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特許7504920ポリアリーレンスルフィドを形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィドを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/0281 20160101AFI20240617BHJP
【FI】
C08G75/0281
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021568522
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2020035051
(87)【国際公開番号】W WO2020263494
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】62/868,162
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヘンドリヒ・エイ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505949(JP,A)
【文献】特開平01-306426(JP,A)
【文献】特開2003-105099(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070335(WO,A1)
【文献】特開平05-239210(JP,A)
【文献】特開昭62-223231(JP,A)
【文献】特表2021-521313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/0281
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィドを形成するための方法であって、ポリアリーレンスルフィドを、第1の洗浄段階及びそれに続く第2の洗浄段階を含む洗浄サイクルに付すことを含み、前記第1の洗浄段階はポリアリーレンスルフィドを第1の洗浄溶液と接触させることを含み、前記第2の洗浄段階はポリアリーレンスルフィドを別の第2の洗浄溶液と接触させることを含み、前記第1の洗浄溶液は水と50重量%以上の量の有機溶媒を含み、前記第2の洗浄溶液は50重量%以上の量の水を含み、更に前記第2の洗浄溶液は90℃以上の温度である上記方法。
【請求項2】
前記有機溶媒が非プロトン性有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒がN-メチルピロリドンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の洗浄段階が、前記ポリアリーレンスルフィドを前記第1の洗浄溶液と接触させる1~10の洗浄工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が第1の洗浄溶液の50重量%~99重量%を構成し、水が前記第1の洗浄溶液の1重量%~50重量%を構成する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の洗浄段階が、前記ポリアリーレンスルフィドを前記第2の洗浄溶液を接触させる1~20の洗浄工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の洗浄溶液が95重量%以上の量の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の洗浄溶液がアセトンを概して含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の洗浄溶液がアセトンを概して含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄サイクルに付した後において、前記ポリアリーレンスルフィドは175ppm以下の揮発性化合物含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアリーレンスルフィドが、75ppm以下のメシチルオキシド含量、65ppm以下のブチロラクトン含量、20ppm以下のN-メチルピロリドン含量、及び/又は4ppm以下のpDCB含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄サイクルに付した後において、前記ポリアリーレンスルフィドは0.5重量%~2重量%のオリゴマー含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリアリーレンスルフィドを、沈降カラム内において、第1の洗浄溶液、第2の洗浄溶液、又は両方と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアリーレンスルフィドが線状ポリフェニレンスルフィドである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアリーレンスルフィドを、前記第1の洗浄溶液、前記第2の洗浄溶液、又は両方から分離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄サイクルの後に前記ポリアリーレンスルフィドを乾燥することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリアリーレンスルフィドが、ISO試験11443:2005にしたがって1200秒-1の剪断速度及び310℃の温度において求めて100~2,000ポアズの溶融粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリアリーレンスルフィドが20,000~60,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の洗浄溶液が、前記第2の洗浄溶液の温度よりも低い温度にある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ポリアリーレンスルフィドを形成するための方法であって、ポリアリーレンスルフィドを、第1の洗浄溶液と第2の洗浄溶液をポリアリーレンスルフィドと接触させる洗浄サイクルに付すことを含み、前記第1の洗浄溶液は水と50重量%以上の量の有機溶媒とを含み、前記第1及び第2の洗浄溶液はアセトンを概して含まず、前記第2の洗浄溶液は90℃以上の温度であり、更に前記洗浄サイクルに付した後において、前記ポリアリーレンスルフィドは175ppm以下の揮発性化合物含量及び0.5重量%~2重量%のオリゴマー含量を有する上記方法。
【請求項21】
前記ポリアリーレンスルフィドが、75ppm以下のメシチルオキシド含量、65ppm以下のブチロラクトン含量、20ppm以下のN-メチルピロリドン含量、及び/又は4ppm以下のpDCB含量を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機溶媒が非プロトン性有機溶媒を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記有機溶媒がN-メチルピロリドンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機溶媒が第1の洗浄溶液の50重量%~99重量%を構成し、水が前記第1の洗浄溶液の1重量%~50重量%を構成する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の洗浄溶液が95重量%以上の量の水を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の洗浄溶液が、前記第2の洗浄溶液の温度よりも低い温度にある、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年6月28日の出願日を有する米国仮特許出願62/868,162(その全部を参照として本明細書中に包含する)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリアリーレンスルフィドは、高い熱的、化学的、及び機械的ストレスに耐えることができ、広範囲の用途において有益に利用されている高性能ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、一般に有機アミド溶媒中でのジハロ芳香族モノマーとアルカリ金属スルフィド又はアルカリ金属ヒドロスルフィドとの重合によって形成される。形成後、ポリアリーレンスルフィドを洗浄して、溶媒、未反応のモノマー、及び他の不純物からポリマーを分離する。多くの従来の洗浄溶液は、ポリアリーレンスルフィドから反応溶媒及び相当量の部分重合オリゴマーを速やかに除去するために、アセトンを用いることに依拠している。残念なことに、かかる溶液で洗浄したポリアリーレンスルフィドは、残留量のメシチルオキシド(MO)、メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(MMP)、及び/又はブチロラクトン(BL)のような幾つかの悪臭化合物(これらはアセトンとNMPが接触する際に形成される)を含む傾向がある。したがって、現在、低いレベルの悪臭化合物を有するポリアリーレンスルフィド、及び改良されたポリアリーレンスルフィドの洗浄方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によれば、ポリアリーレンスルフィドを形成するための方法が開示される。この方法は、ポリアリーレンスルフィドを、第1の洗浄段階及びそれに続く第2の洗浄段階を含む洗浄サイクルに付すことを含む。第1の洗浄段階はポリアリーレンスルフィドを第1の洗浄溶液を接触させることを含み、第2の洗浄段階はポリアリーレンスルフィドを第2の洗浄溶液と接触させることを含む。第1の洗浄溶液は約50重量%以上の量の有機溶媒を含み、第2の洗浄溶液は約50重量%以上の量の水を含む。更に、第2の洗浄溶液は約90℃以上の温度である。
【0004】
[0004]本発明の他の実施形態によれば、ポリアリーレンスルフィドを形成するための方法が開示される。この方法は、ポリアリーレンスルフィドを、1種類以上の洗浄溶液をポリアリーレンスルフィドと接触させる洗浄サイクルに付すことを含む。洗浄溶液は概してアセトンを含まない。更に、洗浄サイクルに付した後において、ポリアリーレンスルフィドは、約175ppm以下の揮発性化合物含量、及び約0.5重量%~約2重量%のオリゴマー含量を有する。
【0005】
[0005]本発明は、以下の図面を参照してより良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]図1は、本発明において用いることができる沈降カラムの一実施形態を示す。
図2】[0007]図2は、図1の沈降カラムのスラリー入口における中央セクションの断面上面図を示す。
図3】[0008]図3は、本発明において用いることができる沈降カラムの中央セクションの縦断面形状の幾つかの異なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0009]本議論は代表的な実施形態のみの記載であり、本発明のより広い形態を限定することは意図しないことが当業者によって理解される。
[0010]一般的に言うと、本発明は、揮発性化合物(具体的には、メシチルオキシド(MO)、メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン(MMP)、ブチロラクトン(BL)、ジアセトンアルコール(DAA)、チオフェノール(PhSH)、p-ジクロロベンゼン(pDCB)、メチルチオフェノール(MeSPh)、及び/又はN-メチルピロリドン(NMP)が挙げられる)の比較的低い含量を有するポリアリーレンスルフィドを形成するための方法に関する。より詳しくは、本発明のポリアリーレンスルフィドは、約175ppm以下、幾つかの実施形態においては約100ppm以下、幾つかの実施形態においては0~約50ppmの揮発分含量を有し得る。かかる化合物は、不快臭を有り得るか、或いは不快臭を有する他の化合物への前駆体であり得る。例えば、本ポリアリーレンスルフィドは、約75ppm以下、幾つかの実施形態においては約60ppm以下、幾つかの実施形態においては約50ppm以下、幾つかの実施形態においては0~約25ppmのMO含量を有し得る。本ポリアリーレンスルフィドはまた、約65ppm以下、幾つかの実施形態においては約55ppm以下、幾つかの実施形態においては約40ppm以下、幾つかの実施形態においては0~約35ppmのBL含量を有し得る。更に、本ポリアリーレンスルフィドは、約20ppm以下、幾つかの実施形態においては約15ppm以下、幾つかの実施形態においては0~約10ppmのNMP含量、並びに約4ppm以下、幾つかの実施形態においては約3.5ppm以下、幾つかの実施形態においては0~約3ppmのpDCB含量を有し得る。本発明者らは、かかる低い揮発分レベルは、ポリアリーレンスルフィドをそれが形成された後に洗浄する方法を選択的に制御することによって達成することができることを見出した。
【0008】
[0011]より詳しくは、ポリアリーレンスルフィドを、ポリアリーレンスルフィドを主成分として有機溶媒を含む第1の洗浄溶液と接触させる第1の洗浄段階を含む洗浄サイクルに付す。必ずしも必須ではないが、有機溶媒は通常は非プロトン性溶媒である。特に好適な非プロトン性溶媒でとしては、例えば、ハロゲン含有溶媒(例えば、塩化メチレン、1-クロロブタン、クロロベンゼン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、及び1,1,2,2-テトラクロロエタン);エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び1,4-ジオキサン);ケトン溶媒(例えば、アセトン及びシクロヘキサノン);エステル溶媒(例えば酢酸エチル);ラクトン溶媒(例えばブチロラクトン);カーボネート溶媒(例えば、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート);アミン溶媒(例えば、トリエチルアミン及びピリジン);ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル及びスクシノニトリル);アミド溶媒(例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、及びN-メチルピロリドン);ニトロ含有溶媒(例えば、ニトロメタン及びニトロベンゼン);スルフィド溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン);などが挙げられる。勿論、他のタイプの有機溶媒を用いることもできる。例えば幾つかの実施形態においては、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);カルボン酸(例えばギ酸);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール);などのようなプロトン性溶媒を用いることができる。特に好適なプロトン性溶媒は、エタノール、プロパノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような脂肪族アルコールである。勿論、他のタイプの有機溶媒を用いることもできる。例えば幾つかの実施形態においては、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);カルボン酸(例えばギ酸);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール);などのようなプロトン性溶媒を用いることができる。特に好適なプロトン性溶媒は、エタノール、プロパノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような脂肪族アルコールである。
【0009】
[0012]第1の洗浄段階には、1つ又は複数の別個の洗浄工程を含ませることができる。例えば、第1の洗浄段階に、第1の洗浄溶液をポリアリーレンスルフィドと接触させる1~10、幾つかの実施形態においては1~6、幾つかの実施形態においては2~4の別個の工程を含ませることができる。この段階中において、液体に対する固形物(例えばポリマー)の比は、通常は約1~約10、幾つかの実施形態においては約2~約8の範囲である。第1の洗浄段階はまた、一般に約1分~約500分、幾つかの実施形態においては約5分~約360分の時間の間行う。それとは関係なく、第1の洗浄溶液は、一般に第1の洗浄溶液の約50重量%以上、幾つかの実施形態においては約60重量%以上、幾つかの実施形態においては約75重量%以上、幾つかの実施形態においては約85重量%~約100重量%の量の有機溶媒を含む。かかる「溶媒リッチ」の洗浄溶液を使用することによって、そうでなければ臭気を生成するであろう有機不純物を容易に除去することができ、オリゴマーが除去される程度を最小にすることができる。幾つかの場合においては、約95重量%以上(例えば100重量%)の量の有機溶媒を含む第1の洗浄溶液を用いることが望ましい可能性がある。しかしながら、他の実施形態においては、第1の洗浄溶液にはまた、有機溶媒がより短いポリマー鎖を除去する程度を非意図的に最小にするのを助けるために、水を含ませることもできる。かかる混合物を用いる場合には、有機溶媒は、通常は第1の洗浄溶液の約50重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約98重量%、幾つかの実施形態においては約75重量%~約96重量%、幾つかの実施形態においては約85重量%~約95重量%を構成し、一方で水は、通常は第1の洗浄溶液の約1~約50重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約4重量%~約25重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約15重量%を構成する。
【0010】
[0013]第1の洗浄段階の後、ポリアリーレンスルフィドはまた、ポリアリーレンスルフィドを、主成分として水(例えば、脱イオン水、リサイクル水等)を含む第2の洗浄溶液と接触させる第2の洗浄段階に付すことができる。第2の洗浄段階には、1つ又は複数の別個の洗浄工程を含ませることができる。例えば、第2の洗浄段階に、第2の洗浄溶液をポリアリーレンスルフィドと接触させる1~20、幾つかの実施形態においては2~15、幾つかの実施形態においては4~10の別個の工程を含ませることができる。この段階中において、液体に対する固形物(例えばポリマー)の比は、通常は約1~約10、幾つかの実施形態においては約2~約8の範囲である。第1の洗浄段階はまた、一般に約1分~約500分、幾つかの実施形態においては約5分~約360分の時間の間行う。これとは関係なく、第2の洗浄溶液は、一般に第1の洗浄溶液の約50重量%以上、幾つかの実施形態においては約70重量%以上、幾つかの実施形態においては約80重量%以上、幾つかの実施形態においては約85重量%~約100重量%の量の水を含む。幾つかの場合においては、約95重量%以上(例えば100重量%)の量の水を含む第2の洗浄溶液を用いることが望ましい可能性がある。しかしながら、他の実施形態においては、第2の洗浄溶液にはまた、所望の場合には有機溶媒を含ませることもできる。かかる混合物を用いる場合には、有機溶媒は、通常は第2の洗浄溶液の約0.1重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~20重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約10重量%を構成し、一方で水は、通常は第1の洗浄溶液の約70重量%~約99.9重量%、幾つかの実施形態においては約80重量%~約99.8重量%、幾つかの実施形態においては約90重量%~約99.5重量%を構成する。かかる「水リッチ」の洗浄工程を使用することにより、短鎖ポリマー分子の過剰な除去を引き起こすことなく、残留有機溶媒、未反応の化合物、及び/又は不純物をポリマーから抽出するのが助けられる。
【0011】
[0014]特に、第1及び第2の洗浄溶液は、殆どの実施形態において、アセチル化合物(例えばアセトン及び/又は酢酸)を、かかる化合物が約0.1重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.05重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.01重量%以下の量で存在するという点で概して含まない。理論によって限定されることは意図しないが、本発明者らは、かかる洗浄溶液を使用することによって、そうでなければアセチルベースの洗浄プロセスにおいて生成する臭気を発生する副反応の程度を最小にすることができると考える。勿論、安定剤、界面活性剤、pH調整剤等のような種々の他の好適な材料を、洗浄溶液中において用いることもできる。例えば、塩基性のpH調整剤を使用して、洗浄溶液のpHを、所望のレベル(通常は7より高く、幾つかの実施形態においては約8.0~約13.5、幾つかの実施形態においては約9.0~約13.5、幾つかの実施形態においては約11.0~約13.0)に上昇させることを助けることができる。好適な塩基性pH調整剤としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物等、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。更に、この溶液はまた、特にリサイクル溶液を用いる場合には、低レベルの不純物(例えば、塩化物、ナトリウム、モノマー及び溶媒の分解の生成物等)も含み得る。
【0012】
[0015]洗浄サイクル中に用いる成分の特性を選択的に制御することに加えて、本発明者らは、特定の洗浄温度を使用することにより、得られるポリマーの純度を向上させ、並びに洗浄プロセスの効率を増大させることができることも見出した。例えば、第1の「水リッチ」の洗浄溶液は、通常は、約90℃以上、幾つかの実施形態においては約90℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約95℃~約180℃、幾つかの実施形態においては約100℃~約160℃の温度である。「水リッチ」の溶液に関してかかる高い温度を用いることにより、残留するオリゴマーが溶融するので、それらをより容易に抽出できると考えられる。第1の「溶媒リッチ」の洗浄溶液の温度は変化してよいが、通常は「水リッチ」の溶液に関して用いる温度未満である。例えば、「溶媒リッチ」の溶液の温度は、約10℃~約90℃、幾つかの実施形態においては約15℃~約80℃、幾つかの実施形態においては約20℃~約60℃、幾つかの実施形態においては約25℃~約50℃であってよい。特に、「溶媒リッチ」の溶液に関してより低い温度を用いることにより、オリゴマーが除去される程度を最小にすることができ、より少ない加熱しか必要でないので経済的に有利である。幾つかの場合においては、加熱は、混合物中の溶媒の大気圧沸点より高い温度で行うことができる。かかる実施形態においては、加熱は、通常は1気圧より高く、幾つかの実施形態においては約2気圧より高く、幾つかの実施形態においては約3~約10気圧のような比較的高い圧力下で行う。
【0013】
[0016]上記に記載のプロセスにより、本発明者らは、ポリアリーレンスルフィドが比較的高いオリゴマー含量を保持することができ、これにより溶融粘度を最小にするのが助けられることを見出した。例えば、オリゴマー含量は、約0.5重量%~約2重量%、幾つかの実施形態においては約0.8重量%~約1.8重量%、幾つかの実施形態においては約1.2重量%~約1.6重量%の範囲であり得る。ポリアリーレンスルフィドはまた、ISO試験11443:2005にしたがって1200秒-1の剪断速度及び310℃の温度において求めて約4,000ポアズ以下、幾つかの実施形態においては約2,500ポアズ以下、幾つかの実施形態においては約100~約2,000ポアズの溶融粘度を有し得る。更に、ポリアリーレンスルフィドの結晶化温度もまた、約240℃以下、幾つかの実施形態においては約230℃以下、幾つかの実施形態においては約180℃~約225℃のように比較的低く保持することができる。ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量もまた、約10,000~約120,000ダルトン、幾つかの実施形態においては約15,000ダルトン~約110,000ダルトン、幾つかの実施形態においては約20,000~約100,000ダルトンであり得る。多分散指数(重量平均分子量を数平均分子量で割った値)は比較的低くあり得るので、狭い粒径分布を有する粒子により容易に成形されるポリマーが与えられる。例えば、ポリアリーレンスルフィドの多分散指数は、約4.3以下、幾つかの実施形態においては約4.1以下、幾つかの実施形態においては約2.0~約4.0であり得る。ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量は、例えば約5,000~約80,000ダルトン、幾つかの実施形態においては約10,000ダルトン~約70,000ダルトン、幾つかの実施形態においては約20,000~約60,000ダルトンであり得る。
【0014】
[0017]ここで、下記において本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリアリーレンスルフィド
[0018]ポリアリーレンスルフィドは、一般に、式:
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、Ar、Ar、Ar、及びArは、独立して6~18炭素原子のアリーレン単位であり;
W、X、Y、及びZは、独立して、-SO-、-S-、-SO-、-CO-、-O-、-C(O)O-、又は1~6炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり、連結基の少なくとも1つは-S-であり;
n、m、i、j、k、l、o、及びpは、独立して、0、1、2、3、又は4であり、但しこれらの合計は2以上である)
の繰り返し単位を有する。
【0017】
[0019]アリーレン単位のAr、Ar、Ar、及びArは、選択的に置換又は非置換であってよい。有利なアリーレン単位は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン、及びフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは、通常は約30モル%より多く、約50モル%より多く、又は約70モル%より多いアリーレンスルフィド(-S-)単位を含む。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも約85モル%の、2つの芳香環に直接結合しているスルフィド連結基を含んでいてよい。1つの特定の実施形態においては、ポリアリーレンスルフィドは、本発明においてその成分としてフェニレンスルフィド構造:-(C-S)-(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0018】
[0020]ポリアリーレンスルフィドはホモポリマー又はコポリマーであってよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的な組み合わせによって、2以上の異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。例えば、p-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼン又は4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて用いる場合には、式:
【0019】
【化2】
【0020】
の構造を有するセグメント、及び式:
【0021】
【化3】
【0022】
の構造を有するセグメント、又は式:
【0023】
【化4】
【0024】
の構造を有するセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0021]1種類又は複数のポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、又は架橋型であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、通常は80モル%以上の繰り返し単位:-(Ar-S)-を含む。かかる線状ポリマーはまた、少量の分岐単位又は架橋単位を含んでいてもよいが、分岐又は架橋単位の量は、通常はポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1モル%未満である。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記に記載の繰り返し単位を含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。また、半線状ポリアリーレンスルフィドは、3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種類以上のモノマーをポリマー中に導入した架橋構造又は分岐構造を有していてよい。
【0025】
[0022]一般に、ポリアリーレンスルフィドを合成するために種々の技術を用いることができる。例として、ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスには、ヒドロスルフィドイオンを与える材料(例えばアルカリ金属硫化物)を、有機アミド溶媒中でジハロ芳香族化合物と反応させることを含めることができる。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、又はこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物が水和物又は水性混合物である場合には、アルカリ金属硫化物を、重合反応の前に脱水操作によって処理することができる。アルカリ金属硫化物はまた、in situで生成させることもできる。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を反応中に含ませて、アルカリ金属硫化物と共に非常に少量で存在する可能性があるアルカリ金属ポリスルフィド又はアルカリ金属チオスルフェートのような不純物を除去するか又は(例えばかかる不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
【0026】
[0023]ジハロ芳香族化合物は、限定なしに、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、又はジハロジフェニルケトンであってよい。ジハロ芳香族化合物は、単独か又はその任意の組合せのいずれかで用いることができる。具体的な代表的ジハロ芳香族化合物としては、限定なしに、p-ジクロロベンゼン;m-ジクロロベンゼン;o-ジクロロベンゼン;2,5-ジクロロトルエン;1,4-ジブロモベンゼン;1,4-ジクロロナフタレン;1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン;4,4’-ジクロロビフェニル;3,5-ジクロロ安息香酸;4,4’-ジクロロジフェニルエーテル;4,4’-ジクロロジフェニルスルホン;4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4’-ジクロロジフェニルケトン;を挙げることができる。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であってよく、同じジハロ芳香族化合物中の2つのハロゲン原子は、同一か又は互いと異なっていてよい。一実施形態においては、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、又はこれらの2以上の化合物の混合物をジハロ芳香族化合物として用いる。当該技術において公知なように、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するか、或いは重合反応及び/又はポリアリーレンスルフィドの分子量を調節するために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物ではない)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0027】
[0024]決して必須ではないが、ポリアリーレンスルフィドは、幾つかの実施形態においては少なくとも2つの別々の形成段階を含む多段階プロセスで形成することができる。形成プロセスの1つの段階には、有機アミド溶媒の加水分解生成物及び硫化水素アルカリ金属を含む複合体を、ジハロ芳香族モノマーと反応させてプレポリマーを形成することを含めることができる。プロセスの他の段階には、プレポリマーを更に重合して最終生成物を形成することを含めることができる。場合によっては、このプロセスに、有機アミド溶媒とアルカリ金属硫化物を反応させて複合体を形成する更に他の段階を含めることができる。異なる段階は単一の反応器内又は異なる反応器内で行うことができる。
【0028】
[0025]例えば一実施形態においては、多段階プロセスを用いることができ、このプロセスの第1の反応段階は、反応器内で有機アミド溶媒とアルカリ金属硫化物を反応させて、有機アミド溶媒(例えばアルカリ金属有機アミンカルボン酸塩)とアルカリ金属ヒドロスルフィドの加水分解生成物を含む複合体を形成することを含む。ポリアリーレンスルフィドの形成において用いることができる代表的な有機アミド溶媒としては、限定なしに、N-メチル-2-ピロリドン;N-エチル-2-ピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド、及びこれらの混合物を挙げることができる。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、又はこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物はまた、in situで生成させることもできる。例えば、硫化ナトリウム水和物は、第1の反応器内において、この反応器に供給することができる硫化水素ナトリウム及び水酸化ナトリウムから生成させることができる。硫化水素アルカリ金属とアルカリ金属水酸化物の組み合わせを反応器に供給してアルカリ金属硫化物を形成する場合には、硫化水素アルカリ金属に対するアルカリ金属水酸化物のモル比は約0.80~約1.50の間であってよい。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を第1の反応器中に含ませて、アルカリ金属硫化物と共に非常に少量で存在する可能性があるアルカリ金属ポリスルフィド又はアルカリ金属チオスルフェートのような不純物を除去するか又は(例えばかかる不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
【0029】
[0026]反応器への供給流には、硫化ナトリウム(NaS)(水和形態であってよい)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、及び水を含ませることができる。水、硫化ナトリウム、及びNMPの間の反応によって、下記の反応スキームにしたがって、ナトリウムメチルアミノブチレート(SMAB:NMPの加水分解生成物)、及び硫化水素ナトリウム(NaSH)を含む複合体(SMAB-NaSH)を形成することができる。
【0030】
【化5】
【0031】
[0027]一実施形態によれば、化学量論的に過剰のアルカリ金属硫化物を用いることができるが、これは形成段階の必須要件ではない。例えば、供給流中におけるイオウに対する有機アミド溶媒のモル比は、約2~約10、又は約3~約5であってよく、供給流中におけるイオウ源物質に対する水のモル比は、約0.5~約4、又は約1.5~約3であってよい。
【0032】
[0028]複合体の形成中においては、反応器内の圧力は大気圧又はその付近に保持することができる。低圧反応条件を維持するために、反応器から蒸気を取り出すことができる。蒸気の主成分としては、水及び硫化水素副生成物を挙げることができる。蒸気の硫化水素は、例えば凝縮器において分離することができる。かかる凝縮器において分離される水の一部は、反応条件を維持するために反応器に戻すことができる。水の他の部分は、第1段階において形成されるSMAB-NaSH溶液を脱水するためにプロセスから取り出すことができる。例えば、第1の反応器の生成物溶液中のNaSHに対する水のモル比(又はイオウに対する酸素の比)は、約1.5未満にすることができ、或いは約0.1~約1の間にすることができ、これにより第2段階反応器に供給されるSMAB-NaSH複合体がほぼ無水になるようにすることができる。
【0033】
[0029]形成されたら、SMAB-NaSH複合体は、次にプロセスの第2段階においてポリアリーレンスルフィドプレポリマーを形成するために、ジハロ芳香族モノマー(例えばp-ジクロロベンゼン)及び好適な溶媒と反応させることができる。これは、プロセスの第1段階と同じか又は異なる反応器内で行うことができる。充填するアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたりの1種類又は複数のジハロ芳香族モノマーの量は、概して1.0~約2.0モル、幾つかの実施形態においては約1.05~約2.0モル、幾つかの実施形態においては約1.1~約1.7モルであってよい。所望の場合には、複合体の硫化水素アルカリ金属に対するジハロ芳香族モノマーの比較的低いモル比を用いることができる。例えば、イオウに対するジハロ芳香族モノマーの比は、約0.8~約1.5、幾つかの実施形態においては約1.0~約1.2であってよい。複合体の硫化水素アルカリ金属に対するジハロ芳香族モノマーの比較的低い比は、縮合重合反応によって最終的な高分子量のポリマーを形成するために好都合である可能性がある。第2段階におけるイオウに対する溶媒の比も、比較的低くてよい。例えば、第2段階における有機アミド溶媒(加えられる溶媒、及び複合体溶液中に残存している溶媒を含む)に対する複合体の硫化水素アルカリ金属の比は、約2~約2.5であってよい。この比較的低い比によって反応器内の濃度を増加させることができ、これによって相対重合速度及び体積あたりのポリマー生産速度を増加させることができる。
【0034】
[0030]第2段階重合反応は、一般に約200℃~約280℃、又は約235℃~約260℃の温度で行うことができる。第2段階の継続時間は、例えば約0.5~約15時間、又は約1~約5時間であってよい。第2段階重合反応の後は、重量平均分子量:Mによって表されるプレポリマーの平均モル質量は、約500g/モル~約30,000g/モル、約1000g/モル~約20,000g/モル、又は約2000g/モル~約15,000g/モルであってよい。
【0035】
[0031]第2段階の生成物は、プレポリマー、溶媒、及び重合反応の副生成物として形成される1種類以上の塩を含み得る。例えば、反応に対する、副生成物として形成される塩のプレポリマーの割合(体積基準)は、約0.05~約0.25、又は約0.1~約0.2であり得る。反応混合物中に含まれる塩は、反応中に副生成物として形成されるもの、及び反応混合物に例えば反応促進剤として加えられる他の塩を含み得る。塩は有機又は無機であってよく、即ち有機又は無機カチオンと有機又は無機アニオンの任意の組み合わせから構成されていてよい。これらは、反応媒体中において少なくとも部分的に不溶であってよく、液体反応混合物のものと異なる密度を有していてよい。一実施形態によれば、第2段階中に形成されるプレポリマー混合物中の塩の少なくとも一部を混合物から除去することができる。例えば、塩は、伝統的な分離プロセスにおいて用いられているスクリーン又は篩を用いることによって除去することができる。或いは又は更には、プレポリマー溶液からの塩の分離において、塩/液体抽出プロセスを用いることができる。一実施形態においては熱濾過プロセスを用いることができ、これにおいては、プレポリマーが溶液中であり、塩が固相中である温度において溶液を濾過することができる。一実施形態によれば、塩分離プロセスによって、第2段階中に形成されるプレポリマー溶液中に含まれる塩の約95%以上を除去することができる。例えば、塩の約99%より多くをプレポリマー溶液から除去することができる。
【0036】
[0032]本プロセスの第2段階におけるプレポリマー重合反応及び濾過プロセスに続いて形成の随意的な第3段階を行うことができ、この間にプレポリマーの分子量を増加させる。ここでも、この段階は第1及び第2段階と同じか又は異なる反応器内で行うことができる。この段階中に用いる反応物質は、第2段階からのプレポリマー溶液。溶媒、1種類以上のジハロ芳香族モノマー、及びイオウ含有モノマーを含み得る。例えば、第3段階において加えるイオウ含有モノマーの量は、生成物ポリアリーレンスルフィドを形成するのに必要な全量の約10%以下であってよい。示されている実施形態においては、イオウ含有モノマーは硫化ナトリウムであるが、これは第3段階の必須要件ではなく、硫化水素アルカリ金属モノマーのような他のイオウ含有モノマーを代わりに用いることができる。
【0037】
[0033]第3の反応の条件はほぼ無水であってよく、イオウ含有モノマーに対する水の比は、約0.2未満、例えば0~約0.2の間である。本プロセスの第3段階中における低い含水量によって、重合速度及びポリマー収量を増加させ、並びに、これらの条件は上記で議論したように求核芳香族置換に好都合であるので、望ましくない副反応の副生成物の形成を減少させることができる。更に、第3段階における圧力の増加は一般に水の揮発によるものであるので、この段階中における低い含水量によって、第3の反応を一定の比較的低い圧力、例えば約1500kPa未満で行うことを可能にすることができる。
【0038】
[0034]第3段階中の反応条件にはまた、イオウ含有モノマーに対する溶媒に関する比較的低いモル比を含ませることができる。例えば、イオウ含有モノマーに対する溶媒の比は、約2~約4、又は約2.5~約3であってよい。第3段階の反応混合物は、約120℃~約280℃、又は約200℃~約260℃の温度に加熱することができ、かくして形成されるポリマーの溶融粘度が所望の最終レベルに上昇するまで重合を継続することができる。第2の重合の工程の経過時間は、例えば約0.5~約20時間、又は約1~約10時間であってよい。形成されるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は公知なように変動する可能性があるが、一実施形態においては約1000g/モル~約500,000g/モル、約2,000g/モル~約300,000g/モル、又は約3,000g/モル~約100,000g/モルにすることができる。第3段階及び任意の所望の形成後処理の後に、ポリアリーレンスルフィドを、通常は所望の構造のダイを装備した押出オリフィスを通して反応器から排出し、冷却し、回収することができる。通常は、ポリアリーレンスルフィドは、有孔ダイを通して排出してストランドを形成することができ、これを水浴内で巻き取り、ペレット化し、乾燥する。ポリアリーレンスルフィドはまた、ストランド、顆粒、又は粉末の形態であってもよい。
【0039】
II.洗浄サイクル
[0035]ポリアリーレンスルフィドを第1及び第2の洗浄溶液と接触させる方法は、所望のように変化させることができる。例えば一実施形態においては、ポリアリーレンスルフィドを、浴、沈降カラム等のような容器内で洗浄溶液を接触させるシステムを用いることができる。例えば図1~3を参照すると、ポリアリーレンスルフィド及び洗浄溶液を受容するように構成されている沈降カラム10の一実施形態が示されている。沈降カラム10には、液体出口20を含む上部セクション12、入口24を含む中央セクション14、及び固形物出口22及び液体入口26を含む下部セクション16を含ませることができる。垂直配列で示しているが、沈降カラムは垂直配列以外で用いることができ、沈降カラムは、入口24から出口22への沈降カラムを通る固形物の流れを重力によって行うことができる限りにおいて、垂直に対して一定の角度であってよい。
【0040】
[0036]上部セクション12及び下部セクション16は、中央セクション14のものよりも大きな断面積を有し得る。一実施形態においては、沈降カラム10の断面は円形の断面形状であってよく、この場合には上部セクション12及び下部セクション16は、中央セクション14の断面直径よりも大きな断面直径を有し得る。例えば、上部セクション12及び下部セクション16は、中央セクションの直径よりも約1.4~約3倍大きな直径を有し得る。例えば、上部及び下部セクションは、独立して、中央セクション14の直径よりも約1.4、約2、又は約2.5倍大きな直径を有し得る。上部セクション12のより大きな断面積によって出口20における固形物のオーバーフローを抑止することができ、下部セクション16のより大きな断面積によって出口22における固形物流の制限を抑止することができる。沈降カラム10はいかなる特定の幾何形状にも限定されず、沈降カラムの断面は円形に限定されないことを理解すべきである。更に、沈降カラムのそれぞれのセクションの断面形状は、他に対して変化させることができる、例えば、上部セクション12、中央セクション14、及び下部セクション16の1つ又は2つが楕円形状の断面を有し得、1つ又は複数の他のセクションが円形の断面形状を有し得る。
【0041】
[0037]沈降カラム10の中央セクション14に入口24を含めることができ、これを通してポリマースラリーを沈降カラム10に供給することができる。スラリーは、ポリアリーレンスルフィドを、反応溶媒(例えばN-メチルピロリドン)、塩副生成物、未反応のモノマー、又はオリゴマー等のような形成プロセスからの他の副生成物と共に含み得る。図2に示すように、入口24は、中央セクション14の壁25に、壁25に対して実質的に接線方向で交わる。ここで用いる「実質的に接線方向」という用語は、中央セクション14の壁25の真の接線と、入口24の外壁27との間の距離によって定めることができる。入口24が完全な接線方向で中央セクションの壁25と交わる場合には、この距離は0である。一般に、この距離は約5cm未満、例えば約3cm未満である。入口24が中央セクション14の外壁25に対して実質的に接線方向になるように入口24を配置することによって、沈降カラム10内の流体の流動パターンが混乱するのを阻止することができる。これによって、下向きに流れる固形物と上向きに流れる液体との間の接触及び物質移動を向上させることができ、上部セクション12の出口20を通って固形物が損失するのを阻止することもできる。固形物が出口20を通して損失しないことを更に確保するために、入口24を、中央セクション14が上部セクション12と交わる接合部23から一定の距離において中央セクション14に配置することができる。例えば、入口24の中心点と接合部23との間の垂直距離は、中央セクション14の全高の約5%以上にすることができる。例えば、入口24の中心点と接合部23との間の垂直距離は、中央セクション14の全高の約5%~約50%にすることができる。中央セクション14の全高は、上部セクション12が中央セクション14と接する接合部23と、中央セクション14が下部セクション16と接する接合部21との間の距離である。
【0042】
[0038]入口24におけるラインによって、スラリーを重合反応装置から沈降カラム10の中央セクション14へ運ぶことができる。沈降カラムの中央セクション14には、中央セクション14の軸長に沿った軸シャフト31及び一連の撹拌ブレード32を含む撹拌装置30を含ませることができる。撹拌装置30によって、沈降(流動床)内における液体のチャネリングを最小にすることができ、スラリー内容物と上向きに流れる溶媒との間の接触を維持し、並びに沈降カラム10を通る固形物の流れを維持することができる。撹拌ブレード32は、軸シャフト31から中央セクション14の壁25に向かって伸長させることができる。一般に、撹拌ブレードは、軸シャフトから壁25までの距離の少なくとも半分伸長させることができ、一実施形態においては、壁25への距離のほぼ全部伸長させることができる。一実施形態においては、沈降カラムは、従来公知の沈降カラムにおいて用いられているような沈降プレート又はトレイを含まなくてよい。
【0043】
[0039]示されているように、軸シャフト31は、一連の撹拌ブレード32を中央セクション14の長さに沿って支持することができる。一般に、少なくとも2つの撹拌ブレード32を、ブレード伸長のそれぞれの点においてバランスの取れた配置で軸シャフト31から伸長させることができる。しかしながら、これは必須要件ではなく、3つ、4つ、又はより多くの撹拌ブレードをシャフト31に沿って単一の位置において軸シャフト31から伸長させることができ、或いは単一のブレードをシャフト31上の単一の位置から伸長させることができ、撹拌ブレードは、使用中に撹拌装置30のバランスが維持されるように、シャフト31の長さに沿って下行するにつれて互いから偏位させることができる。軸シャフト31は、シャフト31に沿った複数の位置においてそれから伸長する複数の撹拌ブレード32を有していてよい。例えば、軸シャフトは、軸シャフト31に沿った約3~約50の位置においてそれから伸長する複数の撹拌ブレードを有していてよく、それぞれの位置において2以上の撹拌ブレード32が軸シャフトから伸長する。一実施形態においては、軸シャフト31に沿ったブレードの分布は、セクション14の上部セクションにおけるブレードの数と比べて多いブレードが、底部における流動床セクション内に存在するようにすることができる。運転中においては、軸シャフト31は、通常は約0.1rpm~約1000rpm、例えば約0.5rpm~約200rpm、又は約1rpm~約50rpmの速度で回転させることができる。
【0044】
[0040]示されている実施形態においては、ポリマースラリー流が洗浄溶液の流れのものに対して反対方向である対向流を用いる。例えば再び図1を参照すると、ポリマースラリーは、入口24を通して沈降カラム10の中央部14に供給する。他方において、洗浄溶液は、入口26を通してカラム10の下部セクション16に供給する。このようにすると、ポリマースラリーをカラムを通して固形物出口22に向かって下向きに流しながら、洗浄溶液をポリマースラリーと接触させながらカラムを通して上向きに流すことができる。所望の場合には、入口26に、固形物を通る流体の流れを向上させ、固形物が入口26に侵入するのを阻止することができる分配器35を含ませることができる。下部セクション16はまた、固形物含量が出口22において濃縮されるように円錐形状を有していてもよい。出口22におけるスラリーの固形物含量は、一般に約20重量%以上、又は幾つかの実施形態においては約22重量%以上であってよい。所望の場合には、洗浄溶液は、上記に記載したように入口26に供給する前に加熱することができる。かかる実施形態においては、沈降カラムに加熱部材を含ませて、洗浄プロセス中において上昇した温度を維持することができる。
【0045】
[0041]所望の場合には、床の頂部から固形物出口22へ固形物の濃度が増加する流動床を沈降カラム内に形成することもできる。沈降カラム内での固形物の滞留時間がより良好に制御されるように、流動床の高さを監視及び制御することができる。沈降カラムに関する滞留時間の改良された制御によって、沈降カラム内で行われる分離プロセスの効率を向上させることができ、これによってより低い運転コスト及び改良された分離をもたらすことができる。更に、流動床の高さ及び滞留時間を制御することによって、上部セクション12の液体出口20を通る固形物の損失を阻止することを助けることができる。センサーを用いて、沈降カラム10内の流動床の高さを監視することができる。センサーのタイプは限定されず、内部センサー及び外部センサーの両方を含む、流動床の高さを監視することができる任意の好適なセンサーであってよい。例えば、センサーは、沈降カラム10内の流動床の高さを求めるために、限定なしに、光学、赤外、高周波、変位、レーダー、泡、振動、音響、熱、圧力、核、及び/又は磁気検出メカニズムを用いることができる。例として、一実施形態においては、レーザーの反射を検出して沈降カラム10内の材料の相対密度差を求めて、それにより流動床の頂部の位置に関する情報を制御システムへ送ることができる光学センサー40(例えばレーザー源及び検出器を含むレーザーベースのセンサー)を、沈降カラム10の中央セクション14内、例えば入口24のレベルの付近に配置することができる。制御システムは、床高さを制御するために、その情報を、出口22における沈降カラムから排出される固形物の流れを制御することができるバルブ、及び/又は入口24における沈降カラム中への固形物の流れを制御することができるバルブにリレーすることができる。また公知なように、沈降カラムに至るライン及び沈降カラムからのライン内にサージタンクを含ませて、流動床の高さの制御を維持することもできる。流動床の高さを制御するための当該技術において公知の他のシステムを代わりに用いることができ、床高さを制御するために用いる方法及びシステムは特に限定されない。流動床の頂部は入口24又はその付近であってよい。沈降カラム10内における固形物の滞留時間の制御を向上させるために、プロセス中の沈降床高さの変動は、中央セクション14の全高の約10%未満で変化させることができる。例えば、プロセス中の流動床の高さの変動は、中央セクション14の全高の約5%未満にすることができる。
【0046】
[0042]図1においては円筒形のカラムとして示しているが、中央セクション14の縦断面形状はこの実施形態に限定されない。例えば、図3に示すように、沈降カラムの中央セクション14a、14b、14cは、14aにおいて示す円筒形の中央セクションから、14b及び14cにおいて示す増加する角度まで、垂直であるか又は増加する角度でテーパー状にすることができる。テーパー状である場合には、固形物の移動を邪魔することなく沈降カラムの底部における固形物濃度を増加させるために、中央セクションは底部におけるよりも頂部において幅広にすることができる。即ち、テーパーの角度が過度に大きいと、固形物流は中央セクションの壁において邪魔される。好ましいテーパー角度は、流速、粒径及び粒子形状のようなシステム内で運ばれる化合物の物理特性に応じて、且つカラム材料及び表面粗さに応じて、それぞれのシステムに関して変化する。
【0047】
[0043]第1及び第2の洗浄段階は、図1~3に示すような単一の装置(例えば沈降カラム)内で行うことができる。かかる実施形態においては、ポリアリーレンスルフィドは、まず入口26を通して第1の洗浄溶液と接触させることができる。第1の洗浄溶液は、ポリマースラリーのものに対して反対の方向でカラムを通して出口20(ここで溶液を除去する)に達するまで流すことができる。その後、ポリアリーレンスルフィドは、入口26を通して第2の洗浄溶液と接触させることができる。第2の洗浄溶液も、ポリマースラリーのものに対して反対の方向でカラムを通して出口20に達するまで流すことができる。勿論、別の実施形態においては、複数の沈降カラムを直接で用いることができ、その1以上が上記に記載のような対向流を有する。例えば一実施形態においては、第1の洗浄溶液を第1の沈降カラムに供給することができ、そこでそれをポリマースラリーのものと反対の方向で出口に達するまで流す。その後、固形物出口により、第1の沈降カラムから第2の沈降カラムのスラリー入口へ固形物を供給することができる。次に、第2の洗浄溶液を、固形物のそれと反対の方向で出口に達するまで第2のカラムを通して流すことができる。
【0048】
[0044]洗浄プロセス中において、ポリアリーレンスルフィドは、通常は(例えば対向流洗浄装置内において)洗浄溶液から分離される。しかしながら、所望の場合には、振動スクリーニング等のような更なる分離技術を用いることもできる。洗浄して分離したら、得られるポリアリーレンスルフィドを、当該技術において公知の任意の技術にしたがって乾燥することができる。乾燥は、約80℃~約250℃、幾つかの実施形態においては約100℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約120℃~約180℃の温度で行うことができる。所望の場合には、乾燥は、雰囲気(例えば空気)中、又は不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム等)の存在下で行うことができる。得られるポリアリーレンスルフィドの得られる純度は、約95%以上、又は約98%以上のように比較的高くすることができる。
【実施例
【0049】
試験方法
[0045]分子量:PPSの試料は、まずトリフルオロ酢酸混合物中の冷HNO(50%)の混合物で酸化することによってPPSOに転化させることができる。得られるPPSOは、温ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中に1時間溶解し、次にPSS-ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)ゲルカラムを装備したGPCによって分子量に関して分析することができる。ゲルカラムには、移動相としてHFIPを用いるHFIP-ゲル保護カラム、及び屈折率(RI)検出器を取り付けることができる。
【0050】
[0046]溶融粘度:溶融粘度は走査剪断速度粘度として求めることができ、ISO試験No.11443:2005(ASTM-D3835-08と技術的に同等である)にしたがって1200秒-1の剪断速度及び約310℃の温度において、Dynisco 7001毛細管流量計を用いて測定することができる。流量計オリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していてよい。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであってよく、ロッドの長さは233.4mmであった。測定の前に、試料を真空オーブン内で150℃において1.5時間乾燥する。
【0051】
[0047]結晶化温度:結晶化温度は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。DSC手順においては、TA Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、試料を、第1の加熱サイクル中に50℃/分の速度で340℃の温度に加熱し、10℃/分の速度で50℃の温度に冷却し、次に第2の加熱サイクル中に50℃/分の速度で340℃の温度に加熱し、再び10℃/分の速度で50℃の温度に冷却する。一般に、ここでは第2の加熱サイクル中に得られる発熱曲線の最も高い位置における温度を「結晶化温度」と呼ぶ。
【0052】
[0048]オリゴマー含量:試料のオリゴマー含量は、試料を、60℃の温度及び1,500psiの圧力において100重量%のクロロホルムを含む抽出溶液と接触させることによって求めることができる。試料を抽出溶液で2回すすいだ後、抽出された溶媒を乾燥し、抽出物の重量を測定する。オリゴマー含量は、抽出物の重量を元の試料の重量で割り、100をかけることによって求められる。
【0053】
[0049]揮発分含量:揮発分含量は、試料を高温にかけ、次に得られる「アウトガス」をトラップし、次に公知の技術を用いてガスクロマトグラフィーによって分析することによって求めることができる。より詳しくは、3.0グラムの乾燥試料をガラスチューブ内に配置し、次に320℃に20分加熱することができる。生成したオフガス又は揮発性物質を、コールドトラップを用いてトラップする。トラップしたら、オフガスを、アセトニトリルの溶液中でガスクロマトグラフィーによって分析して、揮発性化合物(例えば、MO、MMP、BL、DAA、PhSH、MeSPh、pDCB、NMP等)の存在を求める。分析のための内部標準試料としてビフェニルを用いる。
【0054】
[0050]残留灰分:残留無機残渣(例えば塩化ナトリウム)の量を求めるために、灰分試験を行うことができる。より詳しくは、約4グラムの乾燥試料を、石英カバーを有する清浄な磁気るつぼ内に配置することができる。るつぼをマッフル炉内に配置し、750℃に12時間加熱する。冷却した後、デシケーター内でるつぼを室温に冷却する。残留灰分の重量を求める。
【0055】
実施例1
[0051]上記に記載のようにして約35,000ダルトンの数平均分子量を有するポリフェニレンスルフェート(PPS)試料を合成し、NMP及び水中のスラリーとして得た。振動スクリーンを通して篩別することによって、ポリマーを液体部分及びより小さな粒状物から分離した。大部分が100マイクロメートルより大きい寸法を有する固形物の約50~60%の部分を、下表1に示すNMP及び種々の量の水を含む有機洗浄溶液の2回の洗浄工程(室温)に付した。これらの洗浄に続いて6回の熱水洗浄を行い、次にポリマーをオーブン内において105℃、窒素雰囲気下で乾燥した。
【0056】
【表1】
【0057】
[0052]示されるように、有機洗浄液中のNMPのレベルを増加させると、より低いオリゴマー含量が得られた。更に、同じ平均分子量に関して、オリゴマーが増加すると溶融粘度の減少が得られた。
【0058】
実施例2
[0053]上記に記載のようにしてPPS試料を合成し、NMP及び水中のスラリーとして得た。振動スクリーンを通して篩別することによって、ポリマーを液体部分及びより小さな粒状物から分離した。大部分が100マイクロメートルより大きい寸法を有する固形物の約50~60%の部分を、下記に記載する「洗浄方法A」又は「洗浄方法B」のいずれかに付した。
【0059】
洗浄方法A:湿潤状態のポリマーを、室温において試薬グレードのアセトンで再スラリー化した。30分混合した後、それを振動スクリーンを通して篩別して湿潤ポリマーを分離した。洗浄工程を更に2回繰り返した。回収されたポリマーを、室温において水で6回、次に酸性水で洗浄し、10分間混合した。ポリマーを脱イオン水で2回すすいだ。最後に、ポリマーを、105℃、窒素雰囲気下で3時間乾燥した。
【0060】
洗浄方法B:湿潤状態のポリマーを、得られるスラリーが11~13%の固形分であるように、室温において90重量%のN-メチルピロリドン(NMP)及び10重量%の水を含む有機洗浄溶液で再スラリー化した。30分混合した後、振動スクリーンを通して篩別することによって固形物を分離した。洗浄工程を繰り返した。回収されたポリマーを、熱水(90~95℃)で6回洗浄し、次に室温において酸性水と10分間混合した。ポリマーを脱イオン水で2回すすぎ、次に105℃、窒素雰囲気下で3時間乾燥した。
【0061】
[0054]得られたポリマーを、オリゴマー含量、溶融粘度、結晶化温度、揮発分含量(即ちブチロラクトン)、及び残留灰分に関して分析した。結果を下表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
[0055]示されるように、洗浄方法Bを使用すると、洗浄方法Aで洗浄したものと同等の特性を有するPPSポリマーが得られる。しかしながら、洗浄方法Bは、より低いレベルのブチロラクトンを与えた。
【0064】
実施例3
[0056]洗浄方法Aにおいて、湿潤状態のポリマーを、室温において、試薬グレードのアセトン、150ppmのNMP、及び1,500ppmのMOを含む溶液で再スラリー化した他は実施例2に記載のようにしてPPS試料を合成した。得られたポリマーを揮発分含量に関して分析した。結果を下表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
[0057]結果は、NMP及びMOを含むアセトンを用いてPPSを洗浄した場合は、精製フレークは残留レベルのNMP及びアセトンを含むことを示す。これに対して、熱水を用いた場合は、反応成分由来の残留不純物は実質的により低く、アセトンと他の反応成分との反応由来の不純物は存在しない。
【0067】
実施例4
[0058]上記に記載のようにして、約35,000ダルトンの数平均分子量を有するPPS試料を合成し、NMP及び水中のスラリーとして得た。振動スクリーンを通して篩別することによって、ポリマーを液体部分及びより小さな粒状物から分離した。固形分約50%であると求められた湿潤状態のポリマー約18グラムの部分を、10%の水を含む68gのNMP中に再懸濁し、30分撹拌した。液相を、104ミクロンのステンレススチールスクリーンを通した重力濾過によって分離した。水性NMP洗浄工程を2回行った後、ポリマーを68グラムの熱水(60℃又は95℃)で3回洗浄した。それぞれの洗浄工程の後に、液相及びポリマー顆粒の最小量の試料を排出した。熱水によって抽出されたNMP及びpDCB、並びに乾燥後にポリマー中に残留するpDCBの量を測定した。結果を下表4~5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
[0059]結果から示されるように、熱水洗浄の温度を60℃から95℃に上昇させると精製効率が向上し、これによりより純粋なPPSポリマーが得られる。
[0060]本発明の特定の態様を示し且つ記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の他の変更及び修正を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明の範囲内の全てのかかる変更及び修正は添付の特許請求の範囲にカバーされると意図される。
図1
図2
図3