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特許7504853頭頸部扁上皮がんおよびその他のがんに対する免疫療法で使用するための新規ペプチドおよびスキャフォールド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】頭頸部扁上皮がんおよびその他のがんに対する免疫療法で使用するための新規ペプチドおよびスキャフォールド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20240617BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240617BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240617BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240617BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240617BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C07K16/30
C07K14/725
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/0783
C12P21/02 C
A61K35/15
A61K35/17
A61K38/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021179862
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2019510628の分割
【原出願日】2017-08-24
(65)【公開番号】P2022033740
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】102016115974.3
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】62/379,864
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 豪
(72)【発明者】
【氏名】メア,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインシェンク,トニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーベ,アニタ
(72)【発明者】
【氏名】ソング,コレット
(72)【発明者】
【氏名】スホール,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シン,ハープリート
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/062391(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/193359(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/169945(WO,A2)
【文献】特表2013-522276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
主要組織適合性複合体(MHC)分子クラスIに結合すると、CD8陽性T細胞に認識されるようになる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
非ペプチド結合を含む、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
主要組織適合性複合体(MHC)分子と結合した際に、請求項1に記載のペプチドを特異的に認識する抗体、又は、前記抗体であって可溶性若しくは膜結合性の抗体。
【請求項5】
HLAリガンドと反応するT細胞受容体であって、前記リガンドが配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる、T細胞受容体、又は、前記T細胞受容体であって、可溶性若しくは膜結合性のT細胞受容体。
【請求項6】
前記T細胞受容体が可溶性分子として提供される請求項5に記載のT細胞受容体、前記T細胞受容体であって、さらなるエフェクター機能を保有するT細胞受容体、又は前記T細胞受容体であって、前記エフェクター機能が免疫刺激ドメイン若しくは毒素であるT細胞受容体。
【請求項7】
請求項1~3いずれか一項に記載のペプチド、請求項4に記載の抗体、又は請求項5若しくは6に記載のT細胞受容体をコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項1に記載のペプチドを含んでなる組換え宿主細胞、又は、前記組換え宿主細胞であって、抗原提示細胞、樹状細胞、T細胞、及びNK細胞からなる群から選ばれるいずれかである組換え宿主細胞。
【請求項10】
医療で使用するための、請求項1~3いずれか一項に記載のペプチド、請求項4に記載の抗体、請求項5若しくは6に記載のT細胞受容体、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、又は請求項9に記載の組換え宿主細胞。
【請求項11】
請求項7に記載の核酸若しくは請求項8に記載の発現ベクターを発現する組換え宿主細胞を、又は請求項9に記載の組換え宿主細胞を培養するステップと、前記ペプチド、前記抗体、又はT細胞受容体を、前記宿主細胞又はその培養液から単離するステップとを含んでなる、請求項1に記載のペプチド、請求項4に記載の抗体、又は請求項5若しくは6に記載のT細胞受容体を製造する方法。
【請求項12】
T細胞を適切な抗原提示細胞又は抗原提示細胞を模倣する人工コンストラクトの表面に発現される抗原負荷ヒトクラスI MHC分子と生体外で接触させるステップを含んでなり、前記抗原が請求項1に記載のペプチドである、活性化Tリンパ球を製造するインビトロ法。
【請求項13】
請求項1に記載のペプチドを提示する細胞を選択的に認識する活性化Tリンパ球。
【請求項14】
請求項13に記載の活性化Tリンパ球を有効数含有し、請求項1に記載のペプチドを提示する標的細胞を患者において死滅させる医薬。
【請求項15】
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチド;
b)a)に記載のペプチドおよび/またはペプチドMHC複合体と反応性のT細胞受容体;
c)a)またはb)をコードする核酸、または前記核酸を含んでなる発現ベクター;
d)c)の発現ベクターを含んでなる宿主細胞;
e)a)に記載のペプチドを選択的に認識する活性化Tリンパ球;
f)a)に記載のペプチドおよび/またはペプチド-MHC複合体および/またはa)に記載のペプチドを提示する細胞と反応性である、抗体、または可溶性T細胞受容体;
g)a)に記載の、コンジュゲートされ、または標識されたペプチド;
からなる群から選択される、少なくとも1つの活性成分を含んでなる医薬組成物、又は前記医薬組成物であって、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、及び/若しくは安定剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項16】
インターロイキンであるアジュバントを含む、請求項15に記載の医薬組成物、
又は、インターロイキンであるアジュバントを含み、前記インターロイキンがIL-2及び/又はIL-15である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示すがんの治療用の薬剤を製造するための、請求項1~3いずれか一項に記載のペプチド、請求項4に記載の抗体、請求項5若しくは6に記載のT細胞受容体、請求項7に記載の核酸、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載の組換え宿主細胞、又は請求項13に記載の活性化Tリンパ球の使用。
【請求項18】
前記がんが、頭頸部扁上皮がん、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管がん、脳がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、肝細胞がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞、小細胞肺がん、膀胱がん、及び、子宮がんからなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
a)溶液中のまたは凍結乾燥形態の、請求項1~3いずれか一項に記載のペプチド、請求項4に記載の抗体、請求項5若しくは6に記載のT細胞受容体、請求項9に記載の組換え宿主細胞、又は請求項13に記載の活性化Tリンパ球を含んでなる医薬組成物を含んでなる容器; を含み、さらに、
b)凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;
c)配列番号1~配列番号91から選択されるアミノ酸配列を含む、少なくとももう1つのペプチド;
d)(i)溶液の使用のための取扱説明書、又は(ii)凍結乾燥製剤の再構成及び/若しくは使用のための取扱説明書;
のいずれかを含んでなるキット。
【請求項20】
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの過剰提示を示すがんに対する、個別化がんワクチン、又は、個々の患者のための化合物の及び/若しくは細胞療法用の薬剤を製造する方法であって、
(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;
(b)a)で同定されたペプチドを、対応する正常組織との比較で腫瘍における免疫原性および過剰提示について予備選別されたペプチドの貯蔵庫及び/又はデータベースと比較するステップと;
(c)前記個々の患者からの腫瘍サンプルにおいて同定された腫瘍関連ペプチドに関連がある貯蔵庫及び/又はデータベースからペプチドを選択するステップと;
(d)(c)で選択されたペプチドに基づいて、ワクチン及び/又は細胞療法剤を製造するステップと;
を含み、
ステップ(c)において選択された前記ペプチドが配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、方法。
【請求項21】
(a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;
(a2)前記発現データを、前記腫瘍サンプル中のMHCクラスI/またはクラスII分子と結合しているMHCリガンドの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップと;
によって、TUMAPが同定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記個々の患者からの正常な対応組織と比較して、前記腫瘍サンプルに特有の変異を同定し、前記変異を基にワクチン及び/又は細胞療法用剤への包含のためのペプチドが選択されるステップをさらに含む、請求項20又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法において使用される、ペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。特に、本発明は、がんの免疫療法に関する。本発明は、単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激し、または生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合しているペプチド、またはペプチドそれ自体もまた、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的になり得る。
【0002】
本発明は、ヒト腫瘍細胞のHLAクラスI分子に由来する、いくつかの新規ペプチド配列およびそれらの変異型に関し、それらは抗腫瘍免疫応答を引き起こすためのワクチン組成物中で、または薬理的/免疫学的活性化合物および細胞の開発のための標的として、使用され得る。
【背景技術】
【0003】
頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)は、疫学、病因、および治療において差異を有する異種性の腫瘍である(Economopoulou et al.,2016)。これらの腫瘍は、それらが開始する領域によって分類される。それらとしては、口腔(口唇、舌の前3分の2、歯茎部、頬および口唇内層、口底、硬口蓋)、咽頭(鼻咽頭、軟口蓋を含む口腔咽頭、舌根、扁桃腺、下咽頭)、喉頭、副鼻腔および鼻腔、および唾液腺のがんが挙げられる(National Cancer Institute,2015)。
【0004】
HNSCCは世界で6番目に頻度の高い悪性腫瘍であり、世界中で診断された全がん症例の約6%を占める(Economopoulou et al.,2016)。HNSCCは、発生率および解剖学的分布の幅広い地理的変動によって特徴付けられる(Vigneswaran and Williams、2014)。高リスク国は、南アジアおよび東南アジア(すなわち、インド、スリランカ、バングラデシュ、パキスタン)に位置する。これらの地域では、口腔の扁平上皮がん(OSCC)は、男性で最も頻度の高いがんであり、女性では3番目に頻度の高いがんである(Vigneswaran and Williams,2014)。欧州では、OSCCの高発生率が、フランス、ハンガリー、スロバキア、スロベニアの各地域で見られる。米国では、HNSCCは、男性における8番目に頻度の高いがんである。
【0005】
HNSCCの主要なリスク因子は、アルコールとタバコの使用である。その他のHNSCCリスク因子としては、マテ茶の摂取が挙げられるが、保存または塩漬け食品の摂取、Bete Quidの使用、木材粉塵、アスベスト、および合成繊維への職業的曝露、放射線被曝、発がん性タイプのヒトパピローマウイルス(HPV)またはエプスタイン・バーウイルス(EBV)への感染、および祖先(特に鼻咽頭のSCCでは中国人祖先)もまた挙げられる(National Cancer Institute,2015)。
【0006】
先進国ではOSCCと喉頭SCCが減少している一方で、中咽頭SCCの発生率は増加している。これはSCC(喫煙関連SCCではなくHPV関連SCC)の生物学的駆動機構の変化に帰するとされる。HPV関連中咽頭がんは、1988年から2004年までに225%増加している(National Cancer Institute,2015)。HPV陽性HNSCCは、異なる疾患実体に相当することもある。これらの腫瘍は、有意に改善された生存に関連する。
【0007】
発生率は性別に左右され、男性対女性の比率は2:1~4:1の範囲である(2014 Review of cancer Medicines on the WHO list of essential medicines)。HNSCC患者の5年全生存率は、40~50%である。(World Health Organization,2014)。早期がん(T1、T2)の治癒率が70~95%である一方で(Nat Cancer Inst)、HNSCC患者の大多数は、局所進行性疾患を有する(Bauml et al.,2016)。
【0008】
早期HNSCCの治療は、外科手術または放射線のどちらかによる単独療法を伴う(World Health Organization,2014)。進行がんは、化学療法と手術および/または放射線療法との併用によって治療される。
【0009】
化学療法としては、主にシスプラチン、またはドセタキセル、シスプラチン、フルオロウラシル(5-FU)またはシスプラチン、エピルビシン、ブレオマイシンまたはシスプラチン、5-FUのようなシスプラチンを含有する合剤が挙げられる。イソトレチノイン(13-シス-レチノイン酸)は、1年間毎日口腔SCCおよび喉頭SCCで使用され、二次腫瘍の発生率を低減させる(National Cancer Institute,2015)。
【0010】
HNSCCは免疫抑制疾患と考えられ、免疫担当細胞の調節不全およびサイトカイン分泌の障害を特徴とする(Economopoulou et al.,2016)。免疫療法ストラテジーは、HPV陰性およびHPV陽性腫瘍の間で異なる。
【0011】
HPV陽性腫瘍では、ウイルス腫瘍性タンパク質E6およびE7が優れた標的に相当するが、これは、それらが腫瘍細胞によって連続的に発現され、HPV陽性がん細胞の形質転換状態を維持するために不可欠なためである。DNAワクチン、ペプチドワクチン、および樹状細胞(DC)が関与するワクチンをはじめとする、いくつかのワクチン接種療法が、HPV陽性HNSCCにおいて、現在調査中であるさらに、進行中の第II相臨床試験は、HPV陽性腫瘍を有する患者におけるリンパ枯渇と、それに続くTILの自己由来注入の有効性を調査する(Economopoulou et al.,2016)。
【0012】
HPV陰性腫瘍では、現在、いくつかの免疫療法ストラテジーが使用され、調査中である。キメラIgG1抗EGFRモノクローナル抗体セツキシマブは、再発性/転移性HNSCCのための標準的な第一選択治療として、化学療法と組み合わせてFDAにより承認されている。パニツマブ、ニモツズマブ、およびザルツムマブをはじめとする抗EGFRモノクローナル抗体が、HNSCCにおいて評価されている。いくつかの免疫チェックポイント阻害剤が、HNSCCにおける使用に関する臨床試験において調査されている。それらとしては、イピリムマブ(抗CTLA-4)、トレメリムマブ(抗CTLA-4)、ペンブロリズマブ(抗PD-1)、ニボルマブ(抗PD-1)、デュルバルマブ(抗PD1)、抗KIR、ウレルマブ(抗CD137)、および抗LAG-3抗体が挙げられる。
【0013】
HNSCC患者を対象とした2つの臨床試験では、p53ペプチドまたはアポトーシス腫瘍細胞を負荷したDCの使用が評価された。免疫学的反応は満足できるものであり、副作用は許容可能であった。
【0014】
いくつかの研究が、養子T細胞療法(ACT)を用いて行われている。T細胞は、照射された自己由来腫瘍細胞またはEBVのどちらかに対して誘導された。疾病抑制および全生存における結果は、有望であった(Economopoulou et al.,2016)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
がんの治療に伴う重度の副作用および費用を考慮すると、がん全般、そして特に頭頸部扁上皮がんの治療に使用し得る要素を同定する必要がある。がん全般、特に、頭頸部扁上皮がんのバイオマーカーに相当する要素を同定し、がんのより良い診断、予後評価、および治療成功の予測をもたらす必要もある。
【0016】
がんの免疫療法は、がん細胞を特異的に標的化しながら副作用を最小化する選択肢に相当する。がん免疫療法は、腫瘍関連抗原の存在を利用する。
【0017】
腫瘍関連抗原(TAA)の現行の分類は、次の主要群を含んでなる:
a)がん精巣抗原:T細胞によって認識され得る初めて同定されたTAAはこのクラスに属し、元々はがん精巣(CT)抗原と称されたが、それは、そのメンバーが組織学的に異なるヒト腫瘍において発現し、正常組織では精巣の精母細胞/精原細胞のみに存在し、時として胎盤に存在するためであった。精巣の細胞は、クラスIおよびII HLA分子を発現しないので、これらの抗原は正常組織のT細胞によって認識され得ず、したがって免疫学的に腫瘍特異的と見なされる。CT抗原の周知の例は、MAGEファミリーメンバーおよびNY-ESO-1である。
b)分化抗原:これらのTAAは、腫瘍と、それから腫瘍が生じる正常組織との間で共有される。既知の分化抗原のほとんどは、黒色腫および正常メラノサイトに見いだされる。これらのメラノサイト系関連タンパク質の多くは、メラニン生合成に関与し、したがって腫瘍特異的でないが、それでもなおがん免疫療法のために広く利用されている。例としては、黒色腫に対するチロシナーゼとMelan-A/MART-1、または前立腺がんに対するPSAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
c)過剰発現TAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる型の腫瘍において検出され、多数の正常組織においても概してより低い発現レベルで検出されている。正常組織によってプロセスされて潜在的に提示されるエピトープの多くは、T細胞認識の閾値レベル未満であり得る一方で、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、以前確立された免疫寛容を破壊することにより、抗がん応答を始動し得る。このクラスのTAAの顕著な例は、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼまたはWT1である。
d)腫瘍特異的抗原:これらのユニークなTAAは、正常な遺伝子(β-カテニン、CDK4など)の変異から生じる。これらの分子変化のいくつかは、腫瘍性形質転換および/または進行に関連する。腫瘍特異的抗原は、通常、正常組織に対する自己免疫反応のリスクなしに、強力な免疫応答を誘導できる。他方、これらのTAAは、ほとんどの場合、その上でそれらが同定されたまさにその腫瘍のみと関係があり、通常は、多くの個々の腫瘍間で共有されない。腫瘍特異的(関連)イソ型を有するタンパク質では、ペプチドの腫瘍特異性(または関連性)はまた、ペプチドが腫瘍(関連)エクソンに由来する場合に生じてもよい。
e)異常な翻訳後修飾から生じるTAA:このようなTAAは、特異的でなく腫瘍において過剰発現もされないタンパク質から生じてもよいが、それでもなお、腫瘍において主に活性である翻訳後プロセスによって腫瘍関連になる。このクラスの例は、腫瘍にMUC1のような新規エピトープをもたらす改変グリコシル化パターン、または腫瘍特異的であってもなくてもよい分解中のタンパク質スプライシングのような事象から生じる。
f)オンコウイルスタンパク質:これらのTAAはウイルスタンパク質であり、それらは発がん過程において重要な役割を果たしてもよく、外来性である(ヒト由来でない)ため、それらはT細胞応答を誘起し得る。このようなタンパク質の例は、子宮頸がんにおいて発現される、ヒト乳頭腫16型ウイルスタンパク質E6およびE7である。
【0018】
T細胞ベースの免疫療法は、主要組織適合性複合体(MHC)の分子によって提示される、腫瘍関連または腫瘍特異的タンパク質由来ペプチドエピトープを標的化する。腫瘍特異的Tリンパ球によって認識される抗原、すなわちそれらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それはそれぞれの腫瘍細胞において発現されて、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0019】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα重鎖およびβ2ミクログロブリンから構成され、MHCクラスII分子はαおよびβ鎖から構成される。それらの三次元立体構造は、ペプチドとの非共有結合相互作用のために使用される結合溝をもたらす。
【0020】
MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上に見いだされる。それらは、主に、内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、およびより大型のペプチドのタンパク質切断から得られる、ペプチドを提示する。しかし、エンドソームコンパートメントまたは外因性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見いだされる。この非古典的様式のクラスI提示は、文献中で交差提示と称される(Brossart and Bevan,1997;Rock et al.,1990)。MHCクラスII分子は、大部分はプロフェショナル抗原提示細胞(APC)に見いだされ、例えば、エンドサイトーシス中にAPCに取り込まれて引き続きプロセシングされる、外因性または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。
【0021】
ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なT細胞受容体(TCR)を有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。
【0022】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答の誘導と維持する上で重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させる医薬品の開発に非常に重要である(Gnjatic et al.,2003)。腫瘍部位では、Tヘルパー細胞が、細胞傷害性T細胞(CTL)親和的サイトカイン環境を維持して(Mortara et al.,2006)例えば、CTL、ナチュラル、キラー(NK)細胞、マクロファージ、および顆粒球などのエフェクター細胞を引きつける(Hwang et al.,2007)。
【0023】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系の細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹状細胞などのプロフェショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者においては、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが判明している(Dengjel et al.,2006)。伸長された(より長い)本発明のペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。
【0024】
MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を統合するのに重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた細胞傷害機能をはじめとする、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0025】
例えば、マウスなどの哺乳類動物モデルにおいて、CD8陽性Tリンパ球の不在下であっても、インターフェロンγ(IFNγ)の分泌による血管新生阻害を通じて腫瘍発現を阻害するには、CD4陽性T細胞で十分であることが示された(Beatty and Paterson,2001;Mumberg et al.,1999)。CD4 T細胞が、直接抗腫瘍エフェクターであるという証拠がある(Braumuller et al.,2013;Tran et al.,2014)。
【0026】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは、これまで考えられなかった。しかし、Dengjel et al.は、いくつかのMHCクラスIIエピトープを腫瘍から直接、成功裏に同定した(国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0027】
CD8およびCD4依存性の双方のタイプの応答は、抗腫瘍効果に共同して相乗的に寄与するので、CD8+T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)、またはCD4陽性Tヘルパー細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のどちらかによって認識される、腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発にとって重要である。
【0028】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多型性とに依存する。MHCクラスI結合ペプチドは、通常は8~12アミノ酸残基長であり、通常は、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に、2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして、各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する、「結合モチーフ」を有する。
【0029】
MHCクラスI依存免疫反応においては、ペプチドは腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できるだけでなく、それらはまた、引き続いて特異的T細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなくてはならない。
【0030】
タンパク質が、Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、健常組織と比較して、腫瘍細胞によって過剰提示されるべきである。それぞれの抗原は、ある種の腫瘍に存在するだけでなく、高い濃度(すなわち、それぞれのペプチド細胞当たりのコピー数)で存在することもさらに望ましい。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば、細胞周期調節またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が、上方制御されてもよく、したがって間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい(Singh-Jasuja et al., 2004)。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、抗原のアミノ酸配列内にエピトープが存在することが必須である。
【0031】
基本的に、MHC分子に結合できるあらゆるペプチドが、T細胞エピトープとして機能してもよい。生体外または生体内T細胞応答誘導のための必要条件は、対応するTCRを有するT細胞の存在、およびこの特定のエピトープに対する免疫寛容の不在である。
【0032】
したがって、TAAは、腫瘍ワクチンをはじめとするが、これに限定されるものではない、T細胞ベースの治療法開発の出発点である。TAAを同定し特性決定する方法は、通常は、患者または健常人から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍と正常組織との間の示差的転写プロファイル、またはペプチド発現パターンの生成に基づく。しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株において過剰発現され、またはこのような組織または細胞株において選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。それは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRを有するT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。したがって本発明の非常に好ましい実施形態では、それに対する機能性および/または増殖性T細胞が見いだされる、過剰にまたは選択的に提示されるペプチドのみを選択することが、重要である。このような機能性T細胞は、特異的抗原による刺激時にクローン増殖され得て、エフェクター機能を果たすことができるT細胞(「エフェクターT細胞」)と定義される。
【0033】
本発明による特異的TCR(例えば、可溶性TCR)および抗体またはその他の結合分子(スキャフォールド)によってペプチドMHCを標的化する場合、基礎となるペプチドの免疫原性は二次的である。これらの場合には、提示が決定要因である。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の第1の態様では、本発明は、配列番号1~配列番号91、または配列番号1~配列番号91と少なくとも77%、好ましくは少なくとも88%相同的な(好ましくは、少なくとも77%または少なくとも88%同一の)その変異配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドに関し、その中で前記変異型は、MHCと結合し、および/またはT細胞と前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導し、その中で前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0035】
本発明は、配列番号1~配列番号91、または配列番号1~配列番号91と少なくとも77%、好ましくは少なくとも88%相同的な(好ましくは少なくとも77%または少なくとも88%同一の)その変異型からなる群から選択される配列を含んでなる、本発明のペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたはその変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0036】
続く表は、本発明によるペプチド、それらの各配列番号、およびそれらのペプチドの予測される起源(基礎)遺伝子を示す。表1および表2の全てのペプチドは、HLA-A02に結合する。表2のペプチドは、誤り率が高い、またはアルゴリズムを使用して計算された、ハイスループットスクリーニングの結果としての大きなリスト中で以前開示されているが、これまでがんとは全く関連付けられていなかった。表3のペプチドは、本発明のその他のペプチドとの組み合わせで有用であってもよい、追加的なペプチドである。表4およびBのペプチドは、それぞれの基礎ポリペプチドの過剰発現または過剰提示を伴う様々なその他の悪性腫瘍の診断および/または治療においてさらに有用である。
【0037】
表1:本発明によるペプチド。
J = ホスホ-セリン
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0038】
表2:がん関連性が以前知られていない本発明による追加的なペプチド。
【表2】
【0039】
表3:例えば個別化がん治療で有用なペプチド。
【表3-1】
【表3-2】
【0040】
本発明は、さらに、例えば、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管がん、脳がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、肝細胞がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮がんなどの増殖性疾患の治療で使用するための本発明によるペプチドに一般に関する。
【0041】
特に好ましいのは、配列番号1~配列番号91からなる群から選択される、本発明による単独のまたは組み合わされたペプチドである。より好ましいのは、配列番号1~配列番号31(表1を参照されたい)からなる群から選択される単独のまたは組み合わせのペプチドと、頭頸部扁上皮がん、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管がん、脳がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、肝細胞がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞、小細胞肺がん、膀胱がん、子宮がん、好ましくは頭頸部扁上皮がんの免疫療法におけるそれらの使用である。
【0042】
以下の表4に示されるように、本発明によるペプチドの多くは、その他の腫瘍型上にもまた見いだされ、したがって、その他の適応症のための免疫療法においても使用され得る。図1および実施例1もまた、参照されたい。
【0043】
表4A:本発明によるペプチド、およびその他の増殖性疾患、特にその他のがん性疾患における、それらの具体的使用。表は、選択されたペプチドについて、測定された腫瘍 サンプルの5%超で過剰提示されるか、または測定された腫瘍サンプルの5%超で3を超える腫瘍対正常組織の幾何学平均比で提示されるかのどちらかである、それらがその上で発見された追加的な腫瘍型を示す。過剰提示は、最大提示がある正常サンプルと比較して、より高い腫瘍サンプル上の提示と定義される。それに対する過剰提示が試験された正常組織は、脂肪組織、副腎、胆管、血液細胞、血管、骨髄、脳、食道、眼、胆嚢、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、リンパ節、神経、膵臓、副甲状腺、腹膜、下垂体、胸膜、唾液腺、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、胸腺、甲状腺、気管、尿管、膀胱であった。
【表4A-1】
【表4A-2】
NSCLC= 非小細胞肺がん、SCLC= 小細胞肺がん、RCC= 腎臓がん、CRC= 結腸または直腸 がん、GC= 胃がん、HCC= 肝臓がん、PC= 膵臓がん、PrC= 前立腺がん、白血病、BRCA=乳がん、OC = 卵巣がん、NHL = 非ホジキンリンパ腫、AML = 急性骨髄性白血病、CLL = 慢性リンパ性白血病
【0044】
表4B:本発明によるペプチド、およびその他の増殖性疾患、特にその他のがん性疾患における、それらの具体的使用。表は、選択されたペプチドについて、測定された腫瘍 サンプルの5%超で過剰提示されるか、または測定された腫瘍サンプルの5%超で3を超える腫瘍対正常組織の幾何学平均比で提示されるかのどちらかである、それらがその上で発見された追加的な腫瘍型を示す。過剰提示は、最大提示がある正常サンプルと比較して、より高い腫瘍サンプル上の提示と定義される。それに対する過剰提示が試験された正常組織は、脂肪組織、副腎、動脈、骨髄、脳、中枢神経、結腸、食道、眼、胆嚢、心臓、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、白血球 細胞、膵臓、副甲状腺、末梢神経、腹膜、下垂体、胸膜、直腸、唾液腺、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、胸腺、甲状腺、気管、尿管、膀胱、静脈であった。
【表4B】
NSCLC=非小細胞肺がん、HCC=肝臓がん、BRCA=乳がん、RCC=腎細胞がん、GC=胃がん、OC=卵巣がん。
【0045】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、胆嚢がんおよび/または胆管がんの併用療法のための、配列番号1、10、17、37、42、48、57、61、67、69、70、72、75、76、78、および87のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0046】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、NSCLCの併用療法のための、配列番号2、20、50、60、61、63、および64のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0047】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、SCLCの併用療法のための、配列番号2、17、45、59、61、63、67、81、83、85、89、および91のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0048】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、食道がんの併用療法のための、配列番号2、3、4、6、7、8、9、16、19、23、27、32、39、41、42、46、48、49、50、52、53、54、58、60、61、62、72、75、88、および90のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0049】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、膀胱がんの併用療法のための配列番号3、4、7、8、15、16、19、20、21、24、27、31、32、39、45、46、47、48、50、51、53、56、58、60、64、69、73、74、78、81、85、86、88、89、および90のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0050】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、BRCAの併用療法のための、配列番号4、16、17、39、48、50、56、57、58、62、73、75、76、79、および89のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。、
【0051】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、黒色腫の併用療法のための、配列番号8、9、11、16、17、32、43、48、56、57、65、66、67、71、73、81、82、85、87、88、および89のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0052】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、AMLの併用療法のための、配列番号16、17、24、29、43、57、66、70、73、76、77、および83のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0053】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、子宮がんの併用療法のための、配列番号16、17、19、31、43、46、47、48、49、51、56、57、58、66、67、72、75、76、79、83、89、90、および91のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0054】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、脳がんの併用療法のための、配列番号18、58、61、および88のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0055】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、NHLの併用療法のための、配列番号32、43、48、59、60、61、63、66、73、76、79、83、85、86、87、89、90、および91のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0056】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、CLLの併用療法のための、配列番号43、61、65、66、73、76、78、89、90、および91のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0057】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、OCの併用療法のための、配列番号45、47、51、56、66、および67のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0058】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、GCの併用療法のための、配列番号43、50、89、および61のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0059】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、HCCの併用療法のための、配列番号16、43、45、57、61、65、66、および75のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0060】
したがって、本発明の別の態様は、好ましい一実施形態では、RCCの併用療法のための、配列番号43、61、62、87、89、および90のいずれか1つに記載の本発明によるペプチドの少なくとも1つの使用に関する。
【0061】
したがって、本発明の別の態様は、好ましくは、頭頸部扁上皮がん、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管がん、脳がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、肝細胞がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮がんの群から選択される増殖性疾患の併用治療のための、本発明によるペプチドの使用に関する。
【0062】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIの分子に結合する能力を有し、または長さ変異型などの伸長形態では、MHCクラスIIに結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0063】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは(それぞれ)配列番号1~配列番号91に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0064】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、修飾され、および/または非ペプチド結合を含む。
【0065】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な抗体などの抗体(またはその配列中)に融合した、融合タンパク質の一部である。
【0066】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関する。本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNA、またはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0067】
本発明は、本発明による核酸を発現でき、および/または発現する、発現ベクターにさらに関する。
【0068】
本発明は、疾患の治療においてそして医療において、特にがんの治療において使用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸または本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0069】
本発明は、本発明によるペプチドに対して、または前記本発明によるペプチドとMHCの複合体に対して特異的な対抗と、それらを製造する方法とにさらに関する。
【0070】
本発明は、T細胞受容体(TCR)、特に、自己由来または同種異系T細胞に組み込まれた可溶性TCR(sTCR)およびクローン化TCR;これらを製造する方法;ならびに前記TCRを有するまたは前記TCRと交差反応する、NK細胞またはその他の細胞を製造する方法にさらに関する。
【0071】
抗体およびTCRは、本発明によるペプチドの免疫療法用途の追加的な実施形態である。
【0072】
本発明は、前述のような本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。本発明は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0073】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、前記宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0074】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0075】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号91を含有する、好ましくは配列番号1~配列番号31または変異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現する能力がありまたは発現する、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0076】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを発現する細胞を選択的に認識する。
【0077】
本発明は、本発明によって製造されるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0078】
本発明は、薬剤としてのまたは薬剤の製造における、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、本発明による活性化Tリンパ球、T細胞受容体または抗体またはその他のペプチド-および/またはペプチド-MHC-結合分子の使用にさらに関する。好ましくは、前記薬剤は、がんに対して有効である。
【0079】
好ましくは、前記薬剤は、可溶性TCRまたは抗体に基づく、細胞療法、ワクチンまたはタンパク質である。
【0080】
本発明は、本発明による使用にさらに関し、前記がん細胞は、頭頸部扁上皮がん、急性骨髄性白血病、乳がん、胆管がん、脳がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、肝細胞がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞、小細胞肺がん、膀胱がん、子宮がん、好ましくは頭頸部扁上皮がん細胞である。
【0081】
本発明は、がん、好ましくは頭頸部扁上皮がんの診断で使用され得る、本明細書で「標的」と称される本発明によるペプチドに基づく、バイオマーカーにさらに関する。マーカーは、ペプチドそれ自体の過剰提示、または対応遺伝子の過剰発現であり得る。マーカーはまた、好ましくは免疫療法、最も好ましくはバイオマーカーによって同定されるのと同じ標的を標的化する免疫療法である、治療の成功確率を予測するために使用されてもよい。例えば、抗体または可溶性TCRを使用して腫瘍切片が染色され、MHCと複合体形成した目的ペプチドの存在が検出され得る。
【0082】
任意選択的に、抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0083】
本発明はまた、がん治療の文脈における本発明の新規標的の使用に関する。
【0084】
ALOX12Bは、最終皮膚分化および表皮バリア機能に関与する(Furstenberger et al.,2007;Epp et al.,2007)。ALOX12Bはがんにおいて増幅される免疫抑制因子である(Rooney et al.,2015)。シスプラチンは(p)-DeltaNp63αを誘導し、ATMリン酸化する。引き続いて、それは、let7-5pを下方制御するmiR-185-5pを上方制御し、扁平上皮がんにおけるALOX12B発現の調節がもたらされる(Ratovitski,2013)。ALOX12Bは、乳がんおよび肺がんリスクに関連する(Lee et al.,2009;Shen et al.,2009)。
【0085】
ANKRD17 mRNAレベルは、結腸直腸がんにおいて広範に下方制御されており、このプロテインAを結腸直腸がん検出のための多標的アッセイパネルのための潜在的なマーカーにする(Ioana et al.,2010)。サイクリンE/CdK2によるANKRD17のリン酸化を通じて、タンパク質は細胞周期調節に関与する。過剰発現がS期移行を促進するのに対し、発現の枯渇は、DNA複製を阻害し、細胞周期進行を阻止し、腫瘍抑制因子p53およびp21の発現を上方制御する(Deng et al.,2009)。
【0086】
ATP5G1は、胃がんにおいて酸化的リン酸化経路に富む(Song et al.,2016)。頭頸部扁上皮がんでは、ATP5G1発現が減少する(Koc et al.,2015)。肝臓再生増強因子(ALR)のノックアウトは、マウスにおいて脂肪性肝炎および肝細胞がんの発症を加速させる。さらに、ATP5G1発現はALRノックダウンマウスにおいて減少する。(Gandhi et al.,2015)。
【0087】
ATP5G2は、低~中悪性度腫瘍と比べて、悪性度膀胱がん腫瘍においてより高度にメチル化される(Kitchen et al.,2016)。RIZ1は、その抑制によりATP5G2発現が変化する腫瘍抑制因子である(Xie et al.,2016b)。ATP5G2は、子宮内膜Ishikawaがん細胞株において、エストロゲンおよびプロゲステロン治療時に高度に発現される(Tamm-Rosenstein et al.,2013)。ATP5G2プロモーターは、原発性腎細胞がんにおいてメチル化される(Morris et al.,2011)。
【0088】
ATP5G3は、胃がんにおいて酸化的リン酸化経路に富む(Song et al.,2016)。ATP5G3は、腫瘍進行と負の相関があり細胞移動を抑制する、PPARα活性化によって、上方制御される(Huang and Chang,2016)。ATP5G3は、放射線感受性遺伝子であってもよい(Tsuji et al.,2005)。
【0089】
BTBD11は、BTBドメイン含有11をコードし、染色体12q23.3上に位置する(RefSeq,2002)。BTBD11は、乳頭状甲状腺がんにおいて示差的に発現される(Qu et al.,2016)。BTBD11は、TGF-β標的遺伝子である(Sawada et al.,2016)。BTBD11は、胃がんにおいて変異する(Leiserson et al.,2015;Leiserson et al.,2016)。
【0090】
CD276の予後との関連は、肺腺がんを有する喫煙患者と非喫煙患者の間で異なる。高いCD276発現は、喫煙に関連する(Inamura et al.,2017)。CD276は、前立腺がんにおいて過剰メチル化される(Wang et al.,2016b)。CD276は、骨肉腫において下方制御されるmiR-124によって調節される。TGF-β1は、SMAD 3および4シグナル伝達を通じてmiR-155を上方制御し、CD276蓄積を引き起こすCEBPB阻害によってmiR-143の減衰をもたらす。CD276は、結腸直腸がんにおいて下方制御されるmiR-187によって調節される(Wang et al.,2016e;Trojandt et al.,2016;Zhou et al.,2016;Wang et al.,2016a)。CD276は、SREBP-1/FASNシグナル伝達に影響を及ぼすことによって、肺がんにおける異常脂質代謝を媒介する。可溶性CD276は、TLR4/NF-κBシグナル伝達を通じて膵臓がん浸潤および転移を媒介する(Xie et al.,2016a;Luo et al.,2016)。CD276は、がん治療における有望な標的であってもよい、免疫チェックポイントである。それは腫瘍増殖中に標的化されて、新たに出現した腫瘍に免疫回避を提供する抗腫瘍免疫を抑制してもよい(Leung and Suh,2014;Swatler and Kozlowska,2016;Janakiram et al.,2016)。CD276は最も高リスクの神経芽腫によって発現され、腫瘍血管系において過剰発現され、腫瘍の生存および浸潤性に重要な役割を果たす(Bottino et al.,2014)。CD276のノックダウンは、化学療法感受性を高め転移能を低下させる。CD276のノックダウンは、アポトーシスマーカー発現およびSTAT3リン酸化の増大をもたらす。アストラガロシドIV治療は、非小細胞肺がん細胞においてCD276を阻害することによって、細胞増殖を減少させ、シスプラチンに対する化学療法感受性を増加させる(Nygren et al.,2011;He et al.,2016)。CD276は、食道がん、乳がん、胆嚢がん、前立腺がん、および卵巣がんにおいて過剰発現される。(Barach et al.,2011;Janakiram et al.,2012;Fauci et al.,2012;Chen et al.,2016;Liu et al.,2016)。CD276過剰発現は、低生存率、予後、および腫瘍グレードと相関する。CD276は、がんの浸潤および進行を促進する。しかし、CD276は、抗腫瘍効果もまた有してもよい。高いCD276発現は、非小細胞肺がんにおけるリンパ節転移および進行したTNM病期の指標である(Yi and Chen,2009;Loos et al.,2010;Nygren et al.,2011;Fauci et al.,2012;Wang et al.,2014a;Ye et al.,2016;Benzon et al.,2016;Wu et al.,2016)。CD276は、ナチュラルキラー細胞の細胞毒性を下方制御し、がん免疫回避を支持する(Bottino et al.,2014)。
【0091】
CDH23は、その遺伝子がカルシウム依存性細胞間接着糖タンパク質をコードする、カドヘリンスーパーファミリーのメンバーであるカドヘリン関連23をコードする。コードされたタンパク質は、不動毛組織化および毛束形成に関与すると考えられている。遺伝子は、ヒト聴覚消失遺伝子座DFNB12およびUSH1Dを含有する領域に位置する。アッシャー症候群1Dおよび非症候性常染色体劣性聴覚消失DFNB12は、このカドヘリン様遺伝子の対立遺伝子変異によって引き起こされる。この遺伝子の上方制御はまた、乳がんにも関連することもある(RefSeq,2002)。TMPRSS3は、乳がんにおける芳しくない予後因子であり、CDH23と相互作用し得る(Rui et al.,2015)。CDH23は、ERα発現乳がん細胞におけるレプチン治療時に上方制御される(Binai et al.,2013)。CDH23は乳がんにおいて上方制御され、早期転移に関与してもよい(Apostolopoulou and Ligon,2012)。CDH23の喪失は、膵臓がん細胞株で観察さ得る(Suzuki et al.,2008)。
【0092】
CDH3は、発がん性シグナル伝達に関与して、インテグリン、受容体チロシンキナーゼ、小分子GTPアーゼ、EMT転写因子、およびその他のカドヘリンファミリーメンバーを活性化する。CDH3シグナル伝達は、浸潤および転移を誘導する(Albergaria et al.,2011;Paredes et al.,2012;Bryan、2015;Vieira and Paredes,2015)。CDH3の発がん活性化は、胃の発がんに関与する(Resende et al.,2011)。CDH3過剰発現は、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮内膜がん、皮膚がん、胃がん、膵臓がん、および結腸がんを促進する(Albergaria et al.,2011;Paredes et al.,2007;Bryan and Tselepis,2010;Reyes et al.,2013;Vieira and Paredes,2015)。CDH3は、基底細胞様乳がんにおいて発現される基底上皮マーカーである。BRCA1がんは、CDH3のような基底マーカーの発現によって特徴付けられ、高悪性度、高増殖性、ER陰性、およびHER3陰性表現型を示す(Honrado et al.,2006;Palacios et al.,2008;Rastelli et al.,2010;Dewar et al.,2011)。CDH3は、黒色腫および口腔扁平上皮がんにおける腫瘍抑制因子である(Haass et al.,2005;Vieira and Paredes,2015)。CDH3は、EMTマーカーとして使用されてもよい。腫瘍形成および進行中に、EカドヘリンからNカドヘリンおよびCDH3発現への移行がある(Piura et al.,2005;Bonitsis et al.,2006;Bryan and Tselepis,2010;Ribeiro and Paredes,2014)。CDH3とβカテニンの間の競合的相互作用は、胃がんにおける細胞間相互作用と転移の障害を引き起こす(Moskvina and Mal’kov,2010)。CDH3は、結腸がんにおけるがん形成の初期マーカーでであってもよい(Alrawi et al.,2006)。CDH3の調節不全は、予後不良および悪性腫瘍増加のマーカーである(Knudsen and Wheelock,2005)。
【0093】
CLCA2の過剰発現は、βカテニンおよびβカテニン活性化遺伝子を下方制御する(Ramena et al.,2016)。CLCA2は、これもまたp53およびp63によって誘導されるEVA1と強力に相互作用し、乳がんにおいてしばしば下方制御され、EMTを引き起こし、上皮分化に重要である。どちらのタンパク質も、E-カドヘリンと相互作用する(Ramena et al.,2016)。成人急性骨髄性白血病には、AML1-CLCA2とRUNX1-CLCA2遺伝子融合産物がある(Giguere and Hebert,2010;Jiang et al.,2013)。CLCA2は、DNA損傷時に、p73、p53、およびp63によって誘導され、増殖阻害剤の役割を果たす(Walia et al.,2009;Sasaki et al.,2012;Yu et al.,2013;Ramena et al.,2016)。CLCA2発現は、肺腺がんを有する患者に由来する循環腫瘍細胞において上昇し、検出の増加は患者の生存期間短縮と関連する(Hayes et al.,2006;Man et al.,2014)。CLCA2は、腺がんと比較して肺の扁平上皮がんでより高く発現され、組織学的腫瘍グレードに関連する。CLCA2発現は、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がんの検出のために使用されてもよい(Hayes et al.,2006;Shinmura et al.,2014)。CLCA2のノックダウンは、上皮間葉転換、がん細胞移動、および浸潤を引き起こす。通常の条件下では、CLCA2は、FAKシグナル伝達経路の阻害を通じて、移動および浸潤を抑制すると考えられている。CLCA2は、β(4)インテグリンと関連して肺転移を仲介する(Abdel-Ghany et al.,2001;Walia et al.,2012;Sasaki et al.,2012;Ramena et al.,2016)。CLCA2は、乳がんにおいてプロモーター過剰メチル化のために下方制御され、結腸直腸がんにおいて下方制御される。CLCA2は膀胱がんにおいて、および黒色腫の転移性形質転換中に示差的に発現される。マントル細胞リンパ腫において、CLCA2のコピー数の減少がある(Gruber and Pauli,1999;Bustin et al.,2001;Li et al.,2004;Balakrishnan et al.,2006;Riker et al.,2008;Walia et al.,2012;Matin et al.,2014;Ramena et al.,2016)。
【0094】
DSG1は、角化嚢胞性歯原性腫瘍において過剰発現され、口腔上皮内腫瘍において高い発現率を示す(Aizawa et al.,2014;Heikinheimo et al.,2015)、DSG1発現は、棘融解性扁平上皮がんで消失し、軟骨肉腫、口腔扁平上皮がん、および肺がんでは下方制御される(Xin et al.,2014;Saaber et al.,2015;Galoian et al.,2015;Jurcic et al.,2015)。DSG1発現はGRHL1によって調節され、標準的な化学皮膚発がんプロトコルで処置されたGRHL1-陰性マウスは、より少ない乳頭腫を発症するが、より多くの扁平上皮がんを発症する(Mlacki et al.,2014)。RhodaおよびGEF Bcrの下流標的であるDSG1は、角化細胞分化マーカーである(Dubash et al.,2013)。KLK5は、口腔扁平上皮がんにおける転移形成に関連することもあるDSG1を切断する。DSG1レベルの低下は、膵臓がん浸潤に関与しているかもしれない(Ramani et al.,2008;Jiang et al.,2011)。陰性DSG1染色は、肛門がん特異的生存率の改善に関連し、陽性染色は、大きな腫瘍サイズおよびリンパ節転移に関連する。頭頸部扁上皮がんにおけるDSG1の喪失は、予後不良と関連がある(Wong et al.,2008;Myklebust et al.,2012)。DSG1に対する自己抗体が、腫瘍随伴性天疱瘡で検出され得る(Seishima et al.,2004)。
【0095】
食道扁平上皮がんにおけるDSG3発現は、組織学的グレードと高度に相関し、食道扁平上皮がんにおける生存に影響を与えることが示され、負のDSG3発現は、より芳しくない生存を示唆する。したがって、DSG3は、食道扁平上皮がんの進行に関与してもよく、予後マーカーの役割を果たしてもよい(Fang et al.,2014)。原発性肺腫瘍では、より高いDSG3およびDSG2発現は、肺扁平上皮がんの診断と相関することが示された一方で、より低いDSG3発現は、より高い腫瘍グレードと有意に関連することが示された。したがって、DSG3は、肺扁平上皮がんの潜在的な診断マーカーおよび肺がんの潜在的な分化マーカーの役割を果たしてもよい(Saaber et al.,2015)。高いDSG3発現は、低い全生存および低い腫瘍特異的生存に関連することが示されたため、DSG3は、切除された膵管腺がんにおけるネガティブ予後バイオマーカーとして記載されている。したがって、DSG3およびその下流シグナル伝達経路は、DSG3発現膵管腺がんにおける可能な治療標的であってもよい(Ormanns et al.,2015)。
【0096】
DSPの発現低下は乳がん、肺がん、子宮頸がんをはじめとするいくつかのがんの腫瘍進行と相関する(Schmitt-Graeff et al.,2007;Davies et al.,1999;Yang et al.,2012b)。DSPの発現は、Wnt/βカテニンシグナル伝達経路の阻害を通じて、肺がん細胞において、細胞増殖、足場非依存性増殖、移動、および浸潤を有意に抑制する。(Yang et al.,2012b)。
【0097】
DSTは、乳がん転移に関連してもよい(Sun et al.,2006)。DSTに対する自己抗体は、リンパ球性白血病および濾胞性リンパ腫において見いだされ得る(Aisa et al.,2005;Taintor et al.,2007)。DSTは、鼻咽頭がんにおける6-10B細胞(腫瘍形成性であるが転移能を欠く)と比較して、5-8F細胞(高い腫瘍形成能および転移能)において上方制御される(Fang et al.,2005)。DSTは、頭頸部扁上皮がんにおいて高度に発現される(Lin et al.,2004)。新生物に関連する腫瘍随伴性天疱瘡には、DSTに対する自己抗体がある(Yong and Tey,2013;Wang et al.,2005;PreiszandKarpati、2007;ZhuandZhang、2007)。前立腺がんにおけるDSTの発現は、進行と強く逆相関する(Vanaja et al.,2003)。抗DST自己抗体は、黒色腫診断のための有望なマーカーである(Shimbo et al.,2010)。DSTは、悪液質がん患者の尿中に見いだされ得る(Skipworth et al.,2010)。DSTは、腺がんおよび肺の扁平上皮がんにおいて示差的に発現される(McDoniels-Silvers et al.,2002)。DSTは、浸潤性細胞増殖の開始と共に、明確に上方制御される(Herold-Mende et al.,2001)。
【0098】
EMC7は、ER膜タンパク質複合体サブユニット7をコードし、染色体15q14に位置する(RefSeq,2002)。EMC7は、がんにおける、新薬の開発につながる新規標的および診断バイオマーカーであってもよい(Delgado et al.,2014)。EMC7は、ピンヤンマイシン耐性舌扁平上皮がん細胞株において下方制御される(Zheng et al.,2010)。
【0099】
ESRP2は、上皮細胞型特異的スプライシング調節因子をコードする(RefSeq,2002)。ESRP2は、肺がんおよび乳がん細胞をはじめとする様々ながん型において、がん細胞の運動性を阻害する。ESRP2は浸潤性前線においてTGF-βによって下方制御され、上皮間葉転換関連転写因子の発現増加をもたらす(Gemmill et al.,2011;Horiguchi et al.,2012;Ishii et al.,2014)。
【0100】
F2RL1のPHドメイン結合モチーフの変異は、乳房腫瘍増殖を減少させるのに十分である(Bar-Shavit et al.,2016)。F2RL1は、胃がんにおいて過剰発現され、患者の全生存と逆相関する(Sedda et al.,2014)。トリプターゼは、肥満細胞によって放出される血管新生のメディエータであり、F2RL1を活性化してがん細胞の増殖、浸潤、および転移をもたらす。(Marech et al.,2014;Ammendola et al.,2014)。F2RL1は、がんにおいて、示差的に発現されて変異した遺伝子の影響を受ける(D’Asti et al.,2014)。F2RL1は、がんの進行、浸潤、および転移に関与する(Wojtukiewicz et al.,2015;Canto et al.,2012;Lima and Monteiro、2013;Gieseler et al.,2013)。F2RL1は、腺がん、黒色腫、骨肉腫、膠芽細胞腫、髄膜腫、白血病、および扁平上皮がんにおいて発現される(Elste and Petersen,2010)。F2RL1は、TGF-βI型受容体であるALK5の発現を調節する。F2RL1は、MAPキナーゼを活性化する(Oikonomopoulou et al.,2010;Witte et al.,2016)。組織因子およびインテグリンの上方制御は、転移を促進するF2RL1シグナル伝達を媒介する(Kasthuri et al.,2009;Ruf et al.,2011;Kocaturk and Versteeg,2012;Ruf、2012;Kocaturk and Versteeg,2013)。トリプシンおよびPAR2は自己分泌ループを形成し、増殖、浸潤、および転移を促進する。トリプシン刺激は、上皮成長因子受容体のMMPおよびPAR2依存性活性化を通じて、MAPK‐ERK経路活性化をもたらしてもよい(Soreide et al.,2006)。
【0101】
FAM160A1は、配列類似性160メンバーA1を有するファミリーをコードし、染色体4q31.3上に位置する(RefSeq,2002)。前立腺がんでは、DY131がエストロゲン関連受容体βに結合すると、FAM160A1発現が変化する(Lu et al.,2015b)。前立腺がんには、NFKB-FAM160A1遺伝子融合産物がある(Teles、I et al.,2015)。FAM160A1は、良性腫瘍と比較して、卵巣がんにおいて上方制御される(Li et al.,2012a)。FAM160A1の欠失は、家族性および早発性乳がんに見いだされ得る(Krepischi et al.,2012)。FAM160A1は、結腸直腸がんにおいて下方制御される(Li et al.,2012b)。
【0102】
FANCEは、食道扁平上皮がんリスクに関連する(Li et al.,2013)。FANCEの稀な下方制御が、頭頸部扁上皮がんで観察され得る(Wreesmann et al.,2007)。Chk1は、DNA架橋時のFANCEのリン酸化を媒介する(Wang et al.,2007)。家族性結腸直腸がんは、FANCEに対してヘテロ接合性遺伝子型を示す。ファンコニー貧血DNA損傷の修復が、結腸直腸がんに対する遺伝的素因に関連することもあるインデル変異が、遺伝性食道扁平上皮がんに関与するかもしれない。FANCEのミスセンス変異が、乳がんのある1家族に見いだされた(Akbari et al.,2011;Seal et al.,2003;Esteban-Jurado et al.,2016)。FANCEは、シスプラチン感受性の調節に関与する(Taniguchi et al.,2003)。
【0103】
FAT1は、頭頸部の扁平上皮がんにおいて有意に変異し、子宮頸部腺がん、膀胱がん、早期T細胞前駆体急性リンパ芽球性白血病、フルダラビン難治性慢性リンパ球性白血病、神経膠芽腫、および結腸直腸がんにおいて頻繁に変異し、食道扁平上皮がんにおいて変異するとして記載された(Gao et al.,2014;Neumann et al.,2013;Morris et al.,2013;Messina et al.,2014;Mountzios et al.,2014;Cazier et al.,2014;Chung et al.,2015)。FAT1は、口腔がんにおいて抑制され、浸潤乳がんにおいて優先的に下方制御されるとして記載された(Katoh,2012)。FAT1は、preB急性リンパ芽球性白血病における予後不良に関連する白血病において、上方制御されるとして記載された(Katoh,2012)。FAT1は、膵臓腺がんおよび肝細胞がんにおいて上方制御されることが示された(Valletta et al.,2014;Wojtalewicz et al.,2014)。FAT1は、Hippoシグナル伝達の活性化を通じて腫瘍増殖を抑制し、アクチン重合の誘導を通じて腫瘍移動を促進することが記載された(Katoh,2012)。FAT1は、皮膚扁平上皮がんにおけるがん駆動機構遺伝子の候補であることが示された(Pickering et al.,2014)。FAT1は、Wntシグナル伝達および腫瘍発生に関連する腫瘍抑制因子として記載された(Morris et al.,2013)。
【0104】
FAT3は、アンドロゲン受容体のサイレンシング時にタキソール耐性卵巣がん細胞株において下方制御され、これらの細胞株において、タキソールに対する感作を増加させることが示された。したがって、FAT3は、タキソール耐性に関連する候補遺伝子であってもよい(Sun et al.,2015b)。FAT3は食道扁平上皮がんにおいて変異し、Hippoシグナル伝達経路の調節不全を生じることが示された(Gao et al.,2014)。FAT3は、早期T細胞前駆体急性リンパ芽球性白血病において、反復的に変異することが示された(Neumann et al.,2013)。FAT3は、髄膜皮性髄膜腫に特有のシグネチャを有する遺伝子として記載され、したがって、この良性髄膜腫亜型における腫瘍形成に関連している(Fevre-Montange et al.,2009)。FAT3は、形成異常細胞からの肺がん発生時に抑制される、腫瘍抑制因子として記載された(Rohrbeck and Borlak,2009)。
【0105】
FHAD1は、酸化的ストレス応答に関与するNFE2ノックダウン時に下方制御される(Williams et al.,2016)。FHAD1のCpGメチル化は、転移性致死性前立腺がんにおけるバイオマーカーとして使用されてもよい(Zhao et al.,2017)。FHAD1は、食道扁平上皮がんにおいて下方制御され、シスプラチンに対する化学療法抵抗性に寄与してもよい(Tsutsui et al.,2015)。FHAD1は、乳がんにおける腫瘍抑制遺伝子であってもよい(Iorns et al.,2012)。
【0106】
G3BP1は、DNA巻き戻し酵素の1つであるG3BPストレス顆粒集合因子1をコードするが、これは部分的に巻き戻された3’-テール付加基質を好み、ATP依存性様式で、部分的なRNA/DNAおよびRNA/RNA二本鎖もまた巻き戻し得る(RefSeq,2002)。G3BP1は、HER2+乳がんにおける薬剤応答のバイオマーカーとして使用されてもよい(Chien et al.,2016)。生体外および生体内において肺がんの進行および転移を阻害するmiR-193a-3pは、G3BP1を下方制御する(Deng et al.,2015)。G3BP1は、レスベラトロールの直接的な標的である。G3BP1の枯渇は、レスベラトロール誘発性p53発現およびアポトーシスを減少させるG3BP1は、p53特異的デユビキチナーゼであるUSP10と相互作用することにより、p53の負の調節因子である(Oi et al.,2015)。G3BP1は、MYCNOSによってMYCNのプロモーター領域に動員され、その発現が調節される。G3BP1は、PMP22を負に調節して、乳がんの増殖を増加させる(Winslow et al.,2013;Vadie et al.,2015)。G3BP1は、がん認識ペプチドとプロアポトーシスペプチドとからなる、二機能性ペプチドの標的であってもよい(Meschenmoser et al.,2013)。後期口腔扁平上皮がんは、G3BP1ノックダウンに感受性であり、アポトーシスの増加を引き起こす(Xu et al.,2013)。G3BP1は、乳がん、口腔扁平上皮がん、結腸がん、膵臓がん、肝細胞がん、および胃がんにおいて上方制御され、芳しくない患者予後、腫瘍サイズ、血管浸潤、T分類、リンパ結節転移、TNM期、および全生存期間短縮と相関する(Lo et al.,2012;Winslow et al.,2013;Min et al.,2015;Dou et al.,2016)。Yボックス結合タンパク質1は、G3BP1 mRNAの5’UTRに結合して、ストレス顆粒構築のためのG3BP1ストレス顆粒成核剤の可用性を調節する。YB-1またはG3BP1のどちらかの下方制御は、ストレス顆粒形成および腫瘍浸潤の減少をもたらす(Ward et al.,2011;Annibaldi et al.,2011;Somasekharan et al.,2015)。G3BP1は、H+-ATPアーゼの活性およびβ-F1-ATPアーゼmRNAの翻訳を制御する(Willers and Cuezva,2011)。G3BP1は、電離放射線の前後で、前骨髄球性白血病核小体と共局在化する(Liu et al.,2010)。緑茶の主要化合物である没食子酸エピガロカテキンは、G3BP1と結合することによって、肺腫瘍発生を抑制する。G3BP1発現は、ロバスタチンの影響を受ける(Klawitter et al.,2010;Shim et al.,2010)。G3BP1は、Slugを上方制御することによって、がん細胞の増殖、アポトーシス、運動性、移動、浸潤、および転移に関与する。G3BP1のノックダウンはSlug発現を減少させ、上皮マーカーE-カドヘリンを増加させる。乳がんにおけるG3BP1の上方制御は、Smadシグナル伝達経路を通じて上皮間葉転換を活性化する。G3BP1は、RasおよびNF-κBシグナル伝達、ユビキチンプロテアソーム経路、およびRNAプロセシングに関与する(French et al.,2002;Zhang et al.,2015;Dou et al.,2016)。肝細胞がんにおける強制G3BP1発現は、細胞移動を促進する(Dou et al.,2016)。
【0107】
GAR1は、p53を活性化できる(Zhang et al.,2012)。GAR1は、テロメラーゼ複合体に関与する(Zhu et al.,2004;Rashid et al.,2006;Tomlinson et al.,2008;Pigullo et al.,2009;Low and Tergaonkar,2013;Heidenreich et al.,2014)。GAR1は、細胞生存に重要である(Lubben et al.,1995)。
【0108】
ITGB4は、前立腺がん、胃がん、乳がん、口腔扁平上皮がん、および卵巣がんに関連しており、膵管腺がんにおいて上方制御されることが示された(Chen et al.,2014;Xin et al.,2014;Zubor et al.,2015;Masugi et al.,2015;Gao et al.,2015;Kawakami et al.,2015)。ITGB4(CD104とも称される)は、α6サブユニットと結合する傾向があり、食道扁平上皮がん、膀胱がん、および卵巣がんなどのいくつかの浸潤性がんの生物学において、中心的役割を果たす可能性が高い(Kwon et al.,2013;Pereira et al.,2014;Chen et al.,2014)。ITGB4の一塩基多型は、腫瘍の攻撃性および生存に影響を与えるようであり、乳がん患者にとって予後的重要性を有してもよい(Brendle et al.,2008)。
【0109】
KDM5Bは、ヒストンH3のリジン4を脱メチル化することによって特定の腫瘍抑制遺伝子を抑制できる、リジン特異的ヒストンデメチラーゼである、タンパク質JARID1Bをコードする(RefSeq,2002)。エピジェネティック因子として、KDM5Bは、p53発現を抑制することによって、ヒトOSCC、頭頸部扁上皮がん(HNSCC)、乳がん、および肺がんの増殖、移動、および浸潤を支持する(Shen et al.,2015;Tang et al.,2015a;Zhao and Liu,2015;Lin et al.,2015)。また、JARID1Bとして知られているKDM5Bは、PTEN/AKTシグナル伝達を通じて、様々な腫瘍型における上皮間葉転換を転移を促進する(Tang et al.,2015a)。
【0110】
KLHL21は肝細胞がんにおいて上方制御され、生物臨床マーカーとして使用されてもよい(Shi et al.,2016)。KLHL21は、IKKβの負の調節因子である。KLHL21発現は、マクロファージにおいて炎症促進性刺激時に下方制御される。KLHL21の過剰発現は、IKKβ活性化およびIκBα分解を阻害する(Mei et al.,2016)。KLHL21は、2つの異なる実体である胞状軟部肉腫および腎細胞がんに見られる、異常な遺伝子融合転写因子ASPSCR1-TFE3によって過剰発現される(Kobos et al.,2013)。KLHL21は、がんに関与してもよい(Martinez et al.,2010)。KLHL21は細胞質分裂に必要であり、分裂後期において染色体から紡錘体中間帯への染色体パッセンジャー複合体の移行を調節する。それはCullin3ベースのE3ユビキチンリガーゼと相互作用して、AuroraBに直接結合し、そのユビキチン化を引き起こす(Maerki et al.,2009)。KLHL21は、IKKβの標的化を通じて、TNFα-活性化NF-κBシグナル伝達を負に調節する(Mei et al.,2016)。
【0111】
KLK6は、セリンプロテアーゼのペプチダーゼS1ファミリーのカリクレインサブファミリーのメンバーである、カリクレイン関連ペプチダーゼ6をコードする。ますます多くの証拠が、多数のカリクレインが発がんに関与することを示唆し、いくつかは新規がんおよびその他の疾患のバイオマーカーとしての可能性を有する。このプロテアーゼの発現はステロイドホルモンによって調節され、複数のヒトがんにおいて、および乾癬患者由来の血清において上昇してもよい。コードされプロテアーゼは、アミロイド前駆体タンパク質およびα-シヌクレインの切断に関与してもよく、したがってそれぞれ、アルツハイマー病およびパーキンソン病におけるこのプロテアーゼの関与が示唆される。この遺伝子は、染色体19上の遺伝子クラスターに位置する(RefSeq,2002)。KLK6はp53によって誘導され、その発現は胃がんにおけるオートファジーおよび薬剤耐性を増加させた(Kim et al.,2016)。KLK6の下方制御は、良性乳腺腫の浸潤性と関連があるGNA13発現の増加に関連する(Teo et al.,2016)。KLK6は、細胞周期、MYC、MAPK、およびその他のシグナル伝達経路に影響を及ぼしてもよい、いくつかのmiRNAを上方および下方制御できる(Sidiropoulos et al.,2016)。KLK6は、転移性結腸直腸がんにおけるパニツムマブ耐性と関連があるセットに属する(Barry et al.,2016)。KLK6のは、脊髄損傷に続く軸索成長、腫瘍細胞転移、およびパーキンソン病のようなαシヌクレイン凝集病態の調節に関連する(Xi et al.,2015)。KLK6は、高度浸潤性PC3前立腺がんおよび卵巣がんにおいて過剰発現され、子宮頸の前がん状態において脱調節される(Tamir et al.,2014;Hwang and Lindholm,2015)。KLK6は、肝細胞がん、乳がん、結腸がん、胃腸がん、および星状細胞腫などの様々な実体において、バイオマーカーとして使用されてもよい(Vakrakou et al.,2014;Yu et al.,2015b;Grin et al.,2015;Schrader et al.,2015;Drucker et al.,2015;Mange et al.,2016)。KLK6は進行した漿液性卵巣がんにおける全生存に関連し、その発現は他の臨床パラメータと関連があるかもしれない(Kolin et al.,2014;Dorn et al.,2015;Yang et al.,2016a;Leung et al.,2016;Ahmed et al.,2016)。
【0112】
頭頸部扁上皮がんにおけるその発現が細胞周期進行に関連するCD34のノックダウンは、KRT1発現を上方制御する(Ettl et al.,2016)。KRT1は、プラチコジンD処理時にHepG2細胞において下方制御される(Lu et al.,2015a)。Bowens病表在性浸潤がんに由来する明細胞焦点の免疫組織化学染色は、KRT1に対して陰性である(Misago et al.,2016)。miR-944は、p53の上方制御p53およびERKシグナル伝達の障害によって、KRT1発現を誘導する(Kim et al.,2015)。KRT1発現は、扁平上皮がんの初期および後期において上方制御される(Tang et al.,2015b)。核分解は、KRT1発現を下方制御する(Naeem et al.,2015)。KRT1発現は、分化状態のマーカーであってもよい。NMP-52およびAFP発現と組み合わせて、それは肝細胞がんを検出するために使用されてもよい(Attallah et al.,2015;Bruna et al.,2017)。KRT1はドコサヘキサエン酸処理時に上方制御され、これは乳がん浸潤を軽減することが知られている(Blanckaert et al.,2015)。爪甲がんに由来する増殖中の好塩基球細胞は、KRT1を発現できなかった(Wang et al.,2015a)。 KRT1の上方制御は、Notch1受容体刺激に間接的に関連する(Vliet-Gregg et al.,2015)。S100A7は、KRT1を下方制御する(Li et al.,2015)。KRT1の発現は、口腔扁平上皮がんにおけるp21およびhsp70発現に関連する。KRT1の欠如は、細胞増殖を抑制し分化を促進する転写因子であるKlf4の欠如と相関する(Paparella et al.,2015;Frohwitter et al.,2016)。
【0113】
KRT13は、ケラチン遺伝子ファミリーのメンバーであるケラチン13をコードする。ビタミンDは、KRT13発現を変化させる(Narayanan,2006)。CK13の免疫染色は、粘液性類表皮腫の類表皮成分では陽性であり、顎下腺で発生する小管腺腫および腫瘍崩壊性がんでは陰性である(Muramatsu et al.,2003;Matsuzaka et al.,2004;doPrado et al.,2007)。α6β4インテグリンの異常な発現は、皮膚の扁平上皮がんの発生における初期の事象であるKRT13を上方制御する(Tennenbaum et al.,1996)。KRT13は、子宮頸部上皮内新生物のバイオマーカーとして使用されてもよい。KRT13の喪失は、移行性尿路上皮細胞がんにおける腫瘍のグレードおよび病期のマーカーである。KRT13発現は、皮膚がん進行のマーカーである(Slaga et al.,1995;Southgate et al.,1999;Duggan、2002;Baak et al.,2006)。KRT13発現は、口腔がん幹細胞および口腔扁平上皮がんにおいて下方制御される(Morgan and Su,1994;Sinha et al.,2013)。
【0114】
KRT14は、食道、肺、喉頭、子宮子宮頸部などの様々な扁平上皮がんにおいて、ならびに腺腫様歯原性腫瘍において、高度に発現された。しかし、それは、膀胱の小細胞がんには存在せず、肺腺がん、胃腺がん、結腸直腸腺がん、肝細胞がん、膵管腺がん、乳腺浸潤性管腺がん、甲状腺乳頭がん、および子宮類内膜腺がんでは弱かった(Xue et al.,2010;Terada、2012;Vasca et al.,2014;Hammam et al.,2014;Shruthi et al.,2014)。膀胱がんでは、KRT14発現は、低生存率と強く関連していた(Volkmer et al.,2012)。
【0115】
MCF-7乳がん細胞のエタノールへの長期曝露は、悪性腫瘍関連遺伝子であるKRT15を上方制御する(Gelfand et al.,2017)。浸潤性増殖を伴う基底細胞がんは、KRT15の負の発現を示す(Ziari et al.,2015)。KRT15は、汗腺腺腫と円柱腫を識別するために使用されてもよい(Sellheyer,2015)。KRT15は、膀胱発がんにおいて逐次上方制御される(Chuang et al.,2014)。皮膚がんにおいて下方制御されるSIRT2は、上皮性幹細胞マーカーであるKRT15発現を阻害する(Wang et al.,2014b)。KRT15は、毛嚢幹細胞マーカーである(Bongiovanni et al.,2014;Koba et al.,2015;Narisawa et al.,2015)。KRT15は、良性のものと比較して、悪性眼表面扁平上皮新生物でより強く発現される、未分化基底細胞マーカーである(Nagata et al.,2014)。球状体選択された表皮扁平上皮がんは、豊富なKRT15発現を有する(Adhikary et al.,2013)。KRT15は、尿路上皮がん腫において上方制御される(Tai et al.,2013)。頭頸部腫瘍に関連する光線性角化症のKRT15染色は症例の7%で陽性であり、腺様嚢胞がんでは36%が陽性である。染色は、限局性強皮症形態基底細胞がんおよび小嚢胞性付属器がんと比較して、線維形成性毛包上皮腫においてより高い(Sabeti et al.,2013;Evangelista and North,2015;North et al.,2015;Solus et al.,2016)。KRT15の上方制御は、非小細胞肺がんの全生存に影響を及ぼし、NSCLCの鑑別診断のためのマーカーとして使用されてもよい(Gomez-Morales et al.,2013;Boyero et al.,2013)。KRT15は、p53およびERによって調節される(Lion et al.,2013)。
【0116】
KRT16の過剰発現は、基底細胞様乳がん細胞株ならびに上皮内がんにおいて見いだされた。その他の研究者らは、非再発性エナメル上皮腫と再発性エナメル上皮腫との間で、KRT16の免疫組織化学的発現に有意差を見いださなかった(Joosse et al.,2012;Ida-Yonemochi et al.,2012;Safadi et al.,2016)。さらに、コンピュータでの分析は、転移性乳がんにおけるKRT16発現とより短い無再発生存期間との間の相関を示した(Joosse et al.,2012)。
【0117】
KRT5は、若年女性の乳がんにおいて上方制御されることが示された(Johnson et al.,2015)。KRT5は、若年女性における乳がんの芳しくない無病生存期間と、ホルモン受容体陽性乳がんを有する閉経前の患者における好ましくない臨床転帰とに、関連することが示された(Johnson et al.,2015;Sato et al.,2014)。KRT5は、乳がん細胞株HCC1937およびT47Dにおいて、腫瘍抑制因子BRCA1によって調節されることが示された(Gorski et al.,2010)。KRT5は、悪性胸膜中皮腫において脱調節されることが示された(Melaiu et al.,2015)。KRT5は、悪性中皮腫の診断中皮マーカーとして記載された(Arif and Husain,2015)。KRT5は、子宮内膜がんの進行と相関することが示された(Zhao et al.,2013)。KRT5は、疣状がんを有する患者の浸潤腫瘍領域において変異し、下方制御されることが示された(Schumann et al.,2012)。KRT5は、正常組織サンプルと比較して、結腸直腸がん生検で示差的に発現される4タンパク質パネルの一部であることが示された(Yang et al.,2012a)。4タンパク質パネルのKRT5およびその他の3タンパク質は、結腸直腸がんの治療のための新規マーカーおよび潜在的標的として記載された(Yang et al.,2012a)。KRT5は、基底細胞がんに関連しているとして記載された(Depianto et al.,2010)。KRT5は、尿路上皮がん幹細胞を同定するための候補として記載された(Hatina and Schulz,2012)。
【0118】
KRT6Aは、手術に続いて補助化学療法を受けたトリプルネガティブ乳がん患者における無遠隔転移生存期間を予測するための予後モデルとして使用され得る、7遺伝子シグネチャの一部として記載された(Park et al.,2015b)。KRT6Aは、コブウシ(Bos indicus)の角がんにおいて、および胃がんにおいて上方制御されることが示された(El-Rifai et al.,2002;Koringa et al.,2013)。KRT6Aは、骨外性粘液性軟骨肉腫の形態学的および免疫組織化学的特徴を有する外陰部肉腫の2症例において、下方制御されることが示された(Dotlic et al.,2014)。KRT6A発現は、口腔扁平上皮がんにおいて発現が変化することが示された(Chanthammachat et al.,2013)。KRT6Aは、プロトオンコジーンSrcキナーゼ活性の負の調節、および創傷修復中の皮膚ケラチノサイトの移動性と関連することが示された。これはがんなどの関連する状況において、重要であってもよい(Rotty and Coulombe,2012)。KRT6Aは、ヒトの正常様乳がんに類似する特有の乳房腫瘍モデルを生じさせ得る、乳房の二分化能前駆細胞を特徴付けることが示された(Bu et al.,2011)。KRT6Aは、肺の腺がんと扁平上皮がんを識別するために使用され得る、25遺伝子転写ネットワークシグネチャの重要な部分として記載された(Chang et al.,2011)。
【0119】
KRT6Bは、食道がん細胞株KYSE170において下方制御される遺伝子の候補であることが示された(Kan et al.,2006)。KRT6Bは、腎細胞がん、散発性角化嚢胞性歯原性腫瘍、およびコブウシ(Bos indicus)の角がんにおいて上方制御されることが示された(Koringa et al.,2013;Hu et al.,2015;Heikinheimo et al.,2007)。KRT6B機能喪失は、生体外で、notch1の発現を阻害し、腎細胞がん細胞死を誘導することが示された。したがって、KRT6Bのnotch1との相互作用は、腎細胞がんの進行に寄与すると記載された(Hu et al.,2015)。KRT6Bは、細胞株HCC1187およびHCC70において基底細胞様腫瘍関連GABRPの発現減少時に、その発現が減少する基底細胞様乳がん関連サイトケラチンとして記載された(Sizemore et al.,2014)。ERK1/2の選択的阻害もまた、KRT6Bなどの基底細胞様サイトケラチンの発現減少、および基底細胞様乳がんにおける移動の減少をもたらすことが示された(Sizemore et al.,2014)。したがって、GABRP-ERK1/2-サイトケラチン軸は、基底細胞様乳がんの移動性表現型の維持に関与する(Sizemore et al.,2014)。KRT6Bは、プロトオンコジーンSrcキナーゼ活性の負の調節、および創傷修復中の皮膚ケラチノサイトの移動性と関連することが示された。これはがんなどの関連する状況において、重要であってもよい(Rotty and Coulombe,2012)。KRT6Bは、肺の腺がんと扁平上皮がんを識別するために使用され得る、25遺伝子転写ネットワークシグネチャの重要な部分として記載された(Chang et al.,2011)。KRT6Bは、ヒト不死化口腔上皮細胞のベンゾ(a)ピレン誘導腫瘍発生中に、示差的に発現されることが示された(Li et al.,2008)。
【0120】
KRT6Cは、肺の腺がんと扁平上皮がんを識別するために使用され得る、25遺伝子転写ネットワークシグネチャの重要な部分として記載された(Chang et al.,2011)。
【0121】
KRT75は、第12染色体の長腕上にクラスター化したII型ケラチンファミリーのメンバーである、ケラチ75をコードする。コードされたタンパク質は、毛髪および爪形成において重要な役割を果たす。この遺伝子の変異は、毛髪障害である、須毛部仮性毛包炎(PFB)および成長期脱毛症候群(LAHS)と関連付けられている(RefSeq,2002)。KRT75は、親細胞株と比較して、生体内継代および再誘導前立腺細胞株において下方制御される(Sivanathan et al.,2014)。KRT75は、爪腫瘍(onychomatricoma)において発現され、それは爪床および爪峡部への分化を示唆していてもよい(Perrin et al.,2011)。KRT75は、21T乳房細胞において下方制御される(Xu et al.,2010)。KRT75発現は、プロテアソーム阻害剤とデキサメタゾンにより変化され得る(Kinyamu et al.,2008)。
【0122】
LAP3の阻害は、ファスシンおよびMMP-2/9の下方制御を通じて、卵巣がん細胞株ES-2における浸潤抑制をもたらすことが示された。したがって、LAP3は、潜在的な抗転移治療標的として機能してもよい(Wang et al.,2015b)。LAP3の高発現は、神経膠腫患者の悪性度および予後不良と相関することが示された(He et al.,2015)。LAP3は、細胞増殖、移動、および浸潤を調節することによって神経膠腫進行を促進することが示され、したがって新たな予後因子かもしれない(He et al.,2015)。LAP3をはじめとするアミノ酸代謝に関与する遺伝子のフレームシフト変異は、マイクロサテライト高不安定性胃がんおよび結腸直腸がんにおいて検出された(Oh et al.,2014)。LAP3は、肝細胞がん、食道扁平上皮がん、および前立腺がんにおいて上方制御されることが示された(Zhang et al.,2014a;Tian et al.,2014;Lexander et al.,2005)。LAP3は、細胞周期のG1/Sチェックポイントおよび進行した細胞移動を調節することによって、肝細胞がん細胞増殖を促進することが示された(Tian et al.,2014)。LAP3の発現は、肝細胞がんの予後および悪性進行と相関することがさらに示された(Tian et al.,2014)。食道扁平上皮がん細胞株ECA109におけるLAP3のサイレンシングは、細胞増殖およびコロニー形成を低減することが示された一方で、LAP3ノックダウンは、細胞周期停止をもたらした(Zhang et al.,2014a)。食道扁平上皮がん細胞株TE1におけるLAP3の過剰発現は、細胞増殖および浸潤性を支援することが示された(Zhang et al.,2014a)。したがって、LAP3は、食道扁平上皮がんの悪性進行における役割を果たすことが示された(Zhang et al.,2014a)。
【0123】
高レベルのLGALS7は、がんの浸潤性、増殖、および転移の増加を伴う、乳がんにおける侵襲性表現型に関連する(Grosset et al.,2016)。LGALS7が、結腸直腸がん患者の血清中で示差的に発現されるのに対して、CRC腫瘍の免疫組織化学染色は、LGALS7について陰性である(Lim et al.,2016)。LGALS7は、前立腺がん、子宮頸がん、および外陰扁平上皮がんにおいて下方制御され、進行した臨床病期、低分化、および局所リンパ節転移と相関する。再発現は、アポトーシスの増加をもたらす。プロモーターメチル化の増加は、VSCCにおける進行した臨床病期、低分化、および局所リンパ節転移に関連する(Labrie et al.,2015;Jiang et al.,2015;Higareda-Almaraz et al.,2016)。細胞質発現LGALS7はp53を阻害し、乳がんにおける化学療法抵抗性を増加させる(Grosset et al.,2014)。LGALS7は正常な卵巣組織では発現されず、上皮性卵巣がんで発現される。発現は、高悪性度および転移性腫瘍においてより高頻であり、全生存期間と相関する。LGALS7発現は、変異体p53によって誘導される(Kim et al.,2013;Labrie et al.,2014)。LGALS7は、転移性皮膚黒色腫のバイオマーカーとして使用されてもよい。これは、頭頸部扁平上皮がんおよび基底細胞がんにおける臨床パラメータとも相関する(Timar et al.,2010;Cada et al.,2009)。LGALS7は、乳がん発生率に関連する(Tang et al.,2008)。LGALS7発現はp53によって誘導され得て、アポトーシス促進性に作用できる(Ueda et al.,2004)。
【0124】
LGALS7Bは、HER2陽性乳がんの侵襲性を増強する(Grosset et al.,2016)。LGALS7Bは、アポトーシス、組織形態形成、代謝、輸送、ケモカイン活性、および免疫応答に関与する分子を調節する(Higareda-Almaraz et al.,2016)。LGALS7Bは、子宮頸がんにおいて下方制御される。低いGal-1発現に伴う高いLGALS7B発現は、予後の改善と関連がある(Higareda-Almaraz et al.,2016)。LGALS7Bは、外陰扁平上皮がんにおいて過剰メチル化される(Jiang et al.,2015)。前立腺がんにおけるLGALS7Bの再発現は、エトポシドおよびシスプラチンに対する化学感受性を増強する(Labrie et al.,2015)。LGALS7Bは、外陰扁平上皮がん、前立腺がん、および結腸直腸がんにおいて下方制御される。LGALS7Bの下方制御は、進行した臨床病期、低い腫瘍分化、および局所リンパ節転移に関連する(Labrie et al.,2015;Lim et al.,2016;Jiang et al.,2015)。細胞質ゾルLGALS7Bはdox誘発性PARP-1切断を阻害し、乳がんにおけるp53活性化の抑制と、p21およびCDKN1A発現の減少をもたらす(Grosset et al.,2014)。LGALS7Bはアポトーシスを上方制御し、IL-2およびIFN-γ発現を阻害する(Yamaguchi et al.,2013)。LGALS7Bは卵巣がんで過剰発現され、高齢、高死亡率、腫瘍体積の増加、および低生存率に関連する(Kim et al.,2013;Labrie et al.,2014)。LGALS7Bの免疫組織化学的染色は、唾液腺腫瘍タイプを識別するために使用されてもよい(Remmelink et al.,2011)。LGALS7Bは、頭頸部基底細胞がんにおいて下方制御される。頭頸部扁上皮がんでは、LGALS7Bは異なる発現パターンを示し、異なる発現レベルは角質化および分化と相関する(Cada et al.,2009)。
【0125】
MALLは、肺がんサブタイプを分類するために使用されてもよい(Watanabe et al.,2010)。MALLは、前立腺がんにおける転移抑制遺伝子であってもよい(Yi et al.,2009)。MALL mRNAおよびタンパク質の発現は、結腸がん患者では低下し、血管浸潤、疾患再発、および転移または死亡に関連する。MALLの喪失は、全生存期間および無病生存期間の減少に関連する。MALLの過剰発現は細胞増殖を抑制し、細胞株における移動を阻害する(Fan et al.,2011;Kim et al.,2008a;Wang et al.,2016c)。MALLは、前立腺がん細胞株によって分泌されるプロスタソーム上に見いだされ得て、そこでカベオリン-1と相互作用する(Llorente et al.,2004)。MALLは、非小細胞肺がんおよび頸部扁平上皮細胞がんにおいて、下方制御される。それは、神経膠腫細胞において示差的に発現される(Ai et al.,2003;Hatta et al.,2004;Kettunen et al.,2004)。
【0126】
MCM4の発現は、食道がんをはじめとするいくつかの実体における、生存率低下およびがん進行と相関する膜貫通糖タンパク質である、上方制御された炭酸脱水酵素IXに関連している(Huber et al.,2015)。Has-miR-615-3pは、MCM4を調節することにより、鼻咽頭がんに関与してもよい(Chen et al.,2015)。MCM4は、膀胱がんの発生において役割を果たすかもしれない(Zekri et al.,2015)。p53の機能獲得型変異は、乳がんにおけるMCM4の発現を増加させる(Polotskaia et al.,2015)。ヘリカーゼ活性の低下を示すヒト皮膚がんにおいて、MCM4の変異がある(Ishimi and Irie,2015)。MCM4の過剰発現単独では、乳がんにおけるより短い生存と弱く関連するだけである。MCM複合体の6つの部分全ての過剰発現は、より短い生存と強く関連している(Kwok et al.,2015)。MCM4は、肺腺がんおよび喉頭扁平上皮がんにおいて示差的に発現される(Lian et al.,2013;Zhang et al.,2014b)。MCM4は、子宮頸がんにおいて有意に過剰発現される(Das et al.,2013;Das et al.,2015)。MCM4は、結腸直腸がんのバイオマーカーとして使用されてもよい(Fijneman et al.,2012)。
【0127】
アンチザイム阻害剤は、ODC1のユビキチン非依存性分解を阻害してポリアミン形成の加速をもたらし、それは胃がん、乳がん、肝細胞がん、および食道扁平上皮がんの発症を引き起こす(Qiu et al.,2016)。ピロキシカムは、非黒色腫皮膚発がんに関与するODC1依存性ポリアミン産生を阻害する(Campione et al.,2015)。ODC1は、細胞分裂調節、分化、熟成、およびアポトーシスに重要なプトレシンを調節する(Ramani et al.,2014;Zdrojewicz and Lachowski,2014)。ODC1は、MycおよびMYCN標的遺伝子であり、高いODC1発現は、神経芽腫における無再発生存率の低下に関連する(Funakoshi-Tago、2012;Saletta et al.,2014)。ブロッキングODC1は、結腸直腸がんの化学予防に使用されてもよい(Zhou et al.,2012)。
【0128】
PARP9(ARTD9としても知られている)は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼファミリーメンバー9をコードし、染色体3q21.1上に位置する(RefSeq,2002)。DTX3LはARTD8およびPARP9と複合体形成し、腫瘍抑制因子IRF1を阻害することによって、転移性前立腺がん細胞の増殖、化学療法抵抗性、および生存を促進する(Bachmann et al.,2014)。PARP9は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるIFN-γ-STAT1-IRF1-p53シグナル伝達を阻害し、プロトオンコジーンIRF2およびBCL-6の発現を活性化する。これは、DLBCLの増殖、生存、および化学療法抵抗性をもたらす(Camicia et al.,2013)。PARP9発現は、IFN-γ誘導性である(Juszczynski et al.,2006)。PARP9は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫における薬物標的であってもよい。PARP9は、高リスクの化学療法抵抗性DLBCLにおける発がん性生存因子である(Bachmann et al.,2014;Aguiar et al.,2005;Camicia et al.,2015)。
【0129】
PKP1は、前立腺がんおよび食道腺がんにおいて下方制御されることが示された(Kaz et al.,2012;Yang et al.,2015)。非新生物、前立腺BPH-1細胞株におけるPKP1のノックダウンは、アポトーシスの減少および前立腺がん関連SPOCK1遺伝子などの遺伝子の示差的発現の低下をもたらした(Yang et al.,2015)。集合的に、PKP1およびSPOCK1の変化した発現は、前立腺がんにおける頻繁かつ重大な事象であり、PKP1は、腫瘍抑制機能を有することが示唆される(Yang et al.,2015)。PKP1の発現低下は、口腔扁平上皮がんにおける遠隔転移の発生までのより短い時間に、有意に関連することが示された(Harris et al.,2015)。プロモーターメチル化を通じたPKP1の喪失は、バレット食道がんから食道腺がんへの進行に関連することが記載された(Kaz et al.,2012)。PKP1は、非小細胞肺がんにおいて上方制御されることが示され、扁平上皮がんサンプルを識別するための良好なマーカーであってもよい(Sanchez-Palencia et al.,2011)。PKP1は、高分化型の脂肪肉腫細胞株GOT3において上方制御されることが示された(Persson et al.,2008)。PKP1の発現低下は、頭頸部扁上皮がん細胞における運動性の増加を促進することが記載された(Sobolik-Delmaire et al.,2007)。PKP1喪失は、子宮頸部発がんに関連することが示された(Schmitt-Graeff et al.,2007)。PKP1は、口腔咽頭の扁平上皮がんを有する患者における局所再発または転移ならびに低生存率に関連することが示された(Papagerakis et al.,2003)。
【0130】
PLECは、結腸直腸腺がん、頭頸部扁平上皮がん、および膵臓がんにおいて過剰発現される(Lee et al.,2004;Katada et al.,2012;Bausch et al.,2011)。
【0131】
ペリプラキンは、T24CDDPR膀胱がん細胞において減少する(Taoka et al.,2015)。PPL染色は、健常組織と比較して膀胱がんでより低いPPLの喪失は、病理学的病期と生存と関連がある(Matsumoto et al.,2014)。PPLは、上皮様腫瘍細胞と相関する(Kohn et al.,2014)。EVPL、ペリプラキン、およびインボルクリン陰性マウスは、皮膚がん耐性表現型を示す(Cipolat et al.,2014;Natsuga et al.,2015;Natsuga et al.,2016)。PPLは、トリプルネガティブ乳がんにおいて高度に発現される(Choi et al.,2013)。ペリプラキンは過剰メチル化のために、食道扁平上皮がんにおいて下方制御される。ESCCにおけるPPLノックダウンは、細胞運動および付着の減少に関連する(Otsubo et al.,2015;Tonoike et al.,2011)。腫瘍随伴性天疱瘡は、PPLに対する自己抗体を示す(Yong and Tey,2013;Li et al.,2009;Probst et al.,2009;Zimmermann et al.,2010)。
【0132】
PRKDCは、子宮内膜症関連卵巣がんおよび乳がんにおいて、頻繁に変異する遺伝子である(Er et al.,2016;Wheler et al.,2015)。PRKDCは、結腸直腸がん中の正常組織と比較して、がん組織において上方制御される。高いPRKDC発現を有する患者は、より芳しくない全生存期間を示す(Sun et al.,2016)。
【0133】
PRNPは、膜グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型糖タンパク質をコードするが、これはロッド様構造に凝集する傾向があり、5つのタンデムオクタペプチド反復配列の非常に不安定な領域を含有する。この遺伝子の反復領域における変異ならびに他の箇所における変異は、様々なプリオン病と関連付けられている。この遺伝子について、より小さな構造的に無関係のタンパク質であるAltPrpをコードする、重複するオープンリーディングフレームが見いだされている(RefSeq,2002)。その生理学的役割は完全には定義されていないが、PRNPは、神経幹細胞の自己再生、多分化能遺伝子発現、増殖、および分化に関与する。PNRPは、神経膠芽腫、乳がん、前立腺がんおよび結腸直腸がんなどのヒト腫瘍において役割を果たす(Yang et al.,2016b;Corsaro et al.,2016)。結腸直腸がんでは、PRNPが上皮間葉転換に寄与することが示されている(Du et al.,2013)。MGr1-Ag/37LRPと組み合わされたPNRPの過剰発現は、胃がんにおける予後不良を予測する(Zhou et al.,2014)。PNRP発現は、細胞の酸化還元状態に関連しており、抗酸化防御に関与していてもよい。サイレンシングPNRPは、乳がんおよび結腸がんにおいて、がん細胞を抗がん剤に感作させることが示されている(Sauer et al.,1999;Meslin et al.,2007;Park et al.,2015a;Yun et al.,2016)。
【0134】
PROM2は、肺腺がんにおいて特異的に上方制御される(Bao et al.,2016)。PROM2は、弾性線維腫およびヒト前立腺がんにおいて発現される。PROM2は、低悪性度前立腺がんにおいてより高度に発現され、高悪性度前立腺がんにおいてより低く発現される(Yamazaki、2007;Zhang et al.,2002)。PROM2は、結腸がんにおいて下方制御される(Deng et al.,2013)。PROM2発現は、色素嫌性腎細胞がんおよびオンコサイトーマの間で異なるために使用されてもよい(Rohan et al.,2006)。
【0135】
RIPK4は、皮膚の扁平上皮がんにおいて下方制御されることが示された(Poligone et al.,2015)。RIPK4は、舌状扁平上皮がん細胞株Tca-8113における移動および浸潤、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の生存率、および子宮頸部扁平上皮がんにおける全生存期間ならびに無病生存期間、進行、および予後不良に関連している(Wang et al.,2014c;Liu et al.,2015;Kim et al.,2008b)。RIPK4は、家族性膵臓がんに関連している(Lucito et al.,2007)。RIPK4は、子宮頸部扁平上皮がんの潜在的な診断バイオマーカーおよび独立予後バイオマーカーであり、舌がんの予後および治療のためのバイオマーカーであり得る(Wang et al.,2014c;Liu et al.,2015)。
【0136】
RNASE7発現は、皮膚がんにおいて徐々に減少する(Scola et al.,2012)。RNASE7発現は、いくつかの白血病誘発性タンパク質チロシンキナーゼによって影響を受ける(Pierce et al.,2008)。
【0137】
RPL8発現は、MYC誘発性核抗原および核小体性タンパク質66によって影響され得る(Chowdhury et al.,2014)。RPL8は、骨肉腫に関与してもよい(Sun et al.,2015a;Yang and Zhang,2013)。RPL8は、MYCによって活性化されるNO-66によって調節される(Ge et al.,2012)。RPL8の変異は、Diamond-Blackfan貧血と関連がある(Gazda et al.,2012)。RPL8発現は、化学療法応答と関連があってもよい(Salas et al.,2009)。RPL8は、肝細胞がんにおいて調節不全である(Liu et al.,2007)。RPL8のMHCII依存性発現は、黒色腫に見いだされ得る(Swoboda et al.,2007)。
【0138】
SERPINB5は、乳がん、肺がん、頭頸部がん、口腔がん、前立腺がんなどの多数のがん型の診断のための有益な分子マーカー、および予測因子の双方である。(Marioni et al.,2009;Lonardo et al.,2010;Sager et al.,1996;Sheng、2004)。SERPINB5はHDAC1活性の内因性調節因子の役割を果たし、p53腫瘍抑制因子経路と相互作用する(Maass et al.,2000;Kaplun et al.,2012)。
【0139】
SLC25A3は、慢性骨髄性白血病において脱調節される(Oehler et al.,2009)。SLC25A3の枯渇は、BAXのストレス誘発性ミトコンドリア標的化を無効にする(Buttner et al.,2011)。
【0140】
SLC6A11発現は、パクリタキセルで治療されたがん患者において観察され得る現象である、パクリタキセル誘発性神経障害性疼痛を有するラットにおいて減少する(Yadav et al.,2015)。ALAおよびそのメチルエステルMALは、皮膚がんの光線力学療法で使用されるプロドラッグである。それらの取り込みは、SLC6A11によって媒介される(Novak et al.,2011;Schulten et al.,2012;Baglo et al.,2013)。バルプロ酸ナトリウムによる神経膠腫細胞の長期治療は、SLC6A11 mRNA発現を減少させる(Gao et al.,2003)。
【0141】
SLC6A15は、過剰メチル化され、それによって結腸直腸がんにおいて下方制御され、大便に基づくアッセイのための候補バイオマーカーでであってもよい(Kim et al.,2011;Mitchell et al.,2014)。
【0142】
SLC7A1は、急性骨髄性白血病芽球において構成的に発現される。これらの芽球はアルギニン再利用経路酵素の欠乏を示し、アルギニン蓄積および細胞増殖および生存をもたらす(Mussai et al.,2015)。SLC7A1は結腸直腸がんにおいて過剰発現され、アルギニン蓄積および細胞増殖をもたらす、。第13染色体遺伝子の過剰発現は、CRCにおいて極めて一般的である(Camps et al.,2013;Lu et al.,2013)。SLC7A1は、マクロファージ分化のためのマーカーとして使用されてもよい。その発現は、THP1単球分化の誘導中に増加する(Barilli et al.,2011)。MCF-7乳がん細胞株の増殖は、L-アルギニンに依存する。それはSLC7A1を発現し、SLC7A1のノックダウンは、アルギニン取り込みの低下、細胞生存の低下、およびアポトーシスの増加をもたらす(Abdelmagid et al.,2011)。SLC7A1の発現は、多くのがんで発現されるヘムオキシゲナーゼ-1の発現と強く相関し、腫瘍の増殖と生存を促進する(Tauber et al.,2010)。SLC7A1は、肝細胞がんにおいて下方制御される肝臓特異的miR-122の直接の標的である。miR-122の下方制御は、SLC7A1上方制御および細胞内アルギニンレベル増大をもたらす。この経路はまた、結腸直腸がん由来の肝転移の重要な機序である(Kedde and Agami,2008;Iino et al.,2013;Kishikawa et al.,2015)。タンパク質キナーゼCの活性化は、SLC7A1内部移行をもたらす。ストレスは、SLC7A1の示差的発現をもたらす(Kakuda et al.,1998;Rotmann et al.,2006)。
【0143】
SUDS3の喪失は、細胞形態の変化と細胞移動の増加をもたらす(Smith et al.,2012)。SUDS3は、胸腺細胞分化に関与する(Lee et al.,2012)。SUDS3は、抗腫瘍効果を有してもよい(Ramakrishna et al.,2012)。USP17はSUDS3を脱ユビキチン化し、がんのSUDS3関連HDAC活性を変化させる(Ramakrishna et al.,2011)。SUDS3は、有糸分裂に関与する(Pondugula et al.,2009)。SUDS3は、乳がんで発現される(Silveira et al.,2009)。SUDS3は染色体分離を制御し、p53と相互作用し得る(David et al.,2006)。
【0144】
TENM2は、月経開始年齢に関与するかもしれない。早期AAMは、II型糖尿病、乳がんおよび卵巣がん、および心血管疾患に関連し、後期AAMは、低骨塩密度および心理学的障害に関連する(Yermachenko and Dvornyk,2016)。高度に汚染された地域に住む肺がん患者には、DOCK2-TENM2遺伝子融合転写物がある(Yu et al.,2015a)。TENM2は、大多数の悪性中皮腫細胞で発現される(Ziegler et al.,2012)。TENM2は、食道扁平上皮がんにおいて下方制御されてもよい(Kan et al.,2006)。
【0145】
II期の結腸がんにおけるTGM5の局所的欠失が、この実体の駆動機構であってもよい(Brosens et al.,2010)。非小細胞肺がんに現れるTGM5変異は、喫煙者と非喫煙者の間で差を示さない(YongjunZhang et al.,2013;Broderick et al.,2009;Rafnar et al.,2011;Choi et al.,2016)。前立腺がんにおけるTGFBR3の喪失もまた、TGM5を下方制御する(Sharifi et al.,2007)。
【0146】
XIRP1は、基底細胞様乳がんの転移において変異する(Hoadley et al.,2016)。XIRP1プロモーターモチーフ遺伝子シグネチャは、ER+HER2-乳がんと比較して、トリプルネガティブ乳がんに豊富である(Willis et al.,2015)。XIRP1はビタミンC治療時に上方制御され、それはがんの細胞増殖もまた減少させる(Marshall et al.,2012;Nagappan et al.,2013)。XIRP1は頭頸部扁上皮がんにおいて変異し、腫瘍抑制遺伝子であってもよい(Lee et al.,2010)。XIRP1は、酸化的ストレス関連遺伝子である(Baluchamy et al.,2010)。
【0147】
ZBED6はIGF2の転写リプレッサーであり、それは結腸直腸がんにおいて過剰発現され、細胞増殖を促進する。6ZBED6のノックダウンは細胞周期に影響を及ぼし、RKO細胞株における細胞増殖の増強と、HCT116細胞における細胞増殖の減少をもたらす。ZBED6は、全て結腸直腸発がんに関与する、Wnt、Hippo、TGF-β、EGFR、およびPI3Kシグナル伝達に関与する、いくつかの遺伝子の転写リプレッサーである(Markljung et al.,2009;Andersson,2009;Andersson et al.,2010;Huang et al.,2014;Jiang et al.,2014;Clark et al.,2015;Akhtar et al.,2015)。
【発明を実施するための形態】
【0148】
免疫応答の刺激は、宿主免疫系によって外来性として認識された抗原の存在に依存する。腫瘍関連抗原の存在の発見は、宿主の免疫系を用いて腫瘍増殖に介入する可能性を高めた。免疫系の体液性および細胞性アームの双方を活用する様々な機構が、がん免疫療法のために目下探求されている。
【0149】
細胞性免疫応答の特異的要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊できる。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からのT細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソーム産物(DRIPS)に由来する、通常は8~10アミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0150】
「T細胞応答」という用語は、生体外または生体内でペプチドによって誘導される、エフェクター機能の特異的増殖および活性化を意味する。MHCクラスI拘束性細胞傷害性T細胞では、エフェクター機能は、ペプチドパルスされた、ペプチド前駆体パルスされた、または天然にペプチドを提示する、標的細胞の溶解;好ましくはペプチドによって誘導されるインターフェロン-γ、TNF-α、またはIL-2であるサイトカインの分泌;好ましくはペプチドによって誘導されるグランザイムまたはパーフォリンであるエフェクター分子の分泌;または脱顆粒であってもよい。
【0151】
「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。ペプチドは、好ましくは9アミノ酸長であるが、8アミノ酸長程度に短くあり得て、10、11、12、13または14以上に長くあり得て、MHCクラスIIペプチド(本発明のペプチドの伸長された変異型)の場合、それらは15、16、17、18、19または20アミノ酸長以上に長くあり得る。
【0152】
さらに「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基の塩を含むものとする。好ましくは、塩は、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などの、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。ペプチドは生体内で塩ではないので、本発明によるペプチドの塩は、それらの生体内の状態がペプチドと実質的に異なることに留意すべきである。
【0153】
「ペプチド」という用語は、「オリゴペプチド」もまた含むものとする。「オリゴペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。オリゴペプチドの長さは、その中で正しいエピトープまたはエピトープ群が保持されれば、本発明にとって重要でない。オリゴペプチドは、典型的に、約30アミノ酸残基長未満であり、約15アミノ酸長を超える。
【0154】
「ポリペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を指す。正しいエピトープが保持されれば、ポリペプチドの長さは本発明にとって重要でない。ペプチドまたはオリゴペプチドという用語とは対照的に、ポリペプチドという用語は、約30を超えるアミノ酸残基を含有する分子を指すことが意図される。
【0155】
ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはこのような分子をコードするポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導できれば「免疫原性」である(したがって本発明における「免疫原」である)。本発明では、免疫原性は、より具体的には、T細胞応答を誘導する能力と定義される。したがって「免疫原」は、免疫応答を誘導できる分子であり、本発明では、T細胞応答を誘導できる分子である。別の態様では、免疫原は、それに対する特異的抗体またはTCRを生じさせるのに使用される、ペプチド、ペプチドとMHCの複合体、オリゴペプチド、および/またはタンパク質であり得る。
【0156】
クラスI T細胞「エピトープ」は、クラスI MHC受容体に結合している短いペプチドを必要とし、三成分複合体(MHCクラスIα鎖、β-2-ミクログロブリン、およびペプチド)を形成し、それは、適切な親和性でMHC/ペプチド複合体に結合する適合T細胞受容体を保有するT細胞によって、認識され得る。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、典型的に8~14アミノ酸長であり、最も典型的には9アミノ酸長である。
【0157】
ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒト白血球抗原(HLA)ともまた称されるヒトのMHC分子)をコードする、3つの異なる遺伝子座、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cがある。HLA-A01、HLA-A02、およびHLA-B07は、これらの遺伝子座から発現され得る、異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0158】
表5:HLA-A*02およびHLA-A*24の発現頻度F、および最も高頻度のHLA-DR血清型。頻度は、ハーディ・ワインベルグの式F=1 - (1-Gf)2を用いて、Mori et al. (Mori et al., 1997)から適応された米国人集団内のハプロタイプ頻度Gfから推定された。連鎖不均衡のために、A*02またはA*24と特定のHLA-DR対立遺伝子との組み合わせは、それらの単一頻度から予測されるよりも、豊富でありまたは低頻度であるかもしれない。詳細については、Chanock et al. (Chanock et al, 2004)を参照されたい。
【表5-1】
【表5-2】
【0159】
本発明のペプチドは、好ましくは、本明細書に記載される本発明のワクチンに包含される場合、A02に結合する。ワクチンはまた、汎結合MHCクラスIIペプチドを含んでもよい。したがって、本発明のワクチンを使用して、A02陽性の患者においてがんを治療し得る一方で、これらのペプチドの汎結合特性のために、MHCクラスIIアロタイプを選択する必要はない。
【0160】
本発明のA02ペプチドが、例えばA24などの別の対立遺伝子に結合するペプチドと組み合わされた場合、MHCクラスI対立遺伝子のいずれか単独による対処と比較して、任意の患者集団のより高い割合を治療し得る。大多数の集団では、対立遺伝子のいずれか単独によって、50%未満の患者が対処され得た一方で、HLA-A24およびHLA-A02エピトープを含んでなるワクチンは、任意の妥当な集団で、少なくとも60%の患者を治療し得る。具体的には、以下の様々な地域において、これらの対立遺伝子の少なくとも1つが、以下の百分率の患者で陽性である:米国61%、西欧62%、中国75%、韓国77%、日本86%(www.allelefrequencies.netから計算された)。
【0161】
好ましい実施形態では、「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロ重合体を指す。
【0162】
特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本発明のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をエンコードするDNA断片は、cDNAフラグメントと短いオリゴヌクレオチドリンカーから構築され、またはひと続きのオリゴヌクレオチドから構築されて、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる、組換え転写単位で発現できる合成遺伝子が提供される。
【0163】
本明細書の用法では「ペプチドをコーディング(またはコード)するヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの生産に有用な樹状細胞または別の細胞株によって発現される生体系と適合性である、人工(人造)開始および停止コドンを含むペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0164】
本明細書の用法では、核酸配列への言及は、一本鎖および二本鎖の核酸の双方を含む。したがって、例えば、特異的配列は、文脈上明らかに別の意味が示唆されない限り、このような配列の一本鎖DNA、このような配列とその補体との二本鎖(二本鎖DNA)、およびこのような配列の補体を指す。
【0165】
「コード領域」という用語は、その天然ゲノム環境内で、遺伝子の発現産物を天然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち、遺伝子の天然発現産物を生体内でコードする領域を指す。
【0166】
コード領域は、非変異(「正常」)、変異または改変遺伝子に由来し得て、またはDNA合成技術の当業者に周知の方法を使用して実験室で完全に合成された、DNA配列または遺伝子にさえ由来し得る。
【0167】
「発現産物」という用語は、遺伝子の、そして遺伝コード縮重に起因する同等物をコードし、したがって同一アミノ酸をコードする任意の核酸配列の、天然翻訳産物である、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0168】
コード配列に言及する場合、「断片」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。
【0169】
「DNAセグメント」という用語は、別々の断片の形態の、またはより大型のDNAコンストラクトの構成要素としての、DNAポリマーを指し、それは、実質的に純粋な、すなわち、混入内因性物質を含まない形態で、例えばクローニングベクターを使用した標準生化学的方法によって、セグメントおよびその構成ヌクレオチド配列が、同定、操作、および回収できる量または濃度で、少なくとも1回単離されたDNAに由来する。このようなセグメントは、典型的に真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列またはイントロンによって中断されていない、読み取り枠の形態で提供される。非翻訳DNA配列は、それがコード領域の操作または発現を妨げない、読み取り枠下流に存在してもよい。
【0170】
「プライマー」という用語は、短い核酸配列を意味し、それはDNAの1本鎖と対合し得て、DNAポリメラーゼがそこでデオキシリボヌクレオチド鎖合成を開始する、遊離3’-OH末端を提供する。
【0171】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼ結合に関与する、DNAの領域を意味する。
【0172】
「単離」という用語は、物質が、その元の環境(例えば、それが天然起源であれば天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然システムで共存する物質の一部または全部から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得て、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり得るが、このようなベクターまたは組成物がその天然環境の一部でないと言う意味では、なおも単離されている。
【0173】
本発明によって開示されるポリヌクレオチド、および組換えまたは免疫原性ポリペプチドは、「精製」形態であってもよい。「精製」という用語は、完全に純粋である必要はなく;むしろ、それは相対的定義であることが意図され、これらの用語が当業者によって理解されるように、高度に精製された調製物、または部分的にのみ精製された調製物を含み得る。例えば、cDNAライブラリーから単離された個々のクローンは、電気泳動的に均一に、従来法で精製されている。少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁までの、出発原料または天然物質の精製が明示的に検討される。さらに、重量基準で、好ましくは99.999%、または少なくとも99.99%または99.9%;さらに望ましくは99%以上の純度を有する、特許請求されるポリペプチドが明示的に包含される。
【0174】
本発明によって開示される核酸およびポリペプチド発現産物、ならびにこのような核酸および/またはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは、「富化形態」であってもよい。本明細書の用法では、「富化」という用語は、物質濃度が、(例えば)その天然濃度の少なくとも約2、5、10、100、または1000倍であることを意味し、有利には重量基準で0.01%、好ましくは重量基準で少なくとも約0.1%である。重量基準で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化調製物もまた、検討される。本発明を構成する、配列、コンストラクト、ベクター、クローン、およびその他の物質は、有利には、富化または単離形態であり得る。「活性断片」という用語は、通常は、単独で、または任意選択的に適切なアジュバントと共に、またはベクター中で、例えば、ウサギまたはマウスなどのそしてまたヒトをはじめとする哺乳類などの動物に投与されると免疫応答を生じる(すなわち、免疫原性を有する)ペプチド、ポリペプチドまたは核酸配列の断片を意味し、このような免疫応答は、ヒトなどのレシピエント動物内でT細胞応答を刺激する形態を取る。代案としては、「活性断片」はまた、生体外T細胞応答を誘導するのに使用されてもよい。
【0175】
本明細書の用法では、ポリペプチドとの関連で使用される場合、「部分」、「セグメント」、および「断片」という用語は、アミノ酸残基などの連続する残基の配列を指し、その配列はより大型の配列のサブセットを形成する。例えば、ポリペプチドが、トリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的エンドペプチダーゼのいずれかによって処理されれば、このような処理から得られるオリゴペプチドは、出発ポリペプチドの部分、セグメントまたは断片に相当するであろう。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、これらの用語は、いずれかのエンドヌクレアーゼによる前記ポリヌクレオチドの処理によって生じる生成物を指す。
【0176】
本発明によると、配列に言及する場合、「同一性百分率」または「パーセント同一」という用語は、比較される配列(「比較配列」)と、記載されまたは特許請求される配列(「参照配列」)とのアライメント後に、配列が、特許請求されまたは記載される配列と比較されることを意味する。次に同一性百分率は、次式に従って判定される:
同一性百分率=100[1-(C/R)]
式中、Cは、参照配列と比較される配列との間のアライメント長にわたる、参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列塩基またはアミノ酸と異なる、参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸が差異を構成して、
(iiii)アライメントは、整合配列の1位から開始しなくてはならず;
Rは、比較配列とのアライメント長にわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に生じる任意のギャップもまた、塩基またはアミノ酸として数えられる。
【0177】
比較配列と、それに対して同一性百分率が上のように計算される参照配列との間に、特定の最小同一性百分率とほぼ同じまたはそれを上回るアライメントが存在すれば、その中に、上記のように計算された同一性百分率が特定の同一性百分率未満であるアライメントが存在したとしても、比較配列は、参照配列との特定の最小同一性百分率を有する。
【0178】
したがって上述したように、本発明は、配列番号1~配列番号91、または配列番号1~配列番号91と88%相同的であるその変異型、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異型からなる群から選択される配列を含んでなる、ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子または前記ペプチドの伸長バージョンをクラスIIに結合する能力を有する。
【0179】
本発明では、「相同的」という用語は、2つのアミノ酸配列、すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度を指す(上の同一性百分率を参照されたい)。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり、最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することで判定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを使用してアライメントを作成することで、計算され得る。一般に利用できる配列解析ソフトウェア、より具体的には、Vector NTI、GENETYXまたはその他のツールが、公共データベースによって提供される。
【0180】
当業者は、特定のペプチドの変異型によって誘導されるT細胞が、ペプチドそれ自体と交差反応できるかどうかを評価できるであろう(Appay et al.,2006;Colombetti et al.,2006;Fong et al.,2001;Zaremba et al.,1997)。
【0181】
所与のアミノ酸配列の「変異型」によって、本発明者らは、ペプチドが、配列番号1~配列番号91からなる所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様に、HLA分子となおも結合できるように、(例えば、それらを別の天然アミノ酸残基の側鎖で、またはその他の側鎖で置換することにより)例えば、アミノ酸の1つまたは2つの残基の側鎖が変化することを意味する。例えば、ペプチドは、それがHLA-A02または-DRなどの適切なMHC分子の結合溝と相互作用して結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持するように修飾されてもよく、このようにしてそれは、活性化T細胞のTCRに結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持する。
【0182】
これらのT細胞は、引き続いて細胞と交差反応して、本発明の態様で定義される同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を殺滅し得る。学術文献およびデータベース(Rammensee et al.,1999;Godkin et al.,1997)から演繹され得るように、HLA結合ペプチドの特定の位置は、典型的にアンカー残基であり、結合溝を構成するポリペプチド鎖の極性、電気物理的、疎水性、および空間特性によって画定されるHLA受容体の結合モチーフと適合する、コア配列を形成する。したがって、当業者は、既知のアンカー残基を保つことで、配列番号1~配列番号91に記載されるアミノ酸配列を修飾でき、このような変異型がMHCクラスIまたはII分子に結合する能力を維持するかどうかを判定できるであろう。本発明の変異型は、活性化T細胞のTCRに結合する能力を維持し、それは引き続いて、本発明の態様で定義されるような同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞と交差反応して、それを殺滅し得る。
【0183】
本明細書で開示される元の(未修飾)ペプチドは、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、おそらくは選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。好ましくはこれらの置換は、アミノ酸鎖の末端に位置する。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物との間のサイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。
【0184】
保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグループの1つの中の交換として定義される:グループ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グループ2-極性の負に帯電した残基とそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グループ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グループ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグループ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0185】
より保存的でない置換は、アラニンのイソロイシン残基による置換などの、類似した特徴を有するが、サイズがいくらか異なる別のアミノ酸による置換を伴うかもしれない。高度に非保存的な置換は、極性アミノ酸の、または塩基性アミノ酸の酸性アミノ酸による置換を伴うかもしれない。しかし化学効果は完全に予測可能でなく、過激な置換は単純な化学的原理からは予測できない偶然の効果を生じさせる可能性があるので、このような「過激な」置換は、潜在的に無効であるとして却下され得ない。
【0186】
もちろんこのような置換には、通常のL-アミノ酸以外の構造体が関与してもよい。したがってD-アミノ酸が、本発明の抗原性ペプチドに通常見いだされるL-アミノ酸を置換するかもしれず、依然として本明細書の開示に包含される。さらに、非標準アミノ酸(すなわち、一般的な天然タンパク質新生アミノ酸以外)もまた置換目的で使用して、本発明による免疫原および免疫原性ポリペプチドが製造されてもよい
【0187】
2つ以上の位置における置換が、以下に定義されるように実質的に同等のまたはそれを超える抗原活性のあるペプチドをもたらすことが判明した場合、これらの置換の組み合わせを試験して、置換の組み合わせが、ペプチドの抗原性に相加または相乗効果をもたらすかどうかが判定される。最大でも、ペプチド内の4つを超える位置が、同時に置換されることはない。
【0188】
本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドは、非修飾ペプチドと比較すると、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が実質的に変化したり悪影響を受けたりすることなく交換される、1つまたは2つの非アンカーアミノ酸を有し得る(アンカーモチーフについては下記を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドにおいては、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が非修飾ペプチドと比較して実質的に変化したり悪影響を受けることなく、1つまたは2つのアミノ酸が、それらの保存的交換パートナー(以下を参照されたい)で交換され得る。
【0189】
T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、その他のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異型を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0190】
表6:配列番号4、6、および10に記載のペプチドの変異型およびモチーフ
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0191】
より長い(伸長された)ペプチドもまた、適切であってもよい。MHCクラスIエピトープは、通常は8~11アミノ酸長であるが、実際のエピトープを含むより長いペプチドまたはタンパク質から、ペプチドプロセッシングによって作製することが可能である。実際のエピトープ側面に位置する残基は、プロセッシング中に実際のエピトープを曝露させるのに必要なタンパク質分解切断に、実質的に影響を及ぼさない残基であることが好ましい。
【0192】
本発明のペプチドは、最大4個のアミノ酸で伸長し得て、すなわち4:0~0:4の間のあらゆる組み合わせで、どちらかの末端に1、2、3または4個のアミノ酸を付加し得る。本発明による伸長の組み合わせは、表7にある。
【0193】
表7:本発明のペプチドの伸長(延長)の組み合わせ
【表7】
【0194】
伸長/延長のためのアミノ酸は、元のタンパク質配列のペプチドまたは任意のその他のアミノ酸であり得る。伸長を利用して、ペプチドの安定性または溶解度を高め得る。
【0195】
したがって本発明のエピトープは、天然起源腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープと同一であってもよく、またはそれらが実質的に同一の抗原活性を有しさえすれば、4つ以下の残基が参照ペプチドと異なるエピトープを含んでもよい。
【0196】
代案の実施形態では、ペプチドは、4つを超えるアミノ酸で、好ましくは最大30アミノ酸の全長まで、片側または両側で伸長される。これは、MHCクラスII結合ペプチドをもたらしてもよい。MHCクラスIIへの結合は、当該技術分野で公知の方法によって試験される得る。
【0197】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型を提供し、ペプチドまたは変異型は、8~100、9~100、10~100、11~100、12~100、好ましくは8~30,~9~30、10~30、11~30、12~30、最も好ましくは8~14、9~14、10~14、11~14、12~14の全長を有する。本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型をさらに提供し、ペプチドまたは変異型は、すなわち8、9、10、11、12、13、または14個のアミノ酸の全長を有し、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合、長さはまた、15、16、17、18、19、20、21または22個のアミノ酸であり得る。
【0198】
もちろん、本発明によるペプチドまたは変異型は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する。ペプチドまたは変異型のMHC複合体への結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験されてもよい。
【0199】
好ましくは、本発明によるペプチドに特異的なT細胞を置換ペプチドについて試験する場合、置換ペプチドが背景に対して最大溶解増加の半分を達成するペプチド濃度は、約1mM以下、好ましくは約1μM以下、より好ましくは約1nM以下、さらにより好ましくは約100pM以下、最も好ましくは約10pM以下である。置換ペプチドが、2人以上、少なくとも2人、より好ましくは3人の個人からのT細胞によって認識されることもまた好ましい。
【0200】
本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号に1~配列番号91に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる。
【0201】
「から本質的になる」は、本発明によるペプチドが、配列番号1~配列番号91のいずれかに記載の配列またはその変異型に加えて、MHC分子エピトープのエピトープとして機能するペプチドの一部を必ずしも構成しない、追加的なNおよび/またはC末端に位置するアミノ酸の一連の配列を含有することを意味するものとする。
【0202】
それでもなお、これらの一連の配列は、本発明によるペプチドの細胞への効率的な導入を提供するのに重要であり得る。本発明の一実施形態では、ペプチドは、例えば、NCBI、GenBank受入番号X00497に由来する、HLA-DR抗原関連不変鎖(p33、以下の「Ii」)の80個のN末端アミノ酸を含んでなる、融合タンパク質の一部である。その他の融合物においては、本発明のペプチドは、本明細書に記載されるような抗体、またはその機能的部分に、特に抗体の配列に、前記抗体によって特異的に標的化されるように融合し得て、または例えば、本明細書に記載されるような樹状細胞に対して特異的な抗体に、またはその中に融合し得る。
【0203】
さらにペプチドまたは変異型は、より強力な免疫応答を引き起こすために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するようにさらに修飾されてもよい。ペプチド配列のこのような最適化方法は当該技術分野で周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入が挙げられる。
【0204】
逆ペプチド結合においては、アミノ酸残基はペプチド(-CO-NH-)結合によって連結せず、ペプチド結合が逆転している。このようなレトロ-インベルソペプチド模倣剤は、例えば、参照により本明細書に援用される、Meziere et al(1997)(Meziere et al.,1997)に記載されるものなどの当該技術分野で既知の方法を使用して製造されてもよい。このアプローチは、側鎖の方向でなく主鎖に関与する変化を含有する、擬ペプチドの生成を伴う。Meziere et al.(Meziere et al.,1997)は、MHC結合およびTヘルパー細胞応答のために、これらの擬ペプチドが有用であることを示す。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含有するレトロインバースペプチドは、タンパク質分解に対してはるかにより高い抵抗性がある。
【0205】
非ペプチド結合は、例えば、-CH-NH、-CHS-、-CHCH-、-CH=CH-、-COCH-、-CH(OH)CH-、および-CHSO-である。米国特許第4,897,445号明細書は、標準手順によって合成されるポリペプチド、およびNaCNBHの存在下でアミノアルデヒドとアミノ酸を反応させることで合成される非ペプチド結合が関与する、ポリペプチド鎖中の非ペプチド結合(-CH-NH)を固相合成する方法を提供する。
【0206】
上述の配列を含んでなるペプチドは、それらのアミノおよび/またはカルボキシ末端に存在する追加的な化学基と共に合成して、ペプチドの安定性、生物学的利用能、および/または親和性を高めてもよい。例えば、カルボベンゾキシル、ダンシル、またはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水性基が、ペプチドのアミノ末端に付加されてもよい。同様に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシ-カルボニル基が、ペプチドのアミノ末端に配置されてもよい。さらに、疎水性基、t-ブチルオキシカルボニル、またはアミド基が、ペプチドのカルボキシ末端に付加されてもよい。
【0207】
さらに、本発明のペプチドは、それらの立体配置を改変するように合成されてもよい。例えば、通常のL異性体でなく、ペプチドの1つまたは複数のアミノ酸残基のD異性体が使用されてもよい。なおもさらに、本発明のペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1つは、周知の非天然起源アミノ酸残基の1つで置換されてもよい。これらのような変化は、本発明のペプチドの安定性、生物学的利用能および/または結合作用の増加に役立ってもよい。
【0208】
同様に、本発明のペプチドまたは変異型は、ペプチド合成の前または後のどちらかに、特定のアミノ酸を反応させることで化学的に修飾されてもよい。このような修飾の例は、当該技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に援用される、R.Lundblad,Chemical Reagents for Protein Modification,3rd ed.CRC Press,2004(Lundblad,2004)に要約される。アミノ酸の化学修飾としては、これに限定されるものではないが、アシル化、アミジン化、リジンのピリドキシル化、還元アルキル化、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、システインのシステイン酸への過ギ酸酸化によるカルボキシル基のアミド修飾およびスルフヒドリル修飾、水銀誘導体形成、その他のチオール化合物との混合ジスルフィド形成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化、およびアルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化による修飾が挙げられるが、これに限定されるものではない。この点において、当業者は、タンパク質の化学修飾に関するより詳細な手順について、Current Protocols In Protein Science,Eds.Coligan et al.(John Wiley and Sons NY 1995-2000)(Coligan et al.,1995)の第15章を参照されたい。
【0209】
簡単に述べると、例えば、タンパク質中のアルギニル残基の修飾は、付加体を形成するためのフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンなどの隣接するジカルボニル化合物の反応に基づくことが多い。別の例は、メチルグリオキサールとアルギニン残基の反応である。システインは、リジンおよびヒスチジンなどのその他の求核性部位の同時の修飾なしに修飾され得る。その結果、システイン修飾のために多数の試薬が利用可能である。Sigma-Aldrichなどの会社のウェブサイト(http://www.sigma-aldrich.com)が、特定の試薬に関する情報を提供する。
【0210】
タンパク質中のジスルフィド結合の選択的還元もまた、一般的である。ジスルフィド結合は、生物医薬品の加熱処理中に形成されて酸化され得る。ウッドワード試薬Kを使用して、特定のグルタミン酸残基が修飾されてもよい。N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミドを利用して、リジン残基とグルタミン酸残基との間に分子内架橋が形成され得る。例えば、ジエチルピロ炭酸は、タンパク質中のヒスチジル残基修飾のための試薬である。ヒスチジンはまた、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを使用して修飾され得る。リジン残基およびその他のα-アミノ基の反応物は、例えば、ペプチドの表面への結合またはタンパク質/ペプチド架橋で有用である。リジンはポリ(エチレン)グリコールの付着部位であり、タンパク質のグリコシル化の主要な修飾部位である。タンパク質中のメチオニン残基は、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、およびクロラミンTによって修飾され得る。
【0211】
テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾールを使用して、チロシル残基が修飾され得る。ジチロシンの形成を通じた架橋は、過酸化水素/銅イオンによって達成され得る。
【0212】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシニミド、臭化2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルまたは3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドール(BPNS-スカトール)が使用されている。
【0213】
PEGによる治療用タンパク質およびペプチドの成功裏の修飾が、循環半減期の延長に関連することが多い一方で、タンパク質と、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびホルムアルデヒドとの架橋は、ハイドロゲル調製のために使用される。免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、カリウムシアネートでのカルバミル化によって達成されることが多い。
【0214】
本発明の別の実施形態は、非天然ペプチドに関し、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号156に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になり、薬学的に許容可能な塩として合成的に生産される(例えば、合成される)。ペプチドを合成的に生産する方法は、当該技術分野で周知である。生体内で産生されるペプチドは塩でないため、本発明によるペプチドの塩は、ペプチドの生体内での状態と実質的に異なる。ペプチドの非天然塩形態は、特に、ペプチドを含んでなる医薬組成物、例えば、本明細書で開示されるペプチドワクチンなどの文脈で、ペプチドの溶解性を媒介する。治療される対象にペプチドを効率的に提供するためには、ペプチドの十分で少なくとも実質的な溶解性が必要である。好ましくは、塩は、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。本発明によるこれらの塩としては、ア二オンとしてのPO 3-、SO 2-、CHCOO、Cl、Br、NO 、ClO 、I、SCN、およびカチオンとしてのNH 、Rb、K、Na、Cs、Li、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Cu2+、およびBa2+を含んでなるホフマイスター系列の塩類などのアルカリ塩およびアルカリ土類塩類が挙げられる。特に塩類は、(NHPO、(NHHPO、(NH)HPO、(NHSO、NHCHCOO、NHCl、NHBr、NHNO、NHCIO、NHI、NHSCN、RbPO、RbHPO、RbHPO、RbSO、RbCHCOO、RbCl、RbBr、RbNO、RbCIO、RbI、RbSCN、KPO、KHPO、KHPO、KSO、KCHCOO、KCl、KBr、KNO、KClO、KI、KSCN、NaPO、NaHPO、NaHPO、NaSO、NaCHCOO、NaCl、NaBr、NaNO、NaCIO、NaI、NaSCN、ZnCICsPO、CsHPO、CsHPO、CsSO、CsCHCOO、CsCl、CsBr、CsNO、CsCIO、CsI、CsSCN、LiPO、LiHPO、LiHPO、LiSO、LiCHCOO、LiCl、LiBr、LiNO、LiClO、LiI、LiSCN、CuSO、Mg(PO、MgHPO、Mg(HPO、MgSO、Mg(CHCOO)、MgCl、MgBr、Mg(NO、Mg(ClO、MgI、Mg(SCN)、MnCl、Ca(PO)、、CaHPO、Ca(HPO、CaSO、Ca(CHCOO)、CaCl、CaBr、Ca(NO、Ca(ClO、CaI、Ca(SCN)、Ba(PO、BaHPO、Ba(HPO、BaSO、Ba(CHCOO)、BaCl、BaBr、Ba(NO、Ba(ClO、BaI、およびBa(SCN)から選択される。特に好ましいのは、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などのNH酢酸塩、MgCl、KHPO、NaSO、KCl、NaCl、およびCaClである。
【0215】
ペプチドが修飾されまたは非ペプチド結合を含む、ペプチドまたは変異型は、本発明の好ましい実施形態である。一般に、ペプチドおよび変異型(少なくともアミノ酸残基間にペプチド結合を含有するもの)は、Lukas et al.(Lukas et al.,1981)によって、そしてその中で引用される参考文献によって開示される、Fmoc-ポリアミド様式の固相ペプチド合成によって合成されてもよい。一時的なN-アミノ基保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によってもたらされる。この高度に塩基不安定性の保護基の反復性切断は、N,N-ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを使用して実施される。側鎖官能基は、それらのブチルエーテル(セリン、スレオニン、およびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リジンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システインの場合)、および4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護されてもよい。グルタミンまたはアスパラギンがC末端残基である場合、側鎖アミド官能基を保護するために、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル基が活用される。固相担体は、ジメチルアクリルアミド(主鎖単量体)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(架橋剤)、およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(機能化因子)の3つの単量体から構成される、ポリジメチル-アクリルアミドポリマーをベースとする。使用されるペプチド-対-樹脂の切断可能な結合因子は、酸不安定性4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸誘導体である。逆転N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介共役手順を使用して付加されるアスパラギンおよびグルタミンを除いて、全てのアミノ酸誘導体は、それらのあらかじめ形成された対称的な無水物誘導体として付加される。全ての共役および脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイサチン試験手順を使用してモニターされる。合成完了時に、ペプチドは樹脂担体から切断され、同時に、50%スカベンジャー混合物を含有する95%トリフルオロ酢酸での処理によって、側鎖保護基が除去される。一般に使用されるスカベンジャーとしては、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水が挙げられ、正確な選択は、合成されるペプチドの構成アミノ酸に左右される。ペプチドの合成のための固相法と溶液相法の組み合わせもまた、可能である(例えば、(Bruckdorfer et al.,2004)、およびその中で引用される参考文献を参照されたい)。
【0216】
トリフルオロ酢酸は、真空蒸発によって除去され、引き続くジエチルエーテルを用いた磨砕は、粗製ペプチドをもたらす。存在するあらゆるスカベンジャーは、単純な抽出手順によって除去され、それは水相の凍結乾燥時に、スカベンジャーを含まない粗製ペプチドを与える。ペプチド合成のための試薬は、通常、例えば、Calbiochem-Novabiochem(英国ノッティンガム)から入手できる。
【0217】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えば、アセトニトリル/水勾配分離を使用した逆相高速液体クロマトグラフィーなどの技術の任意の1つまたは組み合わせによって実施されてもよい。
【0218】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出(CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析を使用して、高速原子衝撃(FAB)質量分光分析によって、ならびにMALDIおよびESI-Q-TOF質量分光分析によって、実施されてもよい。
【0219】
過剰提示ペプチドを選択するために、中央値サンプル提示ならびに反復試験変動を示す、提示プロファイルが計算される。プロファイルは、目的腫瘍実体のサンプルを正常なサンプルのベースラインに並置させる。次に、線形混合効果モデルのp値を計算し(Pinheiro et al.,2015)、偽発見率によって複数試験について補正することで(Benjamini and Hochberg,1995)、これらの各プロファイルが過剰提示スコアに統合され得る(実施例1、図1参照)。
【0220】
質量分析によるHLAリガンドの同定と相対的定量化のために、衝撃凍結サンプルからのHLA分子が精製されて、HLA関連ペプチドが単離された。単離ペプチドを分離して、オンラインナノエレクトロスプレーイオン化(nanoESI)液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)実験によって配列を同定した。その結果生じたペプチド配列は、頭頸部扁上皮がんサンプル(N=17A02陽性サンプル)から記録された天然腫瘍関連ペプチド(TUMAP)の断片化パターンと、同一配列の対応する合成標準ペプチドの断片化パターンとの比較によって、確認された。ペプチドは、原発性腫瘍のHLA分子のリガンドとして直接、同定されたので、これらの結果は、14人の頭頸部扁上皮がんがん患者から入手された原発性がん組織上における、同定されたペプチドの天然プロセッシングおよび提示の直接的証拠を提供する。
【0221】
発見パイプラインXPRESIDENT(登録商標)v2.1(例えば、その内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第2013-0096016号明細書を参照されたい)は、いくつかの異なる非がん性組織および臓器と比較した、がん組織上のHLA拘束性ペプチドレベルの直接相対定量化に基づく、妥当な過剰提示ペプチドワクチン候補の同定と選択ができるようにする。これは、独自仕様のデータ解析パイプラインで処理された獲得LC-MSデータを使用して、配列同定のためのアルゴリズム、スペクトルクラスタリング、イオン計数、滞留時間アライメント、電荷状態のデコンボリューション、および正規化を組み合わせる、無標識示差定量化の開発によって達成された。
【0222】
各ペプチドおよびサンプルの誤差推定値を含む、提示レベルが確立された。腫瘍組織上で排他的に提示されるペプチド、および腫瘍において過剰提示されるペプチドが、非がん性の組織および臓器との比較で同定されている。
【0223】
頭頸部扁上皮がん組織サンプル由来のHLA-ペプチド複合体は精製され、HLA関連ペプチドは、単離されLC-MSによって分析された(実施例を参照されたい)。本出願に含まれる全てのTUMAPは、原発性頭頸部扁上皮がんサンプル上でこのアプローチによって同定され、原発性頭頸部扁上皮がんにおけるそれらの提示が確認された。
【0224】
複数の頭頸部扁上皮がんおよび正常組織上で同定されたTUMAPは、非標識LC-MSデータのイオン計数を用いて定量化された。方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積が、サンプル中のその存在量と相関すると仮定する。様々なLC-MS実験におけるペプチドの全ての定量的シグナルは、中心傾向に基づいて正規化され、サンプル当たりで平均化されて、提示プロファイルと称される棒グラフにマージされた。提示プロファイルは、タンパク質データベース検索、スペクトルクラスタリング、電荷状態デコンボリューション(除電)、および滞留時間アライメントおよび正規化のような、異なる解析法を統合する。
【0225】
ペプチドの過剰提示に加えて、基礎となる遺伝子のmRNA発現が試験された。mRNAデータは、正常組織およびがん組織のRNASeq分析を通して得られた(実施例2、図2参照)。正常組織データのさらなる出典は、約3000の正常組織サンプル(Lonsdale,2013)に由来する、公的に利用可能なRNA発現データのデータベースであった。それがコードするmRNAが、がん組織では高度に発現されるが、生命維持に必要な正常組織では非常に低いかまたは存在しない、タンパク質に由来するペプチドが、好ましくは本発明に包含される。
【0226】
本発明は、本発明のペプチドを過剰にまたは排他的に提示する、がん/腫瘍、好ましくは頭頸部扁上皮がんの治療に有用なペプチドを提供する。これらのペプチドは、質量分析によって、原発性ヒト頭頸部扁上皮がんサンプル上で、HLA分子によって天然に提示されることが示された。
【0227】
それにペプチドが由来する起源遺伝子/タンパク質(「完全長タンパク質」または「基礎タンパク質」とも称される)の多くは、正常組織と比較してがんにおいて高度に過剰発現されることが示されて、起源遺伝子の高度な腫瘍関連性が実証され、「正常組織」は、本発明との関連で、健常[主要適応症の正常組織を挿入する]細胞またはその他の正常組織細胞のどちらかを意味するものとする(実施例2を参照されたい)。さらに、ペプチド自体は、腫瘍組織上では強く過剰提示されるが、正常組織上では過剰提示されず、「腫瘍組織」は、本発明との関連で、頭頸部扁上皮がんに罹患している患者に由来するサンプルを意味するものとする(実施例1を参照されたい)。
【0228】
HLA結合ペプチドは、免疫系、特にTリンパ球によって認識され得る。T細胞は、例えば、誘導ペプチドを提示する頭頸部扁上皮がん細胞などの、認識されたHLA/ペプチド複合体を提示する細胞を破壊し得る。
【0229】
本発明のペプチドは、T細胞応答を刺激でき、および/または過剰提示されることが示されおり、したがって本発明に従って、抗体および/または可溶性TCRなどのTCRの製造のために使用され得る(実施例3、実施例4を参照されたい)。さらに、ペプチドは、それぞれのMHCと複合体化した場合に、本発明による抗体および/またはTCR、特にTCR製造のためにも使用され得る。それぞれの方法は当業者に良く知られており、それぞれの参考文献にもまた見られる。したがって本発明のペプチドは、それによって腫瘍細胞が破壊され得る、患者における免疫応答を生じさせるのに有用である。患者における免疫応答は、理想的には免疫原性を増強する薬剤(すなわちアジュバント)との組み合わせで、記載されるペプチド、または適切な前駆体(例えば伸長ペプチド、タンパク質、またはこれらのペプチドをコードする核酸)を患者に直接投与することで、誘導され得る。本発明の標的ペプチドは、正常組織上では同等のコピー数で提示されないので、このような治療的ワクチン接種から生じる免疫応答は、腫瘍細胞に対して高度に特異的であることが予測され得て、患者の正常細胞に対する望まれない自己免疫反応のリスクを防止する。
【0230】
本明細書は、α鎖およびβ鎖(「α/βTCR」)を含んでなるT細胞受容体(TCR)にさらに関する。MHC分子によって提示されるとTCRおよび抗体に結合できる、発明のペプチドもまた提供される。本明細書はまた、本明細書のTCRおよびペプチドを発現するための核酸、ベクター、および宿主細胞;そしてそれを使用する方法にも関する。
【0231】
「T細胞受容体」(TCRと略記される)という用語は、αポリペプチド鎖(α鎖)およびβポリペプチド鎖(β鎖)を含んでなるヘテロ二量体分子を指し、ヘテロ二量体受容体は、HLA分子によって提示されるペプチド抗原と結合できる。本用語は、いわゆるγ/δTCRもまた含む。
【0232】
一実施形態では、本明細書は、本明細書に記載されるようなTCRを製造する方法を提供し、方法は、TCRの発現を促進するのに適した条件下でTCRを発現できる、宿主細胞を培養するステップを含んでなる。
【0233】
別の態様における説明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に抗原が負荷され、または抗原/クラスIまたはII MHC複合体モノマーを四量体化することで、クラスIまたはII MHC四量体上に抗原が負荷される、本明細書に記載の方法に関する。
【0234】
α/βTCRのαおよびβ鎖、そしてγ/δTCRのγおよびδ鎖は、一般にそれぞれ2つの「ドメイン」、すなわち可変および定常ドメインを有すると見なされる。可変ドメインは、可変領域(V)と接合領域(J)の連結からなる。可変ドメインはまた、リーダー領域(L)を含んでもよい。βおよびδ鎖はまた、多様性領域(D)を含んでもよい。αおよびβ定常ドメインはまた、αおよびβ鎖を細胞膜に固着させるC末端膜貫通(TM)ドメインを含んでもよい。
【0235】
γ/δTCRに関して、「TCRγ可変ドメイン」という用語は、本明細書の用法ではリーダー領域(L)のないTCRγV(TRGV)領域とTCRγJ(TRGJ)領域との連結を指し、TCRγ定常ドメインという用語は、細胞外TRGC領域を指し、またはC末端切断型TRGC配列を指す同様に、「TCRδ可変ドメイン」という用語は、リーダー領域(L)のないTCRδV(TRDV)領域とTCRδD/J(TRDD/TRDJ)領域との連結を指し、「TCRδ定常ドメイン」という用語は、細胞外TRDC領域を指し、またはC末端切断型TRDC配列を指す。
【0236】
本明細書のTCRは、好ましくは、約1μM以下、約001μM以下、約25μM以下、または約10μM以下の結合親和性(KD)で、発明のペプチド-HLA分子複合体に結合する。より好ましいのは、約1μM以下、約100nM以下、約50nM以下、約25nM以下の結合親和性を有する、高親和性TCRである。本発明のTCRの好ましい結合親和性範囲の非限定的例としては、約1nM~約10nM;約10nM~約20nM;約20nM~約30nM;約30nM~約40nM;約40nM~約50nM;約50nM~約60nM;約60nM~約70nM;約70nM~約80nM;約80nM~約90nM;および約90nM~約100nMが挙げられる。
【0237】
本明細書の用法では、本明細書のTCRとの関連で、「特異的結合」およびそれらの文法的変種は、ペプチド-HLA分子複合体に対して、100μM以下の結合親和性(KD)を有するTCRを意味するために使用される。
【0238】
本明細書のα/βヘテロ二量体TCRは、それらの定常ドメインの間に導入された、ジスルフィド結合を有してもよい。このタイプの好ましいTCRとしては、TRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列とを有するものが挙げられるが、ただし、TRACのThr48およびTRBC1またはTRBC2のSer57は、システイン残基によって置換されており、前記システインは、TCRのTRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列との間に、ジスルフィド結合を形成する。
【0239】
上述の導入された鎖間結合の存在下または不在下で、本明細書のα/βヘテロ二量体TCRは、TRAC定常ドメイン配列とTRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列とを有してもよく、TCRのTRAC定常ドメイン配列と、TRBC1またはTRBC2定常ドメイン配列とが、TRACのエクソン2のCys4と、TRBC1またはTRBC2のエクソン2のCys2との間の天然ジスルフィド結合によって連結されてもよい。
【0240】
本明細書のTCRは、放射性核種、フルオロフォア、およびビオチンからなる群から選択される、検出可能な標識を含んでなってもよい。本明細書のTCRは、放射性核種、化学療法剤、または毒素などの治療的活性薬剤にコンジュゲートされてもよい。
【0241】
一実施形態では、α鎖に少なくとも1つの変異を有し、および/またはβ鎖に少なくとも1つの変異を有する本明細書のTCRは、非変異TCRと比較して修飾されたグリコシル化を有する。
【0242】
一実施形態では、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖に少なくとも1つの変異を含んでなるTCRは、ペプチド-HLA分子複合体に対して、非変異TCRα鎖および/または非変異TCRβ鎖を含んでなるTCRの少なくとも2倍の結合親和性および/または結合半減期を有する。腫瘍特異的TCRの親和性増強とその利用は、最適TCR親和性のウィンドウの存在に依存する。このようなウィンドウの存在は、HLA-A2拘束性病原体に対して特異的なTCRが、HLA-A2拘束性腫瘍関連自己抗原に対して特異的なTCRと比較して、一般に約10分の1のKD値を有するという観察に基づく。腫瘍抗原は免疫原性である可能性を有するが、腫瘍は個人自身の細胞から生じるので、改変された翻訳プロセッシングのある変異タンパク質またはタンパク質のみが、免疫系によって異質と見なされることが今や知られている。上方制御されまたは過剰発現される抗原(いわゆる自己抗原)は、腫瘍に対する機能性免疫応答を必ずしも誘導しない。これらの抗原に対して高度に反応性のTCRを発現するT細胞は、中枢性免疫寛容として知られている過程、すなわち自己抗原に対する低親和性TCRを有するT細胞のみが残留する過程によって、胸腺において負選択される。したがって、本発明のペプチドに対する本明細書のTCRまたは変異型の親和性は、当該技術分野で周知の方法によって増大され得る。
【0243】
本明細書は、本明細書によるTCRを同定し単離する方法にさらに関し、前記方法は、HLA-A02陰性健常ドナーに由来するPBMCをA2/ペプチドモノマーと共にインキュベートするステップと、PBMCを四量体フィコエリトリン(PE)と共にインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞分類(FACS)-Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0244】
本明細書は、本明細書に従ってTCRを同定し単離する方法にさらに関し、前記方法は、そのT細胞がマウスTCR欠損を補償する多様なヒトTCRレパートリーを発現する、全ヒトTCRαβ遺伝子遺伝子座(1.1および0.7Mb)を有する遺伝子組換えマウスを得るステップと、マウスをペプチドで免疫化するステップと、四量体フィコエリトリン(PE)を有する遺伝子組換えマウスから得られたPBMCをインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0245】
一態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、本明細書のTCR-αおよび/またはTCR-β鎖をコードする核酸が、γレトロウイルスまたはレンチウイルスなどの発現ベクターにクローン化される。組換えウイルスを生成し、次に、抗原特異性および機能的結合活性などの機能について試験する。次に、最終生成物のアリコートを使用して、標的T細胞集団(一般に患者のPBMCから精製される)を形質導入し、それを患者への輸液前に増殖させる。
【0246】
別の態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、例えば、生体外転写システムなどの当該技術分野で公知の技術によって、TCR RNAが合成される。次に生体外で合成されたTCR RNAは、健常ドナーから得られた原発性CD8+T細胞内に電気穿孔によって導入され、腫瘍特異的TCR-αおよび/またはTCR-β鎖が再発現される。
【0247】
発現を増加させるために、本明細書のTCRをコードする核酸は、レトロウイルス長末端反復(LTR)、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)U3、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、β-アクチン、ユビキチン、およびシミアンウイルス40(SV40)/CD43複合プロモーター、伸長因子(EF)-1a、および脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターなどの強力なプロモーターと作動可能に連結されてもよい。好ましい実施形態では、プロモーターは、発現される核酸に対して異種である。
【0248】
強力なプロモーターに加えて、本明細書のTCR発現カセットは、レンチウイルスコンストラクトの核転座を促進する、中央ポリプリントラクト(cPPT)(Follenzi et al.,2000)、およびRNA安定性を増大させることで導入遺伝子発現のレベルを高める、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(wPRE)(Zufferey et al.,1999)をはじめとする導入遺伝子発現を高め得る追加的な要素を含有してもよい。
【0249】
本発明のTCRのαおよびβ鎖は、別々のベクターにある核酸によってコードされてもよく、または同一ベクターにあるポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
【0250】
高レベルのTCR表面発現の達成には、導入されたTCRのTCR-αおよびTCR-β鎖の双方を高レベルで転写する必要がある。これを行うために、本明細書のTCR-αおよびTCR-β鎖は、この障害を克服できることが示されている、単一ベクター内のバイシストロニックコンストラクトにクローン化されてもよい。TCR-αおよびTCR-β鎖は、翻訳中に2つのタンパク質に分かれて等モル比のTCR-αおよびTCR-β鎖の生成を確実にする単一転写物から生じるので、TCR-α鎖とTCR-β鎖との間のウイルス配列内リボソーム進入部位の使用は、双方の鎖の協調発現をもたらす(Schmitt et al.2009)。
【0251】
本明細書のTCRをコードする核酸はコドン最適化されて、宿主細胞からの発現が増加されてもよい。遺伝コードの重複は、いくつかのアミノ酸が2つ以上のコドンによってコードされるようにするが、特定のコドンは、適合tRNAの相対可用性ならびにその他の要因のために、他のものよりも「最適」でない(Gustafsson et al.,2004)。各アミノ酸が、哺乳類遺伝子発現のための最適コドンによってコードされるように、TCR-αおよびTCR-β遺伝子配列を修飾すること、ならびにmRNA不安定モチーフまたは潜在的なスプライス部位を除去することは、TCR-αおよびTCR-β遺伝子発現を有意に高めることが示されている(Scholten et al.,2006)。
【0252】
さらに、導入TCR鎖と内因性TCR鎖との間の誤対合は、重大な自己免疫リスクをもたらす特異性の獲得を引き起こすこともある。例えば、混合TCR二量体の形成は、適切に対合するTCR複合体を形成するために利用できるCD3分子の数を減少させてもよく、ひいては導入TCRを発現する細胞の機能的結合活性を有意に低下させ得る(Kuball et al.,2007)。
【0253】
誤対合を減少させるために、本明細書の導入TCR鎖のC末端領域は、鎖間親和性を高める一方で、導入鎖が内因性TCRと対形成する能力を低下させるために、修飾されてもよい。これらのストラテジーとしては、ヒトTCR-αおよびTCR-βのC末端領域をそれらのマウス対応物(マウス化C末端領域)で置換すること;導入TCRのTCR-αおよびTCR-β鎖の双方に第2のシステイン残基を導入することによって、C末端領域に第2の鎖間ジスルフィド結合を生成すること(システイン修飾);TCR-αおよびTCR-β鎖のC末端領域内の相互作用残基を交換すること(「ノブ・イン・ホール」);そしてTCR-αおよびTCR-β鎖の可変領域をCD3ζに直接融合させる(CD3ζ融合)ことが挙げられる。(Schmitt et al.2009)。
【0254】
一実施形態では、宿主細胞は、本細書のTCRを発現するように遺伝子操作される。好ましい実施形態では、宿主細胞は、ヒトT細胞またはT細胞前駆体である。いくつかの実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体は、がん患者から得られる。その他の実施形態では、T細胞またはT細胞前駆体は、健常ドナーから得られる。本明細書の宿主細胞は、治療される患者に関して、同種異系または自己由来であり得る。一実施形態では、宿主は、α/βTCRを発現するように形質転換されたγ/δT細胞である。
【0255】
「医薬組成物」は、医学的状況においてヒトへの投与に適する組成物である。好ましくは、医薬組成物は無菌であり、GMPガイドラインに準拠して製造される。
【0256】
医薬組成物は、遊離形態または薬学的に許容可能な塩の形態のどちらかのペプチドを含んでなる(上記もまた参照されたい)。一態様では、本明細書に記載のペプチドは、薬学的に許容可能な塩の形態である。別の態様では、医薬品塩の形態のペプチドは、結晶形態である。
【0257】
一態様では、本明細書に記載の薬学的に許容可能な塩は、製薬用途のために許容される範囲内の毒性プロファイル有する塩を指す。
【0258】
本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩類」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性塩または塩基性塩を生成することで修飾される。例えば、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基(典型的には中性形態の薬物が中性の-NH2基を有する)から酸性塩が調製される。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を使用して調製される。
【0259】
一態様では、薬学的に許容される塩は、本明細書に記載のペプチドの溶解性および/または安定性を高めてもよい。別の態様では、本明細書に記載の医薬品塩は、例えば、適切な酸または塩基を本明細書に記載されるようなペプチドまたは複合体形成と反応させることによって、対応する担体ペプチドまたは複合体から従来の手段によって調製されてもよい。別の態様では、薬学的に許容される塩は、結晶形態または半結晶形態である。さらに別の態様では、薬学的に許容可能な塩としては、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use By P.H.Stahl and C.G.Wermuth(Wiley-VCH 2002)、およびL.D.Bighley,S.M.Berge,D.C.Monkhouse,in”Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”.Eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,Vol.13,Marcel Dekker,Inc.,New York,Basel,Hong Kong 1995,pp.453-499に記載されるものが挙げられ、これらの参考文献のそれぞれは、その内容全が参照により本明細書に援用される。
【0260】
本発明のペプチドの薬学的に許容可能な塩形態は、天然の(裸の)ペプチド、すなわち、薬学的に許容可能な塩の形態でなく、または別の様式で修飾されていないペプチドよりも安定性が増大している。本明細書の用法では、安定性の増加は、以下の測定可能な減少または低下を含む:脱アミド、酸化、加水分解、ジスルフィド交換、ラセミ化、および加水分解。安定性は、完成品としての、または製造手順中もしくは貯蔵中のペプチド上で評価され得る。好ましくは、薬学的に許容可能な塩の形態ペプチドは、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、最も好ましくは少なくとも6ヶ月間などの商業的に妥当な期間にわたる、約0°C~約60°Cなどの商業的に妥当な温度における貯蔵を可能にする、十分な生体外安定性を有する。安定性は。例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)などの当業者に知られている任意の生理化学的特性決定技術を用いて測定され得る。
【0261】
さらに、ペプチド塩の安定性は、血漿中における(アミノペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、およびシンテターゼなどによる)酵素的分解が少ないこと、および/または天然ペプチドと比較して改善された生体内半減期を有することで判定され得る。MHCI抗原提示のために生成された天然の9量体ペプチドの細胞内半減期は、それらがシャペロンまたはMHCI分子などの別の分子によって結合されていない限り、ほんの数秒であることが解明されている。Reits et al.,Immunity.2004;20:495-506。
【0262】
さらに、本発明のペプチドの薬学的に許容可能な塩は、水性溶液中で改善された溶解性および安定性を示すBerge et al.,Pharmaceutical Salts、J.Pharm.Sci.1977;66(1):1-19。好ましくは、水溶液中の薬学的に許容可能な塩の形態のペプチドは、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、より好ましくは少なくとも7日間にわたり安定している。
【0263】
特に好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩としてのペプチドを含んでなる。
【0264】
好ましくは、本発明の薬剤は、ワクチンなどの免疫療法剤である。それは、患者に直接、罹患臓器に、または全身的に、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、およびi.v.投与され、または生体外で患者またはヒト細胞株に由来する細胞に適用されて、それが引き続いて患者に投与され、または生体外で使用されて患者に由来する免疫細胞の亜集団が選択され、次にそれが患者に再投与されてもよい。核酸が、生体外で細胞に投与される場合、インターロイキン2などの免疫刺激サイトカインを同時発現させるように、細胞を形質移入することが有用であってもよい。ペプチドは、実質的に純粋であり、または免疫刺激アジュバント(下記参照)と組み合わされ、または免疫賦活性サイトカインと組み合わせて使用され、または例えば、リポソームなどの適切な送達系によって投与されてもよい。ペプチドはまた、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)またはマンナンなどの適切な担体に共役されてもよい(国際公開第95/18145号パンフレットおよび(Longenecker et al.,1993)を参照されたい)。ペプチドはまた、標識されてもよく、融合タンパク質であってもよく、またはハイブリッド分子であってもよい。その配列が本発明に記載されるペプチドは、CD4またはCD8 T細胞を刺激することが予測される。しかし、CD8 T細胞の刺激は、CD4 Tヘルパー細胞によって提供される援助の存在下で、より効率的である。したがって、CD8 T細胞を刺激するMHCクラスIエピトープでは、ハイブリッド分子の融合パートナーまたはセクションは、適切にはCD4陽性T細胞を刺激するエピトープを提供する。CD4およびCD8刺激エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で同定されたものが挙げられる。
【0265】
一態様では、ワクチンは、配列番号1~配列番号91に記載されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのペプチドと、少なくとも1つの追加的なペプチド、好ましくは2~50、より好ましくは2~25、なおもより好ましくは2~20、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個のペプチドとを含んでなる。ペプチドは、1つまたは複数の特異的TAAから誘導されてもよく、MHCクラスI分子に結合してもよい。
【0266】
本発明のさらなる態様は、本発明のペプチドまたはペプチド変異型をエンコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。ポリヌクレオチドは、それがペプチドをコードしさえすれば、例えば、一本鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖を有するポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。もちろん、天然起源ペプチド結合によって連結する天然アミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされ得る。本発明のなおもさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現できる発現ベクターを提供する。
【0267】
例えば相補的付着端を通じて、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに連結する、多様な方法が開発されている。例えば、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに、相補的ホモポリマー配列が付加され得る。次に、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって、ベクターおよびDNAセグメントが連結されて、組換えDNA分子が形成する。
【0268】
1つまたは複数の制限部位を含有する合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに連結する代替え方法を提供する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、米国コネチカット州ニューヘイブンのInternational Biotechnologies Inc.をはじめとするいくつかの供給元から商業的に入手できる。
【0269】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法は、Saiki RK,et al.(Saiki et al.,1988)で開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を用いる。この方法は、例えば、適切な制限部位を遺伝子操作することで、DNAを適切なベクターに導入するために使用されてもよく、またはそれは、当該技術分野で既知のその他の有用な様式でDNAを修飾するために使用されてもよい。ウイルスベクターを使用するのであれば、ポックスウイルスまたはアデノウイルスベクターが好ましい。
【0270】
次にDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)を適切な宿主において発現させ、本発明のペプチドまたは変異型を含んでなるポリペプチドが製造されてもよい。このようにして、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された既知の技術に従って、本発明のペプチドまたは変異型をコードするDNAを使用して、発現ベクターが構築されてもよく、次にそれを使用して、本発明のポリペプチドの発現および製造のために、適切な宿主細胞が形質転換される。このような技術としては、例えば、米国特許第4,440,859号明細書、米国特許第4,530,901号明細書、米国特許第4,582,800号明細書、米国特許第4,677,063号明細書、米国特許第4,678,751号明細書、米国特許第4,704,362号明細書、米国特許第4,710,463号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第4,766,075号明細書、および米国特許第4,810,648号明細書で開示されるものが挙げられる。
【0271】
本発明の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主への導入のために、多種多様なその他のDNA配列に連結されてもよい。コンパニオンDNAは、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに左右される。
【0272】
一般に、DNAは、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクター中で利用できる。次に、標準的な技術を通じて、ベクターが宿主に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。一選択技術は、抗生物質耐性などの形質転換細胞内で選択可能な形質をコードする、任意の必要な制御因子を有するDNA配列を発現ベクター内に組み込むことを伴う。
【0273】
代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するのに使用される、別のベクター上にあり得る。
【0274】
次に、本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換えDNAによって形質転換された宿主細胞が培養されてポリペプチドが発現され、次にそれが回収され得る。
【0275】
細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、発現系は、ATCC Cell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。
【0276】
構成的発現のための典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、適切なポリA尾部を有するCMVまたはSV40プロモーター、およびネオマイシンなどの耐性マーカーを含んでなる。一例は、米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmaciaから入手できるpSVLである。誘導性哺乳類発現ベクターの一例であるpMSGもまた、Pharmaciaから入手できる。有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、通常、米国郵便番号92037カリフォルニア州ラホヤのStratagene Cloning Systemsから入手できる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母の選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3が組み込まれている。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(Ycps)である。CMVプロモーターベースのベクター(例えばSigma-Aldrich製)は、一過性または安定性発現、細胞質内発現または分泌、およびFRAG、3xFLAG、c-mycまたはMATの様々な組み合わせでのN末端またはC末端標識付けを提供する。これらの融合タンパク質は、組換えタンパク質を検出、精製、および分析できるようにする。二重標識融合物は、検出に融通性を与える。
【0277】
強力なヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター調節領域は、COS細胞内で、構成タンパク質発現レベルを1mg/L程度の高さに駆動する。効力がより低い細胞株では、タンパク質レベルは、典型的に約0.1mg/Lである。SV40複製起点の存在は、SV40複製許容COS細胞内で高レベルのDNA複製をもたらす。CMVベクターは、例えば、細菌細胞内のpMB1(pBR322の誘導体)複製起点、細菌におけるアンピシリン耐性選択のためのb-ラクタマーゼ遺伝子、hGHポリA、およびf1起点を含有し得る。プレプロトリプシンリーダー(PPT)配列を含有するベクターは、抗FRAG抗体、樹脂、およびプレートを使用した精製のために、培養液中へのFRAG融合タンパク質分泌を誘導し得る。多様な宿主細胞と共に使用するためのその他のベクターおよび発現系が、当該技術分野で周知である。
【0278】
別の実施形態では、本発明の2つ以上のペプチドまたはペプチド変異型がコードされ、したがって順次発現される(「数珠玉構造」コンストラクトに類似する)。その際に、ペプチドまたはペプチド変異型は、例えばLLLLLLなどの一続きのリンカーアミノ酸によって、共に連結または融合されてもよく、またはそれらの間のいかなる追加的なペプチドもなしに連結されてもよい。これらのコンストラクトはまた、がん療法のために使用され得て、MHC IとMHC IIの双方が関与する免疫応答を誘導してもよい。
【0279】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドベクターコンストラクトで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核または真核生物のどちらかであり得る。細菌細胞は、いくつかの状況では、好ましい原核宿主細胞であってもよく、典型的には、例えば、米国メリーランド州ベセスダのBethesda Research Laboratories Inc.,から入手できる大腸菌(E.coli)DH5株、および米国メリーランド州ロックビルの米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手できるRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌(E.coli)株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫、および哺乳類細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒトの線維芽細胞株および結腸細胞株に由来するものなどの脊椎動物細胞が挙げられる。酵母宿主細胞としては、米国郵便番号92037カリフォルニア州ラホヤのStratagene Cloning Systemsから一般に入手できる、YPH499、YPH500、およびYPH501が挙げられる。好ましい哺乳類宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞NIH/3T3、ATCCからCRL1650として入手できるサル腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児由来腎細胞である293細胞が挙げられる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターで形質移入され得るSf9細胞である。発現のための適切な宿主細胞の選択に関する概説は、例えば、Paulina BalbasおよびArgelia Lorenceの教科書、”Methods in Molecular Biology Recombinant Gene Expression,Reviews and Protocols,”Part One,Second Edition,ISBN 978-1-58829-262-9、および当業者に知られているその他の文献にある。
【0280】
本発明のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は、典型的に使用されるベクターのタイプに左右される周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al.(Cohen et al.,1972)および(Green and Sambrook,2012)を参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al.(Sherman et al.,1986)に記載される。Beggs(Beggs,1978)の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞を形質移入するのに有用な、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤などの試薬が、米国郵便番号20877メリーランド州ゲイザースバーグのLife Technologies Inc.,から入手できる。電気穿孔もまた、細胞を形質転換および/または形質移入するのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0281】
成功裏に形質転換された細胞、すなわち本発明のDNAコンストラクトを含有する細胞は、PCRなどの周知の技術によって同定され得る。代案としては、抗体を使用して、上清中のタンパク質の存在が検出され得る。
【0282】
例えば、細菌、酵母、および昆虫細胞などの本発明の特定の宿主細胞は、本発明のペプチドの調製において有用であることが理解されるであろう。しかしその他の宿主細胞が、特定の治療法において有用であってもよい。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、それらが適切なMHC分子中に負荷されてもよいように、本発明のペプチドを発現するために有用に使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0283】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)を含有する組換え融合タンパク質が負荷されたAPCは、無症候性または微小症候性転移性HRPCを治療するために、米国食品医薬品局(FDA)によって2010年4月20日に認可された(シプロイセルT)(Rini et al.,2006;Small et al.,2006)。
【0284】
本発明のさらなる態様は、宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、ペプチドまたはその変異型を製造する方法を提供する。
【0285】
別の実施形態では、本発明のペプチド、核酸または発現ベクターは、医療において使用される。例えば、ペプチドまたはその変異型は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射のために調合されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法としては、s.c、i.d、i.p、i.m、およびi.v.が挙げられる。DNA注射の好ましい方法としては、i.d、i.m、s.c、i.p、およびi.v.が挙げられる。例えば、50μg~1.5mg、好ましくは125μg~500μgのペプチドまたはDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチドまたはDNAに左右される。この範囲の用量は、以前の治験で成功裏に使用された(Walter et al.,2012)。
【0286】
活性ワクチン接種のために使用されるポリヌクレオチドは、実質的に純粋であってもよく、または適切なベクターまたは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。このような核酸をデザインして導入する方法は、当該技術分野で周知である。概説は、例えば、Teufel et al.(Teufel et al.,2005)によって提供される。ポリヌクレオチドワクチンは調製が容易であるが、免疫応答誘導におけるこれらのベクターの作用機序は、完全には分かっていない。適切なベクターおよび送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、または2つ以上のウイルスの構成要素を含有するハイブリッドベースのシステムなどのウイルスDNAおよび/またはRNAが挙げられる。非ウイルス送達系としては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられ、DNA送達技術分野において周知である。「遺伝子銃」などを介した、物理的送達もまた使用されてもよい。核酸によってコードされるペプチド(単数)またはペプチド(複数)は、例えば、上述のように、それぞれの逆CDRのT細胞を刺激する、エピトープとの融合タンパク質であってもよい。
【0287】
本発明の薬剤は、1つまたは複数のアジュバントもまた含んでもよい。アジュバントは、免疫応答(例えば、CD8陽性T細胞およびヘルパーT(TH)細胞によって媒介される抗原に対する免疫応答を非特異的に促進または増強する物質であり、したがって本発明の薬剤中で有用であると見なされる。適切なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、AMPLIVAX(登録商標)、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラジェリンまたはフラジェリン由来TLR5リガンド、FLT3リガンド、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFact IMP321、IL-2やL-13やIL-21などのインターロイキン、インターフェロン-αまたは-βまたはそれらのPEG化誘導体、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、ISCOM、JuvImmune(登録商標)、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、モンタニドISA-51、油中水型および水中油型エマルション、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチドコグリコリド)[PLG]ベースおよびデキストラン微粒子、タラクトフェリンSRL172、ビロソームおよびその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquila’s QS21 stimulon、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣体、およびRibi’s DetoxまたはQuilまたはSuperfosなどのその他の独自仕様の補助剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが好ましい。樹状細胞およびそれらの調製物に対して特異的な、いくつかの免疫学的アジュバント(例えばMF59)が、以前記載されている(Allison and Krummel,1995)。サイトカインもまた使用されてもよい。数種のサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織(例えばTNF-)への移動に影響を与えること、Tリンパ球(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(その内容全体が参照により本明細書に具体的に援用される、米国特許第5,849,589号明細書)、および免疫増強剤(例えば、IL-12、IL-15、IL-23、IL-7、IFN-α、IFN-β)として作用することと、直接関連付けられている(Gabrilovich et al.,1996)。
【0288】
CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン環境において、アジュバント効果を増強することが報告されている。理論により拘束されることなく、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を通じた、内在的(非適応性)免疫系の活性化によって作用する。CpG誘導性TLR9活性化は、ペプチドまたはタンパク質抗原、生きたまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、そして予防的および治療的ワクチンの双方における多糖コンジュゲートをはじめとする多種多様な抗原に対する、抗原特異的体液性および細胞性応答を増強する。より重要なことには、それは樹状細胞の成熟と分化を増強し、CD4 T細胞援助の不在下であってさえも、TH1細胞の活性化の促進、および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常はTH2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバント存在下であってさえも、維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと調合されまたは同時投与された際に、または微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションなどの配合物または類似配合物中で、なおもより高いアジュバント活性を示し、それは、抗原が比較的弱い場合、強力な応答を誘導するのに特に必要である。それらは免疫応答もまた加速し、いくつかの実験では、CpGなしのワクチン総量と同等の抗体応答で、抗原用量のほぼ2桁分の低減を可能にする(Krieg,2006)。米国特許第6,406,705B1号明細書は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用を記載する。CpG TLR9拮抗薬は、本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である、Mologen(独国ベルリン)製のdSLIM(二重ステムループ免疫調節剤)である。RNA結合TLR7、TLR8および/またはTLR9などのその他のTLR結合分子もまた、使用されてもよい。
【0289】
有用なアジュバントその他の例としては、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera);ポリ(I:C)などのdsRNAアナログおよびそれらの誘導体(例えばAmpliGen(登録商標)、Hiltonol(登録商標)、ポリ(ICLC)、ポリ(IC-R)、ポリ(I:C12U)、非CpG細菌DNAまたはRNA;ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ(登録商標)、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGF Trap、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4などの免疫活性小型分子および抗体;免疫系の重要な構造体を標的にするその他の抗体(例えば、抗CD40、抗TGFβ、抗TNFα受容体);SC58175が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これらは治療的におよび/またはアジュバントとして作用してもよい。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量と濃度は、過度の実験を実施することなく、当業者によって容易に判定され得る。
【0290】
好ましいアジュバントは、抗CD40、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、インターフェロンα、CpGオリゴヌクレオチドおよび誘導体、ポリ(I:C)および誘導体、RNA、シルデナフィル、およびPLGまたはビロソーム微粒子調合物である。
【0291】
本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、レシキモド、およびインターフェロンαなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。
【0292】
本発明による医薬組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、およびレシキモドなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。本発明による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、シクロホスファミド、イミキモドまたはレシキモドである。なおもより好ましいアジュバントは、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 20、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、poly-ICLC(Hiltonol(登録商標))、および抗CD40mABまたはそれらの組み合わせである。
【0293】
この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与、または経口投与のために使用される。このためには、ペプチドおよび任意選択的にその他の分子が、薬学的に許容可能な、好ましくは水性担体に溶解され、または懸濁される。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、香料、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と共に投与され得る。このような組成物中で使用され得る賦形剤の詳細な一覧は、例えば、A.Kibbe,Handbook of Pharmaceutical Excipients(Kibbe,2000)から採用され得る。組成物は、腺腫様またはがん性疾患の阻止、予防法および/または治療法のために使用され得る。例示的調合物は、例えば、欧州特許第2112253号明細書にある。
【0294】
一態様では、本明細書に記載のペプチドまたは別の分子は、水性担体と組み合わされてもよい。一態様では、水性担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、硫酸プロタミンなどの塩または電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二カルシウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル、セルロースベースの物質(例えば、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸メチルセルロースヒドロキシプロピル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、デンプン、乳糖一水和物、マンニトール、トレハロースラウリル硫酸ナトリウム、およびクロスカルメロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂から選択される。
【0295】
一態様では、水性担体は、本明細書に記載の成分などの非水担体成分と合わさった水などの複数の成分を含有する。別の態様では、水性担体は、本明細書に記載のペプチドまたはその他の分子と組み合わされると、例えば、改善された溶解性、有効性、および/または改善された免疫療法などの改善された特性を与えることができる。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、香料、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。「薬学的に許容可能な希釈剤」としては、例えば、生理学的適合性である、溶剤、増量剤、安定剤、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に許容可能な希釈剤の例としては、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つまたは複数ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、例えば、トレハロースおよびスクロースなどの糖、マンニトールやソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムなどの1つまたは複数の等張剤を組成物に含めることが好ましい。湿潤剤または少量の湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝剤などの補助剤のような薬学的に許容可能な物質もまた本発明の範囲内である。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、香料、および潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。
【0296】
本発明によるワクチンによって引き起こされる免疫応答は、異なる細胞分裂期および異なる発生段階のがんを攻撃することを理解することが重要である。さらに、異なるがん関連シグナル伝達経路が攻撃される。これは、1つまたは少数の標的のみに対処して、攻撃に対する腫瘍の容易な適応(腫瘍エスケープ)を引き起こすこともある、ワクチンに優る利点である。さらに個々の腫瘍の全てが、同一パターンの抗原を発現するとは限らない。したがって、いくつかの腫瘍関連ペプチドの組み合わせによって、ありとあらゆる腫瘍が標的の少なくとも一部を有することが確実になる。組成物は、それぞれの腫瘍が抗原のいくつかを発現することを予期して設計され、腫瘍の増殖と維持に必要ないくつかの独立した経路をカバーする。したがって、ワクチンは、より大きな患者集団のために、容易に「出来合」で使用され得る。これは、ワクチンで治療される患者の予備選択が、HLAタイピングに限定され得て、抗原発現に関する任意の追加的なバイオマーカーアセスメントを必要としないことを意味するが、いくつかの標的が誘導免疫応答によって同時に攻撃されることはなおも確実であり、これは有効性にとって重要である(Banchereau et al.,2001;Walter et al.,2012)。
【0297】
本明細書の用法では、「スキャフォールド」という用語は、(例えば、抗原性)決定因子に特異的に結合する分子を指す。一実施形態では、スキャフォールドはまた、それが付着する実体(例えば、(第2の)抗原結合部分)を例えば、抗原決定基(例えば本出願書に記載のペプチドとMHCの複合体)を有する特異的腫瘍細胞または腫瘍間質などの型標的部位に誘導できる。別の実施形態では、スキャフォールドは、例えば、T細胞受容体複合体抗原などのその標的抗原を通じて、シグナル伝達を活性化できる。スキャフォールドとしては、抗体およびそれらのフラグメント、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含んでなる抗体の抗原結合ドメイン、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフと単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子とを含んでなる結合タンパク質、アプタマー、(可溶性)TCR、および同種または自己由来T細胞などの(改変)細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。分子が標的に結合するスキャフォールドであるかどうかを評価するために、結合アッセイが実施され得る。
【0298】
「特異的」結合は、特異的標的を保有する細胞を殺滅できる活性分子を装備したスキャフォールドが、特異的標的は有しないが別のペプチド-MHC複合体を提示する別の細胞を殺滅できない程度に、スキャフォールドがその他の天然ペプチド-MHC-複合体よりもさらに良好に、目的ペプチド-MHC-複合体に結合することを意味する。交差反応性ペプチド-MHCのペプチドが天然に存在せず、すなわち、ヒトHLA-ペプチドームに由来しない場合、その他のペプチド-MHC複合体への結合は無関係である。標的細胞死滅を評価する試験は、当該技術分野で周知である。それらは、非改変ペプチド-MHC提示を有する標的細胞(初代細胞または細胞株)、または天然に存在するペプチド-MHCレベルに達するようにペプチドを負荷された細胞を使用して、実施されるべきである。
【0299】
各スキャフォールドは標識を含んでなり得て、それは、標識によって提供されるシグナルの存在または不在を判定することで、結合スキャフォールドが検出され得ることを提供する。例えば、スキャフォールドは、蛍光染料または任意のその他の適用可能な細胞マーカー分子で標識され得る。このようなマーカー分子は、当該技術分野で周知である。例えば、蛍光染料によって提供される蛍光標識は、蛍光またはレーザー走査顕微鏡またはフローサイトメトリーによる、結合アプタマーの視覚化を提供し得る。
【0300】
各スキャフォールドは、例えば、IL-21、抗-CD3、および抗-CD28などの第2の活性分子にコンジュゲートされ得る。
【0301】
ポリペプチドスキャフォールドに関するさらなる情報については、例えば国際公開第2014/071978A1号パンフレットの背景セクション、およびその中で引用される参考文献を参照されたい。
【0302】
本発明は、アプタマーにさらに関する。アプタマー(例えば、国際公開第2014/191359号パンフレット、およびその中で引用される文献を参照されたい)は、短い一本鎖核酸分子であり、それは、所定の三次元構造に折り畳まれて、特異的標的構造体を認識し得る。それらは、標的療法を開発するための適切な代案のようであった。アプタマーは、高い親和性および特異性で、多様な複合体標的と選択的に結合することが示されている。
【0303】
細胞表面に位置する分子を認識するアプタマーは、過去10年内に同定されており、診断および治療的アプローチを開発する手段を提供する。アプタマーは、毒性および免疫原性がほぼ皆無であることが示されているので、それらは生物医学的用途のための有望な候補である。確かに、例えば、前立腺特異的膜抗原認識アプタマーなどのアプタマーは、標的療法のために成功裏に用いられており、異種移植片生体内モデルにおいて機能できることが示されている。さらに、特異的腫瘍細胞株を認識するアプタマーが同定されている。
【0304】
DNAアプタマーは、様々ながん細胞、特に固形腫瘍に由来するものに対して広域スペクトル認識特性を示す一方で、非腫瘍発生性および主要健常細胞を認識しないように選択され得る。同定されたアプタマーが、特異的腫瘍サブタイプを認識するだけでなく、むしろ一連の腫瘍と相互作用する場合、これは、アプタマーをいわゆる広域スペクトル診断薬および治療薬として応用可能にする。
【0305】
さらに、フローサイトメトリーによる細胞結合挙動の調査は、アプタマーがナノモル濃度範囲内の非常に良好な見かけの親和性を見せたことを示した。
【0306】
アプタマーは、診断および治療目的で有用である。さらに、アプタマーの一部は腫瘍細胞に取り込まれ、したがって腫瘍細胞内へのsiRNAなどの抗がん剤の標的化送達のための分子ビヒクルとして、機能し得ることが示され得た。
【0307】
アプタマーは、細胞SELEX(試験管内進化法)技術を使用して、細胞および組織などの複合体標的に対して、および本発明による配列番号1~配列番号91のいずれかに記載の配列とMHC分子とを含んでなり、好ましくはそれからなるペプチド複合体などに対して、選択され得る。
【0308】
本発明のペプチドを使用して、MHC/ペプチド複合体に対する特異的抗体が生成され、開発され得る。これらは、毒素または放射性物質を患部組織に標的化する治療法のために、使用され得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。この用途は、小規模な転移の検出、または病的組織の大きさと正確な位置確認の判定を助け得る。
【0309】
したがってHLA拘束性抗原と複合体化した、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、組換え抗体を製造する方法を提供することが、本発明のさらなる態様であり、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる遺伝子操作された非ヒト哺乳類を、前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリーを作成するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリーから単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を提示する。HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する抗体を提供することも、本発明のさらなる態様であり、その中で抗体は、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である。
【0310】
このような抗体および一本鎖クラスI主要組織適合性複合体を生産するそれぞれの方法、ならびにこれらの抗体を生産するためのその他のツールは、本発明の目的で、その内容全体が参照により全て明示的に援用される、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2004/084798号パンフレット、国際公開第01/72768号パンフレット、国際公開第03/070752号パンフレット、および文献(Cohen et al.,2003a;Cohen et al.,2003b;Denkberg et al.,2003)で開示される。
【0311】
好ましくは、抗体は、20ナノモル濃度未満、好ましくは10ナノモル濃度未満の結合親和性で複合体に結合し、それは本発明の文脈で「特異的」とも見なされる。
【0312】
本発明は、配列番号1~配列番号91からなる群から選択される配列、または配列番号1~配列番号91と少なくとも88%相同的な(好ましくは同一の)その変異型を含んでなるペプチド、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異型に関し、前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。
【0313】
本発明は、配列番号1~配列番号91からなる群から選択される配列、または、配列番号1~配列番号91と少なくとも88%相同的な(好ましくは同一の)その変異型を含んでなるペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたは変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有する。
【0314】
本発明は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0315】
本発明は、ペプチドが、配列番号1~配列番号91に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になる、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0316】
本発明は、ペプチドが(化学的に)修飾された、および/または非ペプチド結合を含む、本発明によるペプチドにさらに関する。
【0317】
本発明は、本発明によるペプチドにさらに関し、ペプチドは、融合タンパク質の一部であり、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸を含んでなり、またはペプチドは、例えば樹状細胞特異的抗体などの抗体に(またその中に)融合する。
【0318】
本発明は、本発明によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関するが、ただしペプチドは完全(完全長)ヒトタンパク質でない。
【0319】
本発明は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本発明による核酸にさらに関する。
【0320】
本発明は、本発明による核酸を発現できる、発現ベクターにさらに関する。
【0321】
本発明は、医療、特に頭頸部扁上皮がんの治療で使用するための本発明によるペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクターにさらに関する。
【0322】
本発明は、本発明による核酸または本発明による発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。
【0323】
本発明は、抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞である、本発明による宿主細胞にさらに関する。
【0324】
本発明は、本発明による宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞および/またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本発明によるペプチドを製造する方法にさらに関する。
【0325】
本発明は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に、抗原が負荷される、本発明による方法にさらに関する。
【0326】
本発明は、抗原提示細胞が、配列番号1~配列番号91または前記異アミノ酸配列を含有する、前記ペプチドを発現できる、発現ベクターを含んでなる、本発明による方法にさらに関する。
【0327】
本発明は、本発明による方法によって製造される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本発明によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0328】
本発明は、本発明によるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本発明による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0329】
本発明は、記載される任意のペプチド、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による細胞、または本発明による活性化細胞傷害性Tリンパ球の、薬剤としての、または薬剤の製造における、使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0330】
本発明は、薬剤がワクチンである、本発明による使用にさらに関する。本発明は、薬剤ががんに対して有効である、本発明による使用にさらに関する。
【0331】
本発明は、前記がん細胞が、頭頸部扁上皮がん細胞、または急性骨髄性白血病、乳がん、胆管がん、脳がん、慢性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、肝細胞がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞、小細胞肺がん、膀胱がん、および子宮がんなどのその他の固形腫瘍または血液学的腫瘍細胞などである、本発明による使用にさらに関する。
【0332】
本発明は、頭頸部扁上皮がんの診断および/または予後診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本発明によるペプチドベースの特定の標識タンパク質およびバイオマーカーにさらに関する。本発明はまた、がん治療のためのこれらの新規標的の使用に関する。
【0333】
「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含む。無処理または「完全」免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語には、本発明による所望の特性(例えば、頭頸部扁上皮がんマーカー(ポリ)ペプチドの特異的結合、がんマーカー遺伝子を増大レベルで発現する頭頸部扁上皮がん細胞への毒素の送達、および/または頭頸部扁上皮がんマーカーポリペプチドの活性阻害)のいずれかを示しさえすれば、フラグメント(例えば、CDR、Fv、Fab、およびFcフラグメント)、またはこれらの免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子ヒト化バージョンのポリマーもまた含まれる。
【0334】

可能な場合は常に、本発明の抗体は、商業的供給元から購入されてもよい。また本発明の抗体は、周知の方法を使用して生成されてもよい。当業者は、完全長頭頸部扁上皮がんマーカーポリペプチドまたはその断片のいずれかが、本発明の抗体を生成するために使用されてもよいことを理解するであろう。本発明の抗体を製造するために使用されるポリペプチドは、天然原料から部分的にまたは完全に精製されてもよく、または組換えDNA技術を使用して製造されてもよい。
【0335】
例えば、配列番号1~配列番号91ポリペプチドに記載のペプチドなどの本発明によるペプチドをコードするcDNA、またはその変異型またはフラグメントが、原核細胞(例えば、細菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類細胞)で発現され得て、その後、組換えタンパク質が精製されて、本発明による抗体を生成するために使用される、頭頸部扁上皮がんマーカーポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体製剤を生成するために使用され得る。
【0336】
当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の2つ以上の異なるセットの作製が、その目的の用途(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージング、免疫毒素療法)に必要な特異性および親和性を有する抗体を得る可能性を最大化することを理解するであろう。抗体は、それに対して抗体が使用される目的に従って、既知の方法によりそれらの所望の活性について試験される(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、免疫療法など;抗体の作製および試験のさらなるガイダンスについては、例えば、Greenfield,2014(Greenfield,2014)を参照されたい)。例えば、抗体は、ELISAアッセイ、またはウエスタンブロット、ホルマリン固定がんまたは冷凍組織切片の免疫組織化学染色で試験されてもよい。それらの最初の生体外特性解析後、治療または生体内診断用途を意図した抗体が、既知の臨床試験法によって試験される。
【0337】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る可能な自然発生変異を除いて同一である。本明細書では、「モノクローナル抗体」は、それらが所望の拮抗活性を示しさえすれば、その中で重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来しまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方、鎖の残部は、別の種に由来しまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片を特に含む(その内容全体が本明細書に援用される、米国特許第4,816,567号明細書)。
【0338】
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法においては、マウスまたはその他の適切な宿主動物が免疫剤によって典型的に免疫化されて、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を生じさせる。代案としては、リンパ球は、生体外で免疫化されてもよい。
【0339】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるものなどの組換えDNA法によって生産されるものであってもよい。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定され得る(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できる、オリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。
【0340】
インビトロ法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。抗体断片、特にFab断片を作製するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の通例の技術を使用して達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。パパイン消化の例は、国際公開第94/29348号パンフレットおよび米国特許第4,342,566号明細書に記載される。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一抗原結合部位を有するFab断片と称される2つの同一の抗原結合断片と、残りのFc断片とを典型的に生じる。ペプシン処理は、F(ab’)2断片およびpFc’断片をもたらす。
【0341】
抗体断片は、その他の配列に付着するかどうかに関わりなく、断片の活性が非修飾抗体または抗体断片と比較して顕著に変化せずまたは損なわれないという条件で、特定領域または特定アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、またはその他の選択された修飾もまた含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合できるアミノ酸の除去/付加、そのバイオ寿命増大、その分泌特性改変などのいくつかの追加的な特性を提供し得る。いずれにしても、抗体断片は、結合活性、結合領域における結合調節などの生理活性特性を有しなくてはならない。抗体の機能性または活性領域は、タンパク質の特定領域の変異誘発と、それに続く発現と、発現したポリペプチドの試験によって同定されてもよい。このような方法は、当該技術分野の熟練した実務家には容易に分かり、抗体断片をエンコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。
【0342】
本発明の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでなってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体などのヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(抗体のFv、Fab、Fab’またはその他の抗原結合部分配列など)である。ヒト化抗体としては、その中でレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト生物種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入CDRまたはフレームワーク配列のどちらにも見いだされない、残基を含んでなってもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含んでなり、その中ではCDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、至適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部もまた含んでなる。
【0343】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒト起源から導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と称され、それは典型的に「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、齧歯類CDR(複数)またはCDR(単数)配列を対応するヒト抗体配列によって置換することで、基本的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、その中では実質的に完全でないヒト可変ドメインが、非ヒト生物種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的にヒト抗体であり、その中ではいくつかのCDR残基と、おそらくはいくつかのFR残基とが、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換される。
【0344】
免疫化に際して、内因性免疫グロブリン生成不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生できる遺伝子組換え動物(例えばマウス)を用い得る。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体生成の完全阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞系変異マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転写は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー中でも産生され得る。
【0345】
本発明の抗体は、好ましくは薬学的に許容可能な担体中で、対象に投与される。典型的に、製剤中で適当量の薬理的に許容可能な塩が使用されて、製剤を等張にする。薬理的に許容可能な担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス徐放性製剤が挙げられ、そのマトリックスは、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子などの造形品の形態である。当業者には、例えば、投与される抗体の投与経路と濃度次第で、特定の担体がより好ましくあってもよいことが明らかであろう。
【0346】
抗体は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)によって、またはその有効形態での血流への送達を確実にする輸液などのその他の方法によって、対象、患者、または細胞に投与され得る。抗体はまた、腫瘍内または腫瘍周囲経路によって投与されて、局所性ならびに全身性の治療効果を発揮してもよい。局所注射または静脈注射が好ましい。
【0347】
抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは、経験的に判定されてもよく、このような判定をすることは、当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与しなくてはならない抗体用量が、例えば、抗体を投与される対象、投与経路、使用される特定の抗体型、および投与されるその他の薬剤次第で変動することを理解するであろう。単独使用される抗体の典型的な1日量は、上述の要素次第で、1日当たり約1(μg/kg~最大100mg/kg体重またはそれ以上の範囲に及ぶかもしれない。抗体の投与に続いて、好ましくは頭頸部扁上皮がんの治療のために、治療用抗体の有効性が、熟練した実務家に良く知られている様々な様式で評価され得る。例えば、標準腫瘍イメージング技術を使用して、治療を受ける対象におけるがんの大きさ、数、および/または分布がモニターされてもよい。抗体投与不在下で起こるであろう疾患経過と比較して、腫瘍成長を停止させ、腫瘍収縮をもたらし、および/または新規腫瘍の発生を予防する、治療的に投与された抗体は、がん治療のための有効な抗体である。
【0348】
特異的ペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)を製造する方法を提供することもまた、本発明のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから生成され得て、それらの親和性は、相補性決定領域を標的化する変異誘発によって増加され得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイが利用され得る(米国特許第2010/0113300号明細書、(Liddy et al.,2012))。ファージディスプレイ中に、そして薬剤として実用する際に、T細胞受容体を安定化させる目的で、例えば、非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αおよびβ鎖を連結させ得る(Boulter et al.,2003;Card et al.,2004;Willcox et al.,1999)。T細胞受容体は、標的細胞上で特定機能を発揮させるために、毒素、薬剤、サイトカイン(例えば、米国特許第2013/0115191号明細書を参照されたい)、および抗CD3ドメインのようなエフェクター細胞動員ドメインなどに、連結させ得る。さらにそれは、養子免疫伝達のために使用されるT細胞において発現され得た。さらなる情報は、国際公開第2004/033685A1号パンフレットおよび国際公開第2004/074322A1号パンフレットにある。TCRの組み合わせは、国際公開第2012/056407A1号パンフレットに記載される。さらなる製造法は、国際公開第2013/057586A1号パンフレットで開示される。
【0349】
さらに本発明のペプチドおよび/またはTCRまたは抗体またはその他の結合分子を使用して、病理学者の生検サンプルに基づくがん診断を確認し得る。
【0350】
抗体またはTCRはまた、生体内診断アッセイのために使用されてもよい。通常、抗体は、腫瘍が位置確認され得るように、免疫シンチグラフィーを使用して、放射性ヌクレオチド(111In、99Tc、14C、131I、H、32Pまたは35Sなど)で標識される。一実施形態では、抗体またはそれらの断片は、上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の2つ以上の標的の細胞外ドメインに結合し、親和性(Kd)は1×10μM未満である。
【0351】
診断用の抗体は、様々なイメージング法による検出に適するプローブで標識されてもよい。プローブの検出方法としては、蛍光、光学、共焦点および電子顕微鏡検査;磁気共鳴画像法および分光法;蛍光透視法、コンピュータ断層撮影および陽電子放射型断層撮影法が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なプローブとしては、フルオレセイン、ローダミン、エオジンおよびその他のフルオロフォア、放射性同位体、金、ガドリニウムおよびその他のランタニド、常磁性鉄、フッ素18およびその他の陽電子放出放射性核種が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、プローブは二官能価または多官能価であってもよく、列挙される方法の2つ以上によって検出可能であってもよい。これらの抗体は、前記プローブで直接または間接的に標識されてもよい。特に十分に技術分野で承認されている、プローブの抗体への付着としては、プローブの共有結合、プローブの抗体への組み込み、およびプローブ結合のためのキレート化合物の共有結合が挙げられる。免疫組織化学的検査では、疾患組織サンプルは、新鮮または冷凍であってもよく、またはパラフィン包埋されてホルマリンなどの保存料で固定されてもよい。サンプルを含有する固定または包埋切片は、標識一次抗体および二次抗体と接触されて、抗体を使用して原位置タンパク質発現が検出される。
【0352】
本発明の別の態様は、活性化T細胞を製造するインビトロ法を含み、方法は、生体外T細胞を、適切な抗原提示細胞の表面に発現される抗原負荷ヒトMHC分子に、T細胞を抗原特異的様式で活性化するのに十分な時間にわたり接触させるステップを含んでなり、抗原は本発明によるペプチドである。好ましくは、抗原提示細胞と共に、十分な量の抗原が使用される。
【0353】
好ましくは、哺乳類細胞は、TAPペプチド輸送体のレベルまたは機能が皆無でありまたは低下している。TAPペプチド輸送体が欠如している適切な細胞としては、T2、RMA-S、およびショウジョウバエ細胞が挙げられる。TAPは、抗原プロセシングに関連する輸送体である。
【0354】
ヒトペプチド負荷欠乏細胞系T2は、カタログ番号CRL1992の下に、米国郵便番号20852メリーランド州ロックビル市パークロウンドライブ12301番地の米国微生物系統保存機関から入手でき;ショウジョウバエ細胞株Schneider株2は、カタログ番号CRL19863の下にATCCから入手でき;マウスRMA-S細胞株は、Ljunggren et al.(Ljunggren and Karre,1985)に記載される。
【0355】
好ましくは、移入前に、宿主細胞は、MHCクラスI分子を実質的に発現しない。刺激因子細胞が、B7.1、B7.2、ICAM-1、およびLFA3のいずれかなどのT細胞のための共刺激シグナルを提供するのに重要な分子を発現することもまた好ましい。多数のMHCクラスI分子および共刺激因子分子の核酸配列は、GenBankおよびEMBLデータベースから公的に入手可能である。
【0356】
MHCクラスIエピトープが抗原として使用される場合、T細胞はCD8陽性T細胞である。
【0357】
抗原提示細胞が、このようなエピトープを発現するために形質移入される場合、好ましくは、細胞は、配列番号1~配列番号91、またはその変異アミノ酸配列を含有するペプチドを発現する能力がある発現ベクターを含んでなる。
【0358】
生体外でT細胞を製造するために、その他のいくつかの方法が使用されてもよい。例えば、自己由来腫瘍浸潤性リンパ球が、CTLを生成するために使用され得る。Plebanski et al.(Plebanski et al.,1995)は、T細胞の調製において、自己由来末梢血リンパ球(PLB)を利用した。さらに、樹状細胞をペプチドまたはポリペプチドでパルス処理する、または組換えウイルスで感染させることによる、自己由来T細胞の製造も可能である。B細胞もまた、自己由来T細胞の製造において使用され得る。さらに、ペプチドまたはポリペプチドでパルス処理された、または組換えウイルスで感染されたマクロファージが、自己CTLの調製において使用されてもよい。S.Walter et al.(Walter et al.,2003)は、人工抗原提示細胞(aAPC)を使用したT細胞の生体外プライミングを記載し、それはまた、選択されたペプチドに対するT細胞を製造するための適切な方法でもある。本発明では、ビオチン:ストレプトアビジン生化学によって、あらかじめ形成されたMHC:ペプチド複合体を表面ポリスチレン粒子(ミクロビーズ)に共役することで、aAPCが生成された。このシステムは、aAPC上のMHC密度の正確な調節を可能にし、それは、血液サンプルから高効率で、高または低結合活性の抗原特異的T細胞応答を選択的に引き起こすことを可能にする。MHC:ペプチド複合体の他に、aAPCは、それらの表面に共役する、抗CD28抗体のような共刺激活性を有するその他のタンパク質を保有すべきである。さらに、このようなaAPCベースのシステムは、例えばサイトカイン様インターロイキン12などの適切な可溶性因子の付加を要することが多い。
【0359】
同種異系細胞はまた、T細胞の調製において使用されてもよく、方法は、参照により本明細書に援用される、国際公開第97/26328号パンフレットで詳述される。例えば、ショウジョウバエ細胞およびT2細胞に加えて、その他の細胞を使用して、CHO細胞、バキュロウイルス感染昆虫細胞、細菌、酵母、およびワクシニア感染標的細胞などの抗原が提示されてもよい。さらに植物ウイルスが使用されてもよい(例えば、外来性ペプチド提示のための高収率システムとしてのササゲモザイクウイルス開発を記載するPorta et al.(Porta et al.,1994を参照されたい)。
【0360】
本発明のペプチドに向けられた活性化T細胞は、治療法において有用である。したがって、本発明のさらなる態様は、前述の本発明の方法によって入手可能な活性化T細胞を提供する。
【0361】
上記方法によって製造される活性化T細胞は、配列番号1~配列番号91のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0362】
好ましくは、T細胞は、そのTCRを通じた、HLA/ペプチド複合体(例えば結合)との相互作用によって、細胞を認識する。T細胞は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法で有用であり、患者には有効数の活性化T細胞が投与される。患者に投与されるT細胞は、患者に由来して、上述のように活性化されてもよい(すなわち、それらは自己T細胞である)。代案としては、T細胞は、患者でなく別の個人に由来する。もちろん、個人が健常人であれば、それが好ましい。「健常人」によって、本発明者らは、個人が概して健康良好であり、好ましくは有能な免疫系を有して、より好ましくは容易に検査され検出され得るいかなる疾患にも罹患していないことを意味する。
【0363】
生体内で、本発明によるCD8陽性T細胞の標的細胞は、(時にMHCクラスIIを発現する)腫瘍細胞であり得て、および/または(時にMHCクラスIIもまた発現する;(Dengjel et al.,2006))腫瘍(腫瘍細胞)周囲の間質細胞であり得る。
【0364】
本発明のT細胞は、治療用組成物の活性成分として使用されてもよい。したがって、本発明は、その標的細胞が、本発明のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法もまた提供し、方法は、上で定義されるようなT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる。
【0365】
「異常に発現される」によって、本発明者らは、正常組織における発現レベルと比較して、ポリペプチドが過剰発現されること、または腫瘍がそれに由来する組織においては遺伝子がサイレントであるが、腫瘍においてはそれが発現されることもまた意味する。「過剰発現」によって、本発明者らは、ポリペプチドが、正常組織に存在するレベルの少なくとも1.2倍のレベルで;好ましくは正常組織に存在するレベルの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍のレベルで存在することを意味する。
【0366】
T細胞は、例えば上で記載されるものなどの当該技術分野で公知の方法によって得られてもよい。
【0367】
T細胞のこのいわゆる養子免疫伝達のためのプロトコルは、当該技術分野で周知である。レビューは、Gattioni et al.およびMorgan et al.(Gattinoni et al.,2006;Morgan et al.,2006)にある。
【0368】
本発明の別の態様は、その核酸がクローン化されて、好ましくはT細胞である宿主細胞に導入されるT細胞受容体を生成するための、MHCと複合体形成するペプチドの使用を含む。次に、この遺伝子操作T細胞は、がん治療のために患者に移入され得る。
【0369】
本発明の任意の分子、すなわちペプチド、核酸、抗体、発現ベクター、細胞、活性化T細胞、T細胞受容体またはそれをエンコードする核酸は、免疫応答を逃れた細胞によって特徴付けられる障害の治療に有用である。したがって本発明の任意の分子は、薬剤として、または薬剤の製造において使用されてもよい。分子は、単独で、または本発明のその他の分子または既知の分子との組み合わせで、使用されてもよい。
【0370】
本発明は、
(a)溶液中のまたは凍結乾燥形態の上述の医薬組成物を含有する容器;
(b)任意選択的に、凍結乾燥製剤のための希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器;
(c)任意選択的に、(i)溶液の使用、または(ii)凍結乾燥製剤の再構成および/または使用のための取扱説明書
を含んでなるキットをさらに目的とする。
【0371】
キットは、(iii)緩衝液、(iv)希釈剤、(v)濾過、(vi)針、または(v)シリンジの1つまたは複数をさらに含んでなってもよい。容器は、好ましくは、ボトル、バイアル、シリンジまたは試験管であり;それは、多回使用容器であってもよい。医薬組成物は、好ましくは凍結乾燥される。
【0372】
本発明のキットは、好ましくは、適切な容器内の本発明の凍結乾燥製剤と、その再構成および/または使用のための取扱説明書とを含んでなる。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば二重チャンバーバイアル)、シリンジ(二重チャンバーシリンジなど)、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。好ましくは、キットおよび/または容器は、容器上の、または容器に付随する、取扱説明を含み、それは再構成および/または使用上の指示を示す。例えば、ラベルは、凍結乾燥製剤が、上述されるようなペプチド濃度に再構成されることを表示してもよい。ラベルは、製剤が皮下投与に有用であり、または皮下投与用であることをさらに表示してもよい。
【0373】
製剤を収容する容器は、多回使用バイアルであってもよく、それは再構成製剤の反復投与(例えば2~6回の投与)を可能にする。キットは、適切な希釈剤(例えば炭酸水素ナトリウム溶液)を含んでなる、第2の容器をさらに含んでなってもよい。
【0374】
希釈剤と凍結乾燥製剤の混合時に、再構成製剤中の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15mg/mL/ペプチド(=75μg)であり、好ましくは3mg/mL/ペプチド(=1500μg)以下である。キットは、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および取扱説明が掲載されるパッケージインサートをはじめとする商業的および使用者観点から望ましい、その他の物品をさらに含んでもよい。
【0375】
本発明のキットは、その他の構成要素(例えば、その他の化合物またはこれらのその他の化合物の医薬組成物)が添加されたまたは添加されない、本発明による医薬組成物製剤を含有する単回容器を有してもよく、または各構成要素のための別個の容器を有してもよい。
【0376】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物(アジュバント(例えばGM-CSF)、化学療法剤、天然物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管新生因子または阻害剤、アポトーシス誘導剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の同時投与と合わせて使用するためにパッケージされた、本発明の製剤を含む。キットの構成要素は、あらかじめ混合されてもよく、または各構成要素は、患者への投与前に別個の異なる容器内にあってもよい。キットの構成要素は、1つまたは複数の液体溶液、好ましくは水溶液、より好ましくは無菌水溶液中で、提供されてもよい。またキットの構成要素は、固体として提供されてもよく、それは、好ましくは別の異なる容器内に提供される、適切な溶媒の添加によって液体に変換されてもよい。
【0377】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または固体または液体を封入するその他のあらゆる手段であってもよい。通常、2つ以上の構成要素がある場合、キットは、第2のバイアルまたはその他の容器を含有して、別々の投薬を可能にする。キットは、薬学的に許容可能な液体のための別の容器もまた、含有してもよい。好ましくは、治療用キットは、装置(例えば、1本または複数本の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を含有して、本キットの構成要素である本発明の作用物質の投与を可能にする。
【0378】
本製剤は、経口(腸内)、経鼻、眼、皮下、皮内、筋肉内、静脈内または経皮などの任意の許容可能な手段によるペプチド投与に適するものである。好ましくは、投与はs.c.であり、最も好ましくはi.d.投与であり、輸液ポンプによってもよい。
【0379】
本発明のペプチドは、頭頸部扁上皮がんから単離されたので、本発明の薬剤は、好ましくは頭頸部扁上皮がんを治療するために用いられる。
【0380】
本発明は、プレスクリーニングTUMAPの貯蔵庫から選択される少なくとも1つのペプチドを含んでなる医薬組成物を製造するステップを含んでなる、個々の患者のための個別化薬剤を製造する方法にさらに関し、医薬組成物中で使用される少なくとも1つのペプチドは、個々の患者における適切さについて選択される。一実施形態では、医薬組成物はワクチンである。方法はまた、TCR単離などの下流用途、または可溶性抗体、およびその他の治療選択肢のためのT細胞クローンを製造するためにも適応され得る。
【0381】
「個別化医薬品」は、積極的個別化がんワクチンおよび自己由来患者組織を使用した養子細胞療法をはじめとするこのような個々の患者の治療のためにのみ使用される、一個人の患者のために特に調整された治療法を意味するものとする。
【0382】
本明細書の用法では、「貯蔵庫」という用語は、特定の腫瘍型における免疫原性および/または過剰提示について予備スクリーニングされている、一群のまたは一組のペプチドを指すものとする。「貯蔵庫」という用語は、ワクチンに含まれる特定のペプチドが、予備製造されて物理的設備内で貯蔵されることを暗示することは意図されないが、その可能性も検討される。ペプチドは、製造される各個別化ワクチンのために新規に製造されてもよく、または予備製造されて貯蔵されてもよいことが、明示的に検討される。貯蔵庫(例えば、データベースの形態)は、多様なHLA-AHLA-BおよびHLA-C対立遺伝子を有する頭頸部扁上皮がん患者の腫瘍組織において高度に過剰発現される、腫瘍関連ペプチドから構成される。それは、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチドまたは伸長MHCクラスIペプチドを含有してもよい。いくつかの頭頸部扁上皮がん組織から収集された腫瘍関連ペプチドに加えて、貯蔵庫は、HLA-A02およびHLA-A24マーカーペプチドを含有してもよい。これらのペプチドは、TUMAPによって誘導されるT細胞免疫の規模を定量的に比較できるようにし、したがって抗腫瘍応答を引き起こすワクチンの能力について、重要な結論が導かれるようにする。第2に、それらは、患者において、「自己」抗原に由来するTUMAPに対するいかなるワクチン誘導T細胞応答も観察されない症例において、「非自己」抗原に由来する重要な陽性対照ペプチドとして機能する。第3に、それは、患者の免疫能力状態に関する結論が導かれるようにしてもよい。
【0383】
貯蔵庫のためのTUMAPは、遺伝子発現解析、質量分析、およびT細胞免疫学(XPresident(登録商標))を組み合わせた、統合ゲノム機能解析アプローチを使用して同定される。アプローチは、高い割合の腫瘍上に真に存在するが、正常組織上では発現されず、または最小限にのみ発現されるTUMAPだけが、さらなる分析のために選択されることを保証する。最初のペプチド選択のために、患者由来の頭頸部扁上皮がんサンプルおよび健常ドナー由来の血液が段階的なアプローチで分析された:
1.悪性物質からのHLAリガンドは、質量分析法によって同定された
2.ゲノム規模メッセンジャーリボ核酸(mRNA)発現解析を使用して、一連の正常器官および組織と比較して悪性組織(頭頸部扁上皮がん)中の遺伝子過剰発現が同定された
3.同定されたHLAリガンドは、遺伝子発現データと比較された。好ましくは、ステップ2で検出されたような選択的に発現されまたは過剰発現される遺伝子によってコードされる、腫瘍組織上で過剰提示されまたは選択的に提示されるペプチドが、多重ペプチドワクチンのための適切なTUMAP候補と見なされた。
4.同定されたペプチドのTUMAPとしての妥当性を支持する追加的な証拠を同定するために、文献調査が実施された
5.mRNAレベルでの過剰発現の関連性は、ステップ3からの選択されたTUMAPの腫瘍組織上における再検出と、健常組織における検出の欠如(または稀な)検出によって確認された。
6.選択されたペプチドによる生体内T細胞応答の誘導が可能かどうかを評価するために、健常ドナーならびに頭頸部扁上皮がん患者からのヒトT細胞を使用して、生体外免疫原性アッセイが実施された。
【0384】
一態様では、貯蔵庫に含める前に、免疫原性についてペプチドが予備スクリーニングされる。制限を意図しない一例として、貯蔵庫に包含されるペプチドの免疫原性は、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体が負荷された人工抗原提示細胞による、健常ドナーからのCD8+T細胞の反復刺激を通じた、生体外T細胞プライミングを含んでなる方法によって判定される。
【0385】
この方法は、稀ながんに、そして稀な発現プロファイルを有する患者にとって、好ましい。一定組成を有する多重ペプチド混合物とは対照的に、現在開発されている貯蔵庫は、腫瘍における抗原の実際の発現とワクチンとの顕著により高いマッチングを可能にする。多標的アプローチでは、各患者のために、選択された単一のまたは組み合わされた数種の「既製」ペプチドが利用される。理論上は、例えば50個の抗原性ペプチドのライブラリーからの5個の異なる抗原性ペプチドの選択に基づくアプローチは、それだけでおよそ1700万個の可能な医薬品(DP)組成物をもたらす。
【0386】
一態様では、ペプチドは、本明細書に記載される、または以下のような本発明による方法に基づく、個々の患者に対するそれらの適切さに基づいて、ワクチンへの包含のために選択される。
【0387】
HLA表現型、トランスクリプトミクスおよびペプチドミクスデータが、患者の腫瘍材料および血液サンプルから収集されて、「貯蔵庫」および患者に特有の(すなわち変異)TUMAPを含有する、各患者に対して最も適切なペプチドが同定される。患者の腫瘍において選択的にまたは過剰発現されて、可能であれば、患者の個々のPBMCと共に試験すると、強力な生体外免疫原性を示すペプチドが選択される。
【0388】
好ましくは、ワクチンに含まれるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で同定されたペプチドを上述のペプチド貯蔵庫(データベース)と比較するステップと;(c)少なくとも1つのペプチドを患者において同定された腫瘍関連ペプチドに関連がある貯蔵庫(データベース)から選択するステップとを含んでなる方法によって同定される。例えば、腫瘍サンプルによって提示されるTUMAPは、(a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)前記発現データを、前記腫瘍サンプル中のMHCクラスI/またはクラスII分子と結合しているMHCリガンドの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって同定される。好ましくは、MHCリガンドの配列は、腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から結合ペプチドを溶出させて、溶出したリガンドを配列決定することで同定される。好ましくは、腫瘍サンプルおよび正常組織は、同一患者から入手される。
【0389】
貯蔵庫(データベース)モデルを使用してペプチドを選択するのに加えて、またはその代案として、TUMAPを患者において新規に同定し、次に、ワクチンに含めてもよい。一例として、(a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと;(a2)前記発現データを、前記腫瘍サンプル中のMHCクラスI/またはクラスII分子と結合しているMHCリガンドの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって、候補TUMAPが患者において同定されてもよい。別の実施例として、個々の患者からの正常な対応組織と比較して、腫瘍サンプルに特有の変異を含有するタンパク質が同定されてもよく、特異的に変異を標的とするTUMAPが同定され得る。例えば、腫瘍のゲノム、および対応する正常組織のゲノムは、全ゲノム配列決定によって配列決定され得る。遺伝子のタンパク質コード領域における非同義の変異を発見するために、ゲノムDNAおよびRNAが腫瘍組織から抽出され、正常な非変異ゲノム生殖細胞系DNAが末梢血単核細胞(PBMC)から抽出される。適用されたNGSアプローチは、タンパク質コード領域の再配列決定(エクソーム再配列決定)に限定される。この目的で、供給業者が提供する標的富化キットを使用して、ヒトサンプルからのエクソンDNAが捕捉され、例えばHiSeq2000(Illumina)による配列決定がそれに続く。それに加えて、遺伝子発現の直接定量化と、変異遺伝子が患者の腫瘍において発現されることの妥当性評価とのために、腫瘍mRNAが配列決定される。結果として得られる数百万の配列読み取りは、ソフトウェアアルゴリズムを通じて処理される。出力一覧は、変異および遺伝子発現を含有する。PBMC由来生殖細胞系の多様性と比較することで腫瘍特異的体細胞変異が判定され、優先順位がつけられる。次に、新規に同定されたペプチドは、貯蔵庫について上述した免疫原性について試験され得て、適切な免疫原性を保持する候補TUMAPが、ワクチンへの包含のために選択される。
【0390】
例示的一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を上述の方法によって同定するステップと;(b)a)で同定されたペプチドを対応する正常組織との比較で腫瘍における免疫原性および過剰提示について予備選別されたペプチドの貯蔵庫と比較するステップと;(c)患者において同定された腫瘍関連ペプチドと関連がある、貯蔵庫からの少なくとも1つのペプチドを選択するステップと(d)任意選択的に、(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0391】
例示的一実施形態では、ワクチンに包含されるペプチドは、(a)個々の患者からの腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;(b)(a)で新規に同定された少なくとも1つのペプチドを選択して、その免疫原性を確認するステップとによって同定される。
【0392】
ひとたび個別化ペプチドベースのワクチンのためのペプチドを選択したら、ワクチンを製造する。ワクチンは、好ましくは、約33%DMSOなどの20~40%DMSO、好ましくは約30~35%DMSOに溶解された、個々のペプチドからなる液体製剤である。
【0393】
製品に包含される各ペプチドをDMSOに溶解する。単一ペプチド溶液の濃度は、製品に包含されるペプチド数に応じて選択しなくてはならない。単一ペプチドDMSO溶液を等量で混合し、ペプチド当たり約2.5mg/mlの濃度で、製品に包含される全てのペプチドを含有する溶液を得る。次に、混合溶液を注射用水で1:3に希釈して、33%DMSO中でペプチド当たり0.826mg/mlの濃度を得る。希釈溶液を0.22μmの無菌フィルターを通して濾過する。最終バルク溶液を得る。
【0394】
最終バルク溶液をバイアルに充填して、使用時まで-20℃で保存する。1本のバイアルは、0.578mgの各ペプチドを含有する700μLの溶液を含有する。このうち、500μL(ペプチド当たりおよそ400μg)を皮内注射のために適用する。
【0395】
がんを治療するために有用であるのに加えて、本発明のペプチドは、診断法としてもまた有用である。ペプチドは頭頸部扁上皮がん細胞から生成されたので、そしてこれらのペプチドは正常組織には存在せずまたはより低レベルで存在すると判定されたので、これらのペプチドを利用してがんの存在を診断し得る。
【0396】
特許請求されるペプチドの血液サンプル中の組織生検上の存在は、がん診断において病理学者を補佐し得る。抗体、質量分析法またはその他の当該技術分野で公知の方法の手段による特定のペプチドの検出は、組織サンプルが悪性、または炎症性または概して病的ことを病理学者に告げ得て、または頭頸部扁上皮がんのためのバイオマーカーとして利用され得る。ペプチド基の存在は、病的組織の分類または下位分類を可能にし得る。
【0397】
患部組織検体上のペプチドの検出は、特にTリンパ球が作用機序に関与することが知られておりまたは予測される場合に、免疫系が関与する治療法の利点を判定できるようにする。MHC発現の喪失は、それによって感染悪性細胞が免疫監視を逃れる、十分に説明された機序である。したがってペプチドの存在は、この機序が、分析した細胞によって活用されていないことを示す。
【0398】
本発明のペプチドは、ペプチドまたはMHC分子と複合体化したペプチドに対するT細胞応答または抗体応答などの、これらのペプチドに対するリンパ球応答を分析するのに使用されるかもしれない。これらのリンパ球応答は、さらなる治療段階を決定するための予後マーカーとして使用され得る。これらの応答はまた、例えば、タンパク質、核酸、自己材料のワクチン接種や、リンパ球の養子免疫伝達などの異なる手段によるリンパ球応答の誘導を目指す、免疫療法アプローチにおける代理応答マーカーとして使用され得る。遺伝子治療の設定では、副作用の評価において、ペプチドに対するリンパ球応答が考慮され得る。リンパ球応答のモニタリングはまた、例えば移植片対宿主病および宿主対移植片病の検出など、移植治療の経過観察検査のための有益な手段かもしれない。
【0399】
本発明をここで、その好ましい実施形態を描写する以下の実施例において、添付図面を参照して説明するが、それでもなお、それらには限定されないものとする。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体が参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0400】

図1A図1A-1Dは、正常組織(白色バー)および頭頸部扁上皮がん(黒色バー)における、様々なペプチドの過剰提示を示す。遺伝子記号:KRT6C、KRT6A、KRT6B、ペプチド:GLAGGFGGPGFPV(配列番号1);組織左から右へ:6脂肪組織、8副腎、1胆管、24血液細胞、15血管、10骨髄、15脳、7乳房、11食道、2眼、6胆嚢、16心臓、17腎臓、27大腸、24肝臓、49肺、7リンパ節、12神経、5卵巣、15膵臓、6副甲状腺腺、3腹膜、7脳下垂体、10胎盤、3胸膜、11前立腺、9骨格筋、11皮膚、16小腸、13脾臓、9胃、8精巣、3胸腺、8甲状腺、18気管、7尿管、8膀胱、6子宮、12頭頸部、17HNSCC。
図1B】遺伝子記号:KRT6C、KRT6A、KRT6B、ペプチド:SLYGLGGSKRISI(配列番号3);組織左から右へ:6脂肪組織、8副腎、1胆管、24血液細胞、15血管、10骨髄、15脳、7乳房、11食道、2眼、6胆嚢、16心臓、17腎臓、27大腸、24肝臓、49肺、7リンパ節、12神経、5卵巣、15膵臓、6副甲状腺腺、3腹膜、7脳下垂体、10胎盤、3胸膜、11前立腺、9骨格筋、11皮膚、16小腸、13脾臓、9胃、8精巣、3胸腺、8甲状腺、18気管、7尿管、8膀胱、6子宮、12頭頸部、17HNSCC。
図1C】遺伝子記号:KRT5、ペプチド:STASAITPSV(配列番号9);組織左から右へ:6脂肪組織、8副腎、1胆管、24血液細胞、15血管、10骨髄、15脳、7乳房、11食道、2眼、6胆嚢、16心臓、17腎臓、27大腸、24肝臓、49肺、7リンパ節、12神経、5卵巣、15膵臓、6副甲状腺腺、3腹膜、7脳下垂体、10胎盤、3胸膜、11前立腺、9骨格筋、11皮膚、16小腸、13脾臓、9胃、8精巣、3胸腺、8甲状腺、18気管、7尿管、8膀胱、6子宮、12頭頸部、17HNSCC。
図1D】遺伝子記号:SLC25A3、ペプチド:FVAGYIAGV(配列番号61);組織左から右へ:3細胞株(2腎臓、1膵臓)、7正常組織(1副腎、1結腸、2リンパ節、1胎盤、2脾臓)、36がん組織(5白血病、3脳がん、2乳がん、1食道がん、1胆嚢がん、5頭頸部がん、1腎臓がん、1肝臓がん、8肺がん、4リンパ節がん、3卵巣がん、2胃がん)。
図1E図1E-1Qは、異なるがん組織における様々なペプチドの過剰提示を示す(黒点)。上部:技術的反復測定値からの中央値MSシグナル強度は、その上でペプチドが検出された、単一のHLA-A02陽性正常(灰色点)および腫瘍サンプル(黒色点)の点としてプロットされた。腫瘍および正常サンプルは、起源臓器によってグループ分けされ、箱ひげ図は、複数サンプルにわたって正規化されたシグナル強度の中央値、25および75パーセンタイル数(箱)、および最小および最大(ひげ)に相当する。正常臓器は、リスクカテゴリーによって順序付けられる。(血液細胞、血管、脳、肝臓、肺:高リスク、灰色点;生殖器、乳房、前立腺:低リスク、灰色点;全てのその他の臓器:中リスク;灰色点)。下部:各臓器中の相対ペプチド検出頻度が、棒グラフとして示される。パネル下の数値は、各臓器(N=526個の正常サンプル、N=562個の腫瘍サンプル)について分析された、サンプル総数当たりのペプチドが検出されたサンプル数を示す。ペプチドがサンプル上で検出されたが、技術的理由で定量化され得なかった場合、サンプルは、この検出頻度表示に含まれるが、図の上部に点は示されない。組織(左から右へ):正常サンプル:血液細胞;bloodvess(血管);脳;心臓;肝臓;肺;脂肪(脂肪組織);adren.gl.(副腎);胆管;膀胱;BM(骨髄);軟骨;esoph(食道);眼;gallb(胆嚢);頭頸部;腎臓;arge_int(大腸);LN(リンパ節);神経;膵臓;parathyr(副甲状腺);perit(腹膜);pituit(下垂体);胸膜;skel.mus(骨格筋);皮膚;small_int(小腸);脾臓;胃;甲状腺;気管;尿管;乳房;卵巣;胎盤;前立腺;精巣;胸腺;子宮。腫瘍サンプル:AML:急性骨髄性白血病;BRCA:乳がん;CCC:胆管細胞がん;CLL:慢性リンパ球性白血病;CRC:結腸直腸がん;GBC:胆嚢がん;GBM:神経膠芽腫;GC:胃がん;GEJC:胃心臓食道、がん;HCC:肝細胞がん;HNSCC:頭頸部がん;MEL:黒色腫;NHL:非ホジキンリンパ腫;NSCLC:非小細胞肺がん;OC:卵巣がん;OSCAR:食道がん;PACA:膵臓がん;PRCA:前立腺がん;RCC:腎細胞がん;SCLC:小細胞肺がん;UBC:尿膀胱がん;UEC:子宮および子宮内膜がん。遺伝子記号:KRT6C、KRT6A、KRT1、KRT6B、KRT75、KRT5、ペプチド:PVCPPGGIQEV(配列番号2)
図1F】遺伝子記号:PKP1、ペプチド:SMLNNIINL(配列番号15)
図1G】遺伝子記号:PRKDC、ペプチド:GLIEWLENTV(配列番号45)
図1H】遺伝子記号:ATP5G2、ATP5G1、ATP5G3、ペプチド:AILGFALSEA(配列番号57)
図1I】遺伝子記号:ITGB4、ペプチド:SLSDIQPCL(配列番号58)
図1J】遺伝子記号:KRT5、ペプチド:ALMDEINFMKM(配列番号63)
図1K】遺伝子記号:ESRP2、ペプチド:ALASAPTSV(配列番号75)
図1L】遺伝子記号:PARP9、ペプチド:ILFDEVLTFA(配列番号76)
図1M】遺伝子記号:MCM4、ペプチド:QLLQYVYNL(配列番号83)
図1N】遺伝子記号:FHAD1、ペプチド:QLIEKITQV(配列番号85)
図1O】遺伝子記号:PLEC、ペプチド:ALPEPSPAA(配列番号87)
図1P】遺伝子記号:G3BP1、ペプチド:TLNDGVVVQV(配列番号90)
図1Q】遺伝子記号:ODC1、ペプチド:MLFENMGAYTV(配列番号91)。
図2A図2A-Cは、正常組織(白色バー)および15頭頸部扁上皮がんサンプル(黒色バー)のパネルにおいて、頭頸部扁上皮がんで高度に過剰発現されまたは排他的に発現される、本発明の起源遺伝子の例示的発現プロファイルを示す。遺伝子記号:PGLYRP4、ペプチド:AIYEGVGWNV(配列番号33)
図2B】遺伝子記号:PAPL、ペプチド:KLLPGVQYV(配列番号38);図2C)遺伝子記号:LGALS7、LGALS7B、ペプチド:RLVEVGGDVQL(配列番号53)。
図2C】遺伝子記号:LGALS7、LGALS7B、ペプチド:RLVEVGGDVQL(配列番号53)。
図3】ペプチド特異的多量体染色後における、例示的免疫原性データ:フローサイトメトリー結果を示す。
図4-1】健常HLA-A02+ドナーのペプチド特異的生体外CD8+T細胞応答の例示的結果を示す。CD8+T細胞は、それぞれ配列番号17ペプチド(A、左側パネル)、配列番号28ペプチド(B、左側パネル)、および配列番号29ペプチド(C、左側パネル)と複合体形成する、抗CD28mAbおよびHLA-A02で被覆された、人工APCを用いてプライミングされた。3サイクルの刺激後、ペプチド反応性細胞の検出が、A02/配列番号17(A)、A02/配列番号28(B)またはA02/配列番号29(C)を用いた2D多量体染色によって実施された。右パネル(A、B、およびC)は、無関係のA02/ペプチド複合体で刺激された細胞の対照染色を示す。生存一重細胞は、CD8+リンパ球についてゲートされた。ブーリアンゲートは、異なるペプチドに対して特異的な多量体によって検出された、擬陽性事象の排除を助けた。CD8+リンパ球の中の特異的多量体+細胞の頻度が示される。
図4-2】同上
【実施例
【0401】
実施例1
細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチドの同定および定量化
組織サンプル
患者の腫瘍組織は、Asterand(米国ミシガン州デトロイト;英国ハートフォードシャー州ロイストン);Geneticist Inc.(米国カリフォルニア州グレンデール)から入手された。正常組織は、Asterand(米国ミシガン州デトロイト;英国ハートフォードシャー州ロイストン);Bio-Options Inc.(米国カリフォルニア州ブレア);BioServe(米国メリーランド州ベルツビル);Capital BioScience Inc.(米国メリーランド州ロックビル);Geneticist Inc.(米国カリフォルニア州グレンデール);京都府立医科大学(KPUM)(日本国京都);ProteoGenex Inc.(米国カリフォルニア州カルバーシティ);Tissue Solutions Ltd(英国グラスゴー);University Hospital Geneva(スイス国ジュネーブ);University Hospital Heidelberg(独国ハイデルベルク);University Hospital Tubingen(独国チュービンゲン)から入手された。全ての患者の告知に基づく同意書は、外科手術または検死解剖前に得られた。組織は切除の直後に衝撃凍結されて、TUMAPの単離まで-70℃未満で保存された。
【0402】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
衝撃凍結組織サンプルからのHLAペプチド貯留は、わずかに修正されたプロトコル(Falk et al.,1991;Seeger et al.,1999)に従って、HLA-A02-特異的抗体BB7.2、HLA-A、-B、-C特異的抗体W6/32、CNBr活性化セファロース、酸処理、および限外濾過を使用して、免疫沈殿によって固形組織から得られた。
【0403】
質量分析
得られたHLAペプチド貯留は、逆相クロマトグラフィー(nanoAcquity UPL C system,Waters)によってそれらの疎水性に従って分離し、ESI源を装着したLTQ-velosおよびfusion hybrid質量分光計(ThermoElectron)内で溶出ペプチドを分析した。ペプチド貯留は、毎分400nLの流速を適用して、1.7μm C18逆相材料(Waters)で充填された分析用融合シリカマイクロキャピラリーカラム(75μm内径×250mm)上に直接挿入した。引き続いて、毎分300nLの流速で10%から33%へのBの二段階180分間二成分勾配を用いて、ペプチドを分離した。勾配は、溶媒A(水中の0.1%ギ酸)および溶媒B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)から構成された。nanoESI源への導入には、金被覆ガラス毛管(PicoTip,New Objective)を使用した。LTQ-Orbitrap質量分光計は、TOP5ストラテジーを使用してデータ依存モードで操作した。手短に述べると、Orbitrap(R=30000)内の高質量精度の完全スキャンでスキャンサイクルを開始し、これもまたOrbitrap(R=7500)内の5種の最も豊富な前駆イオンのMS/MSスキャンがそれに続き、以前選択されたイオンは動的に排除された。タンデム質量スペクトルは、SEQUESTおよび追加的な手動調節によって解釈した。同定されたペプチド配列は、生成された天然ペプチド断片化パターンと、配列が同一の合成参照ペプチドの断片化パターンとの比較によって確認した。
【0404】
イオン計数によって、すなわちLC-MS特性の抽出と解析によって、無標識相対LC-MS定量化を実施した(Mueller et al.,2007)。この方法は、ペプチドのLC-MSシグナル面積がサンプル中のその存在量と相関すると仮定する。抽出された特性は、電荷状態デコンボリューションと滞留時間アライメントによってさらに処理した(Mueller et al.,2008;Sturm et al.,2008)。最終的に、全てのLC-MS特性を配列同定結果と相互参照して、異なるサンプルの定量的データと、組織からペプチドへの提示プロファイルとを組み合わせた。定量的データは、技術的および生物学的反復試験内の変動を考慮した中心傾向に従って、二段法で正規化された。このようにして、それぞれの同定されたペプチドが定量的データに関連付けられ得て、サンプルと組織との間の相対定量化ができるようになる。さらに、ペプチド候補について得られた全ての定量的データを手動で検査し、データ整合性を保証して自動解析の確度を確認した。各ペプチドについて提示プロファイルを計算し、平均サンプル提示ならびに反復試験変動を示した。プロファイルは、頭頸部扁上皮がんサンプルを正常組織サンプルのベースラインに並置する。例示的過剰提示ペプチドの提示プロファイルは、図1に示される。代表的ペプチドの提示スコアは、表8に示される。
【0405】
表8:提示スコア
表は、正常組織パネルと比較して腫瘍上で非常に高度に過剰提示され(+++)、正常組織パネルと比較して腫瘍上で高度に過剰提示され(++)、正常組織パネルと比較して腫瘍上で過剰提示される(+)、ペプチドを列挙する。腫瘍との比較に適切であると見なされた正常組織のパネルは、脂肪組織、副腎、胆管、血液細胞、血管、骨髄、脳、食道、眼、胆嚢、頭頸部、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、リンパ節、神経、膵臓、副甲状腺、腹膜、下垂体、胸膜、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、胸腺、甲状腺、気管、尿管、膀胱からなった。
【表8-1】
【表8-2】
【0406】
実施例2
本発明のペプチドをコードする遺伝子発現プロファイリング
正常細胞と比較した腫瘍細胞上のペプチドの過剰提示または特異的提示は、免疫療法におけるその有用性にとって十分であり、いくつかのペプチドは、それらの起源タンパク質が正常組織にもまた存在するにもかかわらず、腫瘍特異的である。それでもなお、mRNA発現プロファイリングは、免疫療法のためのペプチド標的の選択において、安全性のレベルを高めることができる。特に、アフィニティ成熟TCRなどの安全性リスクが高い治療選択肢では、理想的な標的ペプチドは、腫瘍に特有で正常組織上には見いだされないタンパク質に由来する。
【0407】
RNA起源および調製
外科的に除去された組織標本は、告知に基づく同意書が各患者から入手された後に、上述の通り提供された(実施例1を参照されたい)。腫瘍組織標本が手術直後にスナップ凍結され、その後、液体窒素下で乳鉢と乳棒を用いて均質化された。TRI試薬(独国ダルムシュタットのAmbion)を使用して、これらのサンプルから全RNAが調製され、RNeasy(独国ヒルデンのQIAGEN)による精製がそれに続き;どちらの方法も製造業者のプロトコルに従って実施された。
【0408】
RNASeq実験のための健常ヒト組織からの全RNAは、Asterand(デトロイト、MI、USA&ロイストン、ハートフォードシャー州、UK);BioCat GmbH(独国ハイデルベルク);BioServe(米国メリーランド州ベルツビル);Capital BioScience Inc.(米国メリーランド州ロックビル);Geneticist Inc.(米国カリフォルニア州グレンデール);Istituto Nazionale Tumori”Pascale”(イタリア国ナポリ);ProteoGenex Inc.(米国カリフォルニア州カルバーシティ);University Hospital Heidelberg(独国ハイデルベルク)から入手された。RNASeq実験のための腫瘍組織からの全RNAは、Asterand(米国ミシガン州デトロイト;英国ハートフォードシャー州ロイストン);ProteoGenex Inc.(米国カリフォルニア州カルバーシティ)から入手された。
【0409】
全てのRNAサンプルの品質および量は、RNA 6000 Pico LabChipキット(Agilent)を使用して、Agilent 2100 Bioanalyzer(独国バルトブロンのAgilent)上で評価した。
【0410】
RNASeq実験
腫瘍および正常組織RNAサンプルの遺伝子発現解析は、CeGaT(独国チュービンゲン)によって、次世代配列決定(RNAseq)によって実施された。簡単に述べると、配列決定ライブラリーは、RNA断片化、cDNA転換、および配列決定アダプターの付加を含む、Illumina HiSeq v4試薬キットを使用して、販売業者(米国カリフォルニア州サンディエゴのIllumina Inc.)のプロトコルに従って作成される。複数のサンプルに由来するライブラリーは等モル混合され、Illumina HiSeq 2500配列決定装置上で、製造会社の使用説明書に従って配列決定され、50bpのシングルエンドリードが生成される。処理された読み取りは、STARソフトウェアを使用して、ヒトゲノム(GRCh38)にマッピングされる。発現データは、ensembl配列データベース(Ensembl77)の注釈に基づいて、RPKM(100万個のマッピングされた読み取り当たりキロベース当たり読み取り、ソフトウェアCufflinksによって作成される)として転写物レベルで、そしてエクソンレベルで(全読み取り、ソフトウェアBedtoolsによって作成される)提供される。エクソン読み取りは、エクソン長さおよびアライメントサイズについて正規化されて、RPKM値が得られる。
【0411】
頭頸部扁上皮がんにおいて高度に過剰発現されるまたは排他的に発現される本発明の起源遺伝子の例示的発現プロファイルは、図2に示される。さらなる例示的遺伝子の発現スコアは、表9に示される。
【0412】
表 9:発現スコア。表は、正常組織パネルと比較して腫瘍において非常に高度に過剰発現され(+++)、正常組織パネルと比較して腫瘍において高度に過剰発現され(++)、正常組織パネルと比較して腫瘍において過剰発現される(+)、遺伝子に由来するペプチドを列挙する。スコアのベースラインは、脂肪組織、副腎、動脈、胆管、血液細胞、骨髄、脳、軟骨、結腸、食道、眼、胆嚢、頭頸部および唾液腺、心臓、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、膵臓、副甲状腺、末梢神経、腹膜、下垂体、胸膜、直腸、骨格筋、皮膚、小腸、脾臓、胃、甲状腺、気管、尿管、膀胱、および 静脈 の関連正常組織の測定値から計算された。同一組織型のいくつかのサンプル発現データが利用できる場合、全ての各サンプルの算術平均が、計算のために使用された。
【表9】
【0413】
実施例3
MHCクラスI提示ペプチドの生体外免疫原性
本発明のTUMAPの免疫原性に関する情報を得るために、本発明者らは、ペプチド/MHC複合体および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるCD8+T細胞の反復刺激に基づく、生体外T細胞プライミングアッセイを用いて研究を実施した。このようにして、本発明者らは、本発明のHLA-A0201拘束性TUMAPの免疫原性を示し得て、これらのペプチドが、それに対するCD8+前駆T細胞がヒトに存在する、T細胞エピトープであることを実証した(表10)。
【0414】
CD8+T細胞の生体外プライミング
ペプチドMHC複合体(pMHC)および抗CD28抗体を負荷した、人工抗原提示細胞による生体外刺激を実施するために、本発明者らは、最初に、告知に基づく同意後に、独国のUniversity clinics Mannheimから得られた健常ドナーのCD8ミクロビーズ(独国ベルギッシュ・グラートバッハのMiltenyi Biotech)を使用した正の選択を通じて、新鮮HLA-A02白血球除去生成物からCD8+T細胞を単離した。
【0415】
PBMCおよび単離CD8+リンパ球またはPBMCは、10%熱不活性化ヒトAB血清(独国アイデンバッハのPAN-Biotech)、100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(独国ケルンのCambrex)、1mMピルビン酸ナトリウム(独国オーバードルラのCC Pro)、20μg/mlゲンタマイシン(Cambrex)を添加した、RPMI-Glutamax(独国カールスルーエのInvitrogen)からなるT細胞培地(TCM)中で、使用時まで培養した。2.5ng/mlのIL-7(独国ハイデルベルクのPromoCell)および10U/mlのIL-2(独国ニュルンベルクのNovartis Pharma)もまた、この段階でTCMに添加した。
【0416】
pMHC/抗CD28被覆ビーズの生成、T細胞刺激、および読み取りは、高度に定義された生体外システム内で、刺激条件当たり4種の異なるpMHC分子と、読み取り条件当たり8種の異なるpMHC分子を使用して実施した。
【0417】
製造会社(独国ボンのPerbio)が推奨する通りにスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドビオチンを使用して、精製共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab9.3(Jung et al.,1987)を化学的にビオチン化した。使用されたビーズは、直径5.6μmのストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(米国イリノイ州のBangs Laboratories)であった。
【0418】
陽性および陰性対照刺激のために使用されたpMHCは、それぞれ、A0201/MLA-001(修飾Melan-A/MART-1に由来するペプチドELAGIGILTV(配列番号157))およびA0201/DDX5-001(DDX5に由来するYLLPAIVHI、配列番号158)であった。
【0419】
4×12.5ngの異なるビオチンpMHCの存在下で、800,000個のビーズ/200μlを96ウェルプレート内で被覆し、洗浄して、引き続いて200μlの容量中で600ngのビオチン抗CD28を添加した。5ng/mlのIL-12(PromoCell)を添加した200μlのTCM中で、1×106のCD8+T細胞を2x10個の洗浄被覆ビーズと、37℃で3日間にわたり共インキュベートすることで、96ウェルプレート内で刺激を開始した。次に80U/mlのIL-2を添加した新鮮TCMで培地の半分を交換し、37℃で4日間にわたり培養を継続した。この刺激サイクルを合計3回実施した。条件当たり8種の異なるpMHC分子を使用したpMHC多量体読み取りでは、5種の異なる蛍光色素への共役を包含するわずかな修正を加えて、以前記載されたような(Andersen et al.,2012)二次元コンビナトリアルコーディングアプローチを使用した。最後に、Live/dead近赤外染料(独国カールスルーエのInvitrogen)、CD8-FITC抗体クローンSK1(独国ハイデルベルクのBD)、および蛍光性pMHC多量体による細胞の染色によって多量体解析を実施した。解析では、適切なレーザーおよびフィルターを装着したBD LSRII SORP血球計数器を使用した。ペプチド特異的細胞を全CD8+細胞の百分率として計算した。FlowJoソフトウェア(米国オレゴン州のTree Star)を使用して、多量体解析の評価を実施した。陰性対照刺激と比較することで、特異的多量体+CD8+リンパ球の生体外初回刺激を検出した。1人の健常ドナーの少なくとも1つの評価可能生体外刺激ウェルが、生体外刺激後に、特異的CD8+T細胞株を含有することが判明したら、所与の抗原の免疫原性が検出された(すなわちこのウェルは、CD8+T細胞内に少なくとも1%の特異的多量体+を含有し、特異的多量体+細胞の百分率は、陰性対照刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。
【0420】
頭頸部扁上皮がんペプチドに対する生体外免疫原性
HLAクラスIペプチドを試験するために、ペプチド特異的T細胞株の生成によって生体外免疫原性が実証され得た。本発明の2種のペプチドの、TUMAP特異的多量体染色後の例示的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に図3に示される。本発明の3種のペプチドの、TUMAP特異的多量体染色後の追加的な例示的フローサイトメトリー結果は、対応する陰性対照と共に図4に示される。本発明からの17種のペプチドの結果は、表10Aに要約される。本発明からの17種のペプチドのさらなる結果は、表10Bに要約される。
【0421】
表10A:本発明のHLAクラスIペプチドの生体外免疫原性
出願人によって実施された本発明のペプチドの生体外免疫原性実験の例示的結果。<20 % = +; 20 % - 49 % = ++; 50 % - 69 %= +++; >= 70 % = ++++
【表10A】
【0422】
表10B:本発明のHLAクラスIペプチドの生体外免疫原性
出願人によって実施された、本発明のHLA-A*02拘束性ペプチドについての生体外免疫原性実験の代表的結果である。生体外免疫原性実験の結果が示される。陽性ウェルおよびドナーの百分率(評価可能内の)は、示されるように要約される <20 % = +; 20 % - 49 % = ++; 50 % - 69 %= +++; >= 70 %= ++++
【表10B】
【0423】
実施例4
ペプチドの合成
Fmocストラテジーを使用した標準的な十分に確立された固相ペプチド合成を使用して、全てのペプチドを合成した。個々のペプチドのアイデンティティーおよび純度は、質量分析および分析用RP-HPLCによって判定された。ペプチドは、純度>50%の白色から灰白色の凍結乾燥物(lyophilizes)(トリフルオロ酢酸塩)として得られた。全てのTUMAPは、好ましくはトリフルオロ酢酸塩または酢酸塩として投与され、その他の塩形態もまた可能である。
【0424】
実施例5
MHC結合アッセイ
本発明によるT細胞ベースの治療法のための候補ペプチドを、それらのMHC結合能力(親和性)についてさらに試験した。個々のペプチド-MHC複合体は、UVリガンド交換によって生成され、UV感受性ペプチドはUV照射時に切断されて、分析される目的ペプチドで交換された。ペプチド受容性MHC分子と効果的に結合して安定化し得るペプチド候補のみが、MHC複合体の分離を防止する。交換反応の収率を判定するために、安定化MHC複合体の軽鎖(β2m)の検出に基づくELISAを実施した。アッセイは、Rodenko et al.(Rodenko et al.,2006)に一般的に記載されるようにして実施した。
【0425】
96ウェルMAXISorpプレート(NUNC)をPBS中の2μg/mlストレプトアビジンにより室温で一晩被覆して4回洗浄し、ブロック緩衝液を含有する2%BSA中で37℃で1時間ブロックした。再折りたたみされたHLA-A020102:01/MLA-001単量体が、15~500ng/mlの範囲をカバーする標準物質の役割を果たした。UV交換反応のペプチド-MHC単量体をブロック緩衝液で100倍に希釈した。サンプルを37℃で1時間インキュベートして4回洗浄し、2μg/mlのHRP共役結合抗β2mと共に37℃で1時間インキュベートして再度洗浄し、NHSOで停止させたTMB溶液で検出した。吸収は、450nmで測定された。抗体またはそれらのフラグメント、および/またはT細胞受容体またはそれらのフラグメントの生成および製造のためには、高い交換収率(好ましくは50%より高い、最も好ましくは75%より高い)を示す候補ペプチドが、MHC分子に対する十分な結合活性を示してMHC複合体の分離を防止することから、一般に好ましい。
【0426】
表11:MHCクラスI結合スコア。HLAクラスI拘束性ペプチドとHLA-A*02:01との結合は、ペプチド交換収率によって変動した: >10% = +; >20% = ++; >50 = +++; > 75% = ++++
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【0427】
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図1B
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図4-1】
図4-2】
【配列表】
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