(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電池スタックの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/651 20140101AFI20240617BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240617BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240617BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240617BHJP
H01M 10/656 20140101ALI20240617BHJP
【FI】
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/656
(21)【出願番号】P 2021139130
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2022-12-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】村石 康輔
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-331932(JP,A)
【文献】特開2008-084691(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/651
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/625
H01M 10/656
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された状態で1つのモジュールとされる複数の電池セルを含む電池スタックの製造方法であって、
前記電池セルのセル発熱に関連する電池特性が高発熱な値を示す前記電池セルから順に前記電池セルの優先順位を決定する順位決定工程と、
前記電池セルに対向する側に冷却媒体を流すための流路を有し、前記複数の電池セルの積層方向の厚さが異なるとともに前記積層方向の厚さが相対的に大きいほど断面積が広い前記流路が形成されて前記電池セルを冷却する冷却能力が高い複数のスペーサを積層される前記電池セルの間に挿入する挿入工程と、を有し、
前記複数のスペーサは、前記複数の電池セルのうち前記優先順位の高い前記電池セルほど冷却能力の高い前記スペーサが隣接するように配置され、
前記電池スタックの予め設定されたスタック長に基づいて前記積層方向の厚さごとの数量が決定され、前記電池スタックを前記スタック長に調整し、
前記電池特性は、前記電池セルの内部抵抗を測定することにより得られる電池スタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池スタック、及び電池スタックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の車両には、大電流、高出力用の駆動用電源として、複数の電池セルを接続した電池モジュールが搭載される。この電池モジュールには、例えば複数の電池セルを積層して束ねた電池スタックが用いられる。そして、電池スタックのスタック長の調整、冷却用の気流を流すための流路の確保、電池セル間の絶縁状態の確保等を目的として、隣り合う電池セルの間にはスペーサが挿入される。また、このような電池モジュールでは、使用に伴って発熱する電池セルの寿命を延ばすために、電池セルを冷却する必要がある。
【0003】
特許文献1には、第一方向に並ぶ複数の蓄電素子と、それぞれが第一方向で蓄電素子と隣り合うように配置される複数のスペーサと、を備える蓄電装置が開示されている。この蓄電装置では、複数のスペーサのそれぞれは、第一方向で隣り合う蓄電素子とともに通風路を形成する風路形成部を有し、第一方向の両端の間に配置される各蓄電素子よりも、第一方向の両端に配置される各蓄電素子を冷却しやすくすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の電池セルをスタックして用いる場合、電池セル間の温度がばらつくと電池セル間で残容量の差が生じ、充放電等に伴って特定の電池セルの劣化が進行する。その結果、電池全体の耐久性が低下する虞がある。したがって、電池セル間の温度のばらつきを低減して、電池スタック内の温度分布を均一化することが望ましい。
【0006】
電池セル間の温度のばらつきは、電池スタック内における電池セルの位置に応じた放熱効率の違いや電池セル自体の発熱量の違い等に起因して生じる。例えば、複数の電池セルを積層した電池スタックの内部では、積層方向の両端の間に配置される電池セルの方が両端の電池セルより高温となる場合がある。この場合、特許文献1に記載の蓄電装置では、積層方向の両端の間に配置される電池セルに対する冷却能力が低いため、温度分布が偏るという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電池セル間の温度のばらつきを低減する電池スタック、及び電池スタックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態にかかる電池スタックは、積層された状態で1つのモジュールとされる複数の電池セルを含む電池スタックであって、複数の電池セルと、積層される電池セルの間に挿入され、複数の電池セルの積層方向の厚さが異なる複数のスペーサと、を有し、複数のスペーサは、電池セルに対向する側に冷却媒体を流すための流路を有し、前記積層方向の厚さが相対的に大きいほど断面積が広い流路が形成されて電池セルを冷却する冷却能力が高く、電池スタック内での位置に起因して高温傾向を有する電池セル又は複数の電池セルのうちセル発熱に関連する電池特性が高発熱な値を示す電池セルほど冷却能力の高いスペーサが隣接するように配置される。
【0009】
また、一実施の形態にかかる電池スタックの製造方法は、積層された状態で1つのモジュールとされる複数の電池セルを含む電池スタックの製造方法であって、電池スタック内での位置に起因して高温傾向を有する電池セル又は電池セルのセル発熱に関連する電池特性が高発熱な値を示す電池セルから順に電池セルの優先順位を決定する順位決定工程と、電池セルに対向する側に冷却媒体を流すための流路を有し、複数の電池セルの積層方向の厚さが異なるとともに積層方向の厚さが相対的に大きいほど断面積が広い流路が形成されて電池セルを冷却する冷却能力が高い複数のスペーサを積層される電池セルの間に挿入する挿入工程と、を有し、挿入工程において、複数の電池セルのうち優先順位の高い電池セルほど冷却能力の高いスペーサが隣接するように複数のスペーサを配置する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電池セル間の温度のばらつきを低減する電池スタック、及び電池スタックの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる電池スタックの構成要素の一例を説明する図である。
【
図2】実施の形態1にかかる電池スタックを示す模式図である。
【
図3】電池スタックの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示す電池スタックに用いられる各電池セルの内部抵抗を示すグラフである。
【
図5】
図2に示す電池スタック内における各電池セルの温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。さらに、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
まず、
図1を参照して、実施の形態1にかかる電池スタック1の概要について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる電池スタックの構成要素の一例を説明する図である。
図1には、積層された状態で1つのモジュールとされる電池スタック1を構成する部材の一部を模式的に示している。
【0014】
図1に示すように、電池スタック1は、複数の電池セル10と、樹脂等の絶縁性部材で構成される複数のスペーサ20と、を有する。複数の電池セル10は、電池セル10の厚み方向に沿って積層される。以下の説明では、厚み方向に沿って電池セル10が積層される方向を積層方向(X方向)として説明する。
【0015】
電池セル10は、例えば扁平な直方体形状を有する電池ケース11と、電池ケース11の内部に収容された発電要素と、を有する角型電池である。電池ケース11の上面には、外部接続用の一対の電極端子12が設けられている。一対の電極端子12は、一方が正極の電極端子12であり、他方が負極の電極端子12である。電池セル10としては、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を用いることができる。
【0016】
本実施形態では、電池スタック1は、厚さT1を有する電池セル10と、厚さT1より小さい厚さT2を有する電池セル10と、を含んで構成されるものとする。但し、実際には、電池セル10の厚さは個々に異なるものである。また、複数の電池セル10は、セル発熱に関連する電池特性について電池セル10間で製造上のばらつきが生じている。ここで、セル発熱とは、充放電等に伴う電池セル10自体の発熱量である。
【0017】
このような電池セル10を複数個接続して構成される電池スタック1では、厚さの異なるスペーサ20を組み合わせることにより、X方向に沿った電池スタック1のスタック長を調整することができる。ここで、スペーサ20の厚さは、電池スタック1を構成した場合に、X方向に沿った方向の厚みである。
【0018】
本実施形態において、電池スタック1は、厚さT3を有するスペーサ21と、厚さT3より小さい厚さT4を有するスペーサ22と、の2種類のスペーサ20を含んで構成されるものとする。スペーサ21は、相対的に厚さが大きいスペーサ20である。スペーサ22は、相対的に厚さが小さいスペーサ20である。なお、スペーサ20は、2種類の厚さに限定されるものではなく、目的に応じて各スペーサ20の厚さを個別に設計することができる。
【0019】
また、スペーサ20は、電池セル10を冷却するための冷却構造を有する。例えば、スペーサ20は、X方向に電池セル10と対向する片側又は両側に温度調節用の冷却媒体を流すための流路を有する。また、スペーサ20には、流路に冷却媒体を流出入させるための流入口及び流出口が設けられる。冷却媒体は、例えば電池スタック1の外部に設けられた送風機や圧縮機等から流路に供給される。
【0020】
スペーサ20には、スペーサ20の厚さが大きいほど、体積が大きい流路が形成される。すなわち、スペーサ20には、スペーサ20の厚さが大きいほど、X方向に切った断面積が広い流路が形成される。したがって、厚さが大きいスペーサ20ほど、より多量の冷却媒体を流入出可能な冷却効果の高い流路を形成することができる。このように、スペーサ20の厚さに応じて冷却能力の能力差を実現することができる。
【0021】
本実施形態では、スペーサ21はスペーサ22より流路の断面積が広く構成されている。すなわち、スペーサ20は、厚さが相対的に大きいほど流路の断面積が広く、電池セル10を冷却する冷却能力が高い。電池スタック1では、X方向における電池セル10の少なくとも一方の面にスペーサ20の流路を有する面側が対向するように、積層される電池セル10の間にスペーサ20が挿入される。すなわち、電池スタック1では、電池セル10とスペーサ20とがX方向に対向して配置されている。
【0022】
続いて、
図2を参照して電池スタック1の全体構成を説明する。
図2は、実施の形態1にかかる電池スタックを示す模式図である。
図2には、X方向と直交する側方からみた電池スタック1を示している。
図2に示す電池スタック1は、X方向に20個の電池セル10を積層し、電池セル10間のそれぞれにスペーサ21又はスペーサ22が配置されている。電池スタック1は、4個のスペーサ21及び15個のスペーサ22を含む。
【0023】
以下の説明では、20個の電池セル10をそれぞれ区別するために、
図2において電池スタック1の左端に配置される電池セル10から並び順にB1~B20の符号を付して説明する。電池セルB1~B20を特に区別する必要がない場合は、「電池セル10」と総称する場合がある。
【0024】
電池スタック1では、電池スタック1内での位置に起因して高温傾向を有する電池セル10又は複数の電池セル10のうちセル発熱に関連する電池特性が高発熱な値を示す電池セル10ほど冷却能力の高いスペーサ21が隣接するように配置されている。これにより、電池スタック1内で高温になりやすい電池セル10を効率良く冷却し、他の電池セル10との温度差を縮小することができる。
【0025】
そして、X方向に隣り合う一方の電池セル10の電極端子12は、不図示のバスバー等により他方の電池セル10の電極端子12と電気的に接続されている。このように、複数の電池セル10と複数のスペーサ20とが交互に積層されることにより、電池スタック1は、X方向を長手方向とする略直方体形状を有する。
【0026】
また、電池スタック1は、積層された複数の電池セル10をX方向の両側から挟持するエンドプレートや複数の電池セル10及び複数のスペーサ20を束ねる拘束部材等の他の部材を含んでもよい。このような電池スタック1は、単独で又は他の電池スタック1と組み合わせて収納ケース等に収納することにより、1つのモジュールとすることができる。収納ケース等に収納する場合は、電池スタック1を収めるために電池スタック1のスタック長を調整する必要がある。
【0027】
また、複数の電池セル10を用いる場合、電池セル10間の温度がばらつくと、その温度差によって各電池セル10の残容量に差が生じる。残容量に差が生じると、充放電等に伴って特定の電池セル10が過放電状態や過充電状態となる。その結果、特定の電池セル10の劣化が進むため、電池全体の耐久性が低下する虞がある。本実施形態では、電池スタック1内で生じる電池セル10間の温度差を低減するために、複数の電池セル10に優先順位をつけ、この優先順位にしたがって冷却効果の高いスペーサ21の挿入位置を決める。
【0028】
そこで、上記した電池スタック1の製造方法について、
図3を参照して説明する。
図3は、電池スタックの製造方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、電池スタック1の製造方法は、順位決定工程(ステップS1)及び挿入工程(ステップS2)を有する。
【0029】
ステップS1の順位決定工程では、後述する方法により電池セル10の優先順位を決定する。続くステップS2の挿入工程では、電池セル10に対向する側に冷却媒体を流すための流路を有し、複数の電池セル10のX方向の厚さが異なるとともにX方向の厚さが相対的に大きいほど断面積が広い流路が形成されて電池セル10を冷却する冷却能力が高い複数のスペーサ20を積層される電池セル10の間に挿入する。この挿入工程においては、複数の電池セル10のうち優先順位の高い電池セル10ほど冷却能力の高いスペーサ20が隣接するように複数のスペーサ20が配置される。
【0030】
上記の各工程について詳細を説明する。まず、順位決定工程を行うにあたり、スペーサ21、22以外の構成部材を組み立てた場合のX方向における厚さと所要のスタック長とから、必要なスペーサ21、22の数量を決定する。
図2に示す電池スタック1を製造する場合、4個のスペーサ21及び15個のスペーサ22を用意する。また、電池セルB1~B20をこの順にX方向に積層する。
【0031】
そして、順位決定工程の1つの方法としては、電池セル10のセル発熱に関連する電池特性が高発熱な値を示す電池セル10から順に電池セル10の優先順位を決定する方法が挙げられる。電池セル10のセル発熱(電池セル10の発熱量)に関連する電池特性は、例えば電池セル10の内部抵抗から把握することができる。
【0032】
ここで、電池セル10の発熱量は、電池電流の2乗と、電池セル10の内部抵抗とに依存する。そのため、電池電流が一定である場合、電池セル10の発熱量は、内部抵抗が大きい電池セル10ほど大きくなる。セル発熱に関連する電池特性に基づいて優先順位を決定する方法では、各電池セルB1~B20の製造段階において、製造された各電池セルB1~B20に対して内部抵抗を測定することができる。
【0033】
電池セル10の内部抵抗を測定する方法としては、任意の測定方法を採用することができる。例えば、抵抗測定器を用いて、定電流定電圧充電により充電した電池セル10を放電させた時の電流及び電圧降下量から電池セル10の内部抵抗の値(抵抗値)を算出する。抵抗値は、セル発熱に関連する電池特性の値の一例である。
【0034】
順位決定工程の他の方法としては、電池スタック1内での位置に起因して高温傾向を有する電池セル10から順に電池セル10の優先順位を決定する方法が挙げられる。電池スタック1は、電池スタック1内において複数の電池セル10が隣接して積層されているため、X方向の両端側に配置される電池セル10よりも、両端の電池セル10の間(電池スタック1の中央側)に配置される電池セル10の方が放熱効率が低く、高温となる場合がある。
【0035】
電池スタック1内での位置に基づいて優先順位を決定する方法では、予め電池スタック1を構成する電池セルB1~B20の温度分布を調査する。電池セルB1~B20の温度分布は、電池セルB1~B20をこの順で積層して電気的に接続した状態で充電電流を流し、それぞれの電池ケース11の表面温度を温度センサ等を用いて測定することができる。このように、電池セルB1~B20の温度分布を調査することにより、電池スタック1内で温度上昇しやすい位置にあって高温傾向を有する電池セル10を特定する。そして、高温傾向を有する電池セル10から順に電池セルB1~B20の優先順位を決定する。
【0036】
これらの方法のうち、例えば、電池セル10の内部抵抗に基づいて優先順位を決定する方法を例に挙げて説明する。
図4は、
図2に示す電池スタックに用いられる各電池セルの内部抵抗を示すグラフである。なお、
図4において、横軸は各電池セルB1~B20を示し、縦軸は各電池セルB1~B20の抵抗値(mΩ)を示している。
【0037】
予め、電池セルB1~B20の製造段階においてそれぞれの各電池セルB1~B20について内部抵抗を測定することにより、
図4に示す抵抗値の測定結果を取得する。そして、抵抗値の測定結果から、抵抗値が高い値を示す順にしたがって電池セルB1~B20の優先順位を決定する。
図4に示す例では、電池セルB1~B20の優先順位は、第1位が電池セルB14、第2位が電池セルB15、第3位が電池セルB13、第4位が電池セルB16であり、最下位が電池セルB1である。
【0038】
この優先順位にしたがって、上位(第1位~第4位)の電池セルB14、電池セルB15、電池セルB13、及び電池セルB16のそれぞれに隣接するように、厚さが大きくて冷却能力の高いスペーサ21を配置する。具体的には、電池セルB12と電池セルB13との間、電池セルB13と電池セルB14との間、電池セルB14と電池セルB15との間、電池セルB15と電池セルB16との間、にそれぞれスペーサ21を挿入する。電池セルB12と電池セルB13との間の代わりに電池セルB16と電池セルB17との間にスペーサ21を挿入しても良い。
【0039】
さらに、残りの電池セル10間のそれぞれに、厚さが小さくて冷却能力の低いスペーサ22を挿入する。また、必要に応じてX方向の両端にエンドプレートを設けて、拘束部材で電池セルB1~B20、スペーサ21、22、エンドプレートを束ねる。このように、電池スタック1を製造することができる。
【0040】
続いて、製造された電池スタック1内における電池セル10の内部抵抗について、
図5を参照して説明する。
図5は、
図2に示す電池スタック内における各電池セルの温度を示すグラフである。なお、
図5において、横軸は各電池セルB1~B20を示し、縦軸は各電池セルB1~B20の温度(℃)を示している。また、
図5には、電池スタック1内における各電池セルB1~B20の温度を菱形のプロット点を繋いだ実線で示し、
図4で説明した予め取得された各電池セルB1~B20の抵抗値に比例する温度を円形のプロット点で示している。
【0041】
図5に示すように、電池スタック1では、スペーサ21が隣接して配置された電池セルB13~B16の温度がそれぞれ低減されている。したがって、スペーサ21の流路を流れる冷却媒体によって電池セルB13~B16が効率的に冷却されたと考えられる。そのため、電池セルB13~B16のそれぞれと他の電池セルB1~B12、B17~B20との温度差は縮小する。
【0042】
このように、電池スタック1では、電池スタック1内における電池セル10間の温度のばらつきを低減することができる。その結果、電池スタック1の耐久性を向上させることができる。
【0043】
一方、スタック長を調整するために、電池セル10の厚さに応じてスペーサ21、22の挿入位置を決定する方法がとられる場合がある。例えば、厚さが大きい電池セル10に隣接するように厚さが小さいスペーサを22配置し、厚さが小さい電池セル10に隣接するように厚さが大きいスペーサ21を配置することが考えられる。
【0044】
しかしながら、この方法によって製造された電池スタックでは、高温になりやすい電池セル10に隣接して冷却能力の低いスペーサ22が配置され、低温になりやすい電池セル10に隣接して冷却能力の高いスペーサ21が配置される可能性がある。そのため、電池セル10間の温度差が拡大する虞がある。
【0045】
これに対し、本実施形態では、厚さが異なる複数のスペーサ20によって電池スタック1のスタック長を調整しつつ、スペーサ20の厚さに応じた冷却能力の能力差を利用して電池セル10間に生じ得る温度のばらつきを低減することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 電池スタック
10、B1~B20 電池セル
11 電池ケース
12 電極端子
20、21、22 スペーサ