IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イネイブル インジェクションズ、エルエルシーの特許一覧

特許7504986医療用流体の注射と移送の装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】医療用流体の注射と移送の装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/148 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A61M5/148
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2022503982
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2020043515
(87)【国際公開番号】W WO2021016567
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】62/878,111
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515298235
【氏名又は名称】イネイブル インジェクションズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】コンバース,ロウワン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】フドレストン,マシュー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガイガー,ダニエル,エル
(72)【発明者】
【氏名】ロウエ,ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ヌチョルス,リチャード,ピー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファンチック,デイヴィッド
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509252(JP,A)
【文献】特開昭58-216056(JP,A)
【文献】特表2013-500774(JP,A)
【文献】国際公開第2018/165588(WO,A1)
【文献】特開2015-019829(JP,A)
【文献】特表2010-525869(JP,A)
【文献】特開2015-097548(JP,A)
【文献】特表2017-517296(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.医療用流体を含むバイアルを保持するように構成されたバイアル保持部と、
b.圧縮気体キャニスターを保持するように構成されたキャニスター保持部と、
c.風船と、
d.前記風船と流体連通し、前記バイアル内の医療用流体を加圧するために前記風船が前記バイアル内で膨張するように、前記バイアル保持部内に配置されたバイアルに挿入され、前記キャニスター保持部内に配置された圧縮気体キャニスターと選択的に連通するように構成された風船スパイクと、
e.前記バイアル保持部に配置されたバイアルに挿入されるように構成された注射スパイクと、
f.注射カニューレであって、前記風船の膨張によって加圧された前記バイアル中の医療用流体が前記注射カニューレを通って流れるように、前記注射スパイクと選択的に流体連通している注射カニューレ
を備え
前記圧縮気体キャニスターから第1の圧力を有する気体を受け取り、第2の圧力を有する気体を前記風船スパイクに向けるように、前記圧縮気体キャニスターと前記風船スパイクと流体連通している拡張室をさらに備え、
前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも低く、
前記拡張室は、通気ボアと通気弁アセンブリを含み、
前記通気弁アセンブリはピストンばねと環状シールを含み、
前記ピストンばねは、前記拡張室内の圧力が第1の所定のレベルを下回ったときに前記通気ボアを通る空気の流れが許容される位置に前記シールを促すように構成されている、注射装置。
【請求項2】
前記風船は、前記バイアルへの挿入中に前記風船スパイクの管腔内に配置されるように構成されている、請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
前記バイアル保持部内に配置された、液体薬物を含むバイアルをさらに備える、請求項1に記載の注射装置。
【請求項4】
前記キャニスター保持部内に配置された圧縮気体キャニスターをさらに備える、請求項1に記載の注射装置。
【請求項5】
前記バイアル保持部内に配置された、医療用流体を含むバイアルと、前記キャニスター保持部内に配置された圧縮気体キャニスターとをさらに備える、請求項1に記載の注射装置。
【請求項6】
前記バイアルは、前記風船スパイクと前記注射スパイクが前記バイアルに挿入されるときに前記風船スパイクと前記注射スパイクによって貫通されるバイアル栓を含む、請求項5に記載の注射装置。
【請求項7】
前記風船スパイクは風船スパイク内腔を含み、前記注射スパイクは注射スパイク内腔を含み、
前記風船スパイクと前記注射スパイクは単一のバイアルスパイクに組み込まれており、前記バイアルスパイクは、前記風船スパイク内腔と前記注射スパイク内腔を含む、請求項から請求項6までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項8】
前記バイアル保持部と前記キャニスター保持部が内部に配置されているハウジングと、
前記注射カニューレに接続され、第1の位置と第2の位置の間で移動するように構成された作動ボタンとをさらに備え、
前記第1の位置は、前記注射カニューレが前記ハウジング内に引き込まれ、前記注射スパイクから前記注射カニューレへの流体の流れが妨げられる位置であり、
前記第2の位置は、前記注射カニューレが前記ハウジングから延伸され、前記注射スパイクと流体連通している位置である、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項9】
前記作動ボタンに接続されたキャニスタースパイクをさらに備え、
前記キャニスタースパイクは、前記作動ボタンが前記第2の位置に動かされたときに、前記圧縮気体キャニスターからの加圧気体が前記風船に流れるように、前記キャニスタースパイクが前記圧縮気体キャニスターのシールを穿刺するように構成されている、請求項8に記載の注射装置。
【請求項10】
i)前記風船スパイクと前記注射スパイクが固定されるバイアルスパイク保持部であって、前記バイアルスパイク保持部は第1の位置から第2の位置に移動するように構成され、前記第1の位置は、前記風船と前記注射スパイクが前記バイアルから離間している位置であり、前記第2の位置は、前記風船と前記注射スパイクが前記バイアルに挿入される位置である、前記バイアルスパイク保持部と、
ii)前記作動ボタンに接続されたギアラックを含む保持部駆動部と、前記ハウジング内に回転可能に取り付けられたギアと、前記ギアに固定されたカムとを含む保持部駆動部であって、前記ギアラックは、前記作動ボタンが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき、前記バイアルスパイク保持部が前記カムによって前記第1の位置から前記第2の位置に移動させられるように、前記ギアに係合して前記ギアを回転させる、保持部駆動部
をさらに備える、請求項9に記載の注射装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記バイアルを見ることができる窓を含む、請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項12】
前記風船は、前記バイアルへの挿入の間、前記風船スパイクの内腔内に配置されている、請求項5から請求項11までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項13】
前記圧縮気体キャニスターから第1の圧力を有する気体を受け取り、第2の圧力を有する気体を前記風船スパイクに向けるように、前記圧縮気体キャニスターと前記風船スパイクの間に配置されて前記圧縮気体キャニスターと前記風船スパイクと流体連通している圧力調整装置をさらに備え、
前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも低い、請求項4から請求項12までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項14】
前記圧力調整装置は拡張室である、請求項13に記載の注射装置。
【請求項15】
前記キャニスター保持部は前記拡張室内に配置されている、請求項14に記載の注射装置。
【請求項16】
前記風船スパイクは風船スパイク内腔を含み、前記注射スパイクは注射スパイク内腔を含み、
前記風船スパイクと前記注射スパイクは単一のバイアルスパイクに組み込まれており、前記バイアルスパイクは、前記風船スパイク内腔と前記注射スパイク内腔を含む、請求項1に記載の注射装置。
【請求項17】
前記バイアルは、遠位壁または底部と、前記注射スパイクが前記バイアルに挿入されたときに前記注射スパイクによって貫通される栓とを含み、
前記風船は膨張中、最初に前記遠位壁または前記底部に対して拡張し、次に前記栓に向かう方向に拡張するように構成されている、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項18】
前記風船は、膨張したときに軸方向の溝を含む、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項19】
前記注射スパイクから流体を受け取り、濾過された流体を前記注射カニューレに送達するように構成された親水性および疎水性フィルタをさらに含む、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の注射装置。
【請求項20】
g.前記バイアルと前記キャニスター保持部が内部に配置されているハウジングと、
h.前記注射カニューレに接続され、第1の位置と第2の位置の間で移動するように構成された作動ボタンであって、前記第1の位置は、前記注射カニューレが前記ハウジング内に引き込まれ、前記注射スパイクから前記注射カニューレへの流体流が妨げられる位置であり、前記第2の位置は、前記注射カニューレが前記ハウジングから延伸し、前記注射スパイクと流体連通である位置である、前記作動ボタンと、
i.前記注射カニューレが取り付けられている注射カニューレピストンと、
j.前記注射カニューレピストンが内部でスライド可能に配置されている注射カニューレシリンダと、
k.前記作動ボタンに動作可能に接続されたキャニスタースパイクであって、前記キャニスタースパイクは、前記作動ボタンが前記第2の位置に移動されたときに、加圧気体が前記圧縮気体キャニスターから前記注射カニューレシリンダに流れて前記注射カニューレが前記ハウジングから延伸されるように、前記圧縮気体キャニスターのシールに穴を開けるように構成されている、前記キャニスタースパイク
をさらに備える、請求項1に記載の注射装置。
【請求項21】
g.前記バイアルと前記キャニスター保持部が内部に配置されているハウジングと、
h.前記注射カニューレに接続され、第1の位置と第2の位置の間で移動するように構成された作動ボタンであって、前記第1の位置は、前記注射カニューレが前記ハウジング内に引き込まれ、前記注射スパイクから前記注射カニューレへの流体流が妨げられる位置であり、前記第2の位置は、前記注射カニューレが前記ハウジングから延伸し、前記注射スパイクと流体連通である位置である、前記作動ボタンと、
i.前記風船スパイクと前記注射スパイクが固定されるバイアルスパイク保持部であって、前記バイアルスパイク保持部は第1の位置から第2の位置に移動するように構成され、前記第1の位置は、前記風船と前記注射スパイクが前記バイアルから離間している位置であり、前記第2の位置は、前記風船と前記注射スパイクが前記バイアルに挿入される位置である、前記バイアルスパイク保持部と、
j.前記バイアルスパイク保持部が取り付けられているバイアルスパイク保持部ピストンと、
k.前記バイアルスパイク保持部ピストンが内部でスライド可能に配置されているバイアルスパイク保持部シリンダと、
l.前記作動ボタンに動作可能に接続されたキャニスタースパイクであって、前記キャニスタースパイクは、前記作動ボタンが前記第2の位置に移動されたときに、前記圧縮気体キャニスターから加圧気体が前記バイアルスパイク保持部シリンダに流れて前記バイアルスパイク保持部が前記バイアルスパイク保持部ピストンによって前記第1の位置から前記第2の位置に移動させられるように、前記圧縮気体キャニスターのシールに穴を開けるように構成されている、前記キャニスタースパイク
をさらに備える、請求項1に記載の注射装置。
【請求項22】
g.作動ボタンと、
h.前記作動ボタンが内部で第1の位置と第2の位置との間で移動するボタンシャフトと、
i.前記風船スパイクと選択的に連通するように構成された拡張室と、
j.前記拡張室と一緒に配置された圧縮気体キャニスターと、
k.穿刺先端と、
l.ハンマーを有するトリガーばねであって、前記トリガーばねは、前記作動ボタンが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するときに偏向および解放されるように構成されている、前記トリガーばねと、
.加圧気体カートリッジまたは前記穿刺先端に隣接して配置された可撓性壁部分であって、前記可撓性壁部分は、前記拡張室を加圧するために前記可撓性壁部分が前記穿刺先端に前記加圧気体カートリッジを穿刺させるように、偏向後の前記トリガーばねの解放時に前記トリガーばねの前記ハンマーによって係合するように構成されている、前記可撓性壁部分
をさらに含む、請求項1に記載の注射装置。
【請求項23】
第1の位置と第2の位置の間を移動するように構成された作動ボタンと、前記作動ボタンに動作可能に接続されたキャニスタースパイクと、ピボット板をさらに備え、
前記キャニスタースパイクは、前記作動ボタンが第2の位置に移動すると前記キャニスタースパイクが前記圧縮気体キャニスターのシールに穴を開けるように構成され、
前記ピボット板は、前記作動ボタンが前記第2の位置にあるときに前記ピボット板が前記作動ボタンに係合するラッチ位置と、前記作動ボタンが解放されて前記第1の位置に戻る解放位置との間で旋回するように前記注射装置に枢動可能に取り付けられており、前記ピボット板は、前記拡張室内の圧力が第2の所定のレベルを下回ったときに前記ピボット板が解放位置に旋回するように通気弁アセンブリに動作可能に接続されている、請求項に記載の注射装置。
【請求項24】
前記ピストンばねは圧縮コイルばねであり、前記ピボット板を前記解放位置に向けて促すように構成されたねじりばねをさらに備える、請求項2に記載の注射装置。
【請求項25】
前記風船がくるまれている、または、巻き付けられている遠位端を有するマンドレルと、風船保持管をさらに備え、
前記くるまれている、または、巻き付けられている風船と前記マンドレルは、前記風船保持管内に受け入れられ、前記風船保持管は前記風船スパイク内に受け入れられ、前記風船保持管は、前記風船スパイクが前記圧縮気体キャニスターと連通しているとき、くるまれている、または、巻き付けられている前記風船が前記風船保持管と前記風船スパイクから押し出され、膨張するように構成されている、請求項1に記載の注射装置。
【請求項26】
a.医療用流体を含むバイアルを保持するように構成されたバイアル保持部と、
b.圧縮気体キャニスターを保持するように構成されたキャニスター保持部と、
c.風船と、
d.前記風船と流体連通し、前記バイアル内の医療用流体を加圧するために前記風船が前記バイアル内で膨張するように、前記バイアル保持部内に配置されたバイアルに挿入され、前記キャニスター保持部内に配置された圧縮気体キャニスターと選択的に連通するように構成された風船スパイクと、
e.前記バイアル保持部に配置されたバイアルに挿入されるように構成された注射スパイクと、
f.移送管カニューレであって、前記風船の膨張によって加圧された前記バイアル中の医療用流体が前記移送管カニューレを通って流れるように、前記注射スパイクと選択的に流体連通している前記移送管カニューレ
を備え
前記圧縮気体キャニスターから第1の圧力を有する気体を受け取り、第2の圧力を有する気体を前記風船スパイクに向けるように、前記圧縮気体キャニスターと前記風船スパイクと流体連通している拡張室をさらに備え、
前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも低く、
前記拡張室は、通気ボアと通気弁アセンブリを含み、
前記通気弁アセンブリはピストンばねと環状シールを含み、
前記ピストンばねは、前記拡張室内の圧力が第1の所定のレベルを下回ったときに前記通気ボアを通る空気の流れが許容される位置に前記シールを促すように構成されている、バイアルから医療用流体を移送するための移送装置。
【請求項27】
前記風船は、前記バイアルへの挿入中に前記風船スパイクの管腔内に配置されるように構成されている、請求項2に記載の移送装置。
【請求項28】
前記風船スパイクと前記注射スパイクは、単一の二重内腔バイアルスパイクを備える、請求項2または請求項2に記載の移送装置。
【請求項29】
医療用流体を含むバイアルから医療用流体を移送するための方法であって、
工程a.作動ボタンによって圧縮気体キャニスターが穿刺される工程と、
工程b.前記圧縮気体キャニスターから第1の圧力を有する気体が拡張室に導かれることによって第2の圧力が形成される工程と、
工程c.前記第2の圧力を有する気体が風船スパイクに導かれる工程と、
工程d.前記作動ボタンに接続されたギアラックによって、または、前記第2の圧力を有する気体によって、前記風船スパイクと注射スパイクとが固定されたバイアルスパイク保持部が前記バイアルに向かって移動されることによって、前記風船スパイクが前記バイアルに挿入され前記注射スパイクが前記バイアルに挿入される工程と、
工程前記第2の圧力を有する気体によって、前記バイアルに風船を挿入する工程と、
工程.前記バイアル内の医療用流体の圧力を増加させるために、前記第2の圧力を有する気体によって、前記バイアル内の前記風船を膨張さ工程と、
工程前記バイアル内の医療用流体の圧力の増加によって、加圧された前記医療用流体を前記バイアルから外に前記注射スパイクを通して移送する工程を含む、方法。
【請求項30】
前記加圧気体は窒素である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記バイアルはゴム栓を含み、前記風船と前記注射スパイクは前記工程の間に前記ゴム栓を通して挿入される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記工程は、加圧された医療用流体の注射カニューレへの移送を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記工程は、加圧された医療用流体の注射装置への移送を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記工程の間、前記風船が前記風船スパイクの内腔内に配置されている、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本願は2019年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/878,111号の優先権および利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[発明の技術分野]
本開示は、一般に、患者に医療用流体を注入するための装置、および、容器から医療用流体を移送するための移送装置、特に、注射または移送のために医療用流体を容器から追い出すために、容器内の圧力を高めるために、容器内の風船の膨張を使用する医療用流体の注射装置または移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアルは、それらの広範な臨床的な歴史および多種多様な薬物による長期安定性の記録のために、製薬業界によって使用される好ましい容器閉鎖システムの1つである。生物学的製剤を含む医薬品は、多くの場合、バイアルなどの標準的な容器に最初に商業的に導入される。さらに、業界は無菌バイアル充填用の資本設備に多額の投資を行っている。通常の使用では、バイアルは通常、患者に送達するために、バイアルから、シリンジと針または注射装置などの別の器具へ、バイアルに含まれる薬物の移送を必要とする。予め充填されたシリンジやカートリッジなどの新しい容器閉鎖システムが導入され、シリンジまたはカートリッジから患者への薬物の直接移送が可能になった。自動注射装置やペンなどの注射装置は、これらのより新しい形態の容器閉鎖を利用するために開発された。長期的な薬物の安定性に関する不確実性、および、すでに配置されている広範な製造リ供給源のために、バイアル、予め充填されたシリンジ、カートリッジなどの標準的な容器閉鎖システムを組み込んだ装置は、特注の形態の薬物の封じ込めを必要とする装置よりも製薬業界で非常に好まれている
【0003】
典型的なシリンジおよび自動注射装置は、送達され得る薬物の粘度、ならびに、ガラス容器閉鎖システムに加えられ得る力によって制限される。特注の容器閉鎖を使用するインスリン送達用のポンプを含む新しい注射装置が開発されたが、これらのシステムは非常に高価であり、高い力や圧力を生成できず、通常は再利用可能および/または再充填可能である。
【0004】
安定性および市場投入までの時間を含む要因のために、生物製剤を含む医薬品は、多くの場合、最初は凍結乾燥または粉末形態、または、濃縮液体形態で販売されている。液体製剤と粉末製剤の両方でバイアルに包装されたそのような薬物は、投与前にかなりの準備を必要とする可能性がある。バイアル内の液体製剤の投与を容易にするために、バイアル内の薬物は、多くの場合、空のシリンジと、バイアルからの吸引および患者への注射のための複数の針とともに包装される。粉末製剤の場合、粉末薬物を注射に利用できる溶液に再構成することを可能にするために、追加の希釈剤または溶液のバイアルを提供される場合がある。これらの剤形の調製および投与に関連するリスクは重大である。それらには、再構成および投与過程中の針刺し損傷の可能性、ならびに不適切な混合および不正確な投与量または投与濃度のエラーが含まれる。これは、訓練を受けた介護者と、薬を調製して服用している患者の両方にとって真の課題である。
【0005】
同様の危険の問題は、バイアルから注射装置に移す必要のある、すぐに注射できる薬物の移し替えにも当てはまる。この移送には、バイアルからの薬物の取り出し、適切な用量の測定、およびシリンジを使用した患者への注射が含まれる。バイアルの全量の移送が不完全な場合、バイアルを約25~30%過剰に充填し、それに伴う廃棄物を処理する必要がある。非滅菌の周囲空気によるバイアルに注入される薬物の汚染、または不適切な滅菌技術は、注射可能薬物の汚染を引き起こす可能性がある。
【0006】
バイアルを利用することによる上記の準備および投与の課題を克服するために、使用者による使用の時点でバイアルから別の注射装置への薬物の手動および/または自動の移送を可能にする新しい注射装置が開発された。ただし、これは、追加の使用手順とそれに関連するエラーの危険、および廃棄する追加の装置材料を含む課題を使用者に提示する可能性がある。これは最終的に治療のコンプライアンスに影響を与える可能性がある。
【0007】
したがって、供給源バイアルまたはバイアルから対象に薬物を注射するための、およびそうでなければ供給源バイアルまたはバイアルから薬物を移送するための、新規および/または改善された装置および方法の必要性が引き続き存在する。
【発明の概要】
【0008】
本主題のいくつかの態様があり、これらは、以下に説明および請求される装置およびシステムにおいて別々にまたは一緒に具体化され得る。これらの態様は、単独で、または本明細書に記載の主題の他の態様と組み合わせて使用することができ、これらの態様を一緒に説明することは、これらの態様を別々に使用すること、またはそのような態様を本明細書に添付された特許請求の範囲に記載されている別々にまたは設定された異なる組み合わせで主張することを排除することを意図するものではない。
【0009】
一態様では、注射装置は、医療用流体を収容するバイアルを保持するように構成されたバイアル保持部と、圧縮気体キャニスターおよび風船を保持するように構成されたキャニスター保持部を特徴とする。風船スパイクは、風船と流体連通しており、バイアル保持部内に配置されたバイアルに挿入され、キャニスター保持部内に配置された圧縮気体キャニスターと選択的に連通して、風船がバイアル内で膨張してバイアル内の医療用流体を加圧するように構成される。注射スパイクは、バイアル保持部に配置されたバイアルに挿入されるように構成されている。注射カニューレは、注射スパイクと選択的に流体連通しているので、風船の膨張によってバイアル内で加圧された医療用流体は、注射カニューレを通って流れる。
【0010】
別の態様では、バイアルから医療用流体を移送するための移送装置は、医療用流体を収容するバイアルを保持するように構成されたバイアル保持部、圧縮気体キャニスターおよび風船を保持するように構成されたキャニスター保持部を特徴とする。風船スパイクは、風船と流体連通しており、バイアル保持部内に配置されたバイアルに挿入され、キャニスター保持部内に配置された圧縮気体キャニスターと選択的に連通して、風船がバイアル内で膨張してバイアル内の医療用流体を加圧するように構成される。注射スパイクは、バイアル保持部に配置されたバイアルに挿入されるように構成されている。移送管カニューレは、注射スパイクと選択的に流体連通しているので、風船の膨張によってバイアル内で加圧された医療用流体は、移送管を通って流れる。
【0011】
さらに別の態様では、医療用流体を含むバイアルから医療用流体を移送するための方法は、風船スパイクをバイアルに挿入する工程、注射スパイクをバイアルに挿入する工程、風船をバイアルに挿入する工程、バイアル内の医療用流体の圧力を増加させ、加圧された医療用流体を、注射スパイクを介してバイアル外に移送するようにバイアル内で風船を膨張させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
この特許出願の主題の例は、例示の目的でのみ示され、限定ではなく、添付の図面に示されている。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態を含む、事前に装填された単一バイアル注射システムの概略図である。
【0014】
図2は、本開示の一実施形態における単一バイアル注射装置の斜視図である。
【0015】
図3は、内部の構成要素を視覚化できるように上部カバーを取り外した、図2の単一バイアル注射装置の斜視図である。
【0016】
図4は、図3の注射装置の上面図である。
【0017】
図5は、図1の5-5線に沿った断面図であり、注射装置のボタンを押す前の圧縮気体キャニスターを示している。
【0018】
図6は、図5の注射装置を示しており、注射装置のボタンが押された後の圧縮気体キャニスターを示している。
【0019】
図7は、図1の7-7線に沿った断面図であり、注射装置ボタンが押される前の保持部駆動部を示している。
【0020】
図8は、注射装置のボタンが押されて薬物バイアルに穴が開けられた後の図7の注射装置を示している。
【0021】
図9は、風船の充填と薬物の投与が開始された後の図8の注射装置を示している。
【0022】
図10は、さらに風船を充填して薬物を投与している間の図9の注射装置を示している。
【0023】
図11は、風船が満たされ、薬物の投与の終了時の図10の注射装置を示している。
【0024】
図12は、ボタンがロックアウト位置に引かれた状態で薬物の投与が終了した後の図11の注射装置を示している。
【0025】
図13Aは、注射装置のボタンが押される前の、本開示の第2実施形態における保持部駆動部を示す断面図である。
【0026】
図13Bは、注射装置のボタンが押されて薬物バイアルに穴が開けられた後の図13Aの注射装置を示している。
【0027】
図14は、本開示の代替の実施形態の概略図である。
【0028】
図15Aは、本開示の第2実施形態における風船およびマンドレルを示しており、風船は、収縮され、くるまれた構成にある。
【0029】
図15Bは、風船を膨らませた構成の図15Aの風船とマンドレルを示している。
【0030】
図16Aは、本開示の第2実施形態における保持管を示している。
【0031】
図16Bは、図16Aの保持管内に配置された図15Aの風船とマンドレルを示している。
【0032】
図17は、スパイクをバイアルに挿入した後、スパイク内に配置された図16の保持管、風船、およびマンドレルを示している。
【0033】
図18Aは、風船が保持管とスパイクから出始めたときの、図17のスパイク、保持管、風船、およびマンドレルを示している。
【0034】
図18Bは、風船が保持管とスパイクから完全に出たときの、図18Aのスパイク、保持管、風船、およびマンドレルを示している。
【0035】
図18Cは、風船が部分的に膨張した状態の図18Bのスパイク、保持管、風船、およびマンドレルを示している。
【0036】
図19は、本開示の第2実施形態における通気弁アセンブリの斜視図である。
【0037】
図20は、本開示の第2実施形態における通気ポートを示す、拡張室の底面斜視部分図である。
【0038】
図21は、通気弁アセンブリのピボット板とピストンヘッドの拡大図である。
【0039】
図22Aは、注射装置のボタンが押される前の初期の構成における図19~21の通気弁アセンブリおよび通気ポートの断面図である。
【0040】
図22Bは、注射装置のボタンが押された後の加圧された構成における図22Aの通気弁アセンブリおよび通気ポートの断面図である。
【0041】
図22Cは、注射装置のボタンが押された後の減圧された構成における図22Bの通気弁アセンブリおよび通気ポートの断面図である。
【0042】
図23は、本開示の代替の実施形態における加圧気体カートリッジを貫通するための機構の斜視図である。
【0043】
図24は、気体拡張室カバーが取り外された図23の機構の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示の実施形態は、バイアルまたは他の容器の内容物を投与または移送するための装置および方法に関する。バイアルまたは容器の内容物は、任意の適切な注射可能物であり得、この説明および請求の目的のために、「注射可能物」には、治療または診断のあらゆる種類の薬物、抗生物質、生物学的製剤、鎮静剤、無菌水および他の注射可能な材料が、単独で、または1つ以上の他の注射可能物と組み合わせて、注射前に再構成または濃度調整または他の処理を必要とするかどうかに関わらず含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
以下の説明は、説明のみを目的としており、限定するものではない。本主題は、以下に示されていない様々な装置、システム、および方法で使用することができる。
【0046】
本開示の実施形態は、圧縮気体キャニスター、注射可能物で満たされた栓を備えたバイアル、二重内腔バイアルスパイクまたは二重バイアルスパイク、拡張可能な風船、注射カニューレまたは移送管、および、作動ボタンを備えた注射装置または移送装置を含み得る。気体キャニスターは、二重内腔バイアルスパイクまたは二重バイアルスパイクの入口側を介して風船と流体連通している。風船は最初、折りたたまれ、二重内腔スパイクまたは二重バイアルスパイクの入口側に配置され、スパイクがゴム製栓を容易に貫通できるようにする。二重内腔スパイクまたは二重バイアルスパイクの出口側は、バイアルの内容物と注射カニューレまたは他の装置との間の移送管を介した流体連通を可能にする。注射装置の場合、注射ボタンは、装置内で移動可能な注射カニューレに機械的に結合することができる。移送装置の場合、移送管は、医療用流体を注射装置の充填ポートに送達するように構成され得る。それは例えば、内容が参照により本明細書に組み込まれるフーベンらの米国特許第9,925,333号に開示されている。
【0047】
本開示の実施形態は、使い捨ての1回使用の注射装置器具およびヒトなどの対象への投与のための方法を含み得る。たとえば、図1を参照すると、注射可能物2が充填されたバイアル1、圧縮気体キャニスター3、拡張可能な風船5を備えた風船スパイク、および、注射カニューレ6を備える、単一バイアルの、予め充填された、または、使用者によって装填される注射システムを示す一般的な概略図である。気体キャニスター3は、風船スパイクで終端する遠位端を備えた、気体から風船へのライン4を介して風船5と流体連通している。風船は最初、折りたたまれ、風船スパイク内に配置され、スパイクがバイアル1のゴム製栓を容易に貫通できるようにする。注射カニューレの上端は、図1に示されるように、バイアル1のゴム栓を貫通する注射スパイクを含み、バイアル1の内容物2と注射カニューレ6との間の流体連通を可能にする。代替の実施形態では、風船スパイクおよび注射スパイクは、バイアル内で膨張する前に、風船を収容する内側内腔を備えた単一の二重内腔スパイクに組み込まれ得る。
【0048】
図1の注射システムは、注射装置を患者または対象に取り付けるための接着剤が設けられたハウジング内に配置することができる。そのような注射装置の例は、ブレルらのPCT国際特許出願第PCT/US2018/055624、国際公開第WO2019/075337号で提供されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
接着剤を使用して注射装置を対象に取り付けると、注射装置のボタンがアクティブになる。ボタンをアクティブにすると、風船と注射スパイク(または二重内腔スパイク)がバイアルのゴム栓に挿入され、気体キャニスターが穿刺され、注射カニューレが対象に挿入される。圧縮気体はキャニスターを出て、バイアル内に配置された風船を満たす。風船が剛性のバイアル内で拡張すると、圧力の増加により、注射可能物が注射スパイク(または二重内腔スパイクの出口側)を介して注射カニューレを介して対象に押し込まれる。風船は、残留物を最小限に抑えるためにすべての医療用流体を十分に追い出すように、バイアルの内部空間を満たすように設計され得る。風船は、好ましくは、最も遠位の壁に対して拡張し、バイアルの栓端に向かってそれ自体が機能して、閉じ込められた流体がないことを確実にするように構成される。バイアルの向きは重要ではない。すべての注射可能物がバイアルから分配されると、ボタンが解放され、針の自動引き込みが可能になる。注射装置は患者から取り外して廃棄することができる。
【0050】
スパイクの直径が大きい場合、ゴムの栓への風船と注射スパイク(または二重内腔スパイク)の挿入は、使用者にとって難しい場合がある。いくつかの実施形態では、以下に説明するように、ボタンの作動は、キャニスターから気体を放出し、これは、注射スパイクまたは二重内腔スパイクの、バイアルの栓内および栓を通る移動を支援する。注射スパイクまたは二重内腔スパイクがバイアル内に十分に入ると、圧縮気体が風船を満たし始める。
【0051】
図2を参照すると、単一バイアルの予め装填された注射装置7の実施形態は、上部ハウジング8および下部ハウジング9、注射装置ボタンまたは作動ボタン10、および、バイアル保持部40(図3)内に位置するバイアル1とバイアルの内容物2と風船5を視認可能にする上部ハウジング8を有する観察窓11を含む。この観察窓11はまた、分配中の注射装置7の状態の指標として役立つことができる。
【0052】
代替の実施形態では、注射装置にバイアルが事前に装填されない場合がある。換言すれば、上部ハウジング8は、バイアルが使用者によってバイアル保持部40内に配置され得るように、下部ハウジング9に取り外し可能に固定される。
【0053】
図3および図4を参照すると、図2の注射装置は、上部ハウジング8が取り外された状態で示されている。この図に表示される構成要素は、下部ハウジング9、注入可能物2を含むバイアル1、バイアル栓またはキャップ21、キャニスターキャップ14、ボタン10、拡張室12、気体から風船へのライン4、バイアルスパイク保持部18、バイアルからフィルタへのライン15、フィルタ13、フィルタからカニューレへのライン17を含む。
【0054】
図5および図7を参照すると、図2~5の注射装置は、注射前の状態で示されている。圧縮気体キャニスター3は、キャニスター保持部42(図5)内に配置され、キャニスターキャップ14で拡張室12内に密封される。装置が再利用可能である代替の実施形態では、キャニスターキャップ14は脱着可能であり、また、圧縮気体キャニスター3は使用後に交換できる。
【0055】
キャニスターキャップ14およびキャニスタースパイク20は、ボタン10と共に移動する。ボタンは、図7図8の符号24で全体的に示されている保持部駆動部とも相互作用する。保持部駆動部24は、注射スパイク22を含む二重バイアルスパイクと、収縮状態の風船5を含む風船スパイク23とを含む。前述のように、代替の実施形態では、単一の二重内腔バイアルスパイクを、二重バイアルスパイクの代わりに使用することができる。
【0056】
図7および図8を参照すると、図示の実施形態では、保持部駆動部24は、ボタンと共に移動するようにボタン10に取り付けられたギアラック29を含む。さらに、保持部駆動部24は、ボタン10が押されて下げられるとギアラック29によって係合および回転される下部ハウジング内に回転可能に取り付けられたギア32を含む。カム34は、ボタン10の作動によってギアが回転するときに、図7および図8に示される位置の間を移動するように、固定された方法でギア32に確実に取りつけられる。カム34が図7に示される位置から図8に示される位置に移動すると、カム34は、下部ハウジング内にスライド可能に配置されたバイアルスパイク保持部18と係合する。カム34の促しによりスパイク保持部18が図8に示される位置にスライドするときに、注射スパイク22および風船スパイク23がバイアル栓21を貫通する。
【0057】
図6および図8を参照すると、ボタン10が押されると、ボタン10に結合されたカニューレ6が下部ハウジングから(図8に示されるように)延ばされる。例としてのみ、ボタン10をカニューレに結合するための構成が、フーベンらの米国特許第9,925,333号で提供され、その内容は、上記のように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
注射装置の代替の実施形態は、図13Aおよび図13Bに全体的に符号100で示され、前の実施形態と共有される構成要素は、同じ参照符号を使用する。図13Aおよび図13Bの注射装置は、図13A~22Cを参照して説明した例外を除いて、前の実施形態と同じように機能する。
【0059】
図13Aおよび図13Bの注射装置100では、注射カニューレ6の移動を補助するために、拡張室12からの圧縮気体は、任意でラインまたはポートを介してシリンダ101に向けられ、(図13Bに示されている)カニューレを伸長位置に促すために、ばね仕掛けのカニューレ保持部104に接続されたカニューレピストン102を移動させる。圧縮された気体は、カニューレピストン102をレリーフ103内に移動させ(図14の概略図の矢印105によっても示される)、これにより、カニューレピストンが移動を停止し、気体がピストンの周りをシリンダ112内に流れて、スパイクをバイアルに挿入し、次に風船スパイク23(図7図8)に流れ、風船の膨張を開始する。そのような実施形態では、ボタン10は依然として注射カニューレ6に接続されて、使用者が注射カニューレを展開するのを気圧が助けるか、またはボタン10が注射カニューレ6から切り離され、気圧が注射カニューレを展開するために必要な全力を提供し得る。カニューレ保持部104はまた、注射カニューレが図13Bに示される分配位置にある後にのみ、気体がバイアル内の風船に進むことを可能にするための弁として機能することができる。
【0060】
ボタン10はまた、キャニスターキャップ14に結合され、ボタンが押されたときにキャップをキャニスター3に向かって押し、キャニスタースパイク20がキャニスター3を穿刺して、圧縮気体19の流れが拡張室12を満たすことを可能にする。単なる一例として、気体キャニスター3内の圧力は、500から4000psiの範囲であり得る。多くの薬物は空気からの酸化に敏感であり、不活性であるため窒素が使用されるので、気体19は好ましくは窒素である。気体19が拡張室12を満たすと、この拡張室12内の圧力は(単なる例として)約50psiに低下する。拡張室12の目的は、バイアル1を破裂させる危険を冒さないための安全性として、気体の圧力をより大きな体積に下げることである。
【0061】
代替の実施形態では、拡張室12は、代替の圧力調整装置で置き換えることができ、その多くは従来技術で知られている。
【0062】
上記のように、ボタン10はまた、バイアル1の内部内容物2にアクセスするためにバイアル栓21を通して注射スパイク22および風船スパイク23を挿入するために、保持部駆動部24と相互作用する。
【0063】
図13Aおよび図13Bの注射装置100の代替の実施形態は、圧縮気体を使用して、注射スパイク22および風船スパイク23がバイアル栓21を通って移動し、バイアル1の内部の内容物2にアクセスするのを助ける。より具体的には、拡張室12からの圧縮気体は、バイアルスパイク保持部18に接続されたスパイクピストン110を動かして、スパイク22,23(または二重内腔スパイク)を図13Aに示される位置から図13Bに示される位置に促し、スパイクがバイアル栓21を通過する。スパイクピストンは、ピストンレリーフ103(図13Aおよび図13B)およびポート114を駆動する注射カニューレを介して拡張室12から圧縮気体を受け取るシリンダ112内にスライド可能に配置される。ポート114は、レリーフ103と直接連通することができ、または、気体ライン(図示せず)を介してレリーフ103と連通することができる。加圧気体が注射カニューレ6の伸長を支援せず、したがって、図13Aおよび図13Bのシリンダ101、カニューレピストン102、および、レリーフ103がない実施形態では、ポートは、加圧気体を拡張室12から直接、または、拡張室12とポート114との間に延びる気体ラインを通して受け取る。
【0064】
概略図が図14に示されている別の代替の実施形態では、圧縮気体は、スパイクピストン110を矢印111の方向にリリーフ113内に移動させることができ、これにより、ピストンは移動を停止し、巻かれた風船のバイアル内への移動と風船の膨張を開始するために、気体がピストンの周りを流れて風船スパイク23の側部開口115内に流れることができる。
【0065】
図4および図9を参照すると、スパイクの遠位端部分がバイアル内に配置された後、拡張室12内の気体19は、気体から風船へのライン4を通って移動し、風船スパイク23に入る。気体19は、風船5を風船スパイク23からバイアル1の後方に向かって押し出し、初期の膨張を開始する。風船5は、風船スパイク23からバイアル1の後方に向かって展開するように設計されている。風船スパイクがバイアル栓を貫通するときに、折りたたまれた風船5を風船スパイク23の管腔内に保管し、次いで、バイアル内に配置した後に風船を展開および膨張させるための構成の例は、その内容は参照により本明細書に組み込まれるファングロウの米国特許第7,883,499号で提供されている。あるいは、以下に説明するように、風船は延ばされて、風船スパイク内に配置されたマンドレルに巻き付けられることができる。風船の製造は、膨張の前後に正しい寸法を達成するために様々な浸漬技術を採用することができる。風船に適した材料の例は、フーベンらの米国特許出願公開第US2015/0217058号で提供されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
次に、図15A~18Cを参照して、バイアル栓を貫通し、次いで風船を展開および膨張させるために、風船スパイクの管腔内に折りたたまれた風船を貯蔵するための構成の代替の実施形態を説明する。図15Aに示されるように、風船122は、くるまれた、または、巻き付けられた構成にあり、膨張管またはマンドレル124の遠位端に配置されている。図16Aの符号126で全体的に示される風船保持管は、拡大された風船貯蔵部分128と、図16Bに示されるように、くるまれた、または、巻き付けられた風船122およびマンドレルまたは膨張管124をそれぞれ受け入れるマンドレルまたは膨張管の受容部分132とを含む。保持管126の風船貯蔵部分128は、開いた遠位端134を特徴とする。図17に示されるように、(図16Bの)くるまれた、または、巻き付けられた風船、および、膨張管またはマンドレルを含む保持管は、風船スパイク23内に配置される。この構成では、風船スパイクがバイアル栓21を介してバイアルに挿入される(図17の符号1の架空の形状で示されている)。
【0067】
バイアル内での図17の風船122の展開は、図18A~18Cに示されている。気体通路136がバイアル内に形成され、スパイク保持部18はシリンダ112と流体連通しており(図13Aおよび図13B)、その結果、加圧気体が気体通路136を通って流れ、風船が保持管126および風船カニューレ23から図18Bの矢印142の方向に、そして図18Bに示される位置に移動するように、風船122の近位端(図18Aの符号138)を押す。次に、風船122は、図18Cに示されるように、加圧気体(図13Aおよび図13Bのシリンダ112からも)が膨張管124を通って流れるために膨張し始める。これは、(図15Bまたは風船5について図12に示すように)風船が完全に膨らむまで続く。
【0068】
風船5(または122)は、最初にバイアル1の後方を満たし、次に前方に進むように設計されている。これは、バイアル1の後方に薄い部分を持ち、前に向かって厚くすることによって行うことができる。これの利点は、風船5が、バイアル1の向きに関係なく、注射可能物2のすべてをバイアル1から追い出すことを可能にすることである。
【0069】
風船5(または122)が気体19で満たされ始めると、風船の体積の増加は、注射スパイク22を介してバイアル1から注射可能物2を押し出す。注射可能物2は、バイアルを通って、フィルタ13を通ってフィルタライン15に向かうように促される。フィルタ13は、親水性および疎水性の濾材からなる。薬物2は、親水性の濾材を通って流れることができるが、疎水性の濾材を通って流れることはできない。移送中またはすべての注射可能物が排出された後にバイアルから排出される、一般にヘッドスペースと呼ばれるバイアルに存在した気体は、疎水性の濾材を通って流れることができるが、親水性の濾材を通って流れることはできない。これには、気体19ではなく注射可能物2のみを注射カニューレ6を介して患者に送達するという利点がある。そのような濾過装置の例は、ブレルらのPCT国際特許出願第PCT/US2018/056130、国際公開第WO2019/079335で提供されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
図4および図10を参照すると、注射可能物2は、フィルタ13を通ってカニューレライン17を通ってカニューレマニホルド25に押し込まれる。カニューレマニホルド25内にはカニューレ6がある。カニューレ6は、カニューレ6の外側の周りを密封するために、上部26および下部27の隔壁で密封されている。カニューレ6内の側穴28は、注射可能物がマニホルド25からカニューレ6の内径を通って患者に流れることを可能にする。そのような配置の例は、フーベンらの米国特許第9,925,333号で提供され、その内容は、上記のように、参照により組み込まれる。
【0071】
図10を参照すると、より多くの気体19がバイアル1内の風船5(または122)を満たすにつれて、より多くの注射可能物2がバイアル1から患者に押し込まれる。
【0072】
図11を参照すると、風船5(または122)は、バイアル1内にほぼ完全に満たされ、注射可能物2の大部分をバイアル1から患者に排出する。前に論じたように、風船5を充填する好ましい方法は、バイアル1の後方から前方に向かって、注射可能物2のすべてがバイアル1から確実に除去されて、バイアル1内の注射可能物2の残りの残留物をできるだけ減らすことである。風船は、任意で、外面に形成された軸方向の溝、または軸方向の小さな厚い区画を備え、風船がバイアルの内壁に対して膨張するときに風船の後ろに閉じ込められた流体を最小限に抑えるための流体の流れの経路を作り出すことができる。
【0073】
図12を参照すると、風船5(または122)がバイアル1をほぼ完全に満たし、バイアル1からかなりの量の注射可能物2を排出すると、風船はボタン解放機構39をトリガーする。これにより、ボタン10が上昇し、カニューレ6が自動的に収縮し、患者による注射装置の再活性化をロックアウトして、投与が完了したことを通知することができる。
【0074】
単なる例として、ボタン解放機構は、完全に(またはほぼ完全に)膨張した風船5によって係合されるスイッチ、ボタンまたは他の部材、ならびに、内容が上記のように参照により組み込まれるフーベンらの米国特許第9,925,333号で開示される自動針/カニューレ収縮機構を作動させる関連するリンケージまたは他の機構を含み得る。あるいは、ボタン解放機構39は、例えば、注射スパイクまたは風船スパイクまたは関連するライン(またはそれらの組み合わせ)のいずれかを通る流体流量の減少によってトリガーされ得る。さらに別の例として、ボタン解放機構は、(図4の)拡張室12内の気体圧の変化によってトリガーされ得る。
【0075】
注射装置はまた、風船スパイクの内腔および通気ポートと流体連通している通気弁を含み得る。通気弁は、薬物の分配/注射の完了後にボタン解放機構29によって開かれるように構成され得、その結果、風船内の加圧気体は、注射装置ハウジングの外に排出される。
【0076】
代替の実施形態では、拡張室12は、図3の符号150で架空の形状で示されている通気弁アセンブリを備えている。以下に説明するように、通気弁アセンブリは、ボタンが押されて注入を開始した後、ボタン10上に形成されたロッキングタブ152と係合する。通気弁アセンブリは、加圧気体キャニスター19(図5)に穴が開けられた後、拡張室12が加圧されると作動する。ボタン10は、すべての医療用流体が患者に移動し、気体が換気を開始するまで、下降位置または引き込み位置に留まる。拡張室内の圧力が所定の圧力を下回ると、通気弁アセンブリが開き、ボタン10を図2および図3に示す上昇位置または伸長位置に解放できるようになる。
【0077】
上で参照された図3の通気弁アセンブリの実施形態は、全体的に、図19の符号150で示されている。全体的に符号154で示されるピボット板は、図20の符号158で示されるように、通気ボアに隣接する拡張室12の外側上面に配置される取り付けポスト156に枢動可能に取り付けられる。ねじりばね162もまた、取り付けポスト156上に配置され、ピボット板154を反時計回り(矢印164)の方向に回転させるように促す。図19に示されるように、ピボット板は、弧状の主スロット166を含む。図21に示されるように、ピボット板の弧状のスロット166は、停止壁168、対向する一対の窪み172a,172b、ならびに、対向する一対のスロット174a,174bを有する。
【0078】
図19図21および図22A~22Cに示されるように、圧力解放ピストン175は、ピボットリンク154の通気ボア158および弧状の主スロット166内に配置される。ピストンは、アーム176a,176bを有するピストンヘッドを含む。図21に示されるように、ピストンのアーム176a,176bは、図19および図22A~22Cの圧縮コイルばね180の下向き(図22Aの矢印178)の促しによって、最初、ピボット板154の窪み172a,172b内に位置する。図20および図22A~22Cに示されるように、圧力解放ピストン175の底部は、通気弁アセンブリ150が図20~22Aの構成にあるときに、通気ボア158内に配置されて通気ボア158を閉じる環状シール182を提供している。これは、加圧気体カートリッジが穴をあけられる前の注射装置の初期状態に対応する。
【0079】
使用者がボタン10を押して、ボタンを図13Bに示す引き込み位置に向かって動かし(注射カニューレ6を伸ばした状態)、気体キャニスターに穴を開けると、下向きまたは格納位置でラッチされるように、図3の押しボタンロックタブ152がピボット板154のラッチノッチ184に係合する(図21)。
【0080】
上記のように、ボタン10を押す動作により、加圧気体カートリッジ(図5および図6の符号19)が穿刺され、したがって、加圧気体の拡張室12が加圧気体で満たされる。気体拡張室内のこの圧力は、環状シール182の底部を押し、これにより、圧力解放ピストン175が、圧縮ばね180の促しに逆らって図22Bに示される位置に上昇するように強制される。結果として、図22Bを参照すると、ピストンヘッドのアーム176a,176bは、ピボット板154の窪み172a,172b(図21)から上昇する。次に、ピボット板154は、ねじりばね162の図19の矢印164の方向の促しにより圧力解放ピストン175のピストンストップ188(図21)がピボット板154のストップ壁168(図21)に接触するまで回転する。この時点で、環状シール182は依然として通気ボア158内に配置されており、注入が行われる間、通気ボアは閉じたままである。ボタンのタブ152(図3)は、ボタンが下降または引き込み位置に留まるように、ピボット板154によってラッチされたままである。
【0081】
注入が完了すると、風船は完全に膨張した(またはほぼ完全に膨張した)状態に拡張する。風船5または122および拡張室12のサイジングは、風船5または122の完全な(またはほぼ完全な)膨張が、拡張室12内の圧力の低下を引き起こすようなものであり得る。あるいは、またはさらに、図4の符号192で架空の形状で示される通気ポートは、拡張室内に形成され、風船5または122の膨張を妨害しない速度で拡張室12のゆっくりとした通気を可能にするようなサイズにされ得る。拡張室12内の圧力がゆっくりと低下すると、圧縮ばね180(図19および図22A~22C)が拡張または伸長し始め、図22Bおよび図22Cを参照して、圧力解放ピストン175の環状シール182が通気ボア158内で下向きに動く。図20および図22A~22Cの符号186で示されている通気ノッチは、拡張室12内に形成されている。環状シール182がノッチより下に落ちると、拡張室12内からの圧縮空気は、環状シールを迂回して、通気ボア158に入る。これにより、環状シール182が下方に拡張室内にさらに移動し、拡張室内の残りの加圧空気が、通気ボア158を通って、最終通気段階でピボット板154に形成された通気ポート194,196(図21)を通って迅速に排出される。
【0082】
最終通気段階の後、拡張室12内の圧力は大気圧であり、その結果、圧力解放ピストン175の環状シール182の底部を押し上げる圧力はもはやない。結果として、図22Cに示されるように、圧縮ばね180は、自由にさらに拡張し、ピストンヘッドは、ピボット板154に対して下向きに下降する。これが発生すると、ストップ188(図21)が下にスライドしてピボット板ストップ面(図21の符号168)から外れる。図21および図22Cを参照すると、次に、ピストンアーム176a,176bは、対向するスロット174a,174bを通って落下し、圧縮ばねがさらに拡張するにつれて、ピボット板154から離れる。ピストンアーム176a,176bがピボット板154から離れた状態で、ねじりばね162(図19および図22A~22C)の推進により、ピボット板はさらに図19の矢印164の方向に回転する。結果として、ピボット板154のラッチノッチ184(図21)は、ボタン10のロッキングタブ152(図3)から旋回して外れ、ボタンが解放されて上方に上昇または後方に伸び、注射カニューレ6が上方に上昇、または、図13Aに示されている位置に後退する。これで注射が完了する。
【0083】
要約すると、図13A~22Cに示される実施形態の場合、注射装置の使用は以下の通りである。使用者は、注射装置をパッケージから取り出す。安全ストリップと粘着ライナーが所定の位置にある。使用者はライナーを取り外し、装置を皮膚に取り付ける。使用者は安全ストリップを取り外し、注射装置のボタンを押す。ボタンを押すと、キャニスターに穴が開く。キャニスター内の圧縮気体が拡張室を満たす。150~200psiで0.75~1ccの圧縮気体の拡張室を使用すると、気体はバイアルの約2倍の容量の拡張室に膨張する。たとえば、理論的には損失を無視すると、150psiの1ccキャニスターは、10ccの拡張室を15psiまで満たす。15psiで10ccの拡張室は、約7.5psiの最終圧力で10mLのバイアルを満たす。これらの拡張室のサイズと圧力は、風船が破裂した場合に使用者がさらされる圧力を制限する。
【0084】
キャニスターに穴が開けられ、気体が拡張室を満たし、ばね仕掛けのカニューレ保持部が、圧縮気体からロックされた展開位置へのピストン動作によって少なくとも部分的に前進する。拡張室の圧力により、通気弁アセンブリからロックが発生する。カニューレ保持部が展開位置に達すると、気体がスパイク保持部に通過できるようになる。スパイク保持部は、ピストンが圧縮気体と相互作用して、栓を介してバイアル内の展開位置に到達するまで前進する。展開位置で、気体が風船をバイアルに押し出し、膨張を開始する。風船のサイズが大きくなるため、流体がバイアルから流出する。フィルタラインとフィルタのデッドスペースは、疎水性フィルタを通して排気される。バイアルからの流体は、疎水性/親水性フィルタを通ってフィルタラインを通過する。流体は親水性を通過してカニューレラインと患者に流れ込む。空気流は疎水性物質を通って周囲環境に流れ込む。送達が終了すると、通気弁が開く。これにより、拡張室内の空気が解放され、ボタンが解放されて注射カニューレが収縮し、ボタンが上がる。
【0085】
注射装置の押しボタンの作動を介して加圧気体キャニスターに穴を開けるための代替構成を図23および図24に示する。
【0086】
図23を参照すると、気体拡張室ハウジング212は、可撓性壁部分214を含む。単なる一例として、可撓性壁部分236は、可撓性のために約0.030インチの厚さを有するプラスチックで構成され得る。拡張室212は、図13Aおよび図13Bのシリンダ101および/または110、風船5(図9~12)または122(図18A~18C)、および注射装置の他の任意の構成要素に加圧気体を供給するように構成される。拡張室には、図19~22Cの通気弁アセンブリ150について上で説明したのと同じ方法で動作する通気弁アセンブリ250が設けられている。
【0087】
一般に218で示されるトリガーばねは、ハンマー部分222およびラッチ部分224を含む。ブラケット226およびリテーナポスト228は、作動して、トリガーばねの近位端のリテーナ部分を固定された方法で所定の位置に固定する。ハンマー部分222は、図23に示されるように、トリガーばねの弾性力によって、気体拡張室212の可撓性壁部分216と係合するように促される。単なる例として、トリガーばね218は、金属または鋼でできていてもよい。
【0088】
図23を引き続き参照すると、リンク232は、第1のノッチ234および第2のノッチ236を含む。第1のノッチ234は、トリガーばね218の遠位端にあるラッチ部分224によって係合される。第2のノッチ236は、カムリング242上に形成された、またはカムリング242に固定されたリンクフック238と係合し、ベース244に固定された、全体的に符号246で示されるボタンシャフトまたはソケットの周りに回転可能に配置される。単なる例として、リンクは鋼、金属、またはプラスチックでできている場合がある。
【0089】
図24に示されるように、気体カートリッジキャップ262は、鋭い先端を有する穿刺先端を保持する内面を特徴とする。キャップ262は、穿刺先端が、気体拡張室212内に配置された加圧気体カートリッジ219のシールと対向する位置に穿刺先端を保持する。
【0090】
図23および図24の比較によって明らかにされるように、キャップ262は、トリガーばねのハンマー部分222が可撓性壁部分に係合する位置に対応する位置で、可撓性壁部分214の内面に隣接して、それに係合して配置される。結果として、可撓性壁部分214は、加圧気体キャニスターキャップ262とトリガーばね218のハンマー部分222との間に挟まれている。
【0091】
図23を参照すると、カムフック264a,264bはボタン210の側面に形成されている。カムランプ266a,266bは、回転カムリング242上に形成されている。ボタン210が図示の上昇位置または伸長位置にあるとき、カムフック264a,264bは、カムランプ266a,266bの上部に位置する。
【0092】
ボタン210が押し下げられ、ボタンが下降してソケット246内に後退すると、カムフック264a,264bは、カムリングの対応するカムランプ266a,266bを下って移動し、カムリングが図23の矢印270(つまり反時計回り)の方向に回転する。
【0093】
カムリング242が矢印270(図23)の方向に回転すると、リンク232はフック238によって引っ張られる。結果として、トリガーばねのハンマー部分222は、トリガーばねの促しに逆らって、気体拡張室の可撓性壁部分214から引き離される。これは、トリガーばねのラッチ部分224がリンク232の第1のノッチ234から滑り出て、今や可撓性壁部分214から離間している偏向ハンマー部分222が解放されるまで発生する。
【0094】
解放されたハンマー部分222は、偏向されたトリガーばねに作用する弾性力のために、ハンマー部分が元の位置に跳ね返るときに、可撓性壁部分に衝撃を与える。これにより、可撓性壁部分214の中央領域、したがってキャップ262の穿刺先端(図24)が内側に移動し、加圧気体カートリッジ219のシールに穿刺する。そうすることで、可撓性壁部分は、凹状に気体拡張室212内に弾性的に変形する。結果として、気体カートリッジからの加圧気体は、気体拡張室212を満たし、上記の構成要素に流れる。
【0095】
代替の実施形態では、可撓性壁を使用して、気体カートリッジを静止した穿刺先端に向かって推進して、加圧気体カートリッジのシールを穿刺することができることに留意されたい。
【0096】
本開示の好ましい実施形態が示され、説明されてきたが、その範囲が以下の特許請求の範囲によって定義される、本開示の精神から逸脱することなく、その中で変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図23
図24