(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240617BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
(21)【出願番号】P 2022036573
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 裕次
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-21198(JP,A)
【文献】登録実用新案第3160926(JP,U)
【文献】特表2012-506155(JP,A)
【文献】特開2017-175166(JP,A)
【文献】特開2006-66727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、21/304
21/306-21/308、21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液により1枚ずつ処理する処理装置と、
前記基板を処理した前記処理液の廃液が流通する廃液流路と、
前記廃液に希釈液を供給する希釈液供給部と、
前記廃液流路の複数個所に設けられ、前記希釈液供給部から供給された前記希釈液により前記廃液を発熱させる発熱部と、
前記発熱部
で生じた熱により、発電する発電部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記廃液は、硫酸、リン酸、硝酸、フッ酸の少なくとも一種を含み、
前記希釈液は水である請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記発熱部は、コイル状の流路
を有する請求項1又は請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記発熱部は、前記廃液を貯留するタンクである請求項1又は請求項2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記発電部は、前記発熱部
での発熱により生じる温度差により発電する発電素子である請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記発熱部との前記温度差を生じさせる冷却部を有する請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記冷却部の冷却源として、前記処理装置からの希釈する必要のない廃液を用いる請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記発電部は、前記発熱部の加熱温度よりも沸点の低い媒体
が、前記発熱部
での発熱によって加熱
されることにより生じる蒸気でタービンを回して発電する発電装置である請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記廃液流路には、複数の前記処理装置が接続されている請求項1乃至8のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やディスプレイなどを製造する製造工程では、半導体ウェーハ、フォトマスク用ガラス基板、ディスプレイ用ガラス基板等の基板に対し、種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられている。
【0003】
このような基板処理装置として、特許文献1に示すように、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric hydrogen Peroxide Mixture)等の薬液を使って、基板の表面からレジストを除去する装置が提案されている。この基板処理装置は、100℃~160℃程度まで加熱されたSPMを基板に供給することにより、レジストを除去している。また、加熱装置を使って、基板に供給されたSPMをさらに加熱することも記載されている。レジスト除去に使用されたSPMは、基板処理装置に設けられたバッファタンク内で冷却、希釈を行ってから、廃液として工場側で回収、廃棄される。
【0004】
ところで、近年では、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の観点から、再生可能エネルギーで製品を製造したいという要望があり、そのための省電力化が必要となっている。半導体デバイス等の製造においても、多量の電力を使用するため、製造おける省電力化等を含めて、環境への対策が望まれている。
【0005】
ここで、基板処理装置では、多種多様な薬液を用いており、再利用する場合を除いては、希釈してから廃棄をしている。そこで、例えば、上記のようにレジスト除去に使用されたSPM等の処理液に関しても、冷却、希釈して廃液とするのではなく、SPMを加熱するために使用した電力を回収し、再利用することが検討されている。
【0006】
また、特許文献2に示すように、処理槽から排出される薬液(廃液)を利用して、新液を昇温することにより、エネルギーの有効利用をはかる方法が提案されている。この方法では、新液の処理温度よりも低い温度の廃液温度(処理温度とほぼ同じ)で熱交換を行ったとしても、それだけでは新液を処理温度まで昇温させることはできないので、廃液に補助液体を添加し、希釈熱、反応熱、或いは中和熱等を発生させることにより、熱交換前の廃液の温度をより高め、熱交換器のみで新液を処理温度まで昇温している。これにより、新液に対する昇温のための電力を不要にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-175166号公報
【文献】特開2006-66727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような方法は、処理槽に溜めた薬液中に複数の基板を浸して一括で処理する、いわゆるバッチ式の処理装置には適している。つまり、バッチ式の処理装置の場合、断続的ではあるが、処理が終わる毎に、一度に多量の廃液が熱交換器に供給される。そのため、バッチ式の処理装置は、熱交換器内を廃液で満たして、新液との熱交換を効率良く行うことができる。
【0009】
一方、回転する基板に処理液を供給して、1枚ずつ処理する、いわゆる枚葉式の処理装置が存在する。枚葉式の処理装置は、バッチ式の処理装置よりも、各基板に対する処理の均一性を高いレベルで揃えることができる。そのため、枚葉式の処理装置は、近年の回路パターンの微細化に伴って、多く利用されている。しかし、このような枚葉式の処理装置では、廃液が処理中に連続して少量で流れてくるため、新液が廃液との熱交換による熱量を得るには廃液の量が十分ではない。つまり、少量の廃液から新液を昇温させることは、エネルギーを有効活用する手段としては適していない。
【0010】
また、薬液と補助液体を混合させた場合、補助液体が薬液中に拡散するまでには、ある程度の時間がかかる。このため、希釈熱、反応熱、或いは中和熱等による発熱は、急激に発生するわけではなく、徐々に発生する。バッチ式の場合、使用済みの薬液(廃液)を熱交換器に貯留して、補助液体と混合することにより、十分な温度とする時間を確保できる。しかしながら、枚葉式の場合、少量の廃液が廃液経路を流れていくため、補助液体との混合の時間を確保し難い。
【0011】
本発明の実施形態は、枚葉式の処理装置において、廃液を効率良く発熱させて、電力を効率良く取得できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、基板を処理液により1枚ずつ処理する処理装置と、前記基板を処理した前記処理液の廃液が流通する廃液流路と、前記廃液に希釈液を供給する希釈液供給部と、前記廃液流路の複数個所に設けられ、前記希釈液供給部から供給された前記希釈液により前記廃液を発熱させる発熱部と、前記発熱部で生じた熱により、発電する発電部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態は、枚葉式の処理装置において、廃液を効率良く発熱させて、電力を効率良く取得できる基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態の基板処理装置を示す簡略構成図である。
【
図2】第2の実施形態の基板処理装置を示す簡略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
[構成]
第1の実施形態の基板処理装置1を、
図1を参照して説明する。基板処理装置1は、処理装置10、廃液流路20、希釈液供給部30、発熱部40、発電部50、冷却部60、蓄電装置70、制御装置80を有する。
【0016】
(処理装置)
処理装置10は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。処理対象となる基板Wは、例えば、半導体ウェーハ、フォトマスク用ガラス基板、ディスプレイ用ガラス基板など、下記の処理液Lにより処理される対象であれば、どのような基板でもよい。本実施形態の処理装置10は、例えば、回転する基板Wに処理液Lを供給することによって、基板Wの表面からレジストを除去する装置である。
【0017】
なお、以下の説明においては、処理液Lにおける処理のための有効成分を薬液と呼ぶ。本実施形態では、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric hydrogen Peroxide Mixture)を処理液Lとして使用する。但し、使用する処理液Lは、これには限定されず、例えば、フッ酸及び硝酸の混合液、酢酸等、酸系の液体を広く用いることができる。これらは、水により希釈されると反応して発熱する。
【0018】
処理装置10は、容器であるチャンバ10aに構成された回転部11、供給部12、回収部13を有する。回転部11は、回転体11a、駆動源11cを有する。回転体11aは、チャックピンなどの保持部11bにより基板Wの縁を保持して、基板Wの処理面に直交する軸を中心に回転する回転テーブルである。駆動源11cは、回転体11aを回転させるモータである。
【0019】
供給部12は、ノズル12a、アーム12bを有する。ノズル12aは、回転する基板Wの処理面に向けて、処理液Lを吐出する吐出部である。アーム12bは、先端にノズル12aが設けられ、ノズル12aを回転体11aの中心上方と、回転体11aから退避する位置との間で揺動させる。ノズル12aは、図示しない供給配管を介して処理液供給装置からの処理液Lが供給される。
【0020】
回収部13は、回転体11aを包囲するように設けられ、基板Wの処理面から漏れた処理液Lを、その底部から回収する筐体である。回収部13の底部及びチャンバ10aの底部には開口10bが設けられ、この開口10bに後述の廃液流路20が接続されている。なお、ここではSPMの処理液Lを選択的に排出する開口10bを示している。その他の処理液Lを排出する開口及び流路については図示を省略している。
【0021】
(廃液流路)
廃液流路20は、基板Wを処理した処理液Lの廃液Lwが流通する。廃液流路20は、チャンバ10aの開口10bに接続された配管であり、工場の回収経路に接続されている。廃液流路20には、処理装置10からの廃液Lwの流量を測定する流量計21が設けられている。なお、基板Wを連続して又は並行に処理可能となるように、本実施形態の基板処理装置1は、上記の処理装置10を複数有する。そして、複数の処理装置10におけるチャンバ10aの開口10bは、共通の廃液流路20に合流する配管に接続されている。つまり、廃液流路20は、複数の処理装置10に接続されている。
【0022】
(希釈液供給部)
希釈液供給部30は、廃液Lwに希釈液Dを供給する。希釈液供給部30は、希釈流路31、マスフローコントローラ(MFC)32を有する。希釈流路31は、希釈液Dである水の供給源に接続された配管である。希釈流路31は、廃液流路20の複数の箇所に間隔を空けて接続されている。これにより、希釈流路31は、廃液流路20の廃液Lwに希釈液Dを流入させる。
【0023】
(発熱部)
発熱部40は、廃液流路20の複数個所に設けられ、希釈液供給部30に供給された希釈液Dにより廃液Lwを発熱させる。発熱部40は、廃液流路20に直列に複数配置されている。発熱部40の配置位置は、廃液流路20における複数の希釈流路31が接続された位置のそれぞれの下流となっている。発熱部40は、廃液Lwが廃棄可能な濃度まで希釈されるだけの数が設けられる。各処理装置10から廃液Lwが排出されるタイミングは、都合よく順番に行なわれるものではない。例えば、廃液Lwが排出されるタイミングが2つ重なることや廃液Lwが排出されるタイミングが3つ重なることがある。そのため、すべての処理装置10の廃液Lwが排出されるタイミングが重なったときでも問題なく廃液Lwが廃液流路20を流れるように、廃液流路20の流路径は設定される。したがって、すべての処理装置10から同時に廃液Lwが排出されたときでも十分に希釈ができる数の発熱部40が必要になる。発熱部40の数は、予め実験等により求めておくとよい。また、本実施形態の発熱部40は、コイル状の流路である。これにより、発熱部40は、発電部50の長さ分の距離において廃液Lwが滞留する時間を長くなるようにして、廃液Lwへの希釈液Dの拡散を促進することができる。つまり、発熱部40は、廃液Lwと希釈液Dとを効率良く反応させて廃液Lwを発熱させることができる。例えば、硫酸溶液は比較的粘度が高いため、希釈液Dの硫酸溶液中への拡散に時間がかかるが、この時間を確保できる。なお、発熱部40がコイル状の場合、発熱部40内で廃液Lwが停滞するおそれがある。この場合、発熱部40内にエアーやN2ガスを流し、廃液Lwを押し出すようにしてもよい。
【0024】
処理装置10からの廃液Lwは、複数の発熱部40を順次経ることにより、廃棄可能な状態にまで希釈される。本実施形態では、処理装置10側である上流側から廃棄側である下流側へ、3つの発熱部40が設けられている。これにより、各発熱部40において、希釈液Dが廃液Lwに混合され発熱させることができる。
【0025】
(発電部)
発電部50は、発熱部40の熱により発電する。発電部50としては、例えば、ペルチェ素子などの発電素子を用いる。発電部50は、発電素子の一方の面が発熱部40に接する位置に設けられている。つまり、発電部50は、発熱部40の加熱により生じる温度差により発電する発電素子である。
【0026】
(冷却部)
冷却部60は、冷却液Cが流通する配管である。冷却部60は、発電部50の発電素子の他方の面に接する位置に設けられている。冷却部60により発電素子の他方の面が冷却されることにより、加熱された一方の面との温度差を生じさせる。冷却部60は、冷却液Cである水の供給源に接続されている。なお、発熱した廃液Lwとの温度差が得られればよいため、冷却液Cは常温で良い。
【0027】
(蓄電装置)
蓄電装置70は、発電部50の発電による電力を蓄える。蓄電装置70は、処理液Lを加熱するヒータの電源とする、処理装置10の駆動源11cの電源とする、工場の照明や機器の電源とする、停電時のバックアップ電源とする等、種々の電源として利用できる。
【0028】
(制御装置)
制御装置80は、基板処理装置1の各部を制御する。制御装置80は、基板処理装置1の各部を制御すべく、プログラムを実行するプロセッサ、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。制御装置80は、処理液Lの濃度を予め記憶することができる。また、制御装置80は、発電部50の耐熱温度を予め記憶することができる。制御装置80は、廃液Lwに追加した希釈液Dの量から廃液Lwの温度が何度まで上昇するか演算することができる。例えば、制御装置80は、流量計21により測定される廃液Lwの流量に基づいて、希釈液Dによって希釈された廃液Lwの温度が発電部50の耐熱温度を超えないよう、MFC32によって希釈液Dの流量が調整されるように制御する。なお、図示はしないが、制御装置80は、情報を入力する入力部、情報を出力する出力部が接続されている。
【0029】
[動作]
以上のような本実施形態の動作を説明する。
(基板処理)
まず、処理装置10による基板処理を説明する。処理対象となる基板Wは、搬送ロボットによって回転体11a上に搬入され、保持部11bによって保持される。駆動源11cが回転体11aを回転させることにより基板Wが回転する。処理液供給装置からの処理液Lが、ノズル12aから基板Wの処理面に供給されることにより、レジスト除去処理がなされる。所定の処理時間が経過すると、処理液Lの供給を停止する。その後、基板Wが回転を停止して、保持部11bによる保持が解放された基板Wを、搬送ロボットがチャンバ10aから搬出する。
【0030】
(廃液発電)
次に、処理装置10からの廃液Lwを利用した発電を説明する。処理装置10において処理に使用された処理液Lは、チャンバ10aの開口10bから廃液Lwとして排出されて、廃液流路20に流入する。廃液流路20を流れる廃液Lwには、複数個所の希釈流路31から希釈液Dが流入する。これにより、廃液Lwと希釈液Dが混合された状態で、各発熱部40に流入する。発熱部40を通過する過程において、廃液Lwに希釈液Dが拡散することにより反応が進んで発熱する。これにより、各発電部50の発電素子の一方の面が加熱されるので、発電素子の一方の面と他方の面との間で温度差が生じる。発電素子内部で生じた温度差によって発電素子内部で起電力が発生する。その結果、各発電部50において発電が行われる。
【0031】
また、冷却部60には、冷却液Cが流通しており、発電部50の発電素子の他方の面が冷却されている。このため、空冷の場合に比べて、発電部50の発電素子に生じる温度差が大きくなり、発電量がより大きくなる。各発電部50の発電による電力は蓄電装置70に蓄えられる。
【0032】
なお、廃液Lwの流量は流量計21によって計測され、これに応じて、各希釈流路31からの希釈液Dの流量がMFC32によって調整され、廃液Lwが廃棄可能な濃度まで希釈される。例えば、上流側の発熱部40から順次、50%程度、30%程度、20%程度に希釈される。これにより、廃液Lwの発熱も効率良く生じさせることができる。
【0033】
[効果]
(1)本実施形態の基板処理装置1は、基板Wを処理液Lにより1枚ずつ処理する処理装置10と、基板Wを処理した処理液Lの廃液Lwが流通する廃液流路20と、廃液Lwに希釈液Dを供給する希釈液供給部30と、廃液流路20の複数個所に設けられ、希釈液供給部30から供給された希釈液Dにより廃液Lwを発熱させる発熱部40と、発熱部40の熱により、発電する発電部50と、を有する。
【0034】
このため、枚葉式の処理装置10において、処理中に少量であっても連続して流れてくる廃液Lwに対して、複数個所で段階的に希釈液Dを混合、発熱させることができる。このため、廃液Lwを効率良く発熱させて、電力を効率良く取得できる。また、このような発熱の過程で、廃液Lwを廃棄可能な程度まで希釈化させることができる。
【0035】
(2)廃液Lwは、硫酸、リン酸、硝酸、フッ酸の少なくとも一種を含み、希釈液Dは水である。このため、酸系の液体を、廃棄のための希釈に用いられる水を利用して、発熱させることにより、低コストで電力を取得できる。
【0036】
(3)発熱部40は、コイル状の流路である。このため、経路長を長くして、廃液Lwに希釈液Dを拡散させるための時間を確保することができ、比較的小さなスペースで熱を効率良く発電部50に伝達させることができる。なお、発熱部40の周囲を断熱材で覆うようにしてもよい。このようにすることで、発熱部40で発生した熱が逃げにくくなる。断熱材で発熱部40を覆う場合、発熱部40と発電部50とが接触している部分は、断熱材で覆わないようにすることが好ましい。
【0037】
(4)発電部50は、発熱部40の加熱により生じる温度差により発電する発電素子である。このため、簡素な構成で発電を行うことができ、低コスト化、省スペース化が可能となる。さらに、冷却部60によって、発熱部40との温度差をより大きくすることができるので、発電効率を高めることができる。
【0038】
(5)廃液流路20には、複数の処理装置10が接続されている。このため、複数の処理装置10の間で処理の開始にずれが生じると、処理装置10の処理により生じる廃液Lwの廃液流路20に排出されるタイミングに複数の処理装置10の間でずれが生じる。これにより、廃液流路20に廃液Lwが連続的に流れる時間を比較的長くすることができるので、発熱及び発電の時間を長時間確保できる。
【0039】
(6)廃液Lwは、複数の発熱部40を順次経ることにより、廃棄可能な状態にまで希釈される。これにより、各発熱部40において、希釈液Dが廃液Lwに混合されるため、各発熱部40において廃液Lwの発熱量を調整することができる。このようにすることで、各発熱部40において希釈液Dによって希釈された廃液Lwの温度が各発電部50の耐熱温度を超えないように調整することができる。また、廃液Lwが廃棄可能な濃度まで希釈される間に、廃液Lwから発生する熱量を効率良く発電部50に伝えることができる。なお、下流側の発熱部40において、その内部を流れる廃液Lwの温度を温度計等でモニターするようにしてもよい。あるいは、下流側の発熱部40の内部に流入する直前の廃液Lwの温度を予め実験等で測定しておき、制御装置80に記憶させておくようにしてもよい。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を、
図2を参照して説明する。本実施形態の基板処理装置1は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様の構成である。このため、
図2で示した
図1と同一の構成部については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
但し、本実施形態においては、発熱部90が、廃液Lwを貯留するタンクである。タンクは、廃液流路20の複数個所に設けられ、廃液Lwが流入し、一時的に貯留される所定の容積を持った容器である。発熱部90は、上記の発熱部40と同様に、廃液流路20に直列に複数配置されている。発熱部90の配置位置は、廃液流路20における複数の希釈流路31が接続された位置のそれぞれの下流となっている。また、発熱部90の下流の位置には不図示のバルブが設けられている。このバルブは、例えば、発熱部90内の廃液Lwと希釈液Dの量が一定量を超えたら開く。一定量は、例えば、発熱部90の体積の8割程度である。あるいは、基板Wがウェーハである場合、一定量は、基板Wを所定枚数、例えば13枚処理した際に排出される廃液Lwおよび希釈液Dの量とすることができる。発熱部90内の廃液Lwと希釈液Dの量は、流量計21の計測値から算出する。
【0042】
また、基板処理装置1が稼働しない時間が長くなる場合、発熱部90内の廃液Lwと希釈液Dの量に関係無くバルブが開く。そして、上流の発熱部90から下流の発熱部90へと廃液Lwが排出される。下流の発熱部90では、廃液Lwに所定の希釈液Dを加える。そして、希釈液Dを供給してから所定の時間が経過すると、さらに下流の発熱部90へと廃液Lwを排出するために、不図示のバルブが開く。このようにして、最後の発熱部90まで廃液Lwが排出される。基板処理装置1が稼働しない時間は、例えば、前工程の装置からの信号から算出する。
【0043】
また、水平方向に垂直な方向において、上流側に位置する発熱部90の方が下流側に位置する発熱部90よりも高い位置に設けられる。発熱部90がこのように設けられることで、発熱部90から排出された廃液Lwが下流の発熱部90に滑らかに流れ込むことができる。
【0044】
また、発熱部90の上面周辺の側面にも排出側の流路を設けるようにしてもよい。この場合、液面が排出側の流路まで上昇すると、廃液Lwがオーバーフローして次の発熱部90に流れるようになる。このようにすることで、不図示のバルブが故障しても廃液Lwの排出を続けることができる。廃液Lwがオーバーフローするタイミングと量は、流量計21の計測値から求められる。これらの値に基づいて、次の発熱部90に流れ込む廃液Lwに対する希釈液Dの供給タイミングを決定することができる。
【0045】
各発熱部90に流入した廃液Lwと希釈液Dの混合液は、タンク内で貯留されている間に希釈液Dの拡散による反応が進行して発熱した後、廃液流路20に排出される。これにより、第1の実施形態と同様に、各発電部50における発電が行われて、蓄電装置70に蓄電される。
【0046】
このように、本実施形態では、発熱部90のタンク内で、廃液Lwに希釈液Dを拡散させる時間を確保できるため、配管内で拡散させる第1の実施形態に比べて、より反応を進行させてから次の発熱部90に流入させることができる。このため、廃液Lwの発熱を効率良く利用でき、発電効率を向上させることができる。また、希釈位置は発熱部90のタンク下部にすることが好ましい。一般的に希釈液Dは、廃液Lwよりも比重が軽い。そのため、希釈位置を発熱部90のタンク下部にすることで、廃液Lw全体に希釈液Dを行き渡らすことできる。つまり、発熱部90全体に効率的に発熱反応を起こすことができる。なお、発熱部90の発電部50と接触する部分以外を断熱材で覆うようにしてもよい。
【0047】
[変形例]
上記の実施形態は、以下のような変形例も構成可能である。
(1)コイル状の発熱部40は、筒状のものには限定されない。例えば、螺旋状に巻回された形状であってもよい。また、発熱部40を、流路が蛇行した形状とすることにより、距離を確保した形状としてもよい。
【0048】
(2)冷却部60に流通させる冷却液Cは、希釈液Dと共通にして、共通の供給源から供給してもよい。また、冷却部60の冷却源として、処理装置10からの希釈する必要がなく、廃液Lwの温度よりも低温の廃液を用いてもよい。つまり、上記の廃液Lwと区別して排出される液を、冷却液Cとして使用してもよい。例えば、アルカリ系の処理液を冷却液Cとして用いてもよい。さらに、冷却部60を設けずに、発電部50の他方の面を空冷としてもよい。この場合にも、廃液Lwは高温となるため、室温との温度差により、発電は可能である。
【0049】
(3)発電部50として、発電素子ではない発電装置を用いてもよい。例えば、発熱部40、90の加熱温度よりも沸点の低い媒体を、発熱部40、90により加熱して蒸発させて、その蒸気でタービンを回して発電機で発電する発電装置を用いることもできる。
【0050】
(4)発熱部40、90、発電部50の数は、複数であればよく、上記の態様で例示した数には限定されない。処理装置10の数は、1つであってもよい。
【0051】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。前述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 基板処理装置
10 処理装置
10a チャンバ
10b 開口
11 回転部
11a 回転体
11b 保持部
11c 駆動源
12 供給部
12a ノズル
12b アーム
13 回収部
20 廃液流路
21 流量計
30 希釈液供給部
31 希釈流路
40 発熱部
50 発電部
60 冷却部
70 蓄電装置
80 制御装置
90 発熱部
C 冷却液
D 希釈液
L 処理液
Lw 廃液
W 基板