(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】薄板ガラス基板、その製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 18/02 20060101AFI20240617BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20240617BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C03B18/02
C03B17/06
C03C3/083
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000547
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2019534339の分割
【原出願日】2017-12-19
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】102016125488.6
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017124625.8
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーミン フォーグル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュミアディ
(72)【発明者】
【氏名】ティロ ツァッハウ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン アルケンパー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル マイスター
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン クーネアト
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ クリッペ
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー ディートリヒ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-010569(JP,A)
【文献】特開2016-153344(JP,A)
【文献】米国特許第4197107(US,A)
【文献】米国特許第4138239(US,A)
【文献】特表2016-523788(JP,A)
【文献】特開2017-145172(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117650(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185127(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/183449(WO,A1)
【文献】編集: 山根正之 他 筆者: 稲葉博司、 岡本文雄,4.2 フロート成形 4.4 フュージョン成形,ガラス工学ハンドブック,日本,朝倉書店,1999年07月05日,358-364
【文献】編集: 作花済夫 他 筆者: 伊賀元一,15.1 板ガラスの成形,ガラスの百科事典,日本,朝倉書店,2007年10月20日,426-429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 18/00-18/22
C03B 17/00-17/06
C03C 1/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板ガラス基板の製造方法であっ
て、
溶融後でかつ熱成形前に、成形すべきガラスを熱成形設備に供給する前に、その粘度を冷却によって調整し、ガラス流の処理量を制御するための部材の下流1.5mまでの距離にわたる第1区間の粘度η
1に対して次の等式が成り立つが、ただし、y
1は、それぞれ、前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ下流の位置までの距離を表すものとする:
lg η
1(y
1)/dPas=(lg η
01/dPas+a
1(y
1))
ここで、
0m≦y
1≦1.5m
3.75≦lg η
01/dPas≦4.5
a
1(y
1)=1.00/m×y
1
であり、かつ、前記熱成形により、前記薄板ガラス基板が、少なくとも10cm×10cmの、前記薄板ガラス基板の第1の主表面および第2の主表面の面積について平均して、12mmまでの平均厚さを得る、好ましくは10mmまでの厚さを得る、方法。
【請求項2】
前記粘度の調整を、インレットリップ部の上流で行い、特に、金属浴上へ供給する前に行う、請求項1記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記粘度の調整を、前記ガラス流の処理量を制御するための部材の上流で行い、特に、金属浴上へ供給する前に行う、請求項1または2記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記成形すべきガラスの粘度が、
溶融窯の流路端および前記ガラス流の処理量を制御するための部材の上流で、少なくともlg η/dPas=3.75か
ら最高で4.5であり、かつ/または
前記ガラス流の処理量を制御するための部材の下流12mの距離から前記ガラス流の処理量を制御するための部材の下流16mまでの距離を有する第2区間の粘度η
2に対して次の等式が成り立つが、ただし、y
2は、それぞれ、前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ下流の位置までの距離を表すものとする:
lg η
2(y
2)/dPas=(lg η
02/dPas+a
2(y
2))
ここで、
12m≦y
2≦16m
7.05≦lg η
02/dPas≦7.6
a
2(y
2)=0.788/m×(y
2-12m)
である、請求項1から3までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
熱成形に、延伸法、特にフロート法、ダウンドロー法、および/またはフュージョン法、特にオーバーフローフュージョンダウンドロー法を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記薄板ガラス基板の熱成形に、Li-Al-Siガラス、Al-Siガラス、ホウケイ酸ガラス、またはK-Na-Siガラスを使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記薄板ガラス基板の熱成形に、Li-Al-Siガラス、特に4.6重量%~5.4重量%のLi
2O含有量、および8.1重量%~9.7重量%のNa
2O含有量、および16重量%~20重量%のAl
2O
3含有量を有するLi-Al-Siガラスを使用する、請求項5記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記薄板ガラス基板の主表面のうちの一方に、長く伸びた山部が形成され、前記山部は、ほぼ法線方向に盛り上がり、前記山部の横方向長さの2倍超、好ましくは3倍超、特に好ましくは5倍超の縦方向長さを有し、かつV字形の厚さ変動および反りを補正した10×10cm
2の分析面の算術平均で
、延伸方向に対して垂直な熱成形されたガラスリボンの中央において、平均で100nm未満、好ましくは90nm未満、特に好ましくは80nm未満の高さを有し、かつ前記山部の横方向長さは、それぞれ40mm未満である、請求項1から7までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記熱成形により、前記薄板ガラス基板が、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて100μm未満の値のほぼV字形の厚さ変動Kを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記熱成形により、前記薄板ガラス基板が、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて600μm未満の値の反りVを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するための、薄板ガラス基板を製造するための装置において、前記装置は、
溶融設備と、
熱成形設備と、
前記薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備とを備え、
前記薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備、特に前記
粘度を定義された方法で調整するための設備が、熱成形設備、特に前記熱成形設備の上流に配置されており、
前記粘度を定義された方法で調整するための設備が、冷却設備を備えている、装置。
【請求項12】
請求項2記載の方法を実施するための、請求項11記載の薄板ガラス基板を製造するための装置において、前記薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備、特に前記
粘度を定義された方法で調整するための設備が、前記インレットリップ部の上流に配置されている、装置。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するための、薄板ガラス基板を製造するための装置におい
て、
溶融設備と、
熱成形設備と、
前記薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備とを備え、
前記薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備、特に前記
粘度を定義された方法で調整するための設備が、前記ガラス流の処理量を制御するための部材の上流に配置されている、装置。
【請求項14】
前記粘度を定義された方法で調整するための設備が、前記熱成形すべきガラスから熱を吸収する流体貫流領域を備えている、請求項11から13までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造装置。
【請求項15】
900℃~1500℃の範囲における前記ガラスの粘度を、前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ上流の位置ではΔlg η/dPas=0.1の偏差で調整可能であり、前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ下流の位置から1.5mの距離ではΔlg η/dPas=0.2の偏差で調整可能であり、かつ前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ下流の位置から12mの距離ではΔlg η/dPas=0.3の偏差で調整可能である、請求項11から14までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造装置。
【請求項16】
前記成形すべきガラスの温度が、900℃~1500℃の範囲において、10℃未満の偏差で調整可能である、請求項11から15までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造装置。
【請求項17】
センシングユニットが、前記熱成形すべきガラスの温度を特に10℃の最大偏差で検知し、かつ/または前記熱成形すべきガラスの粘度を検知する、特に前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ上流の位置ではΔlg η/dPas=0.1、前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ下流の位置から1.5mの距離ではΔlg η/dPas=0.2、および前記ガラス流の処理量を制御するための部材のすぐ下流の位置から12mの距離ではΔlg η/dPas=0.3の最大偏差で検知する、請求項11から16までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造装置。
【請求項18】
前記熱成形設備が、延伸設備、フロート設備、特にダウンドロー延伸設備、または特にオーバーフローダウンドロー延伸設備である、請求項11から17までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の製造装置。
【請求項19】
薄板ガラス基板の主表面のうちの一方に、長く伸びた山部を含み、前記山部は、ほぼ法線方向に盛り上がり、前記山部において、縦方向長さは、前記山部の横方向長さの2倍超、好ましくは3倍超、特に好ましくは5倍超であり、かつ前記山部は、V字形の厚さ変動および反りを補正した10×10cm
2の分析面の算術平均で
、延伸方向に対して垂直なガラスリボンの中央において、好ましくは平均で、100nm未満、好ましくは90nm未満、特に好ましくは80nm未満の高さを有し、かつ前記山部の横方向長さはそれぞれ40mm未満であり、かつ、前記薄板ガラス基板が、少なくとも10cm×10cmの、前記薄板ガラス基板の第1の主表面および第2の主表面の面積について平均して、12mmまでの平均厚さを得る、好ましくは10mmまでの厚さを得る、薄板ガラス基板。
【請求項20】
前記薄板ガラス基板が、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて100μm未満の値のほぼV字形の厚さ変動を有する、請求項19記載の薄板ガラス基板。
【請求項21】
前記薄板ガラス基板が、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて600μm未満の値の反りを有する、請求項19または20記載の薄板ガラス基板。
【請求項22】
Li-Al-Siガラス、Al-Siガラス、ホウケイ酸ガラス、またはK-Na-Siガラスを含む、請求項19から21までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板。
【請求項23】
Li-Al-Siガラス、特に、4.6重量%~5.4重量%のLi
2O含有量、および8.1重量%~9.7重量%のNa
2O含有量、および16重量%~20重量%のAl
2O
3含有量を有するリチウムアルミニウムシリケートガラスを含む、請求項22記載の薄板ガラス基板。
【請求項24】
特に第1のガラス板と請求項19から23までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板とを含む、合わせガラス板。
【請求項25】
請求項19から23までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板または請求項24記載の合わせガラス板を含む、自動車用ガラス。
【請求項26】
請求項19から23までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板を含む、陸上、水上または水中および空中で運転される車両、特にモータ駆動車両用の、フロントガラス投影設備、特にヘッドアップディスプレイ。
【請求項27】
合わせガラス板の部材としての、請求項19から23までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の使用。
【請求項28】
自動車用ガラスの部材としての、請求項19から23までのいずれか1項記載の薄板ガラス基板の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、薄板ガラス基板、その製造方法および製造装置に関する。さらに、特に前記方法によって製造された薄板ガラス基板の光学品質を調べるための測定方法を記載する。
【0002】
薄板ガラス基板は、自動車工学においても重要性を増している。なぜなら、薄板ガラス基板を用いると、自動車の軽量化が可能であるだけでなく、その窓ガラスの光学特性にも決定的に影響を及ぼせるためである。
【0003】
例えば、二次元情報をリアプロジェクションに挿入する際、または自動車の周辺から光学データをセンシングにより取得する際の、その基板の光学特性に課される要求の増加に伴って、光学的に高品質の薄板ガラス基板、およびその重量の低下に適切なさらなる開発への需要の増大が生じる。特に、e-モビリティ、つまり電気駆動車両においては、車両の窓ガラスの軽量化が非常に重要である。
【0004】
独国特許出願公開第2309445号明細書(DE 2309445 A1)は、溶融ガラスが、自由降下中に金属浴に注がれる、厚さが2.5mm未満の薄板フロートガラスの製造方法であって、その金属浴上では、105.25ポアズまでの粘度範囲において、溶融ガラスが、側面ガイドローラの介入なしに均等な厚さの層へと自由に広がり、次いでガラスリボンが、フロートバスの次の区間において変形可能状態に維持され、かつその速度が上昇する中で縦方向に引き伸ばされ、ただし、その変形領域では、ガラスリボンの周縁領域に対して上方から作用するローラのみによってガラスリボンへと力が加わり、その力が、所定の厚さへと徐々に延伸させるために引張力の延伸効果を徐々に制御する方法に関する。
【0005】
特開平7-53223号公報(JP 7-53223 A)には、主要な成形の後に、トップロール延伸設備を使用した後に、光学品質を向上させるため、特に、マイクロコルゲーションと呼ばれる光学特性を軽減させるための、オーバーヘッドクーラと呼ばれる冷却設備が記載されている。しかしながら、その際、マイクロコルゲーションの軽減は、筋(Ziehstreifigkeit)の視覚的顕著性に対して副次的な影響しか及ぼさない。
【0006】
さらに、熱成形設備に進入する際にじかに熱を除去することも可能であるが、これは、従来はわずかな程度にすぎない。
【0007】
本発明の課題は、光学品質が向上した薄板ガラス基板、その製造方法および製造装置を提供することである。さらに本発明は、光学品質が向上した薄板ガラス基板の有利な使用にも関する。さらに、光学品質を調べるための有利な方法が提供される。
【0008】
前記課題は、それぞれ、独立請求項に記載される方法および装置によって解決される。有利な発展形態は、各従属請求項および明細書から読み取れる。
【0009】
驚くべきことに、本発明者は、薄板ガラス基板の製造方法であって、好ましくは薄板ガラス基板、特に筋目が減少した薄板ガラス基板の連続的な製造方法において、溶融後でかつ熱成形前に、成形すべきまたは少なくとも部分的に成形されたガラスの粘度を、得るべき薄板ガラス基板のために定義された方法で調整し、かつ熱成形すべきガラスを、熱成形設備に供給する前に、その粘度を定義された方法で調整し、特に定義された冷却によって調整する方法によって、その筋目(Ziehstreifen)を最小限に抑え得ることを見出した。以下の粘度に関する全データ、特に数値データは、簡潔にするためにおよびこの技術分野では習慣的であるとおり常に明示されなくとも、lg η/dPasで示されている。
【0010】
この場合、筋目の減少とは、筋目の大きさが低下することと理解され、それは、理想平面の基板、特に薄板ガラス基板と比べた、筋目によって形成される山部の体積の低下を意味する。その際、低下の比較には、熱成形すべきガラスの、スパウトの上流での粘度、例えば、lg η/dPasが3.47である方法を利用し、その方法に関しては、以下の詳細な記載の中で、具体的な測定結果を手がかりにさらに詳細に説明する。本発明によるガラスと同様に、従来の比較ガラスの場合も、以下の比較測定にはそれぞれ、薄板ガラス基板に関して例示的に請求項28に記載され、かつ薄板ガラス基板を用いて行う測定に関する以下の記載においてさらに詳しく具体化される組成を有するガラスを使用した。
【0011】
さらに、総じて、薄板ガラス基板とは、筋目が減少した薄板ガラス基板であって、該薄板ガラス基板の主表面のうちの一方に、山部、特に長く伸びた山部が形成され、該山部は、ほぼ法線方向に盛り上がり、該山部において、縦方向長さ(Laengserstreckung)が、該山部の横方向長さの2倍超、好ましくは3倍超、特に好ましくは5倍超であり、かつ該山部は、V字形の厚さ変動および反りを補正した10×10cm2の分析面の算術平均で、好ましくは延伸方向に対して垂直な熱成形されたガラスリボンの中央において、平均で100nm未満、好ましくは90nm未満、特に好ましくは80nm未満の高さを有し、かつ該山部の横方向長さはそれぞれ40mm未満である薄板ガラス基板と理解される。
【0012】
以前の数理モデルから、加工温度を比較的高くすると光学品質も比較的高くなることが明らかであったため、当初は、温度低下に伴う粘度の増大が光学品質の向上を達成するための有望な措置とは考えられなかった。
【0013】
特に、薄板ガラス基板の連続的な製造において、従来は、熱成形すべきガラスを供給する溶融窯と液体金属を含むフロートバスとの間の区間を、空間的に可能な限り短くかつプロセス工学上、直接的に構成することが重視されていた。さらに、低温に伴う、溶融すべきガラスの高粘度は、溶融窯にとってむしろ不利である。なぜなら、粘度の上昇と共に、ガラスの均質化も困難になるためである。さらに、熱成形すべきガラスの冷却は、通常は、高処理量の妨げとなる。なぜなら、その場合、粘性にしか流動しないガラスが、熱成形プロセスチェーン内で、貫流速度を下げる傾向を示すためである。それゆえ従来は、熱成形のプロセスチェーンに対して温度を低下させる介入を行うことは、特に不利であると考えられていた。これは特に、その介入が早い時点で行われることでプロセスチェーン全体に影響が及ぶ場合に言えることである。
【0014】
薄板ガラス基板を製造するための好ましい一方法では、粘度の調整を、液体ガラスを供給するためのリップストーン部(Lippenstein)、つまりスパウトの上流で行い、特に金属浴上へ供給する前に行う。
【0015】
この本発明によるスパウトの上流でのプロセス工学上の介入は、驚くべきものである。なぜなら、従来のフロート設備は、通常は、構造上、スパウトの上流での介入を許容するようには設計されていないためである。
【0016】
本開示において、「上流」および「下流」なる用語は、まず空間的な意味を有する。その際、「上流」なる用語は、ガラスの流動または延伸方向において、さらなる対象の空間的に前方に位置する場所を表し、「下流」または「後方」なる用語は、ガラスの流動または延伸方向において、さらなる対象の空間的に後方または下流に位置する場所を表す。しかしながら、本発明の場合、ガラスを連続的に移動させる、またはガラスが連続的に移動するため、その結果、特に方法の実施に関して、特に工業上のプロセスチェーン内でも、各工程段階の該当する時間系列も生じ得る。
【0017】
薄板ガラス基板を製造するための好ましい一方法では、粘度の調整を、制御ゲート、つまりガラス流の処理量を制御するための、ツイールとも呼ばれる部材の上流で行い、特に、金属浴上へ供給する前、つまりフロートバスの液体金属上へ供給する前に行う。
【0018】
その際、定義された方法で調整されるとは、本開示において、粘度が定義された範囲内で調整されるように粘度の調整が行われることを意味する。それは特に、この調整後のガラスが、つまりガラスの調整された粘度ηが、実際に望ましい値に関する偏差を伴って存在し、つまり、定義された方法で調整された粘度からの偏差が、ツイールのすぐ下流の位置から12mの距離ではΔlg η/dPas=0.3未満であり、ツイールのすぐ下流の位置から1.5mの距離ではΔlg η/dPas=0.2未満であり、ツイールのすぐ上流ではΔlg η/dPas=0.1未満であることも意味する。
【0019】
薄板ガラス基板を製造するための好ましい一方法では、成形すべきまたは少なくとも部分的に成形されたガラスの粘度が、好ましくは溶融窯の流路端およびツイールの上流で、特にツイールのすぐ上流において、少なくともlg η/dPas=3.75から好ましくは最高で4.5であり、かつ/またはベイ1の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流1.5mまでの距離において、少なくともlg η/dPas=5.25から好ましくは最高で5.85であり、かつ/またはベイ4の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流12mまでの距離において、少なくともlg η/dPas=7.05から好ましくは最高で7.6である。
【0020】
特に好ましい一実施形態では、ツイールの下流1.5mまでの距離にわたる第1区間の粘度η1に対して次の等式が成り立つが、ただし、y1は、それぞれ、ツイールのすぐ下流の位置までの距離を表すため、ツイールのすぐ下流では値がゼロである:
lg η1(y1)/dPas=(lg η01/dPas+a1(y1))
ここで、
0m≦y1≦1.5m
3.75≦lg η01/dPas≦4.5
a1(y1)=1.00/m×y1
である。
【0021】
この等式は、値yに対する、lg η1(y1)/dPasの線形従属を、たとえそれが断片的には大部分において存在するとしても、必ずしも指定するものではなく、それぞれ、lg η01が前記の区間内を変動する場合には、固定位置y1でのlg η1(y1)の値範囲をも指定する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、1メートルの単位長あたりの0m≦y1≦1.5mの範囲での粘度の変化は、特に好ましくはΔlg η/dPas/Δy=0.666/m+/-0.1/mであるが、しかしながら、0.334/m超でかつ0.8/m未満である値を有し、ただし、Δlg η/dPasという表現は、この等式では、実際に望ましい値に関する粘度の偏差ではなく、間隔範囲Δyでの粘度の変化を表す。
【0023】
さらなる好ましい一実施形態では、ツイールの下流12mの距離からツイールの下流16mまでの距離を有する第2区間の粘度η2に対して次の等式が成り立つが、ただし、y2は、それぞれ、ツイールのすぐ下流の位置までの距離を表すものとする:
lg η2(y2)/dPas=(lg η02/dPas+a2(y2))
ここで、
12m≦y2≦16m
7.05≦lg η02/dPas≦7.6
a2(y2)=0.788/m×(y2-12m)
である。
【0024】
この等式は、値yに対する、lg η2(y2)/dPasの線形従属を、たとえそれが断片的には大部分において存在するとしても、必ずしも指定するものではなく、それぞれ、lg η02が前記の区間内を変動する場合には、固定位置y2でのlg η2(y2)の値範囲も指定する。
【0025】
ここでは、本開示の全体と同様に、「ツイールの下流」または「ツイールの後方」の間隔または距離の指定は、たとえそれぞれ明示されなくても、ツイール17のすぐ下流に位置するか、または流動方向で見てツイール17の背後側に位置する場所から、その間隔または該当する距離がそれぞれ指定する場所までのY方向での間隔を示す。
【0026】
その距離は、例示的に、
図3において、Y方向での値としてmで示される。構造上、フロートバスの開始部が、ここではそうであるように、ツイールの末端部、特にその、流動または延伸方向の最後方部と一致することも可能である。
【0027】
薄板ガラス基板を製造するための好ましい方法では、成形すべきまたは少なくとも部分的に成形されたガラスの温度が、それを対象に表面の筋目または長く伸びた山部の以下の測定およびその厚さが記載されるガラスにおいて、好ましくは溶融窯の流路端およびツイールの上流で、特にツイールのすぐ上流において、少なくとも1000℃および最高で1100℃、および/またはベイ1の開始部、つまり延伸方向で1.5mまでの距離において、少なくとも850℃および最高で910℃、および/またはベイ4の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流12mまでの距離において、少なくとも720℃および最高で760℃である。その際、それぞれ、最高で10℃の最大温度偏差が存在した。温度の定義された調整とは、本開示の趣旨では、熱成形すべきガラスの、熱成形前または熱成形最中に行う、前記の最大温度偏差の範囲内にある温度調整を含む。ガラスの定義された冷却とは、本開示の趣旨では、熱成形すべきガラスの、熱成形前または熱成形最中に行う温度の低下を含み、その低下においても同様に、指定される温度は、前記の最大温度偏差の範囲内にある。
【0028】
スズ浴の温度を制御するための方法、さらにはスズ浴の、異なるベイ中での温度を調整するための方法は、当業者には公知である。
【0029】
好ましくは、薄板ガラス基板の製造方法において、熱成形に、延伸法、特にフロート法、ダウンドロー法、および/またはフュージョン法、特にオーバーフローフュージョンダウンドロー法を使用する。
【0030】
薄板ガラス基板の製造方法では、有利には、薄板ガラス基板の熱成形に、Li-Al-Siガラス、Al-Siガラス、ホウケイ酸ガラス、またはK-Na-Siガラスを使用できる。
【0031】
特に、その際、特に、4.6重量%~5.4重量%のLi2O含有量、および8.1重量%~9.7重量%のNa2O含有量、および16重量%~20重量%のAl2O3含有量を有するLi-Al-Siガラスを使用できる。
【0032】
薄板ガラス基板を製造するための好ましい一方法では、薄板ガラス基板の主表面のうちの一方に、山部、特に長く伸びた山部が形成され、該山部は、ほぼ法線方向に盛り上がり、該山部の横方向長さの2倍超、好ましくは3倍超、特に好ましくは5倍超の縦方向長さを有し、かつV字形の厚さ変動および反りを補正した10×10cm2の分析面の算術平均で、好ましくは延伸方向に対して垂直な熱成形されたガラスリボンの中央において、平均で100nm未満、好ましくは90nm未満、特に好ましくは80nm未満の高さを有し、かつ該山部の横方向長さは、それぞれ40mm未満である。
【0033】
薄板ガラス基板の製造方法では、一実施形態において、熱成形により、薄板ガラス基板が、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて100μm未満の値のほぼV字形の厚さ変動を有する。
【0034】
薄板ガラス基板の製造方法では、一実施形態において、熱成形により、薄板ガラス基板が、さらに、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて600μm未満の値の反りを有する。
【0035】
熱成形により、薄板ガラス基板が、好ましくは、少なくとも10cm×10cmの、該薄板ガラス基板の第1の主表面および第2の主表面の面積で算術平均して、0.3mm~2.6mmの平均厚さを得ることができ、好ましくは0.7mm~2.5mmの厚さを得ることができ、特に好ましくはおよそ0.7mmの厚さまたはおよそ2.54mmの厚さを得ることができる。
【0036】
さらなる形態では、10mmまで、その上12mmまでのガラス基板の厚ささえも、本発明のすべての利点を伴って得ることができる。
【0037】
薄板ガラス基板の製造方法では、好ましい実施形態において、薄板ガラス基板を、1日当たりの熱成形された薄板ガラスの処理量がガラス400t未満、好ましくは200t未満、最も好ましくは100t未満で熱成形した後に、良品ガラスの割合が、ガラス処理量全体の15%超である。
【0038】
薄板ガラス基板、特に、筋目が減少した薄板ガラス基板を製造するため、特に本明細書で開示される方法を実施するための本発明による装置は、溶融設備と、熱成形設備と、薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備とを備え、該装置では、薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備、特に前記設備が、熱成形設備の上流に配置されている。
【0039】
この設備または薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備は、特に好ましい実施形態では、スパウトの上流に配置されている。
【0040】
好ましい一実施形態では、薄板ガラス基板へと成形すべきガラスの粘度を定義された方法で調整するための設備、特に前記設備が、ツイールの上流、特にツイールのすぐ上流に配置されていることも可能である。
【0041】
特に好ましくは、粘度を定義された方法で調整するための設備は、冷却設備を備えている。
【0042】
その際、粘度を定義された方法で調整するための設備は、熱成形すべきガラスから熱を吸収する流体貫流領域、特に水が貫流する領域を備えていてよい。
【0043】
その熱吸収は、例示的には、直接熱伝導によって起こり得るが、さらには対流熱の吸収によっても起こり得る。
【0044】
この装置では、本明細書に記載されるガラス粘度を、有利には、それぞれ、ツイールのすぐ上流の位置ではΔlg η/dPas=0.1、ツイールの下流1.5mの距離ではΔlg η/dPas=0.2、ツイールの下流12mの距離ではΔlg η/dPas=0.3の最大偏差となるように調整できる。
【0045】
さらに、好ましい一装置では、センシングユニットが、熱成形すべきガラスの温度を特に10℃の最大偏差で検知でき、かつ/または熱成形すべきガラスの粘度を検知でき、特にツイールのすぐ上流ではΔlg η/dPas=0.1、ツイールの下流1.5mではΔlg η/dPas=0.2、およびツイールの下流12mではΔlg η/dPas=0.3の最大偏差で検知できる。
【0046】
熱成形設備は、好ましい実施形態では、延伸設備、フロート設備、特にダウンドロー延伸設備、特にオーバーフローダウンドローフュージョン延伸設備を含み得る。
【0047】
好ましい一実施形態の薄板ガラス基板は、薄板ガラス基板の主表面のうちの一方に、山部、特に長く伸びた山部を有し、該山部は、ほぼ法線方向に盛り上がり、縦方向長さは、該山部の横方向長さの2倍超、好ましくは3倍超、特に好ましくは5倍超であり、かつ該山部は、V字形の厚さ変動および反りを補正した10×10cm2の分析面の算術平均で、好ましくは延伸方向に対して垂直な熱成形されたガラスリボンの中央において、平均で100nm未満、好ましくは90nm未満、特に好ましくは80nm未満の高さを有し、かつ該山部の横方向長さはそれぞれ40mm未満である。前記の値は、それぞれ、本明細書に記載される方法とは異なる測定法を用いて、例えば、薄板ガラス基板上での機械的走査法によっても算出可能であり、その際、同一の測定値が得られる。しかしながら、光学的方法は非接触式に使用できるため、表面の変化、特に、例えば、測定場所での主表面のかき傷による損傷が生じない。
【0048】
薄板ガラス基板の熱成形により、薄板ガラス基板は、延伸方向に対して垂直な1mの長さについて100μm未満の値を有するほぼV字形の厚さ変動K、および/または延伸方向に対して垂直な1mの長さについて600μm未満の値を有する反りVを有し得る。
【0049】
薄板ガラス基板は、好ましい実施形態では、少なくとも10cm×10cmの、薄板ガラス基板の第1の主表面および第2の主表面の面積について平均して、0.5mm~2.6mmの平均厚さを得ることができ、好ましくは0.7mm~2.5mmの厚さを得ることができ、特に好ましくはおよそ0.7mmの厚さまたはおよそ2.54mmの厚さを得ることができる。さらに、10mmまで、その上12mmまでの厚さを有するガラス基板をも製造することが可能である。
【0050】
薄板ガラス基板は、Li-Al-Siガラス、Al-Siガラス、ホウケイ酸ガラス、またはK-Na-Siガラスを含み得る。
【0051】
しかしながら、好ましくは、薄板ガラス基板がLi-Al-Siガラスを含み、特に、4.6重量%~5.4重量%のLi2O含有量、および8.1重量%~9.7重量%のNa2O含有量、および16重量%~20重量%のAl2O3含有量を有するリチウムアルミニウムシリケートガラスを含む。
【0052】
本明細書で開示される薄板ガラス基板は、自動車用ガラス中に含まれていてもよく、特に合わせガラス板中に含まれていてもよい。
【0053】
さらに、陸上、水上または水中および空中で運転される車両、特にモータ駆動車両用のフロントガラス投影設備、特にヘッドアップディスプレイも、有利には、本明細書で開示される薄板ガラス基板を、特に後方反射(Rueckreflexion)面として含み得る。
【0054】
したがって、薄板ガラス基板の使用が、合わせガラス板の一部としても、特に自動車用ガラスの一部として特に有利である。
【0055】
本発明者は、薄板ガラス基板のすべての光学的欠点が、必ずしも同様に妨害またはその光学特性の低下を招く訳ではないことも確認した。
【0056】
薄板ガラス基板の主表面のうちの一方の山部、特に長く伸びた山部は、フロートガラス上での一主要方向である熱成形すべきガラスの延伸方向または移動方向に延在し、従来は筋目とも呼ばれるが、これが一定サイズを超え、しかもそれぞれの光線路において円柱レンズの作用を有すると、光学特性の顕著な悪化を招きかねない。その種の山部または筋目は、典型的には40mm未満の横方向長さを有する。
【0057】
その種の光学的損傷の分類には、例えばシャドウキャスティング法が用いられ、その方法は、例えばDIN 52305に記載されている。
【0058】
しかしながら、このシャドウキャスティング法は、通常は透過光で操作されてガラス基板の両面が検知され、片面のみの光学相互作用に関する情報は得られないという欠点を有する。しかしながら、その薄板ガラス基板が、例えば自動車内で使用されるヘッドアップディスプレイに使用される場合、眺めの場合とは異なり、両主表面のうちの一方のみの光学品質がすでに決定的に重要である。後方反射での測定において光学測定光の最大偏差角を求める場合、この値も副次的な意味しかもたない。なぜなら、その場合、その被測定主表面で形成される系の特性に関する十分な情報が存在しないためである。
【0059】
したがって、ガラス基板、特に薄板ガラス基板の光学特性を、より高い妥当性で把握可能にすることも重要である。その際、その種の方法によって、光学系内の挙動に関する直接的な説明、例えば、被測定領域全体のレンズのような屈折力に関する説明が得られれば有利であろう。
【0060】
その際、ガラス基板、特に薄板ガラス基板の各主表面を、該薄板ガラス基板のそれぞれ他方の主表面と独立して測定できれば特に有利であろう。
【0061】
以下、本発明に関して、添付の図面をもとに、また好ましい例示的実施形態および特に好ましい例示的実施形態に関連づけて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい一実施形態の薄板ガラス基板の製造装置の断面図を示し、その断平面は、該装置のほぼ中央を通って垂直に延びる。
【
図2】
図2は、従来のフロート設備の薄板ガラス基板の製造装置の断面図を示し、その断平面は装置のほぼ中央を通って垂直に延びる。
【
図3】
図3は、好ましい一実施形態の薄板ガラス基板の製造装置の一部の上面図、特にフロートバス上の熱成形すべきガラスリボンの上面図を示す。
【
図4】
図4は、フロートバス上に存在するガラスの粘度推移を、デカルト座標系のY方向として指定されている流動または延伸方向において示す。
【
図5】
図5は、レーザ干渉計、特に位相シフトレーザ干渉計を使って光学的距離を測定するための、薄板ガラス基板の主表面上の測定領域および分析領域を図示する。
【
図6】
図6は、レーザ干渉計を用いて得られた薄板ガラス基板表面データ、特に表面構造の任意単位での斜視図を示す。
【
図7】
図7は、レーザ干渉計を用いて得られた薄板ガラス基板表面データのグレースケール図を示し、その表面データでは、筋目の厚さ値が濃淡値として識別できる。
【
図8】
図8は、レーザ干渉計を用いて得られた薄板ガラス基板表面データのX方向での導関数のグレースケール図を示し、その表面データでは、微分値が濃淡値として識別できる。
【
図9】
図9は、レーザ干渉計を用いて得られた、従来の薄板ガラス基板の表面データの光学的屈折力のグレースケール図を示し、その表面データでは、屈折力が濃淡値として識別できる。
【
図10】
図10は、レーザ干渉計を用いて得られた、本発明による薄板ガラス基板の表面データの光学的屈折力のグレースケール図を示し、その表面データでは、屈折力が濃淡値として識別できる。
【
図11】
図11は、白色光干渉計、特にフーリエ変換白色光干渉計、FRT干渉計を使って光学的距離を測定するための、薄板ガラス基板の主表面上の測定領域ならびに分析領域を図示する。
【
図12】
図12は、FRT干渉計を用いて得られた薄板ガラス基板表面データのグレースケール図を示し、その表面データでは、筋目の厚さ値が濃淡値として識別できる。
【
図13】
図13は、FRT干渉計を用いて得られた、従来の薄板ガラス基板の表面データの光学的屈折力のグレースケール図を示し、その表面データでは、屈折力が濃淡値として識別できる。
【
図14】
図14は、FRT干渉計を用いて得られた、本発明による薄板ガラス基板の表面データの光学的屈折力のグレースケール図を示し、その表面データでは、屈折力が濃淡値として識別できる。
【
図15】
図15は、本発明の好ましい実施形態による合わせガラス板を図示し、その合わせガラス板は、ヘッドアップディスプレイ用の反射面を有する。
【
図16】
図16は、本発明の好ましい実施形態による合わせガラス板を図示し、その合わせガラス板は、ヘッドアップディスプレイ用の反射面を有する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態の詳細な記載
好ましい実施形態および特に好ましい実施形態に関する以下の記載では、異なる図面における同一の参照符号は、本明細書においてそれぞれ開示される装置の同一のまたは同一の作用を有する構成要素を表す。
【0064】
まず、
図2に示される、フロートガラスを製造するための従来設備に関し、その設備には、以下での本発明による装置と同様に、参照符号1が付されている。
【0065】
このフロート設備は、溶融窯とも呼ばれる溶融炉2を有し、その溶融炉へは、溶融すべきガラスバッチ3を、公知のやり方で供給し、バーナー4を用いて、望みの組成のガラス溶融体5が形成されるまで加熱する。ガラス溶融体のさらなる均質化装置は当業者には公知であるため、詳細には記載しない。
【0066】
流路6を介して、ガラス溶融体5の溶融ガラスが、通常は重力の作用下に、液体スズを有するフロートバス7上へと到達し、そのフロートバス上では、熱成形すべきガラス8が、その熱成形の一部として、重力の作用下に、その高さを下げつつ側方に広がることができる。
【0067】
熱成形すべきガラスの温度を調整するために、スズ浴7が、フロートバス炉9中に配置されていてもよく、そのフロートバス炉も同じくバーナー10を有し、それを使用して、熱成形すべきガラスの温度が調整可能である。
【0068】
溶融窯2を離れると、熱成形すべき溶融ガラス8は、スパウトとも呼ばれる下向きに延びるインレットリップ部11を介してスズ浴7上へと案内され、そのインレットリップ部上ですでにガラスが広がり始める。延伸設備としてのローラ形状のトップローラ12により、スズ浴7上で形成されるガラスリボン13が、その拡散移動において、側方からその後の移動において、定義された方法で影響を受ける。
図1および2には、それぞれ2つのトップローラのみが例示的に示されているが、必要に応じて、2つを超えるこのトップローラが存在し使用されることも可能である。
【0069】
その熱成形後に、適宜、ガラスリボン13を冷却炉14へと移送してもよく、その冷却炉も同じく、ガラスリボンを、定義された温度低下のためのバーナー15を有し得る。
【0070】
冷却炉14を離れた後、ガラスリボン13は、次いでさらなる加工、特に、ガラス板またはガラス基板への個別化に提供される。
【0071】
本発明による実施形態の以下の記載において、様々なアセンブリの空間配置、または例えば熱成形すべきガラスまたは薄板ガラス基板の特性をより明確に描写できるようにするため、まず、
図3中に示す直交するX、Y、およびZ方向を定義するデカルト座標系が参照され、以下では、様々な図におけるすべての記載が、引き続きその方向を基準とする。
【0072】
XおよびY方向は、水平に延在する、したがって実質的にはスズ浴7の表面に対して平行にも延びる平面に広がる。この平面に対して垂直に延びるZ方向は上向きに延在し、それゆえ、このZ方向は、ガラスリボン13に対する法線方向をも定める。
【0073】
以下は、薄板ガラス基板、特に筋目が減少した薄板ガラス基板の製造装置として、全体的に参照符号1’が付されたフロート設備を含む
図1に関し、そのフロート設備は、
図2に関連づけて記載されたすべての装置を有する。
【0074】
その際、溶融設備16としては、溶融窯または溶融炉2’、ガラスバッチ3の供給装置、およびバーナー4が含まれている。さらに、溶融窯2’は、熱成形すべき溶融ガラス8を、スズ浴7’上へと移送する流路6’を有する。
【0075】
例示的に、流路6’の下流に、制御ゲート17、つまりガラス流の処理量を制御するための、ツイールとも呼ばれる部材が配置されている。制御ゲートまたはツイール17を、参照符号17の隣に示す両向き矢印の方向にずらすことにより、流路6の横断面を狭くしたり大きくしたりできるため、溶融窯2’から単位時間ごとに流出する熱成形すべき溶融ガラス8の量を制御でき、特に定義された方法で調整できる。さらに、溶融窯2’とフロートバス炉9との間、特にツイール17の上流に、この場合は流路6を、特に、さらには
図1に示されるよりも長い区間にわたって形成する、供給溝が配置されていてもよい。処理量制御のより詳細な記載は、参照により同様に本願の主題とされる、同一出願人の独国特許出願公開第102013203624号明細書(DE 102013203624 A1)に見出される。
【0076】
熱成形すべき溶融ガラス8の流動方向で見て、熱成形すべき溶融ガラス8の粘度を定義された方法で調整するための設備18が、ツイール17の上流およびスパウト11の上流に配置されている。
【0077】
好ましい実施形態では、粘度を定義された方法で調整するための設備18が、該スパウトのすぐ上流に配置されていることも可能である。
【0078】
この、粘度を定義された方法で調整するための設備18は、チャンバ19を含み、そのチャンバは、溶融窯2’から分離されていてもよいし溶融窯の一部を形成してもよく、かつ薄板ガラス基板へと成形すべき溶融ガラス8を、その粘度を定義された方法で調整するために受容する。
【0079】
さらに、粘度を定義された方法で調整するための設備18は、流体貫流領域20、21、特に水が貫流する領域を含み、その領域は、熱成形すべきガラス8から熱を吸収し、かつ金属配管系として形成されていてもよい。その金属配管系は、熱吸収を改善するために着色されているか、または耐熱塗料がその表面に施されていることも可能である。
【0080】
別法としてまたは付加的に、チャンバ19の隔壁22、23、24および25も、その温度が、例えばさらなる冷却設備により定義された方法で調整されるというようにして、熱成形すべきガラス8から熱を吸収できる。
【0081】
チャンバ19は、その隔壁22、23、24および25により、溶融窯2’から空間的に分離して形成されていることも可能であり、改善された放熱を提供するために、高温耐熱金属壁を有してもよく、それに関して、以下でさらに、
図3に関連づけてより詳細に説明する。
【0082】
粘度を定義された方法で調整するための設備18、したがってチャンバ19が、その隔壁22、23、24および25により、溶融窯2’から空間的に分離して形成されており、したがってもはや溶融窯2’の一部を形成しない場合、その実施形態に関しては、好ましくは溶融窯の流路端およびツイールの上流に該当する粘度および温度に関するいずれの記載も、ツイールのすぐ上流の位置にしか関連せず、その場合は、ツイールのすぐ上流の位置から空間的に離れた溶融窯の流路端を、もはや含まない。
【0083】
前記のように、粘度を定義された方法で調整するための設備18は、少なくとも1つの冷却設備を含み、それを使用して、熱成形すべきガラス8の温度、ひいては粘度も、定義された方法で調整可能である。それにより、ガラス8の粘度は、それぞれ、ツイールのすぐ上流の位置ではΔlg η/dPas=0.1、ツイールのすぐ下流の位置から1.5mの距離ではΔlg η/dPas=0.2、およびツイールのすぐ下流の位置から12mの距離ではΔlg η/dPas=0.3の最大偏差で調整可能である。
【0084】
粘度を定義された方法で調整するための設備18はさらに、熱成形すべきガラス8の温度を、特に10℃の最大偏差で検知する、それゆえ熱成形すべきガラスの粘度も、特に、ツイールのすぐ上流の位置ではΔlg η/dPas=0.1、ツイールのすぐ下流の位置から1.5mの距離ではΔlg η/dPas=0.2、およびツイールのすぐ下流の位置から12mの距離ではΔlg η/dPas=0.3の最大偏差で検知するセンシングユニット26を含む。
【0085】
粘度測定は、本技術分野の当業者には十分に公知である。
【0086】
しかしながら、粘度測定または粘度ηの算出は、それぞれ指定の位置で各ガラスの温度Tを測定し、次いでこの温度Tから粘度値ηに適切に換算することによっても行うことができる。
【0087】
その場合、各ガラスに対して、その温度-粘度曲線を、温度値Tから粘度値ηへの換算に使用できる。この温度-粘度曲線は、各ガラスの測定すべきすべての温度Tに対して、その粘度ηを従来の様式で測定することにより、予め算出できる。
【0088】
しかしながら、そのために、特に、当業者には公知のフォーゲル-フルチャー-タマン式lg η=A+B/(T-To)(この場合、温度の記載は℃)も、各ガラスに対して使用できる。
【0089】
それには、各ガラスに対して、該当する係数To、AおよびBを、まず実験により求めてから、粘度ηの特定に使用できる。その場合、測定した温度Tの値によって、相応に測定され、かつこの式で換算された粘度ηの値が定められる。
【0090】
非接触式温度測定、および別法としてまたは付加的に、被測定ガラスと接触する直接温度測定は、当業者には公知である。該当するセンサは、本開示において、例えばセンシング装置またはユニット26により示されている。
【0091】
センシング設備またはユニット26は、ガラスと直接接触した状態であってよく、それゆえ温度の直接測定を行うことができるか、または熱成形すべきガラス8からの放射スペクトルを、スペクトルそれ自体および/もしくは放出される放射線の強度を手がかりに検知することにより温度を検知する放射線測定装置を含むことも可能である。センシングユニット26は、ツイール17のすぐ上流の位置に配置されていてもよく、その際、その、流動方向の前方側のすぐそばに配置されているか、または例示的に
図1からも見て取れるように、ツイール17までわずかな間隔を置いて配置されていることも可能である。たった1つのセンシングユニット26の代わりに、さらなるセンシングユニットが、別の位置、特に、流動方向に離れたさらなる位置に配置されていることも可能であり、例えば、もう1つのセンシングユニットが、さらにベイ1の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流1.5mまでの距離にも、さらにはベイ4の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流12mまでの距離にも配置され得るが、説明を簡潔にするために、
図1に改めて独自には図示しなかった。
【0092】
薄板ガラス基板、特に筋目が減少した薄板ガラス基板の製造装置1’は、流動または延伸方向で、粘度を定義された方法で調整するための設備18の下流に存在し、かつスパウト11を介して熱成形すべきガラス8を受容する熱成形設備47を含む。この熱成形設備47については、後で、さらに
図3に関連づけながらより詳細に説明する。
【0093】
スパウト11は、熱成形すべきガラス8を、フロートバス炉9’内に収容されているスズ浴7’上へと導く。フロートバス炉9’の床には、スズ浴を複数のベイ32~37に区分するクロスバー27~31が存在する。フロートバスは、通常、7つまたは8つのベイに区分されるのに対して、
図1には例示的に、順々に位置する6つのベイのみが示されており、それらは、参照符号32~37が付されたベイ1~ベイ6である。さらなる記載として、対応するベイを有するフロートバスが開示されている独国特許出願公開第102006051637号明細書(DE 102006051637 A1)が参照される。
【0094】
スズ浴7’上で形成されるガラスリボン13の上方には、
図3からも容易に識別できるように、ガラスリボン13を機械的移動させるために、トップローラ12’の他に、さらなるトップローラ38~44が配置されている。
【0095】
参照符号32を有するベイ1の開始部までは、延伸または流動方向で、ツイール17の末端部からの距離が1.5mであり、参照符号35を有するベイ4の開始部までは、延伸または流動方向で、ツイール17の末端部からの距離が12mであり、それは、
図3のデカルト座標系のX方向にスケーリングされた説明からも読み取れる。
【0096】
図3からは、さらに、別法としてまたは付加的な、粘度を定義された方法で調整するための設備18の一形態が見て取れる。溶融ガラス8が、
図3には示されていない溶融窯2’からフロートバス炉9’へと通じる流路6’中に存在する。流路6’の隔壁45、46は、高温耐熱金属、例えば白金から形成されており、その高温耐熱金属は同じく、無機耐火材上の金属層として配置されていてもよい。隔壁45、46の温度の定義された調整により、ガラス8から熱を除去することができ、ガラスの温度に加えて粘度も定義された方法で調整できる。この実施形態においても、前記のセンシングユニット26が、好ましくはツイール17の近傍に配置可能である。
【0097】
前記では、熱成形設備47用に、フロート設備、特に、スズ浴7’を有するフロートバス炉9’を含む延伸設備を記載した。
【0098】
しかしながら、本発明はさらなる形態において、図には示されていないダウンドロー延伸設備、特にオーバーフロー・ダウンドロー・フュージョン延伸設備も含むことができ、かつ本方法は、フロート法のみならず、ダウンドロー法、特にオーバーフロー・フュージョン・ダウンドロー法をも含む。
【0099】
以下では、
図4に関し、この図は、フロートバス7’上に存在するガラス8またはガラスリボン13の粘度推移を、デカルト座標系のY方向としても指定されている中心線Mに沿って流動または延伸方向において示し、その際、ガラス8またはガラスリボン13のそれぞれの粘度ηを、Y方向の位置の関数として示す。
【0100】
図4には、Y方向でツイール17の上流およびスパウト11の上流にある位置に矢印48が示されている。Y方向でのこの位置は、好ましい実施形態では、ツイールのすぐ上流、つまり流動方向で見てツイール前端の直前にある。本開示において、特に粘度または温度に関して「ツイールの上流」に関する記載がなされる限り、その記載は、好ましい実施形態では、ツイールの前方のこの位置に関する。本開示において、特に粘度または温度に関して「スパウトの上流」に関する記載がなされる限り、その記載は、好ましい実施形態では、流動方向でスパウトのすぐ上流の位置に関する。
【0101】
矢印49は、Y方向において、流動または延伸方向でツイール17の後端に相当する、つまりツイール17のすぐ下流の位置でもある位置に存在し、この位置が、本明細書で開示される間隔および距離指定の基準である。矢印50は、Y方向で、そのツイール17後端まで1.5mの距離にあり、それゆえ、好ましい一実施形態では、流動または延伸方向で、ベイ1の開始部に相当する位置にある。矢印51は、Y方向で、ツイールの後端まで12mの距離にあり、この後端は、この好ましい実施形態では、流動または延伸方向で、ベイ4の開始部に相当する。
【0102】
前記の装置および設備を用いて、薄板ガラス基板を製造する、好ましくは薄板ガラス基板、特に筋目が減少した薄板ガラス基板を連続的に製造するための本発明による方法を実施できる。
【0103】
この方法では、溶融後でかつ熱成形前に、成形すべき、特に熱成形すべきガラス8または少なくとも部分的に成形されたガラス13の粘度ηを、得るべき薄板ガラス基板のために定義された方法で調整する。
【0104】
この、粘度ηの定義された方法での調整は、熱成形設備47への供給前、特にフロートバス炉9’への供給前に行い、ただし、特に、熱成形すべきガラス8の定義された冷却を、装置18を使って行う。
【0105】
粘度ηの調整は、液体ガラスを供給するためのリップストーン部またはインレットリップ部であるスパウト11の上流で行われ、特に、金属浴、フロートバス炉9’のスズ浴7’上への供給前に行われる。
【0106】
粘度の調整は、制御ゲート、つまりガラス流の処理量を制御するための部材、ツイール17の前でも行える。
【0107】
その際、成形すべきガラスの粘度は、溶融窯2’の流路端、つまり流路6’の末端部でかつツイール17の上流において、少なくともlg η/dPas=3.75である。
【0108】
ベイ1の開始部、つまり延伸方向でツイール17の下流1.5mまでの距離において、粘度は、好ましい一実施形態では少なくともlg η/dPas=5.25であり得、かつ/またはベイ4の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流12mまでの距離において、少なくともlg η/dPas=7.05であり得る。
【0109】
その際、成形すべきまたは少なくとも部分的に成形されたガラスの温度は、それに対して表面の筋目または長く伸びた山部に関する以下の測定およびその厚さが記載されるガラスにおいて、ツイールの上流では、少なくとも1000℃および最高で1100℃、および/またはベイ1の開始部、つまり延伸方向で1.5mまでの距離において、少なくとも850℃および最高で910℃、および/またはベイ4の開始部、つまり延伸方向でツイールの下流12mまでの距離において、少なくとも720℃および最高で760℃であり得る。その際、それぞれ、最高で10℃の最大温度偏差が存在した。
【0110】
特に好ましい一実施形態では、ツイールの下流1.5mまでの距離にわたる第1区間の粘度η1に対して次の等式が成り立つが、ただし、y1は、それぞれ、ツイールのすぐ下流の位置までの距離または間隔を表すため、ツイールのすぐ下流の位置では値がゼロである:
lg η1(y1)/dPas=(lg η01/dPas+a1(y1))
ここで、
0m≦y1≦1.5m
3.75≦lg η01/dPas≦4.5
a1(y1)=1.00/m×y1
である。
【0111】
この好ましい実施形態では、1メートルの単位長あたりの0m≦y1≦1.5mの範囲での粘度の変化は、特に好ましくはΔlg η/dPas/Δy=0.666/m+/-0.1/mであるが、しかしながら、0.334/m超でかつ0.8/m未満である値を有し、ただし、Δlg η/dPasは、この等式では、間隔範囲Δyでの粘度の変化を表す。
【0112】
さらなる好ましい一実施形態では、ツイールの下流12mの距離からツイールの下流16mまでの距離を有する第2区間の粘度η2に対して次の等式が成り立つが、ただし、y2は、それぞれ、ツイールのすぐ下流の位置までの距離を表すものとする:
lg η2(y2)/dPas=(lg η02/dPas+a2(y2))
ここで、
12m≦y2≦16m
7.05≦lg η02/dPas≦7.6
a2(y2)=0.788/m×(y2-12m)
である。
【0113】
すべての距離指定は、本開示において、それが、粘度および特に粘度η、η1、η2、またはガラス温度に関する限り、それぞれツイールまたは制御ゲートのすぐ下流の位置を起点に記載されており、それぞれ延伸または流動方向、つまりY方向で記載されている。その、ツイールのすぐ後方または下流の位置は、ツイールを有する溶融窯の実施形態では、流動方向で見て、ツイール17の背後側に相当する。
【0114】
粘度を定義された方法で調整するための設備18が溶融窯の一部を形成する第1の実施形態では、溶融窯2’の流路6’の末端部が、ツイールのすぐ上流に位置する。
【0115】
それぞれの粘度に関するデータは、本開示において、それぞれXおよびZ方向で見て、それぞれ少なくとも、ガラス8またはガラスリボン13の中央に対して当てはまる。X方向でガラス8またはガラスリボン13の中央に延びる該当する中心線Mを、
図3に例示的に示してある。
【0116】
前記の粘度は、薄板ガラス基板の熱成形設備において、1日当たりの処理量がガラス400t未満、好ましくは200t、特に好ましくは100tで、特に都合よく実現できた。
【0117】
薄板ガラス基板を、処理量が1日当たりガラス400t未満、好ましくは1日当たりガラス200t、特に好ましくは1日当たりガラス100tで熱成形した後に、良品ガラスの割合は、1日当たり、ガラス処理量全体の15%超であった。その際、良品ガラスとは、本明細書に記載される山部の最大高さH、つまり筋目の最大高さHが、10×10cm2の分析面のV字形の厚さ変動および反りを補正した、算術平均の平均値で、好ましくは延伸方向に対して垂直な熱成形されたガラスリボンの中央において、100nm未満であり、かつ山部の横方向長さがそれぞれ40mm未満であるガラス基板と理解される。
【0118】
本開示において、V字形の厚さ変動Kおよび反りVの影響が5%未満の値に軽減されている場合に、厚さおよび高さの測定値がV字形の厚さ変動および反りを補正したと見なされる。
【0119】
総じて、溶融体から構成されるガラス、特に、以下では薄板ガラス基板の表面および厚さの測定において示されており、かつ溶融窯2’から粘度を定義された方法で調整するための設備18へと進入するガラスが、装置18では、例えば1500℃の第1の温度で受容され、熱成形に入るために、例えば1050℃の第2の温度へと冷却され、次いでその温度で熱成形設備47へと移された。
【0120】
ただしその際、冷却は、少なくとも250℃、好ましくは300℃、特に好ましくは450℃であったが、500℃の冷却も装置18により可能であった。
【0121】
好ましいガラスの実施形態
本発明による方法では、特に本明細書に記載される装置において、以下に挙げるガラスを有利に使用できる:
1.ホウケイ酸ガラス
2.アルミノケイ酸ガラス
3.リチウムアルミノケイ酸ガラス。
【0122】
本明細書において開示する組成においては、記載されるいずれの値も、各組成に関して、異なる指定がない限り、本明細書中と同様に特許請求の範囲においてもそれぞれ重量%で示される。
【0123】
その際、当業者は、特に、以下の成分を含有するガラスをホウケイ酸ガラスと理解する(重量%):
SiO2 70~87
B2O3 7~25
Na2O+K2O 0.5~9
Al2O3 0~7
CaO 0~3。
【0124】
好ましい第1のホウケイ酸ガラスは、以下の組成を有し、
SiO2 70~86重量%
Al2O3 0~5重量%
B2O3 9.0~25重量%
Na2O 0.5~5.0重量%
K2O 0~1.0重量%
Li2O 0~1.0重量%
を含む。
【0125】
好ましい第2のホウケイ酸ガラスは、優れた熱強化特性を有するアルカリホウケイ酸ガラスであり、
SiO2 78.3~81.0重量%
B2O3 9.0~13.0重量%
Al2O3 3.5~5.3重量%
Na2O 3.5~6.5重量%
K2O 0.3~2.0重量%
CaO 0.0~2.0重量%
を含有する。
【0126】
2.アルミノケイ酸ガラスは、好ましくは以下の組成(重量%)を有し得る:
SiO2 55~65
Na2O 12超17以下
Al2O3 16.5~20
K2O 2~4.4
MgO 3.9~10
ZrO2 0~5
ZnO 0~4
CaO 0~4
Na2O+K2O+MgO+ZnO+CaO 15~28
SnO2 0~1
TiO2+CeO2 1以下。
【0127】
3.リチウムアルミノケイ酸ガラスは、以下の成分を含有する組成を有し得る(重量%):
SiO2 60~75
Al2O3 10~28
Li2O 3~15。
【0128】
有利には、モル%で
60~70 SiO2
10~13 Al2O3
0.0~0.9 B2O3
9.5~15 Li2O
8.2~<12 Na2O
0.0~0.7 K2O
0.0~0.2 MgO
0.2~2.3 CaO
0.0~0.4 ZnO
1.3~2.6 ZrO2
0.0~0.5 P2O5
0~0.1のFe2O3、好ましくは0.0003~0.100のFe2O3
0.0~0.3 SnO2
0~0.2のCeO2、好ましくは0.0004~0.200のCeO2
から構成される組成物を含むリチウムアルミノケイ酸ガラスも使用できるが、
ただし、好ましくは、
- 該リチウムアルミノケイ酸ガラスは、少なくとも80GPaのヤング率を有し、
- 540℃未満のガラス転移温度Tgおよび/または1150℃未満の加工温度を有し、
- フロート法による成形に適切であり、かつ
- 化学強化および/または熱強化可能であるため、EN 1288-5に準拠するダブルリング法を用いて測定した場合に、少なくとも550N/mm2の曲げ強さを有するものとする。
【0129】
本発明の好ましい一実施形態によれば、例えば、特に自動車用の合わせガラスにおいて、第2のガラス板は、4.6重量%~5.4重量%のLi2O含有量、および8.1重量%~9.7重量%のNa2O含有量、および16重量%~20重量%のAl2O3含有量を有するリチウムアルミニウムシリケートガラスを有する、本発明による方法で熱成形された薄板ガラス基板を含む。
【0130】
本発明のさらなる一実施形態によれば、例えば、特に自動車用の合わせガラスにおける第1のガラス板は、4.6重量%~5.4重量%のLi2O含有量、および8.1重量%~9.7重量%のNa2O含有量、および16重量%~20重量%のAl2O3含有量を有するリチウムアルミニウムシリケートガラスを含む。
【0131】
本発明のさらなる一実施形態によれば、合わせガラスにおいて薄板ガラス基板として存在する第2のガラス板は、以下の成分:
58~65重量%のSiO2
16~20重量%のAl2O3
0.1~1重量%のB2O3
4.6~5.4重量%のLi2O
8.1~9.7重量%のNa2O
適宜、0.05~1.0重量%のK2O
0.2~2.0重量%のCaO
2.5~5.0重量%のZrO2
を含む。
【0132】
その際、適宜、成分SnO2、CeO2、P2O5およびZnOのうちの1つまたは複数が、全体として0重量%~2.5重量%の分率で含まれていてもよい。
【0133】
薄板ガラス基板、特に第2のガラス板用のさらなる好ましい一組成範囲は、
60~62重量%のSiO2
17.5~19.5重量%のAl2O3
0.5~0.7重量%のB2O3
4.8~5.2重量%のLi2O
8.5~9.5重量%のNa2O
0.2~0.5重量%のK2O
0.5~1.2重量%のCaO
3.2~3.8重量%のZrO2
を含む。
【0134】
適宜、成分SnO2、CeO2、P2O5およびZnOの1つまたは複数が、全体として0.25重量%~1.6重量%の分率で含まれていてもよい。
【0135】
図15は、合わせガラス板59を縮尺どおりではなく図示したものであり、その合わせガラス板は、第1のガラス板60、第1のガラス板60と第2のガラス板62との間に配置されておりそれらを結合するポリマー層61、および最終的には第2のガラス板62を含む。
【0136】
しかしながら、総じて、本明細書に図示される例示的実施形態に制限されることなく、合わせガラス板が2枚を超えるガラス板を含むことも可能である。例示的には、特に高い機械的負荷が見込まれ、相応して、合わせガラス板の特に高い強度が目指される場合に、このことが該当し得る。
【0137】
ポリマー層61は、少なくとも0.5mmから最高で1.7mmの間の厚さを有する。ポリマー層は、フィルム、例えば、EVAおよび/またはポリビニルブチラールを含むフィルムとして、または複数のフィルムを含む層として、ないしは多層フィルムとして形成されていてもよい。しかしながら、ポリマー層を、2枚のガラス板60、62のうちの一方へのモノマーの施与により、および重合反応の開始によりイン・サイチュでポリマー層を形成することも可能である。総じて、ポリマー層61が複合フィルムから形成されていることも可能である。特に、フィルムは、PETおよび/またはPEも含み得る。多層フィルムの場合、各層は異なる組成および物理的特性を有してもよい。総じて、フィルム、または多層フィルムの層が、Low-E(低放射)コーティング、ないしはいわゆるソーラコントロールコーティングを有してもよい。
【0138】
さらに、図示される例示的実施形態では、第1のガラス板60が、第2のガラス板62よりも厚く形成されている。これは、例えば、第1のガラス板がガラス板62よりも低い固有強度を有するため、合わせガラス板59の全体として十分な強度を保証するために第1のガラス板60の厚さを相応に大きくさせる場合に有利である。
【0139】
第2のガラス板64は、好ましくは、少なくとも0.3mmから最高で1.5mmの間の厚さを有し、本明細書に記載される薄板ガラス基板54を含み得るか、またはその薄板ガラス基板からなり得る。単に例示的に、
図15中でのみ薄板ガラス基板54の厚さに参照符号Dを付すが、その際、本明細書に記載される、薄板ガラス基板54の実施形態すべてに対する開示としても示されている。
【0140】
第1および第2のガラス板60、62のガラスは、好ましくは、第1および第2のガラス板の両ガラスが、107dPas~1010dPasの間の粘度範囲において同一粘度を有する各温度が、互いに最高で50℃、好ましくは最高で30℃、特に好ましくは最高で20℃、とりわけ好ましくは最高で10℃しか異ならないように互いに調整されている。
【0141】
好ましくは、第2のガラス板62が、化学強化されたガラス板として、好ましくは少なくとも40μmの厚さの圧縮応力領域を有する化学強化ガラス板として存在し、ただし、圧縮応力は、少なくとも150MPaおよび最高で900MPaである。
【0142】
本発明のさらなる一実施形態によれば、圧縮応力が、最高で800MPa、好ましくは最高で600MPaである。そのような圧縮応力は、特に、硝酸ナトリウム-硝酸カリウム混合物を用いた強化により得られる。
【0143】
本発明のさらなる一実施形態によれば、圧縮応力が、最高で500MPa、好ましくは最高で400MPa、特に好ましくは最高で300MPa、とりわけ好ましくは最高で250MPaである。そのような圧縮応力は、特に、純硝酸ナトリウム溶融体を用いた強化により達成され得る。
【0144】
図16に示される本発明の一実施形態によれば、合わせガラス板59が、曲げ合わせガラス板として、特に自動車用ガラスとして存在するため、第2のガラス板62の外向き側が凹面に湾曲していることになる。湾曲を生じさせるためのこの成形では、第2のガラス板62の本発明による薄板ガラス基板が、厚さDのわずかな厚さ変動を受ける場合がある。
【0145】
図15中の合わせガラス板59同様に
図16中で示される合わせガラス板59も、特に自動車用ガラスとしての使用時に、特に、陸上、水上または水中および空中で運転される車両、特にモータ駆動車両用のヘッドアップディスプレイにおいて使用される場合、ヘッドアップディスプレイ用の反射面65を形成できる。合わせガラス板59のそのような使用においては、第1のガラス板60が車両の外側を向き、第2のガラス板62が車両の内側を向いていてもよい。その際、ヘッドアップディスプレイ用の反射面65は、その場合は車両の内部空間の方を向いた、第2のガラス板62の表面63上に位置し得る。その際、反射面65は、表面63全体にわたって延在するか、さらには表面63の一部領域にわたってのみ延在してもよく、その部分領域は、
図15および16中で、例示的に両向き矢印66で示されている。ヘッドアップディスプレイは、当業者にはよく知られているため、さらなるより詳細な説明は不要である。
【0146】
本発明のさらなる一実施形態によれば、第2のガラス板62が、0.7mmの厚さにおいて、45°以上、特に50°以上、特に好ましくは55°以上のゼブラ角(Zebrawinkel)を有する。ゼブラ角および以下で言及するリングオン曲げ強さに関しては、援用により同じく本出願の主題となる、優先権の基礎となる出願DE 102016125488が参照される。
【0147】
本発明のさらなる一実施形態によれば、第2のガラス板62が、150MPa超、特に250MPa超、好ましくは300MPa超、さらに好ましくは400MPa超、特に好ましくは500MPa超、とりわけ好ましくは600MPa超、および900MPa未満のリングオンリング曲げ強さを有する。
【0148】
さらに、合わせガラス板59が、さらなる一実施形態によれば、第2のガラス板62が0.7mmの厚さの場合、840nmの波長において91.5%超、560nmの波長において91.5%超、および380nmにおいて90%超の透過率を有するように形成されている。それは、すでに前記したように、ガラス板59を通した良好な眺めの実現にとって特に有利であるため、それによって、乗客安全性がさらに向上することになる。
【0149】
合わせガラス板59は、好ましくは、第1のガラス板60および第2のガラス板62のガラスが、107dPas~1010dPasの間の粘度範囲において同一の粘度値を有する各温度が、それぞれ同一の粘度においては、互いに最高で50℃、好ましくは最高で30℃、特に好ましくは最高で20℃、とりわけ好ましくは最高で10℃しか互いに異ならないように仕上げられている。
【0150】
本発明の改めてさらなる一実施形態によれば、第2のガラス板62が、実質的には、リチウムイオンをナトリウムイオンで交換することにより化学強化されて存在する。ガラス板が「実質的には、リチウムイオンをナトリウムイオンで交換することにより強化された」と見なされるのは、強化の実質的な分率、つまり生じた強化の少なくとも80%が、リチウムイオンの、ナトリウムイオンでの交換に起因する場合である。特に、強化がその交換によってのみ得られる場合、ガラス板は、実質的に、リチウムイオンをナトリウムイオンで交換することにより強化されている。
【0151】
図16は、特に自動車用ガラスであり得る合わせガラス板59の実施形態を示す。その際、ここでも同様に、第1のガラス板60、ポリマー層61および第2のガラス板62が、合わせガラス板59に含まれている。しかし今回は、合わせガラス板59が湾曲して形成されている。その際、図示されるように、個々のガラス板60、62の厚さおよびポリマー層61の厚さが、合わせガラス板59の中央から周縁部に向かって小さくなることが可能である。しかしながら、個々のガラス板60、62の厚さおよびポリマー層61の厚さもそれぞれ一定であることも可能であるし、合わせガラス板59を構成する層60、61、62の個々の層のみが、ガラス板59の横断面にわたって変化する厚さを有することも可能である。例えば、層の1つまたは複数が、V字形に形成されて存在してもよい。
【0152】
ここでは、第2のガラス板62の外向き表面63が凹面に湾曲しているように、合わせガラス板59が形成されている。
【0153】
総じて、本明細書に図示される例に制限されることなく、第1のガラス板60の外向き表面64が凹面に湾曲しているように、合わせガラス板59が形成されていることも可能である。
薄板ガラス基板、特に合わせガラスの第2のガラス板用の改めてさらなる好ましい一組成範囲は、
61~62重量%のSiO2
17.5~18.5重量%のAl2O3
0.5~0.7重量%のB2O3
4.9~5.1重量%のLi2O
8.8~9.3重量%のNa2O
0.2~0.5重量%のK2O
0.5~1.2重量%のCaO
3.2~3.8重量%のZrO2
を含む。
【0154】
その際、適宜、成分SnO2、CeO2、P2O5およびZnOの1つまたは複数が、全体として0.5重量%~1.0重量%の分率で含まれていてもよい。
【0155】
本発明のさらなる好ましい一実施形態によれば、薄板ガラス基板、特に合わせガラスの第2のガラス板は、モル%で、以下の組成
60~70 SiO2
10~13 Al2O3
0.0~0.9 B2O3
9.6~11.6 Li2O
8.2以上10未満 Na2O
0.0~0.7 K2O
0.0~0.2 MgO
0.2~2.3 CaO
0.0~0.4 ZnO
1.3~2.6 ZrO2
0.0~0.5 P2O5
0.003~0.100 Fe2O3
0.0~0.3 SnO2
0.004~0.200 CeO2
を含む。
【0156】
その際、好ましくは、リチウムアルミニウムシリケートガラスの組成に関して、以下の関係が成り立つ:
(Li2O+Al2O3)/(Na2O+K2O)>2、
0.47<Li2O/(Li2O+Na2O+K2O)<0.7
0.8<CaO+Fe2O3+ZnO+P2O5+B2O3+CeO2<3
ただし、6つの酸化物のうち少なくとも4つが、ガラス組成物に含まれている。
【0157】
さらに好ましくは、その際、リチウムアルミニウムシリケートガラスが、540℃未満のガラス転移温度Tgおよび/または1150℃未満の加工温度を有する。
【0158】
本発明による方法において得られた薄板ガラス基板を、z方向でのその寸法およびその光学特性の点で測定後に分析および算出したところ、従来の方法と比べて、筋目の減少が認められた。
【0159】
その際、第1の測定系列では、理想平面薄板ガラス基板からの厚さ偏差を求めるための、薄板ガラス基板の厚さ測定としての両主表面の測定を行い、第2の測定系列では、薄板ガラス基板54の上側主表面上の山部または筋目の測定を行った。
【0160】
したがって、第1の測定系列のデータは、光が上側主表面と下側主表面とを通り抜ける薄板ガラス基板の光学効果を捉え、その効果を、さらに、その結果生じる両面によって形成される光学的屈折力に基づいても示す。これにより、例えば、薄板ガラス基板54の後方に配置された、例えば自動車の周辺のセンシングによる検知に利用されるセンシング設備用の光線路への影響を示すことができる。
【0161】
第2の測定系列のデータは、片方の主表面のみの光学効果を捉え、それは、例えば、透過光中で使用される薄板ガラス基板54において、そのガラス基板が、例えば、片側で平面研削および研磨されているか、または片側が、同じ屈折率を有する材料に、例えば合わせガラス板中に埋め込まれている場合に生じる。
【0162】
これに関して、以下では、第1の測定系列、つまり理想平面薄板ガラス基板からの厚さ偏差を求めるための両主表面の測定を説明するために、まず
図5に関連づける。
図5は、上側主表面と下側主表面との間の光学的距離、つまりZ方向での寸法を測定するための測定領域の図解を示す。レーザ干渉計を使って、特に位相シフトレーザ干渉計を使って、薄板ガラス基板54の上側主表面53全体にわたって延在する測定を行った。
【0163】
薄板ガラス基板またはガラス基板の主表面と呼ばれるのは、通常、それぞれ最大の面状広がりを有する、基板の向かい合う両面である。
【0164】
さらに、以下で記載する評価を行った分析領域52が示され、その評価結果は、表1に示してある。分析領域52には、例示的に、輪郭線VL1およびVL2も示し、これらの輪郭線は、理想平面薄板ガラス基板54に対する反りVを大まかにのみ図示し、かつ簡潔にするために著しく誇張して示す。この種の反りVは、理想平面薄板ガラス基板54の主要平面に対して、典型的には正または負のZ方向に盛り上がり、延伸またはY方向に対称的に、特に中心線Mに対して対称的に形成されている場合もあるし、その縦方向と同じ方向に、延伸またはY方向に延在する場合もある。以下の測定技術上の説明ゆえ、輪郭線VL1およびVL2は、例示的に分析領域52に対してのみ示されているものの、その種の反りは、薄板ガラス基板54全体にわたっても延在し得る。その際、反りVの値は、反った薄板ガラス基板の主表面上の一点の、理想平面薄板ガラス基板の主表面上の対応する一点に対する最大間隔である。
【0165】
薄板ガラス基板を、厚さ偏差の各測定に先立ち、本発明による方法の実施後に、ガラスリボン13から角形基板の形で個別化した。厚さ偏差の測定は、
図5に示された形で、300mmの直径を有する円形測定面上で行った。
【0166】
比較のために、従来の薄板ガラス基板も同じく、ガラスリボンから同様に個別化し、以下の測定および評価を行った。その際、測定されるすべての薄板ガラス基板が、熱成形後のガラスリボンから、ガラスリボンの、延伸方向に対して垂直な中央から、つまりx方向でのガラスリボン13の中央から取り出されるように注意した。
【0167】
その際、デカルト座標系のZ方向で主表面53の測定を行い、薄板ガラス基板54は、それぞれ、その主表面で、X-Y平面に対して平行に平面土台上に載っており、それは、本明細書で開示されるすべてのさらなる測定にも該当した。
【0168】
理想平面ガラス基板からの厚さ偏差の測定を行い、その測定は、表1中にも厚さ変動Dm/mとして示してあり、その際、理想平面ガラス基板に関して、上側主表面と下側主表面との間の光学的距離の差異を測定することにより、両主表面のz方向での山部の測定を行った。
【0169】
第1の測定系列の、両面の山部の厚さにより形成される、理想平面基板からの厚さ偏差、つまり厚さ変動、さらには異常拡張(varikos)厚さ変動のこの測定を、ZYGO社のレーザ干渉計(位相シフト干渉計)を用いて行った。
【0170】
レーザ干渉計は、300mmの開口を有するフィゾー干渉計である。その際、30″の測定スポット(円形)を有するZygo Verifireシステムを使用した。
【0171】
QPSI(商標)rapid mechanical phase-shiftingモードで測定し、カメラ設定は1024×1024であり、XおよびX方向においてそれぞれ1024個の測定点に相応した。
【0172】
Z方向での測定不確かさは、<30nmであり、633nmの波長におけるλ/20に相当した。
【0173】
XおよびY方向での横方向不確かさは、0.31mmであった。
【0174】
ピストン・ゼルニケの除去を作動させ、データは、V字形厚さ変動Kおよび反りVの影響を抑制するためにのみ、ならびにカットオフが40mmのガウシアンスプラインハイパスフィルタを装備したZygo Mxソフトウェア(バージョン7.0.0.15)の使用下に使用した。スプライン・ビートン係数およびスプライン・テンションコントロールは、デフォルトセッティングに設定した。
【0175】
V字形厚さ変動Kならびに反りVの影響は、それぞれの厚さ変動Dm/mの測定の測定結果に関する前記のフィルタリングにより、5%未満の値に下げることができた。これにより、各測定位置での厚さ変動Dm/mの測定からV字形厚さ変動および反りを補正できた。
【0176】
この種の厚さ測定、さらには表面測定を光学的屈折力に変換する方法をより良く理解するために、以下の説明を提供する。
【0177】
z方向での高さHの山部を有するガラス、特に薄板ガラス基板の表面の光学的屈折力P(x、y)は、x方向に延びる直線に沿って、それぞれ固定値yにおいて特定した場合、
【数1】
となり、
ただし、
nは、測定した薄板ガラス基板の屈折率であり、それぞれ、測定した薄板ガラス基板の場合、1.525の値を有し、
z′(x)およびz″(x)は、高さz(x)のx方向での一次導関数および二次導関数であり、
z(x)は、位置xにおけるz方向での高さHである。
【0178】
さらに、薄板ガラス基板54の両主表面の全屈折力に関しては、
【数2】
が成り立ち、
ここで、
P
gesamt(全体)(x)は、位置xにおける薄板ガラス基板の両主表面の全屈折力であり、
P
top(x)は、位置xにおける薄板ガラス基板の上側主表面の屈折力であり、
P
bottom(x)は、位置xにおける薄板ガラス基板の下側主表面の屈折力である。
【0179】
使用した厚さ測定の方法により位置yでのPgesamt(全体)(x)を、および以下で記載する、フーリエ干渉計を使用した第2の測定系列の方法により、位置yにおける薄板ガラス基板54の、値ztop(x)としての上側主表面53のみならず値zbottom(x)の下側主表面も測定でき、それらの屈折力Ptop(x)およびPbottom(x)を求め、それらから、薄板ガラス基板54の全屈折力Pgesamt(全体)(x)を示すことも、さらには、薄板ガラス基板54の両主表面の単に片側の屈折力Ptop(x)またはPbottom(x)のみを示すこともできた。
【0180】
その他の点では、つまり山部以外は理想平面と仮定される薄板ガラス基板54の厚さの影響は、特に、薄板ガラス基板内の光学的距離が、光学的屈折力に対してわずかな影響しか有さなかったことからも、それぞれ無視できた。
【0181】
したがって、それらの測定から、それぞれ、以下で記載する第2の測定系列においてX方向の線形測定走査を行った位置yでは、異常拡張変動とも呼ばれる、薄板ガラス基板の厚さ変動として、
【数3】
が得られ、ここで、
z
bottom(x)は、位置xにおける薄板ガラス基板の下側主表面までの距離であり、
z
top(x)は、位置xにおける薄板ガラス基板の上側主表面までの距離であり、
D
Glas(ガラス)は、理想平面平行と想定される薄板ガラス基板の、位置xにおける厚さである。
【0182】
ガラスリボンの中央に由来する測定された薄板ガラス基板の、本明細書に記載されたフィルタリングに基づいて、V字形厚さ変動Kおよび反りVの影響を低下させ、それによってその影響を補正できた。
【0183】
このようにして、以下で記載する第2の測定系列の、フーリエ干渉計を使用して測定した測定値から求められたPtop(x)、Pbottom(x)の値、および第1の測定系列の白色光干渉計、特にZygo白色光干渉計を使用して測定されたPgesamt(全体)(x)は、薄板ガラス基板の光学性能、特に達成可能な分解能、および光学系内で得られ得るコントラストに関して、従来のシャドウキャスティング法が成し得たよりも著しく正確なデータである。
【0184】
このことは、特に、本発明による薄板ガラス基板が、陸上、水上または水中および空中で運転される車両用のフロントガラス投影設備、特にヘッドアップディスプレイの部材を形成する場合、またはその薄板ガラス基板後方に、そのような車両の周辺を検知するための光学センサが配置されている場合に当てはまる。
【0185】
それらの測定系列では、それぞれ、以下の組成
60~62重量%のSiO2
17.5~19.5重量%のAl2O3
0.5~0.7重量%のB2O3
4.8~5.2重量%のLi2O
8.5~9.5重量%のNa2O
0.2~0.5重量%のK2O
0.5~1.2重量%のCaO
3.2~3.8重量%のZrO2
のガラスを有する薄板ガラス基板54を使用した。
【0186】
このガラスでは、成分SnO2、CeO2、P2O5およびZnOの1つまたは複数が、全体として0.25重量%~1.6重量%の分率で含まれていることが可能であった。
【0187】
ここでの測定値はx方向で測定され、y方向での値を取得するために、それぞれ1行ずつ、x方向に平行に延在する並置するx方向の測定値を並べたため、その際、1つのy値の行ごとに、その行に帰属する複数のx値が得られた。
【0188】
前記の測定でのこのライン・バイ・ライン走査により、薄板ガラス基板54の全厚さ偏差を、x方向同様にy方向でも取得できた。以下の表1で評価した、
図5の正方形分析領域52は、その際、18×18cm
2の大きさを有した。
【0189】
それは、主表面53の二次元画像へと組み立てられた一次元近似である。しかしながら、この近似は正当化されるが、なぜなら、うねりおよび強い湾曲は、それぞれ延伸方向に対して垂直、つまりX方向にしか生じなかったため、同じく、それに応じて捕捉できたためである。その縦方向と同じ方向で、ほぼ延伸方向、つまりY方向に延在する山部、つまり筋目の構造も、同じく
図6から見て取れるように、この近似を許容した。
【0190】
例えば、シャドウキャスティング法において平行光の偏角を測定する従来の方法に対しても、本方法、特に第2の測定系列の方法を用いて対応する値を提供するため、およびその値を、例えば角度の分で計算するために、その偏角を、ここに存在する測定値を用いて、例えば、本明細書において開示する、フーリエ干渉計を使用した第2の測定系列の方法により、以下のように、それぞれ薄板ガラス基板の主表面の1つに対して特定できる。次いで、偏角は、既存の値から、以下の式により、角度の分で算出される。
【数4】
この偏角は、実質的に従来の測定方法に相当し、したがって、この値も、前記の測定・分析方法により提供され得る。
【0191】
図6には、例示的に、第2の測定系列において、フーリエ変換白色光干渉計、FRT干渉計を用いて得られた、前記の薄板ガラス基板54の上側表面、つまり主表面53に対する任意単位での測定値を斜視図で示す。
【0192】
この図から、薄板ガラス基板54の主表面53上に、ほぼ法線方向に、つまりZ方向に盛り上がり、かつその縦方向長さと同じ方向で、ほぼ延伸方向、つまりY方向に延在する山部、特に長く伸びた山部が形成されたことが確かに読み取れる。この、筋目とも呼ばれる長く伸びた山部においては、Y方向の縦方向長さが、それぞれの山部のX方向の横方向長さの、それぞれ2倍超、特に3倍超、通常は5倍超であった。この、筋目とも呼ばれる山部には、
図6中で参照符号55~58が付されている。山部のそれぞれの横方向長さの模範として、山部57のx方向の横方向長さQに両向き矢印Qを付して示し、山部の縦方向に対して垂直な、つまり山部、またはその山部によって形成される筋目の縦方向に対して横向きの最大長さを表す。
【0193】
測定面または分析面52上のすべてのさらなる点の高さ測定に関しても、例示的に、位置y=0、x=x
1における筋目57または山部57の、両向き矢印で示される高さHが、z=Hの値で記載されている。この高さHは、薄板ガラス基板54の主表面53の理想的平坦面に対して、デカルト座標系の位置y=0で測定された高さz
top(x)に相当する。理想的平坦面は、
図6中で、位置y=0に対してX方向に基準線O
plとして示されている。
【0194】
さらに、参照符号KでV字形厚さ変動を示し、参照符号Vで、理想的平坦面に対する反りを示す。
【0195】
筋目を形成するこの山部は、以下で、第2の測定系列に関してさらに詳細に説明されるように、Z方向の高さHを有し、この高さは、V字形の厚さ変動および反りを補正した、
図11の10×10cm
2の分析面52にわたる算術平均の平均値で、好ましくは熱成形されたガラスリボンの中央において延伸方向に対して垂直に、つまりX方向に測定して、測定されたすべてのケースで、100nm未満であった。
【0196】
測定した薄板ガラス基板54の特に好ましい一実施形態は、しかも、V字形の厚さ変動および反りを補正して、平均で90nm未満、しかも80nm未満である、山部のZ方向での高さHを有した。
【0197】
厚さ変動とも呼ばれる厚さ偏差の平均値を求めるために、同じく、
図5の18×18cm
2の分析面52全体にわたる、前記のようにフィルタリングされた測定値の算術平均を行った。
【0198】
前記の第1の測定系列の方法を用いて、以下の表1に示される薄板ガラス基板54の厚さ変動または厚さ偏差に関する測定値を得た。
【0199】
【0200】
前記の表1中では、10進指数が、それぞれEの値として示されており、簡潔にするため、例えば、係数×10-9に対してE-9を、係数×10-3に対してE-3を使用した。
【0201】
光学的屈折力Pgesamt(x)として、前記の表中ではその用語をOpt.Powerと略記し、それにより、薄板ガラス基板の両主表面の位置xでの全屈折力を示した。
【0202】
前記の表1ならびにさらなる明細書および特許請求の範囲においては、下付き文字mは、それぞれ、その文字で記される各値が、分析領域全体にわたってX方向に算術平均されたことを表す。
【0203】
表1および2中で、それぞれ旧薄板ガラスと記された値は、表1および2中で新規薄板ガラスと記された本発明による薄板ガラス基板と同じガラス組成を有する従来の薄板ガラス基板において得られた。
【0204】
この表から、前記のようにフィルタリングされ算術平均された山部または筋目の厚さの値が、著しく低下したということが読み取れる。つまり、例えば、ガラスリボン13の中央では(X方向、つまり流動方向に対して垂直に見て)、102×10-9mの平均値から69.7×10-9mの値への低下が認められる。
【0205】
この表1からは、明らかに低下した算術平均傾斜値(ΔD/Δx)m/(m/mm)も読み取れ、それは、偏角に関する前記の等式により、明らかに低下した平均偏角ももたらす。光学的屈折力の測定値および分析値に対して同じことが当てはまる。
【0206】
前記のようにフィルタリングされた測定のこれらの平均値から、97.5%分位数として、測定点の97.5%が、本発明の方法により熱成形された薄板ガラス基板の場合187.8nm未満、および従来のように熱成形された薄板ガラス基板の場合282.4nm未満の異常拡張厚さ偏差、つまり両主表面の全体的な厚さ偏差を有したことが分かった。
【0207】
(ΔD/Δx)mに関しては、従来の薄板ガラス基板には、測定点の97.5%に対して、69.7×10-9/(m/mm)未満の値が得られ、本発明による薄板ガラス基板には42.3×10-9m/mm未満の値が得られた。
【0208】
屈折力に関しては、従来の薄板ガラス基板については、測定点の97.5%に対して、前記のようにフィルタリングされた、つまりV字形厚さ変動Kおよび反りVの影響を補正して平均をとった、282.4mdpt未満の値が得られ、本発明による薄板ガラス基板については、それに応じて、63.0mdpt未満の値が得られた。
【0209】
図7~10は、具体化するために、さらなる結果をグレースケール図の形で示し、それぞれ、
図7中では、レーザ干渉計を用いて得られた、本発明による薄板ガラス基板54の表面データのグレースケール図を示し、その表面データでは、筋目の厚さ値が濃淡値として識別でき、
図8中では、レーザ干渉計を用いて得られた、薄板ガラス基板54の厚さデータ、つまり異常拡張表面データのX方向での導関数のグレースケール図を示し、その表面データでは、微分値が濃淡値として識別できる。
【0210】
図9は、レーザ干渉計を用いて得られた、従来の薄板ガラス基板の表面データの光学的屈折力のグレースケール図を示し、
図10は、本発明による基板の光学的屈折力のグレースケール図を示し、その場合、屈折力が同じくそれぞれ濃淡値として識別できる。
【0211】
本発明による薄板ガラス基板の光学的屈折力が、従来の薄板ガラス基板の光学的屈折力よりもはるかに低いことが明らかに見て取れる。
【0212】
前記の値を、第2の測定系列での、白色光干渉計、特にフーリエ変換白色光干渉計、FRT干渉計を用いて行った第2の測定方法で補い、その方法を、以下で、
図11~14に関連づけて説明する。
【0213】
図11は、
図5と類似して、正方形薄板ガラス基板54の上側主表面全体にわたって延在する18×18cm
2の大きさの測定領域または分析領域52の図解を示す。
【0214】
図5の図示とは異なり、
図11で示す測定領域52には、18cm×18cmの寸法および10cm×10cmの分析領域を有する正方形の薄板ガラス基板を使用した。
図11の分析領域52中には、例示的に、輪郭線K
L1、K
L2、およびK
L3も示してあり、これらの輪郭線は、理想平面薄板ガラス基板54に対する、薄板ガラス基板54のほぼV字形の厚さ変動Kを大まかにのみ、かつ簡潔にするために著しく誇張して示す。この種のほぼV字形の厚さ変動Kは、理想平面薄板ガラス基板54の主要平面に対して、典型的には正または負のZ方向で盛り上がり、かつその縦方向と同じ方向で、延伸またはY方向に延在する。以下の測定技術上の説明ゆえ、輪郭線K
L1、K
L2およびK
L3は、例示的に分析領域52に対してのみ示されているものの、その種のV字形山部は、薄板ガラス基板54全体にわたっても延在し得る。その際、V字形厚さ変動Kの値は、V字形厚さ変動を有する薄板ガラス基板54の主表面上の一点の、理想平面薄板ガラス基板の主表面上の対応する一点に対する最大間隔である。
【0215】
従来の薄板ガラス基板の測定には、第1の測定系列同様に第2の測定系列においても、それぞれ、本発明により熱成形された薄板ガラス基板用と同じ組成、つまり同じガラスおよび同じ寸法を有する薄板ガラス基板を使用した。
【0216】
第2の測定系列では、Fries Research & Technology GmbH、Friedrich-Ebert-Str.、D-51429 Bergisch Gladbach製のフーリエ変換干渉計Microprof(登録商標)(MPR 200 30型、FRT CWL 600μmセンサ使用)を使用した。
【0217】
その際、以下の条件が存在した。
【0218】
測定は、18×18cm2の面積を有する正方形面上で行ったが、ここで記載する測定値に関しては、分析領域52内のみを評価した。
【0219】
500スキャン、つまりY方向に互いに並ぶライン・バイ・ライン測定を、それぞれ500の点を利用してX方向での0.36mmの点間隔で行った。Y方向でのラインのオフセットは、それぞれ、0.36mmの間隔を有した。評価したのは、例示的に、0.7mm厚の薄板ガラス基板の分析領域52内の上側面、つまりその上側主表面53の分析領域52のみであった。
【0220】
走査ユニット(gantry design)は、300mm/sの可能最高速度において、測定速度として15mm/sの速度で運転した。横方向分解能は、XおよびY方向で<2μmであり、垂直方向、つまりZ方向での分解能は6nmであった。
測定範囲は、XおよびY方向に、180×180mmを網羅し、500のラインを測定し、測定したライン間の間隔は、360μmであった。
その際、ラインごとに500の測定点を捉え、測定点間の間隔はそれぞれ360μmであった。
【0221】
各測定ラインに沿った個々のスキャンの測定方向は、それぞれ、延伸方向に対して垂直、つまりX方向に延びていた。
【0222】
センサと測定面との間の間隔は、それぞれ測定された薄板ガラス基板の0.7mmの厚さにおいて、およそ3.74mmであった。
高周波ノイズを抑制するために、得られた値を、ラインごとに平滑化した。
【0223】
それぞれ、薄板ガラス基板の反りVおよびV字形厚さ変動Kの影響を抑制するために、フレキシビリティパラメータλ=5を有する3次スプライン、およびフレキシビリティパラメータλ=10000を有する3次スプラインを使用し、それは、長さが40mmのハイパスフィルタに相当した。そのために、SAS JMP(商標)プログラムを使用した。
【0224】
双方のフィルタリングされたラインを、互いにz(x,λ=5)-z(x,λ=10000)差し引いて、実質的に、各測定値のノイズを除去した、山部に関する事実上の測定値z(x)のみを提供するバンドパスフィルタを得て、これはおよそ7~35mmの3dBバンドパス長を有するバンドパスフィルタに相当した。
【0225】
V字形厚さ変動Kならびに反りVの影響は、それぞれの高さHの測定の測定結果に関する前記のフィルタリングにより、5%未満の値に下げることができた。これにより、各測定位置での高さの測定からV字形厚さ変動および反りを補正できた。
【0226】
10×10cm2の寸法を有する分析領域52を同じく、前記のように得られた上側主表面53のデータをそれぞれ算術平均するための基礎とした。
【0227】
図12は、FRT干渉計を用いて得られた、本発明による薄板ガラス基板54の表面データのグレースケール図を示し、その表面データでは、筋目の厚さ値が濃淡値として識別できる。
【0228】
従来の薄板ガラス基板と本発明による薄板ガラス基板との比較が、
図13および14から読み取ることができ、
図13は、FRT干渉計を用いて得られた、従来の薄板ガラス基板の表面データの光学的屈折力のグレースケール図であり、
図14は、FRT干渉計を用いて得られた、本発明による薄板ガラス基板54の上側主表面の表面データの光学的屈折力のグレースケール図である。
【0229】
その際、以下の表2に挙げる結果が、分析面52にわたって平均された算術平均として得られた。
【表2】
この表において、
Z
m:薄板ガラス基板54の上側主表面53上の10×10cm
2の分析面52上の山部の高さHのフィルタリングされた、つまりV字形の厚さ変動および反りを補正した値の算術平均、
(ΔZ/Δx)
m:10×10cm
2の分析面上の筋目の表面うねりの延伸方向に対して垂直な導関数の算術平均、
(Opt. Power)
m、片側:10×10cm
2の平均算出面上で算出された上側主表面53の光学的屈折力の算術平均、
(角度)
m:10×10cm
2の分析面にわたって算術平均された、主表面53上への垂直入射光線において算出された偏角の算術平均。
【0230】
したがって、本明細書に記載する薄板ガラス基板の製造方法により、該薄板ガラス基板の主表面のうちの一方の山部、特に長く伸びた山部であって、ほぼ法線方向に盛り上がり、該山部の横方向長さの2倍超、好ましくは3倍超、特に好ましくは5倍超の縦方向長さを有し、かつ10×10cm2の分析面の平均による算術平均で、好ましくは熱成形されたガラスリボンの中央において延伸方向に対して垂直に、100nm未満、好ましくは90nm未満、特に好ましくは80nm未満の高さHを有し、かつ該山部の横方向長さがそれぞれ40mm未満である山部を形成することができた。
【0231】
平均値のみならず、絶対値の分布も、本発明の方法により著しく改善された。
【0232】
本発明により熱成形された薄板ガラス基板の測定点の97.5%が、173.9nm未満のZ方向での偏差、つまり筋目の最大山部を有し、従来のように成形された薄板ガラス基板では、273.5nmであった。
【0233】
測定点の97.5%に関して、本発明により熱成形されたガラスの(ΔD/Δx)m/(m/mm)の値は、57.1未満であり、従来のように成形されたガラスでは、78.3であった。測定点の97.5%に関して、従来のように成形された薄板ガラス基板の片側屈折力の値は、22.3mdpt未満であり、本発明により熱成形された薄板ガラス基板では17.5mdpt未満であった。
【0234】
この薄板ガラス基板の製造方法を用いると、熱成形により、薄板ガラス基板54が、延伸方向に対して垂直な、つまりX方向の1mの長さについて100μm未満の値を有するほぼV字形の厚さ変動Kを有した。さらに、その際、熱成形により、薄板ガラス基板54が、延伸方向に対して垂直な、つまりX方向の1mの長さについて600μm未満の値を有する反りVを有した。
【0235】
前記の記載では、すべての平均が、それぞれの分析面52内で行った算術平均であり、ただし、厚さ測定、つまり異常拡張厚さ偏差の測定では、18×18cm2の分析および平均算出面を使用し、主表面53上のみでの山部の高さHの測定においては、10×10cm2の分析または平均算出面を使用した。
【0236】
前記の方法を用いると、熱成形により、少なくとも10cm×10cmの、薄板ガラス基板54の第1の主表面および第2の主表面の面積について平均して、0.3mm~2.6mmの平均厚さを有する薄板ガラス基板54が得られた。
【0237】
しかしながら、0.7~2.5mmの厚さを有する、薄板ガラス基板54のさらなる好ましい実施形態、ならびにおよそ0.7mmの厚さまたはおよそ2.54mmの厚さを有する特に好ましい実施形態も得ることができた。さらに、本発明による方法を用いて、10mmまでの厚さ、その上12mmまでの厚さを有するガラス基板をも製造することができた。
【0238】
参照符号一覧表
1 フロートガラスを製造するための設備、フロート設備
1’ 薄板ガラス基板の本発明による製造装置、フロート設備
2 溶融窯または溶融炉
2’ 溶融窯または溶融炉
3 ガラスバッチ
4 バーナー
5 ガラス溶融体
6 溶融窯の流路
6’ 溶融窯の流路
7 フロートバス、特にスズ浴
7’ フロートバス、特にスズ浴
8 熱成形すべき溶融ガラス
9 フロートバス炉
9’ フロートバス炉
10 バーナー
11 インレットリップ部またはスパウト
12 トップローラ
12’トップローラ
13 ガラスリボン
14 冷却炉
15 バーナー
16 溶融設備
17 制御ゲート、ツイール
18 粘度を定義された方法で調整するための設備
19 チャンバ
20 流体貫流領域
21 流体貫流領域
22 チャンバ19の隔壁
23 チャンバ19の隔壁
24 チャンバ19の隔壁
25 チャンバ19の隔壁
26 センシングユニット
27 クロスバー
28 クロスバー
29 クロスバー
30 クロスバー
31 クロスバー
32 ベイ1
33 ベイ2
34 ベイ3
35 ベイ4
36 ベイ5
37 ベイ6
38 トップローラ
39 トップローラ
40 トップローラ
41 トップローラ
42 トップローラ
43 トップローラ
44 トップローラ
45 流路6’の隔壁
46 流路6’の隔壁
47 熱成形設備
48 ツイール17の上流およびスパウト11の上流の位置にある矢印
49 流動または延伸方向で、ツイール17の後端、つまりツイールのすぐ下流の位置に相当する位置にある矢印
50 流動または延伸方向で、ベイ1の開始部に相当する1.5mの距離にある矢印
51 流動または延伸方向で、ベイ4の開始部に相当する12mの距離にある矢印
52 分析領域
53 上側主表面
54 薄板ガラス基板
55 筋目
56 筋目
57 筋目
58 筋目
59 合わせガラス板
60 第1のガラス板
61 ポリマー層
62 第2のガラス板
63 第2のガラス板62の外向き表面
64 第1のガラス板60の外向き表面
65 第2のガラス板62の外向き表面63上のヘッドアップディスプレイ用反射面
66 両向き矢印
M ガラスまたはガラスリボンのX方向での中心線
D 薄板ガラス基板54の厚さ
K 薄板ガラス基板54の、ほぼV字形の厚さ変動
KL1 薄板ガラス基板54の、ほぼV字形の厚さ変動Kの輪郭線
KL2 薄板ガラス基板54の、ほぼV字形の厚さ変動Kの輪郭線
KL3 薄板ガラス基板54の、ほぼV字形の厚さ変動Kの輪郭線
V 薄板ガラス基板54の反り
VL1 薄板ガラス基板54の反りVの輪郭線
VL2 薄板ガラス基板54の反りVの輪郭線
H 山部または筋目の高さ
Opl 理想平面薄板ガラス基板の表面
Q 特に、山部または筋目の縦方向に対して垂直な、山部または筋目の横方向長さ