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特許7504995婦人科腫瘍の初代細胞の培養方法及びその支援培地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】婦人科腫瘍の初代細胞の培養方法及びその支援培地
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20240617BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20240617BHJP
【FI】
C12N1/00 G
C12N5/09
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022525687
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2020126391
(87)【国際公開番号】W WO2021088847
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】201911069251.4
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911069291.9
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520492695
【氏名又は名称】北京基石生命科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GENEX HEALTH CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】201-C11 West, E-Park, No.65 Xingshikou Rd., Haidian District, Beijing 100195, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張函▲すうえ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲いん▼申意
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111685(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/106290(WO,A1)
【文献】特表2019-509024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0226472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB、HEPES、GlutaMax、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質MSP、N-アセチル-L-システイン、N-2 Supplement、Y-27632、プロゲステロン、β-エストラジオール、及びヒト細胞培養用基礎培地の組成を有するとともに、
前記ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンBにおけるペニシリンの最終濃度が100~200U/mLであり、前記ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンBにおけるストレプトマイシンの最終濃度が100~200μg/mLであり、前記ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンBにおけるアンホテリシンBの最終濃度が250~250ng/mLであり、前記HEPESの最終濃度が8~12mMであり、前記GlutaMaxの最終濃度が0.8~1.2%(体積百分率)であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が10~100ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が10~50ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記N-アセチル-L-システインの最終濃度が0.5~2mMであり、前記N-2 Supplementの最終濃度が1%(体積百分率)であり、前記Y-27632の最終濃度が5~20μMであり、前記プロゲステロンの最終濃度が50~100nMであり、前記β-エストラジオールの最終濃度が10~50nMであり、残部がヒト細胞培養用基礎培地であることを特徴とする、婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための培地。
【請求項2】
前記培地は、前記ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB、前記HEPES、前記GlutaMax、前記ヒト組換えタンパク質EGF、前記ヒト組換えタンパク質bFGF、前記ヒト組換えタンパク質HGF、前記ヒト組換えタンパク質MSP、前記N-アセチル-L-システイン、前記N-2 Supplement、前記Y-27632、前記プロゲステロン、前記β-エストラジオール、及び前記ヒト細胞培養用基礎培地を含む溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項3】
前記培地における各成分は、単独で存在し、使用時に配合に従って調製されることを特徴とする、請求項1に記載の培地。
【請求項4】
前記ヒト組換えタンパク質EGF、前記ヒト組換えタンパク質bFGF、前記ヒト組換えタンパク質HGF、前記ヒト組換えタンパク質MSP、前記N-アセチル-L-システイン、前記Y-27632、前記プロゲステロン、及び前記β-エストラジオールは、それぞれ母液として存在していることを特徴とする、請求項3に記載の培地。
【請求項5】
前記母液は、1000~100000倍の母液であり:
1000×ヒト組換えタンパク質EGF母液は、ヒト組換えタンパク質EGF、BSA及びPBSの組成を有し、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSであり;
1000×ヒト組換えタンパク質bFGF母液は、ヒト組換えタンパク質bFGF、BSA及びPBSの組成を有し、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSであり;
1000×ヒト組換えタンパク質HGF母液は、ヒト組換えタンパク質HGF、BSA及びPBSの組成を有し、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSであり;
1000×ヒト組換えタンパク質MSP母液は、ヒト組換えタンパク質MSP、BSA及びPBSの組成を有し、前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSであり;
1000×N-アセチル-L-システイン母液は、N-アセチル-L-システイン及び水の組成を有し、前記N-アセチル-L-システインの濃度は0.5Mであり、残部は水であり;
1000×Y-27632母液は、Y-27632及び水の組成を有し、Y-27632の最終濃度は10mMであり、残部は水であり;
100000×プロゲステロン母液は、プロゲステロン及び無水エタノールの組成を有し、プロゲステロンの最終濃度は1mMであり、残部は無水エタノールであり;
100000×β-エストラジオール母液は、β-エストラジオール及び無水エタノールの組成を有し、β-エストラジオールの最終濃度は1mMであり、残部は無水エタノールであることを特徴とする、請求項4に記載の培地。
【請求項6】
前記BSAは、前記1000×ヒト組換えタンパク質EGF母液、前記1000×ヒト組換えタンパク質bFGF母液、前記1000×ヒト組換えタンパク質HGF母液、前記1000×ヒト組換えタンパク質MSP母液において、母液として存在し、前記BSAが使用する直前に調製されることを特徴とする、請求項5に記載の培地。
【請求項7】
前記BSAは100倍の母液として存在し、100×BSA溶液はBSA及びPBSの組成を有し、前記100×BSA溶液において、前記BSAの最終濃度は0.1g/mLであり、残部はPBSであることを特徴とする、請求項6に記載の培地。
【請求項8】
前記ヒト細胞培養用基礎培地は、Advanced DMEM/F12培地であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の培地。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の培地と、サンプル解離液、サンプル保存液、細胞単離緩衝液、細胞消化液、サンプル洗浄液、消化停止液、細胞凍結保存液及び1% CYTOP(登録商標)溶液のうちの少なくとも1種の試薬とを含む、婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための支援試薬であって、
前記サンプル解離液は、コラゲナーゼI、コラゲナーゼIII、コラゲナーゼIV及びPBSの組成を有し、前記コラゲナーゼIの前記サンプル解離液における最終濃度は150~250U/mLであり、前記コラゲナーゼIIIの前記サンプル解離液における最終濃度は250~350U/mLであり、前記コラゲナーゼIVの前記サンプル解離液における最終濃度は150~250U/mLであり、残部はPBSであり、
前記サンプル保存液は、ウシ胎児血清、ペニシリン・ストレプトマイシン、HEPES及びHBSSの組成を有し、前記ウシ胎児血清の最終濃度は1~5%(体積百分率)であり、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、前記HEPESの最終濃度は8~12mMであり、残部はHBSSであり;
前記細胞単離緩衝液は、ペニシリン・ストレプトマイシン、ヘパリンナトリウム、及びPBSの組成を有し、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、前記ヘパリンナトリウムの最終濃度は10IU/mLであり、残部はPBSであり;
前記細胞消化液は、Accutase、EDTA、TrypLE Express及びPBSの組成を有し、Accutaseは前記細胞消化液10mL当たりにおいて4~6mLであり、EDTAの最終濃度は5mMであり、TrypLE Expressは1.5~2.5mLであり、残部はPBSであり、
前記サンプル洗浄液は、ペニシリン・ストレプトマイシン及びPBSの組成を有し、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、残部はPBSであり;
前記消化停止液は、ウシ胎児血清、ペニシリン・ストレプトマイシン、及びDMEM培地の組成を有し、前記ウシ胎児血清の最終濃度は8~12%であり、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mLであり、前記ペニシリン・ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mLであり、残部はDMEM培地であり;
前記細胞凍結保存液は、Advanced DMEM/F12培地、DMSO、及び1%メチルセルロース溶液の組成を有し、前記Advanced DMEM/F12培地、前記DMSO、及び前記1%メチルセルロース溶液は、それらの体積比が20:2:(0.8~1.2)であり、前記1%メチルセルロース溶液は、濃度が1g/100mlであるメチルセルロース水溶液であり;
前記1% CYTOP(登録商標)溶液は、CYTOP(登録商標)及びフッ素オイルの組成を有し、前記1% CYTOP(登録商標)溶液100mL当たりにおいてCYTOP(登録商標)を1mL含み、残部はフッ素オイルであることを特徴とする、支援試薬。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の培地又は請求項9に記載の支援試薬の、婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための使用。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の培地を用いて婦人科腫瘍の初代細胞を懸濁培養する工程を含む、婦人科腫瘍の初代細胞を培養する方法。
【請求項12】
前記婦人科腫瘍の初代細胞は、婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞又は婦人科腫瘍における胸腔液サンプルの初代腫瘍細胞であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞は、請求項9に記載のサンプル解離液を用いて婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織を解離処理して得られたものであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1mg組織当たり0.1~0.3mLの前記サンプル解離液の量で、切断した前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織を、事前に37℃に予熱した前記サンプル解離液により処理して、37℃、15分間~3時間の解離時間という条件で、サンプル解離を行う工程を含む方法において、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織を前記サンプル解離液で解離することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプルの初代腫瘍細胞は、請求項9に記載の細胞単離緩衝液を用いて婦人科腫瘍における胸腔液サンプルから単離して得られたものであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプル中の細胞を前記細胞単離緩衝液で懸濁させた後、密度勾配遠心分離により前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプルの初代腫瘍細胞を得る工程を含む方法において、前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプルを前記細胞単離緩衝液で単離することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞培養容器Mを用いて前記婦人科腫瘍の初代細胞を、前記婦人科腫瘍の初代細胞の培地で懸濁培養して、37℃、5% CO2の条件下で培養し、2~4日毎に培地を一回交換する工程を含む方法において、前記婦人科腫瘍の初代細胞を、前記婦人科腫瘍の初代細胞の培地で懸濁培養し、
前記細胞培養容器Mは、
(I)ポリスチレン材質の細胞培養容器、ポリカーボネート材質の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート材質の細胞培養容器、COC樹脂材質の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー材質の細胞培養容器又は低付着性表面の細胞培養容器;及び
(II)(I)における細胞培養容器をCYTOP(登録商標)修飾した細胞培養容器
のいずれか一つであることを特徴とする、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞培養容器は、細胞培養皿、細胞培養ウェルプレート、又は細胞培養用マイクロウェルプレートチップであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記(II)において、前記(I)における細胞培養容器を、エッチング出力 20W、エッチング時間 3分間というエッチング条件で、純酸素エッチングした後、前記細胞培養容器の表面を請求項9に記載の1% CYTOP(登録商標)溶液で覆い、前記1% CYTOP(登録商標)溶液を乾燥することにより、CYTOP(登録商標)修飾を完了する工程を含む方法において、前記(I)における細胞培養容器をCYTOP(登録商標)修飾することを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織に対して解離前処理を行う工程であって、婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルの表面を、体積百分率で70~75%であるエタノールで洗浄し、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルを請求項9に記載のサンプル洗浄液及び無菌PBS溶液で順番に洗浄する工程を、さらに含むことを特徴とする、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記解離前処理を行う前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルは、その解離時間が2時間以下であり、前記解離前処理を行う直前に請求項9に記載のサンプル保存液に保存されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織に対して解離処理を前記サンプル解離液で行った後、さらに、解離反応を請求項9に記載の消化停止液で停止させ、細胞懸濁液を収集し、前記細胞懸濁液を濾過して組織残片及び接着細胞を除去し、遠心分離した後、無菌PBSで細胞を再懸濁し、再度遠心分離した後、前記培地で細胞ペレットを再懸濁させる工程を含むことを特徴とする、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記婦人科腫瘍の初代細胞を前記培地で培養する過程において、前記婦人科腫瘍の初代細胞が直径80~120μmの塊を形成するとき、前記婦人科腫瘍の初代細胞を継代させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項11~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記継代を行う際に使用する細胞消化液は、請求項9に記載の細胞消化液であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記継代を行う際に使用する消化停止液は、請求項9に記載の消化停止液であることを特徴とする、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
2~3回継代して増幅させた前記婦人科腫瘍の初代細胞を凍結保存及び/又は蘇生する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記凍結保存を行う際に用いる細胞凍結保存液は、請求項9に記載の細胞凍結保存液であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記婦人科腫瘍は、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、又はそれらの転移病巣であることを特徴とする、請求項11~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、婦人科腫瘍の初代細胞の培養方法及びその支援培地に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な婦人科系腫瘍には、乳がん、卵巣がん及び子宮内膜がん等が挙げられる。中国の国立がんセンターの2018年のデータ統計によると、2014年、中国で、乳がんは女性の悪性腫瘍の発症率の16.5%を占め、死亡率は7.8%に達し、それぞれ女性腫瘍の1位と5位にランクされた。現在、中国の乳がんの5年生存率は90%(米国)に対して、73.1%に過ぎず、先進国とのギャップがまだ大きい。また、中国における卵巣がんの発生率は、女性の悪性腫瘍の2.5%を占め、過去10年間で30%増加した。これらの婦人科系腫瘍は、中国の女性の生命健康に対して深刻な挑戦をもたらした。
【0003】
婦人科腫瘍は、世界中の研究機関や医療機関がその原因や発症の研究に多大な投資をしているにもかかわらず、ほとんど知られていない病気である。婦人科腫瘍は、その発症、進行は、多くのシグナル分子が相互作用して、複雑な分子制御ネットワークを形成すると同時に、外界の環境因子の影響にも影響される動的プロセスであると言われている。婦人科腫瘍の病因や発症・進行過程には、個人差が強く、一概には言えない。このため、婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞の培養物をモデルとして個人化の精確な研究を行うことは、婦人科腫瘍の研究分野、さらには婦人科腫瘍の診断・治療分野での傾向である。
【0004】
従来の初代腫瘍細胞の培養技術は、主に二次元培養、三次元培養、リプログラミング培養などの種類があり、いずれも、さまざまな程度に、培養サイクルが極めて長く、培養の成功率が低く、他の細胞の除去が困難であるという問題点に直面している。
【発明の概要】
【0005】
上記の技術課題を効果的に解決するために、本発明は、新しい婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞の培養技術及びその支援試薬を提供するものであり、当該技術の要旨は、以下の通りである:
(1)婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織を温和な細胞解離用試薬で処理して、組織中の腫瘍細胞の活力を最大限に保障すること、(2)特殊な無血清培地を調製し、懸濁培養系を用いて婦人科腫瘍の初代細胞を体外で培養し、腫瘍細胞の正常な増殖を確保すると同時に、正常細胞による妨害を最大限に排除すること。
【0006】
第1の態様において、本発明は、培地を特許請求する。
【0007】
本発明が特許請求している培地は、培地A又は培地Bである。
【0008】
前記培地Aは、抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)、HEPES、GlutaMax、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質MSP、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、N-2 Supplement、Y-27632、プロゲステロン(Progesterone)、β-エストラジオール(β-Estradiol)、及びヒト細胞培養用の基礎培地(例えばAdvanced DMEM/F12培地)の組成を有する。ただし、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体におけるペニシリンの最終濃度が100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体におけるストレプトマイシンの最終濃度が100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体におけるアンホテリシンBの最終濃度が250~250ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、前記HEPESの最終濃度が8~12mM(例えば、10mM)であり、前記GlutaMaxの最終濃度が0.8~1.2%(例えば1%であり、%は体積百分率を表す)であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が10~100ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が10~50ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)の最終濃度が1~10μg/mLであり、前記N-2 Supplementの最終濃度が1%(体積百分率)であり、前記Y-27632の最終濃度が5~20μMであり、前記プロゲステロンの最終濃度が50~100nMであり、前記β-エストラジオールの最終濃度が10~50nMであり、残部がヒト細胞培養用の基礎培地(例えば、Advanced DMEM/F12培地)である。
【0009】
前記培地Bは、抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)、HEPES、GlutaMax、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質MSP、N-アセチル-L-システイン(N-acetyl-L-cysteine)、N-2 Supplement、Y-27632、プロゲステロン(Progesterone)、β-エストラジオール(β-Estradiol)、及びヒト細胞培養用の基礎培地(例えば、Advanced DMEM/F12培地)の組成を有する。ただし、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体におけるペニシリンの最終濃度が100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体におけるストレプトマイシンの最終濃度が100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体におけるアンホテリシンBの最終濃度が250~250ng/mL(例えば、250ng/mL)であり、前記HEPESの最終濃度が8~12mM(例えば、10mM)であり、前記GlutaMaxの最終濃度が0.8~1.2%(例えば1%であり、%は体積百分率を表す)であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が10~100ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度が10~50ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度が5~25ng/mLであり、前記N-アセチル-L-システイン(N-acetyl-L-cysteine)の最終濃度が0.5~2mMであり、前記N-2 Supplementの最終濃度が1%(体積百分率)であり、前記Y-27632の最終濃度が5~20μMであり、前記プロゲステロンの最終濃度が50~100nMであり、前記β-エストラジオールの最終濃度が10~50nMであり、残部がヒト細胞培養用の基礎培地(例えば、Advanced DMEM/F12培地)である。
【0010】
さらに、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)は、1ミリリットル当たり、ペニシリン(アルカリ)10000単位、ストレプトマイシン(アルカリ)10000μg、及びアンホテリシンB25μgの組成を有する。前記抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)は、「Antibiotic-Antimycotic,100X」(例えばGibco#15240062、又はそれと同組成の他の製品)である。前記「Antibiotic-Antimycotic、100X」は、Fungizone(登録商標)抗真菌剤として、0.85%の塩溶液形態のペニシリンG(ナトリウム塩)、硫酸ストレプトマイシン及びアンホテリシンBを用い、1ミリリットル当たり、ペニシリン(アルカリ)10000単位、ストレプトマイシン(アルカリ)10000μg、及びアンホテリシンB 25μgを含む。前記GlutaMAXは、細胞培地中のL-グルタミンを直接置換することができる、先進的な細胞培養の添加剤である。前記GlutaMAXは、「GlutaMAXTMSupplement」(例えばGibco#35050061、又はそれと同じ組成の他の製品)である。前記「GlutaMAXTM Supplement」の成分は、L-alanyl-L-glutamineであり、L-glutamineの代替品であり、その濃度は200nMであり、溶媒は0.85%のNaCl溶液である。前記N-2 Supplementは、「N-2 Supplement(100X)」(例えば、Gibco#17502001、又はそれと同組成の他の製品)である。前記「N-2 Supplement(100X)」は、最終濃度1mMのヒトトランスフェリン(ホロ)(Human Transferrin(Holo))、500mg/Lの組換えインスリンの全鎖(Insulin Recombinant Full Chain)、0.63mg/Lのプロゲステロン(Progesterone)、10mMのプトレシン(Putrescine)、0.52mg/Lのセレナイト(Selenite)を含む。前記Y-27632は、「Y-27632 dihydrochloride(ATP競合性のROCK-I阻害剤及びROCK-II阻害剤であり、Kiはそれぞれ220nM及び300nMである)」(例えば、MCE#129830-38-2、又はそれと同組成の他の製品)である。
【0011】
本発明の特定の実施形態では、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)は、商品番号Gibco#15240062であり、前記HEPESは、商品番号Gibco#15630080であり、前記GlutaMAXは、商品番号Gibco#35050061であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFは、商品番号Peprotech AF-100-15-100であり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFは、商品番号Peprotech AF-100-18B-50であり、前記ヒト組換えタンパク質HGFは、商品番号Peprotech AF-100-39-100であり、前記ヒト組換えタンパク質MSPは、商品番号R&D#352-MS-050であり、前記hydrocortisoneは、商品番号Selleck#S1696であり、前記N-acetyl-L-cysteineは、商品番号Sigma#A9165であり、前記N-2 Supplementは、商品番号Gibco#17502001であり、前記Y-27632は、商品番号MCE#129830-38-2であり、前記プロゲステロン(Progesterone)は、商品番号Sigma#V900699であり、前記β-エストラジオール(β-Estradiol)は、商品番号Sigma#E2758であり、前記Advanced DMEM/F12培地は、商品番号Gibco#12634010である。
【0012】
さらに、前記の婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための培地は、2つの形態で存在することができる。
【0013】
前記2つの形態の一つとして、前記培地Aは、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)、前記HEPES、前記GlutaMax、前記ヒト組換えタンパク質EGF、前記ヒト組換えタンパク質bFGF、前記ヒト組換えタンパク質HGF、前記ヒト組換えタンパク質MSP、前記ヒドロコルチゾン、前記N-2 Supplement、前記Y-27632、前記プロゲステロン(Progesterone)、前記β-エストラジオール(β-EstradioL)、及び前記ヒト細胞培養用基礎培地(例えばAdvanced DMEM/F12培地)を含む溶液であり;
前記培地Bは、前記抗菌-抗真菌剤三重抗体(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンホテリシンB)、前記HEPES、前記GlutaMax、前記ヒト組換えタンパク質EGF、前記ヒト組換えタンパク質bFGF、前記ヒト組換えタンパク質HGF、前記ヒト組換えタンパク質MSP、前記N-アセチル-L-システイン(N-acetyl-L-cysteine)、前記N-2 Supplement、前記Y-27632、前記プロゲステロン(Progesterone)、前記β-エストラジオール(β-EstradioL)及び前記ヒト細胞培養用基礎培地(例えばAdvanced DMEM/F12培地)を含む溶液である。
【0014】
前記培地は、調製後、0.22μMのシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過滅菌する必要があり、4℃で2週間保存可能である。
【0015】
前記2つの形態の他の一つとして、前記培地中の各成分は、単独で存在し、使用時に配合に従って調製される。
【0016】
さらに、前記培地中のヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質HGF、ヒト組換えタンパク質MSPは、ストック液(母液)の形態で保存する(-80℃で長期保存)ことができるが、具体的には、1000倍ストック液(母液)であってもよい。N-アセチル-L-システイン、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone)及びY-27632は、ストック液(母液)の形態で保存する(-20℃で長期保存)ことができるが、具体的には、1000倍ストック液(母液)であってもよい。プロゲステロン(Progesterone)及びβ-エストラジオール(β-EstradioL)は、ストック液(母液)の形態で保存する(-20℃で長期保存)ことができるが、具体的には、100000倍ストック液(母液)であってもよい。
【0017】
1000×ヒト組換えタンパク質EGFストック液は、ヒト組換えタンパク質EGF、BSA及びPBSの組成を有し、ただし、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSである。
【0018】
1000×ヒト組換えタンパク質bFGFストック液は、ヒト組換えタンパク質bFGF、BSA及びPBSの組成を有し、ただし、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSである。
【0019】
1000×ヒト組換えタンパク質HGFストック液は、ヒト組換えタンパク質HGF、BSA及びPBSの組成を有し、ただし、前記ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSである。
【0020】
1000×ヒト組換えタンパク質MSPストック液は、ヒト組換えタンパク質MSP、BSA及びPBSの組成を有し、ただし、前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残部はPBSである。
【0021】
上記の4つの1000倍ストック液において、前記BSAは、100倍ストック液(母液)の形態で存在する(使用する直前に調製する)ことができるが、具体的には、BSA及びPBSの組成を有し、ただし、BSA(Sigma#A1933)の最終濃度は0.1g/mLであり、残部はPBSである。
【0022】
また、1000×N-アセチル-L-システインストック液は、N-アセチル-L-システイン及び超純水の組成を有し、ただし、N-アセチル-L-システインの濃度は0.5Mであり、残部は超純水である。
【0023】
1000×Y-27632は、Y-27632及び超純水の組成を有し、ただし、Y-27632の最終濃度は10mMであり、残部は超純水である。
【0024】
100000×Progesteroneストック液は、Progesterone及び無水エタノールの組成を有し、ただし、Progesteroneの最終濃度は1mMであり、残部は無水エタノールである。
【0025】
100000×β-Estradiolストック液は、β-Estradiol及び無水エタノールの組成を有し、ただし、β-Estradiolの最終濃度は1mMであり、残部は無水エタノールである。
【0026】
1000×ヒドロコルチゾンは、ヒドロコルチゾン及び超純水の組成を有し、ただし、前記ヒドロコルチゾンの最終濃度は0.5Mであり、残部は超純水である。
【0027】
前記培地は、婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための培地である。
【0028】
上記培地において、前記「最終濃度」は、前記培地における最終濃度である。
【0029】
第2の態様において、本発明は、婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための支援試薬を特許請求する。
【0030】
本発明に係る婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための支援試薬は、前記培地と、サンプル解離液、サンプル保存液、細胞単離緩衝液、細胞消化液、サンプル洗浄液、消化停止液、細胞凍結保存液及び1% CYTOP溶液のうち、少なくとも1種の試薬とを含む。
【0031】
前記サンプル解離液は、コラゲナーゼI、コラゲナーゼIII、コラゲナーゼIV及びPBSの組成を有し、ただし、前記コラゲナーゼIの前記サンプル解離液における最終濃度は150~250U/mL(例えば、200U/mL)であり、前記コラゲナーゼIIIの前記サンプル解離液における最終濃度は250~350U/mL(例えば290U/mL)であり、前記コラゲナーゼIVの前記サンプル解離液における最終濃度は150~250U/mL(例えば、200U/mL)であり、残部はPBSである。
【0032】
ここで、コラゲナーゼ(前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼIII又は前記コラゲナーゼIV)の単位Uは、プロテアーゼの酵素活性の観点から定義すると、コラゲナーゼ(前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼIII又は前記コラゲナーゼIV)を37℃、pH7.5の条件下で、1Uプロテアーゼで5時間処理することにより、L-ロイシン1μmolを放出することができる。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、前記コラゲナーゼIは、商品番号Gibco#17100~017であり、前記コラゲナーゼIIIは、商品番号Solarbio#C8490であり、前記コラゲナーゼIVは、商品番号Gibco#17104-019であり、前記PBSは、商品番号Gibco#21-040-CVRである。
【0034】
前記サンプル保存液は、ウシ胎児血清、二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)、HEPES及びHBSS(Hank’s平衡塩溶液)の組成を有し、ただし、前記ウシ胎児血清の最終濃度は1~5%(例えば2%であり、%は体積百分率を表す)であり、前記二重抗体P/Sにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記HEPESの最終濃度は8~12mM(例えば、10mM)であり、残部はHBSSである。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、前記二重抗体P/Sは、商品番号Gibco#15140122であり、前記PBSは、商品番号Gibco#21-040-CVRである。
【0036】
前記細胞単離緩衝液は、二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)、ヘパリンナトリウム、及びPBSの組成を有し、ただし、前記二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)におけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mLL(例えば、100U/mL)であり、前記二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)におけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記ヘパリンナトリウムの最終濃度は10IU/mLであり、残部はPBSである。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、前記二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)は、商品番号Gibco#15140122であり、前記ヘパリンナトリウムは、商品番号Solarbio#H8270であり、前記PBSは、商品番号Gibco#21-040-CVRである。
【0038】
前記細胞消化液は、Accutase(アキュターゼ)、EDTA、TrypLE Express及びPBSの組成を有し、ただし、Accutaseは前記細胞消化液10mL当たりにおいて4~6mL(例えば、5mL)であり、EDTAの最終濃度は5mM(即ち、10μLの0.5MのEDTA)であり、TrypLE Expressは1.5~2.5mL(例えば、2mL)であり、残部はPBSである。
【0039】
さらに、前記Accutaseは、「StemProTM AccutaseTMCell Dissociation Reagent」(例えば、Gibco#A11105-01、又はそれと同じ組成の他の製品)である。前記Accutaseは、単一成分型酵素で、D-PBS、0.5mMのEDTA溶液に可溶である。前記TrypLE Expressは、「TrypLETM Express Enzyme(1X),no phenol red」(例えば、Gibco#12604013、又はそれと同じ組成の他の製品)である。前記「TrypLETMExpress Enzyme(1X),no phenol red」は、200mg/LのKCl、200mg/LのKHPO、8000mg/LのNaCl、2160mg/LのNaHPO・7HO、457.6mg/LのEDTAを含み、組換えプロテアーゼをさらに含む。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、前記Accutaseは、商品番号Gibco#A11105-01であり、前記0.5MのEDTAは、商品番号Invitrogen#AM9261であり、前記TrypLE Expressは、商品番号Gibco#12604013であり、前記PBSは、商品番号Gibco#21-040-CVRである。
【0041】
前記サンプル洗浄液は、二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)及びPBSの組成を有し、ただし、前記二重抗体P/Sにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、残部はPBSである。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、前記二重抗体P/Sは、商品番号Gibco#15140122であり、前記PBSは、商品番号Gibco#21-040-CVRである。
【0043】
前記消化停止液は、ウシ胎児血清、二重抗体P/S(ペニシリン・ストレプトマイシン)、及びDMEM培地の組成を有し、ただし、前記ウシ胎児血清の最終濃度は8~12%(例えば10%であり、%は体積百分率を表す)であり、前記二重抗体P/Sにおけるペニシリンの最終濃度は100~200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100~200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、残部はDMEM培地である。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、前記ビス抗P/Sは、商品番号Gibco#15140122であり、前記PBSは、商品番号Gibco#21-040-CVRである。
【0045】
前記細胞凍結保存液は、Advanced DMEM/F12培地、DMSO、及び1%メチルセルロース溶液の組成を有し、前記Advanced DMEM/F12培地、前記DMSO、及び前記1%メチルセルロース溶液は、それらの体積比が20:2:(0.8~1.2)であり、前記1%メチルセルロース溶液は、濃度が1g/100mlであるメチルセルロース水溶液である。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、前記Advanced DMEM/F12培地は、商品番号Gibco#12634010であり、前記DMSOは、商品番号Sigma#D2438であり、前記メチルセルロースは、商品番号Sigma#M7027である。
【0047】
前記1% CYTOP溶液は、CYTOP及びフッ素オイルの組成を有し、前記1% CYTOP溶液100mLに対してCYTOPを1mL含み、残部はフッ素オイルである。
【0048】
ここで、前記CYTOPは、perfluoro(1-butenylvinylether)polymerである。前記フッ素オイルは、商品番号3M#FC40のフッ素オイル、又はそれと同じ組成の他の製品であってもよい。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、前記CYTOPは、具体的には、商品番号Asashi glass#CTL-809Mであり、前記フッ素オイルは、具体的には、商品番号3M#FC40である。
【0050】
前記サンプル保存液は、サンプルの体から離れた後の一時的保存に用いることができ、サンプルの体から離れた場合、サンプル中の細胞の活性を短時間で維持することができる。前記サンプル保存液は、調製後4℃で1ヶ月間保存可能である。
【0051】
前記サンプル洗浄液は、サンプルの洗浄及び消毒に用いられる。前記サンプル洗浄液は、使用する直前に調製することが必要である。
【0052】
前記サンプル解離液は、サンプルの解離に用いることができ、サンプル中の婦人科腫瘍の初代細胞を組織から解離させることができる。前記サンプル解離液は、使用する直前に調製することは必要である。ここで、その中のコラゲナーゼI、コラゲナーゼIII及びコラゲナーゼIVは、ストック液(母液)の形態で、-20℃で長期保存することができるが、具体的には10倍ストック液(母液)であってもよい。10×コラゲナーゼIストック液は、前記コラゲナーゼI及びPBSの組成を有し、前記コラゲナーゼIの最終濃度が2000U/mLであり;10×コラゲナーゼIIIストック液は、前記コラゲナーゼIII及びPBSの組成を有し、前記コラゲナーゼIIIの最終濃度が2000U/mLであり;10×コラゲナーゼIVストック液は、前記コラゲナーゼIV及びPBSの組成を有し、前記コラゲナーゼIVの最終濃度が2000U/mLであり;残部はPBSである。前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼIII及び前記コラゲナーゼIVの酵素活性についての定義は、先に定義した通りである。
【0053】
前記細胞単離緩衝液は、婦人科腫瘍の胸腹水サンプル中の細胞を懸濁させるための緩衝液である。前記細胞単離緩衝液は、調製後4℃で1ヶ月間保存可能である。
【0054】
前記細胞消化液は、細胞塊の消化及び継代に用いることができ、婦人科腫瘍の塊を単一細胞に消化することができる。前記細胞消化液は、使用する直前に調製することが必要である。
【0055】
前記消化停止液は、サンプルを解離する過程又は細胞を消化する過程を終了させることに用いることができ、前記消化停止液は、調製後、4℃で1ヶ月間保存可能である。
【0056】
前記婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための培地は、婦人科腫瘍の初代細胞の培養に用いることができる。前記婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための培地は、調製後、0.22μMのシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過滅菌されて、4℃で2週間保存可能である。
【0057】
前記細胞凍結保存液は、使用する直前に調製することが必要である。ここで、前記1%メチルセルロース溶液は、4℃での長期保存が可能である。
【0058】
本発明において、前記「最終濃度」とは、すべで相応な成分の相応な溶液における最終濃度を意味している。
【0059】
第3の態様において、本発明は、前記培地又は支援試薬の、婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための使用を特許請求している。
【0060】
第4の態様において、本発明は、婦人科腫瘍の初代細胞を培養する方法を特許請求している。
【0061】
本発明が特許請求している婦人科腫瘍の初代細胞を培養する方法は、前記培地を用いて婦人科腫瘍の初代細胞を懸濁培養する工程を含む。
【0062】
ここで、前記婦人科腫瘍の初代細胞は、婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞又は婦人科腫瘍における胸腹水サンプルの初代腫瘍細胞であってもよい。
【0063】
前記婦人科腫瘍の初代細胞が婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞である場合、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞は、前記サンプル解離液を用いて婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織を解離させることにより得ることができる。
【0064】
さらに、1mg組織に対して0.1~0.3mL(例えば0.1mL)の前記サンプル解離液である量で、前記切断された前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織(例えば、0.8~1.2mmの小片に切断)を、事前に37℃に予熱した前記サンプル解離液により処理して、37℃、15分間~3時間の解離時間の条件で、サンプル解離を行う工程を含む方法により、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織を前記サンプル解離液で解離することができる。単一細胞が大量に観察されるまで、サンプルの解離状態を15分ごとに顕微鏡下で観察した。
【0065】
前記婦人科腫瘍の初代細胞が婦人科腫瘍における胸腔液サンプルの初代腫瘍細胞である場合、前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプルの初代腫瘍細胞が前記細胞単離緩衝液を用いて婦人科腫瘍における胸腔液サンプルから単離することができる。
【0066】
さらに、前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプル中の細胞を前記細胞単離緩衝液で懸濁させた後、密度勾配遠心分離(Ficollリンパ球分離液を用いる)により前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプルの初代腫瘍細胞を得る工程を含む方法により、前記婦人科腫瘍における胸腔液サンプルを前記単離緩衝液で単離することができる。
【0067】
前記婦人科腫瘍の胸腔液サンプルを前記単離緩衝液で単離する前に、さらに、前記婦人科腫瘍の胸腔液サンプル中の不純物、血餅等の細胞に対する密度勾配分離を妨害する成分を除去するように、前記婦人科腫瘍の胸腔液サンプルの分離前処理工程をさらに含んでもよい。
【0068】
前記方法において、細胞が直径80~120μm(例えば、100μm)の塊を形成するまでに、細胞培養容器Mを用いて、前記婦人科腫瘍の初代細胞を、前記婦人科腫瘍の初代細胞の培地で37℃、5%COの条件下で懸濁培養し、2~4日毎に(例えば、3日毎に)培地を一回交換する工程を含む方法により、前記婦人科腫瘍の初代細胞を、前記婦人科腫瘍の初代細胞の培地で懸濁培養することができる。
【0069】
ここで、初期接種密度は、10個/cmの容器底面積であってもよく、6ウェルプレートを例として、1ウェル当たり10個の細胞という密度で敷いた。
【0070】
ここで、前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン材質の細胞培養容器、ポリカーボネート材質の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート材質の細胞培養容器、COC樹脂材質の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー材質の細胞培養容器又は低付着性表面の細胞培養容器、及び(II)(I)における細胞培養容器をCYTOPで修飾した細胞培養容器のいずれか一つであってもよい。
【0071】
さらに、前記細胞培養容器は、細胞培養皿、細胞培養ウェルプレート、又は細胞培養用マイクロウェルプレートチップ(例えば、実施例15における図5に示すマイクロプレートチップ)などである。
【0072】
前記(II)において、前記(I)における細胞培養容器を、エッチング出力20W、エッチング時間3分間のエッチング条件で純酸素エッチングした後、前記細胞培養容器の表面を前記1% CYTOP溶液で覆い、前記1% CYTOP溶液を乾燥することにより、CYTOP修飾を完了する工程を含む方法により、前記(I)における細胞培養容器をCYTOP修飾することができる。
【0073】
さらに、前記方法において、婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルの表面を、体積百分率で70~75%(例えば75%)のエタノールで10~30秒間洗浄し、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルを、前記サンプル洗浄液で10~20回(例えば10回)洗浄し、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルを、無菌PBS溶液で5~10回(例えば5回)洗浄した後、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルから不純物、結合組織、脂肪組織、壊死組織などの、初代細胞の培養に影響を与えた成分を除去するように、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織に対して解離前処理を行う工程をさらに含んでもよい。
【0074】
前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織に対して解離前処理を行う工程は、氷上で操作することが必要であり、また、全部の操作は10分間以内に完了する必要がある。
【0075】
さらに、前記解離前処理を行う前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織サンプルの、体から離れた時間が2時間以内であることが必要であり、前記解離前処理を行う直前まで前記サンプル保存液に保存する必要がある。
【0076】
さらに、前記方法において、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織に対して解離処理を前記サンプル解離液で行った後、解離反応を、8~15倍(例えば、10倍)の体積の前述消化停止液で停止させ、細胞懸濁液を収集し、100μm又は40μmの無菌の細胞ろ過網を用いて前記細胞懸濁液を濾過して組織残片及び接着細胞を除去し、800~1000g(例えば、800g)で、室温で10~15分間(例えば、10分間)遠心分離し、上清を廃棄した後、3~5mL(例えば、5mL)の無菌PBSで細胞を再懸濁し、さらに800~1000g(例えば800g)で、室温で10~15分間(例えば、10分間)遠心分離し、上清を廃棄した後、前記婦人科腫瘍における固形腫瘍の初代細胞の培地で細胞ペレットを再懸濁し、顕微鏡下で細胞状態を観察し、細胞計数を行う工程をさらに含んでもよい。
【0077】
さらに、前記方法において、前記婦人科腫瘍の初代細胞が直径80~120μm(例えば100μm)の塊を形成するときに、前記婦人科腫瘍の初代細胞を継代する工程をさらに含んでもよい。
【0078】
さらに、前記継代を行う際に用いられる消化温度は、37℃であった。
【0079】
更に、前記継代を行う際に用いられる消化停止液は、すなわち、前記消化停止液である。
【0080】
より具体的には、前記継代を行う工程は、以下のとおりである。継代しようとする細胞塊を収集し、遠心分離して細胞塊を無菌PBS溶液で洗浄し、それをさらに遠心分離した後、細胞塊を前記細胞消化液で再懸濁し、細胞塊がすべて単一細胞に消化されるまでに37℃で消化し、前記消化停止液(その用量が5~10倍であってもよく、例えば10倍の用量である)で消化反応を停止し、細胞懸濁液を収集し、それを遠心分離した後、婦人科腫瘍の初代細胞の培地で細胞ペレットを再懸濁し、カウントした後、低付着性表面を有する培養容器を用いて、37℃、5%COという培養条件で、細胞を懸濁培養する(初期接種密度は、10個/cmの容器底面積であり、6ウェルプレートを例として、1ウェル当たり10個の細胞という密度でよい)。上記の継代工程における全ての遠心分離は、具体的には、800g~1000g(例えば、800g)で、室温で10~20分間(例えば、10分間)遠心分離することであってもよい。
【0081】
さらに、前記方法は、2~3回継代して増幅させた前記婦人科腫瘍の初代細胞を凍結保存及び/又は蘇生する工程をさらに含んでもよい。
【0082】
ここで、前記凍結保存する際に用いる細胞凍結保存液は、本明細書に記載の細胞凍結保存液である。
【0083】
さらに、前記凍結保存を行う工程は、以下のとおりである。凍結保存しようとする細胞塊を収集し、それを遠心分離した後、細胞塊を無菌PBS溶液で洗浄し、さらに遠心分離した後、細胞塊を前記細胞消化液で再懸濁し、細胞塊が全て単一細胞に消化されるまでに37℃で消化し、前記消化停止液(その用量が5~10倍であってもよく、例えば10倍の用量である)で消化反応を停止し、細胞懸濁液を収集し、それを遠心分離した後、細胞ペレットを0.5~2×10/mL(例えば10/mL)という密度で、前記細胞凍結保存液で再懸濁させ、勾配降温カセットで一晩凍結保存した後、液体窒素へ転移して長期保管する。上記の凍結保存工程における全ての遠心分離は、具体的には、800g~1000g(例えば、800g)で、室温で10~20分間(例えば、10分間)遠心分離することであってもよい。
【0084】
さらに、前記蘇生を行う工程は、以下のとおりである。蘇生しようとする細胞を入れた凍結保存チューブを液体窒素から取り出し、37~39℃(例えば、37℃)の無菌水中で細胞を急速に溶け、遠心分離した(例えば、800~1000g(例えば800g)、室温で5~10分間(例えば10分間)遠心分離した)後、細胞ペレットを前記婦人科腫瘍の初代細胞の培地で、再懸濁し、その後、低付着性表面を有する培養容器を用いて、37℃、5%COという培養条件で、細胞を懸濁培養する(初期接種密度は、10個/cmの容器底面積でよく、1チューブ当たりの細胞(10個)を3.5cmの培養皿へ蘇生する)。
【0085】
上記のそれぞれの態様において、前記婦人科腫瘍の初代細胞は、婦人科腫瘍の患者の手術サンプル、又は穿刺生検サンプル若しくは胸腔液サンプル(胸水若しくは腹水)から単離される。ここで、好ましくは、手術サンプルから得られる婦人科腫瘍における固形腫瘍の組織標本は、重量が20mgを超え、穿刺生検サンプル(固形腫瘍サンプルに属する)は4本を超え、胸腔液サンプルが100mLを超える。
【0086】
本発明において、前記PBSは、全て1×PBS、pH7.3~7.5であってもよい。その具体的な組成は、以下のとおりである:溶剤は水であり、溶質及びその濃度は、KHPO144mg/L、NaCl 9000mg/L、NaHPO・7HO 795mg/Lである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】乳がんの組織を処理した後に得られた単細胞である。スケールは、100μmであり、100倍に拡大した。A及びBは、それぞれ二つの並行処理である。
図2】乳がんの組織を初代培養した後に得られた細胞塊である。スケールは、100μmであり、100倍に拡大した。Aは培地Aで培養して得られたものであり、Bは培地Bで培養して得られたものである。
図3】乳がんの組織を初代培養した後に得られた婦人科腫瘍細胞のHE染色図である。スケールは、100μmであり、200倍に拡大した。Aは培地Aで培養して得られたものであり、Bは培地Bで培養して得られたものである。
図4】乳がんの組織を初代培養した後に得られた腫瘍細胞塊の、パラフィン切片を用いた免疫組織化学染色図である。スケールは、100μmであり、200倍に拡大した。Aは培地Aで培養して得られたものであり、Bは培地Bで培養して得られたものである。
図5】本発明に係るマイクロプレートチップの設計図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解するために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施例における実験方法は、特に指定がない限り、いずれも常法である。以下の実施例に使用された試験材料は、特に指定がない、いずれも従来の生化学試薬販売元から購入したものである。以下の実施例における定量試験は、3回の繰り返し実験を設定し、その結果を平均化したものである。
【0089】
実施例1.婦人科腫瘍の初代細胞を培養するための試薬の調製
1.サンプル保存液(100mL)
サンプル保存液(100mL)の具体的な配合を表1に示す。
【0090】
【0091】
サンプル保存液を調製した後、5mLずつ15mLの遠心分離管に分注され、分注した後、4℃で1ヶ月間保存した。
【0092】
2.サンプル洗浄液(100mL)
サンプル洗浄液(100mL)の具体的な配合を表2に示す。
【0093】
【0094】
サンプル洗浄液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0095】
3.サンプル解離液(10mL)
サンプル解離液(10mL)の具体的な配合を表3に示す。
【0096】
【0097】
表3において、コラゲナーゼストック液の調製は表4~表6に示す。
【0098】
【0099】
10×コラゲナーゼIストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて1mLずつ分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0100】
【0101】
10×コラゲナーゼIIIストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて1mLずつ分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0102】
【0103】
10×コラゲナーゼIVストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて1mLずつで分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0104】
表4~6において、コラゲナーゼ(前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼIII又は前記コラゲナーゼIV)の単位Uをプロテアーゼの酵素活性で定義すると:コラゲナーゼ(前記コラゲナーゼI、前記コラゲナーゼIII又は前記コラゲナーゼIV)を37℃、pH7.5という条件下で、1Uプロテアーゼで5時間処理することにより、L-ロイシン1μmolを放出することができる。
【0105】
4.細胞消化液(10mL)
細胞消化液(10mL)の具体的な配合を表7に示す。
【0106】
【0107】
細胞消化液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0108】
5.消化停止液(100mL)
消化停止液(100mL)の具体的な配合を表8に示す。
【0109】
【0110】
消化停止液を調製した後、4℃で1ヶ月間保存することが可能である。
【0111】
6.婦人科腫瘍の初代細胞の培地(100mL)
婦人科腫瘍の初代細胞の培地(100mL)には2種類があり、それぞれ、培地A及び培地Bと表記した。前記培地Aの具体的な配合を表9に示す。前記培地Bの具体的な配合を表10に示す。
【0112】
【0113】
【0114】
婦人科腫瘍の初代細胞の培地を調製した後、0.22μMのシリンジフィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過滅菌されて4℃で2週間保存可能である。
【0115】
表9及び表10において、ヒト組換えタンパク質ストック液の調製を表12~表15に示し、hydrocortisoneストック液の調製を表16に示し、N-acetyl-L-cysteineストック液の調製を表17に示し、Y-27632ストック液の調製を表18に示し、Progesteroneストック液の調製を表19に示し、β-Estradiolストック液の調製を表20に示す。これらのストック液を調製する時に必須な100×BSA溶液の調製を表11に示す。
【0116】
【0117】
100×BSA溶液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0118】
【0119】
1000×ヒト組換えタンパク質EGFストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-80℃での長期保存が可能である。
【0120】
【0121】
1000×ヒト組換えタンパク質bFGFストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-80℃での長期保存が可能である。
【0122】
【0123】
1000×ヒト組換えタンパク質HGFストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-80℃での長期保存が可能である。
【0124】
【0125】
1000×ヒト組換えタンパク質MSPストック液を調製した後、1.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-80℃での長期保存が可能である。
【0126】
【0127】
1000×N-acetyl-L-cysteineストック液を調製した後、0.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0128】
【0129】
1000×N-acetyl-L-cysteineストック液を調製した後、0.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0130】
【0131】
1000×Y-27632ストック液を調製した後、0.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0132】
【0133】
1000 00×Progesteroneストック液を調製した後、0.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0134】
【0135】
10000×β-Estradiolストック液を調製した後、0.5mLの無菌遠心分離管を用いて分注した。当該ストック液は、-20℃での長期保存が可能である。
【0136】
7.細胞凍結保存液
細胞凍結保存液の具体的な配合は表21に示すとおりである。
【0137】
【0138】
細胞凍結保存液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0139】
表21において、1%メチルセルロース溶液の調製を表22に示す。
【0140】
【0141】
1%メチルセルロース溶液は、調製後、4℃での長期保存が可能である。
【0142】
8.1% CYTOP溶液
【0143】
1% CYTOP溶液は、調製後、常温での長期保存が可能である。
【0144】
9.細胞単離緩衝液(100mL)
細胞単離緩衝液(100mL)の具体的な配合を表24に示す。
【0145】
【0146】
細胞単離緩衝液は、調製後、4℃で1ヶ月間保存が可能である。
【0147】
表24において、ヘパリンナトリウム溶液の調製を表25に示す。
【0148】
【0149】
1000×ヘパリンナトリウム溶液は、使用する直前に調製する必要がある。
【0150】
実施例2.婦人科腫瘍の手術後の標本/生検穿刺の標本/胸腔液サンプルの取得
1、三級・一流の病院との連携、連携は、正規の医学倫理審査を経て実施した。
2、主治医は、医学ガイドラインに規定された臨床徴候に従って患者群を選択し、手術中の臨床徴候に従って体外培養のために適切なサンプルを選択する。サンプルの選択基準は以下のとおりである:原発乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、又はそれらの転移病巣であり;また、手術標本の重量が20mgを超えたサンプル、胸腔液サンプルが100mLを超えたサンプル、又は穿刺生検の標本が4本を超えたサンプルである。
3、主治医は、患者の性別、年齢、病歴、家族歴、喫煙歴、病理病期分類、臨床診断などの基本的な臨床情報を提供する。患者の氏名、身分証明書の番号等の患者のプライバシーに関する情報を秘匿し、統一された実験番号に置き換える。また、実験番号の命名規則は、採集されたサンプルの8桁の数字である日付+患者の院内番号の下4桁である。例えば、2018年1月1日に提供されたサンプルの場合、患者の院内番号がT001512765であれば、サンプルの実験番号は201801012765である。
4、手術中に、外科医は、手術室の無菌環境で、新鮮な術後の標本/生検穿刺の標本を採集し、予め準備したサンプル保存液(実施例1参照)に入れた。サンプルは、体から離れた後、氷で一時的に保管され、2時間以下をかけて実験室に輸送され、次の操作に用いられた。胸腔液サンプルを、48時間以下をかけて実験室に輸送され、次の操作に用いられた。
【0151】
実施例3.婦人科腫瘍の固形腫瘍の組織サンプルに対する解離前処理
以下の操作は氷上で行うことが必要であり、また、全部の操作は10分間以内に完了する必要がある。
【0152】
下記の操作に使用する手術器具は、いずれも高温高圧で滅菌され、乾燥しておく必要がある。
1.サンプルを秤量した。
2.サンプルの表面を75%(体積百分率)のエタノールで10~30秒間洗浄した。
3.サンプルをサンプル洗浄液で5回、無菌PBS溶液で5回洗浄した。
4.眼科用ハサミ、眼科用ピンセット、メスなどの器具を用いて、サンプル中の脂肪組織、結合組織、壊死組織を慎重に剥離した。
【0153】
実施例4.婦人科腫瘍の固形腫瘍の組織サンプルに対する解離
下記の実施例に使用する手術器具は、いずれも高温高圧で滅菌され、乾燥しておく必要がある。
【0154】
1.組織を眼科用ハサミで1mm程度の小さな塊に切断した。
2.1mg組織当たり0.1mLのサンプル解離液の量で、切断した組織サンプルを、事前に37℃に予熱したサンプル解離液により処理して、37℃、15分間~3時間の解離時間の条件で、サンプル解離を行った。単一細胞が大量に観察されたまでに、サンプルの解離状態を15分間ごとに顕微鏡下で観察した。
3.解離反応を10倍の体積の消化停止液(実施例1参照)で停止させ、細胞懸濁液を収集した。
4.細胞懸濁液を100μmの無菌の細胞ろ過網で濾過し、組織残片及び接着細胞を除去した。
5.800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
6.細胞を5mLの無菌PBSで再懸濁し、800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
7.細胞ペレットを婦人科腫瘍の初代細胞の培地(実施例1参照)で再懸濁し、顕微鏡下で細胞状態を観察し、細胞数をカウントした。
【0155】
図1に示すように、解離して得られた単細胞懸濁液には、腫瘍細胞の以外にも、赤血球、リンパ球、繊維細胞などの各種細胞が大量に混在していた。本方法の利点の1つは、その後の培養過程において、がん細胞のみが大量に増殖できるが、他の細胞の割合は徐々に少なくし、あるいは消失し、最終的に純度の高い婦人科腫瘍の初代腫瘍細胞が得られることにある。
【0156】
実施例5.婦人科腫瘍の胸腔液サンプルに対する前処理
以下の操作は氷上で行うことが必要であり、また、全部の操作は10分間以内に完了する必要がある。
【0157】
1.婦人科腫瘍の胸腔液サンプルを氷上で30分間ほど静置し、サンプル中の血餅及び大きな不溶性固体をサンプル管の底部に沈降させた;
2.上清を50mLの無菌遠心分離管に慎重に移し、1倍の体積の予冷されたPBSを加えて均一に混合した;
3.2000gで、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した;
4.細胞単離緩衝液(実施例1参照)で細胞ペレットを再懸濁させ、2000gで、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄した;
5.細胞単離緩衝液(実施例1参照)で細胞ペレットを再懸濁させ、細胞の濃度を10/mLに調整した。
【0158】
実施例6.婦人科腫瘍の胸腔液サンプルに対する密度勾配遠心分離
1.50mLの無菌遠心分離管を用いて、細胞懸濁液と同じ体積のFicoll細胞分離液(MP#50494)を採取した。
2.細胞懸濁液を、細胞分離液の上層に、両者の間に明確な界面が形成されるように慎重に加えた。
3.2000gで、水平方向に常温の遠心分離を20分間行った。
4.中間層の白色膜を新しいチューブに吸引して取った。
5.細胞ペレットを20mLの無菌PBSで再懸濁させ、1500gで、常温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
6.細胞ペレットを婦人科腫瘍の初代細胞の培地(実施例1参照)で再懸濁させ、細胞状態を顕微鏡で観察し、細胞数をカウントした。
【0159】
この結果から分かるように、解離して得られた単細胞懸濁液には、腫瘍細胞の以外にも赤血球、リンパ球、繊維細胞などの各種細胞が大量に混在している。本方法の利点の1つは、後続の培養過程において、がん細胞のみが大量に増殖できるが、他の細胞の割合は徐々に少なくし、あるいは消失し、最終的に純度の高い婦人科腫瘍の初代細胞が得られることにある。
【0160】
実施例7.婦人科腫瘍の初代細胞に対する培養
1.低付着性表面(low-attachment-surface)を用いて婦人科腫瘍の初代細胞の懸濁培養を行った。用いられた培地は、実施例1における婦人科腫瘍の初代細胞の培地A又はBである。また、6ウェルプレートを例として、1ウェル当たり10個の細胞という密度で敷いて、37℃、5%COという培養条件で、細胞インキュベーターにおいて培養した。
【0161】
前記培地が培地Aである場合、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が50ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり;hydrocortisoneの最終濃度は10μg/mLであり;Y-27632の最終濃度は10μMであり;Progesteroneの最終濃度は100nMであり;β-Estradiolの最終濃度は10nMであった。
【0162】
前記培地が培地Bである場合、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が50ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり;N-acetyl-L-cysteineの最終濃度は1mMであり;Y-27632の最終濃度は10μMであり;Progesteroneの最終濃度は100nMであり;β-Estradiolの最終濃度は10nMである。
【0163】
2.毎日、細胞の状態を観察し、細胞が直径100μm程度の塊を形成するまで、3日毎に培地を交換した。
【0164】
図2に示すように、腫瘍細胞は3~10日間の培養により直径100μmの細胞塊に大量に増殖し、腫瘍細胞の総数は10個を超えることができ、他の種類の細胞の数量は、顕著に低減し、あるいは消失した。本方法は、大量のサンプルに対する試験を経てから、婦人科腫瘍の初代腫瘍細胞の体外培養の成功率を70%にすることができた。
【0165】
実施例8.婦人科腫瘍の初代細胞の継代
1.培養皿から細胞塊を収集し、800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
2.細胞塊を無菌PBS溶液で洗浄し、800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
3.細胞塊を細胞消化液(実施例1参照)で再懸濁させ、37℃で消化した。細胞塊の消化状況を5分間毎に顕微鏡で観察し、細胞塊がすべて消化されて単一細胞になるまで観察した。
4.解離反応を10倍の体積の消化停止液(実施例1参照)で停止し、細胞懸濁液を収集した。
5.800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
6.細胞ペレットを婦人科腫瘍の初代細胞の培地(実施例1参照)で再懸濁させ、細胞数をカウントした。
7.低付着性表面(low-attachment-surface)を用いて婦人科腫瘍の初代細胞の培養を行った。用いられた培地は、実施例1における婦人科腫瘍の初代細胞の培地である。また、6ウェルプレートを例として、1ウェル当たり10個の細胞という密度で敷いて、37℃、5%COという培養条件で、細胞インキュベーターにおいて培養した。
【0166】
実施例9.婦人科腫瘍の初代細胞に対する凍結保存
懸濁培養された婦人科腫瘍の初代細胞を、2~3回継代して増殖させた後、凍結保存することができる。
【0167】
1.培養皿から細胞塊を収集し、800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
2.細胞塊を無菌PBS溶液で洗浄し、800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
3.細胞塊を細胞消化液(実施例1参照)で再懸濁させ、37℃で消化した。細胞塊がすべて消化されて単一細胞になるまで、細胞塊の消化状況を15分間毎に顕微鏡で観察した。
4.解離反応を10倍の体積の消化停止液(実施例1参照)で停止し、細胞懸濁液を収集して細胞数をカウントした。
5.800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
6.細胞ペレットを細胞凍結保存液(実施例1参照)で10/mLの密度で再懸濁させ、2mLの凍結保存チューブの1管当たり、1mLの細胞懸濁液を入れ、また、それを勾配降温カセットで一晩凍結保存した後、液体窒素へ転移して長期保存する。
【0168】
実施例10.婦人科腫瘍の初代細胞の蘇生
液体窒素中に保存された婦人科腫瘍の初代細胞に対して蘇生を行うことができる。
【0169】
1.5分間早く、37℃の無菌水を用意した。
2.凍結保存チューブを液体窒素から取り出し、細胞を37℃の無菌水において急速に溶けた。
3.800gで、室温で10分間遠心分離し、上清を廃棄した。
4.細胞ペレットを婦人科腫瘍の初代細胞の培地(実施例1参照)で再懸濁させ、低付着性表面を用いて婦人科腫瘍の初代細胞の培養を行い、1チューブ当たりの細胞を3.5cmの培養皿へ蘇生し、細胞培養箱により37℃、5%COという培養条件で培養した。
【0170】
実施例11.婦人科腫瘍の初代細胞に対するHE染色同定
下記の実施例で使用された試薬・消耗品に対する説明は、以下のとおりである。
【0171】
HE染色キット(Beijing Solarbio Science & Technology Co., Ltd.、#G1120);
カチオン脱離防止スライドガラス(ZSGB-BIO Technology Co., Ltd.);
キシレン、メタノール、アセトン(北京化学試薬社、分析純度);
中性の樹脂ガム(Beijing Yili Fine Chemicals Co., Ltd.)。
【0172】
1.懸濁細胞を10/mLの濃度の細胞懸濁液とし、カチオン脱離防止スライドガラスに10μL滴下し、自然乾燥させた。
2.風乾された細胞に、4℃で予冷されたメタノール/アセトン混合液(体積比1:1) 50μLを慎重に滴下し、その後、スライドガラスを4℃の冷蔵庫に入れ、10分間固定した。
3.細胞が固定されたスライドガラスを取り出し、室温で自然乾燥させた。
4.スライドガラスを200μLのPBSで2回洗浄した。
5.スライドガラス上の水分が微乾燥したところ、100μLのヘマトキシリン染色液を加えて1分間染色した。
6.ヘマトキシリン染色液を吸引して除去し、スライドガラスを水道水200μLで3回洗浄した。
7.100μLの分化液を滴下して1分間分化した。
8.分化液を吸引して除去し、スライドガラスを、水道水で2回、蒸留水で1回、順番に洗浄した。
9.スライドガラス表面の水分を吸引して除去し、200μLのエオシン染色液を滴下して40秒間染色した。
10.エオシン染色液を吸引して除去し、順に、75%、80%、90%、100%のエタノールで、20秒間、20秒間、40秒間、40秒間のリンスで脱水した。
11.エタノールが乾燥した後、キシレン50μLを滴下して細胞の透過を行った。
12.キシレンが完全に乾燥した後、中性の樹脂ガムを1滴滴下し、カバーガラスでシールし、顕微鏡で観察し、写真を撮った。
【0173】
図3は、体外培養で得られた婦人科腫瘍の初代腫瘍細胞のHE染色の効果図を示す。これらの細胞は、一般的に、高い核細胞質比、ハイパークロマティック核、核内のクロマチンの凝縮、多核、不均一な細胞サイズなどの腫瘍細胞の特徴を有することが分かった。
【0174】
実施例12.婦人科腫瘍の初代細胞の免疫組織化学染色同定
下記の実施例で使用された試薬に対する説明は、以下の通りである。
【0175】
パラホルムアルデヒド(北京化学試薬社、分析純度)、パラホルムアルデヒドの粉末を超純水で溶解して、4%のパラホルムアルデヒド溶液(4g/100mL)を調製した;
過酸化水素(北京化学試薬社、35%);
ブロッキング用正常ヤギ血清(Solarbio、SL038);
免疫組織化学一次抗体(福建邁新生物技術開発有限公司、kit-0012);
免疫組織化学二次抗体(Abcam、ab205719);
EDTA修復液(Abcam、ab93684);
DAB発色液(SignalStain(登録商標) DAB Substrate Kit,8059S)
供試培地:実施例1における2種の婦人科腫瘍の初代細胞の培地:すなわち、培地A又は培地B。
【0176】
前記培地が培地Aである場合、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が50ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり;hydrocortisoneの最終濃度は10μg/mLであり;Y-27632の最終濃度は10μMであり;Progesteroneの最終濃度は100nMであり;β-Estradiolの最終濃度は10nMであった。
【0177】
前記培地が培地Bである場合、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度が50ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質HGFの最終濃度は20ng/mLであり;ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり;N-acetyl-L-cysteineの最終濃度は1mMであり;Y-27632の最終濃度は10μMであり;Progesteroneの最終濃度は100nMであり;β-Estradiolの最終濃度は10nMである。
【0178】
以下の手順により、実施例1における婦人科腫瘍の初代細胞の培地で培養して得られた婦人科腫瘍の細胞塊を収集し、パラフィン切片で行った。
1.切片を、キシレンI、キシレンIIの順でそれぞれ10分間浸漬した。
2.無水エタノールI(5分間)-無水エタノールII(5分間)-95%アルコール(5分間)-80%アルコール(5分間)-70%アルコール(5分間)に再度浸漬し、次いで、脱イオン水で、各回ずつ2分間、2回リンスした。
3.組織切片を修復カセットに入れ、次いで、組織が浸漬されるように、適量の希釈されたEDTA修復液(pH9.0)を添加した。
4.マイクロ波におけるミッドレンジで、10分間修復し(液体が沸騰した時点で時間をカウントし始めた)した。なお、この過程において、組織が切片の上で乾燥することを防止するべきである。
5.修復カセットを電子レンジから取り出し、自然冷却下で降温し、修復液は室温に降温した後、スライドカラスを取り出し、PBS(pH7.4)で毎回ずつ3分間、3回リンスした(リンスの過程において、組織を破壊しないように組織に当てリンスしてはいけない)。
6.調製された3%の過酸化水素(脱イオン水で希釈した30%の過酸化水素)を切片組織へ滴下して内因性ペルオキシダーゼを遮断し、室温で15分間インキュベートし、PBSで毎回ずつ3分間、3回リンスした。
7.吸水紙でPBSを乾燥して、10%のヤギ血清(二次抗体の種属の由来と同一又は類似)をスライドカラスへ滴下し、37℃で60分間ブロッキングした。
8.吸水紙でスライドカラス上の組織の周囲にある液体を乾燥し、組織の周囲に油性ペンで輪を描き、次いで、希釈された一次抗体を滴下し、湿潤カセットにおいて4℃で一晩インキュベートした。
9.切片をPBSで毎回ずつ3分間、3回リンスした。切片に対して吸水紙で乾燥した後、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼを滴下して二次抗体を標識し、室温で60分間インキュベートした。
10.切片をPBSで毎回ずつ3分間、3回リンスした。PBS液体を振り落とした後、切片に対して吸水紙で干し、また、新鮮に調製したDAB発色液を切片ごとに滴下し、顕微鏡で観察し、陽性シグナルになった後に水道水で切片をリンスして発色を終了させた。
11.ヘマトキシリンで1分間再度染色し、水洗した後、酸性エタノール分化液で分化し、水道水でさらにリンスして青色に戻した。
12.切片を水に置いてリンスした後、切片を、70%アルコール-80%アルコール-90%アルコール-95%アルコール-無水エタノールI-無水エタノールII-キシレンI-キシレンIIの順に、投入して脱水させ、透明にした。各試薬において2分間ずつ放置し、最後に、切片をドラフトチャンバーに置いて風乾させた。
13.中性の樹脂ガムを用いて切片をシールし、カバーガラスで蓋をした。ドラフトチャンバーに置いて乾燥させた。
14.干した切片に対して、顕微鏡下で観察してもよいか、写真を撮ってもよい。
【0179】
図4は、体外培養された乳がんの初代腫瘍細胞塊を免疫組織化学的に染色した結果を示した。細胞塊を構成する細胞はER陽性であり、患者の病理結果と一致しており、本方法により培養して得られたものは、純度の高い腫瘍細胞であることが確認された。
【0180】
実施例13.異なる種類の婦人科腫瘍サンプルからの初代腫瘍細胞の体外培養
本実施例において、全てのサンプルの初代培養の操作方法及びプロセスは、完全に一致しているが(前述のとおり)、サンプルの病理タイプのみが異なっている。テストを行った各サンプルの状況を表26に示す。
【0181】
【0182】
このことから、本発明の方法は、様々な種類の婦人科腫瘍の固形腫瘍サンプルに対して初代腫瘍細胞の体外培養において、非常に高い成功率を達成できることが分かった。
【0183】
実施例14.CYTOP修飾された細胞培養の消耗品を用いた婦人科腫瘍の初代腫瘍細胞の培養
本実施例において、全てのサンプルの初代培養の操作方法及びプロセスは完全に一致し(前述のとおり)、CYTOP修飾の方法は完全に一致しているが、細胞培養の消耗品の材質のみが異なっている(表27)。
【0184】
ここで、CYTOP修飾の方法は以下の通りである。まず、細胞培養容器を、出力20W、時間3分間というエッチング条件で純酸素を用いてエッチングした。その後、培養皿又は培養プレート表面を適量(96ウェルプレートを例とし、1穴当たり20μLであり、また、適量とは、培養皿の底部を完全に覆うこと)の1% CYTOP溶液で覆い、CYTOP溶液が完全に乾燥した後、使用可能となる。
【0185】
【0186】
表27より、CYTOP修飾したことで、サンプルの培養成功率が大幅に向上されたことがわかった。
【0187】
実施例15.マイクロプレートチップの加工
本実施例では、射出成形の加工方式を用い、PMMA材料(或いはPS、PC、COC、COP、LAS等の材料)で加工して本発明に係る婦人科腫瘍の初代細胞を培養するためのマイクロプレートチップを得た。当該チップは、初代の婦人科腫瘍細胞の培養及び体外の薬剤感受性試験に使用することができる。マイクロプレートチップの設計図を図5に示す。
【0188】
実際には、PMMA材料(或いはPS、PC、COC、COP、LAS等の材料)を用いて、設計図の図5に示したマイクロプレートチップの構造を作製し、その後、その表面を前記CYTOP修飾の方法(実施例14参照)によりCYTOP修飾して、ここで述べる婦人科腫瘍の初代細胞を培養するためのマイクロプレートチップを得た。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、新鮮な婦人科腫瘍の手術サンプル、穿刺生検サンプル、又は胸腔液サンプルから、婦人科腫瘍の初代細胞を抽出して培養するための方法及びその支援試薬を提供しており、また、当該方法は、以下の利点を有している。
1.組織サンプルの用量が少なく、婦人科腫瘍における固形腫瘍の手術サンプル20mg程度のみが必要である;
2.培養サイクルが短く、10オーダーの初代腫瘍細胞を得るのに、3~10日しか必要ない;
3.培養安定性が高く、本方法により、合格した婦人科腫瘍における固形腫瘍の手術標本を体外培養する成功率が最大70%である;
4.細胞の純度が高く、本方法により得られた婦人科腫瘍の初代細胞の培養物において、腫瘍細胞の割合は70%~95%に達したが、他の細胞による妨害が少ない。
【0190】
本発明に係る方法により得られた婦人科腫瘍の初代細胞の培養物は、複数種の細胞レベルの体外実験、次世代シーケンシング、動物モデルの構築、細胞株の構築などに応用することができる。当該培養方法は、婦人科腫瘍の研究と臨床診断・治療の分野での幅広い応用が期待される。
図1
図2
図3
図4
図5