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特許7505035車両におけるステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両におけるステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240617BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240617BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D119:00
B62D117:00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022572465
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021052693
(87)【国際公開番号】W WO2021239275
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102020206435.0
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シュトレッカー
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-067375(JP,A)
【文献】特開2014-133524(JP,A)
【文献】特開平06-305433(JP,A)
【文献】特開2018-094966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0023894(US,A1)
【文献】特開2011-011660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
B62D 5/00 - 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(14)おけるステアバイワイヤ操舵システム(12)の操舵ハンドル(10)の運動を介入制御する方法であって、
前記ステアバイワイヤ操舵システム(12)は、前記操舵ハンドル(10)に対する操舵抵抗及び復元トルクのうちの少なくとも一方を生成する少なくとも1つのフィードバックアクチュエータ(16)を含み、
前記車両(14)が静止状態にあり、かつ、前記車両(14)の通常の走行動作モードとは異なるスタンバイ動作モードにある少なくとも1つの動作状態において、前記操舵ハンドル(10)への外部からの力作用に対するリアクションとして、前記フィードバックアクチュエータ(16)の前記操舵抵抗及び前記復元トルクのうちの少なくとも一方が、ボアトルク及びセルフアライニングトルクのうちの少なくとも一方と相関する前記操舵ハンドル(10)の挙動がシミュレートされるように、シミュレーション機能(18)を用いて調整若しくは変更され、又は、調整及び変更される、方法。
【請求項2】
前記シミュレーション機能(18)をアクティベートするために、複数のアクティベート条件が監視され、前記動作状態において前記アクティベート条件に依存して、アクティベート信号(20)が求められ若しくは生成され、又は、求められかつ生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シミュレーション機能(18)を用い、外部からの力作用により引き起こされる前記操舵ハンドル(10)の運動に依存して、出力トルク(22)が生成され、前記出力トルク(22)は、前記フィードバックアクチュエータ(16)に対する目標設定(24)を求めるために使用され、前記出力トルク(22)は、前記ボアトルク及びセルフアライニングトルクのうちの少なくとも一方と相関する複数の部分トルクから成る、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シミュレーション機能(18)は、少なくとも1つのばねモジュール(26)を含み、前記ばねモジュール(26)を用いて、ばねトルクとして形成された部分トルクが求められる、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ばねトルクとして形成された部分トルクは、前記操舵ハンドル(10)の変位に依存して求められる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ばねトルクとして形成された部分トルクは、ばね特性曲線を表す特性曲線を用いて求められる、
請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記ばねトルクとして形成された部分トルクが求められる際に、前記操舵ハンドル(10)の操舵ダイナミクス及び前記操舵ハンドル(10)における操舵ダイナミクスのうちの少なくとも一方が考慮される、
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シミュレーション機能(18)は摩擦モジュール及び減衰モジュール(28、30)のうちの少なくとも一方を含み、前記摩擦モジュール及び前記減衰モジュール(28、30)のうちの少なくとも一方を用いて、摩擦トルクとして形成された部分トルク、及び、減衰トルクとして形成された部分トルクのうちの少なくとも一方が求められる、
請求項3乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記摩擦トルクとして形成された部分トルク、及び、前記減衰トルクとして形成された部分トルクのうちの少なくとも一方は、前記操舵ハンドル(10)の運動速度に依存して求められる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シミュレーション機能(18)は、少なくとも1つの慣性モジュール(32)を含み、前記慣性モジュール(32)を用いて、慣性トルクとして形成された部分トルクが求められる、
請求項3乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記慣性トルクとして形成された部分トルクは、前記操舵ハンドル(10)の加速度に依存して求められる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記車両(14)は、自動車である、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(36)を備えた制御装置(34)
【請求項14】
前記制御装置(34)は、操舵制御装置である、
請求項13に記載の制御装置(34)。
【請求項15】
ステアバイワイヤ操舵システム(12)と、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(36)とを備えた車両(14)であって、前記ステアバイワイヤ操舵システム(12)は、少なくとも1つの操舵ハンドル(10)と、前記操舵ハンドル(10)に対する操舵抵抗及び復元トルクのうちの少なくとも一方を生成する少なくとも1つのフィードバックアクチュエータ(16)と、を含む、車両(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法に関する。さらに、本発明は、かかる方法を実施するための計算ユニットを備えた制御装置、及び、かかる方法を実施するための計算ユニットを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、操舵ホイールと、操舵ギヤの形態の車輪操舵角調整器と、操舵輪と車輪操舵角調整器とを機械的に接続するための操舵コラムと、を備える慣用の操舵システムを含む車両が公知である。パッシブ動作モードにおいて、即ち、動作開始前でありかつ操舵アシストなしの動作モードにおいて、例えば、点火がスイッチオンされたとき又は操舵が機械的に阻止されていないときなどに、操舵輪が旋回し、これに付随して車輪が旋回すると、比較的高いトルク及び/又は力が操舵システムに対して作用する。この高いトルク及び/又は力は、特に、車両の静止状態におけるボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクによって発生する。変位後に操舵輪から手が離されると、車輪は再び弛緩し、その結果、操舵輪の規定の運動が生じるようになる。その際に、操舵輪は、最初に比較的大きい運動を実施し、次いで、これによって、軽い揺動と共に静止状態にもたらされる。この種の挙動は、例えば、乗車時及び/又は降車時に有利になる可能性がある。それというのも、この場合においては、運転者は、操舵輪を確実に把持することができ、及び/又は、操舵輪で体を支えることができるからである。
【0003】
さらに、ステアバイワイヤ操舵システムを備えた車両が公知であり、これらのシステムは、操舵ハンドルと操舵される車輪とを直接機械的に接続しなくても動作可能であって、これらのシステムの場合には、操舵ハンドルにおける操舵設定が専ら電気的に転送される。この種の操舵システムは、操舵ハンドルに対し操舵抵抗及び/又は復元トルクを生成するフィードバックアクチュエータを備えた操舵入力ユニットと、この操舵入力ユニットから機械的に分離された少なくとも1つの車輪操舵角調整器と、を含む。上述のパッシブ動作モードにおいては、フィードバックアクチュエータは、通常はスイッチオフされており、及び/又は、無効状態にあり、わずかな固有の抵抗トルクを有するに過ぎない。ただし、その際に作用する力及び/又はトルクは、操舵ハンドルで体を支えるには十分ではない。フィードバックアクチュエータがアクティブに動作しているときでさえも、この種の機能を実現するためには、生成される操舵抵抗及び/又は生成される復元トルクは、通常、十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特に、パッシブ動作モードにおいて操舵ハンドルの挙動について改善された特性を有する、車両におけるステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法を提供することにある。この課題は、請求項1,12及び13の特徴によって解決される一方、従属請求項からは、本発明の有利な実施形態及び発展形態を読み取ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
車両、特に自動車におけるステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法であって、ステアバイワイヤ操舵システムは、操舵ハンドルに対する操舵抵抗及び/又は復元トルクを生成する少なくとも1つのフィードバックアクチュエータを含み、車両が静止状態にあり、かつ、通常の走行動作モードとは異なるパッシブ動作モードにある少なくとも1つの動作状態において、操舵ハンドルへの外部からの力作用に対するリアクションとして、フィードバックアクチュエータの操舵抵抗及び/又は復元トルクが、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関し有利には慣用の操舵システムに対応する操舵ハンドルの挙動がシミュレートされるように、シミュレーション機能を用いて調整及び/又は変更される、方法が提案される。この実施形態により、特に、有利には、運転者が慣れている挙動がシミュレートされるようにして、パッシブ動作モードにおける操舵ハンドルの挙動を改善することができる。その際に特に、フィードバックアクチュエータの操舵抵抗及び/又は復元トルクの調整により、相応の支持機能を提供することもでき、これによって、運転者は、例えば、乗車時及び/又は降車時に操舵ハンドルを確実に把持することができ、及び/又は、操舵ハンドルで体を支えることができる。さらに、有利には、特に操舵ハンドルで知覚可能な操舵感を改善することができる。
【0006】
ステアバイワイヤ操舵システムは、特に操舵ハンドルを含む。さらに、ステアバイワイヤ操舵システムは、さらに別の部品及び/又はユニットを含み得るものであり、例えば、特に操舵ハンドル及び/又はフィードバックアクチュエータを含む少なくとも1つの操舵入力ユニット、例えば、中央調整器又は単輪調整器として構成され、有利には、機械的に操舵入力ユニットから分離された少なくとも1つの車輪操舵角調整器、特に操舵制御装置として構成され、特に操舵入力ユニットと車輪操舵角調整器とを電気的に結合するために設けられた、少なくとも1つの制御装置、及び/又は、車両の動作状態を検出及び/又は監視するための、外部からの力作用により引き起こされる操舵ハンドルの運動を検出及び/又は監視するための、及び/又は、車両の下の地面と相関する少なくとも1つの状態量を検出及び/又は監視するための、少なくとも1つの検出ユニットを含み得るものであり、上述の状態量に基づいて、特に地面の状態を推定することができ、それによって、現在車輪に作用しているボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクを求めることができる。特に、「フィードバックアクチュエータ」とは、特に車輪操舵角調整器とは異なる、特に操舵ハンドルと直接機械的に接続されたアクチュエータユニットのことであると解されたい。このアクチュエータユニットは、操舵ハンドルからの信号、力及び/又はトルクを、特に直接検出し、及び/又は、操舵ハンドルに、特に直接伝達するために、設けられている。特に、フィードバックアクチュエータは、その際に、少なくとも、操舵ハンドルに対する操舵抵抗及び/又は復元トルクを生成するために、設けられている。さらにフィードバックアクチュエータは、特に、運転者によって操舵ハンドルにもたらされることになる手動トルク、及び/又は、操舵ハンドルを介して知覚可能な操舵感を調整するために、設けられている。そのために、フィードバックアクチュエータは、少なくとも1つの電動モータを含み得るものである。さらに、「パッシブ動作モード」とは、特に、車両が通常の走行動作モードにない動作モード及び/又は通常の走行動作モードにおいてアクティベートされる少なくとも1つの動作機能が、例えば、車両の停止状態及び/又は駐車状態の場合にように、ディアクティベート及び/又はスイッチオフされている動作状態のことであると解されたい。パッシブ動作モードは、その際に特に、動作開始前及び/又は点火前の動作モードに相当する。好ましくは、パッシブ動作モードは、特にエネルギーを節約する休止動作モードであり、及び/又は、特にエネルギーを節約するスタンバイ動作モードである。さらに有利には、パッシブ動作モードにおいて、車両の少なくとも1つのトラクションモータがスイッチオフされている、ということが提案される。さらに、有利には、このパッシブ動作モードは、簡単なスタート-ストップ動作モードとは異なるものである。
【0007】
さらに、車両及び/又はステアバイワイヤ操舵システムは、特に、操舵ハンドルの運動を介入操作する方法を実施するために設けられた少なくとも1つの計算ユニットを含む。「計算ユニット」とは、この場合には特に、情報入力、情報処理及び情報出力を有する電気ユニット及び/又は電子ユニットのことであると解されたい。有利には、計算ユニットはさらに、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの作業メモリ、少なくとも1つの入力手段及び/又は出力手段、少なくとも1つのオペレーティングプログラム、少なくとも1つの開ループ制御ルーチン、少なくとも1つの閉ループ制御ルーチン、少なくとも1つの計算ルーチン、及び/又は、少なくとも1つの評価ルーチンを有する。さらに、計算ユニットは、特にシミュレーション機能を含む。特に計算ユニットは、車両の動作状態及び/又は外部からの力作用により引き起こされる操舵ハンドルの運動を求めるために及び/又は監視するために、設けられている。さらに、計算ユニットは、特に以下のために設けられている。即ち、車両が静止状態にあり、かつ、通常の走行動作モードとは異なるパッシブ動作モードにある動作状態において、操舵ハンドルへの外部からの力作用に対するリアクションとして、フィードバックアクチュエータの操舵抵抗及び/又は復元トルクを、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する操舵挙動がシミュレートされるように、特にシミュレーション機能を用いて、フィードバックアクチュエータの動作制御によって調整及び/又は変更するために、計算ユニットは、設けられている。好ましくは、計算ユニットは、その際に、シミュレーション機能を用いて、外部からの力作用により引き起こされる操舵ハンドルの運動に依存して、出力トルクを生成するために設けられており、この出力トルクをそのまま目標設定として、特に目標モータトルク又は目標手動トルクの形態で、フィードバックアクチュエータのために用いることができ、又は、目標設定を求めるために、特に目標モータトルク又は目標手動トルクの形態で、フィードバックアクチュエータのために用いることができる。従って、特に好ましくは、パッシブ動作モードにおいてシミュレーション機能を用いて、車両の静止状態における車輪の運動に対応し、かつ、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関されている、操舵ハンドルに対する操舵抵抗及び/又は復元トルクがシミュレートされる。好ましくは、計算ユニットはさらに、車両の制御装置に組み込まれており、又は、好ましくは、特に操舵制御装置として構成された制御装置に組み込まれている。「設けられている」とは、特に、特別にプログラミングされている、設計されている、及び/又は、装備されている、ということであると解されたい。ある物体が特定の機能を行うために設けられている、とは、特に、この物体がこの特定の機能を少なくとも1つの適用状態及び/又は動作状態において果たす及び/又は実行する、ということであると解されたい。
【0008】
さらに提案されることは、シミュレーション機能をアクティベートするために、複数のアクティベート条件、例えば、特に内燃機関車両の場合には点火状態及び/又は点火信号、特に電動車両の場合には始動状態及び/又は始動信号、車両の車両ドアの閉鎖状態、車両の鍵の信号、車両の運動状態、車両のトラクションモータの動作状態、及び/又は、ステアバイワイヤ操舵システムの動作状態が監視され、動作状態において、特にアクティベート機能を用いて、アクティベート条件に依存して、アクティベート信号が求められる及び/又は形成される、ということである。アクティベート信号を、その際に特に、複数のアクティベート条件のうちの単一のアクティベート条件から形成することができ、又は、アクティベート条件の複数の組合せから形成することができる。特にアクティベート信号によって、少なくともシミュレーション機能をアクティベートすることができる。さらに、アクティベート信号によって、有利には、車両の車載電源をアクティベートすることができ及び/又は始動することができる。特に、アクティベート信号は、少なくとも、フィードバックアクチュエータのエネルギー供給をアクティベートするために設けられている。さらに、アクティベート信号を、有利には、シミュレーション機能の出力トルク及び/又はフィードバックアクチュエータに対する目標設定を求めるために用いることもでき、及び/又は、シミュレーション機能の出力トルク及び/又はフィードバックアクチュエータに対する目標設定を求める際に考慮することもできる。さらに、特に好ましくは、アクティベート信号はバイナリ信号である、ということが提案される。これにより、特に、シミュレーション機能の特に簡単かつ正確なアクティベートを達成することができる。さらに、動作安全性を有利に高めることができる。
【0009】
さらに提案されることは、シミュレーション機能を用い、外部からの力作用により引き起こされる操舵ハンドルの運動に依存して、特に操舵ハンドルの変位、操舵ハンドルの運動速度、及び/又は、操舵ハンドルの加速度の形態で、出力トルク、特に上述の出力トルクが生成され、この出力トルクが、フィードバックアクチュエータに対する目標設定を求めるために用いられ、この場合、出力トルクは、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する複数の部分トルクから成る、ということである。その際に、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクは、特にヒステリシスとばねダンパ特性とによって表される。特に出力トルクは、少なくとも2つの部分トルクから成り、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つの部分トルクから成る。これによって、特に、パッシブ動作モードにおける操舵ハンドルの特にリアリスティックな特性をシミュレートすることができる。
【0010】
シミュレーション機能が少なくとも1つのばねモジュールを含み、このばねモジュールによって、ばねトルクとして形成された部分トルクが求められる場合には、特にボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関し、特に車輪を介して操舵ハンドルに伝達される又は伝達されることとなるばね特性を有利にシミュレートすることができる。好ましくは、ばねトルクとして形成された部分トルクは、その際に、操舵ハンドルの有利には修正された変位に依存して求められる。さらに、ばねトルクとして形成された部分トルクは、有利には、ばね特性曲線を表す特性曲線を用いて求められる。
【0011】
さらに提案されることは、ばねトルクとして形成された部分トルクが求められる際に、操舵ハンドルの操舵ダイナミクス及び/又は操舵ハンドルにおける操舵ダイナミクスが考慮される、ということである。特にこの場合には、少なくとも、操舵ハンドルのニュートラルポジションに戻るように操舵されるときに、及び/又は、操舵ハンドルのニュートラルポジションに対し相対的に操舵ハンドルの変位が減少しているときに、操舵ダイナミクスが考慮される。好ましくは、ばねトルクとして形成された部分トルクは、この場合においては、操舵ダイナミクスに依存して修正され、好適には低減され、その際に、特にばねトルクとして形成された部分トルクは、操舵ダイナミクスが高いほど、より高速に低減され、操舵ダイナミクスが低いほど、より緩慢に低減される。これにより、ばねトルクとして形成された部分トルクを、従って、シミュレーション機能の出力トルクを、有利には、操舵ダイナミクスに依存して変化させることができる。特に、その際に、操舵ハンドルの変位後に運転者が自身の手を操舵ハンドルから急に離したときには、ばねトルクとして形成された部分トルクのより大きい修正を達成することができ、操舵ハンドルの変位後に運転者が能動的にゆっくりと戻すように操舵したときには、ばねトルクとして形成された部分トルクのより小さい修正を達成することができる。
【0012】
さらに他の実施形態によれば、シミュレーション機能は、少なくとも1つの摩擦モジュールを含み、この摩擦モジュールを用いて、摩擦トルクとして形成された部分トルクが求められる、ということが提案される。好ましくは、摩擦トルクとして形成された部分トルクは、その際に、操舵ハンドルの運動速度に依存して求められる。これによって、特に、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関し、特に車輪を介して操舵ハンドルに伝達される又は伝達されることとなる摩擦特性を有利にシミュレートすることができる。
【0013】
さらに提案されることは、シミュレーション機能は、少なくとも1つの減衰モジュールを含み、この減衰モジュールを用いて、減衰トルクとして形成された部分トルクが求められる、ということである。好ましくは、減衰トルクとして形成された部分トルクは、その際に、操舵ハンドルの運動速度に依存して求められる。さらに、減衰トルクを、有利には、方向に依存させることができ、例えば、ばねトルクが増加したときに、及び/又は、ばねトルクが低下したときに、減衰トルクをそれぞれ異なるように適用することができる。これによって、特に、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関し、特に車輪を介して操舵ハンドルに伝達される又は伝達されることとなる減衰特性を有利にシミュレートすることができる。
【0014】
1つの好ましい実施形態によれば、シミュレーション機能は、少なくとも1つの慣性モジュールを含み、この慣性モジュールを用いて、慣性トルクとして形成された部分トルクが求められる、ということがさらに提案される。好ましくは、慣性トルクとして形成された部分トルクは、その際に、操舵ハンドルの加速度に依存して求められる。特に有利には、加速度はさらに、操舵ハンドルの運動速度から求められ、特に計算される。これによって、特に、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関し、特に車輪を介して操舵ハンドルに伝達される又は伝達されることとなる慣性を有利にシミュレートすることができる。
【0015】
さらに有利には、ステアバイワイヤ操舵システムは、少なくとも1つの車輪操舵角調整器、特に上述の車輪操舵角調整器を含み、この車輪操舵角調整器は、少なくとも通常の走行動作モードにおいて、操舵ハンドルにおける操舵設定に依存して、少なくとも1つの車輪の車輪操舵角を変化させるために設けられている、ということが提案される。車両が静止状態にありかつパッシブ動作モードにある動作状態においては、車輪操舵角調整器を、この場合には特に非アクティブに及び/又は非動作状態にしておくことができ、その結果、車輪操舵角は、この動作状態においては、外部からの力作用に依存して不変のまま維持される。ただし、好ましくは、車両が静止状態にありかつパッシブ動作モードにある動作状態において、車輪操舵角調整器がアクティブであり、及び/又は、アクティベートされ、車輪操舵角がこの動作状態において、操舵ハンドルへの外部からの力作用に依存して、特に車輪が操舵ハンドルと共に動作するように変化させられる、ということが提案される。これによって、特に、現在車輪に作用しているボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクを、有利には正確に求めることができ、パッシブ動作モードにおける操舵ハンドルの特にリアリスティックな特性をシミュレートすることができる。
【0016】
この場合、操舵ハンドルの運動を介入制御する方法は、これまで述べてきた用途及び実施形態に限定されるものではない。特に、操舵ハンドルの運動を介入制御する方法は、本明細書において説明した機能を果たすために、個々の要素、部品及びユニットについて本明細書において挙げた個数とは異なる個数を有することができる。
【0017】
以下の図面の説明から、さらに他の利点が明らかにされる。図面には本発明の1つの実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1a】ステアバイワイヤ操舵システムを備えた車両を簡略化して示す図である。
図1b】ステアバイワイヤ操舵システムを備えた車両を簡略化して示す図である。
図2a】シミュレーション機能を用いてステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法の例示的な信号流れ図である。
図2b】シミュレーション機能を用いてステアバイワイヤ操舵システムの操舵ハンドルの運動を介入制御する方法の例示的な信号流れ図である。
図3a】車両の動作と相関する様々な信号を示すダイアグラムである。
図3b】車両の動作と相関する様々な信号を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例の説明
図1a及び図1bには、例えば乗用車として構成され、複数の車輪38及びステアバイワイヤ操舵システム12を備えた車両14が簡略化された図面で示されている。ステアバイワイヤ操舵システム12は、車輪38との作用結合部を有し、車両14の走行方向を介入制御するために設けられている。この場合においては、そのために、操舵設定が専ら電気的に車輪38に転送される。
【0020】
ステアバイワイヤ操舵システム12は、それ自体公知の車輪操舵角調整器40を有する。車輪操舵角調整器40は、例えば中央調整器として構成されている。車輪操舵角調整器40は、車輪38のうちの少なくとも2つの車輪、特に2つの前輪との作用結合部を有し、操舵設定を車輪38の操舵運動に変換するために設けられている。そのために、車輪操舵角調整器40は、例えばラックとして形成された操舵調整部材42と、この操舵調整部材42と共働する操舵アクチュエータ44とを含み、これは特に、少なくとも1つの電動モータ(図示せず)を含む。基本的には、操舵システムは、当然のことながら、特に単輪調整器として構成された複数の車輪操舵角調整器を、又は、中央調整器として構成された1つの車輪操舵角調整器と単輪調整器として構成された1つの車輪操舵角調整器との組合せも含み得る。
【0021】
さらに、ステアバイワイヤ操舵システム12は、操舵入力ユニット46を含む。操舵入力ユニット46は、専ら電気的に車輪操舵角調整器40に接続されている。操舵入力ユニット46は、手動トルクを加えるための、例えば操舵輪の形態の操舵ハンドル10と、特に機械的に操舵ハンドル10と結合されたフィードバックアクチュエータ16とを含む。フィードバックアクチュエータ16は、信号、力及び/又はトルクを、操舵ハンドル10から特に直接検出し、及び/又は、操舵ハンドル10に特に直接伝達するために、設けられている。この場合においては、フィードバックアクチュエータ16は、少なくとも、操舵ハンドル10に対する操舵抵抗及び/又は復元トルクを形成するために、設けられている。そのために、フィードバックアクチュエータ16は、少なくとも1つの電動モータ(図示せず)を含む。選択的に、操舵ハンドルを、操舵レバー及び/又は操舵ボール又はこれらに類するのものとして形成することができる。さらに、フィードバックアクチュエータは、複数の電動モータも含み得る。
【0022】
さらに、ステアバイワイヤ操舵システム12は、制御装置34を有する。従って、制御装置34は、操舵制御装置として構成されている。制御装置34は、車輪操舵角調整器40と電気的に接続されている。制御装置34は、さらに、操舵入力ユニット46とも電気的に接続されている。かくして制御装置34によって、車輪操舵角調整器40が操舵入力ユニット46と結合される。制御装置34は、ステアバイワイヤ操舵システム12の動作を制御するために設けられている。制御装置34は、操舵入力ユニット46の信号に依存して、例えば操舵設定及び/又は手動トルクに依存して、操舵アクチュエータ44を制御するために、設けられている。制御装置34は、さらに、車輪操舵角調整器40の信号に依存してフィードバックアクチュエータ16を制御するために、設けられている。
【0023】
そのために、制御装置34は、計算ユニット36を含む。計算ユニット36は、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)と、少なくとも1つの作業メモリ(図示せず)とを含む。さらに、計算ユニット36は、作業メモリに格納された少なくとも1つのオペレーティングプログラムを含み、このオペレーティングプログラムは、少なくとも1つの開ループ制御ルーチンと、少なくとも1つの閉ループ制御ルーチンと、少なくとも1つの計算ルーチンと、少なくとも1つの評価ルーチンとを含む。計算ユニット36は、通常の走行動作モードにおいてフィードバックアクチュエータ16を動作制御するための、それ自体公知の動作制御機能(図示せず)を含む。さらに、計算ユニット36は、この場合においては、フィードバックアクチュエータ16を動作制御するためのシミュレーション機能18を含む(特に、図2a乃至図2bを参照)。選択的に、制御装置は、操舵制御装置とは異なるものとしてもよく、例えば、車両の中央制御装置として構成されるものとしてもよい。
【0024】
さらに、車両14及び/又はステアバイワイヤ操舵システム12は、さらに別の部品及び/又はユニットを含み得るものであり、例えば、車両14の動作状態を検出及び/又は監視する第1の検出ユニット(図示せず)、外部からの力作用により引き起こされる操舵ハンドル10の運動を検出及び/又は監視する第2の検出ユニット(図示せず)、及び/又は、車両14の下の地面と相関する少なくとも1つの状態特性量を検出及び/又は監視する第3の検出ユニット(図示せず)を含み得るものであり、この状態特性量に基づき、特に地面の状態を推定することができ、これによって、現在車輪38に作用しているボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクを求めることができる。さらに、車両14は、少なくとも1つのトラクションモータ(図示せず)及び/又は少なくとも1つの車載電源(図示せず)を含み得る。ただし、基本的には、第1の検出ユニット、第2の検出ユニット及び/又は第3の検出ユニットを省略することもできる。
【0025】
機械的な介入を伴う慣用の操舵システムの場合、パッシブ動作モードにおいて、即ち、駆動開始前であり操舵アシストなしの動作モードにおいて、操舵輪が旋回し、これに付随して車輪が旋回すると、比較的高いトルク及び/又は力が操舵システムに作用する。この高いトルク及び/又は力は特に、車両の静止状態におけるボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクによって発生し、これは、車両から操舵輪に伝達される。その際に、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクの特性を、特に、ヒステリシス及びばねダンパ特性と比較することができる。変位後に操舵輪から手が離されると、車輪は再び弛緩し、その結果、操舵輪の規定の運動が生じるようになる。この種の挙動は、例えば、乗車時及び/又は降車時に有利になる可能性がある。それというのも、この場合においては、運転者は、操舵輪を確実に把持することができ、及び/又は、操舵輪で体を支えることができるからである。
【0026】
ステアバイワイヤ操舵システムの場合、フィードバックアクチュエータは、パッシブ動作モードにおいて、通常は、スイッチオフされており及び/又は無効状態にあり、わずかな固有の抵抗トルクを有するに過ぎず、その際に作用する力及び/又はトルクは、操舵ハンドルで体を支えるには十分ではない。この理由から、本発明によれば、慣用の操舵システムに対応する上述の挙動をシミュレートすることが提案される。
【0027】
以下においては、図2a及び図2bを参照しながら、ステアバイワイヤ操舵システム12の操舵ハンドル10の運動を介入制御する例示的な方法について説明する。この場合においては、計算ユニット36は、この方法を実施するために設けられており、そのために特に、シミュレーション機能18と、対応するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムとを有する。シミュレーション機能18を、特に、通常の走行動作モードにおいてフィードバックアクチュエータ16を動作制御する動作制御機能の代わりに、又は、有利には、通常の走行動作モードにおいてフィードバックアクチュエータ16を動作制御する動作制御機能と並列に、アクティベートさせておくことができる。この場合、動作制御機能とシミュレーション機能18との並列動作によって特に、シミュレーション機能18のアクティベート又はディアクティベートの際に利点がもたらされる。
【0028】
本発明によれば、車両14が静止状態にあり、かつ、通常の走行動作モードとは異なるパッシブ動作モードにある少なくとも1つの動作状態において、操舵ハンドル10への外部からの力作用に対するリアクションとして、フィードバックアクチュエータ16の操舵抵抗及び/又は復元トルクが、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する操舵ハンドル10の挙動がシミュレートされるように、シミュレーション機能18を用いて調整及び/又は変更される。パッシブ動作モードは、休止動作モード及び/又は車両14のトラクションモータが特にスイッチオフされているスタンバイ動作モードに相当する。
【0029】
この種のパッシブ動作モードにおいては、特にエネルギーを節約するために、通常の走行動作モードにおいてアクティベートされた種々の動作機能をディアクティベート及び/又はスイッチオフさせておくことができるので、第1のステップにおいて、シミュレーション機能18がアクティベートされている、及び/又は、アクティベートされる、ということが保証されなければならない。そのために、計算ユニット36は、アクティベート機能48を含む。アクティベート機能48を用いて、複数のアクティベート条件、例えば、点火状態及び/又は点火信号、始動状態及び/又は始動信号、車両14の車両ドアの閉鎖状態、車両14の運動状態、車両14のトラクションモータの動作状態、及び/又は、ステアバイワイヤ操舵システム12の動作状態が監視される。車両14が停止状態にあり、かつ、パッシブ動作モードにあることが識別されると、アクティベート機能48を用い、アクティベート条件に依存して、アクティベート信号20が生成される。かくして、望ましい及び/又は規定された状況においてのみのアクティベートを保証するために、アクティベート信号20を複数のアクティベート条件に依存させることができる。アクティベート信号20は、この場合においては、バイナリ信号である。アクティベート信号20は、少なくともシミュレーション機能18のアクティベートのために設けられており、従って、シミュレーション機能18に伝送される(特に図2aを参照)。さらに、この動作状態において、操舵抵抗及び/又は復元トルクをもたらすことができるようにするために、フィードバックアクチュエータ16が相応に短時間でアクティベートされる、ということも保証されなければならない。この理由から、アクティベート信号20により、有利には、車両14の車載電源及び/又はフィードバックアクチュエータ16のエネルギー供給も、アクティベートすることができ及び/又は始動させることができる。さらに、車輪38をこの動作状態において操舵ハンドル10と共に動作させようとする場合には、アクティベート信号20を、操舵アクチュエータ44をアクティベートするためにも設けることができる。従って、特に、アクティベート信号20によって、車両14の車載電源及び/又は操舵アクチュエータ44のエネルギー供給も、アクティベートすることができ及び/又は始動させることができる。ただし、基本的には、アクティベート信号を、バイナリ信号とは異なる信号として形成することもできる。さらに想定されることは、シミュレーション機能をパッシブ動作モードにおいてアクティブ状態のまま維持することであり、このようにする場合には、シミュレーション機能のアクティベートを省略することができる。さらに想定されることは、車載電源、フィードバックアクチュエータのエネルギー供給、及び/又は、操舵アクチュエータのエネルギー供給を、別のアクティベート信号によってアクティベートすることである。さらに、操舵アクチュエータのアクティベートを、基本的には省略することもできるように、車両が静止状態及びパッシブ動作モードにある動作状態においては、操舵アクチュエータを、特に非アクティブ及び/又は非動作状態にしておくものとしてもよい。
【0030】
さらに、車両14が特に静止状態にあり、かつ、パッシブ動作モードにある動作状態において、操舵ハンドル10への力作用が監視され、操舵ハンドル10への力作用及び操舵ハンドル10の運動と相関する運動特性量50が供給される。この運動特性量50は、例えば、操舵ハンドル10の変位、操舵ハンドル10の運動速度、及び/又は、操舵ハンドル10の加速度を含み得る。この運動特性量50も、同様に、シミュレーション機能18に転送され、シミュレーション機能18のために入力量として用いられる。
【0031】
シミュレーション機能18がアクティブ状態にあり、操舵ハンドル10への力作用及びその結果として生じる操舵ハンドル10の運動が、特に運動特性量50によって識別されると、シミュレーション機能18を用い、外部からの力作用により引き起こされる操舵ハンドル10の運動に依存して、出力トルク22が生成される。出力トルク22は、フィードバックアクチュエータ16に対する目標設定24を求めるために用いられる。
【0032】
さらに、この場合においては、フィードバックアクチュエータ16に対する目標設定24を求めるために、アクティベート信号20が用いられる。そのために、アクティベート信号20が、最初に計算ユニット36のリミッタ52により制限され、これにより、修正アクティベート信号21が生成される。その際に、好適には、アクティベート信号20がダイナミクスに関して制限されるように、及び/又は、修正アクティベート信号21がダイナミクスに関して制限されているように、アクティベート信号20の勾配が制限される。次いで、フィードバックアクチュエータ16に対する目標設定24を取得するために、出力トルク22と修正アクティベート信号21とが、計算ユニット36の差分計算ルーチン54によって互いに差分計算される。その際に、修正アクティベート信号21は、特に、フィードバックアクチュエータ16に対する目標設定24をフェードイン及び/又はフェードアウトするために使用される。ただし、選択的に、フィードバックアクチュエータに対する目標設定を求めるために、アクティベート信号及び/又は修正アクティベート信号の使用を省略するものとしてもよい。この場合においては、シミュレーション機能の出力トルクを、例えば、フィードバックアクチュエータに対する目標設定としてそのまま用いるものとしてもよい。さらに、フィードバックアクチュエータに対する目標設定を求める際に付加的に、シミュレーション機能の出力トルク及び/又は目標設定をフィルタリングするフィルタ、及び/又は、出力トルク及び/又は目標設定を最大値に制限するリミッタを、さらに用いることができる。
【0033】
次いで、計算ユニット36は、第2のステップにおいて、調整されるべき操舵抵抗及び/又は調整されるべき復元トルクを目標設定24に依存して求め、フィードバックアクチュエータ16を対応して動作制御するために、設けられている。この場合においては、フィードバックアクチュエータ16の操舵抵抗及び/又は復元トルクが、車両14が特に静止状態及びパッシブ動作モードにある動作状態において、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する操舵ハンドル10の挙動がシミュレートされるように、その際に調整及び/又は変更される。
【0034】
シミュレーション機能18の出力トルク22は、この場合においては、さらに、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する複数の部分トルクから成る(特に、図2bを参照)。
【0035】
シミュレーション機能18は、ばねモジュール26を含み、このばねモジュール26を用いて、ばねトルクとして形成された第1の部分トルクが求められ、これにより、有利には、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関するばね特性をシミュレートすることができる。その際、第1の部分トルクは、特に運動特性量50から生じる操舵ハンドル10の変位に依存して求められる。この場合においては、修正操舵輪角に依存して第1の部分トルクが求められ、この場合、修正のために操舵輪角の最大値が制限される。さらに、第1の部分トルクは、ばね特性曲線を表す特性曲線を用いることにより求められ、これによって、特に、線形の、漸減的な、及び/又は、指数関数的な、ばね特性を設定することができる。この場合、特性曲線の入力量は修正操舵輪角である。さらに、第1の部分トルクを求める際に、操舵ハンドル10の操舵ダイナミクス及び/又は操舵ハンドル10における操舵ダイナミクスが考慮される。この場合においては、少なくとも、操舵ハンドル10のニュートラルポジションに戻るように操舵されているときに、及び/又は、操舵ハンドル10の変位が減少しているときに、操舵ダイナミクスが考慮され、その際に、第1の部分トルクが操舵ダイナミクスに依存して修正される。この場合、操舵ダイナミクスが高いほど、対応してより高速に第1の部分トルクが低減され、操舵ダイナミクスが低いほど、対応してより緩慢に第1の部分トルクが低減されるように、第1の部分トルクが修正される。これによって、有利には、操舵ハンドル10の変位後に運転者が自身の手を操舵ハンドル10から急に離したときには、第1の部分トルクのより大きい修正を達成することができ、操舵ハンドル10の変位後に運転者が能動的にゆっくりと戻すように操舵したときには、第1の部分トルクのより小さい修正を達成することができる。ただし、選択的に又は付加的に、操舵ハンドルが変位しているときにも、即ち、操舵ハンドルの変位が増加しているときにも、操舵ダイナミクス性を考慮することができる。さらに想定されることは、特性曲線の使用をやめ、望ましいばね特性を生成するために別の数学的関係を使用することである。
【0036】
さらに、シミュレーション機能18は、摩擦モジュール28を含み、この摩擦モジュール28を用いて、摩擦トルクとして形成された第2の部分トルクが求められ、これにより、有利には、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する摩擦特性をシミュレートすることができる。その際に、第2の部分トルクは、特に、この場合においては、特に運動特性量50から得られる操舵角速度の形態の、操舵ハンドル10の運動速度に依存して求められる。この場合においては、その際に、操舵ハンドル10の運動速度に基づき増幅係数を介してヒステリシストルクが生成され、この場合、増幅係数によって、特にダイナミクスが予め定められる。さらに、第2の部分トルクを形成するために、ヒステリシストルクをローパスフィルタリング及び/又は飽和化によって修正することができる。さらに好適になり得ることは、操舵ハンドル10の運動速度を最初にフィルタリングし、及び/又は、デッドゾーンを介してノイズを除去することである。選択的に又は付加的には、摩擦モジュールを用いることによって、シャシ又はシャシ挙動の摩擦特性もシミュレートすることができる。
【0037】
さらに、シミュレーション機能18は、減衰モジュール30を含み、この減衰モジュール30を用いて、減衰トルクとして形成された第3の部分トルクが求められ、これにより、有利には、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する減衰特性をシミュレートすることができる。その際に、第3の部分トルクは、特に、この場合においては、特に運動特性量50から得られる操舵角速度の形態の、操舵ハンドル10の運動速度に依存して求められる。この場合においては、第3の部分トルクは、その際に、操舵ハンドル10の運動速度にさらに別の増幅係数を乗算したものに基づき得られ、この場合、付加的にフィルタリング及び/又は制限を行うことができる。さらに、操舵ハンドル10の運動速度を介して、増幅及び/又はフェードインを行うことができる。さらに、第3の部分トルクを方向に依存させることができ、例えば、ばねトルクが増加したときに、及び/又は、ばねトルクが低下したときに、第3の部分トルクをそれぞれ異なるように適用することができる。
【0038】
さらに、シミュレーション機能18は、慣性モジュール32を含み、この慣性モジュール32を用いて、慣性トルクとして形成された第4の部分トルクが求められ、これにより、有利には、ボアトルク及び/又はセルフアライニングトルクと相関する慣性をシミュレートすることができる。その際に、第4の部分トルクは、この場合においては、特に操舵輪角加速度の形態の、操舵ハンドル10の加速度に依存して求められる。操舵ハンドル10の加速度は、この場合においては、特に運動特性量50から得られる操舵ハンドル10の運動速度から求められる。そのために、操舵ハンドル10の運動速度が時間に関して微分され、フィルタ、有利には2次のローパスフィルタによってフィルタリングされる。次いで、操舵ハンドル10の加速度を、適用された及び/又は適用可能な慣性係数と乗算することによって、第4の部分トルクが得られ、その際に、付加的にフィルタリング及び/又は制限を行うことができる。さらに、操舵ハンドル10の加速度を介して、増幅及び/又はフェードインを行うことができる。選択的に又は付加的に、慣性モジュールを用いることによって、シャシ又はシャシ挙動の摩擦特性もシミュレートすることができる。
【0039】
基本的には、ばねモジュール、摩擦モジュール、減衰モジュール及び/又は慣性モジュール、従って、ばねトルク、摩擦トルク、減衰トルク及び/又は慣性トルクとして形成された部分トルクを省略することも考えられる。特に、シミュレーション機能の出力トルクは、この関連において、単一のトルクを含むものとすることもできる。
【0040】
最後に、図3a及び図3bには、操舵ハンドル10の運動を介入制御するための様々な信号の例示的なグラフが示されている。
【0041】
図3aの場合には、縦軸56が、大きさの軸として形成されている。横軸58には、時間が示されている。曲線60は、アクティベート信号20の時間推移を示し、この場合、時点Tにおいてシミュレーション機能18がアクティベートされる。曲線62は、操舵ハンドル10の変位の時間推移を示す。この場合においては、曲線62は、操舵輪角の例示的な正弦波状の推移を示している。曲線64は、修正操舵輪角の時間推移を示し、その際に、操舵輪角の最大値が制限される。この場合、修正操舵輪角を例えば15°の振幅に制限することができ、従って、ばねトルクとして形成された第1の部分トルクが15°の振幅において最大値に到達する。時点Tにおいて、修正操舵輪角の形成がゼロ付近で始まり、最初は実際の操舵輪角の推移と一致している。時点Tにおいて、最大値に到達し、それ以降、一定に保持される。時点Tにおいて、実際の操舵輪角の方向が変化し、この場合、同一の時点において修正操舵輪角も減少する。よって、運転者が最大値を超えて変位させると、ばね原点の絶対ゼロ点が変化する。
【0042】
図3bの場合には、さらに別の縦軸66が、大きさの軸として形成されている。さらに別の横軸68には、時間が示されている。曲線70は、ばねトルクとして形成された第1の部分トルクの時間推移を示し、この場合、操舵ダイナミクスは考慮されていない。曲線72は、ばねトルクとして形成された第1の部分トルクの時間推移を示し、この場合、操舵ダイナミクスが考慮されている。操舵ハンドル10が変位しているときには、即ち、操舵ハンドル10の変位が増加しているときには、操舵ダイナミクスは考慮されず、従って、曲線70と曲線72とが同一になる。これに対し、操舵ハンドル10がニュートラルポジションに戻るように操舵されているときには、及び/又は、操舵ハンドル10の変位が減少しているときには、操舵ダイナミクスが考慮され、その際に、操舵ダイナミクスに依存して第1の部分トルクが低減され、これにより、特に曲線72が曲線70の下方において推移する。
図1a-1b】
図2a
図2b
図3a
図3b