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▶ バルボリン・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティ・エルエルシーの特許一覧

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  • 特許-低温特性が改善されたトラクション流体 図1A
  • 特許-低温特性が改善されたトラクション流体 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】低温特性が改善されたトラクション流体
(51)【国際特許分類】
   C10M 111/02 20060101AFI20240617BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20240617BHJP
   C10M 105/06 20060101ALN20240617BHJP
   C10M 105/04 20060101ALN20240617BHJP
   C10M 127/02 20060101ALN20240617BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20240617BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240617BHJP
   C10N 30/18 20060101ALN20240617BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
C10M111/02
C10M169/04
C10M105/06
C10M105/04
C10M127/02
C10N20:02
C10N30:02
C10N30:18
C10N40:04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022525399
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 US2019058835
(87)【国際公開番号】W WO2021086350
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521530244
【氏名又は名称】バルボリン・ライセンシング・アンド・インテレクチュアル・プロパティ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シバジ・クマール・ゴッシュ
(72)【発明者】
【氏名】スラクシャ・パラブ
(72)【発明者】
【氏名】ケシャヴ・ソパン・バデ
(72)【発明者】
【氏名】ゲフェイ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ニン・レン
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・イー・ロックウッド
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-349968(JP,A)
【文献】特開2001-294881(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189502(WO,A1)
【文献】特開2001-247492(JP,A)
【文献】特開2000-017280(JP,A)
【文献】特開平03-095295(JP,A)
【文献】実開昭54-040351(JP,U)
【文献】実開昭54-108876(JP,U)
【文献】特開2004-244632(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146779(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダル連続可変変速装置(T-CVT)に使用するためのトラクション流体であって、
最終配合物(トラクション流体)の10質量%~50質量%の量の、以下:
【化2】
のうちの少なくとも1種又はその混合物、
最終配合物の30質量%~89.88質量%の量の、水素化αジメチルスチレン(HAD)であるトラクション流体ベースストック、
最終配合物の0.01質量%~10質量%の量の、粘度調整剤、
最終配合物の0.1質量%~0.5質量%の量の、消泡剤、及び
最終配合物の0.01質量%~10質量%の量の、添加剤パッケージ
を含むトラクション流体。
【請求項2】
-30℃での1730~21500のBrookfield粘度(cP)を更に特徴とする、請求項1に記載のトラクション流体。
【請求項3】
40℃での10.24~24.62の動粘度(cSt)を更に特徴とする、請求項1に記載のトラクション流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、低温における粘度が改善されたトラクション流体ブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクション駆動技術を用いると、動力を、回転する接触界面の間に装入された薄い流体膜を介して伝達することができる。この流体は、トラクション流体と呼ばれ、物体を分離したままで力を転送して、表面摩耗を最小限にする。トラクション流体は、その大きい剪断強度に依存して、連続可変変速装置(CVT)又は無限可変変速装置(IVT)などのデバイス内でトルク伝達を提供する。そのような変速装置は、最適なエンジン性能及び最大の燃料効率のための、内燃機関との継ぎ目がない統合を可能にする。1999年、トロイダル連続可変変速装置(T-CVT)の自動車が市場に導入され、T-CVTに使用されるトラクション流体には、高いトラクション係数及び分子の低温流動性の観点で高レベルの性能が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】米国石油協会(API)発行「エンジン油認可認証システム」産業部門、第14版、1996年12月、補遺1998年12月1日
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般構造:
【0005】
【化1】
【0006】
[式中、R1-R24はそれぞれ独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso-ブチル又はtert-ブチル基であり;k、m、n及びpはそれぞれ独立してC0~C3である]
の基油;並びに、添加剤パッケージ、消泡剤及び粘度調整剤を更に含む流体を含むトラクション流体を提供する。
【0007】
添付の図において、化学式、化学構造及び実験データを、以下に提供する詳細な説明と共に、例示の実施形態を記述するために提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明のトラクション流体配合物の性質を要約する表である。
図1B図1Aの表のデータの代表的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ベース流体は、一般構造:
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、R1-R24はそれぞれ独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso-ブチル又はtert-ブチル基であり;k、m、n及びpはそれぞれ独立してC0~C3である];
【0012】
【化3】
【0013】
の基油を含む。
【0014】
式I、II、III、IV、V、VI、VIIの組合せは、それに追加の添加剤及びトラクション流体を添加して完全配合されたトラクション流体を形成させることができる、トラクション流体の基礎として役立つ。トラクション流体は、任意の組合せの式I、II、III、IV、V、VI及びVIIのブレンドを含んでいてもよい。これらの添加剤には、酸化防止剤、抗摩耗剤、極圧剤、洗剤、分散剤、消泡剤、抗さび剤、摩擦調整剤又は粘度調整剤が含まれる。添加剤は、添加剤パッケージとして提供されてもよい。
【0015】
幾つかの事例において、式I、II、III、IV、V、VI、VIIを含むトラクション流体は、-30℃で約1730及び21500の間のBrookfield粘度(cP)、又は約0.0867及び約0.0933の間のトラクション係数、又は40℃で約10.24及び24.62の間の動粘度(cSt)を特徴とすることができる。式I、II、III、IV、V、VI、VIIを含むトラクション流体は、約0.1質量%及び約50質量%の間の量の式I、II、III、IV、V、VI、VII又はその混合物;約30質量%及び約99.78質量%の間の量のベースストック;約0.01質量%及び約10質量%の間の量の粘度調整剤;約0.1質量%及び約0.5質量%の間の量の消泡剤;並びに約0.01質量%及び約10質量%の間の量の添加剤パッケージを特徴とすることができる。
【0016】
基油
式I、II、III、IV、V、VI、VII又は式I、II、III、IV、V、VI及びVIIの組合せは、最終的な完全配合されたトラクション流体のための基油又はベースストックに対する補足剤として役立ち得る。トラクション流体は、他のベースストックと、式I、II、III IV、V、VI及びVIIとの様々な比での組合せをも含み得る。
【0017】
ベースストックは、鉱油(グループI、II又はIII油剤)、ポリアルファオレフィン(グループIV油剤)、重合、相互重合したオレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステル及びカルボン酸エステル(グループV油剤)からなる群から選択されてもよい。ベースストックは、HAD(水素化アルファジメチルスチレン)、isoHAD、そのブレンドを含む群から選択されてもよい。
【0018】
本発明におけるベースストックについての定義は、米国石油協会(API)発行「エンジン油認可認証システム」産業部門、第14版、1996年12月、補遺1998年12月1日において見られるものと同じである。前記刊行物では以下のようにベースストックを分類する:a)グループIのベースストックは、90パーセント未満の飽和物及び/又は0.03パーセントを超える硫黄を含み、以下の表において指定する試験方法を使用して80以上120未満の粘度指数を有し、b)グループIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和物、及び0.03パーセント以下の硫黄を含み、以下の表において指定される試験方法を使用して80以上120未満の粘度指数を有し、c)グループIIIのベースストックは90パーセント以上の飽和物、及び0.03パーセント以下の硫黄を含み、120以上の粘度指数を有する。
【0019】
トラクション流体用のベースストックは、飽和環式化合物である。これらの脂環式飽和炭化水素は、単環式、多環式又は橋かけ環式炭化水素、又は前述のものの組合せを含油していてよい。
【0020】
粘度調整剤
トラクション流体は、粘度調整剤又は粘度調整剤の組合せを含んでいてもよい。潤滑剤産業において使用される粘度向上剤は、本発明において油剤媒体として使用することができ、油剤媒体には、オレフィンコポリマー(OCP)、ポリメタクリラート(PMA)、水素化スチレンジエン(STD)及びスチレンポリエステル(STPE)ポリマーが含まれる。オレフィンコポリマーは、エチレン及びプロピレンの混合物からバナジウム系のZiegler-Natta触媒によって調製されたゴム状物質である。スチレンジエンポリマーは、スチレン、ブタジエン又はイソプレンの陰イオン重合によって製造される。ポリメタクリラートは、アルキルメタクリラートのフリーラジカル重合によって製造される。スチレンポリエステルポリマーは、まずスチレン及び無水マレイン酸を共重合し、次いで、アルコールの混合物を使用して中間体をエステル化することによって調製される。
【0021】
本発明において油剤媒体中に使用することができる他の化合物には、次のものが含まれる:ポリアクリル酸及びポリアクリル酸ナトリウム等のアクリルポリマー、Union Carbide社からのPolyox WSR等のエチレンオキシドの高分子量ポリマー、カルボキシメチルセルロース等のセルロース化合物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、キサンタンガム及びグアーガム、ポリサッカライド、アルカノールアミド、ポリアミドのアミン塩、疎水変性エチレンオキシドウレタン、ケイ酸塩、及び充填剤、例えば、雲母、シリカ、セルロース、木粉、粘土(有機粘土を含む)及びクレー、並びに樹脂ポリマー、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂。
【0022】
粘度調整剤には、複数の粘度調整剤の組合せが含まれ得る。粘度調整剤は、約0.01質量%及び約10質量%の間の量で添加されてもよい。添加剤量は、また2.0又は3.4質量%等の、約0.01(w/w)%及び約10(w/w)%未満の間の範囲に見られる任意の1桁によって記載することができる。
【0023】
消泡剤
添加剤パッケージ中に存在し得る任意の脱泡剤又は消泡剤に加えて、少なくとも1種の更なる消泡剤がトラクション流体に添加されてもよい。好ましくは、少なくとも2種の消泡剤がトラクション流体に添加される。2種を超える消泡剤もトラクション流体に添加されてもよい。トラクション流体は、有機酸エステル、シロキサン、シリコーン系流体又はこれらの化合物の任意の組合せである消泡剤を含んでもよい。1つの消泡剤は、有機酸エステル及びシロキサン等の化合物の混合物、例えば、市販されているNalco 2301等を含んでもよい。1つの消泡剤は、例えば市販されているChemaloy F-655等のシリコーン系であってもよい。
【0024】
トラクション流体は、約0.01(w/w)%を超え約0.5(w/w)%未満の量の消泡剤を含んでもよい。消泡剤は約0.1(w/w)%の量で存在してもよい。消泡剤は、0.1質量%等の、約0.01(w/w)%及び約0.5(w/w)%未満の間の範囲に見られる任意の1桁によって記載することができる。消泡剤は、有機酸エステル及びシロキサンの混合物、又はシリコーン系流体であってもよい。トラクション流体は、1種、2種、又は2種を超える消泡剤を含んでもよい。消泡剤は任意の好適な脱泡剤を含んでもよい。
【0025】
添加剤パッケージ
トラクション流体は、少なくとも1種の性能添加剤パッケージを含んでもよい。性能添加剤パッケージは、一般に、酸化防止剤、抗摩耗剤、極圧剤、洗剤、分散剤、消泡剤、抗さび剤、摩擦調整剤、腐食防止剤及び流動点降下剤を含む、完全配合された組成物である。性能添加剤パッケージは、DIパッケージ等として市販され、製造業者によって指示される通りに使用することができる。色素又は染料等の添加剤を、トラクション流体に添加してもよい。
【0026】
自動車産業において一般に使用される分散剤は、親油性炭化水素基及び極性官能性親水基を有する。極性官能基は、カルボキシラート、エステル、アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシル、エーテル、エポキシド、リン、エステルカルボキシル、無水物又はニトリルの種類の基であってよい。親油性基は本来、良好な油溶性を保証するために、通常70~200の炭素原子のオリゴマー又はポリマーであり得る。極性官能基を導入するために様々な試薬を用いて処理される炭化水素系ポリマーには、最初にポリイソブテン等のポリオレフィンを、無水マレイン酸又は硫化リン若しくは塩化リンで処理するか又は熱処理し、次いで例えば、ポリアミン、アミン、エチレンオキシド等の試薬で処理することによって調製された生成物が含まれる。低い(典型的には8以下の)HLB値を有する界面活性剤又は界面活性剤の混合物、好ましくは非イオン性、又は非イオン性及びイオン性の混合物を、分散剤として使用してもよい。
【0027】
他の化合物、好ましくは、分散を目的とするのではなく、増粘又は他の所望の流体特性を達成するためのポリマーを、添加することができる。しかし、これらは、過剰に増粘することなく使用することができる微粒子(particulate)の量を低下させ得る。
【0028】
シール膨潤剤又は可塑剤等の化合物も、本発明において使用することができ、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸エステル、とりわけ以下を含む群から選択され得る:トリ(アセトキシステアリン酸)グリセリル、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、N-n-ブチルベンゼンスルホンアミド、脂肪族ポリウレタン、エポキシ化大豆油、グルタル酸ポリエステル、グルタル酸ポリエステル、カプリン酸/カプリル酸トリエチレングリコール、長鎖アルキルエーテル、グルタル酸ジアルキルジエステル(モノマー、ポリマー)、及びエポキシ可塑剤、アジピン酸系ポリエステル、水素化ダイマー酸、蒸留ダイマー酸、重合脂肪酸三量体、加水分解コラーゲンのエチルエステル、イソステアリン酸及びオレイン酸ソルビタン及びココイル加水分解ケラチン、PPG-12/PEG-65ラノリン油、アジピン酸ジアルキル、リン酸アルキルアリール、リン酸アルキルジアリール、変性リン酸トリアリール、リン酸トリアリール、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸オクチルベンジル、フタル酸アルキルベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、リン酸2-エチルヘキシルジフェニル、ジブトキシエトキシエチルホルミル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、オレイン酸イソデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ネオペンタン酸イソヘキシル、エトキシ化ラノリン、ポリオキシエチレンコレステロール、プロポキシ化(2モル)ラノリンアルコール、プロポキシ化ラノリンアルコール、ラノリンのアセチル化ポリオキシエチレン誘導体及びジメチルポリシロキサン。上記可塑剤と置き換えて及び/又は一緒に使用されてもよい他の可塑剤には、グリセリン、ポリエチレングリコール、フタル酸ジブチル、及びモノイソ酪酸2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール及びフタル酸ジイソノニルが含まれ、それらはすべて溶媒担体に可溶である。他のシール膨潤剤、例えばLUBRIZOL 730等も使用することができる。
【0029】
流動点降下剤、ポリメタクリル酸メチル型又はエチレンプロピレンオレフィンコポリマー型のいずれも、流体の低温Brookfield粘度を低下させるのに有用である。
【0030】
トラクション流体は、ベースストック及び添加剤パッケージに加えて、他の添加剤を含んでもよい。トラクション流体の性質又は機能を改善し得る任意の添加剤を、添加することができる。トラクション流体は、添加剤を約0.01(w/w)%を超え約10(w/w)%未満の量で含んでもよい。任意の1種の添加剤の量は、0.01(w/w)%及び約10(w/w)%未満の間の量であってよい。複数の添加剤を配合物に添加する場合、存在する添加剤の合計量は、0.01(w/w)%及び約10(w/w)%未満の量であってよい。代替として、0.01(w/w)%及び約10(w/w)%未満という量は、トラクション流体中に存在する各添加剤の量を指してもよい。
【0031】
添加剤は、単一成分(例えば脱泡剤1種等)を含んでいてもよく、基本的に単一成分からなっていてもよく、又は単一成分からなっていてもよい。代替的に、添加剤は市販されている添加剤パッケージを含んでいてもよく、基本的に市販されている添加剤パッケージからなっていてもよく、又は市販されている添加剤パッケージからなっていてもよい。添加剤は、粘度調整剤を含んでいてもよく、基本的に粘度調整剤からなっていてもよく、又は粘度調整剤からなっていてもよい。添加剤は、脱泡剤、粘度調整剤及び変速装置添加剤パッケージの組合せを含んでいてもよく、基本的に脱泡剤、粘度調整剤及び変速装置添加剤パッケージの組合せからなっていてもよく、又は、脱泡剤、粘度調整剤及び変速装置添加剤パッケージの組合せからなっていてもよい。
【実施例
【0032】
ある特定の実施形態を、以下に、実施例の形で記述する。これらの実施形態を、かなり詳細に説明するが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細又はいかなる特定の実施形態にも決して制限又は限定することを意図していない。
【0033】
本明細書において記述するトラクション流体は、トラクション流体の最終配合物の一部として、一般構造:
【0034】
【化4】
【0035】
[式中、R1-R24はそれぞれ独立して、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso-ブチル又はtert-ブチル基であり;k、m、n及びpはそれぞれ独立してC0~C3である]
を有する化合物を含んでいてよい。
【実施例1】
【0036】
合成
式II及び式VIの一般構造は、以下のように要約することができる:
【0037】
【化5】
【0038】
特定の実施例として、式II及びVIは、以下のように合成することができる:
【0039】
【化6】
【0040】
式III及びVIIの一般構造は、以下のように要約することができる:
【0041】
【化7】
【0042】
特定の実施例として、式III及び式VIIは、以下のように合成することができる:
【0043】
【化8】
【0044】
式III、IV及びVのブレンドの合成は、以下のように要約することができる:
【0045】
【化9】
【0046】
この場合、ブレンドは、式IV及びVの混合物60%と式III40%とを含む。
【実施例2】
【0047】
トラクション流体配合物の分析
ここで図1Aを参照すると、純粋なトラクション流体及び配合したトラクション流体を用いた実験データが示される。データは、図1Bにグラフにより表される。純粋な材料として、式II及びVIは、ブレンド-1(参照流体)と比較して、Brookfield粘度(BF)において-30℃でそれぞれ78.24%及び90.57%の改善を、それぞれ7.96%及び5.2%のトラクション損失とともに示す。10質量%の式IIを含む図1Aのブレンド2等のブレンドは、トラクション係数をほとんど同じに保ちつつ、17.94%のBF粘度改善を示した。式IIを45.4%含むブレンド3は、50.38%のBF粘度改善を、5.94%のトラクション損失とともに有していた。式VIを20%含むブレンド8は、35.3%のBF粘度改善を有し、トラクション損失は1.48%のみであった。(参照:図1A)。
【0048】
ここで式III及びVIIを含む配合物を参照すると、純粋な材料である式III及びVIIは、ブレンド-1(参照流体)と比較してBrookfield粘度(BF)において-30℃で93.4%及び67.7%の改善を、4.99%及び4.77%のトラクション損失とともに示す。式IIIを10質量%含むブレンド4等の、式IIIを含むブレンドは、トラクション係数をほとんど同じに保ちつつ、BF粘度を22.33%改善した。45.4%の式IIIを含むブレンド5は、70%のBF粘度改善を、3.72%のトラクション損失とともに示す。46%の式VIIを含むブレンド9は、40.45%のBF粘度改善を示し、トラクション損失は2.0%のみであった(参照:図1A)。
【0049】
ここで図1A及び図1Bのブレンド6及び7によって例証されるように、式III、IV及びVのブレンドを参照すると、このブレンドを含む配合物は、式III単独と同様の効果を奏する。
【0050】
トラクション係数を損なうことのないこの著しい低温での改善は、極端に厳しい条件におけるIVT流体用途において多くの可能性を有する。
【0051】
「含む"includes"」又は「含むこと"including"」という用語が明細書又は請求項において使用される範囲内で、請求項における移行語として用いられる場合にその用語が解釈されるように、「含むこと"comprising"」という用語と同様に包括的であることが意図される。更に、「又は」(例えば、A又はB)という用語が用いられる範囲内で、「A若しくはB、又は両方」を意味することが意図される。「A又はBのみであり両方ではない」が意図される場合、用語「両方ではなくA又はBのみ」が用いられる。このように、本明細書において用語「又は」の使用は、包括的な使用であり、排他的な使用ではない。本明細書及び請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は複数を含む。最後に、用語「約」が数と組み合わせて使用される場合、その数の±10%を含むように意図される。例えば、「約10」とは9~11を意味し得る。質量%という用語は、パーセントとして表される組成物全体の質量に対する1つの化合物の質量の比較を記載することを意味する。また、それは質量%又は(w/w)%のように記載されてもよい。脱泡剤(defoamer)という用語は、消泡剤(antifoamer)、消泡剤(anti-foamer)、又は脱泡剤(de-foamer)と等価であり、トラクション流体中の泡の形成を減少させるか妨害する任意の物質を含む。基油及びベースストックという用語は交換可能であり、約70%を超える量で存在し、トラクション流体のベースを形成する流体を指す。
【0052】
上に明示したように、本出願は実施形態の記載によって例証され、実施形態がかなり詳細に説明されているが、添付された特許請求の範囲をそのような詳細に制限する又は決して限定する意図ではない。更なる利点及び修正形態は、本出願の利益を有する当業者にとって容易に明らかとなるであろう。したがって、より幅の広い態様において、本出願は、提示した特定の詳細及び例証となる実施例に限定されない。一般的な発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細及び実施例から逸脱することは可能である。
図1A
図1B