(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】メチオニンニトリルからのメチオニンの無塩製造
(51)【国際特許分類】
C07C 319/20 20060101AFI20240617BHJP
C07C 323/57 20060101ALI20240617BHJP
B01J 23/10 20060101ALI20240617BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240617BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
C07C319/20
C07C323/57
B01J23/10 Z
B01J35/60 G
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021545395
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020052613
(87)【国際公開番号】W WO2020161074
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-31
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ビルツ
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア ボアクマン
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ガイスト
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヤーコプ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ケアファー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ロイス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ロスト
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021338(WO,A1)
【文献】特表2003-522815(JP,A)
【文献】特開平03-093753(JP,A)
【文献】特開平03-093754(JP,A)
【文献】国際公開第2018/148240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素Hfの酸化物と元素M[ここで、Mは、Ce、Si、Ti、またはYである]の少なくとも1つの酸化物とにより安定化されたZrO
2を60.0~99.5重量%含む粒状触媒の、メチオニンアミドからメチオニンへの加水分解反応への使用であって、前記粒状触媒の中央粒度x
50は、0.8~9.0m
mの範囲にある、使用。
【請求項2】
前記元素Mは、Si、Ti、または
Yであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記粒状触媒の粒度x
10が、0.5~8.0m
mの範囲にあり、粒状触媒の粒度x
90が、1.0~11.0m
mの範囲にあることを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記触媒は、前記元素Hf、Ce、Si、Ti、およびYの酸化物を0.1~40重量%含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記触媒は、0.5~3.0重量%のHfO
2、および0.1~40重量%のTiO
2および/または0.2~6重量%のSiO
2および/または3~10重量%のY
2O
3および/または5~25重量%のCeO
2を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記触媒は、30~250m
2/
gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記触媒は、0.20~0.50mL/
gの平均細孔容積を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記触媒は、20~200
nmの中央孔径を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記触媒は、三斜晶系または単斜晶系のZrO
2を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記触媒は、担体および/または結合剤材料としてさらなる不活性成
分を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記粒状触媒は、成形された形態で
存在することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
メチオニンの製造方法であって、メチオニンアミドを含む溶液または懸濁液および水を、請求項1から10までのいずれか1項で定義された特徴を有する触媒と接触させて、メチオニンを含む反応混合物を生成するステップを含む、方法。
【請求項13】
前記溶液または懸濁液を、70~200
℃の温度で前記触媒と接触させることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記溶液または懸濁液を、1~30重量
%のメチオニンアミドの開始濃度で使用することを特徴とする、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記溶液または懸濁液は、1つ以上のケトン化合物を、前記溶液または懸濁液中のメチオニンアミド濃度に対して0.1~2
moleqの濃度で含むことを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記溶液または懸濁液は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を、前記溶液または懸濁液中のメチオニンアミド濃度に対して0.01~0.5
moleqの濃度で含むことを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記溶液または懸濁液は、NH
3を、前記溶液または懸濁液中のメチオニンアミド濃度に対して0~10
moleqの濃度で含むことを特徴とする、請求項12から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
反応を、固定床型またはトリクルベッド型の反応器で前記触媒を用いて連続式で行うことを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
反応を、連続式で、0.0001~
10g(メチオニンアミド)/h/g(触媒)の重量空間速度(WHSV)で行うことを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
反応をバッチ式で行い、前記触媒を、メチオニンアミド1モルあたり0.01~5
moleqのZrO
2の量で使用することを特徴とする、請求項12から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
メチオニンの製造方法であって、
a.メチルメルカプトプロピオンアルデヒドをシアン化水素酸およびアンモニアと反応させるか、または2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブチロニトリルをアンモニアと反応させて、メチオニンニトリルを含む反応混合物を生成するステップと、
b.任意に、ステップaの反応混合物から残留アンモニアの全部または一部を分離するステップと、
c.ステップaまたはbで得られた反応混合物を、カルボニル触媒および塩基触媒および水の存在下で、またはCeO
2含有触媒および水の存在下で加水分解して、メチオニンアミドまたはメチオニンアミドとメチオニンとの混合物を含む溶液または懸濁液を生成するステップと、
d.任意に、ステップcの溶液または懸濁液から、残留アンモニアの全部もしくは一部、または残留アンモニアおよびカルボニル触媒を分離するステップと、
e.ステップcまたはdで得られた溶液または懸濁液および水を、請求項1から10までのいずれか1項で定義された特徴を有する触媒と接触させて、メチオニンを製造するステップと、
f.任意に、ステップeの溶液または懸濁液か
ら、残留アンモニアの全部もしくは一部、または残留アンモニアおよびカルボニル触媒を分離して、メチオニンと、若干未反応の可能性のあるメチオニンアミドとを含む反応液を得るステップと、
g.ステップfから得られたメチオニン含有反応液から結晶化を行い、任意に次いで再結晶化を行ってメチオニンを単離し、かつ母液を得るステップと、
h.任意に、ステップgの母液をステップeに再循環させて、未反応の可能性のあるメチオニンアミドの反応を完了するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アミノ酸は、動物および人間の栄養のためのタンパク質構成要素としてのその機能ゆえに、動物の栄養において中核をなす重要性を有する。したがって、飼料にはDL-メチオニンなどのアミノ酸が追加的に富化され、これらにより飼料の栄養価が高まる。
【0002】
DL-メチオニンは、食品と一緒に摂取しなければならない必須アミノ酸である。これは、飼料添加物として、家畜、特に家禽や豚の効率的かつ健康的で環境に優しい栄養摂取に寄与する。したがって、増加する世界人口に動物性タンパク質を持続的に供給することになった場合、これも重要な構成要素となる。したがって、大規模産業にも十分に適したDL-メチオニンの費用効果の高い合成方法は非常に重要である。
【0003】
従来技術:
工業規模では、メチオニンは、ストレッカー合成の変法であるブヘラ・ベルクス反応により化学的に生成される。出発物質である3-メチルメルカプトプロピオンアルデヒド(MMP、2-プロペナールおよびメチルメルカプタンから生成)、シアン化水素酸(シアン化水素)、アンモニア、および二酸化炭素が、5-(2-メチルメルカプトエチル)ヒダントイン(メチオニンヒダントイン)に転化される。メチオニンヒダントインの加水分解には、過酷な条件と、化学量論量の塩基、通常は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸カリウムとが必要である。周知の方法によれば、メチオニンは、硫酸での中和により加水分解物中のそのナトリウムまたはカリウム塩から放出され、硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムを含む母液からの沈殿物としてろ別することができる。副生成物である硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムは、再循環または他の場所への廃棄が必要である。
【0004】
周知のデグサ(Degussa)炭酸カリウムサイクルプロセスによれば、メチオニンは、加水分解物を二酸化炭素で処理することによってそのカリウム塩から最終的に放出され、それにより、炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムを含む母液からメチオニン沈殿物をろ別することができる(米国特許第5,770,769号明細書)。このメチオニン沈殿物は回収が可能ではあるが、大量の塩水のサイクルが必要である。さらに、メチオニンヒダントインの形成および加水分解の条件は、200℃を超える温度で過酷かつエネルギー集約的であるため、大工業規模で実施でき、かつこれらの欠点をほとんどまたはまったく有しない方法が依然として必要であった。
【0005】
様々な金属酸化物触媒を使用したメチオニンアミドからのメチオニンの製造は、すでにいくつかの特許出願において示されている。
【0006】
国際公開第2001060788号では、2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-シアノヒドリン、MMP-CN)およびアンモニアから2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(メチオニンニトリル;MMP-アミノニトリル;MMP-AN)を生成し、これをアセトンの存在下でアルカリ金属水酸化物により加水分解してメチオニンアミドを形成し、これをさらにチタン、特に二酸化チタンを含む触媒を用いて加水分解してアンモニウムメチオニネートを得る全体的なメチオニンプロセスが示されている。ここからアンモニアが放出および排出されて、最終生成物として固体メチオニンが得られる。最終ステップでの反応温度が100℃であるにもかかわらずターンオーバーは完全ではなく、該明細書では、反応におけるメチオニンに対する実際の選択率および収率について何ら結論を出すことができないため、メチオニンアミドの望ましくない残留物が最終生成物中に残る(表1、国際公開第2001060788号)。
【0007】
国際公開第2001060788号について記載されたものと類似の全体的なメチオニンプロセスが国際公開第2001060789号で示されており、その際、使用される二酸化チタン含有触媒の製造、およびメチオニンアミドからメチオニンを製造するための全体的なプロセスにおけるその使用も開示されている。ただし、ターンオーバーは98%であるものの、該明細書では、反応におけるメチオニンに対する実際の選択率および収率について何ら結論を出すことができない。
【0008】
さらに、国際公開第2001060788号について記載されたものと類似の全体的なメチオニンプロセスが国際公開第2001060790号で示されており、ここでは、メチオニンアミド段階からのアルカリ金属残分をメチオニンアミドの加水分解後にのみ分離して、酸性イオン交換樹脂によりメチオニン-アンモニウム/アルカリ金属塩混合物を形成するというさらなる変法が示されている。この場合もターンオーバーは98%であるものの、該明細書では、反応におけるメチオニンに対する実際の選択率および収率について何ら結論を出すことができない。
【0009】
米国特許第6417395号明細書には、上記の国際公開文献と同様の全体的なメチオニンプロセスが開示されている。しかし、メチオニンアミドからアンモニウムメチオニネートへの加水分解ステップは、実施例では、二酸化チタン、アンモニア、またはコリネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌の細菌株を用いて行われている。TiO2触媒を用いて150℃で、1.5時間の反応時間の後に、メチオニン収率はわずか72%である。
【0010】
米国特許第6545179号明細書にも全体的なメチオニンプロセスが開示されており、その際、メチオニンアミドからアンモニウムメチオニネートへの加水分解ステップは、実施例では二酸化チタン触媒を用いて行われている。追加の金属(Ti-W、Ti-Mo、Ti-Si-W、Ti-Nb-Mo、Ti-Zr、Ti-Al、Ti-Cr、Ti-Zn、およびTi-V)を含む触媒の使用可能性に言及されてはいるものの、この点に関しては、実験の指示も結果も何ら開示されていない。
【0011】
特開平03-093753号公報では、アミノ酸ニトリルをアミノ酸アミドまたはアミノ酸に加水分解するプロセスが示されている。対応するアミノ酸ニトリルを、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛の群からの0.01~0.5モル当量(moleq)の金属酸化物の存在下で、100~200℃の温度で、少なくとも1当量、好ましくは10当量の水により加水分解することで、メチオニンアミドが得られる。次の加水分解ステップを、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズおよび酸化チタン、酸化亜鉛の群からの金属酸化物の存在下で行うことで、メチオニンが得られる。酸化ジルコニウム-酸化チタン-酸化ニオブ触媒を用いた場合のメチオニン収率は、最高でも94%である(実施例1、特開平03-093753号公報)。しかしここでの欠点は、触媒の必要量が比較的多いことであり、すなわち、出発物質としてのアミノ酸アミド10gあたりの触媒粉末が100gであることである(実施例1、特開平03-093753号公報)。
【0012】
特開平03-093754号公報にも、アミノ酸ニトリルをアミノ酸アミドまたはアミノ酸に加水分解するためのプロセスが開示されている。対応するアミノ酸ニトリルが、酸化チタン-酸化ジルコニウム、酸化チタン-アルミナ、酸化チタン-酸化ニオブ、酸化チタン-酸化タングステン、酸化チタン-酸化スズ、酸化チタン-酸化亜鉛の群からの0.01~0.5moleqの金属酸化物の存在下で、50~220℃の温度で、少なくとも1当量、好ましくは10当量の水により加水分解される。アミノ酸ニトリルの加水分解は、酸化チタン-酸化ジルコニウム、酸化チタン-アルミナ、酸化チタン-酸化亜鉛の群からの0.01~0.5moleqの金属酸化物の存在下で行われる。しかし、メチオニンアミドからメチオニンへの加水分解の場合、メチオニン収率は、実施例5および1(特開平03-093754号公報)によれば、それぞれわずか93%(酸化チタン-酸化ジルコニウムを使用)および94%(酸化チタン-酸化ニオブを使用)であり、かつ触媒消費量が非常に多かった(触媒は、アミド1gあたり0.34~0.68g)。
【0013】
特開平03-093757号公報では、アミノ酸ニトリルをアミノ酸アミドまたはアミノ酸に加水分解するプロセスが示されている。対応するアミノ酸ニトリルが、0.01~0.5moleqのZrO2の存在下で、好ましくはさらにケトン、例えばアセトンの存在下で、50~220℃の温度で、少なくとも1当量、好ましくは10当量の水により加水分解される。しかし、触媒として市販の酸化ジルコニウムおよび追加のアセトンを使用した最良の場合のメチオニン収率は、理論値のわずか80%である。ここでのもう1つの欠点は、追加のアセトンの必要量が比較的多いことであり、すなわち、出発物質としてのアミノ酸アミド10gあたり、触媒粉末1gあたりのアセトンが5.8gであることである(実施例1、特開平03-093757号公報)。
【0014】
上記の刊行物によれば、これまで主に二酸化チタン系触媒が使用されてきた。論じられた刊行物で使用されているZrO2触媒は、著しく性能が劣っており、その結晶変態または構造特性の関係性に関する調査は行われていない。二酸化チタン触媒の場合、アナターゼ結晶変態を有するもののみがメチオニンアミドからメチオニンへの反応を触媒することも知られている。しかし、ルチル変態のTiO2は、触媒効果を示さない。
【0015】
最後に、欧州特許出願公開第3199519号明細書には、互いにセリウム含有酸化物触媒の存在下で、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルを水と接触させるステップを含む、メチオニンの製造方法が開示されている(請求項1)。セリウム含有触媒は、CeO2触媒またはCeO2-ZrO2混合酸化物触媒のいずれかであり、それぞれ微粉末の形態である。メチオニン収率は、中程度(60.9%、実施例1)ないし非常に良好(97.0%、実施例4、欧州特許出願公開第3199519号明細書)に達する。反応は、実施例によれば、60~100℃の温度、および約1~2時間の滞留時間で行われる。
【0016】
さらに、国際公開第2018/021338号には、ジルコニウム化合物と、少なくとも1つのさらなる金属、例えばハフニウムまたはセリウムの存在下で対応するα-アミノ酸アミドを水と反応させることによる、α-アミノ酸の製造方法が開示されている(請求項1)。該明細書に具体的に開示されているのは、Hf、Ce、YまたはTiを含有するジルコニウム含有複合金属酸化物触媒を用いたメチオニンアミドからメチオニンへの加水分解である(実施例4、5、および比較例2、3)。しかし、複合金属酸化物触媒のZrO2含有量も、粒度も、触媒のモルホロジーに関する他の特徴も開示されていない。さらに、連続法に関して、該文献には、連続撹拌槽型反応器(CSTR)および栓流型反応器(PFR)とも称される連続槽型および管状反応器が使用可能であることしか開示されていない([0089])。しかし、どちらのタイプもスラリー反応器であり、その複雑な操作様式ゆえに、メチオニンの製造方法のような大規模の工業プロセスには適していない。これらの例はまた、連続的な製造で使用できる手順を提供していない。なぜならば、それらはいずれも、例えばスターラーが導入された鋼製圧力容器内でバッチ式にて行われるためである(実施例1)。
【0017】
本発明の目的:
したがって、本発明の根底にある目的は、古典的なメチオニンヒダントイン鹸化法ほど過酷でなくかつ塩の蓄積がより少ない条件を可能とする、単純化された化学的なDL-メチオニン製造方法を提供することであった。この文脈での目的は、金属酸化物触媒作用によるDL-メチオニンアミドからのDL-メチオニンの無塩での製造方法であって、これを、DL-メチオニンニトリルからのDL-メチオニンアミドの中性合成方法と組み合わせることで、無塩での全体的なDL-メチオニン製造方法を形成することができる方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、同時に大規模な工業的メチオニン製造プロセスにも使用できる高活性触媒を提供することであった。
【0018】
解決法:
この基本的な部分的な課題は、元素Hfの酸化物と元素M[ここで、Mは、Ce、Si、Ti、またはYである]の少なくとも1つの酸化物とにより安定化されたZrO2を60.0~99.5重量%含む粒状触媒の、メチオニンアミドからメチオニンへの加水分解反応への使用であって、粒状触媒の中央粒度x50は、0.8~9.0mm、好ましくは1.0~7.0mmの範囲にある、使用によって解決された。
【0019】
本明細書において、元素Hfの酸化物と元素Mの少なくとも1つの酸化物とにより安定化されたZrO2とは、それが実質的に、ZrO2と、元素Hfの酸化物と、元素Mの少なくとも1つの酸化物との物理的混合物ではなく、ZrO2と、元素Hfの酸化物、例えばHfO2と、元素Mの少なくとも1つの酸化物とを特許請求の範囲および本明細書に示される所与のパーセンテージで含む、ジルコニウムとハフニウムと少なくとも元素Mとの混合酸化物であることを意味する。
【0020】
この触媒の好ましい使用は、粒状触媒の粒度x10が0.5~8.0mm、好ましくは0.8~6.5mmの範囲にあり、粒状触媒の粒度x90が1.0~11.0mm、好ましくは1.3~8.0mmの範囲にあることを特徴とする。
【0021】
そのような比較的粗い粒状触媒材料の使用は、連続製造様式に非常に適している。なぜならば、触媒材料を、対応する反応器、例えば反応管に容易に充填することができ、その際、粒子間の通路開口がかなり広いことによって、反応液体の高いスループットが、しかも例えば微粉末触媒と比較してはるかに低い系圧力で可能となるためであり、これは大きな利点である。
【0022】
論じられた粒状触媒の粒度x10、x50およびx90は、ISO 13322-1:2014に準拠して光学分析により測定し、またISO 9276に準拠して分析した。値x10、x50およびx90は、それぞれ、累積アンダーサイズ分布の10体積%、50体積%、または90体積%に相当する粒度を表す。これは、例えば、粒状触媒の10体積%がx10粒度よりも小さく、粒状触媒の10体積%がx90粒度よりも大きいことを意味する。したがって、x50粒度は中央粒度に相当し、つまり、粒子の50体積%はこの直径よりも小さく、粒子の50体積%はこの直径よりも大きい。
【0023】
予期せぬことに、まだ刊行物に明記されていない本発明による触媒は、例13~19に示されるように、メチオニンアミドからメチオニンへの加水分解を優れた様式で触媒できることが見出された(メチオニン収率86~100%)。対照的に、例20および21に示されるように、粒状ZrO2触媒であって、金属酸化物La2O3またはWO3により安定化され、該粒状触媒の中央粒度x50がそれぞれ3.06または2.98mmであるものは、メチオニンアミドからメチオニンへの加水分解反応をさほど十分には促進しない(メチオニン収率80%および65%)。また比較例Aは、81.3重量%のZrO2、1.7重量%のHfO2、および17重量%のCeO2を含み、かつ粒度x50が0.8mmを大幅に下回って0.6μmであるZrO2触媒では、メチオニンアミドからメチオニンへの加水分解において83%の収率しか得られないことを示している。
対照的に、ZrO2(81重量%)、HfO2(1.7重量%)およびCeO2(17.3重量%)という実質的に同一の含分を有するものの、粒度x50が3.06mmとはるかに大きく、かつBET表面積が105m2/gと顕著により大きいZrO2触媒を用いて実施された例13では、メチオニンアミド転化率が100%であり、かつメチオニン収率が100%である。
【0024】
HfO2(2重量%)のみを含み、他の金属酸化物を含まない粒状ZrO2触媒(比較例C)も非常に低い加水分解活性を示すため、たとえ他の特徴が請求項1の請求範囲内にあっても(粒度x50 4.95mm)、本発明によりメチオニンアミドからメチオニンへの加水分解に使用することはできない。メチオニン収率は、わずか16%であった。
【0025】
本発明によるHfO2およびY2O3により安定化されたZrO2触媒(例4~8)と、従来技術によるTiO2触媒(例9~11)とのさらなる比較から、本発明により使用される触媒は、以前に使用されていた十分に検討されたTiO2含有触媒よりも優れていることが明らかである。
【0026】
本発明により使用される触媒は、欧州特許出願公開第3026038号明細書におけるジルコニウムおよびイットリウムを含有する混合酸化物の製造方法の説明に従って(特に段落[0017]、例1~7に従って)、出発物質としての酸化ジルコニウムから製造することができ、該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。HfおよびZrは自然に結合しているため、市販のジルコニウム源は、通常は約0.5~3重量%のHfを含む。本発明により使用される触媒は、Hfを含む。このHfは安定剤でもあるため、該触媒は、Hfの酸化物により、さらには元素M[ここで、Mは、Ce、Si、Ti、またはYである]の少なくとも1つの酸化物により安定化されている。このことは、上記で説明したように、異なる金属酸化物の単なる物理的混合ではなく、混合酸化物相が形成されていることを示している。本発明により好ましく使用される触媒は、元素Mが、Si、Ti、またはYであり、より好ましくは、SiまたはYであることを特徴とする。
【0027】
本発明による方法で使用される触媒は、その製造によって本発明による技術的特徴を有する粒状のZrO2系触媒が生成されることを条件として、その製造に関してはいかなる制限も受けない。
【0028】
必要な出発物質であるメチオニンアミドは、触媒としてのケトンおよび塩基の存在下での、またはアンモニアの存在下での金属酸化物触媒作用によるメチオニンニトリルの加水分解などの既知の方法によって製造することができる。後者の経路は、本発明によるメチオニンアミドの加水分解に中性触媒を使用することで、通常の前駆体である3-メチルメルカプトプロピオンアルデヒド(MMP)からメチオニンへの完全に無塩の経路が提供されるという追加の利点を有する。
【0029】
これに関連して、好ましくは、元素Hf、Ce、Si、Ti、およびYの酸化物を0.1~40重量%含む触媒が使用されるため、活性触媒の主成分は、ZrO2である。
【0030】
しかし、より好ましくは、0.5~3重量%のHfO2、さらに0.1~40重量%のTiO2および/または0.2~6重量%のSiO2および/または3~10重量%のY2O3および/または5~25重量%のCeO2を含む触媒が使用される。
【0031】
最も好ましくは、1.5~2.8重量%のHfO2、さらに0.1~40重量%のTiO2および/または0.2~6重量%のSiO2および/または3~8重量%のY2O3および/または10~20重量%のCeO2を含む触媒が使用される。
【0032】
同様に好ましくは、30~250m2/g、好ましくは50~160m2/g、特に好ましくは55~145m2/gのBET表面積を有する触媒が使用される。これはまた、満足のいく触媒性能に寄与する。
【0033】
さらに好ましくは、0.20~0.50mL/g、特に好ましくは0.24~0.49mL/gの平均細孔容積を有する触媒が使用される。
【0034】
また、20~200nm、特に好ましくは23~160nmの中央孔径を有する触媒の使用が好ましい。
【0035】
さらに好ましいのは、三斜晶系または単斜晶系のZrO2を含む触媒の使用である。これは、例13~19と、例22および例24~26との比較から導き出すことができる。
【0036】
担体および/または結合剤材料として不活性成分、好ましくはAl2O3をさらに含む触媒を使用することも有利である。このようにして、触媒活性を適切に変更できるとともに、同時にジルコニウムを節約することができる。
【0037】
本発明により使用される粒状触媒は、典型的には、成形された形態で、好ましくは顆粒、押出物、ペレットまたは圧縮物として存在する。そのような粗い材料が粉末触媒よりもさらに優れた性能を発揮したことは非常に驚くべきことであった。これは、例13~19と、例22~27、AおよびE(粒度x50が0.5μm~0.4mmの粉末触媒を使用)との比較から導き出すことができる。これもまた重要な利点である。なぜならば、主に成形された形態の触媒は、大規模な工業製造プラントでの使用に技術的に実現可能であるためである。
【0038】
本発明のさらなる態様は、メチオニンアミドを含む溶液または懸濁液および水を、上記で定められた特徴を有する触媒と接触させて、メチオニンを含む反応混合物を生成するステップを含むメチオニンの製造方法において、メチオニンは、主にアンモニウムメチオニネートの形態で存在する、方法である。
【0039】
メチオニンアミドの加水分解によるこのメチオニンの製造方法は、好ましくは、メチオニンアミドを含む前述の溶液または懸濁液を、70~200℃、より好ましくは80~180℃、特に好ましくは90~160℃、非常に特に好ましくは100~150℃の温度で、水および前述の触媒と接触させることによって行われる。これにより、高いターンオーバーが保証される。
【0040】
技術的観点から、メチオニンアミドを含む前述の溶液または懸濁液および水に適用される開始濃度の最良の範囲は、1~30重量%、好ましくは2~24重量%、特に好ましくは3~20重量%のメチオニンアミドの開始濃度である。
【0041】
先行するメチオニンニトリルからメチオニンアミドへの加水分解反応ステップの間に、ほぼ一定のパーセンテージのメチオニンアミドがすでに反応し続けてメチオニンが生成されることから、メチオニンアミドを含む前述の溶液または懸濁液および水は、典型的には、すでに0~25重量%、好ましくは0~20重量%、特に好ましくは0~15重量%のメチオニンを含む。
【0042】
先行するメチオニンニトリルからメチオニンアミドへの加水分解反応ステップが、触媒としてのケトンおよび塩基を用いて行われる場合、前述の溶液または懸濁液は、典型的には、前述の溶液または懸濁液中のメチオニンアミド濃度(1moleq)に対して、1つ以上のケトン化合物を0.1~2moleq、好ましくは0.5~1.5moleqの濃度で含むとともに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を0.01~0.5moleq、好ましくは0.03~0.2moleq、特に好ましくは0.05~0.1moleqの濃度で含む。
【0043】
前駆体であるメチオニンニトリルの形成は、NH3の1~10moleq過剰で行われるため、この過剰分のうちの特定の部分は、それが事前にどれだけ留去されたかに応じて、本発明による方法の間にもなおも存在し得る。したがって、前述の溶液または懸濁液は、典型的には、NH3を、前述の溶液または懸濁液中のメチオニンアミド濃度に対して0~10moleq、好ましくは0~7moleqの濃度で含む。このことは欠点ではない。なぜならば、NH3は、メチオニンニトリルからメチオニンアミドへの加水分解反応を促進することができ、かつメチオニンアミドの加水分解の遊離NH3とともに加水分解物から容易に除去することができるためである。
【0044】
粒状触媒の中央粒度x50が0.8~9.0mm、好ましくは1.0~7.0mmの範囲にあるため、固定床型またはトリクルベッド型の反応器で触媒を用いて連続式で反応を行えることが特に有利である。このようにして、大規模な工業的応用が可能になる。
【0045】
連続反応法で使用される触媒の主要な性能パラメータを有益に比較するためには、典型的には、流量、触媒床上の滞留時間、または重量空間速度(WHSV)を利用することができる。この場合、WHSV速度が最も正確な指標となる。なぜならば、WHSVの算出では、使用した触媒の量に応じて流量が設定されるためである。したがって、WHSVは、1時間あたりの、使用した触媒の重量のg数(=m)あたりのメチオニンアミドの供給量(m(メチオニンアミド)/h/m(触媒))によって求められる。方法が連続式で行われる場合、典型的には、0.0001~10、好ましくは0.001~5、より好ましくは0.01~1、最も好ましくは0.025~0.1g(メチオニンアミド)/h/g(触媒)のWHSVが採用される。
【0046】
方法がバッチ式で行われる場合、触媒は、メチオニンアミド1モルあたり0.01~5moleq、好ましくは0.05~2moleq、特に好ましくは0.15~0.6moleqのZrO2の量で使用される。
【0047】
本発明のさらなる態様は、完全かつ化学的なメチオニン製造方法であって、
a.メチルメルカプトプロピオンアルデヒドをシアン化水素酸およびアンモニアと反応させるか、または2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルをアンモニアと反応させて、メチオニンニトリルを含む反応混合物を生成するステップと、
b.任意に、ステップaの反応混合物から残留アンモニアの全部または一部を分離するステップと、
c.ステップaまたはbで得られた反応混合物を、カルボニル触媒および塩基触媒および水の存在下で、またはCeO2含有触媒および水の存在下で加水分解して、メチオニンアミドまたはメチオニンアミドとメチオニンとの混合物を含む溶液または懸濁液を生成するステップと、
d.任意に、ステップcの溶液または懸濁液から、残留アンモニアの全部もしくは一部、または残留アンモニアおよびカルボニル触媒を分離するステップと、
e.ステップcまたはdで得られた溶液または懸濁液および水を、上記で定義された特徴を有する触媒と接触させて、メチオニンを製造するステップと、
f.任意に、ステップeの溶液または懸濁液から、好ましくは蒸留によって、残留アンモニアの全部もしくは一部、または残留アンモニアおよびカルボニル触媒を分離して、メチオニンと、若干未反応の可能性のあるメチオニンアミドとを含む反応液を得るステップと、
g.ステップfから得られたメチオニン含有反応液から結晶化を行い、任意に次いで再結晶化を行ってメチオニンを単離し、かつ母液を得るステップと、
h.任意に、ステップgの母液をステップeに再循環させて、未反応の可能性のあるメチオニンアミドの反応を完了するステップと
を含む方法である。
【0048】
【0049】
ステップcにおける特に好ましい方法は、スキーム1に例示されているように、ステップeによるメチオニンアミドの加水分解においてZrO2を含む中性触媒を使用することに加えて、中性触媒であるCeO2を用いてメチオニンニトリルをメチオニンアミドに加水分解することであるが、これはこの場合、塩の蓄積を完全に回避することができるためである。
【0050】
加水分解ステップcおよびeの双方で中性触媒を単独で使用することにより、このように有利にも不要な塩物質の形成が回避され、その結果、全体的な無塩でのメチオニン製造方法が提供され、これは、上記で説明したように大きな利点である。
【0051】
メチオニンアミドの加水分解では、アンモニアの放出下に、アミド基が対応するカルボン酸基に転化される。したがって、1当量のメチオニンアミドの加水分解は、常に1当量のアンモニアの放出を伴う。結果として、最終加水分解生成物であるメチオニンは、上記のようなメチオニンアミドを含む出発溶液または懸濁液中の追加のアンモニアの量にかかわらず、常にアンモニアを含む。しかし、メチオニンを含む生成物混合物中にアンモニアが存在すると、必然的にメチオニンのアンモニウム塩が形成される。したがって、アンモニア不含のメチオニンを得ることは不可能である。生成物混合物は、主生成物としてアンモニウムメチオニネートを含むため、中性のメチオニン、すなわちアンモニア不含のメチオニンを得るためには、そのようにして得られたメチオニン含有生成物を結晶化に供する必要がある。
【0052】
一時的な塩様の中間生成物として得られた第一級アンモニウムメチオニネートを、次いで、メチオニンと揮発性アンモニアとに容易に熱分解することができる。メチオニンは、生成後に結晶体として容易に単離される。揮発性アンモニアも容易に分離されて、例えばステップaのメチオニンニトリル合成段階へ返送される。この結晶化ステップgは、国際公開第2015/039935号からすでに知られており、特に、第12頁、第3行目~第13頁、第3行目、
図1、および例1~4に開示されており、これは参照により本明細書に含まれる。
【0053】
ステップcのケトンおよび塩基触媒による加水分解の変法であって、例えば0.1moleqのKOHなど、明らかに化学量論的でない量の塩基を用いても機能する方法が選択された場合、少なくとも低い塩含有量での方法が引き続き利用可能であり、これは、なおも従来技術に対する相当の改善を表す。
【0054】
メチオニンアミドが完全にメチオニンに転化されていない場合、メチオニンよりもはるかに水溶性の高い未転化のメチオニンアミドを、上記の方法の結晶化ステップg内でメチオニンから容易に分離することができる。メチオニンへの転化を最大化するために、メチオニンアミドを含む母液を、上記の方法のステップeまたはステップeによるもう1つの接触ステップに好都合に再循環させることができる。これは、例えば連続的な例35のような実施形態に該当しており、その際、93%というメチオニン収率は非常に高く、選択率100%は実質的に副生成物が形成されないことを示しているが、約7%のメチオニンアミドは未転化のままであり、これをこのようにしてメチオニンに完全に転化させることが可能である。
【0055】
したがって、本発明は、利用可能な出発物質MMP、シアン化水素酸およびアンモニアに基づいて、メチオニンヒダントインの加水分解による従来の標準的なプロセスよりも低い温度で、高収率で、かつより簡便な無塩プロセスでメチオニンを生成する工業的なメチオニン製造方法を提供する。
【0056】
実施例:
分析方法
HPLCクロマトグラフィー:
2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-CN)、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-AN)、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミド(メチオニンアミド)、3-(メチルチオ)-1-プロパノン(MMP)、およびメチオニン(Met)のクロマトグラフィー分析を、JASCO社またはAgilent社のHPLCシステムを用いて、RP-18カラム(250×4.6mm;5μm)を使用して行い、次いで210nmでUV検出を行った。溶離液として、3.3gのH3PO4、6.8gのCH3CN、および89.9gのH2Oからなる混合物を1mL/minの流量で使用した。それぞれのサンプル溶液(25mLのH2O中の50mgのサンプル)10μLを溶離液に注入して分析した。キャリブレーションは、有機化学合成で一般的に行われるように、分析物の適切な標準ストック溶液を注入し、その後、ピーク面積を外部標準と比較することで事前に行った。
【0057】
BET表面積
BET表面積は、固体の表面に窒素を物理的に吸着させ、BET(Brunauer、Emmett、およびTeller)法に従って表面の単分子層に対応する吸着ガスの量を算出することによって決定した。使用するサンプル(0.2~0.9g)を、測定前に真空下にて150℃で20分間脱気した。その後、液体窒素の温度(77K)で測定を行った。吸着されたガスの量を、TriStar 3000 Miromeritics機器を用いた3点静的容積測定により測定した。この方法は、総じてDIN ISO 9277-5(2003)に記載されており、それに従って適用した。
【0058】
粉末の粒度分布
粉末の粒度分布を、ISO 13320:2009に準拠したレーザー回折法により測定し、またISO 9276に準拠して、それぞれ累積アンダーサイズ分布の10体積%、50体積%、または90体積%に相当する粒度を表すそのx10、x50およびx90粒度に関して分析した。1スパチュラ分のサンプル材料を10mLの水+0.5g/Lのピロリン酸四ナトリウムに加え、1分間超音波処理し、ユニバーサル・リキッド・モジュール(ULM)を備えたLS 13320レーザー回折分光計(Beckman-Coulter)で分析した。
【0059】
粒状触媒の粒度分布
粒状触媒の粒度分布を、ISO 13322-1:2014に準拠してCamsizer(Retsch Technology GmbH)のCCDカメラを使用して一連の触媒粒子(サンプル体積200mL)の光学分析によって測定し、またISO 9276に準拠して、それぞれ累積アンダーサイズ分布の10体積%、50体積%、または90体積%に相当する粒度を表すそのx10、x50およびx90粒度に関して分析した。
【0060】
X線粉末回折
X線粉末回折(XRPD)は、固体サンプルの結晶相を調べるための非破壊分析技術である。結晶化度の測定を含むXRPD測定を、以下のように行った。以下のパラメータを用いて、PANalytical社製Cubix3 PharmaX線粉末回折計で、0.5~2.0gの材料を分析した:
X線管:LFF-Cu X線管、CuKα、λ=0.1542nm
発生器の設定:40mA、40KV
検出器:X’Celerator
回転:あり/1Rev./s
2Θ範囲:5°-100°
ステップ(°2Θ)0.017°
ステップあたりの時間:40秒
【0061】
結果を、PANalytical HighScore Plusソフトウェアの最新版および結晶参照相を伴うICDDデータベースのアップデート版を使用して評価した。
【0062】
X線蛍光分析
蛍光X線分析(XRF)は、固体および液体サンプルの元素組成を調べるための非破壊分析技術である。XRFでは、FからUまでの元素を検出および定量化できる。サンプル調製のため、少量の材料をアルミニウムカップ内のboreox(結合添加剤)の厚い層の上に均一に分散させ、プレスして平らな粉末ペレットにした。PANalytical社製波長分散型XRF分光計Axiosを使用して、UniQuant半定量アプリケーションを用いてサンプルを分析した。Software UniQuant V5を使用して半定量的評価を行った。このソフトウェアツールは、基本パラメータアルゴリズムに基づいており、このアプローチでは、適切なキャリブレーションサンプルのセットを測定し、測定された蛍光線の強度を、算出された強度と比較する(算出は、確立された物理モデルを用いて行われる)。
【0063】
細孔分析
細孔容積および中央孔径を、DIN 66134(Barret、Joyner、HalendaによるN2収着)に準拠して決定した。
【0064】
使用される触媒の例示的な製造(本発明の一部ではない)
本発明により使用される触媒は、その製造に使用される手順によって、本発明により使用されるものと同様の特徴を有する触媒が生成されることを条件として、その製造に関してはいかなる制限も受けない。例えば、本発明による例13~19、表3で使用される触媒を、欧州特許出願公開第3026038号明細書に従って製造し、以下の分析パラメータに関して分析した(結果を表3に示す):x10、x50およびx90粒度、Brunauer、Emmett、およびTeller(BET)表面積、X線粉末回折(XRPD)、X線蛍光分析(XRF、元素組成)、細孔容積、および中央孔径。
【0065】
例えば、例4~8、12、16、28~37で使用した、4重量%のY2O3により安定化され、かつ2重量%のHfO2を含むZrO2触媒は、欧州特許出願公開第3026038号明細書の例1に従って製造した。
【0066】
このようにして、1215gのMEL Chemicals社製水酸化ジルコニウム粒子(1.6重量%のHfO2を含む)XZO 1501/09の細孔容積を測定したところ、850mLであった。136gのY(NO3)3×6H2Oを263gのH2Oに溶解させて、340mLの溶液を得た。これは、総細孔容積の40%に相当する。380gのH2Oを加えて、総容積680mLの溶液を得た。これは、総細孔容積の80%に相当する。水酸化ジルコニウム材料を、アイリッヒインテンシブミキサーR型内で、中程度の撹拌条件下(215rpm)にて、この水酸化ジルコニウムに10分間かけて硝酸イットリウム溶液を噴霧することにより含浸させた。次いで、この湿った粉末を、撹拌条件下(3000rpm)で1時間かけて顆粒に変化させた。この材料を、メッシュ2を備えたメッシュふるい機に通してふるいわけし、0.8~5mmの範囲の粒度を有する顆粒を得た。その後、これらの顆粒を120℃で2時間乾燥し、次に450℃で2時間か焼した。これらの顆粒を、メッシュ3を備えたメッシュふるい機に通して再度ふるいわけし、0.8~2.5mmの範囲の粒度を有する顆粒を得た。混合酸化物は、4重量%のY2O3を含んでいた。得られた粒子を、以下の分析パラメータに関して分析した(結果を括弧内に示す):それらのx10(1.27mm)、x50(1.82mm)、およびx90(2.43mm)粒度、Brunauer、Emmett、およびTeller(BET)表面積(125m2/g)を、X線粉末回折(XRPD、三斜晶系結晶相)、X線蛍光分析(XRF、元素組成 94重量%のZrO2、2重量%のHfO2、4重量%のY2O3)、細孔容積(0.4mL/g)、および中央孔径(30nm)。これらも例16、表3に示されている。
【0067】
例1(本発明の一部ではない):2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルから出発する2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルの合成
10.1gの2-ヒドロキシ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-CN;水中で90重量%、69.3mmol、1moleq)を、26.0gのNH3(水中で32重量%、7moleq、48.8mmol)とガラス反応器内で混合し、次いで密封した。25重量%のMMP-CNを含む淡ベージュ色の混濁したエマルションを撹拌し、水浴を用いて30分間かけて50℃に加熱した。得られた淡黄色の溶液をHPLCクロマトグラフィーにより分析したところ、MMP-CNの転化率は100%であり、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリル(MMP-AN;67.2mmol)および2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミド(メチオニンアミド;1.2mmol)の選択率が98.8%であることが確認された。MMP-CNとMMP-ANとの反応により形成されたイミノジニトリルの副生成物である痕跡量の2,2’-ビス-(2-メチルメルカプトエチル)イミノジアセトニトリル(DN1、0.1%未満)と、MMP-CNからMMPおよびHCNへの逆反応により形成された少量の3-(メチルチオ)-1-プロパノン(MMP、1%未満)がわずかに観察された。
【0068】
【0069】
例2(本発明の一部ではない):得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルから2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドとメチオニンとを含む混合物への、CeO2触媒を用いた直接転化
8.75gのMMP-AN(67.2mol)と、0.18gのメチオニンアミド(1.2mmol)と、7.14gのNH3(419mmol、6moleq)と、19.9gの水とを含む、例1に従って得られた反応溶液に、さらに36.2gの水(MMP-AN濃度12重量%)と、欧州特許第1506940号明細書、例1に従って製造された1.0g(5.8mmol、0.09moleq)のCeO2触媒とを加えた。ガラス反応器を再び密閉し、反応物を撹拌しながら、予熱した水浴を用いて30分間かけて60℃に加熱した。次いで、反応溶液を室温に急冷し、HPLCクロマトグラフィーによって分析したところ、MMP-ANの転化率は100%であり、2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミド(メチオニンアミド;47.0mmol)の選択率は70%であり、メチオニン(Met;20.2mmol)の選択率は30%であることが確認された。
【0070】
例3(本発明の一部ではない):得られた2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンニトリルから2-アミノ-4-(メチルチオ)ブタンアミドとメチオニンとの混合物への、カルボニル化合物およびアルカリ金属水酸化物を触媒として用いた直接転化
8.75gのMMP-AN(67.2mol)と、0.18gのメチオニンアミド(1.2mmol)と、7.14gのNH3(419mmol、6moleq)と、19.9gの水とを含む、例1に従って得られた反応溶液を、35℃に冷却した。7gの水、4.0gのアセトン(68.8mmol、1moleq)、および2.0gの10重量%水性KOH(3.4mmol、0.05moleq)を加えた(MMP-AN濃度18重量%)。ガラス反応器を再び密閉し、反応物を撹拌しながら、水浴を用いて35℃で90分間維持した。次いで、反応溶液を室温に急冷し、アンモニアおよびアセトンを真空下、30℃で除去した。得られた生成物をHPLCクロマトグラフィーによって分析したところ、MMP-ANの転化率は100%であり、メチオニンアミド(65.4mmol)およびMet(2.0mmol)の選択率は98.6%であることが確認された。
【0071】
例4~8:様々な条件下でのオートクレーブ内でのZrO2触媒を用いたメチオニンアミドからメチオニンへの転化
例2または3で得られたメチオニンアミド含有溶液の揮発性成分、特にアセトンおよびアンモニアを除去し、得られた混合物に水および/または32重量%のアンモニア水溶液を表1に記載されているように加えて、以下の組成に調整した:メチオニンアミド(11.2%)、KOH(0~0.1moleq)、NH3(0.5~3.5moleq)。この反応液を、鋼製オートクレーブに移した。次に、金属酸化物触媒(上記の例示的な触媒調製手順に従って製造された、4重量%のY2O3により安定化され、かつ2重量%のHfO2を含む0.18moleqのZrO2触媒)を、反応溶液の撹拌によって粒子が破壊されるのを防ぐために、触媒バスケット内に粒状触媒(例えばペレット)の形で導入した。オートクレーブを閉鎖し、撹拌下で1時間以内に表1または2に示す所望の温度(110~170℃)に加熱した。反応の進行を、15分後にHPLC分析でモニターし、最終的に90分後に室温まで急冷することで終了させ、その後、反応混合物をHPLC分析した。
【0072】
【0073】
例9~11(本発明の一部ではない、比較のため):様々な条件下でのオートクレーブ内でのTiO2触媒を用いたメチオニンアミドからメチオニンへの転化
反応を、例4~8について記載したとおりに行ったが、ただし、0.18moleqのZrO2触媒に代えて、Evonik社(ドイツ)製の0.27moleqのTiO2「Aerolyst 7711」を使用した。
【0074】
【0075】
表1の結果と表2の結果との比較から、出発物質の転化率、ならびにメチオニンの選択率および収率に関して、4重量%のY2O3により安定化され、かつ2重量%のHfO2を含むZrO2触媒が、TiO2触媒よりも著しく優れていることが明らかになった。
【0076】
例12:4重量%のY2O3により安定化され、かつ2重量%のHfO2を含むZrO2触媒を用いたメチオニンアミドからメチオニンへの転化
例2または3で得られたメチオニンアミド含有溶液の揮発性成分、特にアセトンおよび/またはアンモニアを除去し、得られた混合物に水を加えて、以下の組成に調整した:水(140g)、メチオニンアミド(18.5g、0.125mol)、KOH(0.33g、0.0059mol、0.05moleq)、メチオニン(0.7g、0.005mol、0.4moleq)。32重量%のアンモニア水溶液(15.0g、0.282mol、2moleq)を加えた。この反応液を、鋼製オートクレーブに移した。上記の例示的な触媒調製手順に従って製造された、4重量%のY2O3(3.0g、0.024mmol、0.20moleq)により安定化され、かつ2重量%のHfO2を含む粒状ZrO2触媒を、触媒バスケット内の触媒ペレットの形でオートクレーブに導入した。オートクレーブを密閉し、ガス撹拌装置を用いて連続的に撹拌し、140℃に加熱した。反応の進行を、15分ごとにHPLC分析でモニターし、最終的に90分後に終了させた。この反応液に水を加えて急冷し、総量が660gとなるように希釈した。この溶液をHPLCで分析したところ、メチオニンアミドの転化率は100%であり、メチオニン含有量は2.86%であることが判明した。これは、メチオニンの総含量18.9g(0.127mol、収率98.1%、選択率98.1%)に相当する。対照の目的で、この溶液の揮発性成分をロータリーエバポレーターで除去した。得られたオフホワイト色の粉末を秤量し、HPLCで分析したところ、上記の転化率、収率、および選択率の測定値は、それぞれ100%、98.1%、および98.1%であることが確認された。
【0077】
例13~19:異なる粒状ZrO2触媒を用いたメチオニンアミドからメチオニンへの転化
例2または3で得られたメチオニンアミド含有溶液の揮発性成分、特にアセトンおよび/またはアンモニアを除去し、得られた混合物のメチオニンアミド濃度を12.4%に調整した。50gの反応溶液(6.2g、41.9mmolのメチオニンアミド)を鋼製オートクレーブに移し、表3による粒状ZrO2触媒(3.0g、0.024mmol、0.57moleq)を触媒バスケットに入れてオートクレーブに導入した。オートクレーブを閉鎖し、連続的に撹拌し、60分以内に120℃に加熱した。30分後、サンプルを採取し、メチオニンアミド転化率、ならびにメチオニンの収率および選択率に関してHPLC分析によって分析した。
【0078】
例20~27およびA~E(本発明の一部ではない、比較のため):異なるZrO2触媒を用いたメチオニンアミドからメチオニンへの転化
反応を、例13~19に記載されているとおりに行ったが、ただし、表4aおよび4bに挙げられた触媒を代わりに使用した。粉末触媒は事前にふるいわけせず、市販のもの(例えば、Sigma Aldrich)をそのまま使用した。
【0079】
表3の結果と表4aの結果との比較から、出発物質の転化率およびメチオニンの収率に関して、CeO2、Y2O3、SiO2、もしくはTiO2、またはTiO2およびSiO2により安定化され、かつそれぞれHfO2を含む粒状ZrO2触媒(メチオニン収率86~100%、例13~19)が、所与の条件下で、HfO2、およびLa2O3またはWO3により安定化された粒状ZrO2触媒(メチオニン収率65~82%、例20、21)よりも著しく優れていることが明らかになった。
【0080】
表3の結果と表4aの結果との比較からさらに、Y2O3、SiO2、もしくはTiO2、またはTiO2およびSiO2により安定化され、かつそれぞれがHfO2によっても安定化されているZrO2を含む粒状触媒(メチオニン収率86~100%、例13~19)が、所与の条件下で、Y2O3、SiO2、もしくはTiO2によっても安定化され、かつそれぞれがHfO2も含む粉末触媒(メチオニン収率18~23%、例22~24)、またはHfO2を含み、かつCaOもしくはSc2O3により安定化された粉末触媒(メチオニン収率18~25%、例25~27)よりも、予想外に著しく優れていることが明らかになった。
【0081】
さらに、表3の本発明により使用される三斜晶系または単斜晶系の結晶相を有する粒状触媒は、立方晶系、斜方晶系、または菱面体晶系のいずれかの結晶相を有する表4aおよび4bの粉末触媒(例22~26、AおよびE)よりも優れていることが判明した。
【0082】
表3の本発明により使用される、55~145m2/gのBET表面積を有する粒状触媒は、<1~11m2/gのBET表面積を有する表4aおよび4bの粉末触媒(例22~27、AおよびE)よりも優れていることが判明した。
【0083】
表3の本発明により使用される、0.24~0.49mL/gの細孔容積および23~160nmの中央孔径を有する粒状触媒は、0~0.38mL/gの細孔容積および0~128nmの中央孔径を有する表4aおよび4bの粉末触媒(例22~27、AおよびE)よりも優れていることが判明した。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
例28~34:様々な条件下での連続反応モードを用いた、ZrO2触媒によるメチオニンアミドからメチオニンへの転化
表5に従って、内径25mmの固定床型反応器に、上記の例示的な触媒調製手順に従って製造された、2重量%のHfO2と4重量%のY2O3とによって安定化された量のZrO2触媒を充填した。この触媒床を、触媒床の上下でそれぞれ不活性グラスウールおよび50gの不活性ガラス顆粒(直径2mm)の充填物で固定して、触媒接触時に、予熱された反応溶液を確実に所望の温度とした。この固定床型反応器は二重壁構造であり、反応器の外側マントルを通じてポンプで送られる油浴によって加熱した。反応器内の温度を触媒床内の熱電対によってモニタリングすることで、表5による所望の温度を保証した。反応器内の圧力を、4bara(T=160℃の場合は8bara)に固定した。
【0088】
例2または3で得られたメチオニンアミド含有溶液の揮発性成分、特にアセトンおよび/またはアンモニアを除去し、得られた混合物に水および/または32重量%のアンモニア水溶液を表5に記載されているように加えて、以下の組成に調整した。溶液を、表5に記載のWHSV速度で底部から固定床型反応器に直接供給した。
【0089】
反応溶液を固定床型反応器に通した後、室温に冷却し、HPLCクロマトグラフィーによって定期的に分析した。定常状態に達した後(約24~48時間後、メチオニンアミドの転化、ならびにMetの収率および選択率に関して、さらに24時間、48時間、および72時間後にさらに3回のHPLC分析を行った。3つの分析はいずれも、HPLC分析の許容誤差内でそれぞれ同一のケースであるため、表5に挙げられているのはそのうちの1つのみである。
【0090】
【0091】
例35:24日間にわたる連続反応モードを使用した触媒寿命および失活挙動の評価
内径25mmの固定床型反応器に、上記の例示的な触媒調製手順に従って製造された、4重量%のY2O3によって安定化され、かつ2重量%のHfO2を含む90gのZrO2触媒を充填した。この触媒床を、触媒床の上下でそれぞれ不活性グラスウールおよび50gの不活性ガラス顆粒(直径2mm)の充填物で固定して、触媒接触時に、予熱された反応溶液を確実に所望の温度とした。この固定床型反応器は二重壁構造であり、反応器の外側マントルを通じてポンプで送られる油浴によって加熱した。反応器内の温度を触媒床内の熱電対によってモニタリングすることで、所望の温度である140℃を保証した。反応器内の圧力を、4baraに固定した。例2または3で得られたメチオニンアミド含有溶液の揮発性成分、特にアセトンおよび/またはアンモニアを除去し、得られた混合物に水を加えて、メチオニンアミド濃度を3.0重量%に調整した。溶液を、90mL/hの流量で底部から固定床型反応器に直接供給したところ、滞留時間は35分であり、重量空間速度(WHSV)は0.03g(メチオニンアミド)/h/g(触媒)であった。この溶液を、例28、表5に報告されているように、触媒性能が変化することなく24日間にわたって固定床型反応器に供給した(Met収率93%、メチオニンアミド転化率93%、Met選択率100%)。
【0092】
この例は、連続反応モードで使用されている触媒が、少なくとも24日以内に失活しないことを示している。93%のメチオニン収率は非常に高く、100%の選択率は、副生成物が実質的に形成されていないことを示している。
【0093】
例36 連続反応モードにおける例2で得られた反応溶液の直接転化
固定床型反応器を、例35に記載したZrO2触媒を用いて準備したが、ただし、上記の例示的な触媒調製手順に従って製造された、4重量%のY2O3によって安定化され、かつ2重量%のHfO2を含むZrO2触媒を、90gではなく30gのみ用いた。7.0gのメチオニンアミド(47mmol)、3.0gのMet(20mmol)、7.47gのNH3(439mmol、6moleq)、および56.0gの水を含む例2で得られた溶液(メチオニンアミド濃度10重量%;Met濃度4重量%)を水で希釈して、メチオニンアミド濃度を5重量%とし、かつMet濃度を2重量%とし、140℃で15mL/hの流量で底部から固定床型反応器に直接供給したところ、滞留時間は70分であり、重量空間速度(WHSV)は0.025g(メチオニンアミド)/h/g(触媒)であった。
【0094】
72時間の連続運転後、生成物流をHPLC分析により分析したところ、当初はMet濃度が高かったためにメチオニンアミド転化率は79%であり、Met収率は74%であり、かつMet選択率は94%であることが判明した。
【0095】
例37 連続反応モードにおける例2と同様の反応で得られた反応溶液の直接転化
固定床型反応器を、例36に記載したZrO2触媒を用いて準備した。例2によるもう1つの反応において、3.0gのメチオニンアミド(20mmol)、7.0gのMet(47mmol)、7.47gのNH3(439mmol、6moleq)、および56.0gの水を含む反応溶液(メチオニンアミド濃度4重量%;Met濃度10重量%)を水で希釈して、メチオニンアミド濃度を2重量%とし、かつMet濃度を5重量%とし、140℃で15mL/hの流量で底部から固定床型反応器に直接供給したところ、滞留時間は70分であり、重量空間速度(WHSV)は0.01g(メチオニンアミド)/h/g(触媒)であった。
【0096】
72時間の連続運転後、生成物流をHPLC分析により分析したところ、当初はMet濃度が高かったためにメチオニンアミド転化率は65%であり、Met収率は62%であり、かつMet選択率は96%であることが判明した。