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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】磁化構造の消磁
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20240617BHJP
   H01F 6/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01F13/00 600
H01F6/00 ZAA
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021535953
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 US2019064489
(87)【国際公開番号】W WO2020142157
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】16/238,368
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キュービアス,ビクター エム.
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】畑中 博幸
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-167307(JP,A)
【文献】特開2015-53483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 13/00
H04N 9/29
G04D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化構造を消磁するためのシステムであって、前記システムが、
所定の時間量にわたって上位レベルから下位レベルに減衰する差動交流(AC)信号を供給する第1の回路と、
前記第1の回路に結合された第1の電気コイルであって、前記第1の電気コイルが、前記磁化構造を取り囲み、前記第1の電気コイルが、前記差動AC信号に応答して前記磁化構造上に減衰磁場を誘導して、前記磁化構造を消磁構造に変換する、第1の電気コイルと、
前記磁化構造の内部部分に位置付けられた第2の電気コイルであって、前記所定の時間量にわたってほぼ一定である直流(DC)信号は、前記消磁構造内にオフセット磁場を誘導するように前記第2の電気コイルに供給される、第2の電気コイルと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記第1の電気コイルおよび前記磁化構造をカプセル封入するシールドガウスチャンバであって、前記シールドガウスチャンバは、浮遊磁場が前記磁化構造に侵入するのを防止する、シールドガウスチャンバ
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シールドガウスチャンバが、
前記第1の電気コイルおよび前記磁化構造をカプセル封入する内側シールドガウスチャンバと、
前記内側シールドガウスチャンバをカプセル封入する中間シールドガウスチャンバと、
前記中間シールドガウスチャンバをカプセル封入する外側シールドガウスチャンバと、をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記磁化構造が、半球形の端部を有する円筒管を備え、前記システムが、
前記所定の時間量にわたってほぼ一定である直流(DC)信号を供給して、前記消磁構造内にオフセット磁場を誘導する第2の回路
をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の回路が、前記DC信号に応答して前記磁化構造上にほぼ一定の磁場を誘導して、前記消磁構造内に前記オフセット磁場を誘導する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記消磁構造が、10ナノテスラ未満の磁束密度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の回路が、
シングルエンドAC信号を生成する波形発生器と、
前記シングルエンドAC信号を低電力差動AC信号に変換し、前記低電力差動AC信号を増幅して前記コイルに供給される差動AC信号を形成する増幅器と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記所定の時間量が45秒以上である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記差動AC信号の減衰率が線形である、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記磁化構造が、超伝導回路を収容するためのシールドガウスチャンバである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記差動AC信号が、40乃至100ヘルツの範囲から選択されるほぼ一定の周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
磁化構造を消磁するための方法であって、前記方法が、
第1の回路で、所定の時間量にわたって上位レベルから下位レベルに減衰する差動交流(AC)信号を生成することと、
前記第1の回路に結合され、所与の磁化構造を取り囲む第1の電気コイルによって、前記差動AC信号に応答して前記磁化構造上に減衰磁場を誘導して、前記磁化構造を消磁構造に変換することと、
前記磁化構造の内部部分に位置付けられた第2の電気コイルによって、前記第2の電気コイルがほぼ一定の直流(DC)信号を受信することに応答して前記消磁構造上にオフセット磁場を誘導することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記差動AC信号の減衰率が線形である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2の回路で、前記所定の時間量にわたってほぼ一定のままであるDC信号を生成すること
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年1月2日に提出された米国特許出願第16/238368号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、磁化に関する。より具体的には、本開示は、磁化構造を消磁するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気ヒステリシスは、鉄などの強磁性体に外部磁場が印加され、原子双極子が磁場に合わせて整列すると発生する。磁場が取り除かれても、整列の一部は保持され、それにより材料は磁化されることになる。一度磁化されると、その磁石は永久に磁化されたままとなる。
【0004】
より具体的には、残留磁化、残留磁気、および/または残留磁場とも呼ばれる残留分極は、外部磁場が取り除かれた後に強磁性体(鉄など)に残る磁化である。残留分極はまた、その磁化の度合いを指す。口語的には、磁石が「磁化」されると、磁石は残留分極を有する。磁性体の残留分極は、磁気記憶デバイスに磁気メモリを提供し、古地磁気学における過去の地磁気に関する情報源として使用される。
【0005】
消磁は、残留磁場を減少または除去するプロセスである。消磁は、もともと船の磁気特性図を減らすために適用された。消磁はまた、ブラウン管モニターの磁場を減らすため、および磁気記憶装置に保持されているデータを破壊するためにも使用される。
【発明の概要】
【0006】
一例は、磁化構造を消磁するシステムに関する。本システムは、所定の時間量にわたって上位レベルから下位レベルに減衰する差動交流(AC)信号を供給する所与の回路を含むことができる。システムはまた、所与の回路に結合された所与の電気コイルを含むことができる。電気コイルは、磁化構造を取り囲む。電気コイルは、差動AC信号に応答して磁化構造上に減衰磁場を誘導して、磁化構造を消磁構造に変換することができる。
【0007】
別の例は、磁化構造を消磁するシステムに関する。本システムは、所定の時間量にわたって上位レベルから下位レベルに減衰するAC波形を提供するAC波形発生器を含むことができる。システムはまた、AC波形を差動AC信号に変換し、差動AC信号を増幅する増幅器を含むことができる。システムは、所与の回路に結合された所与の電気コイルをさらに含むことができる。所与の電気コイルは、磁化構造を取り囲む。加えて、システムは、所定の時間量にわたってほぼ一定のままであるDC信号を供給する直流(DC)波形発生器を含むことができる。システムは、磁化構造のキャビティ内に位置付けられた別の電気コイルをさらに含むことができる。システムは、所与の電気コイル、他の電気コイル、および磁化構造をカプセル封入するシールドガウスチャンバをなおさらに含み、シールドガウスチャンバは、磁場が磁化構造に侵入するのを防止する。所与の電気コイルは、増幅された差動AC信号に応答して磁化構造上に減衰磁場を誘導することができ、他の電気コイルは、磁化構造上にほぼ一定の磁場を誘導して、DCオフセット磁場で磁化構造を消磁構造に変換することができる。
【0008】
さらに別の例は、磁化構造を消磁する方法に関する。本方法は、所与の回路において、所定の時間量にわたって上位レベルから下位レベルに減衰する差動交流(AC)信号を生成することを含むことができる。本方法はまた、所与の回路に結合され、所与の磁化構造を取り囲む所与の電気コイルによって、差動AC信号に応答して磁化構造上に減衰磁場を誘導して、磁化構造を消磁状態に変換することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】磁化構造を消磁するためのシステムの例を図示する。
図2】磁化構造を消磁するためのシステムの別の例を図示する。
図3】時間の関数としてプロットされた電流、磁場強度、および結果として生じる磁束密度のグラフの例を図示する。
図4】印加電流の関数として残留磁場をプロットしたチャートを図示する。
図5】磁化構造を消磁するためのシステムのさらに別の例を図示する。
図6】時間の関数として電気コイルに印加される電圧信号をプロットしたグラフを図示する。
図7】磁化構造を消磁する例示的な方法のフローチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、磁化構造を消磁するためのシステムおよび方法に関する。磁化構造は、電気コイルが磁化構造を取り囲むように、第1の回路に結合された第1の電気コイルの内部に位置する(位置付ける)ことができる。さらに、いくつかの例では、シールドガウスチャンバが電気コイルと磁化構造とをカプセル封入して、浮遊磁場が磁化構造に侵入するのを防ぐことができる。いくつかの例において、第1の回路は、所定の時間量にわたって上位レベルから下位レベルに減衰するシングルエンドAC波形を提供する交流(AC)波形発生器を有する。第1の回路はまた、AC波形を差動AC信号に変換し、差動AC信号を増幅する増幅器を有することもできる。
【0011】
(増幅された)差動AC信号に応答して、第1の電気コイルは、磁化構造上に減衰磁場を誘導する。減衰磁場は磁化構造の残留磁場を削減し、それによって磁化構造を消磁構造に変換する。
【0012】
いくつかの例では、システムは、別の所定の時間量にわたってほぼ一定のままであるDC信号を磁化構造のキャビティ内に位置付けられた第2の電気コイルに供給する直流(DC)波形発生器を有する第2の回路を含むことができる。DC信号に応答して、第2の電気コイルは、地磁気の反対(またはほぼ反対)の残留磁場(オフセット磁場)を誘導するために消磁構造に印加されるほぼ静磁場を誘導する。
【0013】
本明細書に記載のシステムおよび方法を採用することにより、磁化構造を、比較的単純で安価なプロセスで消磁することができる。このようにして、磁化構造の残留磁場が別の回路(または他の構成要素)の動作に干渉する状況では、残留磁場を削減してそのような干渉を回避することができる。
【0014】
図1は、磁化構造52を消磁するためのシステム50のブロック図を図示する。本明細書で使用される「磁化構造」という用語は、磁場への以前の曝露による残留磁化を有する構造を指す。いくつかの例では、残留磁化は、約0.1テスラ(T)以上の磁束密度を有することができる。磁化構造52は、鉄、銅、ニッケル、コバルト、セラミック、プラスチック、鋼、および/またはそれらの任意の組み合わせなど、磁化可能なほぼすべての材料で形成することができる。より具体的には、いくつかの例では、磁化構造52は、セラミック、プラスチック、および/または鋼など、一般に磁化に抵抗するように選択された材料とすることができる。実際、いくつかの例では、磁化構造52は、超伝導体などの別のデバイスを収容し、他のデバイスを浮遊磁場からシールドすることができる磁気シールドとすることができる。
【0015】
磁化構造52は、電気コイル54によって取り囲むことができる。磁化構造52は、電気コイル54の内部部分内に位置することができる。電気コイル54は、ソレノイドなどの空芯インダクタ(例えば、中空インダクタ)として実装することができる。電気コイルの第1のノード56および第2のノード58は、回路60に結合することができる。回路60は、電気コイル54を励磁するために、電気コイル54の第1のノード56および第2のノード58に差動交流(AC)信号を供給することができる。
【0016】
回路60から供給されるAC差動信号は、ある期間にわたって上限閾値電圧から下限閾値電圧に減衰する減衰AC信号とすることができる。上限閾値電圧は、磁化構造52の材料および/または磁化構造52の初期磁束密度に基づいて変化し得る。第1のノード56および第2のノード58に印加されるAC信号は、磁化構造52の飽和点よりも大きい磁場を誘導するのに十分な大きさを有する。この飽和点は、幾何学的形状、サイズ、重量、またはそれらの何らかの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、磁化構造52の物理的特性に基づいて変化し得る。いくつかの例では、上限閾値電圧は、約50ボルト(V)~約70Vとすることができる。加えて、下限閾値電圧は、約0Vとすることができる。さらに、減衰の期間は、約45秒以上とすることができる。差動AC信号は、約40Hz~約100Hzの部分範囲を含む、DC(0ヘルツ)~約100ヘルツ(Hz)の範囲から選択されるほぼ一定の周波数を有することができる。提供された例示的な値は限定的なものではないことが理解される。すなわち、他の例では、磁化構造52を消磁するために、他の電圧レベル、電流、周波数、遅延などを有するAC信号を使用することができる。
【0017】
差動AC信号の減衰は、その期間にわたって比較的線形レートまたは指数レートで発生し得る。しかしながら、どちらの例においても、減衰は連続的である。つまり、減衰は、線形レートであれ指数レートであれ、期間中を通じてゼロ(0)またはほぼゼロ(0)の不連続性で発生する。
【0018】
減衰差動AC信号の印加は、電気コイルが磁化構造52上に対応する減衰磁場を誘導することを引き起こす。したがって、磁化構造52上に誘導された磁場は、その期間にわたって上位レベルの磁束密度から下位レベルの磁束密度に減衰する。上位レベルの磁束密度および下位レベルの磁束密度は、電気コイル54の物理的特性(例えば、巻数および/または巻数の周波数)に基づいて変化し得る。電気コイル54のコイルによって誘導された磁場が減衰するにつれて、磁化構造52の残留磁化の磁束密度も、その期間にわたって減衰する。つまり、磁化構造が消磁される。いくつかの例では、その期間後、磁化構造52の残留磁化は、9ナノテスラ(nT)未満など、約25nT以下であり得る。このように磁化構造52の残留磁場を削減することにより、磁化構造52は消磁構造52に変換される。
【0019】
システム50を採用することにより、磁化構造52は、比較的単純で安価なプロセスで消磁することができる。このようにして、磁化構造52の残留磁場が別の回路(または他の構成要素)の動作に干渉する状況では、残留磁場を削減してそのような干渉を回避することができる。さらに、システム50は、熱を加えることなく(例えば、アニーリングプロセスを通じて)、または他の複雑かつ/もしくは高価なプロセス無しで、磁化構造52を消磁することができる。
【0020】
図2は、磁化構造102を消磁するためのシステム100の別の例を図示する。磁化構造102は、図1の磁化構造52を実装するために使用することができる。磁化構造102は、残留磁場を運ぶことができる任意の材料で形成することができる。所与の例(以下、「所与の例」)において、磁化構造102は、超伝導体を収容することができるシールドガウスチャンバ(例えば、磁気シールド)である。しかしながら、他の例では、磁化構造102を他の目的に使用することができる。
【0021】
所与の例を続けると、磁化構造102は、中空の円筒形の管部分と半球形の端部とを含む。言い換えれば、磁化構造102は、丸いエンドキャップを備えた中空の細長い管で実装することができる。磁化構造102はまた、所与の例では、超伝導回路を断続的に収容し得るキャビティを含む。所与の例を続けると、磁化構造102は、超伝導回路の動作に繰り返しさらされることによって磁化されている場合がある。すなわち、磁化構造102は残留磁場を有する。このような超伝導回路の感度により、磁化構造102の残留磁場は、超伝導回路の適切な動作を妨げる可能性がある。したがって、磁化構造102の残留磁場を約100ナノテスラ(nT)未満の磁束密度まで削減することが望ましい場合がある。磁化構造102の残留磁場を削減するために、システム100は、本明細書で説明する様態で消磁プロセスを実行することができる。
【0022】
磁化構造102の外側は、第1の電気コイル104によって取り囲まれている。第1の電気コイル104は、図1の電気コイル54を実装するために使用することができる。加えて、第2の電気コイル106は、磁化構造102の(内部)キャビティ内に位置することができる。言い換えると、いくつかの例では、磁化構造102は第1の電気コイル104内に位置付けられ、第2の電気コイル106は磁化構造102のキャビティ内に位置付けられる。
【0023】
システム100は、第1の電気コイル104、第2の電気コイル106、および磁化構造102を収容するためのシールドガウスチャンバ110を含むことができる。シールドガウスチャンバ110は、消磁プロセス中に浮遊磁場が磁化構造102に侵入するのを防止する。
【0024】
シールドガウスチャンバ110は、シールド層を有することができる。図示の例では、そのようなシールド層が3つ(3)あるが、他の例では、シールド層の数はこれより多くても少なくてもよい。図示の例では、シールドガウスチャンバ110は、内側シールド層112、中間シールド層114、および外側シールド層116を含む。内側シールド層112は、第1の電気コイル104、第2の電気コイル106、および磁化構造102をカプセル封入するシールドガウスチャンバとすることができる。中間シールド層114は、内側シールド層112をカプセル封入するシールドガウスチャンバとすることができる。外側シールド層116は、中間シールド層114をカプセル封入するシールドガウスチャンバとすることができる。したがって、シールドガウスチャンバ110は、浮遊磁場からシールドする複数の層を提供することができる。
【0025】
システム100は、第1の電気コイル104の第1のノード122および第2のノード124に印加される差動AC信号を生成することができる第1の回路(「回路1」と表示)120を含む。差動AC信号は、第1の電気コイル104を励磁するのに十分な電力を有する。加えて、第1のノード122および第2のノード124に印加されるAC信号は、磁化構造102の飽和点よりも大きい磁場を誘導するのに十分な大きさを有する。この飽和点は、幾何学的形状、サイズ、重量、またはそれらの何らかの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、磁化構造102の物理的特性に基づいて変化し得る。第1の回路120は、減衰波形を有するシングルエンドAC信号を生成することができる関数発生器126を含む。シングルエンドAC信号は、約40Hz~約100Hzの部分範囲内など、DCから約100Hzの周波数で、ある期間(例えば、約45秒以上)にわたって、上限閾値(例えば、約50V~約90V)から下限閾値(例えば、約0V)まで、ほぼ連続的レート(例えば、線形レートまたは指数レート)で減衰する。したがって、シングルエンドAC信号は、不連続性が全くないか、ほとんどない状態で減衰する。関数発生器126は、シングルエンドAC信号をシングルエンドから差動増幅器128に供給することができ、それは、シングルエンドAC信号を低電力差動AC信号に変換し、低電力差動信号を増幅して、第1の電気コイル104を駆動する差動AC信号を生成することができる。提供された例示的な値は限定的なものではないことが理解される。すなわち、他の例では、磁化構造102を消磁するために、他の電圧レベル、電流、周波数、遅延などを有するAC信号を使用することができる。
【0026】
加えて、第2の電気コイル106は、ほぼ定電流源を供給するDC源132(例えば、DC電源)を含む第2の回路130(「回路2」と表示)から直流(DC)信号を受信する。第2の電気コイル106は、第1のノード134および第2のノード136においてDC源132に結合することができる。DC信号はほぼ一定であり、第2の電気コイル106を励磁するのに十分な電力を有する。いくつかの例では、DC信号は、約3ミリアンペア~約50ミリアンペアのほぼ一定の電流を有することができる。代替として、第2の回路130は、約5V~約20Vの範囲内のほぼ一定の電圧を印加することができるDC電圧源を含むことができる。
【0027】
いくつかの例では、第1の電気コイル104を通過する減衰差動AC信号の電流を測定するために、AC電流計140を第1の電気コイルの第1のノード122に結合することができる。同様に、第2の電気コイル106を通過するほぼ一定のDC信号の電流を測定するために、DC電流計142を第2の電気コイル106の第1のノード134に結合することができる。
【0028】
第1の回路120からの差動AC信号の印加は、第1の電気コイル104が差動AC信号とほぼ同じ速度で減衰する減衰磁場を誘導することを引き起こす。第1の電気コイル104によって誘導される減衰磁場は、磁化構造102の残留磁場を削減する。磁化構造102の残留磁場は、磁化構造102を消磁構造102に変換するために、約25nT以下、例えば、9nT未満のレベルに削減することができる。
【0029】
図3は、測定電流I(t)、測定磁場強度H(t)、および結果として生じる磁束密度B(t)の誇張されたグラフ200および220を各々時間の関数として図示する。説明を簡単にするために、グラフ200および220にプロットされた信号の周波数、振幅、および期間は誇張されている。
【0030】
グラフ200は、所与の期間にわたる時間の関数として、測定電流I(t)(ミリアンペア)および第1の電気コイル104によって誘導され、磁化構造102に印加され得る測定磁場強度H(t)(アンペア/メートル)をプロットする。グラフ200に図示するように、電流I(t)が減衰するにつれて、磁場強度H(t)もほぼ同じ速度で減衰する。加えて、グラフ220は、所与の期間における磁化構造102の結果として生じる(応答する)磁束密度B(t)をナノテスラ(nT)でプロットする。飽和点224において、磁束密度B(t)は、(誘導磁場の)磁場強度が線形に減衰するにつれて指数レートで減少する。したがって、グラフ200および224によって図示されるように、線形減衰磁場の誘導は、磁化構造102の結果として生じる磁束密度を減少させ、磁化構造102を消磁構造102に変換する。
【0031】
図2に戻って参照すると、磁化構造102を消磁構造102に変換すると、DC源132は、DC信号を第2の電気コイル130に印加することができ、これは次に、第2の電気コイル130に磁化構造のキャビティ内にほぼ一定の磁場(例えば、静磁場)を誘導させる。さらに、第2の電気コイル106によって誘導されるほぼ一定の磁場は、消磁構造120内に残留磁場を誘導し、この残留磁場はオフセット磁場と呼ぶことができる。オフセット磁場は、地磁気とほぼ反対の極性(方向)と、地磁気の強度にほぼ等しい強度(大きさ)とを有することができる。すなわち、消磁構造102のオフセット磁場は、地磁気を相殺する。
【0032】
図4は、図2のシステム100と同様のシステムを採用することによって、3つ(3)の異なる消磁構造の指数関数的に減衰するAC差動信号の電流振幅の関数として、消磁構造(例えば、図1の消磁構造102)内の測定残留磁場をプロットする例示的なグラフ300を図示する。破線のボックス302によって図示するように、3つの消磁構造の各々は、約12~約13mAの電流で10nT未満の残留磁場を有する。
【0033】
図2に戻って参照すると、システム100を採用することによって、磁化構造102は、比較的単純で安価なプロセスで消磁することができる。このようにして、磁化構造102の残留磁場が別の回路(または他の構成要素)の動作に干渉する状況では、残留磁場を削減してそのような干渉を回避することができる。さらに、システム100は、熱を加えることなく(例えば、アニーリングプロセスを通じて)、磁化構造102を消磁することができる。
【0034】
さらに、第2の電気コイル106によるほぼ静磁場の印加は、消磁構造102上にオフセット磁場(残留磁場)を誘導して地磁気を相殺することができる。オフセット磁場は、正味の磁場をほぼ0Tにさせ、その正味の磁場は、磁化されていない構造(例えば、新しく形成された構造)よりも低くなり得る。
【0035】
図2に関して説明したオフセット磁場を誘導するための他の構成があることが理解される。図5は、1つのそのような可能な代替構成を図示する。より具体的には、図5は、図2のシステム100と同様のシステム150を図示する。したがって、図2および図5において、同じ構造を示すために同じ参照番号が使用されている。
【0036】
システム150は、第1の回路120のシングルエンドから差動増幅器128と、第1の電気コイル104の第1のノード122および第2のノード124との間に結合された変圧器152を含む。加えて、DC阻止コンデンサ154が、第1のノード122と変圧器152との間に結合されている。さらに、DC源132が、第1の電気コイルの第1のノード122および第2のノード124に結合されている(そして、図2の第2の電気コイル106は省略されている)。この様態でシステム150を構成することによって、DCオフセットは、第1の回路120からの信号に加えられる。
【0037】
図6は、3VのDCオフセットを適用した場合とDCオフセットを適用しない場合の両方で、図5の第1の電気コイル104に印加されたAC信号を時間の関数としてプロットしたグラフ320を図示する。グラフ320によって図示されるように、DCオフセットはAC信号に直接影響を与える。
【0038】
図5に戻って参照すると、第1の電気コイル104へのDCオフセットの適用は、図2に関して説明したのとほぼ同じオフセット磁場をもたらす。さらに、DCオフセット信号の適用を通じてオフセット磁場を誘導するための多くの他の方法があり、図2および図5は、2つ(2)のそのような可能な構成を例示しているに過ぎないことが理解される。
【0039】
上記の構造的および機能的特徴を考慮して、例示的な方法は、図7を参照してよりよく認識されるであろう。説明を簡単にする目的で、図7の例示的な方法は、連続的に実行されるように示され、説明されているが、いくつかの動作は、他の例では、異なる順序で、複数回、および/または本明細書に示され、説明されているものと並行して起こり得るので、本例は、図示されている順序によって制限されないことを理解および認識されたい。さらに、方法を実施するために、説明されているすべての動作を実行する必要はない。
【0040】
図7は、磁化構造の残留磁場を削減するための例示的な方法400のフローチャートを図示する。方法400は、例えば、図2のシステム100によって実施することができる。410において、磁化構造(例えば、図2の磁化構造102)を、第1の電気コイル(例えば、図2の第1の電気コイル104)の内部に位置付けることができる。420において、第2の電気コイル(例えば、図2の第2の電気コイル106)を、磁化構造の内部に位置付けることができる。
【0041】
430において、第1の回路(例えば、図2の第1の回路120)は、減衰差動AC信号を生成することができる。440において、減衰差動AC信号に応答して、第1のコイルが磁化構造上に減衰磁場を誘導し、それは、磁化構造を消磁構造に変換する。
【0042】
450において、第2の回路(例えば、図2の第2の回路130)が、DC信号を生成する。460において、DC信号に応答して、第2の電気コイルが、消磁構造上にほぼ静磁場を誘導して、消磁構造内にオフセット残留磁場を誘導する。
【0043】
上記は例である。もちろん、構成要素または手法の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、多くのさらなる組み合わせおよび順列が可能であることを認識するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を含め、本出願の範囲内にあるそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することを意図している。本明細書で使用される際、「含む」という用語は、含むが、それに限定されないことを意味し、「含んでいる」という用語は、含んでいるが、それに限定されないことを意味する。「に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。さらに、本開示または特許請求の範囲で、「a」、「an」、「第1」、または「別の」要素、またはそれらと同等のものが挙げられる場合、それは、1つ以上のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必要とするものでも、排除するものでもない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7