IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7504879高バイオベースポリカーボネートエステルおよびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】高バイオベースポリカーボネートエステルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/66 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
C08G63/66
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021521407
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 KR2019012505
(87)【国際公開番号】W WO2020085662
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129022
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オウ, クワン セイ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-504497(JP,A)
【文献】特表2018-505287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/66
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される繰り返し単位1;下記式2で表される繰り返し単位2および下記式3で表される繰り返し単位3を含有し、ASTM D6866に従ったバイオマス由来のバイオベース炭素含有量が80%以上であり、
30mm×30mm×3mm(幅×長さ×厚み)の大きさの試料を射出成形機を用いて成形し、携帯型の静電気計で測定した表面静電電圧が、0.6kV以上1.0kV未満である高バイオベースポリカーボネートエステル。
【化1】

【化2】

【化3】
【請求項2】
前記繰り返し単位1は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネートとの反応から得られ、
繰り返し単位2は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートとの反応により得られ、
繰り返し単位3は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとテレフタレートとの反応から得られる、
請求項1に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項3】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタレートが、砂糖、リモネン及びリグニンからなる群から選択される少なくとも1つに由来するバイオベースのモノマーである、請求項2に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項4】
100~260℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項5】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外の追加のジオール化合物を用いて得られる繰り返し単位をさらに含む、請求項2に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項6】
前記追加のジオール化合物が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、デカリンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ハイドロキノン、ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、5,5'-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1'-(ビスフェニル)-2-オ-ル]プロパン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピル-フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3'-スピロ-ビス(1,1-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オ-ル)、ジスピロ[5.1.5.1]テトラデカン-7,14-ジオール、5,5'-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール)、2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニト-ルおよびテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールからなる群から選択される少なくとも1種のジオール化合物である、請求項に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項7】
前記追加のジオール化合物が、砂糖、リモネンおよびリグニンからなる群から選択される少なくとも1つに由来するバイオベースのモノマーである、請求項に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項8】
前記カーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートおよびテレフタレート以外の追加のジフェニルエステル化合物を用いて得られる繰り返し単位をさらに含む、請求項2に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項9】
前記追加のジフェニルエステル化合物が、シュウ酸ジフェニル、マロン酸ジフェニル、コハク酸ジフェニル、グルタル酸ジフェニル、アジピン酸ジフェニル、ピメリン酸ジフェニル、スベリン酸ジフェニル、アゼライン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル、ウンデカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニル、トリデカン二酸ジフェニル、テトラデカン二酸ジフェニル、ペンタデカン二酸ジフェニル、ヘキサデカン二酸ジフェニル、1,2-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、イソフタル酸ジフェニル、4,4'-ジフェニル-ビフェニルジカルボキシレート、4,4'-ジフェニル-エチリデンビスベンゾート、4,4'-ジフェニル-オキシビスベンゾエート、2,4-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,5-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,6-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,7-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレートおよび2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項10】
前記追加のジフェニルエステル化合物が、砂糖、リモネン、およびリグニンからなる群から選択される少なくとも1つに由来するバイオベースのモノマーである、請求項に記載の高バイオベースポリカーボネートエステル。
【請求項11】
下記式4で表される化合物、下記式5で表される化合物および下記式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと溶融-重縮合することを含む、請求項1に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【化4】

【化5】

【化6】

(式中、Rは、それぞれ、炭素数1~18のアルキル基または炭素数6~18のアリール基であり、
前記アリール基は、炭素数1~18個のアルキル基、炭素数4~20個のシクロアルキル基、炭素数6~18個のアリール基、炭素数1~18個のアルコキシ基、炭素数4~20個のシクロアルコキシ基、炭素数6~18個のアリールオキシ基、炭素数1~18個のアルキルスルホニル基、炭素数4~20個のシクロアルキルスルホニル基、炭素数6~18個のアリールスルホニル基、およびエステル置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい。)
【請求項12】
前記式5の化合物および前記式6の化合物が、砂糖、リモネンおよびリグニンからなる群から選択される少なくとも1つに由来するバイオベースのモノマーである、請求項11に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【請求項13】
前記式5で表される化合物は、
下記式5'で表される化合物とハロゲン含有化合物とを反応させて、末端にハロゲン官能基を有する中間体反応物に変換した後、
フェノールまたはフェノール置換基との求核反応、
あるいは下記式5'で表される化合物とフェノールまたはフェノール置換基とのエステル化またはエステル交換反応により得られる、請求項11に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【化7】

(式中、Rは、それぞれ独立に水素又はメチルである。)
【請求項14】
末端にハロゲン官能基を含有する前記中間体反応物は、下記式5"で表される化合物である、請求項13に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【化8】

(式中、Rは、それぞれ独立に、F、Cl、Brである。)
【請求項15】
前記式6で表される化合物は、
下記式6'で表される化合物とハロゲン含有化合物とを反応させて、末端にハロゲン官能基を有する中間体反応物に変換した後、
フェノールまたはフェノール置換基との求核反応、
あるいは下記式6'で表される化合物とフェノールまたはフェノール置換基とのエステル化またはエステル交換反応により得られる、請求項11に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【化9】

(式中、Rは、それぞれ独立に水素又はメチルである。)
【請求項16】
末端にハロゲン官能基を含有する前記中間体反応物は、下記式6"で表される化合物である、請求項15に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【化10】

(式中、Rは、それぞれ独立に、F、Cl、Brである。)
【請求項17】
前記ハロゲン含有化合物は、ホスゲン、トリホスゲン、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リン、五臭化リンおよびフッ化シアヌルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項13または15に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【請求項18】
前記中間体反応物への変換は、大気圧下で、-30~150℃の温度で、5分~48時間行われる、請求項13または15に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【請求項19】
前記エステル化またはエステル交換反応は、20~300℃で行われる、請求項13または15に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【請求項20】
前記式4で表される化合物は、ジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートである、請求項11に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【請求項21】
前記溶融-重縮合反応は、(1)50~700Torrの減圧下、130~250℃の温度で、0.1~10時間の第1の反応;および(2)0.1~20Torrの減圧下、200~350℃の温度で、0.1~10時間の第2の反応を含む、請求項11に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法。
【請求項22】
請求項1に記載の高バイオベースポリカーボネートエステルから製造された成形品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、バイオマス由来のモノマーを共重合させた高バイオベースポリカーボネートエステルおよびその製造方法に関する。
【0002】
[背景技術]
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、および/またはテレフタレートとの溶融重縮合によって調製されるポリカーボネートエステルは、バイオマス由来のバイオベースモノマーである1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを含有するバイオプラスチックである。バイオベースポリカーボネートエステルは,代表的な透明汎用樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)の高透明性と,ビスフェノールA(BPA)ポリカーボネートの高耐熱性を有する。
【0003】
各種バイオマス由来のモノマーを用いてバイオプラスチックを調製する。ASTM D6866によるバイオプラスチックのバイオベースの炭素含有量は、全炭素含有量に対するバイオマス由来のモノマー中の放射性炭素(14C)含有量の比率によって決定される。
【0004】
一方、バイオベースポリカーボネートエステルの場合、バイオベースモノマーである1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと石油系モノマーであるカーボネートとを溶融重縮合して得られるホモポリカーボネートのバイオベース炭素含有率は約87%であり、バイオベースモノマーである1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと石油系モノマーである1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートまたはテレフタレートとを溶融重縮合して得られるホモポリエステルのバイオベース炭素含有率は約43%である。その結果、バイオベースの炭素含有量は、最終的には、石油ベースのモノマーとしてのカーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、およびテレフタレートの共重合比に依存して、約43%~87%の範囲にある。
【0005】
したがって、代表的な石油系原料であるパラキシレンに由来するモノマーである1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタレートをバイオマスから調製すれば、バイオベース炭素含有量が約87%以上の高バイオベースポリカーボネートエステルを調製することができる。このような高バイオベースポリカーボネートエステルの製造は、大量のバイオマスを連続的に利用し、二酸化炭素排出量を削減し、地球温暖化を防止するという利点がある。
【0006】
[発明の詳細な説明]
[技術的な問題]
そこで、本発明は、バイオマス由来のモノマーである1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタレートを共重合させた高バイオベースポリカーボネートエステルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
[問題の解決]
本発明は、上記目的を達成するために、下記式1で表される繰り返し単位1;下記式2で表される繰り返し単位2および下記式3で表される繰り返し単位3からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、ASTM D6866に従ったバイオマス由来のバイオベース炭素含有量が80%以上である高バイオベースポリカーボネートエステルを提供する。
【化1】

【化2】

【化3】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、下記式4で表される化合物、下記式5で表される化合物および下記式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと溶融重縮合することを含む、高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法を提供する。
【化4】

【化5】

【化6】

(式中、Rは、それぞれ、炭素数1~18のアルキル基または炭素数6~18のアリール基であり、前記アリール基は、炭素数1~18個のアルキル基、炭素数4~20個のシクロアルキル基、炭素数6~18個のアリール基、炭素数1~18個のアルコキシ基、炭素数4~20個のシクロアルコキシ基、炭素数6~18個のアリールオキシ基、炭素数1~18個のアルキルスルホニル基、炭素数4~20個のシクロアルキルスルホニル基、炭素数6~18個のアリールスルホニル基、およびエステル置換基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい。)
【0009】
さらに別の目的を達成するために、本発明は、高バイオベースポリカーボネートエステルから調製される成形品を提供する。
【0010】
[本発明の有利な効果]
本発明の高バイオベースポリカーボネートエステルは、バイオマス由来の生体系モノマーである1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレートおよび/またはテレフタレートを共重合させることにより、バイオベース炭素含有量を80%以上とすることができ、人に優しく環境に優しいだけでなく、生分解性の点でも有利である。
【0011】
[発明を実施するための最良の態様]
本発明は、以下の開示に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、種々の態様に変更することができる。
【0012】
実施形態の説明全体を通して、用語「含む」は、他に示されない限り、他の要素が含まれ得ることを意味する。加えて、本明細書で使用される成分、反応条件等の量を表す全ての数字は、特に明記しない限り、用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。
【0013】
[高バイオマスポリカーボネートエステル]
本発明は、下記式1で表される繰り返し単位1;下記式2で表される繰り返し単位2および下記式3で表される繰り返し単位3からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、ASTM D6866に従ったバイオマス由来のバイオベース炭素含有量が80%以上である高バイオベースポリカーボネートエステルを提供する。
【化7】

【化8】

【化9】
【0014】
繰り返し単位1(カーボネート結合)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとカーボネート(例えば、式4の化合物)との反応から得られ、繰り返し単位2(エステル結合)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、式5の化合物)との反応から得られ、繰り返し単位3(エステル結合)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとテレフタレート(例えば、式6の化合物)との反応から得られる。ポリマー鎖がカーボネート結合とエステル結合を共に含む場合、種々の用途に適した特性を達成することができる。
【0015】
上記式1~式3で表される繰り返し単位は、所望の物性に応じて種々の組み合わせで選択することができる。
【0016】
具体的には、上記式1で表される繰り返し単位1を含むことができる。
高バイオベースポリカーボネートエステルは、上記式2で表される繰り返し単位2を含むことができる。
高バイオベースポリカーボネートエステルは、上記式3で表される繰り返し単位3を含むことができる。
高バイオベースポリカーボネートエステルは、上記式1で表される繰り返し単位1と、上記式2で表される繰り返し単位2とを含むことができる。
高バイオベースポリカーボネートエステルは、上記式1で表される繰り返し単位1と、上記式3で表される繰り返し単位3とを含むことができる。
高バイオベースポリカーボネートエステルは、上記式2で表される繰り返し単位2と、上記式3で表される繰り返し単位3とを含むことができる。
高バイオベースポリカーボネートエステルは、上記式1で表される繰り返し単位1、上記式2で表される繰り返し単位2、および上記式3で表される繰り返し単位3を含んでいてもよい。
【0017】
1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、式5の化合物)およびテレフタレート(例えば、式6の化合物)は、以下の方法によって得ることができる。ここで、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート及びテレフタレートは、砂糖、リモネン及びリグニンからなる群から選択される少なくとも1種に由来するバイオベースモノマーであってもよい。
【0018】
式5で表される化合物は、下記式5'で表される化合物から得ることができ、式6で表される化合物は、下記式6'で表される化合物から得ることができる。
【化10】

【化11】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素又はメチルである。)
【0019】
式5'及び式6'で表される化合物は、砂糖、リモネン、リグニン等のバイオマスを原料として、以下の方法により得ることができる。
【0020】
一旦、砂糖、リモネンおよびリグニンのようなバイオマスから種々の中間物質を介してバイオベースのテレフタル酸(TPA)が調製されると、バイオベースのTPAおよびエタノールをエステル化反応に供してバイオベースのジメチルテレフタレート(DMT)を調製し、バイオベースのDMTを環飽和水素化反応に供してバイオベースの1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(DMCD)を調製し、そしてバイオベースのDMCDを加水分解反応に供してバイオベースの1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)を調製することができる。一方、バイオベースのTPAを環飽和水素化反応にかけて、直接、バイオベースのCHDAを調製することができる(下記反応式1参照)。
【化12】
【0021】
すなわち、式5で表される化合物および式6で表されるの化合物は、砂糖、リモネン、およびリグニンからなる群から選択される少なくとも1つに由来するバイオベースのモノマーであり得る。
【0022】
繰り返し単位2におけるバイオベースの1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート部分のシス/トランス比は、1/99~99/1%、20/80~80/20%、または30/70~70/30%であり得る。
【0023】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド、またはイソイジドであり得る。具体的には、イソソルビドであってもよい。
【0024】
繰り返し単位1~3のモル分率がそれぞれx、y、zのとき、xは0より大きく1までの実数、yおよびzは0~1の実数、x+y、x+z、x+y+zは1である。または、yは0より大きく1までの実数、xおよびzは0~1の実数、x+y、y+z、またはx+y+zは1である。または、zは0より大きく1までの実数、xおよびyは0~1の実数、x+z、y+z、またはx+y+zは1である。
【0025】
または、xおよびyは0より大きく1までの実数、zは0~1の実数、x+y+zは1である。または、yおよびzは0より大きく1までの実数、xは0~1の実数、x+y+zは1である。または、xおよびzは0より大きく1までの実数、yは0から1までの実数、x+y+zは1である。
【0026】
または、x、y、zは0より大きく1までの実数で、x+y+zは1である。
【0027】
また、上記高バイオベースポリカーボネートエステルのガラス転移温度(Tg)は、100~260℃、110~250℃、120~240℃であってもよい。
【0028】
高バイオベースポリカーボネートエステルは、0.3~2.3dl/g、0.3~2.0dl/g、0.3~1.5dl/g、0.3~1.0dl/g、0.6~2.0dl/g、0.6~1.5dl/g、または0.6~1.0dl/gの固有粘度(IV)を有し得る。
【0029】
また、ASTM D1003による光透過率が90%以上、91%以上、92%以上、90~97%、90~95%、90~93%であってもよい。
【0030】
KSM ISO15184によれば、高バイオベースポリカーボネートエステルの鉛筆硬度は、B以上、F以上、H以上、F~5H、F~4H、F~3H又はH~3Hであってよい。
【0031】
高バイオベースポリカーボネートエステルは、ASTM D6866によるバイオマス由来のバイオベース炭素含有量が80%以上、85%以上、90%以上、85~99%、85~97%、85~95%、または88~95%であってもよい。
【0032】
具体的には、高バイオベースポリカーボネートエステルのバイオマス由来の有機炭素含有率(%Cbio)は、下記数式1により定義することができる。
[数式1]
%Cbio=(ポリカーボネートエステルの炭素原子中の14C同位体に対する12C同位体の含有率)/(バイオマス標準物質の炭素原子中の14C同位体に対する12C同位体の含有率)×100
【0033】
数式1に従ってバイオマスから誘導された有機炭素含有量を測定する方法は、ASTMASTM D6866(放射性炭素分析を用いてバイオベースの含有量を決定するための標準試験法)に記載された方法に適合してもよい。バイオマス由来の有機炭素含有量の技術的意味と測定方法は以下の通りである。
【0034】
一般に、化石原料由来の樹脂等の有機物とは異なり、バイオマス由来の樹脂等の有機物は同位体14Cを含むことが知られている。具体的には、動植物などの生体から採取された有機物は、いずれも炭素原子として3種類の同位元素12C(約98.892重量%)、13C(約1.108重量%)、14C(約1.2×10-10重量%)を含み、各同位元素の比率は一定に保たれていることが知られている。これは大気中の各同位体の割合と同じである。生物は外部環境と炭素原子を代謝し交換し続けるので、この同位体比は一定である。
【0035】
一方、14Cは放射性同位体であり、その含有量は、以下の数式2に従って、時間(t)とともに減少し得る。
[数式2]
n=n・exp(-at)
【0036】
数式2において、n14C同位体の最初の含有量を表し、nはt時間後に残存する14C同位体の含有量を表し、aは半減期に関連する減衰定数(または放射性定数)を表す。
【0037】
数式2において、14C同位体の半減期は約5,730年である。半減期を考慮すると、外部環境と恒常的に相互作用する生物から採取された有機物、すなわちバイオマス由来の樹脂などの有機物は、14C同位体の含有量がわずかに減少しても、14C/12C=約1.2×10-12のように、他の同位体と実質的に一定の含有率を維持することができる。
【0038】
一方、石炭や石油などの化石燃料は、50,000年以上にわたって炭素原子を外部環境と交換することができなかった。したがって、化石原料由来の樹脂等の有機物は、前記数式2から推定されるように、14C同位体の初期含有量の0.2%未満しか含有していないので、実質的に14C同位体を含有していないことが分かる。
【0039】
上記の点は、上記の数式1で考慮される。分母はバイオマス由来の同位体14C/12Cの含有率、例えば1.2×10-12程度であり、分子は測定対象のレジンに含まれる14C/12Cの含有率である。
【0040】
上記のように、バイオマス由来の炭素原子が約1.2×10-12の同位体含有率を維持するのに対して、化石燃料由来の炭素原子は実質的に0の同位体含有率を有するという事実に基づいて、高バイオベースポリカーボネートエステル中の全炭素原子のうちバイオマス由来の有機炭素含有率を上記の数式1により計算することができる。ここで、各炭素同位体の含有量は、ASTM D6866規格に記載された2つの方法のうちの1つに従って決定することができる。
【0041】
具体的には、炭素の分裂時に発生する放射線を測定する方法である放射性炭素分析や、試料中の放射性炭素の濃度を直接測定する加速型質量分析計を用いた方法を用いて、上記数式1のバイオマス由来の有機炭素含有量を算出してもよい。
【0042】
結論として,バイオマス由来の炭素を多く含む高バイオベースポリカーボネートエステルは,人に優しく環境に優しいだけでなく,生分解性の観点からも有利である。
【0043】
[高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法]
本発明は、下記式4で表される化合物、下記式5で表される化合物および下記式6で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと溶融重縮合させることを含む、高バイオベースポリカーボネートエステルの製造方法を提供する。
【化13】

【化14】

【化15】
【0044】
上記式中、Rは上記と同様である。
【0045】
上記式4で表される化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート(DPC)、置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。具体的には、上記式4で表される化合物は、ジフェニルカーボネートまたは置換ジフェニルカーボネートであってもよい。置換ジフェニルカーボネートは、ジトリルカーボネートまたはビス(メチルサリチル)カーボネートであってよい。
【0046】
溶融重縮合反応は減圧下で行われるので、上記式4で表される化合物としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(メチルサリチレート)カーボネート等を用いることができる。
【0047】
上記式5で表される化合物は、下記式5'で表される化合物を、ハロゲン含有化合物(またはハロゲン化化合物)と反応させて、末端にハロゲン官能基を有する中間体反応物(例えば、下記式5"で表される化合物)に変換した後、フェノールまたはフェノール基と求核反応させるか、または下記式5'で表される化合物とフェノールまたはフェノール基とのエステル化またはエステル交換反応により得ることができる(下記反応式2参照)。
【化16】
【0048】
上記反応式において、Rは、それぞれ独立に水素又はメチルであり、Rは、それぞれ独立にF、Cl又はBrである。
【0049】
上記式5'で表される化合物をハロゲン化化合物と反応させて、末端にハロゲン官能基を有する中間体反応物(例えば、上記式5"で表される化合物)を調製してもよい。上記式5"で表される化合物は、RがClである1,4-シクロヘキサンジカルボニルクロリド(CHDC)であってもよい。
【0050】
ハロゲン化化合物は、ホスゲン、トリホスゲン、塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化燐、五塩化燐、五臭化燐およびフッ化シアヌルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。具体的には、ハロゲン化化合物は、ホスゲン、塩化チオニル、および塩化オキサリルからなる群から選択される少なくとも1つの塩素化剤であってもよく、これから生成物による反応を容易に除去することができる。また、商業的観点からはホスゲンが好ましい。
【0051】
ハロゲン化化合物の添加量は、上記一般式5'で表される化合物の初期使用量の1~10倍、1.5~7.5倍、2~5倍であってもよい。
【0052】
中間体反応物への変換における反応条件および時間は、上記式5'で表される化合物およびハロゲン化化合物の種類によって異なる。具体的には、中間反応物への変換は、大気圧下、-30~150℃の温度で5分~48時間行うことができる。より具体的には、中間反応物への変換は、大気圧下、温度20~100℃または40~80℃で10分~24時間行うことができる。
【0053】
中間反応物への変換において、有機溶媒を用いて、上記式5'で表される化合物を溶解または分散させることができる。
【0054】
この場合、使用可能な有機溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、またはこれらの混合物である。
【0055】
中間体反応物の転化率及び反応収率を高めるために、中間体反応物への転化に用いる上記式5'で表される化合物及びハロゲン化化合物の種類に応じて触媒を用いることができる。
【0056】
触媒の種類は、この目的を満たすものであれば特に限定されない。例えば、有機触媒、無機触媒等を用いることができる。
【0057】
有機触媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラブチルウレア、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0058】
無機触媒としては、塩化アルミニウム(AlCl)、塩化鉄(FeCl)、塩化ビスマス(BiCl)、塩化ガリウム(GaCl)、五塩化アンチモン(SbCl)、三フッ化ホウ素(BF)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(Bi(OTf))、四塩化チタン(TiCl)、四塩化ジルコニウム(ZrCl)、四臭化チタン(TiBr)、四臭化ジルコニウム(ZrBr)、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0059】
具体的には、有機触媒としてジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素を用い、無機触媒として塩化アルミニウム、四塩化チタンを用いることができる。具体的には、有機触媒としてジメチルホルムアミド、無機触媒として塩化アルミニウムを用いることが商業的に有利である。
【0060】
中間反応物への転化に用いる触媒の量は、特に限定されないが、上記式5'で表される化合物およびハロゲン化化合物の種類によって異なる。具体的には、上記一般式5'で表される化合物の全モルに対して、0~10モル%以上、0~5モル%以上、0~3モル%以上の範囲で中間反応物への転化に用いる触媒の量を設定することができる。
【0061】
中間反応物への転化に使用する触媒の量が上記範囲内であれば、反応速度が低下し、暴走反応や発熱反応が起こる問題を防止することができる。
【0062】
フェノール基としては、下記式7で表される化合物が挙げられる。
【化17】
【0063】
上記式中、Rは、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~18のアリール基であり、炭素数1~18のアルキル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数4~20のシクロアルコキシ基、炭素数6~18のアリールオキシ基、炭素数1~18のアルキルスルホニル基、炭素数4~20のシクロアルキルスルホニル基、炭素数6~18のアリールスルホニル基、及び置換エステル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。この場合のエステル置換基としては、炭素数1~18のアルキルエステル、炭素数4~20のシクロアルキルエステル、炭素数6~18のアリールエステルが挙げられる。
【0064】
上記求核反応における上記式5"で表される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのモル比は、1:1~1:5又は1:2~1:3であってもよい。
【0065】
上記範囲内であれば、上記式5で表される化合物を高収率で得ることができる。この範囲を外れると、例えば、フェノールやフェノール置換基の量が不足すると、製造歩留まりが低下するおそれがある。
【0066】
また、上記式5で表される化合物は、上記式5'で表される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのエステル化又はエステル交換反応により調製することができる。
【0067】
エステル化またはエステル交換反応は、20~300℃で行うことができる。具体的には、50~250℃または100~200℃の大気圧下、または0.1~10kgf/cmまたは1~5kgf/cmの圧力下、50~300℃でエステル化またはエステル交換反応を行うことができる。
【0068】
エステル化またはエステル交換反応は、5分~48時間または10分~24時間行うことができる。
【0069】
エステル化またはエステル交換反応において、上記式5'で表される化合物とフェノールまたはフェノール置換基とのモル比は、1:2~1:40であってもよい。すなわち、上記式5'で表される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのモル比は、1:3~1:30又は1:4~1:20である。
【0070】
上記式5'で表される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのモル比が上記範囲内であれば、製造収率の低下を防止することができる。
【0071】
この場合、上記式5で表される化合物のシス/トランス比は、1/99~99/1%、10/90~90/10%、20/80~80/20%であってもよい。
【0072】
上記式6で表される化合物は、下記式6'で表される化合物をハロゲン化化合物と反応させ、末端にハロゲン官能基を有する中間体反応物(例えば、下記式6"で表される化合物)に変換した後、フェノールまたはフェノール基で求核反応するか、または下記式6'で表される化合物とフェノールまたはフェノール基とのエステル化またはエステル交換反応により得ることができる(下記反応式3参照)。
【化18】
【0073】
上記反応式において、Rは、それぞれ独立に水素又はメチルであり、Rは、それぞれ独立にF、Cl又はBrである。
【0074】
上記式6'で表される化合物をハロゲン化化合物と反応させて、末端にハロゲン官能基を有する中間体反応物(例えば、上記式6"で表される化合物)を調製してもよい。上記式6"で表される化合物は、RがClである塩化テレフタロイル(TPC)であってもよい。
【0075】
また、ハロゲン化化合物の具体的な種類および量は上記と同様である。
【0076】
また、上記式6'で表される化合物をハロゲン化化合物と反応させて中間体反応物を調製する工程、例えば、反応温度及び時間、使用する有機溶媒の種類、触媒の種類及び使用量は、上記式5"で表される化合物を調製する工程と同様である。
【0077】
上記求核反応における上記式6"で表される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのモル比は、1:1~1:5又は1:2~1:3であってもよい。
【0078】
上記範囲内であれば、上記式6で表される化合物を高収率で得ることができる。この範囲を外れると、例えば、フェノールやフェノール置換基の量が不足すると、製造歩留まりが低下するおそれがある。
【0079】
また、上記式6で表される化合物は、上記式6'で表される化合物とフェノール又はフェノール置換基とのエステル化又はエステル交換反応により調製することができる。エステル化またはエステル交換反応の具体的な条件(反応温度、圧力、使用量等)は上記と同様である。
【0080】
上記式4~6で表される化合物を、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと溶融重縮合反応させ、上記式1~3で表される繰り返し単位1~3を形成する。
【0081】
溶融-重縮合反応は、粘度の高い溶融反応物から副生成物を速やかに除去し、重合反応を促進するために、段階的に昇温、減圧して行うことができる。
【0082】
具体的には、溶融-重縮合反応は、(1)50~700Torrの減圧下、130~250℃、140~240℃、または150~230℃の温度で0.1~10時間または0.5~5時間の第1の反応;および(2)0.1~20Torrの減圧下、200~350℃、220~280℃、または230~270℃の温度で0.1~10時間または0.5~5時間の第2の反応を含むことができる。
【0083】
具体的には、(1)130~200℃まで昇温した後、200~700Torrまで減圧し、200~250℃まで0.1~10℃/分の割合で昇温した後、50~180Torrまで減圧する条件での第1の反応、(2)1~20Torrまで減圧し、200~350℃まで昇温し、0.1~5℃/分の割合で減圧し、0.1~1Torrまで減圧する条件での第2の反応である。
【0084】
一方、フェノールは、溶融-重縮合反応の際の副生成物として生成することがある。反応平衡をポリカーボネートエステルの生成にシフトさせるために、副生成物として生成したフェノールを反応系から除去することが好ましい。溶融-重縮合反応における昇温速度が上記範囲内であれば、生成物による反応であるフェノールが反応原料と共に蒸発又は昇華する問題を防止することができる。具体的には、高バイオベースポリカーボネートエステルは、バッチまたは連続プロセスで調製することができる。
【0085】
特に、透明性の高い高バイオベースポリカーボネートエステルを製造するためには、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを用いた溶融重縮合反応を比較的低温で行うことが好ましい。また、得られたポリマーの機械的性質を確保するために、溶融-重縮合反応を高重合度で行うことが好ましい。このためには、溶融重縮合反応に高粘度の重合反応器を用いることが有効である。溶融-重縮合反応の目標粘度は、10,000~1,000,000ポアズ、20,000~500,000ポアズ、または30,000~200,000ポアズであり得る。
【0086】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソマンニド、イソソルビド、またはイソイジドであり得る。具体的には、イソソルビドであってもよい。
【0087】
一方、このようにして製造された高バイオベースポリカーボネートエステルの耐熱性、透明性、機械的特性を向上させるためには、溶融重縮合に用いられる1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの高純度を維持することが非常に重要である。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、粉末、フレークまたは水溶液の形態で使用することができる。しかし、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを長時間空気に曝すと、容易に酸化されて変色し、最終ポリマーの色および分子量が十分でないという問題が生ジオール。したがって、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの空気への暴露を最小限にする必要がある。1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを空気に曝露した後、脱酸素剤などの脱酸素剤と共に貯蔵することが好ましい。また、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの純度を維持するためには、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを製造する多段階工程で生成する不純物を除去して精製することが非常に重要である。特に、真空蒸留による1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの精製においては、最初の分離で除去できる微量の酸性液体成分および残渣分離で除去できるアルカリ金属成分を除去することが重要である。酸性液体成分およびアルカリ金属成分は、それぞれ、10ppm以下、5ppm以下、または3ppm以下のレベルに維持することができる。
【0088】
追加のジオール化合物
また、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物を添加して得られる繰り返し単位を含むこともできる。
【0089】
具体的には、溶融重縮合反応において、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール以外のジオール化合物を併用してもよい。具体的には、バイオマスや石油系原料から得ることができるが、その種類は限定されない。例えば、追加のジオール化合物は、砂糖、リモネン、およびリグニンからなる群から選択される少なくとも1種に由来するバイオベースのモノマーであってもよい。
【0090】
追加のジオール化合物は、所望の物理的特性に応じて、第一、第二、または第三ジオール、またはそれらの種々の組合せとして使用することができる。
【0091】
追加のジオール化合物は、例えば、バイオマス原料から調製できる、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール、デカエチレングリコール、ウンデカエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、デカリンジメタノール、トリシクロテトラデカンジメタノール、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオザスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジオール、トリシクロテトラデカンジオール、ノルボルネンジオール、アダマンタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ハイドロキノン、ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニル-エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサン、5,5'-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1'-(ビスフェニル)-2-オ-ル]プロパン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピル-フェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジクロロエチレン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-スピロ-ビス(1,1-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オ-ル)、ジスピロ[5.1.5.1]テトラデカン-7,14-ジオ-ル、5,5’-(1-メチルエチリデン)ビス(2-フランメタノール)、2,4:3,5-ジ-o-メチレン-D-マンニト-ル、およびテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0092】
特に、追加のジオール化合物は、1,14-テトラデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、またはテトラヒドロフラン-2,5-ジメタノールであり得る。
【0093】
CHDM(以下の式8)もバイオマスから誘導することができる。具体的には、上記式5'で表される化合物のエステル還元水素化反応により得ることができる。
【化19】
【0094】
また、高バイオベースポリカーボネートエステルにジオール化合物を添加する場合には、ジオール化合物の総量の100%モルに対して、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールを1%モル以上使用することができる。
【0095】
具体的には、追加のジオール化合物のモル比をpとしたとき、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールのモル比を1-pとし、特に石油系ジオール化合物を追加のジオール化合物として用いる場合には、バイオベースモノマーとして、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、式5で表される化合物、及び式6で表される化合物から得られる最終ポリマーのバイオベース炭素量が、80%以上、85%以上、90%以上、85%以上99%以下、85%以上97%以下、85%以上95%以下、又は88%以上95%以下の範囲となるような量で用いることができる。
【0096】
追加のジフェニルエステル化合物
高バイオベースのポリカーボネートエステルは、所望の物理的特性に応じて、カーボネート、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、およびテレフタレート以外の追加のジフェニルエステル化合物を使用することによって得られる繰り返し単位をさらに含むことができる。
【0097】
追加のジフェニルエステル化合物は、所望の物理的性質に応じて、第一級、第二級、または第三級ジカルボキシレート、ジカルボン酸、またはそれらの種々の組合せをフェノールまたはフェノール置換基と反応させることによって調製することができる。
【0098】
例えば、追加のジフェニルエステル化合物は、バイオマス又は石油系原料から得ることができるが、その種類は限定されない。例えば、追加のジフェニルエステル化合物は、砂糖、リモネン、およびリグニンからなる群から選択される少なくとも1種に由来するバイオベースのモノマーであってもよい。
【0099】
特に、追加のジフェニルエステル化合物は、シュウ酸ジフェニル、マロン酸ジフェニル、コハク酸ジフェニル、グルタル酸ジフェニル、アジピン酸ジフェニル、ピメリン酸ジフェニル、スベリン酸ジフェニル、アゼライン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル、ウンデカン二酸ジフェニル、ドデカン二酸ジフェニル、トリデカン二酸ジフェニル、テトラデカン二酸ジフェニル、ペンタデカン二酸ジフェニル、ヘキサデカン二酸ジフェニル、1,2-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、1,3-ジフェニル-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、イソフタル酸ジフェニル、4,4'-ジフェニル-ビフェニルジカルボキシレート、4,4'-ジフェニル-エチリデンビスベンゾエート、4,4'-ジフェニル-オキシビスベンゾエート、2,4-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,5-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、2,6-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、
2,7-ジフェニル-ナフタレンジカルボキシレート、および2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0100】
具体的には、セバシン酸ジフェニル、ジフェニルデカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボキシレート、ジフェニルテトラヒドロフラン-2,5-ジカルボキシレート、または2,5-ジフェニル-フランジカルボキシレートを用いて得られる繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0101】
高バイオベースポリカーボネートエステルが、追加のジフェニルエステル化合物を含む場合には、追加のジフェニルエステル化合物は、カーボネートおよび/またはジフェニルエステル化合物の総量の100モル%に対して1モル%以上の量で使用することができる。
【0102】
具体的には、使用する付加ジフェニルエステル化合物のモル比をqとしたとき、使用するカーボネートおよび/またはジフェニルエステルのモル比を1-qとし、特に、付加ジフェニルエステル化合物として石油系ジフェニルエステル化合物を使用する場合には、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、式5で表される化合物および式6で表される化合物から得られる最終ポリマーのバイオベースモノマーとしてのバイオベース炭素量が80%以上、85%以上、90%以上、85%以上99%以下、85%以上97%以下、85%以上95%以下、88%以上95%以下となるような量で使用することができる。
【0103】
溶融重縮合反応用触媒および添加
上記の溶融-重縮合反応において、反応性を高めるために触媒を用いてもよい。触媒は、反応工程に随時添加してもよいが、好ましくは反応前に添加する。
【0104】
触媒としては、ポリカーボネートの溶融重縮合反応に通常用いられるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属触媒を用いることができる。また、触媒としては、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、アミド、フェノレート等を用いることができる。
【0105】
アルカリ金属触媒としては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸セシウム(CsCO)、酢酸リチウム(LiOAc)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、酢酸カリウム(KOAc)、酢酸セシウム(CsOAc)等が挙げられる。
【0106】
アルカリ土類金属触媒としては、例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酢酸カルシウム(Ca(OAc))、酢酸バリウム(Ba(OAc))、酢酸マグネシウム(Mg(OAc))、酢酸ストロンチウム(Sr(OAc))等が挙げられる。
【0107】
アルカリおよび/またはアルカリ土類金属の酸化物、水素化物、アミド、フェノレートとしては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化ジブチルスズ(CSnO、三酸化アンチモン(Sb)等が挙げられる。
【0108】
アルカリおよび/またはアルカリ土類金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化ジブチル錫((CSnO)、三酸化アンチモン(Sb)等が挙げられる。
【0109】
触媒は、全ジオール化合物1モルに対して、触媒の金属当量が0~5mmol以上、0~3mmol以上、0~1mmol以上となるような量で使用することができる。触媒量が上記範囲内であると、副反応が抑制され、透明性等の物性に優れたポリマーが得られる。この範囲を超えると、目的とする重合度に到達せず、得られる重合体の透明性を低下させる副反応が生じるという問題がある。
【0110】
一方、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属触媒は、塩基性アンモニウムまたはアミン、塩基性リンまたは塩基性ホウ素化合物などの塩基性触媒と組み合わせて使用することができる。塩基性触媒は、単独で用いてもよいし、併用してもよく、その量は特に限定されない。
【0111】
また、溶融重縮合反応時に必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光吸収剤、発色剤、潤滑剤、着色剤、導電剤、核形成剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤をさらに含有してもよい。
【0112】
例えば、酸化防止剤及び熱安定化剤としては、ヒンダードフェノール、ハイドロキノン、ホスファイト、またはこれらの置換化合物等が挙げられる。
【0113】
光吸収剤としては、レゾルシノール、サリチル酸塩等が挙げられる。
【0114】
また、発色剤は、亜リン酸エステル、ハイドロホスファイト等であってもよい。潤滑剤は、モンタン酸、ステアリルアルコールなどであってもよい。
【0115】
着色剤としては、染料や顔料を用いることができ、導電剤や核形成剤としては、カーボンブラックを用いることができる。
【0116】
ここで、上記添加剤の種類及び添加量は、製造された高バイオベースポリカーボネートエステルの特性、特に透明性に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。
【0117】
本発明は、上記高バイオベースポリカーボネートエステルから製造された成形体を提供する。成形品は、射出成形、押出成形、ブロー成形、プロファイル押出成形等の各種成形方法により、高バイオベースポリカーボネートエステルを成形し、これを用いた熱成形等の後加工により製造することができる。成形品の具体的な形状や大きさは、用途に応じて様々に決定することができ、特に限定されない。
【0118】
以上のように、本発明の高バイオベースポリカーボネートエステルは、バイオマス由来のバイオベース系モノマーである1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、上記式5で表される化合物)および/またはテレフタレート(例えば、上記式6で表される化合物)を共重合させることにより、バイオベース炭素含有量を80%以上とすることができ、人や環境に優しいだけでなく、生分解性の観点からも有利である。
【0119】
[本発明を実施するための実施形態]
以下、以下の実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0120】
[調製例]バイオベースモノマーの合成
式5'または6'で表される化合物の調製
調製例1:バイオベースTPAの合成
エチレンジアミン(525mmol)31.6g、無水FeCl(145mmol)3.34g、ナトリウム(0.964mmol)0.16gを混合し、窒素中50℃で加熱した。101gのバイオベースのα-リモネン(742mmol;シグマ-アルドリッチ)を混合物にゆっくり滴下し、次いでそれを100℃の温度に加熱し、8時間維持した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、水300gで希釈し、ジクロロメタン(DCM)400gで2回抽出した。抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発させ、粗製のパラ-シメン(収率99%)を得た。
【0121】
288gの65%HNO(2,968 mmol)を粗製パラ-シメンと400gの水との混合物に添加し、次いでこれを反応させた。反応混合物を加熱しながら1日間還流し、次いで室温まで冷却し、530gのDCMで抽出した。次いで、抽出した有機層を水で2回洗浄した後、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発させ、パラ-シメンオキサイドを得た。
【0122】
83gのNaOH(1,484mmol)を、パラ-シメンオキサイドと1,000gの水との混合物に添加し、次いでこれを撹拌しながら溶解した。その後、過マンガン酸カリウム(1,484mmol)235gを徐々に加え、16時間加熱還流してスラリー状の混合物を得た。その後、スラリー混合物をセライトで濾過し、次いで水で洗浄した。次いで、濃HSO(98%)を水層が強酸性になるまで添加し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過し、水およびDCMで洗浄した。得られた白色固体を80℃、50mmHgで12時間乾燥し、バイオベースTPA(収率93%)を得た。
【0123】
調製例2:バイオベースDMTの合成
調製例1で得られたバイオベースTPA(632mmol)105gとメタノール(6,320mmol)1,650gの混合物に、濃HSO(31.6mmol)3.1gを加え、1日間加熱還流した。 その後、溶液を室温まで冷却し、溶媒を除去した後に得られた固体をDCM530gに溶解した。溶液を水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発させて、粗固体生成物を得た。固体生成物を冷メタノールで洗浄し、90℃で12時間乾燥して、バイオベースDMT(収率95%)を得た。バイオベースDMTのバイオベース炭素含有量は83%であった。
【0124】
調製例3:バイオベースDMCDの合成
アルミナにルテニウム(Ru)を1重量%担持したタブレット型触媒を固定床連続反応器に充填した。調製例2で得られたバイオベースDMTを、水素ガスと共に80リットル/hの速度で反応器の上部領域に7cm/sの速度で供給し、反応圧力40kgf/cmで環水素化反応を行った。反応温度は,反応器上部で140~155℃,中間部で135~145℃,下部で125~135℃に維持され,反応器内の最大温度差は20℃以内であった。5~10時間の反応後、反応器の下部から粗液状生成物を得た。液状生成物を真空蒸留にかけて、バイオベースDMCDを得た。バイオベースDMCDのバイオベース炭素含有量は83%であった。
【0125】
調製例4:バイオベースCHDAの合成
4枚羽根の撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えた2リットルの丸底フラスコに、バイオベースDMCD(製造例3)200g(1mol)、水600g、p-トルエンスルホン酸1.27g(0.2mol)を仕込み、3時間加熱還流してスラリー状混合物を得た。次いで、スラリー状混合物をセライトで濾過し、次いで水で洗浄した。このようにして得られた白色固体生成物を真空下、80℃で12時間乾燥して、バイオベースCHDA(収率84%)を得た。バイオベースCHDAのバイオベース炭素含有量は85%であった。
【0126】
式5で表される化合物の調製
調製例5:バイオベースCHDAを用いたバイオベースDPCDの合成
4枚羽根の攪拌機、ホスゲンおよび窒素ガスの入口、排出ガスの出口および温度計を備えた1リットルの丸底フラスコに、100g(0.6mol)のバイオベースCHDA(調製例4)および200gのトルエンを充填した。混合物を室温で撹拌した。1.28molのホスゲンガスを大気圧下で10時間フラスコに供給して反応を行った。その後、窒素ガスを2時間フラスコに供給し、副生するホスゲン及び塩酸ガスを除去し、透明で均一な反応液を得た。
【0127】
次いで、最初に供給したトルエン50重量%を減圧下で反応液から留去した。その後、フェノール121g(1.28mol)をトルエン121gに溶解したフェノール溶液を滴下漏斗を介して反応液に2時間添加した。混合物を1時間撹拌した。反応終了後、減圧下で反応液からトルエンを留去し、粗固体を得た。固体生成物を再結晶により精製し、真空下、70℃で18時間乾燥し、バイオベースDPCD(収率85%)を得た。バイオベースDPCDのバイオベース炭素含有量は98%であった。
【0128】
調製例6:バイオベースCHDAを用いたバイオベースDPCDの合成
有機触媒としてジメチルホルムアミド1.27g(0.017mol)を用いた以外は、調製例5と同様にして、バイオベースDPCD(収率84%)を調製した。バイオベースDPCDのバイオベース炭素含有量は98%であった。
【0129】
調製例7:バイオベースDMCDを用いたバイオベースDPCDの合成
4枚羽根の攪拌機、ホスゲンおよび窒素ガスの導入口、排ガスの排出口、および温度計を備えた1リットルの丸底フラスコに、100g(0.51mol)のバイオベースDMCD(調製例3)、2.0g(0.015mol)の塩化アルミニウム、および200gのトルエンを充填した。混合物を室温で撹拌した。1.10molのホスゲンガスを大気圧下で10時間フラスコに供給して反応を行った。その後、窒素ガスを2時間フラスコに供給し、副生するホスゲン及び塩酸ガスを除去し、透明で均一な反応液を得た。
【0130】
次いで、最初に供給したトルエン50重量%を減圧下で反応液から留去した。その後、フェノール100g(1.06mol)をトルエン100gに溶解したフェノール溶液を滴下漏斗を介して反応液に2時間添加した。混合物を1時間撹拌した。反応終了後、減圧下で反応液からトルエンを留去し、粗固体生成物を得た。固体生成物を再結晶により精製し、真空下、70℃で18時間乾燥し、バイオベースDPCD(収率87%)を得た。バイオベースDPCDのバイオベース炭素含有量は98%であった。
【0131】
調製例8:バイオベースCHDAを用いたバイオベースDPCDの合成
4枚羽根の攪拌機、冷却用凝縮器及び温度計を備えた1リットルのオートクレーブに、100g(0.6mol)のバイオベースCHDA(調製例4)、565g(6mol)のフェノール、及び1.83g(0.01mol)の酢酸亜鉛(Zn(OAc))を充填した。その後、100℃に加熱撹拌した後、1kgf/cmに加圧昇温し、200℃で10時間反応を行った。この際、生成物による反応で生成した水がオートクレーブから排出された。反応終了後、過剰に添加したフェノールを減圧留去し、最終的に未反応物を含む固体を得た。
【0132】
次に、上記オートクレーブに未反応物を含む固体生成物136g、フェノール282g、トルエン400g、酢酸亜鉛0.92gを仕込み、室温で撹拌した。その後、混合物を100℃に加熱し、反応を大気圧で10時間行った。この際、生成物による反応で生成した水がオートクレーブから排出された。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、フィルターを用いた固液分離により分離した。次いで、分離したトルエン溶液からロータリーエバポレーターを用いてトルエンを除去し、得られた粗固体生成物を再結晶により精製した。その後、真空下70℃で18時間乾燥し、バイオベースDPCD(収率42%)を得た。
【0133】
調製例9:バイオベースDMCDを用いたバイオベースDPCDの合成
4枚翼攪拌機、冷却凝縮器、温度計を備えた1リットルのオートクレーブに、バイオベースDMCD(調製例3)100g(0.51mol)、フェノール480g(5.10mol)、p-トルエンスルホン酸1.72g(0.01mol)を仕込んだ以外は、調製例8と同様にして、未反応物を含む固体を得た。
【0134】
次に、上記オートクレーブに未反応物を含む固体生成物140g、フェノール240g、トルエン400g、p-トルエンスルホン酸0.86gを仕込み、室温で撹拌した。 その後、混合物を100℃に加熱し、反応を大気圧で10時間行った。この際、反応副生成物であるメタノールがオートクレーブから排出された。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、フィルターを用いた固液分離により分離した。次いで、分離したトルエン溶液からロータリーエバポレーターを用いてトルエンを除去し、得られた粗固体生成物を再結晶により精製した。その後、真空下70℃で18時間乾燥し、バイオベースDPCD(収率65%)を得た。
【0135】
式6で表される化合物の調製
調製例10:バイオベースTPAを用いたバイオベースDPTの合成
4枚羽根の攪拌機、ホスゲンおよび窒素ガスの導入口、排出ガスの排出口、および温度計を備えた1リットルの丸底フラスコに、100g(0.60mol)のバイオベースTPA(調製例1)および200gのトルエンを充填した。混合物を室温で撹拌した。1.28molのホスゲンガスを大気圧下で10時間フラスコに供給して反応を行った。その後、窒素ガスを2時間フラスコに供給し、副生するホスゲン及び塩酸ガスを除去し、透明で均一な反応液を得た。
【0136】
次いで、最初に供給したトルエン50重量%を減圧下で反応液から留去した。その後、フェノール121g(1.28mol)をトルエン121gに溶解したフェノール溶液を滴下漏斗を介して反応液に2時間添加した。混合物を1時間撹拌した。反応終了後、減圧下で反応液からトルエンを留去し、粗固体生成物を得た。固体生成物を再結晶により精製し、真空下、80℃で12時間乾燥して、バイオベースDPT(収率:85%)を得た。バイオベースDPTのバイオベース炭素含有量は89%であった。
【0137】
調製例11:バイオベースTPAを用いたバイオベースDPTの合成
有機触媒としてジメチルホルムアミド1.27g(0.017mol)を用いた以外は、調製例10と同様にして、バイオベースDPT(収率84%)を調製した。バイオベースDPTのバイオベース炭素含有量は88%であった。
【0138】
調製例12:バイオベースDMTを用いたバイオベースDPTの合成
4枚羽根の攪拌機、ホスゲンおよび窒素ガスの導入口、排ガスの排出口、および温度計を備えた1リットルの丸底フラスコに、100g(0.51mol)のバイオベースDMT(調製例2)、2.0g(0.015mol)の塩化アルミニウム、および200gのトルエンを充填した。混合物を室温で撹拌した。1.10molのホスゲンガスを大気圧下で10時間フラスコに供給して反応を行った。その後、窒素ガスを2時間フラスコに供給し、副生するホスゲン及び塩酸ガスを除去し、透明で均一な反応液を得た。
【0139】
次いで、最初に供給したトルエン50重量%を減圧下で反応液から留去した。その後、フェノール100g(1.06mol)をトルエン100gに溶解したフェノール溶液を滴下漏斗を介して反応液に2時間添加した。混合物を1時間撹拌した。反応終了後、減圧下で反応液からトルエンを留去し、粗固体生成物を得た。固体生成物を再結晶により精製し、真空下、80℃で12時間乾燥して、バイオベースDPT(収率:87%)を得た。バイオベースDPTのバイオベース炭素含有量は90%であった。
【0140】
調製例13:バイオベースTPAを用いたバイオベースDPTの合成
4枚羽根の攪拌機、冷却用凝縮器及び温度計を備えた1リットルのオートクレーブに、触媒として100g(0.6mol)のバイオベースTPA(調製例1)、565g(6mol)のフェノール、及び1.83g(0.01mol)の酢酸亜鉛(Zn(OAc)を充填した。その後、100℃に加熱撹拌した後、1kgf/cmに加圧昇温し、200℃で10時間反応を行った。この際、生成物による反応で生成した水がオートクレーブから排出された。反応終了後、過剰に添加したフェノールを減圧留去し、最終的に未反応物を含む固体を得た。
【0141】
次に、上記オートクレーブに未反応物を含む固体生成物136g、フェノール282g、トルエン400g、酢酸亜鉛0.92gを仕込み、室温で撹拌した。その後、混合物を100℃に加熱し、反応を大気圧で10時間行った。この際、生成物による反応で生成した水がオートクレーブから排出された。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、フィルターを用いた固液分離により分離した。次いで、分離したトルエン溶液からロータリーエバポレーターを用いてトルエンを除去し、得られた粗固体生成物を再結晶により精製した。その後、80℃で12時間真空乾燥し、バイオベースDPT(収率42%)を得た。
【0142】
調製例14:バイオベースDMTを用いたバイオベースDPTの合成
4枚翼型攪拌機、冷却凝縮器、温度計を備えた1リットルのオートクレーブに、バイオベースDMT(調製例2)100g(0.51mol)、フェノール480g(5.10mol)、p-トルエンスルホン酸1.72g(0.01mol)を仕込んだ以外は、調製例13と同様にして、未反応物を含む固体を得た。
【0143】
次に、上記オートクレーブに未反応物を含む固体生成物140g、フェノール240g、トルエン400g、p-トルエンスルホン酸0.86gを仕込み、室温で撹拌した。その後、混合物を100℃に加熱し、反応を大気圧で10時間行った。この際、反応副生成物であるメタノールがオートクレーブから排出された。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、フィルターを用いた固液分離により分離した。次いで、分離したトルエン溶液からロータリーエバポレーターを用いてトルエンを除去し、得られた粗固体生成物を再結晶により精製した。その後、80℃で12時間真空乾燥し、バイオベースDPT(収率65%)を得た。
【0144】
追加のジオール化合物の調製
調製例15:バイオベースCHDMの合成
銅クロム(CuCr)の錠剤触媒を固定床連続反応器に充填した。調製例3で得られたバイオベースDMCDを、水素ガス10cm/sで反応容器上部に120リットル/hで供給し、反応圧力220kgf/cmでエステル還元水素化反応を行った。反応温度は、反応器上部で230~240℃、中間部で135~145℃、下部で225~235℃に維持され、反応器内の最大温度差は20℃以内であった。5~10時間の反応後、反応器の下部から粗液状生成物を得た。液体生成物を真空蒸留にかけて、バイオベースCHDMを得た。バイオベースCHDMのバイオベース炭素含有量は83%であった。
【0145】
[実施例]高バイオベースポリカーボネートエステルの調製
例1
重縮合用の17リットルのベンチスケール反応器に、イソソルビド(ISB;Roquette Freres)2,002g(13.70mol)、バイオベースDPCD(調製例5)444g(1.37mol)、DPC(Changfeng)2,641g(12.33mol)、およびアルミン酸ナトリウム(NaAlO)の1%水溶液2gを充填した。混合物を150℃に加熱した。温度が150℃に達すると、圧力を400Torrに下げ、次いで温度を1時間かけて190℃に上げた。その際、重合反応の副生成物であるフェノールを反応器から排出した。温度が190℃に達したとき、圧力を100Torrまで低下させ、20分間維持し、次いで温度を20分間かけて230℃まで上昇させた。温度が230℃に達したら、圧力を10Torrに下げ、次いで温度を10分間かけて250℃に上げた。250℃で1Torr以下に減圧し、目標撹拌トルクに達するまで反応を継続した。目標撹拌トルクに達したら反応を終了した。重合物を加圧してストランドとして放出し,水浴中で急冷した後,ペレットに切断した。得られたポリカーボネートエステルのガラス転移温度(Tg)は160℃、固有粘度(IV)は0.56dl/g、バイオベース炭素量は88%であった。
【0146】
例2
ISB2,002g(13.70mol)、バイオベースDPCD(調製例5)889g(2.74mol)、DPC2,348g(10.96mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートエステルを調製した。
【0147】
例3
ISB2,002g(13.70mol)、バイオベースDPCD(調製例5)4,444g(13.70mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートエステルを調製した。
【0148】
例4
ISB2,002g(13.70mol)、DPC2,641g(12.33mol)、バイオベースDPT(調製例10)436g(1.37mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートエステルを調製した。
【0149】
例5
ISB2,002g(13.70mol)、DPC2,348g(10.96mol)、バイオベースDPCD(調製例5)444g(1.37mol)、バイオベースDPT(調製例10)436g(1.37mol)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリカーボネートエステルを調製した。
【0150】
例6
ISB2,002g(13.70mol)、バイオベースCHDM(調製例15)198g(1.37mol)、DPC2,641g(12.33mol)、バイオベースDPCD(調製例5)444g(1.37mol)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートエステルを調製した。
【0151】
[比較例]バイオベースポリカーボネートエステルの調製
比較例1
重縮合用の17リットルのベンチスケール反応器に、2,002g(13.70mol)のISB、2,641g(12.33 mol)のDPC、444g(1.37mol)のDPCD(SKケミカル)、および2gのNaAlOの1%水溶液を充填した。混合物を150℃に加熱した。温度が150℃に達したら、圧力を400Torrに下げ、次いで温度を1時間かけて190℃に上げた。温度上昇中,フェノールは重合反応の副生成物として放出され始めた。温度が190℃に達したとき、圧力を100Torrまで下げ、20分間維持し、次いで温度を20分間かけて230℃まで上昇させた。温度が230℃に達したら、圧力を10Torrに下げ、次いで温度を10分間かけて250℃に上げた。250℃で1Torr以下に減圧し、目標撹拌トルクに達するまで反応を継続した。目標撹拌トルクに達したら反応を終了した。加圧排出した重合物を水浴中で急冷し,ペレットに切断した。このようにして調製したポリカーボネートエステルは、160℃のTg、0.55dl/gのIV、および77%のバイオベース炭素含有量を有した。
【0152】
比較例2
ISB1,802g(12.33mol)、CHDM(SKケミカル)198g(1.37mol)、DPCD444g(1.37mol)、DPC2,641g(12.33mol)を用いた以外は、比較例1と同様にしてポリカーボネートエステル樹脂を調製した。
【0153】
[評価例]
実施例1~6の高バイオベースポリカーボネートエステル及び比較例1及び2のバイオベースポリカーボネートエステルの物性を以下の方法により評価した。測定された物理的特性を以下の表1に示す。
【0154】
(1)ガラス転移温度(Tg)
ASTM D3418に従って、示差走査熱量計(Q20、TA Instruments)を用いてガラス転移温度を測定した。
【0155】
(2)固有粘度(IV)
試料をo-クロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解した。試料の固有粘度はウベローデ粘度計を用いて35℃の恒温槽中で測定した。
【0156】
(3)光透過率
光透過率(%)は、ASTM D1003に従って分光光度計(CM-3600A、コニカミノルタ)を用いて測定した。
【0157】
(4)鉛筆硬度
KS M ISO15184に準拠して作製した試料について、鉛筆硬度試験機(VF2377-123、TQC)を用いて鉛筆硬度を測定した。
【0158】
(5)静電気
30mm×30mm×3mm(幅×長×厚み)の大きさの試料を射出成形機(12M、BOY)を用いて成形し、携帯型の静電気計で表面の静電気を測定した。
【0159】
(6)バイオベース炭素含有量
バイオベース炭素含有量(%)は、ASTM D6866-16に従って加速器質量分析法(Beta Analytic Co.)を用いて測定した。
【表1】
【0160】
上記表1に示すように、本発明の製造方法に従って製造されたバイオベースDPCD(式5)、DPT(式6)及びCHDM(式8)を用いて共重合された実施例1~6の高バイオベースポリカーボネートエステルは、従来の石油ベースのDPCD、DPT、CHDM及びDPCを用いて共重合されたバイオベースポリカーボネートエステルと比較して、高いバイオベース炭素含有量を有していた。したがって、環境に優しい材料の分野でより好適に使用することができる。
【0161】
特に、バイオベースモノマーであるDPCDおよび/またはDPTの繰り返し単位の含有量が増加すると、石油系モノマーであるDPCの繰り返し単位の含有量が減少し、バイオベース炭素含有量が増加した。
【0162】
また、バイオベース炭素含有量が多いほど、射出成形品に発生する静電電圧が低下する効果が確認された。これにより、射出成形時に静電気が発生しにくいため、空気中のゴミや異物の付着による不良率を向上させることができる。
【0163】
また、実施例1~6の光透過率はいずれも91%以上であり、鉛筆硬度はH以上であり、BPA系ポリカーボネート製品の光透過率90%、鉛筆硬度Bよりも優れていた。
【0164】
一方、ISBを除く石油系モノマーを用いて調製した比較例1及び2のバイオベースポリカーボネートエステルは、DPCを除くバイオベースモノマーを用いて調製した実施例1~6と同等の分子量、ガラス転移温度、光透過率及び鉛筆硬度を有していた。しかし,生物由来の炭素含有量が比較的低く,環境親和性の点で不利であった。
【0165】
したがって、各繰り返し単位から得られるバイオベース炭素含有量を制御するために、バイオベースモノマーの含有量を調整することができ、それによって製造された高バイオベースポリカーボネートエステルは、従来のバイオベースポリカーボネートエステルの利点を維持しながら、種々の環境に優しい用途に有利に使用することができる。