(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】トラッキング自動補正範囲最適化装置
(51)【国際特許分類】
B21B 37/00 20060101AFI20240617BHJP
B21B 39/00 20060101ALI20240617BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240617BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B21B37/00 241
B21B39/00 J
B21C51/00 R
B21B38/04 Z
(21)【出願番号】P 2021111388
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】永井 徹郎
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-032017(JP,A)
【文献】特開平06-304627(JP,A)
【文献】特開平06-210336(JP,A)
【文献】特開平07-053030(JP,A)
【文献】特開昭63-242855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板連続ラインの特異点のトラッキング自動補正範囲最適化装置であって、
搬送される材の特異点を検出する検出器ごとに実際の特異点の位置とトラッキング計算上の特異点の位置とのズレ量を演算するズレ量演算手段と、
前記ズレ量に前記搬送される材の操業条件の値を関連付けてテーブルに記憶する記憶手段と、
前記テーブルにもとづいて、前記操業条件の値または範囲に応じたズレ量範囲を含むパラメータテーブルを構築するパラメータテーブル構築手段と、
前記検出器に他の特異点が接近すると、前記パラメータテーブルから、前記他の特異点の操業条件に類似するものを抽出し、前記抽出された操業条件に関連付けられたズレ量範囲にもとづいて、前記他の特異点のトラッキング上の位置の補正範囲を演算する補正範囲最適化手段と、
前記補正範囲を設定し、前記他の特異点のトラッキング上の位置と前記他の特異点の実際の位置とのズレ量が、前記補正範囲に含まれる場合には、前記他の特異点のズレ量を補正量として出力する位置補正手段と、
を備え
、
前記パラメータテーブル構築手段は、前記パラメータテーブルに格納された前記操業条件の値または範囲と、前記ズレ量の範囲と、の相関の有無を、前記操業条件の値または範囲を細分化して、細分化された操業条件ごとに前記ズレ量の範囲にもとづいて判定して、新たなパラメータテーブルを構築し、
前記補正範囲最適化手段は、前記特異点の操業条件と類似する操業条件を、前記パラメータテーブル構築手段で構築された前記新たなパラメータテーブルから検索して抽出するトラッキング自動補正範囲最適化装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、新たな特異点が検出された場合には、前記検出器ごとに前記新たな特異点のズレ量および前記新たな特異点を有する材の操業条件の値を前記テーブルに格納し、
前記パラメータテーブル構築手段は、前記新たな特異点を有する材の操業条件の値によって、前記パラメータテーブルを更新する請求項1記載のトラッキング自動補正範囲最適化装置。
【請求項3】
前記パラメータテーブル構築手段は、前記操業条件の値または範囲をあらかじめ設定された条件で細分化され、細分化された条件のデータ集合に含まれるズレ量の中央値を前記データ集合ごとに算出し、前記中央値間の差分にもとづいて、前記パラメータテーブルを構築する請求項1または2に記載のトラッキング自動補正範囲最適化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薄板連続ラインのトラッキング自動補正範囲最適化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板連続ラインでは、ラインを運転しながら溶接機により先行コイルと後行コイルを溶接していくことで板が途切れることなく鋼種や製造仕様が切り替わる。コイル同士を溶接した位置を溶接点または特異点といい、特異点を境に鋼種や製造仕様が切り替わるので、炉や圧延の制御を状況に合わせて変化させていく必要がある。
【0003】
このような薄板連続ラインでは、鋼種や製造仕様が切り替わることにより、圧延材の板滑りや蛇行、板の形状変化の程度にも差異が生じる。そのため、ライン上に配置された溶接点検出器(以下、WPDという)により検出された実際の特異点位置と材の搬送速度などから計算されるトラッキング上の特異点位置との間のズレの程度にも鋼種や製造仕様等に応じて相違が発生することとなる。
【0004】
従来、実際の特異点位置とトラッキング上の特異点位置の差分を求め、あらかじめ定めておいた範囲のズレまでは位置補正手段によって自動補正を行う方法がとられる。しかしながら、このような方法では、しきい値を越えてしまうほどの特異点位置のズレが発生した場合には、ライン上の位置合わせ点に実特異点を合わせて強制的に再設定するような手段をとる必要がある。そうすると、材料であるコイルの長さは不変であるため、位置合わせ点の補正量と同じ補正量が、位置合わせ点よりも上流にある特異点に対しても一律に適用される。そのため、溶接直後のような実特異点を正しくトラッキングしている位置に対しても、一律に補正をかけることとなり逆にズレを発生させてしまうことになる。
【0005】
特許文献1の技術では、WPDごとのズレ量をズレ量履歴データとして記憶し、強制的な位置合わせ処理を実行した際の補正量と位置合わせ対象点よりも上流の特異点についてのズレ量履歴を比較する。そして、その差分が一定値以内であれば求められた補正量を上流側特異点の補正量として適用し、その差分が一定値を超えている場合には新たな補正量を演算して出力する。これにより、特許文献1の技術では、位置合わせ対象点の上流側にあるすべての特異点に対してトラッキング位置を実際の位置に修正することができるとしている。
【0006】
また、特許文献1の技術では、強制的な位置合わせ処理を実行する際には、上流側のWPDで記録したズレ量履歴が自動補正範囲を超えており、かつ、上流側のコイルが位置合わせ処理を実行したコイルと同種である場合には自動補正範囲を拡大再設定するとしている。自動補正範囲の再設定後についても一定回数連続してズレ量がしきい値未満である場合には、自動補正範囲を縮小再設定するとしている。
【0007】
特許文献1の技術は、強制的な位置合わせ処理をトリガとして特異点トラッキングのズレ補正を最適化するものではあるが、コイルが異種に切り替わる際や、同種コイルであっても制御切替えによるズレの程度の違いを予測して対応することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、コイル種の切り替わりがある場合にはトラッキング位置の修正の自動補正範囲を調整することができないという問題がある。また、加熱や冷却など制御要因によるトラッキングのズレ量の増減に対しても対応ができないという問題点がある。
【0010】
本発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、操業条件に相違がある場合であっても、トラッキング位置のズレを自動的に最適な補正範囲にすることができるトラッキング自動補正範囲最適化装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、薄板連続ラインの特異点のトラッキング自動補正範囲最適化装置である。このトラッキング自動補正範囲最適化装置は、搬送される材の特異点を検出する検出器ごとに実際の特異点の位置とトラッキング計算上の特異点の位置とのズレ量を演算するズレ量演算手段と、前記ズレ量に前記搬送される材の操業条件の値を関連付けてテーブルに記憶する記憶手段と、前記テーブルにもとづいて、前記操業条件の値または範囲に応じたズレ量範囲を含むパラメータテーブルを構築するパラメータテーブル構築手段と、前記検出器に他の特異点が接近すると、前記パラメータテーブルから、前記他の特異点の操業条件に類似するものを抽出し、前記抽出された操業条件に関連付けられたズレ量範囲にもとづいて、前記他の特異点のトラッキング上の位置の補正範囲を演算する補正範囲最適化手段と、前記補正範囲を設定し、前記他の特異点のトラッキング上の位置と前記他の特異点の実際の位置とのズレ量が、前記補正範囲に含まれる場合には、前記他の特異点のズレ量を補正量として出力する位置補正手段と、を備える。前記パラメータテーブル構築手段は、前記パラメータテーブルに格納された前記操業条件の値または範囲と、前記ズレ量の範囲と、の相関の有無を、前記操業条件の値または範囲を細分化して、細分化された操業条件ごとに前記ズレ量の範囲にもとづいて判定して、新たなパラメータテーブルを構築する。前記補正範囲最適化手段は、前記特異点の操業条件と類似する操業条件を、前記パラメータテーブル構築手段で構築された前記新たなパラメータテーブルから検索して抽出する。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態では、操業条件に相違がある場合であっても、トラッキング位置のズレを自動的に最適な補正範囲にすることができるトラッキング自動補正範囲最適化装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】薄板連続ラインにおけるトラッキング処理装置の全体構成を例示する模式図である。
【
図2】実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置を例示する模式的なブロック図である。
【
図3】実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置において、特異点の位置、溶接点検出器の位置およびズレ量を説明するための模式図である。
【
図4】実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置のズレ量・条件履歴記憶手段に記憶されるズレ量・条件履歴テーブルの例である。
【
図5】実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
【
図6】実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置の動作を説明するための模式図である。
【
図7】実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置によって再構成されたパラメータテーブルの例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0015】
図1は、薄板連続ラインにおけるトラッキング処理装置の全体構成を例示する模式図である。
図1に示すように、薄板連続ライン100では、ペイオフリール1に巻かれた薄板材料2は、ループカー3により所定の張力を保持しつつ搬送される。薄板材料2は、シャー4により所定の長さで切断されてテンションリール5に巻き取られていく。薄板連続ライン100の途中では、薄板材料2は、炉6により加熱および冷却、めっきポット7によりめっき処理され、ミル8により圧延される。前記ペイオフリール1とループカー3の間の搬送ライン上には、溶接機9が設置され、複数のペイオフリール1の薄板を溶接することにより連続した圧延処理を可能にしている。
【0016】
また、薄板連続ライン100上のブライドルロール10には、図示しないパルス発生器が取り付けられている。薄板連続ライン100の入側/中央/出側の各セクションでの薄板材料2の進行距離が計測される。
【0017】
さらに、この例では、炉6入口側、ミル8入口側、シャー4入口側の3か所に溶接点検出器(WPD)11a~11cが設置されており、溶接機9によって溶接された箇所が検出されている。溶接機9によって溶接された箇所であって、その箇所を特定できるように設けられた点を、以下特異点というものとする。特異点は、たとえば、溶接箇所に形成された貫通孔等である。WPD11a~11cは、貫通孔の有無を検出することによって、特異点の位置を検出することができる。WPD11a~11cは、特異点を検出するとWPD検出信号を出力する。
【0018】
溶接機9の溶接完了信号、ブライドルロール10のパルス発生器が出力するパルスカウント信号、および各WPD11a~11cが出力するWPD検出信号は、制御用ネットワークを介して、上位計算機および下位PLCに接続されている。なお、制御用ネットワーク、上位計算機および下位PLCは図示されていない。
【0019】
下位PLCは、受信したパルスカウント信号により、薄板材料2の進行距離を計算し、特異点が薄板連続ライン100上のどの位置にあるかをトラッキングする。ここで、薄板材料2がスリップした場合など、下位PLCで計算している進行距離と実際の特異点(以下では、実特異点ともいう)の位置にズレが生じる場合がある。このズレを補正するために、WPD11a~11cによって実際の特異点を検出して、特異点の正確な位置をトラッキングする。特異点のトラッキング処理は、下位PLCで行ってもよいし、上位計算機で行ってもよいが、本実施形態では下位PLCによりトラッキング処理を実行するものとする。以下説明するトラッキング自動補正範囲最適化装置は、上記トラッキング処理を実行する下位PLCに実装された、たとえばプログラムによって実現される。
【0020】
図2は、実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置を例示する模式的なブロック図である。
図2に示すように、トラッキング自動補正範囲最適化装置20は、ズレ量演算手段21と、ズレ量・条件履歴記憶手段(記憶手段)22と、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段(パラメータテーブル構築手段)23と、トラッキング自動補正範囲最適化手段(補正範囲最適化手段)24と、位置補正手段25と、を備える。以下、ズレ量という場合には、実特異点の位置とトラッキングによる特異点の位置との差をいうものとする。ここで、特異点の位置は、薄板材料2が搬送されるライン中の位置である。薄板連続ライン100は、
図1に示したように、上下方向、すなわち重力方向にも屈曲し得るが、特異点の位置という場合には、そのラインの搬送方向を1次元とした場合の座標である。つまり、ズレ量またはズレ量の大きさは、実特異点の座標とトラッキングによる特異点の座標との間の距離で表される。
【0021】
ズレ量演算手段21は、溶接完了信号、パルスカウント信号およびWPD検出信号にもとづいて、WPD11a~11cのそれぞれを通過するたびに、トラッキング上の特異点と実特異点の各ズレ量を演算し、演算したズレ量を位置補正手段25に供給する。
【0022】
位置補正手段25は、自動補正機能を有し、補正範囲を表すしきい値を有している。位置補正手段25のしきい値は、トラッキング自動補正範囲最適化手段24で抽出されたズレ量の範囲にもとづいて計算された補正範囲とされる。位置補正手段25は、ズレ量演算手段21から供給されたズレ量と設定されたしきい値とを比較して、ズレ量がしきい値の範囲内であれば、そのズレ量を補正量として出力する。なお、ズレ量がしきい値の範囲外の場合には、ピンホール等による誤検出であるものとして、位置補正手段25は、補正量を出力しない。
【0023】
ズレ量・条件履歴記憶手段22は、WPD11a~11cのそれぞれについて、各特異点についてズレ量演算手段21で演算されたズレ量をズレ量・条件履歴テーブルに格納し、ズレ量・条件履歴記憶手段22に記憶する。ズレ量・条件履歴記憶手段22は、特異点およびそのズレ量に、その特異点を有する材の操業条件を関連付けて記憶する。操業条件は、コイル種別、ラインスピード、炉温、冷却条件および外観仕様等を含む。コイル種別とは、たとえばコイルの材質とすることができる。外観仕様は、たとえば、薄板材料の板幅や板厚等である。
【0024】
ズレ量・条件履歴記憶テーブルに格納されるデータは、異なる特異点がそのWPDに接近し、そのWPDを通過するごとに追加される。なお、ズレ量のデータは、特異点のWPD通過により演算されるので、特異点がWPDを通過した後に記憶される。操業条件に関するデータは、特異点がWPDを通過する前に記憶される。ズレ量・条件履歴記憶手段22に記憶された操業条件は、トラッキング自動補正範囲最適化装置20がズレ量の補正範囲を予測して、搬送される材に最適な補正量を生成するために用いられる。
【0025】
自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、ズレ量・条件履歴記憶手段22に記憶されたWPD11a~11cのそれぞれについてのズレ量・条件履歴テーブルについて、選択された操業条件ごとに操業条件とズレ量との関係を細分化したパラメータテーブルに再構築する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、ズレ量・条件履歴記憶手段22にデータが追加されるたびに、パラメータテーブルを更新する。
【0026】
より具体的には、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、ズレ量・条件履歴テーブルに格納された操業条件の値や範囲とズレ量の範囲との相関の有無を、操業条件の値や範囲を細分化して、細分化された操業条件ごとにズレ量の範囲の妥当性を判定する。細分化された操業条件の値や範囲とズレ量の範囲との間に相関が認められない場合には、細分化された操業条件を再度統合し、ズレ量・条件履歴テーブルのすべての操業条件についてズレ量との間の相関を判定してパラメータテーブルを生成する。したがって、構築されたパラメータテーブルでは、操業条件の値や範囲を指定すれば、その値や範囲に応じたズレ量の範囲を抽出することができる。
【0027】
トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、特異点がWPD11a~11cのそれぞれに接近したときに、その特異点の操業条件と類似する操業条件を、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23で構築したパラメータテーブルから検索して抽出する。トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、抽出された操業条件を選択し、選択された操業条件のズレ量の範囲にもとづいて、そのWPDに接近中の特異点向けに最適化した補正範囲を算出し、算出した補正範囲を位置補正手段25に供給する。
【0028】
実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置20の動作について説明する。
まず、特異点の位置およびズレ量演算手段21におけるズレ量の計算方法について説明する。
図3は、実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置において、特異点の位置、溶接点検出器の位置およびズレ量を説明するための模式図である。
図3の上から1段目の図には、複数のWPDが離れて配置されている状況が示されている。WPDは、ペイオフリール1から薄板材料2の搬送方向に沿って、1番目、…、j番目、…j+m番目のように離れて並んでいる。以下、j番目のWPDをWPD
j、j+m番目のWPDをWPD
(j+m)のように表すものとする。mは、1以上の整数である。
図3では、上から2段目の図、上から3段目の図、上から4段目の図、と下にいくほど、時間が経過していることを示している。
以下の説明では、i番目の特異点Piの位置をp
i,p’
iのように表し、p
iを実特異点の位置を表すものとし、p’
iをトラッキング計算による特異点の位置を表すものとする。WPD
jにおける2つの特異点の位置p
i,p’
iの差をズレ量L
ijと表すものとする。なお、位置の基準点は、任意に設定でき、この例のように、WPDごとの位置を基準としてもよいし、たとえばペイオフリール1にもっとも近い位置に配置されたWPD
1(図示せず)を基準(たとえば、位置座標が0)としてもよい。
【0029】
図3の上から2段目の図に示すように、WPD
jにおける特異点P
iのズレ量L
ijは、WPD
jで検出された実特異点の位置p
i(図では●印で表記)と、トラッキング計算による位置p’
i(図では〇印で表記)との差として計算される。
図3の上から3段目の図には、特異点P
iが時間の経過により、WPD
(j+m)に到達した状況が示されている。WPD
(j+m)における特異点Piのズレ量L
i(j+m)は、WPD
(j+m)で検出された実特異点の位置p
iとトラッキング計算による位置p’
iとの差として計算される。
図3の上から4段目の図には、WPD
jにおける特異点P
(i+1)のズレ量L
(i+1)jが示されている。特異点P
(i+1)は、特異点P
iに後続する特異点である。ズレ量L
(i+1)jは、WPD
jで検出された実特異点の位置p
(i+1)(図では◆印で表記)と、トラッキング計算による位置p’
(i+1)(図では◇印で表記)との差として計算される。
ズレ量の計算には、正負の符号を含めて計算される。たとえば、
図3の上から2段目の図や上から3段目の図の場合には、ズレ量は正の値とされ、
図3の上から4段目の図の場合には、ズレ量は、負の値とされる。
【0030】
このようにして、計算されたズレ量のデータは、WPDごとにテーブルに格納される。
【0031】
次に、ズレ量・条件履歴テーブルについて説明する。
図4は、実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置のズレ量・条件履歴記憶手段に記憶されるズレ量・条件履歴テーブルの例である。
図4に示すように、ズレ量・条件履歴テーブル220は、WPDごとのテーブル221a~221mを含んでいる。各テーブル221a~221mは、そのテーブルに対応するWPDで検出した特異点およびその特異点に関連付けられたデータを含む。特異点に関連付けられたデータは、ズレ量のほか、WPDごとに選定された操業条件を表すデータを含んでいる。この例では、WPD
jは、ズレ量のデータのほか、薄板材料2の材質、ラインスピード、薄板材料2の板厚、板幅等のデータを含んでいる。別の場所のWPD
(j+m)は、芯ズレ偏差のデータや誘導加熱の使用の有無を表すデータ等を含んでいる。
【0032】
ズレ量のデータは、特異点ごとに計算されるので、テーブルに格納されるズレ量および操業条件のデータは、時系列のデータとなる。操業条件データの時系列データを条件履歴データと呼ぶ。この例では、テーブル221aでは、条件履歴データは、材質、ラインスピード、板厚、板幅、炉A温度および水冷/空冷の時系列データ等を含んでいる。
【0033】
ズレ量・条件履歴テーブル220の操業条件は、WPDが設置されている工程に応じて、適切なものがあらかじめ選択され、設定される。
【0034】
薄板材料2が搬送され、新たな特異点が検出されるたびに、ズレ量のデータおよび操業条件のデータが検出された特異点に関連付けられて、対応するWPDのテーブルに格納される。
【0035】
なお、特異点は、溶接された先行材と後行材の境界を示すので、特異点を特定することによって、たとえば上位計算機では、その材の材質や外観仕様等の諸元データを特定することができる。また、トラッキング情報を生成し、管理する下位PLC等では、特異点を特定することによって、その材に関連して計測された温度等の計測データを特定することができる。このようにして、トラッキング自動補正範囲最適化装置20は、特異点の製造諸元やトラッキング情報を用いて、ズレ量・条件履歴テーブル220を生成し、ズレ量・条件履歴テーブル22に記憶することができる。
【0036】
次に、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23の動作について説明する。
図5は、実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
図5には、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23によって動作するフローチャートの例が示されている。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、このフローチャートにしたがって動作し、ズレ量・条件履歴テーブル220の各テーブル221a~221mを操業条件の値や範囲に応じたズレ量の範囲を含むパラメータテーブルを構築する。
【0037】
より具体的には、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、テーブル221a~221mを細分化されたデータ集合に再構成する。テーブル221a~221mの細分化は、あらかじめ設定された操業条件の優先順位にしたがって、操業条件ごとに決定される。操業条件ごとに細分化されたデータ集合に再構成するか否かは、操業条件の値や範囲に応じてズレ量の範囲が異なるか否かで判定される。操業条件の値や範囲に応じて、ズレ量の範囲が異なるということは、ズレ量の範囲にもとづいて、ズレ量の自動補正範囲を設定することにより、操業条件の値や範囲のいずれかに含まれる特異点に対して、あらかじめ自動補正範囲を設定できることを意味する。
【0038】
操業条件の値または範囲は、操業条件ごとにあらかじめ設定される。たとえば、
図4に示したように、操業条件が“材質”の場合には、条件履歴データがいずれかの材質とされるので、データの範囲は存在せず、“材質”ごとに細分化の有無が判定される。たとえば、操業条件が“ラインスピード”の場合には、ラインスピードの範囲があらかじめ設定され、設定された範囲について細分化の有無が判定される。
【0039】
以下の説明では、操業条件1を3つの細分化された条件とし、細分化された条件およびその細分化条件に関連付いているズレ量のデータを含む3つのデータ集合A,B,Cに仕分けた場合について説明する。たとえば、操業条件1は、“板厚”であり、データ集合の仕分けは、板厚の範囲についてなされる。たとえば、板厚の範囲が、1.6~3.0であるものをデータ集合A、1.6より小さいものをデータ集合B、3.0以上のものをデータ集合Cなどとする。
【0040】
自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23が動作を開始すると、優先順位にしたがって、操業条件の細分化のための判定処理が順次実行される。この例では、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、細分化された操業条件およびズレ量からなるデータ集合A,B,Cを仮に設定し、ズレ量の範囲にもとづいて、統合するかそのまま細分化を維持するかをすべてのデータ集合の組合せについて判定する。
【0041】
図5に示すように、ステップS1において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、データ集合A,B,Cのそれぞれについて、ズレ量の中央値V
A,V
B,V
Cを算出する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23では、操業条件の細分化の判定のためにズレ量の中央値を用いることによって、ズレ量の分布に偏りがある場合であっても、適切にそのデータ集合の特性を表現することができる。
【0042】
ステップS2において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、データ集合Aのズレ量の中央値VAとデータ集合Bのズレ量の中央値VBとを比較する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、中央値VA,VBの差があらかじめ設定されたしきい値α以下の場合には、処理をステップS3に遷移させ、中央値VA,VBの差がしきい値αよりも大きい場合には、処理をステップS6に遷移させる。
【0043】
ステップS3において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、データ集合A,Bのズレ量の範囲がほとんど重なると判断し、2つのデータ集合Aおよびデータ集合Bを1つのデータ集合ABに統合する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、統合されたデータ集合ABのズレ量の中央値VABを算出する。
【0044】
ステップS4において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、データ集合ABのズレ量の中央値VABと、データ集合Cのズレ量の中央値VCとを比較する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、ズレ量の中央値VAB,VCの差がしきい値α以下の場合には、2つのデータ集合ABおよびデータ集合Cを統合して、1つのデータ集合ABCとする。(Result 'a')。以降、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、操業条件1については、1つのデータ集合ABCであるとして、次の操業条件2についての判定処理に移行する。
【0045】
ステップS4で、データ集合ABのズレ量の中央値VABとデータ集合Cのズレ量の中央値VCとの差がしきい値αよりも大きいと判定された場合には、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、操業条件1については、2つのデータ集合ABおよびデータ集合Cに細分化されたものとして(Result 'b’)、次の操業条件2についての判定処理に移行する。
【0046】
ステップS2で、中央値VA,VBの差がしきい値αよりも大きいと判断された場合には、データ集合A,Bは、この時点で、2つの異なるデータ集合Aおよびデータ集合Bであるものとされる。以降の処理で、データ集合Aおよびデータ集合Bのそれぞれについて、データ集合Cとの統合の有無が判定される。
【0047】
ステップS6において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、データ集合Aのズレ量の中央値VAと、データ集合Cのズレ量の中央値VCとを比較する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、中央値VA,VCの差がしきい値α以下の場合には、処理をステップS7に遷移させる。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、中央値VA,VCの偏差がしきい値αよりも大きい場合には、処理をステップS8に遷移させる。
【0048】
ステップS7において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、2つのデータ集合Aおよびデータ集合Cを統合して、1つのデータ集合ACとする。以降、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、操業条件1については、2つのデータ集合ACおよびデータ集合Bに細分化されたものとして(Result 'c')、次の操業条件2についての判定処理に移行する。
【0049】
ステップS6で、中央値VA,VCの差がしきい値αよりも大きいと判断された場合には、この時点で、3つの異なるデータ集合であるものとされる。以降の処理で、データ集合Bおよびデータ集合Cの統合の有無が判定される。
【0050】
ステップS8において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、中央値VB,VCを比較する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、中央値VB,VCの差がしきい値α以下の場合には、処理をステップS9に遷移させる。
【0051】
ステップS9において、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、2つのデータ集合B,Cを1つのデータ集合BCに統合する。自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、操業条件1については、2つのデータ集合Aおよびデータ集合BCに新たに分類されたものとして(Result 'd’)、次の操業条件2についての判定処理に移行する。
【0052】
ステップS8で、中央値VB,VCの偏差がしきい値αよりも大きいと判断された場合には、データ集合A,B,Cについては、いずれも統合できず、3つのデータ集合に細分化されたものとして(Result 'e’)、次の操業条件2についての判定処理に移行する。
【0053】
この例において、操業条件1の判定処理の結果、Result 'a’が出力された場合には、その操業条件では、その値や範囲にかかわらず、ズレ量の範囲が設定され得ることとなる。一方、操業条件1の判定処理の結果、Result 'e’が出力された場合には、その操業条件では、その値や範囲によって、ズレ量の範囲が変わり得ることとなる。換言すれば、判定結果がResult 'e’のような場合には、ズレ量は、操業条件1との相関が強く、操業条件1の値や範囲が判明すれば、より適切なズレ量の範囲を予測することができる。
【0054】
Result 'a’の場合には、残るデータ集合が1つになるので、そのデータ集合について、以降の操業条件の判定処理が実行される。Result 'b’、Result 'c’およびResult 'd’の場合には、2つのデータ集合に細分化されるので、2つのデータ集合のそれぞれについて、以降の操業条件の判定処理が実行される。Result 'e’の場合には、3つのデータ集合に細分化されるので、3つのデータ集合のそれぞれについて、以降の操業条件の判定処理が実行される。
【0055】
このようにして、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、操業条件の中からズレ量との相関を有するものを抽出し、操業条件の値や範囲ごとにズレ量に及ぼす影響を定量化したデータ集合からなるパラメータテーブルを構築する。ズレ量と操業条件との相関が強いものを順に抽出することができれば、上述のフローチャートの例に限らず、異なる手順やアルゴリズムを採用してもよい。
【0056】
次に、トラッキング自動補正範囲最適化手段24の動作について説明する。
トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、1つのWPDに新たな特異点が接近していることを検出すると、パラメータテーブルのデータ集合を検索して、その特異点の操業条件と類似する操業条件を抽出する。
【0057】
操業条件が類似するとは、パラメータテーブルの中に、操業条件の値が一致または操業条件の範囲に含まれるデータ集合が存在する場合等とすることができる。操業条件の値の一致等の判定に際しては、トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23において設定された優先順位にしたがって、各データ集合を検索する。抽出されるデータ集合が複数存在する場合には、優先順位の高い操業条件がより多く含まれるデータ集合が1つ選択される。
【0058】
トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、データ集合を選択すると、選択したデータ集合のズレ量の範囲にもとづいて、補正範囲を演算して位置補正手段25に供給する。位置補正手段25では、供給された補正範囲をしきい値に設定する。
【0059】
トラッキング自動補正範囲最適化手段24の補正範囲の演算方法について説明する。
図6は、実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置の動作を説明するための模式図である。
図6には、トラッキング自動補正範囲最適化手段24が抽出したデータ集合Aのズレ量L
ijのデータの分布と、ズレ量L
ijの分布にもとづいて設定されたズレ量L
ijの補正範囲とが、示されている。
以下では、WPD
jにk番目の特異点P
kが接近する場合のトラッキング自動補正範囲最適化手段24の動作の例について説明する。特異点P
kは、
図3、4で示した特異点P
(i+n)よりも下流の特異点であり、
図4のテーブルはすでに生成されており、自動補正範囲パラメータテーブルが構築されているものとする。
【0060】
図6に示すように、データ集合Aのズレ量の分布は、中央値V
A、最大値L
kj(max)および最小値L
kj(min)となっている。トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、ズレ量の中央値V
Aから最大値L
kj(max)までの大きさL
1と、最小値L
kj(min)から中央値V
Aまでの大きさL
2とを比較する。
【0061】
この例のように、L2>L1の場合には、最小値の側に余裕代ΔLを加味して、補正範囲の最小値LkjS(min)とする。補正範囲の最大値LkjS(max)は、中央値VAからの離間距離が最小値の側と等しくなるように設定される。つまり、LijS(max)=VA+|LijS(min)|=VA+|L2+ΔL|と計算される。なお、余裕代ΔLは、ライン中の測定機器の測定精度や演算精度等を考慮してあらかじめ設定される。
【0062】
他の検出器に特異点Pkが接近するたびに、トラッキング自動補正範囲最適化手段24は、その検出器に関するパラメータテーブルのデータ集合から類似の操業条件のデータ集合を抽出して、上述と同様にして補正範囲を計算し、設定する。
【0063】
次に、ズレ量・条件履歴テーブルに特異点のデータが追加され、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23が更新動作をする場合について説明する。
図7は、実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置によって再構成されたパラメータテーブルの例である。
図7には、1番目の検出器WPD
1に関するパラメータテーブルの3つのデータ集合(1)~(3)が示されている。
図7に示すように、データ集合(1)231aおよびデータ集合(2)231bは、操業条件として、板厚により細分化され、ズレ量の相関が見られている。他の操業条件では、細分化されていないことが示されている。
【0064】
データ集合(3)231cは、2つのデータ集合(1)231aおよびデータ集合(2)231bにおけるズレ量の相関とは異なる相関関係を有している。このような特異点が検出器WPD1に接近、通過し、ズレ量・条件履歴テーブルにズレ量および条件履歴データが追加されると、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、検出器WPD1に関して、新たなデータ集合(3)231cを生成する。新たなデータ集合(3)231cが生成されると、以降の処理では、新たなデータ集合(3)231cにもとづいて、補正範囲が新たに設定されることがある。
【0065】
このようにして、トラッキング自動補正範囲最適化装置20は、検出器ごとに特異点が通過するごとに、ズレ量・条件履歴テーブルを更新し、自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23を動作させて、必要に応じて新たなデータ集合を生成することができる。
【0066】
実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置20の効果について説明する。
実施形態のトラッキング自動補正範囲最適化装置20は、検出器ごとに、特異点のズレ量に操業条件の時系列データである条件履歴データを関連付けてズレ量・条件履歴テーブルとして記憶する。トラッキング自動補正範囲最適化装置20は、検出器ごとに、ズレ量・条件履歴テーブルの操業条件の値または範囲と、ズレ量との相関が強いものを抽出し、操業条件に応じたズレ量を表すデータ集合からなるパラメータテーブルを構築する。これらのデータ集合には、操業条件の値や範囲と相関のあるズレ量の範囲が設定されているので、ズレ量の範囲にもとづいて、補正量の範囲を適切に設定することができる。
【0067】
ズレ量・条件履歴記憶手段22は、特異点が検出器を通過するごとに、ズレ量・条件履歴テーブルに、ズレ量および特異点に関連付けられた操業条件データを追加することができる。パラメータテーブルを構築する自動補正範囲パラメータテーブル構築手段23は、更新されたズレ量・条件履歴テーブルを用いて、最新のデータ集合を生成するので、操業条件が変化しても、変化した操業条件に応じた補正範囲を適切に設定することができる。
【0068】
なお、上述の具体例では、新たな特異点がWPDに接近し、テーブルにズレ量等のデータが追加されるたびにパラメータテーブルが更新され、新たなデータ集合が生成されてもされなくてもズレ量の補正範囲を計算し、設定するものとして説明した。これに限るものではなく、たとえば、新たなデータ集合が生成されない場合には、ズレ量の補正範囲の計算および設定を行わないようにしてもよい。このようにすることによって、下位PLC等の演算処理能力に応じたシステムを構築することが可能になる。
【0069】
以上説明した実施形態によれば、操業条件に相違がある場合であっても、検出器ごとにトラッキング位置のズレを自動的に最適な補正範囲にすることができる薄板連続ラインのトラッキング自動補正範囲最適化装置を実現することができる。
【0070】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ペイオフリール、2 薄板材料、3 ループカー、4 シャー、5 テンションリール、6 炉、7 めっきポット、8 ミル、9 溶接機、10 ブライドルロール、11a~11c 溶接点検出器、20 トラッキング自動補正範囲最適化装置、21 ズレ量演算手段、22 ズレ量・条件履歴記憶手段、23 自動補正範囲パラメータテーブル構築手段、24 トラッキング自動補正範囲最適化手段、25 位置補正手段、100 薄板連続ライン