IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

特許7504833爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機
<>
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図1
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図2
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図3
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図4
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図5
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図6
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図7
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図8
  • 特許-爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機
(51)【国際特許分類】
   F42D 1/08 20060101AFI20240617BHJP
   F42D 1/12 20060101ALI20240617BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F42D1/08
F42D1/12
E21D9/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021080211
(22)【出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2022174423
(43)【公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】上原 弓弦
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-038263(JP,A)
【文献】特開2019-113197(JP,A)
【文献】特開2012-047384(JP,A)
【文献】特開2006-258353(JP,A)
【文献】国際公開第03/042626(WO,A1)
【文献】特開2008-025972(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1029465(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 1/08
F42D 1/12
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽に形成されている装薬孔に対して、爆薬と込め物を含む被装填物を装填する、爆薬装填システムであって、
前記被装填物を供給する、供給装置と、
前記供給装置から供給された前記被装填物を前記装薬孔に送り出す、送り出し装置と、
前記供給装置と前記送り出し装置を制御する、制御装置とを有し、
前記送り出し装置は、前記被装填物が送り出される送り出し系統と、該送り出し系統において該被装填物を移動させる送り出し手段とを備えており、
前記送り出し系統が、前記供給装置から前記被装填物を受け取る第一系統と、該第一系統から移動してきた前記被装填物を前記装薬孔まで送り出す第二系統とを備え、
前記第一系統は、前記供給装置から供給された前記被装填物の重量を計測する重量計を備え、
前記制御装置には、前記装薬孔に装填されるべき前記被装填物の設計重量データが格納されており、前記第一系統に供給された該被装填物の重量が前記重量計にて計測されて計測データが該制御装置に送信され、該制御装置により該設計重量データと該計測データが照合され、双方が一致していない場合にアラームが報知されることを特徴とする、爆薬装填システム。
【請求項2】
前記第一系統と前記第二系統の間に逆止弁が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の爆薬装填システム。
【請求項3】
前記送り出し手段は、前記第一系統から前記第二系統の途中位置まで前記被装填物を移動させる第一送り出し手段と、該第二系統の途中位置から前記装薬孔に該被装填物を移動させる第二送り出し手段とを備えており、
前記第一送り出し手段は、第一圧送機、もしくは、シリンダ機構と該シリンダ機構によって前記第一系統を往復動する押し込み棒からなるユニットのいずれか一方であり、
前記第二送り出し手段は、第二圧送機であることを特徴とする、請求項2に記載の爆薬装填システム。
【請求項4】
前記供給装置は、複数の前記被装填物を収容する収容容器と、該収容容器から受け取った一つの該被装填物を前記第一系統に供給する供給機構と、を備えており、
前記供給機構は、アクチュエータと、該アクチュエータによって回転する過程で開口を介して前記被装填物を受け取る回転体とを備え、
前記回転体の前記開口が前記第一系統の方向に配向した際に、該開口から前記被装填物が該第一系統へ供給されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の爆薬装填システム。
【請求項5】
台車と、
前記台車に対して旋回自在かつ起伏自在に装着されているブームとを備え、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の爆薬装填システムを構成する、前記供給装置と前記制御装置が前記台車に搭載されており、
前記第二系統の一部もしくは全部が前記ブームに搭載されていることを特徴とする、切羽穿孔機。
【請求項6】
前記ブームに対して、穿孔システムと装薬孔清掃システムの少なくとも一方がさらに搭載されていることを特徴とする、請求項に記載の切羽穿孔機。
【請求項7】
切羽に形成されている装薬孔に対して、爆薬と込め物を含む被装填物を装填する、爆薬装填方法であって、
供給装置から、送り出し装置を構成する送り出し系統に対して、前記爆薬と前記込め物を供給するA工程と、
前記送り出し系統を、前記爆薬と前記込め物を連続的に移動させて前記装薬孔に順次装填するB工程と、を有し、
前記送り出し系統が、前記供給装置から前記被装填物を受け取る第一系統と、該第一系統から移動してきた前記被装填物を前記装薬孔まで送り出す第二系統とを備え、
前記A工程では、前記供給装置から供給された前記爆薬の重量を計測する重量計を前記第一系統に設置しておき、前記装薬孔に装填されるべき前記被装填物の設計重量データを制御装置に格納しておき、前記第一系統に供給された該被装填物の重量を前記重量計にて計測して計測データを該制御装置に送信し、該制御装置が該設計重量データと該計測データを照合して双方が一致していない場合にアラームを報知し、
前記B工程では、前記送り出し装置を構成する送り出し手段により該被装填物を移動させることを特徴とする、爆薬装填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機に関する。
【背景技術】
【0002】
発破による山岳トンネルの施工では、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬や込め物(アンコ、粘土)を含む被装填物を装填する作業を作業員が切羽に近接して行うことから、肌落ちや落石等の切羽崩落に対する作業安全性が大きな課題となっている。また、装薬孔に被装填物を装填する作業は、装薬孔に被装填物を挿入し、込め棒で突いて装填する単純作業の繰り返しであることから、作業環境や作業姿勢などの厳しい苦渋作業である。切羽の正面視規模が大きくなり、装薬孔が多くなるに従い、作業安全性の低下と作業苦渋性の増加、装填作業時間が長時間に及ぶといった課題は一層顕著になる。
以上のことから、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬等の被装填物を装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる爆薬装填システムが望まれている。
【0003】
ここで、特許文献1には、爆薬と込め物を装薬孔に装填する作業を遠隔操作で行う爆薬装填装置が開示されている。この爆薬装填装置は、爆薬供給装置と、込め物供給装置と、供給された爆薬もしくは込め物を装薬孔に圧送する圧送装置と、これらの各種装置を制御する制御装置とを備えている。込め物供給装置は、込め物置場から込め物落下部まで込め物を搬送するための一系統の搬送装置と、込め物落下部から落下する複数の込め物を貯留する単一もしくは複数の貯留装置と、単一もしくは複数の貯留装置の下端から落下する込め物を装填ホースまで導く複数の落下路を備えている。
この爆薬装填装置では、爆薬供給装置から供給された爆薬と込め物供給装置から供給された込め物が一つの装填機に個別に送られ、装填機に連通する充填ホースと充填パイプを介して、圧送装置によって装薬孔へ個別に圧送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-113197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の爆薬装填装置によれば、遠隔操作によって爆薬と込め物を装薬孔に装填できることから、作業安全性が高くなり、作業苦渋性を少なくできる。しかしながら、装薬孔に対して爆薬と込め物を個別に圧送して装填すること、言い換えれば、爆薬と込め物を連続的もしくは同時に装填できないことから、装填作業の効率性に関しては改善の余地がある。
【0006】
本発明は、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬等の被装填物を装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる爆薬装填システムと、この爆薬装填システムを搭載した切羽穿孔機、及び爆薬装填方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による爆薬装填システムの一態様は、
切羽に形成されている装薬孔に対して、爆薬と込め物を含む被装填物を装填する、爆薬装填システムであって、
前記被装填物を供給する、供給装置と、
前記供給装置から供給された前記被装填物を前記装薬孔に送り出す、送り出し装置と、
前記供給装置と前記送り出し装置を制御する、制御装置とを有し、
前記送り出し装置は、前記被装填物が送り出される送り出し系統と、該送り出し系統において該被装填物を移動させる送り出し手段とを備えており、
前記送り出し系統が、前記供給装置から前記被装填物を受け取る第一系統と、該第一系統から移動してきた前記被装填物を前記装薬孔まで送り出す第二系統と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、送り出し装置を構成する送り出し系統の第一系統に対して供給装置から爆薬と込め物が供給され、第二系統を介して送り出し手段にて爆薬と込め物を装薬孔に連続的もしくは同時(一度)に送り出して装填することから、効率的な装填作業を実現することができる。
ここで、システムが爆薬と込め物に固有の供給装置(爆薬供給装置、込め物供給装置)を備え、第一系統に沿って爆薬供給装置と込め物供給装置が直列状に配設される形態であってもよいし、一つの供給装置が爆薬供給部と込め物供給部を備え、一つの供給装置から爆薬と込め物が第一系統に供給される形態であってもよい。
爆薬としては、親ダイ(爆薬と雷管を含む)と増しダイを使用するケースと、増しダイのみを使用するケースがあるが、例えば親ダイと増しダイを使用するケースでは、爆薬供給装置がさらに親ダイ供給装置と増しダイ供給装置を第一系統に沿って直列状に備えていてもよい。また、装薬孔に複数の増しダイを装填するケースに対応するべく、複数の増しダイ供給装置を第一系統に沿って直列状に備えていてもよい。
【0009】
また、爆薬と込め物が連続的に供給され、供給された爆薬等を第二系統に送り出す第一系統は、直線性を備えているのが望ましいことから、第一系統は比較的剛性のあるパイプにより形成されているのがよい。一方、第一系統から供給された爆薬等を装薬孔に送り出す第二系統は、切羽に設けられている装薬孔までの距離に応じた長さを有し、作業員のハンドリング性が良好であり、第一系統と同様にある程度の剛性を有して直線性を担保できることが好ましいことから、ホースとパイプの組み合わせにより形成されるのがよい。
【0010】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様は、
前記第一系統と前記第二系統の間に逆止弁が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第一系統と第二系統の間に逆止弁が設けられていることにより、第二系統に送り出された爆薬及び込め物が、第一系統に戻ることを抑止できる。ここで、逆止弁は、送り出し方向(第一系統から第二系統へ向かう方向)に開口径が絞られた一般の逆止弁の他に、逆止弁を爆薬等が通過した段階で開口の開度が自動制御されて、開口が狭まったり開口が閉制御される開閉弁も含まれる。
【0012】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様は、
前記送り出し手段は、前記第一系統から前記第二系統の途中位置まで前記被装填物を移動させる第一送り出し手段と、該第二系統の途中位置から前記装薬孔に該被装填物を移動させる第二送り出し手段とを備えており、
前記第一送り出し手段は、第一圧送機、もしくは、シリンダ機構と該シリンダ機構によって前記第一系統を往復動する押し込み棒からなるユニットのいずれか一方であり、
前記第二送り出し手段は、第二圧送機であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第一系統から第二系統の途中位置まで被装填物を移動させる第一送り出し手段と、第二系統から装薬孔に被装填物を移動させる第二送り出し手段を備えていることにより、第一系統と第二系統の総長が長い場合でも、第一系統と第二系統において被装填物をスムーズに移動させて装薬孔に送り出すことが可能になる。
第一送り出し手段がコンプレッサ等の第一圧送機である場合、第一系統に供給された被装填物は第一圧送機によって逆止弁を介して第二系統の途中位置まで圧送される。この際、被装填物の重量と被装填物と第一系統及び第二系統との間の動摩擦力とにより、被装填物が第二系統の所定位置まで圧送されるように第一圧送機の圧送力が設定されるのがよい。また、その他、第二系統の所定位置にストッパーが出入り自在に設けられていて、第一圧送機が被装填物を圧送する前にストッパーが第二系統の内部に張り出し、第一圧送機にて圧送された被装填物がストッパーによって第二系統の所定位置に停止されるようになっていてもよい。
一方、第一送り出し手段が、シリンダ機構とこのシリンダ機構によって第一系統を往復動する押し込み棒からなるユニットである場合は、シリンダ機構の駆動によって押し込み棒にて被装填物を第二系統の所定位置に送り出した後、シリンダ機構の駆動によって押し込み棒を元の位置(第一系統における供給装置よりも押し込み方向上流側の位置)に戻し、次の被装填物の押し込みの準備状態を形成できる。
【0014】
第二系統において被装填物を装薬孔まで送り出す第二圧送機は、例えばコンプレッサ等により形成される。ここで、第二圧送機から圧送空気を第二系統に供給する際に、第二系統には潤滑水が同時に供給され、被装填物と潤滑水が圧送空気によって装薬孔に送り出される。
【0015】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記供給装置は、複数の前記被装填物を収容する収容容器と、該収容容器から受け取った一つの該被装填物を前記第一系統に供給する供給機構と、を備えており、
前記供給機構は、アクチュエータと、該アクチュエータによって回転する過程で開口を介して前記被装填物を受け取る回転体とを備え、
前記回転体の前記開口が前記第一系統の方向に配向した際に、該開口から前記被装填物が該第一系統へ供給されることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、収容容器から供給される被装填物を開口を備えた回転体で受け取り、回転体が回転して開口が第一系統に配向した際に被装填物を第一系統に供給(例えば落下)することにより、所定量の被装填物を効率的かつ確実に第一系統に供給することが可能になる。
爆薬として、例えばカートリッジ式含水爆薬を使用する場合、回転体の開口が一本のカートリッジ式含水爆薬を受け取り、第一系統に対して一本のカートリッジ式含水爆薬を供給できる。
【0017】
また、本発明による爆薬装填システムの他の態様において、
前記第一系統は、前記供給装置から供給された前記被装填物の重量を計測する重量計を備えていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、供給装置から供給された被装填物の重量を計測する重量計を第一系統が備えていることにより、所定量の被装填物を装薬孔に装填することが可能になる。例えば、施工対象のトンネルに応じて、あるいは使用する爆薬に応じて、一つの装薬孔に装填される爆薬の数(もしくは重量)は相違する。
そこで、装填される爆薬の重量を重量計に設定しておき、第一系統に供給された爆薬の重量を重量計にて計測することにより、正しい量の爆薬を装薬孔に装填することができる。ここで、重量計により計測された爆薬の重量が入力値と相違する場合は、重量計からアラームが報知される等により、第一系統に供給された爆薬の量を確認し、必要に応じて正しい量の爆薬を第一系統に供給することができる。
【0019】
また、本発明による切羽穿孔機の一態様は、
台車と、
前記台車に対して旋回自在かつ起伏自在に装着されているブームとを備え、
前記爆薬装填システムを構成する、前記供給装置と前記制御装置が前記台車に搭載されており、
前記第二系統の一部もしくは全部が前記ブームに搭載されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、本発明の爆薬装填システムを搭載した切羽穿孔機を使用して、ブームを移動させたり伸長させながら第二系統の先端を装填対象の装薬孔に位置決めし、爆薬装填システムを作動して爆薬と込め物を連続的に装薬孔に装填することにより、切羽から作業員が離れた遠隔作業が実現され、作業員の切羽への近接作業が解消されることから、作業安全性が高められ、作業苦渋性が解消される。さらに、爆薬装填システムを備えた切羽穿孔機を使用することにより、効率的な装填作業を実現できる。
ここで、切羽穿孔機は一つもしくは複数のブームを備え、ブームの先端にはマンケージが設けられ、マンケージに乗り込んだ作業員が爆薬装填システムの第二系統の先端を装薬孔に位置決めする形態であってもよい。この場合でも、マンケージに乗り込んだ作業員が切羽から例えば2m以上離れた位置にいた状態で第二系統を構成する装填パイプ等の先端を装薬孔に位置決めすることにより(切羽から1.5m以内にある場合に危険性が高いという実績がある)、作業員の作業安全性を保証することができる。
【0021】
また、本発明による切羽穿孔機の他の態様は、
前記ブームに対して、穿孔システムと装薬孔清掃システムの少なくとも一方がさらに搭載されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、ブームに対して穿孔システムと装薬孔清掃システムの少なくとも一方がさらに搭載されていることにより、切羽に対する装薬孔の穿孔と、装薬孔の清掃と、清掃された装薬孔に対する爆薬等の装填を、一つのブームにて連続的に行うことができ、装薬孔の造成から爆薬等の装填までの一連の作業を効率的に行うことが可能になる。
ここで、ブームの周囲に、穿孔システムを構成する穿孔ドリフターと、装薬孔清掃システムを構成する清掃ロッドと、爆薬装填システムを構成する第二系統(の装填ホース)が取り付けられており、切羽の装薬孔の位置にブームが位置決めされた後、ブーム(のスティンガー)を回転することによって、穿孔ドリフターや清掃ロッド、第二系統の装填ホースのいずれかを所定位置に位置決めし、所望する作業を実行することができる。
例えば、穿孔ドリフターにて所定長の装薬孔を造成した後、ブームのスティンガーを回転させて清掃ロッドを装薬孔に位置決めし、装薬孔の清掃を行い、その後にブームのスティンガーを回転させて装填ホースを位置決めし、被装填物を連続的に装薬孔に装填することができる。
【0023】
また、本発明による爆薬装填方法の一態様は、
切羽に形成されている装薬孔に対して、爆薬と込め物を含む被装填物を装填する、爆薬装填方法であって、
供給装置から、送り出し装置を構成する送り出し系統に対して、前記爆薬と前記込め物を供給するA工程と、
前記送り出し系統を、前記爆薬と前記込め物を連続的に移動させて前記装薬孔に順次装填するB工程と、を有し、
前記送り出し系統が、前記供給装置から前記被装填物を受け取る第一系統と、該第一系統から移動してきた前記被装填物を前記装薬孔まで送り出す第二系統とを備え、
前記B工程では、前記送り出し装置を構成する送り出し手段により該被装填物を移動させることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、送り出し装置を構成する送り出し系統の第一系統に対して供給装置から爆薬と込め物が供給され、第二系統を介して送り出し手段にて爆薬と込め物を装薬孔に連続的もしくは同時に送り出して装填することから、効率的な装填作業を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機によれば、切羽に穿孔された装薬孔に爆薬等の被装填物を装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性が少なく、効率的な装填作業を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る切羽穿孔機の一例の全体構成を示す図であって、実施形態に係る爆薬装填システムの一例の全体構成をともに示す図である。
図2】切羽穿孔機のブームの先端のスティンガー周りの構成を示す斜視図である。
図3】供給装置の一例の構成を、その下方にある第一系統とともに示す図である。
図4】(a)、(b)の順に、供給装置を構成する回転体の回転に応じて、収容容器から受け取った被装填物を第一系統へ供給する一連の流れを説明する図である。
図5】制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】制御装置の機能構成の一例を示す図である。
図7】供給装置から第一系統に被装填物が供給された状態を示す図である。
図8】第二系統の途中位置に被装填物が送り出された状態を示す図である。
図9】第二系統から装薬孔に被装填物を送り出している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機]
図1乃至図9を参照して、実施形態に係る爆薬装填システムと爆薬装填方法、及び切羽穿孔機の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る切羽穿孔機の一例の全体構成を示す図であって、実施形態に係る爆薬装填システムの一例の全体構成をともに示す図である。また、図2は、切羽穿孔機のブームの先端のスティンガー周りの構成を示す斜視図である。
【0029】
図1は、発破により地盤Gを穿孔して山岳トンネルを施工する過程で造成される切羽Kにおいて、複数の装薬孔Hが形成されており、切羽Kの坑口側に切羽穿孔機100が位置決めされ、一つの装薬孔Hに対して被装填物を装填している状況を示している。
【0030】
切羽穿孔機100は、台車10と、台車10に対して旋回及び起伏自在(X1方向、X3方向)に装着されている複数のブーム14,16とを備え、台車10には爆薬装填システム50が搭載されている。
【0031】
台車10にはオペレータキャビン12があり、オペレータキャビン12には、爆薬装填システム50を構成する制御装置40が収容されている。
【0032】
台車10に装着されている一方のブーム14は、先端にマンケージ15を回動自在に備え、軸方向であるX4方向への伸縮も可能なケージブームであり、ケージブーム14のX3方向への起伏に応じてマンケージ15は常時水平姿勢を維持できるようになっており、マンケージ15に搭乗した作業員が各種作業やオペレータへの指示を実行できるようになっている。
【0033】
一方、台車10に装着されている他方のブーム16は、爆薬装填作業等を実行する作業ブームであり、軸方向であるX2方向に伸縮可能であり、先端にスティンガー17を備えている。
【0034】
図2に示すように、スティンガー17の周囲には、爆薬装填システム50を構成する装填パイプ33cの他、不図示の穿孔システムを構成する穿孔ロッド39Aと、不図示の装薬孔清掃システムを構成する清掃ロッド39Bが取り付けられている。
【0035】
スティンガー17がX10方向に回転することにより、選択されたパイプやロッドを作動状態とできる。例えば、最初に穿孔ロッド39Aを選定し、穿孔システムを駆動して切羽Kに装薬孔Hを造成し、次いで、スティンガー17を回動して清掃ロッド39Bを装薬孔Hに位置決めし、装薬孔Hに清掃ロッド39Bを挿入して装薬孔清掃システムを駆動し、清掃ロッド39Bから高圧エアや高圧水等を噴射して(もしくはスクリュー上の清掃器具を適用して)装薬孔Hの清掃を行う。その後、スティンガー17を回動して装填パイプ33cを装薬孔Hに位置決めし、図1に示すように装薬孔Hに装填パイプ33cを挿入し、装薬孔Hに爆薬を含む被装填物を装填する。
【0036】
このように、スティンガー17が複数種の作業用ロッドやパイプを併設することにより、一つのブーム16にて複数種の作業を連続的に実行することが可能になる。ここで、図1では、一本の作業用ブーム16を図示しているが、台車10に複数の作業用ブームが設けられていてもよいし、複数の作業用ブームが各種作業(穿孔作業、清掃作業、装填作業)に固有のロッドやパイプを備えていてもよい。
【0037】
切羽穿孔機100を構成する台車10に搭載される爆薬装填システム50は、被装填物を供給する供給装置20と、供給装置20から供給された被装填物を装薬孔Hに送り出す送り出し装置30と、供給装置20と送り出し装置30を制御する制御装置40とを有する。
【0038】
図示例の供給装置20は、被装填物に含まれる爆薬と込め物に固有の供給装置20A乃至20Dを備えており、装薬孔Hに装填される順番で、送り出し装置30を構成する第一系統32に沿ってその上方に直列状に配設されている。
【0039】
直列状に配設された複数の供給装置20は、装薬孔Hの孔尻へ装填される親ダイE1(図7参照)をY1方向に供給する供給装置20A、親ダイE1の後方(装薬孔Hの孔口側)に順次装填される二本の増しダイE2(図7参照)をそれぞれY2方向とY3方向に供給する供給装置20B,20C,最後に装薬孔Hに装填される込め物C(図7参照)をY4方向に供給する供給装置20Dを含んでいる。親ダイE1は、薬包径φ25mm乃至30mm程度で長さ200mm程度のカートリッジ式含水爆薬と雷管を備え、増しダイE2は親ダイE1と同程度の寸法のカートリッジ式含水爆薬であり、込め物Cは装薬孔Hを閉塞する断面寸法を備える粘土(アンコ)等である。
【0040】
ここで、親ダイE1と増しダイE2は爆薬Eに含まれ、爆薬Eと込め物Cを含めて被装填物P(図3参照)とする。尚、図示例は、親ダイE1,二本の増しダイE2,込め物Cを一セットとして一つの装薬孔Hに装填することから、各被装填物Pに固有の四つの供給装置20A乃至20Dを第一系統32に沿って直列状に配設しているが、親ダイを不要とする場合は親ダイ固有の供給装置は不要となり、増しダイの数が例えば三つ以上の場合は三つ以上の各増しダイに固有の供給装置が配設され、また、込め物の数が二つ以上の場合は二つ以上の各込め物に固有の供給装置が配設される。さらに、図示例に代わり、一つの大規模な供給装置が、その内部において三つの隔壁により形成される四つの空間を備え、各空間が各被装填物Pに固有の供給部を形成する形態であってもよい。尚、供給装置の数は図示例(四つ)に限定されるものでなく、四つ未満でも四つ以上(五つや六つ等)であってもよい。
【0041】
各供給装置20に対して制御装置40から駆動指令信号が送信され、供給装置20の駆動により第一系統32に対して被装填物Pが供給される。この供給装置20の具体的な構成については以下で詳説する。
【0042】
図1に戻り、送り出し装置30は、供給装置20から供給された被装填物Pを送り出すルートを形成する送り出し系統31と、送り出し系統31の途中に介在する逆止弁34と、二種類の送り出し手段である第一送り出し手段35と第二送り出し手段36とを有する。
【0043】
送り出し系統31は、供給装置20から被装填物Pを受け取る第一系統32と、第一系統32から移動してきた被装填物Pを装薬孔Hまで送り出す第二系統33とを有する。
【0044】
第一系統32は、直列状に配設された各供給装置20A乃至20Dから被装填物Pを受け取り、第二系統33に送り出すルートであることから直線性を要し、従って、比較的剛性のあるスチールパイプや硬質樹脂等により形成される装填パイプによって形成されるのがよい。
【0045】
一方、第二系統33は、第一系統32との境界から切羽Kの装薬孔Hまでの比較的長い長さを有し、かつ、その途中位置では作業員の良好なハンドリン性を備えているのが好ましく、さらに、装薬孔Hへの挿入先端領域は直線性を備えているのが好ましいことから、第一系統32と接続される側は直線性を担保できる装填パイプ33aを備え、途中位置はハンドリング性が良好な装填ホース33bを備え、先端の装薬孔H側は装填パイプ33cを備えるユニット構造であるのが好ましい。装填ホース33bは、ある程度の剛性と変形性をともに備える素材である、例えば比較的硬質の樹脂や蛇腹管等により形成される。
【0046】
第一系統32と第二系統33の境界には、逆止弁34が設けられている。第一系統32の送り出し方向上流側(トンネルの坑口側)には第一送り出し手段35が設けられており、第一系統32に各被装填物Pが供給された後、第一送り出し手段35に対して制御装置40から駆動指令信号が送信され、第一送り出し手段35の駆動によって各被装填物PがY5方向に連続的(もしくは同時)に第二系統33の途中位置(例えば、装填パイプ33aの途中位置)まで送り出される。
【0047】
逆止弁34を通過して第二系統33の途中位置まで送り出された爆薬E(親ダイE1,二本の増しダイE2)と込め物Cは、この途中位置に直列状に停止され、逆止弁34によって第一系統32へ戻されること(逆走)が抑止される。
【0048】
逆止弁34はその開度が調整自在な制御弁でもあり、各被装填物Pが第二系統33の途中位置まで送り出された後、制御装置40から駆動指令信号が送信されて閉制御されるようになっている。尚、逆止弁は、図示例のように開度が制御される弁の他にも、ヒンジ構造の弁であって、全ての被装填物Pが第一系統32から第二系統33に送り出された後に自動的に弁が閉まる形態であってもよい。
【0049】
制御弁34を閉制御した後、装填パイプ33aに通じている第二送り出し手段36に対して制御装置40から駆動指令信号が送信され、第二送り出し手段36の駆動によって各被装填物PがY8方向とY9方向に連続的(もしくは同時)に装填ホース33bと装填パイプ33cに送り出された後、装薬孔Hに装填される。
【0050】
ここで、第一系統32において各被装填物Pを連続的に送り出す第一送り出し手段35は、コンプレッサにより形成される第一圧送機であり、第一圧送機35から第一系統32に供給される圧力エアにより、各被装填物Pが圧送されるようになっている。尚、第一送り出し手段35は、図示例のコンプレッサの他に、シリンダ機構と、このシリンダ機構によって第一系統32を往復動する押し込み棒とにより形成されるユニット(図示せず)により構成されてもよい。
【0051】
一方、第二系統33において各被装填物Pを連続的に送り出す第二送り出し手段36も、コンプレッサにより形成される第二圧送機である。第二圧送機36と第二系統33を連通する流路には、水タンク37に通じる流路が連通しており、水タンク37からY6方向に供給された潤滑水が、第二圧送機36からY7方向に圧送される圧力エアによって第二系統33に供給され、被装填物Pと潤滑水が圧力エアにより装薬孔Hへ圧送される。
【0052】
次に、図3及び図4を参照して、供給装置20の構成について説明する。ここで、図3は、供給装置の一例の構成を、その下方にある第一系統とともに示す図であり、図4(a)、(b)は順に、供給装置を構成する回転体の回転に応じて、収容容器から受け取った被装填物を第一系統へ供給する一連の流れを説明する図である。
【0053】
図示例の供給装置20は、多数本の被装填物Pを収容する収容容器21と、収容容器21の出口21aから受け取った一つの被装填物Pを第一系統32に供給する供給機構22とを有する。
【0054】
供給機構22は、回転軸26と、回転軸26に装着されて一つの被装填物Pを受け取る回転体24と、回転軸26を回転させるモータ等のアクチュエータ27と、回転体24を収容して下方にある第一系統32と接続されるホッパー23とを有する。
【0055】
円柱状の回転体24は、その側面に一本の被装填物Pを収容する寸法の開口25を備えており、図3に示すように、回転軸26を中心に回転体24がZ2方向に回転する過程で収容容器21の出口21aの下方に位置合わせされた際に、出口21aからZ1方向に落下する被装填物Pが開口25に入る。
【0056】
図4(a)に示すように、回転体24がさらにZ2方向に回転し、図4(b)に示すように、開口25が第一系統32の方向に配向した際に、開口25から被装填物Pが第一系統32へY1乃至Y4方向に供給されることになる(図1も参照)。
【0057】
他の装薬孔Hへ被装填物Pを装填する際は、回転体24が同様に回転して開口25にて被装填物Pを収容容器21から受け取り、回転体24がさらに回転して第一系統32に対して被装填物Pを同様に供給する。
【0058】
図3図4に示すように、第一系統32における各供給装置20の下方位置(被装填物Pが供給される位置)には、重量計38が設けられており、重量計38にて第一系統32に供給された被装填物Pの重量を計測し、計測データを制御装置40に送信するようになっている。重量計38による被装填物Pの重量計測と、制御装置40による計測データの照合については以下で詳説する。
【0059】
次に、図5乃至図9を参照して、制御装置による爆薬装填システムの制御内容の一例について説明する。ここで、図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、図6は、制御装置の機能構成の一例を示す図である。また、図7は、供給装置から第一系統に被装填物が供給された状態を示す図であり、図8は、第二系統の途中位置に被装填物が送り出された状態を示す図であり、図9は、第二系統から装薬孔に被装填物を送り出している状態を示す図である。
【0060】
図5に示すように、制御装置40は、接続バス46により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)41、主記憶装置42、補助記憶装置43、通信IF(interface)44、及び入出力IF45を備えている。主記憶装置42と補助記憶装置43は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0061】
CPU41は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU41は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU41は、コンピュータからなる制御装置40の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU41は、例えば、補助記憶装置43に記憶されたプログラムを主記憶装置42の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0062】
主記憶装置42は、CPU41が実行するコンピュータプログラムや、CPU41が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置42は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置43は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置43には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF44を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、第一圧送機35や第二圧送機36,制御弁34,重量計38等が備える通信器(いずれも図示せず)が含まれる。尚、ネットワークには、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等が含まれる。
【0063】
補助記憶装置43は、例えば、主記憶装置42を補助する記憶領域として使用され、CPU41が実行するコンピュータプログラムや、CPU41が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置43は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置43として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0064】
通信IF44は、制御装置40が接続するネットワークとのインターフェイスである。通信IF44は、ネットワークを介して、各重量計38から第一系統32に供給された被装填物Pの重量に関する計測データを受信する。また、第一系統32において各被装填物Pを連続的に送り出す際には、第一圧送機35に対して駆動指令信号を送信し、第二系統33において各被装填物Pを連続的に装薬孔Hに送り出す際には、制御弁34を閉制御した後、第二圧送機36に対して駆動指令信号を送信する。
【0065】
入出力IF45は、制御装置40に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF45には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。制御装置40は、入出力IF45を介し、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0066】
また、入出力IF45には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。例えば、各被装填物Pの設計重量が、入出力IF45を構成する表示デバイスに表示される。また、制御装置40内に格納されている、切羽Kにおける各装薬孔Hのうち、被装填物Pの装填対象となる装薬孔Hが表示デバイスに表示される。
【0067】
図6に示すように、制御装置40は、CPU41によるプログラムの実行により、少なくとも、通信部402、供給装置駆動部404、送り出し装置駆動部406、重量判定部408、及び格納部410の各種機能を提供する。尚、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0068】
通信部402は、ネットワークを介して、各供給装置20,第一圧送機35や第二圧送機36,制御弁34,重量計38の備える通信IFに通信可能に接続される。
【0069】
格納部410には、一つの装薬孔Hに装填される各被装填物P(親ダイE1,増しダイE2,込め物C)の設計重量データが格納されている。
【0070】
施工現場ごとに、一つの装薬孔Hに装填される爆薬Eの数や込め物Cの数(重量)、さらにはこれらのメーカー仕様等は異なるが、回転体24が回転しないことに起因して爆薬E等が第一系統32に供給されない場合や、回転体24が二回転以上することに起因して爆薬E等が過度に第一系統32に供給される場合や、さらには、異なるメーカーの爆薬等が第一系統32に供給される場合等、設計仕様とは異なる被装填物Pの第一系統32への供給を防止することが肝要である。
【0071】
そこで、まず、図7に示すように、制御装置40の供給装置駆動部404から各供給装置20A乃至20Dの供給機構22(を構成するアクチュエータ27)に対して駆動指令信号S0が送信され、各供給装置20A乃至20Dから被装填物Pが第一系統32に供給される。
【0072】
そして、各供給装置20A乃至20Dから第一系統32に供給された被装填物Pの重量が、各供給装置20A乃至20Dに固有の重量計38により計測され、各重量計38から計測データS1が制御装置40の通信部402に対して送信される。
【0073】
制御装置40の重量判定部408では、格納部410に格納されている各被装填物Pに関する設計重量データと、通信部402において受信した各重量計38の計測データS1を照合し、双方が一致していない場合は、例えばブザーや点灯表示等によって被装填物Pの重量が設計重量に一致していないことを作業員や管理者等に報知する。
【0074】
以上、供給装置20A乃至20Dから、送り出し装置30を構成する送り出し系統31(の第一系統32)に対して、設計重量の爆薬Eと込め物Cを供給するステップは、爆薬装填方法のA工程となる。
【0075】
第一系統32に供給された各被装填物Pの重量が設計重量であることが確認されたら、図8に示すように、制御装置40の送り出し装置駆動部406から第一圧送機35へ駆動指令信号S2が送信される。駆動指令信号S2を受信した第一圧送機35は、圧力エアを第一系統32に供給し、供給された圧力エアにより、親ダイE1と二本の増しダイE2,及び込め物Cは直列姿勢で第一系統32から逆止弁34を介し、第二系統33の装填パイプ33aの途中位置までY5方向に送り出される。
【0076】
この送り出しに当たり、第一圧送機35の駆動に同期するようにして、装填パイプ33aの途中位置(親ダイE1等を停止させる所定位置)にはストッパー36bがY10方向に自動的に張り出し、圧送エアにより送り出されてきた親ダイE1等を所定位置にて停止できるようになっている。尚、この停止制御は一例であり、所定位置に親ダイE1等が自然に停止するように、各被装填物Pと送り出し系統31の内面との間の動摩擦力が勘案されて、第一圧送機35による圧力エアの圧送力や圧送時間が設定されてもよい。
【0077】
第二系統33の所定位置に親ダイE1等が停止されたら、図9に示すように、ストッパー36bの張り出しが解消され、制御装置40の送り出し装置駆動部406から、制御弁34を閉制御する駆動指令信号S3が送信され、駆動指令信号S3を受信した制御弁34は完全に閉じた状態となる。
【0078】
次に、制御装置40の送り出し装置駆動部406から、第二圧送機36と第二系統33を繋ぐ流路の途中にある制御弁36aに対して開制御する駆動指令信号S4が送信され、さらに、送り出し装置駆動部406から第二圧送機36に対して駆動指令信号S5が送信される。
【0079】
駆動指令信号S5を受信した第二圧送機36は圧力エアを供給し、圧力エアは水タンク37からY6方向に供給された潤滑水を第二系統33に送り出しながら、所定位置に停止している親ダイE1と増しダイE2,及び込め物Cを後方からY7方向に押し込み、親ダイE1等を連続的に第二系統33から切羽Kの装薬孔HへY8方向に送り出すことにより、被装填物Pの装填を行う。
【0080】
以上、送り出し系統31を構成する第二系統33を爆薬Eと込め物Cを連続的に移動させ、装薬孔Hに順次装填するステップは、爆薬装填方法のB工程となる。
【0081】
図示する爆薬装填システム50を備えた切羽穿孔機100を使用し、図示する爆薬装填方法を適用することにより、作業員は切羽Kに近接して作業苦渋性の高い爆薬装填作業を行う必要がなくなることから、切羽Kに穿孔された装薬孔Hに爆薬E等の被装填物Pを装填する作業において、作業安全性が高く、作業苦渋性の解消された装填作業を実現できる。また、爆薬装填システム50によって、所定量(所定重量)の爆薬Eと込め物Cを連続的もしくは同時に装薬孔Hに装填できることから、効率的な装填作業を実現できる。
【0082】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。例えば、図示例は、切羽穿孔機100に搭載された爆薬装填システム50を用いて各構成要素を制御する形態であるが、リモコン(リモートコントロール)を用いて各構成要素を制御する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10:台車
12:操作室(オペレータキャビン)
14:ケージブーム(ブーム)
15:マンケージ(作業台)
16:作業ブーム(ブーム)
17:スティンガー
20,20A~20D:供給装置
21:収容容器
21a:出口
22:供給機構
23:ホッパー
24:回転体
25:開口
26:回転軸
27:アクチュエータ
30:送り出し装置
31:送り出し系統
32:第一系統(装填パイプ)
33:第二系統
33a:装填パイプ
33b:装填ホース
33c:装填パイプ
34:逆止弁(開閉弁)
35:第一送り出し手段(送り出し手段、第一圧送機)
36:第二送り出し手段(送り出し手段、第二圧送機)
36a:制御弁
36b:ストッパー
37:水タンク
38:重量計
39A:穿孔ロッド
39B:清掃ロッド
40:制御装置
50:爆薬装填システム
100:切羽穿孔機
G:地盤
K:切羽
H:装薬孔
E:爆薬
E1:親ダイ
E2:増しダイ
C:込め物
P:被装填物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9