(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】フルスペクトル固体白色発光デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240617BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240617BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240617BHJP
【FI】
H01L33/50
F21V9/30
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022501063
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 US2020040809
(87)【国際公開番号】W WO2021007123
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-02-16
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510077369
【氏名又は名称】ブリッジラックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】リ イ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン シャンロン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ガン ツァオ
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009126(JP,A)
【文献】特表2007-524726(JP,A)
【文献】特開2005-217386(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208683(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/044380(WO,A1)
【文献】特開2016-219519(JP,A)
【文献】特開2015-056667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0139943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
F21V 3/08
F21V 9/30
F21Y 109/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルスペクトル白色発光デバイスであって、
420nm~480nmの主波長及び少なくとも30nmのFWHM強度を有する、広帯域励起光を生成するための広帯域固体励起源と、
620nm~640nmの発光ピーク波長及び30nm未満のFWHM強度を有する、狭帯域赤色光フォトルミネッセンス材料と、を備え、
前記デバイスが、少なくとも130lm/Wの発光効率を有し、
1800Kから6800Kまでの範囲の相関色温度及びCRI Ra≧90を有する白色光を生成し、
430nm~520nmの波長範囲にわたって、前記相関色温度と同じ色温度の黒体曲線又は前記相関色温度と同じ色温度のCIE標準光源Dの光の強度からの前記白色光の最大強度偏差率(%)が、20%未満である、フルスペクトル白色発光デバイス。
【請求項2】
前記狭帯域赤色光フォトルミネッセンス材料が、K2SiF6:Mn4+、K2TiF6:Mn4+、及びK2GeF6:Mn4+、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記デバイスが、表面実装可能なデバイス、チップオンボード、及びフィラメント、のうちの1つである、請求項1又は2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記デバイスによって生成された光が、少なくとも50の演色CRI R9を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記デバイスによって生成された光が、少なくとも90の演色CRI R1~CRI R15を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記デバイスによって生成された光が、少なくとも80の演色CRI R1~CRI R8及びCRI R10~CRI R15を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記デバイスによって生成された光が、少なくとも98のIEC TM-30色域指数Rg及び少なくとも90のIEC TM-30忠実度指数Rfを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記デバイスによって生成された光が、色相角ビンh1~h12及びh13~h16に対して少なくとも90、並びに色相角ビンh13に対して少なくとも85のIEC TM-30局所色忠実度Rf,hjを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項9】
495nm~580nmのピーク発光波長を有する緑色~黄色フォトルミネッセンス材料を更に備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項10】
580nm~625nmのピーク発光波長を有する橙色~赤色フォトルミネッセンス材料を更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記広帯域固体励起源が、複数の狭帯域固体光源、又は、複数の異なる量子井戸を有する固体光源を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記最大強度偏差率(%)が、15%未満である、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記デバイスによって生成された光の概日作用因子が、前記黒体曲線又はCIE標準光源Dの概日作用因子の20%又は10%以内である偏差を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、前記黒体曲線又はCIE標準光源Dの強度に対する相対強度が、645nm~665nmの波長で25%に減少する、橙色~赤色領域におけるテールを有する白色光を生成する、請求項1~13のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項15】
LEDフィラメントであって、
光透過性基板と、
前記光透過性基板の面に取り付けられ、420nm~480nmの主波長及び少なくとも30nmのFWHM強度を有する広帯域励起光を生成する、広帯域固体励起源のアレイと、
620nm~640nmの発光ピーク波長及び30nm未満のFWHM強度を有する、狭帯域赤色光フォトルミネッセンス材料と、を備え、
前記LEDフィラメントが、少なくとも130lm/Wの発光効率を有し、
1800Kから6800Kまでの範囲の相関色温度及びCRI Ra≧90を有する白色光を生成し、
430nm~520nmの波長範囲にわたって、前記相関色温度と同じ色温度の黒体曲線又は前記相関色温度と同じ色温度のCIE標準光源Dの光の強度からの前記白色光の最大強度偏差率(%)が、20%未満である、LEDフィラメント。
【請求項16】
前記最大強度偏差率(%)が、15%未満である、請求項15に記載のLEDフィラメント。
【請求項17】
前記広帯域固体励起源が、複数の狭帯域固体光源、又は、複数の異なる量子井戸を有する固体光源を備える、請求項15又は16に記載のLEDフィラメント。
【請求項18】
前記LEDフィラメントによって生成された光の概日作用因子が、前記黒体曲線又はCIE標準光源Dの概日作用因子の20%又は10%以内である偏差を有する、請求項15~17のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【請求項19】
前記LEDフィラメントが、前記黒体曲線又はCIE標準光源Dの強度に対する相対強度が、645nm~665nmの波長で25%に減少する、橙色~赤色領域におけるテールを有する白色光を生成する、請求項15~18のいずれか一項に記載のLEDフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、(1)2019年7月9日に出願された米国特許仮出願第62/872,277号、(2)2019年7月19日に出願された米国実用特許出願第16/517,524号(現在発行されている米国特許第10,685,941(B1)号)、(3)2019年11月5日に出願された米国特許仮出願第62/931,180号、及び(4)2020年6月23日に出願された米国実用特許出願第16/909,921号の優先権を主張し、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施形態は、フォトルミネッセンス波長変換材料を含むフルスペクトル固体白色発光デバイスを対象とする。より具体的には、排他的ではないが、実施形態は、自然太陽光に密接に相似する青色光~赤色光までの波長スペクトルを有するフルスペクトル白色光を生成するための白色発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
白色発光LED(「白色LED」)は、LED(固体励起源)によって放出された青色光の一部分を吸収し、異なる色(波長)の可視光を再放出する1つ以上のフォトルミネッセンス材料(典型的には無機蛍光体物質)を含む。蛍光体物質によって吸収されないLEDによって生成された青色光の部分は、蛍光体によって放出された光と組み合わされることにより、色が白であるように目に見える光がもたらされる。それらの長い動作寿命(>50,000時間)及び高い発光効率(100ルーメン/ワット以上)により、白色LEDは、従来の蛍光灯、コンパクト蛍光灯、及び白熱電球に急速に置き換わってきている。
【0004】
白色光源によって生成される光の特性及び品質を定量化するための様々なメトリクスが存在する。固体照明業界内で最も一般的に使用される2つのメトリクスは、相関色温度(Correlated Color Temperature、CCT)及び国際照明委員会(International Commission on Illumination、CIE)の平均演色評価数(Color Rendering Index、CRI)のRaである。
【0005】
光源のCCTは、ケルビン(K)で測定され、光源によって生成された光の色に対応する色の光を放射するプランキアン(黒体)放射体の色温度である。
【0006】
平均CRI Raは、どれだけ忠実に光源が物体の真の色を演色するかを特徴づけ、8つの色試験サンプル(R1~R8)の光源の照明が、基準源によって提供される照明と比較してどれだけ優れているかの尺度に基づいている。一般に、値が高いほど、黒色放射体及び自然太陽光へのその近接性を示す。平均CRI Raは、負の値をとることができ、100の最大値を有する。色サンプルR1~R8は全てパステル色(低彩度の灰色がかった赤色~赤みがかった紫色)であるため、平均CRI Raは、太陽光に密接に相似するフルスペクトルを生成する白熱源の光出力の微妙な差の有用な尺度を与えた。しかしながら、そのスペクトルがピークで構成されている白色LEDについては、平均CRI Raは、限られた色の範囲にわたる色再現の平均尺度であるので、不十分であることが証明されており、特定の色又は高い彩度の色に対する光源の性能の情報を与えない。したがって、フルスペクトルの固体白色発光デバイスを特性評価するとき、CRI色サンプルR9~R12(飽和した赤色~飽和した青色)及びR13~R15(明るい肌の色調、葉の緑、中程度の肌の色調)を考慮に入れて、自然太陽光と比較してスペクトルの意味のある特性評価をする必要がある。
【0007】
平均CRI Raの制限に対処するために、照明学会(Illuminating Engineering Society、IES)は最近、光源の色性能を測定及び特性評価するためのTM-30標準を公開し(照明学会(2015)「Method for Evaluating Light Source Color Rendition」TM-30-15)、これは、参照により本明細書に組み込まれる。TM-30-15標準では、光源の演色特性を特徴づけるために、忠実度指数(Rf)、色域指数(Rg)、及び色ベクトルグラフィックの3つのメトリクスが使用される。IES TM-30-15の方法は、人々の色の知覚とより良好な相関性を有し、したがって、光源の光特性のより正確な特性評価を与えると考えられている。忠実度指数Rfは、平均CRI Raと同様であり、どれだけ忠実に光源が物体の真の色をレンダリングするかを特徴づけ、99色のサンプルの光源の照明が、基準源によって提供される照明と比較してどれだけ優れているかの尺度に基づいている。忠実度指数Rf値は、0~100の範囲である。新しい色サンプルは、リアルライフ用途で遭遇する可能性が高い物体をより代表するように選択され、結果として、忠実度指数Rfは、平均CRI Raよりも演色のより正確な尺度であると考えられている。Rfは、より多数の色サンプルにわたって測定されるため、平均CRI Raと比較して高いスコアを達成することはより困難になる。更に、試験手順が異なるため、平均CRI Raと忠実度指数Rf値とは互いに比較することはできない。
【0008】
色域指数Rgは、彩度に焦点を当てており、基準源と比較した彩度の平均レベルである。色域指数は、色付き物体の外観の鮮やかさに相関する。色域指数Rg値は、60~140の範囲であり、100未満の値は、彩度の低下を示し、100を超える値は、基準源と比較して彩度の上昇を示す。
【0009】
色ベクトルグラフィックは、色がくすんでいるか、より鮮やかに表示されているかどうかに関係なく、観察された光で特定の色がどのように現れるかの視覚的表現を与える極座標チャートである。色ベクトルグラフィックは、どの色がより飽和又はより少ないかの指標を与える。忠実度指数及び色域指数は平均に基づいているため、どの色が飽和しているか、又はくすんでいるかを告げることはできない。ベクトルグラフィックの円は、基準光の16の色相角ビンhj(hは、色相を表し、jは、色相角ビンの番号である)に分割される。プランキアン(黒体)放射体は、色ベクトルグラフィック上の円として現れる。局所忠実度指数Rf、hjが円の内側にある任意の点は、これらの色相が基準源(黒体)と比較して光源によって脱飽和していることを示す。Rf、hjが円の外側にある点は、光源によって過飽和になっている色相を示す。完全な重複は、ソース間で演色に差がないことを示す。
【0010】
良好な照明設計は、照明が人間の睡眠サイクル、概日リズム、覚醒、及び他の非視覚的応答に影響を及ぼし得るため、本質的に人間中心である。人間の健康に関するLED(固体)照明の安全性は、最近の精査の対象となっている。人工光が、ホルモン合成、睡眠-目覚めサイクル、及び覚醒レベルなど、人間の生理学及び心理学の正常な調節を妨害するという懸念が高まっている。特に、最近の証拠は、例えば、LEDによって生成された光など、高色温度(5000K)及び高照度の光が、睡眠前のメラトニン分泌を抑制し、並びに主観的な覚醒を低減させることを示している。青色光は他の色よりも、日昼光及び暗闇の自然サイクル(概日)に依存する生物学的プロセスの破壊を通じて生存生物に影響を与える傾向が強いことも報告されている。夕方遅く及び夜に青色光へ曝されると、健康に有害であり得ると考えられている。
【0011】
メラトニン抑制効果を予測するために、様々なメトリクスが提案されている。概日刺激を測定するためのより一般的なメトリクスのうちの2つは、(i)概日作用因子(Circadian Action Factor、CAF)及び(ii)メラノピック応答(Melanopic Response、MR)である。CAF及びMRは、放射の概日発光効率(circadian luminous efficacy of radiation、CER)の放射の発光効率(luminous efficacy of radiation、LER)に対する比であり、各々が、光に対する脳の感受性の尺度を提供し、すなわち、光に対する人間の非視覚的感度の尺度である。CAFは、特定の波長の光に曝される前後の人間のメラトニンレベルを測定して、概日作用スペクトル(Circadian Action Spectrum、CAS)又は概日感度スペクトルc(λ)を確立する研究に基づいている。acvで示されるCAFは、概日発光効率の放射の発光効率に対する比率である。MRは、哺乳動物ipRGC(本質的に感光性の網膜神経節細胞)に見られるメラノプシン感光色素の吸収スペクトルに基づいており、メラノピック応答(感度)スペクトルm(λ)を確立する。MRは、概日発光効率の放射の発光効率に対する比率である。最近、ipRGCのスペクトル応答に重み付けされた新しいメトリック等価メラノピックルクス(Equivalent Melanopic Lux、EML)が提案されている。
【0012】
LED照明による更なる潜在的な懸念は、網膜に対する光の光化学的損傷の可能性があり、これは、バイオレット~青色の光への過度の露出から生じる可能性がある。これは、ブルーライトハザード(Blue Light Hazard、BLH)として既知であり、CAF及びMRと同様に、対応する青色感度スペクトルb(λ)を有する。BLHのリスクは、白色光を発するLEDが同じ色温度で他のタイプのソースよりも著しく多くの青色を含まない場合でも、LEDに関連付けられる場合がある。すなわち、LEDによって生成された青色ピークがスペクトルのCAF及びMR波長領域内で非常に高いため、BLHは、高CCT(≧5000K)白色LEDについての潜在的な眼の健康上の懸念である。現在の国際標準によれば、白色光を放出し、一般的な照明用途で使用される光源は、健康な成人の網膜に対して危険であるとは見なされていない。つまり、特殊なランプ又は着色ソースの光学的安全性は、ケースバイケースで検討する必要があり、乳児又は特定のタイプの眼疾患を有する成人などの感受性の高い集団の周りに使用される光源は、追加の評価を必要とする。
【0013】
現在、LED照明業界では、フルスペクトル白色LEDは、白熱ランプ及び黒体放射によって提示されるような100に等しい平均CRI Raを有する白色光を生成するように努めている。しかしながら、そのようなLEDは、約80(CRI80)の平均CRI Raを有する光を生成する白色LEDと比較して、発光効率を30%だけ犠牲にすることが見出されている。
【0014】
本発明は、既知の固体白色発光デバイスの欠点を少なくとも部分的に克服し、現在のCRI80デバイスのものに少なくとも近づいているか、又はそれを超える発光効率を有する人間中心のフルスペクトル白色発光デバイスを提供するための努力の中で生じた。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、スペクトルの青色~赤色の波長領域の自然太陽光に可能な限り密接に相似する、強度波長スペクトル(スペクトルコンテンツ)を有する白色光を生成するための白色発光デバイスに関する。
【0016】
特に、排他的ではないが、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、スペクトルの赤色領域に対応する波長での光強度が発光効率を改善するために最適化されている白色発光デバイスを対象とする。そのような実施形態では、白色発光デバイスは、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を備えることができ、例えば、発光ピークが、約30nm未満である主ピーク発光の半値全幅(full width at half maximum、FWHM)強度を有する蛍光体を備えることができる。発光ピーク波長は、眼の明所視応答(すなわち明所視比視感度関数)が概して低い(約0.1)、約650nmより長い波長の波長スペクトルの赤色領域(範囲)に対応する波長での光強度(フォトンカウント)を低減するように選択される。発光ピーク波長は、約620nm~約640nmの範囲であり得る。広帯域赤色フォトルミネッセンス(FWHM>75nm)と比較して、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料のフォトルミネッセンス強度における急激なドロップオフにより、これは、約650nmよりも長い波長に対するスペクトルの赤色波長領域における光強度を低減し、それにより発光効率を改善し、一方目によって検出され得る約430nm~約650nmのスペクトルの青色~シアンの領域にわたる自然光スペクトルに依然として密接に相似する。
【0017】
本発明の実施形態は更に、スペクトルの青色~シアンの領域において自然光に加えて密接に相似する白色光を生成するための白色発光デバイスに関係する。本発明の実施形態によれば、そのような白色発光デバイスは、概日作用因子(CAF)及びメラノピック応答(MR)によって測定された人間の非視覚的知覚が最も影響を受ける、青色~シアンの波長領域(430nm~520nm)において自然光に密接に相似するフルスペクトルの白色光を生成する。そのようなスペクトル特性を有する白色光は、波長スペクトルのこの部分が概日サイクルに影響を及ぼし得るメラトニン分泌に影響を与えるため、人間の健康な状態に有益であると考えられている。そのような白色発光デバイスは、広帯域固体励起源、例えば、青色LEDを利用し、これは、約420nm~約480nmの範囲(すなわち、可視スペクトルの青色領域)に主波長を有する、広帯域励起光を生成する。本明細書において、「広帯域」は、少なくとも25nmのFWHM(半値全幅)を有する光を示すために使用される。例えば、FWHMは、少なくとも30nm又は少なくとも50nmであり得、約25nm~約70nmの範囲のFWHMを有し得、任意選択的に、約30nm~約70nmの範囲のFWHMを有し得る。広帯域はまた、約420nm~約480nmの波長範囲における少なくとも2つの異なる波長の青色光放出の組み合わせで構成される青色光を示すために使用され得る。広帯域青色励起光の使用は、発光デバイスが、スペクトルの青色~シアンの波長領域(430nm~520nm)の自然光に密接に相似するフルスペクトル光を生成することを可能にする。
【0018】
本発明の態様では、約420nm~約480nmの主波長及び少なくとも25nmのFWHM強度を有する広帯域励起光を生成するための広帯域固体励起源と、約620nm~約640nmの発光ピーク波長及び約30nm未満のFWHM強度を有する、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、を備え、デバイスが、少なくとも130lm/Wの発光効率を有し、CRI Ra≧90を有する白色光を生成し、約430nm~約520nmの波長範囲にわたって、黒体曲線又は同じ色温度のCIE標準光源Dの光の強度からの白色光の最大強度偏差率(%)が、約50%未満である、フルスペクトル白色発光デバイスが提供されている。
【0019】
デバイスによって生成された光は、約1800K~約6800Kの相関色温度を有する場合がある。
【0020】
デバイスによって生成された光は、約3200K~約6800Kの相関色温度を有し得る。
【0021】
実施形態では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、蛍光体材料、量子ドット(quantum dot、QD)材料、又はそれらの組み合わせを含み得る。狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、K2SiF6:Mn4+、K2TiF6:Mn4+、又はK2GeF6:Mn4+などの、マンガン活性化フッ化物蛍光体を含む場合がある。
【0022】
デバイスは、表面実装可能なデバイス、チップオンボードデバイス、又はフィラメントのうちの1つであり得る。
【0023】
デバイスによって生成された光は、少なくとも50の演色CRI R9を有し得る。
【0024】
デバイスによって生成された光は、少なくとも90の演色CRI R1~CRI R15を有し得る。
【0025】
デバイスによって生成された光は、少なくとも80の演色CRI R1~CRI R8及びCRI R10~CRI R15を有する場合がある。
【0026】
デバイスによって生成された光は、少なくとも98のIEC TM-30色域指数Rg及び少なくとも90のIEC TM-30忠実度指数Rfを有し得る。
【0027】
デバイスによって生成された光は、色相角ビンh1~h12及びh13~h16に対して少なくとも90並びに色相角ビンh13に対して少なくとも85のIEC TM-30局所色忠実度Rf,hjを有し得る。
【0028】
デバイスによって生成された光は、黒体曲線又は同じ色温度のCIE標準光源Dの概日作用因子の20%又は10%以内である、概日作用因子を有する場合がある。
【0029】
発光デバイスは、495nm~580nmのピーク発光波長を有する緑色~黄色フォトルミネッセンス材料を更に備え得る。
【0030】
発光デバイスは、580nm~625nmのピーク発光波長を有する橙色~赤色フォトルミネッセンス材料を更に備え得る。
【0031】
広帯域励起光は、2つ以上の異なる波長の青色光放出の組み合わせを含み得る。異なる波長の青色発光は、2つの方法で生成することができる。(i)異なる主波長の複数の個々の青色LED(狭帯域LED)を使用すること、又は(ii)例えば、アクティブ領域で特別に設計された複数の異なる量子井戸を使用して、複数の青色波長放射を生成する個々のLED(広帯域LED)を使用すること、である。こうして、広帯域固体励起源は、1つ以上の狭帯域固体光源によって構成することができ、例えば、各々が420nm~480nmの異なる主波長の狭帯域青色光を「直接」生成するLED又はレーザーダイオードなどで構成することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの青色発光の間に少なくとも5nmの波長の差、又は少なくとも2つの青色発光の間に少なくとも10nmの波長の差が存在する。
【0032】
実施形態では、広帯域固体励起源は、420nm~480nmの第1の主波長を有する青色発光を生成するための第1の固体光源、及び420nm~480nmの第2の主波長を有する異なる青色発光を生成するための第2の固体光源を備え得る。第1の主波長は、420nm~450nmであり得、第2の主波長は、450nm~480nmであり得る。広帯域青色励起源は、第1及び第2の主波長とは異なる420nm~480nmの第3の主波長を有する青色発光を生成するための第3の固体光源を更に備え得る。
【0033】
代替的に、広帯域固体励起源はまた、広帯域固体光源を包含し、例えば、多重量子井戸(MQW)構造内の異なる量子井戸を使用して複数の異なる波長の青色発光を直接生成する活性領域を有するInGaN/GaN青色LEDなどの広帯域青色LEDを包含する。いくつかの実施形態では、広帯域固体励起源は、それぞれの異なる主波長を有する青色発光を各々生成する、少なくとも2つの異なる量子井戸を有するLEDを備える。
【0034】
本発明の広帯域固体励起源は、15nm~20nmの範囲のFWHMを有する単一の狭帯域波長の青色光を生成する狭帯域青色LEDを利用する既知の白色LEDと対比されるべきである。本発明の広帯域青色固体励起源は、青色発光(420nm~480nm)のフォトルミネッセンス材料(蛍光体)を使用したUV光のフォトルミネッセンス変換のプロセスを通して間接的に青色励起光が生成生される、UV固体光源(UVLED)を利用する既知の白色LEDと更に対比されるべきである。言い換えれば、本発明による広帯域固体励起源/白色発光デバイスは、420nm~480nmの範囲の励起光を生成するためにフォトルミネッセンス材料を利用しない/含まない。
【0035】
黒体曲線又は同じ色温度のCIE標準光源Dの光の強度からのデバイスによって生成された白色光の最大強度偏差率(%)は、40%、30%、20%、又は15%未満であり得る。
【0036】
本発明の実施形態では、約420nm~約480nmの主波長及び約25nmより大きい半値全幅強度を有する広帯域励起光を生成するための広帯域固体励起源と、約620nm~約640nmの発光ピーク波長及び約30nm未満の半値全幅発光強度を有する狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、を備え、デバイスが、黒体曲線又は同じ色温度のCIE標準光源Dの概日作用因子の20%又は10%以内である、概日作用因子を有する白色光を生成する、フルスペクトル白色発光デバイスが包含されている。そのような実施形態は、前述の特徴のうちの1つ以上及びそれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0037】
本発明の実施形態では、約420nm~約480nmの主波長及び約25nmより大きい半値全幅強度を有する、広帯域励起光を生成するための広帯域固体励起源と、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、を備え、デバイスが、黒体曲線又は同じ色温度のCIE標準光源Dの強度に対する相対強度が、約635nm~約675nmの波長で25%に減少する、橙色~赤色波長領域におけるテールを有する白色光スペクトルを生成する、フルスペクトル白色発光デバイスが想定されている。
【0038】
デバイスは、黒体曲線又は同じ相関色温度のCIE標準光源Dの強度に対する相対強度が、約645nm~約665nmの波長で25%に減少する、橙色~赤色領域におけるテールを有する白色光を生成する場合がある。
【0039】
実施形態では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料が狭帯域マンガン活性化フッ化物蛍光体を含むとき、デバイスは、黒体曲線又は同じ色温度のCIE標準光源Dの強度に対する相対強度が約655nmの波長で25%に減少する、橙色~赤色の領域におけるテールを有する白色光を生成し得る。
【0040】
様々な実施形態は、前述の特徴のうちの1つ以上及びそれらの組み合わせを更に含むことができる。
【0041】
本発明のこれらの、及び他の態様及び特徴は、添付の図面と併せて本発明の特定の実施形態の以下の説明を考察することで、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1a】いくつかの実施形態による、遠隔蛍光体白色発光デバイスを示す。
【
図1b】いくつかの実施形態による、遠隔蛍光体白色発光デバイスを示す。
【
図2a】
図1a及び
図1bの白色発光デバイスで使用するための、本発明の実施形態による、広帯域青色固体励起源の概略図である。
【
図2b】
図1a及び
図1bの白色発光デバイスで使用するための、本発明の別の実施形態による、広帯域青色固体励起源の概略図である。
【
図3a】いくつかの実施形態による、パッケージ化された白色発光デバイスの概略断面図である。
【
図3b】いくつかの実施形態による、パッケージ化された白色発光デバイスの概略断面図である。
【
図4a】いくつかの実施形態による、チップオンボード(COB)パッケージ化された白色発光デバイスの概略平面図及びB-B断面側面図である。
【
図4b】いくつかの実施形態による、チップオンボード(COB)パッケージ化された白色発光デバイスの概略平面図及びB-B断面側面図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、LEDフィラメントランプの側面図である。
【
図6a】
図5のランプで使用するためのいくつかの実施形態による、LEDフィラメント白色発光デバイスの概略C-C断面図及び部分破断平面図である。
【
図6b】
図5のランプで使用するためのいくつかの実施形態による、LEDフィラメント白色発光デバイスの概略C-C断面図及び部分破断平面図である。
【
図7】一般組成式K
2SiF
6:Mn
4+のマンガン活性化ヘキサフルオロケイ酸カリウム蛍光体(KSF)の発光スペクトルを示す。
【
図8】(i)「A」(実線)で示された第1の広帯域固体励起源と、(ii)「B」(点線)で示された第2の広帯域固体励起源と、についての発光スペクトル、強度対波長(nm)、を示す。
【
図9a】(A)(i)25℃で動作するDev.1A(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.1A(太い実線)(iii)黒体曲線(black-body-curve、bbc)-名目上Dev.1Aと同じである2700KのCCTのプランキアンスペクトル(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
【
図9b】25℃で動作するDev.1Aについての相対強度スペクトル、I
rel(%)対波長(nm)、を示す。
【
図9c】波長380nm~540nmについての
図7aの拡大された部分である。
【
図9d】(A)(i)85℃で動作するDev.1A(太い実線)、(ii)Com.1(太い破線)、(iii)名目上Dev.1A及びCom.1と同じである2700KのCCTの黒体曲線bbc(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)概日感度c(λ)(点線)、及び(ii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
【
図10】(A)(i)25℃で動作するDev.1B(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.1B(太い実線)、(iii)黒体曲線(bbc)-名目上Dev.1Bと同じである2700KのCCTのプランキアンスペクトル(太い破線)についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
【
図11】(i)85℃で動作するDev.1A(実線)、(ii)Com.2(点線)、及び(iii)黒体曲線(bbc)-名目上Dev.1Aと同じである2700KのCCTのプランキアンスペクトル(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、を示す。
【
図12】(A)(i)25℃で動作するDev.2A(細い実線)(ii)85℃で動作するDev.2A(太い実線)、(iii)名目上Dev.2Aと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
【
図13】(A)(i)25℃で動作するDev.2B(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.2B(太い実線)、(iii)名目上Dev.2Bと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
【
図14】(i)25℃で動作するDev.2B(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.2B(太い実線)、(iii)Com.3、及び(iv)名目上Dev.2Bと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、を示す。
【
図15】(i)25℃で動作するDev.2B(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.2B(太い実線)、(iii)Com.4、及び(iv)名目上Dev.2Bと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、を示す。
【
図16】(A)(i)安定した動作状態に達したLED-フィラメントDev.3(実線)、及び(ii)黒体曲線(bbc)-Dev.3と同じである3417KのCCTのプランキアンスペクトル(破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
当業者が本発明を実施することを可能にするように、本発明の実施形態が、本発明の例解的な実施例として提供される図面を参照して、ここで詳細に説明される。特に、以下の図面及び実施例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定することを意図するものではなく、説明又は例解される要素の一部又は全ての交換によって他の実施形態が可能である。更に、本発明のある要素が、既知の構成要素を使用して部分的に又は完全に実装され得る場合、本発明の理解に必要であるこのような既知の構成要素のそれらの部分のみが説明され、このような既知の構成要素の他の部分の詳細な説明は、本発明を曖昧にしないように省略される。本明細書において、単数形の構成要素を示す実施形態は限定的であると見なされるべきではなく、むしろ、本発明は、複数の同じ構成要素を含む他の実施形態を包含することを意図しており、その逆もまた同様である。更に、出願人は、そのように明示的に記載されていない限り、本明細書又は特許請求の範囲のいずれの用語についても意図しない。更に、本発明は、例解によって本明細書において言及される既知の構成要素に対する、現在及び将来の既知の等価物を包含する。
【0044】
本明細書全体を通して、図面番号が先行する同様の参照番号が、同様の特徴を示すために使用されている。
【0045】
本発明の実施形態は、420nm~480nmの範囲の主波長を有する広帯域青色励起光を生成するように動作可能である、広帯域固体励起源、例えば、1つ以上のLEDを備える白色発光デバイスに関する。本特許明細書では、「広帯域」青色光は、少なくとも25nm、好ましくは少なくとも30nmのFWHM(半値全幅)を有する青色光を示すために使用され、又は、420nm~480nmの波長範囲の少なくとも2つの異なる波長の青色光放射の組み合わせで構成される青色光を示すために使用され得る。広帯域励起源の使用は、白色発光デバイスが、可視スペクトルの青色~シアンの波長領域(約430nm~約520nm)の自然光に密接に相似する白色光を生成することを可能にする。更に、本明細書に記載されるように、本発明の実施形態は、発光効率を改善するための狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含む白色発光デバイスに関する。
【0046】
遠隔蛍光体白色発光デバイス
【0047】
図1a及び
図1bは、本発明の実施形態による遠隔蛍光体固体白色発光デバイスを例解し、
図1aは、部分断面平面図であり、
図1bは、A-Aを通る断面側面図である。デバイス110は、1800K~6800KのCCT(相関色温度)を有するフルスペクトル白色光を生成するように構成することができる。デバイスは、単独で使用することができ、又はダウンライト又は他の照明装置の一部を構成することができる。デバイス110は、円形円盤状基部114、中空円筒形壁部分116、及び環状頂部118から構成される中空円筒体112を備える。熱の散逸を助けるために、基部114は、アルミニウム、アルミニウムの合金、又は高熱伝導率を有する任意の材料から製造することができる。基部114は、ねじ又はボルトによって、又は他の締結具によって、若しくは接着剤によって、壁部分116に取り付けることができる。
【0048】
デバイス110は、円形形状MCPCB(metal core printed circuit board、金属コアプリント回路ボード)122と熱連通して取り付けられた複数(
図1a及び
図1bの例では5つ)の広帯域青色固体励起源120を更に備える。本発明の実施形態による様々な広帯域青色固体励起源120が、
図2a及び
図2bに例解されている。光の放出を最大化するために、デバイス10は、MCPCB 122の面及び円筒壁116の内側湾曲表面をそれぞれ覆う光反射表面124を及び126を更に備えることができる。
【0049】
デバイス110は、励起源120から離れて位置し、励起源120によって生成された励起光の一部分を吸収し、それをフォトルミネッセンスのプロセスによって異なる波長の光に変換するように構成されたフォトルミネッセンス波長変換構成要素128を更に備える。デバイス110の発光生成物は、広帯域青色励起源120によって生成された光と、フォトルミネッセンス波長変換構成要素128によって生成されたフォトルミネッセンス光とを組み合わせたものを含む。フォトルミネッセンス波長変換構成要素は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と、緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料との混合物を含むことができ、広帯域橙色~赤色のフォトルミネッセンス材料を更に含み得る。フォトルミネッセンス材料は、蛍光体材料を含むことができる。狭帯域赤色、緑色~黄色、及び橙色~赤色のフォトルミネッセンス材料の例を以下に説明する。フォトルミネッセンス波長変換構成要素は、フォトルミネッセンス材料の混合物を組み込んだ光透過性材料(例えば、ポリカーボネート、アクリル材料、シリコーン材料など)から形成され得る。更に、実施形態では、フォトルミネッセンス波長変換構成要素は、1つ以上の層において蛍光体材料でコーティングされた光透過性基板から形成され得る。波長変換成分128は、励起源120から離れて位置付けされ、励起源から空間的に分離されている。本特許明細書では、「離れて(remotely)」及び「遠隔(remote)」は、離間した又は分離された関係を意味する。典型的には、波長変換構成要素及び励起源は、空気によって分離され、一方他の実施形態では、それらは、例えば、光透過性シリコーン又はエポキシ材料などの好適な光透過媒体によって分離され得る。波長変換構成要素128は、ランプによって放出される全ての光が波長構成要素128を通過するように、ハウジング開口部を完全に覆うように構成されている。示されるように、波長変換構成要素128は、頂部118を使用して、壁部分116の頂部に取り外し可能に取り付けることができ、ランプの構成要素及び発光色が容易に変更されることを可能にする。
【0050】
図2aは、本発明の実施形態による、広帯域青色固体励起源220の概略図である。広帯域青色固体励起源220は、420nm~480nmの主要波長を有する広帯域青色励起光を生成するように構成され、すなわち、可視スペクトルの青色領域にある。この実施形態では、25nm~50nmのFWHMも有する。本発明の実施形態によれば、広帯域青色固体励起源220は、第1の固体光源230及び第2の固体光源232を備え、これらは、この例では、狭帯域青色LEDチップ(例えば、青色発光GaN系のLEDチップ)である。第1の固体光源230は、420nm~480nmの第1の主波長λ
d1を有する青色発光を生成し、第2の固体光源232は、420nm~480nmの第2の主波長λ
d2を有する青色発光を生成する。第1及び第2の固体光源は、光源によって生成される光の主波長が異なるように選択される(すなわち、λ
d1はλ
d2とは異なる)。第1及び第2の固体光源230/232からの光の組み合わせは、広帯域青色固体励起源220の広帯域青色励起光出力242を構成し、420nm~480nmの主波長を有し、25nm~50nmのFWHMを有する。他の実施形態では、固体励起源は、単一の固体光源を備え得ることが理解されよう。本明細書では、単一の固体光源は、各々が、同じ(すなわち、単一の/孤立した)主波長を有し、かつ少なくとも25nmのFWHMを有する光を生成する1つ以上の固体光源として定義される。
【0051】
図2aに示されるように、広帯域青色固体励起源220は、例えば、SMD2835LEDパッケージなどの表面実装可能デバイス(surface mountable device、SMD)を備えることができ、そこで、第1及び第2の固体光源は、基板234の頂部面にフリップチップボンドされている。電気接点236、238は、励起源を動作させるために基板234の底面に提供することができる。第1及び第2の固体光源230、232は、例えば、シリコーン又はエポキシ材料などの光透過性光学封止材240でカプセル化することができる。
【0052】
図2bは、本発明の実施形態による、広帯域青色固体励起源220の概略図である。固体励起源220は、420nm~480nmの主波長を有する、すなわち、可視スペクトルの青色領域にある励起光を生成するように構成されている。この実施形態では、25nm~50nmのFWHMも有する。本発明の実施形態によれば、固体励起源220は、広帯域固体光源241を備え、それは、この例では、例えば、多重量子井戸(MQW)を備えたアクティブ領域を有するInGaN/GaN青色LEDなどの、単一の広帯域LEDであり、「Growth of InGaN multiple-quantum-well blue light-emitting diodes on silicone by metal organic vapor phase epitaxy」と題する、Appl.Phys.lett.75,1494(1999)Tran C A et al.に開示されている。広帯域固体光源241は、420nm~480nmの範囲のピーク波長の複数の重なり合う青色発光を含む広帯域青色光を生成する。したがって、単一の固体光源241は、単一の/孤立した主波長を有し、かつ少なくとも25nmのFWHMを有する光を生成する。
【0053】
図2bに示されるように、固体励起源220は、例えば、SMD2835LEDパッケージなどの表面実装可能デバイス(SMD)を備えることができ、そこで、固体光源は、基板234の頂部面にフリップチップボンされている。電気接点236、238は、励起源を動作させるために基板234の底面に提供することができる。固体光源241は、例えば、シリコーン又はエポキシ材料などの光透過性光学封止材240でカプセル化することができる。
【0054】
パッケージ化された白色発光デバイス
【0055】
図3aは、本発明の実施形態による、パッケージ化された白色発光デバイス310aの概略断面図である。デバイス310aは、1800K~6800Kの範囲のCCT(相関色温度)を有するフルスペクトル白色光を生成するように構成することができる。
【0056】
本発明の実施形態によれば、デバイス310aは、パッケージ344内に収容された、第1及び第2の固体光源330、332、例えば、青色発光GaN(窒化ガリウム)系のLEDチップによって構成された広帯域青色固体励起源を備える。上記と同様の/同じ様態で、第1の固体光源330は、420nm~480nmの範囲の第1の主波長λd1を有する青色発光を生成することができ、第2の固体光源332は、420nm~480nmの範囲の第2の主波長λd2を有する青色発光を生成することができる。第1の固体光源の主波長λd1は、第2の固体光源の主波長λd2とは異なる。パッケージは、例えば、SMD2835LEDパッケージなどの表面実装可能デバイス(SMD)を含むことができ、上部部分346及び基部部分348を備える。上部本体部346は、固体光源330、332を受容するように構成された凹部350を画定する。パッケージ344は、パッケージ344の基部の外面上に電気コネクタ352及び354を更に備えることができる。電気コネクタ352、354は、凹部350の床上の電極接触パッド356、358及び360に電気的に接続することができる。接着剤又ははんだを使用して、固体光源(LEDチップ)330、332を、凹部350の床上に位置する熱伝導性パッド362に取り付けることができる。LEDチップの電極パッドは、ボンドワイヤ362を使用して、パッケージ344の床上の対応する電極接触パッド356、358及び360に電気的に接続することができる。代替的に、LEDチップをフリップチップで取り付けて、パッケージに電気的に接続することもできる。凹部350は、フォトルミネッセンス材料(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料、及び任意選択的に橙色~赤色の広帯域フォトルミネッセンス材料)の混合物で充填された、光透過性光学封止材364、典型的には光学的に透明なシリコーンで満たされ、それにより、LEDチップ330、332の露出表面がフォトルミネッセンス/シリコーン材料混合物によって覆われている。デバイスの発光輝度を高めるために、凹部350の壁を傾斜させて、光反射表面を有することができる。当然のことながら、他の実施形態では、1つ以上の固体光源(LEDチップ330、332)は各々、同じ(すなわち、単一の/孤立した)主波長を有し、少なくとも25nmのFWHMを有する光を生成することが理解されよう。
【0057】
図3bは、本発明の別の実施形態である。これは、第1及び第2の狭帯域固体光源が、多重量子井戸を備えたアクティブ領域を有する2つの広帯域青色LED341a/341bによって置き換えられていることを除いて、
図3aと同様である。典型的には、第1及び第2の広帯域青色固体光源341a/341bは各々、同じである主波長λ
dを有する広帯域青色励起光を生成する。
【0058】
図4a及び
図4bは、本発明の実施形態による、チップオンボード(COB)パッケージ化された白色発光デバイス410を例解し、
図4aは平面図であり、
図4bはB-Bを通る断面図である。デバイス410は、1800K~6800KのCCT(相関色温度)及び95以上の平均演色評価数(CRI Ra)を有する温かい白色光を生成するように構成することができる。
【0059】
デバイス410は、複数(
図4aの例では12)の広帯域青色固体励起源420、例えば、広帯域青色発光GaN(窒化ガリウム)系のLEDフリップチップダイ、を備え、正方形のMCPCB468と熱連通して取り付けられている。
【0060】
図4aに示すように、励起源420は、概して円形のアレイとして構成することができる。固体励起源(広帯域LEDダイ)420は各々、420nm~480nm(より典型的には440nm~455nm)の範囲の主波長λ
dを有する励起光を生成することができる。この実施形態では、それらは、25nm~50nmのFWHM(半値全幅)を有する。電気接点472、474を、白色発光デバイス410を動作させるためにMCPCB468の頂部面に設けることができる。示されるように、広帯域LEDフリップチップダイ420は、例えば、シリコーン又はエポキシ材料などの、フォトルミネッセンス材料(狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料、及び任意選択的に橙色~赤色の広帯域光フォトミルク材料)の混合物で充填された光透過性光学封止材466でカプセル化されており、それにより、LEDダイ420の露出表面は、フォトルミネッセンス/シリコーン材料混合物によって覆われている。示されるように、光透過性封止材/フォトルミネッセンス材料混合物466は、環状形状の壁470内に収容することができる。当然ながら、他の実施形態では、
図4a及び
図4bに示される配置は、多重量子井戸を有する単一の広帯域InGaN/GaN青色LEDではなく、2つ以上のLEDによって構成される固体励起源420を備えることができることが理解されるであろう。
【0061】
LEDフィラメント白色発光デバイス
【0062】
図5は、1800K~6800Kの範囲のCCT(相関色温度)でフルスペクトル白色光を生成するためのLEDフィラメントAシリーズランプ(電球)5100の側面図を例解する。LEDフィラメントランプ5100は、コネクタ基部5102、光透過性エンベロープ5104と、ガラスLEDフィラメント支持体(ステム)5106及び本発明による4つのLEDフィラメント(白色発光デバイス)510と、を備える。
【0063】
ここで、本発明の実施形態によるLEDフィラメント610を、LEDフィラメント610のC-Cを通る断面側面図及び部分破断平面図を示す
図6a及び
図6bを参照して説明する。LEDフィラメント610は、前面6110に取り付けられた固体広帯域励起源620のアレイを有する回路ボード(基板)6108を備えることができる。広帯域励起源は、420nm~480nmの主波長λ
dを有する、すなわち、25nm~50nmの範囲のFWHMを有する可視スペクトルの青色波長領域にある、広帯域青色励起光を生成するように構成されている。例解の実施形態では、広帯域励起源620は、基板に直接取り付けられた、パッケージ化されていない広帯域青色LEDダイ(例えば、本明細書に記載のMQW InGaN/GaN LEDダイ)によって構成されている。他の実施形態では、広帯域励起源620の各々は、基板に直接取り付けられた、異なるそれぞれの主波長λ
d1 λ
d2を有する少なくとも2つの個別の狭帯域青色LEDダイの組み合わせによって構成され得る。
【0064】
実施形態では、例解された基板6108は、平面状であり、基板の前面6110の長さに沿った線形アレイとして構成された広帯域励起源620を備えた細長い形状(ストリップ)を有する。
【0065】
典型的には、各LEDフィラメント620は、約2Wの総公称電力を有する25個の励起源(LEDダイ)を備えることができる。
【0066】
好ましくは少なくとも半透明である基板6108は、例えばガラス又はポリプロピレン、シリコーン又はアクリルなどのプラスチック材料など、可視光に対して10%以上の透過率を有する任意の光透過性材料を含むことができる。基板6108は、前面6110上に、励起源620を電気的に接続するための所望の回路構成で構成された導電性トラック6112を更に含むことができる。例解のように、励起源620は、ストリングとして直列に電気的に接続することができる。示されるように、励起源620は、ボンドワイヤ6114を使用して、導電性トラック6112に電気的に接続することができる。他の実施形態では、励起源620は、ボンドワイヤによって互いに直接接続することができ、それにより、導電性トラックの必要性を排除することができる。更に他の実施形態では、励起源620は、導電性トラックに取り付けられた表面実装可能又はフリップチップLEDを備えることができる。基板6108は、それぞれの端部で、LEDフィラメント610に電力を印加するための電極6116を備えることができる。
【0067】
本発明の実施形態によれば、LEDフィラメント620は、基板及び励起源620の少なくとも前面6110を覆うフォトルミネッセンス波長変換材料666を更に含む。本発明の実施形態によれば、フォトルミネッセンス波長変換材料666は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料と緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料との組み合わせを含む。任意選択的に、フォトルミネッセンス波長変換材料666は、橙色~赤色の広帯域光フォトミルク材料を更に含むことができる。LEDフィラメントの前面及び背面から発せられた光が実質的に同じ色であることを確実にするために、LEDフィラメント620は、示されるように、基板の裏面6120を覆うフォトルミネッセンス波長変換材料6118を更に含むことができる。フォトルミネッセンス波長変換材料6118は、フォトルミネッセンス波長変換材料666と同じフォトルミネッセンス材料を含むことができる。
【0068】
狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料
【0069】
本明細書に記載されるように、発光効率を改善するために、本発明の実施形態による白色発光デバイスは、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含む。本特許明細書では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、約620nm~約640nmのピーク発光波長(λpe)を有する光を生成するフォトルミネッセンス材料として定義され、すなわち、可視スペクトルの橙色~赤色の領域にあり、約30nm未満のFWHM発光強度である。本明細書に記載されるように、そのような狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料の使用は、眼の明所視応答が低い(約0.1)約650nmより長い波長に対するスペクトルの赤色波長領域の光強度を低減する。発光ピーク波長は、約620nm~約640nmの範囲であり得る。広帯域赤色フォトルミネッセンス(FWHM>75nm)と比較して、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料のフォトルミネッセンス強度における急激なドロップオフにより、これは、眼が非感受性である約650nmより長い波長の光強度を低減し、本発明者らは、そのような波長での光強度のこの低減が、デバイスの発光効率を改善することを理解している。
【0070】
狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、蛍光体材料及び/又は量子ドット(QD)材料を含むことができる。
【0071】
狭帯域赤色蛍光体:マンガン活性化フッ化物蛍光体
【0072】
狭帯域マンガン活性化フッ化物蛍光体の例は、マンガン活性化カリウムヘキサフルオロシリケート蛍光体(KSF)であり、一般組成式は、K
2SiF
6:Mn
4+。このような蛍光体の例は、約632nmのピーク発光波長(λ
pe)を有する、Intematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なNR6931 KSF蛍光体である。
図7は、NR6931 KSF蛍光体の発光スペクトルを示す。KSF蛍光体は、青色励起光によって励起可能であり、約631nm~約632nmのピーク発光波長(λ
pe)を有し、約5nm~約10nmのFWHM(測定方法によって異なる。すなわち、幅が単一又は二重ピークを考慮しているかどうか-
図7)を有する、赤色光を生成する。他のマンガン活性化蛍光体としては、K
2GeF
6:Mn
4+(KGF)、K
2TiF
6:Mn
4+(KTF)、K
2SnF
6:Mn
4+、Na
2TiF
6:Mn
4+、Na
2ZrF
6:Mn
4+、Cs
2SiF
6:Mn
4+、Cs
2TiF
6:Mn
4+、Rb
2SiF
6:Mn
4+、及びRb
2TiF
6:Mn
4+が挙げられる。
【0073】
狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料:赤色量子ドット(QD)
【0074】
量子ドット(QD)は、特定の波長又は波長範囲の光を放出するために放射エネルギーによって励起され得る3空間次元全てに励起子が閉じ込められている物質(例えば、半導体)の一部分である。QDによって生成される光の色は、QDのナノ結晶構造に関連付けられた量子閉じ込め効果によって可能になる。各QDのエネルギーレベルは、QDの物理的サイズに直接関係する。例えば、赤色QDなどのより大きなQDは、相対的により低いエネルギー(すなわち、相対的により長い波長)を有する光子を吸収及び放出することができる。一方、サイズが小さい青色QDは、相対的により高いエネルギー(より短い波長)の光子を吸収及び放出することができる。
【0075】
QD材料は、オニオンのような構造内に異なる材料を含有するコア/シェルナノ結晶を含むことができる。例えば、上記の例示的な材料は、コア/シェルナノ結晶のコア材料として使用することができる。ある材料内のコアナノ結晶の光学特性は、別の材料のエピタキシャルタイプのシェルを成長させることによって変更することができる。要件に応じて、コア/シェルナノ結晶は、単一のシェル又は複数のシェルを有することができる。シェル材料は、バンドギャップエンジニアリングに基づいて選択することができる。例えば、シェル材料は、コア材料よりも大きいバンドギャップを有することができ、それにより、ナノ結晶のシェルは、光学活性コアの表面をその周囲の媒体から分離することができる。カドミウム系QD、例えば、CdSe QD、の場合、コア/シェル量子ドットは、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS/ZnS、又はCdSe/ZnSe/ZnSの式を使用して合成することができる。同様に、CuInS2量子ドットの場合、コア/シェルナノ結晶は、CuInS2/ZnS、CuInS2/CdS、CuInS2/CuGaS2、CuInS2/CuGaS2/ZnSなどの式を使用して合成することができる。
【0076】
QDは、異なる材料を含むことができ、赤色QD組成物の例を表1に示す。
【表1】
【0077】
緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料
【0078】
本特許明細書では、緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料とは、約495nm~約580nmのピーク発光波長(λpe)を有する光を生成する材料を指し、これは、可視スペクトルの緑色~黄色/橙色の領域にある。好ましくは、緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料は、広い発光特性を有し、好ましくは、約100nm以上のFWHM(半値全幅)を有する。緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料は、例えば、ガーネット系無機蛍光体材料、ケイ酸塩蛍光体材料、及び酸窒化物蛍光体材料などの、任意のフォトルミネッセンス材料を含むことができる。好適な緑色~黄色の蛍光体の例を、表2に示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料は、一般組成式Y3(Al,Ga)5O12:Ce(YAG)の、例えば、527nm~543nmのピーク発光波長及び約120nmのFWHMを有する、Intematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なYAGシリーズ蛍光体などのセリウム活性化イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体を含む。本明細書において、YAG#の表記は、蛍光体タイプ「YAG」系蛍光体に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長がその後に続くものを表している。例えば、YAG535は、535nmのピーク発光波長を有するYAG蛍光体を示す。緑色~黄色のフォトルミネッセンス材料は、一般組成式(Y,Ba)3(Al,Ga)5O12:Ce(YAG)の、例えば、Intematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なGNYAGシリーズ蛍光体などのセリウム活性イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体を含み得る。いくつかの実施形態では、緑色フォトルミネッセンス材料は、一般組成式Lu3Al5O12:Ce(GAL)のアルミン酸塩(LuAG)蛍光体を含むことができる。そのような蛍光体の例としては、例えば、516nm~560nmのピーク発光波長及び約120nmのFWHMを有する、Intematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なGALシリーズの蛍光体が挙げられる。本明細書において、表記GAL#は、蛍光体タイプ(GAL)「LuAG」系蛍光体にナノメートル(#)のピーク発光波長がその後に続くものを表している。例えば、GAL520は、520nmのピーク発光波長を有するGAL蛍光体を示す。
【0080】
緑色~黄色のケイ酸塩蛍光体の例としては、一般組成式(Ba,Sr)2SiO4:Euの、例えば、507nm~570nmのピーク発光波長及び約70nm~約80nmのFWHMを有する、Intematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なG、EG、Y及びEYシリーズの蛍光体などのユーロピウム活性化オルト-ケイ酸塩蛍光体が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、緑色~黄色の蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Green-Emitting(Oxy)Nitride-Based Phosphors and Light Emitting Devices Using The Same」と題する米国特許第8,679,367号に教示されている緑色発光酸窒化物蛍光体を含むことができる。そのような緑色発光酸窒化物(ON)蛍光体は、一般組成式Eu
2+:M
2+Si
4AlO
xN
(7-2x/3)(式中、0.1≦x≦1.0であり、M
2+は、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnからなる群から選択される1つ以上の二価金属である)を有することができる。本明細書において、ON#の表記は、蛍光体タイプ「酸窒化物」に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長(λ
pe)がその後に続くものを表している。例えば、ON495は、495nmのピーク発光波長を有する緑色酸窒化物蛍光体を示す。
【表2】
【0082】
橙色~赤色のフォトルミネッセンス材料
【0083】
本明細書において、橙色~赤色のフォトルミネッセンス材料とは、約580nm~約670nmのピーク発光波長(λpe)を有する光を生成する材料を指し、これは可視スペクトルの橙色/黄色~赤色領域にある。橙色~赤色のフォトルミネッセンス材料は、青色光によって励起可能であり、例えば、ユーロピウム活性化窒化ケイ素系蛍光体、a-SiAlON、グループIIA/IIBのセレン化物硫化物系蛍光体又はケイ酸塩系蛍光体などの広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含むことができる、任意の橙色~赤色のフォトルミネッセンス材料、典型的には蛍光体、を含むことができる。橙色~赤色の蛍光体の例を表3に示す。
【0084】
いくつかの実施形態では、ユーロピウム活性化窒化ケイ素系蛍光体は、カルシウムアルミニウム窒化ケイ素蛍光体(Calcium Aluminum Silicon Nitride phosphor、CASN)を含み、一般式は、CaAlSiN3:Eu2+である。CASN蛍光体は、ストロンチウム(Sr)、一般式(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+などの他の元素でドープすることができる。本明細書において、CASN#の表記は、蛍光体タイプ「CASN」に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長(λpe)がその後に続くものを表している。例えば、CASN615は、615nmのピーク発光波長を有する橙色~赤色のCASN蛍光体を示す。
【0085】
一実施形態では、橙色~赤色の蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Red-Emitting Nitride-Based Calcium-Stabilized Phosphors」と題する米国特許第8,597,545号に教示されているような橙色~赤色発光蛍光体を含むことができる。このような赤色発光蛍光体は、化学式MaSrbSicAldNeEuf(式中、MはCaであり、0.1≦a≦0.4であり、1.5<b<2.5であり、4.0≦c≦5.0であり、0.1≦d≦0.15であり、7.5<e<8.5であり、0<f<0.1であり、a+b+f>2+d/vであり、vは、Mの価数である)で表される窒化物系組成物を含む。
【0086】
代替的に、橙色~赤色の蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Red-Emitting Nitride-Based Phosphors」と題する米国特許第8,663,502号に教示されているような橙色~赤色発光窒化物蛍光体を含むことができる。そのような赤色発光蛍光体は、化学式M(x/v)M’2Si5-xAlxN8:RE(式中、Mは、原子価vを有する少なくとも1つの一価、二価又は三価の金属であり、M’は、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnのうちの少なくとも1つであり、REは、Eu、Ce、Tb、Pr、及びMnのうちの少なくとも1つであり、xは0.1≦x<0.4を満たし、赤色発光蛍光体は、M’2Si5N8:REの一般的な結晶構造を有し、Alは、一般的な結晶構造内のSiを代用し、Mは、実質的に格子間で一般的な結晶構造内に位置している)によって表される窒化物系組成物を含む。そのような蛍光体の一例は、610nmのピーク発光波長を有するIntematix Corporation,Fremont California,USAから入手可能なXR610赤色窒化物蛍光体である。
【0087】
橙色~赤色の蛍光体はまた、グループIIA/IIBのセレン化物硫化物系蛍光体も含むことができる。グループIIA/IIBのセレン化物硫化物系蛍光体材料の第1の例は、組成式MSe1-xSx:Eu(式中、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba及びZnのうちの少なくとも1つであり、0<×<1.0である)を有する。この蛍光体材料の具体例は、CSS蛍光体(CaSe1-xSx:Eu)である。CSS蛍光体の詳細は、2016年9月30日に出願された同時係属中の米国特許出願公開第2017/0145309号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。米国特許出願公開第2017/0145309号に記載されているCSS橙色~赤色蛍光体が、本発明で使用されることができる。CSS蛍光体の発光ピーク波長は、組成物中のS/Se比を変更することによって600nm~650nmの間で調整されることができ、FWHMが、約48nm~約60nmの範囲の狭帯域赤色発光スペクトルを示す(より長いピーク発光波長は、通常、より大きいFWHM値を有する)。本明細書において、CSS#の表記は、蛍光体タイプ「CSS」に、ナノメートルでのピーク発光波長(#)がその後に続くものを表している。例えば、CSS615は、615nmのピーク発光波長を有するCSS蛍光体を示す。信頼性を改善するために、CSS蛍光体粒子は、1つ以上の酸化物、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ホウ素(B2O3)又は酸化クロム(CrO)、でコーティングされ得る。代替的に、及び/又は加えて、狭帯域赤色蛍光体粒子は、1つ以上のフッ化物、例えば、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)又はフッ化チタン(TiF4)、でコーティングされ得る。コーティングは、単層、又は前述のコーティングの組み合わせを有する複数の層であり得る。組み合わせコーティングは、第1の材料と第2の材料との間の急激な移行を有するコーティングであってもよく、又は第1の材料から第2の材料への漸進的/滑らかな移行があり、したがってコーティングの厚さを通して変化する混合組成物を有するゾーンを形成するコーティングであってもよい。
【0088】
いつかの実施形態では、橙色~赤色の蛍光体は、その全体が本明細書に組み込まれている「Silicate-Based Orange Phosphors」と題する米国特許第7,655,156号に教示されているような橙色発光ケイ酸塩系蛍光体を含むことができる。このような橙色発光ケイ酸塩系蛍光体は、一般組成式(Sr
1-xM
x)
yEu
zSiO
5(式中、0<x≦0.5、2.6≦y≦3.3、0.001≦z≦0.5であり、Mは、Ba、Mg、Ca、及びZnからなる群から選択される1つ以上の二価金属である)を有することができる。本明細書において、O#の表記は、蛍光体タイプ「橙色ケイ酸塩」に、ナノメートル(#)でのピーク発光波長(λ
pe)がその後に続くものを表している。例えば、O600は、600nmのピーク発光波長を有する橙色ケイ酸塩系蛍光体を示す。
【表3】
【0089】
1800K~6800Kの白色発光デバイス
【0090】
上で説明されるように、本発明の実施形態は、約650nmより長い波長についてスペクトルの赤色部分に対応する波長での光強度を低減するために狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含めることによって白色発光デバイスの発光効率を改善することに関係する。本発明の実施形態は加えて、特に、排他的ではないが、例えば、CAF(概日作用因子)及びメラノピック応答(MR)によって測定されるような人間の非視覚的知覚が最も影響を受けると考えられている可視スペクトルの青色~シアン(430nm~520nm)の領域において、自然光に密接に相似する白色光を生成する白色発光デバイスに関係することができる。
【0091】
パッケージ化された白色発光デバイス-試験方法
【0092】
パッケージ化された試験方法は、積分球において、パッケージ化された白色発光デバイス310a(
図3a)の総発光を測定することを含む。デバイスは、温度制御されたプレート上に取り付けられ、25℃(C-コールド)及び85℃(H-ホット)の温度でのデバイスの動作について測定が行われる。
【0093】
本発明によるパッケージ化された白色発光デバイスは各々、3つの1133(11ミル×33mm)LEDチップを含有する、2835-PCT(ポリシクロヘキシレン-ジメチレンテレフタレート)SMDパッケージ(2.8mm×3.5mm)SMDパッケージを備える。
【0094】
本明細書では、白色発光デバイスを示すために次の命名法が使用される:Dev.#Aは、異なる主波長(λ
d1A=441nm、λ
d2A=456nm及びλ
d3A=469nm)の3つのLEDチップを備える「A」で示される第1の広帯域固体励起源を備える、本発明による白色発光デバイスを示し、Dev.#Bは、主波長(λ
d1B=446nm、λ
d2B=456nm及びλ
d3B=469nm)の3つのLEDチップを備える第2の広帯域固体励起源を備える、本発明による白色発光デバイスを示し、Com.#は、各励起源が、単一の主波長λ
dの1つ以上の固体光源(狭帯域励起源)を備える比較発光デバイスを示す。
図8は、以下の発光スペクトル、強度対波長(nm)である:(i)「A」(実線)で示される第1の広帯域固体励起源、及び(ii)「B」(点線)で示される第2の広帯域固体励起源。図から見ることができるように、LEDチップの組み合わせは、約40nmのFWHMを有する広帯域青色励起光を生成する。
【0095】
2700Kフルスペクトル白色発光デバイス-試験データ
【0096】
表4、表5、及び表6は、2700K白色発光デバイスDev.1A及びDev.1B並びに既知の2700K CRI90比較デバイスCom.1の測定された光学試験データを表にしたものである。表7及び表8は、Dev.1Bの測定されたIEC TM-30-15光学試験データを表にしたものである。
【0097】
上で説明されるように、発光デバイスDev.1Aは、主波長λd1A=441nm、λd2A=456nm、及びλd3A=469nmの3つのLEDチップを含む2835SMDパッケージを備え、一方、デバイスDev.1Bは、主波長λd1B=446nm、λd2B=456nm、及びλd3B=469nmの3つのLEDチップを備える。Dev.1A及びDev.1Bは各々、GAL520(Lu3-x(Al1-yGay)5O12:Cex、λpe=520nm)、GYAG543((Y,Ga)3-x(Al1-yGay)5O12:Cex、λpe=543nm)、CASN615(Ca1-xSrxAlSiN3:Eu、λpe=615nm、FWHM≒74~75nm)、及びKSF(K2SiF6:Mn4+、λpe=630~632nm、FWHM≒5~10nm)蛍光体、の同じ組み合わせを含む。比較デバイスCom.1は、狭帯域励起源を利用し、90の公称CRI Raを有する既知の2835パッケージ化された白色発光デバイスを備え、一方、比較デバイスCom.2は、狭帯域励起源を利用し、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料(KSF)を含む2835パッケージ化されたCRI Ra90白色発光デバイスを備える。
【0098】
図9aは、(A)(i)25℃で動作するDev.1A(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.1A(太い実線)、(iii)名目上Dev.1Aと同じ2700KのCCTの黒体曲線bbc(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
図9bは、25℃で動作するDev.1Aについての、相対強度スペクトル、I
rel.(%)対波長(nm)、を示す。
図9cは、380nm~540nmの波長についての、
図9aの拡大された部分である。
図9dは、(A)(i)85℃で動作するDev.1A(太い実線)、(ii)Com.1(太い破線)、(iii)名目上Dev.1A及びCom.1と同じである2700KのCCTの黒体曲線bbc(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)概日感度c(λ)(点線)、及び(ii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての、感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
図10は、(A)(i)25℃で動作するDev.1B(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.1B(太い実線)(iii)名目上Dev.1Bと同じ2700KのCCTの黒体曲線(bbc)-プランキアンスペクトル(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。
図11は、(i)85℃で動作するDev.1A(太い実線)、(ii)Com.2(点線)、及び(iii)名目上Dev.1Aと同じである2700KのCCTの黒体曲線(bbc)-プランキアンスペクトル(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、を示す。Dev.1A、Com 1、Com 2、及びbbcの強度スペクトルの意味のある比較を行うために、各々CIE 1931 XYZ相対輝度Y=100を有するように、各々が正規化されている。強度データは、観察者の明所視応答(感度)を考慮した標準的な観察者のCIE 1931の明所視比視感度関数y(λ)を使用して正規化されている。
図9a、
図9b、
図9c、
図10、及び
図11のプランキアンスペクトル(曲線)又は黒体曲線は、所与の色温度(CCT)の100に等しい平均CRI Raのスペクトルを表す。したがって、所与の色温度の白色発光デバイスが可能な限り最高の演色性を有するためには、その発光スペクトルは、同じ色温度の黒体スペクトルと可能な限り密接に一致するべきである。
【0099】
図9aを参照すると、Dev.1Aが、25℃(細い実線)及び85℃(太い実線)の動作温度で、そのスペクトルが、約420nm~約635nmの波長範囲にわたってbbc(太い破線)のスペクトルに概して相似する形態(bbcを超える約610nm及び630nmでのピークを無視して)を有する、白色光を生成することが観察される。スペクトルはまた、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料のピーク発光波長λ
pe(
図9aの強度スケールのために見えない)から始まる橙色~赤色の領域に、概して976で示される、テールを提示する。テールは、ピーク発光強度からbbcの下方への光強度の急速な減少(低下)を表す。
図9bは、bbcの正規化された強度(I
bbc)に対するデバイスの正規化された強度(I
Dev.)である、相対強度率(%)(I
rel.)スペクトルを示す。したがって、この関係は、I
rel.=100x(I
Dev./I
bbc)として定義することができ、波長に対するbbcからのデバイスの強度の偏差率(%)を表す。相対強度率(%)が100%に等しい波長については、偏差がないという点で、bbcとの完全な相関に対応することが理解されよう。例えば、眼の明所視応答が最大である500nm~600nmの波長については、相対強度は80%~120%(すなわち、±20%偏差)の範囲であり、デバイスの強度の同じ色温度のbbcの強度との密接な相関(相似性)を示すことを見ることができる。
図9bからわかるように、スペクトルの橙色~赤色領域におけるテール976の相対強度は、約655nmの波長λ
125%で25%に減少する。テールがこの値にどれだけ急速に落ちるかは、主として、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料のピーク発光波長λ
pe及びFWHMによって判定される。
【0100】
図9cを参照すると、概日作用スペクトル(CAS)は、スペクトル概日効率又は感度関数c(λ)とも称され、光に対する人間の非視覚的相対感度を表す。c(λ)の最大感度は、460nmの波長で発生する。CASは、スペクトルの430nm~520nmの部分が、メラトニン分泌を調節するための概日入力を提供するための最も重要な波長であることを示唆している。
図9Cは、本明細書で使用される様々なパラメータを定義し、本発明の原理を例解する。
【0101】
Com.1のスペクトルを黒体曲線(bbc)と視覚的に比較すると、スペクトルは、狭帯域励起源によって生成された励起光に対応する単一のピーク980(455nm)を示し、その強度はbbcの強度から著しく逸脱している(すなわち、ピーク強度は、455nmの同じ波長でのbbcの強度よりも非常に高い)ことに留意されたい。比較において、Dev.1Aのスペクトルは、広帯域励起源によって生成された3つの青色発光(λd1A、λd2A、λd3A)に起因する3つのピーク982(440nm)、984(450nm)及び986を提示し、Com.1と比較して、その強度がずれているのは、bbcの強度からわずかにずれているだけである(すなわち、ピーク強度が、同じ波長でbbcよりわずかに高いか、又はわずかに低い)。ピーク980は、460nmの波長にあるCASの最大感度に近い約455nmの波長で発生することに更に留意されたい。更に、Com.1のスペクトルはトラフ(谷)988を提示し、その最小強度は、bbcの強度から著しく逸脱する(すなわち、トラフ強度はbbcよりもはるかに低い)ことに留意されたい。比較において、Dev.1Aのスペクトルは、3つのトラフ(谷又は極小値)990(748nm)及び992(462nm)並びに994(480nm)を提示し、その最小強度は、bbcの強度からわずかにずれているだけである(すなわち、トラフ強度は、bbcよりわずかに低い)。図から見ることができるように、bbcからのDev.1Aの発光ピーク982、984及び986のより小さい偏差(Com.1のピーク980と比較して)、及びDev.1Aのトラフ990、992及び994のより小さい偏差(Com.1のトラフ994と比較して)は、Dev.1Aのスペクトルが、430nm~520nm(青色~シアン)の波長範囲にわたってbbc(プランキアンスペクトル)により密接に相似することを示す。Dev.1Aのスペクトルは、CAF(概日作用因子)及びMR(メラノピック応答)によって測定された人間の非視覚的知覚が最も影響を受けるこの波長領域にわって自然光により密接に相似し、これは人間の健康な状態にとって有益であり得ることが更に理解されるであろう。
【0102】
スペクトルがbbcにどの程度密接に相似するかを定量化するためのメトリクスは、同じ相関色温度のbbcの光の強度からの最大(最も大きい)強度偏差率(%)(I
maxdev)である。すなわち、約430nm~520nmの波長範囲にわたって、I
maxdevは、スペクトルの強度とbbcの強度の間の最大(最も大きい)強度差率(%)である。最大偏差は、正(スペクトル強度がbbcよりも大きいピーク又はトラフなど)又は負(スペクトル強度がbbcよりも小さいピーク又はトラフなど)であり得る。スペクトルの意味のある比較を行うために、各スペクトルは、同じCIE 1931 XYZ相対輝度Yを有するように正規化されている。スペクトルは、標準的な観測者の明所視比視感度関数y(λ)(明所視又は視覚発光効率関数v(λ)と称されることもある)を使用して正規化され、これは、観察者の明所視(視覚)応答を考慮に入れており、同じ相関色温度に対するものである。したがって、I
maxdevは、約430nm~520nmの波長範囲にわたるスペクトルの正規化された強度とbbcの正規化された強度との間の最大(最も大きい)強度差率(%)である。I
maxdevは、次のように定義される。
【数1】
【0103】
例えば、
図9dを参照すると、Com.1Aの場合、bbcからのスペクトルの最大偏差は、波長λ
maxdev≒450nmでのピーク980に対応する。λ
maxdevでのスペクトルの強度は996で示され、λ
maxdevでのbbcの強度は998で示される。したがって、上記の計算を使用して、約430nm~約520nmの波長範囲にわたって、Com.1のスペクトルは、95%の最大強度偏差率(%)I
maxdevを有し、すなわち、最大強度偏差率(%)では、波長λ
maxdevでのCom.1の正規化強度は、同じ波長でのbbcの正規化強度の195%である。対照的に、bbcからのDev.1Aのスペクトルの最大偏差は、波長λ
maxdev≒477nmでのトラフ988に対応する(
図9c)。上記の計算を使用して、約430nm~約520nmの波長範囲にわたって、bbcからのスペクトルの最大強度偏差率(%)I
maxdevは約38%であり、すなわち、最大強度偏差率(%)では、発光スペクトル波長λ
maxdevの正規化強度は、同じ波長でのbbcの正規化強度の62%である。
【0104】
狭帯域励起源を備える既知のデバイス(例えば、Com.1)と比較した本発明によるDev.1A(広帯域励起源を備える)は、bbcと比較してスペクトルの最大強度偏差率(%)が著しく小さい白色光を生成し、これは、430nm~520nm(青色~シアン)の波長範囲にわたって、発光スペクトルがプランキアンスペクトル(自然太陽光により密接に相似する)により密接に相似することをもたらすことに留意されたい。
【0105】
スペクトルのシアン波長領域におけるトラフを少なくとも部分的に充填することによって、強度スペクトルを変更するための広帯域青色励起源の使用は、青色領域のピークオーバーシュートを低減し、シアン波長領域における光強度のこの変化が、本発明のデバイスの優れた演色特性を説明すると考えられる。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0106】
表4、表5、及び表6を参照すると、25℃の動作温度(C-コールド)で、デバイスDevs.1A及び1Bは、少なくとも130lm/W(それぞれ135lm/W及び132lm/W)の発光効率を有し、平均演色評価数CRI Raが約93(それぞれ92.4及び94.4)であり、CRI R1~R7及びR11~R15が各々約90以上(それぞれ91.7~96.1及び93.4~98.5)であり、一方CRI R8(「赤紫色」に対応する)が50より大きく90より小さい(それぞれ83.2及び86.8)であり、一方CRI R9(「飽和赤色」に対応する)が50より大きく90より小さい(それぞれ56.2及び65.0)であり、CRI R10(「飽和黄色」に対応する)が50より大きく90より小さい(それぞれ82.8及び86.7)白色光を生成することに留意されたい。85℃の動作温度(H-ホット)で動作するとき、デバイスDev.1A及びDev.1Bの発光効率は、約120lm/W(それぞれ120lm/W及び118lm/W)に低下し、平均演色評価数CRI Raが約95(それぞれ95.1及び96.3)であり、CRI R1~R7及びR10~R15が各々90以上(それぞれ89.4~99.1及び93.8~99.8)であり、一方CRI R8が72より大きく90より小さく(それぞれ85.6及び88.9)、一方CRI R9が50より大きく90より小さい(それぞれ、64.1及び72.3)白色光を生成する。
【0107】
比較すると、デバイスCom.1は、ただ123lm/Wだけの発光効率を有し、約91(91.2)のCRI Raを有し、ここでCRI R1~CRI R7、R11、R13、及びR14は約90以上(90.7~98.3)であり、一方CRI R8は、72より大きく90より小さく(80.7)、一方CRI R9は、50より大きく90より小さい(53.7)白色光を生成する。更に、デバイスDevs.1A及び1Bによって生成される光の質は、Com.1と実質的に同じであるが、発光効率は実質的に約8%だけ(123lm/Wから少なくとも130lm/Wに)増加することに留意されたい。発光効率の増加は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、この特定の例ではKSFの使用に起因すると考えられている。試験は、KGF及びKTF又はそれらの組み合わせなどの他の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を使用するとき、発光効率の同様の増加が期待されることを示している。
【0108】
表7及び表8を参照すると、IES TMS-30-15メトリクスの観点から、Dev.1Bは、101の色域指数Rg及び93の忠実度指数Rfを有する白色光を生成する。更に、色相角ビンh1~h12及びh14~h16に対する局所色忠実度(Rf、hj)が約90以上であるのに対し、色相角ビンh13に対するRf、hjが86であることに留意されたい。
【0109】
図11は、狭帯域励起源を利用する比較デバイス(Com.2)と比較した、広帯域励起源(Dev.1A)を使用することの効果を視覚的に例解する。Dev.1Aは、ピーク1180及びトラフ1188に対応する顕著な偏差を提示するCom.2と比較して、420nm~530nmの波長範囲においてbbcに密接に相似する白色光を生成することが図から明らかであろう。
【0110】
5000Kフルスペクトル白色発光デバイス-試験データ
【0111】
表9、表10及び表11は、5000K白色発光デバイスDev.2A、Dev.2B、既知の5000KCRI90の比較デバイスCom.3及び比較デバイスCom.4について測定された光学試験データを表にしている。表12及び表13は、Dev.2Aの測定されたIEC TM-30-15光学試験データを表にしている。
【0112】
上で説明されるように、発光デバイスDev.2Aは、主波長λd1a=441nm、λd2A=456nm及びλd3A=469nmの3つのLEDチップを含む2835SMDパッケージを備え、一方、デバイスDev.2Bは、主波長λd1B=446nm、λd2B=456nm及びλd3B=469nmの3つのLEDチップを備える。デバイス2A及び2Bは各々、GAL520(Lu3-x(Al1-yGay)5O12:Cex,λpe=520nm)、CASN615(Ca1-xSrxAlSiN3:Eu、λpe=615nm、FWHM≒74~75nm)、及びKSF(K2SiF6:Mn4+、λpe=630~632nm、FWHM≒5~10nm)蛍光体、の同じ組み合わせを含む。比較デバイスCom.3は、狭帯域励起源を利用し、90の公称平均CRI Raを有する、既知の2835パッケージ化された白色発光デバイスを備える。比較デバイスCom.4は、広帯域励起源を利用し、狭帯域フォトルミネッセンス材料ではなく広帯域の橙色~赤色フォトルミネッセンス材料を有する、2835パッケージ化された白色発光デバイスを備える。
【0113】
図12は、(A)(i)25℃で動作するDev.2A(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.2A(太い実線)、(iii)名目上Dev.2Aと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。スペクトルの分析は、波長範囲430nm~520nm(青色~シアン)にわたって、デバイスDev.2Aによって放出された光の正規化強度と、同じ相関色温度(5000K)のCIE標準光源Dの光の正規化強度との間に約-14%の最大正規化強度偏差率(%)I
maxdevがあることを示している。これは、狭帯域励起光源を利用する既知のデバイスとは対照的であり、それは、正規化強度において約115%の最大偏差率(%)I
maxdevを提示する白色光を生成する。デバイスDev.2Aのスペクトルの橙色~赤色領域におけるテール1276の相対強度は、Dev.1Aと同じ約655nmの波長λ
125%で25%に減少する。
【0114】
図13は、(A)(i)25℃で動作するDev.2B(細い実線)、(ii)85℃で動作するDev.2B(太い実線)、(iii)名目上Dev.2Bと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。スペクトルの分析は、波長範囲430nm~520nm(青色~シアン)にわたって、デバイスDev.2Bによって放出された光の正規化強度と、同じ相関色温度(5000K)のCIE標準光源Dの光の正規化強度との間に約14%の最大正規化強度偏差率(%)I
maxdevがあることを示している。これは、狭帯域励起光源を利用する既知のデバイスとは対照的であり、それは、約115%の最大正規化強度偏差率(%)を提示する白色光を生成する。Dev.2Bのスペクトルの橙色~赤色領域におけるテール1376の相対強度は、Dev.1Bと同じ約655nmの波長λ
I25%で25%に減少する。
【0115】
表9、表10、及び表11を参照すると、デバイスの2A及び2Bは、25℃(C)で動作するとき、少なくとも135lm/W(それぞれ138lm/W及び139lm/W)の発光効率を有し、約98(それぞれ97.8及び98.4)の平均演色評価数CRI Raを有し、CRI R1~R15の各々が、95以上(それぞれ95.9~98.6及び96.4~99.0)である白色光を生成することに留意されたい。85℃(H-ホット)の動作温度で動作するとき、デバイスDev.2A及びDev.2Bの発光効率は、少なくとも120lm/W(それぞれ122lm/W及び123lm/W)に低下し、それらは、約92(それぞれ92.2及び93.2)の平均演色評価数CRI Raを有し、Dev.1Aについては、CRI R1~R8及びR11~R15の各々が少なくとも約90以上(89.2~97.4)であり、Dev.1Bについては、CRI R1~R8及びR10~R15の各々が、少なくとも約90以上(90.3~97.4)であり、一方、CRI R9は72より大きく90より小さく(それぞれ74.0及び77.7)、Dev.2AのCRI R10は約88(88.1)である白色光を生成する。
【0116】
比較すると、25℃で動作する既知の比較デバイスCom.3は、135lm/Wの発光効率を有し、約94のCRI Raを有し、CRI R1~CRI R8、CRI R10~CRI R11及びCRI R13~CRI R15は約90以上(90.5~98.3)であり、一方、CRI R9は約87(87.1)であり、CRI R12は、約65(64.6)である白色光を生成する。更に、Dev.2A及びDev.2Bによって生成される光の品質は、既知のデバイスCom.3のものよりも優れているだけではなく、発光効率が約2%だけ(135lm/Wから138lm/Wに)増加することに留意されたい。発光効率の増加は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料、この特定の例ではKSFの使用に起因すると考えられている。試験は、KGF及びKTF又はそれらの組み合わせなどの他の狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を使用するとき、発光効率の同様の増加が期待されることを示している。
【0117】
表11及び表12を参照すると、IES TMS-30-15メトリクスの観点から、Dev.2Aは、101の色域指数Rg及び93の忠実度指数Rfを有する白色光を生成する。更に、色相角ビンh1~h16に対する局所色忠実度(Rf,hj)は、約90以上(89~95)であることに留意されたい。
【0118】
図14は、狭帯域励起源を使用する比較デバイス(Com.3)と比較して、広帯域励起源(Dev.2A)を使用することの効果を視覚的に例解する。Dev.2Aが、ピーク1480及びトラフ1488に対応する顕著な偏差を提示するCom.3と比較して、420nm~530nmの波長範囲においてbbcに密接に相似する白色光を生成することが、図から明らかであろう。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0119】
デバイスDev.1A及び1Bのように、デバイスDev.2A及びDev.2Bの各々は、CAF(概日作用因子)又はメラノピック比(Melanopic Ratio、MR)によって測定された人間の非視覚的知覚が最も影響を受けるこの波長領域430nm~520nmにわたって自然光によりより密接に相似する白色光を生成し、これは人間の健康な状態に有益であり得ることが理解されよう。
【0120】
図15は、(i)85℃で動作するDev.2B(実線)、(ii)85℃で動作するCom.4(点線)、及び(iii)名目上Dev.2Bと同じである5000KのCCTのCIE標準光源D50(太い破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、を示す。この図は、スペクトルの赤色波長領域における光強度(フォトンカウント)を低減し、それによって発光効率を改善するために、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料(Com.4)を使用することと比較して、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料(Dev.2B)を使用することの効果を視覚的に例解する。上で説明されるように、比較デバイスCom.4は、広帯域励起源を利用し、狭帯域フォトルミネッセンス材料ではなく、広帯域の橙色~赤色フォトルミネッセンス材料(CASN)を有する、2835パッケージ化された白色発光デバイスを備える。
【0121】
更に
図15を参照すると、点線(Com.4)と実線(Dev.2B)との間の1599で示されたクロスハッチングエリアは、650nm~780nmの橙色~赤色波長領域における光の強度(フォトンカウント)の低減を表す。
図15に示すように、光強度におけるこの低減1599は、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料(FWHM≒70nm)のテール1579の強度と比較して強度が急速に減少(低下)するテール1576を有する狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料(FWHM≦10nm)を使用した結果である。上で説明されるように、Dev.2Aのスペクトルの橙色~赤色領域におけるテール1576の相対強度は、約655nmの波長λ
I25%で25%に減少する。比較すると、Com.4のスペクトルの橙色~赤色領域におけるテール1579の相対強度は、約720nmの波長λ
I25%で25%に減少する。
【0122】
表9~表11を参照すると、Com.4は、25℃(C)の動作温度で115lm/Wの発光効率及び85℃(H)の動作温度で105lm/Wの発光効率を有するが、Dev.2Bは、25℃(C)の動作温度で139lm/Wの発光効率及び85℃(H)の動作温度で123lm/Wの発光効率を有することに留意されたい。Com.4とDev.2Bとの間の約20%の発光効率の増加は、約650nmより長い波長に対するスペクトルの赤色領域における光強度を低減させる狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を使用することに起因すると仮定される。更に、発光効率における実質的な増加(約20%)がある一方で、平均演色評価数CRI Ra、98.2(C)→98.4(C)及び97.5(H)→93.2(H)並びにCIE演色CRI R1~R9によって証明されるように、Com.4とDev.2Bとの間の光品質への影響はごくわずかである。
図15から、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料(KSF)に対応する約613nm及び632nmでの大きなピークが無視されるとき、Dev.2Bによって生成される白色光は、420nm~約650nmの波長に対してCIE標準光源D50に密接に相似することを更に留意されたい。
【0123】
LEDフィラメント白色発光デバイス-試験方法
【0124】
LEDフィラメント試験方法は、積分球において、LEDフィラメント白色発光デバイス(例えば、
図6a及び
図6b)の総発光を測定することを含む。LEDフィラメントの両面から光が発生するため、温度制御プレートを使用してLEDフィラメントの温度を制御することは非実用的である。代わりに、デバイスがオンになった時点(I-瞬時)及びそれが安定した動作状態(S-安定)に達した後(典型的には数分)で測定を行った。
【0125】
本発明によるLEDフィラメント白色発光デバイス(Dev.3)は、公称2Wデバイスであり、前面に実装された25個の直列接続された1133(11ミル×33ミル)の青色狭帯域LEDダイを有する透過率が約40%の52mm×4mmの多孔質シリカ基板を備える。25個のLEDダイは、主波長λd1=445nmの9個のLEDダイ、主波長λd2=455nmの8個のLEDダイ、及び主波長λd3=465nmの8個のLEDダイで構成されている。LEDダイは、主波長によって順次基板上に物理的に配置され、例えば、λd1、λd2、λd3、λd1、λd2、λd3...λd1の順である。LEDフィラメントで使用されるフォトルミネッセンス材料(蛍光体)は、Intematix Corporation製のKSF蛍光体(K2SiF6:Mn4+)、CASN蛍光体(Ca1-xSrxAlSiN3:Eu)、緑色YAG蛍光体(Y,Ba)3-x(Al1-yGay)5O12:Cexである。
【0126】
赤色及び緑色の蛍光体は、シリコーン光学封止材内で混合され、混合物を基板の前面及び背面の上に分注した。
【0127】
実験データ-LEDフィラメント
【0128】
表14、表15及び表16は、4300KLEDフィラメント白色発光デバイスDev.3について測定された光学試験データを表にしたものである。表17は、Dev.3について測定されたIEC TM-30-15光学試験データを表にしたものである。
【0129】
LEDフィラメント白色発光デバイス(Dev.3)は、3400Kの目標相関色温度(CCT)及び95の目標平均演色評価数CRI Raを有する白色光を生成することを意図した2Wデバイスである。
【0130】
Dev.3で使用されたフォトルミネッセンス材料(蛍光体)は、Intematix Corporation製のKSF蛍光体(K
2SiF
6:Mn
4+)、CASN蛍光体(Ca
1-xSr
xAlSiN
3:Eu)、及び緑色YAG蛍光体である。
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0131】
図16は、(A)(i)安定した動作状態に達したLED-フィラメントDev.3(実線)、及び(ii)黒体曲線(bbc)-Dev.3と同じである3417KのCCTのプランキアンスペクトル(破線)、についての強度スペクトル、正規化強度I対波長(nm)、並びに(B)(i)青色感度b(λ)(細い破線)、(ii)概日感度c(λ)(点線)、及び(iii)メラノピック感度m(λ)(一点鎖線)、についての感度スペクトル、相対量子感度対波長(nm)、を示す。スペクトルの分析は、波長範囲430nm~520nm(青色~シアン)にわたって安定した動作状態(S)で、デバイスDev.3によって放出された光の正規化強度と、同じ相関色温度(4317K)のプランキアンスペクトルの光の正規化強度との間に約46%の最大正規化強度偏差率(%)I
maxdevがあることを示している。これは、狭帯域励起光源を利用する既知のLEDフィラメントとは対照的であり、それは、100%を超える正規化された強度の最大偏差率(%)I
maxdevを提示する白色光を生成する。Dev.3のスペクトルの橙色~赤色領域におけるテール1676の相対強度は、約655nmの波長λ
I25%で25%に減少する。
【0132】
表14、表15、及び表16参照すると、オンしたとき(瞬時-I)、デバイスDev.3は、180lm/Wの発光効率を有し、96.8の平均演色評価数CRI Raを有し、CRI R1~R15が89.3~98.3である白色光を生成することに留意されたい。安定した動作状態(S)で動作しているとき、デバイスDev.3の発光効率は、200lm/Wに増加し、96.7の平均演色評価数CRI Raを有し、CRI R1~R15の各々が少なくとも90以上(91.4~98.9)である白色光を生成する。
【0133】
表17参照すると、IES TMS-30-15メトリクスの観点から、Dev.3は、101の色域指数Rg及び93の忠実度指数Rfを有する白色光を生成する。
【0134】
上で説明されるように、本発明の特定の利点は、本発明の実施形態によるフルスペクトル白色発光デバイスが、CAF(概日作用因子)又はメラノピック比(MR)によって測定された人間の非視覚的知覚が最も影響を受ける青色~シアン(430nm~520nm)の領域において自然光に密接に相似するフルスペクトル光を生成することができることである。青色光刺激及びその概日リズムへの影響に関して、照明業界では多くの考察があった。光源内の青色~シアンの光の量は、概日サイクルに影響を与える可能性があるメラトニン分泌に影響を与える。高レベルの青色~シアンの光が、メラトニンの分泌を抑制し、人体を付勢する。低レベルの青色光は、メラトニン分泌を抑制せず、人体を弛緩させる。この非視覚効果を推定するために使用される1つのメトリクスは、CAF概日作用因子であり、これは、典型的には、一日を通して青色の含有量によって変調される。昼間の時間には、太陽が高いCCTを有し、青色~シアンの含有量が高くなる。日の出と日の入りは、低いCCTを有し、青色~シアンの含有量が低くなる。異なるCCTでの自然光のCAF値は、人間の感情、健康、又は健康な状態が影響を受ける青色~シアンの領域の自然光からの照明偏差の良好な尺度である。
【0135】
要約すると、広帯域固体励起源を備える本発明による発光デバイスは、(i)25℃の動作温度で少なくとも130lm/Wの発光効率、(ii)約430nm~約520nmの波長範囲にわたって、黒体曲線又は同じ相関色温度のCIE標準光源Dの光の強度からの白色光の最大強度偏差率(%)が、約60%、50%、40%、30%、20%、又は15%未満である、(iii)420nm~650nmの波長について黒体曲線/CIE標準光源Dに密接に相似するスペクトル、(iv)黒体曲線/CIE標準光源Dの20%又は10%以内であるCAFを有するスペクトル、(v)黒体曲線又は同じ相関色温度のCIE標準光源Dの強度に対する相対強度が、約635nm~約675nm、約645nm~約665nm、又は約655nmである波長で25%に減少する、橙色~赤色波長領域におけるテール、(vi)CRI R9及び/又はCRI R8が少なくとも50及び/又は90未満、(vii)CRI Raが90以上、CRI R1~CRI R8及びCRI R10~CRI R15が90以上、及び50より大きいCRI R9を有するスペクトル、(viii)CRI Raが90以上及びCRI R1~CRI R15の各々が90以上を有するスペクトル、及び(ix)少なくとも98のIECTM-30色域指数Rg及び/又は少なくとも90のIEC TM-30忠実度指数Rf、色相角ビンh1~h12及びh13~h16に対して少なくとも90、並びに色相角ビンh13に対して少なくとも85のIEC TM-30局所色忠実度Rf,hj、を有するスペクトル、のうちの1つ以上を有する、1800Kから6800Kの範囲の色温度を有する白色光を生成することを特徴とするフルスペクトル白色発光デバイスの実現を可能にすることが理解されよう。
【0136】
本明細書及び特許請求の範囲の両方で、本文書で使用されるように、並びに当該技術分野で慣習的に使用されるように、「実質的に」、「およそ」という単語、及び同様の近似用語は、物理的世界において任意の機構又は構造を製造及び動作させる上で避けられない部分である製造公差、製造変動、及び製造不正確さを説明するために使用される。
【0137】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができ、同等物を使用することができることは、当業者には明らかであろう。本発明は、構造、構成要素の配置、及び/又は上記の説明に記載されるか、又は図面に例解される方法の詳細に限定されないことを理解されたい。更に、図は単なる例示であり、限定するものではない。トピックの見出し及びサブ見出しは、読者の便宜のためだけのものである。それらは、任意の実質的な有意性、意味又は解釈を有すると解釈されるべきではなく、かつ解釈することはできず、任意の特定のトピックに関連する情報の全てが、任意の特定の見出し又はサブ見出しの下に見出されるか、又はそれに限定されるべきであることを示すものと見なされるべきではなく、かつ見なすことはできない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲及びそれらの法的等価物に従う場合を除いて、制限又は限定されるべきではない。本発明は、その特定の実施形態を参照して具体的に説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。