(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電池状態の計算方法及び計算装置並びに記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01R 31/388 20190101AFI20240617BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240617BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240617BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20240617BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240617BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01R31/388
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/392
H01M10/48 P
H02J7/00 M
(21)【出願番号】P 2022580456
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2021102821
(87)【国際公開番号】W WO2022001977
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】202010617231.2
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】▲でん▼林旺
(72)【発明者】
【氏名】李▲暁▼▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼天宇
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼思佳
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145403(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110549909(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104931882(CN,A)
【文献】特開平06-342044(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026058(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108469589(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1934745(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106569143(CN,A)
【文献】特開2019-040845(JP,A)
【文献】特開2013-247003(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03611525(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/36-31/44、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36、
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の第1の変曲点電圧閾値及び対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及び対応する第2の変曲点残量とを取得するステップと、
前記電池を充電するように制御するステップと、
前記電池の充電過程における第1の残量データ及び対応する第1の電圧データをリアルタイムに記録するステップと、
前記第1の残量データ及び前記第1の電圧データに基づいて
第1の充電曲線を確立するステップと、
前記第1の充電曲線の電圧差分曲線を取得するステップと、
前記電圧差分曲線の極大値に対応するピーク電圧を取得するステップと、
前記ピーク電圧が前記第1の変曲点電圧閾値より大きい場合、前記極大値を目標変曲点とし、
目標変曲点残量を前記第1の変曲点残量とするステップと、
前記ピーク電圧が前記第2の変曲点電圧閾値より小さい場合、前記極大値を目標変曲点とし、
目標変曲点残量を前記第2の変曲点残量とするステップと、
充電が完了するまで前記電池の残量を検出し、前記電池の前記目標変曲点から充電完了までの充電残量を取得するステップと、
前記目標変曲点残量と前記充電残量に基づいて前記電池の容量を取得するステップと、を含むことを特徴とする電池状態の計算方法。
【請求項2】
前記第1の充電曲線の電圧差分曲線を取得するステップは、
前記第1の充電曲線に対して平滑化フィルタ処理を行い、前記第1の電圧データを前記第1の残量データに対して1次微分して、前記第1の電圧データの前記第1の残量データに対する変化率を取得し、前記変化率及び前記第1の残量データに基づいて前記第1の充電曲線の電圧差分曲線を確立するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池状態の計算方法。
【請求項3】
電池の第1の変曲点電圧閾値及びその対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及びその対応する第2の変曲点残量とを取得するステップは、
電池の第2の充電曲線を取得するステップと、
前記第2の充電曲線に基づいて第1の変曲点及び第2の変曲点を決定するステップと、
前記第1の変曲点に対応する前記第1の変曲点電圧閾値及び第1の変曲点残量と、前記第2の変曲点に対応する前記第2の変曲点電圧閾値及び第2の変曲点残量とを取得するステップと、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池状態の計算方法。
【請求項4】
電池の第2の充電曲線を取得するステップは、
参照電池を取得し、前記参照電池を完全に放電させるように制御した後に定電流充電を行うステップと、
充電が完了するまで前記参照電池の充電過程における第2の電圧データ及び第2の残量データを記録するステップと、
前記参照電池の充電過程における第2の電圧データ及び第2の残量データに基づいて前記第2の充電曲線を取得するステップと、を含むことを特徴とする請求項3に記載の電池状態の計算方法。
【請求項5】
前記電池の初期容量を取得するステップと、
前記電池の容量及び前記電池の初期容量に基づいて前記電池のSOHを取得するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電池状態の計算方法。
【請求項6】
コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムが実行されると、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池状態の計算方法を実現することを特徴とする非一時的なコンピュータ記憶媒体。
【請求項7】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されたメモリと、を含み、
前記メモリに前記少なくとも1つのプロセッサにより処理可能なコマンドが記憶され、該コマンドが前記少なくとも1つのプロセッサにより処理されると、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池状態の計算方法を実現することを特徴とする電池状態の計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2020年6月30日に提出された出願番号202010617231.2、名称「電池状態の計算方法及び計算装置並びに記憶媒体」の中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は引用により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、車両の技術分野に関し、特に電池状態の計算方法及び計算装置並びにコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
電池技術の急速な発展に伴い、リチウムイオン電池は、電気自動車及びエネルギー貯蔵発電所などの分野に非常に広く応用されている。
【0004】
電池の劣化程度は、SOH(State of Health、電池健康状態)で表すことができる。SOHは、残容量、内部抵抗及びサイクル回数などの方式で定義することができ、最も一般的には、電池残容量によりその劣化程度を定義する。電池残容量は、主に電池に対して満充電又は満放電を行うことで、充電又は放電段階の総残量に基づいて計算され、或いは、一定のSOC(State of Charge、電池充電状態)区間で充放電を行い、充電残量又は放電残量及び対応するSOC区間に基づいて総電池容量を計算する。
【0005】
しかしながら、電池は、連続的な充放電サイクルで徐々に劣化し、性能も徐々に低下し、例えば、電池容量の減少、内部抵抗の増大、及び電力の低下などが発生する。また、電池に対して満充電又は満放電を行うと、電池自体の耐用年数に影響を与えるだけでなく、安全上の問題を引き起こすことがあり、特定のSOC区間で充電又は放電を行うには、選択された区間が十分に長い必要があり、SOCの精度に対する要求が高く、SOC推定が正確でないと結果に大きな誤差を与えやすい。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、電池容量を迅速に計算し、電池容量の計算の正確性を向上させることを実現するように、電池状態の計算方法及び計算装置並びに記憶媒体を提供する。
【0007】
本開示の第1の態様に係る電池状態の計算方法は、電池の第1の変曲点電圧閾値及び対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及び対応する第2の変曲点残量とを取得するステップと、前記電池の第1の充電曲線をリアルタイムに記録するステップと、前記第1の充電曲線、前記第1の変曲点電圧閾値及び前記第2の変曲点電圧閾値に基づいて目標変曲点を取得し、前記第1の変曲点残量又は前記第2の変曲点残量に基づいて目標変曲点残量を取得するステップと、充電が完了するまで前記電池の残量を検出し、前記電池の前記目標変曲点から充電完了までの充電残量を取得するステップと、前記目標変曲点残量と前記充電残量に基づいて前記電池容量を取得するステップと、を含む。
【0008】
本開示の実施例に係る電池状態の計算方法では、第1の充電曲線と、第1の変曲点電圧閾値及び対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及び対応する第2の変曲点残量とにより目標変曲点及びその対応する変曲点残量を取得し、電池の残量が満充電になり、すなわち充電が完了したことを検出した場合、目標変曲点から充電完了までの充電残量を取得し、変曲点残量及び充電残量に基づいて電池容量を取得する。すなわち、本開示の実施例に係る方法は、目標変曲点前の任意の開始状態で電池状態を正確に計算することができ、充電前に電池に対して深放電を行う必要がなく、満充電又は満放電による電池自体の損失を回避し、電池の耐用年数を延長し、充電の安全性を向上させ、変曲点残量と充電完了時の充電残量を計算するとき、目標変曲点と充電終了時の充電残量を検出するだけで電池容量を迅速に計算することができ、SOC区間を選択する必要がない。特定のSOC区間を選択して充電又は放電を行って電池の総容量を計算する方法に比べて、本開示の実施例に係る方法は、不正確なSOC推定による電池状態計算の誤差を回避することができ、電池容量計算の正確性を向上させる。
【0009】
本開示の第2の態様に係るコンピュータ可読記憶媒体に、コンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムが実行されると、前記実施例に係る電池状態の計算方法を実現する。
【0010】
本開示の第3の態様に係る電池状態の計算装置は、少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと通信接続されたメモリと、を含み、前記メモリに前記少なくとも1つのプロセッサにより処理可能なコマンドが記憶され、該コマンドが前記少なくとも1つのプロセッサにより処理されると、上記実施例に係る電池状態の計算方法を実現する。
【0011】
本開示に係る電池状態の計算装置は、プロセッサにより電池状態の計算方法を実行し、電池の残量が満充電になり、すなわち充電が完了したことを検出した場合、目標変曲点から充電完了までの充電残量を取得する。すなわち、変曲点残量及び充電残量を取得するとき、電池に対して満充電又は満放電を行う必要がなく、目標変曲点より低い任意の開始状態で正確に計算することができ、満充電又は満放電による電池自体の損失を回避し、充電の安全性を向上させる。特定のSOC区間を選択して充電又は放電を行って電池の総残量を計算する方法に比べて、本開示の実施例に係る計算装置は、不正確なSOC推定による電池状態計算の誤差を回避することができ、電池容量計算の正確性を向上させる。
本発明の上記及び/又は追加の態様及び利点は、以下の図面を参照して実施例を説明することにより、明らかになって理解されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施例に係る電池状態の計算方法のフローチャートである。
【
図2】本開示の一実施例に係る第1の充電曲線と充電電圧差分曲線を比較した概略図である。
【
図3】本開示の一実施例に係る電池状態の計算方法のフローチャートである。
【
図4】本開示の一実施例に係る電池状態の計算装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の目的、技術手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本開示をさらに詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は、本開示を解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0014】
本開示の技術手段を説明するために、以下、具体的な実施例により説明する。
【0015】
以下、
図1~
図3を参照して本開示の第1の態様の実施例に係る電池状態の計算方法について説明する。
図1に示すように、本開示の実施例に係る電池状態の計算方法は、少なくともステップS1~ステップS5を含む。各ステップの具体的な過程は、以下のとおりである。
【0016】
ステップS1において、電池の第1の変曲点電圧閾値及び対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及び対応する第2の変曲点残量とを取得する。
【0017】
リチウムイオン電池などの電池の劣化に伴い、電池の電圧-残量特性曲線は、全体的に低容量方向に平行移動するが、平行移動過程において、電圧プラトーの変曲点に対応する変曲点残量は、実質的には変化せず、電圧プラトーの変曲点に対応する電圧閾値も特性曲線の平行移動に伴って変化しない。このため、本開示の実施例に係る方法は、電池の充電過程における電池電圧-残量特性曲線を検出することにより、電池の第1の変曲点電圧閾値及び対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及び対応する第2の変曲点残量とを取得する。
【0018】
ステップS2において、電池の第1の充電曲線をリアルタイムに記録する。
【0019】
実施例において、未知状態の電池を充電し始めるとき、電池の充電過程における第1の残量データ及び対応する第1の電圧データをリアルタイムに記録し、第1の残量データ及び第1の電圧データに基づいて電圧-残量特性曲線すなわち第1の充電曲線を確立する。
【0020】
ステップS3において、第1の充電曲線、第1の変曲点電圧閾値及び第2の変曲点電圧閾値に基づいて目標変曲点を取得し、第1の変曲点残量又は第2の変曲点残量に基づいて目標変曲点残量を取得する。
【0021】
本開示の実施例に係る方法は、電池の充電過程における第1の充電曲線をリアルタイムに検出することにより、該曲線の特性を分析して、曲線の特徴点を探し、曲線の特徴点に基づいて電池容量を計算する。すなわち、本開示の実施例において、目標変曲点を曲線の特徴点として電池容量を計算することにより、電池の初期SOC状態が未知の場合に、電池容量をSOCの関連変数を必要とすることなく計算することができ、不正確なSOC計算による誤差を回避し、精度を向上させる。それとともに、本開示の実施例の方法は、目標変曲点(SOCの70%より低い)を検出することができる任意の開始状態で電池状態を正確に計算することができ、充電前に電池に対して深放電を行う必要がなく、満充電又は満放電による電池自体の損失を回避し、電池の耐用年数を延長し、充電安全性を向上させる。
【0022】
実施例において、第1の充電曲線の変曲点について、第1の変曲点電圧閾値及び第2の変曲点電圧閾値に基づいて該第1の充電曲線の変曲点が目標変曲点であるか否かを決定する。目標変曲点を決定した後に、第1の変曲点残量又は第2の変曲点残量に基づいて目標変曲点残量を取得することができる。例えば
図2に示すように、第1の充電曲線は、電圧値の異なる2つの目標変曲点を有し、電圧が高い目標変曲点は、高SOC区間に位置し、残量がQ
HVTPであり、電圧が低い目標変曲点は、低SOC区間に位置し、残量がQ
LVTPである。
【0023】
ステップS4において、充電が完了するまで電池の残量を検出し、電池の目標変曲点から充電完了までの充電残量を取得する。充電完了とは、電池が満充電状態に達することである。
【0024】
実施例において、本開示の実施例において、電池の残量が満充電残量に達したことを検出した場合、電池の目標変曲点から電池の充電完了までの充電残量を電池の充電残量とする。
【0025】
ステップS5において、変曲点残量と充電残量に基づいて上記電池容量を取得する。
【0026】
実施例において、変曲点残量と充電残量との合計を電池容量として、電池容量により電池の状態を判断することができる。電池容量は、現在の電池状態の総残量として理解することができる。
【0027】
例を挙げて説明すると、電池容量をQと記し、目標変曲点が1つしかない場合、Q=Q
HVTP+Q
HVPである。目標変曲点が2つある場合、電圧が低い目標変曲点を選択して計算し、Q=Q
LVTP+Q
LVPである。ここで、Q
HVP、Q
LVPは、それぞれ2つの目標変曲点後に充電された充電残量を表す。
図2を参照すると、電気自動車の動力電池に対して、充電開始時のSOC状態は、未知であり、充電が低SOC区間で開始する場合、充電過程において2つの目標変曲点HVTP、LVTPを検出することができる。電圧が低い目標変曲点LVTP後に充電された残量が電圧が高い目標変曲点HVTPより高いため、電圧が低い目標変曲点LVTPに対応する残量Q
LVTPと、電圧が低い目標変曲点後に充電された残量Q
LVPとを選択し、計算して電池の総容量Qを得る。すなわち、Q=Q
LVTP+Q
LVPである。
【0028】
充電が中間SOC区間、すなわち電圧が高い目標変曲点HVTPと電圧が低い目標変曲点LVTPとの間に開始する場合、充電過程において電圧が高い目標変曲点HVTPのみを検出することができ、電圧が高い目標変曲点HVTPに対応する残量QHVTPと電圧が高い目標変曲点HVTP後に充電された残量QHVPとに基づいて、計算して電池の総容量Qを得る。すなわち、Q=QHVTP+QHVPであり、いずれの状況もSOC初期値を決定する必要がない。
【0029】
本開示の実施例に係る電池状態の計算方法では、充電前に電池に対して深放電を行わずに電池状態を正確に計算することができ、満充電又は満放電による電池自体の損失を回避し、電池の耐用年数を延長する。それとともに、変曲点残量と充電完了時の充電残量を計算するとき、目標変曲点と充電終了時の充電残量を検出するだけでよく、SOC区間を選択する必要がない。特定のSOC区間を選択して充電又は放電を行って電池の総残量を計算する方法に比べて、本開示の実施例に係る電池状態の計算方法は、不正確なSOC推定による電池容量計算における誤差を回避することができ、電池容量計算の正確性を向上させる。電気自動車用の電池は、容量減衰が20%より大きい場合に交換する必要があり、すなわち、電気自動車用の電池では、少なくとも高SOC区間に位置するHVTPを検出することができ、それにより本開示に基づいて電池容量を取得する。
【0030】
いくつかの実施例において、電池の第1の変曲点電圧閾値及び対応する第1の変曲点残量と、第2の変曲点電圧閾値及び対応する第2の変曲点残量とを取得するステップは、電池の第2の充電曲線を取得するステップと、上記第2の充電曲線に基づいて第1の変曲点及び第2の変曲点を決定するステップと、第1の変曲点に対応する第1の変曲点電圧閾値及び第1の変曲点残量と、第2の変曲点に対応する第2の変曲点電圧閾値及び第2の変曲点残量とを取得するステップと、を含む。
【0031】
実施例において、同じロット、同じ仕様の電池の電圧-残量特性曲線において、電圧が高い目標変曲点又は電圧が低い目標変曲点に対応する残量QHVTP、QLVTP及びプラトー領域に対応する電圧閾値VTh、VTlは、いずれも決定され、一部の電池の電圧-残量特性曲線だけでこれらの特徴量の値を決定することができる。すなわち、電池テスト段階において、同じロット、同じ仕様の電池から一部の参照電池を選択して完全に放電させた後に定電流充電を行い、参照電池の充電過程における第2の電圧データ及び第2の残量データを記録し、一部の参照電池の充電過程における第2の電圧データ及び第2の残量データに基づいて電池の第2の充電曲線を得て、第2の充電曲線の曲線特性を分析することにより、第1の変曲点HVTPに対応する第1の変曲点電圧閾値を決定し、例えばVThと記す。第2の変曲点LVTPに対応する第2の変曲点電圧閾値を決定し、例えばVTlと記す。第1の変曲点電圧閾値VThは、第1の変曲点残量QHVTPに対応し、第2の変曲点電圧閾値VTlは、第2の変曲点残量QLVTPに対応する。第2の充電曲線と対応する変曲点電圧閾値及び変曲点残量を予め記憶することができる。
【0032】
いくつかの実施例において、目標変曲点及び目標変曲点残量を取得するステップは、第1の充電曲線の電圧差分曲線を取得するステップと、上記電圧差分曲線の極大値に対応するピーク電圧を取得するステップと、ピーク電圧と第1の変曲点電圧閾値VTh又は第2の変曲点電圧閾値VTlとの大小関係に基づいて目標変曲点を決定し、第1の変曲点残量QHVTP又は第2の変曲点残量QLVTPに基づいて目標変曲点残量を取得するステップと、を含む。
【0033】
実施例において、第1の充電曲線の電圧差分曲線を取得するステップは、第1の充電曲線に対して平滑化フィルタ処理を行い、第1の電圧データを第1の残量データに対して1次微分して、第1の電圧データの第1の残量データに対する変化率を取得し、該変化率及び第1の残量データに基づいて第1の充電曲線の電圧差分曲線を確立するステップを含む。
【0034】
より具体的には、ピーク電圧と第1の変曲点電圧閾値V
Th又は第2の変曲点電圧閾値V
Tlとの大小関係に基づいて目標変曲点を決定し、第1の変曲点残量Q
HVTP又は第2の変曲点残量Q
LVTPに基づいて上記目標変曲点残量を取得するステップは、ピーク電圧が第1の変曲点電圧閾値V
Thより大きい場合、該極大値を目標変曲点とし、該目標変曲点残量を第1の変曲点残量Q
HVTPとするステップ、又は、ピーク電圧が第2の変曲点電圧閾値V
Tlより小さい場合、該極大値を目標変曲点とし、目標変曲点残量を第2の変曲点残量Q
LVTPとするステップを含む。ピーク電圧と第1の変曲点電圧閾値V
Th又は第2の変曲点電圧閾値V
Tlが以上の2種類の関係を満たさない場合、次のピーク電圧を探し続けて第1の変曲点電圧閾値V
Th又は第2の変曲点電圧閾値V
Tlと比較する。例えば、
図2に示すように、典型的な電池充電曲線及び電圧差分曲線図であり、電圧差分曲線に基づいて第1の変曲点電圧閾値V
Th及び第2の変曲点電圧閾値V
Tlを参照して、第1の変曲点HVTP及び第2の変曲点LVTPを決定することができる。電圧差分曲線の区間内で最大値点を選択し、該点が電圧差分曲線の極大値点であるか否かを判断し、極大値点でない場合、電池を充電し続け、充電過程における第1の電圧データ及び第1の残量データをリアルタイムに記録することにより、該曲線の極大値点を探し、極大値点である場合、該極大値点に基づいて電圧差分曲線の極大値点に対応するピーク電圧を取得し、ピーク電圧を第2の充電曲線における第1の変曲点電圧閾値V
Thと比較し、ピーク電圧が第1の変曲点電圧閾値V
Thより大きい場合、該ピーク電圧が目標変曲点であり、目標変曲点残量が第1の変曲点残量Q
HVTPであることを示し、ピーク電圧を第2の充電曲線における第2の変曲点電圧閾値と比較し、ピーク電圧が第2の変曲点電圧閾値V
Tlより小さい場合、該ピーク電圧が目標変曲点であり、目標変曲点残量が第2の変曲点残量Q
LVTPであることを示す。ピーク電圧が第1の変曲点電圧閾値V
Thより大きくなく、第2の変曲点電圧閾値V
Tlより小さくない場合、充電し続けて目標変曲点を探す。したがって、本開示の実施例は、電圧制限条件を増加させることにより、検出された目標変曲点が第1の変曲点か第2の変曲点かを決定することができるとともに、特殊な場合での異常な中間区間データによる誤判定をフィルタリングすることができ、電池のSOH計算の正確性を向上させる。
【0035】
実施例において、本開示の実施例に係る方法における電池の第2の充電曲線を取得するステップは、少なくとも1つの参照電池を取得し、参照電池を完全に放電させるように制御した後に定電流充電を行うステップと、参照電池の充電過程における第2の電圧データ及び第2の残量データを記録するステップと、参照電池の充電過程における第2の電圧データ及び第2の残量データに基づいて第2の充電曲線を取得するステップと、を含んでもよい。例えば、同じロット、同じ仕様の複数の電池から少なくとも1つを選択し、電池の残量を完全に放電させた後に満充電状態になるまで定電流で充電し、電池の充電過程における電圧-残量(V-Q)曲線すなわち第2の充電曲線を記録して、第2の充電曲線の特性を分析することにより、このロットにおける同じ仕様の全ての電池の第1の変曲点残量QHVTP、第1の変曲点電圧閾値VTh、第2の変曲点残量QLVTP及び第2の変曲点電圧閾値VTlを決定する。
【0036】
ロットが決定された電池に対して、高電圧又は低電圧プラトーの変曲点に対応する残量QHVTP、QLVTP及びプラトー領域に対応する電圧閾値VTh、VTlは、いずれも決定され、一部の電圧-残量特性曲線だけでこれらの特徴量の値を決定することができるため、本開示の実施例において、参照電池は、テスト対象の電池自体であってもよく、テスト対象の電池と同じロットの1つ以上の電池を選択してもよい。
【0037】
実施例において、本開示の実施例に係る計算方法は、電池容量及び電池の初期容量に基づいて電池のSOHを取得するステップをさらに含む。すなわち、計算して電池容量を得ることで電池のSOHを計算し、
【数1】
それにより電池のSOH値に基づいて電池の状態を決定する。ここで、Q
newは、電池の初期残量である。
【0038】
以下、
図3を参照して本開示の実施例に係る電池状態の計算方法について例を挙げて説明する。
図3に示すように、本開示の実施例に係る電池状態の計算方法のフローチャートを示す。
【0039】
ステップS21において、同じ仕様の電池から一部を選択し、電池の残量を完全に放電させた後に満充電状態になるまで定電流で充電し、充電過程における電圧-残量(V-Q)曲線すなわち第2の充電曲線を記録し、第2の充電曲線の特性を分析することにより、第1の変曲点に対応する第1の変曲点残量QHVTP及び第1の変曲点電圧閾値VThと、第2の変曲点に対応する第2の変曲点残量QLVTP及び第2の変曲点電圧閾値VTlとを決定する。
【0040】
ステップS22において、未知状態の電池を充電し始め、電池の充電過程における電圧-残量(V-Q)曲線をリアルタイムに記録する。
【0041】
ステップS23において、電圧-残量曲線に対して平滑化フィルタ処理を行い、電圧データに対して微分処理を行って、充電電圧差分曲線を取得する。
【0042】
ステップS24において、特定の区間で充電電圧差分曲線の最大値点を探し、該点が充電電圧差分曲線の極大値点であるか否かを判断する。
【0043】
ステップS25において、該点が極大値点である場合、該極大値点のピーク電圧を取得し、ピーク電圧がV<VTl又はV>VThを満たすか否かを判断する。
【0044】
ステップS26において、V<VTlを満たす場合、上記目標変曲点は、低電圧プラトーの変曲点であり、V>VThを満たす場合、上記目標変曲点は、高電圧プラトーの変曲点であり、いずれも満たさない場合、満充電するまで充電し続け、電池容量を読み取る。
【0045】
ステップS27において、電池が満充電になった後、電池の目標変曲点から充電完了までの充電残量を取得する。
【0046】
ステップS28において、変曲点残量と充電残量に基づいて電池容量を取得する。
【0047】
要約すれば、本開示の実施例に係る電池状態の計算方法では、第1の充電曲線及び充電電圧差分曲線に基づいて目標変曲点及び対応する変曲点残量を取得し、電池の残量が目標残量に達したことを検出した場合、目標変曲点から目標残量までの充電残量を取得する。すなわち、変曲点残量及び充電残量を取得するときに、電池に対して満充電又は満放電を行う必要がなく、満充電又は満放電による電池自体の損失を回避し、充電の安全性を向上させる。それとともに、変曲点残量及び充電残量を計算するときに、目標変曲点及び充電終了時の充電残量を検出するだけでよく、SOC区間を選択する必要がない。特定のSOC区間を選択して充電又は放電を行って電池の総残量を計算することに比べて、不正確なSOC推定によるSOH計算の誤差を回避することができ、電池容量計算の正確性を向上させる。また、電圧制限条件を増加させることにより、検出された目標変曲点が高電圧プラトー変曲点か低電圧プラトー変曲点かを決定することができ、特殊な場合での異常な中間区間データによる誤判定をフィルタリングすることができる。
【0048】
本開示の第2の態様の実施例に係るコンピュータ可読記憶媒体に、コンピュータプログラムが記憶され、該コンピュータプログラムが実行されると、上記実施例に係る電池状態の計算方法を実現する。
【0049】
以下、図面を参照して本開示の第3の態様の実施例に係る電池状態の計算装置について説明する。
【0050】
図4は、本開示の一実施例に係る電池状態の計算装置のブロック図であり、
図4に示すように、電池状態の計算装置10は、プロセッサ11及びメモリ12を含む。
【0051】
メモリ12は、少なくとも1つのプロセッサ11と通信接続され、メモリ12に少なくとも1つのプロセッサ11により処理可能なコマンドが記憶され、該コマンドが少なくとも1つのプロセッサ11により処理されると、上記実施例に係る電池状態の計算方法が実現される。
【0052】
本開示の実施例に係る電池状態の計算装置10では、プロセッサ11により電池状態の計算方法を実行し、第1の充電曲線及び充電電圧差分曲線に基づいて目標変曲点を取得し、電池の残量が目標残量に達した時に、充電残量を取得する。すなわち、変曲点残量及び充電残量を取得するときに、電池に対して満充電又は満放電を行う必要がなく、満充電又は満放電による電池自体の損失を回避し、充電の安全性を向上させる。それとともに、目標変曲点及び充電終了時の充電残量を検出するだけでよく、SOC区間を選択する必要がない。特定のSOC区間を選択して充電又は放電を行って電池の総残量を計算することに比べて、本開示は、不正確なSOC推定によるSOH計算の誤差を回避することができ、SOH計算の正確性を向上させる。
【0053】
本明細書の説明では、用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例示的な実施例」、「例」、「具体的な例」、又は「いくつかの例」などを参照する説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本開示の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書では、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同じ実施例又は例に限定されるものではない。
【0054】
本開示の実施例を例示及び説明したが、当業者が理解できるように、本開示の原理及び趣旨から逸脱しない場合、これらの実施例に対して、様々な変更、修正、置換及び変形を行うことができ、本開示の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。