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特許7504900特にマイクロ波撮像システム用の広帯域アンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】特にマイクロ波撮像システム用の広帯域アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/27 20060101AFI20240617BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20240617BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20240617BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20240617BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20240617BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01Q9/27
H01Q1/52
H01Q23/00
H01Q1/24 Z
G01N22/00 K
H01Q1/50
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021549458
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2020054262
(87)【国際公開番号】W WO2020169619
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】1901784
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517131396
【氏名又は名称】マネスキ、アレッサンドロ
【氏名又は名称原語表記】MANNESCHI,Alessandro
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マネスキ、アレッサンドロ
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08390529(US,B1)
【文献】国際公開第2006/051947(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056544(US,A1)
【文献】特表2002-530982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358675(US,A1)
【文献】実開昭55-130404(JP,U)
【文献】国際公開第2018/147929(WO,A2)
【文献】米国特許第05451973(US,A)
【文献】特表2020-521393(JP,A)
【文献】特表2020-504811(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088884(WO,A1)
【文献】特開2006-245291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/27
H01Q 1/52
H01Q 23/00
H01Q 1/24
G01N 22/00
H01Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板(10)に組み込まれたアンテナ構造であって、
誘電率が同じで厚さが異なる第1および第2の誘電体層(52、56)であって、各々が第1の面(51、55)および第2の面(53、57)を有する、第1および第2の誘電体層(52、56)と、
前記第1の誘電体層(52)の前記第1の面(51)上の平衡スパイラル放射素子(60)と、
前記スパイラル放射素子(60)と同じインピーダンスを有する平衡2線式線路(70)を介した前記平衡アンテナの電源と、を備え、
前記アンテナ構造は、
前記平衡2線式線路(70)が、前記平衡スパイラルアンテナ(60)を、前記第2の層(56)の第2の面(57)に配置された一対の平衡マイクロストリップ伝送線路(80)に相互接続し、各々のマイクロストリップ伝送線路(80)が、前記2線式伝送線路(70)のインピーダンスの半分に等しいインピーダンスを有するように適合されており、
前記マイクロストリップ線路(80)と整列して、前記第2の層(56)の第1の面(55)および前記第1の層(52)の第2の面(53)に配置された接地面(85)であって、前記第2の誘電体層(56)の厚さと、前記平衡2線式線路(70)の線間の距離との関数として、前記マイクロストリップ伝送線路(80)の前記伝送インピーダンスを決定するように構成されている、接地面(85)をさらに備えていることを特徴とする、アンテナ構造。
【請求項2】
前記第1の層(52)および前記第2の層(56)の誘電率は2以上4以下である、請求項1に記載のアンテナ構造。
【請求項3】
前記スパイラル放射素子(60)は、垂直金属接続部(92)で構成される壁(90)によって囲まれている、請求項1または2のいずれか一項に記載のアンテナ構造。
【請求項4】
前記接続部(92)間のピッチは、前記スパイラル放射素子(60)の最小作動波長の1/4未満である、請求項3に記載のアンテナ構造。
【請求項5】
前記壁(90)の平均内径(Doν)は、次式:
(D+0.005λmax)≦Doν≦(D+0.25λmax
により、前記スパイラル放射素子(60)の最大直径(D)の関数として定義され、式中、
oνは前記壁(90)の前記平均内径を表し、
は前記スパイラル放射素子(60)の前記最大外径を表す
請求項3または4のいずれか一項に記載のアンテナ構造。
【請求項6】
前記マイクロストリップ伝送線路(80)とその前記平衡2線式線路(70)への接続部との周囲における前記第2の誘電体層(56)の第2の面(57)全体(前記マイクロストリップ線路(80)の周囲の表面と、前記平衡2線式線路(70)への接続部を除く)が、無線周波数吸収材料(59)の層で覆われている、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ構造。
【請求項7】
前記第1の層の厚さは最大動作波長の少なくとも1/8に等しい、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ構造。
【請求項8】
前記第1の層の厚さは最大動作波長の半分以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナ構造。
【請求項9】
前記スパイラル放射素子の最大直径(D)は最大動作波長(λmax)の0.75倍から1.5倍の間、すなわち
0.75λmax≦D≦1.5λmax
であり、式中、
は前記放射素子(60)の前記最大外径を表し、
λmaxは前記最大動作波長を表す
請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ構造。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナ構造と、
前記マイクロストリップ伝送線路(80)に直接接続された高周波部品(20)と、
を備えるプリント回路基板(10)。
【請求項11】
前記プリント回路基板(10)は、マイクロストリップ伝送線路(80)と前記高周波部品(20)との間に整合部品を有していない、請求項10に記載のプリント回路基板(10)。
【請求項12】
前記高周波部品(20)ならびにその平衡入力および出力は所定のインピーダンスを有し、
前記スパイラル放射素子(60)および前記平衡2線式線路(70)のインピーダンス(Zant)は、前記高周波部品(20)の前記平衡入力および出力のインピーダンスにほぼ等しく、
各々の前記マイクロストリップ伝送線路(80)は、前記所定のインピーダンスの半分に実質的に等しいインピーダンスを有する、
請求項10または11のいずれか一項に記載のプリント回路基板(10)。
【請求項13】
前記所定のインピーダンスは実質的に100Ωに等しい、請求項12に記載のプリント回路基板(10)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのプリント回路基板を含むマイクロ波撮像システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の応用分野は、マイクロ波撮像システム用の送受信アンテナアレイの設計のための構成要素として使用できる、好ましくは15GHzから50GHzの周波数範囲にわたって動作する広帯域平面放射構造である。
【背景技術】
【0002】
50年代初頭にオハイオ州立大学(米国)の教授を務め、1954年から1957年にかけてイリノイ大学の教授を務めたビクター・ラムジー(Victor Rumsey)は、相補的アンテナ類、つまり、インピーダンスが一定で、すべての周波数で自由空間インピーダンスの半分に等しいものに強い関心を示した。
【0003】
自己相補的アンテナの特徴は、その金属部分が非金属部分と合同である、つまり、平面または空間での堅い動きによって、第2のアンテナを第1のアンテナに重ね合わせることができるということである。
【0004】
多くの自己相補的な形状を設計することができる。ラムジーは、これらの構造を長年研究した後、アンテナの形状が角度のみで指定されている場合、インピーダンスおよび放射特性が周波数に依存しないことを確立した。この法則は今日、ラムジーの原理として知られている。
【0005】
ラムジーの原理は、1958年に周波数に依存しない特性を有する最初のスパイラルアンテナを製造したイリノイ大学のジョンダイソン(John Dyson)によって実験的に適用された。
【0006】
2アームアルキメデススパイラルとして知られる一種の相補的アンテナは、米国海軍のアーサーマーストン(Arthur Marston)とアンリコールマン(Henri Coleman)によって完成され、彼らはそれに指向性を備え、1958年と1959年にそれぞれ関連ソリューションの特許を取得した。
【0007】
より最近では、スパイラルアンテナを製造するための多くの方法論が提案され、特許が取得されている。例えば、米国特許第5313216号明細書および米国特許第6137453号明細書である。
【0008】
特に、米国特許第8390529号明細書は、第1の層の第1の面にスパイラルアンテナが配置され、第1の層の第2の面(これは、第2の層の第1の面にも対応する)に接地面が配置される多層プリント回路基板構造を示している。この接地面は、スパイラルアンテナの放射を単方向にするための従来のソリューションのプリント回路への組み込みを表している。接地面は、第2の層の第2の面にも配置される。この面は、アンテナの電源システムを接続するための接地面、例えば、同軸ケーブルのシールド導電性編組として使用される。
【0009】
このソリューションは、プリント回路基板に組み込まれるという利点があるとしても、特に送信アンテナと受信アンテナとの間のインピーダンス整合および送信に関して、最適化された広帯域放射特性を得ることができない。この制限は、第1の層の厚さが層自体を構成する材料の波長の4分の1の倍数に相当する周波数での共振によって引き起こされる。
【0010】
図1に追加されたグラフは、米国特許第8390529号明細書に準拠したアンテナの周波数応答(パラメータS21)を示している。共振と応答の均一性の欠如とによって引き起こされる問題が見られる。
【0011】
米国特許第8390529号明細書に示されている構造の第2の問題は、アンテナの電源を接続するために使用される接地面であるため、第2の層の第2の面を使用して、伝送線路を実現し、高周波回路を組み立てることができないことである。
【0012】
米国特許第8390529号明細書に示されている構造の第3の問題は、同特許の図2に示されているように、電磁力の一部が第1の層の誘電体材料を通過する可能性によって引き起こされる、隣接するアンテナ間の結合である。したがって、このソリューションはアンテナアレイの構築には適していない。
【0013】
米国特許第6335710号明細書は、80から1500の間の誘電率を有し得る強誘電体層と誘電体層との間に配置されたスパイラルアンテナを連続的に含むアンテナ構造を記載している。しかしながら、そのようなアンテナは、それが狭い周波数帯域を有する調整可能なアンテナである限り、マイクロ波撮像システムでの使用を考慮して、広帯域平面放射構造で使用することはできない。具体的には、このアンテナのQ値は非常に高く、強誘電体層で反射された波を制御することができる。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、既知のアンテナよりも優れた特性を有するアンテナを提案することにより、先行技術を完成させることである。
【0015】
そうするために、本発明は、添付の独立請求項に従って、アンテナ構造およびプリント回路基板を提案する。従属請求項には実施形態が記載されている。
【0016】
本発明は、誘電率が同じで厚さが異なる(第1の層の場合はha-最大動作波長の少なくとも1/8-第2の層の場合はhTL)2つの誘電体層と、第1の誘電体層の第1の面上の平衡スパイラル放射素子と、平衡アンテナと同じインピーダンスを有する平衡2線式線路を介した平衡アンテナの電源と、を備えたプリント回路基板に組み込まれたアンテナ構造からなり、平衡2線式線路は、平衡型スパイラルアンテナを第2の層の第2の面に配置された1対のマイクロストリップ伝送線路に相互接続し、各々のマイクロストリップ線路が、2線式伝送線路のインピーダンスの半分に等しいインピーダンスを有するように整合されており、そして、平衡マイクロストリップ線路と整列して、第1の層の第2の面に相当する第2の層の第1の面に、第2の誘電体層の厚さおよびマイクロストリップ間の距離の関数として、平衡マイクロストリップ線路の伝送インピーダンスを決定する接地面が配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の特徴、目的および利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】米国特許第8390529号明細書に準拠したアンテナの周波数応答(パラメータS21)を示す。
図2】本発明によるアンテナの周波数応答(パラメータS21)を示す。
図3】共通のプリント回路基板上に設置された、高周波部品に関連する本発明によるアンテナの設置例を示す。
図4図3の変形を示し、より正確には、共有プリント回路基板上に設置された、それぞれの高周波部品に関連する、本発明による2つの隣接するアンテナの設置例を示す。
図5】第1の層の第1の面上にある、本発明による平衡スパイラルアンテナを示す。
図6図6は、本発明によるアンテナの第1の層の第2の面(第2の層の第1の面に対応する)上の地面の図を示す。
図7】アンテナを高周波チップに接続し、チップを相互に接続するマイクロストリップ伝送線路を示す。
図8】本発明によるアンテナの斜視図を示す。
図9】本発明によるアンテナの斜視図を示す。
図10】本発明によるアンテナの斜視図を示す。
図11】本発明によるアンテナの斜視図を示す。
図12】本発明によるアンテナの平面図を示す。
図13】本発明によるアンテナの平面図を示す。
図14】本発明によるアンテナの断面図を示す。
図15】本発明によるアンテナの平面図を示す。
図16】本発明によるアンテナの平面図を示す。
図17】本発明によるアンテナの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図には、プリント回路基板10に組み込まれた、本発明によるアンテナ50が見られる。
【0020】
アンテナ50は、2つの誘電体層52、56を備えている。各誘電体層52、56は、第1の面51、55、すなわち上面と、第1の面51、55の反対側にある第2の面53、57、すなわち下面とを有している。第1の層52の第2の面53は、第2の層56の第1の面55に面して配置される。
【0021】
2つの誘電体層52、56は、同じ誘電率を有するが、異なる厚さを有する。第1の層52の厚さは、基準haを支える。これは、最大動作波長の少なくとも1/8に相当する。このようにして、第1の誘電体層52によって形成される厚さは共振せず、アンテナ50は広帯域周波数で動作することができる。
【0022】
一実施形態では、アンテナ構造の全体的な寸法を制限するために、第1の層52の厚さhaは、最大動作波長の半分以下である。これは下記式を与え、λmaxは最大動作波長を表す。
【0023】
例えば、第1の誘電体層52の厚さhaは、最大動作波長の4分の1(1/4λmax)に等しい。
【0024】
第2の層56の厚さは、基準hTLを支える。
【0025】
第1の層52および第2の層56は、任意の適切な誘電体材料、特にプリント回路基板を製造するために使用することができる任意の誘電体材料で作ることができる。それらの誘電率εrも低く、アンテナ構造が放射し、エネルギーが第1の層52に閉じ込められたままにならないことを保証する。例えば、第1および第2の層52、56の誘電体材料は、2以上4以下の誘電率εrを有することができる。
【0026】
アンテナ50はさらに、第1の誘電体層52の第1の面51上の平衡スパイラル放射素子60と、平衡放射素子50と同じインピーダンスを有する平衡2線式線路70を介した平衡アンテナ50の電源とを備えている。
【0027】
一実施形態では、放射素子60は、2つの対称アーム61、62を備えている。アーム61および62は、それらが電源に接続されているアンテナ50の中心からその周囲に向かって徐々に発散する。本発明は、アンテナの各アームの形状またはアームの数のいずれかに関して、添付の図に示されている特定の実施形態に限定されない。
【0028】
平衡2線式線路70は、平衡スパイラル放射素子50を、第2の層56の第2の面57上に配置された一対のマイクロストリップ伝送線路80に相互接続する。各マイクロストリップ線路80は、2線式伝送線路70のインピーダンスの半分に等しいインピーダンスを有するように整合されている。平衡マイクロストリップ線路80に合わせて、第1の層52の第2の面53に対応する第2の層56の第1の面55上に、第2の誘電体層56の厚さhTLおよびマイクロストリップ間の距離gTLの関数として、平衡型マイクロストリップ線路80の伝送インピーダンスを決定する接地面85が配置されている。
【0029】
一実施形態では、第2の層56の厚さhTLは、第1の層52の厚さhaよりも厳密に小さい。実際、上で指定したように、アンテナ構造の放射を可能にするために、第1の層の厚さhaは少なくともλmax/8に等しい。さらに、第2の層の厚さhTLは、マイクロストリップ伝送線路80の寸法、特にそれらの厚さによって決定される。ただし、妥当な厚さのマイクロストリップ伝送線路が好ましい限り、厚さhTLは小さいままであり、いずれにせよ、第1の層の厚さhaよりも小さい。
【0030】
さらに、例えば図9および図11に見られるように、平衡2線式線路は、接地面85に接続されていない。より正確には、接地面85は、平衡2線式線路70の線の近くに、接地面85が前記線路から距離を置いて延びるように、その直径が線路70の各線路の直径よりも大きい実質的に円形の開口部を有している。
【0031】
一実施形態では、電源に接続されるように構成され、接地面85に実質的に平行に延びるマイクロストリップ線路80の接続部分は、各線路80が、平衡2線式線路70の関連する線路と整列するように、平衡2線式線路70の線路(実質的に垂直に、そして接地面85からの距離で延在する)の近くでわずかに発散する。したがって、マイクロストリップ線路80の接続部分のこの構成は、マイクロストリップ線路80と平衡2線式線路70との間のインピーダンスの穏やかな整合を可能にし、電力伝達を改善し、電力反射を排除する。
【0032】
一実施形態では、スパイラル放射素子60のアーム61および62の電源点間のスパイラル放射素子60のインピーダンスZantは、実質的に100Ω(最も近くて20%)に等しくなるように構成される。さらに、平衡2線式線路70は、その線路間で、スパイラル放射素子60のインピーダンスZantに実質的に等しい、すなわち約100Ω(最も近くて20%)のインピーダンスを有する。さらに、各マイクロストリップ伝送線路80のインピーダンスは、線路80間のインピーダンスが約100Ω(最も近くて20%)に等しくなるように、各線路が接地に対して約50Ωに等しいインピーダンスを有するように選択される。この構成により、部品20とマイクロストリップ伝送線路80との間にバラン(平衡-不平衡)素子などの中間整合部品を追加することを必要とせずに、マイクロストリップ線路80と同じ層上(すなわち、第2の層56の第2の面57上)に高周波部品20(入力と出力の平衡インピーダンスが、ほとんどの場合、約100Ωに等しい)を直接組み立てることができる。この直接接続は、マッチング回路やバランを含む外部線路を追加することを必要とせずにアンテナ構造に直接組み立てられた高周波部品を示す図7に特に見られる。バランは非常にかさばり、高価な部品であるため、この取り外しには、アンテナ構造の全体的な寸法とコストを大幅に削減できるという利点がある。
【0033】
スパイラル放射素子50は、マイクロ波場を封じ込めることができる効果的な遮蔽を得るために、接続部92間のピッチsvが最小作動波長よりも1/4小さい垂直金属接続部92からなる壁90によって囲まれている。
【0034】
発散アーム61、62を備えたアンテナ50の場合、壁90は実質的に円形であり得る。
【0035】
スパイラル放射素子60は電気双極子を形成するので、アーム61、62の曲線長は、好ましくは、線路61、62の外端で電流がゼロになるように、最大動作波長λmaxの半分に実質的に等しい。したがって、壁90は、スパイラル放射素子60の最大直径Doが最大波長の0.5から1.5倍の間であるように寸法決定される:
0.75λmax≦D≦1.5λmax
【0036】
さらに、出願人は、スパイラル放射素子のインピーダンスに対する壁90の影響を制限しながら、マイクロ波場の放射領域を制限するために、壁の平均内径Dovが以下の方程式に従うことを経験的に(実験的に)特定した。
(D+0.005λmax)≦Doν≦(D+0.25λmax
【0037】
一実施形態では、第2の誘電体層56の第2の面57全体(マイクロストリップ伝送線路80の周囲の表面と、平衡2線式線路70への接続部を除く)が無線周波数吸収材料の層59で覆われ、共振現象を発生させることなくアンテナの放射図を単方向にする。一実施形態では、層59の吸収性材料は、広範囲のミリ波を吸収する材料および/または高損失エラストマーマイクロ波を吸収する材料を含み得る。この層90は、隣接するアンテナを切り離すことを可能にし、したがって、同じアンテナ間の電力伝達を最小限に保つ。
【0038】
アンテナの設計パラメータは次のとおりである。
0.75λmax≦D≦1.5λmax

(D+0.005λmax)≦Doν≦(D+0.25λmax


【0039】
ここで、Doは、放射素子の外径、つまり最大直径を示す。
oνは、壁90の平均内径を示す。
antは、スパイラル放射素子60のインピーダンスを示す。
εeffは、スパイラル放射素子60の実効誘電率を示す。
εは、第1の層52の誘電率を示す。
【0040】
例えば、誘電率εが3に等しい第1の層52を有するアンテナ構造の場合、約135Ωに等しいスパイラル放射素子60のインピーダンスが得られる。
【0041】
本発明によるこの構造によるアンテナ構造には、多くの利点がある。
- 動作周波数範囲全体にわたる最適なインピーダンス整合特性。
- 周波数応答は、動作範囲全体にわたって均一で一定である(図2に示すグラフを参照)。
- 隣接するアンテナ間の強力な分離
- 高周波部品20が取り付けられているのと同じプリント回路基板に組み込むのに適しており、生産の経済性が大幅に向上する(図7)。
- 本発明の別の有利な特徴によれば、第1の層の厚さは、最大動作波長の半分未満である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17