(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】MeCP2発現カセット
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240617BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240617BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240617BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240617BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240617BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240617BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240617BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240617BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240617BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240617BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N7/01
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
A61P43/00 105
A61P25/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177514
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2019552125の分割
【原出願日】2018-03-23
【審査請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501337513
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ エジンバラ
(73)【特許権者】
【識別番号】503392976
【氏名又は名称】ザ・ユニヴァーシティ・コート・オブ・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・グラスゴー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・バード
(72)【発明者】
【氏名】リベカ・ティロットソン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・ロバート・コブ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・デヴィッド・ヘクター
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0225666(US,A1)
【文献】Garg S. K. et al.,The Journal of Neuroscience,2013年,33(34),p.13612-13620
【文献】GADALLA K. K. E. et al.,Molecular Therapy,2013年,21(1),p.18-30
【文献】GADALLA K. K. E. et al.,Future Medicine,2015年,10(5),p.467-483
【文献】BAGGA J. S et al.,Human Genomics,2013年,7:19
【文献】McGowan H. et al.,Cell Regeneration,2015年,4:9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
A61K 48/00
A61K 31/00-33/44
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MeCP2発現カセットを含む核酸分子であって、発現カセットが、5'から3'に向けての作動可能な連結において、
(a) 神経細胞における転写を駆動できるプロモーターを含む5'転写制御領域であって、プロモーターが、MeCP2サイレンサーエレメント及びCNS調節エレメントを含むMeCP2プロモーターである、5'転写制御領域;
(b) コザック配列;
(c) MeCP2タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム;
(d) 5'から3'に向けて、miR-22の結合部位、miR-19の結合部位、miR-132の結合部位、配列AUUUAを有する1つ又は複数のAUリッチエレメント、MeCP2ポリアデニル化シグナル、及びmiR-124の結合部位を含む3'非翻訳領域(3'UTR):並びに
(e) 転写停止シグナル
を含み、
MeCP2発現カセットが約5kb以下の長さである、
核酸分子。
【請求項2】
コードされたMeCP2タンパク質が、
(i) 配列
PAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPP(配列番号5)を有するメチルCpG結合ドメイン(MBD
);
(ii) 配列
PGSVVAAAAAEAKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV(配列番号6)を有するNCoR/SMRT相互作用ドメイン(NID
);及び
(iii) 核局在化シグナル(NLS)
を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
コードされたMeCP2タンパク質が、配列
SEDQDLQGLKDKPLKFKKVKKDKKEEKEGKHEPVQPSAHHSAEPAEAGKAETSEGSGSAPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETVSIEVKEVVKPLLVSTLGEKSGKGLKTCKSPGRKSKESSPKGRSSSASSPPKKEHHHHHHHSESPKAPVPLLPPLPPPPPEPESSEDPTSPPEPQDLSSSVCKEEKMPRGGSLESDGCPKEPAKTQPAVATAATAAEKYKHRGEGERKDIVSSSMPRPNREEPVDSRTPVTERVSS(配列番号9);
を含むか、
又はそれから
なる、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
コードされたMeCP2タンパク質が、配列
PAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV(配列番号10)
を含むか、
又はそれから
なる、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項5】
コードされたMeCP2タンパク質が、配列
PAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPGSSGSSGPKKKRKVPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV (配列番号11)
を含むか、
又はそれから
なる、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項6】
MecP2タンパク質が、配列MAAAAAAAPSGGGGGGEEERLEEK(配列番号12)、
又はMVAGMLGLREEK(配列番号13
)を有するN末端部分を更に含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
発現カセットが、約4.9kb、4.8kb、4.7kb、4.6kb、4.5kb、又は4.4kb以下の長さである、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
5'ITR及び3'ITRを更に含み、ITRが発現カセットに隣接する、請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項9】
rAAVゲノムである、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項10】
発現カセットが、約2.4kb以下、2.3kb以下、又は2.2kb以下の長さである、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
5'から3'に向けて、本発明のMeCP2発現カセット及び前記発現カセットの逆相補体を含む、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
5'ITR及び3'ITRを更に含む、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項13】
scAAVベクターゲノムである、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
請求項10又は請求項13に記載の核酸分子を含むAAVビリオン粒子。
【請求項15】
請求項14に記載のAAVビリオン粒子を産生することができるパッケージング細胞。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の核酸分子、又は請求項14に記載のAAVビリオン粒子を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項17】
静脈内又は髄腔内投与のために製剤化された、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
標的細胞におけるMeCP2タンパク質の発現の増強に使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項14に記載のAAVビリオン粒子。
【請求項19】
レット症候群の処置に使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項14に記載のAAVビリオン粒子。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項14に記載のAAVビリオン粒子を含む、それを必要とする対象におけるレット症候群の処置用医薬。
【請求項21】
レット症候群の処置のための医薬の調製における、請求項1から13のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項14に記載のAAVビリオン粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MeCP2タンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセット、及びそのような発現カセットの治療的送達に使用するためのウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルス(AAV)由来のベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
レット症候群(RTT;OMIM312750)は、一連の臨床診断的及び関連する特色によって特徴付けられる神経疾患であり、出生後数カ月で顕在的に発症する1。典型的なRTTは、X連鎖遺伝子であるMECP22のde novo生殖系列変異によってほぼ独占的に引き起こされ、3、4でレビューされている。Mecp2欠失5~7又はノックイン変異8~11を含むRTTのマウスモデルがいくつか生成されている。これらのモデルの多くは、ヒトのRTTを特徴付ける主要な特色を再現しているが、患者で見られる表現型の変動を反映する相違がある12~14。RTT様の表現型の重症度にもかかわらず、条件付きノックアウトマウスにおける発現抑制されたMecp2の遺伝的再活性化は表現型の頑強で永続的な反転をもたらした15~17。
【0003】
薬物療法の明らかな標的の欠如に加えて、表現型のこの特有の可逆性により、遺伝子療法がRTTの明白な候補の治療戦略である。しかしながら、遺伝子導入アプローチには、脳内の十分な数のニューロンを形質導入する必要性16及び有害な過剰発現の回避18を含む大きな課題がある。
【0004】
AAV9ベクターを使用したMECP2遺伝子導入のこれまでの試みは、限られた脳形質導入効率と毒性のために難しく19、20、自己相補型AAV(scAAV)を使用する他の研究21の有効性は、ベクターのパッケージング能力を超えるコンストラクトを使用すると損なわれる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2005/0053922
【文献】US2009/0202490
【文献】米国特許第5,173,414号
【文献】WO95/13365
【文献】米国特許第5,658.776号
【文献】WO95/13392
【文献】WO96/17947
【文献】PCT/US98/18600
【文献】WO97/09441(PCT/US96/14423)
【文献】WO97/08298(PCT/US96/13872)
【文献】WO97/21825(PCT/US96/20777)
【文献】WO97/06243(PCT/FR96/01064)
【文献】WO99/11764
【文献】米国特許第5,786,211号
【文献】米国特許第5,871,982号
【文献】米国特許第6,258,595号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ruffing等、J Gen Virol、75:3385~3392頁(1994年)
【文献】Srivastava等、J Virol、45:555~564頁(1983年)
【文献】Wang等、Gene Therapy(2003年)10、2105~2111頁
【文献】McCarty等、Gene Therapy(2003年)10、2112~2118頁
【文献】McCarty、Molecular Therapy、16(10)、2008年、1648~1656頁
【文献】Gao等、J. Virol.、78:6381~6388頁(2004年)
【文献】Mol.Ther.、13(1):67~76頁(2006年)
【文献】Virology、330(2):375~383頁(2004年)
【文献】Deverman等、Nature Biotech.、34(2)、204~209頁
【文献】Samulski等、1982年、Proc. Natl. Acad. S6. USA、79:2077~2081頁
【文献】Laughlin等、1983年、Gene、23:65~73頁
【文献】Senapathy及びCarter、1984年、J. Biol. Chem.、259:4661~4666頁
【文献】Grieger等、Nature Protocols、1(3)、1412~128頁(2006年)
【文献】Carter、1992、Current Opinions in Biotechnology、1533~539頁
【文献】Muzyczka、1992年、Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97~129頁
【文献】Ratschin等、Mol.Cell.Biol.4:2072頁(1984年)
【文献】Hermonat等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6466頁(1984年)
【文献】Tratschin等、 Mol.Cell.Biol.5:3251頁(1985年)
【文献】McLaughlin等、J. Virol., 62:1963頁(1988年)
【文献】Lebkowski等、1988年、Mol.Cell.Biol.、7:349頁(1988年)
【文献】Samulski等、(1989年、J. Virol.、63:3822~3828頁)
【文献】Perrin等、(1995年)Vaccine、13:1244~1250頁
【文献】Paul等、(1993年) Human Gene Therapy、4:609~615頁
【文献】Clark等、(1996年) Gene Therapy、3:1124~1132頁
【文献】Grieger等、Molecular Therapy、24(2)、287~297頁、2016年
【文献】Guy等、Reversal of neurological symptoms in a mouse model of Rett syndrome;Science、315(5815):1143~1147頁(2007年)
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、20th Edition、2000年、pub. Lippincott, Williams & Wilkins
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遺伝子導入による処置に対するレット症候群の適合性の確立における近年の進展にもかかわらず、既存のベクターは有効性と安全性の懸念を提起している。低レベルの形質導入又は遺伝子発現は、影響を受けた表現型をうまくレスキューできない可能性があるが、過剰発現は毒性をもたらす。結果として、現在利用可能なオプションと比較して改善された有効性及び/又は安全性プロファイルを有するMeCP2の送達のためのベクターの必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクターは、遺伝子送達の有望な候補であるが、容量が制限されており、約4.7kb~約5kbの一本鎖DNAのゲノムを運ぶことができる。AAVベクターゲノムは、各末端に145ヌクレオチドのパリンドローム反復配列(末端逆位配列、又はITRとしても知られる)を有し、導入遺伝子ペイロードの容量を約4.4kb~約4.7kbに減らす。
【0009】
ヒトMECP2遺伝子は大きく、プロモーター及びコード配列に加えて、8.5kbの非常に長い3'非翻訳領域を有する。したがって、組換えAAV(rAAV)ベクターに、その内因性の上流及び下流の調節配列の全てを含む遺伝子全体を含めることは不可能である。
【0010】
いわゆる「自己相補型AAV」(scAAV)は、従来のrAAVベクターと比較して、より効率的な導入遺伝子発現を提供できる。しかしながら、scAAVベクターゲノムには同一の導入遺伝子ペイロードの2つのコピーが反対方向に含まれているため、実際にはrAAVベクターの半分のコード能力しかなく、困難を更に悪化させる。
【0011】
本発明は、MeCP2発現カセットを含む核酸分子を提供し、発現カセットは、5'から3'に向けての作動可能な連結において、
- 神経細胞における転写を駆動できるプロモーターを含む5'転写制御領域;
- MeCP2タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム;
- 翻訳制御シグナル;
- 以下のうちの1つ又は複数を含む3'非翻訳領域(3'UTR):
(i) mir-22の結合部位;
(ii) mir-19の結合部位;
(iii) miR-132の結合部位;
(iv) miR124の結合部位;及び
(v) AUリッチエレメント;並びに
- 転写停止シグナル
を含み、MeCP2発現カセットは約5kb以下の長さである。
【0012】
核酸は、線状又は環状、及び一本鎖又は二本鎖であり得る。例えば、核酸は、プラスミドであり得るか、又はウイルスベクターを含む他の発現ベクターであり得る。以下の議論の多くはAAVベクターに集中しているが、発現カセットは、アデノウイルスベクター及びレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターを含む他のウイルスベクターの文脈でも使用できることが理解されるだろう。
【0013】
いくつかの実施形態では、例えば、発現カセットがrAAVベクターへと組み込むためのものであるとき、発現カセットは約4.9kb、4.8kb、4.7kb、4.6kb、4.5kb、又は4.4kb以下の長さであり得る。好ましくは、4.4kb以下の長さである。
【0014】
核酸分子は、ITR配列を更に含んでもよい。したがって、核酸分子は5'ITR及び3'ITRを含むことができ、ITRは発現カセットに隣接する。
【0015】
核酸分子はrAAVゲノムであり得る。したがって、本発明は、5'ITR、本発明のMeCP2発現カセット、及び3'ITRを含むrAAVゲノムを更に提供する。
【0016】
他の実施形態では、例えば、発現カセットがscAAVベクターへと組み込むためのものであるとき、発現カセットは約2.4kb以下、2.3kb以下、又は2.2kb以下の長さであり得る。好ましくは、2.2kb以下の長さである。
【0017】
scAAVベクターゲノムは、ITR間に位置するペイロード配列の逆方向反復を含む。したがって、ベクターゲノム分子は、2つの相補的なペイロード配列が分子内で互いにハイブリダイズするヘアピン様構造を採用するか、又はペイロード配列を介して全長ゲノムの2つのコピーが互いにハイブリダイズすることが可能である。(各末端のITRには正確に相補的な配列がない可能性があり、また各ITRが独自の内部二次構造を形成する可能性があるため、ITR配列は必ずしも互いにハイブリダイズするわけではない。)
【0018】
したがって、本発明は、5'から3'に向けて、本発明のMeCP2発現カセット及び前記発現カセットの逆相補体を含む核酸分子を更に提供する。
【0019】
核酸分子は、ITR配列を更に含んでもよい。したがって、核酸分子は、5'ITR、本発明のMeCP2発現カセット、前記発現カセットの逆相補体、及び3'ITRを含み得る。核酸分子はscAAVベクターゲノムであり得る。
【0020】
ITR配列は、任意の適切なAAV型からのものであり得る。例えば、AAV2からのものであり得る。
【0021】
AAVベクターは、第1の血清型(「A」)からのゲノムITR及び第2の血清型(「B」)からのタンパク質を有し得る。そのようなベクターは、「AAV A/B」型と呼ぶことができる。しかし、ウイルスタンパク質はビリオン粒子の血清学的特性を大きく決定するため、このようなベクターは依然として血清型Bのものと呼んでもよい。
【0022】
5'転写調節領域は、コアMeCP2プロモーター、MeCP2サイレンサーエレメント、及びCNS調節エレメントのうちの1つ、2つ、又は3つ全てを含んでもよい。
【0023】
典型的には、3'UTRは、miR-22、miR-19、miR-132、及びmiR-124のうちの1つ又は複数の結合部位を含む。例えば、それは、miR-22、miR-19、miR-132、及びmiR-124のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は4つ全ての結合部位を含み得る。
【0024】
例えば、3'UTRには次の結合部位を含んでもよい:
miR-22及びmiR-19;
miR-22及びmir-132;
miR-22及びmiR124;
miR-19及びmiR-132;
miR-19及びmiR-124;
miR-132及びmiR-124;
miR-22、miR-19、及びmiR-132;
miR-22、miR-19、及びmiR-124;
miR-22、miR-132、及びmiR-124;
miR-19、miR-132、及びmiR-124;
又はmiR-22、miR-19、miR-132、及びmiR-124。
【0025】
更に又は代替的に、3'UTRは、AUリッチエレメントを含み得る。したがって、それは、AUリッチエレメントを、単独で、又はmiR-22、miR-19、miR-132、及びmiR-124のうちの1つ若しくは複数の結合部位と組み合わせて含み得る。例えば、3'UTRは、AUリッチエレメントと組み合わせて、miR-22、miR-19、miR-132、及びmiR-124のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は4つ全ての結合部位を含み得る。
【0026】
例えば、3'UTRには次の結合部位と組み合わせてAUリッチエレメントを含んでもよい:
miR-22及びmiR-19;
miR-22及びmir-132;
miR-22及びmiR124;
miR-19及びmiR-132;
miR-19及びmiR-124;
miR-132及びmiR-124;
miR-22、miR-19、及びmiR-132;
miR-22、miR-19、及びmiR-124;
miR-22、miR-132、及びmiR-124;
miR-19、miR-132、及びmiR-124;
又はmiR-22、miR-19、miR-132、及びmiR-124。
【0027】
AUリッチエレメントとmiRNA結合部位は、mRNAの安定性及び/又はmRNAからの発現を調節する。これらのエレメントは任意の順序で存在できる。しかしながら、これらのエレメントが、同一のセンス鎖の5'から3'に向けて、miR-22部位、miR-19部位、miR-132部位、AUリッチエレメント、及びmiR-124部位の順に存在することが望ましい場合がある。
【0028】
本発明は、記載されるような核酸分子又はAAVゲノムを含むAAVビリオン粒子を更に提供する。AAVゲノムは、rAAVゲノム又はscAAVゲノムであり得る。
【0029】
ビリオン粒子は、MeCP2タンパク質をコードする核酸を標的細胞に送達するための遺伝子送達ビヒクルとみなされ、標的細胞においてMeCP2タンパク質の発現を誘導することができる。
【0030】
AAVビリオンは、任意の適切な血清型のものであり得る。血清型AAV9及びAAV PHP.Bは、神経細胞の形質導入の能力のために特に好ましい場合がある。
【0031】
本発明は、本明細書に記載される核酸を含む細胞を更に提供する。細胞は、例えば、記載されるようなビリオン粒子を産生することができるパッケージング細胞であり得る。
【0032】
細胞は、AAVタンパク質(例えば、rep及びcapタンパク質)を発現し、記載されるような感染性AAVビリオン粒子のアセンブリ及び放出をサポートすることができる。また、例えばアデノウイルス、El欠失アデノウイルス又はヘルペスウイルス由来のヘルパーウイルス機能を有し得る。
【0033】
本発明は、標的細胞におけるMeCP2タンパク質の発現を増強する際に使用するための本明細書に記載される核酸又はAAVビリオン粒子を更に提供する。
【0034】
本発明は、レット症候群の治療に使用するための本明細書に記載される核酸又はAAVビリオン粒子を更に提供する。
【0035】
本発明は、本発明の核酸又はAAVビリオンを、必要に応じて薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物を更に提供する。
【0036】
本発明は、本明細書に記載される核酸又はAAVビリオン粒子を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるレット症候群の処置方法を更に提供する。投与は、任意の適切な末梢経路又は中心的経路を介してもよいが、静脈内及び髄腔内投与が特に適切な場合がある。
【0037】
本発明は、レット症候群の処置のための医薬の調製における核酸又はAAVビリオン粒子の使用を更に提供する。
【0038】
したがって、核酸又はビリオンが投与される対象は、すでにレット症候群に罹患している可能性があるか、又はレット症候群を発症するリスクがある可能性がある。対象は、例えば、遺伝子検査、例えばMECP2遺伝子における1つ又は複数の変異(特に機能喪失型突然変異)に関する遺伝子検査により、レット症候群に罹患しているか、発症するリスクがあると同定されている可能性がある。
【0039】
したがって、本発明は、レット症候群の存在又は素因を示すMECP2遺伝子における1つ又は複数の変異の存在について対象を試験する工程と、1つ又は複数のそのような変異が同定された場合に本明細書に記載される核酸又はAAVビリオンによって処置するための対象を選択する工程とを含む方法を提供する。
【0040】
本明細書において「核酸分子」が言及される場合、文脈が別途必要としない限り、RNA又はDNA、及び一本鎖又は二本鎖であり得る。
【0041】
AAVゲノム分子は必然的に一本鎖DNA分子である。scAAVゲノムにはヘアピン二次構造を採用する能力があるが、単一のscAAVゲノムは、DNAの単一の連続鎖のみからなるため、ここでは一般に一本鎖分子とみなされる。互いにハイブリダイズした2つのscAAVゲノムの複合体は、二本鎖分子とみなすことができる。
【0042】
本明細書では、DNA配列とRNA配列の両方を参照する。Tを含む配列はAAVゲノム配列又は発現構築物等のDNA分子を指し、Uを含む配列はDNA発現カセット、例えばAAVゲノムからの転写に由来するmRNA転写物等のRNA分子を指すことは読者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】Mecp2
-/yマウスへの第1世代ベクターの全身送達により、治療有効性と狭い治療濃度域が明らかになった。(a) ビヒクルで処置した動物と比較した第1世代ベクターの異なる用量[1×10
11(n=10)、1×10
12(n=8)、及び1×10
13(n=5)vg/マウス]を注射したMecp2
-/yマウスのカプラン・マイヤー生存プロット(WT;n=9、Mecp2
-/y;n=16)。1×10
12vg/マウスで処置したMecp2
-/yマウスの生存期間中央値は、ビヒクルで処置した対照のものよりも有意に高かった(27.14対11.64週、p=0.001、Mantel-Cox検定)。(b-c) 1×10
11、1×10
12vg/マウス又はビヒクルで処置したMecp2
-/yマウスの平均体重及び総重症度スコアをそれぞれ示すプロット。矢印は注射時の年齢を示す。データは平均±標準誤差として提示される。(d) 異なる脳領域にわたる用量依存的形質導入効率(DAPI陽性核の割合としてのMyc陽性核)。データは平均±標準誤差として提示される(群あたりn=3マウス)。CA1は海馬領域CA1を示す。
【
図2】第1世代のベクターの静脈内注射は、肝臓に病理学的変化をもたらした。(a-d) (a)ビヒクル又は(b-d)異なる用量のベクターを注射した野生型マウスの代表的なH&E染色肝臓切片。(e) DAPIで対比染色したGFP対照ベクターを静脈内注射したマウスの肝臓切片。(f) GFPベクター処置マウスの代表的なH&E染色肝臓切片。矢印は、単核細胞の浸潤、空胞化、及び/又は肝細胞の喪失を示す。白い破線は、細胞の腫脹を示す。スケールバーは20μmを示す。CVは中心静脈を示す。
【
図3】第1世代ベクターの全身送達後のMecp2
T158M/Yマウスの生存率と体重の改善。(a) 処置したMecp2
T158M/yマウスの生存率プロット。矢印は注射時の年齢を示す。(b-c) 1×10
12vg/マウスの第1世代ベクターで処置したMecp2
T158M/yマウスと、ビヒクルで処置した対照群(Mecp2
T158M/y及びWT)の体重及び総重症度スコアのプロット。データは平均±標準誤差で提示される。(d) 処置したマウスの脳における形質導入効率(DAPI陽性核の割合としてのMyc陽性核;n=3マウス)。
【
図4】未処置の及び処置したMecp2
T158M/YマウスにおけるMeCP2の核局在化。海馬のCA1領域の代表的な共焦点画像。(a) 内因性MeCP2は、野生型核でヘテロクロマチン濃縮局在を示し、GFPタグ付きMeCP2は、Mecp2
T158M/yマウスの核でヘテロクロマチン局在の低下(すなわち、より拡散した標識化)を示す。(b) 第1世代ベクターで処置したMecp2
T158M/yマウスの形質導入細胞の核における外因性由来MeCP2のヘテロクロマチン濃縮局在化を実証する画像。白い矢印は、形質導入された細胞(Myc陽性)を示す。スケールバーは20μmを示す。
【
図5】Mecp2
-/yマウスへの全身送達後の第2世代ベクターの治療有効性。(a) 要約された本発明の第2世代ベクターの設計の特徴(詳細については、テキストと補足
図7を参照されたい)。(b) 1×10
12vg/マウスの第2世代ベクター(生存期間中央値=29.9週間)又は同一用量の第1世代ベクター(生存期間中央値=27.1週間)又はビヒクル(生存期間中央値=11.6週間)で静脈内処置したMecp2
-/yマウスの生存率プロット。矢印は注射時の年齢を示す。(c-d) (b)のように処置されたMecp2
-/yマウスの平均体重及び総重症度スコアをそれぞれ示すプロット。
【
図6】第2世代ベクターで処置したマウスの肝臓における外因性MeCP2の発現低下(a) 5週齢で第2世代ベクター又は第1世代ベクターを1×10
12vg/マウスで静脈内注射した1カ月後のマウスの肝臓からの平坦化された共焦点スタック画像。共焦点設定は各ケースで同一であった。組織を抗Myc及びDAPI核染色で免疫標識した。矢印は形質導入細胞(Myc陽性)を示し、矢じりは非形質導入細胞を示す。(b) 両方のベクターの肝臓での形質導入効率。(c) 肝臓の形質導入細胞(n=3マウス、1400形質導入細胞)の抗Myc免疫蛍光として測定された外因性MeCP2の細胞レベルの定量化。データは平均±標準誤差で提示される。(d) (c)のように測定された、肝臓における外因性MeCP2の細胞レベルの頻度分布。(e) H&Eで染色された肝臓切片は、肝細胞の空胞化(矢印)及び単核細胞浸潤の部位(破線の円)を示す。CVは中心静脈を示す。白色のスケールバーは20μmを示す。(f) 処置したマウスの肝臓における炎症性病巣の密度の定量化(群あたりn=3)。データは平均±標準誤差で提示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【
図7】新生仔のMecp2
-/yマウスへの第2世代ベクターの直接脳送達により、治療有効性を明らかにした。(a) 実験デザイン。(b) 新生仔期に処置されたMecp2
-/yマウスの、ビヒクルで処置した動物(生存期間中央値=12.4週間)と比較した生存期間延長(生存期間中央値=38.6週間;p<0.0001、Mantel-Cox検定)を示す生存率プロット。(c-d) (b)に示されるマウスの平均体重及び総重症度スコアをそれぞれ示すプロット。(e) 注射した野生型マウスの皮質からの代表的な共焦点画像。白色の矢印は形質導入された細胞を示す。矢じりは非形質導入細胞を示す。スケールバーは20μmを示す。(f) 異なる脳領域での形質導入効率を示すグラフ(n=3マウス)。(g) マウス皮質(n=3マウス;954個の形質導入細胞)の形質導入及び非形質導入(「天然」)の細胞におけるMeCP2レベルの頻度分布。データは平均±標準誤差で提示される。
【
図8】第1世代ベクターの静脈内注射後の脳における外因性MeCP2の発現。1×10
11、1×10
12、及び1×10
13vg/マウスの第1世代ベクターで静脈内処置されたMecp2
-/yマウスの海馬CA1領域での導入遺伝子発現を示す代表的な共焦点顕微鏡写真(抗Mycタグ免疫標識により明らかにされた)。矢印は形質導入された細胞を示し、下のパネルはDAPIとの共局在を示す。スケールバー=20μm。
【
図9】野生型マウスへの第1世代ベクターの全身送達は、低用量では許容されるが、高用量では毒性がある。(a) 他の用量及びビヒクル対照と比較した、1×10
13vg/マウス用量の第1世代ベクター(緑色)のIV注射後に観察された初期毒性を示す生存率プロット。矢印は注射時の年齢を示す。(b-c) 注射後のこれらのコホートについて、それぞれ平均体重と総重症度スコアを示すプロット。データは平均±標準誤差で提示される。(d) 1×10
13vg/マウスの第1世代ベクターを注射した野生型マウスの海馬CA1領域の平坦化された共焦点スタック画像。組織を抗Myc及び抗MeCP2抗体で免疫標識した。白い矢印は、形質導入された細胞を示す。スケールバーは20μmを示す。(e) 野生型マウスの海馬CA1領域の形質導入及び非形質導入の細胞における天然のMeCP2及び外因性MeCP2の細胞レベルの定量化(n=2マウス、131個の形質導入細胞及び172個の非形質導入細胞)。データは平均±標準誤差として提示され、天然のMeCP2に対して標準化される。(f) 形質導入及び非形質導入の細胞における標準化されたMeCP2レベルの頻度分布。#は高用量での致死性を示す。
【
図10】第1世代のベクターの静脈内注射は、肝臓に高レベルの外因性MeCP2発現をもたらした。(a) 1×10
13vg/マウスの用量で第1世代のベクターを静脈内注射したWTマウスから採取した肝臓の代表的な共焦点画像。切片は、抗Myc(緑)、抗MeCP2(赤)、及びDAPI核染色(青)で免疫標識された。白色の矢印は形質導入細胞を示し、黄色の矢印は非形質導入細胞を示す。(b) 同一の共焦点設定を使用して、海馬のCA1領域(上)及び肝臓(マウスに1×10
13vg/マウスを静脈内注射した)から撮影した平坦化された共焦点スタック画像。矢印は、高レベルの外因性MeCP2発現の核(抗Myc抗体の蛍光強度に基づく)を示し、矢じりは低発現レベルの核を示す。(a)及び(b)におけるスケールバー=20μm。(c) 同一のマウス(n=3マウス)の肝臓(55個の形質導入細胞とCA1(131個の形質導入細胞)の核あたりの積分ピクセル強度の測定。データは平均±標準誤差で提示される。
【
図11】Mecp2
T158M/yマウスとMecp2
-/yマウスの比較。(a) Mecp2
T158M/yマウス(n=15)及びMecp2
-/yマウス(n=29)の生存率プロット。(b-c) Mecp2
T158M/yマウスとMecp2
-/yマウスの間で、それぞれ平均体重と総重症度スコアに有意差を示さないプロット。データは平均±標準誤差で提示される。
【
図12】新規のベクター設計の特徴、有効性、肝臓の表現型。(a) 本文に記載されている3つの新規ベクターの設計の差異の概要。(b) 4~5週齢のMecp2
-/yマウスに1×10
12vg/マウスを静脈注射した後のこれら3つの新規ベクターの有効性は、ビヒクル対照に対する生存期間中央値の増加(左;Mantel-Cox検定を使用して比較)、ビヒクル対照に対する11週齢での平均体重(右)(Tukeyの事後一対比較による一元配置分散分析)として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。(c) JeT、9.47、又はspAベクターを注射したマウスの代表的なH&E染色肝臓切片。矢印は肝細胞の空胞化を示す。スケールバーは20μmを示す。
【
図13】第2世代のベクター構築物の設計。拡張されたmMeP426プロモーター及び内因性の遠位3'-UTRの推定調節エレメント(RE)を示す。mMeP229プロモーター(第1世代のベクターで使用)の範囲は、mMeP426と比較して示される。RDH1pA 3'-UTRは、遠位の内因性MECP2ポリアデニル化シグナルとそれに付随する調節エレメントの一部に隣接する「結合パネル」として組み込まれたいくつかの外因性microRNA(miR)結合部位からなる。アスタリスクの付いた参照は、げっ歯類ではなく、ヒトのin vitro試験を示す。
【
図15】第2世代のMeCP2ベクターをコードするプラスミドの模式図。
【
図16】
図15に示すプラスミドの完全配列(配列番号32)。
図14に示されている発現カセットには一重下線が付され、ITRは二重下線が付されている。
【
図17】新生仔のMecp2
-/yマウスへの第2世代ベクターの直接脳送達により、全長MeCP2とΔNICタンパク質の両方の同様の治療有効性が明らかになった。(a) 実験デザイン。(b) 新生仔期に処置したMecp2
-/yマウス(完全長MeCP2対ΔNICタンパク質(短縮型MeCP2))の、ビヒクルで処置した動物と比較した平均総重症度スコアを示すプロット。ベクターを注射した野生型マウスは、ビヒクルで処置したマウスと見分けがつかなかった。
【発明を実施するための形態】
【0044】
レット症候群
レット症候群(RTT)は、X連鎖遺伝子MECP21~4のde novo生殖系列変異によってほぼ排他的に引き起こされる神経障害である。それは一連の臨床診断的及び関連する特色によって特徴付けられ、症状は典型的に出生後6~18カ月で明らかになる。表現型は、条件付きノックアウトマウスでの発現抑制されたMecp2の遺伝的再活性化により、症状の頑健で永続的な反転をもたらすため、本質的に可逆的であると考えられる。しかしながら、遺伝子導入アプローチには、脳内の十分な数のニューロンを形質導入する必要性16及び有害な過剰発現の回避18を含む大きな課題がある。
【0045】
本ベクターは、罹患した個体の処置のための実行可能な候補を提供し、症状が検出可能になる前にMECP2遺伝子に変異を有する個体に投与される場合、検出可能な表現型の発生を防ぐ見込みさえ提供し得る。したがって、処置は「治療的」又は「予防的」とみなされ得る。「治療」という用語は、確立された症状又は表現型の阻害又は反転を指すために使用され、「予防」は、すでに明白である症状を示していない個体の症状の進行を阻害又は防止を指すために使用される。このような個人は、通常、MECP2遺伝子の機能喪失変異を有するとして、人生の早い段階で、例えば、産後18カ月より前、例えば、産後12カ月より前又は6カ月より前に実施される適切な遺伝子検査によって特定されるであろう。
【0046】
AAVベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、145ヌクレオチドの末端逆位配列(ITR)を含む約4.7kbの長さである。AAV血清型2(AAV2)ゲノムのヌクレオチド配列は、Ruffing等、J Gen Virol、75:3385~3392頁(1994年)によって修正されたSrivastava等、J Virol、45:555~564頁(1983年)に提示されている。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージング、及び宿主細胞染色体組み込みを指示するCis作用配列は、ITR内に含まれる。3つのAAVプロモーター(それらの相対マップ位置に対してp5、p19、及びp40と名付けられる)は、rep及びcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一のAAVイントロンの差異的スプライシング(ヌクレオチド2107及び2227における)と相まって、2つのrepプロモーター(p5及びp19)により、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40)が生成される。Repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製に関与する複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。選択的スプライシング及び非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連カプシドタンパク質の産生に関与する。
【0047】
AAV複製、ゲノムカプシド形成及び組み込みを指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含まれるので、ゲノムの内部約4.3kb(複製及び構造カプシドタンパク質、rep-capをコードする)のいくつか又は全てを、transでもたらされるrep及びcapタンパク質を有する発現カセット等の外来DNAと置換し得る。AAVベクターゲノムのITR間に位置する配列は、本明細書では「ペイロード」と呼ばれる。
【0048】
特定のAAV粒子の実際の能力は、使用するウイルスタンパク質によって異なる場合がある。典型的には、ベクターゲノム(ITRを含む)は、約5kb以下であり、例えば、約4.9kb、4.8kb、又は4.7 kb以下である。
【0049】
ITRはそれぞれ145塩基の長さである。したがって、ペイロードは典型的には、約4.7kb、4.6kb、4.5kb、又は4.4kb以下の長さである。好ましくは、4.4kb以下の長さである。したがって、組換えAAV(rAAV)は、約4.7kb、4.6kb、4.5kb、又は4.4kbまでの固有のペイロード配列を含むことができる。
【0050】
しかしながら、標的細胞の感染後、ベクターからのタンパク質発現と複製には、二本鎖ゲノムを形成するための相補的DNA鎖の合成が必要である。この第2鎖合成は、導入遺伝子発現の律速段階を表す。ペイロードが互いに逆向きの同一の導入遺伝子ペイロードの2つのコピーを含む、すなわち、第1のペイロード配列にその配列の逆相補体が続く、いわゆる「自己相補型AAV」(scAAV)ベクターを使用して、第2鎖合成の要件を回避することができる。これらのscAAVゲノムは、相補的なペイロード配列が互いに分子内でハイブリダイズするヘアピン構造、又は互いにハイブリダイズした2つのゲノム分子の二本鎖複合体のいずれかを採用できる。そのようなscAAVからの導入遺伝子の発現は、従来のrAAVよりもはるかに効率的であるが、ゲノムがペイロード配列の2つの相補的なコピーを運ぶ必要があるため、ベクターゲノムの有効なペイロード容量は半分になる。
【0051】
scAAVベクターゲノムは、ITR配列の1つに1つ又は複数の変異を含み、1つの末端反復での分解を阻害し、その結果、scAAV調製物の収量を増加させることができる。したがって、scAAVのITRの1つは、末端分解部位から削除されるか、末端分解部位に不活性化変異を含む場合がある。例えば、Wang等、Gene Therapy(2003年)10、2105~2111頁、及びMcCarty等、Gene Therapy(2003年)10、2112~2118頁を参照されたい。したがって、AAVゲノムの両端の2つのITR配列が同一である必要はないことは明らかであろう。
【0052】
scAAVは、McCarty、Molecular Therapy、16(10)、2008年、1648~1656頁でレビューされている。
【0053】
本明細書において、「rAAVベクター」という用語は、一般に、任意の所与のペイロード配列のコピーを1つだけ持つベクターを指すために使用され(すなわちrAAVベクターはscAAVベクターではない)、「AAVベクター」という用語はrAAVとscAAVのベクターの両方を包含するために使用される。
【0054】
AAVベクターゲノムのAAV配列(例えば、ITR)は、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、及びAAV PHP.Bを含むがこれらに限定されない、組換えウイルスを誘導できる任意のAAV血清型に由来し得る。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は当該技術分野において公知である。例えば、AAV-1の完全なゲノムはGenBank受託番号NC_002077で提供され;AAV-2の完全なゲノムはGenBank受託番号NC 001401及びSrivastava等、J. Virol.、45:555~564頁(1983年)で提供され;AAV-3の完全なゲノムはGenBank受託番号NC_1829で提供され;AAV-4の完全なゲノムはGenBank受託番号NC_001829で提供され;AAV-5ゲノムはGenBank受託番号AF085716で提供され;AAV-6の完全なゲノムはGenBank受託番号NC_00 1862で提供され;AAV-7及びAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenBank受託番号AX753246及びAX753249で提供され;AAV-9ゲノムはGao等、J. Virol.、78:6381~6388頁(2004年)で提供され;AAV-10ゲノムはMol.Ther.、13(1):67~76頁(2006年)で提供され;AAV-11ゲノムはVirology、330(2):375~383頁(2004年)で提供され;AAV PHP.Bは、Deverman等、Nature Biotech.、34(2)、204~209頁で記載され、その配列はGenBank受託番号KU056473.1で寄託されている。
【0055】
AAV-2 ITRを使用することが望ましい場合がある。以下の実施例で記載されるscAAVベクターには、以下の配列(配列番号1):
GCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGCCCGGGCAAAGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGG
及び(配列番号2):
CCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCGACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGC
を持つAAV-2 ITRが含まれている。
【0056】
同様に、本発明のAAVビリオン粒子に存在するタンパク質は、任意の適切なAAV血清型に由来し得る。一般に、ベクターは神経細胞を標的とするが、グリア細胞を形質導入する能力も望ましい場合がある。AAV-9及びAAV PHP.Bは、そのような細胞型の形質導入に特に効果的であり、それゆえ、AAV-9又はAAV PHP.B由来のビリオンタンパク質、特にカプシド(cap)タンパク質が特に好ましい場合がある。カプシドタンパク質は、標的細胞型の特異性又は形質導入効率を高めるために偽型化されてもよい。これらのAAV型は、血液脳関門を通過することもできるため、末梢投与が必要な場合に特に適している。
【0057】
本発明のベクターゲノムを含むビリオン粒子は、典型的には、ウイルスゲノムを複製し、ウイルスタンパク質(例えば、rep及びcapタンパク質)を発現し、ビリオン粒子を組み立てることができるパッケージング細胞において生成される。パッケージング細胞はまた、例えばアデノウイルス、El欠失アデノウイルス又はヘルペスウイルス由来のヘルパーウイルス機能を必要な場合がある。パッケージング細胞においてAAVベクター粒子を産生する技術は、当該技術分野において標準的である。偽型AAVの産生は、例えばWO01/83692に開示されている。様々な実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、組換えベクターの送達を強化するために改変され得る。カプシドタンパク質の改変は当該技術分野において公知である。例えば、US2005/0053922及びUS2009/0202490を参照されたい。
【0058】
パッケージング細胞を生成する一つの方法は、AAV粒子の産生に必要な全ての成分を安定して発現する細胞株を産生することである。例えば、AAVのrep及びcap遺伝子を欠くAAVゲノム、AAVゲノムから分離したAAVのrep及びcap遺伝子、及びネオマイシン耐性遺伝子等の選択マーカーを含むプラスミド(又は複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski等、1982年、Proc. Natl. Acad. S6. USA、79:2077~2081頁)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlin等、1983年、Gene、23:65~73頁)等の手順により、又は直接の平滑末端ライゲーションにより(Senapathy及びCarter、1984年、J. Biol. Chem.、259:4661~4666頁)、細菌プラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞株にアデノウイルス等のヘルパーウイルスを感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、AAVの大規模産生に適していることである。適切な方法の他の例は、プラスミドではなくアデノウイルス又はバキュロウイルスを使用して、AAVゲノム及び/又はrepとcapの遺伝子をパッケージング細胞に導入することである。
【0059】
代替的に、パッケージング細胞は、AAVゲノム、AAVタンパク質、及び必要なヘルパーウイルス機能をコードする1つ又は複数のプラスミドで適切な細胞を単に形質導入することによって生成できる。いわゆる「トリプルトランスフェクション」法は、それぞれこれらの遺伝子セットの1つを運ぶ3つのプラスミドを利用する。Grieger等、Nature Protocols、1(3)、1412~128頁(2006年)及び本明細書に引用される参照文献を参照されたい。
【0060】
AAV産生の一般的原理は、例えば、Carter、1992、Current Opinions in Biotechnology、1533~539頁、及びMuzyczka、1992年、Curr.Topics in Microbial.及びImmunol.,158:97~129頁)に概説されている。様々なアプローチは、Ratschin等、Mol.Cell.Biol.4:2072頁(1984年);Hermonat等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6466頁(1984年);Tratschin等、 Mol.Cell.Biol.5:3251頁(1985年);McLaughlin等、J. Virol., 62:1963頁(1988年);及び、Lebkowski等、1988年、Mol.Cell.Biol.、7:349頁(1988年)、Samulski等、(1989年、J. Virol.、63:3822~3828頁);米国特許第5,173,414号;WO95/13365及び対応する米国特許第5,658.776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764;Perrin等、(1995年)Vaccine、13:1244~1250頁;Paul等、(1993年) Human Gene Therapy、4:609~615頁;Clark等、(1996年) Gene Therapy、3:1124~1132頁;米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;並びに米国特許第6,258,595号に記載される。
【0061】
scAAV産生の技術はGrieger等、Molecular Therapy、24(2)、287~297頁、2016年によって記載される。
【0062】
したがって、本発明は、本発明の感染性AAVビリオン粒子を産生するパッケージング細胞を提供する。一実施形態では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、及びPerC.6細胞(同系293系統)等の安定的に形質転換されたがん細胞であり得る。別の実施形態では、パッケージング細胞は、低継代293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、ベロ細胞(サル腎細胞)、及びFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)等の形質転換がん細胞ではない細胞である。
【0063】
MeCP2タンパク質
本明細書に記載されているベクターは、X染色体にコードされ、ニューロン、特に脳及びCNSのニューロンに高度に発現する転写調節因子である、メチルCpG結合タンパク質(MeCP2)をコードする発現カセットを運ぶ。MECP2及びMecp2という用語は、典型的には、それぞれヒト及びマウスの遺伝子を指すために使用される。本発明のベクターは、主にヒトでの使用が想定されるが、他の種、特にマウス及びレット症候群の他の動物モデルで使用することができる。したがって、MECP2及びMeCP2という用語は、適切な任意の種からの遺伝子及びタンパク質を指すために使用され、文脈から要求されない限り、種固有であると解釈されるべきではない。
【0064】
上述のように、MECP2遺伝子の機能喪失変異は、主に女性のレット症候群の発症に関係している。
【0065】
MeCP2タンパク質は、幼若オスMeCP2-/yマウスの生存率の増加、体重の増加、及び/又はRTT様総重症度スコアの増加を誘導することができる。Guy等、Reversal of neurological symptoms in a mouse model of Rett syndrome;Science、315(5815):1143~1147頁(2007年)を参照されたい。
【0066】
活性を評価する目的で、投与は任意の適切な経路、例えば、本明細書で記載されるAAVベクター経由であり得る。機能的なMeCP2タンパク質を欠く別の同一の対照処置を与えられた同一の対照マウスと比較して改善が見られる。
【0067】
理論に拘束されることを望まないが、MeCP2タンパク質は典型的には、メチル化DNAに結合し、NCoR/SMRTコリプレッサー複合体の構成要素と相互作用(例えば、結合)することができる。コリプレッサー複合体の構成要素には、NCoR、HDAC3、SIN3A、GPS2、SMRT、TBL1X、及びTBLR1が含まれる。したがって、MeCP2タンパク質は、メチル化DNAにNCoR/SMRTコリプレッサー複合体の構成要素を動員することができる可能性がある。
【0068】
ヒトMeCP2タンパク質にはN末端配列が異なる2つのアイソフォームがある。
【0069】
アイソフォーム1は、配列(配列番号3):
【0070】
【0071】
を有する。
【0072】
アイソフォーム2は、配列(配列番号4):
【0073】
【0074】
を有する。
【0075】
理論に拘束されることを望まないが、MeCP2タンパク質の最も重要な機能領域は、メチルCpG結合ドメイン(MBD;下線)、核局在化シグナル(NLS;太字斜体)、及びNCoR/SMRT相互作用ドメイン(NID、二重下線)であると考えられている。したがって、MeCP2タンパク質は、典型的には以下を含む:
(i) 配列(配列番号5):
【0076】
【0077】
を有するメチルCpG結合ドメイン(MBD)、又は、それと少なくとも70%の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するそのバリアント;
(ii) 配列(配列番号6):
PGSVVAAAAAEAKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV
を有するNCoR/SMRT相互作用ドメイン(NID)、又は、それと少なくとも70%の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するそのバリアント;及び
(iii) 核局在化シグナル(NLS)。
【0078】
典型的には、MBDはメチル化DNAに結合できる。それは、太字で示され、下線が付された多くのリン酸化部位を有すると考えられている。これらの部位はSer80、Ser86、Thr148、Ser149、及びSer164であり、ヒトアイソフォーム2配列における位置に従って付番されている。
【0079】
典型的には、NIDはNCoR/SMRTコリプレッサー複合体と相互作用又は結合することができる。
【0080】
MBDは典型的には、NIDのN末端にある。
【0081】
NLSは、MBDとNIDの間に配置できる。
【0082】
NLSは、配列(配列番号7)RKAEADPQAIPKKRGRKを有する天然のMeCP2のNLSであり得る。しかしながら、SV40ラージT抗原NLS(配列番号8)(PKKKRKV)等、多くの異なるNLS配列が知られており、天然のMeCP2のNLSとは異なるNLS配列を使用することができる。
【0083】
したがって、MeCP2タンパク質は、配列(配列番号9):
SEDQDLQGLKDKPLKFKKVKKDKKEEKEGKHEPVQPSAHHSAEPAEAGKAETSEGSGSAPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETVSIEVKEVVKPLLVSTLGEKSGKGLKTCKSPGRKSKESSPKGRSSSASSPPKKEHHHHHHHSESPKAPVPLLPPLPPPPPEPESSEDPTSPPEPQDLSSSVCKEEKMPRGGSLESDGCPKEPAKTQPAVATAATAAEKYKHRGEGERKDIVSSSMPRPNREEPVDSRTPVTERVSS;
を含むか、若しくはそれからなり、又は、それと少なくとも70%の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の同一性を有するその機能的バリアント、又はそのいずれかの機能的断片である。この配列との差異は、MBDとNIDの外側にあることが好ましく、機能的なNLSを保持する必要がある。
【0084】
機能的に同等であると考えられているΔNCと呼ばれるこの配列の断片は、配列(配列番号10):
PAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV
を有する。
【0085】
したがって、MeCP2タンパク質は、ΔNC配列を含むか若しくはそれからなるか、又はそれと少なくとも70%の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するその機能バリアントであり得る。同様に、この配列との差異は、MBDとNIDの外側にあることが好ましく、機能的なNLSを保持する必要がある。
【0086】
ΔNICと呼ばれ、MBDとNIDを含み、代替のNLS配列(SV40ラージT抗原由来)を有するが、残りの天然MeCP2配列の多くが削除された更なるバリアントは、配列(配列番号11):
PAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPGSSGSSGPKKKRKVPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV
を有する。
【0087】
したがって、MeCP2タンパク質は、ΔNIC配列を含むか若しくはそれからなるか、又はそれと少なくとも70%の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するその機能バリアントであり得る。同様に、この配列との差異は、MBDとNIDの外側にあることが好ましく、機能的なNLSを保持する必要がある。
【0088】
MeCP2タンパク質のMBD又はNIDが、提供された参照配列との1つ又は複数の差異を含む場合、それらの差異は保存的置換であることが望ましい場合がある。MBDのリン酸化部位が維持されることも望ましい場合がある。
【0089】
タンパク質は、配列:(配列番号12)MAAAAAAAPSGGGGGGEEERLEEK若しくはMVAGMLGLREEK(配列番号13)、又は、いずれかと少なくとも70%の同一性、例えば、いずれかと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するN末端部分を更に含んでもよい。
【0090】
したがって、発現カセットによってコードされるMeCP2タンパク質は、例えば、配列:
MAAAAAAAPSGGGGGGEEERLEEKSEDQDLQGLKDKPLKFKKVKKDKKEEKEGKHEPVQPSAHHSAEPAEAGKAETSEGSGSAPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETVSIEVKEVVKPLLVSTLGEKSGKGLKTCKSPGRKSKESSPKGRSSSASSPPKKEHHHHHHHSESPKAPVPLLPPLPPPPPEPESSEDPTSPPEPQDLSSSVCKEEKMPRGGSLESDGCPKEPAKTQPAVATAATAAEKYKHRGEGERKDIVSSSMPRPNREEPVDSRTPVTERVSS(ヒトアイソフォーム1)(配列番号14)、
MVAGMLGLREEKSEDQDLQGLKDKPLKFKKVKKDKKEEKEGKHEPVQPSAHHSAEPAEAGKAETSEGSGSAPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETVSIEVKEVVKPLLVSTLGEKSGKGLKTCKSPGRKSKESSPKGRSSSASSPPKKEHHHHHHHSESPKAPVPLLPPLPPPPPEPESSEDPTSPPEPQDLSSSVCKEEKMPRGGSLESDGCPKEPAKTQPAVATAATAAEKYKHRGEGERKDIVSSSMPRPNREEPVDSRTPVTERVSS(ヒトアイソフォーム2)(配列番号15)
MAAAAAAAPSGGGGGGEEERLEEKPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV(ΔNCアイソフォーム1)(配列番号16)
MVAGMLGLREEKPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPKKPKSPKAPGTGRGRGRPKGSGTTRPKAATSEGVQVKRVLEKSPGKLLVKMPFQTSPGGKAEGGGATTSTQVMVIKRPGRKRKAEADPQAIPKKRGRKPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV(ΔNCアイソフォーム2)(配列番号17)
MAAAAAAAPSGGGGGGEEERLEEKPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPGSSGSSGPKKKRKVPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV(ΔNICアイソフォーム1)(配列番号18)、
MVAGMLGLREEKPAVPEASASPKQRRSIIRDRGPMYDDPTLPEGWTRKLKQRKSGRSAGKYDVYLINPQGKAFRSKVELIAYFEKVGDTSLDPNDFDFTVTGRGSPSRREQKPPGSSGSSGPKKKRKVPGSVVAAAAAEAKKKAVKESSIRSVQETVLPIKKRKTRETV(ΔNICアイソフォーム2)(配列番号19)
のうちの1つを含み得るか、若しくはそれからなり得るか、又は、それらの配列のうちのいずれか1つと少なくとも70%の同一性、例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し得る。
【0091】
提供される参照配列との少なくとも80%又は少なくとも90%の同一性値が特に好ましい場合がある。
【0092】
本発明の発現カセットはまた、他の種、特に他の哺乳動物種、例えば、非ヒト霊長類、又はげっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の飼育動物、実験動物、家畜動物由来のMeCP2タンパク質を有用にコードし得ることは当業者には明らかであろう。
【0093】
MeCP2タンパク質は、例えば、分子のC末端における分離又は同定を助けるエピトープタグ等の異種(すなわち、非MeCP2)配列を更に含んでもよい。例には、ポリヒスチジン(例、ヘキサヒスチジン)タグ、FLAGタグ、Mycタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)及び強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)等の蛍光タンパク質等が含まれる。そのような異種部分は、典型的には、50個以下のアミノ酸の長さ、例えば、20個以下のアミノ酸の長さである。例えば、以下の実施例に記載される第2世代ベクターによりコードされるMeCP2タンパク質は、配列EQKLISEEDL(配列番号20)を有するC末端c-Mycエピトープタグを含む。このタンパク質は、配列(配列番号21):
【0094】
【0095】
を有し、
MeCP2配列に下線が付され、c-Mycエピトープタグには二重下線が付される。
【0096】
上述のΔNCタンパク質のc-Mycタグ付きバージョンは、配列(配列番号22):
【0097】
【0098】
を有し得、
MeCP2配列に下線が付され、c-Mycエピトープタグには二重下線が付される。
【0099】
上述のΔNICタンパク質のc-Mycタグ付きバージョンは、配列(配列番号23):
【0100】
【0101】
を有し得、
MeCP2配列に下線が付され、c-Mycエピトープタグには二重下線が付される。
【0102】
免疫原性及び他の副作用のリスクを低減するために、治療用途を目的とするタンパク質は一般にそのような異種エレメントを含まないことが理解されよう。
【0103】
いくつかの実施形態では、発現カセットによってコードされるMeCP2タンパク質は、600個以下のアミノ酸の長さ、例えば、550、540、530、又は520個以下のアミノ酸の長さである。したがって、MeCP2タンパク質をコードするオープンリーディングフレームは、1803塩基(トップコドンを含む)以下の長さ、例えば、1653、1623、1593、又は1563塩基以下の長さである。
【0104】
候補配列と上記の参照配列の間のアミノ酸配列同一性パーセント(%)は、必要に応じて、最適なアラインメントを達成するためのギャップを導入し、配列の同一性の一部として保存的置換をいっさい考慮せずに配列をアライメントさせた後の、参照配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の割合として定義される。同一性%の値は、WU-BLAST-2によって決定できる(Altschul等、Methods in Enzymology、266:460~480頁(1996年))。WU-BLAST-2はいくつかの検索パラメーターを使用し、その多くはデフォルト値に設定されている。調整可能なパラメーターは、オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワードしきい値(T)=11の値で設定される。アミノ酸配列同一性%の値は、WU-BLAST-2によって決定される一致する同一残基の数を、参照配列の残基の総数で除算して、10倍することで決定される(アライメントスコアを最大化するためにWU-BLAST-2によって参照配列に導入されたギャップは無視する)。
【0105】
保存的置換は、アミノ酸クラス内の置換及び/又はBLOSUM62マトリックスで陽性と評価される置換として定義され得る。
【0106】
一つの分類によると、アミノ酸クラスは酸性、塩基性、非荷電極性、及び非極性であり、酸性アミノ酸はAsp及びGluであり、塩基性アミノ酸は、Arg、Lys、及びHisであり、非荷電極性アミノ酸は、Asn、Gln、Ser、Thr、及びTyrであり、非極性アミノ酸は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、Trp、及びCysである。
【0107】
別の分類によると、アミノ酸クラスは小さい親水性、酸/酸アミド/親水性、塩基性、小さい疎水性、及び芳香族であり、小さい親水性アミノ酸はSer、Thr、Pro、Ala及びGlyであり、酸/酸アミド/親水性アミノ酸は、Asn、Asp、Glu、及びGlnであり、塩基性アミノ酸は、His、Arg、及びLysであり、小さい疎水性アミノ酸は、Met、Ile、Leu、及びValであり、芳香族アミノ酸はPhe、Tyr、及びTrpである。
【0108】
BLOSUM62マトリックスで正のスコアを有する置換は次のとおりである:
【0109】
【0110】
5'転写制御領域
MeCP2発現カセットは、神経細胞、例えば、特に脳とCNSのニューロンにおいて転写を指示することができる5'転写制御領域を含む。グリア細胞でも発現が起こることが望ましい場合があるが、グリア細胞での高レベルの発現は一般に好ましくない。
【0111】
5'転写制御領域には、プロモーターと転写開始部位が含まれる。また、エンハンサー及び/又はサイレンサーエレメントを含む他の制御エレメントを含む場合がある。
【0112】
ウイルスプロモーター(例えば、SV40プロモーター)又は哺乳類の「ハウスキーピング」プロモーター等の普遍的なプロモーターを使用することが可能な場合がある。しかし、好ましくは、プロモーターは他の細胞型と比較して神経細胞で優先的に発現を指示する。
【0113】
実施例に記載されている第2世代の発現カセットは、コアプロモーター領域、コアプロモーター領域の上流(及びわずかに重複)のサイレンサー領域、及びコアプロモーター領域の下流かつ転写開始部位の上流に位置するCNS調節エレメントを含む、ヒトMeCP2遺伝子からの染色体配列の連続した区間を使用する。これらの配列は
図14に示される。
【0114】
理論に拘束されることを望まないが、コアプロモーターとCNS調節エレメントは神経細胞での適切な発現を確保すると考えられているが、サイレンサーは神経細胞とグリア細胞及び肝細胞を含む他の細胞型の両方で過剰発現、したがって毒性を防ぐ可能性がある。
【0115】
したがって、5'転写制御領域は、配列(配列番号24):
AAACCAGCCCCTCTGTGCCCTAGCCGCCTCTTTTTTCCAAGTGACAGTAGAACTCCACCAATCCGCAGCTGAATGGGGTCCGCCTCTTTTCCCTGCCTAAACAGACAGGAACTCCTGCCAATTGAGGGCG
又はその機能的断片、又は20個以下のヌクレオチド変化、例えばその配列と比較して10個以下若しくは5個以下のヌクレオチド変化を有するそのバリアントを有するコアプロモーターエレメントを含み得、コアプロモーター領域は、単独又はCNS調節エレメントと組み合わせて、神経細胞、例えば、脳及び/又はCNSのニューロンにおいて転写を開始することができる。
【0116】
5'転写制御領域は、配列(配列番号25):
TTAAGCGCCAGAGTCCACAAGGGCCCAGTTAATCCTCAACATTCAAATGCTGCCCACAAAAC
又はその配列と比較して10個以下若しくは5個以下のヌクレオチド変化を有するそのバリアントを有するサイレンサーエレメントを含み得る。
【0117】
5'転写制御領域は、配列(配列番号26):CAGCACACAGGCTGGTCGGを有するCNS調節エレメントを含んでもよい。
【0118】
E-boxエレメント(配列CAGGTG)はコアプロモーター配列の3'末端と重複し、SP1部位(GGGCGG)はCNS調節エレメントの3'に位置する。必要に応じて、これらのエレメントが存在する場合もある。
【0119】
5'転写制御領域は、
図14にmMeP426として注釈が付けられた天然のMeCP2コアプロモーター配列を含んでもよい。
【0120】
マイクロRNA結合部位
MeCP2発現カセットの3'UTRには、MeCP2導入遺伝子発現の調節を促進するために、1つ又は複数のマイクロRNA(miRNA)結合部位が含まれる場合がある。
【0121】
マイクロRNAは小さな非コードRNAであり、翻訳の抑制(翻訳の阻害又はmRNA分解の誘導のいずれか)により細胞機能に大きな影響を及ぼす。マイクロRNAは、RNA pol IIによって合成された一次RNA転写産物(pri-miRNA)に由来するが、数千個のヌクレオチドの長さにもなる。単一のpri-miRNA転写産物は、1つを超える活性miRNAを生成する場合がある。
【0122】
核では、タイプIII RNAse酵素Droshaがpri-miRNA転写産物をプロセシングして、通常約70~100個のヌクレオチドの長さのステムループ又はヘアピン構造からなる前駆体miRNA(pre-miRNA)にする。pre-miRNAは細胞質に輸送され、そこでRNAse Dicerによって更にプロセシングされ、ループを除去して、活性化された「ガイド」鎖(通常15~25個のヌクレオチドの長さ)が完全に又は部分的に相補的な「パッセンジャー」鎖にハイブリダイズした成熟二本鎖miRNA分子が得られる。
【0123】
次いで、成熟した二本鎖miRNAはRNA誘導サイレンシング複合体に組み込まれ、そこでガイド鎖が標的mRNAの結合部位にハイブリダイズする。
【0124】
ガイド鎖は、標的結合部位と完全に相補的ではない場合がある。しかしながら、「シード」配列と呼ばれるガイド鎖の領域は、通常、標的結合部位の対応する「コア」配列に完全に相補的である。シード配列は通常2~8個のヌクレオチドの長さであり、ガイド鎖の5'末端又はその近く(1又は2個のヌクレオチド以内)にある。
【0125】
いずれかの特定の理論に拘束されることを望まずに、miR-22結合部位は、末梢細胞のMeCP2発現を調節する可能性がある。参照文献32を参照されたい。
【0126】
miR-22結合部位は、典型的には、コア配列:
GGCAGCTを少なくとも含む。
【0127】
例えば、miR-22結合部位は、配列(配列番号27):
【0128】
【0129】
を含んでもよく、コア配列には下線が付され;
又は、1つ若しくは複数の位置で、例えば5つまでの位置、10個までの位置、15個までの位置、又は20個までの位置で異なる場合があり、それらの全てはコア配列の外部にある必要がある。
【0130】
miR-19結合部位は、グリア細胞のMeCP2発現を調節する可能性がある。参照文献33を参照されたい。
【0131】
miR-19結合部位は、典型的には、コア配列:
TTTGCACを含む。
【0132】
例えば、miR-19結合部位は、配列(配列番号28):
【0133】
【0134】
を含んでもよく、コア配列には下線が付され;
又は、1つ若しくは複数の位置で、例えば5つまでの位置、10個までの位置、15個までの位置、又は20個までの位置で異なる場合があり、それらの全てはコア配列の外部にある必要がある。
【0135】
miR-124結合部位はまた、グリア細胞のMeCP2導入遺伝子発現を調節する可能性がある。参照文献35及び44を参照されたい。
【0136】
miR-124結合部位は、典型的には、コア配列:
TGCCTTAを含む。
【0137】
miR-124結合部位は、必要に応じて、コア配列の5'又は3'の更なる配列を含んでもよいが、コア配列は通常変化しない。
【0138】
miR-132結合部位は、BNDF2(脳由来神経栄養因子2)によるフィードバックループを介してMeCP2発現を調節する可能性がある。MeCP2は、BNDF2の発現レベルを増加させると考えられている。BNDF2は、miR132のレベルを増加させ、これは、MeCP2発現の負の調節因子である。参照文献34を参照されたい。
【0139】
miR-132結合部位は、典型的には、コア配列:
GACTGTTAを含む。
【0140】
例えば、miR-132結合部位は、配列(配列番号29):
【0141】
【0142】
を含んでもよく、コア配列には下線が付され;
又は、1つ若しくは複数の位置で、例えば5つまでの位置、10個までの位置、15個までの位置、又は20個までの位置で異なる場合があり、それらの全てはコア配列の外部にある必要がある。
【0143】
AUリッチエレメント
発現カセットの3'UTRは、AUリッチエレメントをコードする場合がある。
【0144】
AUリッチエレメント(ARE)は、3'-5'エキソソーム経路を介したmRNA安定性の一般的な調節因子であり、通常は3'UTRにある。
【0145】
AUリッチエレメントには、AUUUA配列の1つ又は複数の繰り返しが含まれる場合がある。また、配列AUAUAUを持つ1つ又は複数のいわゆるUS2Bエレメントを含んでもよい。
【0146】
MeCP2遺伝子の3'UTRには、AUAUAUUUAAAAA(配列番号30)(参照文献38)の配列を持ち、AUUUAリピートが1つとES2Bエレメントが1つ含まれるAUリッチエレメントが含まれる。この配列の変更が可能である。
【0147】
他の制御シグナル
当業者は、発現カセットの他のエレメントを設計して、所望の標的細胞型におけるMeCP2導入遺伝子の適切な発現を達成することができるであろう。
【0148】
例えば、転写終結及びポリアデニル化シグナルが典型的に存在し、一次転写物の切断及び得られるmRNAのポリアデニル化を指示する。これらは、「上流エレメント」(切断部位の5')及び「下流エレメント」(切断部位の3')を含み得る。
【0149】
一般的な上流エレメントは、典型的には、切断部位の10~30個のヌクレオチド上流に位置するヘキサマーであり、しばしば単にポリアデニル化又はポリ(A)シグナルと呼ばれる。MeCP2遺伝子には2つのポリアデニル化シグナルがあり、そのうち遠位のポリアデニル化シグナル(UAUAAA)の配列が好ましい場合がある。配列AAUAAAも一般的に使用されるポリアデニル化シグナルである。
【0150】
下流エレメントは、Uリッチ又はGUリッチエレメントである。これらには、CstF(切断刺激因子)等のポリアデニル化機構の構成要素の結合部位が含まれる場合がある。MeCP2遺伝子は、配列(配列番号31)UGUCCGUUUGUGUCUUUUGUUGUを有し、それぞれ配列UUUGUを有する2つのCstF結合部位を含むGUリッチ領域を含む。
【0151】
U(ウリジン)はRNA配列の文脈で言及されることが理解されるだろう。対応するDNA配列、例えば、AAVベクターゲノムに見られるとき、代わりにTが組み込まれる。
【0152】
発現カセットは、典型的には、翻訳開始シグナル、例えばコザック配列も含む。コザック配列には、MeCP2タンパク質の開始コドン、典型的にはAUGが含まれる。以下の実施例に記載のベクターで使用される適切なコザック配列の例は、
【0153】
【0154】
であり、開始コドンに下線が付されている。
【0155】
ヒトMECP2遺伝子由来の天然のコザック配列は、配列
【0156】
【0157】
を有する、すなわち、以下に記載されるベクターに存在するCCダブレットを欠いている。CCダブレットは、一般的に認識されているコンセンサスコザック配列との適合性を高め、コザック配列の強度を高めるために導入された。しかしながら、少なくとも一部の組織では高レベルのMeCP2発現が有害である可能性があるため、場合によっては、修飾された配列ではなく、天然のコザック配列を使用することが望ましい場合がある。
【0158】
当業者は、コザック配列内でかなりの変更が可能であり、必要に応じて更なる代替配列を選択できることを認識するであろう。
【0159】
医薬組成物及び投与経路
本明細書に記載される、核酸、ビリオン等は、医薬組成物に製剤化することができる。
【0160】
投与は抹消、例えば、静脈内、皮膚若しくは皮下、鼻腔、筋肉内若しくは腹腔内、又は中枢神経系(CNS)に直接、例えば、髄腔内注射又は頭蓋内注射によるものであり得る。
【0161】
静脈内及び髄腔内投与が好ましい場合がある。
【0162】
医薬組成物は、上記の物質の1つに加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、又は当業者に公知の他の材料を含んでもよい。そのような材料は、無毒でなければならず、また、活性成分の効力に干渉してはならない。担体又は他の材料の正確な性質は、投与経路に依存する場合がある。
【0163】
静脈内、皮膚、又は皮下注射の場合、活性成分は、非経口で許容可能な水溶液の形状をとることになり、この溶液は、パイロジェンを含まず、かつ適切なpH、等張性、及び安定性を有する。当業者なら、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液等の等張性ビヒクルを用いて、適切な溶液を調製することが十分可能である。保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び/又は他の添加剤を、必要に応じて含ませることができる。
【0164】
CNSへの直接投与のための組成物は、典型的には、保存剤及び他の賦形剤を欠く最小限の組成物であり、投与時に特別に調製されてもよい。
【0165】
投与は、好ましくは「予防有効量」又は「治療有効量」(場合によって)であり、これは個人に利益を示すのに十分である。実際の投与量、及び投与の速度と時間経過は、個々の対象とその状態の性質及び重症度に依存し得る。処置の処方、例えば、投与量等の決定は、開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、分娩部位、投与方法、及びその他の開業医に既知の要因を考慮する。
【0166】
上述の手法とプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences、20th Edition、2000年、pub. Lippincott, Williams & Wilkinsに記載される。
【実施例】
【0167】
AAV/MECP2による用量漸増により、全身投与後の治療濃度域が狭いことが明らかになった。
ベクター用量と治療効果の関係を調べるために、scAAV2/9ベクターを使用してマウスMecp2の内因性コアプロモーターの短い229bp領域(MeP229)
19、22の制御下でMycタグ付きヒトMECP2_e1 cDNAを送達する用量漸増実験を実施したが、これは、これ以降、「第1世代ベクター」と呼ばれる。幼若オスMecp2
-/y及び野生型(WT)マウスに4~5週齢で、ビヒクル又は、マウスあたり、1×10
11(低用量)、1×10
12(中用量)、若しくは1×10
13(高用量)ウイルスゲノム(vg)(用量範囲約1×10
13~1×10
15vg/kg)のいずれかを尾静脈に注射した。このノックアウトラインのこれまでの研究
6、7、15から予想されるように、ビヒクル対照で処置された15匹のMecp2
-/yマウスにおけるRTT様表現型徴候の発症は4~5週齢から観察され、20週齢までに全てのマウスでの死亡又は打ち切りまで重症度は徐々に増加した(
図1a~
図1c)。低用量で処置されたMecp2
-/yマウスは、生存率、体重、及び重症度スコアの点で、ビヒクルを注射したマウスと区別できなかった(
図1a~
図1c)。対照的に、中程度の用量(1×10
12)で処置されたMecp2
-/yマウスは、ビヒクル対照と比較して生存率と体重の有意な増加を示した(生存期間中央値=27.3週間対11.64週間、p=0.001、Mantel-Cox検定、
図1a;11週齢で測定した平均体重、対照Mecp2
-/yマウスの生存期間中央値について、p<0.05、
図1b)。しかしながら、この用量ではRTT様表現型重症度スコアに差異がなかった(
図1c)。最後に、最高用量を投与されたコホートは、注射後10~15日で急性毒性と致死性を示した(
図1a)。
【0168】
処置したMecp2
-/yマウスの形質導入パターンを抗Myc抗体免疫蛍光標識によりCNS内で評価し(
図8)、WTマウスの内因性MeCP2で観察されたものに対応する細胞核内の点状パターンで外因性MeCP2タンパク質発現が明らかになった。低用量コホートの試料は、脳領域全体で低い形質導入効率を明らかにした(0.5~1%)。中程度の用量では、約3~5%の形質導入効率が得られたが、高用量では効率は10~22%であった(
図1d)。
【0169】
天然レベルと比較した外因性MeCP2の細胞レベルを測定するために、WTマウスを上述のベクターで処置した。低用量及び中用量は耐容性があり、体重又は表現型の重症度スコアに観察可能な影響はなかった(
図9a~
図9c)。しかしながら、高用量で処置されたWTマウスは、ノックアウトマウスで観察された急性毒性と急速な致死性を示した(
図9a~
図9c)。この高用量を投与されたマウスのMeCP2の細胞レベルの定量化により、形質導入された海馬錐体細胞が内因性レベルの120%に相当する平均レベルで外因性MeCP2を発現し、MeCP2の総細胞レベルがこれらの細胞の通常よりもちょうど2倍高かった(
図9d~
図9f)。
【0170】
第1世代ベクターの全身送達は、肝臓毒性をもたらした。
高用量での第1世代ベクターの全身注射後に遭遇する毒性効果を更に調査するために、外因性MeCP2発現のレベルを末梢組織の範囲で試験した。免疫組織化学により、肝臓のMyc陽性細胞の割合が高いことが明らかになった(
図10)。内因性MeCP2レベルは、脳ニューロンよりも肝細胞ではるかに低いことが知られており
23、24、典型的には、利用可能な抗体を使用した免疫組織化学の検出しきい値を下回っている(
図10a)。しかしながら、処置されたWTマウスの肝細胞のサブセット(抗Myc免疫標識を使用)の外因性MeCP2レベルは、ニューロンで見られるMeCP2レベルよりも高いことが見出され(
図10b~
図10c)、そのような細胞で内因的に見出されるレベルよりも約20倍高かった。Myc陽性細胞は、処置されたMecp2
-/yマウスの心臓、腎臓、及びその他の末梢組織でも検出された(データ示さず)。
【0171】
ビヒクル又は低用量のベクターを注射したマウスの肝臓切片の組織学的調査では、ところどころに単核浸潤の領域を伴うほぼ正常な肝臓構造が示された(
図2a~
図2b)。対照的に、高用量のベクターを注射したマウスは、細胞破壊と空胞形成、肝細胞の喪失、及び単核細胞浸潤を含む病理学的特徴の用量依存的増加を示した(
図2c~
図2d)。
【0172】
観察された肝病理がウイルス粒子自体の高いコピー数によるものなのか、又はMeCP2過剰発現の結果によるものなのかを明らかにするために、GFPの発現を駆動するがそれ以外は第1世代のベクターと同一であるベクターをマウスに注入した。肝臓での広範なGFP発現の検出にもかかわらず(
図2e)、肝臓切片の組織学的検査では、細胞損傷又は免疫細胞浸潤の証拠は明らかにならなかった(
図2f)。更に、このベクターではRTT総重症度スコアの変化は観察されなかった(データ示さず)。
【0173】
第1世代ベクターの全身投与により、Mecp2[T158M]ノックインマウスの生存率が向上する。
RTTでの遺伝子導入の重要な問題は、内因性変異型MeCP2の存在が外因性MeCP2の治療効果を低下させるかどうかである。融合タンパク質としてGFPでタグ付けされた天然MeCP2を発現し、一般的なRTTを引き起こすp.T158M変異、Mecp2
T158M/y9を有するオスのマウスは、Mecp2-nullマウスの表現型と非常によく似た表現型を示す(
図11)が、いくらか延長した生存を有する(それぞれ20.3週間と12.4週間の生存期間中央値、p=0.0016、Mantel-Cox検定)。
【0174】
4~5週齢のMecp2
T158M/yマウスへの第1世代ベクターの中程度の用量(1×10
12vg/マウス)の静脈内送達により、生存率が有意に増加した(
図3a;ベクター処置マウスにおける生存期間中央値=38.3週間対ビヒクル処置マウスにおける20.3週間;p=0.0019、Mantel-Cox検定、群あたりn=8~15)。ベクターで処置したコホートでは、体重がわずかに増加した(
図3b、20週齢のデータを使用した一元配置分散分析、p<0.05)。しかしながら、群間でRTT様の総重症度スコアに差異はなく(
図3c)、抗Myc標識(
図3d)で明らかになったように、低い脳での形質導入効率(約2~4%)と一致している。
【0175】
p.T158M変異は、MeCP2のクロマチン結合能に影響を及ぼし、核内のMeCP2標識の点状エレメントの喪失をもたらす(
図4a)
9。処置されたMecp2
T158M/yマウスからの海馬ニューロンの免疫標識は、形質導入された(Myc陽性)細胞でのみ、DAPIの明るい点への局在の回復を伴うMeCP2発現のWTパターンを示した(
図4b)。これは、同一の核内に変異型の内因性MeCP2タンパク質が存在するにもかかわらず、外因性MeCP2がヘテロコマチンに正常に局在化できることと一致する。
【0176】
全身投与後の肝臓毒性を低減する第2世代ベクターの開発
上述のデータに照らして、全身送達後に治療に適切なレベルの脳形質導入を達成するには、より高いAAVベクター用量が必要であることは明らかである。しかしながら、高用量の第1世代カセットを送達した後の深刻な毒性のため、新しい設計が必要であった。より低い細胞発現レベルをもたらし、及び/又は肝臓向性を減少させると予測される、発現カセット及びカプシドに対する一連の修飾を試験した。これには、(1)代替の、コンパクトで、おそらく弱いJeTプロモーター
25、(2)短い合成ポリアデニル化(SpA)シグナル
26、
図12a)、及び(3)AAV9
27、28と比較した肝臓脱標的化カプシド配列のin vivoスクリーニングから現れた、scAAV9.47カプシドにパッケージ化される元の第1世代の発現カセットを利用する発現カセットの使用が含まれた。4~5週齢のMecp2
-/yマウスに中程度の用量(1×10
12vg/マウス)でこれらのベクターを全身注射すると、生存期間が大幅に延長し、体重が改善したが、RTT様の総重症度スコアには影響がなかった(
図12b)。要約すると、これらの修飾はいずれも、第1世代ベクターを超える大幅な改善をもたらさなかった(全ての測定でp>0.05、分散分析及びMantel Cox検定)。重要なことは、これらの修飾されたベクターは全て、第1世代のベクターで観察されたものと同様の肝病理の発生を引き起こした(
図2で前述したように;
図12c)。
【0177】
第1世代ベクターで内因性Mecp2コアプロモーター断片(MeP229)を使用する理由は、MeCP2発現の内因性組織レベルパターンを再現する
22ことが主に示されていたことであった。しかしながら、このコアプロモーター断片には、MeCP2発現の細胞型特異的調節に重要であると予想される多くの予測される上流調節エレメントが欠落している
29~31。したがって、追加のプロモーター調節エレメントと推定サイレンサーエレメントを組み込んだ拡張プロモーター断片(MeP426)を使用した第2世代ベクター(v2)を設計した(
図13)。これにより、形質導入細胞の外因性MeCP2レベルの調節がより可能になると予測された。拡張プロモーターに加えて、Mecp2の調節に関与することが知られているmiRNAの結合部位
32~35の選択パネルとともに、内因性MECP2 3'UTRの断片からなる新規3'UTRも組み込んだ(
図13)。
【0178】
第2世代ベクターの治療効果を試験するために、4~5週齢のMecp2
-/yマウスに中程度の用量(1×10
12vg/マウス)を静脈内注射した。ビヒクル処置したマウスと比較して、ベクター処置では生存期間の有意な延長があった(生存期間中央値=それぞれ29.9週間と11.6週間;p<0.0001、Mantel-Cox、
図5b)。また、11週齢で体重に有意な改善があった(p<0.05、一元配置分散分析、Tukeyの事後一対比較検定、
図5c)。対照的に、RTT様の総重症度スコアには影響がなかった(
図5d)。したがって、第2世代のベクターは、全身送達後の第1世代のベクターを超える治療上の利点がなかった(
図5b~
図5d)。
【0179】
肝臓の安全性の観点から、このベクターを第1世代のベクターと直接比較するために、マウスに第1世代又は第2世代のベクターを1×10
12vg/マウスの用量で静脈内注射した。これらのマウスを30日後に屠殺し、外因性MeCP2発現(抗Mycタグ抗体を使用)及び肝病変の徴候について組織を分析した(
図6)。ベクター構築物間で形質導入効率に有意差はなかったが(
図6b)、第1世代ベクターで処置したマウスの外因性MeCP2(抗Myc)の細胞レベルは、第2世代ベクターで処置したマウスの細胞レベルよりも有意に高かった(
図6c;p<0.001、対応のないt検定)。形質導入細胞における細胞内MeCP2発現レベルの分布の分析により、MeCP2発現は第2世代のベクター(
図6d)を注射したマウスでより厳密に調節され、非常に高い発現レベルを示す細胞がより少なくなった。更に、以前に第1世代のベクターで観察された肝構造又は空胞の破壊はなかった(
図6e)。炎症病巣の密度は、第1世代のベクターを注射したマウスの肝臓試料では、第2世代のベクターを注射したものよりも大幅に高かった(
図6f)。
【0180】
第2世代のベクターの新生仔脳室注射は、RTT様の総重症度スコアを改善した
全身投与後の表現型への影響の欠如は、遺伝子回復後の表現型の重症度と改善の程度が脳内のMeCP2発現細胞の割合と相関することが確立されているため、観察された低脳形質導入効率と一致する
16。したがって、マウス新生仔における、広範な導入遺伝子発現を可能にすることが知られている
19送達経路である直接の脳室注射により、第2世代のベクターを試験することを決定した。1×10
11vg/マウスの用量で送達されるとき(
図7a)、ビヒクル処置したマウスと比較して、第2世代のベクターで処置されたMecp2
-/yマウスの生存に顕著な延長があった(生存期間中央値=それぞれ38.5及び12.4週間、p<0.0001、Mantel-Cox検定、
図7b)。体重に対するベクターの影響は無視できるほどであったが(
図7c)、重要な観察結果は、ビヒクルで処置したMecp2-nullマウス(
図7d)と比較して、RTT様の総重症度スコアの明らかな改善であった。外因性MeCP2(抗Mycタグ免疫標識により明らかにされた)は、全ての脳領域で検出可能であり、脳領域全体での形質導入効率は約10~40%の範囲であった(
図7e~
図7f)。分布分析により、皮質内の形質導入細胞のモーダル細胞MeCP2レベルは、内因性MeCP2の約2倍であり(内因性レベルに等しい外因性発現レベルと一致)、一部の細胞は高レベルの外因性MeCP2を発現していた(
図7g)。上述のΔNICタンパク質は、全長MeCP2タンパク質に匹敵する結果をもたらすことが示された(
図17)。
【0181】
議論
Mecp2の遅延した発現抑制解除後のマウスにおける広範囲のRTT様表現型の反転は、RTTの治療戦略としての遺伝子導入の強力な理論的根拠を提供する15、16。ヒトの臨床試験で最適な結果を確保するためには、翻訳の成功に対する様々な障壁が特定され、対処される必要がありそうである。本研究では、低い脳形質導入効率と更なる用量漸増による末梢での過剰発現毒性の出現によって引き起こされる狭い治療濃度域の観点からみた、MECP2を含む遺伝子治療ベクターの全身送達に関連する特定の課題を同定した。しかしながら、末梢での過剰発現は、カセットの設計を改良することで減らすことができる。新生仔マウスにおけるベクターの直接脳送達により、表現型の改善をもたらす治療的に適切なレベルの形質導入を達成できることを示す。また、最も一般的なRTTの原因となる変異を発現するマウスにおいて、ベクターが同様の有効性を示し、既存のMeCP2変異体の存在が翻訳の成功の障害になりそうにないことを示唆する。これらの結果は、タンパク質の変異体とWTの両方を発現するトランスジェニックマウスでの実験と一致している36。
【0182】
RTTのマウスモデルでMECP2を外因的に送達する最近の試みでは、広く様々なベクター用量を使用したが、カセット設計及びウイルス産生、投与プロトコール、表現型測定における更なる相違に基づいて比較することは困難であった19~21。本研究では、以前に公開されたカセット設計(MeP229コアプロモーター断片の制御下にあるヒトMECP2_e1)19を使用して、有効性と安全性の観点から用量の影響を直接調査した。注目すべき所見は、RTT様表現型重症度スコアへの影響の観点から試験した用量範囲全体での全体的な有効性の欠如であった。これは、そのような表現型が本質的に反転に耐性があるためではなく、この送達経路によってもたらされる脳内導入遺伝子発現の低レベルによって説明される可能性が最も高い15、16。表現型の重症度スコアとは対照的に、生存に関して明確な用量応答関係があり、中間用量は平均体重のわずかな増加と生存の有意な延長を引き起こした。生存と体重の影響が、重要な脳領域での十分な(低い場合)形質導入レベルによるものなのか、死亡に関連する末梢組織でのMeCP2の発現によるものなのかは明らかではない。最近の証拠は、末梢組織のMeCP2レベルが体重に微妙に影響する可能性があることを示唆しており23、評価項目の基準として体重の急激な減少を使用する義務があるため、これが間接的に生存率測定に影響を与える可能性がある。別の潜在的な説明は、免疫組織化学的検出の感度に基づいて、生存に関連する形質導入効率のレベルを過小評価していたことである。しかしながら、qPCRを使用したベクター生体内分布の検証は測定値と一致し、全身送達後の非常に控えめな形質導入を確認した。試験された最高用量のみが脳形質導入のかなりのレベル(>10~20%)をもたらし、残念なことに、これに関連する重度の肝臓病理学及び致死性は、この状況での脳特異的治療効果の可能性の評価を妨げた。肝細胞は通常、ニューロンと比較して比較的低いレベルのMeCP2を発現し23、GFP発現ベクターの同一用量は毒性がなかったため、用量依存的な肝病理は外因性MeCP2の過剰発現に起因する可能性が高い。
【0183】
毒性のMeCP2発現を低下させ、及び/又は肝臓向性を減少させる最初の試みには、発現カセット及びカプシドの修飾が含まれていた。しかしながら、推定の弱い合成プロモーターとポリアデニル化シグナルの使用は、肝臓毒性を回避するのに十分ではなかった。驚くべきことに、AAV9と比較して肝臓を脱標的化することを目的とするAAV9.47カプシドの使用は
27、28、AAV9で見られるものと同様の肝臓病理をもたらした。したがって、本発明者らは、形質導入された細胞の外因性MeCP2のレベルをよりよく調節する内因性調節エレメントの包含に基づく設計である第2世代のベクターに努力を集中した。これには、拡張された内因性プロモーターと内因性3'-UTR断片の組み込みが含まれる。よく保存されたヒトMECP2及びマウスMecp2プロモーター領域を分析する研究により、転写開始部位のすぐ上流の1kbウィンドウ内に多数の推定調節エレメントが存在することが示された
29~31。結果として、第2世代ベクターの拡張内因性プロモーター(426bp)は、RefSeq転写開始部位に対して-274~-335の位置に推定サイレンサーエレメントを含んでいた(
図13)。
【0184】
遠位のMECP2ポリアデニル化シグナルといくつかのクラスター化された推定調節エレメントを含む内因性3'-UTRも組み込まれた
37~39。更に、多くのバイオインフォマティクスツール
40~42を使用してMECP2の3'-UTRのmiRNA結合部位の分析を行い、脳でのMeCP2の調節に関与することが知られている3つの高度に保存されたmiRNA、miR-22
43、miR-19
44、及びmiR-132
34の結合部位を含むコンパクト配列を組み込んだ。まとめると、これらの修飾は、肝臓でのMeCP2発現を大幅に減少させ、その後、第1世代ベクターで遭遇した肝毒性が減少した。様々な修飾(拡張されたプロモーターと新規3′-UTR内のエレメント)の相対的な重要性は調査されていない。しかしながら、中程度の用量の全身注射後の両方のベクターの有効性には有意差はなかった。第2世代のベクターの重要な利点は、ある程度の治療的利益をもたらす用量(すなわち、1×10
12vg/マウス)で顕著な肝病理が欠如していることである。脳の形質導入効率が低いにもかかわらず、全身注射後の生存率の改善は、脳内の十分に多くの重要な細胞でのMeCP2レベルの回復、又は重要な末梢組織での回復による可能性がある。マウス新生仔への直接脳注射による脳内のより多くの細胞の標的化と、早期介入による潜在的により大きな影響により、10
12全身用量にほぼ等しい用量(1×10
11vg/マウス)で顕著な生存率の向上がもたらされた。この直接脳注射経路による送達は、体重の改善に関連していたが、重要なことには、RTT様表現型スコアの改善にも関連していた。改善は、遺伝的反転実験
16で報告されたほど顕著ではなく、これは、(1)遺伝的反転実験(90%まで)と比較した脳全体でのMeCP2再発現の相対的な非効率(10~40%)、及び(2)形質導入細胞の割合でMeCP2を過剰発現の起こり得る有害な相殺効果の複合効果による可能性が高い。MeCP2レベルの分析により、MECP2を過剰発現している細胞のかなりのプールが、MECP2を送達するベクターの複数のコピーで形質導入されたと考えられる。これはまた、軽度の後肢の握りしめ(clasping)の形でのベクター処置WTマウス(
図7d)のわずかに高い重症度スコアを説明する可能性がある。全体として、新生仔マウスでの直接脳送達を含む概念実証実験は、脳全体の形質導入効率が十分に高いレベルに達することができる場合、このベクター設計により行動の改善がもたらされることを示唆している。
【0185】
結論
本研究の結果は、MECP2の全身及び直接脳送達に関連する課題を強調している。この発見は、広範な脳発現を達成すると同時に、MeCP2レベルの適切な細胞型の制御を維持することが、トランスレーショナル療法の開発を成功させるための必須要件であることを示唆している。MeCP2の効果的かつ亜毒性レベルを生成できる発現カセットの開発は、細胞の過剰発現の問題を克服し、脳脊髄液区画を介した直接送達を可能にする。AAV9は、MECP2の全身送達後の脳形質導入に関しては、望ましい治療効果を達成するのに不十分であるように見えるが、より安全な第2世代カセットと脳透過性の向上したカプシド45を組み合わせることで、効果的なCNS遺伝子導入と安全な末梢MeCP2導入遺伝子発現レベルを効果的に組み合わせることができる。このような組み合わせにより、トランスレーショナルな有望性が強化される。
【0186】
材料及び方法
動物
全ての実験は、欧州共同体理事会指令(86/609/EEC)及び英国科学的処置法(1986年)に基づくプロジェクトライセンスの条件に従って実施された。もともとエイドリアンバード教授からの親切な贈り物として提供されたMecp2-null、Mecp2tml.1Bird、及びMecp2T158Mマウスは、C57BL/6バックグラウンドで維持された。動物は、通常のマウスの餌に自由に摂取できるようにして、12時間の明暗サイクルで維持された。かつて報告されたように、マウスの遺伝子型決定した9、15。
【0187】
ウイルスベクター調製
組換えAAVベクター粒子は、UNC遺伝子治療センターベクターコア施設で生成された。自己相補型AAV(scAAV)粒子(AAV9又はAAV9.47カプシドにパッケージ化されたAAV2 ITR隣接ゲノム)は、ヘルパープラスミド(pXX6-80、pGSK2/9)及び適切なITRに隣接する導入遺伝子構築物を含むプラスミドを含むポリエチレンイミン(Polysciences社、Warrington、PA)を使用してトランスフェクトされた懸濁HEK293細胞から生成された。全てのMeCP2発現構築物は、特に明記しない限り、C末端Mycエピトープタグを備えたヒトMECP2_e1コード領域を利用した。かつて報告されたようにウイルス産生を行い46、5%ソルビトールを補充した高塩濃度リン酸緩衝生理食塩水(PBS;350mmol/l総NaClを含む)の最終製剤でベクターを調製した。
【0188】
scAAVベクター注射及びマウス表現型決定。
凍結したscAAV9ウイルス粒子のアリコートを解凍し、5%ソルビトールを含むPBS/350mmol/lのNaClで100μlに希釈した。対照注射は、ベクターを欠く同一の希釈剤を使用して行われた(「ビヒクル対照」)。マウス新生仔への直接脳注射では、同腹子は出生時に性別を決められ、ウイルスの直接両側注射(部位あたり3μl)は、かつて報告されたように麻酔されていないP0-3オスの神経網に送達された19。注射された胎仔は、注射されていないメスの同腹子を含むホームケージに戻された。遺伝子型判定は3週間で実施され、その時点で表現型解析が開始された。幼若オスマウスへの注射では、4~5週齢で尾静脈から注射した。注射後、全てのマウスは毎週計量された。表現型分類は、遺伝子型と処置については盲検で、週2回行われた。マウスは、確立されたプロトコールを使用して総重症度スケールでスコア付けされた(運動性、歩行、呼吸、後肢の握りしめ、振戦、全身状態を含むRTT様の表現型についてマウスがスコア付けされた;15、16、19、21。生存率分析のために、自然死後又は体重減少がピーク体重の20%を超えた場合、マウスを打ち切った。
【0189】
免疫組織化学
マウスをペントバルビトン(50mg、腹腔内)で麻酔し、4%パラホルムアルデヒド(0.1mol/lのPBS)を経心臓的に灌流した。振動ミクロトーム(ライカVT1200;ライカ社、Milton Keynes、UK)を使用して、脳、脊髄、及び肝臓の80μm切片を取得した。切片を0.3mol/lのPBSで3回洗浄した後、抗原回収のために10mMクエン酸ナトリウム(pH6、85℃、30分)に移した。次いで、切片をブロッキング溶液(0.3%Triton X-100を含む0.3mol/lのPBS中の5%正常ヤギ血清)中で室温で1時間インキュベートした。次いで、試料を次の1次抗体とともに4℃のシェーカーで48時間インキュベートした:ウサギ抗Myc(Abcam社、ab9106);マウスモノクローナル抗MeCP2(Sigma社、WH0004204M1)、ニワトリ抗GFP(Abcam社 ab13970)。その後、一次抗体を洗い流し(3×0.3mol/lのPBST)、二次抗体を4°Cで一晩切片に適用した:Alexa fluor 488ヤギ抗マウス/ウサギ(Invitrogen社、Carlsbad、CA;1/500)、Alexa fluor 546ヤギ抗マウス/ウサギ(Invitrogen社;1/500)、Alexa fluor 649、ヤギ抗マウス(Jackson immunoresearch社、112-495-003JIR)。最後に、切片を4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)核染色(Sigma社、Poole、UK;1/1,000)と室温で30分間インキュベートした後、Vectashield(Vector labs社、Peterborough、UK)でマウントした。
【0190】
ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色
肝臓試料を0.1mol/lのPBSでリンスした後、昇順のエタノールで脱水し、自動組織処理装置を使用して酢酸アミルで清浄化した。標本をパラプラストに包埋し、切片(厚さ10μm)をAPES(アミノプロピルトリエトキシシラン)コーティングスライド上に収集し、37℃のオーブンで一晩乾燥させた。次いで、切片をHisto-clear(Agar Scientific社、UK)の2回の交換で15分間脱パラフィンし、降順のアルコール(100%、90%、及び70%)で再水和した。切片をマイヤーのヘマトキシリンで8分間染色し、水道水で洗い流した。スライドをスコットの溶液に1分間入れることで核を青く染色し、水道水で洗い流した。次いで、切片を1%エオシンで2分間染色し、水で洗浄した。最後に、DPXでマウントする前に、昇順のアルコールと組織浄化ので切片を脱水した。画像は、光学顕微鏡(Zeiss社、ドイツ)に取り付けられたAxioCam MRc(Zeiss社、ドイツ)を使用してキャプチャした。
【0191】
画像解析
Zeiss LSM710又はZeiss Axiovert LSM510レーザー共焦点顕微鏡(Zeiss社、Cambridge、UK)を使用してキャプチャされた画像スタックで、核内の発現パターン、形質導入効率、及び外因性に由来するMeCP2レベルの定量化の分析を実行した。Zシリーズは、40倍対物レンズを使用して、目的の切片を通して1μm間隔で撮影した。形質導入効率を推定するために、画像は上述のようにキャプチャされ、Myc免疫陽性核のDAPI染色核に対する比率は、海馬の切片(CA1領域)、一次運動皮質5層、視床、視床下部、脳幹、及び線条の切片からのランダム視野(n=12画像/領域、3匹のマウスの各々から4つの画像)について計算された。WTマウスの核あたりの外因性に由来するMeCP2のレベルを定量化するために、上述のように共焦点スタック(厚さ20μm)を取得し、ImageJソフトウェア(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を使用して形質導入(Myc+ve)及び非形質導入(Myc-ve)細胞内の平均MeCP2チャネル蛍光強度を決定した。DAPIチャネルの蛍光を使用して、核境界を画定した。
【0192】
統計学的分析
必要に応じて、一元配置分散分析、スチューデントのt検定、及びMantel-Cox検定(生存曲線)を使用して、GraphPad PRISMで処置群間の差異の検定を実行した。統計的有意性を定義するために、p<0.05を使用した。複数群の比較では、Tukeyの事後分析を使用して、群間のペアワイズ検定の多重検定補正が適用された。
【0193】
本発明を上述の例示的な実施形態に関連して説明したが、本開示が与えられたとき、多くの同等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。したがって、記載される本発明の例示的な実施形態は、例示的であり、限定的ではないとみなされる。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する様々な変更を行うことができる。本明細書に引用されている全ての文書は、参照により明示的に組み込まれる。
【0194】
特許出願及び付与された特許を含む本出願における全ての参考文献の教示は、参照により本明細書に完全に組み込まれている。本出願が優先権を主張する任意の特許出願は、刊行物及び参考文献について本明細書に記載される方法でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0195】
誤解を避けるために、全ての例において、本明細書の「含むこと(comprising)」、「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」という用語は、発明者らによって、それぞれ「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」、及び「からなる(consists of)」という用語と任意に置き換えられることを意図している。全ての数値の「約(about)」(又は「約(around)」)という用語は、5%の変動を許容し、すなわち、約1.25%の値は1.19%~1.31%を意味する。
【0196】
本明細書に記載される特定の実施形態は、本発明の限定としてではなく、例示として示されることが理解されるであろう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態で使用することができる。当業者は、日常的な研究にすぎないものを用いて、本明細書において記載される具体的な手順の多くの均等物を認識するか、又はそれを確かめることができるであろう。そのような均等物は、本発明の範囲内にあるとみなされ、特許請求の範囲に含まれる。本明細書中で言及されている全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の技術水準を示している。全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が、参照により本明細書に組み入れられるように具体的かつ個別に示されているかのように、それと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0197】
特許請求の範囲及び/又は本明細書において用語「含む」と合わせて使用される場合の「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語の使用は、「1つ」を意味する場合もあるが、それはまた「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つを超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、本開示が選択肢のみ、及び「及び/又は」を指す定義を裏付けるとしても、選択肢のみを指すと明示的に示されない限り、又は選択肢が互いに排他的である場合を除いて、「及び/又は」を意味するのに使用される。この出願全体を通して、「約」という用語は、値が測定、すなわち値を決定するために採用されている方法の誤差の固有の変動、又は対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0198】
本明細書及び特許請求の範囲の請求項において使用されるとき、用語「含むこと(comprising)」(並びに、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等の含むことの任意の形態)、「有すること(having)」(並びに、「有する(have)」及び「有する(has)」等の有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(並びに、「含む(includes)」及び「含む(include)」等の含むことの任意の形態)又は「含むこと(containing)」(並びに、「含む(contains)」及び「含む(contain)」等の含むことの任意の形態)は、両立的又はオープンエンドであり、追加の、言及されていない要素又は方法の工程を排除しない。
【0199】
本明細書において使用されるとき、用語「又はそれらの組み合わせ」は、用語に先行して列挙された項目の全ての順列及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの少なくとも1つを含むことを意図しており、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABをも含む。この例を続けると、BB、AAA、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等の1つ又は複数の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者であれば、文脈から他が明らかでない限り、典型的には、任意の組み合わせにおける項目又は用語の数に制限はないことを理解するであろう。
【0200】
本明細書に開示され請求される全ての組成物及び/又は方法は、本開示に照らして過度の実験をすることなく作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される、組成物及び/又は方法、並びに方法の工程又は工程の順序に変更を加えてもよいことが当業者には明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の置換及び改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲及び概念内にあるとみなされる。
【0201】
【配列表】