特許 7504988 フォイルベアリング

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-06-14

(45)【発行日】2024-06-24

(54)【発明の名称】フォイルベアリング

(51)【国際特許分類】

   F16C 27/02 20060101AFI20240617BHJP

   F16C 17/24 20060101ALI20240617BHJP

【ＦＩ】

F16C27/02 A

F16C17/24

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2022510152

(86)(22)【出願日】2020-06-12

(65)【公表番号】

(43)【公表日】2022-10-21

(86)【国際出願番号】 EP2020066316

(87)【国際公開番号】W WO2021037412

(87)【国際公開日】2021-03-04

【審査請求日】2022-02-16

(31)【優先権主張番号】102019212919.6

(32)【優先日】2019-08-28

(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE

(73)【特許権者】

【識別番号】591245473

【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング

【氏名又は名称原語表記】ＲＯＢＥＲＴ ＢＯＳＣＨ ＧＭＢＨ

(74)【代理人】

【識別番号】100177839

【弁理士】

【氏名又は名称】大場 玲児

(74)【代理人】

【識別番号】100172340

【弁理士】

【氏名又は名称】高橋 始

(74)【代理人】

【識別番号】100182626

【弁理士】

【氏名又は名称】八島 剛

(72)【発明者】

【氏名】フェルスター，フェリックス

(72)【発明者】

【氏名】ヴィートマン，フェリックス

【審査官】藤村 聖子

(56)【参考文献】

【文献】特表２０１６－５３１２５６（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０１５／０２９２５５２（ＵＳ，Ａ１）

【文献】特開２０１７－１８７１６６（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第０５０５９０３８（ＵＳ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ１６Ｃ ２７／０２

Ｆ１６Ｃ １７／２４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

少なくとも１つのフォイル（１６，１８）を有するフォイルベアリング（１０）であって、前記フォイル（１６，１８）が、ベアリング受け（１２）のベアリング孔（１４）内に配置され、かつこのベアリング孔（１４）内に固定されている形式のものにおいて、
前記ベアリング受け（１２）がアルミニウムまたはアルミニウム合金より製造されていて、
前記ベアリング受け（１２）が、圧縮器のハウジング部分（２８）と一体的に構成されていて、
前記ベアリング受け（１２）の前記ベアリング孔（１４）のアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面が、少なくとも１つの前記フォイル（１６，１８）との少なくとも接触領域（２０）内に亜硝酸チタンよりなる被膜を備えていることを特徴とする、フォイルベアリング。

【請求項2】

前記亜硝酸チタンよりなる被膜が、前記ベアリング受け（１２）の前記ベアリング孔（１４）の表面のアノード酸化によって形成されていることを特徴とする、請求項１記載のフォイルベアリング。

【請求項3】

前記フォイルベアリング（１０）が、少なくとも１つのオーバーフォイル（１８）と１つのアンダーフォイル（１６）とを有していて、前記アンダーフォイル（１６）が、前記オーバーフォイル（１８）と前記ベアリング孔（１４）との間に配置されており、少なくとも前記アンダーフォイル（１６）が前記ベアリング孔（１４）に当接していることを特徴とする、請求項１または２記載のフォイルベアリング。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、請求項１の前提部に記載したフォイルベアリングに関する。

【背景技術】

【0002】

このようなフォイルベアリングは特許文献１により公知である。このフォイルベアリングは、ベアリングスリーブとして構成されたベアリング受けを有しており、このベアリング受けはベアリング孔を有していて、このベアリング孔内に少なくとも１つのフォイルが配置されていて、このフォイルはベアリングスリーブ内に固定されている。この少なくとも１つのフォイルは、ベアリング孔内でベアリングスリーブに支持されており、この場合、ベアリングスリーブは、フォイルとの接触領域の摩耗を避けるために、通常は鋼より製造されている。ベアリングスリーブは圧縮器のハウジング内に組み込まれており、この圧縮器は、フォイルベアリング内で軸受けされた軸および、この軸に接続された少なくとも１つの圧縮器ホイールを有し得る。圧縮器のハウジングは、アルミニウムまたはアルミニウム合金より製造されていてよい。鋼より製造されたベアリングスリーブの加工は費用がかかり、したがって高価である。しかも、鋼より製造されたベアリングスリーブは、重量が大きく、比較的低い熱伝導率を有しているので、フォイルベアリングからの熱導出は困難である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】欧州特許公開第０９２７８３１号明細書

【発明の概要】

【発明の効果】

【0004】

請求項１の特徴を有する本発明によるフォイルベアリングは、ベアリング受けを簡単に加工することができ、小さい重量および良好な熱伝導率を有しているので、フォイルベアリングを安価に製造することができ、フォイルベアリングの重量は小さく、フォイルベアリングからの熱導出が改善される、という利点を有している。

【0005】

従属請求項には、本発明の好適な実施形態および実施態様が記載されている。

【0006】

請求項２の構成によって、ベアリング受けの十分な耐摩耗性が保証されている。請求項３の構成は、ベアリング孔の表面に、高められた耐摩耗性を有する酸化物層の形成を可能にする。亜硝酸チタンより成る請求項４記載の硬質材料層の構成は、同様に十分な耐摩耗性を可能にする。請求項５記載の構成は、圧縮器のハウジング内へのベアリング受けの組み込みを可能にするので、別個のベアリングスリーブは必要ない。

【0007】

本発明のその他の利点、特徴および詳細は、図面を参照して１実施例の詳細が記載されている以下の説明から得られる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】ベアリング受けおよびこのベアリング受け内に配置されたフォイルを有するフォイルベアリングの横断面図である。

【図2】ベアリング受けの部分ＩＩの拡大図である。

【図3】内部に配置されたフォイルベアリングを有する圧縮器のハウジングの部分図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

本発明の１実施例が図面に示されていて、以下の説明に詳しく記載されている。

【0010】

図１乃至図３に、ベアリング受け１２を有するフォイルベアリング１０が示されており、このベアリング受け１２はベアリングスリーブとして構成されていてよい。ベアリングスリーブ１２は、ベアリング孔１４および縦軸線１５を有する概ね中空の直円筒形の形態を有している。ベアリング孔１４内に例えばフォイルベアリング１０の２つのフォイル１６，１８が配置されている。フォイル１６は、ビーム、バンプまたはアンダーフォイルとも呼ばれ、ベアリング孔１４とフォイル１８との間に配置されていて、このフォイル１８は、トップフォイルまたはオーバーフォイルとも呼ばれている。フォイル１６は、例えばスプリングフォイルとして構成されていて、少なくとも領域的に接触領域２０でベアリング孔１４に当接している。フォイル１６，１８は、図１ではその全範囲の一部だけが示されていて、ベアリング孔１４の全周に亘って延在している。フォイルベアリング１０は、フォイル１８に当接する軸２２を回転可能に軸受けするために用いられる。軸２２の回転時に、軸２２とフォイル１８との間にガスクッションが形成される。

【0011】

フォイル１６，１８は、金属フォイルとして構成されていて、打ち抜きによって製作することができる。２つのフォイル１６，１８の間にさらに１つの第３のフォイルが配置されていてよい。フォイル１６，１８は、詳しく図示されていない形式でベアリング受け１２のベアリング孔１４内に固定されている。例えばフォイル１６，１８は、その周方向に向いた縁部が、ベアリング孔１４の内周壁のスリット若しくは開口内またはＴ字形の保持部の下に嵌め込まれていてよい。

【0012】

ベアリング受け１２は、アルミニウムまたはアルミニウム合金より製作されており、この場合、十分な形状精度および寸法精度を得るために、ベアリング孔１４は切削加工法またはその他の方法、例えば浸食法で加工される。ベアリング受け１２の十分な耐摩耗性を保証するために、ベアリング孔１４の表面は硬質材料層２６を備えている。

【0013】

硬質材料層２６は、例えばベアリング孔１４の表面をアノード酸化することによって形成され得る。これは電解法であって、この電解法において、アルミニウムまたはアルミニウム合金から、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりも高い耐摩耗性を有する酸化物層が形成される。選択的に、硬質材料層２６は、亜硝酸チタンＴｉＮより成る被膜をベアリング孔１４の表面に被着することによっても形成することができる。

【0014】

硬質材料層２６によっても必要な形状精度および寸法精度を得るために、好適な形式で、硬質材料層２６を被着した後でベアリング孔１４の処理が再度行われる。

【0015】

フォイルベアリング１０内で回転可能に軸受けされた軸は、例えば流体機械の（同様に図示していない）ロータに属する。流体機械は、例えば燃料電池システム内の空気供給ユニットの部分である。燃料電池システム内で、流体機械は例えば圧縮器として構成されている。圧縮器は圧縮器ホイール２３を有しており、この圧縮器ホイールは好適にはロータの構成部分である。

【0016】

ベアリング受け１２は、前述のように、圧縮器のハウジング部分内に嵌め込まれたベアリングスリーブの形の別個の構成部分であってよい。選択的に、ベアリング受け１２は、圧縮器のハウジング部分２８の一部であってもよく、つまりハウジング部分２８と一体的に構成されていてもよい。この場合、ハウジング部分２４内に、前述のように硬質材料層２６を有するベアリング孔１４が組み込まれている。

【0017】

ベアリング受け１２によって、アルミニウムまたはアルミニウム合金の良好な熱伝導率に基づいて、フォイルベアリング１０内で発生した熱の効果的な導出が可能である。

【符号の説明】

【0018】

１０ フォイルベアリング
１２ ベアリング受け、ベアリングスリーブ
１４ ベアリング孔
１５ 縦軸線
１６ フォイル、バンプまたはアンダーフォイル、スプリングフォイル
１８ フォイル、トップフォイルまたはオーバーフォイル
２０ 接触領域
２３ 圧縮器ホイール
２６ 硬質材料層
２８ ハウジング部分

【図1】

【図2】

【図3】