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特許7504979体積流量計および体積流量を決定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】体積流量計および体積流量を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/38 20060101AFI20240617BHJP
   G01F 1/34 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01F1/38
G01F1/34 C
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022500965
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2020068982
(87)【国際公開番号】W WO2021004997
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】LU101299
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】516296566
【氏名又は名称】ルクセンブルク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・(エルアイエスティ)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ポレゼル
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ジェラール
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-128522(JP,U)
【文献】特開2003-195948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ入口と、前記流れ入口の下流のホイールと、好ましくは前記流れ入口の下流でかつ前記ホイールの上流の狭窄部と、を有する体積流量計を通って流れる圧縮性流体流れの体積流量を決定するための方法であって、前記圧縮性流体は、前記流れ入口を通って流れて前記ホイールを作動させ、前記方法が、
前記ホイールの回転速度を測定するステップと、
測定された前記回転速度に基づいて前記ホイールを横切る永久圧力損失を決定するステップと、
前記流れ入口における前記圧縮性流体流れの流体圧力を測定するステップと、
決定された前記永久圧力損失および測定された前記流体圧力に基づいて、前記体積流量計内の前記圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するステップと、
前記流れ入口における前記圧縮性流体流れの流体温度を測定するステップと、
決定された前記永久圧力損失、測定された前記流体圧力、前記圧縮性流体流れの領域、および測定された前記流体温度に基づいて、前記圧縮性流体流れの前記体積流量を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
バッテリおよび/またはスーパーキャパシタによって前記体積流量計に給電するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タービンによって前記圧縮性流体流れから採取されるエネルギーによって前記体積流量計に給電するステップを含み、前記タービンは前記ホイールおよび発電機を含み、前記ホイールは前記発電機に動作可能に接続されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タービンによって採取されたエネルギーによって前記バッテリおよび/または前記スーパーキャパシタを充電するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ホイールの測定された前記回転速度、測定された前記流体圧力、および測定された前記流体温度のうちの少なくとも1つを送信するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ホイールの測定された前記回転速度、決定された前記体積流量、測定された前記流体圧力、前記圧縮性流体流れの領域、測定された前記流体温度、および前記体積流量計を通る累積の体積のうちの少なくとも1つ、ならびにそれらの時系列を送信するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記時系列は、時間的に均等なまたは不均等な間隔とされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記体積流量計の状態を送信するステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
たとえばGNSS受信機によって提供される、地理位置および/または時間データを送信するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記送信は、任意のワイヤレスデータ送信プロトコル、たとえば、ブルートゥース(登録商標)プロトコル、好ましくはブルートゥース(登録商標)低エネルギープロトコル、ジグビープロトコル、Z波プロトコル、またはWi-Fi(登録商標)プロトコルに従って達成される、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
圧縮性流体流れの体積流量を決定するための体積流量計であって、
前記圧縮性流体流れのための流れ入口であって、前記圧縮性流体流れの流体圧力および流体温度をそれぞれ測定するための圧力センサおよび温度センサを含む、流れ入口と、
好ましくは前記流れ入口の下流でかつホイールの上流に配置された狭窄部を介して、前記流れ入口と流体連通しているホイールであって、前記圧縮性流体流れによって作動されるように構成された、ホイールと、
前記ホイールの回転速度を測定するための回転速度センサと、
コントローラであって、
前記回転速度センサによって測定された前記回転速度に基づいて前記ホイールを横切る永久圧力損失を決定すること、
決定された前記永久圧力損失および前記圧力センサによって測定された前記流体圧力に基づいて、前記体積流量計内の前記圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定すること、および
決定された前記永久圧力損失、前記圧力センサによって測定された前記流体圧力、前記圧縮性流体流れの決定された領域、および前記温度センサによって測定された前記流体温度に基づいて、前記圧縮性流体流れの前記体積流量を決定すること、
を行うように構成された、コントローラと、を含む、体積流量計。
【請求項12】
前記ホイールをバイパスするためのホイールバイパス機構を含み、前記ホイールバイパス機構は、好ましくは、前記バイパスを選択的に開閉するための弁を含む、請求項11に記載の体積流量計。
【請求項13】
前記体積流量計に給電するためのタービンを含み、前記タービンは、前記ホイールと発電機とを含み、前記ホイールは、前記発電機に動作可能に接続されるように構成される、請求項11または12に記載の体積流量計。
【請求項14】
前記体積流量計に給電するように構成されたバッテリおよび/またはスーパーキャパシタを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の体積流量計。
【請求項15】
電力管理システムを含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の体積流量計。
【請求項16】
たとえば、ブルートゥース(登録商標)、好ましくはブルートゥース(登録商標)低エネルギー、ジグビー、Z波、またはWi-Fi(登録商標)通信システムなどの無線通信システムを含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の体積流量計。
【請求項17】
地理位置および/または時間を提供するためのGNSS受信機を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の体積流量計。
【請求項18】
前記回転速度センサは、位相同期ループ(PLL)制御システムおよび/または前記ホイールの前記回転速度を決定するためのデジタルカウンタを有する比較器のうちの少なくとも1つを含む、請求項11から17のいずれか一項に記載の体積流量計。
【請求項19】
前記狭窄部はノズルである、請求項11から18のいずれか一項に記載の体積流量計。
【請求項20】
体積流量計を制御するためのデータ処理デバイスであって、
前記体積流量計の流れ入口における圧縮性流体流れの流体圧力および流体温度の信号、ならびに前記体積流量計のホイールの回転速度信号を受信するための1つ以上の信号入力端子と、
コントローラであって、
前記回転速度信号に基づいて前記ホイールを横切る永久圧力損失を決定すること、
決定された前記永久圧力損失および前記流体圧力信号に基づいて、前記体積流量計内の前記圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定すること、および
決定された前記永久圧力損失、前記流体圧力信号、前記圧縮性流体流れの決定された領域、および前記流体温度信号に基づいて、前記圧縮性流体流れの体積流量を決定すること、
を行うように構成された、コントローラと、を含む、データ処理デバイス。
【請求項21】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は、請求項11から19のいずれか一項に記載の体積流量計のためのコントローラに、
測定された回転速度に基づいてホイールを横切る永久圧力損失を決定するステップと、
決定された前記永久圧力損失および流れ入口において測定された流体圧力に基づいて、前記体積流量計内の圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するステップと、
決定された前記永久圧力損失、測定された前記流体圧力、前記圧縮性流体流れの領域、および測定された流体温度に基づいて、前記圧縮性流体流れの体積流量を決定するステップと、を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、(電源内蔵)体積流量計と、体積流量を決定するための方法と、に関する。本発明のさらなる態様は、体積流量計を制御するためのデータ処理デバイスと、体積流量を決定するためのコンピュータプログラムとに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「差圧流量計」のレビューが、非特許文献1によって提供される。より最近では、インテリジェント流量測定技法が、 非特許文献2によって提案された。インテリジェント流量測定技法は、液体、パイプおよび/またはオリフィスが交換/変更されるたびに流量計を再較正することの回避を可能にする。パイプの中の流体の流量は、とりわけ、パイプの中に配置されたオリフィスの上流と下流(特に縮流部における下流)の領域の間の流体の圧力差から計算される。
【0003】
タービンを有する流量計は、非圧縮性流体流れの文脈において知られている。たとえば、デジタル式でバッテリ不要のスマート水流量計が、 非特許文献3において提案された。温度および圧力は、水(または他の非圧縮性流体)に対する体積流量測定値にあまり影響を及ぼさないことに留意されたい。それゆえ、電力を流量計に供給するためのコイルを付加的に有するウォルトマン流量計設計が、非圧縮性流体の流量を測定するために好適である。特に、異方性磁気抵抗(AMR: anisotropic-magnet-resistance)センサと結合したマイクロコントローラユニットが、磁気回転子の永久磁石の回転速度を検出するために使用され得る。磁気ロータを回転させることで、固定子のコイルの内部に起電力が誘導され、それにより、流量計の種々の電子構成要素に分配され得る大量の電力が生成される。この機構および測定手順は、膨張の影響を受ける流体、たとえば圧縮性流体の体積流量の測定に対して適合しない。
【0004】
特許文献1は、携帯型ガス供給システムを開示する。酸素などの呼吸ガスのパルス投与(pulsed dose)が、呼吸困難の患者に供給される。システムは、膨張ガスから抽出されたエネルギーから電気を生成するための手段を備える。システムの投与量計測手段と一体化され得る空気モータは、膨張ガスによって駆動され、発電機を駆動して、少なくともシステムを動作させるために必要な電力を生成し、それにより、1回の充電当たりのサービス時間の増加、システム重量の減少、または両方が可能になる。
【0005】
特許文献2は、自己電気エネルギー、実時間ワイヤレスデータ送信能力、および遠隔流量制御能力を提供する自己発電スマート流量需給計器に関する。また、流量需給実時間流量使用監視および制御、自己エラー診断、および自己漏れ監視のための方法およびシステムも開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,370,112号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/298635号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Th. R. Sifferman、L. J. Kemp、G. V. Chilingarian、「Chapter 2 Flow Rate Measurements」、Developments in Petroleum Science 19B、13~59ページ、(1989年)
【文献】Santhosh K. V.、B. K. Roy、「An Intelligent Flow Measurement Technique Using Orifice」、IJAPM 2、165ページ、(2021年)
【文献】W. S. Hao、R. Garcia、「Development of a Digital and Battery-Free Smart Flowmeter」、Energies 7、3695ページ、(2014年)
【文献】D. W. Green、「Perry's Chemical Engineers' Handbook」、(McGraw-Hill,、2008年)、第10章、「Transport and Storage of Fluids」
【文献】A. Napolitanoら、「A wide range (up to 1010 P) rotating cylinder viscometer」、J. Res. Nat. Bur. Stand. -A. Phys. and Chem. 69A(5)、449ページ、(1965年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、流れ入口と、流れ入口の下流のホイールと、好ましくは流れ入口の下流でかつホイールの上流の狭窄部と、を有する体積流量計を通して流れる圧縮性流体の体積流量を決定するための方法に関し、圧縮性流体は、流れ入口を通って流れてホイールを作動させる。方法は、
○ ホイールの回転速度を測定するステップと、
○ 測定された回転速度に基づいてホイールを横切る永久圧力損失を決定するステップと、
○ 流れ入口における圧縮性流体流れの流体圧力を測定するステップと、
○ 決定された永久圧力損失および測定された流れ入口における流体圧力に基づいて、体積流量計(狭窄部の下流)内の圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するステップと、
○ 流れ入口における圧縮性流体流れの流体温度を測定するステップと、
○ 決定された永久圧力損失、測定された流体圧力、圧縮性流体流れの領域、および測定された流体温度に基づいて圧縮性流体流れの体積流量を決定するステップと、を含む。
【0009】
体積流量は、単位時間当たりに所与の面を通過する流体の体積として定義される。体積流量は、通常、記号「Q」で示される。体積流量は、SI単位において立法メートル毎秒(m/s)で表現される。用途に応じて、リットル毎秒(L/s)、リットル毎分(L/min)、またはリットル毎時(L/h)などの他の誘導単位が、適宜、使用され得る。
【0010】
流体流れは、一般に、非圧縮性流体流れと圧縮性流体流れとの2つの部類に分けられる。非圧縮性流体流れの場合、流体の密度は、流れに沿って一定のままである。加えて、流れに沿って密度の変動が無視できるとき、流れは、非圧縮性として正確に近似され得る。言い換えれば、非圧縮性流体流れの場合、流体の密度は、流速を有して移動する流体の塊(parcel)の中で一定のままである(または無視できるほどにしか変動しない)。対照的に、圧縮性流体流れの場合、流体の密度は、流速を有して移動する流体の塊の中で変動する。非圧縮性流体流れは、必ずしも流体自体が非圧縮性であることを意味するとは限らないことに留意することが重要である。
【0011】
本明細書で使用する「ホイール」は、流体流れの運動エネルギーを(機械的)回転エネルギーに変換するように構成され、随意に、回転エネルギーを電気エネルギーに変換し得る回転機械デバイスである。ホイールは、パドルホイール、バケットホイール、らせん、または任意の他のタイプのホイールであり得る。
【0012】
本明細書で使用する「狭窄部」は、流れ入口およびホイールが位置する領域のそれぞれの断面より小さい断面を有する領域である。狭窄部は、たとえば、ノズル、オリフィスおよび/または流れを案内するチューブから突出する区画であり得る。
【0013】
本明細書で使用する「永久圧力損失」は、体積流量計によって生じる圧力差または圧力低下である。永久圧力損失は、上流の流体圧力と下流の流体圧力との間の差であり、両流体圧力は、体積流量計から遠く離れて、たとえば、体積流量計が配置される流れパイプの直径の少なくとも4倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも8倍に相当する距離において測定または決定される。
【0014】
回転速度、流体圧力および流体温度は、任意の物理単位において表現および解釈され得ることに留意されたい。たとえば、流体圧力は、たとえば、コントローラ内のさらなるデータ処理に対して、ボルトの単位で使用され得る。
【0015】
亜音速領域は、局所流体流速が流体内の局所音速より低い流れ領域に相当し、超音速領域は高い流れ領域に相当する。一般に、流体動力学では、マッハ数(MまたはMa)は、流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するために使用され得る。マッハ数は、局所音速に対する局所流体流速の比を表す無次元量、M=u/cであり、ここでuは局所流体流速であり、cは流体内の音速である。
【0016】
本発明の第1の態様は、従来技術において提案される解決策と比較するとき、測定、特に流体圧力測定を非常に簡略化することが諒解されよう。実際に、本発明の第1の態様によって提案される解決策は、(たとえば、非特許文献2におけるように)縮流部における流体圧力を測定する必要性を軽減する。縮流部における流体圧力測定は、実際に、非常に難易度が高い場合がある。オリフィスのすぐ近くに圧力センサ(圧力ゲージ)を配置することは、実際に、非常に困難である。圧力センサの正確な位置決めは、正確で安定した測定を達成するために不可欠である。同じく、縮流部の位置は、オリフィスとパイプとの直径の比によって変動し、したがって、オリフィスプレートが変更される場合にエラーを生じやすい。
【0017】
本発明の第1の態様は、同じく、圧縮性流体流れに対する体積流量の改善された決定も可能にする。実際、圧縮性流体流れに対して、流量計が配置されるパイプの形状が、たとえば、亜音速域から超音速域に、またはその反対に、流れの領域の遷移を生じる場合があり、それは、体積流量の定量に大きく影響することが知られている。
【0018】
加えて、本発明の第1の態様は、方法が亜音速流れおよび超音速流れの場合の体積流量の決定を包含するという意味で、より多用途である。
【0019】
一実施形態によれば、方法は、バッテリおよび/またはスーパーキャパシタによって体積流量計に給電するステップを含む。
【0020】
好ましくは、方法は、発電機およびホイールを含むタービンによって圧縮性流体流れから採取されるエネルギーによって体積流量計に給電するステップを含み、ホイールは、発電機に動作可能に接続されている。その結果、体積流量計の動作は、外部エネルギー源とは無関係に行われ得るか、または少なくとも、体積流量計を動作させるために必要な外部エネルギーが低減される。とりわけ、体積流量計の動作コストが、それによって低減される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、方法は、タービンによって採取されたエネルギーを用いてバッテリおよび/またはスーパーキャパシタを充電するステップを含む。バッテリおよび/またはスーパーキャパシタは、流体流れから採取されたエネルギーが体積流量計を動作させるために必要なエネルギーより大きい場合、起こり得る(一時的な)採取されたエネルギーの余剰を貯蔵するためのバッファとして働く。
【0022】
方法は、測定されたホイールの回転速度、流れ入口において測定された流体圧力、および測定された流体温度のうちの少なくとも1つを送信するステップを含み得る。測定されたホイールの回転速度、測定された流体圧力、および測定された流体温度を送信するステップが、測定された回転速度、流れの領域、および体積流量に基づいてホイールを横切る永久圧力損失を遠隔で決定し、それにより体積流量計のエネルギー消費を低減することを可能にし得ることが諒解されよう。
【0023】
方法は、測定されたホイールの回転速度、決定された体積流量、測定された圧力、圧縮性流体流れの領域、測定された流体温度、および体積流量計を通る累積の体積のうちの少なくとも1つ、ならびにそれらの時系列を送信するステップも含み得る。時系列の遠隔分析は、たとえば、流体の体積における(累積した)消費を計算するため、入口圧力振動もしくは入口圧力の突然の一時的変動を検出し、それにより、起こり得る流体の漏れ、流体の汚染を検出し、および/または流体タンク内に残っている流体の量をモニタし、それにより、流体タンク交換が必要なときを予測するために実行され得る。
【0024】
本明細書で使用する「時系列」は、時間順に索引付けられる(または列挙される)データ点の系列である。
【0025】
時系列は、時間的に均等なまたは不均等な間隔とされ得る。
【0026】
他の実施形態では、分析は、ローカルに、すなわち、体積流量計自体によって実行され得る。
【0027】
方法は、体積流量計の状態を送信するステップも含み得る。たとえば、動作ステータス(たとえば、「オン」または「オフ」)、サービスステータス(たとえば、「サービスが必要である」)、サービス情報(流量計の損耗に関する情報など)。方法は、たとえば、(ほぼ)即座のアクションが必要な事象(たとえば、疑わしい漏れ)に対して警報メッセージを送信するステップも含み得る。
【0028】
方法は、たとえばGNSS受信機によって提供される、地理位置および/または時間データを送信するステップも含み得る。それゆえ、体積流量計は、容易に位置を特定され得る。加えて、GNSSによって提供される時間データの場合、グローバルに同期された時間軸が、本発明の第1の態様による複数の体積流量計に対して、たとえば事象および時系列に対して定義され得る。
【0029】
送信は、有線送信であっても無線送信であってもよい。
【0030】
送信は、ユニキャスト送信、マルチキャスト送信、ジオキャスト送信、エニーキャスト送信、またはブロードキャスト送信であり得る。
【0031】
送信は、任意のワイヤレスデータ送信プロトコル、たとえば、ブルートゥース(登録商標)プロトコル、ジグビープロトコル、Z波プロトコル、またはWi-Fi(登録商標)プロトコルに従って達成される。
【0032】
送信は、好ましくは、ブルートゥース(登録商標)低エネルギープロトコルに従って達成される。
【0033】
送信に必要な電力は、好ましくは、タービンによって提供される。
【0034】
本発明の第2の態様は、
○ 圧縮性流体流れのための流れ入口であって、圧縮性流体流れの流体圧力および流体温度をそれぞれ測定するための圧力センサおよび温度センサを含む、流れ入口と、
○ 好ましくは流れ入口の下流でかつホイールの上流に配置された狭窄部を介して、流れ入口と流体連通しているホイールであって、圧縮性流体流れによって作動されるように構成された、ホイールと、
○ ホイールの回転速度を測定するための回転速度センサと、
○ コントローラであって、
・ 回転速度センサによって測定された回転速度に基づいてホイールを横切る永久圧力損失を決定すること、
・ 決定された永久圧力損失および圧力センサによって測定された流体圧力に基づいて、体積流量計内の圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定すること、および
・ 決定された永久圧力損失、圧力センサによって測定された流体圧力、圧縮性流体流れの決定された領域、および温度センサによって測定された流体温度に基づいて圧縮性流体流れの体積流量を決定すること、を行うように構成された、コントローラと、を含む、圧縮性流体流れの体積流量を決定するための体積流量計に関する。
【0035】
体積流量計は、ホイールをバイパスするためのホイールバイパス機構を含み、ホイールバイパス機構は、好ましくは、バイパスを選択的に開閉するための弁を含む。代替的に、流量計は、弁のバイパスの上に配置され得る。弁は、たとえば、流量計が正常動作しない場合、ユーザによる手動で、または自動で作動され得る。
【0036】
一実施形態によれば、ホイールは、同じく、発電機を含むタービンの一部である。タービンは、流量計に給電するために圧縮性流体流れから採取されたエネルギーからエネルギーを採取する。言い換えれば、体積流量計は、流量計に給電するためのタービンを含み、タービンは、ホイールと発電機とを含み、ホイールは、発電機に動作可能に接続されるように構成される。
【0037】
一実施形態によれば、体積流量計は、体積流量計に給電するように構成されたバッテリおよび/またはスーパーキャパシタを含む。
【0038】
好ましくは、体積流量計は、体積流量計の電気構成要素を制御するための電力管理システムを含む。より詳細には、電力管理システムは、タービンによって生成された電力と、動作するために体積流量計によって必要とされる電力と、を制御するように構成され得る。電力管理システムは、流量計の総電力消費が、タービンによって生成される電力より大きいかまたは小さいかを決定し得る。第1の場合、電力管理システムは、体積流量計の最適動作のために、バッテリ(および/またはスーパーキャパシタ)内に貯蔵される電力によって、生成される電力を補完し得る。第2の場合、電力管理システムは、後で使用するために、生成される電力をバッファバッテリ(および/またはスーパーキャパシタ)に向け直し得る。代替または追加として、電力管理システムは、たとえば、前記構成要素の電力消費、および/または構成要素の相対的重要性を反映するランキングに基づいて体積流量計の構成要素を選択的に電源オンまたは電源オフしてもよい(電力管理システムは、たとえば、生成されるおよび/または貯蔵される電力が低い場合、温度センサの代わりにディスプレイまたは無線通信システムを電源オフしてもよい)。
【0039】
体積流量計は、たとえば、ブルートゥース、好ましくはブルートゥース(登録商標)低エネルギー、ジグビー、Z波、またはWi-Fi(登録商標)通信システムなどのワイヤレス通信システムを含み得る。
【0040】
体積流量計は、地理位置ならびに時間データ、すなわち、いわゆるP(位置)およびT(時間)状態を提供するためのGNSS受信機を含み得る。
【0041】
回転速度センサは、好ましくは、位相同期ループ(PLL)制御システムとホイールの回転速度を決定するためのデジタルカウンタを有する比較器とのうちのの少なくとも1つを含む。たとえば、PLL制御システム(または比較器)は、タービンによって現在生成されている位相および周波数をモニタするために、タービンの発電機に接続され得る。
【0042】
狭窄部は、たとえば、ノズルであり得る。
【0043】
本発明の第3の態様は、体積流量計の流れ入口における圧縮性流体流れの流体圧力および流体温度の信号、ならびに体積流量計のホイールの回転速度信号を受信するための1つ以上の信号入力端子と、コントローラであって、
○ 回転速度信号に基づいてホイールを横切る永久圧力損失を決定すること、
○ 決定された永久圧力損失および流体圧力信号に基づいて、体積流量計内の圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定すること、および
○ 決定された永久圧力損失、流体圧力信号、圧縮性流体流れの決定された領域、および流体温度信号に基づいて圧縮性流体流れの体積流量を決定すること、を行うように構成された、コントローラと、を含む、体積流量計を制御するための(たとえば、体積流量計からのデータを管理および/または処理するための)データ処理デバイスに関する。
随意に、コントローラは、時間に対する体積流量変化に基づいて、流体の体積における漸増する消費を決定するようにさらに構成され得る。
【0044】
本発明の第4の態様は、命令を含むコンピュータプログラムに関し、命令は、本発明の第2の態様による体積流量計のためのコントローラに、
○ 測定された回転速度に基づいてホイールを横切る永久圧力損失を決定するステップと、
○ 決定された永久圧力損失および測定された流体圧力に基づいて、体積流量計内の圧縮性流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するステップと、
○ 決定された永久圧力損失、測定された流体圧力、圧縮性流体流れの領域、および測定された流体温度に基づいて圧縮性流体流れの体積流量を決定するステップと、を実行させる。
【0045】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様によるコンピュータプログラムをその上に記憶した(非一時的)コンピュータ可読媒体(たとえば、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブなど)に関する。
【0046】
例として、本発明の好ましい非限定的な実施形態が、次に、添付の図面に関して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の好ましい一実施形態による電源内蔵流量計の概略図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態によるタービンの概略的断面斜視図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態による、図2のタービンの詳細の概略的断面斜視図である。
図4】本発明の好ましい一実施形態による、図2のタービンの詳細の概略的断面斜視図である。
図5】タービンを試験するための試験台の概略図である。
図6】流量が5L/minに維持された状態で、試験台によって測定された流量と、以下で説明する亜音速または超音速のモデルによって予測された流量との間の比較を示す図である。
図7】流量が7L/minに維持された状態で、試験台によって測定された流量と、以下で説明する亜音速または超音速のモデルによって予測された流量との間の比較を示す図である。
図8】回転子の回転速度が100Hzに維持された状態で、試験台によって測定された流量と、以下で説明する亜音速または超音速のモデルによって予測された流量との間の比較を示す図である。
図9】回転子の回転速度が700Hzに維持された状態で、試験台によって測定された流量と、以下で説明する亜音速または超音速のモデルによって予測された流量との間の比較を示す図である。
図10】永久圧力損失の関数として回転子の測定された回転速度と予測された回転速度との間の関係を示す図である。
図11】回転子の回転速度の関数としてタービンによって生み出されたRMS電力を示す図である。
図12】デジタルカウンタを有する比較器の例示的な実装形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図面は縮尺通りではないことに留意されたい。さらに、簡明にするために、高さ、長さおよび/または幅の間の比は正確には表されていない。
【0049】
図1は、本発明の好ましい一実施形態による電源内蔵流量計2の概略的表現である。流量計2は、流体流れを収容するパイプに接続されるように構成された流れ入口6と流れ出口8とを有するタービン4を含む。流体流れは、流量計2がパイプに接続されるとき、流れ入口6から流れ出口8までタービン4を通って流れる。タービン4は、流体流れから運動エネルギーを採取し、それを流量計2に給電する電気エネルギーに変換する。それゆえ、タービン4は、発電機として働く。流れ入口6は、流体流れの流体圧力および流体温度をそれぞれ測定するために、圧力センサ10(たとえば、低消費圧力ゲージ、たとえば、Servoflo社のTE ConnectivityからのMS5541C)および温度センサ12(たとえば、温度センサは、温度測定能力を提供する低消費圧力ゲージ、たとえばMS5541C内に埋め込まれ得るか、または温度センサは、個別の低消費温度センサ、たとえばNXPからのPCT2202であり得る)を含む。タービン4は、流量計2に給電するためにAC電流を提供する第1および第2の電気端子13、14を含む。
【0050】
流量計2は、タービン4の端子13、14が接続される電力管理システム16(PMS)をさらに含む。PMS16は、タービン4の発電機の端子13、14と流量計2の電子構成要素との間の電力伝達のための最適なインピーダンスマッチングの維持を担当する。PMS16は、同じく、電気エネルギーを貯蔵するためにバッテリ18に接続される。別の実施形態では、バッテリは、スーパーキャパシタによって置換または補完され得る。PMS16は、流量計2の電気システムの制御を担当する。PMS16は、流量計2の総電力消費が、タービン4によって生成される電力より大きいかまたは小さいかを決定する。第1の場合、電力管理システムは、流量計2の最適動作のために、バッテリ18内に貯蔵される電力によって、生成される電力を補完する。第2の場合、PMS16は、後で使用するために、生成される電力をバッテリ18に向け直す。PMS16は、同じく、前記構成要素の電力消費に基づいて、流量計2の(重要でない)構成要素を選択的に電源オンまたはオフするように、またはそれらのデューティサイクルを低減/増加させるように構成される(電力管理システムは、たとえば、生成および/または貯蔵される電力が低い場合、流量計2のディスプレイまたは無線通信ユニットを電源オフしてもよい)。PMS16は、圧力センサ10および温度センサ12など、流量計2の構成要素に(最終的に選択的に)給電するための電力線20を提供する。
【0051】
流量計2は、同じく、高入力インピーダンス周波数分析器22(たとえば、低消費PLLチップ、たとえばテキサスインスツルメンツからのLMC568)を含む。周波数分析器22は、AC電流の周波数を決定するために、タービン4の出力端子13、14に接続される。代替または追加として、信号を前処理するためのデジタルカウンタを有する比較器が、端子13または端子14のいずれかによって提供され得る。デジタルカウンタを有するそのような比較器の実装形態の一例が、図12において提供され、比較器は、電力線20によって給電される。比較器は、その出力端子において、デジタル方形信号を与えられる。
【0052】
流量計2は、特定用途向け集積回路(ASIC)として、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)として、および/またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として実装され得るマイクロコントローラ24(μC)をさらに含む。
【0053】
マイクロコントローラ24は、圧力センサ10、温度センサ12、および周波数分析器22に接続される。圧力センサ10、温度センサ12、および周波数分析器22は、それぞれ、圧力信号、温度信号、および周波数信号を、たとえば、その入力端子のうちの1つ以上を通してマイクロコントローラ24に与える。マイクロコントローラ24は、周波数信号に基づいて流量計2を横切る永久圧力損失を決定するように構成される。マイクロコントローラ24は、決定された永久圧力損失および圧力信号に基づいて、流量計2内の流体流れが亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するようにさらに構成される。加えて、マイクロコントローラ24は、決定された永久圧力損失、圧力信号、流体流れの領域、および温度信号に基づいて、流体流れの体積流量を決定するように構成される。
【0054】
その結果、流体流れから採取された電力は、流量計2を動作させるための電力を提供することを可能にするばかりでなく、タービン4のAC電流の周波数を測定することも可能にする。これは、流量計2を横切る永久圧力損失を決定することも可能にする(以下を参照)。
【0055】
マイクロコントローラ24に接続されたデータロガー26は、同じく、圧力信号、温度信号、永久圧力損失、流れの領域、体積流量、および/または流体の体積における漸増する消費の時系列を記録するために提供される。
【0056】
さらに、マイクロコントローラ24に接続されたディスプレイ28(たとえば、低消費ディスプレイ(LCD、電子インク、またはOLED))は、同じく、圧力、温度、永久圧力損失、流れの領域、および/または体積流量を、ユーザが直接モニタするために提供される。
【0057】
圧力信号、温度信号、永久圧力損失、流れの領域、および/もしくは体積流量、またはそれらの時系列が、マイクロコントローラ24に接続された(好ましくは低エネルギーの)ブルートゥース(登録商標)無線通信システム30によって送信され得る。他の実施形態では、ワイヤレス通信システムは、Wi-Fi(登録商標)、ジグビー、またはZ波の通信システムであり得る。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によるタービン4の構造を、図2図4に示す。タービン4は、多極磁気回転子33を有するバケットホイール32と、二重バスケット構造固定子(34a、34b)と、コイル36と、を含む。発電機は、電磁発電機として素子33、34a、34b、および36を含む。他の実施形態では、ホイール32は、パドルホイール、バケットホイール、らせん、または任意の他のタイプのホイールによって置換されてもよいことに留意されたい。バケットホイール32は、コイル36に接続される二重バスケット構造固定子(34a、34b)内に収容される。コイル36は、タービン4の電気端子13、14においてAC電流を供給する。バケットホイール32は、流れ入口6および流れ出口8と流体連通している。流量計2の流れ入口6を通って入る流体は、バケットホイール32に向けられ、その回転を誘導する。タービン4は、流体流れが、バケットホイール32を出て流れ出口8に流れる前に、バケットホイール32のほぼ半回転を流れるように構成される。バケットホイール32の回転は、コイル36内に誘導電流を生み出し、それにより、電気端子13、14において供給されるAC電流を生成する。その結果、周波数分析器22によって決定されたAC電流の周波数は、回転子の回転周波数(すなわち、バケットホイール32の回転速度)、またはそれらの知られている(おそらくは整数の)倍数である。したがって、周波数分析器22は、バケットホイール32の回転速度を感知する。その結果、個別の回転速度センサは、バケットホイール32の回転速度を決定するために不要である。
【0059】
流れ入口6および流れ出口8は、2mmから15mmまで、好ましくは3mmから10mmまで、より好ましくは4mmから7mmまで、より一層好ましくは4mmから6mmまでの間に含まれる直径を有することが好ましい。流れ入口6および流れ出口8は、同じ直径を有しても異なる直径を有してもよい。
【0060】
一実施形態では、タービン4において流れ入口6と流れ出口8との間に、流れ入口6および流れ出口8以外の入口または出口は配置されない。たとえば、タービン4において流れ入口6と流れ出口8との間に、排気孔、通気孔、または(たとえば、温度または圧力を測定するための)タッピング点は配置されない。言い換えれば、タービン4は流体密封である。
【0061】
タービン4は、小さい円形のオリフィスプレートを有するノズル37をさらに含む。オリフィスは、0.1mmから1mmまで、好ましくは0.2mmから0.8mmまで、より好ましくは0.4mmから0.6mmまでの間に含まれる直径、より一層好ましくは0.5mmの直径を有する。他の実施形態では、ノズル37は、たとえば、細い喉、または明確に定義された角度を有する斜めのオリフィスなど、異なる形状を有してもよい。
【0062】
パイプ内の断面直径の変化は、流れる流体の速度に変化を引き起こす。流れる流体はノズル37を通過するので、制約(狭窄部)が、流体速度の増加と流体圧力の減少を引き起こす。
【0063】
ノズルを通って流れる流体流れの体積流量の計算に対する一般式は、以下の[数1]により与えられる。
【0064】
【数1】
【0065】
ここでQは体積流量であり、Cは流出係数(円形オリフィスプレートに対して約0.6)であり、Yは膨張率(非圧縮性流体流れに対して1、または圧縮性流体流れに対して≠1)であり、Aはパイプの断面であり、gは無次元定数(SI単位で1)であり、pはノズルの上流の流体圧力であり、pはノズルの下流の縮流部における流体圧力であり、βはノズル直径とノズルの上流のパイプ直径との間の比であり、ρはノズルの上流の流体密度である。
【0066】
ノズルは、流体圧力、流体温度、および流体の流体速度の変化を誘発し、亜音速から超音速への遷移を誘発し得ることはよく知られている。同じく、ノズルは、永久圧力損失を引き起こす。亜音速から超音速への遷移は、圧縮性流体流れの体積流量を正確に評価するために考慮すべき最も重要な点である。
【0067】
狭窄部(たとえば、ノズル)の上流領域と下流領域との間の所与の亜音速流れの圧力差が増加することで、特に狭窄部において、流れのマッハ数が増加することもよく知られている。流れが狭窄部においてちょうどM=1になるように圧力差が増加したとき、狭窄部の上流および下流の流れは、M<1である。流れは、圧力差をさらに増加させるときでも狭窄部においてM=1のままであるので、この流れはチョークされていると呼ばれる。圧力差をさらに増加させることで、狭窄部の直近の下流に超音速域にある流れが生じる。その流れは、狭窄部においてチョークされたままであるので、超音速域は、しばしば、チョーク域と呼ばれることに留意されたい。
【0068】
国際自動制御学会、「Flow Equations for Sizing Control Valves」、(ISA-75.01.01-2007, 60534-2-1 Mod)によって提供された規格によれば、亜音速流れに対する体積流量Qsubは、[数2]として記述され得る。
【0069】
【数2】
【0070】
同じく、同じ参照文献によれば、超音速流れに対する体積流量Qsupは、[数3]として記述され得る。
【0071】
【数3】
【0072】
流体が、亜音速域にあるかまたは超音速域にあるかを決定するために、以下の流れ遷移基準[数4]が使用される。
【0073】
【数4】
【0074】
は℃における流体温度であり、Δp=p-pであり、Fγは流体の比熱比係数(たとえば、室温における空気の場合は1.401)であり、xはチョーク流れに付属物を添付されない制御弁の差圧比係数であり、Cは流量係数である。
【0075】
流量係数CVは、Lohmの定義に従って決定され得る。直径dの円形オリフィスプレートに対して、流量係数は、[数5]を有する。
【0076】
【数5】
【0077】
非特許文献4によれば、Δpは、永久圧力損失p-pに、以下の[数6]の用に関連する。
【0078】
【数6】
【0079】
ここでpは、流量計2から遠く離れた下流で測定された流体圧力である。
【0080】
次に、タービン、より詳細には回転子の動力学に転じると、角運動方程式は、[数7]として記述され得る(非特許文献5)。
【0081】
【数7】
【0082】
ここでIは慣性モーメントであり、θ≡θ(t)は、固定子に対する回転子の瞬間的角度位置(単位ラジアン)であり、ηは流体の動粘度であり、Kは「電磁」黏度(渦電流に起因する)であり、Kはコギングトルク係数であり、mは、磁気コギングトルクの周期性を定義する偶数の整数であって回転子(33)および固定子(34a、34b)のペア極の数に等しく、Kは駆動トルク係数である。容易に分析的に解くために、運動方程式は、[数8]に簡素化され得る。
【0083】
【数8】
【0084】
ここで周期的コギング項Ksin(mθ)は、回転に対抗する連続的トルクKで置換される。この仮定は、タービン4内の発電機の、一時的状態でない一定回転速度の動的定常状態を考慮することによって正当化される。
【0085】
回転子の瞬間的回転速度ω(t)=dθ/dtに対する閉形式解は、[数9]として記述され得る。
【0086】
【数9】
【0087】
ここでΔpth=K/Kは、回転子の回転を開始するために駆動流れによって達成するためのしきいの差圧に対する定数である。
【0088】
t→∞に対して、回転子の瞬間的回転速度、ω(t→∞)は、[数10]となる。
【0089】
【数10】
【0090】
その結果、(p-p)と回転子の回転速度ω=ω(t→∞)との間に線形関係が存在する。
【0091】
【数11】
【0092】
亜音速流れに対する体積流量(式2参照)は、それゆえ、[数12]として書き換えられる。
【0093】
【数12】
【0094】
超音速流れに対する体積流量(式3参照)は、同じく、[数13]として書き換えられ得る。
【0095】
【数13】
【0096】
式2、3のモデルの実験による確認
【0097】
図5を参照すると、タービン4は、流体圧力pを測定するための圧力センサ38を含む試験台39の上に置かれている。試験台39は、圧力センサ38から下流に配置されたマイクロリーク弁40と、流量Qを測定するための流量計42と、をさらに含む。マイクロリーク弁40は、体積流量を正確に設定することを可能にする。タービン4は、その流れ入口に、図5に表されていない温度センサも含む。流体は、T=20℃の空気である。
【0098】
図6図7は、入口における流体圧力pの関数として、手動マイクロリーク弁の手段によって一定に(図6に対してQ=5L/minおよび図7に対してQ=7L/min)設定されて測定された体積流量を示す。黒四角は実験データである。体積流量は、同じく、亜音速モデル(式2-点線の曲線、円形の記号)および超音速モデル(式3-破線の曲線、三角形の記号)に従って計算された。加えて、流れ遷移基準(式4)は、同じく、対応する亜音速/超音速遷移を可視化するために、各グラフの下方のパネル内に(実線の曲線、中抜き四角形の記号)示される。亜音速モデル(式2)は、p、pおよびTに基づいて体積流量Qを正確に予測することを可能にする。超音速モデル(式3)は、同じく、超音速流れの場合の体積流量Qを予測することを可能にする。
【0099】
図8図9は、回転子の一定回転速度に対する、入口における流体圧力pの関数として測定された体積流量を示す。回転子の回転速度は、図1に示す実施形態において説明したものと同じ方法で決定される。回転子の回転速度は、手動マイクロリーク弁の手段によって一定に維持される。黒四角は実験データである。体積流量は、同じく、亜音速モデル(式2-点線の曲線、円形の記号)および超音速モデル(式3-破線の曲線、三角形の記号)に従って計算された。加えて、流れ遷移基準(式4)は、同じく、対応する亜音速/超音速遷移を可視化するために、各グラフの下方のパネル内に(実線の曲線、中抜き四角形の記号)示される。図6図7と同じ結論を、図8図9に対して引き出すことができ、すなわち、結論は、亜音速モデル(式2)はp、pおよびTに基づいて体積流量Qを正確に予測することを可能にすることである。超音速モデル(式3)は、同じく、超音速流れの場合の体積流量Qを予測することを可能にする。
【0100】
要約すると、式2、3の分析モデルは、実験データを正確に再現する。
【0101】
式9および式10のモデルの実験による確認
【0102】
タービン4が、試験台39の上に置かれる。図10は、一定体積流量Qに対する永久圧力損失p-pの関数として測定された回転子の回転速度を示す。流体は、T=20℃の空気である。流れ遷移基準(式4)は、同じく、圧縮性流体流れの亜音速から超音速への遷移を強調するために、下方のパネル内に示される。永久圧力損失と回転子の回転速度との間の線形関係が、亜音速域に対しておよび任意の体積流量に対して取得される。データ点は、Δpth≒0.3barであることおよびK/(ηK)≒3950.93rad.s-1bar-1であることを決定することを可能にする式(9)によって適合された。
【0103】
タービンによって供給される電力
【0104】
図11は、回転子の回転速度(脈動(RPM)、同じくωで示される)の関数としてタービン4によって供給される電力を示す。図は、200ミリワット(rms)に近い電力が、20kiloRPMの回転速度に対して提供され得ることを示す。そのような電力は、図1に示す流量計に給電するのに十分である。
【0105】
特定の実施形態が、本明細書において詳細に説明されたが、それらの詳細に対して様々な修正形態および代替形態が、本開示の全般的教示を踏まえて開発され得ることは、当業者には諒解されよう。その結果、開示された特定の構成は、単なる例示であって本発明の範囲を制限しないことを意図しており、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらのありとあらゆる等価物の全範囲が与えられるべきである。
【符号の説明】
【0106】
2 電源内臓流量計
4 タービン
6 流れ入口
8 流れ出口
10 圧力センサ
12 温度センサ
13 第1の電気端子
14 第2の電気端子
16 電力管理システム(PMS)
18 バッテリ
20 電力線
22 周波数分析器
24 マイクロコントローラ
26 データロガー
28 ディスプレイ
30 ワイヤレス通信システム
32 バケットホイール
33 多極磁気回転子
34a 二重バスケット構造固定子
34b 二重バスケット構造固定子
36 コイル
37 ノズル
38 圧力センサ
39 試験台
40 マイクロリーク弁
42 流量計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12