IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ サノフィ・バイオテクノロジーの特許一覧

特許7504871関節リウマチを有する対象を治療するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】関節リウマチを有する対象を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240617BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 31/42 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 31/635 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240617BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240617BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P19/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K31/42
A61K31/635
A61P43/00 111
A61K47/18
A61K47/26
G01N33/53 P
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021510860
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019048460
(87)【国際公開番号】W WO2020047029
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】62/724,212
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19192387.9
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/747,301
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/824,399
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/856,431
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/798,697
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/858,443
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボーヤパティ, アニタ
(72)【発明者】
【氏名】グラハム, ニール
(72)【発明者】
【氏名】キムラ, トシオ
(72)【発明者】
【氏名】ムシイド, ジェローム
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539125(JP,A)
【文献】国際公開第2017/155990(WO,A1)
【文献】特表2014-505703(JP,A)
【文献】Ann Rheum Dis,2014年,Vol.73, No.9,pp.1595-1597
【文献】Ann Rheum Dis,2014年,Vol.73, No.9,pp.1626-1634
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を含む、関節リウマチ(RA)を有する未治療の対象を治療する方法における使用のための組成物であって
前記組成物が、単剤療法として前記対象に投与されるものであり、
前記対象から得られた試料中のインターロイキン6(IL-6)のレベルが高IL-6レベルであると決定され
前記高IL-6レベルが、正常上限の3倍(3×ULN)以上であり、
前記抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分が、それぞれ配列番号21、23、25を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、それぞれ配列番号29、31、33を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、組成物。
【請求項2】
ヒト抗インターロイキン-6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を含む、対象における関節損傷を抑制する方法における使用のための組成物であって、前記方法が、
高インターロイキン-6関節リウマチ(高IL-6RA)を有し、かつ、正常上限の3倍(3×ULN)以上の高IL-6レベルを有する未治療の対象を選択し、
前記組成物を単剤療法として前記対象に投与し、ここで、前記抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分が、それぞれ配列番号21、23、25を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、それぞれ配列番号29、31、33を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、それにより前記対象の関節損傷を抑制すること、を含む、組成物。
【請求項3】
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分がサリルマブまたはそのバイオシミラーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、医薬組成物中で前記対象に投与される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が予め充填されたシリンジ中に存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、約75mg~約300mgの前記抗体、またはその抗原結合部分を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、約45mMのアルギニン、約21mMのヒスチジン、約0.2%w/vのポリソルベート-20、および約5% w/vのスクロースを含む、請求項5または7に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物が、約2週間に1回(q2w)、前記対象に投与される、請求項5、7および8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、約200mgの用量として、約2週間に1回(q2w)、前記対象に投与される、請求項5、および7~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が前記対象に皮下または静脈内投与される、請求項5、および7~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が前記対象に皮下投与される、請求項5、および7~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記皮下投与が自己投与である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
抗IL-6診断用抗体と、
抗IL-6R治療用抗体と、
示書と、
を含む、前記抗IL-6診断用抗体で測定した高IL-6レベルを示した関節リウマチの患者の一次治療のためのキットであって、
前記一次治療は、前記患者への、前記抗IL-6R治療法抗体の投与によって実施され、
前記高IL-6レベルが、正常上限の3倍(3×ULN)以上であり、
前記抗IL-6R治療用抗体が、それぞれ配列番号21、23、25を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と、それぞれ配列番号29、31、33を含む3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)配列LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、キット
【請求項15】
前記方法が、前記対象が高IL-6RAを有することを判定することをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項16】
前記方法が、前記対象が高IL-6RAを有することを判定することをさらに含み、
前記対象が高IL-6RAを有することを判定することは、
赤血球沈降速度(ESR);C反応性タンパク質(CRP)量;全血球計算(CBC);リウマチ因子(RF)量;抗核抗体(ANA)量;抗-サイクリック(cyclic)シトルリン化ペプチド(抗CCP)量;抗-変異シトルリン化ビメンチン(抗MCV)量;およびIL-6レベルのうちの1つ以上を決定することを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項17】
前記対象が、以前にRAを有すると診断された、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分が、完全ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年8月29日に出願された米国仮出願第62/724,212号、2018年10月18日に出願された米国仮出願第62/747,301号、2019年1月30日に出願された米国仮出願特許出願第62/798,697号、2019年3月27日に出願された米国仮特許出願第62/824,399号、2019年6月3日に出願された米国仮出願第62/856,431号、および2019年6月7日に出願された米国仮出願第62/858,443号に対する優先権の利益を主張する。本出願は、2019年8月19日に出願された欧州特許出願第19192387.9号に対する優先権の利益を主張する。前記出願のそれぞれの全内容は本発明の一部として参照される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に出願され、その全体が参照により本明細書に組み込まれている配列表を含む。2019年8月19日に作成された上記のASCII複製は、118003_10320_SL.txtという名前で、サイズが104,804バイトである。
【背景技術】
【0003】
関節リウマチ(RA)は滑膜組織の慢性炎症を特徴とする自己免疫疾患であり、関節アーキテクチャの破壊をもたらす。この疾患の特徴は、手足の小関節を特徴とする対称性の多発性関節炎である。炎症過程は、他の臓器、典型的には、骨髄(貧血)、眼(強膜炎、上強膜炎)、肺(間質性肺炎、胸膜炎)、心臓(心膜炎)および表皮(小節、白血球破砕性血管炎)を標的とすることもできる。全身性炎症は、貧血、赤血球沈降速度の上昇、フィブリノゲンおよびC反応性タンパク質(CRP)などの臨床検査値異常、ならびに倦怠感、体重減少、および罹患関節領域における筋肉萎縮の臨床症状を特徴とする。ポリクローナル高力価リウマチ因子および抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体の存在は、免疫調節異常の証拠を提供する。腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン-1(IL-1)およびインターロイキン-6(IL-6)などのサイトカインが、RAで観察される関節の炎症および軟骨損傷において役割を果たすことが認識されている。
【0004】
米国リウマチ学会(ACR)および欧州リウマチ学会(EULAR)は、RAを有する対象を治療するための臨床医に指針を提供している(例えば、Singhら(2016) Arthritis Care Res 68(1):1-25;Smollenら(2017) Ann Rheum Dis 0:1-18参照)。RAと新たに診断された対象(未上記対象)に対する一次治療は、従来の合成(cs)疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばメトトレキサート(MTX)の単独またはプレドニゾンなどのグルココルチコイドとの併用による治療である。しかしながら、対象の約50%においては、csDMARDによる治療によって疾病活動が効果的に制御されておらず、TNF-アルファ抑制療法はcsDMARD療法(Rohrら(2017)Arthritis Care & Res 69(6):794)と組み合わせられている。しかしながら、現実の臨床診療および複数国にわたる処方薬登録からのデータが増加していることは、生物学的(b)DMARDが、医師の裁量で、または患者の嗜好および/または例えばMTX療法に対する不耐性のために、単剤療法として頻繁に使用されることを示している(例えば、Catayら(2016)BMC Musculoskel Disord(2016)17:110参照)。それにもかかわらず、かなりの数の対象が、不十分なレスポンダー、非レスポンダー、またはそのような治療に不耐容であり、関節破壊を含む病気は、現在利用可能な無数の治療にもかかわらず進行し続ける。
【0005】
したがって、RAを有する特定の対象を治療するための効果的な単剤療法となる一次治療を同定するのに有用な方法および組成物が、当技術分野において必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Singhら(2016) Arthritis Care Res 68(1):1-25
【文献】Smollenら(2017) Ann Rheum Dis 0:1-18
【文献】Rohrら(2017)Arthritis Care & Res 69(6):794
【文献】Catayら(2016)BMC Musculoskel Disord(2016)17:110
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、少なくとも部分的には、ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を有するベースラインのインターロイキン-6(IL-6)量が高い関節リウマチ(RA)対象の治療が、メトトレキサート(MTX)またはTNFαインヒビター(例えば、アダリムマブ)による治療よりも一次治療として有効であるという驚くべき発見に基づいている。
【0008】
特に、ランダム化24週間MONARCH臨床試験(NCT02332590)に登録されたRA対象のIL-6値を分析したところ、ベースラインのIL-6高値の三分位(例えば、正常上限の約3倍(3xULN)、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)に該当する対象は、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFα抑制剤(例えば、エタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX投与と比較して、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ投与に対して臨床的に意味のある反応を達成する可能性が高いことが実証された。この効果は、急性相反応物質(例えば、28関節を用いた疾患活動性スコアおよびC反応性タンパク質(DAS28-CRP))を含み、急性相反応物質(例えば、健康評価質問票を用いた機能障害指数(HAQD1)、臨床疾患活動性指数(CDAI)、および/または腫脹関節数)を除外した全ての測定エンドポイントにわたって観察されたが、ベースラインからのIL-6レベルの変化とは関係しなかった。ベースラインのIL-6レベルが高い(例えば、通常の上限(3xULN)の約3倍以上、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)三分位に分類される対象は、また、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブの投与における反応において、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFαインヒビター(例えばエタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX投与と比較して、患者報告アウトカム(PRO)、例えば、疼痛VAS、SF-36PCS、SF-36MCS、およびFACIT-Fスコアの改善を達成する可能性が高くなった。
【0009】
さらに、第III相MOBILITY臨床試験(NCT01061736)に登録されたRA対象のIL-6値を分析した結果、ベースラインのIL-6高値の三分位(例えば、正常上限の約3倍(3xULN)の値、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)に該当する対象は、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ、およびMTXの投与に対して、MTXおよびプラセボ投与と比較して、臨床的に意味のある反応を達成する可能性が高いことが実証された。この分析から、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ、およびMTX治療は、現在利用可能な一次治療と比較して、ACR70およびCDAIおよびHAQDI寛解の達成により有効であるが、IL-6レベルのベースラインからの変化とは関係がないことが実証された。ベースラインのIL-6高値(例えば、正常値の上限(3xULN)の約3倍以上、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)の三分位に入る対象は、また、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブの投与における反応において、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFαインヒビター(例えばエタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX投与と比較して、患者報告アウトカム(PRO)、例えば、疼痛VAS、SF-36PCS、SF-36MCS、およびFACIT-Fスコアの改善を達成する可能性がより高かった。
【0010】
さらに、第III相TARGET臨床試験(NCT01709578)またはランダム化24週間MONARCH臨床試験(NCT02332590)に登録された、腫瘍壊死因子抑制剤に対する不十分な反応または不耐性がであった、RAおよび糖尿病を患う対象(例えば、RAおよびベースライン空腹時血糖値≧7mmol/Lまたはベースライングリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)≧6.5%を有する対象)からのIL-6レベルの分析は、高いベースラインIL-6レベルの三分位に入る対象(例えば、正常の上限(3xULN)の約3倍以上、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)が、アダリムマブまたはプラセボ投与と比較して、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブの投与後、糖尿病の測定において臨床的に意味のある応答、例えばHbA1cレベルを達成する可能性が高いことを実証した。
【0011】
したがって、一つの態様において、本開示は、関節リウマチ(RA)を有する対象を治療するための方法を提供する。該方法は、対象から得られた試料中のインターロイキン6(IL-6)のレベルを測定し、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを含む、ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えば、抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分の約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの治療有効量、例えば約75mg~約300mgを、対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、対象試料中のIL-6レベルが、高IL-6レベル、例えば、正常の上限の約1.5倍を超える(1.5xULN)IL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5xULNと70xULNの間、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3xULNと70xULNの間、または約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15から約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/mlから800pg/mlの間、であると決定される場合、それによって対象を治療する。1つの実施形態において、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0012】
別の態様において、本発明は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を治療するための方法を提供する。該方法は、高IL-6RAを有する対象、例えば、RAを有し、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルを有する対象を選択し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの、約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0013】
別の態様において、本発明は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有すると以前に同定された対象、例えば、RAを有し、正常の上限の約1.5倍(1.5xULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5xULNと70xULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3xULNと70xULNの間、または約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15と約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超える、例えば、約35pg/mlと800pg/mlの間の対象を治療する方法を提供する。該方法は、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象また、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0014】
一つの態様において、本発明は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象、例えば、RAを有し、正常の上限の約1.5倍(1.5xULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5xULNと70xULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3xULNと70xULNの間、または約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15と約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超える、例えば、約35pg/mlと800pg/mlの間の対象において28関節(DAS28)寛解を使用して疾患活動性スコアを達成するための方法を提供する。該方法は、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に、投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象また、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。一実施形態において、対象は、DAS28-CRP寛解、例えば、約2.6未満、例えば、約12週間の治療後、または24週間の治療後のDAS-CRPスコアを達成する。
【0015】
別の態様において、本発明は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象、例えばRAを有し、正常の上限の約1.5倍(1.5xULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5xULNと70xULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3xULNと70xULNの間、または約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15と約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超える、例えば、約35pg/mlと800pg/mlの間の対象の、臨床疾患活動性指数(CDAI)寛解を達成するための方法を提供する。該方法は、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に、投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象また、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。一実施形態において、対象は、CDI寛解、例えば、約2.8以上の、例えば、約12週間の治療後、または24週間の治療後のCDAIスコアを達成する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象、例えばRAを有し、正常の上限の約1.5倍(1.5xULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5xULNと70xULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3xULNと70xULNの間、または約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15と約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超える、例えば、約35pg/mlと800pg/mlの間の対象においてACR70応答を達成するための方法を提供する。該方法は、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に、投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。対象は、約12週間の治療後、または24週間の治療後にACR70応答を達成することができる。
【0017】
1つの態様において、本発明は、ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を有する関節リウマチ(RA)を有する対象を治療するための方法を提供する。該方法は、高インターロイキン6(IL-6)レベルを有する対象、例えば、RAを有し、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルを有する対象を選択し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの、約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。1つの実施形態において、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0018】
1つの態様において、本発明は、対象における関節損傷を抑制するための方法を提供する。該方法は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するナイーブな対象、例えば、RAを有し、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルを有する対象を選択し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの、約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを単剤療法として含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分を対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象における関節損傷を抑制する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。いくつかの実施形態においては、治療の結果、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の結果、対象は、例えば、第52週における、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)の変化、例えば、0.25のmTSSスコアで測定される、構造的損傷の進行の抑制を達成する。いくつかの実施形態では、例えば、200mg、q2wサリルマブ治療の結果として、対象は、例えば、52週目にmTSSによって評価されるように、X線像上の進行において約90%の低下を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療、例えば200mgのq2wサリルマブ治療の後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.6の変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大1の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.2の変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大0.3の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。
【0019】
別の態様において、本発明は、治療に対する不耐性または不十分な反応によって引き起こされる対象におけるさらなる関節損傷を予防するための方法を提供する。該方法は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象、例えば、RAを有し、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルを有する対象を選択し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの、約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、これにより対象におけるさらなる関節損傷を防止する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。いくつかの実施形態においては、治療の結果、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の結果、対象は、例えば、第52週における、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)の変化、例えば、0.25のmTSSスコアで測定される、構造的損傷の進行の抑制を達成する。いくつかの実施形態では、例えば、200mg、q2wサリルマブ治療の結果として、対象は、52週目にmTSSによって評価されるように、X線像上の進行において約90%の低下を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療、例えば200mgのq2wサリルマブ治療の後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.6の変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大1の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.2の変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大0.3の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。
【0020】
一つの態様において、本発明は、対象を治療するための方法を提供する。該方法は、関節リウマチ(RA)を有することが疑われる対象が、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するかどうかを決定し、例えば、対象がRAを有し、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルかどうかを決定し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象また、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0021】
一つの態様において、本発明は、関節リウマチ(RA)を有するメトトレキサート不耐性対象を治療するための方法を提供する。該方法は、対象が、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するかどうかを決定し、例えば、対象がRAを有し、正常値の上限の約1.5倍を超える(1.5×ULN)IL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルかどうかを決定し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象また、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0022】
別の態様において、本発明は、関節リウマチ(RA)を有するメトトレキサートに不十分なレスポンダー対象を治療するための方法を提供する。該方法は、対象が、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するかどうかを決定し、例えば、対象がRAを有し、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、例えば、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルかどうかを決定し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象また、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0023】
一つの態様において、本発明は、関節リウマチを有する対象を治療するための方法を提供する。該方法は、対象が関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーまたは関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーに属することを決定するように、対象からの試料中のIL-6のレベルを決定する工程と、対象が関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーに関連する場合には、療法を対象に割り当てる工程であって、療法は、例えば、約2週間に1回(q2w)に約200mgなどの、約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む抗IL6R抗体またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを含む抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分の投与である、工程と、ヒトIL-6R抗体またはその抗原結合部分を対象に投与、例えば皮下投与し、それによって関節リウマチを有する対象を治療する工程と、を含む。一実施形態では、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0024】
別の態様において、本発明は、関節リウマチを有する対象を治療するための方法を提供する。該方法は、各対象が関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーまたは関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーに属することを決定するように、対象からの血清試料中のIL-6のレベルを決定する工程と、関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーにある対象に治療を割り当てる工程であって、療法は、例えば、約2週間に1回(q2w)に約200mgなどの、約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む抗IL6R抗体またはその抗原結合部分、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを含む抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分の投与である、工程と、ヒトIL-6R抗体またはその抗原結合部分を、関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーにある対象に投与、例えば皮下投与し、それによって関節リウマチを有する対象を治療する工程と、を含む。一実施形態では、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0025】
一実施形態において、関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーは、高レベルのIL-6、例えば、正常値の上限の約1.5倍(1.5×ULN)を超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルに相当する。
【0026】
一実施形態において、関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーは、中程度のレベルのIL-6および/または低レベルのIL-6、例えば、正常値の上限の約1倍未満(1xULN)のIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約3xULN未満、例えば、約1xULNと約3xULNとの間)、または約15pg/ml未、例えば、約35pg/ml未満、例えば、約1pg/mlと約35pg/mlとの間のIL-6レベル(例えば、血清レベル)に相当する。
【0027】
1つの態様において、本発明は、関節リウマチを有する対象において、DMARDによる前治療に対する不耐性または不十分な反応によって引き起こされるさらなる関節損傷を予防するための方法を提供する。該方法は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象、例えば、RAを有し、正常値の上限の約1.5倍を超える(1.5×ULN)IL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約1.5×ULNと70×ULNの間、約3xULNを超えるIL-6レベル、例えば、約3×ULNと70×ULNの間、または、約15pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約15~約800pg/mlの間、例えば、約35pg/mlを超えるIL-6レベル、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlの間のIL-6レベルを選択し、例えば、約200mgなど、約2週間に1回(q2w)約200mgなどの約75mg~約300mgなどの治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分、例えば、配列番号21、23、および25をそれぞれ含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、ならびに配列番号29、31、および33をそれぞれ含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列、例えば、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVR、および配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗IL6R抗体、またはそれらの抗原結合部分、例えばサリルマブ、またはそのバイオシミラーを含む、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分を対象に投与、例えば、皮下投与することを含み、それによって対象におけるさらなる関節損傷を防止する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。いくつかの実施形態においては、治療の結果、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の結果、対象は、例えば、第52週における、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)の変化、例えば、0.25のmTSSスコアで測定される、構造的損傷の進行の抑制を達成する。いくつかの実施形態では、例えば、200mg、q2wサリルマブ治療の結果として、対象は、例えば、52週目にmTSSによって評価されるように、X線像上の進行において約90%の低下を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療、例えば200mgのq2wサリルマブ治療の後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.6の変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大1の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.2の変化を達成する。いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大0.3の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。
【0028】
一実施形態において、対象は、関節リウマチを有することが疑われる。別の実施形態では、対象は、関節リウマチを有することが疑われ、この方法は、対象が高IL-6RAを有するかどうかを決定することをさらに含む。一実施形態において、対象は、RAをおよび糖尿病を有することが疑われる。別の実施形態では、対象は、関節リウマチおよび糖尿病を有することが疑われ、この方法は、対象が高IL-6RAを有するかどうかを決定することをさらに含む。別の実施形態では、対象は、関節リウマチおよび糖尿病を有することが疑われ、この方法は、対象が高IL-6RAおよび糖尿病を有するかどうかを決定することをさらに含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は糖尿病を有さない。
【0029】
RA(またはRAおよび糖尿病)を有することが疑われる対象が高IL-6RAであるかどうかを測定する方法には、赤血球沈降速度(ESR);C反応性タンパク質(CRP)量;全血球計算(CBC);リウマチ因子(RF)量;抗核抗体(ANA)量;抗-サイクリック(cyclic)シトルリン化ペプチド(抗CCP)量;抗-変異シトルリン化ビメンチン(抗MCV)量;グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)量;IL-6レベルの1つ以上を測定する方法がある。
【0030】
いくつかの実施形態において、対象は、以前にRAを有すると診断された。
【0031】
いくつかの実施形態において、対象は、以前にRAを有すると診断され、以前に糖尿病を有すると診断された。
【0032】
いくつかの実施形態において、対象は、未治療のRA対象である。
【0033】
いくつかの実施形態において、対象は、未治療のRA対象および未治療の糖尿病対象である。
【0034】
他の実施形態において、対象は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)などのRAを治療するための1つまたは複数の治療薬を以前に投与された。他の実施形態において、対象は、糖尿病を治療するための1つまたは複数の治療薬を以前に投与された。
【0035】
一実施形態では、対象は、関節リウマチおよび糖尿病を有する。一実施形態では、治療は、糖尿病の測定値、例えば、HbA1cの臨床的改善、例えば、ベースラインHbA1c量から約0.4%HbA1c量の減少をもたらす。
【0036】
対象に投与されるDMARDは、従来の合成(cs)DMARD、例えば、メトトレキサート(MTX)、レフルノミド、またはスルファサラジンのうちの1つ以上;生物学的(b)DMARDの1つ以上、例えば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、もしくはそれらのバイオシミラー、アバタセプト、リツキシマブ、トシリズマブ、クラザキズマブ、もしくはシルクマブ、もしくはそれらのバイオシミラーなどの腫瘍壊死因子(TNF)抑制剤の1つ以上;および/または1つ以上の標的化合成(ts)DMARD、例えば、トファシチニブもしくはバリシチニブなどのヤヌスキナーゼ(Jak)抑制剤であり得る。
【0037】
別の実施形態では、RAを治療するための1つまたは複数の治療薬剤は、グルココルチコイドである。
【0038】
対象は、DMARDが不十分なレスポンダー(DMARD-IR)対象;DMARD不耐性対象;TNFインヒビターが不十分なレスポンダー対象;またはTNFインヒビター不耐性対象であり得る。
【0039】
対象試料は、血液試料、例えば血清試料のような液体試料であってもよい。
【0040】
IL-6のレベルは、ELISAアッセイにより決定することができる。
【0041】
一実施形態では、抗IL6R抗体またはその抗原結合部分は、完全ヒト抗IL6R抗体またはその抗原結合部分である。
【0042】
別の実施形態では、抗IL6R抗体またはその抗原結合部分は、配列番号3/11;227/229;19/27;231/233;35/43;51/59;67/75;83/91;99/107;115/123;131/139;147/155;239/155;241/155;163/171;179/187;235/237;195/203;および211/219からなる群より選択されるHCVR/LCVR配列対からの重鎖および軽鎖CDR配列を含む。
【0043】
さらに別の実施形態では、抗IL6R抗体またはその抗原結合部分は、配列番号19/27のHCVR/LCVR配列対からの重鎖および軽鎖CDR配列を含む。
【0044】
1つの実施形態において、抗IL6R抗体またはその抗原結合部分は、それぞれ配列番号21、23および25を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、およびそれぞれ配列番号29、31および33を含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む。
【0045】
一実施形態では、抗IL6R抗体またはその抗原結合部分は、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0046】
別の実施形態では、抗IL6R抗体、またはその抗原結合部分は、サリルマブまたはそのバイオシミラーである。
【0047】
1つの実施形態において、抗IL6R抗体またはその抗原結合部分は、医薬組成物中で対象に投与される。
【0048】
一実施形態では、医薬組成物は、予め充填されたシリンジ中に存在する。
【0049】
一実施形態では、医薬組成物は、約75mg~約300mgの抗体、またはその抗原結合部分を含む。
【0050】
一実施形態では、医薬組成物は、約45mMアルギニン、約21mMヒスチジン、約0.2%w/vポリソルベート-20、および約5%w/vスクロースを含む。
【0051】
1つの実施形態において、医薬組成物は、約2週間に1回(q2w)、対象に投与される。
【0052】
1つの実施形態において、医薬組成物は、約200mgの用量として、約2週間に1回(q2w)、対象に投与される。
【0053】
医薬組成物は、対象に皮下または静脈内に投与することができる。
【0054】
1つの実施形態において、医薬組成物は、対象に皮下投与される。
【0055】
1つの実施形態において、医薬組成物の皮下投与は自己投与である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
関節リウマチ(RA)を有する対象を治療するための方法であって、
前記対象から得られた試料中のインターロイキン6(IL-6)のレベルを決定し、
前記対象の試料中のIL-6のレベルが高IL-6レベルであると決定された場合に、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目2)
高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を治療するための方法であって、
高IL-6RAを有する対象を選択し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目3)
高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有すると以前に同定された対象を治療するための方法であって、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目4)
高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象において28関節(DAS28)寛解を用いて疾患活動性スコアを達成するための方法であって、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目5)
高インターロイキン-6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象において、臨床疾患活動性指数(CDAI)寛解を達成するための方法であって、治療有効量のヒト抗インターロイキン-6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目6)
高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象においてACR70応答を達成するための方法であって、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目7)
ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分により関節リウマチ(RA)を有する対象を治療するための方法であって、
高インターロイキン6(IL-6)レベルを有する対象を選択し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それにより前記対象を治療することを含む、方法。
(項目8)
対象における関節損傷を抑制するための方法であって、
高インターロイキン-6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する未治療対象を選択し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン-6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を単剤療法として前記対象に投与し、それにより前記対象の関節損傷を抑制すること、を含む方法。
(項目9)
治療に対する不耐性または不十分な反応によって引き起こされる対象におけるさらなる関節損傷を予防するための方法であって、
高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を選択し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それにより前記対象におけるさらなる関節損傷を防止すること、を含む方法。
(項目10)
対象を治療するための方法であって、
関節リウマチ(RA)を有することが疑われる対象が高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するか否かを決定し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって前記対象を治療することを含む、方法。
(項目11)
関節リウマチを有する対象を治療するための方法であって、
以前にアダリムマブまたはアダリムマブのバイオシミラーによる治療を受けたことがある患者であって、高IL-6レベルを有しているまたは呈していた、および、アダリムマブまたはアダリムマブのバイオシミラーに対して不十分な反応を有していた患者を選択し、
前記患者に対するアダリムマブ治療を中止し、
1用量以上のサリルマブを含む前記患者に対する治療レジメンを開始し、それにより前記対象を治療することを含む、方法。
(項目12)
関節リウマチ(RA)を有するメトトレキサート不耐性対象を治療するための方法であって、
前記対象が高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するか否かを決定し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それにより前記対象を治療することを含む、方法。
(項目13)
関節リウマチ(RA)を有するメトトレキサートに不十分なレスポンダー対象を治療するための方法であって、
前記対象が高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するか否かを決定し、
前記対象に治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を投与し、それにより前記対象を治療することを含む、方法。
(項目14)
関節リウマチを有する対象を治療するための方法であって、
前記対象が関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーまたは関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーのいずれかに属すると決定されるように、前記対象からの試料中のインターロイキン6(IL-6)のレベルを決定する工程と、
前記対象が前記関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーに関連する場合、治療を前記対象に割り当てる工程であって、前記治療は、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分の投与である、工程と、
ヒトIL-6R抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、それによって関節リウマチを有する前記対象を治療する工程と、を含む、方法。
(項目15)
関節リウマチを有する対象を治療するための方法であって、
関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーまたは関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーのいずれかに各々の対象が属するように、前記対象からの血清試料中のインターロイキン6(IL-6)のレベルを決定する工程と、
前記関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーにおける前記対象に治療を割り当てる工程であって、前記治療は治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分の投与である工程と、
前記関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーにおける前記対象に、ヒトIL-6R抗体、またはその抗原結合部分を投与し、それによって関節リウマチを有する前記対象を治療する工程と、を含む、方法。
(項目16)
前記関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーが、高いレベルのIL-6に対応する、項目14または項目15に記載の方法。
(項目17)
前記関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーが、中程度のレベルのIL-6および/または低いレベルのIL-6に対応する、項目14~16のいずれか一項記載の方法。
(項目18)
関節リウマチを有する対象におけるDMARDによる前治療に対する不耐性または不十分な反応によって引き起こされるさらなる関節損傷を防止するための方法であって、
高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を選択し、
治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を前記対象に投与し、
それにより前記対象におけるさらなる関節損傷を防止することを含む、方法。
(項目19)
前記対象がRAを有することが疑われる、項目1、2、4~9、および12~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記対象が関節リウマチを有することが疑われ、前記方法が、前記対象が高IL-6RAを有するかどうかを決定することをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
RAを有することが疑われる前記対象が高IL-6RAを有するか否かを決定し、赤血球沈降速度(ESR)、C反応性タンパク質(CRP)レベル、全血球数(CBC)、リウマチ因子(RF)のレベル、抗核抗体(ANA)のレベル、抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)のレベル、抗変異シトルリン化ビメンチン(抗MCV)のレベル、およびIL-6のレベルの1つ以上を決定することを含む、項目20記載の方法。
(項目22)
前記対象が、RAを有すると以前に診断された、項目1、2、4~9、および12~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
対象が未治療のRA対象である、項目1~9、および12~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記対象が、RAを治療するための1つ以上の治療薬を以前に投与されている、項目1~23のいずれか一項記載の方法。
(項目25)
RAを治療するための前記1つ以上の治療薬が、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記DMARDが、1つ以上の従来の合成(cs)DMARDである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記csDMARDが、メトトレキサート(MTX)、レフルノミド、またはスルファサラジンである、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記DMARDが1つ以上の生物学的(b)DMARDである、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記bDMARDが1つ以上の腫瘍壊死因子(TNF)インヒビターである、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記TNF抑制剤が、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、またはそれらのバイオシミラーである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記bDMARDが、アバタセプト、リツキシマブ、トシリズマブ、クラザキズマブ、もしくはシルクマブ、またはこれらのバイオシミラーである、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記DMARDが1つ以上の標的化された合成(ts)DMARDである、項目25に記載の方法。
(項目33)
前記tsDMARDがヤヌスキナーゼ(Jak)インヒビターである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記Jakインヒビターが、トファシチニブまたはバリシチニブである、項目33に記載の方法。
(項目35)
RAを治療するための前記1つまたは複数の治療薬はグルココルチコイドである、項目24に記載の方法。
(項目36)
前記対象が、DMARDに不十分なレスポンダー(DMARD-IR)対象である、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記対象がDMARD不耐性対象である、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記対象が、TNFインヒビターに不十分なレスポンダー対象である、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記対象がTNFインヒビター不耐性対象である、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記対象の試料が液体試料である、項目1および14~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記液体試料が血液試料である、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記血液試料が血清試料である、項目41記載の方法。
(項目43)
前記IL-6のレベルがELISAアッセイによって決定される、項目1~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、完全ヒト抗IL6R抗体またはその抗原結合部分である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、配列番号3/11;227/229;19/27;231/233;35/43;51/59;67/75;83/91;99/107;115/123;131/139;147/155;239/155;241/155;163/171;179/187;235/237;195/203;および211/219からなる群より選択されるHCVR/LCVR配列対からの重鎖および軽鎖CDR配列を含む、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、配列番号19/27の前記HCVR/LCVR配列対からの重鎖および軽鎖CDR配列を含む、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、それぞれ配列番号21、23、25を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)配列、およびそれぞれ配列番号29、31、33を含む3つの軽鎖相補性決定(LCDR)配列を含む、項目1~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、配列番号19のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号27のアミノ酸配列を有するLCVRを含む、項目1~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分がサリルマブまたはそのバイオシミラーである、項目1~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記抗IL6R抗体またはその抗原結合部分が、医薬組成物中で前記対象に投与される、項目1~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記医薬組成物が予め充填されたシリンジ中に存在する、項目1~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記医薬組成物が、約75mg~約300mgの前記抗体、またはその抗原結合部分を含む、項目50または51に記載の方法。
(項目53)
前記医薬組成物が、約45mMのアルギニン、約21mMのヒスチジン、約0.2%w/vのポリソルベート-20、および約5% w/vのスクロースを含む、項目50~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記医薬組成物が、約2週間に1回(q2w)、前記対象に投与される、項目50~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記医薬組成物が、約200mgの用量として、約2週間に1回(q2w)、前記対象に投与される、項目50~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記医薬組成物が前記対象に皮下または静脈内投与される、項目50~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記医薬組成物が前記対象に皮下投与される、項目50~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記皮下投与が自己投与である、項目57に記載の方法。
(項目59)
抗IL-6診断用抗体と、
抗IL-6R治療用抗体と、
前記抗IL-6診断用抗体で測定した高IL-6レベルを患者が示した場合、一次治療として前記抗IL-6R治療用抗体を前記患者に投与するよう医療従事者に指示する指示書と、
を含む、関節リウマチ治療用キット。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、IL-6レベルの三分位(すなわち、低IL-6レベル、中IL-6または高IL-6レベルの対象)のそれぞれにおいて、投与24週後および52週後にプラセボおよびメトトレキサートまたはサリルマブおよびメトトレキサートを投与した際の、対象における、Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースラインからの平均変化を示すグラフである。下の表は、グラフにプロットされた点の数値を示している。
図2図2は、MOBILITYおよびMONARCH試験デザインを概略的に示している。
図3図3は、MOBILITYおよびMONARCH試験における対象のベースラインIL-6三分位によるベースライン疾患活動性を示す表である。
図4図4は、MOBILITY試験における対象のベースラインIL-6三分位によるmTSSの平均変化量を示したグラフである。
図5図5は、MOBILITY試験における対象のベースラインIL-6三分位による24週間後および52週間後の有効性を示すグラフである。
図6図6は、MOBILITY試験の対象における有効性パラメータのオッズ比を示す表である。
図7図7は、MONARCH試験における対象のベースラインIL-6三分位による24週間の有効性を示すグラフである。
図8図8は、MONARCH試験における対象のベースラインIL-6三分位による反応を模式的に示したものである。
図9図9は、MONARCH試験における対象の有効性パラメータのオッズ比を示す表である。
図10A図10Aは、MOBILITY試験およびMONARCH試験における対象のベースラインIL-6またはCRPによる反応の比較を示した表である。
図10B図10Bは、高ベースラインIL-6が、治療に対する反応の予測において高CRPよりも優れていることを示す表である。
図11A図11Aは、MOBILITYおよびMONARCH試験における対象の高IL-6三分位の治療差とコンパレータとの一貫性を示す表である。
図11B図11Bは、MOBILITYおよびMONARCH試験における高IL-6サブグループの治療差の一貫性を多くのエンドポイント(高IL-6三分位の群間差)で示した表である。
図12図12は、MOBILITYおよびMONARCH試験におけるIL-6三分位による治療下で発現した有害事象の発現を示す表である。
図13図13は、MOBILITYおよびMONARCH臨床試験の設計を示す。N=各治療群に無作為に割り付けられた患者数。ACR20、米国リウマチ学会議基準による20%以上の改善を達成した患者の割合;DAS28、28関節の疾患活動性スコア;ESR、赤血球沈降速度;HAQ-DI、健康評価質問票を用いた機能障害指数;mTSS、修正された合計シャープスコア;MTX、メトトレキサート;q2w、2週間毎。
図14図14A、14B、14Cは、MOBILITY試験におけるベースラインのIL-6三分位(14A)低値、(14B)中値、(14C)高値によるmTSSの平均変化を描いたグラフである。全患者にMTXを週1回投与し、サリルマブをq2wで投与した。IL-6、インターロイキン-6、mTSS:修正された合計シャープスコア、MTX:メトトレキサート、q2w:2週間毎、SD:標準偏差。
図15図15A~15Bは、MOBILITY試験のベースラインのIL-6三分位による24週時(A)および52週時(B)のレスポンダーの割合を示す棒グラフである。ACR20/50/70、米国リウマチ学会基準で≧20/50/70%向上を達成した患者;CDAI、臨床疾患活動性指数;CRP、C反応性タンパク質;DAS28、28関節の疾患活動性スコア;HAQ-DI、健康評価質問票-障害指数;IL-6、インターロイキン-6;MTX、メトトレキサート;q2w、2週毎。
図16図16A、16A、16B、および16Cは、ベースラインのIL-6三分位(A)サリルマブ200mg対プラセボ、(B)サリルマブ200mg対アダリムマブ40mg、および(C)ベースラインのIL-6三分位に応じたHAQ-DIの変化に従った24週目の疼痛VASおよび患者の全VASの変化を示すグラフである。LS平均値は、ベースラインのPRO値、治療、試験のランダム化因子(両試験の領域およびNCT01061736の生物学的製剤使用歴)を固定効果とした三分位ごとの線形回帰から算出した。*治療による線形回帰、ベースラインPRO値、研究ランダム化層別化因子(NCT01061736の研究と以前の生物学的使用の両方のための領域)、固定効果としての治療相互作用ごとのベースラインでのIL-6三分位を使用する、名目上のIL-6治療ごとの三分位相互作用p<0.05(高対低)。CI:信頼区間、HAQ-DI:健康評価質問票を用いた機能障害指数、IL-6:インターロイキン-6、LS:最小二乗、PRO:患者報告アウトカム、VAS:視覚的アナログスケール。
図17A図17Aは、MONARCH試験における24週時のアダリムマブおよびサリルマブレスポンダーのベースラインのIL-6三分位の高値対低値の割合を示す棒グラフである。CDAI寛解を達成したITT集団の患者数が少ないため、この測定値はIL-6の三分位では分析されなかった。ACR20/50/70、患者が米国リウマチ学会議基準に従い≧20/50/70%改善達成;CDAI、臨床疾患活動指数;CRP、C反応性タンパク質;DAS28、28関節の疾患活動性スコア;ESR、赤血球沈降速度;HAQ-DI、健康評価アンケート-障害指数;IL-6、インターロイキン-6;ITT、治療意図;LDA、低疾患活動;MTX、メトトレキサート;q2w、2週間毎。
図17B図17Bは、MONARCH試験におけるベースラインのIL-6三分位の低値およびベースラインのIL-6三分位の高値レスポンダーに対する24週時のアダリムマブ対サリルマブの割合を示している。ITT集団ではCDAI寛解を達成した患者数が少なかったため、この尺度はIL-6三分位で解析されなかった。ACR20/50/70、患者が米国リウマチ学会議基準に従い≧20/50/70%改善達成;CDAI、臨床疾患活動指数;CRP、C反応性タンパク質;DAS28、28関節の疾患活動性スコア;ESR、赤血球沈降速度;HAQ-DI、健康評価アンケート-障害指数;IL-6、インターロイキン-6;ITT、治療意図;LDA、低疾患活動;MTX、メトトレキサート;q2w、2週間毎。
図18図18Aは、SF-36PCSスコアエンドポイントのベースラインからの第24週の最小二乗平均変化をIL-6三分位で表したグラフである。*低い三分位を基準としたIL-6三分位-治療ごとの相互作用のP<0.05有意性。アダリムマブ:低三分位:n=45;中三分位:n=53;高三分位:n=54;サリルマブ:低三分位:n=55;中三分位:n=47;高三分位:n=46。 図18Bは、IL-6三分位による朝のこわばり持続時間VASスコアエンドポイントのベースラインからの最小二乗平均第24週の変化を示すグラフである。*低い三分位を基準としたIL-6三分位-治療ごとの相互作用のP<0.05有意性。アダリムマブ:低三分位:n=45;中三分位:n=53;高三分位:n=54;サリルマブ:低三分位:n=55;中三分位:n=47;高三分位:n=46。 図18Cは、FACIT-疲労スコアエンドポイントのベースラインからの第24週の最小二乗平均変化をIL-6三分位で表したグラフである。*低い三分位を基準とて使用したIL-6三分位-治療ごとの相互作用のP<0.05有意性。アダリムマブ:低三分位:n=45;中三分位:n=53;高三分位:n=54;サリルマブ:低三分位:n=55;中三分位:n=47;高三分位:n=46。
図19】図表19は、IL-6三分位によるアダリムマブおよびサリルマブ(ベースライン†および24週目の合計)のSF-36ドメインスコアの平均値を示している。低い三分位を基準とした治療ごとのIL-6三分位の交互相互作用のp値は、PFを除くSF-36ドメインのいずれについても有意ではなかった。§各IL-6の三分位内におけるベースラインからの最小二乗平均変化の群間差が有意であった(p<0.05)。†ベースラインの合計スコアを示すが、各群のベースラインからの変化量は図のみから推測することはできない。各10点間隔は、SF-36ドメインスコアのMCIDの2倍を表す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本開示は、少なくとも部分的には、ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を有するベースラインのインターロイキン6(IL-6)量が高い関節リウマチ(RA)対象の治療が、メトトレキサート(MTX)、アダリムマブ、またはアダリムマブ以外のTNFα抑制剤(エタネルセプトまたはインフリキシマブなど)による治療よりも一次治療として有効であるという驚くべき発見に基づいている。一次治療としてヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分で治療されたベースラインのインターロイキン6(IL-6)レベルが高い関節リウマチ(RA)対象では、メトトレキサート(MTX)、アダリムマブ、またはアダリムマブ以外のTNFα抑制剤(エタネルセプトまたはインフリキシマブなど)で治療された対象と比較して、患者から報告されたアウトカムのQOL測定値が改善されたことが、驚くべきことに発見された。
【0058】
特に、ランダム化24週間MONARCH臨床試験(NCT02332590)に登録されたRA対象のIL-6値を分析したところ、ベースラインのIL-6高値の三分位(例えば、正常上限の約3倍(3xULN)、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)に該当する対象は、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFα抑制剤(例えば、エタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX投与と比較して、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ投与に対して臨床的に意味のある反応を達成する可能性が高いことが実証された。この効果は、急性相反応物質(例えば、28関節を用いた疾患活動性スコアおよびC反応性タンパク質(DAS28-CRP))を含み、急性相反応物質(例えば、健康評価質問票を用いた機能障害指数(HAQD1)、臨床疾患活動性指数(CDAI)、および/または腫脹関節数)を除外した全ての測定エンドポイントにわたって観察されたが、ベースラインからのIL-6レベルの変化とは関係しなかった。ベースラインのIL-6高値(例えば、正常値の上限(3xULN)の約3倍以上、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)の三分位に入る対象も、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFαインヒビター(例えば、エタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX患者と比較して、アダリムマブ、例えば、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えば、サリルマブの投与に応答して、患者における報告されたアウトカム(PRO)、例えば、疼痛VAS、SF-36PCS、SF-36MCS、およびFACIT-Fスコアの向上を達成する可能性がより高かった。
【0059】
さらに、第III相MOBILITY臨床試験(NCT01061736)に登録されたRA対象のIL-6レベルを分析した結果、ベースライン時のIL-6高値の三分位(例えば、正常上限の約3倍以上(3xULN)、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)に該当する対象は、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ、およびMTXの投与に対して、MTXおよびプラセボ投与と比較して、臨床的に意味のある反応を達成する可能性が高いことが実証された。この分析から、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ、およびMTX治療は、現在利用可能な一次治療と比較して、ACR70およびCDAIおよびHAQDI寛解の達成により有効であるが、IL-6レベルのベースラインからの変化とは関係がないことが実証された。ベースラインのIL-6高値(例えば、正常値の上限(3xULN)の約3倍以上、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)の三分位に入る対象も、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFαインヒビター(例えば、エタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX患者と比較して、アダリムマブ患者、例えば、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えば、サリルマブ患者に応答して、患者における報告されたアウトカム(PRO)、例えば、疼痛VAS、SF-36PCS、SF-36MCS、およびFACIT-Fスコアの向上を達成する可能性がより高かった。
【0060】
さらに、第III相TARGET臨床試験(NCT01709578)に登録された腫瘍壊死因子抑制剤に対して不十分な反応または不耐性を示したRAおよび糖尿病の対象(例えば、RAを有し、ベースライン空腹時血糖値≧7mmol/Lまたはベースライングリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)≧6.5%の対象)からのIL-6レベルまたはランダム化された24週間のMONARCH臨床試験(NCT02332590)の分析は、ベースラインのIL-6レベルが高い三分位(例えば、通常の上限(3xULN)の約3倍以上、例えば、約15pg/mlから約800pg/mlの間)に分類される対象が糖尿病の測定において臨床的に意味のある反応、アダリムマブまたはプラセボ投与と比較した、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブの投与後の例えば、HbA1cレベル、例えば、ベースラインHbA1cレベルから約0.4%のHbA1cレベルの減少を達成する可能性が高いことを示した。
【0061】
本開示の様々な態様は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載される:
【0062】
I.定義
本明細書で使用される場合、以下の用語の各々は、本部においてそれに関連する意味を有する。
【0063】
物品「1つ(a)」および「1つ(an)」は、ここでは、物品の文法目的の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「元素」は、1つまたは複数の元素を意味する。
【0064】
「決定する」という用語は、試料中のIL-6の有無を検出すること、および/または試料中のIL-6の量を定量することを含む方法を意味する。測定は、当技術分野で公知の方法および本明細書にさらに記載される方法によって達成することができる。
【0065】
用語「インターロイキン6のレベル」または「IL-6のレベル」は、試験される試料中に存在するIL-6タンパク質の量を指す。一実施形態では、IL-6のレベルは、絶対レベルまたは量(例えば、pg/ml)である。別の実施形態では、IL-6のレベルは、相対レベルまたは量(例えば、信号の相対強度)である。
【0066】
本明細書で同義的に使用される用語「高IL-6レベル」および「高インターロイキン-6レベル」は、一実施形態では、対象由来の試料におけるIL-6のレベルを指し、一実施形態では、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFα抑制剤(エタネルセプトやインフリキシマブなど)またはMTX投与と比較して、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブの投与に、臨床的に意味のある反応、例えば、DAS28-CRP寛解、CDAI寛解、ACR70応答、関節損傷の抑制、例えば、さらなる関節損傷を達成する可能性が高い、および/またはヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブの投与、およびMTX投与に対して、MTXおよびプラセボ投与と比較して、臨床的に意味のある反応、例えば、DAS28-CRP寛解、CDAI寛解、ACR70応答、関節損傷の抑制、例えば、さらなる関節損傷の抑制を達成する可能性が高い、関節リウマチを患っている対象(または関節リウマチと糖尿病を患っている対象)からの試料中のIL-6のレベルである。
【0067】
別の実施形態では、高IL-6レベルは、正常値の上限(の約1.5倍1.5xULN)を超え;約1.75xULNを超え;約2xULN;約2.25xULN;約2.5xULN;約2.75xULN;約2.80xULN;約2.85xULN;約2.90xULN;約2.95xULN;または約3xULNを超える。対象の血清中のIL-6の正常上限は約12.5pg/mlである。上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0068】
別の実施形態では、高IL-6レベルは、約15pg/mlを超え、例えば、約20pg/ml;25pg/ml;30pg/ml;35pg/ml;40pg/ml;45pg/ml;50pg/ml;55pg/ml;60pg/ml;65pg/ml;70pg/ml;75pg/ml;80pg/ml;85pg/ml;90pg/ml;95pg/ml;100pg/ml;105pg/ml;110pg/ml;120pg/ml;130pg/ml;140pg/ml;150pg/ml;160pg/ml;170pg/ml;180pg/ml;190pg/ml;200pg/ml;210pg/ml;220pg/ml;230pg/ml;240pg/ml;250pg/ml;260pg/ml;270pg/ml;280pg/ml;290pg/ml;300pg/ml;310pg/ml;320pg/ml;330pg/ml;340pg/ml;350pg/ml;360pg/ml;370pg/ml;380pg/ml;390pg/ml;400pg/ml;410pg/ml;420pg/ml;430pg/ml;440pg/ml;450pg/ml;460pg/ml;470pg/ml;480pg/ml;490pg/ml;500pg/ml;510pg/ml;520pg/ml;530pg/ml;540pg/ml;550pg/ml;560pg/ml;570pg/ml;580pg/ml;590pg/ml;600pg/ml;610pg/ml;620pg/ml;630pg/ml;640pg/ml;650pg/ml;660pg/ml;670pg/ml;680pg/ml;690pg/ml;700pg/ml;710pg/ml;720pg/ml;730pg/ml;740pg/ml;750pg/ml;760pg/ml;770pg/ml;780pg/ml;790pg/ml;800pg/ml;例えば約15~約800pg/ml、約20~約800pg/ml、約25~約800pg/ml、約30~約800pg/ml、約35~約800pg/ml、約40~約800pg/ml、約45~約800pg/ml、約50~約800pg/ml、約55~約800pg/ml、約60~約800pg/ml、約65~約800pg/ml、約70~約800pg/ml、約75~約800pg/ml約80から約800pg/ml;約85~約800pg/ml、約90~約800pg/ml、約95から約800pg/ml;約100から約800pg/mlの間;約105から約800pg/mlの間;約15から約800pg/mlの間;約20から約800pg/mlの間;約25から約750pg/mlの間;約30から約750pg/mlの間;約40から約750pg/mlの間;約45から約750pg/mlの間;約50から約750pg/mlの間;約55から約750pg/mlの間;約60から約750pg/mlの間;約65から約750pg/mlの間;約70から約750pg/mlの間;約75から約750pg/mlの間;約80から約750pg/mlの間;約85から約750pg/mlの間;約90~約750pg/ml、約95~約750pg/ml、約100~約750pg/ml、約105~約750pg/ml、約15~約800pg/ml、約20~約800pg/ml、約25~約700pg/ml、約30~約700pg/ml、約40~約700pg/ml、約45~約700pg/ml、約50~約700pg/ml、約55~約700pg/ml、約60~約700pg/ml、約65~約700pg/ml、約70~約700pg/ml、約75~約700pg/ml、約80~約700pg/ml、約85~約700pg/ml、約90~約700pg/ml、約95~約700pg/ml;約100~約700pg/ml;または約105~約700pg/mlである。一実施形態では、高IL-6レベルは、約35pg/mlより大きく、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlである。上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0069】
「高インターロイキン6関節リウマチ」または「高IL-6RA」(例えば、RA疾患重症度の第1のカテゴリーに属する対象)(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有する対象は、一実施形態では、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFαインヒビター(例えば、エタネルセプトまたはインフリキシマブ)、またはMTX投与と比較して、高レベルのIL-6を有し、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、サリルマブの投与後に臨床的に意味のある反応を達成する可能性が高く、および/または、ヒト抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えば、サリルマブ、およびMTX投与の投与に対して、MTXおよびプラセボ投与と比較して、臨床的に意味のある反応を達成する可能性が高かったRAを有する対象である。
【0070】
別の実施形態では、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有する対象は、関節リウマチを有し、正常上限の約1.5倍を超えるIL-6レベル(1.5xULN);約1.75xULN;約2xULN;約2.25xULN;約2.5xULN;約2.75xULN;または約3xULN、例えば、約1.5xULNから70xULNの間、約1.75xULNと70xULNの間、約2xULNから70xULNの間、約2.5xULNから70xULNの間、約2.75xULNから70xULNの間、約3xULNから70xULNの間、約1.5xULNから60xULNの間、約1.75xULNから60xULNの間、約2xULNから60xULNの間、約2.5xULNから60xULNの間、約2.75xULNから60xULNの間、約3xULNから60xULNの間、約1.5xULNから50xULNの間、約1.75xULNから50xULNの間、約2xULNから50xULNの間、約2.5xULNから50xULNの間、約2.75xULNから50xULNの間、約3xULNから50xULNの間、約1.5xULNから40xULNの間、約1.75xULNから40xULNの間、約2xULNから40xULNの間、約2.5xULNから40xULNの間、約2.75xULNから40xULNの間、約3xULNから40xULNの間、約1.5xULNから30xULNの間、約1.75xULNから30xULNの間、約2xULNから30xULNの間、約2.5xULNから30xULNの間、約2.75xULNから30xULNの間、約3xULNから30xULNの間、約1.5xULNから20xULNの間、約1.75xULNから20xULNの間、約2xULNから20xULNの間、約2.5xULNから20xULNの間、約2.75xULNから20xULNの間、約3xULNから20xULNの間、約1.5xULNから10xULNの間、約1.75xULNから10xULNの間、約2xULNから10xULNの間、約2.5xULNから10xULNの間、約2.75xULNから10xULNの間、約3xULNから10xULNの間、を有する対象である。1つの実施形態において、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有する対象は、関節リウマチを有し、IL-6レベルが正常上限の約3倍を超える(3xULN);例えば、約3xULNと約70xULNとの間にある対象である。
【0071】
上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0072】
さらに別の実施形態では、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有する対象は、関節リウマチ(またはRAおよび糖尿病を有する対象)を有し、IL-6レベル(例えば、血清レベル)が約15pg/ml超、例えば約20pg/ml;25pg/ml;30pg/ml;35pg/ml;40pg/ml;45pg/ml;50pg/ml;55pg/ml;60pg/ml;65pg/ml;70pg/ml;75pg/ml;80pg/ml;85pg/ml;90pg/ml;95pg/ml;100pg/ml;105pg/ml;110pg/ml;120pg/ml;130pg/ml;140pg/ml;150pg/ml;160pg/ml;170pg/ml;180pg/ml;190pg/ml;200pg/ml;210pg/ml;220pg/ml;230pg/ml;240pg/ml;250pg/ml;260pg/ml;270pg/ml;280pg/ml;290pg/ml;300pg/ml;310pg/ml;320pg/ml;330pg/ml;340pg/ml;350pg/ml;360pg/ml;370pg/ml;380pg/ml;390pg/ml;400pg/ml;410pg/ml;420pg/ml;430pg/ml;440pg/ml;450pg/ml;460pg/ml;470pg/ml;480pg/ml;490pg/ml;500pg/ml;510pg/ml;520pg/ml;530pg/ml;540pg/ml;550pg/ml;560pg/ml;570pg/ml;580pg/ml;590pg/ml;600pg/ml;610pg/ml;620pg/ml;630pg/ml;640pg/ml;650pg/ml;660pg/ml;670pg/ml;680pg/ml;690pg/ml;700pg/ml;710pg/ml;720pg/ml;730pg/ml;740pg/ml;750pg/ml;760pg/ml;770pg/ml;780pg/ml;790pg/ml;または約800pg/mlの、例えば、約15~約800pg/ml;約20~約800pg/ml;約25~約800pg/ml;約30~約800pg/ml;約35~約800pg/ml;約40~約800pg/ml;約45~約800pg/ml;約50~約800pg/ml;約55~約800pg/ml、約60~約800pg/ml、約65~約800pg/ml、約70~約800pg/ml、約75~約800pg/ml、約80~約800pg/ml;約85~約800pg/ml、約90~約800pg/ml、約95~約800pg/ml、約100~約800pg/ml、約105~約800pg/ml、約25~約750pg/ml、約30~約750pg/ml、約40~約750pg/ml、約45~約750pg/ml、約50~約750pg/ml、約55~約750pg/ml、約60~約750pg/ml、約65~約750pg/ml、約70~約750pg/ml、約75~約750pg/ml、約80~約750pg/ml、約85~約750pg/ml、約90~約750pg/ml、約95~約750pg/ml、約100~約750pg/ml、約105~約750pg/ml、約25~約700pg/ml、約30~約700pg/ml、約40~約700pg/ml、約45~約700pg/ml、約50~約700pg/ml、約55~約700pg/ml、約60~約700pg/ml、約65~約700pg/ml、約70~約700pg/ml、約75~約700pg/ml、約80~約700pg/ml、約85~約700pg/ml、約90~約700pg/ml、約95~約700pg/ml;約100~約700pg/ml;または約105~約700pg/mlの対象である。一実施形態では、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有する対象は、関節リウマチ(またはRAおよび糖尿病)および約35pg/mlを超えるIL-6レベル(例えば、血清レベル)、例えば、約35pg/ml~約800pg/mlを有する対象である。上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0073】
別の実施形態では、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有する対象は、関節リウマチ(またはRAおよび糖尿病を有する対象)を有し、約20mg/Lを超えるC反応性タンパク質(CRP)レベル(例えば血清レベル)、例えば、約20mg/L;25mg/L;30mg/L;35mg/L;40mg/L;45mg/L;50mg/L;55mg/L;60mg/L;65mg/L;70mg/L;75mg/L;80mg/L;85mg/L;90mg/L;95mg/L;100mg/L;105mg/L;110mg/L;120mg/L;130mg/L;140mg/L;150mg/L;160mg/L;170mg/L;180mg/L;190mg/L;200mg/L;210mg/L;220mg/L;230mg/L;240mg/L;250mg/L;260mg/L;270mg/L;280mg/L;290mg/L;300mg/L;310mg/L;320mg/L;330mg/L;340mg/L;350mg/L;360mg/L;370mg/L;380mg/L;390mg/L;または約400pg/ml;例えば、約15~約400mg/L;約20~約400mg/L;約25~約400mg/L;約30~約400mg/L;約35~約400mg/L;約40~約400mg/L;約45~約400mg/L;約50~約400mg/L;約55~約400mg/L;約60~約400mg/L;約65~約400mg/L;約70~約400mg/L;約75~約400mg/L;約80~約400mg/L;約85~約400mg/L;約90~約400mg/L;約95~約400mg/L;約100~約400mg/L;約105~約400mg/L;約20~約350mg/L;約25~約350mg/L;約30~約350mg/L;約40~約350mg/L;約45~約350mg/L;約50~約350mg/L;約55~約350mg/L;約60~約350mg/L;約65~約350mg/L;約70~約350mg/L;約75~約350mg/L;約80~約350mg/L;約85~約350mg/L;約90~約350mg/L;約95~約350mg/L;約100~約350mg/L;約105~約350mg/L;約20~約300mg/L;約25~約300mg/L;約30~約300mg/L;約40~約300mg/L;約45~約300mg/L;約50~約300mg/L;約55~約300mg/L;約60~約300mg/L;約65~約300mg/L;約70~約300mg/L;約75~約300mg/L;約80~約300mg/L;85~約300mg/L;約90~約300mg/L;約95~約300mg/L;約100~約300mg/L;または約105~約300mg/Lである。上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0074】
高インターロイキン6関節リウマチまたは高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を持たない対象(例えば、RA疾患重症度の第2のカテゴリーに属する対象、例えば、「中等度レベルのIL-6」(すなわち「中レベルのIL-6」)または「低レベルのIL-6」)を有する対象は、一実施形態では、アダリムマブ、アダリムマブ以外のTNFα抑制剤(エタネルセプトやインフリキシマブなど)またはMTX投与と比較して、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分(サリルマブなど)の投与に対して臨床的に意味のある反応を達成する可能性が低い、および/またはMTXおよびプラセボ投与と比較して、ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分(例えば、サリルマブおよびMTX投与)の投与に対して臨床的に意味のある応答を達成する可能性が低い、RAおよびレベルのIL-6を有する対象である。
【0075】
別の実施形態では、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有さない対象(例えば、RAの重症度の第2のカテゴリーに属する)例えば、「IL-6の中程度のレベル」(すなわち「中レベルのIL-6」)または「IL-6の低いレベル」を有する対象は、関節リウマチ(またはRAおよび糖尿病)を有し、IL-6レベルが正常の上限の約1.5倍(1.5xULN)未満;約1.75xULN未満;約2.25xULN未満;約2.5xULN未満;約2.75xULN未満;約2.80xULN未満;約2.85xULN未満;約2.90xULN未満;約2.95xULN未満;または約3xULN未満を有する対象である。1つの実施形態において、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有さない対象は、関節リウマチを有し、IL-6レベルが正常上限の約3時間(3xULN)未満である;例えば、約1xULNから約3xULNの間を有する対象である。上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0076】
さらに別の実施形態では、高いIL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有さない対象(例えば、RA疾患重症度の第2のカテゴリーに属する対象、例えば、「中程度のレベルのIL-6(すなわち「中レベルのIL-6」)」または「低レベルのIL-6」を有する対象)は、関節リウマチ(またはRAおよび糖尿病)を有し、約35pg/ml未満のIL-6、例えば、約35pg/ml、30pg/ml、25pg/ml、20pg/ml、15pg/ml、10pg/ml、5pg/ml、1pg/ml、例えば、約1~35pg/ml、約1~30pg/ml、約1~25pg/ml、約1~20pg/ml、約1~15pg/ml、約1~10pg/ml、または約1~5pg/mlを有する対象である。一実施形態では、高IL-6RA(または「高IL-6RAおよび糖尿病」)を有さない対象は、関節リウマチ(またはRAおよび糖尿病)および約35pg/ml未満、例えば約1~35pg/mlのIL-6レベルを有する対象である。上記の範囲および値に対する中間の範囲および値もまた、本発明の一部であると考えられる。
【0077】
「インターロイキン6」または「IL-6」は、リガンド結合IL-6Rα鎖(CD126)およびシグナル伝達成分gp130(CD130とも呼ばれる)からなる細胞表面型Iサイトカイン受容体錯体を介してシグナルを伝達するT細胞およびマクロファージによって分泌される既知のサイトカインである。CD130は、白血病抑制因子(LIF)、毛様ニューロトロピック因子、オンコスタチンM、IL-11およびカーディオトロフィン-1を含むいくつかのサイトカインの共通シグナルトランスデューサーであり、ほとんどの組織においてほぼユビキタスに発現する。IL-6がその受容体と相互作用すると、gp130およびIL-6Rタンパク質を誘発して錯体を形成し、受容体を活性化する。これらの錯体はgp130の細胞内領域を集めて、ある種の転写因子、ヤヌスキナーゼ(JAK)とシグナル伝達性転写因子(STAT)を介したシグナル伝達カスケードを開始させる。
【0078】
対象から得られた試料中のIL-6レベルを決定する方法は、当業者に周知であり、市販の核酸および蛋白質ベースのアッセイを含む。IL-6レベルを測定するための例示的な市販のタンパク質ベースのアッセイとしては、例えば、Quantikine IL-6免疫測定(米国ミネソタ州ミネアポリスのR&D Systems Inc);ヒトIL-6 ELISAキット(Thermo Fisher/Abcam/Biocompare/Cisbio/GE Healthcare);IL-6(ヒト)アルファLISA検出キット(PerkinElmer);Bio-PlexプロヒトサイトカインIL-6アッセイ(BIO-RAD);MSD-IL-6超高感度アッセイ(Mesoスケールディスカバリー);ULX-IL-6超高感度シングルプレックスビーズキット(Invitrogen);およびiLite(登録商標)IL-6アッセイレディーセル(Euro Diagnostica)が挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される用語「患者」または「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物、例えば獣医学患者を意味する。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類を包含する。一実施形態において、対象は、ヒト、例えば小児および成人ヒトである。
【0080】
「試料」という語は、本明細書において使用される場合、対象から単離された類似の細胞または組織、ならびに対象内に存在する組織、細胞および流体の集まりを意味する。「試料」という語は、任意の体流体(例えば、血流体流体、リンパ流体、婦人科用流体、嚢胞性流体、尿、眼流体および気管支洗浄および/または腹膜洗浄によって集められた流体)、または対象からの細胞を包含する。一実施形態において、組織または細胞は、対象から除去される。別の実施形態では、組織または細胞は対象内に存在する。他の対象試料には、涙滴、血漿、脳脊髄液、糞便、痰、および細胞抽出物が含まれる。一実施形態では、試料は血液試料である。別の実施形態では、試料は血清試料である。1つの実施形態において、生物学的試料は、試験対象由来のタンパク質分子を含有する。別の実施形態では、生体試料は、試験対象由来のmRNA分子または試験対象由来のゲノムDNA分子を含有してもよい。
【0081】
本明細書中で使用される「28関節を用いる疾患活動性スコア」または「DAS28」という用語は、RAを有する対象における疾患活性周知の測定値を意味する。DAS28は、手、手首、肘、肩、および膝のいくつの関節が腫脹および/または圧痛を有するかを一般的に評価する複合アウトカム測定値である。炎症の程度を測定するための血中の赤血球沈降速度(ESR)またはC反応性タンパク質(CRP)レベル、0(非常に良好)から10(非常に不良)までのその日の感じ方を評価するための患者の視覚アナログスコア(簡単な測定値)。DAS28スコアがCRPのレベルを含む場合、スコアは「DAS28-CRPスコア」と呼ばれる。DAS28スコアがESRのレベルを含む場合、そのスコアは、「DAS28-ESRスコア」と呼ばれる。DAS28複合スコアは、以下の式を用いて当業者によって容易に評価され、計算され得る:
DAS28=0.56*√(TJC28)+0.28*√(SJC28)+0.70*ln(ESR)+0.014*GH
TJC28:圧痛28関節数(肩、肘、手首、MCP、母指IPを含むPIP、膝)
SJC28:膨潤28関節数(肩、肘、手首、MCP、母指IPを含むPIP、膝)
ESR:赤血球沈降速度(mm/時);C反応性タンパク質(CRP)がESRの代替として用いられることがある
GH:患者による全身健康状態の評価:VAS1~10cm(10=最大活動量)
(例えば、Aletaha D、Smolen J.Clin Exp Rheumatol(2005)23(Suppl 39):S100-S108を参照されたい。その全内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【0082】
結果を統合してDAS28スコアを作成し、これは疾患活動性の程度と相関する:
DAS28-CRP<2.6:疾患の寛解
DAS28-CRP2.6-3.2:低疾患活動性
DAS28-CRP3.2-5.1:中等度の疾患活動性
DAS28-CRP>5.1:高い疾患活動性
【0083】
本明細書で使用される「臨床疾患活動性指数」または「CDAI」という語は、RAを有する対象における疾患活動性の周知の尺度を指す。CDAIは、コンポジットスコアであり、以下の公式を使用して当業者によって容易に評価および計算され得る:
CDAI=SJC(28)+TJC(28)+PGA+EGA
SJC(28):膨潤28関節数(肩、肘、手首、MCP、母指IPを含むPIP、膝)
TJC(28):圧痛28関節数(肩、肘、手首、MCP、親指IPを含むPIP、膝)
PGA:患者全般的疾患活動性(Patient Global Disease Activity)(10が最大の活動性を示す1~10段階での患者によるRA疾患活動性全体の自己評価)
EGA:評価者全般的疾患活動性(Evaluator's Global Disease Activity)(評価者が10を最大活動性とするスケール1~10で全体的なRA疾患活動性を評価)。
【0084】
結果を組み合わせて、疾患活動性の程度と相関するCDAIを産生する:
寛解期CDAI≦2.8
低疾患活動性CDAI>2.8かつ≦10
中等度疾患活動性CDAI>10かつ22以下
高疾患活動性CDAI>22
【0085】
本明細書中で用いる「ACR70応答」という用語は、米国リウマチ学会の基準に基づく、圧痛関節および腫脹関節数の少なくとも70%の改善、および疾患状態の患者による全般的評価、疼痛の患者による評価、スタンフォード大学健康評価質問票を用いて測定した患者による機能の評価-医師による疾患状態の全般的評価、血清C応答性タンパク質量-の少なくとも3つにおいて70%の改善を示す周知の尺度を指す。
【0086】
本明細書で使用される「FACIT疲労スケール」という用語は、「慢性疾患治療の機能的評価-疲労」とも呼ばれる。「FACIT-F」などは、慢性疾患の管理を標的とする健康関連QOL(HRQOL)質問のコレクションの一部である周知の指標を指す。FACIT-Fスケールは0~52の範囲である。スコアが高いほど生活の質が良好であり、30未満のスコアは重度の疲労を示す。
【0087】
本明細書で使用される用語「SF-36」、「短縮形-36」などは、患者の健康に関する既知の36項目の患者報告調査を指す。SF-36は、8つのスケールされたスコアで構成され、それらのセクションの質問の加重和である。各質問が等しい重みを持っていると仮定して、各尺度は0~100の尺度に直接変換される。スコアが低ければ低いほど、障害が増えるか、生活の質が低くなる。スコアが高いほど、障害が少ないか、または生活の質が高いことになる。たとえば、スコアがゼロの場合は最大の障害に相当し、スコアが100の場合は障害がないことに相当する。8つのセクションは、身体機能(PF)、体の痛み(BP)、身体的健康上の問題による役割制限(RP)、個人的または感情的問題による役割制限(RE)、一般的精神衛生(MH)、社会的機能(SF)、エネルギー/疲労または活力(VIT)、および一般的健康認識(GH)である。情緒的幸福と活力は、それぞれ、一般的なメンタルヘルスとエネルギー/疲労と互換的に使用される。
【0088】
SF-36によって測定される2つの異なる概念は、物理的要素発明の概要(PCS;「SF-36PCS」)によって表される物理的次元と、精神的要素発明の概要(MCS「SF-36MCS」)によって表される精神的次元である。
【0089】
本明細書で用いている用語「痛み視覚的アナログスコア」または「Pain VAS」スコアとは、痛みの強さを測定するためのよく知られたユニ次元尺度のことである。これは、尺度の2つの端の間の連続体を表す10cmの線の長さに沿った1点に置かれた1つの手書きのマークで記録された、自己報告された症状の測定値に基づき、尺度の左端(0cm)は「痛みなし」であり、尺度の右端(10cm)は「最悪の苦痛」である。10尺度の開始点(左端)から患者のマークまでの測定値はセンチメートル単位で記録され、患者の痛みと解釈される。スコアが高いほど、疼痛強度が高いことを示す。
【0090】
本明細書で使用される「睡眠視覚アナログスコア」または「睡眠VAS」スコアという用語は、睡眠のよく知られた一次元尺度を意味する。これは尺度の2つの端の間の連続体を表す10cmの線の長さに沿った1点に置かれた1つの手書きのマークで記録された、自己報告された症状の測定値に基づき、尺度の左端(0cm)は「良好な睡眠」であり、尺度の右端(10cm)は「不良な睡眠」である。10尺度の開始点(左端)から患者のマークまでの測定値は、センチメートルで記録される。スコアが高いほど睡眠不良が多いことを示す。
【0091】
本明細書で「糖尿病」と称される「2型糖尿病」は、末梢インスリン抵抗性および膵β細胞による不十分なインスリン分泌の組合せによって特徴付けられる。
【0092】
対象が空腹時血漿グルコース(FPG)量が約126mg/dL(約7.0mmol/L)以上、75g経口グルコース負荷試験(OGTT)中の2時間血漿グルコース(PG)量が約200mg/dL(約11.1mmol/L)以上、高血糖または高血糖緊急症の症状がある対象におけるランダム血漿グルコース量が約200mg/dL(約11.1mmol/L)以上、および/またはグリコシル化ヘモグロビンA1c(HbA1c)量が約6.5%以上である場合、「対象」は糖尿病を有する。
【0093】
「疾患修飾性抗リウマチ薬」または「DMARD」という用語は、例えば疾患進行を遅らせるために、関節リウマチでの使用によって定義される、他には化学的に無関係な薬剤のグループを意味する。
【0094】
一実施形態では、DMARDは、「従来の合成DMARD」(「csDMARD」)である。例示的なcsDMARDには、メトトレキサート(MTX)、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、およびスルファサラジンが含まれる。
【0095】
一実施形態では、DMARDは「生物学的DMARD」(「bDMARD」)である。一実施形態において、bDMARDは、腫瘍壊死因子(TNF)インヒビターである。TNFインヒビターの非限定的な例としては、例えば、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、およびインフリキシマブ、ならびに上記のいずれかのバイオシミラーが挙げられる。
【0096】
1つの実施形態において、bDMARDは、T細胞共刺激性ブロッカー、例えば、Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)融合タンパク質、例えば、アバタセプト、またはそのバイオシミラー;または抗CTLA-4抗体、もしくはその抗原結合部分、またはそれらのバイオシミラーである。
【0097】
別の実施形態では、bDMARDは、B細胞欠失剤、例えば、抗CD20抗体、またはその抗原結合部分、例えば、リツキシマブ、またはそれらのバイオシミラーである。
【0098】
さらに別の実施形態では、bDMARDは、IL-6インヒビター、例えば、抗IL-6受容体抗体もしくはその抗原結合部分、例えば、トシリズマブ、もしくはそのバイオシミラー;または抗IL-6抗体もしくはその抗原結合部分、例えば、クラザキズマブ(以前はALD518およびBMS-945429)、もしくはシルクマブ(以前はCNTO-136)、もしくはそのバイオシミラーである。
【0099】
別の実施形態では、bDMARDは、IL-1受容体アンタゴニスト(IL1ra)、例えば、アナキンラである。
【0100】
一実施形態では、DMARDは、ヤヌスキナーゼ(Jak)インヒビター、例えばトファシチニブおよびバリシチニブなどの「標的化合成DMARD」(「tsDMARD」)である。
【0101】
関節損傷抑制および/または進行は、当業者によって容易に評価され得る。例えば、一実施形態では、Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)を用いて、関節損傷の程度(構造的損傷とも呼ばれる)を示すことができる。関節リウマチの分野で標準的であるmTSS法は、44関節の骨エロージョン(浸食)の程度と42関節の関節裂隙狭小化を定量化し、より高いスコアはより大きな損傷を表す。ある時点でのVan der Heijde mTSSは、エロージョンスコアと関節裂隙狭小化スコアの両方から得られたスコアの合計であり、最大スコアは448である。
【0102】
典型的には、対象における構造的損傷の進行は、ファンデルハイデ修正トータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)からの変化によって測定される。ベースライン(BL)は、本開示によれば、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分と共に投与される以前に対象によって得られた得点として定義される。ベースラインからの変化は、ベースラインでの対象によって得られたスコアと、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分が投与された後に対象によって得られたスコアとの間に存在する差異として定義され、典型的には、24または52週間の治療後に測定される。抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分でのベースラインおよび治療後のmTSSを、典型的には24週間または52週間で比較することにより、対象における構造的障害の進行を測定することができる。
【0103】
本明細書中で使用される(承認された参照製品/生物学的薬剤、例えば治療用タンパク質、例えば抗体、またはその抗原結合部分の)「バイオシミラー」という用語は、(a)生物学的上記製剤が、臨床的に不活性な成分のわずかな相違にもかかわらず、参照製剤と非常に類似していることを実証する分析試験、(b)動物試験(毒性の評価を含む)、および/または(c)参照製剤が認可され、使用されることが意図され、生物学的上記製剤について認可が求められている1つ以上の適切な使用条件において安全性、純度および効力を実証するのに十分な臨床試験または試験(免疫原性および薬物動態または薬力学の評価を含む)に由来するデータに基づいて、参照製剤と類似している生物学的上記製剤を指す。1つの実施形態において、バイオシミラーおよび参照産物は、提案された表示において規定され、推奨され、または示唆された使用条件のために、同一の1つの作用機序または複数の作用機序を利用するが、参照産物については、その1つの作用機序または複数の作用機序が既知である場合に限る。一実施形態では、生物学的製剤について提案された表示において規定され、推奨され、または示唆された使用条件が、参照製剤について既に承認されている。1つの実施形態において、投与経路、剤形、および/またはバイオシミラーの強度は、参照製品のものと同じである。一実施形態では、バイオシミラーが製造、加工、包装、または保持される設備は、バイオシミラーが安全、純粋、および強力であり続けることを保証するように設計された基準を満たす。参照製品は、米国、欧州、または日本の少なくとも1つで承認される場合がある。
【0104】
II.発明の方法
本開示は、高IL-6RAを有する対象などの、関節リウマチを有する対象を治療するための治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、高IL6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、IL-6RAの高い対象は糖尿病を有しない。
【0105】
一態様では、本開示は、関節リウマチ(RA)を有する対象を治療するための方法を提供する。この方法は、対象から得られた試料中のインターロイキン6(IL-6)のレベルを決定するステップと、対象に、対象試料中のIL-6のレベルが高IL-6レベルであると決定された場合、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を投与するステップとを含み、それにより、対象を治療する。1つの実施形態において、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0106】
別の態様では、本開示は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を治療するための方法を提供する。この方法は、高IL-6RAを有する対象を選択し、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0107】
一態様では、本開示は、以前に高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有すると同定された対象を治療するための方法を提供する。該方法は、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0108】
本開示はまた、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象における28関節(DAS28)寛解を用いた疾患活動性スコアの達成法を提供する。該方法は、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0109】
別の態様において、本開示は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象において、臨床疾患活動性指数(CDAI)寛解を達成するための方法を提供する。該方法は、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0110】
さらに別の態様において、本開示は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象においてACR70応答を達成するための方法を提供する。該方法は、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0111】
一態様では、本開示は、ヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を有する関節リウマチ(RA)を有する対象を治療するための方法を提供する。この方法は、高インターロイキン6(IL-6)レベルを有する対象を選択し、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象を治療することを含む。1つの実施形態において、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0112】
別の態様では、本開示は、対象における関節損傷を抑制するための方法を提供する。方法は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する治療ナイーブ対象を選択し、単剤療法として治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を対象に投与し、それにより対象における関節損傷を抑制することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0113】
一態様では、本開示は、治療に対する不耐性または不十分な反応によって引き起こされる対象におけるさらなる関節損傷を予防するための方法を提供する。この方法は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を選択し、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象におけるさらなる関節損傷を防止することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0114】
別の態様では、本開示は、対象を治療するための方法を提供する。その方法は、関節リウマチ(RA)を有することが疑われる対象が高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するか否かを決定し、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体、またはその抗原結合部分を対象に投与し、それにより対象を治療することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0115】
さらに別の実施形態において、本開示は、関節リウマチ(RA)を有するメトトレキサート不耐性対象を治療するための方法を提供する。この方法は、対象が高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するかどうかを決定すること、および治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0116】
本開示はまた、関節リウマチ(RA)を有するメトトレキサートに不十分なレスポンダー対象を治療するための方法を提供する。この方法は、対象が高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有するかどうかを決定すること、および治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含み、それによって対象を治療する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0117】
一態様では、本開示は、関節リウマチを有する対象の治療法を提供する。本法は、対象が関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーまたは関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーのいずれかに属すると決定されるように、対象からの試料中のIL-6のレベルを決定すること;対象が関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーと関連している場合に治療法を対象に割り当てること、ここでの治療は治療有効量のヒトIL-6R抗体、またはその抗原結合部分の投与であり;ヒトIL-6R抗体、またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって関節リウマチを有する対象を治療することを含む。1つの実施形態において、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0118】
別の態様では、本開示は、関節リウマチを有する対象の治療法を提供する。本法は、各々の対象が、関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーまたは第2のカテゴリーのいずれかに属すると決定されるように、対象からの血清試料中のIL-6のレベルを決定すること;治療がヒトIL-6R抗体、またはその抗原結合部分の治療有効量の投与である関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーにおける対象に治療を割り当てること;およびヒトIL-6R抗体、またはその抗原結合部分を関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーにおける対象に投与し、それによって関節リウマチを有する対象を治療することを含む。1つの実施形態において、RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。1つの実施形態において、RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0119】
一実施形態では、関節リウマチ疾患重症度の第1のカテゴリーは、高いレベルのIL-6に対応する。
【0120】
1つの実施形態において、関節リウマチ疾患重症度の第2のカテゴリーは、中程度のレベルのIL-6および/または低いレベルのIL-6に対応する。
【0121】
別の態様において、本開示は、関節リウマチを有する対象において、DMARDによる前治療への不耐性または不十分な反応によって引き起こされるさらなる関節損傷を防止する方法を提供する。この方法は、高インターロイキン6関節リウマチ(高IL-6RA)を有する対象を選択し、治療有効量のヒト抗インターロイキン6受容体(IL-6R)抗体またはその抗原結合部分を対象に投与し、それによって対象におけるさらなる関節損傷を防止することを含む。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象はまた、糖尿病を有する。一実施形態では、高IL-6RAを有する対象は、糖尿病を有さない。
【0122】
本開示の治療方法から利益を得る対象は、RA(またはRAと糖尿病)を有することが疑われる対象;治療歴のないRA対象を含む、以前にRA(またはRAおよび糖尿病)と診断された対象;DMARD不十分なレスポンダー(DMARD-IR)の対象(DMARD非レスポンダーを含む)、DMARD不耐性の対象、TNFインヒビターが不十分なレスポンダー対象(TNF抑制剤非レスポンダーを含む)、およびTNFインヒビター不耐性の対象を含む、以前にRAを治療するために1つまたは複数の治療薬を投与された対象を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、対象は、DMARDで少なくとも3カ月間治療され、DMARDに対して不耐性であるか、または不十分な反応を示した。
【0124】
本明細書で使用される場合、「DMARD不耐性の対象」とは、RAを有し、DMARDで治療された対象であり、腹痛、悪心、嘔吐、および行動症状を発症し、DMARD(連想)について考えるとき、その前(予想)、および/またはそのときに発生する。そのような対象は、csDMARD(例えば、メトトレキサート、「メトトレキサート不耐性対象」または「MTX不耐性対象」)に不耐容であるか、またはbDMARD、例えば、TNFインヒビター、例えば、TNFインヒビター、例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブまたはセルトリズマブ(例えば、TNFインヒビター不耐性対象)に不耐容であり得る。「DMARD不耐性対象」には、DMARD用量に一定量以上耐えられない対象も含まれ得る。例えば、「DMARD不耐性対象」は、DMARD、例えば、25mg/週以上の用量、MTXに耐えられない対象であり得る。いくつかの実施形態において、「DMARD不耐性対象」は、20mg/週の用量でDMARD、例えば、MTXに耐えられない対象である。DMARD(例えば、MTX)に対する耐性の上限は、25mg/週未満、例えば、20mg/週、15mg/週または10mg/週であり得る。
【0125】
1つの実施形態において、DMARD不耐性対象は、「メトトレキサート不耐性重症度スコア(「MISS」)質問票」(Bulatovicら(2011)関節リウマチ、15:2007-2013)を記入することによって同定される。MISSは、腹痛、悪心、嘔吐および行動症状の4領域からなり、DMARD後の症状、例えばMTX、投与、予期的(DMARD前、例えばMTX)および関連症状(DMARDを考えているとき、例えばMTX)を評価する。行動症状領域には、落ち着きのなさ、DMARDの過敏性および拒絶、MTX、例えばDMARDに反応して発現するMTX、例えばMTX誘発性消化器症状およびその予期が含まれる。対象は、それぞれの項目で0点(症状なし)、1点(軽度の症状)、2点(中等度の症状)または3点(重度の症状)を点数化することができた。DMARD不耐容の対象、例えばMTX不耐容の対象は、少なくとも1つの予期的、連合的または行動的症状を含むMISSスコアが≧6の対象である。
【0126】
本明細書で使用する場合、「DMARD不十分なレスポンダー対象」(例えば、「メトトレキサートに不十分なレスポンダー対象」、「MTXに不十分なレスポンダー対象」(「MTXIR」)または「TNFインヒビターに不十分なレスポンダー対象」)は、RAを有し、治療後もなお「活動性疾患」を有するものとして現れるDMARDで治療される対象である。患者は、68の圧痛関節中少なくとも8関節および66の腫脹関節中6関節を示し、高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)>8mg/L(>0.8mg/dL)または赤血球沈降速度(ESR)≧28mm/時間およびESR(DAS28-ESR)を使用した28関節の疾患活動性スコア>5.1示す場合に活動性疾患を有する。
【0127】
例えば、「DMARD不適切なレスポンダー対象」は、DMARD、例えば、csDMARD、例えば、MTXを用いて、少なくとも12週間にわたり(または用量範囲が異なる場合は局所標識の要件ごとに)約10~25mg/週の用量で継続的に治療し、MTXの安定用量で最低8週間投与した場合でも、(i)少なくとも、圧痛関節68例中8例および腫脹関節66例中6例、(ii)高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)>8mg/L(>0.8mg/dL)または赤血球沈降速度(ESR)≧28mm/時間と定義される中等度から重度の活動性RAを発症することがある。
【0128】
別の実施形態では、「DMARD不十分なレスポンダー対象」は、例えば、慢性疾患貧血、発熱、鬱病、倦怠感、リウマチ結節、血管炎、神経障害、強膜炎、心膜炎、フェルティ症候群および/または関節破壊の改善、ACR20、ACR50、および/またはACR70の検出可能な改善、またはDAS28スコアの検出可能な改善を有していない可能性がある。
【0129】
さらなる実施例において、「DMARD不適切レスポンダー対象」は、DMARD、実施例えば、bDMARD、実施例えば、TNFインヒビター、実施例えば、アダリムマブによるさらにまたとも3カ月間の連続治療を受けてもよく、(i)少なくとも、68の圧痛関節中8関節および66の腫脹関節中6関節、および(ii)高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)>8mg/L(>0.8mg/dL)として定義される、中等度から重度の活動性RAを依然として呈する。
【0130】
本開示の方法による対象に投与される抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の量は、一般に、治療有効量である。
【0131】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、対象におけるRAの進行を防止、予防、軽減または遅れさせるか、または本明細書に記載されるような関節リウマチの1つまたは複数の症状または状態における検出可能な改善をもたらすか、または関節リウマチの症状または状態を生じさせる基礎となる病理学的機序と相関する生物学的効果(例えば、特定のバイオマーカーのレベルの低下)を引き起こす、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の量を意味する。例えば、以下の症状または状態のいずれかに向上を引き起こす抗hlL6R抗体の用量は、「治療有効量」と見なされる:慢性疾患貧血、発熱、うつ病、疲労、リウマチ結節、血管炎、神経障害、強膜炎、心膜炎、フェルティ症候群および/または関節破壊である。検出可能な改善は、臨床的測定値または患者報告アウトカム(PRO)を用いて検出することもできる。例えば、検出可能な改善は、例えば、米国リウマチ学会(ACR)の関節リウマチ分類基準のような臨床的尺度を用いて検出することができる。例えば、ベースラインからの20%(ACR20)、50%(ACR50)または70%(ACR70)の改善を用いて、検出可能な改善を示すことができる。疾患活動性スコア(DAS28)は、検出可能な改善を示すために使用することができる。さらに、検出可能な改善は、例えばVASスコアの改善などのPROを用いて検出することができる。
【0132】
身体機能および/または精神機能の向上は、健康評価質問票を用いた機能障害指数(HAQ-DI)、短縮形-36(SF-36)、SF-36身体的健康コンポーネントサマリ(PCS)、SF-36、精神的健康コンポーネントサマリ(MCS)、FACIT疲労、朝のこわばりVAS、疼痛VAS、または睡眠VAS、またはこれらの任意の組み合わせにおけるベースライン(BL)からの変化によって評価され得る。
【0133】
構造的損傷の進行抑制は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースラインからの変化量(BL)で評価することができる。
【0134】
抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の治療有効量は、約0.05mg~約600mg、例えば約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgの抗IL-6R抗体であり得る。特定の実施形態では、75mg、150mg、200mg、または300mgの抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分が対象に投与される。他の実施形態において、抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブは、2週間に1回(q2w)、約50~150mg/週または約100~200mg/週の間で対象に投与される。
【0135】
個々の用量内に含まれる抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の量は、患者体重kg当たりの抗体ミリグラム(すなわち、mg/kg)で表すことができる。例えば、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分は、患者体重の約0.0001~約10mg/kgの用量で患者に投与され得る。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態において、本方法は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブと組合せて1つ以上の追加の治療薬を対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「組み合わせて」という語句は、追加の治療薬が、抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブ、または抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブを含む医薬組成物の前、後、またはそれらと同時に投与されることを意味する。
【0137】
例えば、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の「前」に投与される場合、追加の治療薬は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の投与の約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分前に投与され得る。抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の「後」に投与される場合、追加の治療薬は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の投与の約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間または約72時間後に投与され得る。抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分と「同時」投与とは、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の投与の5分未満内(前、後、または同時に)に、別々の剤形で対象に追加の治療薬を投与すること、または追加の治療薬および抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の両方を含む単一の組合せ剤形として対象に投与することを意味する。
【0138】
本発明の方法の実施において、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分、例えばサリルマブと組み合わせて投与することができる追加の治療薬の例としては、NSAID、DMARD、TNFαアンタゴニスト、T細胞ブロッカー、CD-20アンタゴニスト(例えば、抗CD-20抗体)、IL-1アンタゴニスト、JAKアンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、およびヒト対象において関節リウマチを治療、予防、または改善することが知られている任意の他の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法に関連して、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分と組み合わせて投与され得る追加の治療薬の具体的な非限定的な例としては、メトトレキサート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、リロナセプト、アバタセプト、セルトリズマブおよびリツキシマブが挙げられるが、これらに限定されない。本方法において、追加の治療薬は、抗IL-6R抗体、またはその抗原結合部分、例えばサリルマブと同時または連続して投与することができる。例えば、同時投与のために、抗hIL-6R抗体および少なくとも1つの追加の治療薬の両方を含有する医薬製剤を作製することができる。本発明の方法の実施において、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分と組み合わせて投与される追加の治療薬の用量は、当技術分野で、公知で容易に入手可能な通常の方法を用いて容易に決定することができる。
【0139】
本開示は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物を対象に、治療反応が達成される限り、1週間に約4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回、またはそれ以下の頻度で投与することを含む方法を含む。抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物の投与を含むある実施形態において、約75mg、150mg、200mg、または300mgの量で週1回投与することができる。
【0140】
本開示の特定の実施形態によれば、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の反復投与は、規定された時間経過にわたって対象に投与され得る。本開示のこの態様による方法は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の反復投与を対象に対して連続的に行うことを含む。本明細書で使用される場合、「逐次投与する」とは、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の各用量が、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)だけ離れた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本開示は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の単回初期用量、続いて抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の1つ以上の二次用量、および任意に続いて抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の1つ以上の三次用量を患者に連続的に投与することを含む方法を含む。
【0141】
用語「一次用量」、「二次用量」および「三次用量」は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の投与の時間的順序を意味する。したgって、「一次用量」は、治療レジメンの初期に投与される用量(「ベースライン用量」ともいう);「二次用量」は、一次用量の後に投与される用量;および「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。一次、二次、および三次用量は、すべて同じ量の抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分を含有することができるが、一般に、投与頻度の点で互いに異なっていてもよい。しかしながら、特定の実施形態では、一次、二次および/または三次用量に含まれる抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の量は、治療の過程中、互いに異なる(例えば、適宜、上方または下方に調整される)。特定の実施形態では、治療レジメンの開始時に2つ以上(例えば、2、3、4、または5)の用量面積が、治療レジメンの開始時に「ロード用量」として、その後、より頻度の低い基準で投与されるその後の用量(例えば、「維持用量」)が続く。
【0142】
本開示の1つの例示的な実施形態において、各二次および/または三次用量は、直前の用量の後に1~14週間(例えば、1、1 1/2、2、2 1/2、3、3 1/2、4、4 1/2、5、5 1/2、6、6 1/2、7、7 1/2、8、8 1/2、9、9 1/2、10、10 1/2、11、11 1/2、12、12 1/2、13、13 1/2、14、14 1/2以上)投与される。本明細書で用いられている「直前の用量」という表現は、複数の投与の配列で、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分の用量を意味し、途中の用量なしに、すぐ次の用量の投与に先立って患者に投与される。
【0143】
本開示のこの態様による方法は、任意の数の抗IL-6R抗体の二次および/または三次用量、またはその抗原結合部分を患者に投与することを含むことができる。例えば、特定の実施形態では、単回二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単回の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0144】
複数の二次用量を含む実施形態において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与され得る。同様に、複数の三次用量を含む実施形態において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与され得る。あるいは、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、治療計画の経過にわたって変化し得る。また、投与頻度は、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師により治療の過程で調節され得る。
【0145】
いくつかの実施形態において、治療の結果として、本対象は、例えば、12週間の治療後、または24週間の治療後、例えば、200mg、q2wのサリルマブ治療後に、米国リウマチ学会コアセット疾患指数(ACR70)において70%の向上を達成する。
【0146】
いくつかの実施形態では、治療の結果として、対象は、例えば、12週間の治療後、または24週間の治療後、例えば、200mg、q2wのサリルマブ治療後にDAS28-CRP寛解を達成する。
【0147】
いくつかの実施形態において、治療の結果として、対象は、例えば、12週間の治療後、または24週間の治療後、例えば、200mg、q2wのサリルマブ治療後に、CDAI寛解を達成する。
【0148】
いくつかの実施形態においては、治療の結果として、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療の結果、対象は、例えば、第52週における、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)の変化、例えば、0.25のmTSSスコアで測定される、構造的損傷の進行の抑制を達成する。
【0149】
いくつかの実施形態では、治療の結果として、例えば、200mg、q2wサリルマブ治療の結果として、対象は、例えば、52週目にmTSSによって評価されるように、X線像上の進行において約90%の低下を達成する。
【0150】
いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.6の変化を達成する。
【0151】
いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大1の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。
【0152】
いくつかの実施形態においては、少なくとも24週間の治療後、例えば、200mg q2wのサリルマブ治療後、対象は、修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)のベースライン(BL)から最大0.2の変化を達成する。
【0153】
いくつかの実施形態においては、少なくとも52週間の治療後、例えば200mgのq2wサリルマブ治療後、対象は、最大0.3の修正Van der Heijdeトータルシャープスコア(mTSS)におけるベースライン(BL)からの変化を達成する。
【0154】
いくつかの実施形態において、少なくとも24週間の治療後、例えば、200mg、q2wのサリルマブ治療後、本対象は、糖尿病の尺度における臨床的改善、例えば、HbA1cの低下、例えば、ベースラインHbA1c量からの約0.4%HbA1c量の低下を達成する。
【0155】
本開示の特定の実施形態によれば、患者は、抗hlL-6R抗体、例えば、200mg q2wサリルマブ投与の投与後に、CRP(例えば、高感度(hs)CRP)、血清アミロイドA(SAA)、ESRおよび/またはヘプシジンの1つ以上のレベルの低下を示し得る。例えば、抗hlL-6R抗体を投与した後の約12週間で、対象は以下の1つ以上を示すことができる:(i)hsCRPが約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上減少、(ii)SAAが約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上減少、(iii)ESRが約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%以上減少する、および/または(iv)ヘプシジンの約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%以上の減少。
【0156】
いくつかの実施形態では、治療、例えば200mg q2wサリルマブ治療の結果として、対象は、C反応性タンパク質(CRP)レベルの米国リウマチ学会(ACR)基準の向上を達成し、例えば、CRPレベルは、治療の開始から例えば12週間で少なくとも30mg/dL(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mg/dL)低下する。
【0157】
III.本開示の方法における使用のためのインターロイキン-6受容体抗体およびその抗原結合部分
例示的な抗IL-6R抗体は、米国7,582,298;6,410,691;5,817,790;5,795,965;および6,670,373に記載されているが、これらの各々の内容全体を参照により明示的に取り込んでいる。
【0158】
本明細書で用いられる「hIL-6R」という用語は、ヒトインターロイキン-6(IL-6)と特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を指す。特定の実施形態では、対象に投与される抗体は、hIL-6Rの細胞外ドメインに特異的に結合する。hIL-6Rの細胞外ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列に示される
【0159】
本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互連結された2つの重鎖(H)鎖および2つの軽鎖(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、さらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分化され、ここにフレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在し得る。各VHとVLは3つのCDRと4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端へFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に並んで配置されている。本開示の異なる実施形態において、抗IL-6R抗体のFR(またはその抗原結合部分)は、ヒト生殖細胞系配列と同一であってもよく、または天然もしくは人工的に改変されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義することができる。
【0160】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などという用語は、抗原と特異的に結合して複合体を形成する任意の天然の、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドもしくは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、抗体変数および任意に定常ドメインを符号化するDNAの操作および発現を含むタンパク質分解消化または組換え遺伝子工学技術などの任意の適切な標準技術を用いて、完全な抗体分子から誘導され得る。このようなDNAは公知であり、かつ/または例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成可能である。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを好適な形態に配置するために、またはコドンを導入し、システイン残基を作製し、アミノ酸を修飾し、付加し、または削除するために、配列決定および化学的に、または分子生物学技術を使用することによって、操作され得る。
【0161】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))からなる最小認識単位、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ジアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー、ナノボディー(例えば、一価ナノボディー、二価ナノボディーなど)、小型モジュール型免疫医薬(SMIP)、およびシャーク変数IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用される場合、表現「抗原結合フラグメント」内に包含される。
【0162】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってよく、一般に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するかまたはフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含むであろう。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VHドメインおよびVLドメインは、任意の適切な配置において互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は二量体であり得、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有する。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体VHまたはVLドメインを含有してもよい。
【0163】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本開示の抗体の抗原結合フラグメント領域内で見出される可能性のある可変および定常ドメインの非限定的かつ例示的な構成は、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。上に列挙した例示的な構成のいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接的に連結されていてもよく、または完全または部分的ヒンジまたはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれ以上)のアミノ酸からなり得、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の柔軟性または半柔軟性のある連結をもたらす。さらに、本開示の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに非共有結合で、および/または1つもしくは複数の単量体VHもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)上に列挙された可変および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体もしくはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0164】
完全な抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単特異的または多特異的(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多重特異的抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで、各可変ドメインは、別々の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。任意の多重特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能なルーチン技術を用いて、本開示の抗体の抗原結合フラグメントとの関連での使用に適合され得る。
【0165】
抗体の定常領域は、補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞毒性を媒介することが望ましいかどうかに基づいて選択され得る。
【0166】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。それにもかかわらず、本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的変異またはin vivoでの体細胞変異によって導入される変異)、例えばCDRおよび特にCDR3を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことは意図されていない。
【0167】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体(さらに後述)、組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(さらに後述)、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体を含むことが意図される。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、上記組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発に供され(または、ヒトIg配列のための動物トランスジェニックが使用される場合、in vivo体細胞変異誘発)、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来し、関連するが、in vivoでヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0168】
ヒト抗体は、ヒンジ部の不均一性に関連する2つの形成で存在し得る。一形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持される約150~160kDaの安定な4本鎖構築物を含む。第二の形成では、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、約75~80kDaの分子は共有結合した軽鎖および重鎖(半抗体)から構成されている。これらの形態は、親和性精製後でも分離するのが非常に困難であった。
【0169】
種々のインタクトIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、限定されるものではないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違に起因する。ヒトIgG4ヒンジ部のヒンジ部領域における単一のアミノ酸置換は、第2の形成(Angalら(1993)Molecular Immunology 30:105)の外観を、ヒトIgG1ヒンジ部を用いて典型的に観察されるレベルまで有意に減少させることができる。本開示は、ヒンジ、CH2またはCH3領域に1つ以上の突然変異を有する抗体を包含し、該突然変異は、所望の抗体形成の収率を改善するために、例えば、製造において望ましい場合がある。
【0170】
本明細書中で使用される「単離された抗体」は、その天然環境の少なくとも1つの成分から同定および分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離もしくは除去された抗体は、本開示の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組み換え細胞内のin situ抗体を含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程に供された抗体である。特定の実施形態によれば、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0171】
「特異的に結合する」などの用語は、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理学的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが含まれる。例えば、本開示の文脈で使用されるように、IL-6Rに「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイで測定されるように、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満、のKDでIL-6Rまたはその一部に結合する抗体を含む。しかしながら、ヒトIL-6Rに特異的に結合する単離された抗体は、他の(ヒト以外の)種由来のIL-6R分子などの他の抗原に対して交差反応性を有する可能性がある。
【0172】
本開示の方法に有用な抗IL-6R抗体は、抗体が由来した対応する生殖細胞系配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域における1以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含み得る。このような突然変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公衆抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系配列と比較することによって容易に確認することができる。本開示は、抗体の使用を含む方法、および本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来するその抗原結合フラグメントを含み、ここで、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が誘導された生殖細胞系配列の対応する残渣、または別のヒト生殖細胞系配列の対応する残渣、または対応する生殖細胞系残渣の保存的アミノ酸置換(このような配列変化は、本明細書においてまとめて「生殖細胞系突然変異」と称される)に変異される。当業者は、本明細書に開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から出発して、1以上の個々の生殖細胞変異またはそれらの組み合わせを含む多数の抗体および抗原結合フラグメントを容易に産生することができる。特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残渣のすべてが、抗体が由来した元の生殖細胞系配列に見られる残渣に突然変異して戻される。他の実施形態では、特定の残渣のみが元の生殖細胞系列配列に突然変異して戻され、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内またはFR4の最後の8アミノ酸内に見られる突然変異残渣のみ、またはCDR1、CDR2またはCDR3内に見られる突然変異残渣のみが戻される。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残渣の1つ以上は、異なる生殖細胞系配列(すなわち、抗体がもともと由来していた生殖細胞系配列とは異なる生殖細胞系配列)の対応する残渣に変異される。さらに、本開示の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内の2つ以上の生殖細胞変異の任意の組合せを含むことができ、例えば、特定の個々の残渣は、特定の生殖細胞系配列の対応する残渣に変異され、一方、元の生殖細胞系配列とは異なる特定の他の残渣は、維持されるか、または異なる生殖細胞系配列の対応する残渣に変異される。いったん得られると、1つ以上の生殖細胞変異を含有する抗体および抗原結合フラグメントは、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニストまたはアゴニスト生物学的特性の改善または増強(場合により)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な方法で得られる抗体および抗原結合フラグメントの使用は、本開示内に包含される。
【0173】
本開示はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかの変形例を含む抗IL-6R抗体の使用を含む方法を含む。例えば、本開示は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下、などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗IL-6R抗体の使用を含む。
【0174】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用されるように、例えば、BIAcore(商標)システム(GE Healthcare、Piscataway、NJのBiacore Life Sciences division)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によるリアルタイム相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0175】
本明細書で使用される用語「KD」は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。
【0176】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域において特異的抗原結合部分と相互作用する抗原決定基を指す。1つの抗原が複数のエピトープをもつことがある。したがって、異なる抗体は抗原上の異なる領域に結合する可能性があり、異なる生物学的効果を有する可能性がある。エピトープは、立体配座または線状のいずれかであり得る。立体配座エピトープは、直鎖ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線状エピトープはポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0177】
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法は、当該技術分野において公知である。このような公知の方法は、ヒトIL-6Rに特異的に結合するヒト抗体を作製するために、本開示の文脈において使用することができる。
【0178】
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticalsを参照のこと)、またはモノクローナル抗体を作製するための任意の他の公知の方法を使用して、IL-6Rに対する高親和性キメラ抗体を、最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するように単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を含み、その結果、マウスは、抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を生成する。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAは単離され、ヒトの重鎖および軽鎖の定常領域をコードするDNAに機能的に連結される。次いで、DNAは、完全ヒト抗体を発現することができる細胞中で発現される。
【0179】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに目的の抗原を投与し、抗体を発現するマウスからリンパ系細胞(B細胞など)を回収する。リンパ系細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死性ハイブリドーマ細胞株を調製することができ、このようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングして選択し、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の所望のアイソタイプ定常領域に連結することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞において産生され得る。あるいは、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAは、抗原特異的リンパ球から直接単離され得る。
【0180】
最初に、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。抗体は、アフィニティー、選択性、エピトープなどを含む望ましい特性について、当業者に公知の標準的な手順を用いて特徴づけられ、選択される。マウス定常領域を所望のヒト定常領域に置き換えて、本開示の完全ヒト抗体、例えば、野生型または修飾IgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は、特定使用に応じて変化し得るが、高い親和性抗原結合および標的特異性特性は、可変領域に存在する。
【0181】
一般に、本開示の方法において使用することができる抗体は、固相または溶液相に固定化された抗原への結合によって測定される場合、上記のように、高い親和性を有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域に置き換えて、本開示の完全なヒト抗体を作製する。選択される定常領域は、特定使用に応じて変化し得るが、高い親和性抗原結合および標的特異性特性は、可変領域に存在する。
【0182】
本開示の方法の文脈において使用することができるIL-6Rに特異的に結合するヒト抗体または抗体の抗原結合フラグメントの具体例としては、配列番号3、227、19、231、35、51、67、83、99、115、131、147、239、241、163、179、235、195および211からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含む任意の抗体または抗原結合フラグメントが挙げられる。抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号11、229、27、233、43、59、75、91、107、123、139、155、171、187、203および219からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含有される3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、LCVR3)を含み得る。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技術は、当技術分野において周知であり、本明細書に開示される特定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を同定するために使用することができる例示的な慣例としては、例えば、Kabatの定義、Chothiaの定義、およびAbMの定義が挙げられる。一般的に、Kabatの定義は配列の可変性に基づいており、Chothiaの定義は構造ループ領域の位置に基づいており、AbMの定義はKabatおよびChothiaのアプローチの妥協点である。例えば、Kabat, "Sequences of Proteins of Immunological Interest," National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991); Al-Lazikaniら, J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997); およびMartinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:9268-9272 (1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するために、公的データベースも利用可能である。
【0183】
本開示の特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号3/11;227/229;19/27;231/233;35/43;51/59;67/75;83/91;99/107;115/123;131/139;147/155;239/155;241;155;163/171;179/187;235/237;195/203;および211/219からなる群より選択される重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列対(HCVR/LCVR)からの6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む。
【0184】
本開示の特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号3/11;227/229;19/27;231/233;35/43;51/59;67/75;83/91;99/107;115/123;131/139;147/155;239/155;241;155;163/171;179/187;235/237;195/203;および211/219からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0185】
本開示の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号19/27を有するHCVR/LCVRアミノ酸配列対、および配列番号21-23-25/配列番号29-31-33によって表されるHCDR1-HCDR2-HCDR3/LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。このような抗体は、「mAb1」またはmAb1(VQ8F11-21)とも呼ばれ得る。
【0186】
本開示の方法は、本明細書に開示される任意の抗IL-6R抗体、ならびに上記抗体の変異体および抗原結合フラグメントを使用して実施できることを理解されたい。
【0187】
IV.医薬組成物
本開示は、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む方法を含み、ここで、抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分は、医薬組成物内に含まれる。本開示の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、および適切な移送、送達、耐性などを提供する他の薬剤と共に製剤化される。多くの適切な製剤は、全ての医薬化学者に知られている処方に見ることができる:Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。これらの処方は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)のような)を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powell et al."Compendium of excipients for parenteral formulations"PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
【0188】
本開示の方法に従って患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢および大きさ、症状、状態、投与経路などに応じて変化し得る。用量は、典型的には、体重または体表面積に従って計算される。症状の重症度に応じて、治療の頻度と時間を調整することができる。抗IL-6R抗体を含む医薬組成物を投与するための有効な用量およびスケジュールは、経験的に決定することができ、例えば、患者の進行を定期的な評価によってモニターし、それに応じて用量を調節することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当技術分野で公知の方法(例えば、Mordentiら, 1991, Pharmaceut.Res. 8:1351)を用いて行うことができる。本開示の文脈において使用することができる、抗IL6R抗体の具体的な例示的用量、およびそれを含む投与計画は、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0189】
種々の送達系が知られており、本開示の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組み換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら, 1987, J.Biol.Chem. 262:4429-4432参照)中のカプセル化を使用することができる。投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収により投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与することができる。
【0190】
本開示の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本開示の医薬組成物を送達する際に容易に適用される。このようなペンデリバリー装置は、再使用可能または使い捨て可能である。再使用可能なペン送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換され得る。その後、ペンデリバリーデバイスを再利用することができる。使い捨てペンデリバリー装置では、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバに保持された医薬組成物でプレフィルドされる。いったんリザーバの医薬組成物が空になると、装置全体が廃棄される。
【0191】
多数の再使用可能なペンおよび自己注射器デリバリー装置は、本開示の医薬組成物の皮下送達における用途を有する。例としては、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン (Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン (Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、II および III (Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン (Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、and OPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の医薬組成物の皮下送達における用途を有する使い捨てペンデリバリー装置の実施例としては、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi‐aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICKTMオートインジェクタ(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLETTM(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey, L.P.)、およびHUMIRATMPEN(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
ある状況では、医薬組成物は、制御放出システムで送達され得る。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer、supra; Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;「Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise (eds.), 1974, CRC Pres., Boca Raton, Florida.」を参照のこと。さらに別の実施形態では、制御放出システムを組成物の標的の近くに配置することができ、したがって、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson, 1984, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol.2, pp.115-138参照)。他の制御放出系については、Langer, 1990, Science 249:1527-1533によるレビューで考察されている。
【0193】
注射剤には、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射用の剤形、点滴等があり得る。これらの注射用製剤は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、上記の抗体またはその塩を、滅菌水性媒体または注射に慣用的に使用される油性媒体中に溶解、懸濁または乳化することによって調製することができる。射出用水性媒体としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、ノニオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ひまし油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]等の適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液等が挙げられる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、これらは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤と組み合わせて使用することができる。このようにして調製された注射剤は、適切なアンプルに充填することができる。
【0194】
有利には、上記の経口または非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合するのに適した単位用量で剤形に調製される。単位投与量中のこのような剤形には、例えば、タブレット、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが含まれる。
【0195】
本開示の文脈で使用することができる抗IL-6R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許出願公開番号2011/0171241および2016/0002341に開示されており、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
特定の実施形態において、本開示の方法において使用するための医薬製剤は、1つ以上の賦形剤を含む。「賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、所望のコンシステンシー、粘度または安定化効果を提供するために製剤に添加される任意の非治療薬剤を意味する。
【0197】
ある実施形態において、本開示の医薬的配合は、少なくとも1つのアミノ酸を含む。本開示の配合に使用するのに適した例示的なアミノ酸は、とりわけアルギニンおよび/またはヒスチジンを含む。
【0198】
本開示の医薬製剤内に含有されるアミノ酸の量は、製剤の所望の特定の特性、ならびに製剤が使用されることが意図される特定の状況および目的に応じて変化し得る。特定の実施形態では、製剤は、約1mM~約200mMのアミノ酸;約2mM~約100mMのアミノ酸;約5mM~約50mMのアミノ酸;または約10mM~約25mMのアミノ酸を含有してもよい。例えば、本開示の医薬製剤は、約1mM;約1.5mM;約2mM;約2.5mM;約3mM;約3.5mM;約4mM;約4.5mM;約5mM;約5.5mM;約6mM;約6.5mM;約7mM;約7.5mM;約8mM;約8.5mM;約9mM;約9.5mM;約10mM;約10.5mM;約11mM;約11.5mM;約12mM;約12.5mM;約13mM;約13.5mM;約14mM;約14.5mM;約15mM;約15.5mM;16mM;約16.5mM;約17mM;約17.5mM;約18mM;約18.5mM;約19mM;約19.5mM;約20mM;約20.5mM;約21mM;約21.5mM;約22mM;約22.5mM;約23mM;約23.5mM;約24mM;約24.5mM;約25mM;約25.5mM;約26mM;約26.5mM;約27mM;約27.5mM;約28mM;約28.5mM;約29mM;約29.5mM;約30mM;約35mM;約40mM;約45mM;または約50mMのアミノ酸(例えば、ヒスチジンおよび/またはアルギニン)を含み得る。
【0199】
本開示の医薬製剤はまた、1つ以上の炭水化物、例えば1つ以上の糖を含んでもよい。糖は還元糖でも非還元糖でもよい。「還元糖」は、例えば、ケトンまたはアルデヒド基を有する糖を含み、反応性ヘミアセタール基を含み、これにより、糖が還元剤として作用することができる。還元糖の具体例としては、フルクトース、グルコース、グリセルアルデヒド、ラクトース、アラビノース、マンノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトースおよびマルトースが挙げられる。非還元糖は、アセタールであり、アミノ酸またはポリペプチドと実質的に反応してメイラード反応を開始しないアノマー炭素を含むことができる。非還元糖の具体例としては、スクロース、トレハロース、ソルボース、スクラロース、メレジトースおよびラフィノースが挙げられる。糖酸には、例えば、糖酸、グルコン酸および他のポリヒドロキシ糖およびそれらの塩が含まれる。
【0200】
本開示の医薬製剤内に含まれる糖の量は、製剤が使用される特定の状況および意図される目的に応じて変化するであろう。特定の実施形態において、製剤は、約0.1%~約20%の糖;約0.5%~約20%の糖;約1%~約20%の糖;約2%~約15%の糖;約3%~約10%の糖;約4%~約10%の糖;または約5%~約10%の糖を含有し得る。例えば、本開示の医薬製剤は、約0.5%;約1.0%;約1.5%;約2.0%;約2.5%;約3.0%;約3.5%;約4.0%;約4.5%;約5.0%;約5.5%;約6.0%;6.5%;約7.0%;約7.5%;約8.0%;約8.5%;約9.0%;約9.5%;約10.0%;約10.5%;約11.0%;約11.5%;約12.0%;約12.5%;約13.0%;約13.5%;約14.0%;約14.5%;約15.0%;約15.5%;約16.0%、16.5%、約17.0%、約17.5%、約18.0%、約18.5%、約19.0%、約19.5%、または約20.0%の糖(例えば、スクロース)を含有し得る。
【0201】
本開示の医薬製剤はまた、1つ以上の界面活性剤を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、それが溶解される流体の表面張力を低下させる、および/またはオイルと水との間の界面張力を低下させる物質を意味する。界面活性剤は、イオン性または非イオン性であり得る。本開示の配合に含まれ得る例示的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド(例えば、オクチルグルコシドおよびデシル基マルトシド)、脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールおよびオレイルアルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、およびコカミドTEAが挙げられる。本開示の配合に含まれ得る特定の非イオン性界面活性剤には、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、およびポリソルベート85などのポリソルベート;ポロキサマー188、ポロキサマー407などのポロキサマー;ポリエチレン-ポリプロピレングリコール;またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。ポリソルベート20は、TWEEN(登録商標) 20、ソルビタンモノラウレートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとしても知られている。
【0202】
本開示の医薬製剤内に含有される界面活性剤の量は、製剤の所望される特定の特性、ならびに製剤が使用されることが意図される特定の状況および目的に応じて変化し得る。ある実施形態において、製剤は、約0.05%~約5%の界面活性剤;または約0.1%~約0.2%の界面活性剤を含有し得る。例えば、本開示の配合は、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.20%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、または約0.30%の界面活性剤(例えばポリソルベート20)を含み得る。
【0203】
本開示の医薬製剤は、約5.0~約8.0のpHを有し得る。例えば、本開示の配合は、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6.0、約6.2、約6.4、約6.6、約6.8、約7.0、約7.2、約7.4、約7.6、約7.8、または約8.0のpHを有し得る。
【0204】
1つの実施形態において、開示方法で使用する医薬品製剤は、(i)ヒト抗IL-6R抗体に特異的に結合するヒト抗体、またはその抗原結合部分、(ii)アミノ酸(例えば、ヒスチジン)、(iii)糖(例えば、スクロース)を含む。
【0205】
本開示の別の実施形態では、本開示の方法で使用するための医薬製剤は、(i)ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分に特異的に結合するヒト抗体、(ii)アミノ酸(例えばヒスチジン)、(iii)糖(例えばスクロース)、および(iv)界面活性剤(例えばポリソルベート20)を含む。
【0206】
本開示の別の実施形態では、本開示の方法に使用する医薬製剤は、(i)ヒト抗IL-6R抗体またはその抗原結合部分に特異的に結合するヒト抗体、(ii)第一のアミノ酸(例えばヒスチジン)、(iii)糖(例えばスクロース)、(iv)界面活性剤(例えばポリソルベート20)、および(v)第二のアミノ酸(例えばアルギニン)を含む。
【0207】
一実施形態では、医薬組成物は、約200mgのサリルマブ、約45mMのアルギニン、約21mMのヒスチジン、約0.2%w/vのポリソルベート-20、および約5%w/vのスクロースを含む。一実施形態では、医薬組成物のpHは約6.0である。
【0208】
本明細書に記載された本発明の方法の他の適切な修正および適合は自明であり、本発明の範囲または本明細書に開示された実施形態から逸脱することなく、適切な均等物を用いて行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。本発明を詳細に説明した後、本発明は、例示のみを目的として含まれ、限定を意図するものではない以下の実施例を参照することによって、より明確に理解されるであろう。
実施例
【0209】
実施例1.ベースライン時の血清IL-6高値は、関節損傷が急速で臨床的進行が認められる関節リウマチ(RA)患者のサブグループを同定し、サリルマブの治療反応性を予測する。
RAにおけるIL-6の重要な役割にもかかわらず、RAにおける予後または治療反応の予測因子としてのIL-6に関するデータは限られている。高いレベルのIL-6を有する患者が、異なるアウトカムにわたってMTX治療と比べてサリルマブ+MTX治療に対して異なる反応を示すかどうかを調査するために、第3相MOBILITY研究(NCT01061736)の事後的分析を行った。MOBILITY臨床試験の詳細については、別の箇所に記載されている(例えば、その全内容は参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開2013/0149310号、およびGenovese, Mら、Arthritis & Rheumatology 2015,67(6): 1424-1437を参照のこと)。
【0210】
サリルマブ(SC150または200mg q2w)+MTXまたはプラセボ(PBO)+MTXに無作為に割り付けた患者1193例を対象に、ベースライン時の午前血清IL-6レベルを測定した。使用したアッセイでは、正常IL-6は<12.5pg/mlであった。線形回帰およびロジスティック回帰を用いて、ベースラインIL-6レベルの三分位に基づくX線学的および臨床的有効性のエンドポイントについて治療群内および治療群間で比較した。
【0211】
高三分位の患者の85%はIL‐6≧3xULNであった;低三分位の全患者は正常IL‐6であった。ベースラインでは、IL-6高値の患者は、IL-6低値または中値群と比較して、関節損傷が有意に多く、疾患活動性が大きく、CRP値が上昇していた(表1)。52週間にわたり、PBO+MTXでは、IL-6高値の患者は、IL-6低値(平均値±SDmTSS進行4.67±9.80対1.51±5.25(図1);オッズ比(OR)mTSS、95%信頼区間(CI)3.3[1.9、5.6])に対して、関節損傷を発症する可能性が高かった(表2;図1)。PBO+MTXに対するサリルマブ+MTXの臨床的有効性およびX線学的有効性の大きさは、24週時および52週時のベースラインIL-6レベルの上昇に伴って改善した。52週時のORを表1に示す。試験治療下で発現した有害事象の発現率はIL-6の三分位で同程度であった。
【表1】
【表2】
【0212】
要約すると、ベースラインのIL-6高値はPBO+MTX群においてより速く、実質的にX線像上の進行を予測した。すべての三分位において、サリルマブ+MTX対PBO+MTXの方が、有効性が大きかった。サリルマブ+MTXによる治療差の大きさは、24週目と52週目の進行のX線写真による証拠、および急性期反応物を含むまたは除外する他の臨床エンドポイントを防ぐという点で、ベースラインIL-6が高い患者と正常な患者で大きかった。
【0213】
実施例2.血清ベースラインIL-6の上昇は、サリルマブとアダリムマブ治療反応を鑑別する:関節リウマチ(RA)における治療選択のための精密医療を使用する。
RA患者の治療決定の指針となる予測バイオマーカーの必要性は依然として大きい。ベースラインのIL-6レベルがサリルマブ単剤療法とアダリムマブ単剤療法に対する反応の差と関連しているかどうかを明らかにするため、ランダム化24週間MONARCH試験(NCT02332590)の事後解析が実施された。MONARCH臨床試験の詳細については、別の箇所に記載されている(例えば、参照によりその全体が援用される、Burmester GR, Lin Y, Patel Rら, Ann Rheum Dis 2017; 76:840-847)。
【0214】
アダリムマブ40mg q2w(2週間毎)またはサリルマブ200mg q2wの皮下投与を受け、バイオマーカー評価に同意した患者を、投与前の血清IL-6値(正常値は<12.5pg/ml)に基づいて三分位にグループ分けした。MONARCH ITT(治療意図)集団の患者369例のうち300例でIL-6データが入手できた。有効性は、線形回帰およびロジスティック回帰を用いて、2種類の治療群間および治療群内で、24週目のエンドポイント(ACR20/50/70、DAS28-CRPおよび-ESR、CDAI、関節数、HAQ-DI)についてベースラインのIL-6三分位に従って比較した。
【0215】
高三分位群の全患者でIL-6値がULNの3倍を超えて上昇し、低三分位群の全患者でIL-6値は正常であった(表3)。急性期反応物質を含む、および除外する、エンドポイントを横切る各三分位において、サリルマブではアダリムマブと比較して奏効が得られた患者が多かったが、治療差は高ベースラインのIL-6値と低ベースラインのIL-6値患者で最も大きく、それぞれ、Wk24ACR70は高三分位で30.4%(サイルマブ)対3.7%(アダリムマブ)、低三分位で18.2%対17.8%であった(表3)。ベースライン時のIL-6高値も、サリルマブ(sailumab)とアダリムマブの腫脹関節数およびCRP低下の差に有意な影響を及ぼした。アダリムマブ治療群では、ACR70およびDAS28の正常なIL-6値が上昇した患者(高値 対 低値)で応答が有意に少なく、CDAIの応答が数値的に少なかった。試験治療下で発現した有害事象の発現率はIL-6の三分位で同程度であった
【0216】
これらの結果から、ベースラインのIL-6レベルが高値であった患者は、サリルマブ対アダリムマブ単剤療法に対してより大きな臨床反応を示したことが示される。
【表3】
【0217】
要約すると、ベースラインのIL-6レベルが高い患者は、サリルマブ対アダリムマブでより高い治療効率を示した。ベースラインのIL-6値が高値の患者では、アダリムマブ群と比較して、サリルマブ群では関節腫脹数およびCRP値の低下が大きく、また、ACR70、DAS28、およびCDAiスコアの奏効率が高かった。
【0218】
実施例3.ベースライン血清IL-6高値は関節リウマチ進行のサブグループを同定し、サリルマブ治療反応性の増加を予測する。
要約
背景/目的:治療への反応を予測するためのバイオマーカーの臨床応用は、RAにおける次の最前線である。RAにおけるIL-6の重要な役割にもかかわらず、RAにおける予後または治療反応を予測するIL-6の有用性は限られている。MOBILITY(NCT01061736)およびMONARCH(NCT02332590)研究の事後解析では、血清ベースラインIL-6値がサリルマブ対対照薬治療に対するX線学的および臨床的反応と関連しているかどうかが検討された。
【0219】
方法:サリルマブ(SC(皮下)150mgまたは200mg q2w)+MTXまたはプラセボ(PBO)+MTXに無作為に割り付けた患者(pts)1193例と、サリルマブ200mgまたはアダリムマブ40mg q2wに無作為に割り付けた患者300例を対象に、有効性が確認されたアッセイを用いてベースラインIL‐6レベルを測定した。有効性は、線形回帰およびロジスティック回帰を用いてベースラインIL‐6三分位に従って治療群間および治療群内で比較した。
【0220】
結果:全ての低三分位患者は正常IL‐6レベル(<12.5pg/mL)であり、高三分位患者の>85%はIL‐6レベルがULNの3倍であった。ベースラインでは、高三分位の患者は関節損傷が大きく、疾患活動が活発で、CRPのレベルが低三分位の患者よりも高かった(ノミナルP<0.05)。MOBILITY PBO+MTX群では、高三分位の患者は低三分位の患者よりも関節損傷を多く発症した(平均±SD mTSS進行4.67±9.80対1.51±5.25;オッズ比3.3;95%CI 1.9、5.6)。
【0221】
MOBILITYにおける臨床的およびX線学的有効性(サリルマブ+MTX対PBO+MTX)は、ベースラインのIL-6三分位 の増加に伴って改善した。MONARCHでは、サリルマブの有効性対アダリムマブは、サリルマブ対アダリムマブの高対低三分位-ACR20/70の方が大きかった:89%/30%vs52%/4%[高三分位]および64%/18%vs58%/18%[低三分位]。有効性の転帰を予測する上で、高IL6は高CRPよりも良好であることがデータから示されている。試験治療下で発現した有害事象の発現率はIL-6の三分位で同程度であった。
【0222】
結論:臨床的およびX線学的エンドポイントを通じて、ベースラインのIL-6レベルが上昇した患者は、IL-6レベルが正常な患者よりも、MTXまたはアダリムマブと比較して、サリルマブに対する応答が大きかった。
【0223】
背景と目的
バイオマーカーを含む臨床ツールは、生物学的療法の開始または切り替えに先立って反応を予測するためのリウマチ診療では現在利用できない。
【0224】
関節リウマチ(RA)治療のための承認された生物学的製剤の数多くを考慮すると、追加ツールにより、医師は、ある治療法(または作用機序)から別の治療法よりも異なる便益を得る可能性のある患者を同定できるようになるであろう。
【0225】
個々のRA患者に対する精密医療を達成する上での障害には、以下が含まれる:臨床研究で同定された予測バイオマーカーの不一致;現実世界の患者ケアへのトランスレータビリティの欠如。
【0226】
第III相MOBILITY試験およびMONARCH試験では、RA患者を対象に抗IL-6R mAbサリルマブの有効性および安全性が検討された(Genovese MCら Arthritis Rheumatol 2015;67:1424-37、Burmester GRら Ann Rheum Dis 2017;76:840-7)。
【0227】
これらの研究では、以下の理由により、治療開始前にベースラインのインターロイキン-6(IL-6)の評価が実施された:RAの患者は、健康な個人と比較して、血清および滑液中のIL-6レベルが上昇している(Robak Tら Mediators Inflamm 1998; 7: 347-53; Park YJら Sci Rep 2016;6:35242)、IL-6シグナル伝達を標的とすることで、X線像上の進行が抑制され、RAの兆候と症状が改善され、患者の生活の質が向上する(June RRら Expert Opin Biol Ther 2016; 16: 1303-9)。
【0228】
予後または治療応答の予測因子としての血清IL-6量に関するデータは、これまで決定的ではなかった(Shimamoto Kら、J Rheumatol 2013;40;1074-81; Uno Kら、PLoS One 2015;10:e0132055; Diaz-Torne Cら、Semin Arthritis Rheum 2018;47:757-64; Nishina Nら、Arthritis Rheumatol 2017;69(Suppl 10): abs 1426; Wang Jら, BMJ Open 2013;3:e003199)。
【0229】
本試験の目的は、第3相MOBILITY試験およびMONARCH試験に登録された患者を対象に、血清中のベースラインIL-6レベルが、メトトレキサート(MTX)単独またはアダリムマブのいずれかと比較して、抗IL-6R療法に対する異なる反応を予測できるかどうかを明らかにすることであった
【0230】
方法
試験デザインは既に記載されている(Genovese MCら Arthritis Rheumatol 2015; 67: 1424-37; Burmester GRら Ann Rheum Dis 2017; 76: 840-7)。
【0231】
概要:
MOBILITY試験(MTX-IR患者)では、バックグラウンドMTXを受けている患者を対象に、サリルマブ150mgまたは200mgを2週間毎(q2w)に皮下投与(SC)した場合とプラセボを52週間にわたって投与した場合とを比較し、
MONARCH試験(MTX-IR/INT、bDMARD未治療患者)では、SCサリルマブ200mg q2wとアダリムマブ40mg q2wを24週間にわたって単独治療として投与した場合とを比較した。
【0232】
これらの事後解析は、試料の将来の使用に関するインフォームド・コンセント(MONARCH試験)に署名し、後に撤回しなかったランダム化患者全員を含むバイオマーカー集団について実施し、ベースライン時に少なくとも1つの評価可能なバイオマーカー試料を投与前に採取した。
【0233】
バイオマーカー集団におけるベースライン(投与前)のIL-6またはC反応性タンパク質(CRP)値(高値、中値、低値)に基づいて患者を三分位に分けた(範囲については図3参照)。
【0234】
血清試料の約90%が午前(午後12時以前)に採取された。
【0235】
Covance Central Labsの有効なELISA(Quantikine R&D)を用いて、血清IL-6を測定した;アッセイ内精度は≦9% CV;アッセイ間精度は≦12%であり、報告可能温度範囲は3.12~153,600pg/mLであった。アッセイベンダーにより同定されたIL-6の正常値は<12.5pg/mLであった(Fraunberger Pら Clin Chem Lab Med 1998; 36: 797-801)。
【0236】
比較として、CRPはCovance Central Labsの高感度CRP(Siemens)アッセイを用いて測定した;アッセイ内変動係数(CV)は<3%、アッセイ間CVは<5%;健常対照の基準値は≦2.87mg/Lであった。
【0237】
疾患活動性および患者報告アウトカムを分析した
【0238】
統計的方法
治療、試験のランダム化層別因子(両試験の領域およびMOBILITYに対する生物製剤の使用歴)、ベースライン時のIL-6三分位、ベースラインと治療との交互相互作用によるIL-6三分位を固定効果としたロジスティック回帰を用いて、IL-6の応答予測能を検定した。
【0239】
低三分位を基準として、各サリルマブ群とプラセボとの相互作用のp値を算出した。
【0240】
サリルマブとプラセボとの有効性エンドポイントの対比較は、各IL-6の三分位で別々に実施し、各用量群vsプラセボを検定することにより、オッズ比(OR)および対応する95%信頼区間(CI)のMantel-Haenszel推定値(無作為化因子により層別化)が導出された。CRP三分位についても同様の分析を行い、予測特性を比較した。
【0241】
各IL-6三分位における試験治療下で発現した有害事象の発現率を記述的に解析した。
【0242】
試験結果
MOBILITY試験の患者1193例(治療意図[ITT]集団99%超)およびMONARCH試験の患者300例(ITT集団82%)において、ベースライン時に血清IL-6が測定された。
【0243】
各研究において、低ベースラインIL‐6三分位の全患者は正常IL‐6レベル(<12.5pg/mL)であった。
【0244】
高ベースラインのIL-6三分位では、MOBILITYとMONARCHのそれぞれ85%と100%の患者で、IL-6値が正常上限の3倍以上であった(図3)。
【0245】
ベースラインでは、高IL-6三分位の患者は、低IL-6三分位の患者と比較して、疾患活動性が有意に高く(両試験)、関節損傷が有意に多かった(MOBILITY)。
【0246】
各研究におけるIL-6とCRPとの相関(MONARCHにおけるRho=0.71およびMOBILITYにおける0.58)を考慮すると、高IL-6三分位の患者は、低IL-6三分位の患者と比較してCRPが有意に上昇していた。
【0247】
MOBILITY-X線像上の進行
ベースラインのIL-6レベルが関節損傷の進行に影響を及ぼすかどうかを判定するため、MOBILITY試験の患者を52週間にわたりX線により評価した。
【0248】
ITT合計では、プラセボ+MTXを投与された患者は、サリルマブ150mgまたは200mgのいずれの治療群の患者よりも有意に進行した(修正された合計シャープスコア[mTSS]のベースラインからの平均変化量:それぞれ2.78、0.90および0.25)(Genovese MCら Arthritis Rheumatol 2015; 67: 1424-37)。
【0249】
ベースラインのIL-6レベルに従って患者を評価すると、高IL-6三分位のプラセボ+MTX治療患者は、低三分位の患者よりも52週間にわたって有意に多くの関節損傷を発症した(平均±SDmTSS進行4.67±9.80対1.51±5.25[図4];mTSS>0の変化で定義した進行のOR[95%CI]:3.3[1.9,5.6])。
【0250】
高IL-6三分位の患者が経験した進行は、この研究がより確立されたRA患者を検討したにもかかわらず、初期RA患者における関節損傷のレベルとより一致した(Smolen JSら Ann Rheum Dis 2009; 68:823-27; Breedveld FCら Arthritis Rheum 2006; 54:26-37)。高ベースラインIL‐6を有するプラセボ+MTX治療患者は、低IL‐6(JSN2.6[1.6,4.3]に対するOR[95%CI];エロージョンスコア:3.2[2.0,5.4]に対するOR[95%CI])を有する患者よりも、52週間にわたり、より多くのエロージョンと関節空間狭窄(JSN)を経験した。
【0251】
サリルマブ+MTXで治療された患者は、プラセボ+MTXで治療された患者と比較して、全てのIL-6三分位にわたって関節損傷が少ないことが実証された。
【0252】
IL-6の低値および中値の三分位でサリルマブ+MTX治療を受けた患者は、52週間の治療期間中、関節損傷の変化が最小限またはまったく認められなかった(図4)。
【0253】
MOBILITY-徴候、症状、障害
サリルマブの臨床的有効性はIL-6の三分位間で同程度であったが、有効性はプラセボ+MTX群の低IL-6と比較して高IL-6の患者で数値的に低下した(図5
【0254】
さらに、ベースライン時のIL-6が高値であったプラセボ+MTX治療患者は、サリルマブ+MTX治療患者と比較して、奏効する可能性がはるかに低かった(図6)。
【0255】
MONARCH-有効性
ベースライン時のIL-6が高値であったアダリムマブで治療された患者では、米国リウマチ学会の50%改善基準(ACR50)、ACR70(70%改善)、疾患活動性スコア(DAS)寛解(図7、8)に対する有効性が低かった。
【0256】
ベースライン時のIL-6が高値であったサリルマブで治療された患者では、ベースライン時のIL-6が低値であった患者と比較して、ACR20(20%向上)/50/70および健康評価質問票を用いた機能障害指数(HAQ-DI)が高値であった(図7および8)。
【0257】
その結果、サリルマブの有効性は、アダリムマブと比較して、多くの有効性エンドポイントを通じ、IL-6の三分位高値で有意に高かった(図9)。
【0258】
MOBILITYとMONARCH-ベースラインのIL-6とCRPによる有効性アウトカム
両試験とも、急性期反応物質の測定を行わずに、臨床疾患活動性指数(CDAI)寛解(MOBILITY)やHAQ-DI(両試験)などのエンドポイントを含むCRP(図10A)よりもベースラインIL-6値の方がアウトカム予測に優れていた。
【0259】
ベースライン時のIL-6が高値であった患者におけるサリルマブ療法と対照薬療法の有効性の差は、多くのエンドポイントにわたって試験間で一貫していた(図11A)。
【0260】
MOBILITYとMONARCH-安全性
安全性プロファイルは、低、中、各試験の患者間で同様であった(図12)。
【0261】
結論
臨床的およびX線学的エンドポイント全体で、ベースラインのIL-6値が上昇したRA患者は、IL-6値が正常な患者よりもサリルマブに対する応答が大きかった(MTX単独またはアダリムマブと比較)。
【0262】
実施例4.ベースラインの血清IL-6高値は関節リウマチ進行のサブグループを同定し、サリルマブ治療反応性の増加を予測する。
現在、リウマチ診療において、生物学的製剤による治療を開始または切り替える前に反応を予測するためのバイオマーカーを含む臨床ツールは利用できない。
【0263】
ある治療法から別の治療法よりも効果が異なる可能性のある患者を医師が特定できるツールは価値があるだろう。
【0264】
メトトレキサート(プラセボ対照MOBILITY試験)またはアダリムマブ(単剤療法MONARCH試験)と比較したサリルマブに対する治療反応の差異の予測におけるベースライン血中IL-6レベルの有用性が評価されている。
【0265】
事後分析は、低、中、高の3つまたは三分位に分割されたベースライン血中IL-6レベルを使用して実行された。
【0266】
MOBILITYでは、低三分位の全患者は正常IL‐6レベルであったが、高三分位の患者の85%超は正常上限の3倍のレベルであった。
【0267】
サリルマブは、メトトレキサートと併用すると、全てのIL-6三分位の患者において、プラセボ+メトトレキサートと比較してX線上の関節損傷を抑制した。
【0268】
ベースラインの血中IL-6レベルが低い患者と比較して、IL-6三分位が高い患者では、52週目の関節破壊の進行がX線像上(すなわち、X線像上)で高かった。
【0269】
臨床反応を評価したところ、ベースライン時のIL-6レベルが最も高かった患者では、サリルマブ+メトトレキサートで治療された群とメトトレキサート単独で治療された群との間で、治療差の最大の増大が認められた。サリルマブ+メトトレキサートで治療された患者においては、メトトレキサート単剤で治療された患者と比較して、52週時点でCDAI寛解に到達する可能性が42倍高かったことは最も注記すべきである。
【0270】
MONARCH試験では、ベースライン時のIL-6三分位高値の患者は、アダリムマブと比較して、サリルマブによるACR20/50/70応答、DAS寛解、HAQ-DI向上を達成する可能性が高かった。
【0271】
両試験において、試験治療下で発現した有害事象の発現率はIL-6の三分位で同等であった。
【0272】
要約すると、臨床的およびX線上のエンドポイントを通じて、ベースラインの血中IL-6レベルが上昇したRA患者は、IL-6レベルが正常な患者よりもサリルマブに対する応答が大きかった(メトトレキサート単独またはアダリムマブと比較して)。
【0273】
実施例5.RA患者におけるインターロイキン-6(IL-6)高値は、アダリムマブと比較して、サリルマブの患者報告アウトカム(PRO)の大幅な改善と関連する。
インターロイキン-6(IL-6)を含むサイトカインレベルの上昇は、炎症を反映し、RA患者における治療反応の予測因子である(Burska Aら Mediators Inflamm. 2014; 2014: 545493)。IL-6は、疲労、疼痛、RAの凹部に関与しているが、PROとの正式な協会は示されていない(ChoyEら Rheumatology 2018; 57 :18851895)。IL-6Raに対する完全ヒトモノクローナル抗体であるサリルマブは、中等度から重度の活動型RAの治療薬として承認されている。第3相MONARCHランダム化比較試験(NCT01061736)では、不耐容または不十分な反応のためメトトレキサート治療を継続すべきでないRA患者を対象に、サリルマブ単剤療法とアダリムマブの有効性および安全性を比較した。サリルマブ対アダリムマブにより、疾患活動性のより大きな低下とRAの臨床徴候および機能の向上が示された(Choy Eら Rheumatology 2018; 57: 18851895)。
【0274】
したがって、RAの臨床的意思決定の指針となるバイオマーカーとしてIL-6の評価を保証するためには、IL-6レベルとPROとの関連性をより深く理解する必要があり、したがって、MONARCHにおいてベースラインのIL-6レベルがサリルマブ対アダリムマブのPROの改善を差次的に予測できるかどうかを判定するために、MONARCH試験の事後解析を実施した。
【0275】
治療意図(ITT)集団の369人中300人の患者を対象に、ベースライン時に血清IL-6レベルを測定した。患者を、三分位を用いてベースライン時のIL-6高値、中値、または低値に分類した。ショートフォーム-36(SF-36)の身体的および精神的要素の要約(PCS、MCS)およびドメインスコア、慢性疾患治療の機能的評価(FACIT)‐疲労、および朝のこわばり視覚アナログスケール(VAS)測定における24週時の差の群間比較を、線状固定効果モデルを用いて各三分位内で実施した。ベースライン高対低IL‐6群における対アダリムマブの示差効果を評価するために、低IL‐6群を基準としてサリルマブ使用し、ベースライン別IL‐6群分析の治療相互作用試験を行った。
【0276】
ベースラインでは、高IL‐6三分位の患者は、MCSと朝のこわばりに関して有意に重篤な状態を呈した(P<0.05)。(表4)。高対低IL‐6三分位を比較したモデル相互作用は、SF‐36 PCSと身体機能ドメイン、および朝のこわばりに関して有意であった。IL-6が高い患者では、サリルマブはSF-36PCS(LS平均[LSM;最小二乗平均]:5.57、95%CI(2.85、8.28))、身体的機能(PF、16.59(8.15、25.03))、身体的役割(9.44(0.78、18.10))、身体的疼痛(BP、10.87(3.92、17.81))、バイタリティ(8.93(1.11、16.74))、および社会的機能(12.82(3.07、22.58))ドメインにおいて、対アダリムマブの有意な(P<0.05)効果を示し、サリルマブは、FACIT疲労(4.86(1.06、8.65))および朝のこわばりVAS(-19.93(-30.30、-9.56))についても、臨床的に重要な最低限の差を超えるLSM変化を伴う、対アダリムマブの有意な(P<0.05)改善を示した。
【0277】
これらのデータは、IL-6バイオマーカーとSF-36および朝のこわばりVASスコアとの関連を評価するものであり、IL-6高値の患者は、サリルマブの方がアダリムマブよりも改善が良好であることを報告しておりアダリムマブ治療の効果はIL-6の三分位を介して安定しているが、サリルマブの効果は特に高三分位群で高いことを示している。個スコアへの影響は主にPFによりもたらされ、これまでのIL-6高値に伴う疼痛の著明な改善に関する以前の報告(Gossecら Arthritis Rheumatol. 2018; 70(suppl 10))と一致している。
【表4】
【0278】
実施例6.血清インターロイキン-6高値は、メトトレキサートまたはアダリムマブと比較して、関節リウマチの重度の進行およびサリルマブに対する反応の増加と関連する
様々な従来の合成、生物学的、および標的合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARDs/bDMARDs/tsDMARDs)が、関節リウマチ(RA)患者の疾患活動性を低下させ、関節損傷の進行を抑制し、障害を予防するために利用可能である(Singh JAら(2016) Arthritis Rheumatol. 68(1):1-26;Smolen JSら(2017) Ann Rheum Dis.76(6):960-77)。しかし、最大40%が治療に反応せず、持続的寛解を達成するのはわずか30%と推定されている(Chaves Chaparro LMら(2011) Reumatologia clinica. 27(2):141-4; Ajeganova S、and Huizinga T.(2017) Ther Adv Musculoskelet Dis.9(10):249-62; de Punder YMら(2012) Rheumatology (Oxford) 51(9):1610-7)。
【0279】
治療アルゴリズムでは、疾患活動性のコントロールが不十分な患者に対して、メトトレキサート(MTX)などのcsDMARDの後、bDMARD/tsDMARDを開始することが推奨されている(Singh JAら(2016) Arthritis Rheumatol. 68(1):1-26; Smolen JSら(2017) Ann Rheum Dis.76(6):960-77)。bDMARDの選択は、患者のアクセス、医師の経験/バイアス、または高リスク併存疾患の考慮によって決定されることが多い(Jinら(2017) Arthritis Res Ther. 19(1):159)。
【0280】
治療前に特定の治療から最も恩恵を受ける可能性が高い患者を特定するのに役立つ診断法が利用可能であれば、治療法の決定を最適化することができる。しかし、現在のところ、有効性が確認されている治療反応の予測マーカーはない。バイオマーカーはランダム化制御試験および現実世界のコホートで評価されているが、治療開始前のアウトカムを予測する能力は依然として不明である(Fleischmann Rら(2016) Arthritis Rheumatol).68(9):2083-9)。例えば、C反応性タンパク質(CRP)は、リウマチ診療において日常的に測定され、一般に疾患活動性と相関し、再燃時に上昇することがある。しかし、CRP試験は、特定のRA治療への応答の予測値が不十分であるため(Orr CKら(2018) Frontiers in medicine 5:185)、生物学的療法を選択する際には現在利用されていない。
【0281】
RA患者では、血清および滑液中のインターロイキン6(IL-6)レベルが上昇している(Park YJら(2016) Sci Rep. 6:35242; Robak Tら(1998) Mediators Inflamm).7(5):347-53)。IL-6は炎症を駆動し、関節破壊を促進し、関節外症状の発現に関与し、RAにおける疾患活動性と相関する(Robak T ら(1998) Mediators Inflamm).7(5):347-53; Choy E. (2012) Rheumatology (Oxford) 51 Suppl 5:v3-11; Dayer JM、および Choy E.(2010) Rheumatology (Oxford) 49(1):15-24)。RAにおけるIL-6の重要な役割にもかかわらず、血清IL-6レベルが治療反応性を予測するポテンシャルに関するデータは限られており、決定的ではない(Wang Jら(2013) BMJ Open).3(8):e003199)。
【0282】
IL-6シグナル伝達経路を特異的に標的とする2種類のモノクローナル抗体(サリルマブおよびトシリズマブ)がRA患者の治療薬として承認されている(Genentech. Actemra(登録商標)(トシリズマブ)処方情報[2018年9月改訂]。www.gene.com/ download/pdf/ actemra_prescribing .pdf (Link);Regeneron SG Kevzara(登録商標)(サリルマブ)処方情報2018年4月(http://products.sanofi. us/kevzara/kevzara.pdf)より入手可能)より入手可能。IL-6シグナル伝達が亢進している患者がいることから、IL-6活性が高い患者は、他の患者と比較して、これらのIL-6標的薬から利益を引き出す可能性が高いと考えられる。本試験の目的は、MOBILITY(NCT01061736)試験ではサリルマブ対MTX治療、MONARCH(NCT02332590)試験(Burmester GRら(2017) Ann Rheum Dis. 76(5):840-7; Genovese MCら(2015) Arthritis Rheumatol.67(6):1424-37)ではサリルマブ対アダリムマブ治療に対する応答(臨床的有効性および患者報告アウトカム(PRO))をベースラインIL-6が差次的に予測できるかどうかを事後解析により検討することであった。
【0283】
方法
試験デザイン
NCT01061736およびNCT02332590試験の詳細は、以前に記載されている(図13)(Burmester GRら(2017) Ann Rheum Dis. 76(5):840-7; Genovese MCら(2015) Arthritis Rheumatol.67(6):1424-37)。
【0284】
要約すると、NCT01061736試験では、中等度から重度のRAでMTX(MTX-IR)に対し反応が不十分な患者を、サリルマブ150mg(n=400)、サリルマブ200mg(n=399)またはプラセボ(n=398)を2週間ごと(q2w)に52週間投与する群に無作為に割り付けた。NCT02332590試験では、MTXに不耐容またはMTX-IRである中等度から重度のRA患者を、サリルマブ200mg q2w(n=184)またはアダリムマブ40mg q2w(n=185)の単剤療法に無作為に割り付け、24週間投与した。
【0285】
両試験はヘルシンキ宣言に従って実施され、適切な倫理委員会/施設内審査委員会により承認され、各患者から書面によるインフォームドが提供された。
【0286】
バイオマーカーアセスメント
NCT01061736では、治療意図(ITT)集団を対象に、ベースライン時とベースラインから24週後および52週後の血清中IL-6およびCRP量を測定した。NCT02332590では、血清中IL-6の測定はあらかじめ規定した手順ではなかったため、ランダム化され、署名し、その後中止せず、試料の将来の使用に対するインフォームド・コンセントを取得し、ベースライン時に少なくとも1回の評価可能な血清試料を採取した患者の試料について分析を実施した。このコホートはバイオマーカー集団と呼ばれ、NCT02332590試験のITT集団の307/369患者とNCT01061736試験のITT集団の1194/1197患者(ベースライン時のIL-6またはCRP)で構成された。追加の連続的およびカテゴリー的バイオマーカー変数。ベースラインのIL-6またはCRP値(高値、中値、低値;表5)に従って患者を三分位に分類した。両試験(Boyapati Aら(2016) Arthritis Res Ther)でも追加のバイオマーカーが評価された18(1):225; Gabay CBら. A. Differential effects of sarilumab and adalimumab on circulating biomarkers of bone resorption and cardiovascular risk, and predictions of clinical and patient-reported outcomes. 準備中)。
【0287】
血清IL-6レベルは、コーヴァンス中央研究所(Indianapolis, IN, USA)で検証済みの酵素免疫測定法(Quantikine、R&D システム、Minneapolis, MN, USA)を用いて測定した;アッセイ内精度は≦9.1%変動係数(CV);アッセイ間精度は≦12%CV;報告可能範囲は3.1~153,600pg/mLであった。実験室で同定されたIL-6の正常値は<12.5pg/mLであり(Fraunberger Pら (1998) Clin Chem Lab Med 36:797-801)、この値を、これらの分析の正常の定義として用いた。両試験とも、血清試料の約90%が午前中に採取された。
【0288】
CRPは、コーヴァンス(Indianapolis, IN, USA)で高感度CRP(Siemens、Erlangen、ドイツ)アッセイを用いて測定し;アッセイ内精度は<3%;アッセイ間精度は<5.4%;健常対照者の基準範囲は≦2.87mg/Lであった。NCT02332590について、試験対象患者基準は、試験登録時に必要な最小CRP値を規定した(NCT01061736では>6mg/L;≧8mg/Lまたは赤血球沈降速度(ESR)≧28mm/時、スクリーニングと無作為化の間で評価した。
【0289】
連続的およびカテゴリー的バイオマーカー変数を用いて相関分析を行い、患者をベースラインのIL-6またはCRPレベルに従って三分位に分類した(高値、中値または低値;表5)。定量下限値(LLOQ)未満の値は、分析のためにこれらの値を保持するためにLLOQの半分に等しい値に置き換えられた。
【表5】
CRP、C反応性タンパク質;IL-6、インターロイキン-6。
【0290】
有効性および患者報告アウトカム(PRO)のエンドポイント
有効性は、ベースラインからの変化を用いた連続エンドポイント、ベースラインからの変化についての臨床的に重要な最小限の差の閾値を用いたまたは低疾患活動性(LDA)または寛解などの臨床的閾値2値エンドポイントのいずれかとして評価した。一次エンドポイント、二次エンドポイントのサブセット、探索的エンドポイントを評価した。
【0291】
米国リウマチ学会議基準(ACR20/50/70)、臨床疾患活動性指数(CDAI)寛解(≦2.8)、CDAI-LDA(≦10)、28関節疾患活動性スコア(DAS28)-CRPまたは-ESR寛解(≦2.6)、DAS28-CRPまたは-ESR LDA(≦3.2)、および健康評価質問票を用いた機能障害指数(HAQ-DI)(向上≧0.22または≧0.30およびベースラインからの変化;16週目のNCT01061736、24週目のNCT02332590)に従って≧20/50/70%向上を達成した患者の割合。患者数が少ないため、DAS28-ESRおよびCDAI-LDAはNCT01061736およびNCT02332590ではそれぞれ評価されなかった。NCT01061736試験の両試験において24週時および52週時に評価した追加のPROエンドポイントには、患者全般アセスメント(Patient Global Assessment)視覚的アナログスケール(VAS)のベースラインからの継続的な変化、および疼痛VASが含まれていた。NCT01061736の共通する一次エンドポイントはACR20、修正された合計シャープスコアおよびHAQ-DIとし、二次エンドポイントはACR70、DAS28-CRPおよびCDAIとした。NCT02332590の一次エンドポイントはDAS28-ESRであり、二次エンドポイントはDAS28-ESR寛解、HAQ-DIおよびACR20/50/70であった。
【0292】
統計的方法
IL-6三分位によるベースラインの疾患特性を、試験ごとに要約し、Kruskal-Wallis検定を用いて比較した。すべての評価項目について、ベースラインは治験薬の初回投与前の最終値と定義された。全解析において、患者は受けた治療に従って解析された。
【0293】
2量有効性アウトカムに対する血清IL-6レベルの適中率を、治療、試験の無作為化因子(両検討の領域およびNCT01061736の生物学的製剤使用歴)、ベースラインのIL-6三分位および治療ごとの交互相互作用におけるIL-6三分位を固定効果とするロジスティック回帰を用いて試験し、交互相互作用p値を用いて、IL-6三分位の高低にわたってこの評価を実施した。その後、各IL-6三分位において、各サリルマブ群と対照薬群との間で有効性評価項目の対比較を別々に行い、オッズ比(OR)および対応する95%信頼区間(CI)のMantel-Haenszel推定値(無作為化因子により層別化)を導出した。各治療群内のIL-6三分位間の対比較も同様に計算した。連続エンドポイントについては、治療、試験の無作為化層別因子、ベースライン値、ベースライン時のIL-6三分位、ベースラインと治療の交互相互作用によるIL-6三分位を固定効果とした共分散分析を行った。サリルマブ群と対照群との間の有効性エンドポイントの対比較を各IL-6三分位について別々に行い、最小二乗(LS)平均値と対応する95%CIを導いた。
【0294】
PROのベースラインからの変化に対する血清IL-6レベルの予測値は、有効性のアウトカムについて記述されたものと同じ固定効果を用いて共分散分析を用いて試験した。
【0295】
同様の回帰を、連続測定としてベースラインIL‐6を用いて行った。
【0296】
すべての予測分析は事後的であったため、すべてのp値は名目上のものとみなすべきである。
【0297】
各IL-6三分位における試験治療下での有害事象(AE)の発生率を記述的に分析した。
【0298】
すべての分析はSASバージョン9.2以上を用いて行った。
【0299】
試験結果
IL-6分布とベースライン疾患活動性
血清中IL-6は、NCT01061736ITT集団1193/1197患者およびNCT02332590ITT集団の300/369患者でベースライン時に測定された(表6)。いずれの試験でも、ベースラインのIL-6三分位が低い患者は全員、IL-6が正常(<12.5pg/mL)であった。ベースライン時のIL-6三分位高値では、NCT01061736の85%の患者とNCT02332590の全患者で、IL-6値が正常上限(ULN)の3倍以上であった。IL-6の三分位間の分布は両試験で一貫していた(表5)。
【0300】
報告されているIL-6とCRPとの間の中等度から高度の相関(NCT02332590ではSpearman係数0.71、NCT01061736では0.58)を考慮すると、IL-6三分位の高い患者対低い患者ではCRPが有意に上昇していた。低IL-6三分位群の患者と比較して、高IL-6三分位群の患者は、両試験のベースライン時の疾患活動性が有意に大きく、関節損傷が有意に多かった(表6)。健康評価質問票の障害指数(HAQ-DI)および患者による全般的評価も、IL-6の高値三分位では低値と比較して有意に上昇していた(表6)。
【表6】
*p<0.05(Kruskal-Wallis検定)。
†正常IL-6<12.5pg/mL;正常CRP<2.87mg/L。
CDAI:臨床活動性指数、CRP:C反応性タンパク質、DAS28:28関節疾患活動性スコア、ESR:赤血球沈降速度、HAQ-DI:健康評価質問票を用いた機能障害指数、IL-6:インターロイキン-6、mTSS:修正された合計シャープスコア、SD:標準偏差、SJC:腫脹関節数、TJC:圧痛関節数。
【0301】
X線像上の進行に対するベースラインIL-6レベルの予測量(NCT01061736)
以前の研究では、ITT集団の中で、プラセボ+MTXを投与された患者は、第52週のmTSSで評価したところ、サリルマブ150mgおよび200mg+MTX治療群の患者よりもX線像上の進行が有意に多かった(Genovese MCら(2015)Arthritis Rheumatol 67(6):1424-37)。
【0302】
高IL-6三分位体におけるプラセボ+MTX患者は、24週目および52週目に、低IL-6三分位体におけるそれらよりも実質的により多くの関節損傷を発症した(平均(標準偏差(SD))mTSS進行:24週目における2.00[4.78]対0.54[3.12]、52週目における4.67[9.80]対1.51[5.25];高進行対低進行[95%CI]のOR:24週目における2.3[1.4、3.8]、52週目における3.3[1.9、5.6];名目上のp<0.05)(図14A~14C)。エロージョンスコアおよび関節腔狭窄(JSN)の増加が観察された。サリルマブ200mg+MTXで治療した患者は関節損傷が最も少なく、IL-6の低値および中等度の三分位の患者は52週間にわたって関節損傷が最小からまったく生じなかった。しかし、高IL-6三分位群では、サリルマブ200mg+MTX患者の方がプラセボ+MTX患者よりも関節損傷進行の可能性が約3倍低かった(図14A-14Cおよび表7)。52週目の関節損傷進行に対するサリルマブ150mg+MTX対プラセボの効果は、IL-6の三分位間で有意差はなかった:低IL-6 OR[95%CI]:0.8[0.5、1.4]および高IL-6 OR[95%CI]:0.5[0.3、0.8]。
【0303】
NCT01061736のベースラインIL‐6レベルによる疾患活動性とPROに対するサリルマブの効果
サリルマブ200mg+MTXを用いた治療は、HAQ-DI向上のためのIL-6三分位の高値と低値の患者では、数値的により大きな疾患向上をもたらし、米国リウマチ学会反応規準(ACR70)と臨床病活動指数(CDAI)の寛解では、70%以上の向上をもたらした。52週目に、ACR20、ACR50およびCRP(DAS28-CRP)寛解を用いた28関節の疾患活動性スコアを達成した患者の割合も、サリルマブ200mg+MTXで治療したIL-6が高値の患者の方が低値の患者よりも数値的に高かった。対照的に、特にACR70、CDAI寛解およびDAS28-CRP寛解では、低IL-6三分位よりも高値の方がプラセボ+MTXレスポンダーが少なかった(図15Aおよび15B)。
【0304】
相互作用試験では、52週目におけるサリルマブ+MTXとプラセボ+MTXとの二成分反応の差は、IL-6の高値対低値の三分位でより大きいことが示された(表7)。この試験は52週目のすべての臨床的および関節損傷エンドポイント(ACR20/50/70、DAS28-CRP寛解、CDAI寛解およびHAQ-DI)について有意であったが、JSNについては有意ではなかった(データ示さず)。IL-6の高値三分位群と低値三分位群では、プラセボ+MTXに対するサリルマブ+MTXの応答のORが高かった。サリルマブ200mg+MTX患者は、急性期反応物質(それぞれDAS28-CRPおよびCDAI寛解)の有無にかかわらず、エンドポイントを考慮して寛解を達成する可能性がプラセボ+MTX患者の約40倍であった。また、サリルマブ150mg+MTXで治療した高IL-6三分位群の患者は、プラセボ+MTXの患者と比較して、CDAIおよびDAS28-CRP寛解を達成する可能性が有意に高かった(それぞれOR[95%CI]40.3[4.0、405.7]および42.6[8.7、208.7])。
【0305】
示差IL-6応答、圧痛関節数および腫脹関節数に寄与する疾患活動性成分を探索するために、DAS28-CRPおよびCDAIをIL-6三分位により評価し、52週間の治療期間にわたって連続的な変化を調べた。全IL-6三分位の患者では、サリルマブ+MTXによる疾患活動性の低下がプラセボ+MTXと比較して大きかったが、治療群間の最大の差は、52週目の全測定値の低下と比較して、IL-6三分位の高値で観察された(表8A)。相互作用試験はすべてのエンドポイントで有意であった。また、連続測定としてIL-6を用いた分析も行い、相互作用試験の試験結果は非常に似通ったものとなった(データは示されていない)。
【0306】
サリルマブ治療は、ITT集団全体において、プラセボ+MTXと比較してPROを改善した(Strand Vら(2016) Arthritis Res Ther 18:198)。IL-6三分位による解析では、HAQ-DI、疼痛および患者の全般的視覚アナログ尺度(VAS)の各三分位において、サリルマブ+MTX治療患者の方がプラセボ+MTXよりも大きな改善が認められた。サリルマブ+MTXで治療を受けた患者とプラセボ+MTXで治療を受けた患者の差の大きさは、HAQ-DI(IL-6-三分位による有意な治療との相互作用を伴う)の高三分位と低三分位では大きくなったが、痛みと患者の地球のVAS(表9;図16A-16C)では大きくなっていない。IL-6を連続測定とした場合にも同様の結論が得られた(データは示されていない)。

【表7-1】
【表7-2】
*患者がベースライン時にIL-6値を有していたかどうかにかかわらず、全体的なバイオマーカー集団。
†試験の無作為化層別因子により層別化したMantel-Haenszel推定値。
‡(高または中程度対低)三分位IL-6-治療相互作用についてのノミナルp<0.05(治療によるロジスティック回帰、試験の無作為化の層別因子[両検討の領域およびNCT01061736に対する以前の生物学的製剤使用]、固定効果としてのベースライン時の三分位IL-6およびベースラインと治療との交互作用時の三分位IL-6)。
ACR20/50/70、米国リウマチ学会基準による≧20/50/70%改善;CDAI、臨床疾患活動性指標;CI、信頼区間;CRP、C反応性タンパク質;DAS28、28関節の疾患活動性スコア;HAQ-DI、健康評価質問票を用いた機能障害指数;IL-6、インターロイキン-6;LDA、低疾患活動性;mTSS、修正された合計シャープスコア、MTX:メトトレキサート、q2w:2週間毎。
【表8A-1】
【表8A-2】
LS平均値は、各バイオマーカーの三分位におけるベースラインの有効性値、治療、試験の無作為化の層別因子(生物学的製剤の使用歴および領域)を固定効果とし、有効性指標のベースラインからの変化量について線形回帰を行ったものである。
*IL-6高群または中群と低群の治療群ごとの三分位の交互相互作用p<0.05(治療、試験の無作為化層別因子[領域および生物製剤の使用歴]、ベースラインの有効性値、ベースライン時のIL-6三分位、ベースラインと治療の交互相互作用によるIL-6三分位を固定効果とした線形回帰)。
**プラセボに対するp<0.05。
CDAI:臨床疾患活動性指数、CI:信頼区間、CRP:C反応性タンパク質、DAS28:28関節疾患活動性スコア、LS:最小二乗、SJC:腫脹関節数、TJC:圧痛関節数。
【表8B】
LS平均値は、各バイオマーカーの三分位におけるベースラインの有効性値、治療、領域を固定効果とした、有効性指標のベースラインからの変化に対して実施された線形回帰から導かれる。
*高群または中群と低群の三分位についてのIL-6治療群ごとの三分位の交互相互作用、p<0.05(治療、試験の無作為化層別因子[領域]、ベースラインの有効性値、ベースライン時のIL-6三分位、ベースラインと治療の交互相互作用によるIL-6三分位を固定効果とした線形回帰)。
**アダリムマブに対してp<0.05。
CDAI:臨床疾患活動性指数、CI:信頼区間、CRP:C反応性タンパク質、DAS28:28関節疾患活動性スコア、LS:最小二乗、SJC:腫脹関節数、TJC:圧痛関節数。
【表9】
*治療、無作為化因子(両試験の領域およびNCT01061736の生物学的製剤使用歴)、ベースラインのPRO値、ベースライン時のIL-6三分位およびベースラインと治療との交互相互作用によるIL-6三分位を固定効果とした線形回帰を用いて、ノミナル交互相互作用p<0.05(高値対低値)。
LSは、ベースラインのPRO値、治療、試験の無作為化の層別化因子(両試験の領域およびNCT01061736の生物学的製剤使用歴)を固定効果として、それぞれの三分位で直線回帰を行ったものを意味する。
第16週
CI:信頼区間、HAQ-DI:健康評価質問票を用いた機能障害指数、IL-6:インターロイキン6、MTX:メトトレキサート、PRO:患者報告アウトカム、q2w:2週間毎、VAS:視覚的アナログスケール。
【0307】
NCT02332590のベースラインIL‐6レベルによる疾患活動性とPROに対するサリルマブの効果
ITT集団全体では、サリルマブの有効性はアダリムマブよりも有意に高かった(Burmester GRら(2017), Ann Rheum Dis. 76(5):840-7)。ベースライン時のIL-6が高値であったサリルマブ治療患者は、CDAI LDAを除く全評価項目にわたり、ベースライン時のIL-6が低値であった患者と比較して、応答が数値的に大きかった(図17Aおよび17B)。IL-6が高値であったアダリムマブで治療された患者は、HAQ-DIを除くほとんどの評価項目で、IL-6が低値であった患者と比較して、24週時の奏効率が低かった。
【0308】
相互作用試験では、赤血球沈降速度(DAS28-ESR)およびDAS28-CRP寛解を用いたACR20/50/70、DAS28の最大の差が示され、サリルマブ対アダリムマブの反応におけるHAQ-DIの向上は、IL-6の高値対低値の三分位であった。高IL-6三分位におけるこれらの差は、多くの臨床パラメータにわたって応答を達成するための高いORをもたらした(表7)。高IL-6三分位では、サリルマブで治療された患者はアダリムマブ投与患者よりもACR70を達成する可能性が10倍以上高かった(表7)。さらに、IL-6高値三分位では、サリルマブで治療された患者の方がアダリムマブで治療された患者よりも疾患活動性の大幅な低下(DAS28-ESRおよびDAS-CRP寛解)が認められた(表7)。ITT集団全体では、サリルマブ治療により、アダリムマブと比較して複数のPROが改善した(Strand V、ら(2018) Arthritis Res Ther 20:129)。24週間の治療期間にわたる連続的な変化に関する交互作用試験では、DAS28-CRPおよびPROに対するサリルマブの治療効果も、IL-6の三分位が高い方が低い方に対して大きいことが示された(表8Bおよび表9)。疾患活動性およびPROに対する効果は高IL-6値によってもたらされるようであったが(データは示さず)、IL-6を連続的な指標と考えた場合にも同様の結論が導かれた。
【0309】
クロス試験比較
ベースライン時のIL-6が高値であった患者におけるサリルマブと対照薬(プラセボ+MTXまたはアダリムマブ)との有効性の差は、ACR20、ACR70、DAS28-CRP LDAを含む複数のエンドポイントにわたって試験間で一貫していた(表10)。
【0310】
CRPの予測性はIL-6と同様に解析した。いずれの試験においても、ベースライン時のIL-6はベースライン時のCRPよりもアウトカムの予測因子として優れており(表11)、CDAI寛解(NCT01061736)やHAQ-DI(いずれの試験)などの急性期反応物質の測定値がない場合も含め、より多くのエンドポイントで有意な交互作用p値が認められた(表11)。
【0311】
安全性
各試験におけるIL-6の低値、中値、高値の三分位の患者間で安全性プロファイルは同様であり(表12)、サリルマブによる個々の有害事象の発現率はIL-6遮断の安全性プロファイルと一致していた。感染症および好中球減少症の発現率は、各投与群のIL-6三分位で同程度であった(表12)。高IL-6三分位群の患者は、サリルマブとアダリムマブの感染率が同等であった(34.8%対31.5%)。

【表10】
*サリルマブ200mg q2w+MTX対プラセボ+MTX
ACR20/50/70:米国リウマチ学会議基準で20/50/70%以上の改善を達成した患者、CDAI:臨床疾患活動性指数、CRP:C反応性タンパク質、DAS28:28関節の疾患活動性スコア、ESR:赤血球沈降速度、HAQ-DI:健康評価質問票を用いた機能障害指数、IL-6:インターロイキン-6、LDA:低疾患活動
【表11】
*ノミナルp<0.05(高/低)の三分位IL-6/CRP/治療ごとの相互作用(治療によるロジスティック回帰、ランダム化層別化因子の研究-NCT01061736およびNCT02332590の領域、NCT01061736のための以前の生物学的使用-ベースラインIL-6/CRP三分位、および固定効果としての治療によるベースラインごとの相互作用におけるIL-6/CRP三分位)。
Mantel-Haenszelのオッズ比を、試験のランダム化層別化因子により層別化した。
ACR20/50/70:米国リウマチ学会議基準で20/50/70%以上の改善を達成した患者、CDAI:臨床疾患活動性指数、CI:信頼区間、CRP:C反応性タンパク質、DAS28:28関節の疾患活動性スコア、ESR:赤血球沈降速度、HAQ-DI:健康評価質問票を用いた機能障害指数、IL-6:インターロイキン-6、LDA:低疾患活動、MTX:メトトレキサート
【表12-1】
【表12-2】
いずれの試験でも、サリルマブの用量は2週間毎に投与されていた。NCT02332590では、アダリムマブを2週間ごとに投与した。NCT01061736試験では、全患者がメトトレキサートの背景技術投与を受けていた。
*MedDRAの臓器システム分類
†MedDRA基本語。
AE:有害事象;IL-6:インターロイキン-6;MedDRA:医薬品規制用語集(NCT01061736の版16.0およびNCT02332590の版18.1);MTX:メトトレキサート;SAE:重篤な有害事象;TEAE:試験治療下で発現した有害事象。
【0312】
概要
RAのMTX不耐性/IR患者1493例を対象としたこの事後解析により、ベースライン時のIL-6値が最も高かった患者は、正常なIL-6範囲内の患者と比較して、ベースライン時の疾患活動性が中等度に上昇していたが、ベースライン時の関節損傷が有意に多かったことが実証された。
【0313】
IL-6値が高い患者は、プラセボ+MTXまたはアダリムマブと比較して、サリルマブに対する応答が大きかった。ベースライン時のIL-6が高値であったRA患者におけるサリルマブと対照薬(プラセボ+MTXまたはアダリムマブ)との有効性の差は、複数のエンドポイントにわたる試験間で一貫していた。大きなORは、対照薬を投与された高IL-6レベルの患者における低レベルの反応によってもたらされたことに注意すべきである。高IL-6レベルの患者は、プラセボよりもサリルマブでACR応答、DAS28-CRPまたはCDAI寛解、HAQ-DI向上を達成する可能性が高く、アダリムマブと比較してDAS28-ESRまたはDAS28-CRP寛解およびACR応答を達成する可能性が高かった。
【0314】
トシリズマブで治療したRA患者の循環IL-6濃度の研究では相反する知見が報告されている:治療に対する応答が低IL-6の患者で改善することを見出した研究もある(Nishina N KYら(2017) Arthritis Rheumatology. 69(S10); Shimamoto Kら(2013) J Rheumatol.40(7):1074-81)、一方、他の研究では、IL-6高値の患者がより良好なレスポンダーであると同定された(Wang Jら(2013) BMJ Open.3(8):e003199; Diaz-Torne Cら(2018) Semin Arthritis Rheum.47(6):757-64; Uno Kら(2015) PLoS One.10(7):e0132055)。Wangら(BMJ Open.(2013) 3(8):e003199)が実施した包括的試験では、ベースラインのIL-6が3倍上昇する毎に、トシリズマブによるDAS28-ESRの変化に対する影響を検討した。この分析では、IL-6値が最も高い患者と最も低い患者を直接比較しなかった。ベースライン時のIL-6がDAS28-ESRの有意な変化を予測しなかった理由は不明である。1つの可能性として、この分析では有効性プロフィールの異なるトシリズマブ2用量(4および8mg/kg)を併用したことが考えられる。本明細書に提示する分析については、IL-6の正常レベル(低三分位)の患者およびベースラインIL-6レベル>3×ULN(高三分位)の患者における有効性を比較するために三分位を用いた。現時点では、臨床試験または現実の診療のいずれからも、確立されたIL-6閾値は得られていない。
【0315】
本明細書に提示したデータは、ベースラインのIL-6値が低いよりも高い方が、サリルマブに対する応答と比較対照薬との鑑別に適中率が高いことを実証した。いずれの研究でも、ベースライン時のIL-6はベースライン時のCRPよりもアウトカムの予測において良好であり、これにはX線像上の疾患進行およびCDAI寛解やHAQ-DIなどの急性期反応物質測定値のないエンドポイントが含まれていた。このことは注目すべきことである。なぜなら、両研究ではCRP値の上昇が組み入れ判定基準となっていたが、CRPのみでは疾患進行速度が速い場合と遅い場合とを区別できなかったからである。
【0316】
実施例7.ベースライン時の血清IL-6高値はメトトレキサートに対する反応が不十分な関節リウマチ患者における患者報告アウトカムに対するサリルマブ治療反応の増加を予測する
背景
IL‐6は関節リウマチ(RA)の病因における重要なサイトカインであり、RA患者の血清および滑液中で上昇する。しかし、IL-6のベースライン値が患者報告アウトカム(PRO)に及ぼす影響は、IL-6遮断を評価した臨床試験では検討されていない。IL-6受容体αを標的とするヒトモノクローナル抗体であるサリルマブ+MTXは、MOBILITYランダム化比較試験(NCT01061736)において、MTXの不十分なレスポンダー(IR)において、MTX単独よりも臨床的および患者報告のアウトカムを有意に改善した。この事後解析では、ベースラインのIL-6レベルが、サリルマブ+MTXの方がMTXよりもPROの向上が大きいことを予測できるかどうかを評価した。
【0317】
方法
MTX+プラセボまたはサリルマブ(150mgまたは200mgを2週間毎に皮下投与)+MTXの投与を受けている中等度から重度の活動型RAの治療意図集団1197例の患者1193例を対象とし、ベースラインのIL-6値を含めた。血清IL-6は免疫測定法(Quantikine IL-6)により測定した。ベースラインのIL-6値(高値、中値、低値、表13参照)に従って患者を三分位に分類した。PROは、ベースラインおよび治療後(週[W]24および52):疼痛視覚アナログスケール(VAS)、SF‐36身体的(PCS)および精神的要素スコア(MCS)、FACIT‐疲労(FACIT‐F)および睡眠VASで測定した。IL-6値の予測性を評価するために、IL-6の三分位、治療歴、生物学的製剤の使用歴および領域を層別因子とし、ベースラインのIL-6の三分位と治療との交互相互作用(プラセボおよびIL-6の三分位の低値を参考として)を固定効果として、PROのベースラインからの変化量について線形回帰を行った。各サリルマブ群の相互作用のP値を、参照としてプラセボと低三分位を用いて提供した。各三分位で治療群間のPRO改善の対比較も実施し、最小二乗平均値のプラセボとの差および95%信頼区間を算出した。
【0318】
試験結果
ベースラインでは、IL-6高値三分位群の患者は、IL-6低値群(P<0.05)と比較して、疾患活動性が高く、X線像上の構造的損傷が多く、CRP値が上昇し、PROが不良であった(疼痛VAS、SF36-PCS、睡眠VAS;データは示さず)。一般的に、サリルマブ治療の方がプラセボよりもPROの向上が大きかったと報告されていた(表)。高三分位と低三分位の間の有意差(相互作用P値<0.005)は、200mgの疼痛VAS(W52)とSF‐36PCS(W24とW52)で明らかであった;150mgと200mg(W52)の両方のSF‐36MCSと150mgと200mg(W24とW52)の両方のFACIT‐Fスコアで明らかであった。試験治療下で発現した有害事象の発現率はIL-6群間で同程度であった。
【0319】
結論
MTX-IR RA患者では、ベースライン時のIL-6高値は、低値の患者と比較して、サリルマブ治療によるPROの向上がプラセボよりも良好であることを予測する。この知見は過去の分析を支持するものであり、臨床的およびX線学的エンドポイントを通じて、ベースラインのIL-6値が上昇した患者は、IL-6値が上昇しなかった患者よりも、MTXまたはアダリムマブと比較してサリルマブに対する応答が高いことを報告した。
【表13-1】
【表13-2】
注:*および**は、治療群とプラセボ群との間のPRO改善の差において、IL6高値群または中値群とIL6低値群との間に有意差(プラセボとIL6低値を参考に、交互作用P値<0.05およびP<0.01)が認められたことを意味する。各IL-6群内でLS-平均差および95%信頼区間を算出する。IL-6レベルの低値、中値または高値は、メジアンおよび群間の範囲として報告される。
【0320】
実施例8.関節リウマチおよび糖尿病の患者におけるグリコシル化ヘモグロビンに対するサリルマブの効果。
IL-6Rαを遮断するヒトmAbであるサリルマブは、中等度から重度の活動型RAの成人患者に対して承認されている。2型糖尿病はRA患者によくみられる併存疾患であり、IL-6の上昇が危険因子である可能性がある。この事後解析では、グリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)と空腹時血糖に対するサリルマブの効果を検討した。
【0321】
TARGET(NCT01709578)は、TNFi不十分な応答/不耐容(IR/INT)患者を対象に、サリルマブ150/200mg q2w対プラセボ(すべて+csDMARD)を24週間投与した試験であり、546例中78例(14.3%)の患者が糖尿病(ベースラインの空腹時血糖値が7mmol/L以上またはベースラインのHbA1cが6.5%以上)であった。MONARCH(NCT02332590)は、MTX-IR/INT、bDMARD未治療患者を対象にした、サリルマブ200mg q2w vs アダリムマブ40mg q2wの24週間単剤療法試験であり、患者369例中28例(7.6%)に糖尿病が認められた。
【0322】
24週時のRAおよび糖尿病患者におけるHbA1cのベースラインからの変化量の最小二乗平均値(LSM)は、併用試験ではサリルマブ150/200mg q2wで-0.33%/-0.6%であったのに対し、プラセボでは+0.18%、単剤療法ではサリルマブ200mg q2wで-0.43%であったのに対し、アダリムマブ40mg q2wで-0.02であった。HbA1cの変化とコルチコステロイド使用の間に相互作用はなく、HbA1cの変化はCRP、DAS28‐CRP、またはヘモグロビンの変化と相関しなかった。ベースラインIL-6>37.5pg/mL(>3×ULN)のサリルマブ治療患者は、ベースラインIL-6≦37.5pg/mLの患者よりもHbA1cの低下が大きかった(LSM変化量、-0.27対-0.11)。サリルマブの安全性プロファイルは、糖尿病患者対非糖尿病RA患者で類似していた。
【0323】
サリルマブで治療されたRAおよび糖尿病の患者は、アダリムマブまたはプラセボよりもHbA1cの向上が大きかった。単剤療法では、サリルマブとアダリムマブの差は、ベースラインのIL-6レベルが高かった患者間でより顕著であった。
【0324】
実施例9.関節リウマチ患者における高レベルのインターロイキン‐6(IL‐6)は、アダリムマブと比較してサリルマブに対する患者報告アウトカムのより大きな改善と関連する。
イントロダクション
インターロイキン-6(IL-6)を含むサイトカインレベルの上昇は、炎症を反映し(Burska Aら Mediators Inflamm 2014; 2014: 545493)、関節リウマチ(RA)患者における疾患活動性および治療反応の可能性と関連している(Fabre Sら Clin Exp Immunol 2009; 155: 395-402)。
【0325】
IL-6は、RAにおける疲労、疼痛および凹部に関与するとされているが(Fabre Sら Clin Exp Immunol.155: 2009: 395-402)、健康関連QOL(HRQoL)との正式な協会は検討されていない。
【0326】
サリルマブは、IL-6受容体拮抗薬に対する完全ヒトモノクローナル抗体であり、中等度から重度の活動型RAの治療薬として承認されている。
【0327】
第3相MONARCHランダム化比較試験(NCT01061736)では、不耐容または不十分な反応のためメトトレキサート治療を継続すべきでないRA患者を対象に、2週間毎の皮下(SC)サリルマブ200mg単剤療法(Q2W)とアダリムマブ40mg SC単剤療法Q2Wの有効性および安全性を比較した。サリルマブとアダリムマブの比較では、疾患活動性のより大きな低下とRAの臨床徴候および身体機能の向上が示された(Burmester GRら Ann Rheum Dis. 2017;76:840-847)。さらに、サリルマブ単剤療法とアダリムマブ単剤療法を比較した結果、複数のHRQoL評価項目にわたって大きな改善が認められた(Strand Vら Arthritis Res Ther.2018;20:129)。
【0328】
IL-6信号を遮断する承認されたRA治療薬が複数存在することを考慮すると、RAの臨床的意思決定の指針となるバイオマーカーとしてIL-6を評価するためには、IL-6レベルとHRQoLのエンドポイントとの関連性をさらに理解する必要がある。
【0329】
目的
MONARCHにおけるサリルマブ対アダリムマブによるHRQoLエンドポイントの向上を、ベースラインのIL-6レベルが差次的に予測する可能性を事後解析により評価する。
【0330】
方法
バイオマーカー解析に同意したITT(治療意図)集団の369人中300人の患者を対象に、ベースライン時に妥当性が確認されたELISA法を用いて血清IL-6値を測定した。
【0331】
患者はIL‐6レベルに基づいて三分位(高、中および低)に分類された
以下のHRQoLエンドポイントについて、IL-6の三分位ごとにベースラインおよび24週時のベースライン(CFB)からの変化量を求めた:
ショートフォーム-36(SF-36)身体的精神的要素の概要スコア(PCS、MCS);
SF-36ドメイン:身体機能(PF)、役割‐身体(RP)、身体疼痛(BP)、一般健康(GH)、活力(VT)、社会機能(SF)、役割‐感情(RE)、メンタルヘルス(MH);
慢性疾患治療(FACIT)‐疲労の機能評価;および朝のこわばり持続視覚アナログスケール(VAS)。
【0332】
HRQoL評価項目におけるCFBに対する線状固定効果モデルを用いて、HRQoLの向上を予測するIL-6値の能力を検定し、治療とともに、試験のランダム化層別因子(領域)、ベースラインのPRO、ベースライン時のIL-6三分位、およびベースラインと治療との交互相互作用の項によるIL-6三分位を固定効果変数と定義した。ベースラインと治療との交互相互作用項別のIL-6三分位は、IL-6三分位が低い群と比較して、IL-6三分位が高い群と中程度の群でそれぞれサリルマブを投与した患者の方がアダリムマブを投与した患者よりも、治療効果の増分(すなわち、PRO(患者報告アウトカム)スコアの変化が有意に高いかどうか)を特に評価した。相互作用項のP値は、参照として低三分位を用いて計算した。
【0333】
最小限臨床的に重要な差異(MCID)に対する奏効率を評価するため、治療、試験のランダム化層別因子、ベースライン時のIL-6三分位、ベースラインと治療との交互作用時のIL-6三分位を固定効果とし、奏効(患者内MCID)についてロジスティック回帰を行った。レスポンダーは、24週時にMCID以上の改善を報告した患者と定義した:PCSおよびMCSでは2.5、FACITでは4.0、朝のこわばり持続時間では10.0であった。各IL-6三分位で対比較を別々に行い、オッズ比(OR)および95%CIのMantel-Haenszel推定値(無作為化因子により層別化)を導出した。
【0334】
試験結果
ベースライン時のIL-6値が高値であった患者は、IL-6値が中または低値であった患者よりも、SF-36 MCS、SF、RE、RPおよびBPのスコアおよび朝のこわばり持続時間が有意に不良であった(Kruskal-Wallis検定p<0.05)(データは示していない)。
【0335】
IL-6三分位の高値と低値のPRO改善の差を比較した相互作用p値は、SF-36 PCS、PFドメイン、朝のこわばり持続時間について有意であり、IL-6値が高値の患者については、サリルマブ治療対アダリムマブ治療によるHRQoLエンドポイントの改善が、IL-6値の低値の患者よりも有意に高かったことが示された:
SF-36PCS(差のLSM:5.57、95%CI[2.85、8.28]vs0.87[-1.91、3.66])、(図18A)、および朝のこわばり持続時間(-19.93[-30.30、-9.56]vs1.21[-8.17、10.60])(図18B)。
【0336】
相互作用p値は有意ではなかったが、RP、BP、VTおよびSFの高IL-6三分位内でサリルマブ対アダリムマブに有意差(p<0.05)が認められたが、IL-6三分位の低値または中値では認められなかった(図19)。FACIT疲労に対してのみ、高IL-6三分位内のサリルマブとアダリムマブの間にも有意差(p<0.05)が認められた(4.86[1.06、8.65]vs 1.21[-2.59、5.02])(図18C)。
【0337】
PCS MCID応答のみに有意な相互作用が認められ、高IL-6=(6.31[2.37、16.81])対低IL-6(0.97[0.43、2.16])でオッズ比(OR)が認められたことから、IL6高値患者ではサリルマブ対個でMCIDを達成するオッズが示された。アダリムマブはIL-6低値の患者よりも有意に高かった(データは示さず)。
【0338】
結論
HRQoLエンドポイントとのIL-6バイオマーカー協会の評価から、IL-6高値のRA患者は、IL-6中値または低値の患者と比較してベースライン時のHRQoLが悪いと報告することが示されている。
【0339】
サリルマブ対アダリムマブの治療効果の差は、PCS、PFドメインおよび朝のこわばり持続期間について、IL-6高値患者の方がIL-6低値患者よりも統計的に高かった。
【0340】
PCSについては、三分位間のMCIDに対する奏効率の分析により結果を確認した。
【0341】
基準による設立
本出願を通して引用されたすべての参考文献、特許、係属中の特許出願および公開された特許の内容は、参照によりここに明示的に組み込まれる。
【0342】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識し、通常の実験を行うだけでそれを確認できるものである。このような均等物は添付の特許請求項の範囲に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
【配列表】
0007504871000001.app