(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】マットレスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/04 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A47C27/04 A
A47C27/04 Z
(21)【出願番号】P 2022030939
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林本 道人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 輝正
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-163565(JP,U)
【文献】特開平06-296534(JP,A)
【文献】特開2018-175673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0083996(US,A1)
【文献】国際公開第2022/192458(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングユニットと、
発泡体で形成された第1部分および前記第1部分を形成する発泡体よりも柔らかい発泡体で形成された第2部分を有し、前記スプリングユニットを囲む壁部材と、を備え、
前記壁部材は、
前記第1部分で形成された複数の第1領域と、
前記スプリングユニットの厚さ方向に重ねられた前記第1部分と前記第2部分とで形成され、前記複数の第1領域の間に位置し、前記第1領域よりも柔らかい第2領域と、を有する、
マットレス。
【請求項2】
前記第2領域における前記第1部分は、前記複数の前記第1領域における前記第1部分に繋がっている、
請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記スプリングユニットは、略直方体状に形成され、
前記壁部材は、前記スプリングユニットの長手方向および幅方向の少なくとも一方において、前記スプリングユニットを挟む一対の側壁を有し、
前記一対の側壁は、前記
複数の前記第1領域と、前記第2領域と、をそれぞれ有し
、
前記一対の側壁の一方が有する前記第2領域は、前記一対の側壁の他方が有する前記第2領域に対向している、
請求項1
または2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記一対の側壁は、間隔をおいて並ぶ、複数の前記第2領域をそれぞれ有している、
請求項
3に記載のマットレス。
【請求項5】
前記スプリングユニットは、周縁部に設けられた枠線を有し、
前記周縁部は、前記一対の側壁の前記一方が有する前記第2領域と前記一対の側壁の前記他方が有する前記第2領域との間において、前記枠線が設けられていない部分を有している、
請求項3または4に記載のマットレス。
【請求項6】
前記長手方向において、前記壁部材と前記スプリングユニットとの間に配置されたクッション材をさらに備え、
前記クッション材は、前記幅方向において、前記第2領域の間に位置している、
請求項3に記載のマットレス。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のマットレスの製造方法であって、
前記スプリングユニットを含む積層体を作業台に置く工程と、
前記作業台に置かれた前記積層体の側周面を囲う枠体を設ける工程と、
前記側周面と前記枠体との間に前記壁部材を形成する工程と、
を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者や身体の不自由な者などの利用者がベッド装置上で容易に姿勢を変更できるように、背上げ機能や膝上げ機能のような補助機能を備えた可動式ベッド装置が知られている。このような可動式ベッド装置の床板面には、マットレスが配置される。例えば、特許文献1には、可動式ベッド用マットレス保持システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動式ベッド装置用マットレスなどのように利用者の姿勢に応じて折り曲げ可能なマットレスが要望されている。上記の特許文献1に開示されたマットレスであっても、折り曲げ可能なマットレスには種々の改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、利用者の姿勢に応じた折り曲げに対応することができるマットレスおよびその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマットレスは、スプリングユニットと、発泡体で形成された第1部分および前記第1部分を形成する発泡体よりも柔らかい発泡体で形成された第2部分を有し、前記スプリングユニットを囲む壁部材と、を備え、前記壁部材は、前記第1部分で形成された複数の第1領域と、前記スプリングユニットの厚さ方向に重ねられた前記第1部分と前記第2部分とで形成され、前記複数の第1領域の間に位置し、前記第1領域よりも柔らかい第2領域と、を有する。
【0007】
前記第2領域における前記第1部分は、前記複数の前記第1領域における前記第1部分に繋がってもよい。
【0008】
前記スプリングユニットは、略直方体状に形成され、前記壁部材は、前記スプリングユ
ニットの長手方向および幅方向の少なくとも一方において、前記スプリングユニットを挟
む一対の側壁を有し、前記一対の側壁は、前記複数の前記第1領域と、前記第2領域と、をそれぞれ有してもよい。前記一対の側壁の一方が有する前記第2領域は、前記一対の側壁の他方が有する前記第2領域に対向してもよい。前記一対の側壁は、間隔をおいて並ぶ、複数の前記第2領域をそれぞれ有してもよい。前記スプリングユニットは、周縁部に設けられた枠線を有してもよい。前記周縁部は、前記一対の側壁の前記一方が有する前記第2領域と前記一対の側壁の前記他方が有する前記第2領域との間において、前記枠線が設けられていない部分を有してもよい。前記マットレスは、前記長手方向において、前記壁部材と前記スプリングユニットとの間に配置されたクッション材をさらに備えてもよい。前記クッション材は、前記幅方向において、前記第2領域の間に位置してもよい。
【0009】
本発明の一態様に係るマットレスの製造方法は、前記スプリングユニットを含む積層体を作業台に置く工程と、前記作業台に置かれた前記積層体の側周面を囲う枠体を設ける工程と、前記側周面と前記枠体との間に前記壁部材を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者の姿勢に応じた折り曲げに対応することができるマットレスおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るマットレスの概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、マットレスが備える内装体の概略的な斜視図である。
【
図3】
図3は、マットレスが備える内装体の概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、マットレスが備える内装体の概略的な側面図である。
【
図5】
図5は、マットレスが備える内装体の概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すVI部の概略的な部分拡大図である。
【
図7】
図7は、壁部材の形成に関する工程を示す概略的な断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す作業台の概略的な部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態につき図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、マットレスの一例として、可動式ベッド装置に配置されるマットレスを開示する。
【0013】
以下の説明において、マットレスを構成する各要素の「上面」はマットレスの使用時に人が乗る側を向く面を意味し、各要素の「下面」はマットレスの使用時に床側を向く面を意味する。また、各要素の「側周面」、「外周面」、および「内周面」は、上面と下面を繋ぐ面を意味する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るマットレス1の概略的な斜視図である。図示したように、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を定義する。X方向は、マットレス1の幅方向に相当する。Y方向は、マットレス1の長手方向に相当する。Z方向は、マットレス1の厚さ方向(マットレス1の下面から上面に向かう方向)に相当する。厚さ方向に沿う長さを厚さと呼ぶ場合がある。
【0015】
Z方向と平行にマットレス1を見ることを平面視と呼ぶ。Y方向におけるマットレス1の一端側を頭側と呼び、他端側を足側と呼ぶ場合がある。Y方向は、例えばマットレス1の頭側から足側に向かう方向である。
【0016】
本実施形態に係るマットレス1は、略直方体状に形成されている。平面視において、マットレス1は、X方向に沿う短辺と、Y方向に沿う長辺とを有する略長方形状である。マットレス1の4つの角部は、滑らかな曲面状であってもよい。
【0017】
マットレス1は、外装体2と、外装体2の内部に配置された内装体3と、を備えている。外装体2は、例えば布材によって形成されている。外装体2は、例えばキルティング加工されたものであってもよい。
【0018】
続いて、
図2乃至
図6を参照して内装体3の構造を説明する。
図2は、マットレス1が備える内装体3の概略的な斜視図である。内装体3は、上面31と、下面32と、頭側に位置する端部33と、足側に位置する端部34と、を有している。
図2に示す例において、内装体3は、略直方体状に形成されている。平面視において、内装体3は、X方向に沿う短辺と、Y方向に沿う長辺とを有する略長方形状である。
【0019】
図3は、マットレス1が備える内装体3の概略的な平面図である。
図4は、マットレス1が備える内装体3の概略的な側面図である。
図5は、マットレス1が備える内装体3の概略的な断面図である。
図6は、
図5に示すVI部の概略的な部分拡大図である。
【0020】
図3においては、内装体3の一部を断面によって示している。
図4においては、X方向と平行に内装体3を見ている。
図3乃至
図6に示すように、内装体3は、スプリングユニット4と、保護材5A,5Bと、クッション材6A,6Bと、頭側クッション材7と、頭側保護材8A,8Bと、壁部材10と、を備えている。
【0021】
スプリングユニット4は、略直方体状に形成されている。スプリングユニット4の幅方向はX方向に相当し、スプリングユニット4の長手方向はY方向に相当し、スプリングユニット4の厚さ方向はZ方向に相当する。
【0022】
スプリングユニット4は、複数のばね体41を有している。複数のばね体41は、X方向に並べられている。ばね体41は、1本の鋼線などの線材によって軸線をほぼ平行にして所定間隔で離間した複数のコイル部42を有している。
【0023】
複数のばね体41は、X方向に沿って設けられた複数のヘリカル線43によって連結されている。ヘリカル線43は、Y方向に所定間隔で設けられている。ヘリカル線43は、隣り合うばね体41のコイル部42の上端と下端とにそれぞれ巻き付けられている。これにより、隣り合うばね体41はX方向に連結されている。
【0024】
スプリングユニット4は、ばね体41と連結された複数の枠線44をさらに有している。枠線44は、スプリングユニット4の上下面の周縁部に設けられている。スプリングユニット4の上面の周縁部において、枠線44は、端部33,34にそれぞれ設けられている。
【0025】
スプリングユニット4の下面の周縁部において、枠線44は、端部33,34にそれぞれ設けられている。周縁部において、枠線44は、X方向に沿う部分全体と、角部と、Y方向に沿う部分に設けられている。
【0026】
Y方向におけるスプリングユニット4の周縁部は、枠線44が設けられた部分と、枠線44が設けられていない部分と、を有している。
図3に示す例において、枠線44が設けられていない部分は、枠線44が設けられた部分よりも大きい。
【0027】
枠線44は、複数のクリップ45によってばね体41と連結されている。端部33,34において、複数のクリップ45は、X方向に沿って設けられている。
図3に示す例において、枠線44の一端は、スプリングユニット4のX方向の中央部に向けて折り曲げられている。
【0028】
枠線44は、例えばポリエチレンなどの合成樹脂によってチューブ状に形成されている。他の例として、枠線44は、鋼材や硬質合成樹脂などの硬質な材料で形成することができる。
【0029】
図5に示すように、保護材5Aはスプリングユニット4の上面側に配置され、保護材5Bはスプリングユニット4の下面側に配置されている。保護材5A,5Bは、例えばフェルト、サイザルまたは圧縮綿で形成することができる。保護材5A,5Bの厚さは、例えば等しい。
【0030】
クッション材6Aは保護材5Aの上面側に配置され、クッション材6Bは保護材5Bの下面側に配置されている。クッション材6A,6Bは、例えばウレタンフォームなどの発泡体で形成することができる。一例として、ウレタンフォームの比重は、0.025である。クッション材6A,6Bの厚さは、例えば等しい。
【0031】
頭側クッション材7および頭側保護材8A,8Bは、端部33側に設けられている。頭側クッション材7は、スプリングユニット4よりも端部33側に配置されている。他の観点からは、Y方向において、頭側クッション材7は、壁部材10とスプリングユニット4との間に位置している。
【0032】
頭側クッション材7は、例えばウレタンフォームなどの発泡体で形成することができる。一例として、ウレタンフォームの比重は、0.025である。頭側クッション材7は、例えばテープ20(
図3に示す)によって、スプリングユニット4と接続されている。テープ20は、例えば不織布などで形成することができる。
【0033】
頭側保護材8Aはクッション材6A、頭側クッション材7、および壁部材10の上面側に配置され、頭側保護材8Bはクッション材6B、頭側クッション材7、および壁部材10の下面側に配置されている。厚さ方向において、頭側保護材8A,8Bは、クッション材6A,6B、頭側クッション材7、および壁部材10と重なっている。
【0034】
頭側保護材8A,8Bは、例えばフェルト、サイザルまたは圧縮綿で形成することができる。頭側保護材8A,8Bの厚さは、例えば等しい。頭側保護材8A,8Bは、例えばクッション材6A,6B、頭側クッション材7よりも硬い。
【0035】
頭側クッション材7および頭側保護材8A,8Bは、例えば可動式ベッド装置における頭上げ機構(ヘッドアップ機構)を構成する床板の位置に対応している。当該床板を頭側保護材8Bによって受けることで、クッション材6Bおよび頭側クッション材7へ当該床板が食い込むことを抑制する。
【0036】
内装体3は、シート部材9をさらに有している。シート部材9は、例えば壁部材10とスプリングユニット4などとの間に位置している。
図3においては、X方向における壁部材10とスプリングユニット4との間に位置するシート部材9を示している。シート部材9は、例えばウレタンフォームなどの発泡体で形成することができる。
【0037】
壁部材10は、枠状に形成されている。壁部材10は、スプリングユニット4、保護材5A,5B、クッション材6A,6B、頭側保護材8A,8B、頭側クッション材7の側周面を囲んでいる。壁部材10は、スプリングユニット4側の内周面11と、内周面11と反対側の外周面12と、を有している。
【0038】
壁部材10は、X方向に並ぶ一対の側壁13,14と、Y方向に並ぶ一対の側壁15,16と、を有している。Y方向において、側壁15は頭側に位置し、側壁16は足側に位置している。
【0039】
図3に示す例において、一対の側壁13,14および一対の側壁15,16によって形成された壁部材10の4つの角部は、おおよそ90度に形成されているが、滑らかな曲面状に形成されてもよい。
【0040】
一対の側壁13,14はX方向においてスプリングユニット4を挟み、一対の側壁15,16はY方向においてスプリングユニット4を挟んでいる。側壁13,14のX方向に沿う断面形状は略長方形状であり、側壁15,16のY方向に沿う断面形状は略長方形状である。
【0041】
壁部材10は、発泡体で形成された第1部分P1と、第1部分P1を形成する発泡体よりも柔らかい発泡体で形成された第2部分P2と、を有している。第1部分P1,第2部分P2は、例えばウレタンフォームなどの発泡体で形成することができる。第1部分P1は、比較的硬い発泡体である。第2部分P2を形成する発泡体の硬さは、第1部分P1を形成する発泡体の硬さよりも小さい。
【0042】
図3に示す例において、側壁13,14には、複数の第2部分P2が設けられている。側壁13,14は第1部分P1と複数の第2部分P2とによって形成され、側壁15,16は第1部分P1によって形成されている。
【0043】
説明の都合上、
図4においては、第2部分P2にドットを付している。
図4に示す例において、X方向と平行に側壁14を見た場合、第2部分P2の形状は、略長方形状である。
【0044】
側壁13,14において、複数の第2部分P2には、端部33側から、第2部分P21と、第2部分P22と、第2部分P23と、が含まれている。X方向において、側壁13の第2部分P21は側壁14の第2部分P21と対向し、側壁13の第2部分P22は側壁14の第2部分P22と対向し、側壁13の第2部分P23は側壁14の第2部分P23と対向している。
【0045】
X方向において、側壁13の第2部分P21と側壁14の第2部分P21とは、頭側クッション材7とスプリングユニット4とを挟んでいる。側壁13の第2部分P22,P23と側壁14の第2部分P22,P23とは、スプリングユニット4を挟んでいる。
図3に示すように、X方向において、側壁13の第2部分P22,P23と側壁14の第2部分P22,P23の間には、枠線44が位置していない。
【0046】
側壁13,14において、X方向における第1部分P1の長さは、X方向における第2部分P2の長さとおおよそ等しい。側壁13,14においては、第1部分P1と複数の第2部分P2とによって内周面11および外周面12が形成されている。
【0047】
Y方向における複数の第2部分P2の長さは、例えばそれぞれ等しい。
図3に示す例において、Y方向における第2部分P21の長さは、Y方向における頭側保護材8Aの長さよりも小さい。
図4に示す例において、Z方向における第2部分P2の長さL2は、Z方向における側壁14の全体の長さL10よりも小さい。
【0048】
側壁14は、第1領域A1と、第1領域A1よりも柔らかい第2領域A2と、を有している。第1領域A1には第1部分P1が位置し、第2領域A2には第1部分P1と第2部分P2とが位置している。
【0049】
第2部分P2の位置に応じて、側壁14には、第2領域A2が形成されている。第2領域A2は、柔らかい発泡体で形成された第2部分P2を含んでいるため、第1領域A1よりも柔らかい。
【0050】
側壁14において、第1領域A1と第2領域A2とは、Y方向に並んでいる。側壁14には、間隔をおいて並ぶ複数の第2領域A2が形成されている。他の観点からは、第2領域A2は、Y方向に並ぶ2つの第1領域A1の間に位置している。
【0051】
第2領域A2において、Z方向における第2部分P2の長さL2は、Z方向における第2領域A2の全体の長さよりも小さい。
図4に示す第2領域A2において、第1部分P1は、第2部分P2に重ねられている。
【0052】
他の観点からは、第2領域A2において、第1部分P1は、第2部分P2よりも上面側に位置している。第2領域A2の第1部分P1は、第1領域A1の第1部分P1と繋がっている。
【0053】
Y方向における第2部分P2の長さは、Y方向における第2領域A2の長さに相当する。第2領域A2に着目すると、Z方向における第2部分P2の長さL2は、Z方向における第1部分P1の長さL1よりも小さい。
【0054】
Z方向における第2部分P2の長さL2は、Z方向における第1部分P1の長さL1よりも大きくてもよいし、等しくてもよい。第1部分P1の長さL1と第2部分P2の長さL2との合計は、側壁14の長さL10に相当する。
【0055】
上述の通り、第2領域A2は、第1領域A1よりも柔らかい。他の観点からは、第2領域A2は、第1領域A1よりも、Z方向およびZ方向の反対方向へ向けて折り曲げやすい領域である。
【0056】
側壁13においても、側壁14と同様に、第1領域A1および第2領域A2がそれぞれ形成されている。X方向において、側壁13の第2領域A2と側壁14の第2領域A2とは、スプリングユニット4などを挟んでいる。したがって、内装体3は、側壁13,14の第2領域A2が形成された位置において、X方向に沿う軸を中心として折り曲げやすい。
【0057】
本実施形態に係るマットレス1は、複数の折り曲げやすい領域を有している。可動式ベッド装置は、例えば頭部を持ち上げるための頭上げ機構、背中を持ち上げるための背上げ機構、および膝を持ち上げるための膝上げ機構などを備えている。
【0058】
上述のような可動式ベッド装置にマットレス1が配置される場合、Y方向において、第2部分P21は頭上げ機構に対応する位置に設けられ、第2部分P22は背上げ機構に対応する位置に設けられ、第2部分P23は膝上げ機構に対応する位置にそれぞれ設けられる。
【0059】
側壁13,14における第2領域A2の位置は、マットレス1を折り曲げる部分に応じて適宜設定することができる。側壁13,14における第2部分P2の数量は、マットレス1を折り曲げる部分に応じて適宜設定することができる。本実施形態においては、第2部分P2は側壁13,14にそれぞれ3つ設けられているが、設けられる第2部分P2は2つ以下でもよいし、4つ以上でもよい。
【0060】
このような内装体3の構成においては、クッション材6A、頭側保護材8A、および壁部材10の上面が内装体3の上面31に相当し、クッション材6B、頭側保護材8B、および壁部材10の下面が内装体3の下面32に相当する。
【0061】
ここで、マットレス1の製造方法のうち、壁部材10の形成に関する工程について説明する。
【0062】
図7は、壁部材10の形成に関する工程を示す概略的な断面図である。
図8は、
図7に示す作業台100の概略的な部分拡大図である。
図7においては、シート部材9などの一部の部材の図示を省略している。
【0063】
壁部材10の形成に際しては、積層体Mが作業台100の上に置かれる。積層体Mは、クッション材6B、保護材5B、スプリングユニット4、保護材5Aおよびクッション材6Aが順に積み重ねられている。
【0064】
さらに、積層体Mにおけるスプリングユニット4の頭側には、頭側保護材8B、頭側クッション材7、頭側保護材8Aが順に積み重ねられている。頭側保護材8A,8Bの一部は、クッション材6A,6Bと重なっている。
【0065】
作業台100には、複数の枠体110が設けられている。枠体110は、例えばヒンジによって作業台100の端部に連結され、破線で示すように寝た状態から実線で示すように起立した状態に回動可能である。枠体110は、例えば、金属材料、樹脂材料、および木材などによって形成することができる。
【0066】
枠体110は、積層体Mの4辺に対して設けられている。側壁13,14に対応する積層体Mの辺に沿って、第2部分P2に相当する部材P2Mがそれぞれ配置される。部材P2Mの下面は、作業台100の上面と接している。配置される部材P2Mの数量は、第2領域A2の数量に応じて適宜決定される。例えば、本実施形態であれば、3つの部材P2Mがそれぞれ配置される。
【0067】
枠体110を起立させると、積層体Mの側周面が枠体110によって囲われる。枠体110と積層体Mとの間には、隙間Gが形成される。部材P2Mが積層体Mと枠体110とによって挟まれることで、部材P2Mを所定の位置に保持することができる。部材P2Mは、枠体110を起立させた後、隙間Gに配置してもよい。
【0068】
枠体110を起立した後、隙間Gには、注入孔120(
図8に示す)を介して、第1部分P1の元となる液剤Qが注入される。注入孔120は、例えば、複数の枠体110にそれぞれ設けられている。
【0069】
液剤Qには、例えばイソシアネートQ1およびポリオールQ2の2液が混合されている。例えば、イソシアネートQ1とポリオールQ2とは、第1部分P1を形成する発泡体が硬くなるように、それぞれ所定の割合で混合される。
【0070】
隙間Gに注入された液剤Qが発泡することにより、第1部分P1が形成される。作業台100および積層体Mは、例えば液剤Qを注入する前後、注入している間において、所定の温度にて温度管理されてもよい。
【0071】
Z方向における部材P2Mの長さは、Z方向における積層体Mの長さよりも小さい。そのため、
図7に示すように、部材P2Mの上方には、液剤Qが流れる流路Rを形成することができる。
【0072】
これにより、液剤Qは、積層体Mの側周面に沿って隙間Gを流れるため、部材P2Mの周りに液剤Qを流すことができる。テープ20(
図3に示す)は、スプリングユニット4と頭側クッション材7との間に液剤Qが流れることを防止する。
【0073】
そして、積層体Mと枠体110との間に、第1部分P1と複数の第2部分P2とを有する壁部材10が形成される。側壁13,14には、第1領域A1と、第2領域A2とが形成される。部材P2Mの位置に応じて、側壁13,14には第2領域A2を形成することができる。
【0074】
壁部材10の形成の後、枠体110が取り除かれる。これにより、壁部材10とスプリングユニット4などが一体化した内装体3が形成される。その後、内装体3を外装体2で覆う工程などを経てマットレス1が完成する。
【0075】
図7に破線で示すように、枠体110は積層体Mに向けて突起する突起部130を有してもよい。突起部130は、枠体110のそれぞれに対して少なくとも1つ設けられる。突起部130は、例えば円柱状に形成されている。
【0076】
突起部130は、例えば枠体110に対して磁石などにより着脱可能に設けられる。突起部130に対応する位置において、壁部材10には、内周面11と外周面12とを貫通する通気孔を形成することができる。
【0077】
通気孔は、例えば側壁13,14にそれぞれ複数(例えば、2つ)形成される。壁部材10によって囲われた空間が通気孔によって密閉されないため、荷重を受けたスプリングユニット4は円滑に弾性変形をすることができる。通気孔によってスプリングユニット4の内部に湿気が溜まりにくくなるため、スプリングユニット4のばね体41などにおける腐食を抑制することができる。
【0078】
以上のように構成されたマットレス1であれば、壁部材10は、第1領域A1と、第1領域A1と並び、第1領域A1よりも柔らかい第2領域A2と、を有している。第2領域A2は、第1領域A1を形成する発泡体よりも柔らかい発泡体で形成された第2部分P2を含んでいる。
【0079】
本実施形態において、複数の第2部分P2は側壁13,14に設けられているため、第2領域A2は、側壁13,14にそれぞれ形成されている。したがって、内装体3は、第2領域A2が形成された位置において、折り曲げやすい。その結果、利用者の姿勢に応じた折り曲げに対応することができるマットレス1を提供することができる。
【0080】
本実施形態において、側壁13,14は、間隔をおいて並ぶ複数(例えば、3つ)の第2領域A2を含んでいる。そのため、マットレス1には、例えば可動式ベッド装置における頭上げ機構、背上げ機構、および膝上げ機構に対応する位置に、折り曲げやすい領域を設けることができる。可動式ベッド装置の観点からは、本実施形態に係るマットレス1であれば、床板を屈曲させた際に、マットレス1を容易に折り曲げることができる。
【0081】
さらに、X方向において、側壁13の第2部分P22,P23と側壁14の第2部分P22,P23との間には、枠線44が位置していないため、第2部分P22,P23が位置する第2領域A2において、内装体3の折り曲げは枠線44によって妨げられない。
【0082】
さらに、壁部材10において、第1部分P1が比較的硬い発泡体で形成されているため、壁部材10によってスプリングユニット4の側周面側を補強することができる。これにより、スプリングユニット4の側周面側における沈み込みが抑制され、スプリングユニット4を側周面側まで有効に利用することができる。この結果、本実施形態に係るマットレス1であれば、マットレス1上における利用可能な面積を確保するとともに、折り曲げやすいマットレス1を提供することができる。
【0083】
以上のように構成された本実施形態に係るマットレス1の製造方法によれば、第1領域A1および第2領域A2を有する壁部材10を得ることができる。より具体的には、部材P2Mおよび液剤Qによって、第1領域A1および第2領域A2を有する壁部材10を形成することができる。
【0084】
Z方向における部材P2Mの長さは、Z方向における積層体Mの長さよりも小さい。
図7を用いて説明したように、部材P2Mの上方には、液剤Qが流れる流路Rを形成することができる。
【0085】
これにより、液剤Qは、積層体Mの側周面に沿って隙間Gを流れることができる。さらに、部材P2Mを積層体Mと枠体110とで挟むことで、隙間Gにおける部材P2Mの位置を容易に位置決めすることができる。
【0086】
本実施形態によれば、利用者の姿勢に応じた折り曲げに対応することができるマットレス1およびその製造方法を提供することができる。以上の実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、本実施形態にて開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【0087】
例えば、本実施形態における外装体2と、本実施形態とは異なる構造の内装体3とを組み合わせてマットレス1を構成することもできる。また、本実施形態における内装体3と、本実施形態とは異なる構造の外装体2とを組み合わせてマットレス1を構成することもできる。
【0088】
本実施形態において、内装体3は、スプリングユニット4の上下面に保護材5A,5B、クッション材6A,6Bなどを積層することで構成されているが、内装体3の構造はこの例に限られない。
【0089】
例えば、スプリングユニット4は、独立した複数のコイルスプリングで構成されてもよい。例えば、内装体3は、頭側クッション材7および頭側保護材8A,8Bを有さなくてもよい。壁部材10は、例えば、外装体2と接続するための接続部をさらに有してもよい。マットレス1は、上面と下面とを入れ替えて使用することもできる。
【0090】
本実施形態において、第2部分P2は、長辺側である側壁13,14に設けられているが、短辺側である側壁15,16に設けられてもよい。これにより、第2領域A2を側壁15,16に形成することができる。その結果、マットレス1は、Y方向に沿う軸を中心として折り曲げやすくなる。
【0091】
他の例として、第2部分P2によって頭側の側壁15にX方向に並ぶ複数の第2領域A2を形成してもよい。これにより、端部33側において、マットレス1の角部がX方向の中央部に向けて折り曲げやすくなる。マットレス1の角部をX方向の中央部に向けて折り曲げることで、背上げした際に利用者がマットレス1から脱落しにくくなる。
【0092】
第2部分P2は、長辺側である側壁13,14、および短辺側である側壁15,16にそれぞれ設けられてもよい。第2部分P2は、側壁13~15のうち少なくとも1つに設けられていればよい。これにより、利用者の姿勢に応じた折り曲げに対応することができるマットレス1を提供することができる。
【0093】
Z方向において、第2部分P2は、第1部分P1と第1部分P1との間に位置してもよい。このような第2部分P2を形成するために部材P2Mを配置した場合、部材P2Mの上方および下方にそれぞれ流路Rを形成することができる。第2領域A2において、第2部分P2は、第1部分P1よりも上面側に位置してもよい。
【0094】
本実施形態においてはマットレス1の一例として、可動式ベッド装置に配置されるマットレス1を開示したが、本実施形態に係る構成は、可動式ベッド装置に配置されるマットレス以外にもソファーとベッド装置との相互変換が可能なベッド装置(ソファーベッド)などに適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…マットレス、3…内装体、4…スプリングユニット、10…壁部材、13,14…側壁、A1…第1領域、A2…第2領域。