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特許7504891操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー分析のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー分析のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240617BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240617BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240617BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240617BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240617BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240617BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240617BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240617BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240617BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240617BHJP
   C07K 16/42 20060101ALN20240617BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20240617BHJP
   C07K 14/82 20060101ALN20240617BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20240617BHJP
   C07K 1/13 20060101ALN20240617BHJP
   C07K 1/16 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
G01N27/62 D
C12N5/10 ZNA
C12N5/078
C12N5/0783
G01N33/68
G01N30/72 C
G01N30/88 E
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K16/42
C07K17/00
C07K14/82
C12P21/02 C
C07K1/13
C07K1/16
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2021538180
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019050681
(87)【国際公開番号】W WO2020056047
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】62/729,985
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】プレンティス ケネス マヨ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/027197(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0176088(US,A1)
【文献】特表2017-514517(JP,A)
【文献】特開2010-210641(JP,A)
【文献】特開2009-103718(JP,A)
【文献】特開2004-123749(JP,A)
【文献】特表2010-536355(JP,A)
【文献】OUEDRAOGO, Richard et al.,Global Analysis of Circulating Immune Cells by MatrixAssisted Laser Desorption Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry,PLoS ONE,2010年10月01日,Vol. 5, Issue 10 , e13691, 1-9,www.plosone.org
【文献】GAN, Jinrui et al.,Native Mass Spectrometry of Recombinant Proteins from Crude Cell,Analytical Chemistry,vol. 89, no. 8,,4398-4404,http://dx.doi.org/10.1021/acs.analchem.7b00398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60-G01N 27/70
G01N 30/00-G01N 30/96
G01N 33/48-G01N 33/98
C12N 5/00-C12N 5/28
C12N 15/00-C12N 15/90
C07K 14/00-C07K 17/14
C12P 21/00-C12P 21/08
C07K 1/00-C07K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マススペクトロメトリー(MS)プロファイルにより遺伝子操作された細胞組成物を特徴付けるための方法であって、該方法が、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、遺伝子操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、該遺伝子操作された細胞組成物が、組換え受容体を含む免疫細胞を含む、工程と、
(b)該マススペクトロメトリープロファイルを、参照細胞組成物の参照マススペクトロメトリープロファイルと比較して、該参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときのマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程と、
を含み、
前記試料は、工程(a)にあたり、前記遺伝子操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識することにより標識された細胞を生成し、該標識された細胞を溶解し、該1つまたは複数の表面タンパク質を単離して1つまたは複数の単離されたタンパク質を得る処理が行われている、方法。
【請求項2】
遺伝子操作された細胞組成物が、自己細胞療法に使用するためのものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子操作された細胞組成物が、
(i)対象から得られる試料から免疫細胞を選択または単離して、ソース組成物を生成する工程;
(ii)該ソース組成物を刺激試薬とともにインキュベートして、刺激された組成物を生成する工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、該刺激された組成物に導入して、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)該形質転換組成物を37℃で少なくとも24時間培養して、遺伝子操作された細胞組成物を生成する工程
を含むプロセスによって製造される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記対象から得られる試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
インキュベーションが、1つまたは複数のサイトカインの存在下で前記ソース組成物をインキュベートすることをさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
培養が1つまたは複数のサイトカインの存在下で行われる、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、遺伝子操作された細胞を事前に投与された対象から得られる試料である、請求項3記載の方法。
【請求項8】
対象から得られる試料が、操作された細胞組成物を該対象に投与してから、6~30日もしくは約6~30日後に得られる、請求項3記載の方法。
【請求項9】
遺伝子操作された細胞組成物が、組換え受容体と結合することができる標的抗原、または組換え受容体に特異的な抗イディオタイプ抗体と接触されている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
免疫細胞が、T細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる、請求項3記載の方法。
【請求項11】
操作された細胞組成物の表面タンパク質を評価する方法であって、
(a)組換え受容体を発現するかまたは含む細胞を含む操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の細胞上に存在する、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、それにより、標識された細胞組成物を生成する工程;
(b)該標識された細胞組成物の細胞を溶解し、それにより、溶解した細胞組成物を生成する工程;
(c)該溶解した細胞組成物から該1つまたは複数の表面タンパク質を単離して、1つまたは複数の単離されたタンパク質を得る工程;および
(d)該1つまたは複数の単離されたタンパク質をマススペクトロメトリー技術に供して、1つまたは複数のデータ成分を含むマススペクトロメトリープロファイルを得る工程
を含む、方法。
【請求項12】
(d)の前に、1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって、消化が実施される、任意で、該1つまたは複数のプロテアーゼが、トリプシンであるか、またはトリプシンを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の単離されたタンパク質が細胞表面膜タンパク質を含む、かつ/または細胞の溶解が、界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む、請求項11~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
界面活性剤が非イオン界面活性剤である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
界面活性剤が、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
界面活性剤が変性界面活性剤である、請求項14記載の方法。
【請求項18】
変性界面活性剤が、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
細胞の溶解ののち、溶解した細胞から界面活性剤を除去する工程をさらに含む、請求項14~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の表面タンパク質の標識が第一級アミンのビオチン標識を含む、請求項11~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の表面タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)、またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、請求項22~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)、および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、請求項22~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
マススペクトロメトリー技術が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む質量分析計で実行される、請求項22~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップ、またはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのデータ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、および翻訳後修飾から選択される、請求項1~10および22~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのデータ成分が抽出イオンクロマトグラム(XICまたはその一部分であり、該XICまたはその一部分が、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく、請求項30記載の方法。
【請求項32】
1つまたは複数のペプチド成分が、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、該1つまたは複数のペプチド成分がトリプシンによってタンパク質分解的に切断または消化される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
組換え受容体が、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれを含む、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
組換え受容体が、
疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原
に結合することができる、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
疾患、障害、または病気が、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
標的抗原が腫瘍抗原である、請求項34または35記載の方法。
【請求項37】
標的抗原が、
αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌精巣抗原、癌/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子
の中から選択される、請求項34~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
組換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、請求項1~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
試料が、
(1)細胞組成物中の細胞、(2)細胞組成物中のCD3+細胞;(3)細胞組成物中のCD4+T細胞;(4)細胞組成物中のCD8+T細胞;(5)細胞組成物中の組換え受容体+細胞;(6)細胞組成物中の組換え受容体+CD3+細胞、(7)細胞組成物中の組換え受容体+CD8+細胞、または(8)細胞組成物中の組換え受容体+CD4+細胞
を含み、任意で、該組換え受容体がCARである、請求項1~39のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月11日に出願された「Methods for Mass Spectrometry Analysis of Engineered Cell Compositions」と題する米国仮出願第62/729,985号からの優先権を主張する。この出願の内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は、2019年9月11日に作成された735042019040SeqList.txtと題するファイルとして提供され、そのサイズは43,886バイトである。配列表の電子形式の情報が全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
分野
操作された細胞組成物などの細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを生成する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様において、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析または技術に基づくデータを含む。そのような細胞組成物の1つまたは複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルに基づいて、組換え受容体を含む免疫細胞を含む遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを、参照マススペクトロメトリープロファイルとの比較によって同定し;遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価し;操作された細胞組成物の細胞表面タンパク質を評価し;遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価する方法もまた、本明細書に提供される。
【背景技術】
【0004】
背景
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法などの自己T細胞療法が、癌、たとえば再発性・難治性のB細胞新生物、たとえば急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病および非ホジキンリンパ腫をはじめとする疾患の対象を治療するための大きな希望を示した。そのような治療法は、罹患対象に利益を与える大きな可能性を有するが、自己T細胞療法は、一部には、薬物が、様々な遺伝的背景ならびに様々なバリエーションおよび程度の疾患を有する対象から得られた生きた細胞を含み、かつ、最終的な薬物に至るためには細胞が加工または遺伝子操作されなければならないという事実のせいで、概して代替療法よりも複雑である。そのような複雑さを考慮すると、細胞療法が異なる対象わたって一貫した質で製造されることを保証するために注意を払わなければならない。当技術分野において必要とされるものは、細胞療法を生成するために使用される細胞組成物および試薬を分析するためのさらなる方法である。
【発明の概要】
【0005】
概要
遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定する方法が本発明に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、該試験操作された細胞組成物が、組換え受容体を含有する免疫細胞を含有する、工程;試験マススペクトロメトリープロファイルを参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程;および参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、組換え受容体を含有する細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程を含む。
【0006】
遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定する方法もまた、本発明に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、該試験操作された細胞組成物が、組換え受容体をコードする核酸分子を含む免疫細胞を含む、工程;試験マススペクトロメトリープロファイルを参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程;および参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、試料に特有のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程を含む。
【0007】
遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定する方法もまた、本発明に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、該試験操作された細胞組成物が、組換え受容体を含む免疫細胞を含む、工程;および参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、試料に特有の組換え受容体を含む細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程を含む。
【0008】
いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであるか、または複数の参照組成物からのいくつかの試料の平均マススペクトルプロファイルである。
【0009】
いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは参照組成物からの試料に基づく。いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは参照組成物からの複数の試料に基づく。いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは複数の参照組成物からのいくつかの試料に基づく。
【0010】
いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物は、自己細胞療法に使用するための細胞組成物である。いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物は、対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で、生体試料が白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料または全血試料である、工程;ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;組換え受容体をコードする核酸を、刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程を含むプロセスによって製造される。
【0011】
いくつかの態様において、参照組成物または複数の参照組成物のそれぞれは、組換え受容体をコードする核酸分子を導入されていない。
【0012】
いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、参照細胞組成物は、試験細胞組成物がそれに由来するかまたはそこから得られた免疫細胞を含有するソース細胞組成物である。いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、試験操作された細胞組成物は、対象から得られた免疫細胞を含有し、該免疫細胞は、組換え受容体をコードする核酸分子を含有し;参照細胞組成物は、組換え受容体をコードする核酸を含有しない、対象から得られた免疫細胞を含有するインプット組成物である。
【0013】
いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、参照細胞組成物は、試験操作された細胞組成物を製造するための製造プロセスの段階の後、前または最中に得られた組成物である。
【0014】
いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、試験操作された細胞組成物はプロセスの1つの段階から製造され、参照組成物は、試験操作された細胞組成物が製造される段階の後、前または最中に得られる。
【0015】
いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物は、操作された細胞組成物を事前に投与された対象から得られる試料である。いくつかの態様において、対象から得られる試料は、任意でフローサイトメトリーまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による検出で、組換え受容体で操作された免疫細胞を含有する。いくつかの態様において、対象から得られる試料は血液試料または腫瘍試料である。
【0016】
いくつかの態様において、対象から得られる試料は、操作された細胞を対象に投与してから6~30日もしくは約6~30日後、14~29日もしくは約14~29日後または17~22日もしくは約17~22日後に得られる。いくつかの態様において、試料は、組換え受容体を発現するピーク細胞が対象の血液中で検出可能である時点もしくはほぼその時点またはその直後に対象から得られる。
【0017】
いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物は、組換え受容体依存性活性を生じさせるための作用物質と接触させられた細胞を含有し、任意で、作用物質は、組換え受容体と結合することができる標的抗原であるか、または抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体である。
【0018】
いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、複数の参照組成物からのいくつかの試料の平均マススペクトルプロファイルである。いくつかの態様において、複数の参照組成物のそれぞれは、組換え受容体を含有する細胞を含有する。いくつかの態様において、複数の参照組成物のそれぞれは、操作された細胞組成物と同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造されたものである。
【0019】
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価する方法が本明細書に提供され、本方法は、複数の参照操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料に基づいて、いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量を計算する工程を含み、複数の参照操作された細胞組成物のそれぞれは、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造された組換え受容体を含む。
【0020】
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価する方法が本明細書に提供され、本方法は、複数の参照操作された細胞組成物またはそのサブセットの試料の平均マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、複数の参照組成物のそれぞれが、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造された組換え受容体を含有する、工程;および平均マススペクトロメトリープロファイルのばらつきまたは分散の存在、非存在、またはレベルを決定する工程を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、複数の参照組成物の間でのマススペクトロメトリープロファイルのばらつきまたは分散が、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下であるならば、またはデータ成分の間でのそのような平均で1標準偏差以下しか変化しないならば、操作された細胞組成物を製造するプロセスを選択する工程を含む。
【0021】
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価する方法が本明細書に提供され、本方法は、複数の参照操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料に基づいて、いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの平均マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、複数の参照操作された組成物のそれぞれが、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造された組換え受容体を含む、工程;およびいくつかのマススペクトロメトリープロファイルに基づいて参照マススペクトロメトリープロファイルを生成する工程;および平均マススペクトロメトリープロファイルの数値分散の間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量を決定し、それにより、プロセスによって製造される細胞組成物の分散の程度を決定する工程を含む。
【0022】
いくつかの態様において、方法は、マススペクトロメトリープロファイルを使用して、遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスが複数の操作された細胞組成物の間でばらつきまたは分散を生じさせるかどうかを試験する。いくつかの態様において、そのようなばらつきまたは分散の程度は、複数の操作された細胞組成物からの試料に基づく平均マススペクトロメトリープロファイルを使用して評価される。
【0023】
いくつかの態様において、方法は、いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量が、参照マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分のレベルの40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下であるならば、遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを選択する工程を含む。
【0024】
いくつかの態様において、平均マススペクトロメトリープロファイルは、(1)参照組成物中の細胞;(2)組成物中のCD3+細胞;(3)組成物中のCD4+T細胞;(4)組成物中のCD8+T細胞;(5)組成物中の組換え受容体+細胞;(6)組成物中の組換え受容体+CD3+細胞;(7)組成物中の組換え受容体+CD8+細胞;または(8)組成物中の組換え受容体+CD4+細胞の試料の平均マススペクトロメトリープロファイルである。
【0025】
いくつかの態様において、複数の参照組成物のそれぞれは、対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で、生体試料が白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料または全血試料である、工程;ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;組換え受容体をコードする核酸を、刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程を含むプロセスによって製造される。
【0026】
いくつかの態様において、試験マススペクトロメトリープロファイルおよび参照マススペクトロメトリープロファイルは個々にペプチドプロファイルである。いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、試験マススペクトロメトリープロファイルと同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定される。
【0027】
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価する方法が、本明細書に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、第一の細胞組成物からの試料の第一のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;マススペクトロメトリー技術を使用して、第二の細胞組成物からの試料の第二のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;および第二のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの第一のマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程を含み、第一の細胞組成物および第二の細胞組成物は、遺伝子操作された細胞組成物を製造するための製造プロセスの異なる段階における組成物を含有する。いくつかの態様において、第一および第二の細胞組成物は、遺伝子操作された細胞組成物を生成する異なる段階にあり、対象由来の生体試料から選択または単離された免疫細胞を含有するソース組成物であって、任意で、生体試料が白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料または全血試料である、ソース組成物;刺激試薬と接触させられた選択された組成物の免疫細胞を含有する刺激された組成物であって、任意で、接触が1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施された、刺激された組成物;組換え受容体をコードする核酸を含有する刺激された組成物の細胞を含有する形質転換組成物;および37℃または約37℃で少なくとも24時間培養された、形質転換組成物の細胞を含有する培養された組成物であって、任意で、培養が1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、培養された組成物から選択される。
【0028】
いくつかの態様において、第一の細胞組成物は、第二の細胞組成物に比べ、製造プロセスのより前の段階またはより前の時点からの組成物である。
【0029】
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価する方法が、本明細書に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、第一の細胞組成物からの試料の第一のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;マススペクトロメトリー技術を使用して、第二の細胞組成物からの試料の第二のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;および第二のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの第一のマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程を含み、第一の細胞組成物および第二の細胞組成物は、異なるプロセスによって製造された遺伝子操作された細胞を含有する。いくつかの態様において、異なるプロセスは、血清の存在または濃度;培養時間;試薬のロット;試薬の取り扱いまたは貯蔵;刺激試薬の存在または量;刺激試薬のタイプ;1つまたは複数のサイトカインの存在または量;アミノ酸の存在または量;温度;ソース組成物のソースまたは免疫細胞タイプ;ソース組成物中の免疫細胞タイプの比またはパーセンテージ、任意でCD4+/CD8+細胞比;細胞密度;静的培養;揺動培養;灌流;ウイルスベクターのタイプ;ベクターコピー数;形質導入アジュバントの存在;凍結保存中のソース組成物の細胞密度;組換え受容体の発現の程度;または細胞表現型を変調させるための化合物の存在の、1つまたは複数において異なる。
【0030】
いくつかの態様において、第一のマススペクトロメトリープロファイルおよび第二のマススペクトロメトリープロファイルは個々にペプチドプロファイルである。いくつかの態様において、第一のマススペクトロメトリープロファイルおよび第二のマススペクトロメトリープロファイルは、同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定される。
【0031】
組換え受容体を特性評価する方法が本明細書に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、組換え受容体を発現するかまたは含む免疫細胞を含む操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料から単離された組換え受容体の少なくとも1つのデータ成分を有するマススペクトロメトリープロファイルを得る工程を含む。
【0032】
組換え受容体を特性評価する方法が本明細書に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、組換え受容体を発現するかまたは含有する免疫細胞を含有する試験操作された細胞組成物からの試料の組換え受容体のマススペクトロメトリープロファイルを得る工程を含み、該マススペクトロメトリープロファイルは、少なくとも1つのデータ成分を含む。
【0033】
組換え受容体を特性評価する方法が本明細書に提供され、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、組換え受容体を発現するかまたは含む免疫細胞を含む試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを得る工程;マススペクトロメトリー技術を使用して、免疫細胞を含む参照組成物またはそのサブセットからの試料の参照マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、該参照マススペクトロメトリープロファイルが少なくとも1つのデータ成分を含む、工程;および参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程を含む。
【0034】
いくつかの態様において、方法はさらに、組換え受容体を発現しない同じ細胞のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの少なくとも1つのデータ成分における1つまたは複数の差を同定する工程を含む。
【0035】
いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物および参照細胞組成物は、組換え受容体の存在を除き、実質的に類似しており、任意で、試験操作された細胞組成物および参照組成物は、実質的に類似するプロセスによって製造される、かつ/または同じタイプの免疫細胞を含む。
【0036】
いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物は刺激試薬の存在下で刺激されている。いくつかの態様において、操作された細胞組成物は、組換え受容体依存性活性を生じさせるための作用物質と接触させられた細胞を含有し、任意で、作用物質は、組換え受容体と結合することができる標的抗原であるか、または抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体である。
【0037】
いくつかの態様において、方法はさらに、刺激試薬の存在下で刺激されていないかまたは異なる刺激試薬の存在下で刺激された同じ操作された細胞組成物のマススペクトロメトリーと比較したときの、マススペクトロメトリープロファイルにおける1つまたは複数の差を同定する工程を含む。
【0038】
いくつかの態様において、細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、免疫細胞はリンパ球を含む。いくつかの態様において、リンパ球はT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を含む。いくつかの態様において、リンパ球はT細胞を含み、T細胞はCD4+および/またはCD8+T細胞である。いくつかの態様において、免疫細胞はヒトである。
【0039】
提供される態様のいずれの中でも、細胞組成物のいずれも、生体試料からたとえば免疫親和性に基づく方法によって免疫細胞を選択、単離、または精製することなどによって免疫細胞を濃縮されている細胞組成物を含む。いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、参照組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、参照操作された細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、ソース組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、刺激された組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、形質転換組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、操作された細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、第一の細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、第二の細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、培養された組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物および参照組成物のそれぞれは免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、試験操作された細胞組成物および参照操作された組成物のそれぞれは免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、第一の細胞組成物および第二の細胞組成物のそれぞれは免疫細胞を濃縮されている。
【0040】
いくつかの態様において、免疫細胞はT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬は、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる。いくつかの態様において、刺激試薬は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する主剤およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する副剤を含む。いくつかの態様において、主剤はCD3に特異的に結合する、かつ/または共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群より選択される。いくつかの態様において、刺激試薬は、抗CD3抗体またはその抗原結合断片および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0041】
いくつかの態様において、主剤および副剤は固体支持体の表面に存在し、任意で、固体支持体はビーズである。いくつかの態様において、主剤および副剤は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを含む可溶性オリゴマー試薬の表面に存在する。
【0042】
いくつかの態様において、培養は、操作された細胞の増殖および/または拡大増殖を促進するための条件下で実施される。
【0043】
いくつかの態様において、試料は、試験操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、細胞を溶解し、1つまたは複数のタンパク質を単離することによって処理される。いくつかの態様において、方法はさらに、1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程を含む。
【0044】
(a)組換え受容体を発現または含有する操作された細胞組成物またはそのサブセットの細胞上に存在する1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、それにより、標識された細胞組成物を生成する工程;(b)標識された細胞組成物の細胞を溶解し、それにより、溶解した細胞組成物を生成する工程;(c)溶解した細胞組成物から1つまたは複数の表面タンパク質を単離して、1つまたは複数の単離されたタンパク質を得る工程;および(d)1つまたは複数の単離されたタンパク質をマススペクトロメトリー技術に供して、1つまたは複数のデータ成分を含むマススペクトロメトリープロファイルを得る工程を含む、操作された細胞組成物の表面タンパク質を評価する方法が、本明細書に提供される。
【0045】
いくつかの態様において、(d)の前に、方法はさらに、1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程を含む。いくつかの態様において、消化は、1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって実施される。場合によっては、1つまたは複数のプロテアーゼは、トリプシンであるか、またはトリプシンを含有する。
【0046】
いくつかの態様において、1つまたは複数のタンパク質は細胞表面膜タンパク質を含有する。いくつかの態様において、細胞の溶解は、界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む。いくつかの態様において、界面活性剤は非イオン界面活性剤である。いくつかの態様において、界面活性剤は、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、界面活性剤は変性界面活性剤である。いくつかの例において、変性界面活性剤は、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、細胞の溶解ののち、方法はさらに、溶解した組成物から界面活性剤を除去する工程を含む。
【0047】
いくつかの態様において、表面タンパク質の標識は第一級アミンのビオチン標識を含む。いくつかの例において、1つまたは複数のタンパク質は、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)またはCaptAvidin(商標)を含有する試薬を使用して単離される。
【0048】
いくつかの態様において、マススペクトロメトリー技術は、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む。いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である。いくつかの例において、液体クロマトグラフィーは超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である。
【0049】
いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーはオンラインで実施される。いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーは、順相(NP)、逆相(RP)および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される。いくつかの態様において、マススペクトロメトリーを実行する質量分析計は、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、質量分析計は、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップまたはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む。いくつかの例において、質量分析計は四重極Orbitrap質量分析計である。
【0050】
いくつかの態様において、データ成分は、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、翻訳後修飾から選択される。いくつかの態様において、データ成分はXICまたはその一部分であり、XICまたはその一部分は、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく。いくつかの態様において、1つまたは複数のペプチド成分は、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、プロテアーゼはトリプシンである。
【0051】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれ(ら)を含有する。いくつかの態様において、組換え受容体は、疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原に結合することができる。いくつかの例において、疾患、障害、または病気は、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である。いくつかの局面において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの例において、標的抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌精巣抗原、癌/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される。
【0052】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、組換え受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0053】
いくつかの態様において、試料は、(1)細胞組成物中の細胞、(2)細胞組成物中のCD3+細胞;(3)細胞組成物中のCD4+T細胞;(4)細胞組成物中のCD8+T細胞;(5)細胞組成物中の組換え受容体+細胞;(6)細胞組成物中の組換え受容体+CD3+細胞、(7)細胞組成物中の組換え受容体+CD8+細胞、または(8)細胞組成物中の組換え受容体+CD4+細胞から選択される、細胞組成物またはそのサブセットの試料であり、任意で、組換え受容体はCARである。
【0054】
操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料のマススペクトロメトリープロファイルが、製造される複数の操作された細胞組成物の平均マススペクトロメトリープロファイルの間で40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下しか変化しないか、またはマススペクトロメトリープロファイルのデータ成分の間でのそのような平均で1標準偏差以下しか変化しないプロセスによって製造される操作された細胞組成物が、本明細書に提供される。
【0055】
マススペクトロスコピー技術を使用して得られる、操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料のマススペクトロメトリープロファイルからの少なくとも1つのデータ成分のレベルが、製造された複数の操作された細胞組成物から試料のいくつかのマススペクトロメトリープロファイルに基づく、参照マススペクトロメトリープロファイルからの少なくとも1つのデータ成分のレベルから40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下しか変化しないか、またはいくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間でそのような参照から少なくともデータ成分のレベルの標準偏差以下しか変化しないプロセスによって製造される、操作された細胞組成物が、本明細書に提供される。
【0056】
いくつかの態様において、操作された細胞組成物は組換え受容体を含む。いくつかの態様において、操作された細胞組成物は免疫細胞を含む。
【0057】
いくつかの態様において、操作された細胞組成物を製造するプロセスは、(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で、生体試料が白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料または全血試料である、工程;(ii)ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;(iii)組換え受容体をコードする核酸を、刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および(iv)刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程を含む。
【0058】
いくつかの態様において、細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、免疫細胞はリンパ球を含む。いくつかの態様において、リンパ球はT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を含む。いくつかの例において、リンパ球はT細胞を含み、T細胞はCD4+および/またはCD8+T細胞である。
【0059】
いくつかの態様において、操作された細胞組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、ソース組成物は免疫細胞を濃縮されている。いくつかの態様において、形質転換組成物は免疫細胞を濃縮されている。
【0060】
いくつかの態様において、免疫細胞はヒトである。
【0061】
いくつかの態様において、免疫細胞はT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬は、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる。いくつかの態様において、刺激試薬は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する主剤およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する副剤を含む。場合によっては、主剤はCD3に特異的に結合する、かつ/または共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群より選択される。
【0062】
いくつかの態様において、刺激試薬は、抗CD3抗体またはその抗原結合断片および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、主剤および副剤は固体支持体の表面に存在し、任意で、固体支持体はビーズである。いくつかの態様において、主剤および副剤は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを含む可溶性オリゴマー試薬の表面に存在する。
【0063】
いくつかの態様において、培養は、操作された細胞の増殖および/または拡大増殖を促進するための条件下で実施される。いくつかの態様において、試料は、操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、細胞を溶解し、1つまたは複数のタンパク質を単離することによって処理される。いくつかの態様において、方法はさらに、1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程を含む。いくつかの態様において、消化は、1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって実施される。
【0064】
いくつかの態様において、1つまたは複数のプロテアーゼは、トリプシンであるか、またはトリプシンを含有する。いくつかの態様において、1つまたは複数のタンパク質は細胞表面膜タンパク質を含む。いくつかの態様において、細胞の溶解は、界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む。いくつかの態様において、界面活性剤は非イオン界面活性剤である。
【0065】
いくつかの態様において、界面活性剤は、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、界面活性剤は変性界面活性剤である。いくつかの態様において、変性界面活性剤は、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、細胞の溶解ののち、方法はさらに、溶解した組成物から界面活性剤を除去する工程を含む。
【0066】
いくつかの態様において、表面タンパク質の標識は第一級アミンのビオチン標識を含む。
【0067】
いくつかの態様において、1つまたは複数のタンパク質は、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される。
【0068】
いくつかの態様において、マススペクトロメトリー技術は、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む。いくつかの例において、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である。いくつかの例において、液体クロマトグラフィーは超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である。場合によっては、液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーはオンラインで実施される。いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーは、順相(NP)、逆相(RP)および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される。
【0069】
いくつかの態様において、マススペクトロメトリーを実行する質量分析計は、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、質量分析計は、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップまたはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む。いくつかの例において、質量分析計は四重極Orbitrap質量分析計である。
【0070】
いくつかの態様において、データ成分は、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、翻訳後修飾から選択される。いくつかの態様において、データ成分はXICまたはその一部分であり、XICまたはその一部分は、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく。
【0071】
いくつかの態様において、1つまたは複数のペプチド成分は、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、プロテアーゼはトリプシンである。
【0072】
いくつかの態様において、組換え受容体は、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれ(ら)を含む。いくつかの態様において、組換え受容体は、疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原に結合することができる。場合によっては、疾患、障害、または病気は、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である。
【0073】
いくつかの局面において、標的抗原は腫瘍抗原である。いくつかの例において、標的抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌精巣抗原、癌精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される。
【0074】
いくつかの態様において、組換え受容体は、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、組換え受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0075】
第一の試薬からの試料のマススペクトロメトリープロファイルを、その試薬の参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程であって、マススペクトロメトリープロファイルが、マススペクトロメトリー技術を使用して得られる、工程;および参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、試薬のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程を含む、操作された細胞組成物を製造するプロセスに使用される試薬を評価する方法が、本明細書に提供される。いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照試薬からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであるか、または試薬の複数の異なるロットからのいくつかの試料の平均マススペクトルプロファイルである。いくつかの態様において、参照マススペクトロメトリープロファイルは、試薬の複数の異なるロットの試料の平均マススペクトロメトリープロファイルである。
【0076】
いくつかの態様において、方法はさらに、平均マススペクトロメトリープロファイルに対する試料のマススペクトロメトリープロファイルのばらつきまたは分散の存在、非存在、またはレベルを決定する工程を含む。いくつかの態様において、方法はさらに、試薬の複数の異なるロットの間でのマススペクトロメトリープロファイルのばらつきまたは分散が、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下であるならば、またはマススペクトロメトリープロファイルのデータ成分の間でのそのような平均で1標準偏差以下しか変化しないならば、試薬を選択する工程を含む。
【0077】
いくつかの態様において、方法はさらに、いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量が、参照マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分のレベルの40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下であるならば、試薬を選択する工程を含む。
【0078】
いくつかの態様において、方法はさらに、試験マススペクトロメトリープロファイルの少なくとも1つのデータ成分のレベルが、参照マススペクトロメトリープロファイルからの少なくとも1つのデータ成分のレベルから40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下しか変化しないか、またはいくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間でそのようなレベルから少なくともデータ成分のレベルの標準偏差以下しか変化しないならば、試薬を選択する工程を含む。
【0079】
いくつかの態様において、マススペクトロメトリー技術は、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む。いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である。場合によっては、液体クロマトグラフィーは超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である。
【0080】
いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーはオンラインで実施される。いくつかの態様において、液体クロマトグラフィーは、順相(NP)、逆相(RP)および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される。いくつかの態様において、マススペクトロメトリーを実行する質量分析計は、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む。
【0081】
いくつかの態様において、質量分析計は、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップまたはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む。いくつかの態様において、質量分析計は四重極Orbitrap質量分析計である。
【0082】
いくつかの態様において、データ成分は、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、翻訳後修飾から選択される。
【0083】
いくつかの態様において、試薬は、細胞組成物、任意でT細胞組成物の細胞中でシグナルを刺激することができる試薬である。いくつかの態様において、細胞組成物の細胞は、組換え受容体、任意でキメラ抗原受容体を含む。いくつかの態様において、試薬は、細胞組成物の細胞中で組換え受容体依存性活性を刺激または誘導することができる。
[本発明1001]
遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定するための方法であって、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、該試験操作された細胞組成物が、組換え受容体を含む免疫細胞を含む、工程;
(b)該試験マススペクトロメトリープロファイルを、参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程;および
(c)該参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの該試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、該試料に特有のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程
を含む、方法。
[本発明1002]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料、参照組成物からの複数の試料、または複数の参照組成物からの複数の試料に基づく、本発明1001の方法。
[本発明1003]
試験操作された細胞組成物が、自己細胞療法に使用するためのものである、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
試験操作された細胞組成物が、
(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、工程;
(ii)該ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、該刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)該刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、該試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程
を含むプロセスによって製造される、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
参照組成物または複数の参照組成物のそれぞれが、組換え受容体をコードする核酸分子を導入されていない、本発明1002~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のものであり、該参照組成物が、試験操作された細胞組成物が由来するかまたは得られた免疫細胞を含む、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のものであり、
試験操作された細胞組成物が、対象から得られた免疫細胞を含み、該免疫細胞が、組換え受容体をコードする核酸分子を含み;
該参照組成物が、該組換え受容体をコードする核酸を含まない該対象から得られた免疫細胞を含む、
本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のものであり、試験操作された細胞組成物が、プロセスの1つの段階から製造され、該参照組成物が、該試験操作された細胞組成物が製造される段階の後、その前、またはその最中に得られる、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
試験操作された細胞組成物が、操作された細胞組成物を事前に投与された対象から得られる試料である、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
対象から得られる試料が、任意でフローサイトメトリーまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による検出で、組換え受容体で操作された免疫細胞を含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
対象から得られる試料が血液試料または腫瘍試料である、本発明1009または1010の方法。
[本発明1012]
対象から得られる試料が、操作された細胞組成物を該対象に投与してから、6~30日もしくは約6~30日後、14~29日もしくは約14~29日後、または17~22日もしくは約17~22日後に得られる、本発明1009~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
組換え受容体で操作された免疫細胞が、対象の血液中で最大限に検出可能である時点もしくはほぼその時点またはその直後に、試料が対象から得られる、本発明1009~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
試験操作された細胞組成物が、組換え受容体依存性活性を生じさせるために作用物質と接触させた細胞を含み、任意で、該作用物質が、組換え受容体と結合することができる標的抗原であるか、または抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体である、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1015]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、複数の参照組成物からのいくつかの試料に基づく平均マススペクトロメトリープロファイルである、本発明1002~1004および1008~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
複数の参照組成物のそれぞれが、組換え受容体を含む細胞を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
複数の参照組成物のそれぞれが、操作された細胞組成物と同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造されたものである、本発明1015または1016の方法。
[本発明1018]
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価するための方法であって、
複数の参照操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料に基づいて、いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量を計算する工程を含み、
該複数の参照操作された細胞組成物のそれぞれが、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造された組換え受容体を含む、
方法。
[本発明1019]
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価するための方法であって、
(a)複数の参照操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料に基づいていくつかのマススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、該複数の参照操作された細胞組成物のそれぞれが、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造された組換え受容体を含む、工程;
(b)該いくつかのマススペクトロメトリープロファイルに基づいて参照マススペクトロメトリープロファイルを生成する工程;および
(c)該いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量を決定する工程
を含む、方法。
[本発明1020]
いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量が、参照マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分のレベルの40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であるならば、遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを選択する工程をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1021]
複数の参照操作された細胞組成物のそれぞれが、
(1)参照操作された組成物中の細胞、(2)参照操作された組成物中のCD3+細胞;(3)参照操作された組成物中のCD4+T細胞;(4)参照操作された組成物中のCD8+T細胞;(5)参照操作された組成物中の組換え受容体+細胞;(6)参照操作された組成物中の組換え受容体+CD3+細胞、(7)参照操作された組成物中の組換え受容体+CD8+細胞、または(8)参照操作された組成物中の組換え受容体+CD4+細胞
から選択される、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
複数の参照組成物のそれぞれが、
(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、工程;
(ii)該ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、該刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)該刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程
を含むプロセスによって製造される、本発明1018~1020のいずれかの方法。
[本発明1023]
試験マススペクトロメトリープロファイルおよび参照マススペクトロメトリープロファイルのそれぞれが、ペプチドプロファイルである、本発明1001~1017のいずれかの方法。
[本発明1024]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、試験マススペクトロメトリープロファイルと同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定される、本発明1001~1017および1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価するための方法であって、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、第一の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第一のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;
(b)マススペクトロメトリー技術を使用して、第二の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第二のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;および
(c)該第二のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの該第一のマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程
を含み、
該第一の細胞組成物および該第二の細胞組成物が、遺伝子操作された細胞組成物を製造するための製造プロセスの異なる段階における組成物を含む、方法。
[本発明1026]
第一および第二の細胞組成物が、遺伝子操作された細胞組成物を生成する異なる段階にあり、かつ以下:
(i)対象由来の生体試料から選択または単離された免疫細胞を含むソース組成物であって、任意で該生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、ソース組成物;
(ii)刺激試薬と接触させられた該ソース組成物の免疫細胞を含む刺激された組成物であって、任意で、接触が1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施された、刺激された組成物;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を含む該刺激された組成物の細胞を含む形質転換組成物;および
(iv)37℃または約37℃で少なくとも24時間培養された該形質転換組成物の細胞を含む培養された組成物であって、任意で、培養が1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、培養された組成物
から選択される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
第一の細胞組成物が、第二の細胞組成物に比べ、製造プロセスのより前の段階またはより前の時点からのものである、本発明1025または1026の方法。
[本発明1028]
遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価するための方法であって、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、第一の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第一のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;
(b)マススペクトロメトリー技術を使用して、第二の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第二のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;および
(c)該第二のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの該第一のマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程
を含み、該第一の細胞組成物および該第二の細胞組成物が、異なるプロセスによって製造された遺伝子操作された細胞を含む、方法。
[本発明1029]
異なるプロセスが、
血清の存在または濃度;培養時間;試薬のロット;試薬の取り扱いまたは貯蔵;刺激試薬の存在または量;刺激試薬のタイプ;1つまたは複数のサイトカインの存在または量;アミノ酸の存在または量;温度;ソース組成物のソースまたは免疫細胞タイプ;ソース組成物中の免疫細胞タイプの比またはパーセンテージ、任意でCD4+/CD8+細胞比;細胞密度;静的培養;揺動培養;灌流;ウイルスベクターのタイプ;ベクターコピー数;形質導入アジュバントの存在;凍結保存中のソース組成物の細胞密度;組換え受容体の発現の程度;または細胞表現型を変調させるための化合物の存在
の1つまたは複数において異なる、本発明1028の方法。
[本発明1030]
第一のマススペクトロメトリープロファイルおよび第二のマススペクトロメトリープロファイルのそれぞれがペプチドプロファイルである、本発明1025~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
第一のマススペクトロメトリープロファイルおよび第二のマススペクトロメトリープロファイルが、同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定される、本発明1025~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
組換え受容体を特性評価する方法であって、
マススペクトロメトリー技術を使用して、組換え受容体を発現するかまたは含む免疫細胞を含む操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料から単離された組換え受容体の少なくとも1つのデータ成分を有するマススペクトロメトリープロファイルを得る工程
を含む、方法。
[本発明1033]
組換え受容体を特性評価する方法であって、
(1)マススペクトロメトリー技術を使用して、組換え受容体を発現するかまたは含む免疫細胞を含む試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、該マススペクトロメトリープロファイルが少なくとも1つのデータ成分を含む、工程;
(2)マススペクトロメトリー技術を使用して、免疫細胞を含む参照組成物またはそのサブセットからの試料の参照マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、該参照マススペクトロメトリープロファイルが少なくとも1つのデータ成分を含む、工程;および
(3)該参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの該試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程
を含む、方法。
[本発明1034]
試験操作された細胞組成物および参照組成物が、組換え受容体の存在を除き、実質的に類似しており、任意で、該試験操作された細胞組成物および該参照組成物が、実質的に類似するプロセスによって製造される、かつ/または同じタイプの免疫細胞を含む、本発明1033の方法。
[本発明1035]
試験操作された細胞組成物が刺激試薬の存在下で刺激されている、本発明1033または1034の方法。
[本発明1036]
免疫細胞が、T細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる、本発明1004、1022、1026、1029および1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する主剤およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する副剤を含む、本発明1036の方法。
[本発明1038]
主剤がCD3に特異的に結合する、かつ/または共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群より選択される、本発明1037の方法。
[本発明1039]
刺激試薬が、抗CD3抗体またはその抗原結合断片および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む、本発明1004、1022、1026および1035~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
主剤および副剤が固体支持体の表面に存在し、任意で、該固体支持体がビーズである、本発明1037~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
主剤および副剤が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを含む可溶性オリゴマー試薬の表面に存在する、本発明1037~1039のいずれかの方法。
[本発明1042]
刺激試薬が、組換え受容体依存性活性を生じさせるための作用物質であるか、またはそれを含み、任意で、該作用物質が、該組換え受容体と結合することができる標的抗原であるか、または抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体である、本発明1035の方法。
[本発明1043]
刺激試薬の存在下で刺激されていないかまたは異なる刺激試薬の存在下で刺激された第二の操作された細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの、試験マススペクトロメトリープロファイルにおける1つまたは複数の差を同定する工程
をさらに含む、本発明1004、1009~1014、1033および1035~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
細胞組成物、たとえば独立して、試験操作された細胞組成物、参照組成物、参照操作された細胞組成物、ソース組成物、刺激された組成物、形質転換組成物、操作された細胞組成物、第一の細胞組成物、第二の細胞組成物、および培養された組成物が、免疫細胞を濃縮されている、本発明1001~1043のいずれかの方法。
[本発明1045]
免疫細胞がリンパ球を含む、本発明1001~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
リンパ球がT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
リンパ球がT細胞を含み、該T細胞がCD4+および/またはCD8+T細胞である、本発明1046の方法。
[本発明1048]
免疫細胞がヒトである、本発明1001~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
操作された細胞の増殖および/または拡大増殖を促進するための条件下で、培養が実施される、本発明1004、1022、1026および1029~1031のいずれかの方法。
[本発明1050]
試験操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、細胞を溶解し、該1つまたは複数の表面タンパク質を単離して1つまたは複数の単離されたタンパク質を得ることによって、試料が処理される、本発明1001~1049のいずれかの方法。
[本発明1051]
1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、本発明1050の方法。
[本発明1052]
操作された細胞組成物の表面タンパク質を評価する方法であって、
(a)組換え受容体を発現するかまたは含む細胞を含む操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の細胞上に存在する、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、それにより、標識された細胞組成物を生成する工程;
(b)該標識された細胞組成物の細胞を溶解し、それにより、溶解した細胞組成物を生成する工程;
(c)該溶解した細胞組成物から該1つまたは複数の表面タンパク質を単離して、1つまたは複数の単離されたタンパク質を得る工程;および
(d)該1つまたは複数の単離されたタンパク質をマススペクトロメトリー技術に供して、1つまたは複数のデータ成分を含むマススペクトロメトリープロファイルを得る工程
を含む、方法。
[本発明1053]
(d)の前に、1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、本発明1052の方法。
[本発明1054]
1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって、消化が実施される、本発明1051または1053の方法。
[本発明1055]
1つまたは複数のプロテアーゼが、トリプシンであるか、またはトリプシンを含む、本発明1054の方法。
[本発明1056]
1つまたは複数の単離されたタンパク質が細胞表面膜タンパク質を含む、本発明1050~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
細胞の溶解が、界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む、本発明1050~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
界面活性剤が非イオン界面活性剤である、本発明1057の方法。
[本発明1059]
界面活性剤が、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含む、本発明1058の方法。
[本発明1060]
界面活性剤が変性界面活性剤である、本発明1057の方法。
[本発明1061]
変性界面活性剤が、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含む、本発明1060の方法。
[本発明1062]
細胞の溶解ののち、溶解した細胞から界面活性剤を除去する工程をさらに含む、本発明1057~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
1つまたは複数の表面タンパク質の標識が第一級アミンのビオチン標識を含む、本発明1050~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
1つまたは複数の表面タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)、またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される、本発明1063の方法。
[本発明1065]
マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、本発明1001~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、本発明1065の方法。
[本発明1067]
液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、本発明1065または1066の方法。
[本発明1068]
液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、本発明1065~1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)、および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、本発明1065~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
マススペクトロメトリーを実行する質量分析計が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む、本発明1065~1069のいずれかの方法。
[本発明1071]
質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップ、またはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、本発明1070の方法。
[本発明1072]
質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、本発明1071の方法。
[本発明1073]
少なくとも1つのデータ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、および翻訳後修飾から選択される、本発明1001~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
少なくとも1つのデータ成分がXICまたはその一部分であり、該XICまたはその一部分が、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく、本発明1073の方法。
[本発明1075]
1つまたは複数のペプチド成分が、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、該1つまたは複数のペプチド成分がトリプシンによってタンパク質分解的に切断または消化される、本発明1074の方法。
[本発明1076]
組換え受容体が、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれを含む、本発明1001~1075のいずれかの方法。
[本発明1077]
組換え受容体が、
疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原
に結合することができる、本発明1001~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
疾患、障害、または病気が、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である、本発明1077の方法。
[本発明1079]
標的抗原が腫瘍抗原である、本発明1077または1078の方法。
[本発明1080]
標的抗原が、
αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌精巣抗原、癌/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子
の中から選択される、本発明1077~1079のいずれかの方法。
[本発明1081]
組換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、本発明1001~1080のいずれかの方法。
[本発明1082]
組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、本発明1001~1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
試料が、
(1)細胞組成物中の細胞、(2)細胞組成物中のCD3+細胞;(3)細胞組成物中のCD4+T細胞;(4)細胞組成物中のCD8+T細胞;(5)細胞組成物中の組換え受容体+細胞;(6)細胞組成物中の組換え受容体+CD3+細胞、(7)細胞組成物中の組換え受容体+CD8+細胞、または(8)細胞組成物中の組換え受容体+CD4+細胞
を含み、任意で、該組換え受容体がCARである、本発明1001~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
プロセスによって製造される、操作された細胞組成物であって、
該プロセスにおいて、マススペクトロメトリー技術を使用して得られる、操作された細胞組成物もしくはそのサブセットからの試料のマススペクトロメトリープロファイルからの少なくとも1つのデータ成分のレベルが、該プロセスによって製造される複数の操作された細胞組成物からの試料のいくつかのマススペクトロメトリープロファイルに基づいて、参照マススペクトロメトリープロファイルからの少なくとも1つのデータ成分のレベルから40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、もしくは5%以下しか変化しないか、または該いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間でそのような参照から少なくともデータ成分のレベルの標準偏差以下しか変化しない、
操作された細胞組成物。
[本発明1085]
組換え受容体を含む、本発明1084の操作された細胞組成物。
[本発明1086]
免疫細胞を含む、本発明1084または1085の操作された細胞組成物。
[本発明1087]
操作された細胞組成物を製造するプロセスが、
(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、工程;
(ii)該ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、該刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)該刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程
を含む、本発明1086の操作された細胞組成物。
[本発明1088]
細胞組成物、たとえば独立して、操作された細胞組成物、ソース組成物、刺激された組成物、および形質転換組成物が、免疫細胞を濃縮されている、本発明1086または1087の操作された細胞組成物。
[本発明1089]
免疫細胞がリンパ球を含む、本発明1086~1088のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1090]
リンパ球がT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を含む、本発明1089の操作された細胞組成物。
[本発明1091]
リンパ球がT細胞を含み、該T細胞がCD4+および/またはCD8+T細胞である、本発明1090の操作された細胞組成物。
[本発明1092]
免疫細胞がヒトである、本発明1086~1091のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1093]
免疫細胞が、T細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる、本発明1087~1092のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1094]
刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する主剤およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する副剤を含む、本発明1093の操作された細胞組成物。
[本発明1095]
主剤がCD3に特異的に結合し、かつ/または共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群より選択される、本発明1094の操作された細胞組成物。
[本発明1096]
刺激試薬が、抗CD3抗体またはその抗原結合断片および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む、本発明1087~1095のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1097]
主剤および副剤が固体支持体の表面に存在し、任意で、該固体支持体がビーズである、本発明1094~1096のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1098]
主剤および副剤が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを含む可溶性オリゴマー試薬の表面に存在する、本発明1094~1097のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1099]
操作された細胞組成物の増殖および/または拡大増殖を促進するための条件下で、培養が実施される、本発明1087~1098のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1100]
操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、細胞を溶解し、該1つまたは複数の表面タンパク質を単離して1つまたは複数の単離されたタンパク質を得ることによって、試料が処理される、本発明1084~1099のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1101]
1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、本発明1100の操作された細胞組成物。
[本発明1102]
1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって、消化が実施される、本発明1100または1101の操作された細胞組成物。
[本発明1103]
1つまたは複数のプロテアーゼが、トリプシンであるか、またはトリプシンを含む、本発明1102の操作された細胞組成物。
[本発明1104]
1つまたは複数の単離されたタンパク質が細胞表面膜タンパク質を含む、本発明1100~1103のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1105]
細胞の溶解が、界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む、本発明1100~1104のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1106]
界面活性剤が非イオン界面活性剤である、本発明1105の操作された細胞組成物。
[本発明1107]
界面活性剤が、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含む、本発明1106の操作された細胞組成物。
[本発明1108]
界面活性剤が変性界面活性剤である、本発明1105の操作された細胞組成物。
[本発明1109]
変性界面活性剤が、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含む、本発明1108の操作された細胞組成物。
[本発明1110]
細胞の溶解ののち、方法がさらに、溶解した細胞から界面活性剤を除去する工程を含む、本発明1100~1109のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1111]
表面タンパク質の標識が第一級アミンのビオチン標識を含む、本発明1100~1110のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1112]
1つまたは複数の表面タンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)、またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される、本発明1111の操作された細胞組成物。
[本発明1113]
マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、本発明1084~1112のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1114]
液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、本発明1113の操作された細胞組成物。
[本発明1115]
液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、本発明1113または1114の操作された細胞組成物。
[本発明1116]
液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、本発明1113~1115のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1117]
液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)、および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、本発明1113~1116のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1118]
マススペクトロメトリーを実行する質量分析計が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む、本発明1113~1117のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1119]
質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップ、またはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、本発明1118の操作された細胞組成物。
[本発明1120]
質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、本発明1119の操作された細胞組成物。
[本発明1121]
少なくとも1つのデータ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、および翻訳後修飾から選択される、本発明1084~1120のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1122]
データ成分がXICまたはその一部分であり、該XICまたはその一部分が、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく、本発明1121の操作された細胞組成物。
[本発明1123]
1つまたは複数のペプチド成分が、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、該1つまたは複数のペプチド成分がトリプシンによってタンパク質分解的に切断または消化される、本発明1122の操作された細胞組成物。
[本発明1124]
組換え受容体が、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれを含む、本発明1085~1123のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1125]
組換え受容体が、
疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原
に結合することができる、本発明1085~1124のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1126]
疾患、障害、または病気が、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である、本発明1125の操作された細胞組成物。
[本発明1127]
標的抗原が腫瘍抗原である、本発明1125または1126の操作された細胞組成物。
[本発明1128]
標的抗原が、
αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌精巣抗原、癌/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子
の中から選択される、本発明1125~1127のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1129]
組換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、本発明1085~1128のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1130]
組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、本発明1085~1129のいずれかの操作された細胞組成物。
[本発明1131]
操作された細胞組成物を製造するプロセスに使用される試薬を評価する方法であって、
(a)試薬からの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを該試薬の参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程であって、該試験マススペクトロメトリープロファイルが、マススペクトロメトリー技術を使用して得られる、工程;および
(c)該参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの該試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、該試薬のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程
を含む、方法。
[本発明1132]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照試薬からの試料のものであるか、または該試薬の複数の異なるロットからの試料のいくつかのマススペクトロメトリープロファイルに基づく、本発明1131の方法。
[本発明1133]
参照マススペクトロメトリープロファイルが、試薬の複数の異なるロットからの試料に基づく平均マススペクトロメトリープロファイルである、本発明1132の方法。
[本発明1134]
試験マススペクトロメトリープロファイルと平均マススペクトロメトリープロファイルとの間で少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける差を決定する工程をさらに含む、本発明1133の方法。
[本発明1135]
いくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間での少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおけるばらつきの量が、参照マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分のレベルの40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下であるならば、試薬を選択する工程をさらに含む、本発明1132または1133の方法。
[本発明1136]
試験マススペクトロメトリープロファイルの少なくとも1つのデータ成分のレベルが、参照マススペクトロメトリープロファイルからの少なくとも1つのデータ成分のレベルから、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下しか変化しないか、またはいくつかのマススペクトロメトリープロファイルの間で、そのようなレベルから、少なくともデータ成分のレベルの標準偏差以下しか変化しないならば、試薬を選択する工程をさらに含む、本発明1132または1134の方法。
[本発明1137]
マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、本発明1131~1136のいずれかの方法。
[本発明1138]
液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、本発明1137の方法。
[本発明1139]
液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、本発明1137または1138の方法。
[本発明1140]
液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、本発明1137~1139のいずれかの方法。
[本発明1141]
液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)、および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、本発明1137~1140のいずれかの方法。
[本発明1142]
マススペクトロメトリーを実行する質量分析計が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む、本発明1137~1141のいずれかの方法。
[本発明1143]
質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップ、またはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、本発明1142の方法。
[本発明1144]
質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、本発明1143の方法。
[本発明1145]
少なくとも1つのデータ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、および翻訳後修飾から選択される、本発明1131~1144のいずれかの方法。
[本発明1146]
試薬が、細胞組成物、任意でT細胞組成物の細胞中でシグナルを刺激することができる試薬である、本発明1131~1145のいずれかの方法。
[本発明1147]
細胞組成物の細胞が組換え受容体、任意でキメラ抗原受容体を含む、本発明1146の方法。
[本発明1148]
試薬が、細胞組成物の細胞中で組換え受容体依存性活性を刺激または誘導することができる、本発明1147の方法。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1A図1Aおよび1Bは、同定されたソース(CAR-)T細胞組成物および操作された(CAR+)T細胞組成物から単離された細胞表面タンパク質のマススペクトロメトリー分析からの例示的な読み取り値を示す。図1Aは、細胞表面タンパク質のペプチドイオンを表す例示的な全イオンクロマトグラム(TIC)を描写する。
図1B図1Aおよび1Bは、同定されたソース(CAR-)T細胞組成物および操作された(CAR+)T細胞組成物から単離された細胞表面タンパク質のマススペクトロメトリー分析からの例示的な読み取り値を示す。図1Bは、操作されたT細胞組成物およびソースT細胞組成物からのCARの細胞外部分および細胞内部分に関連するペプチドピークについての例示的な抽出イオンクロマトグラム(XIC)を描写する。
図2図2は、操作された(CAR+)T細胞組成物を生成するためのプロセスにおいて使用される例示的な原料の3つの異なるロットから単離された翻訳後修飾(PTM)を有するタンパク質を含む、試薬中に存在する3つの個々のタンパク質についてのLC分析プロファイル、および共溶出されたタンパク質についての質量電荷比(m/z)を描写する。
図3図3は、操作された(CAR+)T細胞組成物を生成するためのプロセスにおいて使用される原試薬の3つの異なる滴定試料中のタンパク質2(翻訳後修飾(PTM)を有する)およびタンパク質3の相対的割合のマススペクトロメトリー分析を描写する。
図4A図4A~Cは、PNGase F処理後の無傷の全CD3+活性化T細胞から遊離されたN-グリカンのHILIC-LCおよびタンデムMSによって作成されたクロマトグラムを示す。図4Aは、活性化CD3+ T細胞組成物からのPNGase Fにより遊離されたN-グリカンのHILIC-FLRクロマトグラムを示す。
図4B図4A~Cは、PNGase F処理後の無傷の全CD3+活性化T細胞から遊離されたN-グリカンのHILIC-LCおよびタンデムMSによって作成されたクロマトグラムを示す。図4Bは、5ppmの質量許容差を使用して+3荷電状態にある例示的なN-グリカンA3S3F(理論質量1113.0933)に関してタンデムMSの第1段階から作成された抽出イオンクロマトグラム(XIC)を示す。
図4C図4A~Cは、PNGase F処理後の無傷の全CD3+活性化T細胞から遊離されたN-グリカンのHILIC-LCおよびタンデムMSによって作成されたクロマトグラムを示す。図4Cは、タンデムMSの第2段階によって作成されたさらなる例示的なN-グリカンA3S4F(理論質量1210.4614)のMS/MSフラグメンテーションを示す。図4C中の点線の箱は、異なるn-アセチルグルコサミン残基連結を表示している。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
本明細書において提供されるのは、遺伝子操作された細胞組成物、例えば、自己CAR T細胞組成物を含めた細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定するための方法である。いくつかの局面では、提供される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、操作された細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイル(例えば、試験マススペクトロメトリープロファイル)を決定することを伴う。いくつかの局面では、操作された細胞組成物は、組換え受容体(例えば、CAR)を含む細胞を含有するかそれを含む。特定の局面では、このマススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルと比較した試験マススペクトロメトリープロファイルにおける少なくとも1つのペプチド種(その翻訳後修飾を含む)の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定するなどのために、参照マススペクトロメトリープロファイル、例えば、同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定された、参照として使用される組成物(例えば、参照細胞組成物)からの試料のまたはそれから得られた参照マススペクトロメトリープロファイルと比較される。
【0086】
また、本明細書において提供されるのは、遺伝子操作された細胞組成物を産生するためのプロセス、例えば、製造プロセスを特徴付けるための方法である。ある特定の態様では、プロセスの異なる段階で得られた細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルが、プロセスを特徴付けるため、または、いくつかの局面では、プロセス中の細胞が被る変化を特徴付けるために分析される。いくつかの局面では、操作された細胞を産生するための異なるプロセス、例えば、製造プロセスから生成された操作された細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルが、プロセスを特徴付けるため、または、いくつかの局面では、異なるプロセスによって産生された細胞組成物の類似点または相違点を特徴付けるために分析される。
【0087】
いくつかの局面では、提供されるのは、遺伝子操作された細胞組成物を産生するためのプロセスを評価するための方法である。いくつかの局面では、本方法は、複数の参照操作細胞組成物またはそのサブセットの試料の平均マススペクトロメトリープロファイルを得ること、ならびに平均マススペクトロメトリープロファイルの変動または分散の存在、非存在、またはレベルを決定することであるかそれを含む。いくつかの態様では、複数の参照組成物は、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって産生された組換え受容体を発現する細胞を含有する。
【0088】
いくつかの局面では、提供されるのは、遺伝子操作された細胞組成物を産生するためのプロセスを評価するための方法である。いくつかの局面では、本方法は、複数の参照操作細胞組成物またはそのサブセットからの試料の多数のマススペクトロメトリープロファイルを得ること、その平均マススペクトロメトリープロファイルを作成すること、ならびに平均マススペクトロメトリープロファイルにおける少なくとも1つのペプチド種(その翻訳後修飾を含む)の存在、非存在、またはレベルを決定することであるかそれを含む。いくつかの局面では、本方法はさらに、複数のマススペクトロメトリープロファイル全体にわたる少なくとも1つのペプチド種(その翻訳後修飾を含む)のレベルにおける変動または分散の量を決定することを含む。いくつかの局面では、少なくとも1つのペプチド種のレベルにおける変動または分散の量は、少なくとも1つのペプチド種の平均レベルと比較され、それによって、試料全体にわたる変動の程度が決定される。いくつかの態様では、複数の参照組成物は、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって産生された組換え受容体を発現する細胞を含有する。
【0089】
いくつかの局面では、提供されるのは、遺伝子操作された細胞組成物を産生するためのプロセスを評価するための方法である。いくつかの局面では、本方法は、複数の参照操作細胞組成物またはそのサブセットからの試料の多数のマススペクトロメトリープロファイルを得ること、ならびに複数のマススペクトロメトリープロファイル全体にわたる少なくとも1つのペプチド種(その翻訳後修飾を含む)のレベルにおける変動または分散の量を決定することであるかそれを含む。いくつかの態様では、複数の参照組成物は、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって産生された組換え受容体を発現する細胞を含有する。
【0090】
また、提供されるのは、遺伝子操作された細胞または細胞組成物を産生するためのプロセスを特徴付けるための方法である。いくつかの局面では、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して異なる細胞組成物からの試料の第1および第2のマススペクトロメトリープロファイルを得ること、ならびにマススペクトロメトリープロファイルにおける少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定することを伴う。いくつかの態様では、細胞組成物は、遺伝子操作された細胞組成物を産生するための製造プロセスの異なる段階にある組成物であるかそれを含有する。ある特定の態様では、組成物は、異なるプロセスによって産生された遺伝子操作された細胞を含有する。
【0091】
いくつかの局面では、提供される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して組換え受容体のマススペクトロメトリープロファイルを得ることなどによって、試料の組換え受容体を評価または特徴付けるのに有用である。いくつかの態様では、試料は、組換え受容体を発現するかそれを含む免疫細胞を含む試験操作細胞組成物またはそのサブセットからのものであり、前記マススペクトロメトリープロファイルは、少なくとも1つのデータ成分を含む。
【0092】
本明細書において提供される追加の方法を、操作された細胞組成物の表面タンパク質を分析または評価するために利用してもよい。いくつかの態様では、そのような方法は、操作された細胞組成物またはそのサブセットの細胞上に存在する1つまたは複数の表面タンパク質を標識するための工程、標識された細胞組成物の細胞を溶解するための工程、表面タンパク質を単離するための工程、次いで、単離されたタンパク質をマススペクトロメトリー技術に供するための工程を含む。いくつかの局面では、本方法は、1つまたは複数の表面タンパク質(いくつかの場合に、組換え受容体またはCARを含む)に関係する成分などのデータ成分を含有するマススペクトロメトリープロファイルを作成する。
【0093】
特定の態様は、細胞療法、特に、養子T細胞療法が、がんなどの様々な疾患の治療、緩和および/または改善のための強力な科学技術であることを想定している。治療用または薬学的細胞組成物を分析または特徴付けるために利用可能な現行の分析ツールは、フローサイトメトリーまたは遺伝子発現(RNA-seqまたはATAC-seqなどの技術による)などによる、細胞表面マーカーまたは内部マーカーの検査を含む。そのような技術は、いくつかの局面では、細胞組成物を分析または特徴付けるために有用であり得る一方で、これらの技術に制約がないわけではない。例えば、いくつかの局面では、フローサイトメトリーに基づく方法などによるタンパク質発現の検出は、単一実験で検査できる異なる個々のマーカーの量によって制限を受け得る。いくつかの局面では、そのようなアッセイは、評価できる標的の量が限られるため、ある特定の条件下で変化すると予測または仮定される標的に焦点を合わせなければならない。反対に、RNA-seqまたはATAC-seqによる遺伝子発現解析は、ゲノムワイドスクリーニングに適しており、このことは、ある特定の条件によって影響を受け得る標的の偏りのない検出を可能にする。しかしながら、これらの技術の制約は、遺伝子発現レベルの変化が、常に、機能性タンパク質の発現レベルの変化に相関するとは限らないことである。
【0094】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、細胞組成物中に存在する細胞表面タンパク質などのタンパク質を検出、同定および/または定量するのに有用な偏りのない方法である。特定の局面では、提供される方法の利点は、本方法を利用して、分析の前に特定の標的を選択または予測する必要なく、異なる条件下で、タンパク質、例えば、表面タンパク質の変化を検出することができることである。いくつかの局面では、提供される方法の追加の利点は、本方法が、機能性表面タンパク質などのタンパク質の分析を広範な規模で可能にすることである。したがって、いくつかの局面では、提供される方法は、細胞療法組成物などの細胞組成物を分析または特徴付けるために単独または既存の方法との組み合わせのいずれかで使用されることに適する。
【0095】
いくつかの局面では、CAR T細胞療法などの細胞療法は、対象に由来する、最終薬品を産生するように操作されている、生細胞である。したがって、低分子または従来の生物製剤とは対照的に、場合によって、対象への投与に適した細胞療法組成物を絶えず操作することは困難であり得る。例えば、いくつかの局面では、特定の疾患を患っている異なる個々の患者から生じる細胞は、細胞の健康、生存能力、活性および増殖能などのある特定の属性が異なり得る。そのような違いは、患者全体にわたる疾患の程度または変化の違いに起因し得るか、またはいくつかの局面では、患者の遺伝的または環境的背景の違いに起因し得る。いくつかの局面では、対象から得られた細胞組成物間の任意の違いは、操作プロセスに対する異なる反応によって増幅され得る。いくつかの局面では、提供される方法を、複数の対象にわたって生成された細胞療法の変動または分散を評価するために、または、細胞療法を投与する前に個々の細胞組成物が理想または参照基準と比較して許容される耐容性の範囲内にあることを確認するために利用してもよい。
【0096】
いくつかの局面では、提供される方法は、マススペクトロメトリーを利用して、細胞組成物の細胞中に存在する細胞表面タンパク質の一部または全部を特徴付け、それによって、細胞の異なる特徴を一度にすべて評価することが可能となる。いくつかの局面では、提供される方法は、細胞上に存在する個々の表面タンパク質のレベルまたは量を同定および測定する。この技術は、とりわけ、操作プロセス中に個々の細胞組成物の間で生じる変化をモニタリングするのに、または細胞療法を患者に投与する前に細胞療法の同一性および品質を検証するのに有用である。ある特定の局面では、提供される方法の利点は、タンパク質を検出するために抗体標識化に依拠している技術など、一度にわずか数種の標的タンパク質の分析に限定される技術によって見逃されるだろう変化を、本方法が検出し得ることである。
【0097】
特定の局面では、単一のマーカーまたは表面タンパク質は、T細胞が特定の性質を有し得る程度を検出するには十分でない場合がある。提供される方法の利点は、性質に関連する複数のマーカーの変化が同時に評価され得るので、数種の異なる性質に沿って連続した変化を単一評価内で検出することが可能となることである。
【0098】
本明細書における提供される方法は、細胞療法組成物などの細胞組成物からマススペクトロメトリープロファイルを首尾よく生成することができることを実証する。いくつかの局面では、マススペクトロメトリープロファイルは、細胞療法および異なる操作プロセスが細胞に対して有し得る影響を特徴付けるための、操作された細胞組成物の1つまたは複数のタンパク質またはペプチド(その翻訳後修飾を含む)に関連するデータ成分のさらなる調査を可能にする。
【0099】
提供される方法の特定の利点は、試料中の数多くのタンパク質標的を検出および測定するために達成される高度な分解能を含む。いくつかの局面では、この高度な感度は、タンパク質へのグリカンコンジュゲーションなどの翻訳後修飾の検出および定量を可能にする。いくつかの局面では、転写後修飾の測定または定量化を、RNA-seqまたはトランスポザーゼ網羅的オープンクロマチン領域解析(Assay for Transposase-Accessible Chromatin using sequencing)(ATAC-seq)によって得られたゲノム読み取り値など、試料からの他の読み取り値と比較してもよい。そのような比較は、とりわけ、どのようなゲノムレベルの酵素変化が特定の翻訳後修飾に影響を及ぼし得るかを同定または評価するのに有用であり、いくつかの場合には、細胞における性質または機能性を評価するためのさらなるアッセイを開発するのに有用であり得る。例えば、いくつかの局面では、提供される方法を、細胞表面タンパク質のグリコシル化を検出するために使用してもよく、そのようなデータを、個々のグリコトランスフェラーゼ遺伝子の発現と相関させてもよい。いくつかの局面では、そのような相関は、どのような遺伝子レベルの変化が細胞の機能に影響を及ぼすかを同定または決定するのにも有用であり得る。
【0100】
ある特定の局面では、提供される方法は、複雑な混合物を分析するための強力なツールを実現するためにマススペクトロメトリーを組み込む。いくつかの局面では、場合によって、操作されたT細胞組成物を産生するためのプロセスにおいて使用される原料もしくは試薬の貯蔵もしくは取り扱い条件の変化または原料もしくは試薬の異なるロット(それ以外は同様の細胞操作プロセスにおける)が、最終の操作された組成物において、操作されたT細胞産物の変化したまたは変動した活性に関連するある特定のパラメーターと相関し得ることが観察されている(公開されているPCT出願番号WO2018/157171)。例えば、いくつかの局面では、細胞療法の開発、生産または操作は、複雑な試薬、例えば、1つまたは複数のタンパク質であるかそれを含む試薬を必要とし得る。いくつかの局面では、供給業者の出荷基準のすべてを満たす試薬は、ロット間変動を示す場合があり、それゆえ、いくつかの局面では、試薬が細胞療法の不要な変動または分散に寄与しないことを確認するために追加のスクリーニングを必要とし得る。提供される方法は、細胞療法または試薬が使用に適しかつ安全であることを確認するために、細胞療法または試薬における潜在的な変化を同定するためのそのような複雑な混合物を調査する追加の手段を提供する。
【0101】
いくつかの局面では、提供される方法は、試薬、例えば、細胞組成物を遺伝子操作するために使用される試薬の原料ロット間の差(またはその欠如)をタンパク質レベルで同定するために、マススペクトロメトリーに基づくアッセイ、例えば、LC-MSを活用してもよい。いくつかの局面では、マススペクトロメトリーに基づくアッセイは、試薬と細胞との間の相互作用に影響を与え得る差を含め、製造ロット間の差を検出するのに十分に高感度であり得る。しかしながら、いくつかの局面では、提供される方法は、生物学的に関係のある差の一部に焦点を合わせることを可能にする。したがって、いくつかの局面では、提供される方法が、細胞組成物または試薬の偏りのない分析をもたらす一方で、得られたデータセット、例えば、マススペクトロメトリープロファイルを、生物学的に関係があると予測または仮定されるタンパク質標的の一部を評価するために使用することができる。
【0102】
本出願において言及される特許文書、科学論文およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかもそれぞれ個々の刊行物が参照により個別に組み入れられるのと同程度に、あらゆる目的のために参照によりその全体が組み入れられる。本明細書に記載される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願および他の刊行物に記載される定義と相反するか、そうでなければ矛盾する場合、本明細書に記載される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0103】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、編成のみを目的としたものであり、記述されている主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0104】
I. マススペクトロメトリーによる細胞組成物の分析:
本出願のいくつかの局面において提供されるのは、遺伝子操作された細胞の組成物などの細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定するための方法である。いくつかの態様では、操作された細胞は、組換え受容体またはCARなどの組換えタンパク質を発現する。特定の態様では、本方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、操作された細胞組成物(例えば、試験細胞組成物)からの試料のマススペクトロメトリープロファイル、例えば、試験マススペクトロメトリープロファイルを決定するための工程を含む。いくつかの態様では、試験マススペクトロメトリープロファイルは、マススペクトロメトリープロファイルの1つまたは複数のデータ成分間の差を同定するなどのために、参照マススペクトロメトリープロファイルと比較される。
【0105】
また、本出願のいくつかの局面において提供されるのは、遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定するための方法であって、(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作細胞組成物からの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、前記の試験操作細胞組成物が組換え受容体を含む免疫細胞を含む工程;(b)試験マススペクトロメトリープロファイルを参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程;ならびに(c)参照マススペクトロメトリープロファイルと比較した試験マススペクトロメトリープロファイルにおける少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それによって、組換え受容体を含む細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程を含む方法である。
【0106】
A. マススペクトロメトリープロファイル
いくつかの局面では、マススペクトロメトリー(MS)は、試料から膨大な量のデータを収集可能な強力な分析ツールである。ある特定の局面では、マススペクトロメトリー(非常に簡略化された様式で記載されるような)は、試料から生成されたイオンをその質量電荷(m/z)比に従って検出することを伴う。特定の局面では、イオンからのMSシグナルは、質量スペクトルを生成するために使用され、これは、試料イオンまたはその断片のそのm/z比に応じた相対存在量を表す。特定の態様では、単一または一連のマススペクトロメトリー分析から得られたデータは、その後、別の試料または別のマススペクトロメトリー分析から得られたデータに対して、MSイオン情報、ペプチドおよび/またはタンパク質の同定/配列情報、翻訳後修飾情報ならびに定量化情報の任意の組み合わせのレベルを含めた取得データのいくつもの情報提供レベルで比較するなどして分析することができる。本明細書において開示される方法では、試料または細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルは、取得されたMSシグナルデータの任意の後続の分析からの任意のデータ成分およびそれから得られた情報を含め、単一または一連のマススペクトロメトリー分析からの任意の単一の情報提供レベルまたは任意の組み合わせの情報提供レベルの取得データから選択される少なくとも1つのデータ成分を含み得る。いくつかの態様では、データ成分は、その翻訳後修飾を含め、同定されたペプチドの存在または同定されたペプチドの量などの単一のデータ点である。いくつかの態様では、データ成分は、その翻訳後修飾を含め、複数のペプチドの存在または複数のペプチドの量などのデータ点の集合体である。
【0107】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、MSイオンのシグナルなどのMSイオン情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のタンパク質および/またはペプチド種(その翻訳後修飾を含む)のMSイオン情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のタンパク質および/またはペプチドイオン種(その翻訳後修飾を含む)のMSイオン情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、タンパク質および/またはペプチド種(その翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の断片のMSイオン情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、タンパク質および/またはペプチドイオン種(その翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の断片のMSイオン情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のMS分析のMSイオン情報またはその一部分を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、全イオン電流クロマトグラムを含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、2つ以上のMS分析からの全イオン電流クロマトグラムを含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、全イオン電流クロマトグラムの一部分を含むデータ成分を含む。
【0108】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のMSイオンを含むおよび/または排除するように操作されたMSイオン情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラム(XICまたはEIC)を含むデータ成分を含む。ある特定の局面では、抽出イオンクロマトグラムを作成するための方法は、当技術分野において周知であり、関心対象の1つまたは複数のm/z値、例えば、関心対象の1つまたは複数のペプチドと相関するm/z値についてMS分析からMSイオン情報を単離することを含む。いくつかの態様では、関心対象のm/z値は、m/z範囲許容差、例えば、関心対象のm/z値を包含するm/z帯を含む。いくつかの態様では、m/z範囲許容差は、マススペクトロメトリープロファイルを得るために使用されるマススペクトロメーターに基づく。いくつかの態様では、m/z範囲許容差は、約50ppm未満、例えば、約40ppm未満、約30ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満または約5ppm未満のいずれかである。いくつかの態様では、m/z範囲許容差は、約50ppm、例えば、約40ppm、約30ppm、約20ppm、約10ppmまたは約5ppmのいずれかである。
【0109】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、関心対象の1つまたは複数のタンパク質種および/または1つまたは複数のペプチド種(その翻訳後修飾を含む)のMSイオンのm/zなど、関心対象の1つまたは複数のタンパク質種および/または1つまたは複数のペプチド種(その翻訳後修飾を含む)の性質に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、関心対象の1つまたは複数のタンパク質種および/または1つまたは複数のペプチド種(その翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、理論的MSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、インシリコのMSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、理論的にプロテアーゼ消化されたタンパク質を表すインシリコのMSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、実験的MSイオン情報に基づく。
【0110】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)のMSイオンのm/zなど、組換え受容体の性質に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、理論的にプロテアーゼ消化された組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)を表すインシリコのMSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)の実験的MSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)のMSイオンのm/zなど、膜貫通タンパク質の性質に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、理論的にプロテアーゼ消化された膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)を表すインシリコのMSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の実験的MSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)のMSイオンのm/zなど、細胞表面タンパク質の性質に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、理論的にプロテアーゼ消化された細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)を表すインシリコのMSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の実験的MSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、キメラ抗原受容体(CAR)(その任意の翻訳後修飾を含む)のMSイオンのm/zなど、CARの性質に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、理論的にプロテアーゼ消化されたCAR(その任意の翻訳後修飾を含む)を表すインシリコのMSイオン情報に基づく。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、抽出イオンクロマトグラムを含むデータ成分を含み、この場合の抽出イオン情報は、CAR(その任意の翻訳後修飾を含む)の実験的MSイオン情報に基づく。
【0111】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のペプチドMSイオンシグナルピークを含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のペプチドMSイオンシグナルピークは、ペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のペプチドMSイオンシグナルピークは、ペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のペプチドは、組換え受容体由来である。いくつかの態様では、1つまたは複数のペプチドMSイオンシグナルピークは、ペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のペプチドは、膜貫通タンパク質由来である。いくつかの態様では、1つまたは複数のペプチドMSイオンシグナルピークは、ペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のペプチドは、細胞表面タンパク質由来である。いくつかの態様では、1つまたは複数のペプチドMSイオンシグナルピークは、ペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)由来である。
【0112】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のタンパク質MSイオンシグナルピークを含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質MSイオンシグナルピークは、タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質MSイオンシグナルピークは、タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のタンパク質は、組換え受容体またはその断片由来である。いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質MSイオンシグナルピークは、タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のタンパク質は、膜貫通タンパク質またはその断片由来である。いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質MSイオンシグナルピークは、タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のタンパク質は、細胞表面タンパク質またはその断片由来である。いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質MSイオンシグナルピークは、タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の1つまたは複数の荷電状態を含み、この場合のタンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)またはその断片由来である。
【0113】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、ペプチド同定情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた同定されたペプチドの任意の特徴、性質または観察、例えば、存在量および液体クロマトグラフからの溶出時間を含めた、1つまたは複数のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、単一タンパク質の1つまたは複数のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、タンパク質のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、アミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた同定されたペプチドの任意の特徴、性質または観察を含めた、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、組換え受容体のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた同定されたペプチドの任意の特徴、性質または観察を含めた、膜貫通タンパク質の1つまたは複数のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、膜貫通タンパク質のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた同定されたペプチドの任意の特徴、性質または観察を含めた、細胞表面タンパク質の1つまたは複数のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、細胞表面タンパク質のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた同定されたペプチドの任意の特徴、性質または観察を含めた、キメラ抗原受容体(CAR)の1つまたは複数のペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、CARのペプチド(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、ペプチド同定情報は、CARタンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。
【0114】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、タンパク質同定情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた同定されたタンパク質の任意の特徴、性質または観察、例えば、存在量および液体クロマトグラフからの溶出時間を含めた、1つまたは複数のタンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた1つまたは複数の組換え受容体の任意の特徴、性質または観察を含めた、1つまたは複数の組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、組換え受容体(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた1つまたは複数の膜貫通タンパク質の任意の特徴、性質または観察を含めた、1つまたは複数の膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、膜貫通タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた1つまたは複数の細胞表面タンパク質の任意の特徴、性質または観察を含めた、1つまたは複数の細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、細胞表面タンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、マススペクトロメトリー技術による分析から得られた1つまたは複数のCARの任意の特徴、性質または観察を含めた、1つまたは複数のキメラ抗原受容体(CAR)(その任意の翻訳後修飾を含む)の同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、CAR(その任意の翻訳後修飾を含む)の事前選択されたサブセットの同一性を含む。いくつかの態様では、タンパク質同定情報は、CAR(その任意の翻訳後修飾を含む)またはその1つもしくは複数の断片のアミノ酸配列情報を含む。
【0115】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、MSイオン、ペプチドおよび/またはタンパク質(その任意の翻訳後修飾を含む)の存在を含めた、定性的情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、組換え受容体またはその1つもしくは複数の断片の定性的情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、膜貫通タンパク質またはその1つもしくは複数の断片の定性的情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、細胞表面タンパク質またはその1つもしくは複数の断片の定性的情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、キメラ抗原受容体(CAR)またはその1つもしくは複数の断片の定性的情報を含むデータ成分を含む。
【0116】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、定量的情報(すなわち、存在量情報)を含むデータ成分を含む。多種多様な定量的マススペクトロメトリー技術が当技術分野において公知である。定量的マススペクトロメトリー技術は、例えば、絶対定量化(例えば、選択反応モニタリングを介した)、半定量化(例えば、化学標識化を介した)、および相対定量化(例えば、スペクトルカウント法を介した)を提供することが可能である。いくつかの態様では、定量的情報は、絶対定量化に基づく。いくつかの態様では、定量的情報は、半定量化に基づく。いくつかの態様では、定量的情報は、相対定量化に基づく。
【0117】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、構造的情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、内因的にかつ試料調製中に生じる修飾を含めた、翻訳後修飾を含むデータ成分を含む。
【0118】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルはさらに、理論的情報を含むデータ成分を含む。いくつかの態様では、理論的情報は、限定されないがマススペクトロメトリー技術を含む任意の方法から得られた公知の情報に基づく。例えば、参照マススペクトロメトリープロファイルは、タンパク質またはペプチドの公知の配列に基づく理論的MSイオン情報を含み得る。
【0119】
いくつかの態様では、本出願において開示される方法は、少なくとも1つのデータ成分を含むマススペクトロメトリープロファイルを想定しており、この場合の少なくとも1つのデータ成分は、1つまたは複数のデータ点を含む。いくつかの態様では、2つ以上のデータ成分を含むマススペクトロメトリープロファイルにおいて、2つ以上のデータ成分は、マススペクトロメトリー技術を介して取得されたデータのいくつもの情報提供レベルからの情報、例えば、ペプチド同定情報およびその定量的情報を含み得る。本明細書において開示されるマススペクトロメトリープロファイルは、1つのマススペクトロメトリー分析および/または技術を介して得られた情報に限定されない。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、平均化されたまたは組み合わされた情報を含むデータ成分を含み、この場合の平均化されたまたは組み合わされた情報は、2つ以上のマススペクトロメトリー分析および/または技術からのデータを含む。
【0120】
いくつかの態様では、本出願において開示される方法は、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたはマススペクトロメトリー分析全体にわたる1つまたは複数のデータ成分におけるあるいは複数の試験操作細胞組成物などの1つまたは複数の分析された試料における変動または分散を説明する、参照マススペクトロメトリープロファイルまたは試験マススペクトロメトリープロファイルなどのマススペクトロメトリープロファイルの作成および/または使用を想定している。例えば、当業者は、同じ試料の2つ以上のマススペクトロメトリー分析が、測定されたクロマトグラフィー溶出時間、m/z値、相対強度または存在量値ならびに質量およびAUCなどの関連または派生した測定結果における差を含め、いくらか変動のあるデータをもたらし得ることを容易に認識するだろう。いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルまたは試験マススペクトロメトリープロファイルなどのマススペクトロメトリープロファイルは、2つ以上のマススペクトロメトリー分析の平均である。さらに、いくつかの態様では、本明細書に記載される方法において使用するための参照マススペクトロメトリープロファイルなどのマススペクトロメトリープロファイルを生成するために、2つ以上のマススペクトロメトリープロファイルまたは2つ以上のマススペクトロメトリー分析からのデータの少なくとも一部分をまとめることが望ましい場合がある。2つ以上のマススペクトロメトリープロファイルまたは2つ以上のマススペクトロメトリー分析からのデータから参照マススペクトロメトリープロファイルまたは試験マススペクトロメトリープロファイルなどのマススペクトロメトリープロファイルを生成するための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、利用可能なプロテオミクスソフトウェアを含む。
【0121】
いくつかの態様では、ペプチドまたはタンパク質(その翻訳後修飾を含む)などの測定種のm/z値は、マススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定されたm/z値の変動は、マススペクトロメーターによって得られた測定結果におけるまたは異なるマススペクトロメーター全体にわたる増減に起因する。
【0122】
いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値は、同じ試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値は、同じ細胞組成物からの複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値は、複数の細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。
【0123】
いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの曲線下面積(AUC)値は、同じ試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドのAUC値は、同じ細胞組成物からの複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドのAUC値は、複数の細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。
【0124】
いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間は、同じ試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間は、同じ細胞組成物からの複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間は、複数の細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。
【0125】
いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルまたは試験マススペクトロメトリープロファイルなどのマススペクトロメトリープロファイルは、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析全体にわたる1つまたは複数のデータ成分に基づいて構築される。いくつかの態様では、データ成分の各々は、1つまたは複数のMSイオンシグナルピークを含む。
【0126】
いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルまたは試験マススペクトロメトリープロファイルなどのマススペクトロメトリープロファイルは、平均マススペクトロメトリープロファイルである。いくつかの態様では、平均マススペクトロメトリープロファイルは、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析全体にわたる、測定種、例えば、ペプチドの平均強度値を含む。いくつかの態様では、平均マススペクトロメトリープロファイルは、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析全体にわたる、測定種、例えば、ペプチドの平均AUC値を含む。いくつかの態様では、平均マススペクトロメトリープロファイルは、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析全体にわたる、測定種、例えば、ペプチドの平均溶出時間を含む。いくつかの態様では、平均マススペクトロメトリープロファイルは、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析全体にわたる、測定種、例えば、ペプチドの平均m/zを含む。平均データ成分を決定する例示的な方法は、生データ成分、正規化データ成分または前処理データ成分の平均値、中央値、加重平均、またはその存在、非存在もしくはレベルの様式を取得することを含むが、それに限定されない。
【0127】
いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルはさらに、複数のマススペクトロメトリープロファイル全体にわたるすべてのMSイオンシグナルピークからの平均化されていない強度値を含む。いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルはさらに、複数のマススペクトロメトリープロファイル全体にわたるすべてのMSイオンシグナルピークの平均化されていないAUC値を含む。いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、複数のマススペクトロメトリープロファイル全体にわたるすべてのMSイオンシグナルピークの平均化されていない溶出時間を含む。
【0128】
本明細書において開示されるマススペクトロメトリープロファイルは、多種多様な細胞試料から得てもよく、その試料は、いくつもの異なる手法で、マススペクトロメトリー技術用に調製され、マススペクトロメトリー技術によって分析することができる。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、タンパク質を含む試料から得られた情報を含むデータ成分を含み、この場合の試料の少なくとも2つのアリコートは、少なくとも2つの異なる試料調製技術を使用して、1つまたは複数のマススペクトロメトリー技術による分析のために調製される。本開示に照らして、当業者は、マススペクトロメトリープロファイルを構成し得るものの範囲が広範であること、および本出願の開示が本明細書において提供される例示的な説明に限定されないことを容易に認識するだろう。
【0129】
本出願において開示される方法は、例えば、試験試料および参照試料から得られた、マススペクトロメトリープロファイルを想定している。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、試験マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の試験マススペクトロメトリープロファイルは、試験操作細胞組成物からの試料のものである。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、試験マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の試験マススペクトロメトリープロファイルは、試験操作細胞組成物からの試料のものであり、前記の試験操作細胞組成物は、組換え受容体を含む免疫細胞を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、試験マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の試験マススペクトロメトリープロファイルは、試験操作細胞組成物からの試料からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、試験マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の試験マススペクトロメトリープロファイルは、試験操作細胞組成物からの試料からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、前記の試験操作細胞組成物は、組換え受容体を含む免疫細胞を含む。いくつかの態様では、試験マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、同じまたは異なる。いくつかの態様では、試験マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、1つまたは複数の異なる試料調製技術を使用して調製された試料の分析である。いくつかの態様では、試験マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、同じまたは異なり、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、1つまたは複数の異なる試料調製技術を使用して調製された試料の分析である。
【0130】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作細胞組成物からの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、前記の試験操作細胞組成物が組換え受容体を含む免疫細胞を含む工程を含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作細胞組成物からの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、前記の試験操作細胞組成物が組換え受容体を含む免疫細胞を含む工程を含む。
【0131】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルである。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物からの試料のものである。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物からの試料のものであり、前記の参照細胞組成物は、免疫細胞を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物からの試料のものであり、前記の参照細胞組成物は、組換え受容体によるトランスフェクションの前の免疫細胞を含む。
【0132】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物からの試料からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物からの試料からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、前記の参照細胞組成物は、免疫細胞を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルであり、この場合の参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物からの試料からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、前記の参照細胞組成物は、組換え受容体によるトランスフェクションの前の免疫細胞を含む。いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、同じまたは異なる。いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、1つまたは複数の異なる試料調製技術を使用して調製された試料の分析である。いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析からの情報を含む1つまたは複数のデータ成分を含み、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、同じまたは異なり、この場合の1つまたは複数のマススペクトロメトリー分析は、1つまたは複数の異なる試料調製技術を使用して調製された試料の分析である。
【0133】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、参照操作細胞組成物からの試料の参照マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、前記の参照操作細胞組成物が免疫細胞を含む工程を含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して参照操作細胞組成物からの試料の参照マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、前記の参照操作細胞組成物が免疫細胞を含む工程を含む。
【0134】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、参照操作細胞組成物からの試料の参照マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、前記の参照操作細胞組成物が組換え受容体を含む免疫細胞を含む工程を含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリー技術を使用して、参照操作細胞組成物からの試料の参照マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、参照操作細胞組成物が組換え受容体を発現する免疫細胞を含有するかそれが濃縮されているまたはそのような免疫細胞が組換え受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含有する工程を含む。
【0135】
B. マススペクトロメトリープロファイルの比較
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、マススペクトロメトリープロファイルを比較することを含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、1つまたは複数の試験マススペクトロメトリープロファイルを比較することを含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、1つまたは複数の参照マススペクトロメトリープロファイルを比較することを含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、試験マススペクトロメトリープロファイルを参照マススペクトロメトリープロファイルと比較することを含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、1つまたは複数の試験マススペクトロメトリープロファイルを1つまたは複数の参照マススペクトロメトリープロファイルと比較することを含む。
【0136】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルを細胞組成物の間およびその中で比較する提供される方法は、操作された細胞組成物を産生するための特定のプロセスに関係または関連し得る、組換え受容体またはその部分もしくは成分の特徴および性質を含めた、操作された細胞組成物の特徴または性質;ある特定の試薬の有無を含めたある特定のインキュベーションまたは培養条件の効果;抗原または抗イディオタイプ抗体への曝露時など、刺激、操作(例えば、形質導入)または組換え受容体依存性活性化時の操作された細胞組成物における変化または変更を解明するために使用してもよい。いくつかの局面では、そのような方法は、操作された細胞組成物の生成のためのプロセスを通知または容易にすることができる機能的細胞レベルを同定するために使用することができる。いくつかの局面では、提供される方法は、フローサイトメトリーおよびトランスクリプトームに基づく分析方法などの細胞タンパク質を評価または特徴付けるための既存の方法と比較して、より強力でありかつ/または直交情報を提供する。例えば、本明細書において開示されるマススペクトロメトリーに基づく方法は、少なくとも以下について細胞試料を偏りのない様式で(例えば、事前の標的仮説なしに)同時にプロファイリングする能力を提供することが可能である:ペプチドおよびタンパク質発現、シークエンシング情報、定量化、細胞位置決定(例えば、細胞表面タンパク質の単離などの選択された試料調製技術を介した)および翻訳後修飾。
【0137】
したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載される方法の有用性は、試験マススペクトロメトリープロファイルおよび参照マススペクトロメトリープロファイルなどの第1のマススペクトロメトリープロファイルおよび第2のマススペクトロメトリープロファイルが、科学的に意義のある比較、例えば、タンパク質またはペプチドの存在および/または存在量の差を提供することが可能であることに依拠し得る。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルの生成は、したがって、単一のタンパク質および/またはペプチドが第1の試料および第2の試料中に存在する場合に、第1の試料の第1のマススペクトロメトリープロファイルおよび第2の試料の第2のマススペクトロメトリープロファイルが、単一のタンパク質および/またはペプチドに部分的または全体的に起因する重複データ成分を含有し得るような、試料調製技術および/またはマススペクトロメトリー技術の設計および/または選択を必要とするだろう。例えば、いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、第1の細胞組成物からの第1の試料および第2の細胞組成物からの第2の試料を同じまたは類似の試料調製技術および同じまたは類似のマススペクトロメトリー技術を使用して分析し、第1の試料の第1のマススペクトロメトリープロファイルおよび第2の試料の第2のマススペクトロメトリープロファイルを生成することを含み、それによって、第1のマススペクトロメトリープロファイルと第2のマススペクトロメトリープロファイルの比較が可能となる。
【0138】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、参照マススペクトロメトリープロファイルと比較した試験マススペクトロメトリープロファイルにおける少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それによって、組換え受容体を含む細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定することを含む。本出願を通して記載されるように、マススペクトロメトリープロファイル内に含まれる少なくとも1つのデータ成分は、取得されたMSシグナルデータの任意の後続の分析からの任意のデータおよびそれから得られた情報を含め、単一または一連のマススペクトロメトリー分析から得られた任意の単一の情報提供データまたは任意の組み合わせの情報提供データを含む。したがって、例えば、マススペクトロメトリープロファイルにおける少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差は、以下における差を含み得る:MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報(ペプチド配列における差など)、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造的情報、および翻訳後修飾。
【0139】
いくつかの態様では、本出願において開示される方法は、複数のマススペクトロメトリープロファイルまたはマススペクトロメトリー分析全体にわたる1つまたは複数のデータ成分におけるあるいは複数の試験操作細胞組成物などの1つまたは複数の分析された試料における変動または分散の量を算出することを想定している。例えば、当業者は、同じ試料の2つ以上のマススペクトロメトリー分析が、測定されたクロマトグラフィー溶出時間、m/z値、相対強度または存在量値ならびに質量およびAUCなどの関連または派生した測定結果における差を含め、いくらか変動のあるデータをもたらし得ることを容易に認識するだろう。
【0140】
いくつかの態様では、ペプチドまたはタンパク質(その翻訳後修飾を含む)などの測定種のm/z値は、マススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定されたm/z値の変動は、マススペクトロメーターによって得られた測定結果におけるまたは異なるマススペクトロメーター全体にわたる増減に起因する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの測定されたm/z値における変動または分散の量が算出される。
【0141】
いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値は、同じ試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値は、同じ細胞組成物からの複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値は、複数の細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの相対強度または存在量値における変動または分散の量が算出される。
【0142】
いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの曲線下面積(AUC)値は、同じ試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドのAUC値は、同じ細胞組成物からの複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドのAUC値は、複数の細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドのAUC値における変動または分散の量が算出される。
【0143】
いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間は、同じ試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間は、同じ細胞組成物からの複数の試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間は、複数の細胞組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルまたは分析間で変動する。いくつかの態様では、測定種、例えば、ペプチドの溶出時間における変動または分散の量が算出される。
【0144】
データ成分全体にわたる変動の量を決定する例示的な方法は、生データ成分、正規化データ成分または前処理データ成分のレベルの標準偏差、範囲または四分位範囲を取得すること、あるいは、1つまたは生データ成分、正規化データ成分または前処理データ成分の存在または非存在の確率または割合を取得することを含むが、それらに限定されない。
【0145】
C. マススペクトロメトリー技術
本出願は、マススペクトロメトリープロファイルを決定することを含めた本明細書において開示される方法および方法の工程との使用に適した、多種多様なマススペクトロメトリー技術を想定している。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、1つまたは複数のマススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作細胞組成物からの試料を分析することを含む。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、1つまたは複数のマススペクトロメトリー技術を使用して、参照細胞組成物からの試料を分析することを含む。本明細書において考察されるように、いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、MSイオン情報、ペプチドおよび/またはタンパク質同定/配列情報、翻訳後修飾情報ならびに定量化情報の任意の組み合わせのデータ成分を含め、試料に関する膨大な量の情報を提供するデータを取得することができる。次に、マススペクトロメーター技術から取得されたデータ成分またはその複数が、例えば、マススペクトロメトリープロファイルを作成するために使用される。本項だけでなく本出願全体を通して例示される以下のマススペクトロメトリー技術は、マススペクトロメトリープロファイルを作成するために有用なマススペクトロメトリー技術の例示的な技術である。しかしながら、本明細書において開示される方法は、本明細書において開示されるマススペクトロメトリー技術に限定されない。本明細書における開示に照らして、当業者は、本明細書において開示される方法に有用なマススペクトロメトリー技術の範囲を認識するだろう。
【0146】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、液体クロマトグラフィーマススペクトロメトリー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、液体クロマトグラフィータンデムマススペクトロメトリー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、液体クロマトグラフィー技術を含む。
【0147】
本出願は、本明細書において開示される方法に適した多種多様な液体クロマトグラフィー技術を想定している。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、プロテオミクス用途に適した液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドを分離することに適した液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、液体クロマトグラフィー技術を介してペプチドを分離することを含む。
【0148】
本出願によって想定される液体クロマトグラフィー技術は、ペプチドを分離するための方法およびマススペクトロメトリー技術と適合可能な液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、高速液体クロマトグラフィー技術を含む。したがって、いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、超高速液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、高流量液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、マイクロ流量液体クロマトグラフィー技術またはナノ流量液体クロマトグラフィー技術などの低流量液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、マススペクトロメーターに接続されたオンライン液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、オンライン液体クロマトグラフィー技術は、高速液体クロマトグラフィー技術である。いくつかの態様では、オンライン液体クロマトグラフィー技術は、超高速液体クロマトグラフィー技術である。
【0149】
本明細書において想定される液体クロマトグラフィー技術は、液体クロマトグラフを使用することを含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、高速液体クロマトグラフを含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、超高速液体クロマトグラフを含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、高流量液体クロマトグラフを含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、マイクロ流量液体クロマトグラフまたはナノ流量液体クロマトグラフなどの低流量液体クロマトグラフを含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、マススペクトロメーターに接続されたオンライン液体クロマトグラフを含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、オンライン高速液体クロマトグラフを含み、この場合のオンライン高速液体クロマトグラフは、マススペクトロメーターと接続される。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、オンライン超高速液体クロマトグラフを含み、この場合のオンライン超高速液体クロマトグラフは、マススペクトロメーターと接続される。
【0150】
本出願において開示される方法との使用に想定される液体クロマトグラフィー技術および液体クロマトグラフは、マススペクトロメーターへの試料の導入の前に、クロマトグラフィーカラムを使用して、タンパク質の混合物および/またはプチドの混合物を含む試料を分離することに適する。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、逆相液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、順相液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、サイズ排除液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、高速アニオン交換クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、親水性相互作用クロマトグラフィー技術を含む。
【0151】
いくつかの態様では、液体クロマトグラフィー技術は、キャピラリー電気泳動(CE)技術を含む。
【0152】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、オートサンプラー技術を含む。いくつかの態様では、液体クロマトグラフは、オートサンプラーに接続される。
【0153】
一部の態様では、マススペクトロメトリー技術は、イオン化技術を含む。本出願によって想定されるイオン化技術は、マススペクトロメーターを介した分析のためにタンパク質およびペプチドを荷電することが可能な技術を含む。いくつかの態様では、イオン化技術は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)である。いくつかの態様では、イオン化技術は、ナノエレクトロスプレーイオン化(nESI)である。いくつかの態様では、イオン化技術は、大気圧化学イオン化である。いくつかの態様では、イオン化技術は、大気圧光イオン化である。いくつかの態様では、イオン化技術は、マトリックス支援レーザー剥離イオン化(MALDI)である。一部の態様では、マススペクトロメトリー技術は、エレクトロスプレーイオン化、ナノエレクトロスプレーイオン化、またはマトリックス支援レーザー剥離イオン化(MALDI)技術を含む。
【0154】
本明細書において開示されるマススペクトロメトリー技術は、タンパク質混合物および/またはペプチド混合物を含む試料をマススペクトロメーターシステムで分析することを含む。本明細書において開示される方法との使用に想定されるマススペクトロメーターシステムは、高分解能マススペクトロメーター、低分解能マススペクトロメーター、およびそれらの任意の組み合わせのハイブリッド、およびそれらとの関連技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、イオントラップを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、四重極イオントラップを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、オービトラップを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、四重極-オービトラップを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、飛行時間型(TOF)マススペクトロメーターを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、四重極-飛行時間型(Q-TOF)マススペクトロメーターを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、四重極イオントラップ-飛行時間型(QIT-TOF)マススペクトロメーターを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、トリプル四重極(QQQ)を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT)マススペクトロメーターを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、四重極-フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Q-FT)マススペクトロメーターを含む。
【0155】
いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、オンライン液体クロマトグラフなどの液体クロマトグラフと接続される。いくつかの態様では、マススペクトロメーターシステムは、液体クロマトグラフおよびオートサンプラーと接続される。
【0156】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、陽イオンモード技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、陰イオンモード技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、飛行時間型(TOF)マススペクトロメトリー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、四重極飛行時間型(Q-TOF)マススペクトロメトリー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、イオンモビリティマススペクトロメトリー技術を含む。いくつかの態様では、イオントラップ、またはシングルもしくはトリプル四重極アプローチなどの低分解能マススペクトロメトリー技術が適切である。
【0157】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、MS1データ取得を120,000のスキャン分解能で実施することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、MS1データ取得を約100m/z~約2000m/z、例えば約325m/z~約2000m/zのスキャン範囲で実施することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、MS2データ取得を30,000のスキャン分解能で実施することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、MS2データ取得を約100m/z~約2000m/z、例えば約200m/z~約2000m/zのスキャン範囲で実施することを含む。
【0158】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、タンデムマススペクトロメトリー技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、データ依存型取得技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、データ非依存型取得技術を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、選択イオンモニタリング(SIM)、選択反応モニタリング(SRM)および多重反応モニタリング(MRM)を含めた標的化マススペクトロメトリー取得技術を含む。
【0159】
いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、定量的マススペクトロメトリー技術である。いくつかの態様では、定量的マススペクトロメトリー技術は、SRMまたはMRMなどの絶対定量化技術である。いくつかの態様では、定量的マススペクトロメトリー技術は、標識に基づく定量化法などの半定量的技術である。いくつかの態様では、定量的マススペクトロメトリー技術は、スペクトルカウント法などの相対定量化技術である。いくつかの態様では、定量的マススペクトロメトリー技術は、標識に基づく定量化技術である。いくつかの態様では、定量的マススペクトロメトリー技術は、無標識定量化技術である。
【0160】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法はさらに、マススペクトロメトリー技術によって取得されたデータを処理することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドまたはタンパク質の得られたMSイオンシグナルを処理することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ピーク検出を含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドイオンのイオン化強度を決定することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドイオンのピーク高を決定することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドイオンのMSシグナルのピーク面積を決定することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドおよび/またはタンパク質のピーク体積を決定することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドイオンおよび/またはタンパク質イオンを定量することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドおよび/またはタンパク質を定量することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、プロテオミクスソフトウェアを介するなどして、ペプチドおよび/またはタンパク質の配列を同定することを含む。いくつかの態様では、プロテオミクスソフトウェアは、ヒトまたはマウスのタンパク質データベースなどの生物の遺伝子またはタンパク質配列の公知のデータベースを使用して、ペプチドおよび/またはタンパク質配列を同定する。いくつかの態様では、プロテオミクスソフトウェアは、ペプチドおよび/またはタンパク質配列をデノボで同定する。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、ペプチドおよび/またはタンパク質の同定を手動で検証することを含む。いくつかの態様では、マススペクトロメトリー技術は、スペクトルライブラリを介してペプチドおよび/またはタンパク質を同定することを含む。一般に、スペクトルライブラリの使用は、ペプチドおよび/またはタンパク質系に関して得られた知識の帰属を可能にし、データ分析の速度を高め、エラーを減少させる。
【0161】
D. 試料調製技術
本開示のいくつかの局面では、本明細書において開示される方法は、試料調製技術を実施することを含む。一般に、細胞試料は、タンパク質/ペプチドの単離、洗剤の除去、試料の任意の段階での濃縮/プール化および/またはタンパク分解消化を含め、マススペクトロメトリー技術との適合性のための処理が必要であり得る。いくつかの態様では、試料調製技術は、ポリペプチド単離技術を含む。いくつかの態様では、ポリペプチド単離技術は、細胞プロテオームのサブセット、例えば、細胞表面タンパク質を他の細胞成分から単離する。いくつかの態様では、ポリペプチド単離技術は、細胞プロテオームを、例えば、全細胞プロテオーム分析のために、他の細胞成分から単離する。いくつかの態様では、試料調製技術は、ポリペプチド処理技術を含む。本明細書において開示される方法のいくつかの態様では、本方法は、マススペクトロメトリー技術と適合可能である試料を得ることを含む。
【0162】
1. ポリペプチド単離技術
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、ポリペプチド単離技術を提供し、この場合のポリペプチド単離技術は、細胞プロテオームのサブセットを他の細胞成分から単離することに適する。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、ポリペプチド単離技術を含み、この場合のポリペプチド単離技術を実施することは、組換え受容体を他の細胞成分から単離する。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、ポリペプチド単離技術を含み、この場合のポリペプチド単離技術を実施することは、膜貫通タンパク質を他の細胞成分から単離する。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、ポリペプチド単離技術を含み、この場合のポリペプチド単離技術を実施することは、細胞表面タンパク質を他の細胞成分から単離する。いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、ポリペプチド単離技術を含み、この場合のポリペプチド単離技術を実施することは、キメラ抗原受容体(CAR)を他の細胞成分から単離する。
【0163】
いくつかの態様では、ポリペプチド単離技術は、(a)細胞組成物試料からの試料中に存在する1つまたは複数のタンパク質を標識し、それによって、標識された細胞組成物試料を生成すること;(b)標識された細胞組成物試料の細胞を溶解し、それによって、溶解された細胞組成物試料を生成すること;ならびに(c)溶解された細胞組成物から1つまたは複数のタンパク質を単離して、1つまたは複数の単離されたタンパク質を得ることを含む。いくつかの態様では、ポリペプチド単離技術は、(a)操作された細胞組成物試料の細胞(操作された細胞組成物試料の細胞は、組換え受容体を含む)上に存在する1つまたは複数の細胞表面タンパク質を標識し、それによって、標識された細胞組成物試料を生成すること;(b)標識された細胞組成物試料の細胞を溶解し、それによって、溶解された細胞組成物試料を生成すること;ならびに(c)溶解された細胞組成物試料から1つまたは複数の細胞表面タンパク質を単離して、1つまたは複数の単離されたタンパク質を得ることを含む。
【0164】
いくつかの態様では、細胞を溶解することは、洗剤の存在下でのインキュベーションを含む。いくつかの態様では、洗剤は、非イオン性洗剤、陰イオン性洗剤、陽イオン性洗剤、または双性イオン性洗剤である。例示的な洗剤は、マルトシド、チオマルトシド、アルキルグリコシド、およびグリコールを含むが、それらに限定されない。例示的な洗剤は、n-デシル-β-D-マルトシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、n-ウンデシル-β-D-マルトシド、Cymal-5、Cymal-6、n-ドデシル-β-D-チオマルトピラノシド、オクチルグルコース、ネオペンチルグリコール、ポリオキシエチレン、Triton X-100、Triton X-114、C8E4、C8E5、C12E8、anapoe-35(Brij-35)、anapoe-58(Brij-58)、N-40、Tween 20、Tween 80、エチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルグルコシド、およびオクチルチオグルコシドを含むが、それらに限定されない。
【0165】
いくつかの態様では、細胞を溶解することは、非イオン性洗剤、陰イオン性洗剤、陽イオン性洗剤、双性イオン性洗剤、またはその2つ以上の洗剤の任意の組み合わせの存在下でのインキュベーションを含む。
【0166】
いくつかの態様では、細胞を溶解することは、変性洗剤の存在下でのインキュベーションを含む。いくつかの態様では、変性洗剤は、陰イオン性洗剤または陽イオン性洗剤である。例示的な変性洗剤は、ドデシル硫酸ナトリウムおよびエチルトリメチルアンモニウムブロミドを含むが、それらに限定されない。いくつかの態様では、変性洗剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるかそれを含む。
【0167】
いくつかの態様では、細胞を溶解することは、非変性洗剤の存在下でのインキュベーションを含む。いくつかの態様では、非変性洗剤は、非イオン性洗剤または双性イオン性洗剤である。例示的な非変性洗剤は、Triton X-100、コール酸塩などの胆汁酸塩、およびCHAPSを含むが、それらに限定されない。
【0168】
いくつかの態様では、洗剤は、マススペクトロメトリーに適合可能な洗剤である。
【0169】
いくつかの態様では、細胞を溶解することは、洗剤の存在下でのインキュベーションを含み、この場合の洗剤の濃度は、約0.1%~約5%、例えば、約0.1%~約4.5%、約0.1%~約4%、約0.5%~約3%、約0.5%~約2.5%、約0.5%~約2%、約0.5%~約1.5%、約0.8%~約1.2%、または約0.9%~約1.1%のいずれかである。いくつかの態様では、細胞を溶解することは、洗剤の存在下でのインキュベーションを含み、この場合の洗剤の濃度は、約5%未満、例えば、約4.5%未満、約4%未満、約3.5%未満、約3%未満、約2.5%未満、約2%未満、約1.5%未満、約1%未満、または約0.5%未満のいずれかである。いくつかの態様では、細胞を溶解することは、洗剤の存在下でのインキュベーションを含み、この場合の洗剤の濃度は、約0.5%超、例えば、約1%超、約1.5%超、約2%超、約2.5%超、約3%超、約3.5%超、約4%超、または約4.5%超のいずれかである。いくつかの態様では、細胞を溶解することは、洗剤の存在下でのインキュベーションを含み、この場合の洗剤の濃度は、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
【0170】
いくつかの態様では、表面タンパク質を標識することは、親和性剤または親和性ハンドルで標識することを含む。いくつかの態様では、表面タンパク質を標識することは、親和性剤または親和性ハンドルで標識することを含み、この場合の親和性剤または親和性ハンドルは、細胞非透過性である。いくつかの態様では、表面タンパク質を標識することは、ビオチン標識化を含む。いくつかの態様では、表面タンパク質を標識することは、第一級アミンのビオチン標識化を含む。いくつかの態様では、表面タンパク質を標識することは、クリックケミストリー試薬で標識することを含む。
【0171】
いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質は、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)、またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される。いくつかの態様では、1つまたは複数のタンパク質は、相補的クリックケミストリー試薬を含む試薬を使用して単離される。
【0172】
いくつかの態様では、ポリペプチド単離技術は、細胞プロテオームを、例えば、全細胞プロテオーム分析のために、他の細胞成分から単離する。
【0173】
いくつかの態様では、ポリペプチド単離技術はさらに、マススペクトロメトリー技術と適合可能でない物質、例えば、界面活性剤または洗剤を試料から除去することを含む、ポリペプチド精製工程を含む。
【0174】
2. ポリペプチド処理技術
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、ポリペプチド処理技術を実施することを含む。一般に、ポリペプチド単離技術に続いて、ポリペプチド試料は、溶媒改質、タンパク分解消化および/または濃縮を含め、マススペクトロメトリー技術との適合性のための処理が必要であり得る。そのようなポリペプチド単離技術は、当技術分野において周知であり、本開示の方法との使用に想定される。本明細書において提供されるのは、例示的なポリペプチド処理技術であるが、それらに本開示の方法が限定されるべきではない。
【0175】
いくつかの態様では、ポリペプチド処理技術は、全タンパク質処理技術である。いくつかの態様では、全タンパク質処理技術は、ポリペプチド試料の溶媒を改質または調節することを含む。いくつかの態様では、全タンパク質処理技術は、ポリペプチド試料を濃縮することを含む。いくつかの態様では、全タンパク質処理技術は、ポリペプチド試料中のタンパク質を変性させることを含む。いくつかの態様では、全タンパク質処理技術は、ポリペプチド試料中のタンパク質を精製することを含む。いくつかの態様では、ポリペプチド試料の溶媒を改質または調節すること、例えば、トリフルオロ酢酸またはギ酸などの酸をポリペプチド試料に加えること。
【0176】
いくつかの態様では、ポリペプチド処理技術は、消化に基づくポリペプチド処理技術である。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、ポリペプチド試料中のタンパク質を変性させることを含む。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、ポリペプチド試料の溶媒を改質または調節することを含む。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、ヨードアセトアミドなどの還元剤および/またはアミノ酸改質剤をポリペプチド試料に加えることを含む。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、タンパク分解消化および/または化学的消化を介するなどの、ポリペプチド消化技術を含む。いくつかの態様では、ポリペプチド消化技術は、プロテアーゼを使用した酵素的消化を含む。いくつかの態様では、プロテアーゼは、トリプシン、Lys-C、IdeS、IdeZ、PNGase F、テルモリシン、ペプシン、エラスターゼ、Arg-C、TEV、Glu-C、Asp-N、および第Xa因子の1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、試料消化は、酸加水分解などの化学的消化を含む。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、ポリペプチド試料を脱塩することを含む。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、ポリペプチド試料を濃縮することを含む。いくつかの態様では、消化に基づくポリペプチド処理技術は、ポリペプチド試料中のペプチドを精製することを含む。いくつかの態様では、ポリペプチド試料の溶媒を改質または調節すること、例えば、トリフルオロ酢酸またはギ酸などの酸をポリペプチド試料に加えること。
【0177】
いくつかの態様では、ポリペプチド試料は、第1のアリコートと第2のアリコートに分割され、この場合の第1のアリコートは、第1のポリペプチド処理技術を使用して処理され、この場合の第2のアリコートは、第2のポリペプチド処理技術を使用して処理され、そして、この場合の第1のポリペプチド処理技術と第2のポリペプチド処理技術は同じである。いくつかの態様では、ポリペプチド試料は、第1のアリコートと第2のアリコートに分割され、この場合の第1のアリコートは、第1のポリペプチド処理技術を使用して処理され、この場合の第2のアリコートは、第2のポリペプチド処理技術を使用して処理され、そして、この場合の第1のポリペプチド処理技術と第2のポリペプチド処理技術は異なる。
【0178】
E. グリカンの測定
特定の態様では、酵素、例えば、グリコトランスフェラーゼの発現における変化または差は、細胞の表面上のN-グリカンの存在を検出することによって、評価、分析または決定することができる。いくつかの局面では、グリカンは、翻訳後修飾によってタンパク質に付着され、例えば、糖タンパク質またはプロテオグリカンをもたらす。一般に、グリカンは、表面タンパク質にコンジュゲートされるなどして、細胞の外部表面上に見いだされる。いくつかの局面では、グリカンは、オリゴ糖またはグリコシド連結された多数の単糖を含有する。
【0179】
特定の態様は、特定のグリカン種は、特定の酵素、例えば、特定のグリコトランスフェラーゼによってタンパク質にコンジュゲートされるので、1つまたは複数の特定のグリカンの存在、非存在、レベルまたは量の検出は、特定の酵素、例えば、特定のグリコトランスフェラーゼの存在、非存在、レベル、量または活性を示すことを想定しており、対応する活性は、例えば、翻訳後修飾としての特定のグリカンのタンパク質へのコンジュゲーションである。いくつかの態様では、特定のグリカンの付加によるタンパク質の翻訳後修飾は、特定のグリコトランスフェラーゼによって媒介される。そのようなグリコトランスフェラーゼは、MGAT1、MGAT2、MGAT3、MGAT4A、MGAT4B、MGAT5およびMGAT5Bという遺伝子によってコードされるものを含むが、それらに限定されない。いくつかの態様では、細胞表面上に存在するグリカン、例えば、N-グリカンの存在、非存在、レベルまたは量は、1つまたは複数のグリコトランスフェラーゼの存在、非存在、レベルまたは量の読み取り値として検出または測定される。特定の態様では、細胞表面上に存在するグリカン、例えば、N-グリカンの存在、非存在、レベルまたは量は、MGAT1、MGAT2、MGAT3、MGAT4A、MGAT4B、MGAT5またはMGAT5Bによってコードされる1つまたは複数のグリコトランスフェラーゼの存在、非存在、レベルまたは量の読み取り値として検出または測定される。
【0180】
ある特定の態様では、グリカンの検出は、グリカンの個々の種の量を同定および/または定量することが可能な技術によって実施してもよい。ある特定の態様では、グリカンの一種は、他のグリカン種の構造と異なる同一構造を有するグリカンを含む。特定の態様では、技術は、マススペクトロメトリー技術および/または液体クロマトグラフィー(LC)技術、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)である。いくつかの態様では、グリカンは、本明細書に、例えば、セクションIにおいて提供される任意の好適な技術を使用して検出される。
【0181】
ある特定の態様では、細胞の組成物は、組成物の細胞の表面からグリカン、例えば、N-グリカンを除去、遊離または剥離させるのに適した条件下で、インキュベート、培養または処理される。ある特定の態様では、細胞の組成物は、細胞の表面からグリカン、例えば、N-グリカンを除去、分離または剥離させるための作用物質で処理する、それとインキュベートするおよび/またはそれと接触させる。特定の態様では、細胞は、無傷であり、すなわち、細胞は、作用物質による処理の前に溶解またはホモジナイズされない。ある特定の態様では、細胞は、生細胞である。いくつかの態様では、細胞を作用物質で処理する、それとインキュベートするおよび/またはそれと接触させることは、細胞膜を破壊および/または破裂させない。いくつかの態様では、細胞は、生細胞であり、細胞を作用物質で処理する、それとインキュベートするまたはそれと接触させることは、細胞を殺傷しない。ある特定の態様では、細胞は、生細胞であり、細胞を作用物質で処理する、それとインキュベートするまたはそれと接触させることは、細胞において細胞死、例えば、アポトーシスまたはネクローシスを誘導しない。
【0182】
いくつかの態様では、細胞の組成物を、N-グリコシダーゼ、例えば、PNGase Fなどの作用物質で処理する、それとインキュベートするおよび/またはそれと接触させると、表面露出糖抱合体からのグリカン、例えば、N-グリカンの除去、分離および/または剥離がもたらされる。いくつかの態様では、糖抱合体は、タンパク質、例えば、糖タンパク質である。特定の態様では、細胞の組成物を作用物質で処理する、それと接触させるおよび/またはそれとインキュベートすると、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または剥離がもたらされる。特定の態様では、遊離、除去および/または剥離されたN-グリカンは、無傷である。いくつかの態様では、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または剥離は、グリカンの構造を損傷しない、消化しないおよび/またはそれ以外に変更しない。特定の態様では、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または剥離は、グリカンが遊離した部分、例えば、タンパク質の構造を損傷しない、消化しないおよび/またはそれ以外に変更しない。いくつかの態様では、表面露出タンパク質からのグリカンの除去、分離および/または剥離は、アスパラギンからアスパラギン酸への変換をもたらすが、それ以外、グリカンが遊離したタンパク質の構造を損傷しない、消化しないおよび/または変更しない。
【0183】
いくつかの態様では、作用物質は、糖抱合体、例えば、糖タンパク質からのグリカン、例えば、N-グリカンの除去、分離および/または剥離を容易にする、任意の作用物質である。ある特定の態様では、作用物質は、糖抱合体からグリカンを化学的に除去するが、例えば、ヒドラジン分解またはアルカリβ-脱離に限定されない。
【0184】
ある特定の態様では、作用物質は、酵素である。特定の態様では、作用物質は、糖抱合体からN結合型またはO結合型グリカンを特異的に除去、分離および/または剥離する酵素である。ある特定の態様では、作用物質は、アミダーゼである。いくつかの態様では、作用物質は、N-グリコシダーゼなどのグリコシダーゼであるかそれを含む。特定の態様では、作用物質は、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼF(EndoF)、N-グリコシダーゼA(PNGase A)もしくはN-グリコシダーゼF(PNGase F)またはそれらの組み合わせであるかそれを含む。いくつかの態様では、作用物質は、ペプチド-N4-(N-アセチル-ベータ-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼクラスのアミダーゼであるかそれを含む。特定の態様では、作用物質は、PNGase Fであるかそれを含む。
【0185】
いくつかの態様では、作用物質は、N結合型炭水化物を有するタンパク質およびペプチドから完全長オリゴ糖を遊離させるまたは遊離させることが可能である、酵素である。いくつかの態様では、作用物質は、N結合型炭水化物を有するタンパク質およびペプチドから完全長オリゴ糖を遊離させるまたは遊離させることが可能である、PNGase Fである。ある特定の態様では、作用物質は、Endo F、Endo HおよびEndo Dなどのエンドグリコシダーゼではないかそれを含まない。いくつかの態様では、Endo F、Endo HおよびEndo Dなどのエンドグリコシダーゼは、糖タンパク質から、完全長オリゴ糖を遊離させない、かつ/または、N結合型オリゴ糖のすべての一般的なクラスを切断しない。
【0186】
ある特定の態様では、作用物質は、プロテアーゼではない。いくつかの態様では、作用物質は、プロテアーゼを含まない。特定の態様では、作用物質は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、またはアスパラギンペプチドリアーゼではない。ある特定の態様では、作用物質は、エンドペプチダーゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシンン、ペプシン、パパインおよびエラスターゼではなく、かつ、それを含まない。特定の態様では、作用物質は、トリプシンではなく、かつ、それを含まない。
【0187】
特定の態様では、細胞の表面からグリカンを除去、遊離または剥離させるのに適した条件下でのインキュベーションは、細胞を作用物質と接触させる、それで処理するおよび/またはそれとインキュベートすることを含む。特定の態様では、作用物質は、PNGase Fであるかそれを含む。PNGase Fは、ペプチド-N4-(N-アセチル-ベータ-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼクラスのアミダーゼである。いくつかの態様では、PNGase Fは、アスパラギンからN-グリカンを遊離させる細菌酵素である。特定の態様では、PNGase Fは、アスパラギンから、完全な、すなわち、無傷のN-グリカンを遊離させる。ある特定の態様では、PNGase Fは、アスパラギンに付着しているオリゴマンノース型、ハイブリッド型および複合型のN-グリカンを除去する。特定の態様では、PNGase Fは、アスパラギンの窒素に付着しているN-グリカンを遊離させ、それによって、アスパラギンをアスパラギン酸に変換する。ある特定の態様では、切断は、アスパラギン残基に隣接している炭水化物のある位置で起こる。特定の態様では、作用物質は、ペプチド-N-(N-アセチル-β-N-グルコサミニル)アスパラギンアミニダーゼ活性を示す酵素であるかそれを含む。ある特定の態様では、細胞の組成物は、PNGase Fであるかそれを含む作用物質で処理する、それと接触させるまたはそれとインキュベートする。
【0188】
いくつかの態様では、PNGase Fは、組換えPGNase Fである。ある特定の態様では、PNGase Fは、変異体PNGase Fである。いくつかの態様では、PNGase Fは、フラボハクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)からクローン化された組換えPNGase Fである。特定の態様では、PNGase Fは、フラボハクテリウム・メニンゴセプチカムの全PNGase F遺伝子からクローン化される。ある特定の態様では、フラボハクテリウム・メニンゴセプチカムの全PNGase F遺伝子は、Tarentino et al., Journal of Biological Chemistry, 265(12): 6961-6966 (1990)に記載されているPNGase F遺伝子である。特定の態様では、全PNGase F遺伝子は、Uniprot Accession number P21163.2で指定されるPNGase FポリペプチドをコードするPNGase F遺伝子である。いくつかの態様では、全PNGase F遺伝子は、SEQ ID NO:61に示されるアミノ酸配列を有するPNGase FポリペプチドをコードするPNGase F遺伝子である。
【0189】
特定の態様では、作用物質は、フラボハクテリウム・メニンゴセプチカムのゲノム由来の全ペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F)遺伝子である全PNGaseから、T7発現ベクターpET 29-b(Novagen)およびpQE-T7(Qiagen)にクローニングされ、発現されかつ精製されたポリヌクレオチドから産生される、PNGase Fであるかそれを含む。ある特定の態様では、PNGase Fをコードするポリヌクレオチドは、フレーム内C末端ヒスチジンタグを含有する。いくつかの態様では、PNGase F HISタグ化構築物をコードするポリヌクレオチドは、pETおよびpQEなどのT7発現ベクターからの遺伝子産物の高レベルなイソプロピル-ベータ-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性発現を可能にするlacUV5プロモーターの制御下にあるT7 RNAポリメラーゼの遺伝子を担持する細菌系統BL21 Star(DE3)に形質転換される。特定の態様では、細菌形質転換および細胞培養成長を実施し、細菌細胞を遠心分離によって収集し、プロテアーゼ阻害剤(SigmaFast EDTA-free)を含有する緩衝液で細胞ペレットを洗浄する。特定の態様では、全細胞タンパク質溶解物は、Avestin C5高圧ホモジナイザーを使用して作製される。いくつかの態様では、組換えPNGase Fヒスチジンタグ化タンパク質のためのFPLC精製法は、Ni-NTA(Qiagen)カラムおよびIMAC HisTrap HP(GE Healthcare)カラムを使用する。いくつかの態様では、IPTG誘導培養物からの細菌細胞溶解物をカラムにローディングし、結合したC末端Hisタグを有するPNGase Fポリペプチドを洗浄し、結合緩衝液中の段階的イミダゾール勾配を使用して溶出させる。いくつかの態様では、精製されたC末端を有するPNGase Fは、PBS緩衝液中に透析され、貯蔵される。特定の態様では、作用物質は、C末端Hisタグを有する組換えPNGase FであるPNGaseであるか、もしくはそれを含むか、またはPowers et al. Analytical Chemistry, 85(20):9799-806 (2013)に記載されている方法によって産生されたPNGase Fと同一であるPNGaseである。
【0190】
いくつかの態様では、作用物質は、市販のPNGase FであるPNGase Fであるかそれを含む。市販のPNGase Fは、PNGase F Proteomics Grade(カタログ番号P7367、Sigma);PNGase F(カタログ番号P0704SおよびP0704L、New England Biolabs)、PNGase F(カタログ番号V4831、Promega)、N-GLYCANASE(カタログ番号:GKE-5006A、GKE-5006B、GKE-5006D、GKE-5016A、GKE-5016B、GKE-5016D、GKE-5010B、GKE-5016D、GKE-5020B、GKE-5020D、およびGKE-5003、ProZyme)、およびPNGase F(カタログ番号:E-PNG01、QA Bio)、RAPID PNGase F(カタログ番号P0710S、New England Biolabs)、PNGASE F PRIME(N-Zyme Scientifics)を含むが、それらに限定されない。ある特定の態様では、PNGase Fは、PNGASE F PRIME(N-Zyme Scientifics)であるかそれと同一である。
【0191】
特定の態様では、細胞は、遊離した表面グリカンを含有する試料、溶液または培地から除去される。ある特定の態様では、グリカンは、培地または溶液から除去および/または分離される。いくつかの態様では、溶液または培地がエバポレートされる。特定の態様では、溶液または培地は、真空遠心分離によって、例えば、スピードバックを用いてエバポレートされる。特定の態様では、グリカンは、培地または溶液から除去および/または分離され、次いで、再懸濁される。いくつかの態様では、グリカンは、ある体積の緩衝液または溶液に再懸濁させてもよい。いくつかの態様では、緩衝液または溶液は、貯蔵に適する。ある特定の態様では、緩衝液は、グリカンの検出、同定および/または検出のための技術との使用に適する。ある特定の態様では、緩衝液または溶液は、化学反応、例えば、検出可能標識の付加などの誘導反応に適する。
【0192】
ある特定の態様では、グリカン、例えば、N-グリカンは、グリカンの検出を向上および/または増強させるために修飾される。多くの例では、グリカンは、液体クロマトグラフィーおよび/またはマススペクトロメトリーによって検出可能である強い発色団もしくは蛍光体または活性部分が存在しないために、容易には検出され得ない。いくつかの態様では、グリカンの吸光度および蛍光応答は、比較的弱いか、検出限界を下回る場合がある。いくつかの態様では、アッセイの感度を最大限に高める戦略の一つは、関心対象の化合物、すなわちグリカンを、利用される特定の検出法に対してより良い応答を示す誘導体に変換することである。ある特定の態様では、誘導体化剤は、誘導体化された分子の感度、収率および/または安定性を最大限に高めることによって、分析の最終的な感度および精度に影響を及ぼすかそれらを左右する。したがって、いくつかの態様では、細胞表面から遊離されたグリカン(例えば、N-グリカン)は、分析または検出のための任意の手順の前に誘導体化される。
【0193】
いくつかの態様では、グリカンは、HPLCおよび/またはマススペクトロメトリーによる分析の前に誘導体化される。いくつかの態様では、既存の技術、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/または光学もしくは質量分析(MS)検出によるN-グリカンの検出の感度を、誘導体化工程によって向上および/または増強させることができる。
【0194】
いくつかの態様では、グリカン、例えば、N-グリカンは、マススペクトロメトリーによる検出を可能にするためまたは向上させるために誘導体化される。ある特定の態様では、グリカンは、グリカンがより容易に電荷を受容可能となるように誘導体化される。ある特定の態様では、電荷を受容可能であるグリカンおよび/または誘導体化グリカンは、マススペクトロメーターによって検出可能である。いくつかの態様では、グリカンは、アミノ基、例えば第三級アミノ基を付加することによって誘導体化される。
【0195】
いくつかの態様では、誘導体化は、グリカン、例えば、N-グリカンに検出可能標識を付加することであるかそれを含む。いくつかの態様では、付加は、共有結合による付着である。ある特定の態様では、付着された検出可能標識は、付着された検出可能標識を含有しないN-グリカンの検出と比較して、N-グリカンの検出中に、シグナルを増加させるおよび/または背景ノイズを低減する。ある特定の態様では、限定されないが蛍光標識、放射性標識および/または化学発光標識を含めた多種多様な任意の検出可能標識を、本開示に従って使用することができる。ある特定の態様では、検出可能標識は、蛍光標識である。ある特定の態様では、蛍光標識の付着、例えば、共有結合による付着は、カラム、例えば、HPLCに適したカラム中のN-グリカンの移動を変更しない。特定の態様では、標識は、蛍光標識であり、グリカンが未標識グリカンと比較してより容易に電荷を受容可能にする。
【0196】
いくつかの態様では、N-グリカンの誘導体化は、当技術分野における標準的な技術によって実施される。数多くのN-グリカン誘導体化技術が記載されており、Ruhaak et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry 397(8): 3457-3481 (2010)において概説されている。いくつかの態様では、誘導体化は、2つ以上の反応工程を含む化学反応によって実施される。いくつかの態様では、誘導体化は、還元的アミノ化、パーメチル化、マイケル付加またはヒドラジド標識化の反応によって実施される。ある特定の態様では、標識化反応に必要な官能基を提供する様々な化合物を使用することができる。ある特定の態様では、誘導体化は、単一反応工程の化学反応によって実施される。誘導体化および/またはN-グリカンへの検出可能標識の共有結合による付着に適した、単一反応工程の化学反応によってグリカンに標識を付加する標識化剤は、アミンと迅速に反応する官能基(イソシアナートまたはスクシンイミジルカルバマート(succidimidylcarbamate)など)を含有する作用物質を含む。そのような標識化剤および蛍光標識は、米国特許出願番号US20140242709に記載されている。
【0197】
ある特定の態様では、N-グリカンは、還元的アミノ化によって標識される。この反応では、第一級アミン基を含有する標識がグリカンのアルデヒド基と縮合反応で反応することで、イミンまたはシッフ塩基をもたらし、それが還元剤によって還元されて第二級アミンを与える。いくつかの態様では、反応は、酢酸を含有するジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランまたはメタノール中で実施される。いくつかの態様では、還元的アミノ化は、1つのN-グリカン当たり1つの標識の化学量論的付着をもたらし、蛍光またはUV吸光度の強度に基づく直接的定量が可能となる。
【0198】
グリカンの還元的アミノ化に様々な標識が使用されている。いくつかの態様では、2-アミノベンズアミド(2-AB)、2-アミノ安息香酸(2-AA)、2-アミノピリジン(PA)、2-アミノアクリドン(AMAC)、2-アミノナフタレントリスルホン酸(ANTS)、および1-アミノピレン-3,6,8-トリスルホン酸(APTS)、3-(アセチルアミノ)-6-アミノアクリジン(AA-Ac)、6-アミノキノリン(6-AQ)、7-アミノメチル-クマリン(AMC)、2-アミノ(6-アミド-ビオチニル)ピリジン(BAP)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)-ヒドラジド、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンジオキシ-ベンゼン(DMB)、またはo-フェニレンジアミン(OPD)であるかそれを含む蛍光標識が、グリカンに付加される。
【0199】
特定の態様では、N-グリカンは、市販の標識で標識される。2-ABタグ、2-AAタグ、およびPAタグ用の標識化キット(Ludger)ならびにAPTSによる標識化キット(Beckmancoulter)およびANTSによる標識化キット(Prozyme)が入手可能である。いくつかの態様では、標識化剤および/または蛍光標識は、RapiFluor-MS(Waters Technologies Corporation)である。
【0200】
いくつかの態様では、標識化剤は、蛍光部分と、アミンと迅速に反応する官能基(イソシアナートまたはスクシンイミジルカルバマートなど)とを含有する。いくつかの態様では、標識化剤は、第三級アミノ基または他のMS活性原子、蛍光部分、およびアミンと迅速に反応する官能基(イソシアナートまたはスクシンイミジルカルバマートなど)の1つまたは複数を含有する。
【0201】
特定の態様では、グリカンを含有する細胞外溶液の試料は、分析、例えば、マススペクトロメトリー分析のために調製される。いくつかの態様では、グリカン、例えば、N-グリカンの試料は、分析の前に精製される。いくつかの態様では、精製は、N-グリカンの検出を破裂、妨害および/もしくは弱化させるまたはN-グリカンの検出を潜在的に破裂、妨害および/もしくは弱化させる任意の実体からN-グリカンを分離することが可能な任意の方法を含む。いくつかの態様では、精製工程は、細胞残屑、脱グリコシルタンパク質、PNGase F、緩衝液/製剤化成分、界面活性剤、標識化反応副生成物、ならびに/または過剰の標識化および/もしくは誘導体化試薬からN-グリカンを除去するために実施される。特定の態様では、精製工程は、標識されたグリカン(例えば、N-グリカン)、例えば、共有結合により付着された検出可能標識を有するグリカンに対して実施される。ある特定の態様では、精製は、限定されないが固相抽出(SPE)、液液抽出、ゲル濾過、ペーパークロマトグラフィーおよび沈殿を含め、グリカンを精製するための任意の好適な技術によって実施される。
【0202】
ある特定の態様では、グリカン、例えば、N-グリカンは、本明細書に、例えば、セクションIに記載される任意の好適なマススペクトロメトリー技術によるなど、マススペクトロメトリーによって分析される。特定の態様では、細胞組成物、例えば、試験T細胞組成物は、細胞の表面からグリカンを除去し、グリカンを精製および誘導体化し、グリカンをマススペクトロメトリー技術、例えば、LC-MSで測定することによって分析される。いくつかの態様では、細胞表面上に存在するグリカン、例えば、N-グリカンの存在、非存在、レベルまたは量は、1つまたは複数のグリコトランスフェラーゼの存在、非存在、レベルまたは量の読み取り値として検出または測定される。特定の態様では、検出または測定される細胞表面上に存在するグリカン、例えば、N-グリカンの存在、非存在、レベルまたは量は、例えば、RNA-seqまたはトランスポザーゼ網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-seq)などのゲノム技術で試料中に検出されるような1つまたは複数のグリコトランスフェラーゼの存在、非存在、レベルまたは量と相関する。特定の態様では、細胞表面上に存在するグリカン、例えば、N-グリカンの存在、非存在、レベルまたは量は、MGAT1、MGAT2、MGAT3、MGAT4A、MGAT4B、MGAT5またはMGAT5Bによってコードされる1つまたは複数のグリコトランスフェラーゼの存在、非存在、レベルまたは量の読み取り値として検出または測定される。
【0203】
II. 細胞組成物
いくつかの態様では、本明細書における提供される方法は、細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定することによって、細胞組成物のタンパク質、例えば、表面タンパク質の存在、レベル、量または発現を決定、測定または評価するために使用することができる。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、本明細書に、例えば、セクションIに記載される提供される方法のいずれかによって同定される。ある特定の態様では、本方法は、マススペクトロメトリー技術であるかそれを含む。いくつかの態様では、提供される方法は、組成物の細胞の表面上の1つまたは複数のタンパク質の存在、非存在、量、レベルおよび/または相対存在量を評価または分析するために使用することができる。
【0204】
ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイル(例えば、試験マススペクトロメトリープロファイル)は、試験細胞組成物から生成される。特定の態様では、試験細胞組成物は、1つまたは複数のマーカー、特徴、性質、表現型または属性が、本明細書に、例えば、セクションIにおいて提供される方法のいずれかによって、マススペクトロメトリープロファイルを生成するなどによって測定されるかまたは測定されることが望まれる、任意の細胞組成物であり得る。いくつかの態様では、試験組成物は、哺乳動物細胞の組成物である。特に、試験組成物は、ヒト細胞の組成物である。特定の態様では、試験細胞の組成物は、遺伝子操作(例えば、細胞療法を産生するための)に適する細胞、遺伝子操作(例えば、細胞療法を産生するための)ためのプロセス中に収集される細胞、または遺伝子操作されている細胞(例えば、遺伝子操作された細胞を含有する細胞療法)であるかそれを含有する。
【0205】
特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、タンパク質、例えば、表面タンパク質のレベル、量または変化を評価または査定するために、試験細胞組成物、例えば、CAR T細胞を含有する免疫細胞組成物から生成される。いくつかの態様では、タンパク質、例えば、表面タンパク質におけるレベル、量または変化は、生存能力、代謝活性、分化状態、増殖能、活性化状態または細胞溶解活性の1つまたは複数に関連するなどの、細胞の機能的および/または表現型の特徴、性質または属性を示す。
【0206】
いくつかの態様では、試験細胞組成物は、細胞療法である。特定の態様では、試験細胞組成物は、対象、例えば、ヒト対象への投与の適応となる細胞療法である。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、自己細胞療法である。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、免疫細胞療法である。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、自己CAR T細胞療法である。いくつかの態様では、試験細胞組成物は、細胞療法へと発展、処理または操作される細胞組成物である。特定の態様では、試験細胞療法は、自己CAR T細胞療法へと発展、処理または操作される細胞組成物である。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、細胞療法を生成または操作するためにプロセス中に収集される細胞の組成物である。様々な態様では、試験細胞組成物は、自己T細胞療法を操作するためにプロセス中に収集される細胞の組成物である。
【0207】
いくつかの態様では、試験細胞組成物は、操作されたT細胞の組成物を生成するためなどの遺伝子操作のためのプロセスを受けるだろう、ヒト細胞、例えば、T細胞などのヒト免疫細胞の組成物である。ある特定の態様では、細胞は、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される遺伝子操作のためのプロセスのいずれか1つに適するかそれを受けるだろう。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、操作されたT細胞の組成物を生成するためなどの遺伝子操作のためのプロセスを受けている遺伝子操作された細胞を含む、ヒト細胞、例えば、ヒト免疫細胞の組成物である。ある特定の態様では、細胞は、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される遺伝子操作のためのプロセスのいずれか1つを受けている。特定の態様では、試験細胞組成物は、組換え受容体(例えば、CAR)を発現するT細胞を含有する操作されたT細胞組成物を産生するために、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される遺伝子操作のためのプロセスのいずれか1つに適するかそれを受けるだろう、T細胞組成物である。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、組換え受容体(例えば、CAR)を発現するT細胞を含有する操作されたT細胞組成物である。ある特定の態様では、操作されたT細胞組成物は、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される細胞を遺伝子操作するためのプロセスを受けている。
【0208】
様々な態様では、試験細胞組成物は、操作されたT細胞の組成物を生成するためにプロセス中に収集される、ヒト細胞、例えば、T細胞などのヒト免疫細胞の組成物である。ある特定の態様では、細胞は、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される操作された細胞を生成するためのプロセスのいずれか1つの任意の段階または時点中に収集される。特定の態様では、試験細胞組成物は、活性化または刺激されたT細胞を含有する。ある特定の態様では、活性化または刺激されたT細胞は、刺激条件、例えば、本明細書に、例えば、セクションIII-Bに記載されるいずれかの刺激条件下でインキュベートされている。ある特定の態様では、試験細胞組成物は、形質転換されたまたはトランスフェクトされたT細胞を含有する。ある特定の態様では、組換え受容体またはCARをコードするものなどの異種ポリヌクレオチドは、T細胞に導入または送達されている。特定の態様では、本明細書に、例えば、セクションIII-Cに記載される。特定の態様では、試験細胞組成物は、培養または拡大増殖されたT細胞を含有する。ある特定の態様では、T細胞は、本明細書に、例えば、セクションIII-Dにおいて提供される任意の方法に従って培養または拡大増殖されている。
【0209】
いくつかの態様では、試験細胞組成物は、組換え受容体を発現する免疫細胞を含むかそれを含有する。特定の態様では、試験細胞組成物は、組換え受容体を発現するT細胞、例えば、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を含有する。ある特定の態様では、組換え受容体は、抗原受容体である。特定の態様では、組換え受容体は、CARである。ある特定の態様では、組換え受容体は、本明細書に、例えば、セクションII-C-1-aまたはII-C-1-bに記載される任意のCARである。特定の態様では、組換え受容体は、組換えTCR、例えば、セクションII-C-1-cなどにおける本明細書に記載される組換えTCRである。いくつかの態様では、組換え受容体は、抗CD19 CARである。ある特定の態様では、組換え受容体は、抗BCMA CARである。
【0210】
ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、1を超える試験細胞組成物から生成される。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、2、3、4、5、5を超える、10を超える、20を超える、50を超える、または100を超える試験細胞組成物から生成される。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、複数の試験細胞組成物の1つまたは複数のタンパク質、例えば、表面タンパク質の平均値、中央値または平均レベルまたは量を決定するために、1を超える試験細胞組成物から生成される。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、複数の試験細胞組成物の中の1つまたは複数のタンパク質、例えば、表面タンパク質のレベルまたは量における変動または分散を決定するために、1を超える試験細胞組成物から生成される。
【0211】
いくつかの態様では、試験細胞組成物は、組換え受容体を発現する細胞を含有する。いくつかの態様では、試験細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルは、異なる組換え受容体を発現する細胞の組成物のプロファイルと比較される。ある特定の態様では、試験細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルは、組換え受容体を発現しない細胞の組成物と比較される。いくつかの態様では、試験細胞組成物からのマススペクトロメトリープロファイルを、異なるプロセスによって産生される細胞の組成物からのマススペクトロメトリープロファイルと比較してもよい。いくつかの態様では、試験細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルは、製造プロセスの異なる段階または工程からの異なる細胞組成物と比較される。
【0212】
特定の態様では、試験細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルは、操作プロセスのより早い段階に、例えば、試験細胞組成物の細胞が収集された時点よりも早く収集された細胞の細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルと比較される。いくつかの態様では、試験細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルは、操作プロセスのより遅い段階に、例えば、試験細胞組成物の細胞が収集された時点よりも遅く収集された細胞の細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルと比較される。いくつかの態様では、試験細胞組成物からのマススペクトロメトリープロファイルは、製造プロセスの同じ段階の細胞組成物であるが異なる条件、例えば、試験細胞組成物からの細胞が曝露された条件とは異なる条件に曝露された細胞組成物からのマススペクトロメトリープロファイルと比較される。
【0213】
いくつかの態様では、試験細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイル、例えば、試験マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルと比較される。ある特定の態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、理論的プロファイルである。いくつかの態様では、理論的プロファイルは、細胞組成物の細胞中にあるかそれによって発現されると予測されたタンパク質(およびそのレベル、量または修飾)に基づく。特定の態様では、理論的プロファイルは、理想的な細胞組成物であるとみなされる細胞組成物の細胞中にあるかそれによって発現されると予測されたタンパク質(およびそのレベル、量または修飾)に基づく。
【0214】
いくつかの態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照細胞組成物から得られる。
【0215】
ある特定の態様では、参照細胞組成物は、組換え受容体を発現する細胞を含有する。特定の態様では、組換え受容体はまた、試験細胞組成物によって含有される細胞によって発現される。ある特定の態様では、参照細胞組成物および試験細胞組成物は各々、同じ組換え受容体を発現する細胞を含有する。いくつかの態様では、参照細胞組成物は、試験組成物と同じ対象から得られる細胞から生成される。ある特定の態様では、参照細胞組成物は、試験組成物を生成するための細胞が得られた対象と異なる対象から得られた細胞から生成される。特定の態様では、参照細胞組成物は、(i)試験細胞組成物を生成するために使用された細胞と同じ対象から得られた細胞から生成され、かつ、(ii)試験組成物中の細胞と異なる組換え受容体を発現する細胞を含有する。様々な態様では、参照細胞組成物は、(i)試験細胞組成物を生成するために使用された細胞と異なる対象から得られた細胞から生成され、かつ、(ii)試験組成物中の細胞と同じ組換え受容体を発現する細胞を含有する。ある特定の態様では、組換え受容体は、CARである。
【0216】
いくつかの態様では、参照細胞組成物は、試験細胞組成物の細胞が収集された段階よりも早い操作プロセスの段階で収集された細胞を含有する。ある特定の態様では、参照細胞組成物は、試験細胞組成物の細胞が収集されたときよりも遅い操作プロセスの段階で収集された細胞を含有する。ある特定の態様では、参照細胞組成物は、試験組成物の細胞と同じ製造プロセスの段階で収集された細胞を含有する。特定の態様では、参照細胞組成物は、試験組成物の細胞と同じ製造プロセスの段階で収集されたが異なる条件に曝露された細胞を含有する。
【0217】
特定の態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、複数の参照細胞組成物から得られる。ある特定の態様では、複数は、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50、100、200、500もしくは1,000の参照細胞組成物を含むか、約2、約3、約4、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約100、約200、約500もしくは約1,000の参照細胞組成物を含むか、または、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500もしくは少なくとも1,000の参照細胞組成物を含む。特定の態様では、参照マススペクトロメトリープロファイルは、参照マススペクトロメトリープロファイルから得られたマススペクトロメトリープロファイルの平均、平均値または中央値であるかそれを含む。
【0218】
A. 細胞タイプ
特定の態様は、細胞を含有する任意の組成物を提供される方法に従って評価することができることを想定している。いくつかの態様では、細胞の集団は、細胞株または初代細胞であるかそれを含む。いくつかの態様では、細胞の集団は、初代細胞、例えば、対象、例えばヒト対象から得られた初代細胞であるかそれを含む。いくつかの態様では、細胞の集団は、人工多能性幹細胞などの幹細胞であるかそれを含む。いくつかの態様では、細胞の組成物、例えば、試験細胞組成物などのソース組成物またはその一部は、細胞を組換え核酸により操作することに関連することを含め、細胞組成物を製造するためのプロセスに関連する組成物である。いくつかの態様では、細胞の組成物は、薬学的組成物である。
【0219】
ある特定の態様では、細胞は、真核細胞であるかそれを含む。ある特定の態様では、細胞組成物の細胞は、動物細胞である。いくつかの態様では、組成物の細胞は、哺乳動物細胞である。ある特定の態様では、細胞は、マウス細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、または非ヒト霊長類細胞である。いくつかの態様では、細胞は、ヒト細胞である。
【0220】
いくつかの態様では、細胞は、細胞株の細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、5V40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(C057);ヒト胎児腎臓株293;ベイビーハムスター腎細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(TM4);サル腎細胞(CVI-76);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);ヒト子宮頚部がん細胞(HELA);イヌ腎細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍細胞(MMT);ラットヘパトーマ細胞(HTC);HIH/3T3細胞、およびTRI細胞である。哺乳動物細胞株の詳細な一覧について、当業者は、American Type Culture Collectionカタログ(ATCC, Mamassas, VA)を参照してもよい。いくつかの態様では、細胞は、多種多様な細胞タイプのもの、例えば、線維芽細胞、筋芽細胞、マクロファージ、または上皮細胞であり得る。
【0221】
特定の態様では、組成物の細胞は、幹細胞であるかそれを含む。ある特定の態様では、細胞組成物の細胞は、多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、および/または単能性幹細胞である。特定の態様では、細胞は、誘導細胞、例えば、人工多能性幹細胞(ipsc)である。特定の態様では、組成物の細胞は、例えば、再プログラム化(例えば、多能性へ向かって)されている最中にある細胞である。いくつかの態様では、細胞は、分化の最中にある幹細胞である。
【0222】
いくつかの態様では、組成物の細胞は、免疫細胞である。特定の態様では、細胞組成物は、T細胞、B細胞および/またはNK細胞の1つまたは複数を含有する。いくつかの態様では、細胞組成物の細胞は、CD3+ T細胞である。いくつかの態様では、細胞は、CD4+ T細胞である。ある特定の態様では、細胞は、CD8+ T細胞である。いくつかの態様では、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、およびサプレッサーT細胞の1つまたは複数。いくつかの態様では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0223】
いくつかの態様では、細胞組成物は、T細胞であるかそれを含む。特定の態様では、T細胞は、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在する適応可能な制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、瀘胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞の1つまたは複数などのT細胞のサブタイプおよび亜集団であるかそれを含む。いくつかの態様では、細胞は、制御性T細胞(Treg)である。いくつかの態様では、細胞はさらに、組換えFOXP3またはそのバリアントを含む。いくつかの態様では、細胞組成物は、CD3+ T細胞であるかそれを含む。ある特定の態様では、細胞組成物は、CD4+ T細胞であるかそれを含む。ある特定の態様では、細胞組成物は、CD8+ T細胞であるかそれを含む。
【0224】
ある特定の態様では、初代細胞の表面タンパク質が評価される。いくつかの態様では、細胞の組成物は、初代細胞、例えば、対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離されて凍結されたものを含有する。いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、およびその亜集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化潜在能、拡大増殖、再循環、局在性、および/もしくは持続性能、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化の程度によって定義されるものを含む。処置されるべき対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。
【0225】
いくつかの態様では、組成物の1つまたは複数の細胞は、操作された細胞である。場合によって、1つまたは複数の細胞は、組換え核酸を含有するように、例えば、異種核酸を含有するおよび/または異種タンパク質を発現するように操作される。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えタンパク質をコードする。場合によって、組換えタンパク質は、組換え細胞組成物によって発現されるか産生されることが望ましい任意のタンパク質であることができる。いくつかの態様では、組換えタンパク質は、組換え受容体である。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えタンパク質の発現のために細胞に移入または導入されるウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターであるかそれを含む。
【0226】
B. 操作された細胞組成物
ある特定の態様では、操作された細胞は、組換え受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)などのキメラ受容体または抗原受容体である。ある特定の態様では、操作された細胞は、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される任意の方法によって産生、製造または生成される。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される方法から産生、製造または生成されている操作された細胞から測定、決定または得られる。
【0227】
いくつかの態様では、組成物中の細胞の全部または一部は、操作された受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含有するか、または前記受容体を含有するように操作される。特定の態様では、組成物中の細胞の全部または一部は、操作された受容体を発現する。いくつかの態様では、操作された細胞を含有する組成物は、そのような細胞が濃縮される。ある特定の態様では、T細胞またはCD8+もしくはCD4+ T細胞などのある特定のタイプの細胞が濃縮または選択される。特定の態様では、細胞組成物は、養子細胞療法などのための治療用細胞組成物および/または薬学的細胞組成物である。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、治療用細胞組成物、例えば、細胞療法から測定、決定または得られる。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、CAR+ T細胞を含有する操作された細胞組成物から測定、決定または得られる。
【0228】
1. 組み換え受容体
いくつかの態様において、マススペクトロメトリープロファイルが、1つまたは複数の組み換え受容体を発現する操作された細胞、例えば免疫細胞、例えばT細胞から測定、決定、または取得される。受容体には、抗原受容体およびその1つまたは複数の構成成分を含む受容体がある。組み換え受容体には、キメラ受容体、例えばそのリガンド結合ドメインまたは結合断片と細胞内シグナル伝達ドメインまたは領域とを含むもの、機能的非TCR抗原受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、例えば組み換えまたはトランスジェニックTCR、キメラ自己抗体受容体(CAAR)および前述のいずれかの構成成分が含まれる場合がある。CARなどの組み換え受容体は、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成成分に、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して、連結された細胞外抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。いくつかの態様において、操作された細胞は、異なる構成成分、ドメインまたは領域を含む2つ以上の受容体を発現する。いくつかの局面では、2つ以上の受容体は、組み換え受容体の特異性、活性、抗原(またはリガンド)結合、機能および/または発現の空間的または時間的な調節または制御を可能にする。
【0229】
いくつかの態様では、同じ組換え受容体、例えば、CARまたは組換えTCRを発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが比較される。ある特定の態様では、異なる操作プロセスによって生成された同じ組換え受容体を発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが比較される。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルを、異なる操作プロセスに応答する細胞の性質の変化を評価するために比較してもよい。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、細胞表面上に存在する組換え受容体のレベルまたは量における類似点または相違点を検出するために比較される。特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、翻訳後修飾、例えば、組換え受容体へのグリカンのコンジュゲーションのレベルまたは量における類似点または相違点を検出するために比較される。
【0230】
いくつかの態様では、同じ組換え受容体、例えば、CARまたは組換えTCRを発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが、平均、中央値、または平均値マススペクトロメトリープロファイルまたはその一部を、決定または算出するなどのために収集される。特定の態様では、同じ組換え受容体を発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが、組成物の細胞の表面上に発現される1つまたは複数の個々のタンパク質の平均、中央値、または平均値レベルまたは量を、決定または算出するなどのために収集される。特定の態様では、同じ組換え受容体を発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが、細胞表面上に発現される1つまたは複数のタンパク質に対する1つまたは複数の個々の翻訳後修飾の平均、中央値、または平均値レベルまたは量を、決定または算出するために収集される。いくつかの態様では、平均、平均値または中央値マススペクトロメトリープロファイルまたはその一部は、参照タンパク質プロファイルとして役立ち得る。
【0231】
特定の態様では、同じ組換え受容体、例えば、CARまたは組換えTCRを発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが、マススペクトロメトリープロファイルまたはその部分全体にわたる変動または分散を決定または算出するために収集される。特定の態様では、同じ組換え受容体を発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが、細胞表面上に発現される1つまたは複数の個々のタンパク質の量についての細胞組成物全体にわたる変動または分散を決定または算出するために収集される。いくつかの態様では、同じ組換え受容体を発現する異なる細胞組成物から得られたマススペクトロメトリープロファイルが、1つまたは複数の個々の翻訳後修飾の量についての細胞組成物全体にわたる変動または分散を決定または算出するために収集される。
【0232】
a. キメラ抗原受容体(CAR)
いくつかの態様において、操作された細胞、例えばT細胞は、特定の抗原(またはマーカーもしくはリガンド)、例えば特定の細胞タイプの表面に発現される抗原に対する特異性を有する組み換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)を発現する。いくつかの態様において、抗原はポリペプチドである。いくつかの態様において、抗原は、炭水化物または他の分子である。いくつかの態様において、抗原は、例えば健康な細胞または組織における、正常または非標的の細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞上、例えば、腫瘍または病原性細胞上に選択的に発現されるか、または過剰発現される。他の態様において、該抗原は正常細胞上に発現され、かつ/または遺伝子操作された細胞上に発現される。いくつかの局面では、組み換え受容体、例えばCARは、細胞外リガンド(例えば、抗原)結合領域またはドメイン、例えば、本明細書に記述される抗体または断片のいずれか、および細胞内シグナル伝達領域中より選択される1つまたは複数の領域またはドメインを含む。いくつかの態様において、リガンド(例えば、抗原)結合領域またはドメインは、scFvまたは単一ドメインVH抗体であるか、またはそれを含み、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、ITAMであるか、またはそれを含む。いくつかの局面では、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のシグナル伝達ドメインまたはその一部を含む。いくつかの局面では、細胞外リガンド(例えば、抗原)結合領域またはドメインおよび細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、1つまたは複数のリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して連結または接続される。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達領域との間に配置された膜貫通ドメインを含む。
【0233】
CARを含む例示的な抗原受容体、ならびにそのような受容体を細胞内に操作および導入するための方法は、例えば、国際特許出願公開番号WO2000/14257、WO2013/126726、WO2012/129514、WO2014/031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、同第8,479,118号、および欧州特許出願番号EP2537416に記載されているもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398; Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338; Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39;およびWu et al., Cancer, 2012 March 18(2): 160-75に記載されているものを含む。いくつかの局面では、抗原受容体は、米国特許第7,446,190号に記載されているようなCAR、および国際特許出願公開番号WO2014/055668に記載されているものを含む。CARの例には、前述の参照、例えばWO2014/031687、米国特許第8,339,645号、米国特許第7,446,179号、US 2013/0149337、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276 (2013); Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)のいずれかに開示されるCARが含まれる。
【0234】
いくつかの態様において、組み換え受容体、例えば、抗原受容体は、抗原、リガンドおよび/またはマーカーに結合する、例えば特異的に結合する、細胞外抗原結合ドメインまたはリガンド結合ドメインを含む。抗原受容体の中には、キメラ抗原受容体(CAR)などの、機能的な非TCR抗原受容体がある。いくつかの態様において、抗原受容体は、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインを含むCARである。いくつかの態様において、CARは、特定の抗原、マーカーまたはリガンド、例えば、養子療法の標的となる特定の細胞タイプに発現される抗原、例えば、がんマーカー、および/または抑制応答(dampening response)を誘発することを目的とした抗原、例えば、正常もしくは非罹患細胞タイプで発現される抗原、に対する特異性を示すように構築される。したがって、CARは典型的には、その細胞外部分に、1つまたは複数のリガンド(例えば、抗原)結合分子、例えば、1つもしくは複数の抗原結合断片、ドメイン、もしくは部分、または1つもしくは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの態様において、CARは、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)とから誘導される一本鎖抗体断片(scFv)、または単一ドメイン抗体(sdAb)、例えばsdFv、ナノボディ、VHHおよびVNARを含む。いくつかの態様において、抗原結合断片は、柔軟なリンカーによって結合された抗体可変領域を含む。
【0235】
いくつかの態様において、CARは、細胞表面に発現される抗原またはリガンド、例えばインタクトな抗原、を特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えばscFv)を含む。いくつかの態様において、抗原またはリガンドは、細胞表面に発現されるタンパク質である。いくつかの態様において、抗原またはリガンドはポリペプチドである。いくつかの態様において、それは炭水化物または他の分子である。いくつかの態様において、抗原またはリガンドは、正常または非標的の細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞上、例えば、腫瘍または病原性細胞上に選択的に発現されるか、または過剰発現される。他の態様において、該抗原は正常細胞上に発現され、かつ/または操作された細胞上に発現される。
【0236】
いくつかの態様において、キメラ受容体によって標的づけられる抗原の中には、養子細胞療法により標的づけられる疾患、状態、または細胞タイプの状況下で発現される抗原がある。疾患および状態の中には、例えば、血液のがん、免疫系のがん、例えば、リンパ腫、白血病、および/または骨髄腫、例えばB細胞性、T細胞性、および骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫を含むがんおよび腫瘍を含む、増殖性、腫瘍性、および悪性の疾患および障害がある。
【0237】
いくつかの態様において、抗原またはリガンドは、腫瘍抗原またはがんマーカーである。いくつかの態様において、抗原またはリガンドは、以下であるか、または以下を含む:αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5; 別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体型チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体α(IL-22Rα)、IL-13受容体α2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A: LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体型チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子。いくつかの態様における該受容体によって標的づけられる抗原には、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えば、いくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかが含まれる。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79bまたはCD30であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、病原体特異抗原または病原体発現抗原、例えばウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBV由来のウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原であるか、またはそれを含む。
【0238】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片(例えばscFvまたはVHドメイン)は、CD19などの抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、CD19に特異的に結合する抗体または抗原結合断片に由来するか、またはその変異体である。
【0239】
いくつかの態様において、scFvおよび/またはVHドメインは、FMC63に由来する。FMC63は、一般に、ヒト起源のCD19を発現しているNalm-1細胞およびNalm-16細胞に対して産生されたマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。FMC63抗体は、SEQ ID NO: 38に示されるCDR H1; SEQ ID NO:39に示されるCDR H2; SEQ ID NO: 40または54に示されるCDR H3; およびSEQ ID NO: 35に示されるCDR L1; SEQ ID NO:36または55に示されるCDR L2; およびSEQ ID NO:37または56に示されるCDR L3を含む。FMC63抗体は、SEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:35のCDR L1配列、SEQ ID NO:36のCDR L2配列、およびSEQ ID NO:37のCDR L3配列を含む可変軽鎖ならびに/もしくはSEQ ID NO:38のCDR H1配列、SEQ ID NO:39のCDR H2配列、およびSEQ ID NO:40のCDR H3配列を含む可変重鎖、またはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前述のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:41に示されるFMC63の可変重鎖領域およびSEQ ID NO:42に示されるFMC63の可変軽鎖領域、またはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前述のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様において、可変重鎖および可変軽鎖は、リンカーによって接続されている。いくつかの態様において、リンカーは、SEQ ID NO:58に示される。いくつかの態様において、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様において、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:57に示されるヌクレオチドの配列またはSEQ ID NO:57と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列によってコードされる。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:43に示されるアミノ酸の配列またはSEQ ID NO:43と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0240】
いくつかの態様において、scFvおよび/またはVHドメインは、SJ25C1に由来する。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現しているNalm-1細胞およびNalm-16細胞に対して産生されたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NO: 47~49に示されるCDR H1、H2およびH3、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 44~46に示されるCDR L1、L2およびL3配列を含む。SJ25C1抗体は、SEQ ID NO: 50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様において、svFvは、SEQ ID NO:44に示されるCDR L1配列; SEQ ID NO: 45に示されるCDR L2; およびSEQ ID NO:46に示されるCDR L3を含む可変軽鎖; ならびに/もしくはSEQ ID NO:47に示されるCDR H1、SEQ ID NO:48に示されるCDR H2、およびSEQ ID NO:49に示されるCDR H3を含む可変重鎖、またはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前述のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:50に示されるSJ25C1の可変重鎖領域およびSEQ ID NO:51に示されるSJ25C1の可変軽鎖領域、またはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前述のいずれかの変異体を含む。いくつかの態様において、可変重鎖および可変軽鎖は、リンカーによって接続されている。いくつかの態様において、リンカーはSEQ ID NO:52に示される。いくつかの態様において、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様において、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:53に示されるアミノ酸の配列またはSEQ ID NO:53と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0241】
いくつかの局面では、CARは、ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープと結合するまたはそれを認識する、例えば、特異的に認識する、リガンド(例えば、抗原)結合ドメインを含む。いくつかの局面では、結合ドメインは、疾患または障害に関連する抗原を認識する、異なる結合分子(例えば、抗体または抗原結合断片)と連結することができる分子、タグ、ポリペプチドおよび/またはエピトープと結合することができる。例示的なタグまたはエピトープは、色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)またはビオチンを含む。いくつかの局面では、疾患または障害に関連する抗原、例えば、腫瘍抗原を認識する、タグに連結された結合分子(例えば、抗体または抗原結合断片)は、タグに特異的なCARを発現している操作された細胞と共に、操作された細胞の細胞傷害性または他のエフェクター機能をもたらす。いくつかの局面では、疾患または障害に関連する抗原に対するCARの特異性は、タグ付き結合分子(例えば、抗体)によって提供され、異なるタグ付き結合分子を使用して異なる抗原を標的づけることができる。ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに特異的な例示的なCARは、例えば、米国特許第9,233,125号、WO2016/030414、Urbanska et al., (2012) Cancer Res 72: 1844-1852、およびTamada et al., (2012). Clin Cancer Res 18:6436-6445に記載されているものを含む。
【0242】
いくつかの態様において、CARは、主要組織適合性複合体(MHC)-ペプチド複合体として細胞表面に提示された細胞内抗原、例えば腫瘍関連抗原を特異的に認識するTCR様抗体、例えば抗体または断片(例えばscFv)を含む。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体またはその抗原結合部分は、細胞上に組み換え受容体、例えば抗原受容体の部分として発現することができる。抗原受容体の中に、機能的非T細胞受容体(TCR)抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)がある。いくつかの態様において、ペプチド-MHC複合体に対するTCR様特異性を示す抗体または抗原結合断片を含むCARはまた、TCR様CARと呼ばれる場合がある。いくつかの態様において、CARはTCR様CARであり、抗原は、TCRのようにMHC分子に関連して細胞表面上で認識される、細胞内タンパク質のペプチド抗原などの、プロセシングされたペプチド抗原である。いくつかの態様において、TCR様CARのMHC-ペプチド複合体に特異的な細胞外抗原結合ドメインは、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成成分と連結される。いくつかの態様において、そのような分子は、典型的には、TCRなどの天然の抗原受容体を介したシグナル、および任意で、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介したシグナルをまねたり、そのようなシグナルに近づいたりすることができる。
【0243】
「主要組織適合性複合体」(MHC)への言及は、ポリペプチドのペプチド抗原(細胞内機構によってプロセシングされたペプチド抗原を含む)と場合により複合体化し得る、多型ペプチド結合部位または結合溝を含むタンパク質、一般的には糖タンパク質を指す。いくつかの場合には、MHC分子は、TCRなどのT細胞上の抗原受容体またはTCR様抗体によって認識されるコンフォメーションで抗原を提示するために、例えばペプチドとの複合体、すなわちMHC-ペプチド複合体として、細胞表面にディスプレイまたは発現され得る。一般的に、MHCクラスI分子は、場合により3つのαドメインを含む膜貫通α鎖と、非共有結合したβ2ミクログロブリンを有する、ヘテロ二量体である。一般的に、MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質αおよびβで構成され、両方とも通常は膜にまたがっている。MHC分子は、ペプチドを結合するための抗原結合部位(複数可)および適切な抗原受容体による認識に必要な配列を含む、MHCの有効な部分を含み得る。いくつかの態様では、MHCクラスI分子は、細胞質ゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達する;この場合には、MHC-ペプチド複合体はT細胞、例えば一般にはCD8+ T細胞によって認識されるが、場合によってはCD4+ T細胞によって認識される。いくつかの態様では、MHCクラスII分子は、小胞系(vesicular system)に由来するペプチドを細胞表面に送達する;この場合には、それらは通常CD4+ T細胞によって認識される。一般に、MHC分子は、マウスではH-2、ヒトではヒト白血球抗原(HLA)と総称される、連鎖している遺伝子座のグループによってコードされる。それゆえ、一般的に、ヒトMHCはヒト白血球抗原(HLA)と称されることもある。
【0244】
用語「MHC-ペプチド複合体」または「ペプチド-MHC複合体」またはその変形は、一般に、MHC分子の結合溝または裂け目に収まったペプチドの非共有結合的相互作用などによる、ペプチド抗原とMHC分子の複合体または会合を指す。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面上に存在するか、または提示される。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体は、抗原受容体、例えば、TCR、TCR様CAR、またはその抗原結合部分によって特異的に認識され得る。
【0245】
いくつかの態様では、ポリペプチドの、ペプチド抗原またはエピトープなどのペプチドは、例えば抗原受容体による認識のために、MHC分子と会合することができる。一般に、ペプチドは、ポリペプチドまたはタンパク質などのより長い生体分子に由来するか、またはその断片に基づく。いくつかの態様では、ペプチドは、典型的には約8~約24アミノ酸長である。いくつかの態様では、ペプチドは、MHCクラスII複合体での認識のために、9~22または約9~22アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様では、ペプチドは、MHCクラスI複合体での認識のために、8~13または約8~13アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体などの、MHC分子との関連でペプチドが認識されると、TCRまたはTCR様CARなどの抗原受容体は、T細胞応答、例えば、T細胞増殖、サイトカイン産生、細胞傷害性T細胞応答または他の応答を誘導するT細胞への活性化シグナルをもたらすか、または引き起こす。
【0246】
いくつかの態様では、TCR様抗体または抗原結合部分は、公知であるか、または公知の方法により作製することができる(例えば、米国特許出願公開番号US 2002/0150914; US 2003/0223994; US 2004/0191260; US 2006/0034850; US 2007/00992530; US20090226474; US20090304679; および出願公開番号WO 03/068201を参照されたい)。
【0247】
いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体を含む有効量の免疫原で宿主を免疫することによって作製され得る。いくつかの場合では、MHC-ペプチド複合体のペプチドは、MHCに結合することができる抗原、例えば、腫瘍抗原、例えば、ユニバーサル腫瘍抗原、骨髄腫抗原、または以下に記載される他の抗原、のエピトープである。いくつかの態様では、次いで、免疫応答を誘発するために、有効量の免疫原が宿主に投与される;その場合、免疫原は、MHC分子の結合溝内のペプチドの三次元表現に対する免疫応答を引き出すのに十分な期間にわたってその三次元形態を保持する。その後、宿主から回収された血清をアッセイして、MHC分子の結合溝内のペプチドの三次元表現を認識する所望の抗体が産生されているかどうかを判定する。いくつかの態様では、産生された抗体をアッセイして、該抗体がMHC-ペプチド複合体をMHC分子単独、関心対象のペプチド単独、およびMHCと無関係のペプチドとの複合体から区別し得ることを確認することができる。その後、所望の抗体を単離することができる。
【0248】
いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、ファージ抗体ライブラリーなどの、抗体ライブラリーディスプレイ法を使用することによって取得することができる。いくつかの態様では、変異型Fab、scFvまたは他の抗体形態のファージディスプレイライブラリーが作製され、例えば、該ライブラリーではそのメンバーがCDR(複数可)の1つまたは複数の残基で変異している。例えば、米国特許出願公開番号US20020150914; US2014/0294841; およびCohen CJ. et al. (2003) J Mol. Recogn. 16:324-332を参照されたい。
【0249】
本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味において用いられ、インタクトな抗体および機能的な(抗原結合)抗体断片などのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含み、これには、抗原結合断片(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組み換えIgG (rIgG)断片、抗原に特異的に結合することができる可変重鎖(VH)領域、単鎖可変断片(scFv)などの単鎖抗体断片、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ、VHHまたはVNAR)断片が含まれる。この用語は、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異的、例えば二重特異的抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvのような、遺伝子操作されおよび/またはそれ以外に改変された形態の免疫グロブリンを包含する。別段の言及がなければ、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。この用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、ならびにIgDなどの任意のクラスまたはサブクラスの抗体などの、インタクトなまたは全長の抗体を包含する。いくつかの局面において、CARは二重特異性CARであり、例えば異なる特異性を持った2つの抗原結合ドメインを含有する。
【0250】
いくつかの態様では、抗原結合タンパク質、抗体およびその抗原結合断片は、完全長抗体の抗原を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体の重鎖および軽鎖は、完全長であるか、または抗原結合部分(Fab、F(ab')2、Fvまたは一本鎖Fv断片(scFv))であり得る。他の態様では、抗体重鎖定常領域は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択され、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、より具体的には、IgG1(例えば、ヒトIgG1)から選択される。別の態様では、抗体軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダ、特にカッパから選択される。
【0251】
提供する抗体の中には、抗体断片が含まれる。「抗体断片」は、インタクトの抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定するものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線形抗体;可変重鎖(VH)領域、一本鎖抗体分子、例えばscFvおよび単一ドメインVH単一抗体;抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。特定の態様では、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む一本鎖抗体断片、例えばscFvである。
【0252】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体が抗原に結合する際に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つのCDRを含む。例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを用いて、それぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることにより、単離することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0253】
単一ドメイン抗体(sdAb)は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。特定の態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である。いくつかの態様では、CARは、抗原に特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む;該抗原は、腫瘍細胞、がん細胞などの、標的となる細胞または疾患のがんマーカーもしくは細胞表面抗原、例えば、本明細書に記載のまたは公知の標的抗原のいずれかである。例示的な単一ドメイン抗体は、sdFv、ナノボディ、VHH、またはVNARを含む。
【0254】
抗体断片は、インタクトの抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限らない、様々な技術によって作製することができる。いくつかの態様では、抗体は、組換えにより作製された断片であり、例えば、天然には存在しない配置を含む断片、例えば、ペプチドリンカーなどの合成リンカーによって連結された2つ以上の抗体領域または鎖を有するもの、および/または天然に存在するインタクトの抗体の酵素消化によっては生じないものなどである。いくつかの態様では、抗体断片はscFvである。
【0255】
「ヒト化」抗体は、全てまたは実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全てまたは実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、典型的にはヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化を受けた、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの態様では、ヒト化抗体の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させるかまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置き換えられる。
【0256】
したがって、いくつかの態様では、TCR様CARなどのキメラ抗原受容体は、抗体または抗体断片を含む細胞外部分を含む。いくつかの態様では、その抗体または断片にはscFvが含まれる。いくつかの局面では、抗体または抗原結合断片は、抗原結合断片または分子の複数、例えばライブラリーをスクリーニングすることによって、例えば、特異的抗原またはリガンドとの結合についてscFvライブラリーをスクリーニングすることによって、得ることができる。
【0257】
いくつかの局面では、組み換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体は、1つまたは複数のリガンド(例えば、抗原)結合ドメイン、例えば抗体またはその断片を含む細胞外部分、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達領域またはドメイン(互換的に細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの局面では、組み換え受容体、例えば、CARは、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインもしくは部分をさらに含む。いくつかの局面では、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインは、リガンド(例えば、抗原)結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む細胞外部分と連結することができる。
【0258】
いくつかの態様において、CARなどの組み換え受容体は、スペーサーをさらに含み、該スペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはその変異体もしくは修飾バージョンの少なくとも一部、例えば、IgG4ヒンジ領域などのヒンジ領域、および/またはCH1/CLおよび/またはFc領域の場合があり、またはそれを含む場合がある。いくつかの態様において、組み換え受容体はさらに、スペーサーおよび/またはヒンジ領域を含む。いくつかの態様において、定常領域または部分は、ヒトIgG、例えばIgG4またはIgG1、のものである。いくつかの局面では、定常領域の部分は、抗原認識成分、例えばscFvと膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域として機能する。スペーサーは、スペーサーがない場合と比較して、抗原結合後の細胞の応答性を増加させる長さであることができる。いくつかの例では、スペーサーは、12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であるか、または多くて12アミノ酸長である。例示的なスペーサーには、以下が含まれる: 少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸を有するもの(上記範囲のいずれかの両端間の任意の整数を含む)。いくつかの態様において、スペーサー領域は、約12アミノ酸以下、約119アミノ酸以下、または約229アミノ酸以下を有する。いくつかの態様において、スペーサーは、250アミノ酸長未満、200アミノ酸長未満、150アミノ酸長未満、100アミノ酸長未満、75アミノ酸長未満、50アミノ酸長未満、25アミノ酸長未満、20アミノ酸長未満、15アミノ酸長未満、12アミノ酸長未満、または10アミノ酸長未満である。いくつかの態様において、スペーサーは、10~250アミノ酸長、10~150アミノ酸長、10~100アミノ酸長、10~50アミノ酸長、10~25アミノ酸長、10~15アミノ酸長、15~250アミノ酸長、15~150アミノ酸長、15~100アミノ酸長、15~50アミノ酸長、15~25アミノ酸長、25~250アミノ酸長、25~100アミノ酸長、25~50アミノ酸長、50~250アミノ酸長、50~150アミノ酸長、50~100アミノ酸長、100~250アミノ酸長、100~150アミノ酸長、もしくは150~250アミノ酸長、または約10~250アミノ酸長、約10~150アミノ酸長、約10~100アミノ酸長、約10~50アミノ酸長、約10~25アミノ酸長、約10~15アミノ酸長、約15~250アミノ酸長、約15~150アミノ酸長、約15~100アミノ酸長、約15~50アミノ酸長、約15~25アミノ酸長、約25~250アミノ酸長、約25~100アミノ酸長、約25~50アミノ酸長、約50~250アミノ酸長、約50~150アミノ酸長、約50~100アミノ酸長、約100~250アミノ酸長、約100~150アミノ酸長、もしくは約150~250アミノ酸長である。例示的なスペーサーは、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインと連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインと連結されたIgG4ヒンジを含む。例示的なスペーサーは、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153、Hudecek et al. (2015) Cancer Immunol Res. 3(2): 125-135または国際特許出願公開番号WO2014031687に記載されているものを含むが、それに限定されるわけではない。
【0259】
いくつかの局面では、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ、例えばIgG4またはIgG1のヒンジのみ、例えばSEQ ID NO:1に示され、SEQ ID NO: 2に示される配列によってコードされるヒンジのみのスペーサーを含む。他の態様において、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO: 4に示されるような、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO: 3に示されるような、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または公知の柔軟なリンカーなどの他の柔軟なリンカーであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、定常領域または部分は、IgDのものである。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO: 5に示される配列を有する。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO: 1、3、4および5のいずれかと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
【0260】
いくつかの態様において、スペーサーは、全部または一部がIgG4および/またはIgG2に由来することができる。いくつかの態様において、スペーサーは、IgG4、IgG2、ならびに/またはIgG2およびIgG4に由来する1つまたは複数のヒンジ、CH2および/またはCH3配列を含むキメラポリペプチドであることができる。いくつかの態様において、スペーサーは、1つまたは複数のドメインに1つまたは複数の単一のアミノ酸変異などの変異を含むことができる。いくつかの例では、アミノ酸の改変は、IgG4のヒンジ領域におけるセリン(S)のプロリン(P)による置換である。いくつかの態様において、アミノ酸の改変は、グリコシル化の不均一性を低減させるためのアスパラギン(N)のグルタミン(Q)による置換、例えば、SEQ ID NO: 60に示されるIgG4重鎖定常領域配列のCH2領域中の177位に対応する位置(Uniprotアクセッション番号P01861; EUナンバリングによる297位およびSEQ ID NO:4に示されるヒンジ-CH2-CH3スペーサー配列の79位に対応する位置)でのNからQへの置換、またはSEQ ID NO: 59に示されるIgG2重鎖定常領域配列のCH2領域中の176位に対応する位置(Uniprotアクセッション番号P01859; EUナンバリングによる297位に対応する位置)でのNからQへの置換である。
【0261】
いくつかの局面では、スペーサーは、以下より選択される1つまたは複数などのポリペプチドスペーサーである: (a)免疫グロブリンヒンジもしくはその修飾バージョンの全部もしくは一部を含むもしくはそれからなる、または約15アミノ酸以下を含み、かつCD28細胞外領域もしくはCD8細胞外領域を含まない、(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはその修飾バージョンの全部もしくは一部を含むもしくはそれからなり、かつ/または約15アミノ酸以下を含み、CD28細胞外領域もしくはCD8細胞外領域を含まない、(c)12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長であり、かつ/または免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4、もしくはその修飾バージョンの全部もしくは一部を含むもしくはそれからなる; あるいは(d)SEQ ID NO: 1、3~5もしくは27~34に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前述のいずれかの変異体からなる、またはそれを含む、あるいは(e)式X1PPX2P[式中、X1は、グリシン、システインまたはアルギニンであり、X2は、システインまたはスレオニンである]を含む、またはそれからなる。
【0262】
いくつかの態様において、CARのリガンド(例えば、抗原)結合または認識ドメインは、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成成分、例えば細胞内シグナル伝達領域もしくはドメイン、および/または抗原受容体複合体、例えばTCR複合体、を経由する活性化を模倣するシグナル伝達構成成分、および/または別の細胞表面受容体を介するシグナルと連結される。したがって、いくつかの態様において、抗原結合構成成分(例えば、抗体)は、1つまたは複数の膜貫通および細胞内シグナル伝達領域またはドメインに連結される。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、細胞外ドメインと融合される。いくつかの態様において、受容体、例えば、CARにおけるドメインの1つに天然で関連する膜貫通ドメインが使用される。場合によっては、膜貫通ドメインは、アミノ酸置換により選択または改変されて、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用が最小限にされる。
【0263】
膜貫通ドメインは、いくつかの態様において、天然または合成起源のいずれかに由来する。起源が天然の場合、ドメインは、いくつかの局面では、任意の膜結合型または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137(4-1BB)、またはCD154に由来する(すなわち、少なくともその膜貫通領域を含む)ものを含む。あるいは、膜貫通ドメインは、いくつかの態様において合成である。いくつかの局面では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの局面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの3つ組が、合成膜貫通ドメインの各末端に見られるであろう。いくつかの態様において、連結は、リンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによる。いくつかの局面では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分またはその変異体を含む。細胞外ドメインおよび膜貫通は、直接または間接的に連結することができる。いくつかの態様において、細胞外ドメインおよび膜貫通は、本明細書において記述されるいずれかなどのスペーサーによって連結される。
【0264】
いくつかの態様において、受容体の膜貫通ドメイン、例えば、CARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28またはその変異体の膜貫通ドメイン、例えば、ヒトCD28の27アミノ酸の膜貫通ドメイン(アクセッション番号: P10747.1)であるか、またはSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:8と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインであり; いくつかの態様において、組み換え受容体の部分を含む膜貫通ドメインは、SEQ ID NO: 9に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0265】
いくつかの局面では、組み換え受容体、例えば、CARは、細胞内シグナル伝達領域またはドメイン(互換的に細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを刺激および/もしくは誘発することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成成分のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖もしくはその機能的変異体もしくはシグナル伝達部分の細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域)、ならびに/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、組み換え受容体、例えば、CARは、抗体または断片および細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む細胞外部分を含む。
【0266】
いくつかの態様において、組み換え受容体、例えば、CARは、細胞内シグナル伝達領域またはドメインなどの少なくとも1つの細胞内シグナル伝達構成成分を含む。細胞内シグナル伝達領域の中に、天然抗原受容体を介したシグナル、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介したシグナル、および/または共刺激受容体単独を介したシグナルをまねる、またはそのようなシグナルに近づくものがある。いくつかの態様において、低分子オリゴペプチドまたはポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸長のリンカー、例えばグリシンおよびセリン、例えば、グリシン-セリン二つ組を含むものが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に存在し、それらの間の連結を形成する。
【0267】
いくつかの態様において、CARの連結時に、CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達領域は、免疫細胞、例えばCARを発現するように操作されたT細胞、の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを刺激および/または活性化する。例えば、状況によっては、CARは、細胞溶解活性またはTヘルパー活性などといったT細胞の機能、例えばサイトカインまたは他の因子の分泌などを誘導する。いくつかの態様において、例えば、抗原受容体構成成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達領域またはドメインの切断された部分が、エフェクター機能シグナルを伝達するのであれば、インタクトな免疫刺激鎖の代わりにそれが使用される。いくつかの態様において、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む、細胞内シグナル伝達領域は、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、いくつかの局面では、天然状況においてそのような受容体と協調して作用して抗原受容体会合後にシグナル伝達を開始させる共受容体の細胞質配列、および/またはそのような分子の任意の派生物もしくは変異体、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列も含む。いくつかの態様において、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む、細胞内シグナル伝達領域は、共刺激シグナルの提供に関与する領域またはドメインの細胞質配列を含む。
【0268】
いくつかの態様において、受容体は、TCR複合体の細胞内構成成分、例えばT細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖、例えばCD3ゼータ鎖、を含む。したがって、いくつかの局面では、抗原結合または抗原認識ドメインは、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。いくつかの態様において、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、受容体、例えばCARは、Fc受容体ガンマ(FcRγ)、CD8アルファ、CD8ベータ、CD4、CD25、またはCD16などの1つまたは複数の付加的な分子の一部をさらに含む。例えば、いくつかの局面において、CARは、CD3ゼータ(CD3ζ)またはFcRγと、CD8アルファ、CD8ベータ、CD4、CD25、またはCD16の1つまたは複数とのキメラ分子を含む。
【0269】
天然のTCRの状況において、完全な活性化は一般に、TCRを介するシグナル伝達のみならず、共刺激シグナルも必要とする。T細胞の活性化は、いくつかの局面では、以下の2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列によって媒介されると記載されている: TCRを経由して抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達領域またはドメイン)、および抗原依存的に作用して二次または共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達領域またはドメイン)。いくつかの局面では、CARは、そのようなシグナル伝達構成成分の一方または両方を含む。
【0270】
いくつかの局面では、CARは、TCR複合体の一次刺激および/または活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達領域を含む。刺激的に作用する一次細胞質シグナル伝達領域は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含む場合がある。一次細胞質シグナル伝達領域を含むITAMの例としては、TCRまたはCD3ゼータ(CD3ζ)、Fc受容体(FcR)ガンマまたはFcRベータに由来するものが挙げられる。いくつかの態様において、CARにおける細胞質シグナル伝達領域またはドメインは、細胞質シグナル伝達ドメイン、その部分、またはCD3ゼータに由来する配列を含む。いくつかの態様において、細胞内(または細胞質)シグナル伝達領域は、ヒトCD3鎖、任意で、CD3ゼータ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112アミノ酸細胞質ドメイン(アクセッション番号: P20963.2)または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、SEQ ID NO: 13、14もしくは15に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 13、14もしくは15に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0271】
したがって、いくつかの態様において、完全な刺激および/または活性化を促進するために、二次または共刺激シグナルを生成するための1つまたは複数の構成成分もまたCARに含まれる。他の態様において、CARは、共刺激シグナルを生成するための構成成分を含まない。いくつかの局面では、同じ細胞中で付加的なCARが発現され、二次または共刺激シグナルを生成するための構成成分を提供する。
【0272】
いくつかの態様において、CARは、CD28、4-1BB、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、ICOSおよび/または他の共刺激受容体などの共刺激受容体のシグナル伝達領域および/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARが、一次細胞質シグナル伝達領域と共刺激シグナル伝達構成成分との両方を含む。
【0273】
いくつかの態様において、1つまたは複数の異なる組み換え受容体は、1つまたは複数の異なる細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含むことができる。いくつかの態様において、一次細胞質シグナル伝達領域が1つのCAR内に含まれる一方で、共刺激構成成分は、別の受容体、例えば、別の抗原を認識する別のCAR、によって提供される。いくつかの態様において、CARは、いずれも同じ細胞上に発現される活性化または刺激CAR、および共刺激CARを含む(WO2014/055668を参照されたい)。
【0274】
ある特定の態様において、細胞内シグナル伝達領域は、CD3(例えば、CD3-ゼータ)細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、CD3ゼータ細胞内ドメインに連結されたキメラCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含む。
【0275】
いくつかの態様において、CARは、細胞質部分において、1つまたは複数の、例えば、2つまたはそれ以上の、共刺激ドメインおよび一次細胞質シグナル伝達領域を包含する。例示的なCARは、CD3-ゼータ、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2Dおよび/またはICOSの、細胞内シグナル伝達領域またはドメインなどの細胞内構成成分を含む。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2Dおよび/またはICOS由来の、細胞内シグナル伝達領域またはドメインを、場合によっては膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達領域またはドメインとの間に含む。いくつかの局面では、T細胞共刺激分子は、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2Dおよび/またはICOSの1つまたは複数である。
【0276】
いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体もしくは部分、例えば、その41アミノ酸ドメインおよび/または天然CD28タンパク質の186~187位にLLからGGへの置換を有するそのようなドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 10もしくは11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 10もしくは11に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの態様において、細胞内領域は、CD137(4-1BB)の細胞内共刺激シグナル伝達領域もしくはドメインまたはその機能的変異体もしくは部分、例えば、ヒト4-1BBの42アミノ酸細胞質ドメイン(アクセッション番号Q07011.1)またはその機能的変異体もしくは部分、例えば、SEQ ID NO: 12に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 12に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0277】
場合により、CARは、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CARまたは第4世代CARと称される。いくつかの局面において、第1世代CARは、例えば、抗原結合時にCD3鎖誘導性シグナルを介して、単に一次刺激または活性化シグナル提供するものであり; いくつかの局面において、第2世代CARは、そのようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するもの、例えば、1つまたは複数の共刺激受容体、例えばCD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOSおよび/または他の共刺激受容体由来の細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含むものであり; いくつかの局面では、第3世代CARは、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOSおよび/または他の共刺激受容体より選択される、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものであり; いくつかの局面では、第4世代CARは、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOSおよび/または他の共刺激受容体より選択される、異なる共刺激受容体の3つまたはそれ以上の共刺激ドメインを含むものである。
【0278】
いくつかの態様において、細胞は、1つもしくは複数の付加的な分子および/もしくはポリペプチドを発現するように操作され、かつ/またはCARの機能および/もしくは活性を調節、制御もしくはモジュレートするためにコンビナトリアルアプローチおよび/もしくはマルチターゲティングアプローチが用いられる。CARおよびコンビナトリアルアプローチのために用いられる例示的なアプローチは、例えば、下記のコンビナトリアルアプローチおよびマルチターゲティングの項に記載されている。
【0279】
いくつかの態様において、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、およびCD28のシグナル伝達部分またはその機能的変異体とCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的変異体とを含む細胞内シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様において、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、および4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的変異体とCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的変異体とを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかのそのような態様において、該受容体は、ヒトIg分子などのIg分子の一部を含むスペーサー、例えばIgG4ヒンジなどのIgヒンジを含むスペーサー、例えばヒンジのみのスペーサーをさらに含む。
【0280】
b. キメラ自己抗体受容体(CAAR)
いくつかの態様において、組み換え受容体はキメラ自己抗体受容体(CAAR)である。いくつかの態様において、CAARは自己抗体と結合する、例えば特異的に結合するか、またはそれを認識する。いくつかの態様において、CAARを発現するように操作されたT細胞などの、CAARを発現する細胞は、正常な抗体発現細胞に結合するのではなく、自己抗体発現細胞に結合して、それを死滅させるために使用することができる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、自己免疫疾患などの、自己抗原の発現に関連する自己免疫疾患を処置するために使用できる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、最終的に自己抗体を産生して細胞表面に自己抗体を提示するB細胞を標的づけ、これらのB細胞を治療的介入のための疾患特異的標的としてマークすることができる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、抗原特異的キメラ自己抗体受容体を使用して疾患原因のB細胞を標的づけることにより、自己免疫疾患における病原性B細胞を効率的に標的づけ、死滅させるために使用できる。いくつかの態様において、組み換え受容体は、米国特許出願公開第2017/0051035号に記載されるいずれかのような、CAARである。
【0281】
いくつかの態様において、CAARは、自己抗体結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達領域またはドメイン(互換的に細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞で一次活性化シグナルを刺激および/もしくは誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)構成成分のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域またはその機能的変異体もしくはシグナル伝達部分)、および/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。
【0282】
いくつかの態様において、自己抗体結合ドメインは、自己抗原またはその断片を含む。自己抗原の選択は、標的とされる自己抗体のタイプに依存することができる。例えば、自己抗原は、それが特定の疾患状態、例えば、自己抗体媒介自己免疫疾患などの自己免疫疾患と関連する標的細胞上、例えば、B細胞上の自己抗体を認識するので、選択され得る。いくつかの態様において、自己免疫疾患には尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris: PV)が含まれる。例示的な自己抗原には、デスモグレイン1(Dsg1)およびDsg3が含まれる。
【0283】
c. T細胞受容体(TCR)
いくつかの態様では、操作された細胞、例えばT細胞は、腫瘍、ウイルスまたは自己免疫タンパク質の抗原などの、標的ポリペプチドの細胞内および/またはペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識する、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分を発現する。いくつかの局面では、組み換え受容体は、組み換えTCRであるかまたはそれを含む。
【0284】
いくつかの態様では、「T細胞受容体」または「TCR」は、可変α鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られる)もしくは可変γ鎖およびδ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られる)、またはその抗原結合部分を含み、かつMHC分子に結合されたペプチドに特異的に結合することができる分子である。いくつかの態様では、TCRはαβ型である。典型的には、αβ型およびγδ型で存在するTCRは一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能をもつ可能性がある。TCRは細胞の表面上に、または可溶性の形態で存在し得る。一般に、TCRはT細胞(またはTリンパ球)の表面に見られ、そこでは一般的に主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与している。
【0285】
特に明記しない限り、用語「TCR」は、完全なTCRだけでなく、その抗原結合部分または抗原結合断片を包含すると理解されるべきである。いくつかの態様では、TCRは、αβ型またはγδ型のTCRを含めて、インタクトまたは完全長のTCRである。いくつかの態様では、TCRは完全長のTCRに満たない抗原結合部分であるが、それは、MHC-ペプチド複合体に結合するなど、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する。いくつかの場合には、TCRの抗原結合部分または断片は、完全長またはインタクトのTCRの構造ドメインの一部のみを含んでいてよいが、完全なTCRが結合するMHC-ペプチド複合体などのペプチドエピトープに結合することができる。いくつかの場合には、抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α(Vα)鎖および可変β(Vβ)鎖、またはそれらの抗原結合断片を含む。
【0286】
いくつかの態様では、TCRの可変ドメインは超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を含み、これらは一般に、抗原認識ならびに結合能および結合特異性に対する主要な寄与因子である。いくつかの態様では、TCRの1つのCDRまたはその組み合わせは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全てまたは実質的に全てを形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは一般に、フレームワーク領域(FR)によって分離されており、このFRは通常、CDRと比較して、TCR分子間でより少ない可変性(変動性)を示す(例えば、Jores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990; Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたい;また、Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003も参照されたい)。いくつかの態様では、CDR3は、抗原結合または特異性に関与する主要なCDRであるか、または抗原認識にとって、および/またはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用にとって、所与のTCR可変領域の3つのCDRの中で最も重要である。ある状況下では、α鎖のCDR1は、特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。ある状況下では、β鎖のCDR1は、該ペプチドのC末端部分と相互作用することができる。ある状況下では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用またはMHC部分の認識に最も強く寄与するか、またはそれに関与する主要なCDRである。いくつかの態様では、β鎖の可変領域は、さらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含むことができ、これは一般に、スーパー抗原の結合に関与し、抗原認識には関与しない(Kotb (1995) Clinical Microbiology Reviews, 8:411-426)。
【0287】
いくつかの態様では、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または短い細胞質テイルを含むことができる(例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)。いくつかの局面では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端の短い細胞質テイルを保有することができる。いくつかの態様では、TCRは、シグナル伝達を媒介するのに関与するCD3複合体の不変タンパク質と会合する。
【0288】
いくつかの態様では、TCR鎖は1つまたは複数の定常ドメインを含む。例えば、所与のTCR鎖(例えば、α鎖またはβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、例えば、可変ドメイン(例えば、VαまたはVβ;典型的にはKabatナンバリング(Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.)に基づいてアミノ酸1-116)、および細胞膜に隣接する定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインつまりCα、典型的にはKabatナンバリングに基づいて117-259位、またはβ鎖定常ドメインつまりCβ、典型的にはKabatナンバリングに基づいて117-295位)を含むことができる。例えば、場合により、2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、2つの膜遠位可変ドメインを含み、その可変ドメインにはそれぞれCDRが含まれる。TCRの定常ドメインは短い接続配列を含んでもよく、その場合には、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2本の鎖を連結する。いくつかの態様では、TCRは、α鎖とβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基をもつことができ、その結果、TCRは定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むようになる。
【0289】
いくつかの態様では、TCR鎖は膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは正に帯電している。いくつかの場合には、TCR鎖は細胞質テイルを含む。場合によっては、この構造は、TCRを、CD3およびそのサブユニットなどの他の分子と会合させることができる。例えば、膜貫通領域と共に定常ドメインを含むTCRは、該タンパク質を細胞膜に固定して、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、およびCD3ζ鎖)の細胞内テイルは、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つまたは複数の免疫受容活性化チロシンモチーフつまりITAMを含む。
【0290】
いくつかの態様において、TCRは、様々なドメインまたは領域を含む。場合によっては、正確なドメインまたは領域は、特定のドメインを説明するために用いられる特定の構造もしくはホモロジーモデリングまたは他の特徴に応じて変動することができる。組み換え受容体、例えば、TCRのドメイン編成を記載するために使用される、SEQ ID NOとして示される特定の配列への言及を含む、アミノ酸への言及は、例証を目的とするのであって、提供される態様の範囲を限定するつもりはないことが理解される。場合によっては、特定のドメイン(例えば、可変または定常)は、数個のアミノ酸(1、2、3または4つなど)だけ長いまたは短いことができる。いくつかの局面では、TCRの残基は公知であるか、またはInternational Immunogenetics Information System(IMGT)ナンバリングシステムに従って同定することができる(例えば、www.imgt.orgを参照されたく; Lefranc et al. (2003) Developmental and Comparative Immunology, 2&;55-77;およびThe T Cell Factsbook 2nd Edition, Lefranc and LeFranc Academic Press 2001も参照されたい)。このシステムを使用して、TCR Vα鎖および/またはVβ鎖内のCDR1配列は、残基番号27~38の間に存在するアミノ酸(両端の値を含む)に対応し、TCR Vα鎖および/またはVβ鎖内のCDR2配列は、残基番号56~65の間に存在するアミノ酸(両端の値を含む)に対応し、TCR Vα鎖および/またはVβ鎖内のCDR3配列は、残基番号105~117の間に存在するアミノ酸(両端の値を含む)に対応する。
【0291】
いくつかの態様において、TCRのα鎖およびβ鎖は、各々、定常ドメインをさらに含む。いくつかの態様において、α鎖定常ドメイン(Cα)およびβ鎖定常ドメイン(Cβ)は、個別に哺乳動物、例えばヒトまたはマウス定常ドメインである。いくつかの態様において、定常ドメインは細胞膜に隣接する。例えば、場合によっては、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインおよび2つの膜遠位可変ドメインを含み、該可変ドメインは、各々CDRを含む。
【0292】
いくつかの態様において、CαおよびCβドメインの各々はヒトである。いくつかの態様において、Cαは、TRAC遺伝子によってコードされる(IMGT命名法)か、またはその変異体である。いくつかの態様において、Cβは、TRBC1またはTRBC2遺伝子によってコードされる(IMGT命名法)か、またはその変異体である。いくつかの態様において、提供されるTCRまたはその抗原結合断片のいずれかは、ヒト/マウスキメラTCRであることができる。場合によっては、TCRまたはその抗原結合断片は、マウス定常領域を含むα鎖および/またはβ鎖を有する。いくつかの局面では、Cαおよび/またはCβ領域はマウス定常領域である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、TCRまたはその抗原結合断片は、コドン最適化されたヌクレオチド配列によってコードされる。
【0293】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、結合分子もしくはTCRまたはその抗原結合断片は、単離もしくは精製されている、または組み換えである。任意のそのような態様のいくつかにおいて、結合分子もしくはTCRまたはその抗原結合断片はヒトである。
【0294】
いくつかの態様において、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合などにより連結された、2つの鎖αおよびβのヘテロ二量体でありうる。いくつかの態様において、TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それにより、TCRの2つの鎖を連結する、短い接続配列を含む場合がある。いくつかの態様において、TCRは、αおよびβ鎖の各々の中に付加的なシステイン残基を有することにより、TCRが定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含む場合がある。いくつかの態様において、定常および可変ドメインの各々は、システイン残基によって形成されたジスルフィド結合を含む。
【0295】
いくつかの態様において、TCRは、2つの鎖αおよびβ(もしくは任意でγおよびδ)のヘテロ二量体の場合があるか、または一本鎖TCR構築物の場合がある。いくつかの態様において、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合などにより連結された、2つの別々の鎖(αおよびβ鎖またはγおよびδ鎖)を含むヘテロ二量体である。
【0296】
いくつかの態様において、TCRは、実質的に完全長コード配列が容易に入手可能なVα、β鎖の配列などの公知のTCR配列から作製することができる。細胞起源からV鎖配列を含む完全長TCR配列を得るための方法は、周知である。いくつかの態様において、TCRをコードする核酸は、様々な起源から、例えば、1つもしくは複数の所与の細胞内の、もしくは該細胞から単離された、TCRをコードする核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または公的に入手可能なTCR DNA配列の合成により、得ることができる。
【0297】
いくつかの態様において、組み換え受容体には、組み換えTCRおよび/または天然に存在するT細胞からクローン化されたTCRが含まれる。いくつかの態様において、標的抗原(例えば、がん抗原)に対する高親和性T細胞クローンが同定され、患者から単離されて、細胞内に導入される。いくつかの態様において、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、またはHLA)により操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製されてきた。例えば、腫瘍抗原(例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15:169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照されたい。いくつかの態様において、標的抗原に対するTCRを単離するために、ファージディスプレイが用いられる(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14:1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照されたい。
【0298】
いくつかの態様において、TCRは、生物学的供給源から、例えば細胞から、例えばT細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ、または他の公表されている供給源から得られる。いくつかの態様において、T細胞はインビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様において、TCRは、胸腺で選択されたTCRである。いくつかの態様において、TCRはネオエピトープ拘束性TCRである。いくつかの態様において、T細胞は、培養したT細胞ハイブリドーマまたはクローンであることができる。いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分もしくはその抗原結合断片は、TCRの配列の知識から合成的に作製することができる。
【0299】
いくつかの態様において、TCRは、標的ポリペプチド抗原またはその標的T細胞エピトープに対する候補TCRのライブラリーのスクリーニングから同定または選択されたTCRから作製される。TCRライブラリーは、PBMC、脾臓または他のリンパ器官に存在する細胞を含む、対象から単離されたT細胞からのVαおよびVβのレパートリーの増幅によって作製することができる。場合によっては、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)からT細胞を増幅することができる。いくつかの態様において、TCRライブラリーは、CD4+またはCD8+細胞から作製することができる。いくつかの態様において、TCRは、正常または健常な対象のT細胞源、すなわち正常TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様において、TCRは、罹患した対象のT細胞源、すなわち罹患TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様において、縮重プライマーは、ヒトから得られたT細胞などの試料におけるRT-PCRなどによって、VαおよびVβの遺伝子レパートリーを増幅するために使用される。いくつかの態様において、一本鎖TCR(scTv)ライブラリーなどのライブラリーは、ナイーブVαおよびVβライブラリーから組み立てることができ、その際、増幅産物がリンカーによって分離されるようにクローン化されるか、または組み立てられる。対象および細胞の供給源に応じて、該ライブラリーはHLAアレル特異的であることができる。あるいは、いくつかの態様において、TCRライブラリーは、親または足場TCR分子の変異誘発または多様化によって作製することができる。
【0300】
いくつかの局面では、TCRは、例えばα鎖またはβ鎖の、変異誘発などによる定方向進化に供される。いくつかの局面では、TCRのCDR内の特定の残基が変更される。いくつかの態様において、選択されたTCRは、親和性成熟によって改変することができる。いくつかの態様において、ペプチドに対するCTL活性を評価するためのスクリーニングなどによって、抗原特異的T細胞が選択される場合がある。いくつかの局面では、TCR、例えば抗原特異的T細胞上に存在するTCRは、結合活性などによって、例えば、抗原に対する特定の親和性または結合力によって、選択される場合がある。
【0301】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されたものである。いくつかの態様において、変更された特性を有するTCR、例えば、特定のMHC-ペプチド複合体に対する親和性がより高いTCRを作製するために、定方向進化法が用いられる。いくつかの態様において、定方向進化は、以下を含むがそれに限定されるわけではないディスプレイ法によって達成される: 酵母ディスプレイ(Holler et al. (2003) Nat Immunol, 4, 55-62; Holler et al. (2000) Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al. (2005) Nat Biotechnol, 23, 349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al. (2008) J Immunol Methods, 339, 175-84)。いくつかの態様において、ディスプレイアプローチは、公知の親または基準TCRを操作または改変することを含む。例えば、いくつかの場合には、野生型TCRが、CDRの1個または複数の残基を変異させた変異誘発TCRを産生するためのテンプレートとして使用することができ、所望の標的抗原に対するより高い親和性などの、望ましい変更特性を備える変異体が選択される。
【0302】
いくつかの態様において、抗原は、グリオーマ関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトタンパク質(AFP)、B細胞成熟抗原(BCMA、BCM)、B細胞活性化因子受容体(BAFFR、BR3)、ならびに/または膜貫通活性化因子およびCAML相互作用因子(TACI)、Fc受容体様5(FCRL5、FcRH5)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、Melanin-A/MART-1、WT-1、S-100、MBP、CD63、MUC1(例えばMUC1-8)、p53、Ras、サイクリンB1、HER-2/neu、がん胎児性抗原(CEA)、gp100、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A11、MAGE-B1、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-C1、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pl5、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP-1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、β-カテニン、NY-ESO-1、LAGE-1a、PP1、MDM2、MDM4、EGVFvIII、Tax、SSX2、テロメラーゼ、TARP、pp65、CDK4、ビメンチン、S100、eIF-4A1、IFN誘導p78、およびメラノトランスフェリン(p97)、ウロプラキンII、前立腺特異抗原(PSA)、ヒトカリクレイン(huK2)、前立腺特異膜抗原(PSM)、および前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、好中球エラスターゼ、エフリンB2、BA-46、ベータ-カテニン、Bcr-abl、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、カスパーゼ8またはB-Raf抗原であることができる腫瘍抗原である。他の腫瘍抗原は、FRa、CD24、CD44、CD133、CD 166、epCAM、CA-125、HE4、Oval、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、uPA、PAI-1、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソセリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、糖脂質F77、GD-2、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-IIおよびIGF-I受容体に由来するいずれかを含むことができる。特異的腫瘍関連抗原またはT細胞エピトープは公知である(例えば、van der Bruggen et al. (2013) Cancer Immun、www.cancerimmunity.org/peptide/から入手可能; Cheever et al. (2009) Clin Cancer Res, 15, 5323-37を参照されたい)。
【0303】
いくつかの態様において、抗原はウイルス抗原である。HIV、HTLVおよび他のウイルスにおけるウイルスゲノムに由来するペプチドを含む、多数のウイルス抗原標的が同定されており、公知である(例えば、Addo et al. (2007) PLoS ONE, 2, e321; Tsomides et al. (1994) J Exp Med, 180, 1283-93; Utz et al. (1996) J Virol, 70, 843-51を参照されたい)。例示的なウイルス抗原は、A型肝炎、B型肝炎由来の抗原(例えば、HBVコア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs))、C型肝炎(HCV)、エプスタイン-バーウイルス(例えば EBVA)、ヒトパピローマウイルス(HPV; 例えばE6およびE7)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、ラッサウイルス、HTLN-1、HIN-1、HIN-II、CMN、EBNまたはHPN由来の抗原を含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様において、標的タンパク質は、細菌抗原または他の病原体抗原、例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis; MT)抗原、表面抗原(TSA)などのトリパノソーマ、例えば、トリパノソーマ クルージ(Tiypansoma cruzi; T. cruzi)、抗原、またはマラリア抗原である。特異的ウイルス抗原もしくはエピトープまたは他の病原性抗原もしくはT細胞エピトープは公知である(例えば、Addo et al. (2007) PLoS ONE, 2:e321; Anikeeva et al. (2009) Clin Immunol, 130:98-109を参照されたい)。
【0304】
いくつかの態様において、抗原は、腫瘍ウイルスなどの、がんに関連するウイルスに由来する抗原である。例えば、腫瘍ウイルスは、ある種のウイルスからの感染が異なる種類のがんの発生をもたらすことが知られているウイルス、例えば、A型肝炎、B型肝炎(例えば、HBVコア抗原および表面抗原(HBVc、HBVs))、C型肝炎(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス感染、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)、ヒトT細胞白血病ウイルス-1(HTLV-1)、ヒトT細胞白血病ウイルス-2(HTLV-2)、またはサイトメガロウイルス(CMV)抗原である。
【0305】
いくつかの態様において、ウイルス抗原は、場合によっては子宮頸がんを発生するより大きいリスクをもたらす可能性がある、HPV抗原である。いくつかの態様において、抗原は、HPV-16抗原、HPV-18抗原、HPV-31抗原、HPV-33抗原またはHPV-35抗原であることができる。いくつかの態様において、ウイルス抗原は、HPV-16抗原(例えば、HPV-16のE1、E2、E6および/もしくはE7タンパク質の血清反応性領域、例えば、米国特許第6,531,127号を参照されたい)またはHPV-18抗原(例えば、米国特許第5,840,306号に記載されているような、HPV-18のL1および/もしくはL2タンパク質の血清反応性領域)である。いくつかの態様において、ウイルス抗原は、HPV-16のE6および/またはE7タンパク質由来のHPV-16抗原である。いくつかの態様において、TCRは、HPV-16 E6またはHPV-16 E7に対するTCRである。いくつかの態様において、TCRは、例えば、WO2015/184228、WO2015/009604およびWO2015/009606に記載されたTCRである。
【0306】
いくつかの態様において、ウイルス抗原は、場合によってはHBVまたはHCV陰性対象よりも肝がんを発生するより大きいリスクをもたらす可能性がある、HBVまたはHCV抗原である。例えば、いくつかの態様において、異種抗原は、B型肝炎コア抗原またはB型肝炎エンベロープ抗原などのHBV抗原である(US2012/0308580)。
【0307】
いくつかの態様において、ウイルス抗原は、場合によってはEBV陰性対象よりもバーキットリンパ腫、鼻咽頭がんおよびホジキン病を発生するより大きいリスクをもたらす可能性がある、EBV抗原である。例えば、EBVは、場合によっては多様な組織起源の数多くのヒト腫瘍に関連することが見出されているヒトヘルペスウイルスである。主として無症候性感染として見られるものの、EBV陽性腫瘍は、EBNA-1、LMP-1およびLMP-2Aなどのウイルス遺伝子産物の活発な発現によって特徴づけることができる。いくつかの態様において、異種抗原は、エプスタイン-バー核抗原(EBNA)-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、EBNA-リーダータンパク質(EBNA-LP)、潜在膜タンパク質LMP-1、LMP-2AおよびLMP-2B、EBV-EA、EBV-MAまたはEBV-VCAを含むことができる、EBV抗原である。
【0308】
いくつかの態様において、ウイルス抗原は、場合によってはHTLV-1またはHTLV-2陰性対象よりもT細胞白血病を発生するより大きなリスクをもたらす可能性がある、HTLV-1またはHTLV-2抗原である。例えば、いくつかの態様において、異種抗原は、TAXなどのHTLV抗原である。
【0309】
いくつかの態様において、ウイルス抗原は、場合によってはHHV-8陰性対象よりもカポジ肉腫を発生する大きなリスクをもたらす可能性がある、HHV-8抗原である。いくつかの態様において、異種抗原は、pp65またはpp64などのCMV抗原である(米国特許第8,361,473号を参照されたい)。
【0310】
いくつかの態様において、抗原は、自己抗原、例えば自己免疫疾患または障害に関連するポリペプチドの抗原である。いくつかの態様において、自己免疫疾患または障害は、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、重症筋無力症(MG)、水疱性類天疱瘡(真皮-表皮接合部での基底膜に対する抗体)、天疱瘡(ムコ多糖タンパク質複合体または細胞内セメント物質に対する抗体)、糸球体腎炎(糸球体基底膜に対する抗体)、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血(赤血球に対する抗体)、橋本病(甲状腺に対する抗体)、悪性貧血(内因子に対する抗体)、特発性血小板減少性紫斑病(血小板に対する抗体)、グレーブス病、またはアジソン病(サイログロブリンに対する抗体)であることができる。いくつかの態様において、自己抗原、例えば前述の自己免疫疾患の1つに関連する自己抗原は、コラーゲン、例えばII型コラーゲン、ミコバクテリア熱ショックタンパク質、サイログロブリン、アセチルコリン受容体(AcHR)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはプロテオリピドタンパク質(PLP)であることができる。特異的自己免疫関連エピトープまたは抗原は公知である(例えば、Bulek et al. (2012) Nat Immunol, 13:283-9; Harkiolaki et al. (2009) Immunity、30:348-57; Skowera et al. (2008) J Clin Invest, 1(18): 3390-402を参照されたい)。
【0311】
いくつかの態様において、関心対象のTCRの産生または作製に使用するための標的ポリペプチドのペプチドは、公知であるか、または容易に同定することができる。いくつかの態様において、TCRまたは抗原結合部分の作製に使用するために適したペプチドは、関心対象の標的ポリペプチド、例えば、下記の標的ポリペプチドにおけるHLA拘束性モチーフの存在に基づき決定することができる。いくつかの態様において、ペプチドは、利用可能なコンピュータ予測モデルを用いて同定される。いくつかの例では、コンピュータ予測モデルを用いるHLA-A0201結合モチーフならびにプロテアソームおよび免疫プロテアソームについての切断部位は、公知である。いくつかの態様において、MHCクラスI結合部位を予測するために、そのようなモデルは、ProPred1(Singh and Raghava (2001) Bioinformatics 17(12):1236-1237、およびSYFPEITHIを含むが、それに限定されるわけではない(Schuler et al. (2007) Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, 409(1): 75-93 2007を参照されたい)。いくつかの態様において、MHC拘束性エピトープは、HLA-A0201であり、これは、白人全体の約39~46%に発現され、したがって、TCRまたは他のMHC-ペプチド結合分子の調製に使用するために選ばれてふさわしいMHC抗原を意味する。
【0312】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、組み換え産生された天然タンパク質または結合特徴などの1つもしくは複数の特性が変更されているその変異形態であり得る。いくつかの態様において、TCRは、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物などの様々な動物種の1つに由来する場合がある。TCRは、細胞結合型または可溶性形態であり得る。いくつかの態様において、提供される方法のために、TCRは、細胞表面に発現された細胞結合型である。
【0313】
いくつかの態様において、組み換えTCRは完全長TCRである。いくつかの態様において、組み換えTCRは抗原結合部分である。いくつかの態様において、TCRは二量体性TCR(dTCR)である。いくつかの態様において、TCRは一本鎖TCR(scTCR)である。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRは、例えば、国際特許出願公開番号WO03/020763、WO04/033685およびWO2011/044186に記載されているような構造を有する。
【0314】
いくつかの態様において、組み換えTCRは、膜貫通配列に対応する配列を含む。いくつかの態様において、TCRは、細胞質配列に対応する配列を含む。いくつかの態様において、TCRは、CD3とTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRを含む組み換えTCRのいずれかを、シグナル伝達ドメインに連結して、T細胞表面に活性TCRをもたらすことができる。いくつかの態様において、組み換えTCRは細胞表面に発現される。導入または操作された鎖間ジスルフィド結合を含むdTCRまたはscTCRのいくつかの態様において、ネイティブなジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様において、ネイティブな鎖間ジスルフィド結合を形成するネイティブなシステインの1つまたは複数は、別の残基、例えばセリンまたはアラニンに置換される。いくつかの態様において、導入または操作されたジスルフィド結合は、第1および第2のセグメント上の非システイン残基をシステインに変異させることによって形成することができる。TCRの例示的な非ネイティブなジスルフィド結合は、公開国際PCT番号WO2006/000830に記載されている。
【0315】
ある種の態様において、TCRは、TCRα鎖とTCRβ鎖との間に1つまたは複数の非ネイティブなジスルフィド架橋を形成することができる1つまたは複数のシステイン残基を導入するために1つまたは複数の修飾を含む。いくつかの態様において、TCRは、TCRβ鎖と非ネイティブなジスルフィド結合を形成することができる1つまたは複数のシステイン残基を含むTCRα定常ドメインを含むTCRα鎖またはその一部を含む。いくつかの態様において、導入遺伝子は、TCRα鎖と非ネイティブなジスルフィド結合を形成することができる1つまたは複数のシステイン残基を含むTCRβ定常ドメインを含むTCRβ鎖またはその一部をコードする。いくつかの態様において、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合を導入するための1つまたは複数の修飾を含むTCRαおよび/もしくはTCRβ鎖ならびに/またはTCRαおよび/もしくはTCRβ鎖定常ドメインを含む。いくつかの態様において、導入遺伝子は、TCRαおよび/もしくはTCRβ鎖ならびに/または例えば、導入遺伝子によるTCRαと内因性TCRβ鎖との間もしくは導入遺伝子によるTCRβと内因性TCRα鎖との間の、ネイティブなジスルフィド結合を除去または防止するための1つもしくは複数の修飾を有するTCRαおよび/もしくはTCRβをコードする。いくつかの態様において、ネイティブな鎖間ジスルフィド結合を形成する、および/または形成することができる1つまたは複数のネイティブなシステインは、別の残基、例えば、セリンまたはアラニンに置換される。いくつかの態様において、システインは、TCRα定常ドメインのナンバリングに関して残基Thr48、Thr45、Tyr10、Thr45、およびSer15の1つまたは複数に導入される。ある種の態様において、システインは、TCRβ鎖定常ドメインのGlu15の残基Ser57、Ser77、Ser17、Asp59に導入することができる。TCRの例示的な非ネイティブなジスルフィド結合は、公開国際PCT番号WO2006/000830、WO2006/037960およびKuball et al. (2007) Blood, 109:2331-2338に記載されている。
【0316】
いくつかの態様において、組み換えTCRは二量体性TCR(dTCR)である。いくつかの態様において、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合された第1ポリペプチド、およびTCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合された第2ポリペプチドを含み、第1および第2ポリペプチドは、ジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの態様において、結合は、ネイティブな二量体性αβTCRに存在するネイティブな鎖間ジスルフィド結合に対応することができる。いくつかの態様において、鎖間ジスルフィド結合は、ネイティブなTCRに存在しない。例えば、いくつかの態様において、1つまたは複数のシステインは、dTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列中に組み込むことができる。場合によっては、ネイティブなジスルフィド結合および非ネイティブなジスルフィド結合の両方が望ましい場合がある。いくつかの態様において、TCRは、膜にアンカーするための膜貫通配列を含む。
【0317】
いくつかの態様において、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメイン、および定常αドメインのC末端に結合した第1の二量体化モチーフを含むTCRα鎖、ならびに可変βドメイン、定常βドメイン、および定常βドメインのC末端に結合した第1の二量体化モチーフを含むTCRβ鎖を含み、第1および第2の二量体化モチーフは、第1の二量体化モチーフにおけるアミノ酸と第2の二量体化モチーフにおけるアミノ酸との間に共有結合を形成して、TCRα鎖およびTCRβ鎖を一緒に連結するように相互作用する。
【0318】
いくつかの態様において、組み換えTCRは一本鎖TCR(scTCRまたはscTv)である。典型的には、scTCRは、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、Soo Hoo, W. F. et al. PNAS (USA) 89, 4759 (1992); Wuelfing、C. and Plueckthun、A., J. Mol. Biol. 242, 655 (1994); Kurucz, I. et al. PNAS (USA) 90 3830 (1993); 国際特許出願公開番号WO96/13593、WO96/18105、WO99/60120、WO99/18129、WO03/020763、WO2011/044186; およびSchlueter, C. J. et al. J. Mol. Biol. 256, 859 (1996)を参照されたい。いくつかの態様において、scTCRは、TCR鎖の会合を促進するための、導入された非ネイティブなジスルフィド鎖間結合を含む(例えば、国際特許出願公開番号WO03/020763を参照されたい)。いくつかの態様において、scTCRは、そのC末端に融合された異種ロイシンジッパーが鎖の会合を促進する、非ジスルフィド連結された切断されたTCRである(例えば、国際特許出願公開番号WO99/60120を参照されたい)。いくつかの態様において、scTCRは、ペプチドリンカーを介してTCRβ可変ドメインに共有結合的に連結されたTCRα可変ドメインを含む(例えば、国際特許出願公開番号WO99/18129を参照されたい)。
【0319】
いくつかの態様において、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第1セグメント、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合されたTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2セグメント、および第1セグメントのC末端を第2セグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。いくつかの態様において、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列によって構成される第1セグメント、ならびにβ鎖細胞外定常配列および膜貫通配列のN末端に融合されたβ鎖可変領域配列によって構成される第2セグメント、ならびに任意で、第1セグメントのC末端を第2セグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。いくつかの態様において、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合されたTCRβ鎖可変領域配列によって構成される第1セグメント、ならびにα鎖細胞外定常配列および膜貫通配列のN末端に融合されたα鎖可変領域配列によって構成される第2セグメント、ならびに任意で、第1セグメントのC末端を第2セグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
【0320】
いくつかの態様において、第1および第2TCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、TCR結合特異性を保持しながら、単一のポリペプチド鎖を形成することができる任意のリンカーであることができる。いくつかの態様において、リンカー配列は、例えば、式-P-AA-P-を有する場合があり、ここで、Pはプロリンであり、AAは、アミノ酸がグリシンとセリンであるアミノ酸配列を表す。いくつかの態様において、第1および第2セグメントは、その可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対合される。それゆえ、いくつかの場合には、リンカーは、第1セグメントのC末端と第2セグメントのN末端との間、またはその逆の間の距離にまたがるのに十分な長さがあるが、標的リガンドへのscTCRの結合をブロックまたは低減させるほど長すぎない。いくつかの態様において、リンカーは、10~45アミノ酸または約10~45アミノ酸、例えば10~30アミノ酸または26~41アミノ酸残基、例えば29、30、31または32アミノ酸を含むことができる。いくつかの態様において、リンカーは、式-PGGG-(SGGGG)5-P-(SEQ ID NO:22)を有し、ここで、Pはプロリン、Gはグリシン、Sはセリンである。いくつかの態様において、リンカーは、配列
を有する。
【0321】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基を、β鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する、共有ジスルフィド結合を含む。いくつかの態様において、ネイティブなTCR中の鎖間ジスルフィド結合は存在しない。例えば、いくつかの態様において、1つまたは複数のシステインは、scTCRポリペプチドの第1および第2セグメントの定常領域細胞外配列に組み込むことができる。場合によっては、ネイティブなジスルフィド結合および非ネイティブなジスルフィド結合の両方が望ましい場合がある。
【0322】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合断片は、標的抗原に対する平衡解離定数(KD)が10-5~10-12Mまたは約10-5~10-12Mならびにその中の個別の値および範囲である親和性を示す。いくつかの態様において、標的抗原はMHC-ペプチド複合体またはリガンドである。
【0323】
III. 操作された細胞を産生するための方法
いくつかの局面では、本明細書において提供されるのは、細胞、例えば、濃縮されたT細胞の1つまたは複数の集団を刺激、活性化、操作、培養および/または拡大増殖するための方法である。いくつかの態様では、細胞の1つまたは複数の集団は、細胞を刺激条件下および/または刺激試薬の存在下でインキュベートすることなどによって、刺激または活性化される。ある特定の態様では、濃縮されたT細胞の1つまたは複数の集団は、異種ポリヌクレオチドを1つまたは複数の集団の細胞に導入することなどによって、遺伝子操作される。ある特定の態様では、濃縮されたT細胞の1つまたは複数の集団は、例えば、所定の時間または拡大増殖の限界値が達成されるまで、培養される、例えば、T細胞の分化、成長または拡大増殖を促進するか可能にする条件下で培養される。いくつかの態様では、操作プロセスは、細胞を刺激する工程および次の形質導入する工程を含む。特定の態様では、操作プロセスは、細胞を刺激する工程、形質導入する工程および次の拡大増殖する工程を含む。ある特定の態様では、細胞は、拡大増殖されない。
【0324】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、T細胞の1つまたは複数の初期(例えば、ソース)集団から遺伝子操作されたT細胞組成物を生成するための方法である。いくつかの態様では、濃縮されたT細胞の集団が刺激条件下でインキュベートされ、それによって、刺激された集団を生成する。ある特定の態様では、異種ポリヌクレオチドが刺激された集団の細胞に導入され、それによって、形質転換された集団を生成する。ある特定の態様では、次いで、形質転換された集団が、例えば、一定時間または限界拡大増殖が達成されるまで拡大増殖され、それによって、拡大増殖された集団がもたらされる。特定の態様では、形質転換された集団または拡大増殖された集団が採取または収集され、対象への投与または凍結保存などのために任意で製剤化される。いくつかの態様では、集団は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞であるかそれを含有する。
【0325】
ある特定の態様では、本明細書において提供されるのは、T細胞の2つの初期(例えば、ソース)集団から遺伝子操作されたT細胞組成物を生成するための方法である。いくつかの態様では、濃縮されたT細胞の2つの集団が刺激条件下で別々にインキュベートされ、それによって、2つの別個の刺激された集団を生成する。ある特定の態様では、異種ポリヌクレオチドが2つの別個の刺激された集団の細胞に導入され、それによって、2つの別個の形質転換された集団を生成する。ある特定の態様では、次いで、2つの別個の形質転換された集団が、例えば、一定時間または限界拡大増殖が達成されるまで拡大増殖され、それによって、2つの別個の拡大増殖された集団がもたらされる。特定の態様では、2つの別個の形質転換された集団または2つの別個の拡大増殖された集団が採取または収集され、対象への投与または凍結保存などのために任意で製剤化される。特定の態様では、2つの別個の集団は、同じ個々の対象由来の同じ生体試料または異なる生体試料を起源とするかそれに由来する。いくつかの態様では、2つの別個の集団は、濃縮されたCD4+ T細胞の集団およびCD8+ T細胞の別個の集団であるかそれを含有する。
【0326】
いくつかの態様では、本明細書における提供される方法を、操作された細胞を生成するためのプロセスの前、その間またはその完了後に、細胞のタンパク質、例えば、表面タンパク質の存在、レベル、量または発現を決定、測定または評価するために使用することができる。いくつかの態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、本明細書に、例えば、セクションIに記載される提供される方法のいずれかによって得られる。いくつかの態様では、提供される方法を、1つまたは複数のタンパク質、例えば、表面タンパク質の存在、非存在、量、レベルおよび/または相対存在量に対する操作プロセスの効果を測定、モニタリングまたは評価するために使用することができる。
【0327】
ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、操作された細胞組成物の細胞から得られる。特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、例えばセクションIIIなどにおける本明細書に記載される任意の操作プロセスなどの細胞を操作するためのプロセスを受けるだろうまたは受けている細胞から得られる。ある特定の態様では、細胞は、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される遺伝子操作のためのプロセスのいずれか1つを受けている。いくつかの態様では、細胞を操作するためのプロセスは、組換え受容体を発現する細胞を生成するための工程であるかそれを含む。特定の態様では、組換え受容体は、CARである。ある特定の態様では、組換え受容体は、本明細書に、例えば、セクションII-C-1-aまたはII-C-1-bに記載される任意のCARである。特定の態様では、組換え受容体は、組換えTCR、例えば、セクションII-C-1-cなどにおける本明細書に記載される組換えTCRである。いくつかの態様では、組換え受容体は、抗CD19 CARである。ある特定の態様では、組換え受容体は、抗BCMA CARである。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、操作された細胞によって発現されるCARを測定または同定するために、細胞組成物から得られる。特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、CARを発現する細胞を操作するためのプロセス中に細胞組成物から得られる。
【0328】
特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、操作プロセスの異なる段階または時点で収集された細胞を含有する2つ以上の細胞組成物から得られる。いくつかの態様では、2つ以上の細胞組成物は、同じ対象(1つまたは複数)から生成される。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルを、細胞に対する操作プロセスの効果、例えば、表面タンパク質の発現、あるいはいくつかの局面では、限定されないが生存能力、分化または増殖潜在能などの特徴、性質または属性における変化を同定するために分析または互いに比較してもよい。
【0329】
特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、異なる操作プロセス、例えば、同じ組換え受容体を発現する細胞を生成するための異なる操作プロセスの同じ段階または時点で収集された細胞を含有する2つ以上の細胞組成物から得られる。特定の態様では、2つ以上の細胞組成物は、同じ対象(1つまたは複数)から生成される。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルを、細胞に対する異なる操作プロセスの効果を同定するために分析または互いに比較してもよい。
【0330】
いくつかの態様では、異なる操作プロセスから生成された同じ組換え受容体(例えば、CAR)を表すマススペクトロメトリープロファイルが、得られた操作された細胞に対する操作プロセスの効果を比較または決定するなどのために生成される。ある特定の態様では、製造プロセスは、プロセスの1つもしくは複数の工程または試薬に関して異なる。いくつかの態様では、プロセスは、少なくとも1つの試薬の使用の点で異なる。いくつかの態様では、試薬は、刺激試薬、例えば、本明細書に、例えば、セクションIII-Bに記載される任意の刺激試薬である。いくつかの態様では、試薬は、抗体、例えば、抗CD3抗体、サイトカイン、例えば、IL-2、可溶性の抗CD3抗体および/もしくは抗CD28抗体、ビーズもしくはオリゴマー粒子系の刺激試薬、または照射された抗原発現細胞を含み得る。いくつかの態様では、試薬は、遺伝子送達のためのベクター、例えば、ウイルスベクターである。
【0331】
特定の態様は、提供される方法をまた、操作されたT細胞組成物の産生または維持に関連して使用される試薬を分析または特徴付けるために利用してもよいことを想定している。ある特定の態様では、試薬、例えば、本明細書に、例えば、セクションIIIに記載される試薬はいずれも、タンパク質を含有し得るので、本明細書に記載される方法に従いマススペクトロメトリーによって調査してもよい。
【0332】
いくつかの局面では、細胞組成物の単位用量間の変動は、操作された細胞療法の生成または製造において利用される製造プロセスの1つまたは複数の局面に起因し得る。場合によって、原料またはその取り扱いもしくは貯蔵に対する変化は、毒性のリスクおよび/またはアウトカムに影響を及ぼす本明細書において観察される変数に影響を及ぼし得る。いくつかの局面では、原料のロット間変動もしくは貯蔵/取り扱いおよび/または多数の対象にわたって行われるプロセス間の異なる原料の使用は、生成された細胞組成物のある特定の局面(例えば、変動した場合に、細胞療法が投与された対象間で、特に、ある特定の患者特異的属性が異なるそのような対象間で、毒性リスクまたは臨床アウトカムにおける変動をもたらし得る局面)の変動を増加させるか前記局面を増加または減少させるなどによって、影響を及ぼし得る。
【0333】
いくつかの態様では、提供されるのは、(例えば、任意またはすべての)原料、ロット、試薬またはその貯蔵もしくは取り扱い、あるいは提供される方法のいずれかによるそれらに対する変化の結果としての、1つまたは複数のそのような産物の属性またはリスクまたは可能性に対する潜在的影響またはそれらにおける変動を評価すること、それについて試験すること、および/またはそれについて制御することを伴うアプローチである。いくつかの態様では、そのようなアプローチは、対象に投与されるべき細胞組成物の産生におけるまたはそのような投与前の、そのような原料、ロットの使用、貯蔵または取り扱いに先立って行われるようなアッセイを含む。いくつかの局面では、本アッセイは、原料、ロット、変化、または取り扱いもしくは貯蔵法の、毒性のリスクまたはアウトカムに影響を及ぼすかそのようなアウトカムにおける患者間変動の影響を悪化させる本明細書において観察されるような細胞組成物における1つまたは複数の属性に対する影響を評価する。いくつかの局面では、本アッセイは、別の材料、ロットまたは貯蔵もしくは取り扱い法と比較して許容可能に低い変動または分散の程度があるか、あるいはそのような1つまたは複数の属性に対する許容可能に低い影響があるかを評価する。ある特定の態様では、本アッセイは、本明細書に、例えば、セクションIにおいて提供される方法のいずれかのようなマススペクトロメトリーの使用であるかそれを含む。ある特定の態様では、本アッセイは、マススペクトロメトリープロファイルの生成であるかそれを含む。
【0334】
いくつかの局面では、原料、ロットまたは貯蔵もしくは取り扱いのための方法は、本アッセイ、例えば、本明細書に記載される方法によるなどのマススペクトロメトリーを伴うアッセイが、そのような変動または分散または影響が許容される範囲または値または限界内にあることを確認した場合に、例えば、それを確認した場合にのみまたはそれを確認した後に、患者に投与されるべき細胞療法の製造における使用のために公表される、またはそのような細胞療法が患者に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数のそのような属性における変動が新たな原料またはロットまたは貯蔵もしくは取り扱い法に関してある特定のレベルを下回ると判断されれば、そのような新たな原料またはロットまたは貯蔵もしくは取り扱い法の実践後、毒性のリスクまたは応答の低減を軽減することができる。いくつかの態様では、中でも、そのような提供される方法は、製品の公表前に組成物をアッセイするおよび/またはそのようなパラメーターに基づいて投薬ストラテジーを調整する方法である。
【0335】
本観察は、例えば、安全で有効な細胞組成物用量を同定する際に、組成物におけるある特定の細胞/抗原特異的活性に寄与し得る因子における変動の程度を、異なる対象に由来する細胞から産生された組成物の観点から、および/あるいは、原料または試薬の1つまたは複数の異なる貯蔵または取り扱い条件(例えば、異なるロットの試薬または他の原料を使用した)の存在下で考慮すること(例えば、製品の公表前にアッセイすることおよび/または投薬ストラテジーの要素に入れること)が有利であり得るとの解釈と一致した。いくつかの局面では、そのようなパラメーターにおける変動を低減すること、および/あるいは、そのような異なる条件/ロット間の許容される変動範囲を、異なる条件下で貯蔵または取り扱われた新たなロットまたは試薬を導入する際などに、本明細書に、例えば、セクションIに記載されるようなマススペクトロメトリーアッセイを使用するなどして確認することが有利である。
【0336】
いくつかの態様では、提供される方法、製造品、組成物、用量および投薬ストラテジーは、これらが、試薬における変化および/または患者間変動に由来するものを含めた潜在的な変動源を計算に入れ、必要な場合には、それを調整または補正するという点で有利である。例えば、いくつかの態様では、操作されたT細胞を、パラメーター、例えば、マススペクトロメトリープロファイルまたは試薬の1つもしくは複数のタンパク質のレベル、量、濃度もしくは修飾の閾値レベルと比較して許容される変動または分散範囲を下回るかその範囲内にあることが出荷検査によって検証されたT細胞刺激/拡大増殖試薬(またはそのロット)の使用を伴うプロセスによって産生することが有利であり得る。
【0337】
いくつかの態様では、試薬は、タンパク質であるかそれを含有する試薬である。特定の態様では、試薬は、細胞を刺激、活性化、形質導入、トランスフェクション、形質転換、培養、または拡大増殖するために、操作プロセス中に使用される。いくつかの態様では、タンパク質プロファイル。
【0338】
A. 試料からの細胞の単離または選択
いくつかの態様では、処理工程は、特定の疾患もしくは病状を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が投与される対象などの対象から得られるまたはそれに由来する生体試料などの生体試料から、細胞またはその組成物を単離することを含む。いくつかの局面では、対象は、細胞がそのために単離、処理および/または操作される養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とする患者である対象などのヒトである。したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。いくつかの態様では、細胞は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含む。いくつかの態様では、細胞は、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を含む。試料は、組織、体液、および対象から直接採取された他の試料を含む。生体試料は、生物学的供給源から直接得られた試料、または処理される試料であることができる。生体試料は、限定されないが、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官の試料を含み、これらに由来する処理済み試料も含む。
【0339】
いくつかの局面では、細胞は、一般に、哺乳動物細胞などの真核細胞であり、典型的にはヒト細胞である。いくつかの態様では、細胞は、血液、骨髄、リンパ液またはリンパ器官に由来し、免疫系の細胞、例えば、自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、骨髄またはリンパ系の細胞(リンパ球を含む)、典型的にはT細胞および/またはNK細胞である。他の例示的な細胞は、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含めた複能性および多能性の幹細胞を含む。細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離されて凍結されたものである。いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその亜集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化潜在能、拡大増殖、再循環、局在性、および/もしくは持続性能、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化の程度によって定義されるものを含む。処置されるべき対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。中でも、本方法は、既製の方法を含む。いくつかの局面では、既製の技術などのために、細胞は、多能性および/または複能性であり、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞である。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に記載されるように、対象から細胞を単離し、それらを調製、処理、培養および/または操作し、凍結保存の前または後にそれらを同じ患者に再導入することを含む。
【0340】
中でも、T細胞および/またはCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞のサブタイプおよび亜集団は、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在する適応可能な制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、瀘胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞である。いくつかの態様では、細胞は、制御性T細胞(Treg)である。いくつかの態様では、細胞はさらに、組換えFOXP3またはそのバリアントを含む。
【0341】
いくつかの態様では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0342】
いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養工程および/または調製工程を含む。操作するための細胞は、生体試料、例えば、対象から得られるまたはそれに由来する生体試料などの試料から単離されてもよい。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは病状を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が投与される対象である。対象は、いくつかの態様では、細胞がそのために単離、処理および/または操作される養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。
【0343】
したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料は、組織、体液、および対象から直接採取された他の試料に加え、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から生じる試料も含む。生体試料は、生物学的供給源から直接得られた試料、または処理される試料であることができる。生体試料は、限定されないが、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官の試料を含み、これらに由来する処理済み試料も含む。
【0344】
いくつかの局面では、細胞が由来するか単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物であるかそれに由来する。例示的な試料は、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、大腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞を含む。試料は、細胞療法、例えば、養子細胞療法の状況下では、自己および同種の供給源由来の試料を含む。
【0345】
いくつかの態様では、細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類またはブタから得られる。
【0346】
いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製工程および/または非親和性に基づく細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞は、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分を濃縮し、特定の試薬に感受性のある細胞を溶解または除去するために、洗浄される、遠心分離される、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの例では、細胞は、密度、付着特性、サイズ、感度および/または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の性質に基づいて分離される。
【0347】
いくつかの例では、対象の循環血液由来の細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球細胞、赤血球細胞および/または血小板を含むリンパ球を含有し、いくつかの局面では、赤血球細胞および血小板以外の細胞を含有する。
【0348】
いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、例えば、血漿画分を除去するために、かつ、後続の処理工程のために細胞を適切な緩衝液または培地に入れるために、洗浄される。いくつかの態様では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの態様では、洗浄溶液は、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または多くのもしくはあらゆる二価カチオンを欠く。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、Baxter)によって達成される。いくつかの局面では、洗浄工程は、製造業者の指示に従って接線流濾過(TFF)によって達成される。いくつかの態様では、細胞は、洗浄後、例えば、Ca++/Mg++不含PBSなどの多種多様な生体適合性緩衝液に再懸濁される。ある特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培養培地に直接再懸濁される。
【0349】
いくつかの態様では、調製法は、形質導入および操作のための単離、選択および/または濃縮および/またはインキュベーションの前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば、凍結保存するための工程を含む。いくつかの態様では、凍結および後続の融解工程は、細胞集団中の顆粒球および(ある程度まで)単球を除去する。いくつかの態様では、細胞は、例えば、血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液に懸濁される。いくつかの局面では、多種多様な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれを使用してもよい。一例は、20%のDMSOおよび8%のヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の好適な細胞凍結培地を使用することを伴う。次いで、これは、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるように、培地で1:1に希釈される。次いで、細胞は、一般に、毎分1°の速度で-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵される。
【0350】
いくつかの態様では、細胞または集団の単離は、1つまたは複数の調製工程および/または非親和性に基づく細胞分離工程を含む。いくつかの例では、細胞は、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分を濃縮し、特定の試薬に感受性のある細胞を溶解または除去するために、洗浄される、遠心分離される、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの例では、細胞は、密度、付着特性、サイズ、感度および/または特定の成分に対する耐性などの1つまたは複数の性質に基づいて分離される。いくつかの態様では、本方法は、赤血球細胞を溶解することによる末梢血からの白血球細胞の調製、およびパーコール勾配またはフィコール勾配による遠心分離などの密度に基づく細胞分離法を含む。
【0351】
いくつかの態様では、本方法は、赤血球細胞を溶解することによる末梢血からの白血球細胞の調製、およびパーコール勾配またはフィコール勾配による遠心分離などの密度に基づく細胞分離法を含む。
【0352】
いくつかの態様では、単離法は、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸などの1つまたは複数の特定分子の細胞中の発現または存在に基づく異なる細胞タイプの分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用してもよい。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、単離は、いくつかの局面では、1つまたは複数のマーカー(典型的には、細胞表面マーカー)の細胞の発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーなどの選択試薬とのインキュベーションと、一般にそれに続く、洗浄工程および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーに結合している細胞の分離によるものを含む。
【0353】
いくつかの態様では、選択工程の少なくとも一部は、細胞と選択試薬とのインキュベーションを含む。例えば、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸などの1つまたは複数の特定分子の細胞内または細胞上の発現または存在に基づいて1つまたは複数の異なる細胞タイプを選択するために1つまたは複数の選択試薬を使用して実施され得る選択方法の一部としての、1つまたは複数の選択試薬とのインキュベーション。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための1つまたは複数の選択試薬を使用する任意の公知の方法を使用してよい。いくつかの態様では、1つまたは複数の選択試薬は、親和性または免疫親和性に基づく分離である分離をもたらす。例えば、選択は、いくつかの局面では、1つまたは複数のマーカー(典型的には、細胞表面マーカー)の細胞の発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離のための1つまたは複数の試薬とのインキュベーション、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションと、一般にそれに続く、洗浄工程および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーに結合している細胞の分離によるものを含む。いくつかの態様では、選択および/またはプロセスの他の局面は、国際特許出願公開番号WO/2015/164675に記載されている。
【0354】
そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある体積の細胞が、ある量の所望の親和性に基づく選択試薬と混合される。免疫親和性に基づく選択は、分離される細胞と細胞上のマーカーに特異的に結合する分子、例えば、固体表面(例えば、粒子)上の抗体または他の結合パートナーとの間の有利なエネルギー相互作用をもたらす任意のシステムまたは方法を使用して行うことができる。いくつかの態様では、本方法は、細胞のマーカーに特異的な選択剤(例えば、抗体)によって被覆されているビーズ、例えば、磁性ビーズなどの粒子を使用して行われる。粒子(例えば、ビーズ)は、チューブまたはバッグなどの容器内で、エネルギー的に有利な相互作用を促進するのに役立つ一定の細胞密度対粒子(例えば、ビーズ)比で、振盪または混合しながら、細胞とインキュベートまたは混合することができる。他の場合には、本方法は、選択の全部または一部が、遠心チャンバの内部キャビティ内で、例えば、遠心回転下で行われる、細胞の選択を含む。いくつかの態様では、細胞と選択試薬、例えば、免疫親和性に基づく選択試薬とのインキュベーションは、遠心チャンバ内で実施される。ある特定の態様では、単離または分離は、国際特許出願公開番号WO2009/072003またはUS 20110003380 A1に記載されているシステム、デバイスまたは装置を使用して行われる。一例では、システムは、国際公開番号WO2016/073602に記載されているようなシステムである。
【0355】
いくつかの態様では、遠心チャンバのキャビティ内でそのような選択工程またはその一部(例えば、抗体被覆粒子、例えば、磁性ビーズとのインキュベーション)を実行することによって、使用者は、様々な溶液の体積、処理中の溶液の追加およびそのタイミングなどのある特定のパラメーターを制御することができ、これは、他の利用可能な方法と比較して利点を提供することができる。例えば、インキュベーション中にキャビティ内の液体の体積を減少させることができると、選択において使用される粒子(例えば、ビーズ試薬)の濃度を高めることができ、したがって、キャビティ内の細胞の総数に影響を与えることなく溶液の化学ポテンシャルを高めることができる。これによって、処理されている細胞と選択に使用される粒子との間の対相互作用を増強することができる。いくつかの態様では、例えば、本明細書に記載されるようなシステム、回路および制御に関連する場合に、チャンバ内でインキュベーション工程を行うことは、使用者がインキュベーション中の所望の時間に溶液の撹拌を行うことを可能にし、これも相互作用を向上させることができる。
【0356】
いくつかの態様では、選択工程の少なくとも一部は、遠心チャンバ内で実施され、これは、細胞と選択試薬とのインキュベーションを含む。そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある体積の細胞は、製造業者の指示に従って同じの数の細胞および/または体積の細胞を選択するためにチューブまたは容器内で同様の選択を実施する際に通常利用される量よりもはるかに少ない量の所望の親和性に基づく選択試薬と混合される。いくつかの態様では、製造業者の指示に従った同じ数の細胞および/または同じ体積の細胞のチューブまたは容器ベースのインキュベーションにおいて細胞の選択に利用される同じ選択試薬の量の5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、50%以下、60%以下、70%以下、または80%以下である1つまたは複数の選択試薬の量が利用される。
【0357】
いくつかの態様では、選択、例えば、細胞の免疫親和性に基づく選択のために、細胞は、チャンバのキャビティ内、ポリマーまたは表面などの足場(例えば、ビーズ、例えば磁気ビーズ、例えばCD4およびCD8に特異的なモノクローナル抗体に結合した磁気ビーズ)に任意で結合された、抗体などの、濃縮および/または枯渇が望まれる細胞上の表面マーカーに特異的に結合するが組成物中の他の細胞上の表面マーカーには特異的に結合しない分子のような選択試薬と共に選択緩衝液も含む組成物中でインキュベートされる。いくつかの態様では、記載されるように、選択試薬は、振盪または回転させながらチューブ内で選択が実施される場合に、同じの数の細胞または同じ体積の細胞の選択についてほぼ同じまたは類似の効率を達成するのに典型的に使用されるか必要であろう選択試薬の量と比較して、実質的により少ない量(例えば、その量の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%以下)でチャンバのキャビティ内の細胞に加えられる。いくつかの態様では、インキュベーションは、細胞および選択試薬に選択緩衝液を加えることによって実施され、例えば、10mL~200mL、例えば、少なくとも10mL、少なくとも20mL、少なくとも30mL、少なくとも40mL、少なくとも50mL、少なくとも60mL、少なくとも70mL、少なくとも80mL、少なくとも90mL、少なくとも100mL、少なくとも150mLもしくは少なくとも200mL、または少なくとも約10mL、少なくとも約20mL、少なくとも約30mL、少なくとも約40mL、少なくとも約50mL、少なくとも約60mL、少なくとも約70mL、少なくとも約80mL、少なくとも約90mL、少なくとも約100mL、少なくとも約150mLもしくは少なくとも約200mL、または約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約150mLもしくは約200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mLの試薬のインキュベーションで標的体積を達成する。いくつかの態様では、選択緩衝液および選択試薬は、細胞に加える前に予め混合される。いくつかの態様では、選択緩衝液および選択試薬は、細胞に別個に加えられる。いくつかの態様では、選択インキュベーションは、エネルギー的に有利な相互作用を促進するのを助け、それによって、高い選択効率を達成しながら選択試薬全体のより少ない使用を可能にし得る、周期的な穏やかな混合条件で行われる。
【0358】
いくつかの態様では、選択試薬とのインキュベーションの総持続期間は、5分間~6時間または約5分間~6時間、例えば、30分間~3時間、例えば、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも120分間もしくは少なくとも180分間または少なくとも約30分間、少なくとも約60分間、少なくとも約120分間もしくは少なくとも約180分間である。
【0359】
いくつかの態様では、インキュベーションは、一般に、混合条件下で、例えば、一般に細胞をペレット化するために使用される速度よりも遅い速度などの比較的低い力または速度、例えば、600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、約1000rpm、もしくは約1500rpmもしくは約1700rpm、または少なくとも600rpm、少なくとも1000rpm、もしくは少なくとも1500rpmもしくは少なくとも1700rpm)、例えば、80g~100gまたは約80g~100g(例えば、80g、85g、90g、95gもしくは100g、または約80g、約85g、約90g、約95gもしくは約100g、または少なくとも80g、少なくとも85g、少なくとも90g、少なくとも95gもしくは少なくとも100g)のチャンバまたは他の容器の試料または壁におけるRCFでのスピンの存在下で行われる。いくつかの態様では、スピンは、このような低速でのスピンの後に静止期間が続く反復インターバル、例えば、1秒間、2秒間、3秒間、4秒間、5秒間、6秒間、7秒間、8秒間、9秒間または10秒間のスピンおよび/または静止、例えば、およそ1秒またはおよそ2秒のスピンとその後のおよそ5秒間、およそ6秒間、およそ7秒間またはおよそ8秒間の静止を使用して行われる。
【0360】
いくつかの態様では、そのようなプロセスは、チャンバが一体化されている完全閉鎖系内で行われる。いくつかの態様では、このプロセス(および、いくつかの局面ではまた、アフェレーシス試料などの細胞を含有する試料を洗浄する先行洗浄工程などの1つまたは複数の追加の工程)は、自動化されたプログラムを使用して単一の閉鎖系で洗浄および結合工程を完了するために、細胞、試薬および他の成分が適当な時間にチャンバに引き込まれ、押し出され、遠心分離が行われるように、自動化された方式で行われる。
【0361】
いくつかの態様では、細胞と1つおよび/または複数の選択試薬とのインキュベーションおよび/または混合の後、インキュベートされた細胞は、特定の1つまたは複数の試薬の有無に基づいて細胞を選択するために分離に供される。いくつかの態様では、分離は、細胞と選択試薬とのインキュベーションが実施されたのと同じ閉鎖系で実施される。いくつかの態様では、選択試薬とのインキュベーション後、選択試薬が結合した細胞を含むインキュベートされた細胞は、細胞の免疫親和性に基づく分離のための系に移される。いくつかの態様では、免疫親和性に基づく分離のための系は、磁気分離カラムであるかそれを含有する。
【0362】
そのような分離工程は、試薬と結合している細胞がさらなる使用のために保持される陽性選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される陰性選択に基づくことができる。いくつかの例では、両画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて分離が最もよく行われるように、異種集団において細胞タイプを特異的に同定する抗体が利用可能でない場合に、陰性選択が特に有用であり得る。
【0363】
いくつかの態様では、プロセス工程はさらに、親和性に基づく選択を実施できる系または装置を使用するなどの、インキュベートされた細胞の陰性選択および/または陽性選択を含む。いくつかの態様では、単離は、陽性選択による特定の細胞集団の濃縮、または陰性選択による特定の細胞集団の枯渇によって行われる。いくつかの態様では、陽性選択または陰性選択は、それぞれ陽性または陰性に選択された細胞上で発現される(マーカー+)か比較的高いレベルで発現される(マーカーhigh)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つもしくは複数の抗体または他の結合剤と細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0364】
分離は、特定のマーカーを発現する特定の細胞集団または細胞の100%の濃縮または除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定のタイプの細胞の陽性選択または濃縮は、そのような細胞の数または割合を増加させることを指すが、マーカーを発現しない細胞の完全な不在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞などの特定のタイプの細胞の陰性選択、除去または枯渇は、そのような細胞の数または割合を減少させることを指すが、そのような細胞すべての完全な除去をもたらす必要はない。
【0365】
いくつかの例では、1つの工程から陽性または陰性に選択された画分が後続の陽性選択または陰性選択などの別の分離工程に供される、複数回の分離工程が行われる。いくつかの例では、単一の分離工程によって、細胞を陰性選択の標的となるマーカーにそれぞれ特異的な複数の抗体または結合パートナーとインキュベートするなどによって、複数のマーカーを発現する細胞を同時に枯渇させることができる。同様に、細胞を様々な細胞タイプ上に発現される複数の抗体または結合パートナーとインキュベートすることによって、複数の細胞タイプを同時に陽性選択することができる。
【0366】
例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の亜集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカーが陽性であるかそれを高レベルで発現する細胞、例えば、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD4、CD8、CD45RA、および/またはCD45RO+ T細胞が、陽性選択技術または陰性選択技術によって単離される。いくつかの態様では、そのような細胞は、そのようなマーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または結合パートナーとのインキュベーションによって選択される。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、磁性ビーズまたは常磁性ビーズなど、選択をもたらすための固体支持体またはマトリックスに、例えば、直接または間接的にコンジュゲートすることができる。
【0367】
いくつかの態様では、単離は、陽性選択による特定の細胞集団の濃縮、または陰性選択による特定の細胞集団の枯渇によって行われる。いくつかの態様では、陽性選択または陰性選択は、それぞれ陽性または陰性に選択された細胞上で発現される(マーカー+)か比較的高いレベルで発現される(マーカーhigh)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つもしくは複数の抗体または他の結合剤と細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0368】
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球細胞、例えばCD14などの非T細胞上に発現されるマーカーの陰性選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+またはCD8+の選択工程は、CD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリーおよび/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるか比較的高度に発現されるマーカーに対する陽性選択または陰性選択によって、亜集団にさらに選別することができる。
【0369】
いくつかの態様では、CD8+細胞はさらに、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性選択または陰性選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリーおよび/またはセントラルメモリー幹細胞が濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、投与後の長期生存、拡大増殖および/または生着を向上させるなど、効果を高めるために行われ、これはいくつかの局面では、そのような亜集団において特に堅固である。Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82; Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。いくつかの態様では、TCMが濃縮されたCD8+ T細胞とCD4+ T細胞とを組み合わせると、効果がさらに高まる。
【0370】
いくつかの態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-の両サブセット中に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体を使用するなどして、CD62L-CD8+画分および/またはCD62L+CD8+画分を濃縮または枯渇させることができる。
【0371】
いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3および/またはCD127の陽性発現または高い表面発現に基づく;いくつかの局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するか高度に発現する細胞の陰性選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、およびCD62Lを発現する細胞の陽性選択または濃縮によって行われる。一局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から開始して、これをCD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択と、CD62Lに基づく陽性選択に供して行われる。そのような選択は、いくつかの局面では同時に行われ、他の局面ではいずれかの順序で連続して行われる。いくつかの局面では、CD8+細胞集団または亜集団を調製する際に使用される同じCD4発現に基づく選択工程はまた、CD4に基づく分離からの陽性および陰性の両画分が保持され、本方法の後続の工程に使用されるように、CD4+細胞集団または亜集団を生成するために使用され、任意で、1つまたは複数のさらなる陽性選択または陰性選択の工程が続く。
【0372】
特定の例では、PBMCの試料または他の白血球細胞試料が、陰性および陽性の両画分が保持されるCD4+細胞の選択に供される。次いで、陰性画分が、CD14およびCD45RAまたはROR1の発現に基づく陰性選択と、CD62LまたはCCR7などのセントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカーに基づく陽性選択に供され、この場合、陽性選択および陰性選択は、いずれかの順序で行われる。
【0373】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞およびエフェクター細胞に選別される。CD4+リンパ球は、標準的な方法によって得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO- T細胞、CD45RA T細胞、CD62L T細胞、CD4+ T細胞である。いくつかの態様では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様では、エフェクター CD4+細胞は、CD62L-およびCD45RO-である。
【0374】
一例では、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための細胞分離を可能にするために、磁性ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。例えば、いくつかの態様では、細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気)分離技術を使用して、分離または単離される(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In vitro and In vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher (著作権) Humana Press Inc., Totowa, NJに概説される)。
【0375】
いくつかの局面では、分離させるべき細胞の試料または組成物は、磁気応答性粒子または微小粒子、例えば、常磁性ビーズ(例えば、DynalbeadsまたはMACSビーズなど)などの小さな磁化可能材料または磁気応答性材料を含有するなどの選択試薬と共にインキュベートされる。磁気応答性材料、例えば、粒子は、一般に、分離することが望ましい、例えば、陰性または陽性に選択することが望ましい1つの細胞、複数の細胞、または細胞集団に存在する分子(例えば、表面マーカー)に特異的に結合する結合パートナー(例えば、抗体)に直接または間接的に付着している。
【0376】
いくつかの態様では、磁性粒子または磁性ビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特定の結合メンバーに結合した磁気応答性材料を含む。磁気分離法において使用される多くの周知の磁気応答性材料がある。好適な磁性粒子は、参照により本明細書に組み入れられるMoldayの米国特許第4,452,773号および欧州特許明細書EP 452342 Bに記載されているものを含む。Owenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されているものなどのコロイドサイズの粒子が他の例である。
【0377】
インキュベーションは、一般に、抗体もしくは結合パートナー、または、磁性粒子もしくは磁性ビーズに付着しているそのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する二次抗体もしくは他の試薬などの分子が、試料内の細胞上に存在する場合に細胞表面分子に特異的に結合する条件下で行われる。
【0378】
いくつかの局面では、試料が磁場に置かれ、磁気応答性粒子または磁化可能粒子が付着した細胞が磁石に引き付けられ、未標識細胞から分離される。陽性選択の場合、磁石に引き付けられる細胞が保持される;陰性選択の場合、引き付けられない細胞(未標識細胞)が保持される。いくつかの局面では、陽性と陰性の組み合わせ選択が、同じ選択工程の間に行われ、この場合、陽性画分と陰性画分が保持され、さらに処理されるか、さらなる分離工程に供される。
【0379】
ある特定の態様では、磁気応答性粒子は、一次抗体もしくは他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素またはストレプトアビジンで被覆される。ある特定の態様では、磁性粒子は、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体の被覆を介して細胞に付着される。ある特定の態様では、ビーズではなく細胞が、一次抗体または結合パートナーで標識され、次いで、細胞タイプ特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)被覆磁性粒子が加えられる。ある特定の態様では、ストレプトアビジン被覆磁性粒子が、ビオチン化一次抗体またはビオチン化二次抗体と併せて使用される。
【0380】
いくつかの態様では、磁気応答性粒子は、後にインキュベート、培養および/または操作されるべき細胞に付着したままである;いくつかの局面では、粒子は、患者への投与のために細胞に付着したままである。いくつかの態様では、磁化可能粒子または磁気応答性粒子は、細胞から除去される。磁化可能粒子を細胞から除去するための方法は公知であり、例えば、競合する非標識抗体、磁化可能粒子または切断可能なリンカーにコンジュゲートされた抗体などの使用を含む。いくつかの態様では、磁化可能粒子は生分解性である。
【0381】
いくつかの局面では、分離は、磁場に試料を置き、磁気応答性粒子または磁化可能粒子が付着した細胞を磁石に引き付けて、未標識細胞から分離する手順で達成される。陽性選択の場合、磁石に引き付けられる細胞が保持される;陰性選択の場合、引き付けられない細胞(未標識細胞)が保持される。いくつかの局面では、陽性と陰性の組み合わせ選択が、同じ選択工程の間に行われ、この場合、陽性画分と陰性画分が保持され、さらに処理されるか、さらなる分離工程に供される。
【0382】
いくつかの態様では、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を介したものである。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化粒子が付着した細胞の高純度選択を可能にする。ある特定の態様では、MACSは、外部磁場の印加後に非標的種および標的種が連続的に溶出されるモードで動作する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出されている間、適所に保持される。次いで、この最初の溶出工程が完了した後、磁場に捕捉されて溶出が妨げられた種は、それらを溶出して回収することができるように何らかの方法で遊離される。ある特定の態様では、非標的細胞が標識され、異種細胞集団から枯渇させられる。
【0383】
ある特定の態様では、単離または分離は、本方法の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養および/または製剤化工程の1つまたは複数を行うシステム、デバイスまたは装置を使用して行われる。いくつかの局面では、システムは、例えば、エラー、使用者取り扱いおよび/または汚染を最小限に抑えるため、これらの工程の各々を閉鎖または無菌環境で行うために使用される。一例では、システムは、国際PCT公開番号WO2009/072003またはUS 20110003380 A1に記載されているようなシステムである。
【0384】
いくつかの態様では、システムまたは装置は、単離、処理、操作および製剤化工程の1つまたは複数、例えば、すべてを、統合型もしくは内臓型のシステムで、および/または、自動的もしくはプログラム可能な方式で実施する。いくつかの局面では、システムまたは装置は、使用者が処理、単離、操作および製剤化工程をプログラム、制御、その結果を評価、および/またはその様々な局面を調整することが可能な、システムまたは装置と通信するコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含む。
【0385】
いくつかの局面では、分離および/または他の工程は、例えば、閉鎖した無菌系における臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を使用して行われる。構成要素は、内蔵型マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプおよび様々なピンチ弁を含むことができる。内蔵型コンピュータは、いくつかの局面では、機器の全構成要素を制御し、反復手順を統一された順序で実行するようにシステムに命令する。磁気分離ユニットは、いくつかの局面では、可動性の永久磁石および選択カラム用ホルダを含む。蠕動ポンプは、チューブセット全体にわたる流速を制御し、ピンチ弁と共に、システムを通る緩衝液の制御された流れ、および細胞の継続的な懸濁を確実にする。
【0386】
CliniMACSシステムは、いくつかの局面では、無菌の非発熱性の溶液に供給される、抗体に結合した磁化可能粒子を使用する。いくつかの態様では、細胞を磁性粒子で標識した後、過剰な粒子を除去するために細胞が洗浄される。次いで、チューブセットに細胞調製バッグが接続され、緩衝液含有バッグおよび細胞収集バッグにチューブセットが接続される。チューブセットは、プレカラムおよび分離カラムを含む予め組み立てられた滅菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムの開始後、システムは、分離カラム上に細胞試料を自動的に供給する。標識された細胞はカラム内に保持される一方で、未標識細胞は一連の洗浄工程によって除去される。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法と共に使用するための細胞集団は、標識されておらず、カラムに保持されない。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法と共に使用するための細胞集団は、標識され、カラムに保持される。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法と共に使用するための細胞集団は、磁場が取り除かれた後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0387】
ある特定の態様では、分離および/または他の工程は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して行われる。CliniMACS Prodigyシステムは、いくつかの局面では、細胞の自動洗浄および遠心分離による分画を可能にする細胞処理ユニットを備える。CliniMACS Prodigyシステムはまた、内蔵カメラと、ソース細胞産物の巨視的な層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する画像認識ソフトウェアとを含むことができる。例えば、末梢血は、赤血球、白血球細胞および血漿の層に自動的に分離され得る。CliniMACS Prodigyシステムはまた、細胞培養プロトコル、例えば、細胞分化および拡大増殖、抗原添加ならびに長期細胞培養などを達成する内臓型細胞培養チャンバを含むことができる。インプットポートは、培地の無菌的な除去および補充を可能にし、内臓型顕微鏡を使用して細胞をモニタリングすることができる。例えば、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82、およびWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。
【0388】
いくつかの態様では、本明細書に記載される細胞集団は、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体の流れに入って運ばれるフローサイトメトリーを介して、収集および濃縮(または枯渇)される。いくつかの態様では、本明細書に記載される細胞集団は、分取スケール(preparative scale)(FACS)選別を介して収集および濃縮(または枯渇)される。ある特定の態様では、本明細書に記載される細胞集団は、FACSに基づく検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって収集および濃縮(または枯渇)される(例えば、WO 2010/033140、Cho et al. (2010) Lab Chip 10:1567-1573;およびGodin et al. (2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照のこと)。いずれの場合も、細胞を複数のマーカーで標識することができ、それによって、正確に規定されたT細胞サブセットを高純度で単離することが可能になる。
【0389】
いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための分離を容易にするために、1つまたは複数の検出可能マーカーで標識される。例えば、分離は、蛍光標識された抗体に対する結合に基づいてもよい。いくつかの例では、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えば、フローサイトメトリー検出システムと組み合わせた、分取スケール(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップを含む蛍光活性化細胞選別(FACS)などによって、流体の流れの中で行われる。そのような方法は、複数のマーカーに基づく陽性選択および陰性選択を同時に可能にする。
【0390】
いくつかの態様では、調製法は、単離、インキュベーションおよび/または操作の前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば、凍結保存するための工程を含む。いくつかの態様では、凍結および後続の融解工程は、細胞集団中の顆粒球および(ある程度まで)単球を除去する。いくつかの態様では、細胞は、例えば、血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液に懸濁される。いくつかの局面では、多種多様な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれを使用してもよい。一例は、20%のDMSOおよび8%のヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の好適な細胞凍結培地を使用することを伴う。次いで、これは、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるように、培地で1:1に希釈される。次いで、細胞は、毎分1°の速度で-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵される。
【0391】
いくつかの態様では、抗原特異的なCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞などの抗原特異的なT細胞が、ナイーブまたは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、感染対象からT細胞を単離し、同じ抗原で細胞をインビトロ刺激することによって、サイトメガロウイルス抗原に対して抗原特異的T細胞株またはクローンを生成することができる。
【0392】
B. T細胞の活性化および刺激
いくつかの態様では、1つまたは複数の処理工程は、選択された細胞集団などの単離された細胞を刺激する工程を含む。インキュベーションは、遺伝子操作の前であってもそれに関連してもよく、例えば、組換え受容体(例えば、CAR)をコードする核酸またはベクターにより細胞を形質導入する前であってもそれに関連してもよい。いくつかの態様では、刺激は、例えば形質導入の前に、細胞の活性化および/または増殖をもたらす。いくつかの態様では、細胞は、刺激条件下でインキュベートされる。
【0393】
いくつかの態様では、操作された細胞を産生するための提供される方法は、培養(cultivation)、インキュベーション、培養(culture)、および/または遺伝子操作工程の1つまたは複数を含む。例えば、いくつかの態様では、提供されるのは、枯渇された細胞集団および培養開始組成物をインキュベートおよび/または操作するための方法である。いくつかの態様では、細胞集団は、培養開始組成物中でインキュベートされる。インキュベーションおよび/または操作は、ユニット、チャンバ、ウェル、カラム、チューブ、チューブセット、バルブ、バイアル、培養ディッシュ、バッグ、または細胞の培養(culture)もしくは培養(cultivating)のための他の容器などの培養槽内で行ってもよい。
【0394】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前にまたはそれに関連して、インキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または伝播を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激剤の存在下でインキュベートされる。そのような条件は、集団中の細胞の増殖、拡大増殖、活性化および/もしくは生存を誘導する、抗原曝露を模倣する、かつ/または組換え抗原受容体(例えば、CAR)の導入などの遺伝子操作のために細胞をプライミングするように設計された条件を含む。
【0395】
この条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、ならびに細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質の1つまたは複数を含むことができる。
【0396】
いくつかの態様では、刺激条件または刺激剤は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達領域を活性化することが可能である1つまたは複数の作用物質、例えば、リガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするか開始する。そのような作用物質は、TCRに特異的な抗体、例えば抗CD3などの抗体を含むことができる。いくつかの態様では、刺激条件は、共刺激受容体を刺激することが可能である1つまたは複数の作用物質、例えばリガンド、例えば、抗CD28を含む。いくつかの態様では、そのような作用物質および/またはリガンドは、ビーズなどの固体支持体に結合されてもよく、かつ/または、1つもしくは複数のサイトカインであってもよい。任意で、拡大増殖法はさらに、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を培養培地に(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)加える工程を含んでもよい。いくつかの態様では、刺激剤は、IL-2、IL-15および/またはIL-7を含む。いくつかの局面では、IL-2濃度は、少なくとも約10ユニット/mLである。いくつかの局面では、IL-2濃度は、少なくとも約50ユニット/mL、少なくとも約100ユニット/mLまたは少なくとも約200ユニット/mLである。
【0397】
いくつかの局面では、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82、および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されているものなどの技術に従って行われる。
【0398】
いくつかの態様では、T細胞は、培養開始組成物にフィーダー細胞、例えば非分裂末梢血単核細胞(PBMC)を(例えば、得られた細胞集団が、拡大されるべき初期集団中のTリンパ球毎に少なくとも約5、約10、約20もしくは約40またはそれより多いPBMCフィーダー細胞を含有するように)加え;培養物を(例えば、T細胞の数が拡大するのに十分な時間)インキュベートすることによって、刺激される。いくつかの局面では、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ照射されたPBMCフィーダー細胞を含むことができる。いくつかの態様では、細胞分裂を防止するために、PBMCに、約3000~3600radの範囲のガンマ線が照射される。いくつかの局面では、T細胞集団の添加の前に、フィーダー細胞が培養培地に加えられる。
【0399】
いくつかの態様では、細胞は、非分裂の抗原発現細胞などの抗原発現細胞の存在下で刺激される。場合によって、インキュベーションはさらに、非分裂のEBV形質転換されたリンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として加えることを含んでもよい。LCLに、約6000~10,000radの範囲のガンマ線を照射することができる。LCLフィーダー細胞は、いくつかの局面では、LCLフィーダー細胞:初期Tリンパ球比が少なくとも約10:1など、任意の好適な量で提供される。
【0400】
いくつかの態様では、1つまたは複数の刺激条件または刺激剤の存在下でのインキュベーションの少なくとも一部は、例えば、国際公開番号WO2016/073602に記載されているような遠心回転下、遠心チャンバの内部キャビティ内で行われる。いくつかの態様では、遠心チャンバ内で実施されるインキュベーションの少なくとも一部は、刺激および/または活性化を誘導するために1つまたは複数の試薬と混合することを含む。いくつかの態様では、選択された細胞などの細胞は、遠心チャンバ内で刺激条件または刺激剤と混合される。そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある体積の細胞と、細胞培養プレートまたは他のシステムで同様の刺激を実施する際に通常利用されるよりもはるかに少ない量の1つまたは複数の刺激条件または刺激剤とが混合される。
【0401】
いくつかの態様では、刺激剤は、遠心チャンバ内(例えば、チューブまたはバッグ内)で周期的な振盪または回転による混合なしに選択が実施される場合に、同じの数の細胞または同じ体積の細胞の選択についてほぼ同じまたは類似の効率を達成するのに典型的に使用されるか必要であろう刺激剤の量と比較して、実質的により少ない量(例えば、その量の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%以下)でチャンバのキャビティ内の細胞に加えられる。いくつかの態様では、インキュベーションは、細胞および刺激剤にインキュベーション緩衝液を加えることによって実施され、例えば、10mL~200mL、例えば、少なくとも10mL、少なくとも20mL、少なくとも30mL、少なくとも40mL、少なくとも50mL、少なくとも60mL、少なくとも70mL、少なくとも80mL、少なくとも90mL、少なくとも100mL、少なくとも150mLもしくは少なくとも200mL、または少なくとも約10mL、少なくとも約20mL、少なくとも約30mL、少なくとも約40mL、少なくとも約50mL、少なくとも約60mL、少なくとも約70mL、少なくとも約80mL、少なくとも約90mL、少なくとも約100mL、少なくとも約150mLもしくは少なくとも約200mL、または約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約150mLもしくは約200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mLの試薬のインキュベーションで標的体積を達成する。いくつかの態様では、インキュベーション緩衝液および刺激剤は、細胞に加える前に予め混合される。いくつかの態様では、インキュベーション緩衝液および刺激剤は、細胞に別個に加えられる。いくつかの態様では、刺激インキュベーションは、エネルギー的に有利な相互作用を促進するのを助け、それによって、細胞の刺激および活性化を達成しながら刺激剤全体のより少ない使用を可能にし得る、周期的な穏やかな混合条件で行われる。
【0402】
いくつかの態様では、インキュベーションは、一般に、混合条件下で、例えば、一般に細胞をペレット化するために使用される速度よりも遅い速度などの比較的低い力または速度、例えば、600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、約1000rpm、もしくは約1500rpmもしくは約1700rpm、または少なくとも600rpm、少なくとも1000rpm、もしくは少なくとも1500rpmもしくは少なくとも1700rpm)、例えば、80g~100gまたは約80g~100g(例えば、80g、85g、90g、95gもしくは100g、または約80g、約85g、約90g、約95gもしくは約100g、または少なくとも80g、少なくとも85g、少なくとも90g、少なくとも95gもしくは少なくとも100g)のチャンバまたは他の容器の試料または壁におけるRCFでのスピンの存在下で行われる。いくつかの態様では、スピンは、このような低速でのスピンの後に静止期間が続く反復インターバル、例えば、1秒間、2秒間、3秒間、4秒間、5秒間、6秒間、7秒間、8秒間、9秒間または10秒間のスピンおよび/または静止、例えば、およそ1秒またはおよそ2秒のスピンとその後のおよそ5秒間、およそ6秒間、およそ7秒間またはおよそ8秒間の静止を使用して行われる。
【0403】
いくつかの態様では、例えば刺激剤との、インキュベーションの総持続期間は、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間もしくは12時間~24時間、または約1時間~96時間、約1時間~72時間、約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間もしくは約12時間~24時間、例えば、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間もしくは少なくとも72時間、または少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間もしくは少なくとも約72時間である。いくつかの態様では、さらなるインキュベーションは、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間もしくは12時間~24時間、または約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間もしくは約12時間~24時間(両端の値を含む)の時間である。
【0404】
特定の態様では、刺激条件は、細胞を刺激試薬とインキュベート、培養(culturing)、および/または培養(cultivating)することを含む。ある特定の態様では、刺激試薬は、ビーズを含有するかそれを含む。ある特定の態様では、刺激の開始は、細胞を刺激試薬とインキュベートするか接触させると起こる。特定の態様では、刺激試薬は、オリゴマー試薬、例えば、ストレプトアビジンムテインオリゴマーを含有するかそれを含む。特定の態様では、刺激試薬は、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化する、および/または活性化することが可能である。
【0405】
いくつかの態様では、刺激条件または刺激試薬は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能である1つまたは複数の作用物質、例えば、リガンドを含む。いくつかの態様では、本明細書において想定されるような作用物質は、RNA、DNA、タンパク質(例えば、酵素)、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、炭水化物、脂質レクチン、または所望の標的に対して親和性を有する任意の他の生体分子を含むことができるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、所望の標的は、T細胞受容体および/またはT細胞受容体の一成分である。ある特定の態様では、所望の標的は、CD3である。ある特定の態様では、所望の標的は、T細胞共刺激分子、例えば、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSである。当技術分野において公知であり利用可能な多種多様な方法によって、1つまたは複数の作用物質をビーズに直接または間接的に付着させてもよい。付着は、共有、非共有、静電または疎水性であり得、例えば、化学的手段、機械的手段または酵素的手段を含む多種多様な付着手段によって達成され得る。いくつかの態様では、作用物質は、抗体またはその抗原結合断片、例えばFabである。いくつかの態様では、ビーズに直接付着している別の生体分子(例えば、抗ビオチン抗体)を介して、生体分子(例えば、ビオチン化抗CD3抗体)をビーズに間接的に付着させてもよい。
【0406】
いくつかの態様では、刺激試薬は、ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)に付着しておりかつ細胞(例えば、T細胞)上の以下の巨大分子の1つまたは複数に特異的に結合する、1つまたは複数の作用物質(例えば、抗体)を含有する:CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD25、CD27、CD28、CD29、CD31、CD44、CD45RA、CD45RO、CD54(ICAM-1)、CD127、MHCI、MHCII、CTLA-4、ICOS、PD-1、OX40、CD27L(CD70)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、CD30L、LIGHT、IL-2R、IL-12R、IL-1R、IL-15R;IFN-ガンマR、TNF-アルファR、IL-4R、IL-10R、CD18/CDl la(LFA-1)、CD62L(L-セレクチン)、CD29/CD49d(VLA-4)、Notchリガンド(例えば、デルタ様1/4、Jagged 1/2など)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7およびCXCR3、またはこれらの巨大分子もしくはその断片に対する対応するリガンドを含むその断片。いくつかの態様では、ビーズに付着された作用物質(例えば、抗体)は、細胞(例えば、T細胞)上の以下の巨大分子の1つまたは複数に特異的に結合する:CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RA、および/またはCD45RO。
【0407】
いくつかの態様では、ビーズに付着された作用物質の1つまたは複数は、抗体である。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディおよび単鎖分子)、ならびに抗体断片(例えば、Fab、F(ab')2、およびFv)を含むことができる。いくつかの態様では、刺激試薬は、抗体断片(抗原結合断片を含む)、例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、または(Fab’)2断片である。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を含め任意のアイソタイプの定常領域を本明細書において想定される抗体に使用することができ、そのような定常領域を任意のヒトまたは動物種(例えば、ネズミ種)から得ることができることが認識されよう。いくつかの態様では、作用物質は、T細胞受容体の1つまたは複数の成分に結合するおよび/またはそれを認識する抗体である。特定の態様では、作用物質は、抗CD3抗体である。ある特定の態様では、作用物質は、共受容体に結合するおよび/またはそれを認識する抗体である。いくつかの態様では、刺激試薬は、抗CD28抗体を含む。
【0408】
ある特定の態様では、刺激試薬は、細胞(例えば、T細胞)を活性化および/または拡大増殖可能である1つまたは複数の作用物質(例えば、生体分子)にコンジュゲートまたは連結された粒子(例えば、ビーズ)を含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、ビーズに結合している。いくつかの態様では、ビーズは、生体適合性であり、すなわち、生物学的使用に適した材料から構成される。いくつかの態様では、ビーズは、培養細胞、例えば培養T細胞に対して非毒性である。いくつかの態様では、ビーズは、作用物質と細胞との間の相互作用を可能にする様式で作用物質を付着可能である任意の粒子であり得る。
【0409】
いくつかの態様では、刺激試薬は、ビーズと、細胞の表面上の巨大分子と直接相互作用する1つまたは複数の作用物質とを含有する。ある特定の態様では、ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)は、細胞上の1つまたは複数の巨大分子(例えば、1つまたは複数の細胞表面タンパク質)に特異的な1つまたは複数の作用物質(例えば、抗体)を介して、細胞と相互作用する。ある特定の態様では、ビーズ(例えば、常磁性ビーズ)は、一次抗体(例えば、抗ビオチン抗体)または他の生体分子などの本明細書に記載される第1の作用物質で標識され、次いで、二次抗体(例えば、ビオチン化抗CD3抗体)または他の第2の生体分子(例えば、ストレプトアビジン)などの第2の作用物質が加えられ、それによって、二次抗体または他の第2の生体分子が、粒子上のそのような一次抗体または他の生体分子に特異的に結合する。
【0410】
いくつかの態様では、刺激試薬は、金属酸化物コア(例えば、酸化鉄内部コア)とコート(例えば、保護コート)とを含むビーズに付着している1つまたは複数の作用物質を含み、この場合のコートは、ポリスチレンを含む。ある特定の態様では、ビーズは、常磁性(例えば、超常磁性)鉄コア、例えば、マグネタイト(Fe3O4)および/またはマグヘマイト(γFe2O3)cを含むコアとポリスチレンコートまたはコーティングとを含む、単分散の常磁性(例えば、超常磁性)ビーズである。いくつかの態様では、ビーズは、非多孔性である。いくつかの態様では、ビーズは、1つまたは複数の作用物質が付着している官能化表面を含有する。ある特定の態様では、1つまたは複数の作用物質は、表面でビーズに共有結合している。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体、ならびに標識された抗CD3抗体または抗CD28抗体などの標識された抗体(例えば、ビオチン化抗体)に結合することが可能な抗体またはその抗原断片を含む。ある特定の態様では、ビーズは、約1.5g/cm3の密度および約1m2/g~約4m2/gの表面積を有する。特定の態様では;ビーズは、約4.5μmの直径および約1.5g/cm3の密度を有する単分散の超常磁性ビーズである。いくつかの態様では、ビーズは、約2.8μmの平均直径および約1.3g/cm3の密度を有する単分散の超常磁性ビーズである。
【0411】
特定の態様では、刺激試薬は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能である1つまたは複数の作用物質(例えば、リガンド)にコンジュゲート、連結または付着されているオリゴマー試薬(例えば、ストレプトアビジンムテイン試薬)を含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、特定の結合部位(例えば、結合部位Z)でオリゴマー試薬に結合することが可能である、付着した結合ドメインまたは結合パートナー(例えば、結合パートナーC)を有する。いくつかの態様では、複数の作用物質がオリゴマー試薬に可逆的に結合される。様々な態様では、オリゴマー試薬は、ある特定の態様では結合ドメイン(例えば、結合パートナーC)で複数の作用物質に可逆的に結合している複数の特定の結合部位を有する。いくつかの態様では、結合する作用物質の量は、競合試薬、例えば、特定の結合部位(例えば、結合部位Z)に結合することも可能である試薬の存在下で低減されるかまたは減少する。
【0412】
いくつかの態様では、刺激試薬は、少なくとも1つの作用物質(例えば、T細胞などの細胞内でシグナルを産生することが可能である作用物質)がオリゴマー試薬と会合する、例えば、可逆的に会合する可逆的な系であるかそれを含む。いくつかの態様では、試薬は、作用物質に結合する、例えば、可逆的に結合することが可能な複数の結合部位を含有する。場合によって、試薬は、T細胞などの細胞内でシグナルを産生することが可能な少なくとも1つの付着した作用物質を有するオリゴマー粒子試薬である。いくつかの態様では、作用物質は、分子のエピトープまたは領域に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位、例えば、結合部位Bを含有し、試薬の少なくとも1つの結合部位、例えば、試薬の結合部位Zに特異的に結合する、本明細書において結合パートナーCとも称される結合パートナーも含有する。いくつかの態様では、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の結合相互作用は、非共有相互作用である。場合によって、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の結合相互作用は、共有相互作用である。いくつかの態様では、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の非共有相互作用などの結合相互作用は、可逆的である。
【0413】
そのような可逆的な系でオリゴマー試薬として使用され得る物質は公知であり、例えば、米国特許第5,168,049号;第5,506,121号;第6,103,493号;第7,776,562号;第7,981,632号;第8,298,782号;第8,735,540号;第9,023,604号;ならびに国際公開PCT出願番号WO2013/124474およびWO2014/076277を参照されたい。可逆的相互作用をすることが可能な試薬および結合パートナーの非限定的な例、ならびにそのような結合を逆にすることが可能な物質(例えば、競合試薬)が記載される。
【0414】
いくつかの態様では、刺激試薬は、複数のストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテイン四量体から構成されるおよび/またはそれらを含有する、オリゴマー粒子試薬である。ある特定の態様では、本明細書において提供されるオリゴマー粒子試薬は、1つまたは複数の作用物質、例えば、刺激剤および/または選択剤に可逆的に結合するか可逆的に結合することが可能である複数の結合部位を含有する。いくつかの態様では、オリゴマー粒子は、80nm~120nm(両端の値を含む)の半径、例えば、平均半径;7.5×106g/mol~2×108g/mol(両端の値を含む)の分子量、例えば、平均分子量;および/または、500~10,000(両端の値を含む)の量、例えば、平均量のストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテイン四量体を有する。いくつかの態様では、オリゴマー粒子試薬は、1つまたは複数の作用物質、例えば、細胞の表面上の分子(例えば、受容体)に結合する作用物質に結合している、例えば、可逆的に結合している。ある特定の態様では、1つまたは複数の作用物質は、本明細書に、例えば、セクションII-C-3に記載される作用物質である。いくつかの態様では、作用物質は、抗CD3 Fabおよび/または抗CD28 Fab、例えば、結合パートナー、例えば、ストレプトアビジン結合ペプチド、例えばStrep-tag(登録商標)IIを含有する、Fabである。特定の態様では、1つまたは複数の作用物質は、結合パートナー、例えば、ストレプトアビジン結合ペプチド、例えばStrep-tag(登録商標)IIを含有する、抗CD3 Fabおよび/または抗CD28 Fabである。
【0415】
C. 異種ポリヌクレオチドを導入するための方法
いくつかの態様では、処理工程は、組換えタンパク質をコードする核酸分子の導入を含む。遺伝子操作された成分、例えば、組換え受容体、例えば、CARまたはTCRの導入のための様々な方法が周知であり、これらを、提供される方法および組成物と共に使用してもよい。例示的な方法は、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクター、非ウイルスベクター、またはトランスポゾン、例えばスリーピングビューティートランスポゾン系を介することを含む、ポリペプチドまたは受容体をコードする核酸の移入のための方法を含む。遺伝子移入の方法は、形質導入、エレクトロポレーションまたは細胞への遺伝子移入をもたらす他の方法を含むことができる。
【0416】
いくつかの態様では、遺伝子移入は、最初に、増殖、生存および/または活性化などの応答(例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるような)を誘導する刺激と細胞とを組み合わせるなどによって、細胞を刺激し、続いて、活性化された細胞の形質導入を行い、臨床応用に十分な数にまで培養下で拡大増殖することによって達成される。
【0417】
状況によっては、刺激因子(例えば、リンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現が、対象において望ましくない結果またはより低い有効性、例えば、対象において毒性に関連する因子を潜在的にもたらし得る可能性に対して、予防措置を講じることが望まれる。したがって、状況によっては、操作された細胞は、養子免疫療法における投与時などに、細胞をインビボでの陰性選択に感受性にする遺伝子セグメントを含む。例えば、いくつかの局面では、細胞は、該細胞が投与される患者のインビボ条件における変化の結果として排除され得るように操作される。陰性選択可能な表現型は、投与された作用物質(例えば、化合物)に対する感受性を付与する遺伝子の挿入から生じ得る。陰性選択可能な遺伝子は、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al., Cell 2:223, 1977);細胞のヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞のアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌のシトシンデアミナーゼ(Mullen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:33 (1992))を含む。
【0418】
いくつかの態様では、組換え核酸は、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して細胞に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、ガンマ-レトロウイルスベクターなどの組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを使用してT細胞に移入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25; Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46; Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93; Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557を参照のこと)。
【0419】
いくつかの態様では、レトロウイルスベクターは、長末端反復配列(LTR)を有する(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)に由来するレトロウイルスベクター)。ほとんどのレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様では、レトロウイルスは、任意の鳥類細胞源または哺乳動物細胞源に由来するレトロウイルスを含む。レトロウイルスは、典型的には両向性であり、このことは、レトロウイルスがヒトを含め数種の宿主細胞に感染することが可能であることを意味している。一態様では、発現されるべき遺伝子が、レトロウイルスのgag配列、pol配列および/またはenv配列に取って代わる。多数の例証的なレトロウイルス系が記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号;第6,207,453号;第5,219,740号;Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990;Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852;Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;および Boris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109)。
【0420】
レンチウイルス形質導入の方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;Cooper et al. (2003) Blood. 101:1637-1644;Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;および Cavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。
【0421】
いくつかの態様では、組換え核酸は、エレクトロポレーションを介してT細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013) PLoS ONE 8(3): e60298 および Van Tedeloo et al. (2000) Gene Therapy 7(16): 1431-1437を参照のこと)。いくつかの態様では、組換え核酸は、転位を介してT細胞に移入される(例えば、Manuri et al. (2010) Hum Gene Ther 21(4): 427-437;Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74;およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照のこと)。遺伝物質を免疫細胞に導入して発現させる他の方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載されているような)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子によって促進される微粒子衝突(Johnston, Nature, 346: 776-777 (1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))を含む。
【0422】
組換え産物をコードする核酸を移入するための他のアプローチおよびベクターは、例えば、国際特許出願公開番号WO2014055668および米国特許第7,446,190号に記載されているものである。
【0423】
いくつかの態様では、細胞、例えば、T細胞に、拡大増殖の間またはその後のいずれかに、例えば、組換え受容体、例えばT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸をトランスフェクトしてもよい。所望のポリペプチドまたは受容体の遺伝子の導入のためのこのトランスフェクションは、例えば、任意の好適なレトロウイルスベクターを用いて行うことができる。次いで、遺伝子改変された細胞集団を、初期刺激(例えば、CD3/CD28刺激)から解放し、その後、第2のタイプの刺激で刺激することができる(例えば、デノボ導入された受容体を介して)。この第2のタイプの刺激は、ペプチド/MHC分子、遺伝子導入された受容体の同族(架橋)リガンド(例えば、CARの天然リガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)新たな受容体のフレームワーク内に直接結合する任意のリガンド(抗体など)の形態の抗原刺激を含み得る。例えば、Cheadle et al, “Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy” Methods Mol Biol 2012; 907:645-66またはBarrett et al., Chimeric antigen receptors Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol. 65: 333-347 (2014)を参照されたい。
【0424】
場合によって、細胞、例えば、T細胞が活性化されることを必要としないベクターを使用してもよい。いくつかのそのような場合には、細胞を、活性化の前に選択および/または形質導入してもよい。したがって、細胞を、細胞培養の前または後に操作してもよく、場合によって、培養の少なくとも一部と同時にまたはその間に操作してもよい。
【0425】
いくつかの局面では、細胞はさらに、サイトカインまたは他の因子の発現を促進するように操作される。中でも、追加の核酸、例えば、導入のための遺伝子は、移入された細胞の生存能力および/または機能を促進することなどによって、治療の有効性を向上させるためのもの;インビボでの生存または局在性を評価するためなどの、細胞の選択および/または評価のための遺伝子マーカーを提供するための遺伝子;例えば、Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991) およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992) に記載されているように、細胞をインビボでの陰性選択に感受性にすることによって、安全性を向上させるための遺伝子である;また、優性陽性選択可能マーカーを陰性選択可能マーカーと融合することによって得られる二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載しているLuptonらによるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の刊行物も参照されたい。例えば、Riddellらの米国特許第6,040,177号の第14~17欄を参照されたい。
【0426】
上記のように、いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前にまたはそれに関連して、インキュベートおよび/または培養される。インキュベーション工程は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、伝播、および/または保存のための凍結、例えば凍結保存を含むことができる。
【0427】
いくつかの態様では、導入することは、組成物の1つまたは複数の細胞と組換えタンパク質(例えば、組換え受容体)をコードする核酸分子とを接触させることによって行われる。いくつかの態様では、接触させることは、スピノキュレーション(例えば、遠心分離接種)などの遠心分離によって達成することができる。そのような方法は、国際公開番号WO2016/073602に記載されているような方法のいずれかを含む。例示的な遠心チャンバは、A-200/FおよびA-200遠心チャンバを含むSepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムと共に使用するための遠心チャンバ、ならびにそのようなシステムと共に使用するための様々なキットを含め、Biosafe SAによって製造および販売される遠心チャンバを含む。例示的なチャンバ、システムならびに処理機器およびキャビネットは、例えば、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号および公開された米国特許出願公開番号US 2008/0171951、ならびに公開された国際特許出願公開番号WO 00/38762に記載されており、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。そのようなシステムと共に使用するための例示的なキットは、BioSafe SAによって製品名CS-430.1、CS-490.1、CS-600.1またはCS-900.2で販売されている使い捨てキットを含むが、それらに限定されない。
【0428】
いくつかの態様では、システムには、システム内で実施される形質導入工程および1つまたは複数の様々な他の処理工程、例えば、本明細書または国際公開番号WO2016/073602において記載されているような遠心チャンバシステムと共にまたはそれに関連して実行することができる1つまたは複数の処理工程の局面を操作、自動化、制御および/またはモニタリングするための機器を含む他の機器が含まれ、および/または、それに関連して配置される。いくつかの態様では、この装置は、キャビネット内に含有される。いくつかの態様では、装置は、制御回路を含有するハウジング、遠心分離機、カバー、モータ、ポンプ、センサ、ディスプレイおよびユーザインターフェースを含むキャビネットを含む。例示的なデバイスは、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号および米国特許第2008/0171951号に記載されている。
【0429】
いくつかの態様では、システムは、一連の容器、例えば、バッグ、チューブ、ストップコック、クランプ、コネクタおよび遠心分離チャンバを含む。いくつかの態様では、バッグなどの容器は、同じ容器または別個の容器、例えば、同じバッグまたは別個のバッグ内に、形質導入されるべき細胞とウイルスベクター粒子とを含有する、バッグなどの1つまたは複数の容器を含む。いくつかの態様では、システムはさらに、本方法の間に構成成分および/または組成物を希釈、再懸濁および/または洗浄するためにチャンバおよび/または他の構成成分に引き込まれる希釈剤および/または洗浄溶液などの媒体を含有する、バッグなどの1つまたは複数の容器を含む。容器は、システム内の1つまたは複数の位置、例えば、投入ライン、希釈剤ライン、洗浄ライン、廃棄物ラインおよび/または排出ラインに対応する位置に接続することができる。
【0430】
いくつかの態様では、チャンバは、その回転軸の周りなどでチャンバの回転を達成可能である遠心分離機と関連付けられる。回転は、細胞の形質導入に関連するインキュベーションの前、その間および/もしくはその後に、および/または他の処理工程の1つもしくは複数において行われ得る。したがって、いくつかの態様では、様々な処理工程の1つまたは複数が、回転下で、例えば、特定の力で行われる。チャンバは、典型的には垂直方向またはほぼ垂直方向に回転可能であり、その結果、チャンバは遠心分離中に垂直に位置し、側壁および軸は垂直またはほぼ垂直であり、端壁は水平またはほぼ水平である。
【0431】
いくつかの態様では、細胞、ウイルス粒子および試薬を含有する組成物は、一般に、細胞をペレット化するために使用される速度よりも遅い速度、例えば、600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、もしくは1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、約1000rpm、もしくは約1500rpmもしくは約1700rpm、または少なくとも600rpm、少なくとも1000rpm、もしくは少なくとも1500rpmもしくは少なくとも1700rpm)などの比較的低い力または速度で回転させることができる。いくつかの態様では、回転は、例えば、チャンバまたはキャビティの内壁または外壁で測定した場合、100g~3200gまたは約100g~3200g(例えば、100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g、または約100g、約200g、約300g、約400g、約500g、約1000g、約1500g、約2000g、約2500g、約3000gもしくは約3200g、または少なくとも100g、少なくとも200g、少なくとも300g、少なくとも400g、少なくとも500g、少なくとも1000g、少なくとも1500g、少なくとも2000g、少なくとも2500g、少なくとも3000gもしくは少なくとも3200g、または少なくとも約100g、少なくとも約200g、少なくとも約300g、少なくとも約400g、少なくとも約500g、少なくとも約1000g、少なくとも約1500g、少なくとも約2000g、少なくとも約2500g、少なくとも約3000gもしくは少なくとも約3200g)の力、例えば、相対遠心力で行われる。用語「相対遠心力」またはRCFは、一般に、地球の重力に対して、回転軸と比較して空間の特定の点で、物体または物質(例えば、細胞、試料またはペレットおよび/または回転しているチャンバもしくは他の容器内の点)に与えられる有効な力であると理解される。この値は、重力、回転速度および回転半径(回転軸からRCFが測定されている物体、物質または粒子の距離)を考慮して、周知の式を使用して決定され得る。
【0432】
いくつかの態様では、遺伝子操作、例えば形質導入の少なくとも一部の間に、および/または遺伝子操作に続いて、細胞は、上記のように、遺伝子操作された細胞の培養のために、例えば、細胞の培養または拡大増殖のために、バッグなどの容器に移される。いくつかの態様では、細胞の培養または拡大増殖のための容器は、灌流バッグなどのバイオリアクターバッグである。
【0433】
1. 核酸およびベクター
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作を介して導入された1つまたは複数の核酸を含み、それによって、そのような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの態様では、核酸は、異種であり、すなわち、細胞または細胞から得られた試料、例えば、別の生物または細胞から得られた試料に通常は存在せず、例えば、操作されている細胞および/またはこのような細胞が由来する生物に普通は見いだされない。いくつかの態様では、核酸は、複数の異なる細胞タイプに由来する様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含む核酸を含め自然界で見出されない核酸など、天然には存在しない。
【0434】
いくつかの態様では、組換え受容体は、1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、核酸分子)によってコードされる。いくつかの態様では、養子細胞療法において使用される細胞は、遺伝子操作のためのベクターを使用して操作される。
【0435】
いくつかの局面では、ポリヌクレオチドは、単一のコード配列を含有する。他の場合には、ポリヌクレオチドは、少なくとも2つの異なるコード配列を含有する。いくつかの局面では、組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であるかそれを含有する。いくつかの局面では、組換え受容体は、T細胞受容体(TCR)、例えば、トランスジェニックTCRであるかそれを含有する。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドおよびベクターは、細胞における組換え受容体の発現のために使用される。
【0436】
場合によって、組換え受容体をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。他の局面では、シグナル配列は、異種または非天然のシグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO:25に示されかつSEQ ID NO:24に示されるヌクレオチド配列によってコードされるGMCSFRアルファ鎖の例示的なシグナルペプチドをコードし得る。場合によって、組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。例示的なシグナルペプチドの非限定的な例は、例えば、SEQ ID NO:25に示されかつSEQ ID NO:24に示されるヌクレオチド配列によってコードされるGMCSFRアルファ鎖シグナルペプチド、またはSEQ ID NO:26に示されるCD8アルファシグナルペプチドを含む。
【0437】
いくつかの態様では、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドは、組換え受容体の発現を制御するために機能的に連結された少なくとも1つのプロモーターを含有する。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、組換え受容体の発現を制御するために機能的に連結された2つ、3つまたはそれより多いプロモーターを含有する。
【0438】
核酸分子が2つ以上の異なるポリペプチド鎖をコードするある特定の場合、ポリペプチド鎖の各々は、別個の核酸分子によってコードされ得る。例えば、2つの別個の核酸が提供され、各々を、細胞での発現のために細胞に個々に移入または導入することができる。
【0439】
ポリヌクレオチドが第1および第2の核酸配列を含有するなどのいくつかの態様では、異なるポリペプチド鎖の各々をコードするコード配列を、同じであっても異なっていてもよいプロモーターに機能的に連結させることができる。いくつかの態様では、核酸分子は、2つ以上の異なるポリペプチド鎖の発現を駆動するプロモーターを含有することができる。いくつかの態様では、そのような核酸分子は、マルチシストロニック(バイシストロニックまたはトリシストロニック、例えば、米国特許第6,060,273号を参照のこと)であることができる。いくつかの態様では、転写ユニットは、IRES(内部リボソーム進入部位)を含有するバイシストロニックなユニットとして操作することができ、これによって、単一のプロモーターからのメッセージによる遺伝子産物(例えば、細胞表面マーカーまたはその改変型をコードする、および組換え受容体をコードする)の共発現が可能になる。あるいは、場合によって、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)に、自己切断ペプチド(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フリン)をコードする配列によって互いに隔てられた2個または3個の遺伝子(例えば、細胞表面マーカーをコードする、および組換え受容体をコードする)を含有するRNAの発現を、単一のプロモーターが指令してもよい。したがって、ORFは、翻訳中(2Aの場合)または翻訳後に個々のタンパク質にプロセシングされる、単一のポリペプチドをコードする。場合によって、T2Aなどのペプチドは、2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をリボソームにスキップさせることができ(リボソームスキッピング)、これによって、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離がもたらされる(例えば、de Felipe, Genetic Vaccines and Ther. 2:13(2004) および de Felipe et al. Traffic 5:616-626(2004)を参照されたい)。様々な2Aエレメントが公知である。本明細書において開示される方法およびシステムにおいて使用できる2A配列の例は、限定なしに、米国特許公開番号20070116690に記載されるような、口蹄疫ウイルス(F2A、例えば、SEQ ID NO:21)、ウマ鼻炎ウイルスA(E2A、例えば、SEQ ID NO:20)、Thosea asignaウイルス(T2A、例えば、SEQ ID NO:6または17)、および豚テッショウウイルス-1(P2A、例えば、SEQ ID NO:18または19)由来の2A配列。
【0440】
いくつかの態様では、細胞表面マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、同じプロモーターに機能的に連結され、任意で、内部リボソーム進入部位(IRES)によって、または自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド(任意で、T2A、P2A、E2A、またはF2Aである)をコードする核酸によって隔てられる。いくつかの態様では、細胞表面マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、2つの異なるプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、細胞表面マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、細胞のゲノム内の異なる位置に存在するか挿入される。
【0441】
いくつかの態様では、ベクターは、1つまたは複数のマーカーをコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様では、1つまたは複数のマーカーは、形質導入マーカー、代理マーカーおよび/または選択マーカーである。
【0442】
いくつかの態様では、マーカーは、形質導入マーカーまたは代理マーカーである。形質導入マーカーまたは代理マーカーは、ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドが導入されている細胞を検出するために使用することができる。いくつかの態様では、形質導入マーカーは、細胞の修飾を示唆するか裏付けることができる。いくつかの態様では、代理マーカーは、組換え受容体(例えば、CAR)と共に細胞表面上に共発現されるタンパク質である。特定の態様では、そのような代理マーカーは、活性をほとんど有さないように修飾されている表面タンパク質である。ある特定の態様では、代理マーカーは、組換え受容体をコードする同じポリヌクレオチド上にコードされる。いくつかの態様では、組換え受容体をコードする核酸配列は、マーカーをコードする核酸配列に、任意で、内部リボソーム進入部位(IRES)によって、または2A配列(例えば、T2A、P2A、E2AまたはF2A)などの自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングを引き起こすペプチドをコードする核酸によって隔てられて、機能的に連結される。場合によって、外来性のマーカー遺伝子を、細胞の検出または選択を可能にするために、いくつかの場合には、また細胞自殺を促進するために、操作された細胞と共に利用してもよい。
【0443】
例示的な代理マーカーは、細胞表面ポリペプチドの切断型、例えば、非機能的でありかつシグナルもしくは細胞表面ポリペプチドの完全長形態によって通常伝達されるシグナルを伝達しないもしくは伝達することができないおよび/または内在化しないもしくは内在化することができない、切断型を含むことができる。成長因子または他の受容体の切断型、例えば、切断されたヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、切断された上皮成長因子受容体(tEGFR、SEQ ID NO:7または16に示される例示的なtEGFR配列)もしくは前立腺特異的膜抗原(PSMA)またはその修飾形態を含めた、例示的な切断された細胞表面ポリペプチド。tEGFRは、tEGFR構築物およびコードされた外因性タンパク質で操作されている細胞を同定もしくは選択するためにおよび/またはコードされた外因性タンパク質を発現する細胞を排除もしくは分離するために使用することができる、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体または結合分子によって認識されるエピトープを含有してもよい。米国特許第8,802,374号およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April; 34(4): 430-434を参照されたい。いくつかの局面では、マーカー、例えば、代理マーカーは、全部または一部分(例えば、切断型)のCD34、NGFR、CD19または切断されたCD19、例えば、切断された非ヒトCD19、または上皮成長因子受容体(例えば、tEGFR)を含む。いくつかの態様では、マーカーは、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォールドGFP(sfGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えばtdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびに、該蛍光タンパク質の種バリアント、単量体バリアント、ならびにコドン最適化および/または高感度バリアントを含めたそれらのバリアントであるかそれを含む。いくつかの態様では、マーカーは、ルシフェラーゼ、E. coli由来のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの酵素であるかそれを含む。例示的な発光レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)またはそれらのバリアントを含む。
【0444】
いくつかの態様では、マーカーは、選択マーカーである。いくつかの態様では、選択マーカーは、外因性作用物質または薬物に対する耐性を付与するポリペプチドであるかそれを含む。いくつかの態様では、選択マーカーは、抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質耐性を付与する抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子、もしくはゼオシン耐性遺伝子、またはそれらの修飾形態であるかそれを含む。
【0445】
いくつかの態様では、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能リンカー配列、例えば、T2Aをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結される。例えば、マーカーおよび任意でリンカー配列は、PCT公開番号WO2014031687に開示されているようないずれかであることができる。例えば、マーカーは、T2A切断可能リンカー配列などのリンカー配列に任意で連結されている切断されたEGFR(tEGFR)であることができる。切断されたEGFR(例えば、tEGFR)についての例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:7もしくは16に示されるアミノ酸の配列またはSEQ ID NO:7もしくは16に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0446】
本明細書に記載される組換え受容体はいずれも、任意の組み合わせまたは配置で細胞表面マーカーおよび/または組換え受容体をコードする1つまたは複数の核酸配列を含有するポリヌクレオチドによってコードされることができる。例えば、1つ、2つ、3つまたはそれより多いポリヌクレオチドは、1つ、2つ、3つまたはそれより多い異なるポリペプチド、例えば、細胞表面マーカーおよび/または組換え受容体をコードすることができる。いくつかの態様では、1つのベクターまたは構築物は、細胞表面マーカーをコードする核酸配列を含有し、別個のベクターまたは構築物は、組換え受容体(例えば、CAR)をコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様では、細胞表面マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、2つの異なるプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、組換え受容体をコードする核酸は、細胞表面マーカーをコードする核酸の下流に存在する。
【0447】
2. ウイルスベクターおよびウイルスベクターの調製
いくつかの態様では、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドは、レトロウイルスによる形質導入、トランスフェクションまたは形質転換などによって、培養細胞を含有する組成物に導入される。
【0448】
また、提供されるのは、そのような核酸および/またはポリヌクレオチドを含有するベクターまたは構築物である。いくつかの態様では、ベクターまたは構築物は、その発現を駆動するために組換え受容体をコードする核酸に機能的に連結された1つまたは複数のプロモーターを含有する。いくつかの態様では、プロモーターは、1つまたは複数の核酸分子またはポリヌクレオチドに機能的に連結される。したがって、また、提供されるのは、ベクター、例えば、本明細書において提供されるポリヌクレオチドのいずれかを含有するベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、細胞表面マーカーをコードする第1のポリヌクレオチドおよび組換え受容体(例えば、CAR)をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。
【0449】
場合によって、ベクターは、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターである。ベクターのセットまたは組み合わせも提供される。いくつかの態様では、ベクターのセットまたは組み合わせは、第1のベクターおよび第2のベクターを含み、この場合の第1のベクターは、第1のポリヌクレオチド、例えば、細胞表面マーカーをコードする第1のポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、組換え受容体(例えば、CAR)をコードする第2のポリヌクレオチドを含む。また、提供されるのは、そのようなベクターのセットまたは組み合わせを含有する組成物である。いくつかの態様では、ベクターのセットまたは組み合わせは、細胞の操作のために一緒に使用される。いくつかの態様では、セット中の第1および第2のベクターは、操作のための細胞に、同時にまたは連続して任意の順序で導入される。
【0450】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクター、非ウイルスベクター、またはトランスポゾン、例えばスリーピングビューティートランスポゾン系、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクター、レンチウイルスベクターもしくはレトロウイルスベクター、例えばガンマ-レトロウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)もしくはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターを含む。
【0451】
ウイルスベクターゲノムは、典型的には、パッケージング細胞株または産生細胞株にトランスフェクトできるプラスミドの形態で構築される。そのような例のいずれでも、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする核酸は、一般にウイルスゲノムの非必須領域などのウイルスベクターの領域に挿入または配置される。いくつかの態様では、核酸は、複製欠損であるウイルスを産生するために、ある特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入される。
【0452】
ゲノムがウイルスベクターゲノムのRNAコピーを含有するレトロウイルス粒子を産生するために、多種多様な公知の方法のいずれを使用してもよい。いくつかの態様では、少なくとも2つの成分(第1に、構造タンパク質とウイルスベクター粒子を生成するのに必要な酵素とを包含するパッケージングプラスミド、第2に、ウイルスベクターそれ自体、すなわち、導入されるべき遺伝物質)がウイルスベースの遺伝子送達系の作製に関与する。これらの成分の一方または両方の設計に、バイオセーフティのためのセーフガードを導入することができる。
【0453】
いくつかの態様では、パッケージングプラスミドは、エンベロープタンパク質以外のHIV-1などのあらゆるレトロウイルスタンパク質を含有することができる(Naldini et al., 1998)。他の態様では、ウイルスベクターは、病原性に関連するものなどの追加のウイルス遺伝子、例えば、vpr、vif、vpuおよびnef、ならびに/またはTat(HIVの一次トランスアクチベーター)を欠損し得る。いくつかの態様では、HIV系レンチウイルスベクターなどのレンチウイルスベクターは、親ウイルスの3つの遺伝子gag、polおよびrevのみを含み、これによって、組換えによる野生型ウイルスの再構成の可能性が減少するか排除される。
【0454】
いくつかの態様では、ウイルスベクターゲノムは、ウイルスベクターゲノムから転写されたウイルスゲノムRNAをウイルス粒子にパッケージングするのに必要なあらゆる成分を含有するパッケージング細胞株に導入される。あるいは、ウイルスベクターゲノムは、関心対象の1つまたは複数の配列(例えば、組換え核酸)に加えて、ウイルス成分をコードする1つまたは複数の遺伝子を含み得る。ただし、いくつかの局面では、標的細胞内でのゲノムの複製を防ぐために、複製に必要な内因性ウイルス遺伝子が除去され、パッケージング細胞株に別個に提供される。
【0455】
いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、粒子を生成するために必要な成分を含有する1つまたは複数のプラスミドベクターがトランスフェクトされる。いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、LTR、シス作用パッケージング配列および関心対象の配列(すなわち、CARなどの抗原受容体をコードする核酸)を含むウイルスベクターゲノムを含有するプラスミドと;Gag、polおよび/またはrevなどのウイルスの酵素的および/または構造的成分をコードする1つまたは複数のヘルパープラスミドがトランスフェクトされる。いくつかの態様では、レトロウイルスベクター粒子を生成する様々な遺伝的成分を分離するために複数のベクターが利用される。いくつかのそのような態様では、パッケージング細胞に別個のベクターを提供することにより、普通なら複製能力のあるウイルスを生成する可能性がある組換え事象の機会が減少する。いくつかの態様では、あらゆるレトロウイルス成分を有する単一のプラスミドベクターを使用することができる。
【0456】
いくつかの態様では、レンチウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子は、宿主細胞の形質導入効率を高めるために偽型化される。例えば、いくつかの態様では、レンチウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子は、VSV-G糖タンパク質を用いて偽型化され、これによって、広い細胞宿主範囲が提供され、形質導入できる細胞タイプを拡大する。いくつかの態様では、シンドビスウイルスエンベロープ、GALVまたはVSV-Gなどの異種指向性、多指向性または両種指向性のエンベロープを含めるなどのために、パッケージング細胞株に、非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドまたはポリヌクレオチドがトランスフェクトされる。
【0457】
いくつかの態様では、パッケージング細胞株は、ウイルスゲノムRNAをレンチウイルスベクター粒子にパッケージングするためにトランスで必要とされる、ウイルス調節タンパク質および構造タンパク質を含む成分を提供する。いくつかの態様では、パッケージング細胞株は、レンチウイルスタンパク質を発現して機能的なレンチウイルスベクター粒子を産生することが可能である、任意の細胞株であり得る。いくつかの局面では、好適なパッケージング細胞株は、293細胞(ATCC CCL X)、293T細胞、HeLA細胞(ATCC CCL 2)、D17細胞(ATCC CCL 183)、MDCK細胞(ATCC CCL 34)、BHK細胞(ATCC CCL-10)およびCf2Th細胞(ATCC CRL 1430)を含む。
【0458】
いくつかの態様では、パッケージング細胞株は、1つまたは複数のウイルスタンパク質を安定に発現する。例えば、いくつかの局面では、gag、pol、revおよび/または他の構造遺伝子を含有するがLTRおよびパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株を構築することができる。いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、異種タンパク質をコードする核酸分子および/またはエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含有するウイルスベクターゲノムと共に、1つまたは複数のウイルスタンパク質をコードする核酸分子を一過性にトランスフェクトすることができる。
【0459】
いくつかの態様では、ウイルスベクターおよびパッケージングプラスミドおよび/またはヘルパープラスミドは、トランスフェクションまたは感染を介してパッケージング細胞株に導入される。パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノムを含有するウイルスベクター粒子を産生する。トランスフェクションまたは感染のための方法は周知である。非限定的な例は、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランおよびリポフェクション法、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションを含む。
【0460】
組換えプラスミドならびにレトロウイルスLTRおよびパッケージング配列を特定の細胞株に(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)導入すると、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングすることを可能にし得、その後、これが培養培地に分泌され得る。次いで、いくつかの態様では、組換えレトロウイルスを含有する培地を収集し、任意で濃縮し、遺伝子移入に使用する。例えば、いくつかの局面では、パッケージング細胞株へのパッケージングプラスミドおよび移入ベクターのコトランスフェクションの後、ウイルスベクター粒子が培養培地から回収され、当業者が使用している標準的な方法によって滴定される。
【0461】
いくつかの態様では、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターは、レンチウイルス粒子の生成を可能にするプラスミドの導入によって、例示的なHEK 293T細胞株などのパッケージング細胞株内で産生させることができる。いくつかの態様では、パッケージング細胞に、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチド、ならびに抗原受容体(例えば、CAR)などの組換え受容体をコードするポリヌクレオチドがトランスフェクトされ、かつ/または、前記ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、任意でかつ/または追加的に、revタンパク質をコードするポリヌクレオチドがトランスフェクトされ、かつ/または、前記ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、任意でかつ/または追加的に、VSV-Gなどの非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするポリヌクレオチドがトランスフェクトされ、かつ/または、前記ポリヌクレオチドを含有する。いくつかのそのような態様では、細胞、例えばHEK 293T細胞のトランスフェクションの約2日後、細胞上清は、組換えレンチウイルスベクターを含有し、これを回収し、滴定することができる。
【0462】
回収および/または産生されたレトロウイルスベクター粒子を使用し、記載されるような方法を使用して標的細胞を形質導入することができる。標的細胞に入ると、ウイルスRNAは逆転写され、核に輸送され、宿主ゲノムに安定して組み込まれる。ウイルスRNAの組み込みの1日後または2日後に、組換えタンパク質(例えば、CAR)などの抗原受容体の発現を検出することができる。
【0463】
D. 培養および/または拡大増殖
いくつかの態様では、提供される方法は、操作された細胞を培養する、例えば、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で細胞を培養するための1つまたは複数の工程を含む。ある特定の態様では、提供される方法は、操作された細胞を培養するための工程を含まない。ある特定の態様では、プロセス完了後の操作された細胞の数は、細胞が生成された初期ソース細胞と比較してより多い。様々な態様では、プロセス完了後の操作された細胞の数は、細胞が生成された初期ソース細胞と比較してより少ない。いくつかの態様では、操作された細胞は、遺伝子操作の工程、例えば、組換えポリペプチドを細胞に形質導入またはトランスフェクションによって導入する工程に続いて、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で培養される。特定の態様では、細胞は、細胞が刺激条件下でインキュベートされ、組換えポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドで形質導入またはトランスフェクトされた後に、培養される。いくつかの態様では、培養は、組換え受容体(例えば、CAR)を発現する濃縮されたT細胞の組成物を含有するアウトプット組成物を産生する。
【0464】
いくつかの態様では、操作された細胞は、例えば供給口を介して添加細胞の培養のための細胞培地および/または細胞を充填できる容器内で培養される。細胞は、例えば細胞の拡大増殖および/または増殖のために細胞の培養が望まれる任意の細胞源に由来し得る。
【0465】
いくつかの局面では、培養培地は、T細胞などの細胞の成長、培養、拡大増殖または増殖を支援する、適合化された培養培地である。いくつかの局面では、培地は、塩、アミノ酸、ビタミン、糖またはそれらの任意の組み合わせの混合物を含有する液体であることができる。いくつかの態様では、培養培地はさらに、インキュベーション中の細胞の培養、拡大増殖または増殖を刺激するためなどの、1つまたは複数の刺激条件または刺激剤を含有する。いくつかの態様では、刺激条件は、IL-2、IL-7またはIL-15から選択される1つまたは複数のサイトカインであるかそれを含む。いくつかの態様では、サイトカインは、組換えサイトカインである。いくつかの態様では、培養またはインキュベーション中の培養培地中の1つまたは複数のサイトカインの濃度は、独立して、1IU/mL~1500IU/mLまたは約1IU/mL~1500IU/mL、例えば、1IU/mL~100IU/mL、2IU/mL~50IU/mL、5IU/mL~10IU/mL、10IU/mL~500IU/mL、50IU/mL~250IU/mLもしくは100IU/mL~200IU/mL、50IU/mL~1500IU/mL、100IU/mL~1000IU/mLもしくは200IU/mL~600IU/mL、または約1IU/mL~100IU/mL、約2IU/mL~50IU/mL、約5IU/mL~10IU/mL、約10IU/mL~500IU/mL、約50IU/mL~250IU/mLもしくは約100IU/mL~200IU/mL、約50IU/mL~1500IU/mL、約100IU/mL~1000IU/mLもしくは約200IU/mL~600IU/mLである。いくつかの態様では、1つまたは複数のサイトカインの濃度は、独立して、少なくとも1IU/mL、少なくとも5IU/mL、少なくとも10IU/mL、少なくとも50IU/mL、少なくとも100IU/mL、少なくとも200IU/mL、少なくとも500IU/mL、少なくとも1000IU/mLもしくは少なくとも1500IU/mL、または少なくとも約1IU/mL、少なくとも約5IU/mL、少なくとも約10IU/mL、少なくとも約50IU/mL、少なくとも約100IU/mL、少なくとも約200IU/mL、少なくとも約500IU/mL、少なくとも約1000IU/mLもしくは少なくとも約1500IU/mLである。
【0466】
いくつかの局面では、細胞は、操作された細胞および培養培地の移入後の少なくとも一部の時間にわたってインキュベートされる。いくつかの態様では、刺激条件は、一般に、ヒトTリンパ球などの初代免疫細胞の成長に適した温度、例えば、少なくともセ氏約25度、一般に少なくとも約30度、一般に、セ氏37度またはセ氏約37度を含む。いくつかの態様では、細胞は、セ氏30度~セ氏37度、例えばセ氏37度またはセ氏約37度±セ氏2度などのセ氏25度~セ氏38度の温度でインキュベートされる。いくつかの態様では、インキュベーションは、培養(culture)、例えば培養(cultivation)または拡大増殖が所望または限界の密度、数または用量の細胞をもたらすまでの時間にわたって行われる。いくつかの態様では、インキュベーションは、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日以上を超えるもしくは約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日以上を超える、または約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日以上もしくは24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日以上である。
【0467】
いくつかの態様では、細胞は、細胞培養中の目的の二酸化炭素量を維持する条件下でインキュベートされる。いくつかの局面では、これは、成長中の細胞の最適な培養、拡大増殖および増殖を確実にする。いくつかの局面では、二酸化炭素(CO2)の量は、前記気体10%~0%(v/v)、例えば、前記気体8%~2%(v/v)、例えば、5%(v/v)または約5%(v/v)のCO2量である。
【0468】
いくつかの態様では、T細胞は、培養開始組成物にフィーダー細胞、例えば非分裂末梢血単核細胞(PBMC)を(例えば、得られた細胞集団が、拡大されるべき初期集団中のTリンパ球毎に少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20もしくは少なくとも約40またはそれより多いPBMCフィーダー細胞を含有するように)加え;培養物を(例えば、T細胞の数が拡大するのに十分な時間)インキュベートすることによって、拡大増殖される。いくつかの局面では、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ照射されたPBMCフィーダー細胞を含むことができる。いくつかの態様では、細胞分裂を防止するために、PBMCに、約3000~3600radの範囲のガンマ線が照射される。いくつかの局面では、T細胞集団の添加の前に、フィーダー細胞が培養培地に加えられる。
【0469】
いくつかの態様では、刺激条件は、ヒトTリンパ球の成長に適した温度、例えば、少なくともセ氏約25度、一般に少なくとも約30度、一般に、セ氏37度またはセ氏約37度を含む。任意で、インキュベーションはさらに、非分裂のEBV形質転換されたリンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として加えることを含んでもよい。LCLに、約6000~10,000radの範囲のガンマ線を照射することができる。LCLフィーダー細胞は、いくつかの局面では、LCLフィーダー細胞:初期Tリンパ球比が少なくとも約10:1など、任意の好適な量で提供される。
【0470】
いくつかの態様では、細胞は、バイオリアクターに関連して使用される容器、例えば、バッグを使用してインキュベートされる。場合によって、バイオリアクターは、いくつかの局面では酸素移入を増加できる、動揺または揺動に供することができる。バイオリアクターを動揺させることは、水平軸に沿って回転させること、垂直軸に沿って回転させること、バイオリアクターの傾いたまたは傾斜した水平軸に沿った揺動運動、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されない。いくつかの態様では、インキュベーションの少なくとも一部は、揺動と共に行われる。揺動速度および揺動角度は、所望の撹拌が達成されるように調整してもよい。いくつかの態様では、揺動角度は、20°、19°、18°、17°、16°、15°、14°、13°、12°、11°、10°、9°、8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°もしくは1°であるか、または約20°、約19°、約18°、約17°、約16°、約15°、約14°、約13°、約12°、約11°、約10°、約9°、約8°、約7°、約6°、約5°、約4°、約3°、約2°もしくは約1°である。ある特定の態様では、揺動角度は、6°~16°の間である。他の態様では、揺動角度は、7°~16°の間である。他の態様では、揺動角度は、8°~12°の間である。いくつかの態様では、揺動速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40rpmである。いくつかの態様では、揺動速度は、4rpm~12rpm、例えば、4rpm~6rpm(両端の値を含む)である。細胞培養拡大増殖の少なくとも一部は、揺動運動と共に、例えば、6°などの5°~10°の間の角度で、一定の揺動速度、例えば、6RMPまたは10RPMなどの5~15RPMの間の速度で実施される。CD4+細胞およびCD8+細胞は、各々が限界の量または細胞密度に達するまで、各々別々に拡大増殖される。
【0471】
いくつかの態様では、インキュベーションの少なくとも一部は、静的条件下で行われる。いくつかの態様では、インキュベーションの少なくとも一部は、培養中に使用済み培地を灌流除去して新鮮な培地中に灌流するなどのために、灌流と共に行われる。いくつかの態様では、本方法は、新鮮な培養培地を、供給口を通過させるなどして、細胞培養中に灌流させる工程を含む。いくつかの態様では、灌流中に加えられる培養培地は、1つまたは複数の刺激剤、例えば、IL-2、IL-7および/またはIL-15などの1つまたは複数の組換えサイトカインを含有する。いくつかの態様では、灌流中に加えられる培養培地は、静的インキュベーション中に使用される同じ培養培地である。
【0472】
いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の抗イディオタイプ抗体、例えば、操作された細胞によって発現される組換え受容体に結合するかそれを認識する抗イディオタイプ抗体の存在下で、拡大増殖または培養される。
【0473】
いくつかの態様では、インキュベーションに続いて、容器、例えば、バッグは、遠心チャンバを含有するシステムに再接続されるなど、細胞療法を製造、生成または産生するための1つまたは複数の他の処理工程を行うためのシステムに再接続される。いくつかの局面では、培養細胞は、培養細胞の製剤化のためにバッグからチャンバの内部キャビティに移される。
【0474】
E. 組成物および製剤化
特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルは、製剤化された細胞組成物、例えば、細胞療法などの操作された細胞組成物から得られる。ある特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルを細胞組成物から得て、マススペクトロメトリープロファイルの少なくとも一部分が許容範囲内にあるか、例えば、限界変動または分散から外れていないかを検証する。特定の態様では、マススペクトロメトリープロファイルを細胞組成物から得て、細胞組成物、例えば、製剤化された細胞組成物または細胞療法の細胞によって発現される組換え受容体の存在を同定または検証する。
【0475】
いくつかの態様において、組み換え抗原受容体、例えばCARまたはTCRで操作された細胞を含む細胞の用量は、薬学的組成物または配合物のような、組成物または配合物として提供される。そのような組成物は、例えば疾患、状態および障害の予防もしくは処置で、検出、診断および予後診断の方法で、提供される方法、および/または提供される製造物品もしくは組成物によって用いることができる。
【0476】
「薬学的配合物」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態にあり、かつ配合物が投与された対象にとって許容されないほど有毒であるさらなる構成成分を含有しない調製物をいう。
【0477】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒性である、活性成分以外の、薬学的配合物中の成分をいう。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存料を含むが、これらに限定されることはない。
【0478】
いくつかの局面において、担体の選択は、一部には特定の細胞もしくは作用物質によって、および/または投与方法によって決定される。したがって、種々の適当な配合物が存在する。例えば、薬学的組成物は保存料を含みうる。適当な保存料としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが挙げられうる。いくつかの局面において、2つまたはそれ以上の保存料の混合物が用いられる。保存料またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.0001重量%から約2重量%の量で存在する。担体は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)によって記述されている。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投与量および濃度でレシピエントに無毒性であり、以下のものが含まれるが、これらに限定されることはない: リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤; アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤; 保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールなど); 低分子量(約10残基未満)ポリペプチド; 血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質; ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体; グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸; 単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物; EDTAなどのキレート剤; スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類; ナトリウムなどの塩形成対イオン; 金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体); ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤。
【0479】
いくつかの局面において緩衝剤が組成物に含まれる。適当な緩衝剤としては、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに他のさまざまな酸および塩が挙げられる。いくつかの局面において、2つまたはそれ以上の緩衝剤の混合物が用いられる。緩衝剤またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)においてより詳細に記述されている。
【0480】
配合物または組成物はまた、各活性が互いに悪影響を及ぼさない、細胞または作用物質で予防または処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な2つ以上の活性成分を含有しうる。そのような活性成分は、意図された目的に有効な量で組み合わせて適当に存在する。したがって、いくつかの態様において、薬学的組成物は、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどのような、他の薬学的に活性な作用物質または薬物をさらに含む。いくつかの態様において、作用物質または細胞は、塩、例えば薬学的に許容される塩の形態で投与される。適当な薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸のような鉱酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸およびアリールスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸のような有機酸に由来するものを含む。
【0481】
いくつかの態様における薬学的組成物は、治療的に有効な量または予防的に有効な量のような、疾患または状態を処置または予防するのに有効な量で作用物質または細胞を含有する。いくつかの態様における治療的または予防的有効性は、処置された対象の定期的な評価によってモニタリングされる。数日またはそれ以上の反復投与の場合、状態に応じて、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで処置が繰り返される。しかしながら、他の投与計画が有用でありえ、決定することができる。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の連続注入投与によって送達することができる。
【0482】
作用物質または細胞は、任意の適当な手段により、例えば、ボーラス注入により、注射、例えば、静脈内もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、球後注射、球周囲注射、または後強膜近傍送達により投与することができる。いくつかの態様において、それらは、非経口、肺内、および鼻腔内投与、ならびに局所処置が望ましい場合、病変内投与により投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。いくつかの態様において、所与の用量は、細胞または作用物質の単回ボーラス投与により投与される。いくつかの態様において、それは、例えば3日以下の期間にわたる、細胞もしくは作用物質の複数回ボーラス投与により、または細胞もしくは作用物質の連続注入投与により投与される。
【0483】
疾患の予防または処置の場合、適切な投与量は、処置される疾患のタイプ、作用物質のタイプ、細胞または組み換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、作用物質または細胞が予防目的または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、対象の病歴および作用物質または細胞に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存しうる。組成物は、いくつかの態様において、一度にまたは一連の処置にわたって対象に適当に投与される。
【0484】
細胞または作用物質は、標準的な投与技法、配合、および/または装置を用いて投与されうる。組成物の貯蔵および投与のための、シリンジおよびバイアルのような、配合物および装置が提供される。細胞に関して、投与は自家または異種であることができる。例えば、免疫応答性細胞または前駆細胞を、1つの対象から得て、同じ対象または異なる適合性の対象に投与することができる。末梢血由来の免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボまたはインビトロ由来)を、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注射によって投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答性細胞または神経毒性の症状を処置もしくは改善する作用物質を含有する薬学的組成物)を投与する場合、それは一般に、単位用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で配合されよう。
【0485】
配合物には、経口、静脈内、腹腔内、皮下、経肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下、または坐薬投与のためのものが含まれる。いくつかの態様において、作用物質または細胞集団は非経口的に投与される。本明細書において用いられる「非経口」という用語には、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内、および腹腔内投与が含まれる。いくつかの態様において、作用物質または細胞集団は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達(peripheral systemic delivery)を用いて対象に投与される。
【0486】
いくつかの態様において組成物は、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝されうる、滅菌液体調製物、例えば等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物として提供される。液体調製物は通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射により、投与するのが幾分便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘性の範囲内で配合することができる。液体または粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒体であることができる。
【0487】
滅菌注射溶液は、適当な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物などの溶媒中に作用物質または細胞を組み込むことによって調製することができる。
【0488】
インビボ投与に用いられる配合物は一般に無菌である。無菌性は、例えば、無菌ろ過膜によるろ過により、容易に達成されうる。
【0489】
IV. 定義
特に定義されない限り、本明細書で用いられる専門用語、表記、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法は全て、特許請求される主題が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語を、明確にするためにおよび/またはすぐに参照できるように本明細書において定義するが、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野において一般に理解されているものとの実質的な相違を表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0490】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」は、特に文脈によって明白に指示されていない限り、その対象物の複数形も含む。例えば、「1つの (a)」または「1つの (an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書に記載される局面および変形は、局面および変形「からなる」ならびに/または局面および変形「から本質的になる」を含むと理解される。
【0491】
本開示を通して、特許請求される主題の様々な局面は、範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔化のためであり、特許請求される主題の範囲に対する確固たる限定として解釈されるべきでないことが、理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を全て具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、ある値域が提供される場合、その範囲の上限値と下限値の間の各介在値、およびその規定範囲内の任意の他の規定値または介在値が、特許請求される主題内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、独立的にそのより小さな範囲内に含まれてよく、これらもまた、規定範囲における任意の具体的に除外される限界値に従って、特許請求される主題内に包含される。規定範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それら含まれた限界値の一方または両方を除外する範囲もまた、特許請求される主題内に含まれる。このことは、範囲の幅とは無関係に適用される。
【0492】
本明細書で用いられる「約」という用語は、明白な各値に関する通常の誤差範囲を指す。本明細書において「約」のついた値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーターそのものに向けられた態様を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は「X」の記載を含む。
【0493】
本明細書で使用する場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸の位置が、配列表に示されるような開示された配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の位置に「対応する」という記載は、GAPアルゴリズムなどの標準的なアラインメントアルゴリズムを用いて同一性を最大化するように開示された配列とアラインメントさせたときに同定される、ヌクレオチドまたはアミノ酸の位置を指す。配列同士をアラインメントさせることにより、例えば保存された同一のアミノ酸残基をガイドとして用いて、対応する残基を同定することができる。一般的に、対応する位置を同定するために、アミノ酸の配列は、最上位のマッチが得られるようにアラインメントされる(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M.編, Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W.編, Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G.編, Humana Press, New. Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J.編, M Stockton Press, New York, 1991; Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を参照されたい)。
【0494】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。本用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノム中に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。ベクターには、ウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクターといったレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターなどが含まれる。
【0495】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫も含む。宿主細胞には「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これには初代形質転換細胞、および継代数に関係なくそれらに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸の内容が親細胞と完全に一致していなくてもよく、変異を含有してもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書に含まれる。
【0496】
本明細書で用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定マーカーに関して「陽性」であるという記述は、特定マーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に検出可能な程度に存在することを指す。表面マーカーに言及する場合、本用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し該抗体を検出することによって、検出される表面発現の存在を指し、この場合、染色は、アイソタイプ一致対照を他の点では同一の条件下で用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはそのマーカーに関して陽性であることが公知である細胞のレベルと実質的に類似するレベルで、および/またはそのマーカーに関して陰性であることが公知である細胞のレベルよりも実質的に高いレベルで、フローサイトメトリーによって検出可能である。
【0497】
本明細書で用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定マーカーに関して「陰性」であるという記述は、特定マーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に実質的に検出可能な程度に存在しないことを指す。表面マーカーに言及する場合、本用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し該抗体を検出することによって、検出される表面発現の非存在を指し、この場合、染色は、アイソタイプ一致対照を他の点では同一の条件下で用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはそのマーカーに関して陽性であることが公知である細胞のレベルよりも実質的に低いレベルで、および/またはそのマーカーに関して陰性であることが公知である細胞のレベルと比較して実質的に類似するレベルで、フローサイトメトリーによって検出されない。
【0498】
本明細書で使用する場合、アミノ酸配列(参照ポリペプチド配列)に関して使用するときの「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」とは、配列をアラインメントさせて、必要に応じて、最大の配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後、保存的置換を配列同一性の一部とみなさないで、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列(例えば、対象の抗体またはh)のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、様々な公知の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR社)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含めて、配列をアラインメントするための適切なパラメーターを決定することができる。
【0499】
アミノ酸の置換は、ポリペプチド中のあるアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えることを含む。置換は、保存的アミノ酸置換であっても、非保存的アミノ酸置換であってもよい。アミノ酸の置換は、対象となる結合分子(例えば抗体)に導入されるか、または所望の活性(例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、またはADCCもしくはCDCの改善)についてスクリーニングされる産物に導入することができる。
【0500】
アミノ酸は一般に、次の共通の側鎖特性に従ってグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0501】
いくつかの態様では、保存的置換には、これらのクラスのうちのあるクラスのメンバーを同じクラスの別のメンバーと交換することが含まれる。いくつかの態様では、非保存的アミノ酸置換には、これらのクラスのうちのあるクラスのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することが含まれる。
【0502】
本明細書で使用する場合、組成物は、細胞を含めて、2つ以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0503】
本明細書で使用する場合、「対象」は、哺乳動物、例えばヒトまたは他の動物であり、典型的にはヒトである。
【0504】
V.例示的な態様
提供される態様としては以下がある。
【0505】
1.遺伝子操作された細胞組成物のマススペクトロメトリー(MS)プロファイルを同定する方法であって、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の試験マススペクトロメトリープロファイルを決定する工程であって、該試験操作された細胞組成物が、組換え受容体を含む免疫細胞を含む、工程;
(b)試験マススペクトロメトリープロファイルを参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程;および
(c)参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、組換え受容体を含む細胞組成物のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程
を含む、方法。
【0506】
2.参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであるか、または複数の参照組成物からのいくつかの試料の平均マススペクトルプロファイルである、態様1の方法。
【0507】
3.試験操作された細胞組成物が、自己細胞療法に使用するための細胞組成物である、態様1または請求項2の方法。
【0508】
4.試験操作された細胞組成物が、
(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、工程;
(ii)ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程
を含むプロセスによって製造される、態様1~3のいずれかの方法。
【0509】
5.参照組成物または複数の参照細胞組成物のそれぞれが、組換え受容体をコードする核酸分子を導入されていない、態様2~4のいずれかの方法。
【0510】
6.参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、参照細胞組成物が、試験細胞組成物がそれに由来するかまたはそこから得られた免疫細胞を含むソース細胞組成物である、態様1~5のいずれかの方法。
【0511】
7.参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、
試験操作された細胞組成物が、対象から得られた免疫細胞を含み、該免疫細胞が、組換え受容体をコードする核酸分子を含み;
参照細胞組成物が、組換え受容体をコードする核酸を含まない対象から得られた免疫細胞を含むインプット組成物である、態様1~6のいずれかの方法。
【0512】
8.参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照組成物からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、参照細胞組成物が、試験操作された細胞組成物を製造するための製造プロセスの段階の後、前または最中に得られた組成物である、態様1~7のいずれかの方法。
【0513】
9.試験操作された細胞組成物が、操作された細胞組成物を事前に投与された対象から得られる試料である、態様1~8のいずれかの方法。
【0514】
10.対象から得られる試料が、任意でフローサイトメトリーまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による検出で、組換え受容体で操作された免疫細胞を含む、態様9の方法。
【0515】
11.対象から得られる試料が血液試料または腫瘍試料である、態様9または態様10の方法。
【0516】
12.対象から得られる試料が、操作された細胞を対象に投与してから6~30日もしくは約6~30日後、14~29日もしくは約14~29日後または17~22日もしくは約17~22日後に得られる、態様9~11のいずれかの方法。
【0517】
13.試料が、組換え受容体を発現するピーク細胞が対象の血液中で検出可能である時点もしくはほぼその時点またはその直後に対象から得られる、態様9~12のいずれかの方法。
【0518】
14.試験操作された細胞組成物が、組換え受容体依存性活性を生じさせるための作用物質と接触させられた細胞を含み、任意で、作用物質が、組換え受容体と結合することができる標的抗原であるか、または抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体である、態様1~8のいずれかの方法。
【0519】
15.参照マススペクトロメトリープロファイルが、複数の参照組成物からのいくつかの試料の平均マススペクトルプロファイルである、態様2~14のいずれかの方法。
【0520】
16.複数の参照組成物のそれぞれが、組換え受容体を含む細胞を含む、態様15の方法。
【0521】
17.複数の参照組成物のそれぞれが、操作された細胞組成物と同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造されたものである、態様15または態様16の方法。
【0522】
18.遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを評価する方法であって、
(a)複数の参照操作された細胞組成物またはそのサブセットの試料の平均マススペクトロメトリープロファイルを得る工程であって、複数の参照組成物のそれぞれが、同じプロセスまたは実質的に同じプロセスによって製造された組換え受容体を含む、工程;および
(b)平均マススペクトロメトリープロファイルの分散の存在、非存在、またはレベルを決定する工程
を含む、方法。
【0523】
19.複数の参照組成物の間でのマススペクトロメトリープロファイルの分散が、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下であるならば、またはマススペクトロメトリープロファイルのデータ成分の間でのそのような平均で1標準偏差以下しか変化しないならば、操作された細胞組成物を製造するプロセスを選択する工程をさらにを含む、態様18の方法。
【0524】
20.平均マススペクトロメトリープロファイルが、複数の参照操作された組成物またはそのサブセットのそれぞれに基づく試料のマススペクトロメトリープロファイルであり、複数の参照操作された細胞組成物のそれぞれが、
(1)参照操作された組成物中の細胞、(2)参照操作された組成物中のCD3+細胞;(3)参照操作された組成物中のCD4+T細胞;(4)参照操作された組成物中のCD8+T細胞;(5)参照操作された組成物中の組換え受容体+細胞;(6)参照操作された組成物中の組換え受容体+CD3+細胞、(7)参照操作された組成物中の組換え受容体+CD8+細胞、または(8)参照操作された組成物中の組換え受容体+CD4+細胞
から選択される、態様18または態様19の方法。
【0525】
21.複数の参照組成物のそれぞれが、
(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、工程;
(ii)ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程
を含むプロセスによって製造される、態様18または態様19の方法。
【0526】
22.試験マススペクトロメトリープロファイルおよび参照マススペクトロメトリープロファイルが個々にペプチドプロファイルである、態様1~17のいずれかの方法。
【0527】
23.参照マススペクトロメトリープロファイルが、試験マススペクトロメトリープロファイルと同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定される、請求項1~17および22のいずれかの方法。
【0528】
24.遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価する方法であって、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、第一の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第一のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;
(b)マススペクトロメトリー技術を使用して、第二の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第二のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;および
(c)第二のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの第一のマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程
を含み、第一の細胞組成物および第二の細胞組成物が、遺伝子操作された細胞組成物を製造するための製造プロセスの異なる段階における組成物を含む、方法。
【0529】
25.第一および第二の細胞組成物が、遺伝子操作された細胞組成物を生成する異なる段階にあり、
(i)対象由来の生体試料から選択または単離された免疫細胞を含むソース組成物であって、任意で、生体試料が白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料または全血試料である、ソース組成物;
(ii)刺激試薬と接触させられた選択された組成物の免疫細胞を含む刺激された組成物であって、任意で、接触が1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施された、刺激された組成物;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を含む刺激された組成物の細胞を含む形質転換組成物;および
(iv)37℃または約37℃で少なくとも24時間培養された形質転換組成物の細胞を含む培養された組成物であって、任意で、培養が1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、培養された組成物
から選択される、態様24の方法。
【0530】
26.第一の細胞組成物が、第二の細胞組成物に比べ、製造プロセスのより前の段階またはより前の時点からの組成物である、態様24または態様25の方法。
【0531】
27.遺伝子操作された細胞組成物を製造するプロセスを特性評価する方法であって、
(a)マススペクトロメトリー技術を使用して、第一の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第一のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;
(b)マススペクトロメトリー技術を使用して、第二の細胞組成物またはそのサブセットからの試料の第二のマススペクトロメトリープロファイルを決定する工程;および
(c)第二のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの第一のマススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定する工程
を含み、第一の細胞組成物および第二の細胞組成物が、異なるプロセスによって製造された遺伝子操作された細胞を含む、方法。
【0532】
28.異なるプロセスが、
血清の存在または濃度;培養時間;試薬のロット;試薬の取り扱いまたは貯蔵;刺激試薬の存在または量;刺激試薬のタイプ;1つまたは複数のサイトカインの存在または量;アミノ酸の存在または量;温度;ソース組成物のソースまたは免疫細胞タイプ;ソース組成物中の免疫細胞タイプの比またはパーセンテージ、任意でCD4+/CD8+細胞比;細胞密度;静的培養;揺動培養;灌流;ウイルスベクターのタイプ;ベクターコピー数;形質導入アジュバントの存在;凍結保存中のソース組成物の細胞密度;組換え受容体の発現の程度;または細胞表現型を変調させるための化合物の存在
の1つまたは複数において異なる、態様27の方法。
【0533】
29.第一のマススペクトロメトリープロファイルおよび第二のマススペクトロメトリープロファイルが個々にペプチドプロファイルである、態様24~28のいずれかの方法。
【0534】
30.第一のマススペクトロメトリープロファイルおよび第二のマススペクトロメトリープロファイルが、同じマススペクトロメトリー技術を使用して決定される、態様24~29のいずれかの方法。
【0535】
31.組換え受容体を特性評価する方法であって、マススペクトロメトリー技術を使用して、組換え受容体を発現するかまたは含む免疫細胞を含む試験操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料の組換え受容体のマススペクトロメトリープロファイルを得る工程を含み、該マススペクトロメトリープロファイルが少なくとも1つのデータ成分を含む、方法。
【0536】
32.組換え受容体を発現しない同じ細胞のマススペクトロメトリープロファイルと比較したときの少なくとも1つのデータ成分における1つまたは複数の差を同定する工程をさらに含む、態様31の方法。
【0537】
33.試験操作された細胞組成物が刺激試薬の存在下で刺激されている、態様31または態様32の方法。
【0538】
34.操作された細胞組成物が、組換え受容体依存性活性を生じさせるための作用物質と接触させられた細胞を含み、任意で、作用物質が、組換え受容体と結合することができる標的抗原であるか、または抗体に特異的な抗イディオタイプ抗体である、態様31~33のいずれかの方法。
【0539】
35.刺激試薬の存在下で刺激されていない、または異なる刺激試薬の存在下で刺激された同じ操作された細胞組成物のマススペクトロメトリーと比較したときのマススペクトロメトリープロファイルにおける1つまたは複数の差を同定する工程をさらに含む、態様31~34のいずれかの方法。
【0540】
36.細胞組成物が免疫細胞を濃縮されている、態様1~35のいずれかの方法。
【0541】
37.免疫細胞がリンパ球を含む、態様1~36のいずれかの方法。
【0542】
38.リンパ球がT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を含む、態様37の方法。
【0543】
39.リンパ球がT細胞を含み、T細胞がCD4+および/またはCD8+T細胞である、態様38の方法。
【0544】
40.免疫細胞がヒトである、態様1~39のいずれかの方法。
【0545】
41.免疫細胞がT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる、態様4、21、25および28~40のいずれかの方法。
【0546】
42.刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する主剤およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する副剤を含む、態様41の方法。
【0547】
43.主剤がCD3に特異的に結合する、かつ/または共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群より選択される、態様42の方法。
【0548】
44.刺激試薬が、抗CD3抗体またはその抗原結合断片および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む、態様4、21、25および28~43のいずれかの方法。
【0549】
45.主剤および副剤が固体支持体の表面に存在し、任意で、固体支持体がビーズである、態様42~44のいずれかの方法。
【0550】
46.主剤および副剤が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを含む可溶性オリゴマー試薬の表面に存在する、態様42~44のいずれかの方法。
【0551】
47.培養が、操作された細胞の増殖および/または拡大増殖を促進するための条件下で実施される、態様4、21、25および28~46のいずれかの方法。
【0552】
48.試料が、試験操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、細胞を溶解し、1つまたは複数のタンパク質を単離することによって処理される、態様1~47のいずれかの方法。
【0553】
49.1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、態様48の方法。
【0554】
50.操作された細胞組成物の表面タンパク質を評価する方法であって、
(a)組換え受容体を発現するかまたは含む操作された細胞組成物またはそのサブセットの細胞上に存在する1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、それにより、標識された細胞組成物を生成する工程;
(b)標識された細胞組成物の細胞を溶解し、それにより、溶解した細胞組成物を生成する工程;
(c)溶解した細胞組成物から1つまたは複数の表面タンパク質を単離して、1つまたは複数の単離されたタンパク質を得る工程;および
(d)1つまたは複数の単離されたタンパク質をマススペクトロメトリー技術に供して、1つまたは複数のデータ成分を含むマススペクトロメトリープロファイルを得る工程
を含む、方法。
【0555】
51.(d)の前に、1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、態様50の方法。
【0556】
52.消化が、1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって実施される、態様49または態様51の方法。
【0557】
53.1つまたは複数のプロテアーゼが、トリプシンであるか、またはトリプシンを含む、態様52の方法。
【0558】
54.1つまたは複数のタンパク質が細胞表面膜タンパク質を含む、態様48~53のいずれかの方法。
【0559】
55.細胞の溶解が界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む、態様48~54のいずれかの方法。
【0560】
56.界面活性剤が非イオン界面活性剤である、態様55の方法。
【0561】
57.界面活性剤が、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含む、態様56の方法。
【0562】
58.界面活性剤が変性界面活性剤である、態様55の方法。
【0563】
59.変性界面活性剤が、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含む、態様58の方法。
【0564】
60.細胞の溶解ののち、溶解した組成物から界面活性剤を除去する工程をさらに含む、態様55~59のいずれかの方法。
【0565】
61.表面タンパク質の標識が第一級アミンのビオチン標識を含む、態様48~60のいずれかの方法。
【0566】
62.1つまたは複数のタンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される、態様61の方法。
【0567】
63.マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、態様1~62のいずれかの方法。
【0568】
64.液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様63の方法。
【0569】
65.液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様63または態様64の方法。
【0570】
66.液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、態様63~65のいずれかの方法。
【0571】
67.液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、態様63~66のいずれかの方法。
【0572】
68.マススペクトロメトリーを実行する質量分析計が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む、態様63~67のいずれかの方法。
【0573】
69.質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップまたはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、態様68の方法。
【0574】
70.質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、態様69の方法。
【0575】
71.データ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、翻訳後修飾から選択される、態様1~70のいずれかの方法。
【0576】
72.データ成分がXICまたはその一部分であり、XICまたはその一部分が、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく、態様71の方法。
【0577】
73.1つまたは複数のペプチド成分が、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、プロテアーゼがトリプシンである、態様72の方法。
【0578】
74.組換え受容体が、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれ(ら)を含む、態様1~73のいずれかの方法。
【0579】
75.組換え受容体が、
疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原
に結合することができる、態様1~76のいずれかの方法。
【0580】
76.疾患、障害、または病気が、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である、態様75の方法。
【0581】
77.標的抗原が腫瘍抗原である、態様75または態様76の方法。
【0582】
78.標的抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌精巣抗原、癌精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される、態様75~77のいずれかの方法。
【0583】
79.組換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、態様1~78のいずれかの方法。
【0584】
80.組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様1~79のいずれかの方法。
【0585】
81.試料が、(1)細胞組成物中の細胞、(2)細胞組成物中のCD3+細胞;(3)細胞組成物中のCD4+T細胞;(4)細胞組成物中のCD8+T細胞;(5)細胞組成物中の組換え受容体+細胞;(6)細胞組成物中の組換え受容体+CD3+細胞、(7)細胞組成物中の組換え受容体+CD8+細胞、または(8)細胞組成物中の組換え受容体+CD4+細胞から選択される細胞組成物またはそのサブセットの試料であり、任意で、組換え受容体がCARである、態様1~80のいずれかの方法。
【0586】
82.マススペクトロスコピー技術を使用して得られる、操作された細胞組成物またはそのサブセットからの試料のマススペクトロメトリープロファイルが、製造される複数の操作された細胞組成物の平均マススペクトロメトリープロファイルの間で40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下しか変化しない、またはマススペクトロメトリープロファイルのデータ成分の間でのそのような平均で1標準偏差以下しか変化しないプロセスによって製造される、操作された細胞組成物。
【0587】
83.組換え受容体を含む、態様82の操作された細胞組成物。
【0588】
84.免疫細胞を含む、態様82または態様83の操作された細胞組成物。
【0589】
85.操作された細胞組成物を製造するプロセスが、
(i)対象由来の試料から免疫細胞を選択または単離し、それにより、ソース組成物を生成する工程であって、任意で生体試料が、白血球アフェレーシス試料、アフェレーシス試料、または全血試料である、工程;
(ii)ソース組成物の細胞を刺激試薬とともにインキュベートし、それにより、刺激された組成物を生成する工程であって、インキュベーションが任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程;
(iii)組換え受容体をコードする核酸を、刺激された組成物の免疫細胞に導入し、それにより、形質転換組成物を生成する工程;および
(iv)刺激された組成物を37℃で少なくとも24時間培養し、それにより、試験操作された細胞組成物を生成する工程であって、培養が任意で1つまたは複数のサイトカインの存在下で実施される、工程
を含む、態様84の操作された細胞組成物。
【0590】
86.細胞組成物が免疫細胞を濃縮されている、態様84または態様85の操作された細胞組成物。
【0591】
87.免疫細胞がリンパ球を含む、態様84~86のいずれかの操作された細胞組成物。
【0592】
88.リンパ球がT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞を含む、態様87の操作された細胞組成物。
【0593】
89.リンパ球がT細胞を含み、T細胞がCD4+および/またはCD8+T細胞である、態様88の操作された細胞組成物。
【0594】
90.免疫細胞がヒトである、態様84~89のいずれかの操作された細胞組成物。
【0595】
91.免疫細胞がT細胞、任意でCD4+および/またはCD8+T細胞であり、刺激試薬が、TCR複合体の1つもしくは複数の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することができる、態様85~90のいずれかの操作された細胞組成物。
【0596】
92.刺激試薬が、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する主剤およびT細胞共刺激分子に特異的に結合する副剤を含む、態様91の操作された細胞組成物。
【0597】
93.主剤がCD3に特異的に結合する、かつ/または共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSからなる群より選択される、態様92の操作された細胞組成物。
【0598】
94.刺激試薬が、抗CD3抗体またはその抗原結合断片および抗CD28抗体またはその抗原結合断片を含む、態様85~93のいずれかの操作された細胞組成物。
【0599】
95.主剤および副剤が固体支持体の表面に存在し、任意で、固体支持体がビーズである、態様92~94のいずれかの操作された細胞組成物。
【0600】
96.主剤および副剤が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインを含む可溶性オリゴマー試薬の表面に存在する、態様92~95のいずれかの操作された細胞組成物。
【0601】
97.培養が、操作された細胞の増殖および/または拡大増殖を促進するための条件下で実施される、態様85~96のいずれかの操作された細胞組成物。
【0602】
98.試料が、操作された細胞組成物から、1つまたは複数の表面タンパク質を標識し、細胞を溶解し、1つまたは複数のタンパク質を単離することによって処理される、態様82~97のいずれかの操作された細胞組成物。
【0603】
99.1つまたは複数の単離されたタンパク質を消化する工程をさらに含む、態様98の操作された細胞組成物。
【0604】
100.消化が、1つまたは複数のペプチド結合を切断することができる1つまたは複数のプロテアーゼの存在下でのタンパク質分解によって実施される、態様98または態様99の操作された細胞組成物。
【0605】
101.1つまたは複数のプロテアーゼが、トリプシンであるか、またはトリプシンを含む、態様100の操作された細胞組成物。
【0606】
102.1つまたは複数のタンパク質が細胞表面膜タンパク質を含む、態様98~101のいずれかの操作された細胞組成物。
【0607】
103.細胞の溶解が界面活性剤の存在下でのインキュベーションを含む、態様98~102のいずれかの操作された細胞組成物。
【0608】
104.界面活性剤が非イオン界面活性剤である、態様55の操作された細胞組成物。
【0609】
105.界面活性剤が、有効量のTriton X-100であるか、またはそれを含む、態様104の操作された細胞組成物。
【0610】
106.界面活性剤が変性界面活性剤である、態様105の操作された細胞組成物。
【0611】
107.変性界面活性剤が、有効量のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるか、またはそれを含む、態様106の操作された細胞組成物。
【0612】
108.細胞の溶解ののち、方法がさらに、溶解した組成物から界面活性剤を除去する工程を含む、態様98~107のいずれかの操作された細胞組成物。
【0613】
109.表面タンパク質の標識が第一級アミンのビオチン標識を含む、態様98~108のいずれかの操作された細胞組成物。
【0614】
110.1つまたは複数のタンパク質が、アビジン、ストレプトアビジン、NeutrAvidin(商標)またはCaptAvidin(商標)を含む試薬を使用して単離される、態様109の操作された細胞組成物。
【0615】
111.マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、態様82~110のいずれかの操作された細胞組成物。
【0616】
112.液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様111の操作された細胞組成物。
【0617】
113.液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様111または態様112の操作された細胞組成物。
【0618】
114.液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、態様111~113のいずれかの操作された細胞組成物。
【0619】
115.液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、態様111~114のいずれかの操作された細胞組成物。
【0620】
116.マススペクトロメトリーを実行する質量分析計が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む、態様111~115のいずれかの操作された細胞組成物。
【0621】
117.質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップまたはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、態様116の操作された細胞組成物。
【0622】
118.質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、態様117の操作された細胞組成物。
【0623】
119.データ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、翻訳後修飾から選択される、態様82~118のいずれかの操作された細胞組成物。
【0624】
120.データ成分がXICまたはその一部分であり、XICまたはその一部分が、組換え受容体の1つまたは複数のペプチド成分の1つまたは複数の理論的または既知のm/z値に基づく、態様119の操作された細胞組成物。
【0625】
121.1つまたは複数のペプチド成分が、タンパク質分解的に切断または消化されたペプチド成分であり、任意で、プロテアーゼがトリプシンである、態様120の操作された細胞組成物。
【0626】
122.組換え受容体が、キメラ受容体および/または組換え抗原受容体であるか、またはそれ(ら)を含む、態様82~121のいずれかの操作された細胞組成物。
【0627】
123.組換え受容体が、
疾患、障害、または病気の細胞または組織と関連する、それに特異的である、かつ/またはその上に発現する標的抗原
に結合することができる、態様82~122のいずれかの操作された細胞組成物。
【0628】
124.疾患、障害、または病気が、感染性疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくは癌である、態様123の操作された細胞組成物。
【0629】
125.標的抗原が腫瘍抗原である、態様123または態様124の操作された細胞組成物。
【0630】
126.標的抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、癌/精巣抗原、癌精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断された上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役型受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソセリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、癌胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドーパクロムトートメラーゼ、ドーパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される、態様123~125のいずれかの操作された細胞組成物。
【0631】
127.組換え受容体が、機能的非TCR抗原受容体またはTCRもしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、態様82~126のいずれかの操作された細胞組成物。
【0632】
128.組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様8のいずれかの操作された細胞組成物。
【0633】
129.操作された細胞組成物を製造するプロセスに使用される試薬を評価する方法であって、
(a)第一の試薬からの試料のマススペクトロメトリープロファイルを、その試薬の参照マススペクトロメトリープロファイルと比較する工程であって、マススペクトロメトリープロファイルが、マススペクトロメトリー技術を使用して得られる、工程;および
(c)参照マススペクトロメトリープロファイルと比較したときの試験マススペクトロメトリープロファイル中の少なくとも1つのデータ成分の存在、非存在、またはレベルにおける1つまたは複数の差を同定し、それにより、試薬のマススペクトロメトリープロファイルを同定する工程
を含む、方法。
【0634】
130.参照マススペクトロメトリープロファイルが、参照試薬からの試料のマススペクトロメトリープロファイルであるか、または試薬の複数の異なるロットからのいくつかの試料の平均マススペクトルプロファイルである、態様129の方法。
【0635】
131.参照マススペクトロメトリープロファイルが、試薬の複数の異なるロットの試料の平均マススペクトロメトリープロファイルである、態様130の方法。
【0636】
132.平均マススペクトロメトリープロファイルに対する試料のマススペクトロメトリープロファイルの分散の存在、非存在、またはレベルを決定する工程をさらに含む、態様131の方法。
【0637】
133.試薬の複数の異なるロットの間でのマススペクトロメトリープロファイルの分散が、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下または5%以下であるならば、またはマススペクトロメトリープロファイルのデータ成分の間でのそのような平均で1標準偏差以下しか変化しないならば、試薬を選択する工程をさらに含む、態様132の方法。
【0638】
134.マススペクトロメトリー技術が、マススペクトロメトリーの前に試料を液体クロマトグラフィー(LC)に供することを含む、態様129~133のいずれかの方法。
【0639】
135.液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様134の方法。
【0640】
136.液体クロマトグラフィーが超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)である、態様135または態様135の方法。
【0641】
137.液体クロマトグラフィーおよびマススペクトロメトリーがオンラインで実施される、態様134~136のいずれかの方法。
【0642】
138.液体クロマトグラフィーが、順相(NP)、逆相(RP)および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)から選択される、態様134~137のいずれかの方法。
【0643】
139.マススペクトロメトリーを実行する質量分析計が、四重極、イオントラップ、飛行時間(TOF)またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器の1つまたは複数を含む、態様134~138のいずれかの方法。
【0644】
140.質量分析計が、三次元四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、線形四重極イオントラップまたはOrbitrap質量分析器であるイオントラップ質量分析器を含む、態様139の方法。
【0645】
141.質量分析計が四重極Orbitrap質量分析計である、態様140の方法。
【0646】
142.データ成分が、MSイオン情報、全イオンクロマトグラフ(TIC)またはその一部分、抽出イオンクロマトグラム(XIC)またはその一部分、ペプチドMSイオンシグナルピーク、タンパク質MSイオンシグナルピーク、ペプチド同定情報、タンパク質同定情報、定性的情報、定量的情報、構造情報、翻訳後修飾から選択される、態様129~410のいずれかの方法。
【0647】
143.試薬が、細胞組成物、任意でT細胞組成物の細胞中でシグナルを刺激することができる試薬である、態様129~142のいずれかの方法。
【0648】
144.細胞組成物の細胞が組換え受容体、任意でキメラ抗原受容体を含む、態様143の方法。
【0649】
145.試薬が、細胞組成物の細胞中で組換え受容体依存性活性を刺激または誘導することができる、態様144の方法。
【0650】
VI. 実施例
以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであって、本発明の範囲を限定するものと意図されない。
【0651】
実施例1:マススペクトロメトリーによるT細胞の表面タンパク質発現の分析
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞を含有するT細胞組成物を生成するための例示的な操作プロセスの前後に収集した細胞の表面タンパク質発現を、液体クロマトグラフィー-タンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)で分析した。免疫親和性に基づく濃縮によってヒト白血球アフェレーシス試料からCD4+ T細胞またはCD8+ T細胞が濃縮された初期ソースT細胞組成物を得て、クライオ凍結した。その後、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を融解し、抗CD3/抗CD28常磁性ビーズで活性化し、抗CD19 CARをコードするウイルスベクターで形質導入し、続いて、操作された細胞組成物の拡大増殖および凍結保存を行った。抗CD19 CARは、マウス抗体に由来する抗CD19 scFv、Ig由来スペーサー、ヒトCD28由来膜貫通ドメイン、ヒト4-1BB由来細胞内シグナル伝達ドメインおよびヒトCD3ゼータ由来シグナル伝達ドメインを含有した。
【0652】
初期ソース細胞組成物とCAR+操作細胞組成物の両方のT細胞試料の細胞表面タンパク質単離後に得られたペプチド試料に対して、LC-MS/MS分析を実施した。簡単に述べると、およそ15~150×106個の細胞を含有する凍結保存された初期ソース細胞組成物およびCAR+操作細胞組成物からのT細胞試料を融解および洗浄した。無傷細胞の表面上の第一級アミンを介して表面タンパク質を標識するために、細胞を、氷冷PBSをビオチンのバイアルに加えることによって調製されたスルホ-NHS-SS-ビオチンの溶液(Pierce;Cat. No. 89881)に再懸濁した。次いで、各々の再懸濁した細胞試料を25cm2の細胞培養フラスコに移し、ビオチン溶液の追加のアリコートを各試料に加えた。次いで、細胞培養フラスコを、シェーカープレート上(300rpm)、4℃で30分間インキュベートした。操作された細胞組成物試料について、マイルドな洗剤で細胞を溶解し、アガロースに基づく親和性試薬(例えば、Thermo Scientific(商標)NeutrAvidin(商標)Agarose)を使用して標識タンパク質を単離し、50mM DTTを含有するドデシル硫酸ナトリウム(SDS)試料緩衝液(62.5mM Tris・HCl、pH 6.8、1% SDS、10%グリセロール)で標識タンパク質を遊離させることによって、細胞表面タンパク質単離を行った。初期ソース細胞組成物試料について、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)試料緩衝液200μLで細胞表面タンパク質を溶出させた。
【0653】
次いで、初期ソース細胞組成物または操作された細胞組成物の試料毎に、10,000の公称分画分子量(NMWL)フィルターを使用した透析によって界面活性剤を除去処理すると共に、UA緩衝液(0.1M Tris-HCl中8M尿素、pH8.3)400μLへの緩衝液交換によってジスルフィド結合を還元し、続いて、50mMヨードアセトアミド100μLの添加によってシステイン上の遊離チオール基をアルキル化した。フィルターを50mM重炭酸アンモニウム/3M尿素100μLで洗浄し、続いて、遠心分離を数回行った後、試料を収集した。場合によって、上記の濾過手順を実施する前に試料をプールした。
【0654】
次いで、得られた試料を37℃で一晩のトリプシン消化に供した。インキュベーションに続いて、10%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えることによって各消化をクエンチした。
【0655】
次いで、初期ソース細胞組成物および操作された細胞組成物の試料を、必要に応じて(液体クロマトグラフィーを使用したペプチド存在量の初期評価に基づいて)、マススペクトロメトリー分析の前に濃縮した。場合によって、上記濃縮手順の前に試料をプールした。液体クロマトグラフに接続されたハイブリッド四重極オービトラップマススペクトロメーターを使用したタンデムマススペクトロメトリー法を介して各試料を分析した。データ依存型取得技術を使用してマススペクトロメトリーデータを取得した(20個の最も豊富なイオンを選択した)。マススペクトロメーターの設定は、以下を含んだ:MS1質量分解能120,000;MS1スキャン範囲325~2000m/z;MS1 AGCターゲット5e5;5ppmの精度インクルージョンリスト;MS2質量分解能30,000;MS2スキャン範囲200~2000m/z;単離幅4m/z;MS2 AGCターゲット1e5、およびフラグメンテーションエネルギー22(NCE)。
【0656】
上記の各LC-MS/MS分析から得られたデータセットを、ProteomeDiscover Software(ThermoScientific v2.1)を使用して、UNIPROTから得られたヒトプロテオームデータベースおよびGlobal Proteome Machineから得られたAdventitious Proteinsデータベースの共通リポジトリーを用いて分析した。検索アルゴリズムの設定は、以下を含んだ:トリプシン性ペプチド;最大未切断2;最小ペプチド長6;前駆体質量許容差10ppm;断片質量許容差0.02Da;メチオニンの酸化およびリシンのビオチン標識化のための動的修飾;システインのカルボキシメチル化のための静的修飾;デコイの使用、FDR 1%以下;および偽発見率(FDR)1%以下。
【0657】
5ppmの抽出イオンクロマトグラムおよびビジュアルMS2フィンガープリントを使用して、ペプチドを手動で検証した。
【0658】
図1Aは、初期ソース細胞組成物試料のLC-MS/MS分析からの全イオンクロマトグラム(TIC)(下半分)および対応する操作された細胞組成物試料のLC-MS/MS分析からのTIC(上半分)の例示的な画像である。図1Aに示すように、初期ソース細胞組成物と操作された細胞組成物との間の細胞表面タンパク質のペプチドイオンの差に対応するピークの差が観察された。上記のLC-MS/MS技術を使用して、ソース細胞組成物に特有であった397個のタンパク質および操作された細胞組成物に特有であった223個のタンパク質を含め、合計1406個の細胞表面タンパク質が同定された。
【0659】
これらのデータは、遺伝子操作プロセスの異なる段階で収集されたT細胞組成物の表面タンパク質発現プロファイルを識別するLC-MS/MS分析の能力と合致する。
【0660】
CARの成分の理論的トリプシン性ペプチド質量を使用して抗CD19 CARに関連するイオンを分離することによって抽出イオンクロマトグラム(XIC)を生成し(理論値から5ppmの許容差)、これらを初期ソースT細胞組成物と操作されたT細胞組成物の両方で比較した。図1Bは、初期ソース細胞組成物試料(下半分)および対応するCAR+操作細胞組成物試料(上半分)の例示的な合成XIC画像を描写する。CARの細胞外部分および細胞内部分に関連するペプチドピークを同定し、ここで、ピークP1~P19は細胞外領域を表す。CARを発現するT細胞を含んでいた操作された細胞組成物から得られたXICにおいて、CARを発現する細胞を含有しなかった初期ソース細胞と比較してピークの差が観察された(図1B)。初期ソース細胞から得られたXICにおいて抗CD19 CARに関連するいくつかのピークが観察され、これは、CARの成分がまた、内因性タンパク質の一部、例えば、CD3ゼータシグナル伝達ドメインとして発現されることと一致する。
【0661】
実施例2:マススペクトロメトリーによるCAR T細胞操作プロセスのための試薬の分析
場合によって、操作されたT細胞組成物を産生するためのプロセスにおいて使用される原料もしくは試薬の貯蔵もしくは取り扱い条件の変化または原料もしくは試薬の異なるロット(それ以外は同様の細胞操作プロセスにおける)が、最終の操作された組成物において、操作されたT細胞産物の変化したまたは変動した活性に関連するある特定のパラメーターと相関し得ることが観察されている。
【0662】
CAR+操作T細胞組成物を生成するためのプロセスにおいて使用される異なるロットの例示的な原料(ロット間およびその中の変動に起因してプロセスにおいて滴定が必要であった試薬として同定された)をLC-MS/MSによって分析して、ロット間の差の有無を評価した。原料は、3つの異なるタンパク質を含有することが知られているかその疑いがあった。試薬の試料は、供給業者の出荷基準を各々満たした3つの異なる製造ロットから採取された。タンパク質を試薬から単離し、実施例1に記載ものと同様のプロセスでLC-MS/MSによって分析した。
【0663】
タンパク質を逆相クロマトグラフィーによって分離した。図2に示すように、ロット間のタンパク質の相対量または性質における差と一致して、3つの異なるロット間で異なるプロファイルが観察された。しかしながら、LC分析単独では、数種のタンパク質の共溶出が実証された。共溶出されたタンパク質を識別するために、質量電荷比(m/z)を事前に選択して分析で検出した(図2、上左角)。図2の挿入図に示すように、異なる共溶出されたタンパク質は、別々に検出することができ、このことは、この方法が、量または性質(例えば、翻訳後修飾)が異なり得るタンパク質を含有する試薬ロット間の差を同定するために有用であることを実証している。
【0664】
3つの異なる滴定レベルの原試薬の試料を、操作されたT細胞組成物を産生するためのプロセスに最も影響を与える可能性のあるものとして疑われた2つのタンパク質についてさらに分析した。滴定された試料の各々における2つのタンパク質の各々の相対的割合を定量した。図3に示すように、マススペクトロメトリーによる試薬成分の分析は、試薬の第2のタンパク質(+第2のタンパク質の翻訳後修飾、PTM)の相対的割合が第3のタンパク質の相対的割合と逆相関していたことを示した。これらの結果は、異なる滴定レベルでのそれぞれの量の逆相関によって示されるように、CAR T細胞操作プロセスにおける第3のタンパク質と第2のタンパク質の提唱された組み合わせ効果と一致する。まとめると、これらの結果は、試薬のロット間変動および製造プロセスに対する潜在的影響の特定に役立つ、操作プロセスに対するタンパク質成分の生物学的関連性の知識と組み合わせたマススペクトロメトリーの活用と合致する。
【0665】
実施例3:細胞組成物の表面N結合型グリカンのマッピング
細胞組成物の細胞表面N結合型グリカンプロファイルをマッピングするために、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を含有する例示的な凍結保存されたT細胞組成物を個々に融解させて、37℃に加熱した細胞培養培地中で1:10希釈し、1~2.5×106個の細胞の試料を新鮮なチューブに移した。
【0666】
移した細胞試料を遠心分離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で洗浄し、続いて、およそ198μLのPBSで細胞懸濁液を再構成した。およそ2μLのPNGase F PRIME(N-Zyme Scientifics;Bulldog Bioから入手可能、カタログ番号NZPP050)を、無傷の全細胞を含有する細胞懸濁液に加え、続いて、穏やかに混合しながら37℃で30分間インキュベーションを行った。遊離した表面N-グリカンを得るために、細胞懸濁液を遠心分離し、上清を清潔なチューブに収集して、これを真空遠心分離ですぐさま蒸発乾固させた。
【0667】
N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)カルバマートタグ化基、キノロン蛍光体および塩基性第三級アミン(例えば、Glycoworks(商標)RapiFluor-MS(商標)標識)から構成される標識化試薬5μLを加えた。試料を混合し、室温でおよそ5分間インキュベートし、続いて、試料におよそ365μLのアセトニトリルを加えることによって標識をクエンチした。試料を混合し、遠心分離した。さらなる分析の前に、試料に対して固相抽出(SPE)を行って、N-グリカンをさらに清浄化した。N-グリカン試料を真空遠心分離機で蒸発乾固し、次いで、分析のために適切な希釈液に再懸濁した。
【0668】
相対定量化および同定のために、HILIC液体クロマトグラフィーを使用してグリカンを分離し、蛍光(Waters ACQUITY I-Class)(HILIC-FLR)およびタンデムマススペクトロメトリー(ポジティブエレクトロスプレーイオン化(ESI)、Q-Exactive(商標)HF(Thermo Scientific))、すなわち、HILIC-ESI-MS/MSによって検出した。
【0669】
図4Aに示すように、注釈付きHILIC-FLRクロマトグラムは、抗CD3/抗CD28活性化CD3+細胞の細胞表面N-グリカンマップが、複雑なグリカン型の混合物であったことを明らかにした。
【0670】
タンデムマススペクトロメトリー(MS/MS)のために、ESIによって粒子をイオン化し、マススペクトロメトリーの第1段階でその質量電荷比によって分離した。図4Bは、5ppmの質量許容差を使用して+3荷電状態にある例示的なA3S3F N-グリカンに関してマススペクトロメトリーの第1段階から作成された抽出イオンクロマトグラム(XIC)を描写する。同一の同位体分布を有するN-グリカンの複数のクロマトグラフピークが観察され、これは、グリカン構造の単糖単位間で連結の差が存在する可能性が高いことと一致する。第1の段階の後、グリカンはフラグメンテーションを受け、得られた断片を分離して、MS/MSの第2段階で測定した。正規化された衝突エネルギー(NCE)15で高エネルギー衝突解離(HCD)によってフラグメンテーションされた例示的なN-グリカンA3S4FのMS/MSフラグメンテーションを図4Cに示す。第1の段階の高分解能MSデータと組み合わせて、A3S4Fのフラグメンテーションは、n-アセチルノイラミン酸連結の存在を、標準的な末端ガラクトース残基で、ならびに同じアンテナのn-アセチルグルコサミン残基上の特有部位で確認した(図4C、箱)。これらの結果は、高分解能MSデータと組み合わされたMS/MSが、HILIC-FLRによる分離および検出後、特有のグリカン構造を含めグリカン構造を同定できることを実証する。
【0671】
実施例4:表面N結合型グリカンをマッピングすることによるグリコトランスフェラーゼの変化の同定
実施例3における記載と同様にして、第1および第2の細胞組成物の表面N結合型グリカンを単離および標識する。実施例3における記載と同様にして、相対定量化および同定のために、N-グリカンをHILIC液体クロマトグラフィーによって分離し、HILIC-ESI-MS/MSによる蛍光およびマススペクトロメトリーによって検出する。第1および第2の細胞組成物の得られたN-グリカンプロファイルを比較して、個々のN-グリカンの発現における差を同定する。特定のグリコトランスフェラーゼ遺伝子は、N-グリカン連結に関係しているので、結果は、第1および第2の組成物の試料から得られたゲノムデータ(例えば、RNA-seqまたはトランスポザーゼ網羅的オープンクロマチン領域解析(ATAC-seq)による)と相関する。相関は、表面N-グリカン発現における特定の変化に伴って起こるグリコトランスフェラーゼ遺伝子発現の変化を特定する。
【0672】
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例示するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されるものと意図されない。記述された組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書における記述および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実践されることができ、本開示の範囲内に含まれるものと意図される。
【0673】
配列表
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
【配列表】
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