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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】隙間閉塞装置と隙間閉塞方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20240617BHJP
   E21D 13/02 20060101ALI20240617BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G21F9/36 541D
G21F9/36 541E
E21D13/02
E21D11/00 Z
G21F9/36 541M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021110968
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007860
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 憲
(72)【発明者】
【氏名】白井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小野 誠
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 光泰
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249634(JP,A)
【文献】特開2004-298822(JP,A)
【文献】特開2005-024321(JP,A)
【文献】特開2007-138592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/34-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が、地下坑道の軸方向に間欠的もしくは連続的に横置きされ、該複数の収容容器の周囲と該地下坑道との間にある隙間に対して充填材を充填して該隙間を閉塞する、隙間閉塞装置であって、
前記地下坑道に横置きされている前記収容容器を跨いで走行する、ベースマシンと、
前記ベースマシンに固定されて、前記隙間を閉塞する妻枠と、
前記妻枠を貫通して該妻枠の一方側の前記隙間へ前記充填材を充填する充填管とを有し、
前記妻枠は前記収容容器を跨ぐ内側開口を備え、該妻枠のうち、前記地下坑道に対向する外側端面と該収容容器に対向する該内側開口の内側端面にはそれぞれ、拡縮自在な帯状チューブが取り付けられており、前記充填材を前記隙間に充填するに当たって前記妻枠が位置決めされた際に、該帯状チューブが膨らんで該妻枠と前記地下坑道及び前記収容容器との間をシールすることを特徴とする、隙間閉塞装置。
【請求項2】
前記妻枠の前記外側端面には、該妻枠を前記地下坑道に対して仮固定する固定ジャッキが装備されていることを特徴とする、請求項に記載の隙間閉塞装置。
【請求項3】
放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が、地下坑道の軸方向に間欠的もしくは連続的に横置きされ、該複数の収容容器の周囲と該地下坑道との間にある隙間に対して充填材を充填して該隙間を閉塞する、隙間閉塞装置であって、
前記地下坑道に横置きされている前記収容容器を跨いで走行する、ベースマシンと、
前記ベースマシンに固定されて、前記隙間を閉塞する妻枠と、
前記妻枠を貫通して該妻枠の一方側の前記隙間へ前記充填材を充填する充填管とを有し、
前記妻枠の一部は、該妻枠の他部に対して相対的にスライドして該他部に着脱自在であることを特徴とする、隙間閉塞装置。
【請求項4】
放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が、地下坑道の軸方向に間欠的もしくは連続的に横置きされ、該複数の収容容器の周囲と該地下坑道との間にある隙間に対して充填材を充填して該隙間を閉塞する、隙間閉塞方法であって、
前記地下坑道に横置きされている前記収容容器を跨ぐようにして妻枠を移動させて仮固定し、該妻枠を貫通する充填管を介して該妻枠の一方側の前記隙間へ前記充填材を充填するものとし、
前記妻枠は前記収容容器を跨ぐ内側開口を備え、該妻枠のうち、前記地下坑道に対向する外側端面と該収容容器に対向する該内側開口の内側端面にはそれぞれ、拡縮自在な帯状チューブが取り付けられており、前記充填材を前記隙間に充填するに当たって前記妻枠が位置決めされた際に、該帯状チューブが膨らんで該妻枠と前記地下坑道及び前記収容容器との間をシールすることを特徴とする、隙間閉塞方法。
【請求項5】
前記複数の収容容器の周囲の前記隙間に対して、一度に前記充填材を充填し、次いで、前記妻枠を移動させ、別の前記複数の収容容器の周囲の前記隙間に対して、一度に前記充填材を充填することを特徴とする、請求項に記載の隙間閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間閉塞装置と隙間閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベル放射性廃棄物(以下、放射性廃棄物という)は、ガラス原料とともに溶解されてガラス固化体とされ、ガラス固化体は鋼製のオーバーパックに収容され、オーバーパックはPEM(Prefabricated Engineered Barrier System Module)と呼ばれる中空円柱状で鋼製の収容容器の内部を満たす緩衝材の内部に収容され、最終処分場を構成する地下深層(例えば地下300m以深)にある地下坑道(処分坑道)にPEMが定置されることにより、地層処理されることが検討されている。オーバーパックは、ガラス固化体に対する地下水の接触を抑制し、外圧からガラス固化体を保護する作用を有している。一方、緩衝材は、ベントナイトと珪砂の混合物を所定の密度に圧縮成形したものであり、ガラス固化体から地中へ放射性物質が溶出することを抑制し、地層変位の際には自身の物理的緩衝機能と化学的緩衝機能とによりガラス固化体を保護する作用を有している。
最終処分場では、地上から地下深層に延設する立坑が施工され、立坑から例えば水平方向に延設する複数の地下坑道が施工される。PEMが定置される地下坑道は、例えば岩盤を掘削することにより造成された天然バリアとして機能する。一方、オーバーパック、緩衝材及びPEMは人工バリアとして機能し、これら天然バリアと人工バリアの多重バリアの内部に放射性廃棄物が封入され、格納されることになる。
地下坑道におけるPEMの定置に関しては、主として、横置き方式を前提に検討が進められている。ここで、横置き方式とは、地下坑道にコンクリート製の台座を置き、各台座の上にそれぞれ複数のPEMを寝かせた状態で定置する定置方式である。
一方、オーバーパックの定置に関しては、主として、竪置き方式を前提に検討が進められている。ここで、竪置き方式は、例えば水平方向に数百m以上に亘って延設する地下坑道の長手方向において、間隔を置いて複数の竪孔(処分孔)を造成し、各処分孔にオーバーパック及びブロック状に成形した緩衝材を収容する定置方式として検討が進められている。
竪置きと横置きのいずれの定置方式であっても、例えば地下水が人工バリアに流入することを抑制して定置後の人工バリアの品質を確保し、安定的なPEM及びオーバーパックの定置姿勢を確保するべく、地下坑道(や処分孔)の孔壁とPEM及びオーバーパックとの間にある隙間は、充填材(もしくは埋め戻し材)により閉塞されることが検討されている。この充填材には、粒状ベントナイトや球体状ベントナイト等のペレット状のベントナイト(ベントナイトの単体、ベントナイトを主成分とした混合材)に代表される粘土系材料が一般に適用される計画として、検討が進められている。
【0003】
PEM及びオーバーパックが最終処分場において地層処理された後は、合理的な安全管理を継続する観点から、最終処分場の閉鎖までの間における放射性廃棄物を含むPEMとオーバーパックの回収確保も国の方針として義務付けられている。従って、放射性廃棄物の地層処理においては、地下坑道にPEM等を定置して孔壁とPEM等の間の隙間を充填材により閉塞するステージと、地下坑道内に充填された充填材を掘削除去して充填材の内部にあるPEMを回収するステージがあることから、双方のステージに対応した隙間閉塞技術と隙間充填材除去技術の開発が必要になる。
【0004】
ところで、上記するPEMの定置方式のうち、横置きの定置方式は、竪置きの定置方式のように地下坑道とは別の処分孔の造成を不要にできることから、より効率的な地層処理の実現を可能にする。この横置き方式において、延長が数百m以上に亘る地下坑道に対して、一基のPEMの横置きと、孔壁とPEMの間の隙間への充填材の充填を一つの施工ユニットとして、この施工ユニットを地下坑道の切羽側(奥側)から地下坑道の孔口(立坑との連結口)に向かって順次繰り返す方法では、PEMの搬入及び定置のための設備と、充填材充填のための設備の入れ替えを都度行う必要があることを含めて、作業効率の低下が課題となる。
そこで、地下坑道の奥側から複数のPEM(放射性廃棄物を収容した収容容器)を連続的に横置きした後、複数のPEMと孔壁の間の隙間に充填材を連続的に充填する作業が考えられるが、この作業では、既に複数のPEMが横置きされている状態の中で、複数のPEMと孔壁の間の隙間に充填材を確実に充填する必要があるものの、このような技術は未だ確立していない。
従って、地下坑道に複数のPEMが横置きされた状態において、複数のPEMと孔壁の間の隙間に充填材を効率的かつ確実に充填できる技術が望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、地下坑道とPEMの間の隙間に隙間充填材を充填する方法が提案されている。具体的には、隙間充填材を隙間に充填する前に、隙間の内面を乾燥又は凍結させる方法であり、その具体的な方法として、乾燥もしくは冷却された気体を隙間に送入し、循環させることによって、隙間の内面を乾燥もしくは凍結させることにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-132867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の隙間充填材の充填方法によれば、岩盤から地下坑道に地下水が浸出するような場合であっても、ペレット状のベントナイト系材料からなる隙間充填材を地下水の影響を受けることなしに隙間の全体に確実に送り込み、充填することができるとしている。
しかしながら、特許文献1に記載の充填方法によっても、上記する課題、すなわち、地下坑道において複数のPEMが横置きされている状態の中で、複数のPEMと孔壁の間の隙間に充填材を確実に充填することは難しい。
【0008】
本発明は、放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が地下坑道に横置きされた状態において、複数の収容容器と孔壁の間の隙間に充填材を効率的かつ確実に充填することのできる、隙間閉塞装置と隙間閉塞方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による隙間閉塞装置の一態様は、
放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が、地下坑道の軸方向に間欠的もしくは連続的に横置きされ、該複数の収容容器の周囲と該地下坑道との間にある隙間に対して充填材を充填して該隙間を閉塞する、隙間閉塞装置であって、
前記地下坑道に横置きされている前記収容容器を跨いで走行する、ベースマシンと、
前記ベースマシンに固定されて、前記隙間を閉塞する妻枠と、
前記妻枠を貫通して該妻枠の一方側の前記隙間へ前記充填材を充填する充填管とを有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、地下坑道に横置きされている放射性廃棄物を収容した複数の収容容器(PEM)を跨いで走行するベースマシンに対して、隙間を閉塞する妻枠が固定され、妻枠を貫通する充填管を介して妻枠の一方側へ充填材が充填されることにより、ベースマシンの移動に応じて妻枠を所望位置に移動させた後、妻枠の一方側の隙間に対して充填材を確実に充填することが可能になる。また、地下坑道に複数の収容容器を横置きした後に、複数の収容容器の周囲にある隙間に対して充填材を一度に充填できることから、地下坑道への収容容器の搬入及び横置きから隙間への充填材の充填までの一連の作業を、連続的かかつ効率的に行うことができる。
ここで、「複数の収容容器が、地下坑道の軸方向に間欠的もしくは連続的に横置きされている」とは、複数の収容容器をベースマシンが跨いで走行できるように、軸直交方向の断面(横断面)の横方向の例えば中央位置や略中央位置に複数の収容容器が位置決めされた状態で、地下坑道の軸方向に隙間なく連続的に横置きされている形態と、地下坑道の軸方向に間隔を置いて間欠的に横置きされている形態の双方を含んでいる。地下坑道の断面形状には、例えば円形や楕円形、異形断面の一例である馬蹄形等が含まれる。
妻枠は、地下坑道の軸直交方向の断面を完全に閉塞する断面を有している形態であってもよいし、地下坑道の断面よりも小さな断面を有しながら、妻枠の外側端面と孔壁を塞ぐ手段にて妻枠の外縁と孔壁の間を完全に閉塞する形態であってもよい。また、ベースマシンと同様に妻枠も収容容器を跨ぐことになるが、収容容器が貫通する妻枠の備える内側開口の内側端面が収容容器に完全に当接する形態であってもよいし、内側開口の内側端面が収容容器に当接せず(内側開口が収容容器よりも大断面に設定されている)、内側端面と収容容器を塞ぐ手段にて内側開口の内縁と収容容器の間を完全に閉塞する形態であってもよい。
【0011】
また、本発明による隙間閉塞装置の他の態様において、
前記妻枠は前記収容容器を跨ぐ内側開口を備え、該妻枠のうち、前記地下坑道に対向する外側端面と該収容容器に対向する該内側開口の内側端面にはそれぞれ、拡縮自在な帯状チューブが取り付けられており、前記充填材を前記隙間に充填するに当たって前記妻枠が位置決めされた際に、該帯状チューブが膨らんで該妻枠と前記地下坑道及び前記収容容器との間をシールすることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、妻枠が、地下坑道に対向する外側端面と収容容器が貫通する内側開口の内側端面において拡縮自在な帯状チューブを備えていて、充填材を隙間に充填する際にそれぞれの帯状チューブが膨らんで妻枠と地下坑道及び収容容器との間をシールすることにより、ベースマシン及び妻枠が複数の収容容器を跨いで移動する際の妻枠と地下坑道及び収容容器との接触(干渉)を解消しながら、隙間への充填材の充填の際の妻枠と地下坑道及び収容容器の間の完全閉塞(シール)を実現することができる。
特に、地下坑道は、岩盤を掘削し、孔壁に吹付けコンクリートを施工し、必要に応じて鋼製支保工やロックボルトを施工することにより構築されることから、地下坑道の孔壁には凹凸が一般に存在することになる。膨らんだ帯状チューブは、この孔壁の凹凸を吸収しながら(凹凸に馴染みながら)、孔壁との間において効果的にシール構造を形成することができる。
【0013】
また、本発明による隙間閉塞装置の他の態様において、
前記妻枠の前記外側端面には、該妻枠を前記地下坑道に対して仮固定する固定ジャッキが装備されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、妻枠の外側端面において、妻枠を地下坑道に対して仮固定する固定ジャッキが装備されていることにより、帯状チューブが膨らんだ際のエア圧によって妻枠が移動しようとした際(ずれようとした際)に、固定ジャッキが地下坑道の孔壁に反力を取りながら妻枠の当初位置を保持することができる。
【0015】
また、本発明による隙間閉塞装置の他の態様において、
前記妻枠の一部は、該妻枠の他部に対して相対的にスライドして該他部に着脱自在であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、妻枠の一部が妻枠の他部に対して相対的にスライドして相互に着脱自在に構成されていることにより、妻枠の内側開口が収容容器や架台を跨ぎながら移動することと、内側開口の内側端面と収容容器の間のシールの双方を実現することができる。
例えば、地下坑道の床面に架台が敷設され、架台の上に収容容器が横置きされる場合に、内側開口が収容容器や架台と干渉しないようにして所定位置まで妻枠が移動した後、架台に干渉しない位置で収容容器の下方と地下坑道の孔壁の下方(地下坑道のインバート)を妻枠が閉塞する必要がある。そこで、妻枠の他部(本体妻)の内側開口の下方にスライド自在な妻枠の一部(スライド妻)を設けておくことにより、スライド妻がスライドしながら収容容器の下方と地下坑道のインバートを閉塞することができる。ここで、収容容器が載置される架台には、地下坑道の軸直交方向に延びる棒状の架台やフレーム架台の他、地下坑道の軸方向に延設するレール架台等が含まれる。
【0017】
また、本発明による隙間閉塞方法の一態様は、
放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が、地下坑道の軸方向に間欠的もしくは連続的に横置きされ、該複数の収容容器の周囲と該地下坑道との間にある隙間に対して充填材を充填して該隙間を閉塞する、隙間閉塞方法であって、
前記地下坑道に横置きされている前記収容容器を跨ぐようにして妻枠を移動させて仮固定し、該妻枠を貫通する充填管を介して該妻枠の一方側の前記隙間へ前記充填材を充填することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、地下坑道に横置きされている複数の収容容器を跨ぐようにして妻枠を移動させて所望位置に仮固定し、妻枠を貫通する充填管を介して妻枠の一方側の隙間へ充填材を充填することにより、一方側の隙間に対して充填材を確実に充填することが可能になるとともに、地下坑道に複数の収容容器を横置きした後に、複数の収容容器の周囲にある隙間に対して充填材を一度に充填できることから、地下坑道への収容容器の搬入及び横置きから隙間への充填材の充填までの一連の作業を、高い効率性の下で行うことができる。
【0019】
また、本発明による隙間閉塞方法の他の態様は、
前記複数の収容容器の周囲の前記隙間に対して、一度に前記充填材を充填し、次いで、前記妻枠を移動させ、別の前記複数の収容容器の周囲の前記隙間に対して、一度に前記充填材を充填することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、複数の収容容器の周囲の隙間に対して一度(連続的)に充填材を充填し、次いで、妻枠を移動させ、別の複数の収容容器の周囲の隙間に対して一度(連続的)に充填材を充填することにより、延長の長い地下坑道における効率的な充填材の充填が可能になる。
例えば、延長が500m程度の地下坑道において、直径が2m乃至3mで長さが3m乃至4m程度の収容容器(PEM)の10基分の長さの隙間に対して充填材を充填する場合に、隣接する収容容器の間の例えば1m程度の間隔を含めて、計50m程度の長さの孔壁と収容容器の間の隙間に対して充填材を連続的に充填することが可能になる。そのため、このケースでは、10回程度の充填材の充填により、延長500m程度の地下坑道の全ての隙間に対する確実な充填が実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の隙間閉塞装置と隙間閉塞方法によれば、放射性廃棄物を収容した複数の収容容器が地下坑道に横置きされた状態において、複数の収容容器と孔壁の間の隙間に充填材を効率的かつ確実に充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る隙間閉塞方法が適用される、最終処分場を構成する地下坑道の内部に、複数の収容容器が横置きされている状態を示す図である。
図2】地下坑道の孔壁と収容容器の間の隙間に充填材が充填され、隙間閉塞が完了している状態を示す図である。
図3】実施形態に係る隙間閉塞装置の一例が、地下坑道の内部において複数の収容容器を跨いでいる状態を示す側面図であって、隙間閉塞装置による充填材の充填方法の一例をともに説明する図である。
図4図3のIV-IV矢視図であって、妻枠を地下坑道の奥側から見た正面図である。
図5図3のV-V矢視図であって、ベースマシンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に係る隙間閉塞装置と隙間閉塞方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0024】
[実施形態に係る隙間閉塞装置と隙間閉塞方法]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る隙間閉塞装置と隙間閉塞方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る隙間閉塞方法が適用される、最終処分場を構成する地下坑道の内部に、複数の収容容器が横置きされている状態を示す図であり、図2は、地下坑道の孔壁と収容容器の間の隙間に充填材が充填され、隙間閉塞が完了している状態を示す図である。また、図3は、実施形態に係る隙間閉塞装置の一例が、地下坑道の内部において複数の収容容器を跨いでいる状態を示す側面図であって、隙間閉塞装置による充填材の充填方法の一例をともに説明する図である。さらに、図4は、図3のIV-IV矢視図であって、妻枠を地下坑道の奥側から見た正面図であり、図5は、図3のV-V矢視図であって、ベースマシンの正面図である。
【0025】
図1に示すように、最終処分場においては、地下深層の岩盤層Gに通じる複数の立坑10(図1ではそのうちの一基を図示)が造成され、立坑10を起点として、地下深層の岩盤層Gには例えば水平方向に延設する延長が数百mにも及ぶ地下坑道20が施工される。この地下坑道20は、岩盤Gを掘削して造成された孔壁に対して吹付けコンクリートが施工され、必要に応じて不図示の鋼製支保工やロックボルトを施工することにより構築される。
【0026】
図示例の地下坑道20は、その軸方向に直交する軸直交方向の断面形状が馬蹄形を呈しており、下方には鉄筋コンクリート製のインバート22が施工されている。ここで、地下坑道の断面形状は、図示例以外にも、円形や楕円形、矩形等、様々な形状が適用できる。
【0027】
インバート22の上には、複数の収容容器30が、地下坑道20の軸直交方向の断面において横方向の中央位置もしくは略中央位置に位置決めされ、地下坑道20の軸方向に間隔Tを置いて間欠的に横置きされる。ここで、各収容容器30が間隔Tを置くことなく、連続的に横置きされてもよい。
【0028】
この収容容器30は放射性廃棄物を収容したPEMであり、複数のPEMが横置き方式にて地層処理される処理形態である。中空円柱状で鋼製のPEM30の内部には、緩衝材31が充填されており、放射性廃棄物がガラス原料とともに溶解されてできたガラス固化体33を封入する鋼製のオーバーパック32が、緩衝材31の内部に収容されている。
【0029】
インバート22の上には、軸直交方向に延設する複数(図示例は二基)の架台25が載置され、複数の架台25の上に収容容器30が横置きされる。ここで、架台は、複数の鉄骨を枠状に組み付けたフレーム架台であってもよいし、地下坑道20の軸方向に連続的に延設する例えば二条のレールであってもよく、レール形式の架台を適用する場合は、各収容容器30の下方に車輪を設けておき、各収容容器30をレール架台に沿って地下坑道20の所定位置まで搬送することが可能になる。
【0030】
このように地下坑道20の断面中央位置に収容容器30を横置きすることにより、隙間充填材掘削装置60(図2及び図3参照)を構成するベースマシン40が収容容器30を跨いだ状態で移動する際に、収容容器30の左右において走行手段43が移動するためのスペースを確保することができる。
【0031】
図1に示すように、地下坑道20の内部に間隔Tを置いて間欠的に横置きされている複数の収容容器30と、地下坑道20の孔壁との間には、間隔Tを含めて隙間Sが存在している。図2に示すように、この隙間Sに対して効率的かつ確実に充填材Jを充填するに当たり、図3乃至図5に示す隙間閉塞装置60を適用した隙間閉塞方法を実施する。
【0032】
適用される充填材Jは、粒状ベントナイトや球体状ベントナイト等のペレット状のベントナイトに代表される粘土系材料である。図2に示すように、地下坑道20と収容容器30の間にある隙間Sが充填材Jにより閉塞されることで、例えば地下水が地下坑道20により形成される人工バリアに流入することを抑制して、横置き後の人工バリアである収容容器30の品質を確保することができ、安定的な収容容器30の定置姿勢を確保することができる。
【0033】
図3乃至図5に示すように、隙間閉塞装置60は、地下坑道20に横置きされている複数の収容容器30を跨いで走行するベースマシン40と、ベースマシン40に固定されて隙間Sを閉塞する妻枠50と、妻枠50を貫通してその一方側(図示例では地下坑道20の奥側)の隙間Sへ充填材Jを充填する充填管45とを有する。充填管45の他端は坑口側に延設し、充填材Jを収容するタンクや供給する供給手段(いずれも図示せず)に連通している。
【0034】
ベースマシン40は、オペレータキャビン41と、オペレータキャビン41の下方に固定されている正面視門型の複数(図示例は二基)の跨線脚42と、跨線脚42の下端に装備されているクローラ43(走行手段の一例)と、跨線脚42に固定されて地下坑道20の奥側へ水平に張り出す固定部材44とを有し、充填管45は、跨線脚42を構成する水平部材に支持されながら妻枠50を貫通して地下坑道20の奥側へ延設している。図4及び図5に示すように、図示例では二本の充填管45が妻枠50を貫通するようにして設けられている。
【0035】
固定部材44に固定されている妻枠50は、図4に示すように地下坑道20の軸直交方向の断面形状に相補的な形状を呈しながら、地下坑道20の断面よりも小断面に設定されている。妻枠50の外縁にある外側端面53は、地下坑道20の孔壁に対向する。
【0036】
また、妻枠50の内部には、収容容器30が貫通する内側開口51が設けられており、内側開口51の軸直交方向の断面寸法は断面円形の収容容器30よりも大断面に設定されている。内側開口51の内側端面52は、収容容器30に対向する。
【0037】
妻枠50のうち、外側端面53には、外側帯状チューブ55(帯状チューブの一例)が取り付けられており、図3に示すように、不図示のエア注入手段からエア注入されたり、不図示のエア排出手段からエアが抜き取られることにより、外側帯状チューブ55が地下坑道20の断面の径方向外側と内側へY1方向に拡縮するようになっている。
【0038】
ベースマシン40の移動に応じて妻枠50が地下坑道20の所定位置に位置決めされた後、外側帯状チューブ55にエアが供給されることにより、図4に示すように、外側帯状チューブ55が孔壁側へY1方向に膨らみ、妻枠50の外側端面53と地下坑道20の孔壁との間をシールする。
【0039】
また、妻枠50の外側端面53には、その長手方向に間隔をおいて、複数の固定ジャッキ56が地下坑道20の断面径方向へY2方向にスライド自在に装備されており、図4に示すように、固定ジャッキ56を孔壁側へY2方向に伸長させることにより、地下坑道20の孔壁に対して妻枠50を仮固定することができる。図3に示すように、妻枠50の外側端面53のうち、地下坑道20の奥側の領域に外側帯状チューブ55が取り付けられ、坑口側の領域に複数の固定ジャッキ56が装備されている。
【0040】
一方、妻枠50の下方における内側開口51の周辺には、図4に示すように軸直交方向へZ1方向にスライド自在な二基のスライド妻50b(妻枠の一部の一例)が、本体妻50a(妻枠の他部の一例)に設けられている。すなわち、妻枠50は、本体妻50aと、本体妻50aに対してスライド自在なスライド妻50bにより構成されている。図示を省略するが、例えば、本体妻50aにシリンダ機構が装備され、シリンダ機構を構成するピストンロッドの先端にスライド妻50bが取り付けられており、シリンダ機構の駆動によってスライド妻50bがスライドすることにより、本体妻50aに対してスライド妻50bが着脱される。
【0041】
内側開口51の内側端面52の上半には内側帯状チューブ54a(帯状チューブの他の例)が取り付けられており、内側帯状チューブ54aが収容容器側へY3方向に膨らむことにより、内側端面52の上半と収容容器30の上半の間をシールする。
【0042】
一方、スライド妻50bの内側端面にも別途の内側帯状チューブ54bが取り付けられており、本体妻50aに対してスライド妻50bが装着され、スライド妻50bの内側帯状チューブ54bが収容容器側へY4方向に膨らむことにより、左右のスライド妻50bと収容容器30の下半の間をシールする。すなわち、内側帯状チューブ54a、54bが膨らむことにより、妻枠50の内側開口51と収容容器30との間を完全にシールすることができる。
【0043】
図示例の妻枠50によれば、地下坑道20に対向する外側端面53と収容容器30が貫通する内側開口51の内側端面52において、それぞれ拡縮自在な帯状チューブ55,54a,54bを備えていて、充填材Jを隙間Sに充填する際にそれぞれの帯状チューブ55,54a,54bが膨らんで妻枠50と地下坑道20及び収容容器30との間をシールする。このことにより、ベースマシン40及び妻枠50が複数の収容容器30を跨いで移動する際の妻枠50と地下坑道20及び収容容器30との干渉を解消しながら、隙間Sへの充填材Jの充填の際の妻枠50と地下坑道20及び収容容器30の間の完全閉塞(シール)を実現することができる。
【0044】
また、地下坑道20は、岩盤を掘削し、孔壁に吹付けコンクリートを施工することにより構築されることから、地下坑道20の孔壁には凹凸が一般に存在することになるが、膨らんだ帯状チューブ55は、この孔壁の凹凸に馴染みながら、孔壁との間の効果的なシール構造を形成することができる。
【0045】
また、妻枠50の外側端面53において、妻枠50を地下坑道20に対して仮固定する固定ジャッキ56が装備されていることにより、帯状チューブ55が膨らんだ際のエア圧によって妻枠50がずれようとした際に、固定ジャッキ56が地下坑道20の孔壁に反力を取りながら妻枠50の当初位置を保持することができる。
【0046】
さらに、妻枠50を構成する本体妻50aの下方の内側開口51の周囲に、スライド妻50bがスライドして相互に着脱自在に構成されていることにより、妻枠50の内側開口51が収容容器30や架台25を跨ぎながら移動することと、内側開口51の内側端面52と収容容器30の間をシールすることの双方を実現することができる。
【0047】
具体的には、図示例のように、地下坑道20のインバート22の上に架台25が敷設され、架台25の上に収容容器30が横置きされるケースでは、内側開口51が収容容器30や架台25と干渉しないようにして所定位置まで妻枠50が移動した後、架台25に干渉しない位置で収容容器30の下方と地下坑道20のインバート22を妻枠50が閉塞する必要がある。本体妻50aの内側開口51の下方にスライド自在なスライド妻50bが設けられていることにより、スライド妻50bがスライドしながら収容容器30の下方とインバート22を閉塞することができる。
【0048】
実施形態に係る隙間閉塞方法においては、地下坑道20に対して、その奥側から坑口まで相互に間隔Tを置いて複数の収容容器30を連続的に横置きした後、隙間閉塞装置60を地下坑道20に進入させ、妻枠50が地下坑道20の奥側から所定距離離れた位置に停止させ、妻枠50よりも奥側(一方側の一例)にある複数の収容容器30の周囲の隙間Sに対して、充填管45を介してX2方向に一度(連続的)に充填材Jを充填する。
【0049】
次いで、ベースマシン40を坑口側へX1方向に後退させ、妻枠50を同様に所定距離移動させて停止させ、既に充填済みの充填材Jと妻枠50の間に存在する複数の収容容器30の周囲の隙間Sに対して、同様に一度(連続的)に充填材Jを充填する。
【0050】
上記する充填施工を地下坑道20の坑口付近まで繰り返し実行することにより、延長の長い地下坑道20内に複数の収容容器30が横置きされている場合であっても、収容容器30と孔壁の間の隙間Sに対して充填材Jを効率的かつ確実に充填することが可能になる。
【0051】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0052】
10:立坑
20:地下坑道
22:インバート
25:架台
30:収容容器(PEM)
31:緩衝材
32:オーバーパック
33:ガラス固化体
40:ベースマシン
41:オペレータキャビン
42:跨線脚
43:走行手段(クローラ)
44:固定部材
45:充填管
50:妻枠
50a:本体妻(他部)
50b:スライド妻(一部)
51:内側開口
52:内側端面
53:外側端面
54a,54b:内側帯状チューブ(帯状チューブ)
55:外側帯状チューブ(帯状チューブ)
56:固定ジャッキ
60:隙間閉塞装置
G:岩盤層(岩盤)
S:隙間
T:間隔
J:充填材
図1
図2
図3
図4
図5