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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】新規のDNAアプタマー及びこれの用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20240617BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240617BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20240617BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20240617BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240617BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
A61K31/7088
A61K45/00
A61K47/59
A61K47/61
A61P1/02
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P25/28
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022503567
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 KR2019008987
(87)【国際公開番号】W WO2021010534
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0086862
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(73)【特許権者】
【識別番号】521272148
【氏名又は名称】ジェーピーバイオエー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】JP BIO A INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ギュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ソンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム,インフ
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126646(WO,A1)
【文献】特表2012-528587(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073535(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/115
A61K 31/7088
A61K 45/00
A61K 47/59
A61K 47/61
A61P 1/02
A61P 1/16
A61P 1/18
A61P 11/00
A61P 25/28
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号6の塩基配列からなる、DNAアプタマー。
【請求項2】
配列番号4の塩基配列からなる、DNAアプタマー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のDNAアプタマーを含む、癌組織ターゲッティング用組成物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のDNAアプタマーを含む、癌診断用組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のDNAアプタマーを含む、癌治療用組成物。
【請求項6】
前記癌は、膵臓癌、大腸癌、肝癌、肺癌、脳腫瘍、口腔癌、または、乳癌である、請求項5に記載の癌治療用組成物。
【請求項7】
前記DNAアプタマーと結合された抗癌剤をさらに含む、請求項5又は請求項6に記載の癌治療用組成物。
【請求項8】
前記抗癌剤がMMAE(monomethyl auristatin E)、MMAF(monomethyl auristatin F)、カリケアミシン、メルタンシン、ラブタンシン、テシリン、ドキソルビシン、シスプラチン、SN-38、デュオカルマイシン、及びピロロベンゾジアゼピンからなる群から選択された1つ以上であるものである、請求項7に記載の癌治療用組成物。
【請求項9】
前記DNAアプタマーは、ポリエチレングリコール(PEG)またはこれの誘導体、ジアシルグリセロール(DAG)またはこれの誘導体、デンドリマーまたはホスホリルコリン含有重合体と結合されたものである、請求項5~請求項8のいずれか一項に記載の癌治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規のDNAアプタマーに関するものである。具体的には、Cell-SELEXを用いて膵臓癌DNAライブラリーから膵臓癌細胞に特異的に結合するものとして選別されたDNAアプタマーに関するものである。本開示は、国立癌センターの機関固有研究事業及び中小ベンチャー企業部のTIPSプログラム(民間投資主導型の技術創業支援事業)の一環として行った研究から導き出されたものである。
【0002】
[課題固有番号:NCC-1210080、研究課題名:Cell-SELEXを活用した膵臓癌特異的転移因子の発掘]
【0003】
[課題固有番号:NCC-1710400、研究課題名:癌微細環境で分泌されるリン酸化酵素FAM20Cによる膵臓癌転移調節機序の研究]
【0004】
[課題固有番号:S2562351、研究課題名:アプタマー-抗体-薬品融合体を用いた膵臓癌治療剤の開発]
【背景技術】
【0005】
アプタマー(aptamer)とは、独特の3次元構造を有し抗体と同様に対象標的に特異的に結合する単一-ストランドDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドをいう。一般に、アプタマーはナノモル~ピコモルに達する低い濃度でも高い結合力を有する特徴を有する。
【0006】
アプタマーは、ターゲット-特異的結合特性によってしばしば抗体と比較されるが、抗体に比べ、アプタマーは細胞または動物を用いた生物学的工程なしに化学的合成により簡単に製造可能であり、高い温度でも比較的に安定しており、小さいサイズであるので、対象標的へのアプローチ性に優れている。さらに、化学的合成過程で簡単に多様な変形が可能であり、非-免疫性及び無毒性という点で治療剤としての使用の可能性において抗体に比べて有利な長所を有する。ただし、アプタマーは、生体内に存在する核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)により分解され、半減期が短いという短所を有している。このような短所は多様な化学的変形を用いて克服されることができる。
【0007】
膵臓癌は、予後が最も良くない癌腫であって、癌診断後1年以内の死亡率が癌腫全体において1位である。2年生存率が10%程度であり、5年生存率は8%以内に過ぎない。ここ20年間、ほぼすべての癌において5年生存率が大幅に増加したが、膵臓癌は、1997年に集計された5年生存率3%から、2016年には8%程度までの増加に過ぎない暗鬱な結果を示している。
【0008】
実際に膵臓癌患者の中で手術が可能な患者群は20%前後であり、これすらも腫瘍の大きさが1cm以下であり、リンパ節転移及び遠隔転移がない場合であってこそ手術後に90%以上の高い生存率を期待できるが、ほとんどの患者は診断時に既に手術を施すことができないケースに該当する。手術が不可能な場合には、ほとんど抗癌剤や放射線治療に依存しているが、明確に標準化された治療法がないので、できるだけ膵臓癌を早期に診断することが生存率を高めるのに重要である。
【0009】
膵臓癌は、早期症状がほとんど現れないだけでなく、患者が症状を感じるようになると相当な水準に進行した状態がほとんどなので、膵臓癌の早期診断は非常に難しい。現在は、膵臓癌に使用できる早期診断マーカーが事実上ない状況である。
【0010】
早期膵臓癌は、腫瘍の大きさが2cm未満であり、膵臓内に限定されており、浸潤及びリンパ節転移がないケースであると一般に定義される。しかし、膵臓癌の大きさが早期膵臓癌の基準の2cm未満であるとしても、50%に達するケースに転移が伴っている。腫瘍の大きさ、リンパ節転移、遠隔転移の有無によって膵臓癌の病期を区分するとき、早期膵臓癌に分類する第II病期でも上腸間膜静脈や肝門脈連結部位に浸潤が生じる場合が多く、少数の細胞による初期転移が発見される場合が多い。このような場合には手術が不可能である。映像学的に遠隔転移が発見されず、腫瘍が膵臓に限定されていると判断されて手術が施された場合にも、手術後の短期間内に遠隔転移が発見される場合が多い。この場合、手術を施しても再発の可能性が非常に高く、効果が明確な抗癌剤がないので、診断後の平均生存率が6~12カ月に過ぎない。このため、膵臓癌完治のための唯一の方法である早期手術的切除のためにも、本格的な遠隔転移や、少数の細胞による初期転移以前の早期膵臓癌を診断する必要がある。
【0011】
細胞表面蛋白質に対する特異的プローブの開発は、細胞表面蛋白質の細胞外部の部分のみを組換え蛋白質に分離精製した後、これを抗原とした抗体を開発したり、アプタマー選択のための素材として用いられる。アプタマー選別のためのスクリーニング実行方法を一般にSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)技法と呼ぶ。しかし、このような方法は、組換え蛋白質を分離して用いる場合がほとんどであるが、この時、細胞表面蛋白質の3次元的構造が変形される可能性が高く、蛋白質の3次元的構造が標的蛋白質との結合に重要である場合、実際の細胞表面の標的蛋白質には結合できない状況が生じ得る。
【0012】
既存のSELEX技法とは異なり、生きている細胞を用いて細胞膜特異的にアプタマーを選別するCell-SELEX方法を用いる場合には、これらの限界を克服する可能性が高い。
【0013】
本開示では、膵臓癌細胞を対象にCell-SELEX方法を用いて膵臓癌に高い結合力を有するDNAアプタマーを選別し、選別されたアプタマーに対して細胞ターゲッティング性能を確認して本開示を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】大韓民国登録特許第10-1458947号
【文献】大韓民国登録特許第10-1250557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示は、新規のDNAアプタマーを提供することを目的とする。具体的には、前記新規のDNAアプタマーは癌特異的に結合するDNAアプタマーである。
【0016】
本開示の他の目的は、癌特異的に結合するDNAアプタマーを用いて癌の診断方法または治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、癌細胞の探知に有用なアプタマーを開発するためのものであって、膵臓癌細胞膜に特異的に結合するアプタマーを、Cell-SELEX方法を用いて選別した。具体的には、本開示は、転移した膵臓癌組織から分離した細胞CMLu-1を標的細胞として用い、正常な膵臓組織細胞HPNEを対照群細胞として用いて膵臓癌細胞に特異的に結合するアプタマーを選別した。
【0018】
本開示は、一側面において、配列番号6の塩基配列を含むDNAアプタマーを提供し、本開示は、一側面において、配列番号6の塩基配列と、90%以上、または、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むDNAアプタマーを提供する。本開示の一側面において、DNAアプタマーは、癌特異的に結合するものであり得る。本開示の一側面において、DNAアプタマーは、配列番号6の塩基配列からなるものであり得る。
【0019】
また、本開示は、一側面において、配列番号4の塩基配列と、90%以上、または、95%以上の配列相同性を有する塩基配列からなるDNAアプタマーを提供する。本開示の一側面において、DNAアプタマーは、配列番号4の塩基配列からなるものであり得る。
【0020】
本開示において、「90%以上の配列相同性を有する塩基配列」とは、1個~数個のヌクレオチドが追加、結実または置換されて90%以上100%未満の配列に共通性があるもので、類似の癌特異的結合能が見られる塩基配列を意味する。
【0021】
本開示の一側面において、配列番号4の塩基配列と、90%以上の配列相同性を有するものは、配列番号4の塩基配列のうち配列番号6の塩基配列に対応する位置ではなく、他の位置で配列番号4の塩基配列と異なる塩基配列を有するものを意味し得る。
【0022】
本開示において、「DNAアプタマー」は、短い単一ストランドオリゴヌクレオチドとして高い親和度と特異性で対象標的に結合する特性を有し、それぞれ独特の3次元構造を有するものを意味し得る。繰り返された生体外の選別及び濃縮過程を通じてDNAアプタマーライブラリーから特定の対象標的に特異的に結合するDNA分子、即ち、DNAアプタマーの選別が可能である。
【0023】
本開示のある実験例において、Cell-SELEX過程を通じて濃縮されたDNAプールのアプタマー配列を分析して類似の配列同士グループ化した結果、11個のアプタマーファミリー(SQ1~SQ11)が分類された。このうち、膵臓癌由来の転移した癌細胞であるCMLu-1に対して結合力が高いグループとしてSQ8が確認された。
【0024】
また、膵臓癌組織由来細胞に特異的に結合するSQ8(配列番号4)アプタマー(80mer)を鋳型として合成収率の増進及び合成費用の削減のために、これの切れた形態のアプタマー(28mer)を製作した。具体的には、標的細胞CMLu-1への結合力をほぼ維持しながらもサイズを半分以上に減らしたSQ8-4アプタマーを製作した(配列番号6)。本開示の発明者は、当該SQ8-4アプタマーがSQ8配列で癌細胞及び癌組織ターゲッティング能力に重要な機能をする部位であると判断し、これに基づいて追加実験を行った。
【0025】
一方、本開示の実施例において、Cell-SELEXに用いた標的細胞は、同所移植実験を通じて転移した膵臓癌組織から得たCMLu-1であった。このため、本開示は、特に膵臓癌の診断に役立つことができる。
【0026】
本開示は、前記アプタマーを含む癌組織ターゲッティング用組成物を提供する。本開示の一側面において、DNAアプタマーを含む組成物は、前記成分にさらに同一または類似の機能をする有効成分、または、組成物の剤形を安定化させたりアプタマーの安定性を増進させたりする成分をさらに含み得る。本開示の一側面において、組成物は製薬組成物であり得る。
【0027】
また、本開示は、前記アプタマーを含む癌診断用組成物を提供する。
【0028】
本開示の一側面において、DNAアプタマーは、作用剤モイエティと結合されて用いられ得る。
【0029】
本開示の一側面において、作用剤モイエティは、細胞毒性剤、免疫抑制剤、造影剤(例えば、蛍光団またはキレート)、ナノ合成物質または毒素ポリペプチドであり得る。ここで、細胞毒性剤は化学療法剤であり得る。
【0030】
本開示は、一側面において、本開示の一側面による新規DNAアプタマー及び前記DNAアプタマーと結合された抗癌剤を含む、癌治療用組成物に関するものであり得る。
【0031】
本開示の一側面において、癌は膵臓癌、大腸癌、肝癌、肺癌、脳腫瘍、口腔癌または乳癌であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0032】
本開示の一側面において、抗癌剤は、MMAE(monomethyl auristatin E)、MMAF(monomethyl auristatin F)、カリケアミシン(Calicheamicin)、メルタンシン(mertansine;DM1)、ラブタンシン(ravtansine;DM4)、テシリン(tesirine;SCX)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、シスプラチン(Cisplatin)、SN-38、デュオカルマイシン(Duocarmycin)、及びピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine;PBD)からなる群から選択された1つ以上であり得るが、これに制限されるわけではない。
【0033】
本開示の一側面において、DNAアプタマーは、ポリエチレングリコール(PEG)またはこれの誘導体、ジアシルグリセロール(DAG)またはこれの誘導体、デンドリマーまたは双性イオン-含有生体適合性重合体(例えば、ホスホリルコリン含有重合体)と結合されたものであり得る。
【0034】
本開示の一側面において、組成物は、生理学的に許容可能な賦形剤、担体、または、添加剤をさらに含み得、これにはデンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファデンプン、コーンスターチ、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール及びタルクなどが用いられ得るが、これに制限されるわけではない。
【0035】
一方、本開示の一側面において、組成物は、関連技術分野の通常の技術者によって理解されているように、選択された投与経路に応じて多様な形態で対象体に投与され得る。例えば、局所、経腸または非経口適用によって投与され得る。局所適用は、表皮、吸入、浣腸剤、点眼剤、点耳剤及び身体内の粘膜を通じた適用を含んでいるが、これに制限されるわけではない。経腸適用は、経口投与、直腸投与、膣投与及び胃栄養供給チューブなどを含み得る。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮膜内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、角皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻腔、肺内、脊髄腔内、直腸及び局所投与方式を含み得る。
【0036】
また、本開示の一側面において、組成物は投与経路などに応じて適切な形態で製剤化され得る。製剤化する場合には、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤などを用いて調剤され得るが、これに制限されるわけではない。
【0037】
本開示の一側面において、組成物には投与経路と、対象体の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、排泄率などによって通常の技術者が有効であると判断する量の本開示の一側面によるDNAアプタマーが含まれ得る。
【発明の効果】
【0038】
本開示の癌細胞に高い結合力を有するものとして選別されて最適化されたDNAアプタマーは、標的細胞及び組織ターゲッティング効率が増進し、癌の診断及び治療などに効果的に用いられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本開示のDNAライブラリーに含まれたヌクレオチドの形態、及びこれを増幅または同定するのに用いられる前方プライマー及び後方プライマーの形態に関するものである。具体的には、DNAライブラリーに含まれたヌクレオチドは5’-末端に20個の一般ヌクレオチドがあり、中間に40個の無作為塩基配列を有し、3’-末端に追加で20個の一般ヌクレオチドからなる。前方プライマーは5’-末端をCy5で標識し(5’-Cy5-配列-3’)、後方プライマーは5’-末端をビオチンで標識した(5’-ビオチン-配列-3’)。
図2図2は、本開示のDNAライブラリーに含まれた、膵臓癌細胞結合力を有するssDNAプールを濃縮させ、繰り返し回数に応じて細胞結合力の増加の有無をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。
図3図3は、本開示において転移性膵臓癌細胞を用いたCell-SELEX方法を通じてアプタマーをスクリーニングする過程を図式化した図面である。
図4図4は、本開示において転移性膵臓癌細胞を用いたCell-SELEX方法を通じてアプタマーをスクリーニングして得た各Cy5-標識アプタマー候補の細胞結合力を測定した結果である。
図5図5は、本開示において転移性膵臓癌細胞を用いたCell-SELEX方法を通じてアプタマーをスクリーニングして得たSQ8アプタマー(実施例1)の配列による2次構造を図式化した図面である。
図6a図6aは、本開示のSQ8アプタマーの標的細胞結合力をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。具体的には、実施例1(SQ8アプタマー)と未処理対照例及び比較例1(DNAプールライブラリー)の標的細胞結合力を測定した。
図6b図6bは、本開示のSQ8-4アプタマーの標的細胞結合力をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。具体的には、実施例1(SQ8アプタマー)及び実施例2(SQ8-4アプタマー)と未処理対照例及び比較例1(DNAプールライブラリー)の標的細胞結合力を測定した。
図7図7は、本開示のSQ8アプタマー(実施例1)に基づいて製造したSQ8-4(実施例2)の2次構造を図式化した図面である。
図8図8は、共焦点顕微鏡を通じて本開示の実施例1(SQ8アプタマー)の標的細胞へのターゲッティング様相を確認した図面である。灰色の楕円形で表示された部分が核を示し、最も明るく白い色で表示された部分が細胞表面に結合するか、または、細胞へ内在化されたアプタマーを示す。
図9図9は、共焦点顕微鏡を通じて本開示の実施例2(SQ8-4アプタマー)の標的細胞へのターゲッティング様相を確認した図面である。灰色の楕円形で表示された部分が核を示し、最も明るく白い色で表示された部分が細胞表面に結合するか、または、細胞へ内在化されたアプタマーを示す。
図10図10は、ヒト膵臓癌細胞株の異種移植マウスモデルにおいて、生体発光イメージング実験を通じて本開示の実施例1(SQ8アプタマー)の膵臓癌組織へのターゲッティング様相を確認した図面である。
図11図11は、ヒト膵臓癌細胞株の異種移植マウスモデルにおいて、生体発光イメージング実験を通じて本開示の実施例2(SQ8-4アプタマー)の膵臓癌組織へのターゲッティング様相を確認した図面である。
図12図12は、ヒト膵臓癌患者の膵臓癌細胞に対する異種移植マウスモデルにおいて、生体発光イメージング実験を通じて本開示の実施例2(SQ8-4アプタマー)の膵臓癌組織へのターゲッティング様相を確認した図面である。
図13図13は、本開示のSQ8-4アプタマーの多様な膵臓癌細胞株に対する結合力をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。具体的には、実施例2(SQ8-4アプタマー)と未処理対照例及び比較例3(SQ8-4-Compアプタマー)の細胞結合力を測定した。
図14図14は、図13の結果に基づいて、比較例3に対する実施例2の相対的な蛍光強度の幾何平均値を倍数で示したグラフである。
図15a図15a及び図15bは、本開示のSQ8-4アプタマーの多様な癌細胞株に対する結合力をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。具体的には、実施例2(SQ8-4アプタマー)と未処理対照例及び比較例3(SQ8-4-Compアプタマー)の細胞結合力を測定した。
図15b図15a及び図15bは、本開示のSQ8-4アプタマーの多様な癌細胞株に対する結合力をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。具体的には、実施例2(SQ8-4アプタマー)と未処理対照例及び比較例3(SQ8-4-Compアプタマー)の細胞結合力を測定した。
図16図16は、図15a及び図15bの結果に基づいて、比較例3に対する実施例2の相対的な蛍光強度の幾何平均値を倍数で示したグラフである。
図17図17は、本開示のSQ8-4アプタマーの多様なPDOX-由来細胞株に対する結合力をフローサイトメーター(FACS)で確認した結果である。具体的には、実施例2(SQ8-4アプタマー)と未処理対照例及び比較例3(SQ8-4-Compアプタマー)の細胞結合力を測定した。
図18図18は、図17の結果に基づいて、比較例3に対する実施例2の相対的な蛍光強度の幾何平均値を倍数で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、前述した側面及び後述する実験例または実施例を通じて更に明確になるものである。以下では、本開示の添付の表を参照して記述される実施例を通じて当該業界の通常の技術者が容易に理解して実現することができるように詳細に説明することにする。しかし、これらの実験例または実施例は、本開示を例示的に説明するためのものであって、本開示の範囲がこれらの実験例または実施例に限定されるわけではない。
【0041】
[実験例1]Cell-SELEXを用いたアプタマースクリーニング
【0042】
Cell-SELEX技法を用いて膵臓癌細胞特異的に結合するアプタマーをスクリーニングするための実験方法を図3に概略的に記載した。
【0043】
詳述すると、まず膵臓癌の特徴的な細胞膜蛋白質を表現する生きている細胞株を得るために、膵臓癌細胞を動物に移植して癌が転移した組織から膵臓癌細胞株CMLu-1を単離した(図3A)。
【0044】
ssDNAライブラリーを製作し、これに対して膵臓癌細胞株であるCMLu-1細胞を標的細胞(陽性細胞)として用い、対照群細胞(陰性細胞)としてhTERT/HPNE(Human Pancreatic Nestin Expressing cells)を用いてスクリーニングした。対照群細胞には結合せず、膵臓癌細胞のみに結合するssDNA選別過程を繰り返して選択された濃縮されたssDNAプールをクローニングし、配列分析した後、グループ化した。
【0045】
(1)ヒト膵臓癌細胞株の異種移植マウスモデルから転移した膵臓癌細胞株の構築
【0046】
転移した膵臓癌細胞CMLu-1は下記方法で得た。具体的には、NOD/SCIDマウスを用いて同所移植(orthotopic)マウスモデルを作った。まず、膵臓癌の転移状況を模写(mimic)できる動物モデルを構築するにおいて、時期に応じた腫瘍形成の状況を非侵襲的にモニタリングできるようにホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)が持続的に発現する細胞株である膵臓癌細胞株(CFPAC-1-Luci cells)を確立して用いた。膵臓癌細胞株CFPAC-1-LuciをNOD/SCIDマウスに同所移植し、43日が過ぎた後、膵臓から転移した肺組織から腫瘍組織を摘出して遺伝型分析(genotyping)を行って転移した細胞の遺伝的性質が膵臓癌細胞と同じであることを確認した後、単一細胞(single cell)として分離して培養した。転移腫瘍組織から分離したCMLu-1細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS,Thermo Fisher Scientific,USA)及び100IU/mLのAnti-Anti(antibiotic-antimycotic;Gibco)を含むRPMI-1640(Hyclone,Logan,UT,USA)培地で培養・維持した。
【0047】
このように得たCMLu-1細胞をCell-SELEXで陽性選択(positive selection)のための細胞として用い、ATCC Inc.から購入したヒト膵管上皮正常細胞(Human Pancreatic duct Normal Epithelial cells;HPNE)を陰性選択(negative selection)のための対照群細胞(control cell)として用いた。
【0048】
(2)ssDNAライブラリーの製作及びCell-SELEXのためのプライマーの製作
【0049】
膵臓癌-特異的アプタマーCell-SELEX使用のためのDNAライブラリーは、一般及び独特のヌクレオチドの組合わせで構成されたDNA配列のプール(pool)であった。5’-末端に20個の一般ヌクレオチドがあり、中間に40個の無作為塩基配列を有し、3’-末端に追加で20個の一般ヌクレオチドからなる。蛍光-活性化細胞分類機(Fluorescence-activated cell sorter;「FACS」;別名「フローサイトメーター」)を用いて選択(selection)の濃縮をモニタリングするために5’-末端をCy5で標識し、3’-末端はssDNA精製のためにビオチンで標識した(図1)。また、前方プライマーは5’-末端をCy5で標識し(5’-Cy5-配列-3’)、後方プライマーは5’-末端をビオチンで標識した(5’-ビオチン-配列-3’)。DNAライブラリーに含まれたDNA形態と、用いられる前方及び後方プライマーの形態は、下記表1の通りである。
【0050】
【表1】
【0051】
各溶出されたプールを増幅させるためにPCRが用いられた。ストレプトアビジン-ビオチン結合でビオチン化された相互補完ストランドを捕獲し、二重-ストランドDNAはNaOHに変成させることを通じてssDNAを分離した。PCR混合物を準備し、メーカーの指示に従ってPCR反応を行った。
【0052】
(3)Cell-SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)を通じたライブラリースクリーニング
【0053】
前記製作されたssDNAライブラリーに対してCMLu-1細胞を標的細胞(陽性細胞)として用い、hTERT/HPNE(Human Pancreatic Nestin Expressing cells)を対照群細胞(陰性細胞)として用いてスクリーニングを行った。
【0054】
10nmolのDNAライブラリーを5mM MgCl、0.1mg/mL tRNA、及び1mg/mLウシ血清アルブミンを含むDulbecco’s PBS(Hyclone,USA)である、結合緩衝液(binding buffer)1,000μLに溶解させた。DNAライブラリーまたは濃縮されたプールを95℃で10分間変成させ、氷の上で10分間冷却させた後、オービタルシェーカー(orbital shaker)で4℃で1時間CMLu-1細胞とともに培養した。結合していないDNA配列を除去するために、CMLu-1を3回洗浄した後、結合したDNAは1,000μLの結合緩衝液を用いて95℃で15分間遠心分離機を通じて溶出した。対抗選択(counter selection)を行うために、各アプタマープールをhTERT/HPNEを1時間培養し、その後、陰性選択を行うために、上澄液を採取した。濃縮されたプールはFACSを用いてモニタリングされ、アプタマー候補を同定するためにシークエンシング用キアゲンクローニングキット(Quiagen Cloning Kit for sequencing;Quiagen,Germany)を用いて大腸菌(Escherichia coli)にクローニングした。
【0055】
(4)濃縮されたssDNAプールのクローニング及びシークエンシング及び多重配列整列の分析
【0056】
候補配列の選択のために5回濃縮されたssDNAプールをクローニングし、シークエンシングした。ssDNAプールは変形されていないプライマーを用いてPCRで増幅され、pGEM-T easy vector(Promega,USA)にライゲーションし、HITTM-DH5αコンピテント細胞(competent cell;Promega,USA)にクローニングした。これにより、200個のクローニングされた配列がコスモジンテック(ソウル、韓国)を通じて分析され、ClustalX 1.83で整列した。
【0057】
各濃縮回数による濃縮程度を確認した結果は、図2の通りである。
【0058】
前記(1)~(4)の過程は、図3で図式化された。この過程を通じて配列確認された各アプタマーを類似の配列を有する各アプタマーにグループ化し、これを通じてCy5-標識アプタマーファミリー候補11個(SQ1~SQ11)が確認された。当該アプタマーファミリーのプール全体での含量は、下記表2の通りであった。
【0059】
【表2】
【0060】
[実験例2]濃縮されたアプタマーファミリー候補の標的細胞結合特異性の確認
【0061】
実験例1の(4)で得られた濃縮されたアプタマーファミリー候補のCMLu-1標的細胞結合特異性をフローサイトメトリー(FACS)を通じて確認した。
【0062】
各Cy5-標識アプタマーファミリー候補を3×10CMLu-1細胞及びhTERT/HPNE細胞とともにCell-SELEXで用いられた4℃の結合緩衝液で1時間培養した。細胞を0.1%NaNを含む結合緩衝液で3回洗浄し、結合された配列を有するペレットを結合緩衝液に再懸濁させた。BD FACSCalliburTM及びFACSVerseTM(BD Biosciences,USA)を通じて10,000個の細胞を測定して蛍光分析を行い、データはFlowJo software v10.0.7を用いて分析した。
【0063】
各Cy5-標識アプタマーファミリー候補のターゲット細胞結合力を測定した結果は、図4の通りである。対象ターゲット細胞である転移した膵臓癌細胞(CMLu-1)に結合特異性が高いアプタマーであるSQ8を確認し、この配列は下記の通りである。
【0064】
*SQ8アプタマー配列
【0065】
5’-AGCAGCACAGAGGTCAGATGCTTGGGCTATTTCTTATTCATGCTGTTCCACCGCTCTCGGCCTATGCGTGCTACCGTGAA-3’(配列番号4)
【0066】
[実験例3]SQ8アプタマーの分析及びアプタマー断片機能の確認
【0067】
前記実験例2を通じて選ばれたSQ8の配列による2次構造を確認した結果は、図5の通りである。また、細胞結合力を再確認するために、SQ8アプタマー(実施例1)、未処理対照例及び比較例1(DNAプールライブラリー)の標的細胞結合力を実験例2と同一の方法でFACSを用いて測定した。その結果は、図6aで確認できるように、対照例及び比較例1は、類似の水準の低い結合力を示した一方、実施例1のSQ8アプタマーは、標的細胞結合力が顕著に優れた。
【0068】
SQ8アプタマーの中に膵臓癌特異的結合に特に重要な部分が存在するか確認するために、SQ8の一部分を含む多様なアプタマーを製造して標的細胞との結合力を確認した。細胞結合力は維持しながらアプタマー全体の大きさを減らすことができるならば、アプタマーの製造費用は下げながら細胞内浸透力を増進させることができるものである。結果的には、下記表3の配列のSQ8-4アプタマー(実施例2)が標的細胞結合力をほぼ維持しながらも優れたエンドサイトーシス(endocytosis)能力を有することを確認した。具体的には、実施例1、実施例2、未処理対照例、及び比較例1(DNAプールライブラリー)の標的細胞結合力を実験例2と同一の方法でFACSを用いて測定した。その結果は、図6bで確認できるように、対照例及び比較例1は、類似の水準の低い結合力を示した一方、実施例1のSQ8アプタマーは、標的細胞結合力が顕著に優れ、実施例2のSQ8-4アプタマーは、実施例1より標的細胞結合力が顕著に優れた。
【0069】
SQ8-4の配列は下記の通りであり(配列番号6)、該当する2次構造は図7の通りである。また、次の実験で実施例1及び2の比較群として用いるために、比較例2(SQ8-Comp;SQ8と一部分で相補的な核酸配列を有するアプタマー;配列番号5)及び比較例3(SQ8-4-Comp;SQ8-4と相補的な核酸配列を有するアプタマー;配列番号7)を製造した。
【0070】
【表3】
【0071】
[実験例4]選択されたアプタマーの細胞及び組織内の効率のよいターゲッティングの確認
【0072】
(1)選択されたアプタマーのエンドサイトーシス(endocytosis)効率を共焦点顕微鏡イメージングを通じて確認した。
【0073】
1×10細胞/ウェルの対照群細胞(HPNE)と標的細胞(CMLu-1)をpoly-L-lysine(Sigma,USA)でコーティングされた8-ウェルチャンバスライド(Thermo scientific,USA)に実験の4時間前にプレーティングした。洗浄緩衝液で洗浄した後に、4℃の結合緩衝液200ulに250nMのCy5-標識アプタマー(即ち、実施例1、実施例2、比較例2、及び比較例3)、または、比較例1(DNAプールライブラリー)を添加して培養した。2回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定させ、Hoechst33342で核を染色した。この後、細胞を共焦点顕微鏡(LSM780,Carl Zeiss,Germany)を用いて映像化し、イメージはソフトウェア(Zen blue)で分析した。
【0074】
実施例1及び実施例2の共焦点顕微鏡の実験結果は、図8及び図9の通りである。図面で最も明るく見える白色の部分が、アプタマーが多く集まっていることを示す。図8及び図9で見られるように、実施例1及び実施例2のアプタマーが対照群細胞に比べて膵臓癌細胞を十分にターゲッティングし、細胞内のエンドサイトーシス(内在化)もうまくいくことを確認することができた。また、実施例1及び実施例2のアプタマーは、比較例より顕著に優れて膵臓癌細胞を十分にターゲッティングし、細胞内のエンドサイトーシスもうまくいくことを確認することができた。
【0075】
(2)生体内(in vivo)及び生体外(ex vivo)蛍光イメージングを通じてアプタマーの膵臓癌ターゲティングを確認した。
【0076】
雌Hsd:無胸腺ヌード-Foxn1ヌードマウス(Athymic nude-Foxn1 nude mice:6週齢)をHarlan Laboratories,Inc.(フランス)から購入した。これらを光と湿度が制御される条件の無特異病原体(specific pathogen free;SPF)環境に保管し、国立癌センター動物施設で飼料と水の供給を受けた。すべての動物実験は、国立癌センター研究所(NCCRI,unit number:NCC-16-163D)の実験動物運営委員会(Institutional Animal Care and Use Committee;IACUC)から許可を受けて行った。NCCRIは、国際実験動物管理評価認証協会から認可された機関である。
【0077】
膵臓癌の同所異種移植マウスモデルは、ATCCから購入したCFPAC-1細胞(1×10細胞)をマウス膵尾(tail of pancreas)に注射して構築した。接種3週後にマウスは治療によってCy5.5が標識された実施例1及び比較例2または実施例2及び比較例3の2つのグループに分かれ、前記Cy5.5-標識アプタマー(300pmol/50ulのPBS)を静脈内に投与した。
【0078】
生体外実験のためには、投与15分後または3時間後にマウスを犠牲にして解剖した。腫瘍組織を得て、IVIS Lumina(Caliper Life Science,Hopkinton,MA,USA)を用いて生体発光イメージングで映像化した。すべての映像データは、ソフトウェア(Living Image Acquisition and Analysis software)を用いて分析した。
【0079】
実施例1及び実施例2の生体発光イメージング実験結果は、図10及び図11のグレースケール(Gray scale)図の通りである。また、イメージング結果から得たフラックス全体(total flux)を図10及び図11にグラフで示した。
【0080】
各図の上段のイメージング結果では、白色で明るく示されるほど細胞にアプタマーが多く結合したということを意味する。実施例1及び実施例2のアプタマーは、比較例2及び比較例3に比べてイメージング結果が白色で示されることを確認できる。一方、比較例2及び3のイメージング結果では、白色で示される部分は存在しなかった。
【0081】
従って、本開示のアプタマーが他の比較群アプタマーに比べ、膵臓癌組織に特異的に移動して結合するということを確認でき、膵臓癌組織に対する顕著に優れたターゲッティング効率を有することを確認できた。
【0082】
[実験例5]ヒト患者膵臓癌組織のマウス同所異種移植モデル(Patient-Derived Orthotopic Xenograft Model;PDOXモデル)でのターゲッティングの確認
【0083】
本開示のアプタマーが患者腫瘍組織の複雑性(complexity)及び異質性(heterogeneity)を反映できる患者-由来同所異種移植モデル(「PDOXモデル」)でも優れたターゲッティング効率を有するか確認するために、蛍光イメージングを用いた生体内(in vivo)検証実験を行った。
【0084】
国立癌センター医生命研究審議委員会(Institutional Review Board;「IRB」)の審議を経た後、研究に同意した患者を対象に検体を確保してヌードマウス(Harlan Laboratories,Inc.(フランス)から購入)の膵臓に直接移植した患者-由来同所異種移植モデル(patient-derived orthotopic xenograft,PDOX)を製作した。膵臓癌患者の原発性腫瘍検体(以下「HPT」と称する)は、手術的切除直後に、手術が不可能な進行性膵臓癌患者の場合は、患者から肝転移組織生検検体(以下「GUN」と称する)を採取した直後に、培地に浸されたチューブに入れて移動してできるだけ速かに雌Hsd:無胸腺ヌード-Foxn1ヌードマウス(実験例4と同一に入手)の膵臓の膵尾に切除及び縫合して移植した(PDOX1世代、F1)。その後、周期的に腹部促進及びMRI映像装備を通じて腫瘍の大きさを測定し、腫瘍の大きさが3000mmに到達すると、マウスを犠牲にして腫瘍組織を得た後、一定の大きさ(3mm*3mm*3mm)の腫瘍組織を多数の個体のヌードマウスに同所再移植して次世代(F2,F3,F4…)を形成させ、個体数を増幅した。
【0085】
4世代(F4)で構築された患者-由来同所異種移植マウスモデルを三匹ずつ2つのグループに分け、それぞれCy5.5が標識されたアプタマー(300pmol/50ulのPBS)である実施例2及び比較例3を静脈投与した。投与15分後にマウスを犠牲にした後、解剖して腫瘍組織を得た後、IVIS Lumina(Caliper Life Science,Hopkinton,MA,USA)を用いて生体発光イメージングで映像化した。すべての映像データは、ソフトウェア(Living Image Acquisition and Analysis software)を用いて分析した。
【0086】
実施例2の生体発光イメージング実験結果は、図12のグレースケール(Gray scale)図の通りである。また、イメージング結果から得たフラックス全体(total flux)を図12にグラフで示した。
【0087】
図10及び図11のように、図12でも図面の上段のイメージング結果では、白色で明るく示されるほど細胞にアプタマーが多く結合したということを意味し、実施例2のアプタマーは、比較例3に比べて白色水準が非常に高いことを確認できる。一方、比較例3のイメージング結果では、白色で示される部分は存在しなかった。
【0088】
即ち、本開示のアプタマーは、患者腫瘍組織の複雑性(complexity)及び異質性(heterogeneity)を保有しているPDOXモデルでも顕著に優れたターゲッティング効率を有していることを確認できた。
【0089】
[実験例6]多様な膵臓癌細胞株での結合能の確認
【0090】
多様な種類の膵臓癌細胞株に対する本開示のアプタマーの結合能を確認するために、追加のフローサイトメトリー(FACS)実験を行った。
【0091】
実験例2と同一の方法でフローサイトメトリーを行うものの、Cy5-標識された実施例2及び比較例3を250nMの濃度で用いた。細胞は、CFPAC-1細胞株、Capan-1細胞株、HPAF-II細胞株、MIA PaCa細胞株、BxPC-3細胞株、及びPANC-1細胞株をそれぞれ用いた。このような細胞株は、いずれもATCCから購入した。
【0092】
多様な膵臓癌細胞株に対する、各アプタマーの結合力を測定した結果を図13及び図14に示した。図14は、比較例3に対する実施例2の相対的な蛍光強度の幾何平均値を倍数で示したものである。
【0093】
図13及び14の結果によると、本開示の実施例2のアプタマーは、比較例3のアプタマーに比べ、すべての膵臓癌細胞株に対してさらに優れて特異的に結合することを確認できる。先に詳察した実験例4及び5の結果と総合すると、本開示のアプタマーは、多様な類型の膵臓癌細胞に特異的に結合するものであることを確認できる。
【0094】
また、実施例1のアプタマーは実施例2のアプタマーを含むものであるので、同様に多様な類型の膵臓癌細胞に特異的に結合するものである。
【0095】
[実験例7]多様な癌腫細胞株での結合能の確認
【0096】
多様な癌腫の細胞株に対する本開示のアプタマーの結合能を確認するために、追加のフローサイトメトリー(FACS)実験を行った。
【0097】
実験例2と同一の方法でフローサイトメトリーを行うものの、Cy5-標識された実施例2及び比較例3を250nMの濃度で用いた。細胞は、HTC116細胞株、Hep3B細胞株、A549細胞株、U87細胞株、CAL27細胞株、MDA-MB231細胞株、MCF7細胞株、及びKPL4細胞株をそれぞれ用いた。このような細胞株は、いずれもATCCから購入した。
【0098】
多様な癌細胞株に対する、各アプタマーの結合力を測定した結果を図15a、図15b及び図16に示した。図16は、比較例3に対する実施例2の相対的な蛍光強度の幾何平均値を倍数で示したものである。
【0099】
図15a、図15b及び図16の結果によると、本開示の実施例2のアプタマーは、比較例3のアプタマーに比べ、多様な癌細胞株、即ち、大腸癌、肝癌、肺癌、脳腫瘍、口腔癌及び乳癌の細胞株に対してさらに優れて特異的に結合することを確認できる。先に詳察した実験例4及び5の結果と総合すると、本開示のアプタマーは多様な類型の癌細胞に特異的に結合するものであることを確認できる。
【0100】
また、実施例1のアプタマーは実施例2のアプタマーを含むものであるので、同様に多様な類型の癌細胞に特異的に結合するものである。
【0101】
[実験例8]膵管腺癌腫のPDOX-由来細胞株での結合能の確認
【0102】
本開示のアプタマーが、実際の臨床患者の膵臓癌細胞に特異的に十分に結合する可能性を有するか否かを確認するために、追加のフローサイトメトリー(FACS)実験を行った。
【0103】
限定された細胞分裂後に死滅する正常細胞とは異なり、癌細胞は無限分裂の特性を有しているので、腫瘍組織から分離された癌細胞は、形質転換がなくても無限増殖が可能な細胞株を形成することができ、患者の臨床的、分子生物学的な特性を反映させることができると考えられる。本実験で、膵臓癌PDOXマウスから摘出した腫瘍組織を3mm*4mmに切り出した後、細胞を結合組織から分離するためにコラゲナーゼ(collagenase)が含まれたHuman cell dissociation kit(Miltenyi Biotech Inc.)と混合して組織解離装置(Gentle Macs,Miltenyi Biotech Inc)で1時間反応させる。反応終了の後、ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)が含まれたRPMI培地で酵素活性を抑制し、続いて遠心分離すれば、組織から解離した細胞の沈殿物を得ることができる。ウシ胎児血清が含まれたRPMI培地でこれを懸濁して10cmの培養皿に2×10個の水準に細胞を一様に敷き、二日ごとに培地を交換しながら正常の線維芽細胞と死んだ細胞を除去して膵臓癌患者別のPDOX由来癌細胞株を確立した。確立した各細胞株の命名は、由来したPDOXの命名と同一である。
【0104】
肝転移患者生検組織を用いたGUN#38及びGUN#41と、手術的切除検体を用いたHPT#19、HPT#22、HPT#43 PDOXモデルの腫瘍組織から分離した癌細胞株を対象に実験例2と同一の方法でフローサイトメトリーを行うものの、Cy5-標識された実施例2及び比較例3を250nMの濃度で用いた。
【0105】
多様なPDOX-由来細胞株に対する、各アプタマーの結合力を測定した結果を図17及び図18に示した。図18は、比較例3に対する実施例2の相対的な蛍光強度の幾何平均値を倍数で示したものである。
【0106】
図17及び図18の結果によると、本開示の実施例2のアプタマーは、比較例3のアプタマーに比べ、複数の患者から得た膵臓癌組織から由来した多様なPDOX-由来細胞株に対してさらに優れて特異的に結合することを確認できる。先に詳察した実験例4及び5の結果と総合すると、本開示のアプタマーは、実際の臨床で患者の膵臓癌組織に特異的に結合するものであることを確認できる。
【0107】
また、実施例1のアプタマーは、実施例2のアプタマーを含むものであるので、同様に患者の膵臓癌組織に特異的に結合するものである。
【0108】
以上、一部の実施例と添付の図面に示された例によって本開示の技術的思想が説明されたが、本開示の属する技術分野で通常の知識を有する者が理解できる本開示の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲で多様な置換、変形及び変更がなされ得るという点を理解すべきである。また、そのような置換、変形及び変更は、添付の請求の範囲内に属すると考えられなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16
図17
図18
【配列表】
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