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特許7504907層厚を決定するための装置および前記装置の操作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】層厚を決定するための装置および前記装置の操作方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20240617BHJP
   G01B 15/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
G01B15/02 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021556552
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020062848
(87)【国際公開番号】W WO2020239391
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】19176509.8
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007036
【氏名又は名称】ヘルムート・フィッシャー・ゲーエムベーハー・インスティテュート・フューア・エレクトロニク・ウント・メステクニク
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メストル、リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】アンクラム、ラルス-クリスティアン
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-181164(JP,A)
【文献】特開2018-159606(JP,A)
【文献】特開2013-096853(JP,A)
【文献】特開2016-095243(JP,A)
【文献】特開2016-122008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 15/00-15/08
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(10)上に配置された複数の層(11、12、13)の層厚(t1、t2、t3)を決定する装置(100、100a、 100b)であって、
前記複数の層(11、12、13)にTHz信号(TS)を放射するように構成されたTHz送信機(110)と、前記複数の層(11、12、13)の少なくとも1つの層(11、12、13)によって反射された前記THz信号(TS)の反射部分(TSR)を受信するように構成されたTHz受信機(120)と、を備え、
前記装置(100、100a、100b)は、前記THz信号(TS)の反射部分(TSR)に基づいて前記複数の層(11、12、13)のうちの少なくとも1つの層厚(t1、t2、t3)を決定する(210)ように構成され、
前記装置(100、100a、100b)は、さらに、前記装置(100、100a、100b)と前記物体(10)との間の距離(d)を特徴付ける少なくとも1つのパラメータ(P1、P2)を決定する(200)ための距離測定装置(130)を備え、
前記距離測定装置(130)は、少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)を備え、
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)は、前記装置(100、100a、100b)の光軸(OA)に対して配置されているとともに、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)が備える少なくとも1つの光源(1320)から放射され、且つ前記物体(10)の表面領域(10a’)によって反射された光学測定電磁波(MR、MR1、MR2)の拡散反射を選択的に検出し、それによって、第1の三角測量経路を画定し、且つb)少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)が備える少なくとも1つの光源(1320)から放射され、前記物体(10)の表面領域(10a’)によって反射された光学測定電磁波(MR、MR1、MR2)の直接反射を検出し、それによって、第2の三角測量経路を画定するように構成され、
前記装置(100、100a、100b)は、aa)前記第1の三角測量経路、bb)前記第2の三角測量経路、またはcc)前記第1の三角測量経路と前記第2の三角測量経路との両方を選択的に用いるように構成されている
装置(100、100a、100b)。
【請求項2】
前記距離測定装置(130)は、2つ以上の光学三角測量センサ(132a、132b)を備える、請求項1に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項3】
THz放射(TR)は、0.3THzおよび100THzの範囲内の少なくとも1つの周波数成分を含む、請求項1または2に記載の機器(100、100a、100b)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132a、132b)は、前記物体(10)の表面領域(10a’)を光学測定電磁波(MR)で照明するための1つの光源(1320)と、前記表面領域(10a’)によって反射された前記光学測定電磁波(MR)のそれぞれの反射部分(RMR)を受信するための1つの光検出器(1321)と、を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132c)は、前記物体(10)の表面領域(10a’)を光学測定電磁波(MR)で照明するための1つの光源(1320)を含み、且つ前記表面領域(10a’)によって反射された前記光学測定電磁波(MR)のそれぞれの反射部分(RMR1、RMR2)を受信するための少なくとも2つの光検出器(1321a、1321b)を含む、ことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132d)は、前記物体(10)の表面領域(10a’)を第1の光学測定電磁波(MR1)で照明するための第1の光源(1320a)と、前記物体(10)の前記表面領域(10a’)を第2の光学測定電磁波(MR2)で照明するための第2の光源(1320b)とを含み、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132d)は、前記表面領域(10a’)によって反射された前記第1の光学測定電磁波(MR1)および前記第2の光学測定電磁波(MR2)の反射部分(RMR)を受信するための少なくとも1つの光検出器(1321)をさらに含む、請求項1~5の何れか1項に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項7】
前記光学測定電磁波(MR)は、レーザを含む、請求項4または5に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項8】
前記第1の光学測定電磁波(MR1)および前記第2の光学測定電磁波(MR2)は、レーザを含む、請求項6に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項9】
前記装置(100、100a、100b)は、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路の品質測度(QM)を決定し(220)、前記品質測度(QM)に応じて前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のうちの1つを選択する(222)ように構成され、ここで、前記品質測度(QM)は、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のそれぞれまたは両方に関連する複数の距離測定値の分散および/またはノイズである、請求項1~8の何れか1項に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項10】
前記装置(100、100a、100b)は、レーザ光源(1002)、ビームスプリッタ(1004)、および光学遅延ステージ(1006)を備え、
前記THz送信機(110)は、THz源(112)を備え、前記THz受信機(120)は、THz検出器(122)を備え、
前記レーザ光源(1002)は、前記ビームスプリッタ(1004)にレーザ信号(s0)を供給するように構成され、
前記ビームスプリッタ(1004)は、a)前記レーザ信号(s0)を第1の信号(s1)と第2の信号(s2)とに分割し、b)前記第1の信号(s1)を前記THz送信機(110)の前記THz源(112)に供給し、c)前記第2の信号(s2)を前記光学遅延ステージ(1006)に供給し、
ここで、前記光学遅延ステージ(1006)は、前記第2の信号(s2)に、時間変動する周期的な所定の遅延を適用し、これによって遅延信号(s2’)を得て、前記遅延信号(s2’)を前記THz受信機(120)の前記THz検出器(122)に供給するように構成されている、請求項1~9の何れか1項に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項11】
前記装置(100、100a、100b)は、遅延パラメータ(C8)を決定するように構成され、前記遅延パラメータ(C8)は、前記光学遅延ステージ(1006)によって与えられる時間変動する周期的な所定の遅延、および前記装置(100、100a、100b)と前記物体(10)との間の前記距離(d)の変動を考慮した前記遅延信号(s2’)の有効遅延を特徴とし、前記装置(100、100a、100b)は、前記遅延パラメータ(C8)に応じて前記層厚(t1、t2、t3)を決定する(210)ように構成されている、請求項10に記載の装置(100、100a、100b)。
【請求項12】
物体(10)上に配置された複数の層(11、12、13)の層厚(t1、t2、t3)を決定するために装置(100、100a、100b)を動作させる方法であって、
前記装置(100、100a、100b)は、前記複数の層(11、12、13)にTHz信号(TS)を送出するように構成されたTHz送信機(110)と、前記複数の層(11、12、13)の少なくとも1つの層(11、12、13)によって反射された前記THz信号(TS)の反射部分(TSR)を受信するように構成されたTHz受信機(120)と、を備え、
前記装置(100、100a、100b)は、前記THz信号(TS)の前記反射部分(TSR)に基づいて前記複数の層(11、12、13)の少なくとも1つの層厚(t1、t2、t3)を決定する(210)ように構成され、
前記装置(100、100a、100b)は、更に、前記装置(100、100a、100b)と前記物体(10)との間の距離(d)を特徴付ける少なくとも1つのパラメータ(P1、P2)を決定するための距離測定装置(130)を含み、
前記距離測定装置(130)は、少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)を有し、
前記方法は、前記装置(100、100a、100b)と前記物体(10)との間の距離(d)を特徴付ける前記少なくとも1つのパラメータ(P1)を決定するステップ(200)と、前記少なくとも1つのパラメータ(P1、 P2)に基づいて前記複数の層(11、12、13)の前記層厚(t1、t2、t3)を決定するステップ(210)と、を有し、
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)は、前記装置(100、100a、100b)の光軸(OA)に対して配置されているとともに、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)の少なくとも1つの光源(1320)から放射され、且つ前記物体(10)の表面領域(10a’)によって反射された光学測定電磁波(MR、MR1、MR2)の拡散反射を選択的に検出し、それによって、第1の三角測量経路を画定し、且つb)少なくとも1つの光学三角測量センサ(132、132a、132b、132c、132d)の少なくとも1つの光源(1320)によって放射され、前記物体(10)の表面領域(10a’)によって反射された光学測定電磁波(MR、MR1、MR2)の直接反射を検出し、それによって、第2の三角測量経路を画定するように構成され、且つ
前記第1の三角測量経路、前記第2の三角測量経路、または前記第1の三角測量経路と前記第2の三角測量経路との両方を選択的に用いることを含む
方法。
【請求項13】
前記距離測定装置(130)は、2つ以上の光学三角測量センサ(132a、132b)を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132c)は、前記物体(10)の表面領域(10a’)を光学測定電磁波(MR)で照明するための1つの光源(1320)を備え、前記表面領域(10a’)によって反射された前記光学測定電磁波(MR)のそれぞれの反射部分(RMR1、RMR2)を受信するための少なくとも2つの光検出器(1321a、1321b)を含み、前記方法は、距離測定を実行するための前記少なくとも2つの光検出器(1321a、1321b)のうちの1つ以上を選択することをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132d)は、前記物体(10)の表面領域(10a’)を第1の光学測定電磁波(MR1)で照明するための第1の光源(1320a)と、前記物体(10)の前記表面領域(10a’)を第2の光学測定電磁波(MR2)で照明するための第2の光源(1320b)とを含み、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ(132d)は、前記表面領域(10a’)によって反射された前記第1の光学測定電磁波(MR1)および前記第2の光学測定電磁波(MR2)の反射部分(RMR)を受信するための少なくとも1つの光検出器(1321)をさらに含み、前記方法は、距離測定を実行するための前記少なくとも2つの光源(1320a、1320b)のうちの1つまたは複数を選択することをさらに含む、請求項12~14のうちの何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記光学測定電磁波(MR)はレーザ光を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の光学測定電磁波(MR1)および前記第2の光学測定電磁波(MR2)はレーザ光を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記装置(100、100a、100b)は、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路の品質測度(QM)を決定し、前記品質測度(QM)に応じて前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のうちの1つを選択し、前記品質測度(QM)は、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のそれぞれまたは両方に関連する複数の距離測定値の分散および/または雑音を特徴付ける、
請求項12~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記装置(100、100a、 100b)は、レーザ光源(1002)と、ビームスプリッタ(1004)と、光学遅延ステージ(1006)と、を備え、
前記THz送信機(110)は、THz源(112)を含み、前記THz受信機(120)は、THz検出器(122)を備え、
前記レーザ光源(1002)は、前記ビームスプリッタ(1004)にレーザ信号(s0)を供給し、
前記ビームスプリッタ(1004)は、a)前記レーザ信号(s0)を第1の信号(s1)および第2の信号(s2)に分割し、b)前記第1の信号(s1)を、前記THz送信機(110)の前記第1の信号(s1)を前記THz送信機(110)の前記THz源(112)に供給し、c)前記第2の信号(s2)を前記光学遅延ステージ(1006)に提供し、
前記光学遅延ステージ(1006)は、時間変動する周期的な所定の遅延を前記第2の信号(s2)に適用して遅延信号(s2’)が得られ、得られた前記遅延信号(s2’)を前記THz受信機(120)の前記THz検出器(122)に供給する、
請求項12~18のうち何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記装置(100、100a、100b)は、遅延パラメータを決定し、前記遅延パラメータは、前記光学遅延ステージ(1006)によって与えられる時間変動する周期的な所定の遅延、および前記装置(100、100a、100b)と前記物体(10)との間の前記距離(d)の変動を考慮に入れて、前記遅延信号(s2’)の有効遅延を特徴付け、前記装置(100、100a、100b)は、前記遅延パラメータに応じて前記層厚(t1、t2、t3)を決定する(210)、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
導電性であるかまたは絶縁性である前記物体(10)または前記物体(10)の表面(10a)上に配置された複数の層(11、12、13)の層厚を決定するための請求項1~11の何れか1項に記載の装置(100、100a、100b)の使用。
【請求項22】
前記複数の層(11、12、13)の最上層 (13)がクリアコートを含み、且つ前記最上層(13)に隣接する第2層がベースコートを含む、求項19に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、THz波(Terahertz、 THz、 radiation)を使用して、物体上に配置された複数の層の層厚を決定するための装置に関する。
本開示は、さらに、THz波を使用して、物体上に配置された複数の層の層厚を決定するための装置を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DE 10 2016 118 905 A1は、距離測定システムを含むTHz波(THz radiation)を測定するための装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE 10 2016 118 905 A1
【発明の概要】
【0004】
好ましい実施形態は、物体上に配置された複数の層の層厚を決定するための装置に関し、前記装置は、前記複数の層にTHz信号を放射するように構成されたTHz送信機(Terahertz,THz,transmitter)と、前記複数の層のうちの少なくとも1つの層によって反射された前記THz信号の反射部分を受信するように構成されたTHz受信機と、を備え、前記装置は、前記THz信号の前記反射部分に基づいて、前記複数の層のうちの少なくとも1つの層の層厚を決定するように構成され、前記装置は、更に、前記装置と前記物体との間の距離を決定する少なくとも1つのパラメータを決定するための距離測定装置を備え、前記距離測定装置は、少なくとも1つの光学三角測量センサを備える。光学三角測量センサは、効率的でありながら正確な距離測定を可能にし、工業生産ラインのような比較的厳しい環境での応用にも適している。
【0005】
さらに好ましい実施形態によれば、前記距離測定装置は、前記装置と前記物体との間の距離および/または前記装置と前記物体との間の距離の変動を決定するように構成されている。
【0006】
さらに好ましい実施形態によれば、前記距離測定装置は、少なくとも1キロヘルツ(kHz)、好ましくは少なくとも10kHz、より好ましくは少なくとも20kHzの所定のサンプリング速度で、前記距離および/または前記距離の変動を決定するように構成されている。
【0007】
さらに好ましい実施形態によれば、前記距離測定装置は、2つ以上の光学三角測量センサを含む。
【0008】
さらに好ましい実施形態によれば、前記THz波は、0.3THz~100THzの範囲、好ましくは0.5THz~10THzの範囲の少なくとも1つの周波数成分を含む。
【0009】
更に好ましい態様によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、前記物体の表面領域を特にレーザ(laser radiation)を含む光学測定電磁波で照射するための1つの光源と、前記表面領域によって反射された前記光学測定電磁波のそれぞれの反射部分を受信するための1つの光検出器と、を含む。
【0010】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、前記物体の表面領域を光学測定電磁波で照らすための1つの光源を備え、前記光学測定電磁波は、特にレーザを含み、前記表面領域によって反射された前記光学測定電磁波のそれぞれの反射部分を受信するための少なくとも2つの光検出器を含む。
【0011】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、第1の光学測定電磁波によって前記物体の表面領域を照射するための第1の光源と、第2の光学測定電磁波によって前記物体の前記表面領域を照射するための第2の光源と、を備え、前記第1および/または第2の光学測定電磁波は、特にレーザを含み、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、前記表面領域によって反射された前記第1および/または第2の光学測定電磁波の反射部分を受信するための少なくとも1つの光検出器をさらに含む。
【0012】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源によって放射され、且つ前記物体の表面領域によって反射された光学測定電磁波の拡散反射、好ましくは前記光学測定電磁波の拡散反射のみ、および/またはb)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源によって放射され、且つ前記物体の表面領域によって反射された光学測定電磁波の直接反射、好ましくは前記光学測定電磁波の拡散反射のみ、を検出できるように、前記装置の光軸に対して配置される。
【0013】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源によって放射され、且つ、前記物体の表面領域によって反射された光学測定電磁波の拡散反射を選択的に検出することができ、それによって、第1の三角測量経路が規定されるか、且つ/またはb)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源によって放射され、且つ、前記物体の前記表面領域によって反射された光学測定電磁波の直接反射を選択的に検出することができ、それによって、第2の三角測量経路が規定されるように構成され、且つ前記装置の光軸に対して配置される。
【0014】
さらに好ましい実施形態によれば、前記装置は、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路の品質測度を決定し、前記品質測度に応じて前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のうちの1つを選択するように構成され、ここで、前記品質測度は、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のそれぞれの1つに関連する複数の距離測定値の分散および/またはノイズを特徴付ける。さらに好ましい実施形態によれば、前記装置は、前記2つの三角測量経路に対して、前記表面法線に対する方向余弦を決定するように構成されている。さらに好ましい実施形態によれば、限られた時間に亘る前記2つの三角測量経路の好ましくは同期測定の標準偏差を前記信号品質測度として使用することができる。
【0015】
更に好ましい実施形態によれば、前記装置は、レーザ光源と、ビームスプリッタと、光学遅延ステージとを含み、前記THz送信機は、THz源を含み、前記THz受信機は、THz検出器を含み、前記レーザ光源は、前記ビームスプリッタにレーザ信号を供給するように構成され、前記ビームスプリッタは、a)前記レーザ信号を第1の信号と第2の信号とに分割し、b)前記THz送信機の前記THz源に前記第1の信号を供給し、c)前記第2の信号を前記光学遅延ステージに供給し、前記光学遅延ステージは、前記第2の信号に時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延を印加するように構成され、これにより遅延信号が得られ、前記遅延信号を前記THz受信機の前記THz検出器に供給するように構成されている。
【0016】
さらに好ましい実施形態によれば、前記装置は、遅延パラメータを決定するように構成され、前記遅延パラメータは、前記光学遅延ステージによって提供される時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延、および前記装置と前記物体との間の前記距離の変動を考慮に入れた前記遅延信号の有効遅延を特徴とし、好ましくは、前記装置は、前記遅延パラメータに応じて前記層の厚さを決定するように構成されている。一例として、さらに好ましい実施形態によれば、前記THz検出器によって受信された信号を特徴付ける時間依存信号を決定することができる。この時間依存信号に基づいて、物体上に配置された複数の層の層厚が決定されてもよい。それぞれのTHz測定中の(望ましくない)距離変動を補償するために、遅延パラメータは、例えば、前記時間依存性信号を補正および/または「精製する」ために使用され、これにより(望ましくない)距離変動の影響が排除される。このようにして、より正確な層厚測定が可能になる。言い換えると、さらに好ましい実施形態によれば、層の厚さは、前記遅延パラメータに直接依存して決定されるのではなく、前記遅延パラメータは、前記時間依存性信号(および/またはその時間軸)の誤差を補償するために使用されてもよく、これは、前記(補償された)時間依存性信号に依存して前記層の厚さを決定する際の精度を高める。
【0017】
さらに好ましい実施形態は、物体上に配置された複数の層の層厚を決定するための装置の動作方法に関し、前記装置は、前記複数の層にTHz信号を放射するように構成されたTHz送信機と、前記複数の層のうちの少なくとも1つの層によって反射された前記THz信号の反射部分を受信するように構成されたTHz受信機とを備え、前記装置は、前記THz信号の前記反射部分に基づいて前記複数の層のうちの少なくとも1つの層の層厚を決定するように構成され、前記装置は、前記装置と前記体との間の距離を特徴付ける少なくとも1つのパラメータを決定する距離測定装置をさらに備え、前記距離測定装置は、少なくとも1つの光学三角測量センサを備え、前記方法は、前記装置と前記体との間の距離を特徴付ける前記少なくとも1つのパラメータを決定するステップと、前記少なくとも1つのパラメータに応じて前記複数の層のうちの前記少なくとも1つの層の前記層厚を決定するステップと、を含む。
【0018】
さらに好ましい実施形態によれば、前記測定装置は、2つ以上の光学三角測量センサを含み、好ましくは、前記2つ以上の光学三角測量センサは、選択的におよび/または同時に使用される。
【0019】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、前記物体の表面領域を光学測定電磁波で照射するための1つの光源を含み、前記光学測定電磁波は、特に、レーザを含み、前記表面領域によって反射された前記光学測定電磁波のそれぞれの反射部分を受信するための少なくとも2つの光検出器であって、前記方法は、距離測定を実行するための前記少なくとも2つの光検出器のうちの1つ以上を選択することをさらに含む。
【0020】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、第1の光学測定電磁波によって前記体の表面領域を照射するための第1の光源と、第2の光学測定電磁波によって前記体の前記表面領域を照射するための第2の光源とを含み、前記第1および/または第2の光学測定電磁波は、特にレーザを含み、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、さらに前記表面領域によって反射された前記第1および/または第2の光学測定電磁波の反射部分を受信するための少なくとも1つの光検出器を備え、前記方法は、距離測定を実行するための前記少なくとも2つの光源のうちの1つ以上を選択することをさらに含む。
【0021】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサは、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源によって放射され、且つ、前記物体の表面領域によって反射された光学測定放射の拡散反射を選択的に検出することができ、それによって、第1の三角測量経路が定められ、且つ/またはb)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源によって放射され、且つ、前記物体の前記表面領域によって反射された光学測定放射の直接反射を検出でき、それによって第2の三角測量経路が定められるように構成され、且つ前記装置の光軸に対して配置され、前記方法は、更に、前記第1の三角測量経路若しくは前記第2の三角測量経路を使用するか、または前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路の両方を使用するかを選択的することを含み、前記装置は、好ましくは前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路の品質測度を決定し、前記品質測度に応じて、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のうちの1つを選択し、ここで、前記品質測度が、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のそれぞれ1つに関連付けられた複数の距離測定値の分散および/またはノイズを特徴づけるものであることが好ましい。
【0022】
さらに好ましい実施形態によれば、前記装置は、レーザ光源と、ビームスプリッタと、光学遅延ステージとを含み、前記THz送信機は、THz源を含み、前記THz受信機は、THz検出器を含み、前記レーザ光源は、前記ビームスプリッタにレーザ信号を供給し、前記ビームスプリッタは、a)前記レーザ信号を第1の信号および第2の信号に分割し、b)前記THz送信機の前記THz源に前記第1の信号を供給し、c)前前記光学遅延ステージに記第2の信号を供給し、前記光学遅延ステージは、時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延を前記第2の信号に印加し、これによって遅延信号が得られ、前記遅延信号を前記THz受信機の前記THz検出器に供給する。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、前記装置は、遅延パラメータを決定し、ここで前記遅延パラメータは、前記光学遅延ステージによってもたらされる時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延、および前記装置と前記物体との間の前記距離の変動を考慮に入れた前記遅延信号の有効遅延を特徴付ける。前記装置は、前記遅延パラメータに応じて前記層の厚さを決定するのが好ましい。
【0024】
さらに好ましい実施形態は、物体の表面に配置された複数の層の層厚を決定するための実施形態および/または実施形態に係る方法の使用に関し、好ましくは、前記物体および/または前記物体の前記表面は導電性であり、好ましくは、前記複数の層の最上層はクリアーコートを含み、好ましくは、前記最上層に隣接する第2の層は、ベースコートを含む。さらに好ましい実施形態によれば、前記物体の前記表面は、導電性でない。
【0025】
実施形態のさらなる特徴、態様および利点は、以下の図面を参照しながら、詳細な説明で与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】好ましい実施形態に係る装置の簡略化されたブロック図を図示する。
図2】さらに好ましい実施形態に係る物体上に配置された複数の層の簡略化された側面図を図示する。
図3】さらに好ましい実施形態に係る装置の簡略化されたブロック図を図示する。
図4A】さらに好ましい実施形態に係る方法の簡略化されたフローチャートを概略的に示す。
図4B】さらに好ましい実施形態に係る方法の簡略化されたフローチャートを概略的に示す。
図4C】さらに好ましい実施形態に係る方法の簡略化されたフローチャートを概略的に示す。
図5A】さらに好ましい実施形態に係るセンサの簡略化された側面図を図示する。
図5B】さらに好ましい実施形態に係るセンサの簡略化された側面図を図示する。
図6】さらに好ましい実施形態に係るセンサの簡略化された側面図を図示する。
図7】さらに好ましい実施形態に係るセンサの簡略化された側面図を図示する。
図8】さらに好ましい実施形態に係る構成を概略的に図示する。
図9A】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9B】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9C】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9D】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9E】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9F】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9G】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9H】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9I】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図9J】さらに好ましい実施形態に係る動作パラメータを夫々概略的に図示する。
図10】さらに好ましい実施形態に係る装置の簡略ブロック図を概略的に図示する。
図11】さらに好ましい実施形態に係る制御装置の簡略ブロック図を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、好ましい実施形態に係る装置100の簡略ブロック図を概略的に図示する。装置100は、基体上のポリマーコーティング、例えば塗料の層のような、物体上に配置された複数の層の層厚を決定するように構成されている。
【0028】
図2は、さらに好ましい実施形態に係る、物体10上に配置された複数の層11、12、13の簡略化された側面図を概略的に図示する。
【0029】
装置100(図1)は、例えば、前記物体10の表面10a上に配置された前記複数の層にTHz信号TSを放射するように構成されたTHz送信機110と、前記複数の層の少なくとも1つの層11、12、13(図2)によって反射された前記THz信号TSの反射部分TSRを受信するように構成されたTHz受信機120と、を備える。好ましくは、THz信号TSの焦点FPは、装置100の光軸OAを含む物体の表面領域10a’に向けられる。好ましくは、構成要素110、120は、THz測定ヘッドを形成する共通ハウジング102内に配置される。
【0030】
さらに好ましい実施形態によれば、前記THz放射線TSは、0.3THzおよび100THzの範囲、好ましくは0.5THzおよび10THzの範囲の少なくとも1つの周波数成分を含む。
【0031】
装置100(図1)は、前記THz信号TSの前記反射部分TSRに基づいて、好ましくは時間領域反射測定技術を適用することによって、前記複数の層11、12、13のうちの少なくとも1つの層厚t1、t2、t3(図2)を決定するように構成されている。
【0032】
装置100は、前記装置100と前記物体10との間の距離dを特徴付ける少なくとも1つのパラメータP1を決定するための距離測定装置130をさらに含み、前記距離測定装置130は、少なくとも1つの光学三角測量センサ132を含む。光学三角測量センサ132は、効率的でありながら正確な距離測定を可能にし、また、工業生産ラインのような比較的厳しい環境での適用にも適している。好ましくは、距離測定装置130またはその少なくとも1つの構成要素も、前記共通ハウジング102内に配置および/または取り付けられる。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、装置100またはその少なくとも1つの構成要素110、120、130の動作を制御するために、制御装置103が設けられてもよい。
【0034】
さらに好ましい実施形態によれば、図3の装置100aを参照すると、前記距離測定装置130は、2つ以上の光学三角測量センサを含む。現在、2つの光学三角測量センサ132a、132bは、図3によって例示的に示される。第1の三角測量センサ132aは、前記装置100aと前記物体10との間の前記距離dを特徴付ける第1のパラメータP1を決定するように構成され、第2の三角測量センサ132bは、前記装置100aと前記物体10との間の前記距離dを特徴付ける第2のパラメータP2を決定するように構成されている。さらに好ましい実施形態によれば、パラメータP1、P2を比較することによって、前記センサ132a、132bのいずれかの適切な動作を検証することができる。さらに好ましい実施態様によれば、第1のパラメータP1および/または第2のパラメータP2は、前記距離dに対応させることができ、すなわち、距離dを表し得る。
【0035】
図4Aは、さらに好ましい実施形態に係る方法の簡略化されたフローチャートを図示する。第1のステップ200において、装置100、100a、またはその距離測定装置130は、それぞれ、前記装置と前記物体10との間の前記距離dを特徴付ける前記少なくとも1つのパラメータP1、P2を決定する。さらなるステップ210において、装置は、前記少なくとも1つのパラメータP1、P2に応じて、前記複数の層11、12、13のうちの少なくとも1つの前記層厚t1、t2、t3(図2)を、好ましくは間接的に決定する。このようにして、特に精密な層厚測定を行うことができる。さらに好ましい実施形態によれば、「前記少なくとも1つのパラメータP1、P2に応じて、前記複数の層11、12、13のうちの前記少なくとも1つの層の厚さt1、t2、t3を間接的に決定する(図2)」とは、前記少なくとも1つのパラメータP1、P2が、前記層の厚さt1、t2、t3を決定するプロセスに使用されることを意味するが、前記層の厚さt1、t2、t3は、前記少なくとも1つのパラメータP1、P2からは直接的には導き出されない。一例として、さらに好ましい実施形態によれば、前記THz受信機120によって受信された信号を特徴付ける時間依存信号を決定することができる。この時間依存信号に基づいて、前記物体10上に配置された複数の層11、12、13の層厚t1、t2、t3を求めることができる。それぞれのTHz測定中の(望ましくない)距離変動を補償するために、例えば、図9Hを参照して以下にさらに説明する遅延パラメータC8を、例えば、前記時間依存性信号を補正および/または「精製」するために使用してもよく、これによって(望ましくない)距離変動の影響を排除し、ここで、前記遅延パラメータC8は、前記少なくとも1つのパラメータP1、P2に応じて決定されてもよい。このようにして、より正確な層厚測定が可能になる。言い換えると、さらに好ましい実施形態によれば、層厚t1、t2、t3は、前記遅延パラメータC8に直接依存して決定されないが、前記遅延パラメータは、前記時間依存性信号(および/またはその時間軸)における誤差を補償するために使用されてもよく、これは、前記(補償された)時間依存性信号に依存して前記層厚を決定するときに精度を増加させる。
【0036】
さらに好ましい実施態様によれば、図5Aを参照すると、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132aは、前記物体10の表面10aの表面10a’領域を光学測定電磁波MRで照射するための1つの光源1320を含み、前記光学測定電磁波MRは、特に、レーザを含み、前記表面領域10a’によって反射された前記光学測定電磁波MRのそれぞれの反射部分RMRを受信するための1つの光検出器1321を含む。参照符号SNは、物体10の表面10aの表面法線SNを示す。例示的に、矢印MRは、光源1320の光軸を特徴付ける。
【0037】
さらに好ましい実施形態によれば、光学三角測量センサ132aは、光学三角測量センサの分野でそれ自体公知の方法で、前記測定放射線MRの前記反射部分RMRを評価することによって、物体10までの距離d(図1図5A参照)を決定するように構成されている。さらに好ましい実施形態によれば、これは、図5B図6図7を参照して以下に例示的に説明される、さらに好ましい実施形態に係る光学三角測量センサのさらなる構成132b、132c、132dにも適用され得る。
【0038】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132aは、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132aの前記少なくとも1つの光源1320によって放射され、前記物体10の表面領域10a’によって反射された光学測定電磁波MRの少なくとも拡散反射を、好ましくは、前記光学測定電磁波MRの拡散反射のみ(または少なくともある程度は)検出することができるように、前記装置の光軸OA(図1図5A)に対して配置される。これは、例えば、図5Aによって例示的に示されるように、互いに対する構成要素100、1320、1321の空間的および/または角度的配置によって達成され得る。
【0039】
さらに好ましい実施態様によれば、図5Bを参照すると、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132bは、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132bが、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132bの前記少なくとも1つの光源1320(図5B)によって放射され、前記物体10の前記表面領域10a’によって反射され、好ましくは光学測定放射の直接反射のみである光学測定放射MR(図5A)の少なくとも直接反射を検出することができるように、前記装置の光軸OA(図1)に対して配置される。これは、例えば、図5Bによって例示的に示されるように、互いに対する構成要素100、1320、1321の空間的および/または角度的配置、例えば、物体10の光軸OAおよび/または表面法線SNに関する構成要素1320、1321の角度的に対称的な配置によって達成され得る。
【0040】
さらに好ましい実施態様によれば、図6を参照すると、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132cは、前記物体10の表面領域10a’を光学測定電磁波MRで照射するための1つの光源1320を含み、前記光学測定電磁波MRは、特に、レーザを含み、前記表面領域10a’によって反射された前記光学測定電磁波MRのそれぞれの反射部分RMR1、RMR2を受信するための少なくとも2つの光検出器1321a、1321bを含む。さらに好ましい実施形態によると、図6のこの構成132cを使用して、反射測定放射線RMR1、RMR2を分析するための前記光検出器1321a、1321bのうちの対応する1つを選択することによって、前記パラメータP1、P2、またはその両方を決定するための(主に)拡散反射または(主に)直接反射のいずれかを選択的に使用することが可能である。さらに好ましい実施形態によれば、光検出器1321a、1321bは、光軸OAに対して異なる角度位置に配置される(図5Aも参照)。さらに好ましい態様によれば、第1光検出器1321aは、光源1320および光軸OAに対して対称に配置されていてもよいが、第2光検出器1321bは、光源1320および光軸OAに対して対称に配置されていなくてもよい。
【0041】
さらに好ましい実施態様によれば、図7を参照すると、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132dは、第1の光学測定放射MR1によって前記物体10の表面領域10a’を照明するための第1の光源1320aと、第2の光学測定放射MR2によって前記物体10の前記表面領域10a’を照明するための第2の光源1320bとを含み、前記第1および/または第2の光学測定放射MR1、MR2は特にレーザを含み、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132dは、前記表面領域10a’によって反射された前記第1および/または第2の光学測定放射MR1、MR2の反射部分RMRを受信するための少なくとも1つの光検出器1321をさらに含む。さらに好ましい実施形態によれば、光源1320a、1320bは、光軸OAに対して異なる角度位置に配置される(図5Aも参照)。さらに好ましい態様によれば、第1光源1320aは、光検出器1321および光軸OAに対して対称に配置されていてもよいが、第2光源1320bは、光検出器1321および光軸OAに対して対称に配置されていなくてもよい。
【0042】
さらに好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132c、132dは、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサ132c、132dが、a)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源1320、1320a、1320bによって放射され、且つ前記物体10の表面領域10a’によって反射された光学測定電磁波MRの拡散反射を選択的に検出することができるように、前記装置100、100aに対して構成および配置され、それによって、第1の三角測量経路が規定され、且つ/またはb)前記少なくとも1つの光学三角測量センサの少なくとも1つの光源1320、1320a、1320bによって放射され、且つ前記物体10の前記表面領域10a’によって反射された光学測定電磁波の直接反射によって、第2の三角測量経路が規定されるように構成および配置される。特に、図6および図7の例示的な構成は、前記物体の前記表面10aにおける測定放射の直接反射および/または拡散反射を選択的に使用することを可能にする。
【0043】
一例として、例示的な目的のために、第1の三角測量経路((少なくとも主に)拡散反射の場合)は、例えば図6の矢印MR、RMR2を含むと考えられ、第2の三角測量経路((少なくとも主に)直接反射の場合)は、例えば図6の矢印MR、RMR1を含むと考えられ得る。さらなる例として、例示的な目的のために、第1の三角測量経路((少なくとも主に)拡散反射の場合)は、例えば図7の矢印MR2、RMRを含むと考えられ、第2の三角測量経路(少なくとも主に)直接反射の場合)は、例えば図7の矢印MR1、RMRを含むと考えられ得る。
【0044】
さらに好ましい実施形態によれば、拡散反射は、測定される表面10aの表面法線SNが、例えば、図6の矢印MR、RMR(図5A)および/または要素1320、1321の間の矢印によって画定される三角測量面内にない場合に得られ得る。前記測定放射線MRの拡散反射および/または直接反射が使用されるかどうかは、さらに好ましい実施形態に従って、例えば表面法線SNに関する前記光学三角測量センサの素子の光軸OAの角度配列によって決定されてもよい。
【0045】
さらに好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの光学三角測量センサ(および/またはその少なくとも1つの構成要素)の前記光源および/または光検出器の少なくとも1つは、測定のための拡散反射および/または直接反射を制御するために可動であってよく、特に好ましくは表面10a上のTHz放射の焦点FPの周りにおいて回転可能であってよい。
【0046】
さらに好ましい実施形態によれば、測定される表面10aの表面法線SNが、例えば矢印MR、RMR(図5A)によって画定される三角測量面内にある場合、および矢印MR、RMRが、図5Aによって描かれるように、表面法線SNと同じ値のそれぞれの角度を含まない場合、測定放射線MRの拡散反射が得られるようにしてもよい。
【0047】
さらに好ましい実施形態によれば、測定される表面10aの表面法線SNが、例えば矢印MR、RMR(図5A)によって画定される三角測量面内にない場合、矢印MR、RMRおよび表面法線SNのそれぞれの間でどの角度が画定されるということとは無関係に測定放射MRの拡散反射が得られる。
【0048】
さらに好ましい実施形態によれば、測定される表面10aの表面法線SNが三角測量面内にあるか否かは、表面法線SN、従って物体10に対して測定ヘッド102を位置決めすることによって制御され得る。
【0049】
さらに好ましい実施形態によれば、測定ヘッド102の光軸OA(例えば、素子1320、1321のそれぞれの光軸と光軸OAとの間の同じ角度)に関する素子1320、1321の光軸の対称配置は、例えば、素子1320、1321を測定ヘッド102またはその(他の)構成要素110、120に対して対称的に配置する設計によって達成されてもよい。同様に、さらに好ましい実施形態によれば、例えば、素子1320、1321(および/または他の素子)を、測定ヘッド102またはその(他の)構成要素110、120に対して非対称に配置することによって、非対称配置を達成することができる。
【0050】
さらに好ましい実施形態によれば、測定放射線MR、MR1、MR2の拡散反射は、マット面10aからわずかに散乱する面10aに使用される。
【0051】
さらに好ましい実施形態によれば、測定される表面10aの表面法線SNが、例えば矢印MR、RMR (図5A)によって画定される三角測量面内にある場合、測定放射線MRの直接反射が得られてもよく、矢印MR、RMRが、図5Bによって描かれるように、表面法線SNと同じ絶対値のそれぞれの角度を含む場合、RMRが得られてもよい。
【0052】
さらに好ましい実施形態によれば、測定放射線MR、MR1、MR2の直接反射は、わずかに散乱する表面10aへの光沢のある表面10aに使用される。
【0053】
さらに好ましい実施形態によれば、センサあたり2つよりも多い光源および/またはセンサあたり2つよりも多い検出器も可能であり、これにより、距離測定のためのさらなる自由度が提供され得る。このようにして、さらなる実施形態によれば、信頼性が高く且つ正確な距離測定が可能となり、これは、例えば、光沢面および/またはつや消し面等のような層11、12、13の表面特性とは実質的に無関係である。
【0054】
さらに好ましい実施形態によれば、センサ当たり1つまたは複数の光源および/またはセンサ当たり2つ以上の検出器が設けられ、および/または2つ以上の光源および少なくとも1つの検出器が設けられ得る。前記光源および検出器は、複数の三角測量経路が規定されるように、互いに対して位置決めされ、配置されてもよく、少なくとも1つの三角測量経路は、測定放射線の直接反射の評価に基づいて距離測定を実行することを可能にし、少なくとも1つのさらなる三角測量経路は、測定放射線の拡散反射の評価に基づいて距離測定を実行することを可能にする。さらに好ましい実施形態によれば、前記三角測量経路のうちの少なくとも1つは、1つまたは複数の距離測定のために選択された動的(すなわち、前記装置の動作中)であってもよい。
【0055】
さらに好ましい実施形態によれば、図4Bのフローチャートを参照すると、前記装置は、前記第1の三角測量経路MR、RMR2(図6)および前記第2の三角測量経路MR、RMR1の品質測度QMをステップ220で決定し、前記品質測度QMに応じて前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のうちの1つをステップ222(図4B)で選択するように構成され、前記品質測度QMは、例えば、前記第1の三角測量経路および前記第2の三角測量経路のそれぞれに関連する複数の距離測定値の分散および/またはノイズを特徴付ける。このようにして、前記三角測量経路の距離測定値は、前記品質測度QMに基づいて、より正確な距離測定値をもたらすと考えられる(将来の)距離測定のために決定および/または選択され得る。これは、例えば、光沢面10aのための適切な三角測量路と、マット面10aのための(異なる)適切な三角測量路とを選択することを可能にする。
【0056】
さらに好ましい実施形態によれば、図4Bによるステップ220、222は、例えば、図4Aによるステップ200、210に先立つ、THz信号に基づく層厚測定の前に、例えば(少なくとも任意で)実行されてもよい。
【0057】
図8は、さらに好ましい実施形態に係る構成を概略的に示す。装置100は、ロボットのような位置決めシステム104上に取り付けられ、これにより、測定ヘッド102を、物体10’に関して正確な層厚測定のための所望の位置および/または角度位置に柔軟に配置することができる。
【0058】
さらに好ましい実施形態によれば、前記物体10’上に配置された少なくとも1つの層の少なくとも1つの層厚は、前記物体10’(図8)の表面10a(図1)の複数の測定点で測定されてもよい。さらに好ましい実施形態によれば、ロボット104は、測定ヘッド102を種々の測定点に位置決めし、すなわち、測定点を1つずつ次々に位置決めすることができる。さらに好ましい実施形態によれば、各位置決めステップ(または、少なくとも、前記位置決めステップのうちの1つ以上の後)の後、例えば、新しい測定点が設定された場合、図4Bのステップ220、222を実行して、それぞれの測定点に対する前記品質測度QMを決定し、前記それぞれの測定点における距離測定(図4Aのステップ200)に使用される対応する三角測量経路を選択する(図4Bのステップ222)ことができる。このようにして、それぞれの測定点における距離測定に関する精度をさらに高めることができ、したがって、前記それぞれの測定点における層厚測定の精度を高めることができる。
【0059】
さらに好ましい実施態様によれば、図10を参照すると、前記装置100bは、レーザ光源1002、ビームスプリッタ1004、および光学遅延ステージ1006を備え、前記THz送信機110は、THz源112を備え、前記THz受信機120は、THz検出器122を備え、前記レーザ光源1002は、レーザ信号s0を前記ビームスプリッタ1004に供給するように構成され、前記ビームスプリッタ1004は、a)前記レーザ信号s0を第1の信号s1および第2の信号s2に分割するように構成され、b)前記第1の信号s1を前記THz送信機110の前記THz源112に供給し、c)オプションのミラー1008を介して、前記第2の信号s2を前記光学遅延ステージ1006に供給し、前記光学遅延ステージ1006は、時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延を前記第2の信号s2に適用するように構成され、遅延信号s2’が得られ、前記遅延信号s2’を前記THz受信機120の前記THz検出器122に供給するように構成されている。
【0060】
さらに好ましい実施形態によれば、構成要素1002、1004、1006、1006a、1008、112、122のうちの1つ以上が、図1によるTHz測定ヘッド102内に設けられてもよい。
【0061】
さらに好ましい実施形態によれば、前記THz源112は、レーザ光源1002から前記第1の信号s1を受信することに応答して前記THz信号TSを生成することができる光導電スイッチ(図示せず)を備えることができる。直流バイアス電圧は、前記光導電スイッチに供給されてもよいが、明瞭にするために図10には示されていない。好ましくは、前記レーザ信号s0は、例えばフェムト秒範囲の持続時間(例えば半値幅、FWHM)を有する比較的短いレーザパルスを含む。このようにして、THzパルスは、前記THz信号TSを形成する、それ自体公知の方法で提供されてもよい。
【0062】
さらに好ましい実施形態によれば、前記THz検出器122は、前記THz信号TSの前記反射部分TSRを受信し、前記遅延信号s2’を受け取ったときに前記反射部分TSRを特徴付ける電気出力信号esを生成するように構成されてもよく、好ましくは、複数の比較的短い(前記THz信号TSの前記受け取られた反射部分TSRの持続時間と比較して)レーザパルスの形態である。このようにして、遅延レーザ信号s2’は、前記THz信号TSの反射部分TSRが検出器122によって受信されたときに前記反射部分TSRを「プローブ」する。
【0063】
さらに好ましい実施形態によれば、前記THz検出器122は、また、光導電スイッチ(例えば、THz源112の光導電スイッチと同様のもの)を含んでもよく、ここで、自由電荷キャリアは、前記検出器が前記THz信号TSの前記反射部分TSRを受け取ったとき、および前記検出器122が前記遅延信号s2’と共に(同時に)照射されたときに生成される。前記検出器122にDCバイアス電圧を印加することによって、前記生成された自由電荷キャリアから生じる電流が、検出器122で得られ、これは、例えば、電気出力信号esを形成することができる。あるいは、さらなる実施形態によれば、前記電流を特徴付ける電圧が前記出力信号esとして使用されてもよい。さらなる実施形態によれば、増幅器(図示せず)を使用して、検出器122の光導電性スイッチによって提供される前記電流を特徴付ける出力電圧を提供してもよい。
【0064】
換言すれば、前記電気出力信号esは、前記THz信号TSの受信された反射部分TSRの瞬間電界に比例する。このようにして、検出器122の光導電スイッチに複数の比較的短い(前記THz信号TSの受け取った反射部分TSRの持続時間と比較して)レーザパルスを前記遅延信号s2’の形で照射することにより、受信された反射部分TSRをそれぞれサンプリングまたはプローブすることができる。例えば光学遅延ステージ1006を制御することによって前記遅延信号s2’の遅延を変化させることにより、前記遅延信号s2’の異なるインパルスに対して、前記THz信号TSの受信された反射部分TSRの異なる部分をサンプリングすることができ、それによって、前記受信された反射部分TSRを特徴付ける時間分解サンプリング信号が得られる。
【0065】
さらに好ましい実施形態によれば、電気出力信号esは、例えば200キロヘルツ(kHz)の第1サンプリング速度でサンプリングされ、それにより、サンプリングされた信号が得られ、これは、検出器122によって受信される前記THz信号TSの前記反射部分TSR、例えば、検出器122によって受信される前記THz信号TSの前記反射部分TSRに関連する電界の時間離散値および離散値表現である。
【0066】
この点に関し、図9Aの曲線C1は、例えば、実時間に対応し得る、第1の時間軸t1にわたる前記THz信号TSの前記反射部分TSRの電界振幅(任意の単位における)を例示的に示す。曲線C1は、例えば、前記サンプリングされた信号esに対応し、要素102、110、120、130と物体10との間の距離d(図1)に影響を及ぼし得る、振動が存在しない(または無視できる)動作シナリオに対応し得る。
【0067】
さらに好ましい実施形態によれば、サンプリングおよび/または前記サンプリングされた信号のさらなる処理、例えば図9Aの曲線C1は、例えば、図1の制御装置103によって、および/または外部装置(図示せず)によって実行されてもよい。
【0068】
さらに好ましい実施形態によれば、層11、12、13(図2)の層厚測定は、電気出力信号esから導出された前記サンプリングされた信号C1(図9A)に基づいて実行されてもよい。一例として、前記THz信号TSおよび/または前記電気出力信号esの前記反射部分TSR、例えば曲線C1に基づいて、前記層のうちの1つ以上の層の層厚t1、t2、t3を決定することを可能にする前記物体10上の前記層11、12、13の数学モデルが提供されてもよい。
【0069】
さらなる実施形態によれば、図10を参照すると、前記光学遅延ステージ1006は、座標軸xに沿って、例えば平行移動可能である(図10のブロック矢印A1を参照のこと)のコーナー反射器1006aを含んでもよい。この構成は、「シェーカー」1006とも呼称できる。
【0070】
前記コーナー反射器1006aを座標軸xに沿って周期的に移動させることによって、前記時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延を前記第2の信号s2に適用することができ、これによって、前記のように、前記THz信号TSの受信された反射部分TSRを時間分解方式でサンプリングすることができる。
【0071】
さらなる実施態様によれば、前記コーナー反射器1006aの位置および/または移動は、前記制御装置103によって制御されてもよい。好ましくは、さらなる実施態様によれば、前記コーナー反射器1006aの前記位置および/または移動は、前記THz信号TSのパルスの発生および/またはレーザ光源1002の動作と同期させることができる。
【0072】
さらなる実施態様によれば、前記コーナー反射器1006aは、前記座標軸xに沿って2つの端点(図示せず)の間を周期的に移動する。この目的のために、前記コーナー反射器1006aの前記移動を駆動するための並進ステージ(図示せず)および/または任意の他の適切な(例えば、直線状の)駆動装置を設けることができる。前記駆動装置は、例えば、制御装置103によって制御されてもよい。
【0073】
図9Bにおいて、曲線C2は、時間t1にわたる前記コーナー反射器1006aの移動量(elongation)を例示的に示し、ここで、図9Aによって示されるようなリアルタイムを特徴付ける同じ時間軸t1が使用される。前記移動量C2は、例示的に、基本的に正弦波形状を含むことが分かる。さらに好ましい実施形態によれば、時間t1にわたる前記移動量C2に関する情報は、例えば、前記コーナー反射器1006aの駆動のために制御装置103によって提供されるような制御信号に応じて、制御装置103によって決定されてもよい。代替的または追加的に、さらなる実施形態に従って、時間t1にわたる前記移動量C2も測定されてもよい。
【0074】
さらなる実施形態によれば、図9Cの曲線C3を参照すると、THz時間ベースt1’、は、図9Bの曲線C2に基づいて決定されてもよい。換言すれば、曲線C3は、前記サンプリングされたシグナルC1(図9A)が得られた実時間軸t1を、受信された反射THzパルスTSRに関連するさらなる時間軸t1’にマッピングする。リアルタイム軸t1=0s~t1=0.05s の範囲で、THz時間ベースt1’ は-5x10-11s~-5x10-11s の範囲であることに留意されたい。
【0075】
さらなる実施形態によれば、前記THz時間ベースt1’は、THz時間ベースt1’にわたる前記受信された反射THzパルスTSRの電界(任意の単位における)を表すTHz時間ベースt1’(図9Dの曲線C4を参照のこと)に対してサンプリングされた信号C1(図9A)をマッピングするために使用されてもよい。さらなる実施形態によれば、曲線C4の等距離補間を適用することができ、これにより曲線C4’が得られる。
【0076】
さらなる実施形態によれば、曲線C4’によって表される信号は、前記物体10上の前記層11、12、13のうちの1つ以上の層の厚さを決定するために使用されてもよい。
【0077】
図9A図9Dを参照して上述した実施形態は、前記THz信号TSが物体10に向かって放射され、前記THz信号TSの前記反射部分TSRが検出器122によって受信される時間間隔に、実質的な振動が存在しないか、または少なくとも存在しないという仮定に基づいている。
【0078】
しかしながら、さらなる実施形態によれば、例えば、位置決めシステム104(図8)に取り付けられた測定ヘッド102を実際に使用する場合に予想されることであるが、振動が存在し、この振動は、通常、装置110、120、130と物体10との間の距離d(図1)の望ましくない変動を引き起こすので、層厚測定の精度に影響を及ぼし得る。
【0079】
さらに好ましい実施形態によれば、可能性のある振動に対処するために、装置100、100a、100bは、遅延パラメータを決定するように構成され、遅延パラメータは、前記遅延信号s2’(図10)の有効遅延を特徴付け、前記遅延パラメータは、前記光学遅延ステージ1006によって提供される時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延、および前記装置100と前記物体10との間の距離dの変動(例えば、前記振動によって引き起こされる)を考慮に入れて構成され、ここで、前記装置は、前記遅延パラメータに応じて前記層の厚さを決定するように構成されていることが好ましい。
【0080】
言い換えれば、さらに好ましい実施形態によれば、装置110、120、130と物体10との間の前記距離dの時間の変動は、前記層厚を決定する際に考慮される。有利には、前記距離dの時間における前記変動は、前記遅延パラメータの形成で考慮することができ、この遅延パラメータは、層厚測定の精度に影響を及ぼし得る2つの効果、即ちa)光学遅延ステージ1006によって導入される遅延、ここで前記光学遅延ステージ1006は、THz信号またはパルスTSの反射部分TSRの電界のサンプリングされた、言い換えれば時間分解された信号形状が得られるから望ましい、およびb)振動によって導入されるような遅延、ここで、この遅延は、通常、精度に影響を及ぼすために望ましくない、の組み合わせ処理を可能とする。
【0081】
さらに好ましい実施形態によれば、装置100は、例えば、距離測定装置130を使用することによって距離測定を行う。ここで、前記距離測定は、好ましくは、1kHz (キロヘルツ)以上、好ましくは10kHz以上、例えば20kHzの測定レートで行われる。更に、前記距離測定値は、前記THz信号TSの送出および/または前記反射部分TSRの受信と同期することが好ましい。このようにして、装置110、120、130と物体10との間の距離の変動を決定することができ、層厚測定のために考慮することができる。さらに好ましい実施形態によれば、すでに述べたように、前記装置は、前記距離測定を実行する前に、まず、例えば、図4Bを参照して上述した品質測度QMに応じて、前記距離測定のための適切な三角測量経路を決定することができる。
【0082】
一例として、図9Eの曲線C5は、前記第1の時間軸t1にわたる前記THz信号TSの前記反射部分TSRの電界振幅(任意の単位における)を例示的に示す。前記反射部分TSRは、例えば、リアルタイムに対応することができ、ここで、図9Aの曲線C1と同様に、0.05秒の例示的な時間範囲が描かれている。しかしながら、図9Aとは対照的に、図9Eの曲線C5は、消失しない振動が存在する動作シナリオに対応し、THz測定中に前記距離d(図1)の望ましくない変動をもたらす。
【0083】
図9Fにおいて、図9Bの曲線C2と同様に、曲線C6は、時間t1にわたる前記コーナー反射器1006aの移動量、すなわち、図9Eによって描かれるリアルタイムを特徴付ける同じ時間軸を例示的に示す。さらなる実施態様によれば、前記コーナー反射器1006aの時間t1に亘る前記移動量C6は、前記コーナー反射器1006aの前記運動を駆動するために使用される駆動のための(既知の)制御信号および/または上述のような測定によって決定されてもよい。
【0084】
図9Gは、正弦波振動(曲線C7を参照、ミリメートル単位で測定)の形態で例示される距離d(図1)の時間t1にわたる変化を概略的に示す。図9Gの曲線C7は、絶対距離dではなく、むしろ、例えば、前記振動によって引き起こされる距離dの望ましくない時間変化部分を示していることに留意されたい。図9Gから分かるように、前記振動により、絶対距離は、時間とともに約0.2ミリメートル(mm)変化し、これらのTHz信号に基づく層の厚さ測定は、THz送信機110を含む測定経路、THz送信機110から前記物体10への伝送経路、および前記物体10からTHz受信機120への伝送経路を介した信号伝播効果により、少なくとも間接的に前記距離dに依存するから、前記変化は、THz信号に基づく層の厚さ測定に著しい誤差を生じさせる可能性がある。
【0085】
さらなる実施形態によれば、前記変動C7は、例えば前記距離dの測定値の絶対値から前記距離測定値の絶対値の平均値を差し引くことによって、例えば20kHzなどの所定のレートにおける前記距離d(図1)の測定値の絶対値から導出され得る。前記距離測定は、前記距離測定装置130(図1)によって行うのが有利である。
【0086】
さらなる実施形態によれば、関連する時間軸の補正が、第1のパラメータP1および/または第2のパラメータP2に応じて実行されてもよく、ここで、第1のパラメータP1または第2のパラメータP2のいずれかが選択されてもよく、すなわち、関連する三角測量経路のそれぞれの品質測度QMに応じて行われてもよい。
【0087】
さらなる実施態様によれば、前記コーナー反射器1006aの有効移動量は、前記コーナー反射器1006aの実際の移動量(図9Fの曲線C6を参照のこと)に基づいて、また、例えば前記コーナー反射器1006aの実際の移動量C6と距離dの前記変動C7との重ね合わせによって、前記距離dの測定された振動/変動(図9Gの曲線C7を参照のこと)に基づいて決定される。図9Hは、時間t1にわたって得られた有効移動量を示す(曲線C8を参照のこと)。これは、有利には、前記振動による時間変動距離dを説明する。振動は、検出器122に到着する前に反射部分TSRが受ける遅延に影響を及ぼし得るので、それらは、効率的な処理を可能にするために、前記コーナー反射器1006aの移動量と組み合わされてもよい。
【0088】
さらなる実施形態によれば、異なる時間ベースが曲線C6、C7に対して使用される場合、前記曲線C6、C7のうちの少なくとも1つは、例えば、補間またはデシメーションによって、他の曲線に適合されてもよい。
【0089】
さらなる実施態様によれば、コーナー反射器1006aの有効移動量C8は、上記の遅延パラメータを表すことができ、および/または、上記の遅延パラメータとして使用することができ、ここで、前記遅延パラメータは、上記の装置100、100a、100bと上記物体10との間の前記距離dの変動C7(図9G)と同様に、上記光学遅延ステージ1006によって与えられる時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延を考慮して、時間t1に亘る上記遅延信号s2’(図10)の有効遅延を特徴付ける。さらなる実施形態によれば、特に、前記装置100と前記物体10との間の前記距離dの変動C7(図9G)は、非周期的であってもよく、または、例えば、前記振動を生じさせる可能性のある外部の影響に応じて、別の(任意の)形状を含んでもよいことに留意されたい。
【0090】
さらなる実施形態によれば、図9IのTHz時間ベースt1’(図9Iの曲線C9を参照のこと)は、図9Cと同様に、図9Hの曲線C8に基づいて決定されてもよい。換言すれば、曲線C9は、前記サンプリングされた信号C5(図9E)が得られた実時間軸t1を、受信された反射THzパルスTSRに関連するさらなる時間軸t1’にマッピングする。
【0091】
さらなる実施形態によれば、前記THz時間ベースt1’(図9Iの曲線C9を参照のこと)を使用して、サンプリングされた信号C5を、THz時間ベースt1’にわたる前記受信された反射THzパルスTSRの電界(任意の単位における)を表す図9JのTHz時間ベースt1’(図9Jの曲線C10を参照のこと)にマッピングすることができる。さらなる実施形態によれば、曲線C10の等距離補間を適用することができ、これにより曲線C10’が得られる。例えば、振動による前記の望ましくない距離の変動が、前記の信号C10を決定するために考慮されるので、さらなる実施形態によれば、特に正確なTHz信号に基づく層厚測定を実行することを可能にする「振動補償された」信号とみなすことができる。
【0092】
比較のために、図9Jは、更なる曲線C11も示しており、この曲線は、振動を考慮することなく、時間にわたってサンプリングされた信号(THz時間ベースt1’)を表している。曲線C11は、望ましくない振動のために、著しく異なる形状を含み、ここで、更なる好ましい実施形態に係る曲線C10、C10’に基づいて層厚を決定する代わりに、曲線C11に基づいて層厚を決定するときに、対応する誤差が予想され得る。
【0093】
図9E図9Jを参照して上述した実施形態は、さらに好ましい実施形態に従って、望ましくない振動が存在しても、正確な層厚測定または前記層厚の決定が可能であることを例示的に示す。
【0094】
さらに好ましい実施形態によれば、前記装置100、100a、100bは、前記遅延パラメータ(例えば、図9Hの曲線C8を参照のこと)を決定するように構成され、前記遅延信号s2’(図10)の有効遅延を、前記光学遅延ステージ1006によって与えられる時間変動する、好ましくは周期的な所定の遅延、ならびに、例えば、振動による前記装置100、100a、100bと前記物体10との間の前記距離dの(望ましくない)変動を考慮して特徴付ける。ここで、前記装置は、好ましくは、前記遅延パラメータC8に応じて前記層厚t1、t2、t3を決定する(図4A、210)ように構成されている。このようにして、振動(例えば、特にTHz測定中の距離dの変動)の望ましくない効果の補償-もし除去でなければ-を達成することができる。
【0095】
さらに好ましい実施形態によれば、実施形態に係る装置は、有利には、ロボット104(図8)および/または他の位置決めシステム、例えば製造プラントのインライン構成で使用されてもよく、ここで、例えば、位置決めシステム104によって生じる望ましくない振動は、さらに好ましい実施形態に従って、少なくとも部分的に補償されてもよい。このようにして、特に正確な層厚測定を行うことができる。
【0096】
さらに好ましい実施形態によれば、実施形態(例えば、図1図3図5A図5B図6図7による)による距離測定装置130の任意の構成(または組み合わせ)を使用して、距離dの時間t1にわたる変動C7を決定してもよい。
【0097】
更に好ましい実施形態によれば、距離測定装置130は、例えば1kHz、好ましくは10kHzまたは20kHzの所定の測定レートで前記距離dを決定するように構成することができる。さらに好ましい実施形態によれば、距離測定装置130および/または制御装置103は、距離dの時間t1にわたって、例えば測定された距離dに基づいて、変動C7(図9G)を決定することができる。
【0098】
図4Cは、さらに好ましい実施形態に係る方法の簡略化されたフローチャートを概略的に示す。ステップ230において、装置100は、THz信号TSを生成し、所定の第1の時間窓において距離dを決定する。前記距離の前記決定が、例えば20kHzの測定速度で、前記第1の時間窓の間に複数の距離測定を行うことを含むことが好ましい。ステップ232では、装置100は、THz信号TSの反射部分TSRを受信する。ステップ234で、装置100は、例えば、t1=0からt1=0.05の範囲の所定の時間間隔で、シェーカー移動量(図9Fの曲線C6)を決定する。好ましくは、前記第一の時間窓は、前記所定の時間間隔と同一であってもよい。
【0099】
さらに、ステップ234において、前記コーナー反射器1006a(図10)の有効移動量C8(図9H)も、前記コーナー反射器1006aの実際の移動量(図9Fの曲線C6も、ステップ234で同じく決定されるように)に基づいて決定することができ、距離dの変動(図9Gの曲線C7を参照のこと)に基づいて決定することができ、ここで、距離dの前記変動は、例えば、ステップ230で実行されるように、前記第1の時間窓中の前記複数の距離測定値に基づいて決定することができる。一例として、前記コーナー反射器1006aの前記有効移動量C8(図9H)は、例えば、前記コーナー反射器1006aの実際の移動量C6と、前記距離dの前記変動C7との重ね合わせによって得られてもよい。
【0100】
ステップ236(図4C)では、前記層11、12、13(図2)のうちの1つ以上の厚さは、図4Cのステップ234で決定された前記有効移動量C8に基づいて、且つステップ232で得られた前記THz信号TSの受信された前記反射部分TSRに基づいて決定され得る。
【0101】
さらに好ましい実施形態によれば、ステップ230、232、234、236の少なくとも一部またはそれらのサブステップも、少なくとも部分的に重複して、または同時に実行することができる。一例として、前記距離dの判定と前記シェーカー移動量の判定とを同時に行っても準同時的に行ってもよい。
【0102】
図11は、さらに好ましい実施形態に係る、制御装置1030の簡略ブロック図を概略的に示す。さらに好ましい実施形態によれば、図1の任意選択の制御装置103は、図11の制御装置1030と同一または少なくとも類似した構成を含んでもよい。
【0103】
さらに好ましい実施形態によれば、制御装置1030は、コンピュータプログラムPRGを少なくとも一時的に記憶するために、少なくとも1つの計算ユニット1032と、前記少なくとも1つの計算ユニット1032に関連付けられた(すなわち、使用可能な)少なくとも1つのメモリユニット1034と、を備え、コンピュータプログラムPRGは、少なくとも一時的に、装置100の制御装置1030および/または装置100および/または少なくとも1つの構成要素104、110、120、130の動作を制御するように構成されている。さらに好ましい実施形態によれば、コンピュータプログラムPRGは、実施形態に係る方法を実行するように構成されている。
【0104】
さらに好ましい実施形態によると、計算ユニット1032は、以下の要素、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラマブル論理素子(例えば、FPGA、フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC (特定用途向け集積回路)、ハードウェア回路のうちの少なくとも1つを備える。さらに好ましい実施形態によれば、これらの要素の2つ以上の任意の組み合わせも可能である。
【0105】
さらに好ましい実施形態によれば、メモリユニット1034は、以下の要素、揮発性メモリ1034a、特にランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリ1034b、特にフラッシュEEPROMのうちの少なくとも1つを備える。前記コンピュータプログラムPRGは、前記不揮発性メモリ1034bに格納されることが好ましい。
【0106】
さらに好ましい実施形態によれば、制御装置1030は、THz送信機110および/またはTHz受信機120および/または距離測定装置130とのデータ通信D1を可能にする第1のインターフェース1036を備える。
【0107】
さらに好ましい実施形態は、物体の表面上に配置された複数の層の層厚を決定するための実施形態および/または実施形態に係る方法の使用に関する。好ましくは、物体および/または物体の前記表面は導電性であってもよく、または誘電性材料を含んでもよく、好ましくは、前記複数の層の最上層はクリアーコートを含み、好ましくは、前記最上層に隣接する第2の層は、ベースコートを含む。一例として、前記物体は、自動車のような車両の一部を表すことができ、前記複数の層は、塗装層を含むことができる。
【0108】
好ましい実施形態に係る原理は、前記距離dおよび/または前記距離dの変動を正確に決定することを可能にし、その結果、正確なTHz信号に基づく層厚測定を行うことができ、ここで、前記層厚の決定は、前記距離dおよび/または前記距離dの変動を考慮に入れて行うことができる。特に、上述の好ましい実施形態の少なくともいくつかは、以下の利点、a)例えば、サブμm(マイクロメートル)範囲までの高精度、b)光学三角測量センサの光軸とTHz測定ヘッド102の光軸との間の角変位、最大1°(度)まで、c)距離測定値(例えば、+/-10mm)に関して大きな動作範囲、d)物体10までの前記距離dの比較的大きな値(図1)への適合性、e)THz信号TSおよび/または光学三角測量センサの光軸および/または測定スポットを位置合わせする可能性、f)層11、12、13および物体10の構造および/または形状、特に表面層13(つや消し/光沢表面)の独立性、 g)費用対効果のうちの少なくとも1つを一時的に提供することができる。
【0109】
さらに好ましい実施形態によれば、光学三角測量センサ以外の1つまたは複数の距離測定装置を採用することも可能である。さらに好ましい実施形態によれば、次の測定原理、電気距離測定装置、音響距離測定装置、光学三角測量センサ以外の光学距離測定装置のうちの少なくとも1つに基づく1つ以上の距離測定装置も、代替的または追加的に、光学三角測量センサに使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図10
図11