(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】精神神経障害を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20240617BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20240617BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240617BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240617BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K31/277
A61P25/18
A61P25/22
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022562964
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 US2021027641
(87)【国際公開番号】W WO2021211944
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2024-04-01
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522403620
【氏名又は名称】ハニーブレインズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】セイファン アロン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】SAABY, L. et al.,Pharmacol Res Perspect,2015年,Vol. 3, No. 4, Article No. e00151,pp. 1-9
【文献】PAN, Y. et al.,Neuropsychiatr Dis Treat,2015年,Vol. 11,pp. 1121-1130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のベラパミルおよび/またはテルミサルタンを含む、それを必要とする対象におけるパニック障害、社会不安障害、または心的外傷後ストレス障害を処置するための方法に使用するための薬学的組成物であって、
該方法が、ベラパミルおよびテルミサルタンを含む治療的組み合わせを
該対象に投与する工程を含
み、
該組み合わせにおけるベラパミルとテルミサルタンの質量比が約2:1~約3:1であり、
ベラパミルの有効量が約120mg~約360mgであり、テルミサルタンの有効量が40mg~180mgである、
薬学的組成物。
【請求項2】
ベラパミルの有効量が約288mgであり、
テルミサルタンの有効量が約96mgである、請求項
1記載の
薬学的組成物。
【請求項3】
ベラパミルと
テルミサルタンの質量比が約
3:1である、請求項
1記載の
薬学的組成物。
【請求項4】
ベラパミルおよびテルミサルタンが別々にまたは一緒に製剤化されている、請求項1
記載の
薬学的組成物。
【請求項5】
前記
治療的組み合わせの投与が、
終脳、間脳、および中脳のうちの1つまたは複数における脳血流
の改変と関連している、請求項
1記載の
薬学的組成物。
【請求項6】
脳血流の改変が、脳のある領域における血行動態平衡の確立と関連している、請求項
5記載の
薬学的組成物。
【請求項7】
ベラパミルおよび/またはテルミサルタンが持続放出製剤で提供される、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項8】
有
効量のベラパミルおよび/またはテルミサルタンを含む、それを必要とする対象における不安障害の症状を低下させるための方法に使用するための薬学的組成物であって、
該方法が、ベラパミルおよびテルミサルタンを含む治療的組み合わせを
該対象に投与する工程を含
み、
該組み合わせにおけるベラパミルとテルミサルタンの質量比が約2:1~約3:1であり、
ベラパミルの有効量が約120mg~約360mgであり、テルミサルタンの有効量が40mg~180mgであり、
該投与が、不安、うつ、易刺激性、無関心、疲労、身体的疼痛、不眠、頭痛、精神病、および認知的能力障害からなる群より選択される症状の低下に関連する、
薬学的組成物。
【請求項9】
ベラパミルおよび/またはテルミサルタンが持続放出製剤で提供される、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記投与が、うつ、易刺激性、無関心、疲労、身体的疼痛、不眠、頭痛、精神病、および認知的能力障害からなる群より選択される症状の低下に関連する、請求項1記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、以下の米国仮出願、2020年4月17日出願の第63/011,932号および2020年11月9日出願の第63/111,156号に基づく恩典を主張するものであり、それらの内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
世界中で、脳および行動の健康障害は、能力障害(disability)の一番の原因となっている。脳および行動の健康障害には、神経学、精神医学、および心理学の専門分科に属する主要な障害の全てが含まれる。不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病が、脳および行動の健康障害によって引き起こされる10の基本的な症状である。これらの症状は、個々に、これらの障害の能力障害性(disabling)の特徴であり、これらが機能の喪失を引き起こす。
【0003】
脳および行動の健康障害の10の基本的な症状は、全て、処置するのが困難であるが、それは、脳および行動の障害を有する人々の、全員ではないにしても、大部分が、これらの症状の複数の原因に苦しんでいるためである。実際の臨床現場において、症状の原因は、神経学、精神医学、および/または心理学的因子によるものであり得る。しかしながら、患者は、症状に対する独立した処置を求める。不安、うつ、および精神病は、典型的には、精神科医によって処置される。頭痛、疼痛、および認知困難は、しばしば、神経科医によって処置される。易刺激性、無関心、不眠、および疲労は、しばしば、心理学者またはプライマリケア医によって処置される。不安は、能力障害性であり、処置するのが困難であり、多因子性である症状の一例である。身体的不安(刺激に対する過感受性)は、不安の神経学的原因の一例であり、しばしば、片頭痛に関連する。過度の内気は、不安の心理学的原因の一例であり、しばしば、社会恐怖症に関連する。過度の心配は、不安の精神医学的原因の一例であり、しばしば、全般性不安障害または強迫性障害に関連する。
【0004】
実際の臨床現場において、脳および行動の健康障害の10の基本的な能力障害性症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病)は、多因子性であるという事実にも関わらず、現在、FDAによって認可されている処置は、典型的には、障害の1つずつの構成要素を標的とする。例えば、不安障害のための第一選択処置である選択的セロトニン再取り込み阻害剤(「SSRI」)は、不安のセロトニン作動性機序を標的とするために特別に設計された。これらの薬物療法の有効性は、単独では、限定されたものであることが判明している。認知行動療法は、不安の心理学的構成要素に対処するために特別に設計されている。薬物療法および認知行動療法の両方を受容する患者は、いずれか一方を標的とした処置を受容する患者より良好なアウトカムを有すると予測される。認知行動療法および薬物療法によってさえ、処置の成功は限定されたままであり、このことは、不安の軽減を求める患者の大多数において、不安の神経学的土台が未処置のままであることを示唆している。
【0005】
現在の処置は、脳および行動の健康障害の最も能力障害性の症状に関連する多因子性特徴に対処するよう設計されていない。従って、脳および行動の健康障害ならびにそれらの症状に対処する新しい処置が、緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
下記のように、本発明は、脳および/または行動の健康障害ならびにそれらの関連する症状を処置するための組成物および方法を特徴とする。
【0007】
本発明は、アドレナリン作動系を標的とする剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミル)と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を標的とする剤(例えば、カンデサルタン、テルミサルタン)とを含む新規の組み合わせ療法を提供する。そのような剤は、心血管疾患の処置のため、FDAによって個々に認可されているが、以前には組み合わされたこともないし、脳および/または行動の健康障害の処置のために使用されたこともない。1つの態様において、本発明は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを特徴とする組み合わせ療法を提供する。理論によって拘束されるものではないが、本明細書において提供される組み合わせは、身体および脳の両方における、ストレスによって誘導されるホルモンのモジュレーションを介して、全脳血流に対する新規の相乗的な平衡化効果を引き起こす。
【0008】
これらの組み合わせは、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病を含むが、これらに限定されるわけではない、脳および/または行動の健康障害ならびにそれらの関連する症状の処置において有効である。
【0009】
1つの局面において、本発明は、脳および/もしくは行動の健康障害またはそれらの症状の処置のための治療的組み合わせを特徴とする。この組み合わせは、アドレナリン作動系を標的とする第1の剤の有効量と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を標的とする第2の剤の有効量とを含有する。
【0010】
もう1つの局面において、本発明は、有効量の第1および第2の剤を含有する、不安障害の処置のための治療的組み合わせを特徴とする。第1の剤は、ベラパミルであり、第2の剤は、テルミサルタンであり、第1および第2の剤は、持続放出製剤で提供される。
【0011】
もう1つの局面において、本発明は、脳または行動の健康障害を有する対象を処置するための方法を特徴とする。この方法は、アドレナリン作動系を標的とする第1の剤と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を標的とする第2の剤とを含有する組み合わせ療法を対象に投与する工程であって、それによって、脳または行動の健康障害を処置する、工程を含む。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、有効量の第1および第2の剤を含有する治療的組み合わせを対象に投与する工程を含む、不安障害を処置するための方法を特徴とする。第1の剤は、ベラパミルであり、第2の剤は、テルミサルタンである。第1および第2の剤は、持続放出製剤で提供される。
【0013】
もう1つの局面において、本発明は、マズロー欲求階層に沿った対象の進歩を増大させる方法を特徴とする。この方法は、治療的有効量の第1の剤および第2の剤を対象に投与する工程を含む。第1の剤は、アドレナリン作動系に関連する代謝および/または血流を改変し、第2の剤は、脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に関連する代謝および/または血流を改変し、それによって、マズロー欲求階層に沿った対象の進歩を増大させる。進歩の増大は、参照を基準とする。
【0014】
1つの局面において、本発明は、有効量の第1および第2の剤と薬学的に許容される賦形剤とを含有する薬学的組成物を特徴とする。第1の剤は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択され、第2の剤は、テルミサルタンおよびカンデサルタンのうちの1つまたは複数より選択される。態様において、薬学的組成物は、酸化マグネシウムをさらに含有する。
【0015】
もう1つの局面において、本発明は、第1および第2の剤を含有する治療的組み合わせを含有する治療的組み合わせを含有するキットを特徴とする。第1の剤は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択され、第2の剤は、テルミサルタンおよびカンデサルタンのうちの1つまたは複数より選択される。キットは、脳および/もしくは行動の健康障害またはそれらの症状の処置のための組み合わせの使用についての説明書も含有する。
【0016】
前記局面のいずれかにおいて、第1の剤は、カルシウムチャネル遮断活性を有し、第2の剤は、アンジオテンシンII受容体遮断活性を有する。前記局面のいずれかにおいて、第1の剤は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される。前記局面のいずれかにおいて、第1の剤は、ベラパミルである。前記局面のいずれかにおいて、第2の剤は、テルミサルタンまたはカンデサルタンである。前記局面のいずれかにおいて、第2の剤は、テルミサルタンである。前記局面のいずれかにおいて、第2の剤は、カンデサルタンである。
【0017】
前記局面のいずれかにおいて、組み合わせは、脳および/または行動の健康障害の処置のためにラベル表示される。前記局面のいずれかにおいて、組み合わせは、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛、および精神病のうちの1つまたは複数より選択される、脳および/または行動の健康障害の症状の処置のためにラベル表示される。
【0018】
前記局面のいずれかにおいて、第1の剤の有効量は、約120mg~約720mgであり、第2の剤の有効量は、約45mg~約180mgである。前記局面のいずれかにおいて、第1の剤の有効量は、約288mgであり、第2の剤の有効量は、約96mgである。
【0019】
前記局面のいずれかにおいて、第1の剤と第2の剤の質量比は、約2:1~約5:1である。前記局面のいずれかにおいて、第1の剤と第2の剤の質量比は、約2:1である。前記局面のいずれかにおいて、第1の剤の量は、第2の剤の量の約1~約4倍である。前記局面のいずれかにおいて、第1の剤の量は、第2の剤の量の約1~約4倍である。
【0020】
前記局面のいずれかにおいて、剤は、一緒にまたは別々に製剤化される。
【0021】
前記局面のいずれかにおいて、組み合わせ治療薬は、1日1回投与される。前記局面のいずれかにおいて、組み合わせ治療薬は、1日2回投与される。
【0022】
前記局面のいずれかにおいて、剤は、同時投与される。前記局面のいずれかにおいて、剤は、逐次投与される。
【0023】
前記局面のいずれかにおいて、投与は、脳代謝または脳血流における改変に関連する。態様において、脳血流は、終脳、間脳、および中脳のうちの1つまたは複数において改変される。態様において、局所脳血流の改変は、脳のある領域における血行動態平衡の確立と関連している。
【0024】
前記局面のいずれかにおいて、方法は、認知機能、生活満足度、意義と目的についての対象の感覚、情緒的または道具的な支援についての対象の感覚、友人関係、および生活満足度のうちの1つまたは複数より選択される主要アウトカムを向上させる。
【0025】
前記局面のいずれかにおいて、治療的組み合わせは、酸化マグネシウムをさらに含有する。前記局面のいずれかにおいて、治療的組み合わせは、少なくとも約150mgの酸化マグネシウムを含有する。前記局面のいずれかにおいて、方法は、酸化マグネシウムを対象に投与する工程をさらに含む。態様において、少なくとも約150mgの酸化マグネシウムが、対象に毎日投与される。
【0026】
本開示の態様の他の特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0027】
定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される用語のうちの多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.,Springer Verlag(1991);およびHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書において使用されるように、以下の用語には、他に特記されない限り、以下の意味が割り当てられる。
【0028】
「剤」とは、任意の低分子化学的化合物を意味する。例示的な剤には、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミルが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0029】
「寛解させる」とは、疾患の発症または進行を減少させるか、抑制するか、弱めるか、減じるか、停止させるか、または安定化することを意味する。
【0030】
「改変」とは、正または負の変化を意味する。本明細書において使用されるように、改変には、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の変化が含まれる。変化は、向上または低下であり得る。測定される量は、局所脳血流の量であり得る。測定される量は、疾患の症状(例えば、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、または精神病)の大きさの定量的査定であり得る。いくつかの態様において、改変は、脳および/または行動の健康障害に関連する症状の低下である。いくつかの態様において、改変は、脳および/または行動の健康障害の処置に関連する機能の向上である。
【0031】
「寛解させる」とは、疾患の発症または進行を減少させるか、抑制するか、弱めるか、減じるか、停止させるか、または安定化することを意味する。
【0032】
「類似体」とは、関心対象の分子と同一ではないが、類似の機能的特徴および/または構造的特徴を有する分子を意味する。いくつかの態様において、類似体は、アドレナリン作動系を標的とする剤である。いくつかの態様において、類似体は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を標的とする剤である。
【0033】
「アニパミル」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、アニパミルは、カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0034】
「カンデサルタン」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、カンデサルタンは、アンジオテンシンII受容体遮断活性を有する。
【0035】
「脳代謝」とは、脳またはその領域における代謝の速度を意味する。脳代謝は、非限定的な例として、X線コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放射型断層撮影法(PET)、近赤外分光法(NIRS)、磁気共鳴画像法(MRI)、および本明細書において提供される方法を含む、実務者が利用可能な多様な方法のいずれかを使用して測定される。態様において、脳のある領域における代謝の向上は、その領域への血流の増加と関連している。脳血流は、非限定的な例として、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射型断層撮影法(PET)、機能的MRI(fMRI)、動脈スピンラベル(ASL)MRI、経頭蓋ドプラ超音波画像法(即ち、超音波検査)、位相差MRI、および近赤外分光法(NIRS)を含む、実務者が利用可能な多様な方法のいずれかを使用して測定される。
【0036】
本開示において、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する」、および「有する」等は、米国特許法においてそれらに割り当てられた意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」等を意味することができ;「から本質的になる」または「本質的になる」は、同様に、米国特許法において割り当てられた意味を有し、この用語は、非制限的であり、記載されたものの基本的なまたは新規の特徴が、記載されたもの以外の存在によって変化しない限り、記載されたもの以外の存在を可能にするが、従来技術の態様は除外する。特定の構成要素または要素を「含む」として指定された態様は、いくつかの態様において、特定の構成要素または要素「からなる」または「から本質的になる」としても企図される。
【0037】
「本質的になる」とは、成分が、市販の材料に存在する通常の不純物、および本開示の実施に影響しないレベル、例えば、5重量%未満または1重量%未満またはさらには0.5重量%未満のレベルで存在する他の任意の添加剤と共に、列挙された構成要素のみを含むことを意味する。
【0038】
「減少」とは、負の改変を意味する。
【0039】
「デバパミル」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。1つの態様において、デバパミルは、カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0040】
「疾患」とは、細胞、組織、もしくは器官の正常な機能を損なうか、またはそれに干渉する任意の状態または障害を意味する。態様において、疾患または障害は、精神神経障害であり、その例には、脳および/または行動の健康障害ならびにそれらの症状が含まれる。脳および行動の健康障害の非限定的な例には、感情障害、不安障害、神経変性障害、神経発達障害、精神病性障害、パーソナリティ障害、片頭痛障害、および身体表現性障害が含まれる。感情障害の例には、双極性障害、気分循環症、うつ、不機嫌、全般性不安障害、大うつ病性障害、強迫性障害、産後うつ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、恐怖症、および季節性感情障害が含まれる。不安障害の例には、パニック障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、および限局性恐怖症が含まれる。神経変性障害の例には、アルツハイマー病およびパーキンソン病が含まれる。神経発達障害の例には、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、および学習障害が含まれる。精神病性障害の例には、統合失調症、統合失調感情障害、および精神病を伴う大うつ病が含まれる。パーソナリティ障害の例には、妄想性パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、情緒不安定性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、および強迫性パーソナリティ障害が含まれる。片頭痛関連障害の例には、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、無頭痛性片頭痛、および脳底動脈型片頭痛が含まれる。身体表現性障害の例には、身体化障害、心気症、転換性障害、身体醜形障害、および慢性疼痛が含まれる。疾患に関連する症状は、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病を含むが、これらに限定されるわけではない、脳および行動の健康障害に関連する「10の基本的な症状」のうちの1つまたは複数より選択される。態様において、疾患は、参照(例えば、健常対照脳に存在する血流)と比べて改変された局所脳血流と関連している。疾患は、前記定義の脳または行動の健康障害であり得る。
【0041】
「有効量」とは、疾患または障害を処置するために十分な剤の量を意味する。1つの態様において、本明細書に記載された組み合わせ療法の有効量は、脳および/もしくは行動の障害もしくはそれらの症状を処置するために、または主要アウトカムの改善(例えば、認知機能、生活満足度、意義と目的についての対象の感覚、情緒的もしくは道具的な支援についての対象の感覚、友人関係、および生活満足度の向上)をもたらすために十分なものである。
【0042】
「ファリパミル」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、ファリパミルは、カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0043】
「ガロパミル」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、ガロパミルは、カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0044】
「血行動態平衡」とは、脳の対応する領域間の相対血流速度に関するバランスの状態を意味する。態様において、血行動態平衡は、領域間のほぼ等しい相対血流速度および/または代謝活性と関連している。
【0045】
「向上させる」とは、正の改変を意味する。
【0046】
本明細書において使用されるように、「剤の取得」における「取得」には、剤の合成、購入、または他の方法での獲得が含まれる。
【0047】
本明細書において使用されるように、「防止する」、「防止すること」、「防止」、「予防的処置」等の用語は、障害または状態を有していないが、発症するリスクを有するか、または発症しやすい対象において、障害または状態を発症する確率を低下させることをさす。
【0048】
「低下させる」とは、負の改変を意味する。
【0049】
「対象」とは、哺乳動物を意味する。哺乳動物の非限定的な例には、ヒト、または非ヒト哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ネコ、もしくはげっ歯類が含まれる。
【0050】
「参照」とは、標準または対照の条件を意味する。1つの態様において、剤の細胞に対する効果は、その剤の対照細胞に対する効果と比較される。態様において、参照は、健常対象である。態様において、脳または行動の障害を有する対象の臨床的特徴が、健常対象に存在する参照臨床的特徴と比較される。健常対象とは、関心対象の障害または状態を有しない対象である。いくつかの態様において、参照は、未処置の患者、または処置前の対象、または処置中の改変前の対象である。
【0051】
「脳の領域」とは、脳の一部分を意味する。態様において、脳の一部分は、終脳、間脳、および中脳のうちの1つまたは複数を含有する。領域は、終脳、間脳、および中脳のうちの3つ全てを含有してもよい。
【0052】
「同時投与」とは、同時に投与することを意味する。
【0053】
「逐次投与」とは、別々の時点で投与されることを意味する。例えば、1つまたは複数の剤は、投与間隔が数分、数時間、または数日である場合、逐次投与される。例えば、逐次投与において、第1の剤は、1つまたは複数の付加的な剤の投与の15分前、30分前、45分前、または60分前に投与される。逐次投与のもう1つの例において、第1の剤は、第2の剤の投与の1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、5時間前、6時間前、12時間前、または24時間前に投与される。逐次投与のさらにもう1つの例において、第1の剤は、第2の剤の投与の1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、または7日前に投与される。
【0054】
「テルミサルタン」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、テルミサルタンは、アンジオテンシンII受容体遮断活性を有する。
【0055】
「治療剤」とは、生物の機能に影響する可能性を有する物質を意味する。そのような化合物は、例えば、天然に存在する、半合成の、または合成の剤である。例えば、剤は、生物の特定の機能を標的とする薬物である。治療剤は、疾患、障害、または状態の発症または進行を減少させるか、抑制するか、弱めるか、減じるか、停止させるか、または安定化することができる。治療剤は、対象における局所脳血流の改変と関連している。本明細書に記載される治療剤の非限定的な例には、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミル、ならびにそのような剤の誘導体、類似体、および機能的等価物が含まれる。態様において、治療的組み合わせは、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを特徴とする。
【0056】
「有効量」とは、参照と比べて、疾患の症状を低下させるか、または寛解させるために必要とされる剤の量を意味する。疾患の治療的処置のため、本発明を実施するために使用される活性化合物(例えば、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミル)の有効量は、投与の様式、対象の年齢、体重、および全身健康状態に応じて変動する。最終的には、主治医または獣医師が、適切な量および投与計画を決定する。そのような量は、「有効」量と呼ばれる。症状は、脳および行動の健康障害に関連する「10の基本的な症状」:不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病のうちの1つまたは複数より選択される。態様において、治療的有効量は、必要な剤または剤の組み合わせの量である。
【0057】
本明細書において提供される範囲は、その範囲内の値の全てについての略記であることが理解される。例えば、1~50という範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群に由来する任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲が含まれることが理解される。
【0058】
「チアパミル」とは、以下の構造:
を有する化合物または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、チアパミルは、カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0059】
本明細書において使用されるように、「処置する」、「処置すること」、「処置」等の用語は、疾患および/またはそれに関連する症状の低下または寛解をさす。除外されるわけではないが、障害または状態の処置は、障害、状態、またはそれらの関連する症状が完全に排除されることを必要としないことが理解されるであろう。
【0060】
「ベラパミル」とは、以下の構造:
を有する剤または薬学的に許容されるその塩を意味する。いくつかの態様において、ベラパミルは、カルシウムチャネル遮断活性を有する。
【0061】
具体的に記述されず、前後関係から明白でない限り、本明細書において使用されるように、「または」という用語は、包括的であると理解される。具体的に記述されず、前後関係から明白でない限り、「a」、「an」、および「the」という用語は、単数形または複数形であると理解される。
【0062】
具体的に記述されず、前後関係から明白でない限り、本明細書において使用されるように、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。約は、記述された値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、または0.01%以内として理解され得る。前後関係から他のことが明らかでない限り、本明細書において提供される全ての数値が、約という用語によって修飾される。
【0063】
本明細書における変数の任意の定義における化学基のリストの記載は、任意の単一の基、または列挙された基の組み合わせとしての、その変数の定義を含む。本明細書における変数または局面についての態様の記載は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその一部分と組み合わせられた、その態様を含む。
【0064】
本明細書に提供される任意の組成物または方法は、本明細書において提供される他の組成物および方法のいずれかの1つまたは複数と組み合わせられ得る。本願全体において、様々な作用機序、仮説、または理論が記述される場合、これらは、限定するためのものではない。
[本発明1001]
アドレナリン作動系を標的とする第1の剤の有効量と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を標的とする第2の剤の有効量とを含む、脳および/もしくは行動の健康障害またはそれらの症状の処置のための治療的組み合わせ。
[本発明1002]
第1の剤がカルシウムチャネル遮断活性を有し、第2の剤がアンジオテンシンII受容体遮断活性を有する、本発明1001の治療的組み合わせ。
[本発明1003]
第1の剤が、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルからなる群より選択される、本発明1001または本発明1002の治療的組み合わせ。
[本発明1004]
第2の剤が、テルミサルタンまたはカンデサルタンである、本発明1001~1003のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1005]
脳および/または行動の健康障害の処置のためにラベル表示される、本発明1001~1004のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1006]
不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛、および精神病からなる群より選択される、脳および/または行動の健康障害の症状の処置のためにラベル表示される、本発明1001~1005のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1007]
第1の剤がベラパミルである、本発明1001~1006のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1008]
第2の剤がテルミサルタンである、本発明1001~1007のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1009]
有効量の第1および第2の剤を含む、不安障害の処置のための治療的組み合わせであって、第1の剤がベラパミルであり、第2の剤がテルミサルタンであり、第1および第2の剤が持続放出製剤で提供される、治療的組み合わせ。
[本発明1010]
第1の剤の有効量が約120mg~約720mgであり、第2の剤の有効量が約45mg~約180mgである、本発明1001~1009のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1011]
第1の剤の有効量が約288mgであり、第2の剤の有効量が約96mgである、本発明1001~1010のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1012]
第1の剤と第2の剤の質量比が約2:1~約5:1である、本発明1001~1011のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1013]
第1の剤と第2の剤の質量比が約2:1である、本発明1001~1012のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1014]
第1の剤の量が、第2の剤の量の約1~約4倍である、本発明1001~1013のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1015]
第1の剤の量が、第2の剤の量の約2倍である、本発明1001~1014のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1016]
前記剤が一緒にまたは別々に製剤化される、本発明1001~1015のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1017]
アドレナリン作動系を標的とする第1の剤と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を標的とする第2の剤とを含む組み合わせ療法を対象に投与する工程であって、それによって、脳または行動の健康障害を処置する、工程
を含む、脳または行動の健康障害を有する対象を処置するための方法。
[本発明1018]
第1の剤がカルシウムチャネル遮断活性を有し、第2の剤がアンジオテンシンII受容体遮断活性を有する、本発明1017の方法。
[本発明1019]
第1の剤が、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルからなる群より選択される、本発明1017または本発明1018の方法。
[本発明1020]
第2の剤が、テルミサルタンまたはカンデサルタンである、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
第1の剤がベラパミルである、本発明1017~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
第2の剤がテルミサルタンである、本発明1017~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
有効量の第1および第2の剤を含む治療的組み合わせを対象に投与する工程を含む、不安障害を処置するための方法であって、第1の剤がベラパミルであり、第2の剤がテルミサルタンであり、第1および第2の剤が持続放出製剤で提供される、方法。
[本発明1024]
第1の剤の有効量が約120mg~約720mgであり、第2の剤の有効量が約45mg~約180mgである、本発明1017~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
第1の剤の有効量が約288mgであり、第2の剤の有効量が約96mgである、本発明1017~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
第1の剤と第2の剤の質量比が約2:1~約5:1である、本発明1017~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
第1の剤と第2の剤の質量比が約2:1である、本発明1017~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
第1の剤の量が、第2の剤の量の約1~約4倍である、本発明1017~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
第1の剤の量が、第2の剤の量の約1~約4倍である、本発明1017~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
組み合わせ治療薬が1日1回投与される、本発明1017~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
組み合わせ治療薬が1日2回投与される、本発明1017~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
前記剤が同時投与される、本発明1017~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記剤が逐次投与される、本発明1017~1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
前記投与が、脳代謝または脳血流における改変と関連している、本発明1017~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
脳血流が、終脳、間脳、および中脳のうちの1つまたは複数において改変される、本発明1034の方法。
[本発明1036]
局所脳血流の改変が、脳のある領域における血行動態平衡の確立と関連している、本発明1034または本発明1035の方法。
[本発明1037]
認知機能、生活満足度、意義と目的についての対象の感覚、情緒的または道具的な支援についての対象の感覚、友人関係、および生活満足度からなる群より選択される主要アウトカムが向上する、本発明1017~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
治療的有効量の第1の剤および第2の剤を対象に投与する工程であって、第1の剤が、アドレナリン作動系に関連する代謝および/または血流を改変し、第2の剤が、脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に関連する代謝および/または血流を改変する、工程
を含み、それによって、マズロー欲求階層に沿った対象の進歩を増大させ、該進歩の増大は参照を基準とする、マズロー欲求階層に沿った対象の進歩を増大させる方法。
[本発明1039]
第1の剤が、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルからなる群より選択される、本発明1038の方法。
[本発明1040]
第2の剤が、テルミサルタンおよびカンデサルタンのうちの1つまたは複数より選択される、本発明1038または本発明1039の方法。
[本発明1041]
第1の剤がベラパミルである、本発明1038~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
第2の剤がテルミサルタンである、本発明1038~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
酸化マグネシウムをさらに含む、本発明1001~1016のいずれかの治療的組み合わせ。
[本発明1044]
少なくとも約150mgの酸化マグネシウムを含む、本発明1043の治療的組み合わせ。
[本発明1045]
酸化マグネシウムを対象に投与する工程をさらに含む、本発明1017~1042のいずれかの方法。
[本発明1046]
少なくとも約150mgの酸化マグネシウムが対象に毎日投与される、本発明1045の方法。
[本発明1047]
有効量の第1および第2の剤と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物であって、第1の剤が、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルからなる群より選択され、第2の剤が、テルミサルタンおよびカンデサルタンのうちの1つまたは複数より選択される、薬学的組成物。
[本発明1048]
第1および第2の剤が持続放出製剤で提供される、本発明1047の薬学的組成物。
[本発明1049]
酸化マグネシウムをさらに含む、本発明1047または本発明1048の薬学的組成物。
[本発明1050]
第1および第2の剤を含む治療的組み合わせを含む治療的組み合わせであって、第1の剤が、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルからなる群より選択され、第2の剤が、テルミサルタンおよびカンデサルタンのうちの1つまたは複数より選択される、治療的組み合わせと、
脳および/もしくは行動の健康障害またはそれらの症状の処置のための組み合わせの使用についての説明書と
を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1A】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Aは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での、より低い全体的な総合的症状を示すグラフである。
【
図1B】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Bは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い自己申告の不安を示すグラフである。
【
図1C】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Cは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い自己申告のうつを示すグラフである。
【
図1D】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Dは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い自己申告の易刺激性を示すグラフである。
【
図1E】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Eは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い自己申告の無関心を示すグラフである。
【
図1F】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い自己申告の疲労を示すグラフである。
【
図1G】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Gは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い自己申告の身体的疼痛を示すグラフである。
【
図1H】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Hは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より軽度の自己申告の不眠重症度を示すグラフである。
【
図1I】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Iは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、自己申告の頭痛の減少を示すグラフである。
【
図1J】
図1A~1Jは、テルミサルタンおよびベラパミルによる組み合わせ療法の前後の76人の患者における症状の違いを例示するグラフである。組み合わせ療法は、40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回と共に、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回を含んでいた。
図1Jは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、自己申告の認知困難の減少を示すグラフである。
【
図2A】
図2A~2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での標準化された心理社会的アウトカムの違いを例示する。
図2Aは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より高い全般的生活満足度を示すグラフである。
【
図2B】
図2A~2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での標準化された心理社会的アウトカムの違いを例示する。
図2Bは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より大きい意義と目的を示すグラフである。
【
図2C】
図2A~2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での標準化された心理社会的アウトカムの違いを例示する。
図2Cは、組み合わせ療法による処置ありの患者 対 なしの患者における、より高い情緒的支援を示すグラフである。
【
図2D】
図2A~2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での標準化された心理社会的アウトカムの違いを例示する。
図2Dは、組み合わせ療法による処置ありの患者 対 なしの患者における、より高い道具的支援を示すグラフである。
【
図2E】
図2A~2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での標準化された心理社会的アウトカムの違いを例示する。
図2Eは、組み合わせ療法による処置ありの患者 対 なしの患者における、より高い友人関係を示すグラフである。
【
図2F】
図2A~2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者間での標準化された心理社会的アウトカムの違いを例示する。
図2Fは、組み合わせ療法ありの患者 対 なしの患者における、より低い孤独感を示すグラフである。
【
図3A】
図3Aおよび
図3Bは、組み合わせ処置を受容した患者とテルミサルタンのみを受容した患者との間のアウトカムの違いを例示する。
図3Aは、組み合わせ療法を受容した患者とテルミサルタンのみを受容した患者との間の、NIH Toolboxによって測定された生活満足度の違いを示すグラフである。
【
図3B】
図3Aおよび
図3Bは、組み合わせ処置を受容した患者とテルミサルタンのみを受容した患者との間のアウトカムの違いを例示する。
図3Bは、組み合わせ療法を受容した患者とテルミサルタンのみを受容した患者との間の、NIH Toolboxによって測定された怒り(敵意)の違いを示すグラフである。
【
図4A】
図4Aおよび
図4Bは、組み合わせ処置を受容した患者とベラパミルのみを受容した患者との間のアウトカムの違いを例示する。
図4Aは、組み合わせ療法を受容した患者とテルミサルタンのみを受容した患者との間の、NIH Toolboxによって測定された自己効力感の違いを示すグラフである。
【
図4B】
図4Aおよび
図4Bは、組み合わせ処置を受容した患者とベラパミルのみを受容した患者との間のアウトカムの違いを例示する。
図4Bは、組み合わせ療法を受容した患者とベラパミルのみを受容した患者との間の、NIH Toolboxによって測定された怒り(攻撃性)の違いを示すグラフである。
【
図5】
図5は、ベラパミルおよびテルミサルタンを含有する組成物の提唱された作用機序を示す図である。この図は、終脳、間脳、および中脳が皮質、皮質下、脳幹の構造に発達する前の発生途中の脳を図示している。
【
図6】
図6は、ベラパミルおよびテルミサルタンを含有する組成物が、患者がマズロー欲求階層に沿った心理社会的向上を遂げる際の脳血流の漸進的な平衡化を可能にすると仮定される次第を例示する概略図である。
【
図7】
図7は、ベラパミルおよびテルミサルタンを含有する組成物の投与を開始した、中止した、または変化させた患者におけるウェーバーの側方化における双方向変化を示す図である。処置の変化を有した個体のうち、83%(15/18)が、ウェーバーの側方化における変化を有した。処置の変化を有しなかった者のうち、20%(1/5)が、ウェーバーの側方化における変化を申告した。処置の変化を有した患者と有しなかった患者との間のウェーバーの側方化における変化のこの差は、統計的に有意であった(p=0.006)。
【
図8】
図8は、ベラパミルおよびテルミサルタンを含有する組成物の、患者の血圧に対する双方向影響を示すプロットである。高血圧を有する患者29人について、正常範囲内への前後の減少は、統計的に有意であった(p=0.0001)。低血圧を有する患者11人について、正常範囲内への前後の増加は、統計的に有意であった(p=0.001)。正常血圧を有する患者29人について、前後の変化は、統計的に有意ではなかった(p=0.553)。
【
図9】
図9は、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む本発明の組成物が、心理的ストレスによって引き起こされる動的変化に影響し得る、提唱された方法を示す図である。脳の構造的構成に応じて、特に、脳のエネルギー需要/供給ミスマッチの状況において、心理的ストレスは、アドレナリンおよびアンジオテンシンの動的適応によって身体を反応させる可能性がある。これらの適応は、選択的に脆弱な脳領域における代謝需要をモジュレートする、脳の機能的結合の変化を引き起こす。組成物の存在下では、機能的結合に対する心理的ストレスによって引き起こされる動的変化が調節され、それが、精神神経系の総合的症状の低下をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0066】
詳細な説明
本発明は、脳および/または行動の健康障害ならびにそれらの関連する症状の処置のために有用である組成物および方法を特徴とする。
【0067】
本発明は、アドレナリン作動系を標的とする剤(例えば、ベラパミルまたはカルシウムチャネル遮断活性を有するその他の化合物)と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を標的とする剤(例えば、テルミサルタン)とを含む組み合わせ療法が、脳および/または行動の健康障害を効果的に処置し、関連する症状を有意に低下させたという発見に、少なくとも一部分、基づく。この驚くべき発見を考慮すると、脳および/または行動の健康障害ならびにそれらの関連する症状の処置のために、RAASを標的とする任意の剤(例えば、テルミサルタン、カンデサルタン)を、アドレナリン作動系を標的とする任意の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミル)と組み合わせることができることを、当業者は理解するであろう。具体的には、以下に詳細に報告されるように、ベラパミルおよびテルミサルタンは、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、および慢性疼痛の低下または排除に有効であった。重要なことに、ベラパミルおよびテルミサルタンは、処置された対象において、そのような症状を低下させるのみならず、そのような対象において、全般的生活満足度および意義と目的の向上を含む、多数の正の変化も生じた。理論によって拘束されるものではないが、ベラパミルとテルミサルタンとの組み合わせは、脳機能に集合的に影響を与える、身体および脳の両方における、ストレスによって誘導されるホルモンを同時に標的にした可能性が高い。
【0068】
脳および行動の障害
集合的に、世界中で、脳および行動の障害は、能力障害の一番の原因となっている。実際の臨床現場において、患者は、複数の併存症の診断を有するため、極めて多くの異なる症状のスペクトルの全域で包括的な回復を達成することは、大部分の患者、医師、および家族にとって困難である。複数の併存症を有する患者の処置は、各障害に対する別々の個々の処置を必要とし、そのことが、複雑さを増加させ、コストを高め、ケアの安全性を低下させる。
【0069】
脳および行動の健康障害は、少なくとも部分的には、複数の構成要素を有するため、患者の生活の質に負の影響を及ぼす重大な心理社会的課題をもたらす。しかしながら、現在の処置は、単一の(例えば、神経学的)構成要素のみを処置するよう設計されている。
【0070】
脳および行動の健康障害は、臨床的に多様な障害の群であるが、異常な機能的結合は、共有されている共通の病理学的枠組みを表す。障害に関わらず、アドレナリン作動系および脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系という2つの独立した系が、機能的結合に直接影響を与える。これらの障害においては、1つのネットワークにおける異常が、関連するネットワークの機能を妨げる傾向がある。例えば、不安障害および慢性疼痛は、各々、感覚運動ネットワークとサリエンスネットワークとの間の非定型結合を特徴とする反応性障害として一緒に分類され得る。実際、多くの脳および行動の障害についての症状の処置の成功は、局所脳血流の非定型パターンの正常化と関連することが示されている。
【0071】
脳および行動の健康障害の非限定的な例には、感情障害、不安障害、神経変性障害、神経発達障害、精神病性障害、パーソナリティ障害、片頭痛障害、および体性感覚身体表現性障害が含まれる。感情障害の例には、双極性障害、気分循環症、うつ、不機嫌、全般性不安障害、大うつ病性障害、強迫性障害、産後うつ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、恐怖症、および季節性感情障害が含まれる。不安障害の例には、パニック障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、および限局性恐怖症が含まれる。神経変性障害の例には、アルツハイマー病およびパーキンソン病が含まれる。神経発達障害の例には、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、および学習障害が含まれる。精神病性障害の例には、統合失調症、統合失調感情障害、および精神病を伴う大うつ病が含まれる。パーソナリティ障害の例には、妄想性パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、情緒不安定性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、および強迫性パーソナリティ障害が含まれる。体性感覚障害の例には、慢性疼痛が含まれ、片頭痛関連障害には、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、無頭痛性片頭痛、および脳底動脈型片頭痛が含まれる。身体表現性障害の例には、身体化障害、心気症、転換性障害、身体醜形障害、および慢性疼痛が含まれる。疾患に関連する症状は、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病を含むが、これらに限定されるわけではない、脳および行動の健康障害に関連する「10の基本的な症状」のうちの1つまたは複数より選択される。そのような症状は、実務者が利用可能な多様な方法のいずれかを使用して測定され、その非限定的な例は、Brenes,"Anxiety,Depression,and Quality of Life in Primary Care Patients",Prim Care Companion J Clin Psychiatry,9:437-443(2007)およびJulian,"Measures of Anxiety",Arthritis Care Res,63:1-11(2011)に提示されている。
【0072】
上に列挙された障害に対する現在の処置は、障害と密接に関連している機能的結合異常に対処するために設計されていない。選択的セロトニン再取り込み阻害剤(「SSRI」)は、不安に対して限定された有効性を有する。認知行動療法および薬物療法によってさえ、処置の成功は限定されたままである。SSRIは、ADHDなどの一般的な不安の併存症によって引き起こされる症状を処置しないため、不安の軽減を求める患者の大多数において、併存症による能力障害は、未処置のままである。ADHDを有する患者について、刺激薬は、併存症である気分障害に対して有効ではなく、しばしば、それを悪化させ得る。精神医学的併存症によって引き起こされる症状は、しばしば、最も能力障害性であるため、これらは、重大な処置ギャップである。さらに、現在の管理されている処置オプション、具体的には、ベンゾジアゼピン、刺激薬、およびオピエートは、併存症である気分障害の悪化、中毒、および致死的な過剰摂取のため、危険である。
【0073】
組み合わせ療法
望ましい臨床転帰につながる脳血流の新規の相乗的な変化を引き起こすため、以前には組み合わせて使用されたことがない、アドレナリン作動系および脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に影響を与える、ある特定の既存の医薬を、組み合わせることができる。本発明の組み合わせ処置は、例えば、以前にFDAによって認可された心血管薬物療法より選択される2種以上の剤の組み合わせを対象に投与する工程を含む。本発明は、ベラパミルとテルミサルタンとを含有する組み合わせ、ベラパミルとカンデサルタンとを含有する組み合わせ、ならびにアニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数と組み合わせられたカンデサルタンおよび/またはテルミサルタンを特徴とする。
【0074】
個々に、剤は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系およびアドレナリン作動系を標的とするよう選択される。テルミサルタンおよびカンデサルタンは、アンジオテンシン2受容体を遮断するため、個々に、または組み合わせられて、アンジオテンシン反応の強度のバランスをとる。理論によって拘束されることは望まないが、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルは、中脳からのノルエピネフリンの出力に影響を与えるため、個々に、または組み合わせられて、アドレナリン反応の強度のバランスをとる。アドレナリン作動系および脳RAASの両方は、機能的結合をモジュレートするために相互作用するため、各系を独立に標的とする剤の組み合わせは、相乗効果を引き起こし、新規の処置効果をもたらす。
【0075】
根底にある診断に関わらず、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病)のうちの1つまたは複数として顕在化する、障害の精神医学的構成要素、心理学的構成要素、および神経学的構成要素を寛解させる新規の処置が、本明細書において提示される。理論によって拘束されるものではないが、治療的組み合わせ(例えば、ベラパミルおよびテルミサルタン、ベラパミルおよびカンデサルタン、ならびにアニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数と組み合わせられたカンデサルタンおよび/またはテルミサルタン)を含有する本発明の組成物および/または剤形は、脳の異なる領域におけるストレスによって誘導されるホルモンを同時に標的とする。正の多元ネットワーク効果を有する、アドレナリン作動および脳RAASの両方を同時に標的とする、本明細書に記載される剤の組み合わせは、これまで企図または研究されたことがない。
【0076】
組み合わせ処置として同時送達または逐次送達される、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含有する本発明の組成物および剤形の対象への投与は、脳および/または行動の障害ならびにそれらの関連する症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)の処置のために有用である。組み合わせ処置は、経時的に、生活の質の全体的なスケールの有意な改善と相関する、正の心理社会的アウトカムをもたらす。例えば、組成物は、総合的症状を反映するのみならず、健康の広範囲の社会的決定因子に対する影響も反映する、ヘルスケアにおける包括的アウトカムであるマズロー欲求階層に沿った患者の向上の達成と関連している。いくつかの態様において、本明細書に記載される治療的組み合わせは、処置を受けた対象の福祉に正に影響する(例えば、認知機能の向上、生活満足度の向上、意義と目的の向上、情緒的支援の向上、道具的支援の向上、友人関係の向上、生活満足度の向上)。
【0077】
薬理学的効果
理論によって拘束されるものではないが、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物の薬理学的効果は、アドレナリン系および脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の生理学に関する。人間が危険を感知する時、2つの独立した身体系が、脳の内在性の機能的結合を変化させる。
【0078】
交感神経/副交感神経系としても公知のアドレナリン作動系は、ノルエピネフリン(別名「アドレナリン」)として公知の神経伝達物質によるシグナル伝達を介して機能的結合に影響を与える。ノルエピネフリンは、副腎において産生された時、脳に移動し、そこでβ受容体と結合する。β受容体がノルエピネフリンと結合した時、瞳孔散大、痛覚の低下、および覚醒状態の増加などの変化が起こる。
【0079】
脳RAAS系としても公知の脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系は、アンジオテンシンとして公知の神経伝達物質を介して機能的結合に影響を与える。アンジオテンシン前駆体は、腎臓において産生された時、肺を通って脳に移動し、そこでアンジオテンシン受容体と結合する。脳アンジオテンシン受容体がアンジオテンシンと結合した時、脳血流の局所的な変化を引き起こす、神経血管カップリングとして公知の過程である、細動脈とアストロサイトとのカップリングに変化が起こる。
【0080】
特定の作用機序によって拘束されるものではないが、アドレナリン系および脳RAAS系が活性化された時、脳の機能的結合が変化する。この結合の変化は、脳が代謝的需要に適応するのを助ける、進化的に保存されたストレス反応系である。慢性的に維持された場合、これは、有害であり得る機能的結合の非平衡化状態を引き起こし得る。構築された環境、健康の社会的決定因子、および個体差を含む、いくつかの因子が、慢性的な平衡異常を促進する可能性がある。これらの因子は、特に、脳および/または行動の健康障害を有する患者にとって問題となり得る。理論によって拘束はされないが、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、脳および/または行動の健康障害に関連する機能的結合の変化を再平衡化することができる。
【0081】
理論によって拘束されることは望まないが、組み合わせ処置は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物を対象に投与する工程を含む。そのような組み合わせは、複数の精神神経障害に共通の中枢機能ネットワークに作用する。理論によって拘束されるものではないが、アンジオテンシンII受容体遮断と、それと同時のアドレナリン作動遮断との独特の組み合わせは、特に、社会的意識および情動的意識にとって重要な脳の領域である間脳において、脳血流の分布の再平衡化をもたらす。換言すると、情動に関わる機能的ネットワーク(中脳)に影響を与えると同時に、認知に関わる機能的ネットワーク(終脳)に影響を与えることによって、社会的認知に関わる機能的ネットワーク(間脳)が平衡化される。この仮説は、組み合わせ療法を受けた患者における顕著な社会的変化の所見に基づく。例えば、組み合わせ処置を受けた患者においては、社会的行動および服飾行動の双方向変化が観察された。具体的には、内向型患者は、組み合わせ処置中に、より多くの外向性を示し、外向型患者は、組み合わせ処置中に、より多くの内向性を示した。本明細書に提供される実施例に記載される研究の結果は、組み合わせ処置を受けた患者における社会的満足度の改善を示した。組み合わせ処置が機能的脳内ネットワークにおける平衡化効果をもたらすという仮説は、脳の聴覚機能ネットワークの側方化によって影響を受ける感音機能を測定する、定期的来院の一部として実施されたウェーバー試験からの結果の分析によって、さらに支持される。診療所において、組み合わせ処置を開始した患者、または単独療法から組み合わせ処置に変化された患者は、ウェーバー試験の側方化におけるシフトを来院間に示した。ウェーバー試験の側方化におけるシフトは、標準治療薬では起こらない。ウェーバーの側方化におけるシフトは、患者が組み合わせ処置の個々の構成要素を受ける時には起こらない。注目すべきことに、これらのシフトは、社会的アウトカムの変化と同様に、双方向性であり、従って、右方にシフトする患者もいたし、左方にシフトする患者もいた。
【0082】
理論によって拘束されることは望まないが、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物に関連する新規の双方向アウトカムは、組み合わせ処置が、聴覚ネットワークおよび/またはその他の機能的脳内ネットワークに関連する脳領域において調節機能を果たし得ることを示唆する。聴覚機能の変化は、社会的機能の臨床的改善と相関したため、本明細書に記載される治療的組み合わせは、聴覚機能のみならず、内受容/外受容意識にも、聴覚機能性に頼る社会的コミュニケーションスキルにも影響を与え得る。実際、聴覚皮質は、情動処理およびコミュニケーションのためのネットワークに直接関与している(Disability and poor quality of life associated with comorbid anxiety disorders and physical conditions.Sareen J,Jacobi F,Cox BJ,Belik SL,Clara I,Stein MB.Arch Intern Med.2006 Oct 23;166(19):2109-16.doi:10.1001/archinte.166.19.2109)。
【0083】
本発明の組成物はアドレナリン作動およびアンジオテンシン機能をモジュレートする
アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、アドレナリン作動モジュレーションのための1つの成分および脳RAASのための1つの成分を含む。両方の系を同時に標的とする薬剤は設計されたことがない。脳および/または行動の障害を有する患者が、苦しみを引き起こす、しばしば処置不可能な症状を経験する時、これらの系の両方が相互作用するため、これは重大な処置ギャップである。
【0084】
アドレナリン系およびアンジオテンシン系は異なる機能的脳内ネットワークに影響する
理論によって拘束されるものではないが、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物の効果は、脳の3つの系統発生レベルのうちの各々におけるアドレナリン受容体およびアンジオテンシン受容体の相対密度に、一部分、依存する。中脳は、脳の基底部、脊髄のすぐ上に位置する、脳の最も古いレベルである。終脳は、脳の上部に位置する、最も新しく進化した脳のレベルである。これらのレベルの間に、間脳がある。理論によって拘束はされないが、脳の各レベルは、異なる神経学的過程に寄与するいくつかのネットワークに関与する受容体に富む脳領域を含有する。
【0085】
(ノルエピネフリンと結合する)β受容体は、終脳より中脳に高密度に位置しているため、ノルエピネフリンの効果は、脳幹などの中脳領域に頼る脳内ネットワークにおいて最も強い。(アンジオテンシンと結合する)アンジオテンシン受容体は、中脳より終脳に高密度に位置しているため、アンジオテンシンの効果は、前頭前野などの終脳領域に頼る脳内ネットワークにおいて最も強い。中脳内ネットワークは、身体器官との広範な結合を有するため、臨床的には、アドレナリン作動系のモジュレーションは、精神神経症状(例えば、不眠、疲労、無関心、疼痛、不安)に影響を与える。終脳内ネットワークは、感覚処理のための脳領域との広範な結合を有するため、アンジオテンシン系のモジュレーションは、種々の精神神経症状(例えば、認知障害、頭痛、前兆)に影響を与える。
【0086】
各機能的脳内ネットワークは、より古い脳およびより新しい脳の種々の領域に及ぶ。脳および/または行動の健康障害に関与する重要な機能的脳内ネットワークには、とりわけ、デフォルトモードネットワーク、サリエンスネットワーク、体性感覚ネットワーク、視覚ネットワーク、聴覚ネットワーク、および大脳辺縁系ネットワークが含まれる。これらの脳内ネットワークのうちのいくつかは、より新しい脳領域に大きく頼っている。例えば、デフォルトモードネットワークは、終脳(最も高い系統発生レベル)内に主に位置する領域において協調している。一方、サリエンスネットワークは、中脳(系統発生的に最も低いレベル)内の領域において協調しいる。
【0087】
(表1)系統発生レベルによって整理された機能的脳内ネットワーク領域
【0088】
本発明の治療的組み合わせは脳全体の機能的結合を正常化する
態様において、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、より低い脳内ネットワークにおける平衡化が、より高いネットワークの平衡化に影響を与え、その逆もそうであるため、多元ネットワーク効果を達成する。組成物は、2つの異なるストレス関連系(アドレナリン系および脳RAAS)を遮断するための少なくとも2つの成分を含む。これらの系の各々は、必要に応じて、脳の機能的結合をシフトさせるため、重要な役割を果たし得る。理論によって拘束はされないが、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、ベラパミル、およびそれらの組み合わせは、中脳においてβ受容体と相互作用する(
図5)。理論によって拘束はされないが、テルミサルタンおよびカンデサルタンは、終脳においてアンジオテンシン受容体と相互作用する(
図5)。
【0089】
アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、下記の実施例において詳述されるように、脳全体における機能的結合の調節を示唆する臨床効果をもたらした。組成物の臨床効果には、この相乗作用によって達成された独特の多元ネットワーク効果のため、情動的症状の正常化のみならず、社会的症状および認知的症状も含まれていた。理論によって拘束はされないが、これらの機能は、3つの異なる層(間脳、中脳、および終脳)から生じるため、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、3つ全てのレベルにおいて結合を改変する。組成物の多元ネットワーク効果は、患者が迅速な心理社会的進展を遂げることを可能にし(
図6)、脳全体の結合をさらに改善する(Safety Needs Mediate Stressful Events Induced Mental Disorders.Zheng Z,Gu S,Lei Y,Lu S,Wang W,Li Y,Wang F.Neural Plast.2016;2016:8058093.doi:10.1155/2016/8058093.Epub 2016 Sep 21)。理論によって拘束はされないが、3つ全ての系統発生レベルに帰することができる総合的症状の改善は、いずれかの剤が単独で投与される時には起こらない。3つ全ての系統発生レベルに帰することができる総合的症状の改善は、公知の標準治療処置では起こらない。
【0090】
脳および/または行動の健康障害ならびに医学的障害の防止
本明細書に記述される、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物の多元ネットワーク効果は、組成物による処置が、一生のうちの異なる時点で脳の異なる部分に影響する障害(例えば、パニック障害)を処置し得ることを示唆する。防止的処置を受け入れる多くの精神神経障害は、複数の機能的脳内ネットワークにおける平衡異常を特徴とし、そのことは、これらの障害が、本明細書に記載される組み合わせ療法による予防的処置のための見込みのある候補であることを示唆する。例えば、対処されない場合、一生涯、処置に対してより難治性になる慢性疼痛障害は、相当の能力障害の発症前に検出可能であり得る、視覚ネットワーク、サリエンスネットワーク、およびデフォルトモードネットワークにおける異常を特徴とする。対処されない場合、一生涯、処置に対してより難治性になる、ADHD、自閉症スペクトラム障害、および学習障害などの神経発達障害は、多元ネットワークの変化を特徴とする。対処されない場合、一生涯、処置に対してより難治性になる、統合失調症などの精神病性障害は、複数の脳内ネットワークにおける機能的異常を特徴とする。不安障害は、対処されない場合、一生涯、処置に対してより難治性になり、障害によっていくつかの特定の違いを有する多元ネットワーク効果を示す。アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、障害の間のネットワーク平衡異常の個々の違いにも関わらず、脳全体の機能的結合を改善することができるため、これらの状態に対する見込みのある防止的処置である。緩和されないまま放置された場合、一生涯、悪化する精神神経障害を防止するため、利用可能な処置は、現在、存在しない。精神神経性の疾患または能力障害の防止のための、そのような組成物の使用に関する研究は、これまでになされたことがない。
【0091】
アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、中年期に始まる神経変性疾患リスクの防止のために使用され得る。組成物は、前臨床神経変性疾患状態において調節不全となり得る脳代謝を累積的に正常化することができる。アルツハイマー病、パーキンソン病、および前頭側頭葉変性などの異なる神経変性障害は、異常な脳代謝に起因する異なる脳内ネットワークにおける平衡異常を特徴とする。神経変性疾患のリスクを有する患者において脳代謝を正常化することができる利用可能な処置は、現在、存在しない。そのような組成物の使用は、神経変性疾患の防止または処置に関して研究されたことがない。
【0092】
アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、脳全体の脳内結合を正常化することができるため、組成物は、精神神経医学の境界を越えた、ある特定の適応症(即ち、とりわけ、癌、自己免疫、自律神経系)のために使用され得る。脳内結合は、免疫系の健康に影響するため、機能的結合の調節不全は、医学的障害のリスクに影響し得る。具体的には、(脳が髄鞘形成を終える25歳などの)発達ウインドウ(developmental windows)付近で顕著に現れる医学的障害は、組成物による処置を含む、新規の脳ベースの防止的処置のための候補である。
【0093】
薬学的組成物
本開示は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤の有効量と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤の有効量とを含む薬学的組成物を提供する。そのような組み合わせは、共に製剤化されてもよいし、または別々に製剤化され、同時にもしくは逐次的に投与されてもよい。第1および第2の剤は、組み合わせて投与される時、脳および/または行動の健康障害(例えば、パニック障害)の処置のために有用である。いくつかの態様において、組み合わせ療法は、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を処置するために投与される。
【0094】
態様において、本発明の組成物は、組み合わせ処置において使用するため、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含有する。態様において、第1の剤は、ベラパミルであり、第2の剤は、テルミサルタンおよび/またはカンデサルタンである。いくつかの場合において、第1の剤は、中脳においてβ受容体に影響を与えるよう選択され、第2の剤は、終脳においてアンジオテンシン受容体と相互作用するよう選択される。剤は、第1の剤がアドレナリン系に影響を与え、第2の剤が脳レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に影響を与えるよう選択され得る。態様において、組成物は、アドレナリン作動およびアンジオテンシン機能の両方のモジュレーションに関連する。
【0095】
ある特定の態様において、本発明の組成物は、1つまたは複数の精神医学的構成要素、心理学的構成要素、および/または神経学的構成要素を有する障害に罹患した個体において顕在化する、不安、片頭痛、うつ、認知困難、怒り、無関心、疲労、身体的疼痛、精神病、および不眠のうちの1つまたは複数を、少なくとも10%、25%、50%、75%、またはさらには100%、防止するか、阻害するか、妨げるか、または低下させることができる。
【0096】
アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミルの薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせは、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数の処置のため、本明細書において企図される。「薬学的に許容される塩」という用語は、剤(例えば、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、またはベラパミル)を、剤が酸性官能基(例えば、カルボン酸官能基)を有する場合、薬学的に許容される無機または有機の塩基と接触させることによって調製される塩もさす。適当な塩基には、アルカリ金属、例えば、ナトリウム、カリウム、およびリチウムの水酸化物;アルカリ土類金属、例えば、カルシウムおよびマグネシウムの水酸化物;その他の金属、例えば、アルミニウムおよび亜鉛の水酸化物;アンモニア、および有機アミン、例えば、非置換型またはヒドロキシ置換型のモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、またはトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル,N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、ビス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、またはトリス-(2-ヒドロキシ-低級アルキルアミン)、例えば、モノ-(2-ヒドロキシエチル)-アミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)-アミン、またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)-アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N,-ジ低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、例えば、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-アミン、またはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;ならびにアミノ酸、例えば、アルギニン、リジン等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。「薬学的に許容される塩」という用語は、剤(例えば、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、またはベラパミル)を、剤が塩基性官能基(例えば、アミノ官能基)を有する場合、薬学的に許容される無機または有機の酸と接触させることによって調製される塩もさす。適当な酸には、硫酸水素(hydrogen sulfate)、クエン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、リン酸、イソニコチン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、サッカリン酸(saccharic acid)、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0097】
本発明の組成物は、マグネシウムの塩、任意で、酸化マグネシウム(MgO)を含有することができる。
【0098】
薬学的治療薬
治療的使用のため、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含む組成物は、全身投与され得る。好ましい投与経路には、例えば、患者における薬物の連続的な持続的なレベルを提供する、経口投与、または皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、もしくは皮内注射が含まれる。ヒト患者またはその他の動物の処置は、生理学的に許容される担体の中の(例えば、パニック障害の処置のための)治療的有効量の本明細書において同定される治療薬を使用して、実施される。アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、および/またはベラパミルは、カンデサルタンおよび/またはテルミサルタンと組み合わせて、生理食塩水などの薬学的に許容される緩衝液によって製剤化され得る。適当な担体およびそれらの製剤化は、例えば、E.W.MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。投与される治療剤の量は、投与の様式、患者の年齢および体重、ならびに脳および/または行動の健康障害の臨床症状に応じて変動する。臨床症状は、いくつかの態様において、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病)である。一般に、量は、脳および/または行動の健康障害の処置において使用される他の剤について使用されるものの範囲内である。いくつかの態様において、ベラパミルおよびテルミサルタン、ベラパミルおよびカンデサルタン、またはアニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つもしくは複数と組み合わせられたカンデサルタンおよび/もしくはテルミサルタンを含む組成物は、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を低下させるために有効な投与量で投与される。投与の有効性は、当業者に公知の方法によって、または10の精神神経症状のうちの1つもしくは複数を測定する任意のアッセイ(例えば、行動査定、神経心理学的試験等)を使用して決定され得る。例えば、本開示のいくつかの態様において、処置の有効性は、患者による症状の自己申告によって、かつ/またはNIH Toolbox試験を介して測定され得る。有効性は、疾患特異的な標準的なアウトカム項目、例えば、症状および機能のみならず、全体的な生活満足度または生活の質も査定する項目において測定されたアウトカムであってもよい。
【0099】
薬学的組成物の製剤化
アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤とを含有する組成物の投与は、他の構成要素と組み合わせられて、10の基本的な精神神経症状のうちの1つまたは複数を寛解させるか、低下させるか、または安定化するために有効である治療薬の濃度をもたらす任意の適当な手段によって、脳および/または行動の健康障害(例えば、パニック障害)の処置のため、対象に投与され得る。いくつかの態様において、組み合わせは、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を処置する。組成物は、マグネシウムの塩、任意で、酸化マグネシウム(MgO)を含有することができる。組成物は、一般に、組成物の全重量の1~95重量%の量で存在する任意の適当な担体物質の中に、任意の適切な量で含有され得る。組成物は、経口投与に適した剤形で提供され得る。いくつかの態様において、組成物は、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内)投与経路に適した剤形で提供され得る。薬学的組成物は、従来の薬学的実務に従って製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照すること)。
【0100】
ヒトにおける投与量は、最初に、マウスにおいて使用されるアニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、ベラパミル、またはそれらの組み合わせの量からの推定によって決定され得る。投与量は、ヒトにおける個々の剤の適応症となっている障害の有効な処置のための投与量に基づき決定されてもよい。アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数の投与量(任意で、1日投与量)は、個々に、または集合的に、約120mg~約480mg、約250mg~約360mg、約200mg~約500mg、約250mg~約350mg、約120mg~約720mg、または約288mgであり得る。第2の剤の投与量は、約80mg~約400mg、約45mg~約180mg、約80mg~約320mg、約45mg~約150mg、約90mg~約200mg、または約96mgであり得る。態様において、第2の剤の投与量は、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、または150mgより多い。第1の剤またはその構成要素および第2の剤またはその構成要素の投与量は、1つまたは複数の剤形に含有されていてよい。
【0101】
いくつかの態様において、第1または第2の剤のいずれかの1日投与量は、1日1回より多く投与される。例えば、いくつかの態様において、毎日投与(例えば、80mg)が、1日2回、40mgずつの用量で送達される。
【0102】
第1の剤および第2の剤は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、もしくは8:1、または少なくとも約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、もしくは8:1の、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、ベラパミル、またはそれらの組み合わせ)と、第2の剤(例えば、カンデサルタン、テルミサルタン、またはそれらの組み合わせ)との投与量比(質量:質量)で、(任意で、1つの剤形として)対象に投与され得る。いくつかの態様において、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、ベラパミル、またはそれらの組み合わせ)と、第2の剤(例えば、カンデサルタン、テルミサルタン、またはそれらの組み合わせ)との投与量比は、約3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、または8:1より低い。第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、ベラパミル、またはそれらの組み合わせ)は、対象に投与される第2の剤(例えば、カンデサルタン、テルミサルタン、またはそれらの組み合わせ)の1日投与量の約2倍または3倍の1日投与量で対象に投与され得る。いくつかの態様において、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、ベラパミル、もしくはそれらの組み合わせ)、第2の剤(例えば、カンデサルタン、テルミサルタン、もしくはそれらの組み合わせ)、またはそれらの構成要素(例えば、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、ベラパミル、もしくはそれらの組み合わせ)の投与量は、個々に、または組み合わせて、約0.1mg化合物/Kg体重~約2mg化合物/Kg体重;または約0.5mg/Kg体重~約2mg/Kg体重、または約1.0mg/Kg体重~約2mg/Kg体重;または約1.5mg/Kg体重~約2mg/Kg体重;または約0.1mg/Kg体重~約1.5mg/Kg体重;または約.10mg/Kg体重~約1.0mg/Kg体重;または約.10mg/Kg体重~約0.5mg/Kg体重で変動し得る。他の態様において、この用量は、約0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、または3.0mg/Kg体重であり得る。他の態様において、用量は、約0.2mg化合物/Kg体重~約2mg化合物/Kg体重の範囲であり得ると想定される。当然、投与量は、そのような処置プロトコルにおいてルーチンに行われるように、初期臨床試験の結果および特定の患者の必要に応じて、上方または下方に調整され得る。
【0103】
態様において、マグネシウム塩(例えば、MgO)の投与量(任意で、1日投与量)は、約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、もしくは500mg、または少なくとも約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、もしくは500mgである。態様において、マグネシウム塩(例えば、MgO)の投与量(任意で、1日投与量)は、約250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、または500mgを超えない。
【0104】
本開示の態様による薬学的組成物は、実質的に投与直後に、または投与後の任意の所定の時間もしくは期間に、活性化合物(例えば、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミル、またはそれらの組み合わせ)を放出するよう製剤化され得る。後者のタイプの組成物は、一般に、放出制御製剤として公知であり、これには、(i)長期間にわたって体内の薬物の実質的に一定の濃度を引き起こす製剤;(ii)所定の遅延時間の後に、長期間にわたって体内の薬物の実質的に一定の濃度を引き起こす製剤;(iii)体内の比較的一定の有効なレベルを維持することによって、所定の期間にわたって作用を持続し、同時に、活性物質の血漿中レベルの変動(鋸歯状動態パターン)に関連する望ましくない副作用を最小化する製剤;(iv)例えば、意図された標的細胞(例えば、脳細胞)の近くへの放出制御組成物の空間的配置によって、作用を局在化する製剤;(v)用量が、1日1回または2回、例えば、経口的に投与されるような、便利な投薬を可能にする製剤;ならびに(vi)治療剤を特定の細胞型(例えば、脳細胞)に送達するため、担体または化学的誘導体を使用することによって、カルシウムチャネルおよびアンジオテンシン受容体を標的とする製剤が含まれる。いくつかの適用について、放出制御製剤は、治療的なレベルの血漿中レベルを持続するため、1日に頻繁に投与する必要を省く。
【0105】
放出の速度が当該化合物の代謝の速度を上回る放出制御を得るため、多数の戦略のうちの任意のものが遂行され得る。一例において、放出制御は、例えば、様々なタイプの放出制御組成物およびコーティングを含む、様々な製剤化パラメータおよび成分の適切な選択によって得られる。従って、治療薬は、適切な賦形剤によって、投与時に制御された様式で治療薬を放出する薬学的組成物に製剤化される。例には、シングルユニットまたはマルチプルユニット(single or multiple unit)の錠剤またはカプセル組成物、油溶液、懸濁液、乳濁液、マイクロカプセル、マイクロスフェア、分子複合体、ナノ粒子、パッチ、およびリポソームが含まれる。
【0106】
非経口組成物
薬学的組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体および佐剤を含有する、剤形、製剤で、または適当な送達デバイスもしくはインプラントを介して、注射、注入、または移植(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内等)によって非経口投与され得る。そのような組成物の製剤化および調製は、薬学的製剤化の分野の当業者に周知である。製剤化は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(前記)に見出され得る。
【0107】
非経口的に使用するための組成物は、単位剤形(例えば、単回投与アンプル)で、または適当な保存剤が添加されていてよい、数回分の用量を含有するバイアルで、提供され得る(下記参照)。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、注入デバイス、もしくは移植のための送達デバイスの形態であってもよいし、または使用前に水もしくはその他の適当な媒体で再構成される乾燥粉末として提示されてもよい。10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を低下させるか、または寛解させる活性物質の他に、組成物は、適当な非経口的に許容される担体および/または賦形剤を含むことができる。活性治療剤は、放出制御のため、マイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム等に組み込まれてもよい。さらに、組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定化剤、pH調整剤、浸透圧調整剤、および/または分散剤を含むことができる。
【0108】
上に示されたように、本開示の態様による薬学的組成物は、無菌注射に適した形態であり得る。そのような組成物を調製するためには、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数が、非経口的に許容される液体媒体に溶解または懸濁させられる。利用され得る許容される媒体および溶媒には、水、適量の塩酸、水酸化ナトリウム、または適当な緩衝剤の添加によって適当なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、ならびに等張の塩化ナトリウム溶液およびブドウ糖溶液が含まれる。水性製剤は、1つまたは複数の保存剤(例えば、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、またはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート)も含有し得る。化合物のうちの1つが水に難溶性であるか、または低い溶解度を有する場合には、溶解増強剤もしくは可溶化剤が添加されてもよいし、または溶媒が10~60%w/wのプロピレングリコール等を含んでもよい。
【0109】
放出制御非経口組成物
放出制御非経口組成物は、水性懸濁液、マイクロスフェア、マイクロカプセル、磁性マイクロスフェア、油溶液、油懸濁液、または乳濁液の形態であり得る。あるいは、活性薬物は、生体適合性の担体、リポソーム、ナノ粒子、インプラント、または注入デバイスに組み込まれ得る。
【0110】
マイクロスフェアおよび/またはマイクロカプセルの調製において使用するための材料は、例えば、ポリガラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)、およびポリ(乳酸)などの生分解性/生体浸食性ポリマーである。放出制御非経口製剤を製剤化する時に使用され得る生体適合性担体は、炭水化物(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポタンパク質、または抗体である。インプラントにおいて使用するための材料は、非生分解性(例えば、ポリジメチルシロキサン)、または生分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、もしくはポリ(オルトエステル)、もしくはそれらの組み合わせ)であり得る。
【0111】
経口的に使用するための固体剤形
経口的に使用するための製剤には、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された、活性成分(例えば、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)を含有する錠剤が含まれる。そのような製剤は、当業者に公知である。賦形剤は、例えば、不活性の希釈剤または増量剤(例えば、ショ糖、ソルビトール、糖、マンニトール、結晶セルロース、デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、セルロース誘導体、例えば、結晶セルロース、デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、またはアルギン酸);結合剤(例えば、ショ糖、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール);ならびに滑沢剤、流動促進剤、および抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、またはタルク)であり得る。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、風味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤等であり得る。
【0112】
錠剤は、いくつかの態様において、コーティングされておらず、他の態様において、コーティングされている。錠剤は、任意で、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それによって、より長期間にわたる持続的な作用を提供するため、公知の技術によってコーティングされ得る。コーティングは、(例えば、放出制御製剤を達成するため)活性薬物を所定のパターンで放出するようにも適合し得るし、または胃を通過する後まで活性薬物を放出しないようにも適合し得る(腸溶性コーティング)。コーティングは、いくつかの態様において、糖コーティング、(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、および/もしくはポリビニルピロリドンに基づく)フィルムコーティング、または(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セラック、および/もしくはエチルセルロースに基づく)腸溶性コーティングである。さらに、例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料が利用されてもよい。
【0113】
固体錠剤組成物は、いくつかの態様において、望ましくない化学的変化(例えば、第1および/または第2の剤の放出前の化学的分解)から組成物を保護するように適合したコーティングを含む。いくつかの態様において、コーティングは、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology(前記)に記載されているものと類似した様式で固体剤形に適用される。
【0114】
アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数は、錠剤内に共に混合されるか、または区画化される。一例において、第2の剤の実質的な部分が、第1の剤の放出の前に放出されるよう、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)が錠剤の内側に含有され、第2の剤(例えば、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数)が外側に含有される。いくつかの態様において、第2の剤(例えば、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数)が錠剤の内側に含有され、第1の剤(例えばアニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)が外側に含有される。
【0115】
経口的に使用するための製剤には、活性成分(即ち、アニパミル、カンデサルタン、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、テルミサルタン、チアパミル、およびベラパミル、もしくはそれらの組み合わせ)が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、乳糖、結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリン)と混合された咀嚼錠もしくは硬ゼラチンカプセル、または活性成分が水もしくは油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合された軟ゼラチンカプセルが含まれる。粉末および顆粒は、いくつかの態様において、例えば、ミキサー、流動床装置、または噴霧乾燥機を使用して、従来の様式で、錠剤およびカプセルについての前記の成分を使用して調製される。
【0116】
放出制御経口剤形
(例えば、経口的に使用するための)アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数より選択される第2の剤との放出制御組成物は、活性物質の溶解および/または拡散を制御することによって、剤を放出するよう構築され得る。例えば、ベラパミルおよびテルミサルタンの即時放出製剤が市販されており、ベラパミルの持続放出バージョンも市販されている。ベラパミル持続放出(ER)製剤は、12時間または24時間にわたり薬物を放出する。溶解または拡散による放出制御は、化合物の錠剤、カプセル剤、ペレット剤、もしくは顆粒剤の適切なコーティングによって、または第1および/もしくは第2の剤を含む組成物を、適切なマトリックスに組み込むことによって、達成され得る。放出制御コーティングには、いくつかの態様において、前記のコーティング物質のうちの1つもしくは複数、ならびに/または、例えば、セラック、ミツロウ、グリコワックス(glycowax)、キャスターワックス(castor wax)、カルナウバロウ、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、グリセロールパルミトステアレート(glycerol palmitostearate)、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートハイドロゲル、1,3ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、および/もしくはポリエチレングリコールが含まれる。放出制御マトリックス製剤において、マトリックス材料には、例えば、水和メチルセルロース、カルナウバロウ、およびステアリルアルコール、カルボポール934、シリコン、グリセリルトリステアレート、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、および/またはハロゲン化フルオロカーボンも含まれ得る。
【0117】
本明細書に記載された2つの剤(例えば、ベラパミル、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミルのうちの1つまたは複数と、テルミサルタンおよびカンデサルタンのうちの1つまたは複数と)を含有する放出制御組成物は、いくつかの態様において、浮遊性の錠剤またはカプセルの形態(即ち、経口投与時に、一定期間、胃内容物の上部に浮遊する錠剤またはカプセル)である。組成物の浮遊錠剤は、剤またはその構成要素のうちの1つまたは複数と、賦形剤および20~75%w/wのハイドロコロイド、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物を造粒することによって調製され得る。次いで、得られた顆粒を、錠剤に圧縮することができる。胃液と接触した時、錠剤は、その表面の周りに実質的に水不透過性のゲルバリアを形成する。このゲルバリアは、1未満の密度を維持し、それによって、錠剤が胃液に浮遊し続けることを可能にするために役立つ。
【0118】
本開示の態様は、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)と第2の剤(例えば、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数)とを含む薬学的組成物を、治療的有効量、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与する工程を含む、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を処置する方法を提供する。従って、1つの態様は、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を引き起こす疾患または障害に罹患しているか、または罹患しやすい対象を処置する方法である。この方法は、疾患、状態、障害、またはそれらの症状が処置されるような条件で、第1の剤と第2の剤との組み合わせを、疾患、状態、障害、またはそれらの症状を処置するために十分な治療的な量、対象に投与する工程を含む。治療方法には、予防的処置が含まれる。いくつかの態様において、対象は、10の基本的な精神神経症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)のうちの1つまたは複数を引き起こす疾患または障害に罹患しているか、それを有するか、それに罹患しやすいか、またはそのリスクを有する、哺乳動物、具体的には、ヒトである。
【0119】
そのような処置を必要とする対象の同定は、対象または医療従事者の判断によることができ、主観的なもの(例えば、見解)または(例えば、試験もしくは診断方法によって測定可能な)客観的なものであり得る。
【0120】
組み合わせ療法
任意で、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)ならびに/または第2の剤(例えば、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数)を、任意の他の標準的な抗不安治療、抗片頭痛治療、抗うつ病治療、抗認知困難治療、抗怒り治療、抗無関心治療、抗疲労治療、抗疼痛治療、抗精神病治療、または抗不眠療法、例えば、認知行動療法、鎮静薬等と共に投与することができ;そのような方法は、当業者に公知であり、E.W.MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。所望により、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)ならびに/または第2の剤(例えば、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数)は、抗不安薬および/または鎮静薬、抗精神病薬、気分安定薬、抗けいれん薬、抗ヒスタミン薬、ならびに抗うつ病薬を含むが、これらに限定されるわけではない、任意の従来の抗不安療法と組み合わせて投与される。
【0121】
本発明の組成物は、神経心理学的状態を処置するため、対象に投与され得る。神経心理学的状態は、脳および/または行動の障害であり得る。脳および行動の健康障害の非限定的な例には、感情障害、不安障害、神経変性障害、神経発達障害、精神病性障害、パーソナリティ障害、片頭痛障害、および身体表現性障害が含まれる。感情障害の例には、双極性障害、気分循環症、うつ、不機嫌、全般性不安障害、大うつ病性障害、強迫性障害、産後うつ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、恐怖症、および季節性感情障害が含まれる。不安障害の例には、パニック障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、強迫性障害、および限局性恐怖症が含まれる。神経変性障害の例には、アルツハイマー病およびパーキンソン病が含まれる。神経発達障害の例には、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、および学習障害が含まれる。精神病性障害の例には、統合失調症、統合失調感情障害、および精神病を伴う大うつ病が含まれる。パーソナリティ障害の例には、妄想性パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、情緒不安定性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、および強迫性パーソナリティ障害が含まれる。片頭痛関連障害の例には、前兆を伴う片頭痛、前兆を伴わない片頭痛、無頭痛性片頭痛、および脳底動脈型片頭痛が含まれる。身体表現性障害の例には、身体化障害、心気症、転換性障害、身体醜形障害、および慢性疼痛が含まれる。疾患に関連する症状は、脳および行動の健康障害に関連する「10の基本的な症状」:不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病のうちの1つまたは複数より選択され得る。本発明の組成物または剤形の対象への投与は、脳および/または行動の障害に関連する症状のうちの1つまたは複数を低下させるか、または寛解させることができる。
【0122】
本発明の組成物は、対象における局所脳血流を改変するために十分な量で対象に投与され得る。脳領域には、終脳、間脳、および中脳のうちの1つまたは複数が含まれ得る。本発明の組成物は、対象の終脳、間脳、および中脳のある領域において協調する機能的脳内ネットワークにおいて血行動態平衡をもたらすために十分な量で対象に投与され得る。
【0123】
処置のための患者の選択
本開示は、本明細書に記載される治療的組み合わせによる処置から利益を得る可能性が高い患者の選択を提供する。そのような患者は、脳もしくは行動の健康障害またはそれらの症状(例えば、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)を有するものとして選択される。脳もしくは行動の健康障害またはそれらの症状を有する患者は、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数より選択される第1の剤と、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数である第2の剤とを含む組み合わせ治療薬による療法のために選択される。
【0124】
理論によって拘束はされないが、最大のエネルギー供給/需要ミスマッチを有する患者は、本開示の組成物から最大の利益を得ることができる。エネルギー供給/需要ミスマッチを有する患者は、組み合わせ処置の前後に機能的結合の最大の変化を示し得る。エネルギーを二元的(高対低)に考慮した時、4つのエネルギー需要/供給表現型が出現する。4つのタイプとは、高需要/高供給(精神神経系の総合的症状の低いリスク)、高需要/低供給(精神神経系の総合的症状の高いリスク)、低需要/高供給(精神神経系の総合的症状の低いリスク)、および低需要/低供給(精神神経系の総合的症状の低いリスク)である。
【0125】
キットまたは薬学的系
本発明の組成物は、脳もしくは行動の健康障害またはそれらの症状(例えば、不安、片頭痛、うつ、認知困難、怒り、無関心、疲労、疼痛、精神病、もしくは不眠)を処置するためのキットまたは薬学的系に組み立てられ得る。キットまたは薬学的系は、1つまたは複数の容器手段、例えば、バイアル、チューブ、アンプル、ボトル等が内部に密封されている、運搬手段、例えば、ボックス、カートン、チューブ等を含む。キットまたは薬学的系は、本開示の態様の剤の関連する使用説明書も含むことができる。いくつかの態様において、キットは、第1の剤(例えば、アニパミル、デバパミル、ファリパミル、ガロパミル、チアパミル、およびベラパミルのうちの1つまたは複数)と、第2の剤(例えば、カンデサルタンおよびテルミサルタンのうちの1つまたは複数)とを含む。
【0126】
本開示の態様の実施は、他に示されない限り、分子生物学(例えば、組換え技術)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術を利用し、これらは十分に当業者の範囲内にある。そのような技術は、"Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,1989);"Oligonucleotide Synthesis"(Gait, 1984);"Animal Cell Culture"(Freshney,1987);"Methods in Enzymology""Handbook of Experimental Immunology (Weir,1996);"Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (Miller and Calos, 1987);"Current Protocols in Molecular Biology"(Ausubel, 1987);"PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,1994);"Current Protocols in Immunology"(Coligan,1991)などの文献に十分に説明されている。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作製に適用可能であり、従って、本発明の作成および実施において考慮され得る。具体的な態様のための特に有用な技術は、以下のセクションに記述される。
【0127】
以下の実施例は、本発明のアッセイ、スクリーニング、および治療方法の作成および使用の方法の完全な開示および説明を、当業者に提供するために記載され、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定するためのものではない。
【実施例】
【0128】
実施例1:ベラパミルおよびテルミサルタンによる組み合わせ処置の新規の臨床効果 - 後向き観察コホート研究
成人における精神神経系の総合的症状の処置のための、ベラパミルおよびテルミサルタンを含有する組成物の、新規の臨床効果を測定するための研究が完了した。この研究の具体的な目的は、(1)総合的症状に対する新規の臨床効果の大きさ;(2)心理社会的アウトカムに対する新規の臨床効果の大きさ;および(3)組み合わせ処置からは生じるが、単独療法処置からは生じない独特の臨床効果を記載することであった。主な分析のため、全ての患者において、処置あり 対 なしの結果を比較した。
【0129】
組み合わせ処置あり 対 なしの総合的症状
組み合わせ処置を受容した患者は、受容していない患者と比べて、10の基本的な能力障害性症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、身体的疼痛、および精神病)の総計によって測定された全体的な総合的症状、ならびに不安、うつ、易刺激性、無関心、疲労、身体的疼痛、不眠、頭痛、および認知困難を含む個々の症状の9/10について、劇的な低下を示した。全てのp値が0.001未満であった。うつおよび不眠および頭痛についての効果量が小であったのを除き、全ての効果量が中~大であった。いくつかの効果量、例えば、全体的な総合的症状、不安、および無関心についての効果量は、有意に大であった(1.0超)(
図1A~1J)。
【0130】
処置ありおよびなしの標準化された心理社会的アウトカム
組み合わせ処置を受容した患者は、受容していない患者と比べて、全般的生活満足度、意義と目的、情緒的支援、道具的支援、友人関係、ならびに孤独感を含む、心理社会的健康の標準化された項目の6/10について有意な改善を示した。全てのp値が0.1未満であった。意義と目的を除く全ての効果量が、中~大であった(
図2A~2F)。
【0131】
個々の単独療法と比べた組み合わせ処置の独特性
組み合わせ療法からのアウトカムは、1日2回のテルミサルタン単独またはベラパミル単独による単独療法からのアウトカムと有意に異なっていた。テルミサルタンのみの群と比較して、組み合わせ処置を受容した患者は、全般的生活満足度(p<0.01)および怒り[敵意](p<0.04)のNIH Toolbox項目について有意に改善されたアウトカムスコアを示した(
図3A~3B)。
【0132】
ベラパミル群と比較して、組み合わせ治療を受容した患者は、NIH Toolbox自己効力感(p<0.05)および怒り[攻撃性](p<0.06)のNIH Toolbox項目について有意に異なるスコアを示した(
図4A~4B)。
【0133】
実施例2:成人における精神神経系の総合的症状に対する、新規の組み合わせ処置、ベラパミルとテルミサルタンとを含有する組成物の観察コホート研究
成人における精神神経系の総合的症状の処置のための、ベラパミルとテルミサルタンとを含有する組成物の安全性および有効性を評価するための観察コホート研究が完了した。この研究の具体的な目的は、(1)組み合わせ処置の安全性を測定すること;(2)異なる症状および異なる障害を有する患者に対する組み合わせ処置の有効性を比較すること;ならびに(3)処置の組み合わせの作用機序が、聴覚機能ネットワークにおける機能的結合の正常化をもたらすか否かを試験するため、生理学的項目(ウェーバー試験)を使用することであった。主な分析のため、同じ患者において処置の前後で結果を比較した。
【0134】
人口動態
全部で102人の患者が、組み合わせ療法を受容し、CEDAR試験(2017年4月11日にAspire IRBによって最初に認可された実施計画番号:CEDAR2017)に同意した。人口動態の詳細、ならびに利き手、一次診断、既存の薬物療法、および心血管診断の存在に関する情報は、表2に見出され得る。
【0135】
【0136】
自己申告の精神神経系の総合的症状
組み合わせ処置を受容した患者は、10の基本的な能力障害性症状のうちの8つ(疲労および精神病以外)について、総合的症状の有意な低下を示し;最大の効果は、無関心、不安、認知困難、および全体的な精神神経学的能力障害について見られた(表3参照)。
【0137】
ベースライン時に高度の不安(7以上)を有していた患者のうち、組み合わせ処置を受容した患者は、10の基本的な能力障害性症状のうちの9つについて総合的症状の有意な低下を示した。効果量は、不安、易刺激性、無関心、および全体的な精神神経学的能力障害については大、うつ、不眠、および認知困難については中、残りの全ての症状(疲労、疼痛、および頭痛)については小であった(表4参照)。ベースライン時に中等度の不安(4以上)を有していた患者において、効果量は、不安、無関心、認知障害、および全体的な精神神経学的能力障害については中、精神病以外の残りの全ての症状については小であった(表5参照)。
【0138】
ベースライン時に高度の認知困難(7以上)を有していた患者において、効果量は、無関心、認知困難、および全体的な精神神経学的能力障害については大、不安、うつ、および易刺激性については中、不安、身体的疼痛、および不眠については小であった(表6参照)。ベースライン時に中等度の認知困難(4以上)を有していた患者において、効果量は、認知困難については大、不安、うつ、易刺激性、無関心、および全体的な精神神経学的能力障害については中、疲労および不眠については小であった(表7参照)。
【0139】
(表3)自己申告の精神神経系の総合的症状に対する組み合わせ処置の効果(最終観察平均追跡期間は8.9カ月であった)
【0140】
(表4)ベースライン時に重度の不安を有していた患者における組み合わせ処置の前後の自己申告の総合的症状
【0141】
(表5)ベースライン時に中等度の不安を有していた患者における組み合わせ処置の前後の自己申告の総合的症状
【0142】
(表6)ベースライン時に重度の認知障害を有していた患者における組み合わせ処置の前後の自己申告の総合的症状
【0143】
(表7)ベースライン時に中等度の認知障害を有していた患者における組み合わせ処置の前後の自己申告の総合的症状
【0144】
NIH Toolbox標準化アウトカム項目
NIH Toolbox項目は、全般的生活満足度の有意な改善を示し、社会的満足度のかろうじて有意な改善を示した(表8)。より少ない症例数によるアウトカム、例えば、処理速度(n=17)および次元変化カード分類(Dimensional Change Card Sort)(n=18)は、処置の前後で有意な変化を示さなかった(表8参照)。
【0145】
(表8)NIH Toolbox標準化アウトカム項目
【0146】
感音機能の観察の双方向変化を示すウェーバーの側方化
ウェーバー試験は、感音難聴を同定するために医師が使用することができる一般的な臨床検査技術である。ウェーバー試験は、前頭部の上方の中央に配置された音叉を利用し、音が左に側方化しているか右に側方化しているかを申告するよう患者に要求する。感音難聴を有する患者において、音は、より強い側に側方化する。感音難聴なしに精神神経障害(例えば、脳および/または行動の健康障害)を有する患者は、ウェーバー試験によって試験された時、左または右への側方化を高頻度に申告する。この側方化は、実際、聴覚機能ネットワークが左優位、右優位、または両側優位であり得るという事実によるものであり得る(Asymmetries of the planum temporale and Heschl's gyrus:relationship to language lateralization.Dorsaint-Pierre R,Penhune VB,Watkins KE,Neelin P,Lerch JP,Bouffard M,Zatorre RJ.Brain.2006 May; 129(Pt 5):1164-76.doi:10.1093/brain/awl055.Epub 2006 Mar 14)。
【0147】
図7は、ベラパミルおよびテルミサルタンを含有する組成物の投与を開始した、中止した、または変化させた患者におけるウェーバーの側方化における変化を示す。これらの変化は、組成物投与が安定したままであった来院間には存在しなかった。注目すべきことに、ウェーバー結果が左方に矯正される患者もいたし、ウェーバー結果が右方に矯正される患者もいた。
【0148】
全部で23人の患者について、処置の前後の両方でウェーバー試験結果が入手可能であった(表9参照)。処置の変化を有した患者18人のうち、15人が側方化の変化を示したのに対し、処置の変化を有しなかった患者5人のうち、1人のみが側方化の変化を示した。この差は、統計的に有意であった(p<0.006)。
【0149】
(表9)組み合わせ処置ありの患者 対 なしの患者におけるウェーバーの側方化
【0150】
血圧の双方向変化
ベースライン時に高血圧を有していた患者において、ベラパミルとテルミサルタンとを含有する組成物の投与は、正常レベルへの減少と関連していた。ベースライン時に低血圧を有していた患者において、投与は、正常レベルへの増加と関連していた。ベースライン時に正常血圧を有していた患者において、処置は、有意な変化と関連していなかった。双方向変化は、自律神経バランスを媒介する中脳領域における機能的結合の調節を示唆する(
図8)。
【0151】
単独療法を受けた患者と比べた、組み合わせ療法を受けた患者における社会的アウトカムの有意差
有意な社会的変化を申告した者の割合を、組み合わせ療法を受けた患者と、単独療法を受けた患者とで比較するため、カイ二乗分析を実施した(表10)。各来院時に、所属と愛に関する基本的な人間の欲求を明らかにする自己申告の質問によって、患者を体系的に査定した。結果は、組み合わせ療法を受けた患者が、社会的活力(momentum)、新しい社会的接触、服飾、および外観の変化を申告する可能性が有意に高いことを示した。理論によって拘束はされないが、これらの社会的変化は、間脳および終脳の脳領域に大きく頼る社会的認知に関連する機能的脳内ネットワークの変化から生じる。
【0152】
(表10)有意な社会的変化を申告した、組み合わせ療法を受けた患者の割合の、単独療法を受けた患者との比較
*単独療法とはテルミサルタンのみまたはベラパミルのみをさす。
【0153】
考察
精神神経系の適応症(例えば、脳および/または行動の健康障害)を処置するため、ベラパミルとテルミサルタンとの組み合わせを使用する、ヒトにおける臨床研究が完了した。この観察研究は、より完全な軽減を達成するため、実臨床の一部として、およそ1年間、組み合わせ療法によって偶然に処置された、いくつかの一般的な精神神経系の併存症を有する患者における、注目すべき症状改善の臨床的印象によって動機づけられた。この研究は、ルーチンの精神神経ケアの状況において送達された時の組み合わせ処置の安全性および有効性を、観察研究設計の限度内で、経験的に試験するために設計された。大部分の患者が、標準療法に対して強化された組み合わせ処置を受容した。
【0154】
102人の患者において、組み合わせ処置後に、無関心、不安、認知困難、および全体的な精神神経学的能力障害(例えば、脳および/または行動保健学的能力障害)の有意な改善にも関わらず、収縮期血圧も拡張期血圧も有意に異なっていなかった。有害な医学的総合的症状の割合は、処置の前後で有意に変化しなかった。組み合わせ処置の有害症状プロファイルは、テルミサルタンおよびベラパミルの確立されている有害症状プロファイルと類似していた。標準化された試験は、前後で、全般的生活満足度の有意な改善を示した。
【0155】
観察研究は、無作為化比較試験と比較して、効果量の類似の推測を提供することができる(Development and reliability testing of a cross-cutting symptom assessment for DSM-5.American Journal of Psychiatry,170(1),59-70.Narrow,W.E.,Clarke,D.E.,Kuramoto,S.J.,Kraemer,H.C.,Kupfer,D.J.,Greiner,L.,& Regier,D.A.(2013).DSM-5 field trials in the United States and Canada,Part III)。この研究は、認められた効果量の正確さを支持するいくつかの長所を含む。これらには、多い症例数、時間的効果の分析を可能にする縦断的研究設計、長い追跡期間、(より正確に実臨床に類似する)複数の併存症を有する患者の組み入れ、バイタルサインなどの客観的項目の組み入れ、およびNIH Toolbox項目が含まれる。この研究のもう一つの長所は、ブラッドフォードヒル基準に従って、関連であるか因果関係であるかを試験するために実施された、異なる分析の数であった。ある因子を因果関係または関連と見なすためには、以下の基準が観察されるべきである:強固性、一致性、特異性、時間性、生物学的勾配、妥当性、一貫性、実験、類似性、および可逆性。
【0156】
理論によって拘束されることは望まないが、組み合わせ処置は、複数の精神神経障害(例えば、脳および/または行動の健康障害)に共通する中枢経路に作用する。理論によって拘束されるものではないが、アンジオテンシンII受容体遮断と、それと同時のアドレナリン作動遮断との独特の組み合わせは、特に、社会的意識および情動的意識にとって重要な脳の領域である間脳において、脳血流のよりバランスのとれた分布をもたらす。換言すると、情動(中脳)と同時に認知(終脳)に影響を与えることによって、この相乗作用は、改善された社会的認知(間脳)をもたらすことができる。この仮説は、組み合わせ療法を受けた患者における顕著な社会的変化の所見に基づく。例えば、組み合わせ処置を受けた患者において、社会的行動および服飾行動についての変化が観察された。研究の結果は、組み合わせ処置を受けた患者における社会的満足度の改善を示した。これは、脳の聴覚機能ネットワークの側方化を測定する、定期的来院の一部として実施されたウェーバー試験からの結果の分析によって、さらに支持される。診療所において、組み合わせ処置を開始した患者、または単独療法から組み合わせ処置に変化された患者は、ウェーバー試験の側方化におけるシフトを来院間に示した。ウェーバー試験の側方化におけるシフトは、標準治療薬では起こらない。
【0157】
理論によって拘束されることは望まないが、ベラパミルとテルミサルタンとを含有する組成物は、聴覚機能ネットワークに関連する脳領域において調節機能を果たすことができる。聴覚機能のこれらの変化は、社会的機能の臨床的改善と相関したため、組成物は、聴覚機能のみならず、内受容/外受容意識にも、聴覚機能性に頼る社会的コミュニケーションにも影響し得る。実際、聴覚皮質は、情動処理のためのネットワークに直接関与する(disability and poor quality of life associated with comorbid anxiety disorders and physical conditions.Sareen J,Jacobi F,Cox BJ,Belik SL,Clara I,Stein MB.Arch Intern Med.2006 Oct 23;166(19):2109-16.doi:10.1001/archinte.166.19.2109)。
【0158】
実施例の方法
以下の方法を実施例1において使用した。
【0159】
データおよび組み合わせ療法
この研究のためのデータは、比較有効性認知症アルツハイマー病レジストリ(Comparative Effectiveness Dementia and Alzheimer's Registry)(CEDAR)プロジェクトより選択された。CEDARプロジェクトは、Broward County,FLのコミュニティベースの精神神経専門診療科における、神経学的状態、心理学的状態、または精神医学的状態に対する処置を求める患者のための実臨床の、IRBによって認可された観察研究である。患者は、神経学的併存症、精神医学的併存症、および心理学的併存症のための、薬物療法の調整およびルーチンの認知行動療法を含む、通常のケアの過程を受容した。観察研究への参加の結果として、処置は変更されなかった。CEDARプロジェクトに同意した患者のみが、この研究に組み入れられた。
【0160】
組み合わせ療法は、120mgまたは180mgのいずれかのベラパミル1日2回、および40mgまたは80mgのいずれかのテルミサルタン1日2回の投与を含んでいた。比較のために使用された対照群は、ベラパミルもテルミサルタンも受容しないか、またはテルミサルタンのみ、もしくはベラパミルのみを受容した。
【0161】
人口動態
比較有効性認知症アルツハイマー病レジストリ(CEDAR)研究に同意した全部で76人の患者からのデータを分析した。各処置群からの平均年齢、性別、民族性、および教育を、表11に提供する。
【0162】
(表11)
結果は両側検定に基づく。各々の有意な対について、より小さい列割合を有するカテゴリのキーが、より大きい列割合を有するカテゴリに表される。
大文字(A、B、C)の有意水準:.05
a.このカテゴリは、列割合が0または1に等しいため、比較において使用されない。
b.このカテゴリは、ケースの重みの総計が2未満であるため、比較において使用されない。
c.検定は、ボンフェローニ補正を使用して、最も内側の各サブテーブルの行における全ての対比較について調整される。
【0163】
(表11)続き
結果は両側検定に基づく。各々の有意な対について、より小さい列割合を有するカテゴリのキーが、より大きい列割合を有するカテゴリに表される。
大文字(A、B、C)の有意水準:.05
a.このカテゴリは、列割合が0または1に等しいため、比較において使用されない。
b.このカテゴリは、ケースの重みの総計が2未満であるため、比較において使用されない。
c.検定は、ボンフェローニ補正を使用して、最も内側の各サブテーブルの行における全ての対比較について調整される。
【0164】
診断および医学的複雑性
臨床診断は、完全な神経学的病歴および検査の独立した診療記録の再調査、マズロー欲求階層に基づく精神神経集団に適応した自己申告の心理社会的査定、およびDSM-V精神医学的問診を使用して、行動神経学フェローシップトレーニングを受けた神経科医によって行われた。医学的複雑性は、過去の病歴、手術歴、および家族歴に関する一連の質問に対する正の肯定(各1点)を要約した複合スコアを使用して評価された。
【0165】
総合的症状および能力障害
National Institute of Health(NIH)Toolboxを、認知ドメイン、情動ドメイン、心理社会ドメインにおける主要アウトカムを収集するために使用した。これらの項目は、子供、成人、および高齢者のコミュニティベースの集団における精神神経症状の有効な縦断的な査定を提供するように特別に設計されているため、選ばれた。
【0166】
主要アウトカムには、処置ありおよびなしの患者の標準化された自己申告の項目が含まれていた。NIH Toolboxのパターン比較処理速度(Pattern Comparison Processing Speed)および次元変化カード分類の試験の完全に調整されたTスコアが、主要な認知アウトカムであった。NIH Toolboxのネガティブ感情(Negative Affect)複合スコアおよびNIH Toolboxの心理的幸福(Psychological Well-Being)複合スコアは、主要な情動アウトカムおよび心理社会アウトカムであった。ネガティブ感情複合スコアは、恐怖、怒り、および悲しみの個々の構成要素を測定する。心理的幸福複合スコアは、ポジティブ感情、全般的生活満足度、意義と目的、知覚されたストレス、自己効力感、情緒的支援、道具的支援、孤独感、敵意、知覚された拒絶、ならびに知覚された敵意の個々の構成要素を測定する。自己申告の症状重症度を測定するため、0~10で個別に測定され、0~100のスケールに集約された、10の基本的な症状(即ち、不安、無関心、認知困難、うつ、疲労、頭痛、不眠、易刺激性、疼痛(例えば、身体的疼痛)、および精神病)の平均症状重症度のスケール、ならびに臨床ケアの過程で患者によって申告された0~10のスケールでの困難も、主要アウトカムとして使用された。
【0167】
探索アウトカムは、社会的支援、社会的行動、人間関係、職業的地位、および住居状況の変化を含む心理社会的向上を測定し、処置の過程で、自己申告の正負の心理社会的事象の総数を使用して、自己申告によって測定された。
【0168】
処置の医学的安全性は、ルーチンケアの一部として各来院時に与えられた、各身体系について1つずつ具体的に尋ねるシステムレビューバッテリーに対する患者の自己申告を使用して、処置の前後の、正に申告された症状の総数の自己申告スケールによって査定された、医学的総合的症状の測定を介して査定された。血圧および脈拍および服薬遵守のデータは、ルーチンケアの一部として実施された臨床査定から収集された。
【0169】
統計学
処置ありおよびなしにおける組み合わせ処置の全体的な効果を測定するため、以下の処置群の患者について、平均値の群内比較を実施した:処置なし、単独療法(ベラパミルのみまたはテルミサルタンのみ)、および組み合わせ療法(ベラパミル+テルミサルタン)。データは、患者がいずれかの薬物療法による療法を受けていたか、または受けていなかった、複数の反復的な来院からなるため、薬物療法を受けていなかった全ての来院の平均値を、患者についての「処置なし」のアウトカムを測定するために使用した。薬物療法を受けていた全ての来院の平均値を、「処置あり」のアウトカムを測定するために使用した。効果量は、コーエンの方法論を使用して計算され、処置の効果を小(0.2~0.5)、中(0.5~0.8)、または大(0.8超)と指定する標準的な範囲を使用して定量化された。
【0170】
組み合わせ処置と比べた、組み合わせ処置の個々の構成要素の特異的効果を測定するため、以下の処置群の患者について、群間事後分散分析を実施した:処置なし、ベラパミルのみによる処置、テルミサルタンのみによる処置、および組み合わせ療法(ベラパミル+テルミサルタン)による処置。
【0171】
以下の方法を、実施例2において使用した。
【0172】
患者集団
この研究のためのデータは、neuro well FREE Not for Profit Corporationの比較有効性認知症アルツハイマー病レジストリ(CEDAR)プロジェクトより選択された。CEDARプロジェクトは、Broward County,FLのコミュニティベースの精神神経専門診療科における、神経学的状態、心理学的状態、または精神医学的状態に対する処置を求める患者のための実臨床の、IRBによって認可された観察研究である。この診療科は、全ての主要な健康保険を受け入れ、全ての年齢の全ての診断の人々を受け入れる。患者は、神経学的併存症、精神医学的併存症、および心理学的併存症に対する薬物療法の調整およびルーチンの認知行動療法を含む、通常のケアの過程を受容した。観察研究への参加の結果として、処置は変更されなかった。CEDARプロジェクトに同意した患者のみが、この研究に組み入れられた。
【0173】
人口動態および診断
人口動態の詳細、病歴、および検査は、包括的な最初の精神神経評価の一部として、初回来院時に収集された。マズロー欲求階層をモデルにした包括的な心理社会的査定が、ベースライン時に全ての患者に施された。臨床診断は、DSM-Vに基づく精神医学的問診を使用して、行動神経学フェローシップトレーニングを受けた神経科医によって行われた。
【0174】
安全性
バイタルサインは、ルーチンケアの一部として収集された収縮期血圧、拡張期血圧、および脈拍の測定を使用して測定された。有害事象は、体質、HEENT、呼吸器、胃腸、泌尿生殖器、皮膚、筋骨格、内分泌、神経、および精神の症状をカバーする10点システムレビューインベントリーを使用して測定された。あると申告された各症状について1点が与えられ、可能性のある総計スコアは93であった。
【0175】
組み合わせ療法を受けた場合の有害事象の率を計算するため、処置の1ヶ月目に症状のうちの1つに「ある」と答えた人々の百分率を、各症状について計算した。
【0176】
有効性
症状の重症度は、ルーチンケアの一部として各来院時に施された自己申告の症状重症度スケールを介して測定された。症状には、不安、うつ、易刺激性、無関心、疲労、身体的疼痛、不眠、頭痛、精神病、および認知的能力障害が含まれ、これらは診療記録から検索された。各症状についての0~10の範囲の個々のスコアに加えて、(0~100)の範囲の総計スコアが計算された。
【0177】
自己申告の症状の重症度に加えて、認知ドメイン、情動ドメイン、心理社会ドメインにおける複合レベルアウトカムを収集するため、National Institute of Health Toolbox測定を使用した。これらの項目は、子供、成人、および高齢者のコミュニティベースの集団における精神神経症状の有効な縦断的な査定を提供するように特別に設計されているため、選ばれた。具体的には、NIH Toolboxのパターン比較処理速度および次元変化カード分類、全般的生活満足度、意義と目的、ならびに社会的満足度の試験を使用して測定を行った。
【0178】
来院および処置群指定
全ての患者に、ベースライン来院および2回の追跡来院を割り当てた。ベースライン来院は、患者が関心対象の処置を開始する前の直近の来院として割り当てられた。1回目の追跡来院は、薬物療法の開始のおよそ1ヶ月以内の直近の来院であった。最後の追跡来院は、関心対象の処置を受けていた最後の観察の時点であった。3つの異なる処置:テルミサルタンの前後、ベラパミルの前後、および組み合わせ処置の前後を比較した。
【0179】
服薬遵守
服薬遵守は、薬局の投与記録および医師のメモを含む診療記録の再調査によって確認された。
【0180】
ウェーバーの側方化
ウェーバー試験は、ルーチンケアの一部として、診療所での時間の利用可能性に応じて、初回来院および/または追跡来院の際に患者に施された。ウェーバーの側方化は、聴覚機能ネットワークにおける機能的結合の正常化の代理として、この研究のために使用された。
【0181】
統計学
処置の前後の変化の有意性を測定するため、対応のあるt検定を使用した。効果量は、コーエンの方法論を使用して計算され、処置の効果を小(0.2~0.5)、中(0.5~0.8)、または大(0.8以上)と指定する標準的な範囲を使用して定量化された。さらに、異なる用量の組み合わせ療法の間でアウトカムを比較するため、対応のあるt検定を使用した。サブグループ分析は、中等度のベースライン臨床的不安(4以上)、重度のベースライン臨床的不安(7以上)、中等度のベースライン臨床的認知的能力障害(4以上)、および重度のベースライン認知的能力障害(7以上)を有していた個体について実施された。別の感度分析において、来院の前および後のみではなく、患者の全ての来院を、薬物療法を受けない場合および受けた場合の平均症状重症度を計算するため、使用した。薬物療法変化とウェーバーの側方化との関連を試験するため、カイ二乗分析を実施した。処置群は、組み合わせ治療の変化ありと変化なしとに分類された。側方化は、左、左中央、中央、右中央、および右として評価された。データ分析はSTATA(Stata/IC 16.1)を使用して行われた。
【0182】
他の態様
上記の説明から、様々な使用法および条件に適合させるため、本明細書に記載された本発明に変動および修飾を施すことができることは、明らかであろう。そのような態様も、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0183】
本明細書における変数の任意の定義における要素の列挙の記載は、任意の単一の要素、または列挙された要素の組み合わせ(もしくは部分的組み合わせ)としての、その変数の定義を含む。本明細書における態様の記載は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその一部分と組み合わせられた、その態様を含む。
【0184】
本明細書において言及される全ての特許および刊行物は、各々の独立した特許および刊行物が、参照により組み入れられると具体的かつ個々に示されたのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。