(10:43)に、変更対象時刻(10:58)に対する制御量の変更指示が与えられる。変更指示時刻から変更対象時刻までは、1分平均値kWの削減量が、変更前後のいずれかの制御指示量に対して、ΔkW約定量の±10%の範囲に、収まっていれば成功とする。
【0027】
電力の1分電力値または30分電力値と、目標値との差分が、ΔkW約定量の±10%以内の範囲を成功区間S(図7参照)とする。三次調整力[1]の場合、1分電力値を用い、三次調整力[2]の場合、30分電力値を用いる。制御対象時間のうち、成功区間Sに入った時間の割合を滞在率と呼ぶ。滞在率は任意の時間単位(5分単位、制御対象時間の単位など)で算出されてよい。滞在率に応じて応動評価がなされてもよい。
【0028】
図8は、滞在率評価のベースとなる基準値の申告に関する説明図である。図8は、命和2年度VPP事業共通実証仕様書より抜粋した資料に基づいている。
【0029】
三次調整力[1]の場合、制御対象時間3.0時間+事前の0.5時間=3.5時間分の1分電力値(=210点)の基準値を、アグリゲーターが申告することとされている。基準値はアグリゲーターによる需要家全体の需要量の予測値に相当する。この基準値からの差分として、前述の目標値(=基準値―制御指令量)が決定されるため、基準値の計算精度はアグリゲーターにとって重要となる。以下、本実施形態のアグリゲーター200が用いるアグリゲーション装置100について詳細に説明する。
【0030】
図9は、本実施形態に係るアグリゲーション装置100と需要家10(需要家A,B,C,・・・)の構成を詳細に示すブロック図である。図9には、電力会社700等が有する電力系統500及びDRAS等の上位システム600も示される。図には需要家Aの構成のみ示しているが、需要家B、C・・・等も同様の構成を有する。
【0031】
アグリゲーション装置100の受信部110は、需要家10から1分ごとのメータ値31及び1分ごとの充放電値32(充電値及び放電値の少なくとも一方)を、通信ネットワーク400経由で取得する。通信ネットワーク400はインターネット等の広域ネットワークでも、ローカルエリアネットワークでも、プライベートネットワークでもよい。また受信部110は、上位システム600からの電力削減指令30(DR指令又は制御指令)を、通信ネットワーク400経由で取得する。電力削減指令30が受信されると、アグリゲーション装置100は、後述する充放電計画を作成し、充電指令33又は放電指令34を、需要家10に送信する。充放電計画の作成と、充電指令33又は放電指令34の送信とは、例えば一定時間(例えば5分毎)の間隔で行われる。
【0032】
充電指令33は、充電の実行有無を指示し、充電電力値(充電出力値)の指示は含まない。同様に、放電指令34は、放電の実行有無を指示し、放電電力値(出力値)の指示は含まない。需要家10の蓄電池27は所定の充電電力値又は所定の放電電力値で充電又は放電を行う。
【0033】
Echonet Liteと呼ばれる住宅向けの通信規格(https://echonet.jp/about/)では、蓄電池27は充放電の実行の有無の指令を受けることは必須要件とされているものの、kWのレベル(充電レベル又は放電レベル)の詳細な指令を受けることは、必須とはされていない。したがって、住宅用蓄電池の制御にあたっては、充放電の実行の有無を指定することはできるものの、kW単位の電力値(出力)の指定ができない場合があり得る。そのため本実施形態では、蓄電池27は充放電の実行有無の指令は受けられるものの、充電電力値及び放電電力値の指定はできないことを前提とする。但し、充電指令33又は放電指令34で、蓄電池27のkWレベルの充電電力値及び放電電力値の指定を行う構成も排除されない。
【0034】
需要家10は、電力系統500から電力の供給を受ける。供給される電力は、分電盤21を通じて、負荷22へ供給される。電力系統500から供給される電力量は、電力メータ20により例えば毎分測定される。また蓄電池27、太陽光パネル25、電気自動車26等は、PCS23を通じて、分電盤21と接続されている。
【0035】
蓄電池27は、HEMSなどのゲートウェイ24を通じて、外部からの信号、例えば充電指令33及び放電指令34の少なくとも一方を受信可能である。蓄電池27は、充電指令33又は放電指令34に基づき、充電又は放電を実行することができる。また蓄電池27は、充電又は放電した電力量を示す充放電値32を、ゲートウェイ24を通じて、アグリゲーション装置100に送信できる。電力メータ20は、測定したメータ値31をアグリゲーション装置100に送信できる。電力メータ20は、メータ値31を、ゲートウェイ24を経由せずに送信する。但し、メータ値31をゲートウェイ24経由で送信する構成も可能である。
【0036】
アグリゲーション装置100は、受信部110、送信部120、需要予測部130、充放電量推定部140、充放電計画作成部150、需要家データベース(DB)190、履歴DB191及び計画DB192を備える。
【0037】
アグリゲーション装置100は、本装置100の操作者であるユーザとの入出力インタフェース(I/F)180に有線又は無線で接続されている。入出力I/F180が通信ネットワーク400を介して、アグリゲーション装置100と接続されてもよい。入出力I/F180は、操作入力部160及び表示部170を備えている。操作入力部160はキーボード、マウス、タッチパネル、音声入力装置、ジェスチャ入力装置等の情報又はデータを入力するための装置である。表示部170は液晶表示装置、有機EL表示装置等の画面に情報又はデータを表示する装置である。需要家DB190には、各需要家の需要家情報220が格納されている。需要家情報220は、蓄電池27の充放電電力(充放電出力)221、電池容量(蓄電池満充電容量)222、系統供給上限電力223、系統供給下限電力224などの情報を含む。操作入力部160は、需要家情報220を入力する機能を有していてもよい。例えば、需要家情報220は入出力I/Fからのユーザの指示情報に基づき、任意の外部装置から需要家情報220をダウンロードして、需要家DB190に格納されてもよい。表示部170は需要家情報220、充放電計画204、及び後述するDR実行結果(DR出力情報)(図19参照)を表示する機能を有している。
【0038】
受信部110は通信ネットワーク400経由で、需要家10からメータ値(測定値)31及び充放電値32を受信する。たとえばメータ値31及び充放電値32を1分ごとに受信する。受信部110は、受信したメータ値31及び充放電値32を、履歴DB191に格納する。また、受信部110は、上位システム600からの制御指令の一例である電力削減指令30を受信する。
【0039】
需要予測部130は、履歴DB191に格納されたメータ値31を元に、各需要家の電力需要量を予測することにより、各需要家の需要予測値202(各需要家の電力需要の予測値)を算出する。
【0040】
充放電量推定部140は、需要予測値202と、需要家DB190における需要家情報220とを元に、各需要家に充電を要請した場合に実際に充電される充電量を推定し、また、各需要家に放電を要請した場合に実際に放電される放電量を推定する。充放電量推定部140は、各需要家の充電推定量又は放電推定量を含む充放電量推定値203を算出する。
【0041】
充放電計画作成部150は、各需要家の充放電量推定値203と、上位システム600からの電力削減指令30とを元に、各需要家の蓄電池27に対する充放電指令(充電指令33又は放電指令34)を含む充放電計画204を作成する。計画DB204は、作成された充放電計画204を記憶する。
【0042】
送信部120は、各需要家の充放電計画204を元に、各需要家に充電指令33又は放電指令34を送信する。
【0043】
以下では、需要予測部130、充放電量推定部140及び充放電計画作成部150の入出力に関わるデータについて詳細に説明し、その後、需要予測部130、充放電量推定部140及び充放電計画作成部150の動作について詳細に説明する。
【0044】
[需要家情報220の詳細]
需要家情報220は、上述したように、充放電電力(充放電出力)221、電池容量(蓄電池満充電容量)222、系統供給上限電力223、系統供給下限電力224など需要家に関する情報を表す。
【0045】
図10(A)は、需要家A~Cに関する需要家情報220の一例を示す。充放電出力221は、蓄電池27の充電電力である蓄電池充電出力(W)、蓄電池27の放電電力である蓄電池放電出力(W)を含む。需要家Aの場合は、蓄電池充電出力(W)、蓄電池放電出力(W)は、共に3000Wである。電池容量222は電池のスペックであり、需要家情報220の情報の一つとして取得している。蓄電池放電出力(W)は、需要家の蓄電池の放電電力の値として予め決められた第1電力値を示す。蓄電池充電出力(W)は、需要家の蓄電池の充電電力の値として予め決められた第2電力値を示す。
【0046】
系統供給上限電力223は、需要家の契約量に相当する電力である。需要家Aの場合、系統供給上限電力223は5000Wである。系統供給下限電力224は放電時にもキープすべきメータ値の最小値に相当する電力である。需要家Aの場合、系統供給下限電力224は100Wである。系統供給下限電力224は、放電下限電力又は逆潮流防止電力等と呼ばれることもある。なお逆潮流を防止する観点では、系統供給下限電力224の値は正であることが必要であるが、逆潮流を認める場合には負の値を取っても構わない。なお、系統供給上限電力223及び系統供給下限電力224は多くの場合、家庭用蓄電池のコントローラーの設定値となっており、蓄電池の導入時に業者により設定されることが多い。
【0047】
蓄電池27は残電力量(蓄電池27に残っている電力量)が小さくなると放電できなくなり、残電力量が大きい場合、充電できなくなる。アグリゲーション装置100は、需要家の蓄電池27の充放電値32を継続的に取得することで、蓄電池の残電力量を推定する処理を行ってもよい。アグリゲーション装置100は当該推定する処理を行う残電力量推定部を備えていてもよい。
【0048】
図10(B)は需要家A~Cについて推定した残電力量の推定値の例を示す。アグリゲーション装置100は、推定した残電力量を需要家情報220の一つとして取得し、需要家DB190に格納してもよい。残電力量は、放電可能な電力量(放電余力)の最大値を表し、電池容量222から残電力量を減じた値が、充電可能な電力量(充電余力)の最大値を表す。
【0049】
このほかに、需要家の状況によっては、放電指令には対応できるが充電指令には対応できない、充電指令には対応できるが放電指令には対応できない、指令の有無にかかわらず充放電どちらもできない、指令の有無にかかわらず充電してしまう、指令の有無にかかわらず放電してしまう、などの動きがみられることがある。また需要家によっては、確実に指令に応答することはできず、指令に一定の割合でしか応答できない場合もあり得る。これらの需要家特有の振舞は、需要家の過去の電力データの傾向や、過去の指令に対する応答から推定できる場合があるため、このような値を推定値として保存しても良い。
【0050】
[メータ値31、充放電値32の詳細]
図11は、ある需要家についてメータ値31、及び蓄電池27の充放電値32の一例を示す。
1分ごとの需要家のメータ値及び充放電値が、需要家情報の一つとして取得される。メータ値及び充放電値の単位はたとえばW単位である。値の取得間隔は1分に限定されない。通信遅れ等があるため、少なくとも数分前までの値しか得られない場合が多い。充放電値は、放電を正、充電を負で表現している。放電値と充電値とが別々のカラムの値として保存されていてもよい。この場合、放電値と充電値のいずれも正で表現しても良い。
【0051】
ここでメータ値が測定される対象は、負荷に供給される電力(例えば消費電力)と、PCS23経由で行われる充放電量を含む。PCS23経由で行われる充放電量は、電気自動車26及び太陽光パネル25を保有する需要家の場合は、蓄電池27の充放電量のみならず、電気自動車26及び太陽光パネル25の消費電力量もしくは供給電力量を含む。実消費電力量に相当する需要値は、メータ値31と充放電値32から逆算して算出することができる。
【0052】
たとえば14:49と14:50は、蓄電池27の充放電がないため、需要値=メータ値(需要地はメータ値に等しい)となる。一方14:51~14:55については蓄電池27の放電があり、また21:31~21:35については蓄電池27の充電がある。いずれの場合も、メータ値に、放電値又は充電値を加算(放電値は正、充電値は負)することにより、需要値を計算できる。
【0053】
なお電気自動車26や太陽光パネル25などを保有する需要家の場合は、電気自動車26及び太陽光パネル25による充放電もしくは供給電力の値も通信ネットワーク400経由でアグリゲーション装置100が取得し、上述の需要値を計算可能であるものとする。
【0054】
充電時や放電時のメータ値は、蓄電池27の側の設定値である系統供給上限電力223および系統供給下限電力224の影響を受ける。
【0055】
図12は、メータ値が系統供給上限電力223および系統供給下限電力224の影響を受けることを模式的に表した図である。前述のように、系統供給上限電力223は、契約電力に基づき住宅側で設定される。系統供給下限電力224は、放電による逆潮流がおきないように、キープすべき電力として住宅側で設定される。実消費電力である需要(デマンド)がx(W)、充放電出力は3000(W)であるとすると、需要家に充電を要請した場合の充電時の出力はx+3000、放電を要請した場合の放電時の出力はx-3000となるはずである。しかしながら、実際には、系統供給下限電力未満や、系統公休上限電力より大きな値を取ることができない。例えば、系統供給下限電力224が100Wであるとすると、メータ値は100W未満にはならない。また、系統供給上限電力223が4000Wであるとすると、メータ値は4000Wより大きい値にはならない。後述する需要予測部130では、メータ値に放電値又は充電値を加算することで、需要家の需要予測値を算出してもよい。図12には、算出した需要予測値(1分値)がグラフHにより示されている。
【0056】
前述の図11の例において、仮に系統供給下限電力224が100W、系統供給上限電力223が4000Wであるとすると、14:51~55については放電が行われるが、メータ値は100W未満にはならない。また、21:31~35については充電が行われるが、メータ値は4000Wより大きくならない。このことを利用して、本実施形態では、需要家に充電を要請した場合に充電される充電量及び放電を要請した場合に放電される放電量を推定するが、充電量及び放電量の推定手法(充放電量の推定手法)については後述する。なお、メータ値31、充放電値32のデータに欠損がある場合に、補間処理や過去の履歴に基づき、欠損値を推定しても構わない。
【0057】
[電力削減指令30の詳細]
図13は、上位システム600からの電力削減指令30の例を示す。電力削減指令30はn分(5分又は30分など)ごとに設定される。図の例では5分ごとに電力削減指令30が設定されている。前述した需給調整市場において予めアグリゲーター200が申告した基準値(需要予測値)と、上位システム600から与えられた指令値とを元に目標値が決定される。具体的には、以下の式により、n分ごとの目標値は決定される。n分ごと(図の例の場合n=5)に、実需要(実際の需要家全体の電力値)を目標値に近づける必要がある。
n分ごとの目標値=基準値のn分平均-指令値
【0058】
[充放電計画204の詳細]
アグリゲーション装置100は以上のデータを元に、たとえば各需要家についてm分ごと(この場合m=5)の充放電指令を含む充放電計画204を作成する。充放電計画は、一例として、各需要家について、m分ごとの充電有無を0及び1で表し、m分ごとの放電有無を0及び1で表す。
【0059】
図14は、充放電計画の一例を示す。アグリゲーション装置100の配下の需要家がA、B、Cの3つの需要家であるとき、m分ごとの充電有無を0及び1で表し、m分ごとの放電有無を0及び1で表している。放電を要請する場合は放電有無=1、充電有無=0であり、充電を要請する場合は放電有無=0、充電有無=1である。放電有無及び充電有無が共に0である場合は充電及び放電のいずれも要請しない。放電有無及び充電有無が両方とも1になることはないものとする。
【0060】
以下、需要予測部130、充放電量推定部140及び充放電計画作成部150の処理を経ることで、充放電計画204を作成する処理について詳細に説明する。
【0061】
図15は、充放電計画204を作成する手順を概略的に示すフローチャートである。
ステップS1において、需要予測部130が、需要予測(デマンド予測)として、各需要家の需要値を予測する。
ステップS2において、充放電量推定部140が、各需要家の放電時の放電量(Ek)及び充電時の充電量(Fk)を推定する。
ステップS3において、充放電計画作成部150が、どの需要家に放電を要請し、どの需要家に充電を要請するかを決定し、各需要家に対して充電又は放電を指示した充放電指令を含む充放電計画204を作成する。
【0062】
[ステップS1]
ステップS1の詳細について述べる。ステップS1では需要予測部130が需要家の需要値を予測する。需要予測は、履歴DB191(図11参照)に基づいて行う。一例として、直前に得られた需要値(メータ値に充放電値を加算した値)を、需要予測値として用いてもよい。
【0063】
たとえば、図11において14:56までのデータしか得られていないとし、15:00からの計画を作る場合を考える。15:00からの計画を15:00より一定時間前の時刻(たとえば14:58の時点)で作成する場合、需要家の需要予測値は、直前に得られた14:56の需要値を用いて、949Wとする。
【0064】
需要予測の方法は、履歴DB191に基づく限り、他のどのような方法でもよい。例えば、直前のk分の需要値の平均値を用いても良い。また直前の需要値を元にした回帰などの処理により推定しても良い。ARMAモデル、ARIMAモデルなどの時系列予測手法を用いて需要予測を行ってもよい。その他の機械学習手法を用いて需要予測を行っても良い。
【0065】
[ステップS2]
次に、ステップS2の詳細について述べる。ステップS2では、充放電量推定部140が、需要予測部130により算出された需要予測値と、需要家DB190内の需要家情報220とに基づき、需要家に充放電を要請した場合に充放電される電力量(放電量と充電量)を推定する。
【0066】
以下のように記号を定義する。
・Dk:需要家kに充放電の要請を行わなかったとした場合の需要予測値(ステップS1で算出した需要予測値)
・Ek:需要家kに放電を要請した場合に実際に放電される電力量の推定値(放電推定量)
・Fk:需要家kに充電を要請した場合に実際に充電される電力量の推定値(充電推定量)
・dk:需要家kの放電電力(放電出力。予め決められた値であり、制御できないとする)
・ck:需要家kの充電電力(充電出力。予め決められた値であり、制御できないとする)
・uk:需要家kの系統供給上限電力
・lk:需要家kの系統供給下限電力
【0067】
系統供給上限電力223及び系統供給下限電力224の制約から、各需要家に放電を要請する場合にも、需要家ごとに設定した電力供給下限電力(=lk)未満にはできない。また、充電要請をした場合にも、需要家ごとに設定した電力供給上限電力(=uk)より大きくできない。したがって、
Ek = min(dk, max(0, Dk-lk)) (1)
Fk = min(ck, max(0, uk-Dk)) (2)
と計算される。
【0068】
なお蓄電池27の残電力量と電池容量(蓄電池満充電容量)が分かっている場合には、容量の制約(蓄電池27に電力残量又は空き容量がない場合には、放電又は充電できない制約)も考慮してもよい。この場合、以下の式により計算される。
Ek = min(dk, max(0,Dk-lk), rk) (3)
Fk = min(ck, max(0, uk-Dk), Ck-rk) (4)
ここで
・rk:需要家kの残電力量(Wm)
・Ck:需要家kの蓄電池満充電容量(Wm)
である。Wmは1分当たりの電力量を表す。
【0069】
式(3)及び式(4)の場合は、当該時点の電池残電力量(=rk)より多くの電力を放電することや、当該時点の充電余力(=Ck-rk)を超える電力を充電することはできないことも制約として表現できている。なお放電推定量(Ek)または充電推定量(Fk) の値を、さらに複雑なモデルや機械学習手法を使って推定しても構わない。
【0070】
[ステップS3]
次に、ステップS3の詳細について述べる。ステップS3において、充放電計画作成部150が、需要家kに充放電を要請しなかったとした場合の需要予測値(Dk)、需要家kに放電を要請した場合の放電推定量(Ek)、需要家kに充電を要請した場合の充電推定量(Fk)に基づき、DR最適化処理を行うことにより充放電計画204を作成する。充放電計画204は、需要家毎の放電指令又は充電指令を含む。充放電計画204は計画DB192に格納される。
【0071】
図16は、DR最適化処理の概略図である。需要家k(∈K)に放電を要請するか否かを表す決定変数をxkとする。需要家k(∈K)に充電を要請するか否かを表す決定変数をzkとする。決定変数を用いて、需要家が保有する蓄電池27の充放電により、配下の需要家のメータ値の合計を、目標値になるべく近づける問題を設定する。問題を解くことにより、xk及びzkを求める。
【0072】
一例として、この問題は、下記の最適化問題として表現できる。
【数1】
【0073】
変数及び定数の定義を以下に示す。
・変数:
xk:需要家k∈Kに放電を要請する場合は1、しない場合は0
zk:需要家k∈Kに充電を要請する場合は1、しない場合は0
・定数:
K:需要家の集合
Dk:需要家kに充放電を要請しなかったとした場合の需要予測値
Ek:需要家kに放電を要請した場合の放電量
Fk:需要家kに充電を要請した場合の充電量
A:目標電力(=基準値-指令値)(指令値は電力の制御量を表す)
【0074】
式(5)は評価関数(目的関数)を表す。Dk-Ekxk+Fkzkが、需要家の元の需要予測値に、蓄電池27の充放電量を反映させたメータ値を表す。配下の全需要家のメータ値の合計と目標値Aとの差分を評価関数(目的関数)としている。
式(6)及び式(7)は制約条件(制約式)を表す。式(5)の目的関数を、式(6)及び式(7)の制約条件の元、最小化又は準最小化することで、変数xk、zkの最適解もしくは準最適解を求める。
解法としては、GurobiOptimizer、CPLEXなどの数理計画ソルバーを用いてもよいし、勾配法、シミュレーティッドアニーリング(SimulatedAnnealing)、遺伝的アルゴリズム(GeneticAlgorithm)などのメタヒューリスティック解法を用いてもよい。
結果として得られたxk及びzkが、配下の全需要家のメータ値の合計が目標値Aに一致又は近づくような充放電計画(需要家k毎に充電及び放電の要請の有無)に相当する。
【0075】
なお、上記の定式化は一例であり、その他の目的関数や制約式を用いても構わない。たとえば、追加的な問題設定として、需要家の状況に応じて、以下の条件1~4の少なくとも1つを追加してもよい。
(条件1)需要家kには必ず充電/放電させる
(条件2)需要家kには決して充電/放電させない
(条件3)需要家kにはなるべく充電/放電させない
(条件4)需要家kにはなるべく充電/放電させる
【0076】
条件1~4を実現するには、制約式の追加、又は目的関数の変更を行えばよい。具体的には以下の通りである。
(条件1)のためには、充電/放電させる需要家kに対して、制約式としてxk=1またはzk=1を加えればよい。
(条件2)のためには、充電/放電させない需要家kに対して、制約式としてxk=0またはzk=0を加えればよい。
(条件3)のためには、目的関数にxk又はzkの代わりに、αxkまたはβzkを加えればよい。α、βは負の値にすればよい。
(条件4)のためには、(条件3)の場合と同様に、目的関数にxk又はzkの代わりに、αxkまたはβzkを加えればよい。(4)の場合はα、βを正の値にすればよい。
【0077】
条件1, 2の例としては、前述した需要家蓄電池の固有の振舞いが推定できる場合などがある。たとえば需要家が放電指令に反応できない需要家の場合には、xk=zk=0とすればよい。また指令に関わらず充電となってしまうような需要家の場合には、xk=0, zk=1とすればよい。
【0078】
条件3, 4の例としては、まず充放電余力がなくなってきた需要家には、なるべく充放電させないということが考えられる。たとえば蓄電池の容量が、残り5分の出力以下になった場合、残り時間フル出力できなくなった場合、などがこの条件に該当する。蓄電池の容量が空になる場合、その需要家には放電要請できなくなり、また蓄電池が満充電になる場合、その需要家には充電要請できなくなり、組合せのバリエーションが減ってしまう。したがって、蓄電池の容量が空や満充電にならないような条件を加えることは、成功率を高めるための有効な対策となり得る。
【0079】
他の条件3,4の例としては、放電により系統供給下限電力まで落とせる需要家に優先的に放電する場合、または充電により系統供給上限電力まで上げられる需要家に優先的に充電する場合、などがこの条件に該当する。系統供給下限電力に落した需要家や系統供給上限電力まで上げた需要家は、需要予測値(放電時のDk-Ekの値、および充電時のDk+Fkの値に相当)と需要の実現値との誤差が小さくなる場合がある。したがって、成功率を高めるための有効な対策となり得る。
【0080】
以上の定式化は、あくまで需要家が想定通り動いた場合の振る舞いを最適化している。したがって、
・需要家の需要予測値が外れる場合
・需要家が要請通りに動かない場合
は、需要量の実績が目標値に対して一定の許容誤差範囲(上述した例では±10%の範囲)に入るとは限らない。需要家が要請通りに動かない場合としては、放電又は充電を要請したにもかかわらず需要家が放電又は充電を行わない場合がある。また、需要家が放電又は充電を行ったが、放電量又は充電量が事前の推定値と大きく異なる場合もあり得る。したがって、需要家の振舞の悪さを定量化したうえで、振舞の悪い需要家の影響をなるべく低減するような最適化を行っても良い。
【0081】
(具体例)
まず、ステップS1として、需要予測部130が、需要家A,B,Cの需要予測値として、例えば、需要家A,B、Cの直前の需要値を取ることにより、200、400、900Wとした場合を想定する。
次に、ステップS2として、充放電量推定部140が、ステップS1で算出された需要予測値と、系統供給上限電力223及び系統供給下限電力224の制約(図10参照)に基づき、需要家kの充放電量を推定する。具体的には、需要家k(=A,B,C)に放電を要請した場合に需要家kにより放電される放電量(Ek)と、需要家kに充電を要請した場合に需要家kにより充電される充電量(Fk)とを推定する。
【0082】
k=A,B,Cとして、Ek及びFkを以下のように計算できる。
需要家Aの放電推定量:EA=min(3000, 200-100)=100 (8)
需要家Bの放電推定量:EB=min(3000, 400-100)=300 (9)
需要家Cの放電推定量:EC=min(3500, 900-100)=800 (10)
需要家Aの充電推定量:FA=min(3000, 5000-200)=3000 (11)
需要家Bの充電推定量:FB=min(3000, 5000-400)=3000 (12)
需要家Cの充電推定量:FC=min(3500, 4000-900)=3100 (13)
【0083】
計算したEkで放電が行われた場合の需要家kのメータ値(放電時メータ予測値)はDk-Ekで計算できる。また、計算したFkで充電が行われた場合の需要家kのメータ値(充電充電時メータ予測値)はDk+Fkで計算できる。Dkは、上述したように、需要家kに充放電を要請しなかったとした場合の需要予測値(すなわちステップS1で算出した需要予測値)である。
【0084】
したがって、需要家kの放電時メータ予測値及び充電時メータ予測値は、以下のように計算される。
需要家Aの放電時メータ予測値=200-100=100 (14)
需要家Bの放電時メータ予測値=400-300=100 (15)
需要家Cの放電時メータ予測値=900-800=100 (16)
需要家Aの充電時メータ予測値=200+3000=3200 (17)
需要家Bの充電時メータ予測値=400+3000=3400 (18)
需要家Cの充電時メータ予測値=900+3100=4000 (19)
【0085】
図17は、ステップS1で算出された需要予測値と、ステップS2で推定された放電量及び充電量とに基づき算出された、放電時メータ予測値及び充電時メータ予測値との例を示す。
【0086】
次に、ステップS3では、図17の情報に基づき、需要家A~Cに対する充放電計画を作成する。
図18は、本ステップで生成された充放電計画の例を示す。本例では、下げDRの場合(図18(A))、指令値0の場合(図18(B))、上げDRの場合(図18(C))の3通りについて示している。以下、図18(A)~図18(C)の各場合について説明する。
【0087】
図18(A)において、下げDRの指令値が1000Wである。前述した基準値が1350Wであるとすると、目標値Aは350Wである。このとき式(5)~式(7)の最適化問題を解くと、充放電計画として、xA=0、xB=1、xC=1、zA=0、zB=0、zC=0が得られる。この計画は需要家B、Cに放電を要請する計画である。この場合、図17に示した情報から、需要家A、B、Cのメータ予測値は、200、100、100(W)となる。すなわち需要家Aは充放電を要請されないため、メータ予測値は、需要予測値と同じ200Wである。需要家Bは放電を要請されるため、メータ予測値は、放電時メータ予測値の100Wである。需要家Cは放電を要請されるため、メータ予測値は、放電時メータ予測値の100Wである。よって、合計は400Wとなる。この場合、目標値Aとの誤差は50W(=|400-350|)であり、許容誤差(約定量の10%)以内の誤差となる。よって、成功が期待できる。
【0088】
次に図18(B)において、指令値が0(約定量は1000Wとする)である。基準値が1350Wであるとすると、目標値Aは1350Wである。このとき式(5)~式(7)の最適化問題を解くと、充放電計画として、xA=1、xB=0、xC=0、zA=0、zB=0、zC=0が得られる。この計画は、需要家Aのみに放電を要請する計画である。この場合、図17に示した情報から、需要家A、B、Cのメータ予測値は、100、400、900(W)となる。すなわち、需要家Aは放電を要請されるため、メータ予測値は、放電時メータ予測値の100Wである。需要家Bは充放電を要請されないため、メータ予測値は、需要予測値と同じ400Wである。需要家Cは充放電を要請されないため、メータ予測値は、需要予測値と同じ900Wである。よって、合計は1400Wとなる。この場合、目標値Aとの誤差は50W(=|1400-1350|)である。この誤差は、許容誤差(約定量の10%)の範囲内であり、よって、成功が期待できる。
【0089】
最後に(C)上げDRで指令値が6000Wの場合ついて述べる。基準値が1350Wであるとすると、目標値Aは7350Wである。このとき式(5)から式(7)の最適化問題を解くと、充放電計画として、xA=0、xB=1、xC=0、zA=1、zB=0、zC=1が得られる。この計画は、需要家AとCに充電を要請、需要家Bに放電を要請する計画である。この場合、図17に示した情報から、需要家A、B、Cのメータ予測値は、3200、100、4000(W)となる。すなわち、需要家Aは充電を要請されるため、メータ予測値は、充電時メータ予測値の3200Wである。需要家Bは放電を要請されるため、メータ予測値は、放電時メータ予測値の100Wである。需要家Cは充電を要請されるため、メータ予測値は、充電時メータ予測値の4000Wである。よって、合計は7300Wとなる。この場合、目標値Aとの誤差は50W(=|7300-7350|)である。この誤差は、許容誤差(約定量の10%)の範囲内であり、よって、成功が期待できる。
【0090】
図18(A)及び図18(B)の例では、放電のみを要請する計画が作成されたが、図18(C)の例のように、充電の要請と放電の要請が混在する計画が作成されることも可能である。その他、充電のみを要請する計画が作成されることも可能である。
【0091】
充放電計画作成部150は、充放電計画に基づき充放電を要請した結果(DR実行結果)を示すDR出力情報を生成する。入出力I/F180は、DR出力情報を充放電計画作成部150から取得し、取得したDR出力情報を表示部170に表示することで、ユーザはDR実行結果を確認できる。
【0092】
図19は、DR出力情報を画面に表示した一例を示す。DR時間帯は5分帯であり、各5分帯のDR実行結果が示される。図19のDR出力情報は、上位システムであるDRASからの指令内容情報、需要家への充放電要請内容情報、需要家のメータ実績(充放電実績)情報を含む。図19は、前述の図18(A)の充放電計画でDRを実行した場合の例を示している。
【0093】
図の例では指令内容情報は、下げDR約定量(ΔkW)、下げDR指令値、目標値(=基準値-下げDR指令値)を含む。
【0094】
需要家への充放電要請内容情報は、各需要家について、充電又は放電の要請の有無、ステップS1,S2で算出した各種予測値(需要予測値、充電時メータ予測値、放電時メータ予測値)を含む。また、充放電要請内容情報は、メータ予測値合計(400W=需要家Aの200W +需要家Bの100W +需要家Cの100W)、目標値との差(=メータ予測合計-目標値)、許容誤差(100=約定量×10%)、成功見込み(許容誤差内の場合は○、許容誤差外の場合は×)を含む。
【0095】
需要家のメータ実績情報は、需要家ごとに、メータ実績値と予測誤差とを含む。予測誤差は、予測値(需要予測値、充電時メータ予測値、又は放電時メータ予測値)と、メータ実績値との差分により算出される。また需要家のメータ実績情報は、メータ実績合計(380=210+90+80)、目標値との差(30=380-350)、許容誤差(100=約定量×10%)、成功/失敗を含む。目標値との差が許容誤差の範囲内であれば、“成功”、範囲外であれば“失敗”である。
【0096】
図19の情報を含む画面を確認することで、ユーザは、需要家への充放電要請内容を知ることができる。またユーザは、メータ実績との差分を見ることで、需要家が適正にDR要請に応じたかを知ることができる。
【0097】
以上、本実施形態によれば、蓄充電時の系統供給上限電力(契約電力)と、放電時の系統供給下限電力(逆潮流させない制約)と、需要予測値と、電池スペックとに基づき、各需要者に対するDR要請の内容(充電の要請の有無又は放電の要請の有無)を決定する。決定した内容に従って、各需要家にDR要請を行う。これにより需要者全体の合計需要を目標値に高精度に合わせることが可能となる。すなわち、目標値に合わせた合計需要を精度高く需要家に配分(DR配分)することが可能になる。結果として、アグリゲーターが、蓄電池を保有する需要家を束ねた需要家群を用いて、需給調整市場に参入することが可能となる。
【0098】
また、本実施形態によれば、蓄電池に対して充電及び放電の有無(on/off)しか指定できない場合でも、すなわち蓄電池の充電電力の値及び放電電力の値を制御できない場合でも、高精度なDR配分が可能である。より詳しくは、需要家にDR要請を行う方式の比較例として、需要家に放電させる場合のみを考えた方式が知られている。この方式では、蓄電池の放電出力をkW単位で制御できることを前提としており、充電の実行の有無のみ指示可能な蓄電池(放電出力を制御できない蓄電池)に対応できない。これに対して、本実施形態では、蓄電池に対して充電及び放電のon/offしか指定できない場合でも高精度なDR配分が可能である。
【0099】
当該比較例では、需要家全体の電力需要量を減らすことを要請する「下げDR」に対応可能であるが、需要家全体の電力需要量を増やすことを要請「上げDR」には対応できなかった。これに対して、本実施形態によれば、上げDR及び下げDR共に、高精度なDR配分が可能である。
【0100】
(第2実施形態)
第1実施形態では、需要家情報220がユーザから入力される又は予め与えられることを前提としたが、第2実施形態では、需要家情報220を推定する場合について記載する。
【0101】
図20は、第2実施形態に係るアグリゲーション装置100Aと需要家10との構成を詳細に示すブロック図である。第2実施形態では、アグリゲーション装置100Aが、需要家情報220を推定する需要家情報推定部800を備えている。他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一の要素には同一の符号を付して、説明を省略する。以下、需要家情報推定部800が需要家情報220(系統供給下限電力224、充放電電力(充放電出力)221、系統供給上限電力223)を推定する処理について詳細に説明する。
【0102】
系統供給下限電力224については、需要家の需要が低い第1条件を満たす期間又はタイミングを狙って、需要家に放電を指示することにより、系統供給下限電力224を推定できることが期待できる。具体的には、放電指示を需要家に送信し、指示した期間のメータ値が概ね一定となれば(たとえば変動率が一定値以下になれば)、そのときのメータ値を系統供給下限電力224とみなせばよい。第1条件は、メータ値31及び充放電値32の履歴の少なくとも一方に基づき定めてもよい、予め決められた時刻又は時間帯でもよい。
【0103】
充放電電力(充放電出力)221の内の放電電力(放電出力)については、需要家の需要値が十分高い第2条件を満たす期間又はタイミングを狙って、需要家に放電を指示することにより、放電電力を推定できることが期待できる。具体的には、需要家に放電指示を送信し、指示した期間において系統供給下限電力224よりも大きな値となった任意の時点のメータ値(または当該大きな値となった時間のメータの平均値等)を特定する。特定したメータ値と放電指示直前のメータ値(放電を指示した期間より前のメータ値)との差分を、放電電力値とみなせばよい。第2条件は、メータ値31及び充放電値32の履歴の少なくとも一方に基づき定めてもよい、予め決められた時刻又は時間帯でもよい。
【0104】
系統供給上限電力223については、需要家の需要が高い第3条件を満たす期間又はタイミングを狙って、需要家に充電を指示することにより、系統供給上限電力223を推定できることが期待できる。具体的には、需要家に充電指示を送信し、指示した期間のメータ値が概ね一定となれば(たとえば変動率が一定値以下になれば)、そのときのメータ値を系統供給上限電力223とみなせばよい。第3条件は、メータ値31及び充放電値32の履歴の少なくとも一方に基づき定めてもよい、予め決められた時刻又は時間帯でもよい。
【0105】
充放電電力(充放電出力)221の内の充電電力(充電出力)については、需要家の需要が十分小さい第4条件を満たす期間又はタイミングを狙って、需要家に充電を指示することにより推定できることが期待できる。具体的には、需要家に充電指示を送信し、指示した期間において系統供給上限電力223よりも小さな値となった任意の時点のメータ値(または当該小さな値となった時間のメータの平均値等)を特定する。特定したメータ値と充電指示直前のメータ値(充電を指示した期間より前のメータ値)との差分を、充電出力値とみなせばよい。第4条件は、メータ値31及び充放電値32の履歴の少なくとも一方に基づき定めてもよい、予め決められた時刻又は時間帯でもよい。
【0106】
以上の手法を用いても、系統供給上限電力223、系統供給下限電力224及び充放電電力(充放電出力)221の値を得られない場合は、実際のDR要請時にも、これらの値が必要となる条件が生じにくいと考えられる。よって、これらの値は十分大きい値としておけば実質的には問題ない。需要家情報220を推定した後の処理は第1実施形態と同じであるため省略する。
【0107】
(ハードウェア構成)
最後に、本実施形態に係るアグリゲーション装置のハードウェア構成について、図21を参照して説明する。図21は、アグリゲーション装置のハードウェア構成を示す図である。本実施形態に係るアグリゲーション装置は、図21に示すように、コンピュータ1000により構成される。コンピュータ1000は、CPU1001(中央演算装置)と、入力装置1002と、表示装置1003と、通信装置1004と、記憶装置1005と、とを備え、これらはバス1006により相互に接続されている。
【0108】
CPU1001は、コンピュータ1000の制御装置及び演算装置である。CPU1001は、バス1006を介して接続された各装置(例えば、入力装置1002、通信装置1004、記憶装置1005)から入力されたデータやプログラムに基づいて演算処理を行い、演算結果や制御信号を、バス1006を介して接続された各装置(例えば、表示装置1003、通信装置1004、記憶装置1005)に出力する。
【0109】
具体的には、CPU1001は、コンピュータ1000のOS(オペレーティングシステム)や、アグリゲーションプログラムなどを実行し、コンピュータ1000を構成する各装置を制御する。アグリゲーションプログラムとは、コンピュータ1000に、アグリゲーション装置の上述の各機能構成を実現させるプログラムである。CPU1001がアグリゲーションプログラムを実行することにより、コンピュータ1000がアグリゲーション装置として機能する。
【0110】
入力装置1002は、コンピュータ1000に情報を入力するための装置である。入力装置1002は、例えば、キーボード、マウス、及びタッチパネルであるが、これに限られない。ユーザは、入力装置1002を用いることにより入力情報を入力することができる。表示装置1003は、画像や映像を表示するための装置である。表示装置1003は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、CRT(ブラウン管)、及びPDP(プラズマディスプレイ)であるが、これに限られない。これらにより、表示装置1003に最適化結果を表示させることができる。
【0111】
通信装置1004は、コンピュータ1000が、外部装置と無線又は有線で通信するための装置である。通信装置1004は、例えば、モデム、ハブ、及びルータであるが、これに限られない。また入力情報は、通信装置1004を介して外部装置から入力されてもよい。
【0112】
記憶装置1005は、コンピュータ1000のOSや、アグリゲーションプログラム、アグリゲーションプログラムの実行に必要なデータ、及びアグリゲーションプログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する記憶媒体である。記憶装置1005には、主記憶装置と外部記憶装置とが含まれる。主記憶装置は、例えば、RAM、DRAM、SRAMであるが、これに限られない。また、外部記憶装置は、ハードディスク、光ディスク、
フラッシュメモリ、及び磁気テープであるが、これに限られない。
【0113】
なお、コンピュータ1000は、CPU1001、入力装置1002、表示装置1003、通信装置1004、及び記憶装置1005を、1つ又は複数備えてもよいし、プリンタやスキャナなどの周辺機器を接続されていてもよい。
【0114】
また、アグリゲーション装置は、単一のコンピュータ1000により構成されてもよいし、相互に接続された複数のコンピュータ1000からなるシステムとして構成されてもよい。
さらに、アグリゲーションプログラムは、コンピュータ1000の記憶装置1005に予め記憶されていてもよいし、CD-ROMなどの記憶媒体に記憶されていてもよいし、インターネット上にアップロードされていてもよい。いずれの場合も、アグリゲーションプログラムをコンピュータ1000にインストールして実行することにより、アグリゲーション装置を構成することができる。
【0115】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10 需要家
20 電力メータ
21 分電盤
22 負荷
24 ゲートウェイ
25 太陽光パネル
26 電気自動車
27 蓄電池
30 電力削減指令
31 メータ値(測定値)
32 充放電値
33 充電指令
34 放電指令
100 アグリゲーション装置
100A アグリゲーション装置
110 受信部
120 送信部
130 需要予測部
140 充放電量推定部
150 充放電計画作成部
160 操作入力部
161 アグリゲーションコーディネーター(AC)
162 リソースアグリゲーター(RA)
170 表示部
180 入出力インタフェース(I/F)
190 需要家データベース(DB)
200 アグリゲーター
202 需要予測値
203 充放電量推定値
204 充放電計画
220 需要家情報
221 充放電電力(充放電出力)
221 充放電出力
222 電池容量(蓄電池満充電容量)
223 系統供給上限電力
224 系統供給下限電力
400 通信ネットワーク
500 電力系統
600 上位システム
700 電力会社
800 需要家情報推定部
1000 コンピュータ
1002 入力装置
1003 表示装置
1004 通信装置
1005 記憶装置
1006 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21