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特許7504863基板処理装置の製造プロセス判定装置、基板処理システム、基板処理装置の製造プロセス判定方法、学習モデル群、学習モデル群の生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】基板処理装置の製造プロセス判定装置、基板処理システム、基板処理装置の製造プロセス判定方法、学習モデル群、学習モデル群の生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240617BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240617BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20240617BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/31 B
C23C16/52
C23C14/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021504075
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008659
(87)【国際公開番号】W WO2020179729
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/008393
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 克司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 佑揮
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-190457(JP,A)
【文献】特開2005-200730(JP,A)
【文献】特開2018-045559(JP,A)
【文献】特開2016-192007(JP,A)
【文献】特開2001-134763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/52
C23C 14/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う装置であって、
前記基板処理装置のプロセスログデータを取得するプロセスログ取得部と、
前記プロセスログデータに基づき入力データを作成し、前記入力データに基づき、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う判定部と、を備え、
前記判定部は、前記入力データがそれぞれ入力され、前記製造プロセスに関わる判定結果をそれぞれ出力する複数個の学習モデルを具備し、
前記複数個の学習モデルは、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成されており、
前記判定部は、前記複数個の学習モデルのうち何れの学習モデルを用いて判定を行うかを切り替え可能である、
ことを特徴とする基板処理装置の製造プロセス判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記製造プロセスのレシピ毎に複数個の学習モデルを具備し、
前記判定部は、前記製造プロセスのレシピに応じた前記複数個の学習モデルを選択して判定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置の製造プロセス判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、判定精度評価用データを用いて前記複数個の学習モデルの判定精度をそれぞれ評価し、最も判定精度の高かった学習モデルを用いて、その後の判定を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置の製造プロセス判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数個の学習モデルの判定結果の多数決を最終的な判定結果として出力する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置の製造プロセス判定装置。
【請求項5】
前記複数個の学習モデルには、前記基板処理装置の初期状態に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデルと、前記基板処理装置の初期状態経過後に得られた教師データを含む教師データを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデルと、の双方が含まれる、
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の基板処理装置の製造プロセス判定装置。
【請求項6】
基板処理装置と、請求項1から5の何れかに記載の製造プロセス判定装置と、
を備えることを特徴とする基板処理システム。
【請求項7】
基板処理装置のプロセスログデータを取得するプロセスログ取得工程と、
前記プロセスログ取得工程によって取得したプロセスログデータに基づき入力データを作成し、前記入力データに基づき、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う判定工程と、を含み、
前記判定工程では、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成された複数個の学習モデルを用意し、前記複数個の学習モデルのうち少なくとも何れか1個の学習モデルを用いて、前記少なくとも何れか1個の学習モデルに前記入力データを入力し、前記少なくとも何れか1個の学習モデルから前記製造プロセスに関わる判定結果を出力する、
ことを特徴とする基板処理装置の製造プロセス判定方法。
【請求項8】
基板処理装置のプロセスログデータに基づき作成された入力データがそれぞれ入力され、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定結果をそれぞれ出力するようにコンピュータを機能させる学習モデル群であって
互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成された複数個の学習モデルから構成され、前記複数個の学習モデルが、判定時に切り替えて用いられることが可能な、学習モデル群。
【請求項9】
基板処理装置のプロセスログデータに基づき作成された入力データがそれぞれ入力され、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定結果をそれぞれ出力する複数個の学習モデルから構成され、前記複数個の学習モデルが、判定時に切り替えて用いられることが可能な、学習モデル群を生成する方法であって、
互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで前記複数個の学習モデルを生成する、
ことを特徴とする学習モデル群の生成方法。
【請求項10】
請求項7に記載の基板処理装置の製造プロセス判定方法が含む前記プロセスログ取得工程及び前記判定工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う基板処理装置の製造プロセス判定装置、これを備えた基板処理システム、基板処理装置の製造プロセス判定方法、学習モデル群、学習モデル群の生成方法及びプログラムに関する。特に、本発明は、判定精度の低下を容易に抑制可能な基板処理装置の製造プロセス判定装置、基板処理システム、基板処理装置の製造プロセス判定方法、学習モデル群、学習モデル群の生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置等の基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う装置として、例えば、特許文献1~3に記載の装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、機械学習を行うことで生成された学習モデル(ニューラルネットワーク)を用いて、基板のフィルム厚さプロファイル(具体的には、エッチング深さ)を判定(予測)する装置である。
【0004】
特許文献2に記載の装置は、機械学習を行うことで生成された学習モデル(ニューラルネットワーク)を用いて、基板のエッチング深さを予測し、ひいてはエッチングの終点を判定(検出)する装置である。
【0005】
特許文献3に記載の装置は、機械学習を行うことで生成された学習モデル(サポートベクターマシン)を用いて基板処理装置の故障(具体的には、異常発生部位及び故障までの予測時間)を判定(予知)する装置である。
【0006】
特許文献1~3に記載のような学習モデルを具備する判定装置では、初期状態(例えば、基板処理装置の出荷前)において、所定の教師データを用いて機械学習を行うことで学習モデルが生成される。その後、初期状態経過後(例えば、基板処理装置の出荷後)において、判定精度を高めることを目的として、新たな教師データを用いて又は追加して、学習モデルを再度機械学習(再学習)させることが一般的に行われている。
【0007】
しかしながら、初期状態経過後に学習モデルを再学習させる際、例えば、新たに用いる又は追加する教師データが適切なものでない場合、初期状態の学習モデル(再学習させる前の学習モデル)を用いるときよりも判定精度が低下することがある。判定精度が低下しても、既に再学習済みの学習モデルを元に戻すことができないため、所望する判定精度が得られるまで再学習を繰り返す必要があり、多大な手間を要する。
【0008】
また、基板処理装置の稼働条件の変更等に伴い、再学習前の学習モデルの判定精度と再学習後の学習モデルの判定精度との優劣が変化する場合もある。すなわち、ある稼働条件については、再学習前の学習モデルを用いた方が判定精度が高く、別の稼働条件については、再学習済の学習モデルを用いた方が判定精度が高くなる場合がある。
しかしながら、このような場合にも、再学習済みの学習モデルの判定精度が低下しても、既に再学習済みの学習モデルを元に戻すことができないため、所望する判定精度が得られるまで再学習を繰り返す必要があり、多大な手間を要する。
【0009】
特許文献1~3には、上記のような学習モデルの再学習における問題を解決する手段について何ら開示されていない。
【0010】
なお、特許文献4に示すように、学習モデルを用いるものではないが、基板にエッチング処理を実行する基板処理装置において、基板に対するエッチングの終点を判定(検出)する装置として、分光器を備えた判定装置が知られている。具体的には、特許文献4に記載のような判定装置は、基板処理装置が備えるチャンバ内に生じた光をチャンバ外に設置した分光器に導き、この分光器で所定の波長を有する光の強度を測定することで、基板に対するエッチングの終点を判定(検出)する装置である。例えば、特許文献4に記載の判定装置では、処理ガスとしてSFガスを用いてSi基板をエッチングする場合、Siの反応生成物であるSiFの発光波長を有する光の強度が基準値以下となった時点をエッチングの終点として判定(検出)している。
【0011】
上記と同様に、基板に成膜処理を実行する基板処理装置において、成膜処理によってチャンバ内に付着した膜組成物に対するエッチングの終点を判定(検出)する際にも、分光器を備えた判定装置が用いられている。このような判定装置では、例えば、処理ガスとしてCガスを用いて膜組成物をエッチングする場合、Fの発光波長を有する光の強度が基準値以上となった時点をエッチングの終点として判定(検出)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2009-534854号公報
【文献】特開2017-195365号公報
【文献】特開2018-178157号公報
【文献】特許第4101280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、判定精度の低下を容易に抑制可能な基板処理装置の製造プロセス判定装置、基板処理システム、基板処理装置の製造プロセス判定方法、学習モデル群、学習モデル群の生成方法及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う装置であって、前記基板処理装置のプロセスログデータを取得するプロセスログ取得部と、前記プロセスログデータに基づき入力データを作成し、前記入力データに基づき、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う判定部と、を備え、前記判定部は、前記入力データがそれぞれ入力され、前記製造プロセスに関わる判定結果をそれぞれ出力する複数個の学習モデルを具備し、前記複数個の学習モデルは、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成されており、前記判定部は、前記複数個の学習モデルのうち何れの学習モデルを用いて判定を行うかを切り替え可能である、ことを特徴とする基板処理装置の製造プロセス判定装置を提供する。
【0015】
本発明によれば、基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う判定部が複数個の学習モデルを具備し、これら複数個の学習モデルが互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成されている。そして、判定部は、複数個の学習モデルのうち何れの学習モデルを用いて判定を行うかを切り替え可能である。このため、例えば、基板処理装置の稼働条件を変更したとき等の適宜のタイミングで複数個の学習モデルの判定精度をそれぞれ評価し、最も判定精度の高かった学習モデルを用いるように切り替えることで、判定精度の低下を容易に抑制可能である。
本発明として、例えば、前記判定部は、前記製造プロセスのレシピ毎に複数個の学習モデルを具備し、前記判定部は、前記製造プロセスのレシピに応じた前記複数個の学習モデルを選択して判定を行う構成を採用することが可能である。
【0016】
本発明において、複数個の学習モデルの判定精度の評価や、判定部への学習モデルの切り替え指示を手動で行うことも可能である。しかしながら、これらを自動的に行う方が効率的であり好ましい。
したがい、好ましくは、前記判定部は、判定精度評価用データを用いて前記複数個の学習モデルの判定精度をそれぞれ評価し、最も判定精度の高かった学習モデルを用いて、その後の判定を行う。
【0017】
上記の好ましい構成によれば、判定部が、複数個の学習モデルの判定精度をそれぞれ自動で評価し、最も判定精度の高かった学習モデルに自動で切り替えることになるため、判定精度の低下を効率的に抑制可能である。
上記の好ましい構成において、学習モデルの判定精度を評価するタイミングは、時間等によって予め設定しても良いし、手動で指示してもよい。
【0018】
本発明において、上記の好ましい構成のように、複数個の学習モデルの判定精度をそれぞれ評価し、最も判定精度の高かった学習モデルを用いて、その後の判定を行うようにすれば、判定精度の低下を抑制可能であるものの、判定精度評価用データを用意する手間が掛かる。この手間を省くには、複数個の学習モデルの判定結果の多数決を最終的な判定結果とすることが好ましい。
【0019】
したがい、好ましくは、前記判定部は、前記複数個の学習モデルの判定結果の多数決を最終的な判定結果として出力する。
【0020】
上記の好ましい構成によれば、複数個の学習モデルの判定結果の多数決を最終的な判定結果とするため、各学習モデルの判定精度を頻繁に評価しなくても、最終的な判定結果の判定精度に信頼性をもたせることが可能である。
なお、複数個の学習モデルが偶数個の学習モデルである場合、同じ判定結果を出力する学習モデルの個数が同数になる可能性がある。同数になった場合には、予め決めた判定結果を最終的な判定結果として出力することが考えられる。例えば、判定部が4個の学習モデルを具備し、後述の本発明の第1実施形態のようにエッチングの終点前後の何れであるかを判定する場合に、何れか2個の学習モデルがエッチングの終点前であると判定し、残りの2個の学習モデルがエッチングの終点後であると判定した場合には、同数であるため、最終的な判定結果をエッチングの終点前とすることを予め決めておけばよい。
【0021】
好ましくは、前記複数個の学習モデルには、前記基板処理装置の初期状態に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデルと、前記基板処理装置の初期状態経過後に得られた教師データを含む教師データを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデルと、の双方が含まれる。
【0022】
上記の好ましい構成によれば、初期状態経過後の学習モデル(例えば、基板処理装置の出荷後に得られた教師データを含む教師データを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデル)の判定精度が、初期状態の学習モデル(例えば、基板処理装置の出荷前に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデル)の判定精度よりも低い場合に、初期状態の学習モデルに切り替えて用いることが可能である。
また、基板処理装置の稼働条件の変更等に伴い、初期状態の学習モデルの判定精度と初期状態経過後の学習モデルの判定精度との優劣が変化した場合であっても、いずれか判定精度の高い学習モデルに切り替えて用いることが可能である。
【0023】
また、前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置と、前記の何れかに記載の製造プロセス判定装置と、を備えることを特徴とする基板処理システムとしても提供される。
【0024】
また、前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置のプロセスログデータを取得するプロセスログ取得工程と、前記プロセスログ取得工程によって取得したプロセスログデータに基づき入力データを作成し、前記入力データに基づき、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行う判定工程と、を含み、前記判定工程では、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成された複数個の学習モデルを用意し、前記複数個の学習モデルのうち少なくとも何れか1個の学習モデルを用いて、前記少なくとも何れか1個の学習モデルに前記入力データを入力し、前記少なくとも何れか1個の学習モデルから前記製造プロセスに関わる判定結果を出力する、ことを特徴とする基板処理装置の製造プロセス判定方法としても提供される。
【0025】
また、前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置のプロセスログデータに基づき作成された入力データがそれぞれ入力され、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定結果をそれぞれ出力するようにコンピュータを機能させる学習モデル群であって、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成された複数個の学習モデルから構成され、前記複数個の学習モデルが、判定時に切り替えて用いられることが可能な、学習モデル群としても提供される。
【0026】
また、前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置のプロセスログデータに基づき作成された入力データがそれぞれ入力され、前記基板処理装置の製造プロセスに関わる判定結果をそれぞれ出力する複数個の学習モデルから構成され、前記複数個の学習モデルが、判定時に切り替えて用いられることが可能な、学習モデル群を生成する方法であって、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで前記複数個の学習モデルを生成する、ことを特徴とする学習モデル群の生成方法としても提供される。
【0027】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記基板処理装置の製造プロセス判定方法が含む前記プロセスログ取得工程及び前記判定工程をコンピュータ(CPU)に実行させるためのプログラムとしても提供される。
なお、上記のプラグラムを記憶させた、コンピュータ(CPU)で読み取り可能な記憶媒体として提供することも可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、判定精度の低下を容易に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を模式的に示す図である。
図2図1に示す正規化部及び画像化部の動作を説明する説明図である。
図3図1に示す学習モデルの概略構成及び動作を模式的に示す図である。
図4図1に示す学習モデルの学習時及び判定時の動作手順を示すフロー図である。
図5図1に示す製造プロセス判定装置の変形例を示すブロック図である。
図6図1に示す基板処理システムを用いた試験の結果を示す。
図7】本発明の第2実施形態に係る基板処理システムの概略構成を模式的に示す図である。
図8図7に示す基板処理システムを用いた試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る製造プロセス判定装置及びこれを備えた基板処理システムについて説明する。本実施形態では、基板処理装置がプラズマ処理装置であり、基板処理装置における製造プロセスに関わる判定としてエッチングの終点を検出する場合を例に挙げて説明する。
【0031】
最初に、本明細書で用いる語句の意味について説明する。
本明細書において、「基板処理装置の製造プロセスに関わる判定」とは、基板処理装置の製造プロセス(基板処理装置における基板の製造プロセスの意味)に関わる検出や予測を意味する。基板処理装置の製造プロセスとは、基板処理装置内で、基板を処理する間及び処理の前後に行われるプロセスを意味する。したがい、基板処理装置の製造プロセスに関わる判定には、処理後の基板の検査(特に、基板処理装置内での処理後に基板処理装置外に搬出された基板の検査)に関わる判定は含まれない。具体的には、基板処理装置の製造プロセスにおける異常検出、エッチング処理を実行する基板処理装置の製造プロセスにおけるエッチング終点の検出、エッチング形状・深さの予測、成膜処理を実行する基板処理装置の製造プロセスにおける成膜した膜質の予測などを例示できる。なお、本実施形態に係る製造プロセス判定装置は、基板処理装置の製造プロセスに関わる判定を行うため、その判定結果が、基板処理装置で処理した後の基板の性能向上や良品率向上などに直接寄与し得る。これに対し、処理後の基板の検査に関わる判定を行っても、検査した基板自体の良否等を判定できるに過ぎないため、その判定結果が、基板処理装置で処理した後の基板の性能向上や良品率向上などに直接寄与するものではない。
また、本明細書において、「基板処理装置のプロセスログデータ」とは、基板処理装置における基板の処理に関わる各種の測定値や設定値の履歴を意味し、基板処理装置の稼働時に逐次得られるものが一般的である。ただし、プロセスログデータには、処理後の基板の検査(基板処理装置外に搬出された基板の検査)に関わる測定値が含まれてもよい。基板の処理の良否に応じて基板の検査結果も変わり得るため、処理後の基板の検査に関わる測定値も、基板処理装置における基板の処理に関わる測定値といえるからである。
また、本明細書において、「学習モデル」としては、ニューラルネットワークやサポートベクターマシンなど、機械学習を用いて生成できる限りにおいて種々の構成を採用可能である。
また、本明細書において、「教師データ」とは、学習モデルへの既知の入出力の組み合わせを意味し、「互いに異なる教師データ」とは、完全に入出力の組み合わせが異なる場合に限るものではなく、一部の組み合わせが重複する場合も含む意味である。
また、本明細書において、「複数個の学習モデルのうち何れの学習モデルを用いて判定を行うかを切り替え可能」とは、何れか1つの学習モデルに切り替え、この切り替えた何れか1つの学習モデルのみを用いて判定を行うことに限る意味ではない。例えば、3個の学習モデルのうち2個の学習モデルに切り替え、これら2個の学習モデルを用いて判定を行ったり、複数個の全ての学習モデルを用いて判定を行うことも含む意味である。
【0032】
また、本明細書において、「判定精度評価用データ」とは、学習モデルへの既知の入出力の組み合わせを意味し、「判定精度」とは、学習モデルが出力する判定結果が、判定精度評価用データの出力(真の判定結果)と合致する程度を意味する。
さらに、本明細書において、「複数個の学習モデルの判定結果の多数決を最終的な判定結果として出力する」とは、同じ判定結果を出力する学習モデルの個数が同数になった場合に、予め決めた何れか一方の判定結果を最終的な判定結果として出力する場合を含む概念である。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を模式的に示す図である。図1(a)は、基板処理システムの全体構成図である。図1(b)は、製造プロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。図1(c)は、製造プロセス判定装置を構成するコンピュータのモニタ画面の表示例を模式的に示す図である。なお、図1(a)では、測定するパラメータを破線の矩形で囲って図示している。
図1(a)に示すように、第1実施形態に係る基板処理システム100は、基板処理装置10と、製造プロセス判定装置20と、を備えている。
【0034】
第1実施形態の基板処理装置10は、チャンバ1と、チャンバ1内に配置された載置台2と、を具備し、載置台2に載置された基板Wにプラズマ処理を施す装置である。より具体的には、第1実施形態の基板処理装置10は、基板Wにプラズマ処理としてのエッチングを施す誘導結合プラズマ(ICP)方式のプラズマエッチング装置である。基板処理装置10において基板Wにエッチングを施す際には、基板Wが過剰にエッチングされないように、エッチングの終点を判定(検出)することが重要である。
【0035】
基板処理装置10のチャンバ1内には、ガス供給源(図示せず)からプラズマを生成するための処理ガスが供給される。図1(a)では、ガスNo.1~ガスNo.6までの6種類の処理ガスを供給可能とした構成が図示されている。しかしながら、エッチング処理を実行する際、6種類の処理ガスの全てを使用する場合に限るものではなく、何れか1種類以上の処理ガスを用いてエッチングを行うことが可能である。なお、供給する各処理ガスの流量は、ガス供給源からチャンバ1までの流路に設けられたマスフローコントローラ(Mass Flow Controller、MFC)11によって測定される。また、チャンバ1には、チャンバ1の壁面を加熱するヒータ(図示せず)が適宜の箇所に設けられており、各箇所のヒータの温度(図1(a)に示す温度No.1-1~No.1-4)が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。さらに、チャンバ1内の圧力が、真空計12によって測定される。
【0036】
基板処理装置10は、チャンバ1を囲うようにチャンバ1に配置されたコイル3を具備する(図1(a)では、便宜上、左側に位置するコイル3の断面のみを図示している)。コイル3には、上部高周波電源4から上部マッチングユニット5を介して高周波電力(上部高周波電力)が印加される。コイル3に上部高周波電力を印加することで、チャンバ1内に供給された処理ガスがプラズマ化される。なお、上部高周波電源4が印加する上部高周波電力と、上部マッチングユニット5の整合位置(上部マッチングユニット5が具備する可変コンデンサや可変コイルなどの定数)とが、それぞれ公知の測定器(図示せず)によって測定される。
【0037】
載置台2には、下部高周波電源6から下部マッチングユニット7を介して高周波電力(下部高周波電力)が印加される。載置台2に下部高周波電力を印加することで、載置台2とチャンバ1内のプラズマとの間にバイアス電位を与え、プラズマ中のイオンを加速して載置台2に載置された基板Wに引き込む。これにより、基板Wにエッチングが施される。なお、下部高周波電源6が印加する下部高周波電力と、下部マッチングユニット7の整合位置(下部マッチングユニット7が具備する可変コンデンサや可変コイルなどの定数)とが、それぞれ公知の測定器(図示せず)によって測定される。
【0038】
プラズマ処理の実行中、載置台2は、チラー8によって冷却される。チラー8の温度が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、プラズマ処理の実行中、基板Wの裏面にHeガスが供給され、このHeガスによって基板Wが冷却される。この際、供給するHeガスの圧力・流量が、Heガス供給源(図示せず)から基板Wの裏面(載置台2の上面)までの流路に設けられた圧力・流量計9によって測定される。
【0039】
プラズマ処理を実行することでチャンバ1内に生成された反応生成物等は、チャンバ1内に連通する排気管17を通じてチャンバ1外に排気される。排気管17には、バルブ開度を調整することにより、チャンバ1内の圧力を制御する自動圧力制御装置(Auto Pressure Controller,APC)13、反応生成物を排気するための第1ポンプ(ターボ分子ポンプ)14、及び、第1ポンプ14を補助する第2ポンプ(ドライポンプやロータリーポンプなど)15が設けられている。なお、自動圧力制御装置13の温度(図1(a)に示す温度No.1-5)と、第1ポンプ14の温度(図1(a)に示す温度No.1-6)とが、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、排気管17には、排気管17を加熱するヒータ(図示せず)が適宜の箇所(例えば、第1ポンプ14と第2ポンプ15との間)に設けられており、各箇所のヒータの温度(図1(a)に示す温度No.1-7、No.1-8)が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、自動圧力制御装置13のバルブ開度(APC開度)が、エンコーダ等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。さらに、第1ポンプ14と第2ポンプ15との間に位置する排気管17内の圧力(フォアライン圧力)が、真空計16によって測定される。
【0040】
第1実施形態の製造プロセス判定装置20は、上記の構成を有する基板処理装置10に電気的に接続されており、基板処理装置10において基板Wに施すエッチングの終点を判定(検出)する装置である。
【0041】
図1(b)に示すように、製造プロセス判定装置20は、プロセスログ取得部21と、判定部22と、を備え、例えば、コンピュータから構成されている。
プロセスログ取得部21は、図1(a)を参照して前述した各測定値を測定する測定器(例えば、マスフローコントローラ11)と有線又は無線で電気的に接続されており(図1(a)では、便宜上、圧力・流量計9、マスフローコントローラ11及び真空計12だけに有線で接続されている状態を図示している)、各測定器から逐次入力された測定データを所定のサンプリング周期(例えば、1秒)で取得(A/D変換)する機能を有する。プロセスログ取得部21は、例えば、コンピュータに搭載されたA/D変換ボードや、コンピュータが具備するROM、RAM等のメモリや、該メモリに記憶され、プロセスログ取得部21としての動作をCPUに実行させるプログラムによって構成される。プログラムは、製造プロセス判定装置20が備える外付けの記憶媒体であるハードディスク27に記憶され、ハードディスク27からRAMに読み込む態様であってもよい。この取得された各測定値及び各測定値に対応する各設定値が、プロセスログデータとして、判定部22でのエッチングの終点検出に用いられる。
【0042】
なお、第1実施形態で用いるプロセスログデータには、チャンバ1内に生じた光(チャンバ1内に供給する処理ガスや基板Wの成分に応じて生じた光)に関わる測定値は含まれない。すなわち、従来の分光器を用いた光の強度測定値等は除外される。換言すれば、エッチングの終点を検出する際に分光器を用いる必要がない。また、第1実施形態で用いるプロセスログデータには、基板処理装置10外での基板Wの位置に関わる測定値や設定値は含まれない。
【0043】
また、第1実施形態では、図1(a)に示す全ての測定値をプロセスログデータとしてエッチングの終点検出に用いているが、本発明はこれに限るものではない。ただし、少なくとも、フォアライン圧力又はAPC開度と、上部マッチングユニット5及び/又は下部マッチングユニット7の整合位置と、を用いることが好ましい。
本発明者らの鋭意検討した結果によれば、各種のプロセスログデータのうち、排気管17内の圧力(フォアライン圧力)と、自動圧力制御装置13のバルブ開度(APC開度)と、上部マッチングユニット5の整合位置と、下部マッチングユニット7の整合位置とが、エッチングの終点前後で特に変化し易い。エッチングが終了すれば、基板Wにおけるエッチング対象の層が無くなるため、プラズマの状態が変化するからである。このため、エッチングの終点を判定(検出)するには、上記のように、少なくともこれらのプロセスログデータを用いることが好ましい。ただし、フォアライン圧力とAPC開度とはほぼ連動して変化するため、何れか一方だけを用いてもよいと考えられる。
【0044】
なお、製造プロセス判定装置20が基板処理装置10の稼働を制御するために一般的に用いられる制御装置としての機能も有する場合(制御装置が製造プロセス判定装置20としても兼用される場合)には、プロセスログデータを構成する各設定値は、予め製造プロセス判定装置20(プロセスログ取得部21)に記憶されている。製造プロセス判定装置20が上記の制御装置と別体であり、両者が電気的に接続されている場合には、制御装置に予め記憶された各設定値が製造プロセス判定装置20(プロセスログ取得部21)に送信されることになる。また、第1実施形態では、製造プロセス判定装置20が各測定器と直接接続されている場合を例示したが、上記の制御装置と各測定器とが直接接続され、制御装置で取得した各測定値を製造プロセス判定装置20に送信する構成を採用することも可能である。
【0045】
判定部22は、プロセスログ取得部21によって逐次(例えば、1秒毎に)取得したプロセスログデータから入力データを作成し、この入力データに基づき、基板処理装置10におけるエッチングの終点を判定(検出)する部分である。判定部22は、例えば、コンピュータが具備するROM、RAM等のメモリや、該メモリに記憶され、判定部22としての動作をCPUに実行させるプログラムによって構成される。このプログラムも、ハードディスク27に記憶され、ハードディスク27からRAMに読み込む態様であってもよい。
【0046】
判定部22は、複数個の学習モデル25を具備する。図1(b)に示す例では、判定部22は、2個の第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bを具備するが、本発明はこれに限るものではなく、3個以上の学習モデル25を具備することも可能である。第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bは、構成は同じであるが、互いに異なる教師データを用いた機械学習を行うことで生成されている。例えば、第1学習モデル25aは、基板処理装置10の出荷前に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成され、第2学習モデル25bは、基板処理装置10の出荷前と出荷後に得られた教師データを用いた機械学習を行うことで生成されている。なお、本明細書に記載の「出荷前」とは、基板処理装置10の製造者側に基板処理装置10が存在する状態に限るものではない。製造者側から使用者側に基板処理装置10が引き渡された後、製造者側が使用者側に出向いて基板処理装置10の立ち上げ調整を行う場合には、その立ち上げ調整期間も含む概念である。
【0047】
そして、判定部22は、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bのうち何れの学習モデルを用いて判定を行うかを切り替え可能になっている。判定に用いる学習モデル25の切り替えは、判定部22に手動で切り替え指示を行ってもよいし、後述のように判定部22が自動的に行ってもよい。
図1(b)に示す例では、第1学習モデル25aが選択されて、後述の画像化部24と第1学習モデル25aとが接続され、第1学習モデル25aを用いて判定を行う状態を図示している。
例えば、出荷前後で、ユーティリティ仕様が異なったり、クリーンルーム環境が異なることで、出荷後に得られた教師データが適切なものでない場合がある。また、出荷後であっても、基板処理装置では、デバイスの性能向上・製造プロセス改善や、用途変更により、基板Wの材質やサイズが異なったり、プラズマを生成するための処理ガスが異なる場合がある。このような場合には、出荷前に得られた教師データのみを用いて学習させた第1学習モデル25aを用いる方が判定精度が高い可能性がある。
なお、前述のように、判定部22は、3個以上の学習モデルを具備することも可能である。特に、上記のような出荷後の基板処理装置におけるデバイスの性能向上・製造プロセス改善、用途変更等に応じて、同じ出荷後に得られたものではあるが互いに異なる教師データを用意し、これら出荷後の異なる教師データをそれぞれ用いた機械学習を行うことで複数個の学習モデル25を生成することが好ましい。
【0048】
第1実施形態の判定部22は、好ましい構成として、更に、正規化部23と、画像化部24と、を具備する。これら正規化部23、画像化部24及び学習モデル25も、例えば、コンピュータが具備するROM、RAM等のメモリや、該メモリに記憶され、各部23~25としての動作をCPUに実行させるプログラムによって構成される。このプログラムも、ハードディスク27に記憶され、ハードディスク27からRAMに読み込む態様であってもよい。
【0049】
図2は、正規化部23及び画像化部24の動作を説明する説明図である。図2(a)は正規化部23の動作を説明する図であり、図2(b)、(c)は画像化部24の動作を説明する図である。
図2(a)の左図は、プロセスログ取得部21によって取得したプロセスログデータを模式的に示す図である。図2(a)に示すパラメータ1~Nは、例えば、パラメータ1が図1(a)に示すマスフローコントローラ11で測定したガスNo.1の流量であり、パラメータNが図1(a)に示す温度No.1-8である等、プロセスログデータの種類を意味する。図2(a)の左図に示すXij(i=1~N、j=1~M)は、パラメータiについてプロセス時間(エッチング開始からの経過時間)がj[sec]のときに取得されたプロセスログデータの値を意味する。例えば、X11は、パラメータ1についてプロセス時間が1[sec]のときに取得されたプロセスログデータの値であり、XNMは、パラメータNについてプロセス時間がM[sec]のときに取得されたプロセスログデータの値である。
【0050】
正規化部23は、プロセスログデータの種類毎(パラメータi毎)に、全プロセス時間(1~M[sec])でのプロセスログデータの最大値MAX、最小値MINを予め算出する。例えば、パラメータ1についての最大値はMAX、最小値はMINであり、パラメータNについての最大値はMAX、最小値はMINである。なお、これらの最大値MAX及び最小値MINは、1つの基板Wをエッチングする際に取得されたプロセスログデータを用いて算出するのではなく、後述の学習モデル25の学習時等において、同等のレシピ(プラズマ処理の条件)でエッチングされた複数の基板Wについて取得されたプロセスログデータを用いて予め算出しておくことが好ましい。算出したプロセスログデータの種類毎(パラメータi毎)の最大値MAX及び最小値MINは、正規化部23に記憶される。
【0051】
そして、正規化部23は、プロセスログ取得部21によって逐次取得したプロセスログデータXijに対して、プロセスログデータの種類毎(パラメータi毎)に最大値が1となり最小値が0となる正規化を行う。
具体的には、以下の式(1)に基づき、図2(a)の右図に示すように、正規化後のプロセスログデータYijを算出する。
ij=(Xij-MIN)/(MAX-MIN) ・・・(1)
上記の式(1)において、i=1~Mであり、j=1~Nである。
上記の式(1)から、Xij=MAXのとき、Yij=1となり、Xij=MINのとき、Yij=0となるように正規化されることは明らかである。
【0052】
プロセスログデータXijの値は、圧力、温度、流量など、プロセスログデータXijの種類に応じて大きく異なる。また、どのような単位で表すかによっても異なる値となる。このため、エッチングの終点を判定(検出)するに際し、各種類のプロセスログデータXijの値をそのまま用いると、判定精度に影響を及ぼす可能性がある。これを避けるには、上記のように正規化して、正規化後の各種類のプロセスログデータYijの値が何れも一定の範囲内で変動するようにすることが好ましい。
【0053】
画像化部24は、正規化後のプロセスログデータに基づき、学習モデル25への入力データを作成する。
具体的には、画像化部24は、図2(b)の左図に示す正規化後のプロセスログデータに基づき、図2(b)の右図に示すように、一軸(図2(b)の右図に示す例では横軸)がプロセスログデータの種類(パラメータ1~N)であり、一軸に直交する他軸(図2(b)の右図に示す例では縦軸)が正規化後のプロセスログデータの値Yijであるグラフ(棒グラフ)を画像化した画像データを逐次(例えば、1秒毎に)作成する。
画像データの種類としては、図2(b)の右図に示すようなモノクロ濃淡画像に限るものではなく、2値化画像やカラー画像など、任意の画像データを作成可能である。
【0054】
次に、第1実施形態の画像化部24は、作成した画像データを複数の画素から構成される所定の画素領域に分割する。
具体的には、図2(c)に示すように、画像化部24は、画像データを一軸(横軸)方向及び他軸(縦軸)方向にそれぞれK分割して画素領域Aij(i=1~K、j=1~K)を作成する。そして、画像化部24は、画素領域Aij毎に平均濃度値(画素領域Aijを構成する複数の画素の濃度値の平均値)Iave(Aij)(i=1~K、j=1~K)を算出する。この平均濃度値Iave(Aij)が、学習モデル25への入力データとして用いられる。
【0055】
なお、画像化部24がカラー画像(RGB3色のカラー画像)を作成する場合には、画像化部24は各色の画像について平均濃度値を算出し、それら全てが学習モデル25への入力データとして用いられる。
また、第1実施形態では、画像化部24が画像データを画素領域に分割する例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、画像データを構成する各画素の濃度値をそのまま学習モデル25への入力データとして用いることも可能である。
【0056】
図3は、学習モデル25(第1学習モデル25a、第2学習モデル25b)の概略構成及び動作を模式的に示す図である。
図4は、学習モデル25の学習時及び判定時の動作手順を示すフロー図である。図4(a)は学習時の動作手順を、図4(b)は判定時の動作手順を示す。
図3に示すように、第1実施形態の学習モデル25は、入力層、中間層及び出力層を有するニューラルネットワークから構成されている。図3では、2層の中間層を有する構成を例示しているが、本発明の学習モデルとして用いることのできるニューラルネットワークはこれに限るものではなく、任意の層数の中間層を有する構成を採用可能である。また、図3に示す各層のノード(図3において「〇」で示す部分)の個数は単なる例示であり、本発明の学習モデルとして用いることのできるニューラルネットワークにおけるノードの個数は図示したものに限らない。
【0057】
学習モデル25は、入力データとして画像化部24で作成した画像データ(具体的には、各画素領域Aijの平均濃度値Iave(Aij))が入力層に入力された場合に、基板処理装置10におけるエッチングの終点前後の何れであるかを出力層から出力する(出力値OUTを出力する)ように、機械学習によって生成された構成である。
【0058】
具体的には、学習モデル25の学習時には、教師データの入力として、エッチングの終点前に取得したプロセスログデータから作成された入力データ(画像データ)を与える。また、前記入力と組み合わされる教師データの出力として、エッチングの終点前であること(第1実施形態では、OUT=0)を与える。そして、前記入力を入力層に入力した場合に、出力層からOUT=0が出力されるように、機械学習を行う。
また、教師データの入力として、エッチングの終点後に取得したプロセスログデータから作成された入力データ(画像データ)を与える。また、前記入力と組み合わされる教師データの出力として、エッチングの終点後であること(第1実施形態では、OUT=1)を与える。そして、前記入力を入力層に入力した場合に、出力層からOUT=1が出力されるように、機械学習を行う。
【0059】
前述のように、第1学習モデル25aと第2学習モデル25bとでは、互いに異なる教師データを用いるが、機械学習の方法は同じである。具体的には、図4(a)に示すように、第1学習モデル25a用の教師データD1を準備し、この教師データD1を用いて第1学習モデル25aを学習させる。また、教師データD1と異なる第2学習モデル25b用の教師データD2を準備し、この教師データD2を用いて第2学習モデル25bを学習させる。
なお、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bは、一度の機械学習を行うことで生成されたものに限られない。必要に応じて、新たな教師データを用いて第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの再学習を行ったり、従来の教師データに新たな教師データを追加して第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの再学習を行うことも可能である。第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの再学習を行うか否かは、例えば、図1(c)に示すように、製造プロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面に、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの再学習を行うための実行ボタン20cをそれぞれ表示させればよい。そして、各実行ボタン20cをキーボードやマウスを使ってクリックしたり、モニタがタッチパネル式の場合には指で各実行ボタン20cに触れることで、各実行ボタン20cに対応する学習モデル25の再学習が実行されるように構成すればよい。
【0060】
なお、基板処理装置10が分光器を備える場合には、その分光器を用いて教師データを取得すればよい。具体的には、教師データとして用いる入力データの基になるプロセスログデータがエッチングの終点前に取得したものであるか、或いは、エッチングの終点後に取得したものであるかは、分光器で所定の波長を有する光の強度を測定することで判定すればよい。すなわち、分光器を用いてエッチングの終点を検出し、この分光器で検出したエッチングの終点を真として、プロセスログデータがその真の終点より前に取得したものであるか、或いは、真の終点より後に取得したものであるかを判定して、教師データとすればよい。
また、基板処理装置10が分光器を備えない場合には、分光器を備えた他の基板処理装置を用いて教師データを取得すればよい。すなわち、分光器を備えた他の基板処理装置を用いた機械学習によって学習モデル25を生成し、この学習モデル25を第1実施形態の基板処理装置10に適用する製造プロセス判定装置20に用いることも可能である。
また、基板処理装置10がエッチング処理を実行する複数のチャンバ1を備え、チャンバ1毎に製造プロセス判定装置20が適用され、一部のチャンバ1にしか分光器を備えない場合には、分光器を備えた他のチャンバ1を用いて教師データを取得すればよい。すなわち、分光器を備えた他のチャンバ1を用いた機械学習によって学習モデル25を生成し、この学習モデル25を分光器を備えないチャンバ1用の製造プロセス判定装置20に用いることも可能である。この態様は、複数のチャンバ1において、同種のレシピでエッチング処理を並行して実行する場合に特に有効である。
さらに、必ずしも分光器を用いて教師データを取得する場合に限るものではない。例えば、教師データを取得する際にエッチング中の基板Wの表面を観察し、エッチングの終点前後に応じた基板W表面の色の違いから、プロセスログデータがエッチングの終点前後の何れであるかを判定して教師データを取得することも考えられる。
【0061】
上記のようにして学習した後の学習モデル25により、逐次入力される入力データに基づきエッチングの終点を判定(検出)する判定時には、学習モデル25の入力層に入力データ(画像データ)が逐次入力され、学習モデル25の出力層から出力値OUTが出力される。学習時と異なり、判定時の出力値OUTの値は、0≦OUT≦1となる。
具体的には、図4(b)に示すように、判定部22が、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bのうち何れの学習モデル25を用いて判定を行うかを切り替える。第1学習モデル25aが選択された場合には、第1学習モデル25aの入力層に入力データが逐次入力されて判定が行われる。第2学習モデル25bが選択された場合には、第2学習モデル25bの入力層に入力データが逐次入力されて判定が行われる。
【0062】
なお、図1(b)に示す例では、第1学習モデル25aが選択されているため、第1学習モデル25aの入力層に入力データ(画像データ)が逐次入力され、第1学習モデル25aの出力層から出力値OUTが出力されることになる。第2学習モデル25bが選択されている場合には、第2学習モデル25bの入力層に入力データ(画像データ)が逐次入力され、第2学習モデル25aの出力層から出力値OUTが出力されることになる。
第1実施形態の判定部22は、0≦OUT<0.5のとき(小数点1桁で四捨五入して0になるとき)には、エッチングの終点前であると判定し、0.5≦OUT≦1のとき(小数点1桁で四捨五入して1になるとき)には、エッチングの終点後であると判定するように構成されている。換言すれば、第1実施形態の判定部22は、出力値OUTを所定のしきい値(上記の例では、しきい値=0.5)と比較し、出力値OUTがしきい値より小さければ、エッチングの終点前であると判定し、出力値OUTがしきい値以上であれば、エッチングの終点後であると判定するように構成されている。
【0063】
以上に説明した構成を有する製造プロセス判定装置20により、基板処理装置10において基板Wに施すエッチングの終点が逐次判定(検出)される。
【0064】
なお、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bのうちの何れの学習モデル25を用いて判定を行うかの切り替えは、例えば、以下のようにして自動的に行うことが可能である。すなわち、教師データと同様にして取得した判定精度評価用データ(学習モデル25への既知の入出力の組み合わせ)を予め判定部22に記憶しておく。次に、判定部22がこの判定精度評価用データを用いて、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの判定精度をそれぞれ評価する。そして、判定部22が、判定精度の高かった方の学習モデル25を用いて、その後の判定を行うように構成すればよい。各学習モデル25の判定精度を評価するタイミングは、時間等によって予め設定しても良いし、手動で指示(例えば、製造プロセス判定装置20が備えるキーボードやマウスやタッチパネル等で評価開始を指示)してもよい。
第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bのうちの何れの学習モデル25を用いて判定を行うかの切り替えを判定部22に手動で指示する場合には、例えば、上記と同様の判定精度評価用データを用いて(ただし、この場合には、判定部22に判定精度評価用データを記憶しておく必要はない)、手動で第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの判定精度をそれぞれ評価し、判定精度の高かった方の学習モデル25への切り替えを手動で指示すればよい。
【0065】
第1実施形態では、製造プロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面に、判定に用いる学習モデル25が表示されるように構成されている。具体的には、判定部22への学習モデル25の切り替え指示を手動で行う場合には、例えば、図1(c)に示すように、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bの選択ボタン20bがそれぞれモニタに表示される。そして、キーボードやマウスを使って何れかの選択ボタン20bを選んだり、モニタがタッチパネル式の場合には指で何れかの選択ボタン20bを選ぶことで、選択された学習モデル25が他の学習モデル25と識別可能に表示される態様を採用可能である。例えば、図1(c)に示す例では、選択された学習モデル25(第1学習モデル25a)の表示欄20aがモニタに点灯表示されている。点灯表示に限らず、点滅表示やカラー表示など、選択された学習モデル25を識別可能な限り、種々の態様を採用可能である。
また、判定部22が学習モデル25の切り替えを自動的に行う場合には、例えば、図1(c)に示す例と同様に(ただし、この場合は、選択ボタン20bは不要)、全ての学習モデル25の表示欄20aのうち、選択された学習モデル25(第1学習モデル25a又は第2学習モデル25b)の表示欄20aをモニタに点灯表示等することによって、他の学習モデル25と識別可能にする態様を採用可能である。或いは、選択された学習モデル25の表示欄20aのみをモニタに表示(選択されていない学習モデル25の表示欄20aは非表示)することも可能である。
【0066】
上記のように、判定に用いる学習モデル25が表示される構成にすることで、例えば、判定結果を解析するとき(例えば、判定精度が低下した原因を調査するとき)等に有効である。特に、判定部22が学習モデル25の切り替えを自動的に行う場合には、判定に用いる学習モデル25が表示されないと、どの学習モデル25を用いて判定しているかが一見しただけでは分からないブラックボックスの状態になるため、上記のように表示される構成にすることが有効である。
また、判定結果を解析する上で、判定に用いた学習モデル25と、この判定に用いた学習モデル25に適用したプロセスログデータ(教師データも含む)や判定結果とを紐付けて、例えば、ハードディスク27に記憶させることも有効である。
【0067】
なお、図1(b)に示す製造プロセス判定装置20では、判定部22が2個の第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bを具備し、例えば判定精度の評価結果に基づき何れか一方の学習モデル25に切り替え、この切り替えた何れか一方の学習モデル25のみを用いて判定を行うことを説明したが、本発明はこれに限るものではない。
【0068】
図5は、製造プロセス判定装置の変形例を示す図である。図5(a)は、変形例に係る製造プロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。図5(b)は、変形例に係る製造プロセス判定装置を構成するコンピュータのモニタ画面の表示例を模式的に示す図である。
図5(a)に示す変形例に係る製造プロセス判定装置20Aも、図1(b)に示す製造プロセス判定装置20と同様に、プロセスログ取得部21と、判定部22Aと、を備え、例えば、コンピュータから構成されている。プロセスログ取得部21の構成は、図1(b)に示す製造プロセス判定装置20と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
図5(a)に示す判定部22Aも、図1(b)に示す判定部22と同様に、正規化部23と、画像化部24と、複数個の学習モデル25と、を具備する。ただし、判定部22Aは、複数個の学習モデル25として、3個以上の奇数個の学習モデル25(図5(a)に示す例では、3個の第1学習モデル25a、第2学習モデル25b、第3学習モデル25c)を具備する点が判定部22と異なる。また、判定部22Aは、多数決決定部26を具備する点が判定部22と異なる。これら正規化部23、画像化部24、学習モデル25及び多数決決定部26は、例えば、コンピュータが具備するROM、RAM等のメモリや、該メモリに記憶され、各部23~26としての動作をCPUに実行させるプログラムによって構成される。プログラムは、製造プロセス判定装置20Aが備える外付けの記憶媒体であるハードディスク27に記憶され、ハードディスク27からRAMに読み込む態様であってもよい。正規化部23及び画像化部24の構成は、図1(b)に示す製造プロセス判定装置20と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
変形例に係る製造プロセス判定装置20Aの判定部22Aは、第1学習モデル25a、第2学習モデル25b及び第3学習モデル25cの全てを用いて判定を行うように構成されている。したがい、例えば、図5(b)に示すように、選択された学習モデル25(第1学習モデル25a~第3学習モデル25c)の全ての表示欄20aがモニタに点灯表示されている。具体的には、第1学習モデル25a~第3学習モデル25cの全てから出力値OUTが出力され、多数決決定部26に入力される。
そして、多数決決定部26は、第1学習モデル25a~第3学習モデル25cの判定結果の多数決を最終的な判定結果として出力する。例えば、第1学習モデル25aの出力値OUTが0≦OUT<0.5(エッチングの終点前と判定)であり、第2学習モデル25bの出力値OUTが0≦OUT<0.5(エッチングの終点前と判定)であり、第3学習モデル25cの出力値OUTが0.5≦OUT≦1(エッチングの終点後と判定)である場合には、多数決決定部26から、最終的な判定結果として、エッチングの終点前であることが出力されることになる。
【0071】
図5に示す例では、第1学習モデル25a~第3学習モデル25cの3個の学習モデル25の全てを用いて判定を行っているが、これに限るものではない。例えば、学習モデル25が5個存在する場合に、そのうちの3個の学習モデル25を用いて判定を行うように、一部の学習モデル25を選択して用いて判定を行う態様を採用することも可能である。
また、多数決決定部26を用いて最終的な判定結果を出力する場合と、図1(b)に示す製造プロセス判定装置20と同様に、多数決決定部26を用いずに何れかの学習モデル25を用いて判定結果を出力する場合とを、切り替え可能にする態様を採用することも可能である。
【0072】
以下、第1実施形態に係る基板処理システム100の基板処理装置10によって基板Wをエッチングし、製造プロセス判定装置20の第1学習モデル25a(基板処理装置10の出荷前に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデル25)によってエッチングの終点を判定(検出)する試験を行った結果の一例について説明する。
【0073】
上記試験では、まず、19枚の基板W(Si基板)をSFガスを用いてエッチングし、各基板Wのエッチング時間(基板Wのエッチング開始からエッチング終了を経てオーバーエッチングが終了するまでの約50秒間)において1秒のサンプリング周期毎に第1学習モデル25aへの入力データ(画像データ)を作成した。各サンプリング周期の入力データが、エッチングの終点前に取得したプロセスログデータから作成された入力データであるか、エッチングの終点後に取得したプロセスログデータから作成された入力データであるかについては、上記試験で用いた基板処理装置10には分光器が設けられているため、この分光器で測定したSiFの発光波長を有する光の強度が基準値以下であるか否かによって判定した。以上のようにして採取した教師データを用いて、第1学習モデル25aを機械学習させた。学習後の第1学習モデル25aに同じ教師データの入力データを入力してエッチングの終点前後の何れであるかを判定したところ、判定精度としての正解率(正解した回数/判定回数×100)は99.89%であった。なお、第1学習モデル25aでの1回の判定に要する時間は、オーバーエッチングの時間よりも十分に短かったため、製造プロセス判定装置20によってエッチングの終点を検出(エッチングの終点後であると判定)してからエッチングを終了しても何ら支障は生じないといえる。
【0074】
次に、上記試験では、同じレシピで別の6枚(No.1-1~No.1-6)の基板W(Si基板)をSFガスを用いてエッチングし、各基板Wのエッチング時間において1秒のサンプリング周期毎に第1学習モデル25aへの入力データ(画像データ)を作成した。そして作成した入力データを上記学習後の第1学習モデル25aに入力してエッチングの終点前後の何れであるかを判定した。この際、前述の学習時と同様に、基板処理装置10に設けられた分光器を用いて、各サンプリング周期の入力データが、エッチングの終点前のものであるか、エッチングの終点後のものであるかを判定した。
【0075】
図6は、上記試験の結果を示す。図6に示す「0」は、製造プロセス判定装置20によってエッチングの終点前であると判定したものであり、「1」は、製造プロセス判定装置20によってエッチングの終点後であると判定したものである。図6において、ハッチングを施し、太線で囲んだ欄は、分光器を用いてエッチングの終点後であると判定したものである。
図6に示すように、分光器を用いた判定と異なる判定をしたのは、No.1-3の基板Wの38秒時点における判定と、No.1-5の基板Wの38秒時点における判定だけであり、判定精度としての正解率は99.35%(=306/308×100)であった。したがい、第1実施形態に係る基板処理システム100の製造プロセス判定装置20によれば、基板Wのエッチングの終点を精度良く検出可能であるといえる。
【0076】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係る基板処理システムの概略構成を模式的に示す図である。なお、図7においても、前述の図1(a)と同様に、測定するパラメータを破線の矩形で囲って図示している。図7では、前述の図1(b)に相当する構成の図示を省略している。
図7に示すように、第2実施形態に係る基板処理システム200は、基板処理装置10Aと、製造プロセス判定装置20と、を備えている。
以下、主として第1実施形態に係る基板処理システム100と相違する点について説明し、第1実施形態に係る基板処理システム100と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
第2実施形態の基板処理装置10Aは、チャンバ1と、チャンバ1内に配置された載置台2と、を具備し、載置台2に載置された基板Wにプラズマ処理を施す装置である。より具体的には、第2実施形態の基板処理装置10Aは、プラズマ処理として基板W上に膜を形成する容量結合プラズマ(CCP)方式のプラズマ成膜装置である。
このため、第1実施形態の基板処理装置10と異なり、コイル3(図1(a)参照)の代わりに、チャンバ1内に載置台2と平行に対向配置された上部電極18を備えている。
基板処理装置10Aにおいては、成膜処理を施した基板Wをチャンバ1外に搬送した後、成膜処理によってチャンバ1内に付着した膜組成物をクリーニングによって除去している。具体的には、プラズマを用いたエッチングによって、チャンバ1内に付着した膜組成物を除去している。このクリーニングの際に実行するエッチングについても、プラズマを生成する処理ガスの過剰供給を防止するため、エッチングの終点(クリーニングの終点)を判定(検出)することが重要である。
【0078】
基板処理装置10Aのチャンバ1内には、ガス供給源(図示せず)からプラズマを生成するための処理ガスが供給される。図7では、ガスNo.1~ガスNo.6までの6種類の処理ガスを供給可能とした構成が図示されている。しかしながら、成膜処理を実行する際や、成膜処理後にチャンバ1内に付着した膜組成物をクリーニングする際に、6種類の処理ガスの全てを使用する場合に限るものではなく、何れか1種類以上の処理ガスを用いて成膜処理や、クリーニングを行うことが可能である。
【0079】
上部電極18には、上部高周波電源4から上部マッチングユニット5を介して高周波電力(上部高周波電力)が印加される。また、載置台2には、下部高周波電源6から下部マッチングユニット7を介して高周波電力(下部高周波電力)が印加される。これにより、チャンバ1内に供給された処理ガスがプラズマ化され、生成されたプラズマが載置台2に向けて移動することで、載置台2に載置された基板W上に膜が形成される。成膜処理後に膜組成物をクリーニングする際には、生成されたプラズマがチャンバ1の内面に向けて移動することで、チャンバ1内に付着した膜組成物がエッチングによって除去される。
【0080】
第2実施形態の基板処理装置10Aは、第1実施形態の基板処理装置10と異なり、チラー8、圧力・流量計9、第1ポンプ(ターボ分子ポンプ)14及び真空計16を備えていない。
【0081】
第2実施形態に係る基板処理システム200では、供給する各処理ガスの流量が、ガス供給源からチャンバ1までの流路に設けられたマスフローコントローラ11によって測定される。また、チャンバ1の壁面の適宜の箇所に設けられたヒータ(図示せず)の温度(図7に示す温度No.2-1~No.2-3)が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。さらに、チャンバ1内の圧力が、真空計12によって測定される。
また、上部高周波電源4が印加する上部高周波電力と、上部マッチングユニット5の整合位置(上部マッチングユニット5が具備する可変コンデンサや可変コイルなどの定数)とが、それぞれ公知の測定器(図示せず)によって測定される。
また、下部高周波電源6が印加する下部高周波電力と、下部マッチングユニット7の整合位置(下部マッチングユニット7が具備する可変コンデンサや可変コイルなどの定数)とが、それぞれ公知の測定器(図示せず)によって測定される。
さらに、自動圧力制御装置13の温度(図7に示す温度No.2-5)と、排気管17の適宜の箇所に設けられたヒータ(図示せず)の温度(図7に示す温度No.2-4、No.2-6、No.2-7)とが、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、自動圧力制御装置13のAPC開度が、エンコーダ等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。
【0082】
第2実施形態に係る基板処理システム200が備える製造プロセス判定装置20は、第1実施形態と同様の構成を有し、図7を参照して前述した各測定値を測定する測定器(例えば、マスフローコントローラ11)と有線又は無線で電気的に接続されている。製造プロセス判定装置20は、各測定器から逐次入力された測定データを所定のサンプリング周期(例えば、1秒)で取得し、これら取得された各測定値及び各測定値に対応する各設定値が、プロセスログデータとしてエッチングの終点検出に用いられる。第2実施形態で用いるプロセスログデータにも、基板処理装置10A外での基板Wの位置に関わる測定値や設定値は含まれない。
第2実施形態では、図7に示す全ての測定値をプロセスログデータとして判定に用いているが、本発明はこれに限るものではない。ただし、少なくとも、APC開度と、上部マッチングユニット5及び/又は下部マッチングユニット7の整合位置と、を用いることが好ましい。
【0083】
第2実施形態の製造プロセス判定装置20が判定(検出)するエッチングの終点は、第1実施形態と異なり、基板W上に膜を形成した後、チャンバ1内に付着した膜組成物を除去するために実行するエッチングの終点である。
【0084】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、図5に示す変形例に係る製造プロセス判定装置20Aを採用することが可能である。
【0085】
以下、第2実施形態に係る基板処理システム200の基板処理装置10Aによって基板W上に膜を形成した後、チャンバ1内に付着した膜組成物を除去するために実行するエッチング(クリーニング)の際、製造プロセス判定装置20の第1学習モデル25a(基板処理装置10Aの出荷前に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成された学習モデル25)によってエッチングの終点を判定(検出)する試験を行った結果の一例について説明する。
【0086】
上記試験では、まず、Cガスを用いてチャンバ1内を13回クリーニングし、各クリーニングのエッチング時間(チャンバ1内に付着した膜組成物のエッチング開始からエッチング終了を経てオーバーエッチングが終了するまでの約150秒間)において1秒のサンプリング周期毎に第1学習モデル25aへの入力データ(画像データ)を作成した。各サンプリング周期の入力データが、エッチングの終点前に取得したプロセスログデータから作成された入力データであるか、エッチングの終点後に取得したプロセスログデータから作成された入力データであるかについては、上記試験で用いた基板処理装置10Aには分光器が設けられているため、この分光器で測定したFの発光波長を有する光の強度が基準値以上であるか否かによって判定した。以上のようにして採取した教師データを用いて、第1学習モデル25aを機械学習させた。学習後の第1学習モデル25aに同じ教師データの入力データを入力して判定を行ったところ、判定精度としての正解率は99.39%であった。なお、第1学習モデル25aでの1回の判定に要する時間は、オーバーエッチングの時間よりも十分に短かかったため、製造プロセス判定装置20によってエッチングの終点を検出(エッチングの終点後であると判定)してからエッチングを終了しても何ら支障は生じないといえる。
【0087】
次に、上記試験では、同じレシピで別のタイミングの5回(No.2-1~No.2-5)Cガスを用いてチャンバ1内をクリーニングし、各クリーニングのエッチング時間において1秒のサンプリング周期毎に第1学習モデル25aへの入力データ(画像データ)を作成した。そして、作製した入力データを上記学習後の第1学習モデル25aに入力してエッチングの終点前後の何れであるかを判定した。この際、前述の学習時と同様に、基板処理装置10Aに設けられた分光器を用いて、各サンプリング周期の入力データが、エッチングの終点前のものであるか、エッチングの終点後のものであるかを判定した。
【0088】
図8は、上記試験の結果を示す。図8に示す「0」は、製造プロセス判定装置20によってエッチングの終点前であると判定したものであり、「1」は、製造プロセス判定装置20によってエッチングの終点後であると判定したものである。図8において、斜線のハッチングを施し、太線で囲んだ欄は、分光器を用いてエッチングの終点後であると判定したものである。
図8に示すように、分光器を用いた判定と異なる判定をしたのは、No.2-1のクリーニングの35~39秒時点における判定と、No.2-3のクリーニングの3秒時点における判定と、No.2-5のクリーニングの44秒時点における判定だけであり、判定精度としての正解率は99.1%(=743/750×100)であった。したがい、第2実施形態に係る基板処理システム200の製造プロセス判定装置20によれば、チャンバ1内に付着した膜組成物のエッチング(クリーニング)の終点を精度良く検出可能であるといえる。
【0089】
なお、以上に説明した第1実施形態及び第2実施形態では、判定部22が正規化部23を具備する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。判定部22が正規化部23を具備せず、プロセスログ取得部21によって取得したプロセスログデータを正規化せずに、そのまま用いて入力データを作成することも可能である。
【0090】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、判定部22が画像化部24を具備する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。判定部22が画像化部24を具備せず、プロセスログ取得部21によって取得したプロセスログデータをそのまま又は正規化した後、画像化せずに学習モデル25への入力データとして用いることも可能である。
具体的には、画像化しない場合、例えば、図3に示す学習モデル25の入力層に、図2に示すプロセスログデータXij(i=1~N、j=1~M)又は正規化後のプロセスログデータYij(i=1~N、j=1~M)が入力されることになる。
【0091】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、学習時にも判定時にも学習モデル25への入力データとして、所定のサンプリング周期(例えば、1秒)で作成した入力データ(画像データ)を用いる構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、所定のサンプリング周期で取得したプロセスログデータの所定時間内(複数のサンプリング周期に相当する時間内)での変化を表わしたグラフを画像化し、この画像データを学習モデル25への入力データとして用いることも可能である。上記の画像データの何れかには、エッチングの終点前後にまたがるプロセスログデータから作成されたグラフが含まれることになる。
【0092】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、第1学習モデル25aが、基板処理装置10、10Aの出荷前に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成され、第2学習モデル25bが、基板処理装置10、10Aの出荷前と出荷後に得られた教師データを用いた機械学習を行うことで生成されている構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第2学習モデル25bが、基板処理装置10、10Aの出荷後に得られた教師データのみを用いた機械学習を行うことで生成されていてもよい。また、出荷前後の教師データを用いることに限るものではなく、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bが互いに異なる教師データを用いて生成されていればよい。
【0093】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、基板処理装置10、10Aがエッチング処理を実行する単一のチャンバ1を備え、第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bを1組備える構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、基板処理装置10、10Aが複数のチャンバ1を備え、チャンバ1毎に製造プロセスに関わる判定を行う場合には、チャンバ1毎に第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bを備え、これらを切り替えて用いる構成を採用することが可能である。また、レシピ毎に製造プロセスに関わる判定を行う場合には、レシピ毎に第1学習モデル25a及び第2学習モデル25bを備え、これらを切り替えて用いる構成を採用することが可能である。変形例に係る製造プロセス判定装置20Aのように、第1学習モデル25a~第3学習モデル25cを備える場合も同様である。
【0094】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、出力がエッチングの終点前であること(OUT=0)及びエッチングの終点後であること(OUT=1)の双方の教師データを用いて学習モデル25の機械学習を行うことを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、出力がエッチングの終点前であること(OUT=0)の教師データのみを用いて、又は、出力がエッチングの終点後であること(OUT=1)の教師データのみを用いて学習モデル25の機械学習を行うことも可能である。
【0095】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、教師データの出力が離散値(OUT=0又は1)である場合、換言すれば、学習モデル25が分類モデル(分類器)である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、判定対象がエッチング深さの予測値などの連続値である場合には、出力が連続値(例えば、0~1の範囲に正規化した値)である教師データを用いて学習モデル25の機械学習を行う(すなわち、回帰モデルである学習モデル25を生成する)ことも可能である。
【0096】
さらに、第2実施形態では、多数決決定部26が第1学習モデル25a~第3学習モデル25cの判定結果の多数決を最終的な判定結果として出力する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、上記と同様に、判定対象がエッチング深さの予測値などの連続値である場合には、多数決決定部26に代えて平均値算出部を設け、この平均値算出部が、連続値を出力するように構成された第1学習モデル25a~第3学習モデル25cの出力の平均値を算出して、算出した平均値を最終的な判定結果として出力する態様を採用することも可能である。
【0097】
また、第1実施形態及び第2実施形態の製造プロセス判定装置20によれば、製造プロセス判定装置20を適用する基板処理装置10、10A自体に分光器を設けることは必ずしも必要ではなく、分光器を設けるとしても学習モデル25の学習時にのみ使用すればよい。学習後には分光器を取り外してもよい。
したがい、特許文献4に記載のような、エッチングの終点を検出する際に必ず分光器が必要な従来の判定装置に比べて、製造コストやメンテナンスの手間が軽減する。
【0098】
ただし、本発明は、学習モデル25の学習時に分光器を使用する態様に限るものではない。
一般に、チャンバ1内に生じた光をチャンバ1外に設置した分光器に導くために、チャンバ1の側壁に石英ガラス等の透明材料からなる光学窓が設けられる。この光学窓は、チャンバ1内のプラズマによってエッチングされて粗面化したり、チャンバ1内の反応生成物が付着することで曇る場合がある。光学窓が曇ると、分光器で検出される光の光量が低下することで、分光器によるエッチングの終点検出精度が低下する場合がある。このため、例えば、既設の基板処理装置10、10Aに既に分光器が設けられている場合には、製造プロセス判定装置20によるエッチングの終点検出を、分光器によるエッチングの終点検出の補助(例えば、アラームを出すための用途)として使用する態様を採用することも可能である。
【0099】
また、一般的に、基板処理装置10、10Aの載置台2には、プラズマ処理時に基板Wを静電吸着するための静電チャック(図1図7には図示せず)が設けられる。プラズマ処理が終了し、昇降機構によって基板Wを押し上げ、静電チャックから基板Wを脱離しようとするときに、残留する静電力によって、基板Wの脱離不良が生じる場合がある。このような昇降異常を判定(検出)する際にも、第1実施形態及び第2実施形態の製造プロセス判定装置20を適用することが可能である。
昇降異常を判定する製造プロセス判定装置20の場合、例えば、静電チャックから脱離後にチャンバ1外に向けて搬送される基板Wについて、基板Wを検知するセンサ等を用いることで、所定のタイミング及び所定の位置で搬送異常が生じたか否かを検知し、搬送異常が生じなかった(正常である)ときのプロセスログデータを用いて教師データを作成すればよい。すなわち、学習モデル25の出力が正常である教師データのみを用いて学習モデル25の機械学習を行えばよい。
【0100】
さらに、第1実施形態及び第2実施形態では、製造プロセス判定装置20を適用する基板処理装置10、10Aがプラズマ処理装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、従来、時間エッチング(予め定めた一定時間だけ実行するエッチング)しかできなかった無水HFガス及びアルコールを用いた犠牲層エッチング装置や、XeFガスを用いた犠牲層エッチング装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1・・・チャンバ
2・・・載置台
10、10A・・・基板処理装置
20・・・製造プロセス判定装置
21・・・プロセスログ取得部
22、22A・・・判定部
23・・・正規化部
24・・・画像化部
25・・・学習モデル
26・・・多数決決定部
25a・・・第1学習モデル
25b・・・第2学習モデル
25c・・・第3学習モデル
100、200・・・基板処理システム
W・・・基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8