(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H01L21/304 651M
H01L21/304 651B
H01L21/304 648G
H01L21/304 647A
(21)【出願番号】P 2021158152
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳
(72)【発明者】
【氏名】埀野 陽子
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118347(JP,A)
【文献】特開2016-072489(JP,A)
【文献】特開2018-056200(JP,A)
【文献】特開2012-044065(JP,A)
【文献】特開2017-069354(JP,A)
【文献】特開2016-213442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する加熱部と、
前記基板の被処理面上に第1の揮発性溶剤を供給する第1の揮発性溶剤供給部と、
前記基板の被処理面上に、
沸点における表面張力が
、前記第1の揮発性溶剤
の沸点における表面張力よりも小さい第2の揮発性溶剤を供給する第2の揮発性溶剤供給部と、
前記加熱部、前記第1の揮発性溶剤供給部及び前記第2の揮発性溶剤供給部が収容され、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の前記基板が搬入される乾燥室と、
前記乾燥室に搬入された前記基板を受け取る支持部と、
前記支持部に支持された前記基板を回転させる駆動機構と、
前記加熱部と、前記第1の揮発性溶剤供給部と、前記第2の揮発性溶剤供給部と、前記駆動機構とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第1の揮発性溶剤供給部から前記第1の揮発性溶剤を供給させることにより、前記基板の被処理面上に形成された前記処理液による液膜を前記第1の揮発性溶剤の液膜へ置換させ、
前記第2の揮発性溶剤供給部から、撥水化膜を形成する撥水化剤を含めて前記第2の揮発性溶剤を供給させることにより、前記基板の被処理面上に形成された前記第1の揮発性溶剤の液膜を前記第2の揮発性溶剤の液膜へ置換させるとともに、前記基板の被処理面に前記撥水化膜を形成させ、
前記加熱部に前記基板を加熱させることにより、前記第2の揮発性溶剤の液膜と前記基板との間に気層を生じさせ、前記駆動機構に前記基板を回転させることにより、前記第2の揮発性溶剤の液膜を遠心力により排出させる、
ことを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項2】
前記加熱部が前記基板を加熱することによって、前記基板の被処理面に供給された前記第2の揮発性溶剤の液膜と前記基板との間に気層を生じさせ、前記基板の被処理面に形成された前記撥水化膜を、前記基板の被処理面上から除去することを特徴とする請求項1記載の基板乾燥装置。
【請求項3】
前記支持部に支持された前記基板の被処理面上の前記第2の揮発性溶剤の液膜の膜厚を測定する測定部を有し、
前記制御装置は、前記測定部による測定結果の膜厚が所定のしきい値の範囲内にあると判定した場合に、前記加熱部による加熱を開始させることを特徴とする請求項2記載の基板乾燥装置。
【請求項4】
前記基板を回転させながら第1の処理液を供給することにより処理する処理装置と、
前記処理装置により処理済の前記基板を回転させながら第2の処理液を供給することにより洗浄する洗浄装置と、
請求項1乃至3のいずれかに記載の基板乾燥装置と、
前記洗浄装置において洗浄された前記基板を、前記洗浄装置で供給された前記第2の処理液による液膜が形成された状態で搬出し、前記基板乾燥装置に搬入する搬送装置と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
処理液による液膜が形成され、支持部に支持された基板を駆動機構により回転させながら、第1の揮発性溶剤供給部からの第1の揮発性溶剤の供給により前記処理液による液膜を前記第1の揮発性溶剤の液膜へ置換し、
第2の揮発性溶剤供給部から、
沸点における表面張力が
、前記第1の揮発性溶剤
の沸点における表面張力よりも小さい第2の揮発性溶剤を、撥水化膜を形成する撥水化剤を含めて供給することにより、前記第1の揮発性溶剤の液膜を前記第2の揮発性溶剤の液膜に置換するとともに、前記基板に撥水化膜を形成させ、
加熱部による前記基板の加熱により、前記第2の揮発性溶剤の液膜と前記基板との間に気層を生じさせ、前記駆動機構による前記基板の回転により、前記第2の揮発性溶剤の液膜を遠心力により排出させる、
ことを特徴とする基板乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどを製造する製造工程では、ウェーハや液晶基板などの基板の被処理面に処理液を供給して被処理面を処理し、処理後、被処理面を洗浄、乾燥させる基板処理装置が用いられる。
【0003】
この基板処理装置の乾燥工程においては、パターン同士の間隔や構造、処理液の表面張力などに起因して、例えばメモリセルやゲート周りなどのパターンが倒壊して閉塞することがある。特に、近年の半導体の高集積化や高容量化に伴う微細化に伴って、配線幅や開口幅に対する深さの比率であるアスペクト比が高くなっているため、パターン倒壊は発生しやすくなっている。
【0004】
このようなパターン倒壊を抑制するために、DIW(超純水)によるリンス処理後に、IPA(2-プロパノール:イソプロピルアルコール)を用いる基板乾燥方法が提案されている。この基板乾燥方法は、基板表面上のDIW(超純水)を、DIWよりも表面張力が小さいIPAに置換することにより、乾燥処理時における表面張力によるパターン倒壊を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体の微細化は益々進んでおり、IPAのように揮発性が高い有機溶媒(揮発性溶剤)を使用する乾燥を行った場合でも、ウェーハの微細パターンは液体の表面張力などにより倒れることがある。
【0007】
例えば、液体が乾燥していく過程で基板表面の乾燥速度に不均一が生じ、一部のパターン間に液体が残ると、その部分の液体の表面張力によってパターンが倒壊する。詳しくは、液体が残った部分のパターン同士が、液体の表面張力による弾性変形によって倒れ、その液中にわずかに溶けた残渣が凝集する。そして、液体が完全に気化すると、倒れたパターン同士が固着して閉塞する。
【0008】
これに対処するため、IPAに加えて、基板Wの表面を撥水化可能な修飾剤である撥水化剤を供給することにより、IPAの液膜に浸透した撥水化剤によって、基板の表面の水酸基を、官能基へ置換することにより、撥水化膜を形成することが行われている。これにより、パターン間にも撥水化膜が形成され、親液性が低下して液体の接触角が上がる。つまり、基板の表面上にある液体の表面張力がより一層低くなるため、パターン同士が引き合う力を弱くすることができ、パターン倒壊を抑制できる。
【0009】
撥水化剤を用いる場合、撥水化剤の供給による撥水化膜の形成後、IPA等によってリンス処理を行って余分な撥水化剤を除去してから、乾燥処理を行う。しかし、乾燥処理を行った後にも、基板表面に形成された撥水化膜は残存する。このため、基板表面の撥水化膜を除去する撥水化膜除去処理を行う必要がある。撥水化膜の除去は、例えば、アッシングに用いるようなプラズマ処理又はUV照射処理によって行う。
【0010】
このため、基板処理装置に、乾燥装置とは独立したプラズマ処理装置又はUV照射装置などの除去装置を追加する必要があるとともに、乾燥装置から除去装置への搬送工程が必要となる。すると、基板処置装置が複雑化、大型化するとともに、工程数が多くなり、基板処理の生産性が低下する。さらに、パターンが深くなりアスペクト比が増すと、UV照射ではパターン底部まで撥水化膜を除去できない可能がある。
【0011】
本発明の実施形態は、簡素な構成で、パターン閉塞の発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態の基板乾燥装置は、基板を加熱する加熱部と、前記基板の被処理面上に第1の揮発性溶剤を供給する第1の揮発性溶剤供給部と、前記基板の被処理面上に、沸点における表面張力が、前記第1の揮発性溶剤の沸点における表面張力よりも小さい第2の揮発性溶剤を供給する第2の揮発性溶剤供給部と、前記加熱部、前記第1の揮発性溶剤供給部及び前記第2の揮発性溶剤供給部が収容され、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の前記基板が搬入される乾燥室と、前記乾燥室に搬入された前記基板を受け取る支持部と、前記支持部に支持された前記基板を回転させる駆動機構と、前記加熱部と、前記第1の揮発性溶剤供給部と、前記第2の揮発性溶剤供給部と、前記駆動機構とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1の揮発性溶剤供給部から前記第1の揮発性溶剤を供給させることにより、前記基板の被処理面上に形成された前記処理液による液膜を前記第1の揮発性溶剤の液膜へ置換させ、前記第2の揮発性溶剤供給部から、撥水化膜を形成する撥水化剤を含めて前記第2の揮発性溶剤を供給させることにより、前記基板の被処理面上に形成された前記第1の揮発性溶剤の液膜を前記第2の揮発性溶剤の液膜へ置換させるとともに、前記基板の被処理面に前記撥水化膜を形成させ、前記加熱部に前記基板を加熱させることにより、前記第2の揮発性溶剤の液膜と前記基板との間に気層を生じさせ、前記駆動機構に前記基板を回転させることにより、前記第2の揮発性溶剤の液膜を遠心力により排出させる。
【0013】
本発明の実施形態の基板処理装置は、前記基板を回転させながら第1の処理液を供給することにより処理する処理装置と、前記処理装置により処理済の前記基板を回転させながら第2の処理液を供給することにより洗浄する洗浄装置と、前記基板乾燥装置と、前記洗浄装置において洗浄された前記基板を、前記洗浄装置で供給された前記第2の処理液による液膜が形成された状態で搬出し、前記基板乾燥装置に搬入する搬送装置と、を有する。
【0014】
本発明の実施形態の基板乾燥方法は、処理液による液膜が形成され、支持部に支持された基板を駆動機構により回転させながら、第1の揮発性溶剤供給部からの第1の揮発性溶剤の供給により前記処理液による液膜を前記第1の揮発性溶剤の液膜へ置換し、第2の揮発性溶剤供給部から、沸点における表面張力が、前記第1の揮発性溶剤の沸点における表面張力よりも小さい第2の揮発性溶剤を、撥水化膜を形成する撥水化剤を含めて供給することにより、前記第1の揮発性溶剤の液膜を前記第2の揮発性溶剤の液膜に置換するとともに、前記基板に撥水化膜を形成させ、加熱部による前記基板の加熱により、前記第2の揮発性溶剤の液膜と前記基板との間に気層を生じさせ、前記駆動機構による前記基板の回転により、前記第2の揮発性溶剤の液膜を遠心力により排出させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態は、簡素な構成で、パターン閉塞の発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の基板処理装置を示す簡略構成図である。
【
図2】
図1の基板処理装置の洗浄装置及び乾燥装置を示す構成図である。
【
図3】乾燥装置の基板搬入時(A)、第1の揮発性溶剤供給時(B)を示す内部構成図である。
【
図4】乾燥装置の第2の撥水性溶剤供給
時を示す内部構成図である。
【
図5】乾燥装置の基板乾燥時を示す内部構成図である。
【
図6】実施形態の基板乾燥処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】ライデンフロスト現象を利用した乾燥処理の流れを模式的に示す説明図である。
【
図8】パターン内に残留する液膜を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[概要]
図1に示すように、本実施形態の基板処理装置1は、各種の処理を行う装置を収容した複数のチャンバ1aを備え、前工程でカセット(FOUP)1bに複数枚収容されて搬送されてきた基板Wに対して、各チャンバ1a内で1枚ずつ処理を行う枚葉処理の装置である。未処理の基板Wは、カセット1bから搬送ロボット1cによって1枚ずつ取り出され、バッファユニット1dに一時的に載置された後、以下に説明する各種装置により、各チャンバ1aへの搬送及び処理が行われる。
【0018】
基板処理装置1は、処理装置110、洗浄装置120、搬送装置200、乾燥装置300、制御装置400を含む。処理装置110は、例えば、回転する基板Wに、第1の処理液(例えば、リン酸水溶液、フッ酸及び硝酸の混合液、酢酸、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric acid hydrogen Peroxide Mixture)等)を供給することによって、不要な膜を除去して回路パターンを残すエッチング装置である。洗浄装置120は、エッチング装置でエッチング処理された基板Wを、洗浄液(第2の処理液)により洗浄する。搬送装置200は、バッファユニット1dと各チャンバ1aとの間、各チャンバ1aの間で基板Wを搬送する。例えば、搬送装置200は、処理装置110において処理済の基板Wを洗浄装置120に搬送し、洗浄装置120において洗浄された基板Wを乾燥装置300に搬送する。乾燥装置(基板乾燥装置)300は、洗浄液により洗浄された基板Wを回転させながら加熱することにより、乾燥処理を行う。制御装置400は、上記の各装置を制御する。
【0019】
なお、本実施形態により処理される基板Wは、例えば、半導体ウェーハである。以下、基板Wのパターン等が形成された面を被処理面とする。洗浄処理のための処理液である洗浄液としては、アルカリ洗浄液(APM)、超純水(DIW)、第1の揮発性溶剤(IPA)を使用する。АPMは、アンモニア水と過酸化水素水を混合した薬液であり、残留有機物を除去するために使用する。DIWは、APM処理後、基板Wの被処理面上に残留するAPMを洗い流すために使用する。IPAは、表面張力がDIWよりも小さく、揮発性が高いため、DIWを置換して表面張力によるパターン倒壊を低減するために使用する。
【0020】
また、本実施形態においては、第2の揮発性溶剤を用いる。第2の揮発性溶剤は、第1の揮発性溶剤よりも、気化する際の表面張力が小さい溶剤である。また、第2の揮発性溶剤の気化の温度は、第1の揮発性溶剤よりも高い。このような第2の揮発性溶剤としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を使用することができる。また、第2の揮発性溶剤は、撥水化剤を含むものを用いる。撥水化剤は、基板Wの被処理面の水酸基(-OH)を、官能基(例えば、-CH3、C2H5)へ置換して撥水化膜(Si-O-R(R:官能基))を形成可能な修飾剤である。例えば、撥水化剤としては、シランカップリング剤であるHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を用いることができる。以下の説明での第2の揮発性溶剤の供給は、撥水化剤を含む第2の揮発性溶剤を供給する態様で行われる。
【0021】
PGMEAにHMDSを含めたものを用いる理由は、HMDSは水分と反応しやすいためである。つまり、HMDSは、空気中の水分と反応すると、基板W上での撥水効果を失う。このため、HMDSをPGMEAに混合することにより、空気中の水分と反応することを防いで、基板Wに供給することができる。なお、PGMEAが気化する際の表面張力は、IPAが気化する際の表面張力より小さい。例えば、IPAの沸点温度が82.5℃である時(気化する時)の表面張力の値は、15.7mN/mである。一方、PGMEAの沸点が145.8℃である時(気化する時)の表面張力の値は、11.72~15.47mN/mである。
【0022】
[洗浄装置]
洗浄装置120は、
図2に示すように、内部で洗浄処理を行う容器である洗浄室11、基板Wを支持する支持部12、支持部12を回転させる回転機構13、飛散する洗浄液Lを基板Wの周囲から受けるカップ14、洗浄液Lを供給する供給部15を有する。供給部15は、洗浄液Lを滴下するノズル15a、ノズル15aを移動させる移動機構15bが設けられている。
【0023】
支持部12に支持され、回転機構13により回転する基板Wの被処理面に、ノズル15aから洗浄液Lを供給することにより、洗浄処理が行われる。洗浄処理は、処理装置110でエッチング処理された基板Wの被処理面にAPMを供給してAPM洗浄を行い、APM洗浄後に、DIWによる純水リンス処理を行うことにより、基板Wの被処理面に残留していたAPMを純水により洗い流す。これにより、基板Wの被処理面はDIWの洗浄液Lにより液盛りされる。洗浄室11には、基板Wを搬出入する開口11aが設けられ、開口11aは扉11bによって開閉可能に構成されている。
【0024】
[搬送装置]
搬送装置200は、ハンドリング装置20を有する。ハンドリング装置20は、基板Wを把持するロボットハンド21と、移動機構22を有する。ロボットハンド21は、基板Wを把持する。移動機構22は、ロボットハンド21を移動させる。搬送装置200は、バッファユニット1dと各種装置との間、各種装置の間で、基板Wを搬送する。例えば、エッチング処理を終えた基板Wを処理装置110から搬出して、基板Wの被処理面上に洗浄液(DIW)Lの液膜が形成された状態で、洗浄装置120へ搬入する。また、移動機構22は、ロボットハンド21を移動させることにより、洗浄を終えた基板Wを洗浄装置120から搬出してし、基板Wの被処理面上に洗浄液(DIW)Lの液膜が形成された状態で、乾燥装置300へ搬入する。なお、基板Wの被処理面上に洗浄液(DIW)Lの液膜が形成された状態で搬送するのは、基板Wの搬送中に、基板Wの被処理面にパーティクルが付着するのを防止するためである。
【0025】
[乾燥装置]
図2に示すように、乾燥装置300は、乾燥室31、支持部32、駆動機構33、第1の揮発性溶剤供給部34、第2の揮発性溶剤供給部35、加熱部36、カップ37、測定部38を有する。乾燥室31は、内部において基板Wを乾燥処理するためのチャンバ1aである。乾燥室31は、例えば直方体や立方体などの箱形状である。乾燥室31の内壁は、防塵性を高めるために、シリカによりコーティングされている。乾燥室31には、基板Wを搬出入させるための開口31aが設けられている。開口31aは、扉31bによって開閉可能に設けられている。このような乾燥室31には、後述する第1の揮発性溶剤供給部34、第2の揮発性溶剤供給部35、加熱部36が収容されている。
【0026】
また、乾燥室31には、導入口31c、排気口31dが設けられている。導入口31cには、配管、吸気弁及び清浄なガス(N2等)を供給する給気装置を含む給気部31eが接続されている。排気口31dには、配管、排気弁及びガスを排気する排気装置を含む排気部31fが接続されている。導入口31cから清浄なガスを乾燥室31内に供給することで、乾燥室31内を正常な雰囲気にすることができる。また、導入口31cからガスを乾燥室31内に供給し、排気口31dから乾燥室31内のガスを排出する構成を作ることで、乾燥室31内の気体の流れを作るようにしている。これにより、基板Wを加熱する際に発生する処理液の蒸気が乾燥室31内に充満することなく、乾燥室31から排出できる構成になっている。
【0027】
支持部32は、基板Wを支持する。支持部32は、回転テーブル32a、複数の保持部材32b、回転軸32cを有する。回転テーブル32aは、基板Wよりも大きな径の円筒形状であり、上面が平坦な円盤となっている。複数の保持部材32bは、基板Wの外周に沿う位置に等間隔で配置され、回転テーブル32aの上面との間に間隔を空けて、基板Wを水平状態に保持する。複数の保持部材32bは、図示しない開閉機構によって、基板Wの縁部に接する閉位置と、基板Wの縁部から離れる開位置との間を移動可能に設けられている。回転軸32cは、回転テーブル32aを下方から支持し、回転の中心となる鉛直方向の軸である。
【0028】
駆動機構33は、支持部32に支持された基板Wを回転させる機構である。駆動機構33は、モータ等の駆動源を有し、回転軸32cを介して支持部32を回転させる。
【0029】
第1の揮発性溶剤供給部34は、乾燥室31に搬入され、支持部32に支持された基板W上に、第1の揮発性溶剤Vを供給する。第1の揮発性溶剤供給部34は、ノズル34a、揺動アーム34b、揺動機構34cを有する。ノズル34aは、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第1の揮発性溶剤Vを供給する。ノズル34aには、乾燥室31外の貯留部から配管(いずれも不図示)などを介して第1の揮発性溶剤VであるIPAが供給される。
【0030】
洗浄装置120における洗浄処理において、APMによるアルカリ洗浄後のDIWによる純水リンス処理で、最終的に基板Wの被処理面上はDIWの洗浄液Lにより液盛されている。このように液盛された状態で、洗浄装置120から乾燥装置300に搬入された基板Wに対して、IPAが供給されることにより、DIWがIPAに置換される。
【0031】
揺動アーム34bは、先端にノズル34aが設けられ、ノズル34aを、支持部32上の基板Wの被処理面の中心付近に対向する供給位置と、その供給位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする退避位置とに移動させる。揺動機構34cは、揺動アーム34bを揺動させる機構である。
【0032】
第2の揮発性溶剤供給部35は、基板W上のDIWを置換したIPAに、第2の揮発性溶剤HであるPGMEA(HMDSを含む溶剤)を供給する(
図4(A)参照)。第2の揮発性溶剤供給部35は、ノズル35a、揺動アーム35b、揺動機構35cを有する。ノズル35aは、基板Wの被処理面の中心付近に向けて第2の揮発性溶剤Hを供給する。ノズル35aには、乾燥室31外の貯留部から配管(いずれも不図示)などを介してPGMEAが供給される。
【0033】
撥水化剤を含む第2の揮発性溶剤Hを供給することにより、基板Wの被処理面に撥水化膜が形成されるので、基板Wの被処理面を親水性のシラノール基から撥水性のメチル基に変えて、基板Wの被処理面上の界面エネルギーを下げることにより、第1の揮発性溶剤Vを浮かび上がらせ、基板Wの被処理面上の液体の除去を促進できる。なお、ここでいう撥水性とは、液体を弾く性質、つまり撥液性をいい、水を弾く性質には限定されない。
【0034】
揺動アーム35bは、先端にノズル35aが設けられ、ノズル35aを、支持部32上の基板Wの被処理面の中心付近に対向する供給位置と、その供給位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする退避位置とに移動させる。揺動機構35cは、揺動アーム35bを揺動させる機構である。
【0035】
加熱部36は、基板Wを加熱する装置である。加熱部36は、乾燥室31内の上部に設けられている。加熱部36は、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等のランプ36aを有する。なお、ランプ36aは、紫外光、可視光、赤外光を照射可能なランプである。本実施形態のランプ36aは直管形であり、互いに水平状態で平行に配置された複数本のランプ36aが、2段に重ねて配置され、1段目と2段目のランプ36aの方向は直交しているため、全体として格子状となっている。これにより、加熱が均一となるように構成されている。
【0036】
なお、加熱部36は、基板Wの被処理面上の液体自体、つまり第1の揮発性溶剤V及び第2の揮発性溶剤Hよりも、基板W自体が加熱され易い波長の電磁波(赤外線)を用いることにより、基板Wの熱による気層の発生を促進できる。加熱温度としては、例えば、300℃以上とすることが好ましい。
【0037】
なお、乾燥室31には、窓部36bが設けられている。窓部36bは、加熱部36からの電磁波を透過する部材である。窓部36bとしては、たとえば、石英等の板状体を用いることができる。窓部36bは、乾燥室31内の加熱部36の直下に設けられ、加熱部36と支持部32との間を仕切ることにより、ランプ36aの点灯の繰り返しによって、ランプ36aのコネクタ部の部材の伸縮が起こることで発生するパーティクルが、上部から基板Wへ付着して金属汚染が発生することを防止している。
【0038】
カップ37は、支持部32を周囲から囲むように円筒形状に形成されている(
図2参照)。カップ37の周壁の上部は、径方向の内側に向かって傾斜し、支持部32上の基板Wが露出するように開口している。カップ37は、回転する基板Wから飛散した洗浄液Lを受けて、下方に流す。カップ37の底面には、流れ落ちる洗浄液Lを排出するための排出口(不図示)が形成されている。なお、カップ37は、駆動機構33に接続され、支持部32とともに昇降可能に設けられている。
【0039】
測定部38は、乾燥室31に搬入され、支持部32に支持された基板W上の液体の膜厚を測定する。測定部38は、検出部38a、揺動アーム38b、揺動機構38cを有する。検出部38aとしては、例えば、レーザ変位計やカメラなどを用いる。揺動アーム38bは、先端に検出部38aが設けられ、検出部38aを、支持部32上の基板Wの被処理面の中心と外周縁との間の中央付近に対向させる測定位置と、その測定位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置とに移動させる。揺動機構38cは、揺動アーム38bを揺動させる機構である。
【0040】
測定部38による膜厚測定法としては、例えば、光干渉原理を用いることができる。なお、別の例として、支持部32内に重量計を用いることが可能である。この重量計を用いる場合には、基板W上の液膜の重量(液膜の重量=液膜を含む基板の重さ-基板の重さ)を理論的あるいは実験的に液膜の厚さに換算する。
【0041】
[制御装置]
制御装置400は、基板処理装置1の各部を制御するコンピュータである。制御装置400は、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。なお、制御装置400は、情報を入力する入力装置、情報を表示する表示装置を有している。
【0042】
制御装置400は、処理装置110、洗浄装置120、搬送装置200、乾燥装置300を制御する。例えば、制御装置400は、支持部32に支持された基板Wを回転させながら、第1の揮発性溶剤供給部34からの第1の揮発性溶剤Vの供給により液膜を第1の揮発性溶剤Vへ置換させ、第2の揮発性溶剤供給部35からの第2の揮発性溶剤Hの供給により基板Wの被処理面上に供給された第1の揮発性溶剤Vを、第2の揮発性溶剤Hへ置換させた後、加熱部36による基板Wの加熱により、第2の揮発性溶剤HであるPGMEAを気化させた後に、撥水化膜を基板Wの被処理面から離脱させる。これにより、第2の揮発性溶剤Hの液膜を基板Wの回転による遠心力により排出させる。例えば、PGMEAの沸点は、140~150℃であり、撥水化剤であるHMDSの沸点は約300℃であるため、加熱による瞬時の温度上昇の過程で、PGMEAが先に気化した後、撥水化膜の化学結合が熱により断ち切られて除去される。なお、制御装置400は、測定部38による測定結果の膜厚が所定のしきい値の範囲内にあると判定した場合に、加熱部36による加熱を開始させる。
【0043】
このような制御装置400は、機構制御部41と、膜厚解析部42と、加熱制御部43を有する。機構制御部41は、各部の機構を制御する。例えば、機構制御部41は、駆動機構33を制御することにより、支持部32の回転速度、回転開始及び回転停止のタイミングを制御する。また、ノズル34aの揺動及び第1の揮発性溶剤Vの吐出、ノズル35aの揺動及び第2の揮発性溶剤Hの吐出、検出部38aの揺動及び測定などの動作を制御する。
【0044】
膜厚解析部42は、測定部38による測定結果、つまり測定部38により測定された第1の揮発性溶剤V及び第2の揮発性溶剤Hの液膜の厚さを解析する。膜厚解析部42は、測定部38により測定された液膜の厚さ(液膜厚値)が、所定のしきい値の範囲内にあるか否かを判定する。そして、膜厚解析部42は、測定された液膜の厚さが所定のしきい値の範囲内にあると判定した場合、液膜の厚さが適切であるとして、加熱制御部43は、加熱部36に加熱を命令する信号を送信する。
【0045】
なお、HMDS(撥水化剤)を含むPGMEA(第2の揮発性溶剤)を供給した場合の適切な膜厚は、例えば100μm以下である。この膜厚は、加熱部36の加熱による基板Wからの蒸発を遅延させて、ライデンフロスト現象による乾燥処理を行う上で、良好に乾燥できる液膜厚である。但し、これらの数値は例示であり、実際には、予め実験等で適切な液膜厚を求めることができる。また、基板Wの回転速度は、例えば、200~300rpm程度であり、液膜調整されても、このような回転速度の範囲では、液膜厚が所定の厚さに維持できる。
【0046】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置1の動作を、上記の
図1及び
図2に加えて、
図3~
図5の説明図、
図6のフローチャート、
図7及び
図8の説明図を参照して説明する。なお、以下のような手順により基板Wを処理することにより基板を製造する基板製造方法、基板Wを乾燥させる基板乾燥方法も、本実施形態の一態様である。
【0047】
まず、
図2に示すように、処理装置110におけるエッチング処理後の基板Wは、搬送装置200により洗浄装置120に搬入される。洗浄装置120においては、基板Wを保持した支持部12が回転しながら、供給部15が基板Wの被処理面の回転中心にAPMを供給してアルカリによるリンス処理を行った後、DIWを供給することによる純水リンス処理を行う。搬送装置200は、洗浄後、DIWである洗浄液Lによって液盛された基板Wを、洗浄装置120から搬出し、乾燥装置300に搬入する。
【0048】
図3(A)に示すように、被処理面に洗浄液Lの液膜(DIW)が形成された状態で、乾燥装置300の乾燥室31の開口31aから搬入された基板Wを、支持部32の保持部材32bが保持する(ステップS01)。
図3(B)に示すように、駆動機構33が支持部32とともに基板Wを回転させながら(ステップS02)、第1の揮発性溶剤供給部34が、基板Wの被処理面の回転中心に第1の揮発性溶剤VであるIPAを供給する(ステップS03)。これにより、基板Wの回転による遠心力によって、IPAが基板Wの被処理面の全域に行き渡り、基板Wの被処理面上に液盛されたDIWがIPAに置換されるアルコールリンス処理が行われる。なお、ここでは、DIWよりも表面張力が低いIPAに置換されるため、基板Wの被処理面上に形成されるパターンの間に働く、表面張力が低減される。
【0049】
そして、図4に示すように、駆動機構33が支持部32とともに基板Wを回転させながら、第2の揮発性溶剤供給部35が、基板Wの被処理面の回転中心に、第2の揮発性溶剤HであるPGMEAを供給する(ステップS04)。これにより、基板Wの回転による遠心力によって、PGMEAが基板Wの被処理面の全域に行き渡るとともに、HMDSが、基板Wの被処理面に結合して撥水化膜が形成される。つまり、基板Wの被処理面上に存在する第1の揮発性溶剤が、第2の揮発性溶剤のPGMEAに置換され、被処理面の水酸基が官能基に置換して撥水化膜が形成されることになる。第2の揮発性溶剤は、第1の揮発性溶剤よりも基板Wのパターン間に働く表面張力が小さい。このため、パターン間に働く表面張力が低減される。これとともに、測定部38の検出部38aが、基板W上の膜厚を測定する(ステップS05)。
【0050】
測定部38により測定される膜厚が、所定のしきい値の範囲内で適切となった場合には(ステップS
06のYES)、
図5に示すように、基板Wを回転させながら、加熱部36のランプ36aが所定時間(数秒から十数秒以内の範囲内で)点灯することにより、基板Wをライデンフロスト現象が生じる温度(PGMEAの沸点以上)まで急速に加熱する(ステップS
07)。これにより、第2の揮発性溶剤Hの液膜が、瞬時に除去される乾燥処理が行われる。
【0051】
ここで言う乾燥処理は、単なる揮発によるものではなく、急速加熱の過程で生じるライデンフロスト現象及び撥水化膜の離脱と、基板Wの回転による遠心力を利用するものである。つまり、加熱により、基板Wの被処理面と気化しきれないPGMEAの液膜との界面に発生する気層によるライデンフロスト現象によって、液膜が浮上して液玉となる(液玉化)。その後、基板W上の撥水化膜の結合状態が解除されて除去される。化学結合の解除のメカニズムは以下の通りである。まず、高温に加熱することにより、官能基(-CHx)が熱分解によりSiとの結合が断ち切られ、基板W上の周囲にある酸素が、基板W上のSi及び官能基と結びつく。これにより、基板W上のSiは酸化して熱酸化膜が成長する。つまり、基板Wの被処理面には酸化膜が形成されるが、この酸化膜が残存することは特に問題はない。また、酸化した官能基は、H2OやCO2などに変化するが、高温下にあるため、H2Oは蒸発し、CO2はガスとして排出される。なお、加熱時には、排気部31fにおける排気弁を閉じることにより、気層の発生前の液膜の気化を防ぎ、過加熱状態を発生させてもよい。
【0052】
この現象を模式的に示すと、
図7(A)に示すように、基板Wの被処理面のパターンP上に、撥水化膜Rを介して存在しているHMDSを含むPGMEAの液膜Fは、
図7(B)に示すように、ランプ36aの点灯により基板Wだけが瞬時に加熱されることにより基板Wの撥水化膜とPGMEAとの界面が他の部分のPGMEAよりも早く気化を始めるため、液膜Fが気化したガスの層、すなわち気層Gが生成される。
【0053】
このため、
図7(C)に示すように、パターンP上の液膜Fは気層Gによって瞬時にパターンPから浮き上がり、
図7(D)に示すように、直ちに液玉化し(ライデンフロスト現象)、撥水化膜Rは基板Wの被処理面のSiと-CHxの結合が断ち切られて除去される。このように、液膜Fが液玉化してから、撥水化膜Rが基板Wから除去されるが、ランプ36aによって、瞬間的に(数秒で)撥水化膜Rが気化する300℃を達成できるので、液玉化と撥水化膜Rの除去は、ほぼ同時に起こるものとして考えることができる。図中、黒塗りの矢印で示すように、液膜Fには回転による遠心力がかかっており、生成された各液
玉は、遠心力によって基板W上から飛ばされるので、
図7(E)に示すように、基板Wの被処理面は乾燥する。なお、上記のように、Siと結合が切れた官能基が酸素と結びつくことによって、H2OやCO2となり、撥水化剤であるシランカップリング剤が蒸発するので、乾燥室31内の雰囲気は、酸素を含んでいることが好ましい。
【0054】
図8に示すように、基板W上のパターンP間に液膜Fが残った状態だと、液膜Fが残った部分のパターンPが液膜Fの表面張力によって、パターンPを引き寄せることになり、パターンPを倒壊させる。本実施形態では、
図7(A)に示すように、基板Wの全体において、パターンPの表面上に撥水化膜Rが存在することにより、パターンP間に液膜Fが形成され難くなり、パターンP間に液膜Fが存在し難い状態となる。このように、パターンP同士を引き付ける液膜Fが無いため、パターンPの倒壊を防ぐことができる。同時に撥水化膜Rを基板Wから離脱させて、基板Wの被処理面には不要である撥水化膜Rを除去できる。このため、パターンPの倒壊を低減して、基板Wを乾燥させることができる。
【0055】
その後、加熱部36による加熱を停止して、基板Wを回転させながら放置することにより冷却し(ステップS08)、駆動機構33が支持部32とともに基板Wの回転を停止した後(ステップS09)、搬送装置200が基板Wを開口31aから搬出する(ステップS10)。
【0056】
[効果]
(1)以上のような本実施形態の乾燥装置(基板乾燥装置)300は、基板Wを加熱する加熱部36と、基板Wの被処理面上に第1の揮発性溶剤Vを供給する第1の揮発性溶剤供給部34と、基板Wの被処理面上に、撥水化膜を形成する撥水化剤を含み、気化する際の表面張力が、第1の揮発性溶剤Vよりも小さい第2の揮発性溶剤Hを供給する第2の揮発性溶剤供給部35と、加熱部36、第1の揮発性溶剤供給部34及び第2の揮発性溶剤供給部35が収容され、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の基板Wが搬入される乾燥室31と、乾燥室31に搬入された基板Wを受け取る支持部32と、支持部32に支持された基板Wを回転させる駆動機構33と、第1の揮発性溶剤供給部34から第1の揮発性溶剤Vを供給させることにより、基板Wの被処理面上に形成された処理液による液膜を第1の揮発性溶剤Vへ置換させ、第2の揮発性溶剤供給部35から第2の揮発性溶剤Hを供給させることにより、基板Wの被処理面上に形成された第1の揮発性溶剤Vを第2の揮発性溶剤Hへ置換させるとともに、被処理面に撥水化膜を形成させ、加熱部36に基板Wを加熱させることにより、撥水化剤を含む第2の揮発性溶剤Hの液膜と基板Wとの間に気層を生じさせることによって、第2の揮発性溶剤Hの液膜を基板Wの回転による遠心力により排出させる制御装置400と、を有する。
【0057】
本実施形態の基板処理装置1は、基板Wを回転させながら第1の処理液を供給することにより処理する処理装置110と、処理装置110により処理済の基板Wを回転させながら第2の処理液を供給することにより洗浄する洗浄装置120と、乾燥装置300と、洗浄装置120において洗浄された基板Wを、洗浄装置120で供給された第2の処理液による液膜が形成された状態で搬出し、乾燥装置300に搬入する搬送装置200と、を有する。
【0058】
本実施形態の基板乾燥方法は、処理液による液膜が形成され、支持部32に支持された基板Wを駆動機構33により回転させながら、第1の揮発性溶剤供給部34からの第1の揮発性溶剤Vの供給により液膜を第1の揮発性溶剤Vへ置換し、第2の揮発性溶剤供給部35から、撥水化膜を形成する撥水化剤を含み、気化する際の表面張力が第1の揮発性溶剤Vよりも小さい第2の揮発性溶剤の供給により、第1の揮発性溶剤Vの液膜を第2の揮発性溶剤Hに置換するとともに、基板Wに撥水化膜を形成させ、加熱部36による基板Wの加熱により、撥水化剤を含む第2の揮発性溶剤Hの液膜と基板Wとの間に気層を生じさせることによって、第2の揮発性溶剤Hの液膜を基板Wの回転による遠心力により排出させる。
【0059】
このように、基板Wを回転させながら加熱して過加熱状態とする際に、撥水化膜によってパターン間に液膜が形成され難くした上で、ライデンフロスト現象によって液膜を浮上させることにより、遠心力を利用して全体の液膜を瞬時に除去可能となる。
【0060】
このため、同一装置内、同一処理室内で基板Wの乾燥が可能となり、乾燥装置300とは独立したプラズマ処理装置又はUV照射装置など、撥水化膜を除去する除去装置が不要となるとともに、乾燥装置300から除去装置への搬送工程が不要となる。従って、基板処理装置1を簡素化、小型化できるとともに、工程数が減少して、生産性が向上する。さらに、UV照射では困難であったパターン底部の液膜の除去も可能となる。
【0061】
また、第2の揮発性溶剤Hの液膜の全体を、撥水化膜とともに瞬時に除去できるので、基板Wの被処理面上において、部分的な液膜の残留が発生し難くなる。このため、隣接するパターン間で、液膜の残留の有無、残留量の相違によって張力に差が生じて、パターン倒壊が発生する可能性を低減できる。さらに、基板Wの中心と外周との遠心力の差、外周側への液膜の集中等による液膜の残留のばらつきも低減できる。
【0062】
(2)加熱部36が基板Wを加熱することによって、基板Wの被処理面に供給された第2の揮発性溶剤Hの液膜と基板Wとの間に気層を生じさせているとき、基板Wの被処理面に形成された撥水化膜は、基板Wの被処理面上から除去される。このため、加熱により撥水化膜の結合を解除させ、基板Wが回転する遠心力を利用して液膜及び撥水化膜を瞬時に除去可能となる。
【0063】
なお、加熱よる撥水化膜の離脱のために、過熱液をノズルから供給しようとしても、亜臨界液を扱うようなシステムが必要となるため、安全機構が増え、コストが高くなるが、本実施形態では、基板Wを回転させながら、加熱部36により基板Wを加熱することにより、追加の装置を不要として液膜を瞬時に除去することが可能となる。
【0064】
(3)支持部32に支持された基板Wの第1の揮発性溶剤の膜厚を測定する測定部38を有し、制御装置400は、測定部38による測定結果の膜厚が所定のしきい値の範囲内にあると判定した場合に、加熱部36による加熱を開始させる。これにより、基板W上の液膜を適切な膜厚に調整してから、基板Wを乾燥させることができる。膜厚が薄過ぎると、加熱時に基板Wの被処理面上の液膜が不均一に乾燥してしまうため、一部のパターンにおけるパターン倒壊が生じてしまう。また、膜厚が厚過ぎると、液玉数が増えるので、回転する基板Wの遠心力により被処理面外へ液玉が排出されるまでに、基板Wの被処理面と接触する接触箇所が増加することになる。基板Wの被処理面は、液玉との接触時の気化熱により冷却されることから、液玉数が多くなり過ぎると、急速加熱中であっても基板Wの被処理面の一部にライデンフロスト現象が生じる温度以下となる箇所、すなわち、急速乾燥ではなく通常乾燥により乾燥する部分が生じてしまう。本実施形態では、適切な膜厚に調整してから基板Wを加熱するため、このような通常乾燥による乾燥状態が発生することを防止できる。
【0065】
(変形例)
(1)第1の揮発性溶剤は、IPAには限定されない。例えば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)等を用いることができる。撥水化剤としてのシランカップリング剤は、HMDSには限定されない。例えば、TMSDEA(トリメチルシリルジエチルアミン)等を用いることができる。第2の揮発性溶剤も、上記のPGMEAには限定されない。例えば、IPAを用いてもよい。
【0066】
(2)処理装置110の処理は、最終的に洗浄と乾燥が必要となる処理であれば、処理の内容及び処理液は、上記で例示したものには限定されない。処理対象となる基板W及び処理液についても、上記で例示したものには限定されない。
【0067】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 基板処理装置
11 洗浄室
11a 開口
11b 扉
12 支持部
13 回転機構
14 カップ
15 供給部
15a ノズル
15b 移動機構
20 ハンドリング装置
21 ロボットハンド
22 移動機構
31 乾燥室
31a 開口
31b 扉
32 支持部
32a 回転テーブル
32b 保持部材
32c 回転軸
33 駆動機構
33a 回転部
33b 昇降部
34 第1の揮発性溶剤供給部
34a、35a ノズル
34b、35b 揺動アーム
34c、35c 揺動機構
35 第2の揮発性溶剤供給部
36 加熱部
36a ランプ
36b 窓部
37 カップ
38 測定部
38a 検出部
38b 揺動アーム
38c 揺動機構
41 機構制御部
42 膜厚解析部
43 加熱制御部
100 洗浄装置
200 搬送装置
300 乾燥装置
400 制御装置