(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】乾燥時間及びプリントヘッドの脱水性能を向上させるためのインク添加剤
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240617BHJP
【FI】
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2021506561
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2019071276
(87)【国際公開番号】W WO2020038726
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】プラシャール,ジョグナンダン
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/017077(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/017305(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/017307(WO,A1)
【文献】特開昭53-135707(JP,A)
【文献】特開平08-295834(JP,A)
【文献】特開2003-246950(JP,A)
【文献】特開2013-158931(JP,A)
【文献】特開2013-177559(JP,A)
【文献】特開昭56-095961(JP,A)
【文献】特開平07-207202(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01213332(EP,A1)
【文献】国際公開第2001/005899(WO,A1)
【文献】特開2006-117664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00-5/52
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットインクであって、
(i)
少なくとも40wt.%の水を含むインクビヒクルと、
(ii)10~50wt.%の、ジエチレングリコールC
3~8モノアルキルエーテルを含む共溶媒と、
(iii)0.1~2wt.%の式(I)の第1の界面活性剤
(式中、
R
4が、C
4~20アルキルであり、且つ
R
7が、Hである)と、
(iv)0.01~0.1wt.%の第2の界面活性剤であって、以下の:
(a)式(II)のレーキ型モノ-アルコキシル化シリコーン化合物
(式中、
R
3は、式(III):
-(CH
2)
pO-(C
2H
4O)
q-(C
3H
6O)
rH (III)
の部分であり、
bは、1、2、3、4、又は5であり、
cは、1、2、3、4、又は5であり、
pは、1、2、3、4、又は5であり、
qは、1~10であり、
rは、1~10である);及び
(b)式(IV)のスルホスクシネート
(式中、
R
5及びR
6は、各々独立して、C
6~20アルキルから選択され、且つ
Mは、Li、Na、及びKからなる群から選択される金属である)
からなる群から選択される第2の界面活性剤と
を含み、
上記wt.%が、各成分の前記インクジェットインクに対する重量%を示す
ことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記インクの表面張力が、27~31mN/mの範囲内であることを特徴とするインクジェットインク。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記第1の界面活性剤の量が、0.1~1wt.%の範囲内であることを特徴とするインクジェットインク。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記第1の界面活性剤が、前記第2の界面活性剤よりも多い量で存在することを特徴とするインクジェットインク。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記インクが、ポリマー樹脂及びABA型ビス-アルコキシル化シリコーン化合物からなる群から選択される耐久性添加剤を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項6】
請求項1に記載のインクジェットインクにおいて、前記インクビヒクルが、水と、ジエチレングリコールC3~8モノアルキルエーテル以外の1種以上の共溶媒とを含むことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットにおいて、ジエチレングリコールC3~8モノアルキルエーテル以外の前記共溶媒が、グリコールエーテル及び/又は1,2-アルキルジオールからなる群から選択される少なくとも1種の浸透剤を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項8】
請求項6に記載のインクジェットインクにおいて、前記共溶媒が、トリエチレングリコール及びグリセロールの少なくとも1種を含むことを特徴とするインクジェットインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットインクに関する。それは、主に、媒体上に印刷されたインクの乾燥時間を向上させるとともにプリントヘッドの脱水性能(たとえばデキャップ時間)を向上させるために開発されてきた。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、媒体幅全体に延在する固定Memjet(登録商標)プリントヘッドを利用する多くの高速インクジェットプリンターを開発してきた。これとは対照的に、ほとんどの他の型のインクジェットプリンターは、媒体幅全体を横切る走査プリントヘッドを利用する。
【0003】
高速ページ幅プリンティングは、必然的に、従来型のインクジェットプリントヘッドと比較してプリントヘッドの設計にさらなる要求を突きつける。ノズルデバイスは、自己冷却設計、高いインク補充速度、及び高い熱効率を有していなければならない。この目的のために、本出願人は、サスペンド抵抗ヒーターエレメントを有するもの(たとえば、米国特許第6,755,509号明細書、米国特許第7,246,886号明細書、米国特許第7,401,910号明細書、及び米国特許第7,658,977号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの)並びに埋込み(「結合」)抵抗ヒーターエレメントを有するもの(たとえば、米国特許第7,377,623号明細書、米国特許第7,431,431号明細書、米国特許第9,950,527号明細書、米国特許第9,283,756号明細書、及び米国特許第9,994,017号明細書(それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの)をはじめとする一連の熱バブル形成プリントヘッドを開発してきた。
【0004】
インクジェットインクは、プリントヘッド寿命、ノズル脱水、ノズル補充速度、乾燥時間、プリント品質、及びプリント耐久性などのいくつかの異なる性能特性を制御するために性質のバランスを必要とする。過去30年間ほどにわたり、インク配合化学者は、インク性能を調整するために一群の蓄積された配合「手段」を開発してきた。たとえば、インク性能を制御するために、顔料ディスパージョン、共溶媒、界面活性剤、及び他のインク添加剤の変化を使用しうる。しかしながら、インク配合の変化を介して一方の性能特性を向上させようとすると他方の性能特性に有害な影響を及ぼすということがしばしば起こる。したがって、インク配合の目標は、所与の使用事例に許容可能な性質のバランスを有するインクを提供することである。
【0005】
乾燥時間とは、プリントされた後にインクを乾燥させるのに要する時間を意味する。乾燥時間は、媒体シートがプリント後に互いに重ねてスタックされるハイスピード枚葉プリントシステムではとくに重要である。そのほか、枚葉媒体フィード機構は、典型的には、媒体フィード路に沿って媒体を搬送するために一連のローラーを含む。インクの乾燥時間は、少なくともある程度、媒体フィード路の設計、とくにプリントゾーンの下流のローラー(たとえばスターホイール)の近接度を決定する。理想的には、下流ローラーは、プリントゾーンを通る媒体移動の最大制御を付与するためにプリントゾーンのできる限り近くに配置される。一方、ローラーがプリントゾーンに近すぎてプリントされたインクが下流ローラーに接触する前に十分に乾燥しなかった場合、ローラーを通るプリントされた媒体の望ましくないマーキング(いわゆる「トラックマーク」)が問題になる。したがって、とりわけ光沢媒体上にプリントするには、乾燥時間を最小限に抑えたインクを配合することが望ましい。
【0006】
プリント後は媒体上でインクを迅速に乾燥させることが望まれるが、逆説的に、プリントヘッドのインクジェットノズルに位置するときはインクを相対的にゆっくりと乾燥させることも望まれる。インクがプライムされたインクジェットノズルは、好ましくは、アクチュエート時に意図されたトラジェクトリー及び液滴速度でインクのドロップレットを吐出するように準備されるべきである。しかしながら、ある時間にわたりインクジェットノズルが不使用である場合、水の蒸発を介してノズル内のインクの粘度が増加する傾向が見られる。インク粘度の上昇は、望ましくないほど液滴方向性及び/又は液滴速度の損失ひいてはプリント品質の損失を引き起こす。最悪の場合、インクジェットノズルは、ある時間後に完全に目詰まりして非吐出状態になることがある。典型的には、Memjet(登録商標)プリンターは、プリント時に健全ノズルを維持するために「保湿スピット」のストラテジーを利用する。特定ノズルがあらかじめ決められた時間にわたり不使用である場合、プリントされる実画像コンテンツにかかわらず保湿スピットを吐出するように指示される(たとえば、米国特許第9,434,156号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。あらかじめ決められた保湿パターンで十分に低周波数の保湿スピットを用いると、追加のプリントされるドロップレットは、画像コンテンツの一部でなく、人間の肉眼では事実上検出不能である。それにもかかわらず、プリント品質を最適化するように保湿スピットの周波数を最小限に抑えることが依然として望ましい。さらに、外部メンテナンス介入なしにノズルをアンキャップ状態で放置可能な最大時間であるプリントヘッドの「デキャップ」時間を最小限に抑えることが望ましい。本明細書で用いられる場合、プリントヘッドの脱水性能とは、プリントヘッドの許容可能なプリント品質(標準試験パターンにより判定したとき)及び/又はデキャップ時間に必要とされる最小保湿スピッティング(KWS)周波数を意味し、より低いKWS周波数又はより長いデキャップ時間は、向上したプリントヘッド脱水性能を表す。
【0007】
米国特許第6,638,350号明細書には、インクジェットインクで浸透剤として使用するためのジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルジグリコール)やジエチレングリコールヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)などのグリコールエーテルが記載されている。
【0008】
米国特許第7,341,985号明細書には、とくに、塗料、インク、表面クリーナー、現像溶液、金属加工液、濯ぎ助剤配合物、衣類洗剤、シャンプー、コンディショナー、サンスクリーンなどに使用するのに好適なチオエーテル界面活性剤が記載されている。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、
インクビヒクルと、
ジエチレングリコールC
3~8アルキルエーテルと、
式(I)の第1の界面活性剤と、
第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤と、
を含むインクジェットインクが提供される。上記式中、
R
4は、C
4~20アルキルであり、且つ
R
7は、H及びCH
2OHからなる群から選択される(好ましくはR
7はHである)。
【0010】
第1の態様に係るインクジェットインクは、有利なことに、とりわけ光沢媒体上で優れた乾燥時間を提供し、それと同時に向上したプリントヘッド脱水性能を提供する。
【0011】
好ましくは、ジエチレングリコールC3~8アルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノ-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-ペンチルエーテル、及びジエチレングリコールモノ-ヘキシルエーテルからなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、ジエチレングリコールC3~8アルキルエーテルの量は、0.5~10wt.%の範囲内である。好ましくは、ジエチレングリコールC3~8アルキルエーテルの量は、第1の界面活性剤の量よりも多く且つ第2の界面活性剤の量よりも多い。好ましくは、ジエチレングリコールC3~8アルキルエーテルの量は、第1及び第2の界面活性剤の組合せ量よりも多い。
【0013】
好ましくは、インクの表面張力は、27~31mN/m、又は好ましくは28~30mN/mの範囲内である。
【0014】
第2の界面活性剤は、非イオン性又は陰イオン性界面活性剤でありうる。好ましくは、第2の界面活性剤は、レーキ型モノ-アルコキシル化シリコーン界面活性剤、非イオン性アセチレン系界面活性剤、及びジ(C4~30アルキル)スルホスクシネート界面活性剤からなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、第2の界面活性剤は、式(II):
(式中、
R
3は、式(III):
-(CH
2)
pO-(C
2H
4O)
q-(C
3H
6O)
rH (III)
の部分であり、
bは、1、2、3、4、又は5であり、
cは、1、2、3、4、又は5であり、
pは、1、2、3、4、又は5であり、
qは、0~200であり、
rは、0~200であり、且つ
q+rは、1超である)
のレーキ型モノ-アルコキシル化シリコーン化合物である。
【0016】
より好ましくは、q≠0、r≠0。たとえば、qは、1~10であってもよく、且つrは、1~10であってもよい。
【0017】
好ましくは、第2の界面活性剤の量は、0.01~0.2wt.%又は0.02~0.1wt.%の範囲内である。通常は、第2の界面活性剤の量は、0.1wt.%以下である。
【0018】
好ましくは、第1の界面活性剤の量は、0.1~2wt.%又は0.2~1wt.%の範囲内である。
【0019】
好ましくは、第1の界面活性剤の量は、第2の界面活性剤の量よりも多い。いくつかの実施形態では、第1の界面活性剤と第2の界面活性剤との比は、2:1~20:1又は5:1~15:1の範囲内である。典型的には、比は少なくとも5:1である。
【0020】
好ましい実施形態では、第2の界面活性剤は、式(IV):
(式中、
R
5及びR
6は、各々独立して、C
4~30アルキル(好ましくはC
6~20アルキル)から選択され、且つ
Mは、Li、Na、及びKからなる群から選択される金属である)
で示される。
【0021】
いくつかの実施形態では、インクは、第1及び第2の界面活性剤とは異なる第3の界面活性剤を含みうる。第3の界面活性剤は、とくに限定されるものではなく、たとえば、本明細書に記載のレーキ型モノ-アルコキシル化シリコーン界面活性剤、非イオン性アセチレン系界面活性剤、及びジ(C4~30アルキル)スルホスクシネート界面活性剤からなる群から選択しうる。
【0022】
典型的には、第1及び第2の界面活性剤(又は第1、第2、及び第3の界面活性剤)の組合せ全量は、0.05~2wt.%又は好ましくは0.1~1wt%の範囲内である。
【0023】
いくつかの実施形態では、インクは、プリント耐久性(たとえば、耐引掻き性及び/又は耐擦過性)を向上させるために耐久性添加剤を含む。典型的には、耐久性添加剤は、0.1~2wt.%の範囲内の量で存在する。耐久性添加剤は、たとえば、ポリマー樹脂(たとえばアクリル系樹脂)又はABA型ビス-アルコキシル化シリコーン化合物でありうる。ABA型ビス-アルコキシル化シリコーン化合物の例としては、式(V):
(式中、
aは、1、2、3、4、又は5であり、且つ
R
1及びR
2は、各々独立して、以上に記載の式(III)の部分である)
の化合物が挙げられる。
【0024】
ABA型ビス-アルコキシル化シリコーン化合物の具体例は、Dow Corning Additive 8526である。
【0025】
「アルキル」という用語は、典型的には1~30個の炭素原子を有する直線形状及び分岐形状の両方のアルキル基を意味するものとして本明細書で用いられる。とくに明記されていない限り、アルキル基はまた、1、2、又は3つの二重結合及び/又は三重結合が介在しうる。しかしながら、「アルキル」という用語は、通常は二重結合も三重結合も介在しないアルキル基を意味する。「アルキル」という用語は、通常は非環式アルキル基を意味するが、シクロアルキル基も含みうる。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「インク」という用語は、インクジェットプリントヘッドからプリントしうるいずれかのプリント流体を意味するものとみなされる。インクは、着色剤を含有していてもいなくてもよい。それゆえ、「インク」という用語は、従来の染料系又は顔料系インク、赤外インク、固定剤(たとえば、プレコート及び仕上げ剤)、3Dプリント流体などを含みうる。流体又はプリント流体が参照された場合、これは本明細書の「インク」の意味を限定することを意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、一連のプリント媒体上で枚葉プリンター用のインクジェットインク配合物を改善する問題の解決策を探求した。特定的には、本発明者らは、優れた乾燥時間及び優れたプリントヘッド脱水性能の逆説的要件を満たすインク配合物を探求した。
【0028】
最初に、乾燥時間を削減するうえでの有効性に及ぼす既知の浸透剤の影響を調べた。ジエチレングリコールモノ-アルキルエーテル(たとえばn-ブチルジグリコール)を含む配合物は、この浸透剤の欠如した類似の配合物と比較して有意に短い乾燥時間を有することが分かった。しかしながら、プリントヘッド脱水性能は、相対的に不十分であると思われたので、乾燥時間を短くするうえでの有効性及びプリントヘッド脱水性能を向上させるうえでの有効性に関して代替界面活性剤パッケージを調べた。
【0029】
驚くべきことに、小分子チオエーテル界面活性剤(たとえば、Air Products and Chemicals,Inc.製のDynol(商標)360)を含む界面活性剤パッケージは、他の界面活性剤と比較して乾燥時間及びプリントヘッド脱水性能の両方を向上させた。追加の小分子スルホネート界面活性剤(たとえば、BYK Japan K.K.製のBYK-3410)を含む界面活性剤パッケージは、最も有効であることが分かったが、追加の代替界面活性剤を含有する界面活性剤パッケージは、チオエーテル界面活性剤を単独で含有するものよりもさらに有効であった。
【0030】
理論により拘束されることを望むものではないが、チオエーテル界面活性剤の拡散速度又はマイグレーション速度が速いため、プリント媒体中へのインクの浸透が促進されて乾燥時間が削減されるだけでなく、速い拡散機構を介してプリントヘッドの水和ノズルの維持も支援されると考える。追加の界面活性剤によりインクの表面張力を最適化すると、インクの全体性能はさらに向上する。
【0031】
着色剤
本発明で利用されるインクは、典型的には、染料系、又は顔料系インク、好ましくは顔料系インクである。
【0032】
インクジェット染料は当業者に周知であり、本発明は特定の型の染料になんら限定されるものではない。例として、本発明で使用するのに好適な染料としては、アゾ染料(たとえばフードブラック2)、金属錯体染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カルボニウム染料、キノン-イミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料(ナフタロシアニン染料を含む)、及び金属フタロシアニン染料(金属ナフタロシアニン染料を含む)、たとえば、米国特許第7,148,345号明細書に記載のもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0033】
好適な染料の例としては、CIダイレクトブラック4、9、11、17、19、22、32、80、151、154、168、171、194、及び195、CIダイレクトブルー1、2、6、8、22、34、70、71、76、78、86、142、199、200、201、202、203、207、218、236、及び287、CIダイレクトレッド1、2、4、8、9、11、13、15、20、28、31、33、37、39、51、59、62、63、73、75、80、81、83、87、90、94、95、99、101、110、189、225、及び227、CIダイレクトイエロー1、2、4、8、11、12、26、27、28、33、34、41、44、48、86、87、88、132、135、142、及び144、CIフードブラック1及び2、CIアシッドブラック1、2、7、16、24、26、28、31、48、52、63、107、112、118、119、121、172、194、及び208、CIアシッドブルー1、7、9、15、22、23、27、29、40、43、55、59、62、78、80、81、90、102、104、111、185、及び254、CIアシッドイエロー1、3、4、7、11、12、13、14、19、23、25、34、38、41、42、44、53、55、61、71、76、及び79、CIリアクティブブルー1、2、3、4、5、6、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、及び46、CIリアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、49、50、58、59、63、64、及び180、CIリアクティブイエロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、及び42、CIリアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14及び18の、Pro-Jet(登録商標)ファーストシアン2(Fujifilm Imaging Colorants)、Pro-Jet(登録商標)ファーストマゼンタ2(Fujifilm Imaging Colorants)、Pro-Jet(登録商標)ファーストイエロー2(Fujifilm Imaging Colorants)、及びPro-Jet(登録商標)ファーストブラック2(Fujifilm Imaging Colorants)が挙げられる。
【0034】
本発明で使用するのに好適な従来の顔料は、無機顔料であっても有機顔料であってもよい。従来の顔料の例は、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロ-ピロール、アントラキノン、ベンゾイミダゾロン、アントラピリミジン、アゾ顔料、フタロシアニン顔料(ナフトロシアニン顔料を含めて)、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、インダントレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、キノフタロン顔料、及び金属錯体顔料である。
【0035】
好適な顔料の例としては、シアンCOJ450(Cabot)、D71C、及びD75C(Diamond Dispersions)、マゼンタCOJ465(Cabot)、D71M、D75M、D71PV19(Diamond Dispersions)、HostajetマゼンタE-PT VP2690及びHostajetマゼンタE5B-PT VP3565(Clariant)、イエローCOJ270及びCOJ470(Cabot)、又はD71Y、D71Y155、D75Y(Diamond Dispersions)、及びHostajetイエロー4G-PT VP2669(Clariant)、ブラックCW1、CW2、CW3(Orient)又はCOJ200、COJ300、COJ400(Cabot)又はSDP1000、SDP2000(Sensient)、又はD71K、D75K、D77K、D80K(Diamond Dispersions)及びHostajetブラックのO-PT(Clariant)、レッドD71R(Diamond Dispersions)、ブルーD71B(Diamond Dispersions)が挙げられる。
【0036】
顔料は、表面改質顔料などの自己分散性顔料でありうる。表面改質は、陰イオン性基、陽イオン性基、又は顔料表面のいずれかの直接改質によるものでありうる。典型的な表面改質基は、カルボキシレート基及びスルホネート基である。しかしながら、陰イオン性ホスフェート基や陽イオン性アンモニウム基などの他の表面改質基もまた、使用しうる。
【0037】
好適な水性の表面改質顔料ディスパージョンの具体例は、Sensijet(登録商標)ブラックSDP2000、SDP1000及びSDP100(Sensient Colors Inc.から入手可能)、並びにCAB-O-JET(登録商標)200、300、250C、260M、及び270Y(Cabot Corporationから入手可能)である。
【0038】
代替的に、顔料は、非改質顔料粒子をカプセル化するために高分子分散剤を含む従来の顔料ディスパージョンでありうる。好適な顔料ディスパージョン及びその調製の例は、たとえば、米国特許第9,834,694号明細書(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0039】
インクジェットインク中の顔料粒子の平均粒子サイズは、任意選択的に50~500nmの範囲内である。
【0040】
顔料及び染料は、単独又はそれらの2種以上の組合せのいずれかでインクジェットインクで使用しうる。
【0041】
インクビヒクル
本発明で使用されるインクビヒクルは、典型的には、少なくとも40wt%の水、少なくとも50wt%の水、又は少なくとも60wt%の水を含む従来の水性インクビヒクルである。通常、インクジェットインク中に存在する水の量は、40wt%~90wt%又は任意選択的に50wt%~70wt%の範囲内である。
【0042】
本発明に係るインクは、溶媒(保湿剤、浸透剤、湿潤剤などを含む)、界面活性剤、殺生物剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、粘度調整剤などをさらに含みうる。
【0043】
共溶媒は、典型的には水溶性有機溶媒である。好適な水溶性有機溶媒としては、C1~4アルキルアルコール、たとえば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、2-プロパノールなど、アルキレングリコール、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど、グリコールエーテル、たとえば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなど、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビトール、ソルビタン、グリセロールモノアセテート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート、及びスルホラン、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0044】
共溶媒として使用しうる他の有用な水溶性有機溶媒としては、極性溶媒、たとえば、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、ε-カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、モルホリン、N-エチルモルホリン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0045】
インクジェットインクは、インク組成物に保水性及び湿潤性を付与するための湿潤剤又は保湿剤として機能可能な他の高沸点水溶性有機溶媒を共溶媒として含有しうる。高沸点水溶性有機溶媒の例は、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、2000以下の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール,及びそれらの組合せである。
【0046】
他の好適な湿潤剤又は保湿剤としては、糖(単糖、オリゴ糖、及び多糖を含む)及びそれらの誘導体(たとえば、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、ヒアルロン酸塩、アルドン酸、ウロン酸など)が挙げられる。
【0047】
インクジェットインクはまた、記録媒体中への水性インクの浸透を加速のための浸透剤を共溶媒の1つとして含有うる。好適な浸透剤としては、多価アルコールアルキルエーテル(グリコールエーテル)及び/又は1,2-アルキルジオールが挙げられる。好適な多価アルコールアルキルエーテルの例は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-イソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルである。好適な1,2-アルキルジオールの例は、1,2-ペンタンジオール及び1,2-ヘキサンジオールである。浸透剤はまた、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオールなどの直鎖状炭化水素ジオールからも選択しうる。グリセロールはまた、浸透剤としても使用しうる。
【0048】
以上で事前に示したように、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(n-ブチルジグリコール)などのジエチレングリコールモノアルキルエーテルは、乾燥時間を向上させるという観点からインクビヒクルに含まれる。
【0049】
典型的には、インク中に存在する共溶媒の全量は、約5wt%~60wt%又は任意選択的に10wt%~50wt%の範囲内である。
【0050】
以上で事前に示したように、式(I)などの非イオン性チオエーテル界面活性剤は、乾燥時間を向上させるという観点から及びプリントヘッドのインクジェットノズルの脱水性能を向上させるという観点からインクビヒクルに含まれる。
【0051】
インクジェットインクはまた、1種以上の他の界面活性剤、たとえば、陰イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はそれらの混合物を含有しうる。有用な陰イオン性界面活性剤としては、スルホン酸型、たとえば、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸、アシルメチルタウリン、及びジアルキルスルホコハク酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、カルボン酸型、たとえば、脂肪酸塩及びアルキルサルコシン塩、並びにリン酸エステル型、たとえば、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、及びグリセロリン酸エステル塩が挙げられる。陰イオン性界面活性剤の具体例は、ジ(C6-30アルキル)スルホスクシネートナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムラウレート、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフェートアンモニウム塩である。
【0052】
双性イオン性界面活性剤の例としては、N,N-ジメチル-N-オクチルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-ドデシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-テトラデシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアミンオキシド、N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミンオキシド、及びN(N-ジメチル-N-(Z-9-オクタデセニル)-N-アミンオキシド)が挙げられる。
【0053】
非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシド付加体型、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、及びポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオールエステル型、たとえば、グリセロールアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、及び糖アルキルエステル、ポリエーテル型、たとえば、多価アルコールアルキルエーテル、並びにアルカノールアミド型、たとえば、アルカノールアミン脂肪酸アミドが挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体例は、エーテル、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル(たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、並びにエステル、たとえば、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンオレエートエステル、ポリオキシエチレンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートである。
【0054】
アセチレングリコール界面活性剤、たとえば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、エトキシル化2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、又は3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールを使用することも可能である。本発明で使用しうる非イオン性界面活性剤の具体例は、Surfynol(登録商標)465及びSurfynol(登録商標)440(Air Products and Chemicals,Incから入手可能)である。
【0055】
レーキ型アルコキシル化シリコーン界面活性剤はまた、第1の態様に係る配合物でも使用しうる。レーキ型エトキシル化シリコーン界面活性剤の具体例は、BYK-345、BYK-346、及びBYK-349(BYK Japan K.K.製)、さらにはSilface(商標)SAG-002、SAG-005、SAG-008、SAG-KB、及びSAG-503A(Nissin Chemical Industry Co.Ltd.製)である。
【0056】
界面活性剤は、典型的には、0.05wt.%~2wt%又は0.1~1wt.%の範囲内の量で水性インクジェットインク中に存在する。
【0057】
水性インクジェットインクはまた、pH調整剤又は緩衝剤、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウム、アンモニア、並びにアミン、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、プロパノールアミン、4-モルホリンエタンスルホン酸、及び4-モルホリンプロパンスルホン酸(「MOPS」)を含みうる。pH調整剤の量は、存在する場合、典型的には0.01~2wt.%又は0.05~1wt.%の範囲内である。
【0058】
水性インクジェットインクはまた、殺生物剤、たとえば、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、ヒドロキシ安息香酸のエステル、ナトリウムデヒドロアセテート、1,2-ベンチアゾリン-3-オン(Arch Chemicals,Inc.から入手可能な「Proxel(登録商標)GXL」)、3,4-イソチアゾリン-3-オン、又は4,4-ジメチルオキサゾリジンを含みうる。殺生物剤の量は、存在する場合、典型的には0.01~2wt.%又は0.05~1wt.%の範囲内である。
【0059】
水性インクジェットインクはまた、金属イオン封鎖剤、たとえば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有しうる。
【0060】
インクジェットプリントヘッド
本発明に係るインクは、主にサーマルインクジェットプリントヘッドに関連した使用に供されるが、当然ながら他の型のプリントヘッドにも使用しうる。模範的タイプのインクジェットプリントヘッドは、たとえば、米国特許第9,950,527号明細書、米国特許第9,283,756号明細書、及び米国特許第9,994,017号明細書(それらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【実施例】
【0061】
実験の部
乾燥時間擦過試験
矩形に折り畳んだプリントされていない媒体をベタ塗りプリントされたインクの領域を横切って5回擦過する。プリント後、各種インターバルで、擦過表面の外観を非擦過表面と比較して次のように視覚的にグレード分けした。0=認知不能、1=かろうじて認知可能、2=中程度に認知可能、3=非常に認知可能、4=きわめて認知可能。
【0062】
プリントヘッド脱水試験法
所要KWS:Memjet(登録商標)プリントヘッドチップを用いて標準試験パターンをプリントした。各ノズルは、あらかじめ決められた周波数で且つプリント品質の損失が解析される試験パターンで保湿スピット(KWS)を発射するように構成される。所要KWSは、標準試験パターンで許容可能なプリント品質が維持される周波数を表す。より高いKWS周波数は、ノズルの不十分な脱水性能を表し、より低KWS周波数は、ノズルの良好な脱水性能を表す。
【0063】
デキャップ時間:Memjet(登録商標)プリントヘッドチップを用いてインクドロップレットをプリントし、あらかじめ決められた時間にわたりプリンティングを中止した。あらかじめ決められた時間後、プリントヘッドチップの脱水ノズルからプリンティングを試みた。プリント可能なドロップレット間の最大時間(デキャップ時間)を測定した。より短いデキャップ時間は、ノズルの不十分な脱水性能を表し、より長いデキャップ時間は、ノズルの良好な脱水性能を表す。
【0064】
インク配合物
表1に記載のように水性顔料系インク配合し、使用前に濾過した(0.2ミクロン)。インク成分はwt.%として示され、インクはすべて、硝酸アルミニウムとして2ppmアルミニウムイオンを含有していた。
【0065】
インク1~3は、以上に記載の実験プロトコルに従ってさまざまな光沢媒体上にプリントした後、乾燥時間を試験した。結果は表2に示される。
【0066】
インク2及び3でn-ブチルジグリコールを添加したところ、n-ブチルジグリコールを含有しない第1のベースラインインク(インク1)と比較して、試験されたすべての光沢媒体上でインク乾燥時間が劇的に向上した。
【0067】
次いで、n-ブチルジグリコールとさまざまな界面活性剤パッケージとを含有する各種インク(インク4~12)を配合し、乾燥時間に及ぼすさまざま界面活性剤パッケージの影響を評価した。さまざまな界面活性剤パッケージと配合された各種インクを表3に示す。
【0068】
インク4~12は、以上に記載の実験プロトコルに従って光沢媒体上にプリントした後、乾燥時間を試験した。インク4~14を第2のベースラインインク(インク2)と比較し、結果を表4に示す。
【0069】
インク9、10、及び12は、光沢媒体上の優れた乾燥時間及びとくに第2のベースライン配合物(インク2)と比較して向上した乾燥時間を有する傑出した配合物であった。インク9、10、及び12はすべて、Dynol(商標)360と第2の界面活性剤(SAG-KB(商標)又はBYK-3410(商標))とを含有し、インク12は、全体的に最良の乾燥時間結果をもたらした。Dynol(商標)360のみ(インク5)又はBYK-3410のみ(インク11)を含有するインクは、ベースライン配合物(インク2)と比較して相対的に不十分な性能を示した。代替界面活性剤を含有するインク4、6、7、及び8はすべて、第2のベースライン配合物(インク2)と比較して相対的に不十分な性能を示した。
【0070】
第2のベースライン配合物(インク2)と共に最良の候補インク(インク9及び12)をプリントヘッド脱水試験に移行した。結果は表5に示される。
【0071】
注目すべき点として、インク9及び13は、プリントヘッド脱水試験でインク2よりも有意に性能が優れており、かなり低い保湿スピット(KWS)周波数を必要とするとともに有意により長いデキャップ時間(インク2と比較して4倍のデキャップ時間)を呈した。したがって、ジエチレングリコールモノ-アルキルエーテルと、第1の非イオン性チオエーテル界面活性剤と、第2の界面活性剤と、の相乗的組合せを含有するインクは、優れた乾燥時間及び優れたプリントヘッド脱水性能のユニークな特性を提供すると結論付けられた。第2の界面活性剤としてジアルキルスルホスクシネートを用いたところ、インク配合物は、乾燥時間及びプリントヘッド脱水性能の両方に関して最適化された。
【0072】
当然ながら、本発明は単なる例により説明されてきたにすぎず、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内で細部の変更を行いうることは分かるであろう。