(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】狭い通路における侵襲的手順の内視鏡画像
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240617BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20240617BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240617BHJP
【FI】
A61B6/03 560G
A61B6/03 577
A61B6/12
A61B6/50 500D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064838
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2018082819の分割
【原出願日】2018-04-24
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508762(JP,A)
【文献】特開2001-070248(JP,A)
【文献】特開2005-131319(JP,A)
【文献】特表2010-510815(JP,A)
【文献】特開2016-039874(JP,A)
【文献】特開2016-067461(JP,A)
【文献】特開2011-135937(JP,A)
【文献】特開2002-119507(JP,A)
【文献】国際公開第2005/011501(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0008083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0118609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体内の管状臓器の通路内を通って前記通路の開口部に移動するよう構成されている、医療用具と、
前記身体内部の前記医療用具の座標を追跡するよう構成されている、位置検知システムと、
表示スクリーンと、
共通の基準フレーム内で前記位置検知システムと前記身体の少なくとも一部の三次元(3D)コンピュータ断層撮影(CT)画像とを整合し、前記共通の基準フレーム内の少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向を指定及び固定し、指定及び固定された前記位置及び前記方向からの、前記身体内の前記通路の、前記3D-CT画像に基づく仮想内視鏡画像を、追跡した前記座標にしたがった前記仮想内視鏡画像中に位置している前記医療用具の動画による表示を含めて、作成して、前記表示スクリーン上に表示するよう構成されている、プロセッサと、
を備え、
指定及び固定された前記位置は、前記医療用具が前記開口部から進行する方向に存在し、指定及び固定された前記方向は、前記医療用具の進行方向とは反
対方向であり、前記仮想内視鏡画像は、前記開口
部から
前記管状臓器の反対側に延在する壁部を含み、
前記壁部を前記
反対方向に
観察できる画像を含み、
前記医療用具は、前記開口部を通過したあと
に前記壁部に近接した領域において
及び/又は前記壁部において処置するための処置具を含む、医療装置。
【請求項2】
前記処置具が、吸引用具及び/又は剃毛用具を含む、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記身体の前記一部が、前記患者の頭部を含み、前記通路が鼻腔を含む、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記医療用具が、前記鼻腔に挿入されるガイドワイヤを含む、請求項
3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記位置検知システムが、前記身体の前記一部の周囲に配置されている1つ又は複数の磁場発生器、及び前記医療用具の遠位端部にある磁場センサーを含む、電磁気追跡システムを含む、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記身体の前記一部に固定されており、かつ上に前記1つ又は複数の磁場発生器がマウントされているフレームを備え、前記プロセッサが、前記フレームに対して前記電磁気追跡システムの1回目の較正を定式化すること、前記3D-CT画像内の前記フレームの2回目の較正を定式化すること、並びに前記1回目の較正及び前記2回目の較正を組み合わせて、前記共通の基準フレーム内の前記医療用具の前記遠位端部を整合することによって、前記位置検知システム及び前記3D-CT画像を整合するよう構成されている、請求項
5に記載の医療装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記医療装置のオペレータから、前記3D-CT画像に対する前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び前記方向を示す入力を受信するように構成されている、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記通路を通る前記医療用具の経路に沿った、さまざまな個々の位置に、複数のバーチャルカメラを配置するよう構成されている、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記
少なくとも1つのバーチャルカメラの前記さまざまな個々の位置に対応するさまざまな視点から、複数の仮想内視鏡画像を同時に作成して、前記表示スクリーン上に表示するよう構成されている、請求項
8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記医療用具が特定された前記位置に接近したときだけ、前記仮想内視鏡画像を作成して表示し始めるよう構成されている、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項11】
前記プロセッサが、追跡した前記座標によって示されている前記通路内の前記医療用具の移動に応答して、前記仮想内視鏡画像の視野特性を変更するよう構成されている、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記視野特性を変更することは、前記通路を介して前記医療用具が移動するにつれて、前記少なくとも1つのバーチャルカメラの視野内に前記医療用具が維持されるよう、前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び前記方向のうちの少なくとも1つを変更することを含む、請求項
11に記載の医療装置。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記身体内の前記通路を介して前記医療用具によってアクセスされることになる前記開口部を有するチャンバ内に、
前記少なくとも1つのバーチャルカメラを配置するよう、及び前記開口部を介して前記通路内の前記医療用具を可視化するよう前記仮想内視鏡画像を作成して表示するよう構成されている、請求項
1に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療的イメージング、特に、侵襲的医療手順を可視化するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像誘導手術(IGS)において、医療専門家は、外科的手順の間に器具の位置及び/又は方向が患者の解剖学的構造の画像上に提示され得るように、身体内に実時間で追跡される器具を使用する。多数のIGSシナリオでは、患者の画像は、磁気共鳴画像法(MRI)又はコンピュータ断層撮影法(CT)などの1つのモダリティで調製され、器具による追跡では、電磁気追跡などの異なるモダリティが用いられる。その追跡が効果的となるためには、2つのモダリティの基準フレームが、互いに対して整合されていなければならない。
【0003】
CT画像と追跡システムとを整合するために、さまざまな方法が当分野において知られている。たとえば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2017/0020411号は、プロセッサが対象の断層画像を受信して、妥当な整合点の位置を使用して、磁気追跡システムの座標フレーム内で断層画像を整合する、装置及び方法を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の以下に記載されている本発明の実施形態は、鼻洞などの狭い身体経路内部において、医療用具の可視化を行うための改善されたシステム及び方法を提供する。
【0005】
したがって、本発明の実施形態によれば、共通の基準フレーム内で、位置検知システム及び患者の身体の少なくとも一部の三次元(3D)コンピュータ断層撮影(CT)画像を整合することを含む、可視化方法が提供される。共通の基準フレーム内の少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向が指定される。身体内の通路内で移動する医療用具の座標は、位置検知システムを使用して追跡される。指定位置及び方向からの、身体内の通路の、3D CT画像に基づく仮想内視鏡画像が、追跡座標にしたがって、仮想内視鏡画像中に位置している医療用具の動画による表示を含めて、作成されて表示される。
【0006】
開示されている実施形態では、身体の一部には患者の頭部が挙げられ、通路には鼻腔が挙げられ、医療用具には、鼻腔に挿入されるガイドワイヤが挙げられる。
【0007】
一部の実施形態では、位置検知システムには、身体の一部の周囲に配置されている1つ又は複数の磁場発生器、及び医療用具の遠位端部にある磁場センサーを含む、電磁気追跡システムが挙げられる。開示されている実施形態では、フレームにマウントされている1つ又は複数の磁場発生器は、身体の一部に固定されており、位置検知システムと3D CT画像との整合は、フレームに対して電磁気追跡システムの1回目の較正を定式化する(formulate)こと、CT画像内のフレームの2回目の較正を定式化すること、並びに1回目及び2回目の較正を組み合わせて、共通の基準フレーム内の用具の遠位端部を整合することを含む。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向の指定は、オペレータから、CT画像に対する位置及び方法を示す入力を受信することを含む。
【0009】
追加的に又は代的に、少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向の指定は、通路を通る医療用具の経路に沿ったさまざまな個々の位置に、複数のバーチャルカメラを配置することを含む。一実施形態では、仮想内視鏡画像の作成及び表示は、バーチャルカメラのさまざまな個々の位置に対応するさまざまな視点からの、複数の仮想内視鏡画像の同時作成及び表示を含む。さらに、追加的に又は代的に、仮想内視鏡画像の作成及び表示は、医療用具が指定位置に接近したときだけ、仮想内視鏡画像を作成して表示し始めることを含む。
【0010】
一部の実施形態では、仮想内視鏡画像の作成及び表示は、追跡座標によって示される通路内の医療用具の移動に応答して、仮想内視鏡画像の視野特性を変更することを含む。開示されている実施形態では、視野特性の変更は、通路を介して医療用具が移動するにつれて、少なくとも1つのバーチャルカメラの視野内に医療用具が維持されるよう、少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向のうちの少なくとも1つを変更することを含む。
【0011】
別の実施形態では、少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向の指定は、身体内の通路を介して医療用具によってアクセスされることになる開口部を有するチャンバ内に、バーチャルカメラを配置することを含み、仮想内視鏡画像の作成及び表示は、開口部を介して通路内の医療用具を可視化することを含む。
【0012】
本発明の実施形態によれば、患者の身体における通路内を移動するよう構成されている医療用具、及び身体内の医療用具の座標を追跡するよう構成されている位置検知システムを含めた、医療装置も提供される。プロセッサは、共通の基準フレーム内で位置検知システムと、身体の少なくとも一部の三次元(3D)コンピュータ断層撮影(CT)画像とを整合し、共通の基準フレーム内の少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向を特定し、指定位置及び方向からの、身体内の通路の、3D CT画像に基づく仮想内視鏡画像を、追跡座標にしたがった仮想内視鏡画像中に位置している医療用具の動画による表示を含めて、作成して、表示スクリーン上に表示するよう構成されている。
【0013】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を図面と併せて考慮すると、一層完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態による、鼻洞で操作するための手術システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、鼻腔内の医療用具を可視化するための方法の概略を例示するフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態による、鼻腔から用具が移動するにつれて、仮想内視鏡画像が用具の遠位端部を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による、鼻腔から用具が移動するにつれて、仮想内視鏡画像が用具の遠位端部を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による、鼻腔から用具が移動するにつれて、仮想内視鏡画像が用具の遠位端部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
鼻腔形成術(sinuplasty)の手術などの鼻腔内での医療的手順の間に、洞内に内視鏡を挿入することなく、発生中のことを直接可視化することは不可能である。しかし、内視鏡の挿入は、狭い空間が関わるため、及び内視鏡に追加費用がかかるために問題がある。さらに、鼻腔中で使用するための内視鏡は、通常、柔軟性に乏しい器具であり、この器具は、回転することができない、又は腔洞から洞の開口部への逆方向の画像を提供することができない。
【0016】
本明細書に記載されている本発明の実施形態は、鼻腔内の選択された位置に配置されている実際の内視鏡によって、又はさまざまな個々の位置にある複数の内視鏡によってでさえも観察される、手順の仮想内視鏡画像を生成することにより、上記の問題に対処するものである。これらの仮想内視鏡画像は、たとえば、解剖学的構造に対するガイドワイヤの位置及び方向の可視化に、並びに吸引用具又は剃毛用具(デブリーダ)などの他の用具に使用することができる。さらに、本明細書の以下に開示されている実施形態は、鼻腔内での可視化を特に対象としているが、本発明の原理は、身体内、特に、実際の光学内視鏡が利用できないか又は使用が困難な狭い通路における、別の空間内にも同様に適用されてもよい。
【0017】
医療的手順の前に、洞を含む患者の頭部のCT画像が得られ、電磁気追跡システムなどの追跡システムはCT画像と整合される。位置センサーは、ガイドワイヤ又は他の用具の遠位端部に取り付けられており、この遠位端部は、こうして、鼻洞に挿入されると、整合済みCT画像に対して、位置及び方向が追跡される。
【0018】
頭部のCT画像は、鼻腔の3Dボリュームの画像を生成して表示するために加工される。この3Dボリューム内部では、鼻腔形成術の手順を行う手術などのイメージングシステムのオペレータは、たとえば、表示されているCT画像上に所望の位置及び視野角を指し示すことによって、複数のバーチャルカメラを設置することができる。こうして、オペレータは、実際の用具がいまだ到達しない鼻腔の領域に、用具の計画された進入経路に基づいて、「内視鏡」を設置することが可能となる。たとえば、オペレータは、標的とする腔自体の内部にバーチャルカメラを設置して、この腔(洞腔の開口部)のわずかな開口部への反対方向に観察することができ、次に、この画像を、可視化及び開口部からの可撓性のガイドワイヤの操作に使用することができる。こうして、オペレータは、得られた仮想内視鏡画像により、強い確信をもって、これらの領域への用具の進入を見て、制御することが可能となる。
【0019】
バーチャルカメラは、固定されていてもよく、又はそれらは、オペレータが鼻腔を介して巧みに操作する視野内に、用具の遠位端部を維持するように移動させてもよい。追加的に又は代的に、このシステム自体が、用具の遠位端部を見て追跡するよう、1個又は複数のバーチャルカメラを自動的に設置してもよい。用具の複数の仮想画像が同時に作成され得、従来のCTのスライス画像の代わりに、又はそれに追加して、視野スクリーン上に表示され得る。さらに、追加的に又は代的に、本イメージングシステムは、用具自体の遠位先端部から観察される、仮想内視鏡画像を生成することができる。しかし、本発明者らは、用具から空間的に離れている位置にあるバーチャルカメラによってもたらされる用具の画像により、一層直感的なガイダンスが提供され得ることを見いだした。
【0020】
図1は、本発明の実施形態による、鼻腔手術システム20の概略図である。システム20は、患者22の鼻腔内の外科的手順において、本実施例に使用される。
【0021】
実際の手順に関すると、一式の1つ又は複数の磁場発生器24は、たとえば、患者の頭部にクランプされているフレーム26に発生器を組み込むことによって、患者又はその周辺に固定されている。磁場発生器は磁場を発生し、この磁場は、ガイドワイヤなどの用具28の遠位端部30において、好適なコイルなどの、位置センサー32によって検出される。用具28が患者22の鼻洞に挿入されると、プローブの遠位端部の位置及び方向の座標を検出するために、位置センサーによる出力シグナルがシステムプロセッサ40によって処理される。この種の電磁気位置追跡システムは、たとえば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2016/0007842号に記載されている。さらに、Carto(登録商標)システム(Biosense Webster(Diamond Bar、CA)製)は、磁場によって照射された領域内にあるコイルの位置及び方向を検出するために、本明細書に記載されているシステムに類似の追跡システムを使用する。代替的に、電磁気追跡は、高度に正確である、及びヒト身体内部で操作するのに十分に適しているという観点から特に有利であるが、本発明の原理は、当分野において公知の別の追跡技術を使用して適用されてもよい。
【0022】
磁場発生器24を含めたシステム20の要素は、1つ又は複数のメモリと連通しているプログラム可能な処理ユニットを備えたシステムプロセッサ40によって制御される。プロセッサ40は、キーパッド、及び/又はマウス若しくはトラックボールなどのポインティングデバイスを通常、含む、動作制御装置44を備えたコンソール42内に搭載されている。コンソール52はまた、用具28の近位端部36などのシステム20の別の要素に接続されている。医師などのオペレータ34は、手順を行いながら、プロセッサと相互作用するよう、動作制御装置を使用する。プロセッサ40は、スクリーン46上に、システム20によって生成される画像及び他の結果を表示する。
【0023】
プロセッサ40は、通常、システム20を操作するために、このシステムの構成要素からの入力シグナルを受信して、制御シグナルを出力するための、コンソール42内のメモリに記憶されている好適なインターフェース及びソフトウェアを有する、プログラム可能なマイクロプロセッサを備えている。このソフトウェアは、たとえば、ネットワークを介して電子形態でプロセッサ40にダウンロードされてもよく、又は代替的若しくは追加的に、磁気的、光学的又は電子的メモリなどのコンピュータにより読み取り可能な非一時的な有形メディア上で提供及び/又は記憶されてもよい。
【0024】
プロセッサ40は、とりわけ磁場発生器24の操作及び較正を行うためのソフトウェアを使用する。この発生器は、さまざまな周波数で交流磁場をフレーム26の近位領域に送信するように操作される。フレーム中の発生器は、患者に配置される前に、このフレームに対して既知の位置及び方向にある領域中の、センサー32などの検知コイルを有するプローブを配置することにより較正することができる。シグナルは、交流磁場によってコイル中に誘起され、プロセッサは、このシグナルを取得して記録する。次に、このプロセッサは、コイルの位置及び方向と、これらの位置及び方向に対して記録されたシグナルとの間の較正関係を定式化する。
【0025】
較正関係が一旦、定式化されると、フレーム26は、患者22の頭部に配置することができる。配置後、このフレームは、決まった位置に固定され、たとえば、取り付けられたフレームを用いていくつかの異なる角度から患者の頭部をイメージングすることにより、患者の頭部の外部輪郭(feature)と整合される。フレームの整合はまた、磁場発生器24と患者の外部輪郭とを整合する。代替的又は追加的に、この整合は、患者の外部輪郭に関して1つ又は複数の既知の位置及び方向にあるセンサー32などの検出コイル、及びフレーム26を有するプローブを位置決めすること、並びにこのコイルによる出力シグナルを測定することを含んでもよい。
【0026】
図2は、本発明の実施形態による、鼻腔内の医療用具を可視化するための方法の概略を例示するフロー図である。本方法は、システム20(
図1)及び用具28を参照して、便宜上、記載されているが、代替的に、他のシステム環境及び他の種類の医療的手順で実施されてもよい。
【0027】
最初の整合工程50として、患者22の頭部のCT画像が取得され、磁場発生器24によって画定される追跡システムの基準フレームがCT画像により整合される。こうして、フレーム26及び磁場発生器24によって画定された追跡システム座標は、CT画像の座標と同じ基準フレームを共有する。較正は、たとえば、患者の頭部に既に固定されているフレーム26を用いて、頭部の1つ又は複数の画像をキャプチャすることによって、上記のとおり実施することができる。プロセッサ40は、これらの画像を加工して、CT基準フレーム内のフレーム26の位置及び方向を特定し、この情報と電磁気追跡システムの較正とを組み合わせて、同一の基準フレーム内のシステム20の要素すべてと整合する。
【0028】
代替的又は追加的に、それらの開示が、参照により本明細書に組み込まれている、上記の米国特許出願公開第2017/0020411号に記載されている方法、又は2017年8月10日に出願の米国特許出願第15/674,380号に記載されている技法などの任意の別の好適な整合技法を、この目的のために使用することができる。この後者の特許出願において記載されているとおり、たとえば、プロセッサ40は、工程50においてCT画像を解析して、画像内の患者の目の個々の位置を特定することができ、こうして、これらの個々の位置をつなげる線分を画定する。さらに、プロセッサ40は、第1の線分に平行な第2の線分、及び第1の線分に垂直な第3の線分に沿って、頭部の骨区域を覆う、CT内のボクセルサブセット(voxel subset)を特定する。オペレータ34は、骨区域に近接してプローブを配置し、こうして、骨区域を覆う頭部の表面上の位置を測定する。プロセッサ40は、CT画像中のこれらの測定された位置とボクセルサブセットとの間の通信を計算し、こうして磁気追跡システムとCT画像とを整合する。
【0029】
プロセッサ40は、手法のプランニング工程において、オペレータ34に患者の鼻腔のCT画像を表示する。これらの画像は、2Dスライスとして、及び/又は再構成された疑似3Dボリュームとして表示されることができ、これらは、CT分野において知られているとおりに、加工及びセグメント化され、その結果、オペレータは、固体組織と、洞などの開口した透明の空間との間を容易に区別することがきる。オペレータ34は、工程52において、洞からの用具28の進入経路を計画する、及び位置選定工程54において、進入経路に沿って設置されるバーチャルカメラの位置及び方向を選択する両方のために、これらの画像を使用する。
【0030】
上記の後者の目的のために、プロセッサ40は、スクリーン46上に画像を表示することができ、オペレータ34は、次に、ポインティングデバイス又はタッチインターフェースを使用して、カメラの所望の位置及び方向に印を付けることができる。以前に明記したとおり、オペレータは、バーチャルカメラを固定すべきかどうか(すなわち、その視点)、又はバーチャルカメラは、用具28が、鼻腔を介して移動するにつれて、位置、方向及び/又はズーム角度などのカメラの視野特性を変更すべきかどうか(位置座標によって示されている)を判定することができる。たとえば、オペレータは、用具28が進入経路に沿って進行して、計画された手順を実施するにつれて、所与のバーチャルカメラが用具の遠位端部30の動きを追跡するよう、プロセッサ40に指示を出すことができる。代替的に、オペレータは、用具28が対応する解剖学的領域に接近したときだけ、プロセッサ40にバーチャルカメラを実際に可能にする(すなわち、カメラ視点からの仮想内視鏡画像を作成して表示し始める)よう指示を出しながら、前もって、バーチャルカメラの位置及び方向を設定することができる。
【0031】
このようにバーチャルカメラ又はカメラを作動させると、オペレータ54は、用具挿入工程56において、患者の外鼻孔から、所望の経路に沿って鼻腔内に用具28を挿入する。用具28の遠位端部30における位置センサー32は、磁場発生器24によって発生する磁場に応答してシグナルを出力する。プロセッサ40は、用具追跡工程58において、これらのシグナルに基づいて、用具の遠位端部の位置及び方向の座標を計算し、工程50で観察された整合変換を使用して、CT画像に対する用具の位置を確認する。
【0032】
用具の位置及び方向、並びに事前に取得したCTデータに基づいて、プロセッサ40は、作成工程60において、画像がバーチャルカメラによってキャプチャされるにつれて画像を作成し、スクリーン46上に画像を表示する。所与の任意のバーチャルカメラによって作成された画像は、カメラの位置から目視可能と思われる鼻腔の3Dボリュームの部分をカメラのバーチャル画像平面に投影したものである。用具28の遠位端部30の位置の座標が、バーチャルカメラの視野内にあることを示した場合、プロセッサ40は、適切な位置及び方向にある用具の動画を投影した3Dボリュームに重ね合わせる。プロセッサ40は、スクリーン46上の単一画像を表示することができるか、又はさまざまなカメラの位置及び視野に対応する複数の画像を表示することができる。以前に明記したとおり、所与のカメラの視点は、たとえば、手順の経路に沿って進行するにつれて、用具が見え続けるよう、オペレータの制御下で、又は自動的のどちらか一方で、手順の間に変更してもよい。
【0033】
図3~5は、本発明の実施形態による、鼻腔から用具28が移動するにつれて、仮想内視鏡画像が用具の遠位端部30(この場合、ガイドワイヤ)を示す概略図である。
図3では、ガイドワイヤの遠位端部は、ガイドワイヤの現在の位置として、鼻腔の同じチャンバ70に位置しているバーチャルカメラによって観察される。一方、
図4では、遠位端部30は、チャンバ74内に位置している一方、バーチャルカメラは、さまざまなチャンバ72に位置しており、チャンバ壁内の開口部を介して目視可能なガイドワイヤの小さな部分だけを「観察する」。
【0034】
図5は、内視鏡として構成されているバーチャルカメラによって生成した画像を示しており、この内視鏡は、用具28の遠位端部30の後の鼻腔76を介して移動する。この図では、プロセッサ40は、3D CT画像上にガイドワイヤの遠位部分だけを作成して覆っており、その結果、仮想内視鏡によってもたらされる周辺組織の画像は、ガイドワイヤによって不明瞭にはならない。ガイドワイヤが経路から進行するにつれて、仮想内視鏡の視点は、ガイドワイヤの後側に沿って移動する。
【0035】
上記の画像は、例示目的で示されているに過ぎず、本発明の原理によって、他の種類の画像も同様に、作成されて表示されてもよい。したがって、上記の実施形態は、例として引用されたものであること、及び本発明は、特に、本明細書の上に示されて記載されているものに限定されないことが認識されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に記載されているさまざまな特徴の組合せと部分組合せの両方、及び前述の説明を一読すると、当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0036】
〔実施の態様〕
(1) 共通の基準フレーム内で、位置検知システム、及び患者の身体の少なくとも一部の三次元(3D)コンピュータ断層撮影(CT)画像を整合することと、
前記共通の基準フレーム内の少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向を指定することと、
前記身体内の通路内で移動する医療用具の座標を、前記位置検知システムを使用して追跡することと、
前記指定位置及び方向からの、前記身体内の前記通路の、前記3D CT画像に基づく仮想内視鏡画像を、前記追跡座標にしたがった前記仮想内視鏡画像中に位置している前記医療用具の動画による表示を含めて、作成して表示することと、
を含む、可視化方法。
(2) 前記身体の前記一部が、前記患者の頭部を含み、前記通路が鼻腔を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記医療用具が、前記鼻腔に挿入されるガイドワイヤを含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記位置検知システムが、前記身体の前記一部の周囲に配置されている1つ又は複数の磁場発生器、及び前記医療用具の遠位端部にある磁場センサーを含む、電磁気追跡システムを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) フレーム上にマウントされた前記1つ又は複数の磁場発生器が、前記身体の前記一部に固定されており、前記位置検知システム及び前記3D CT画像を整合することが、
前記フレームに対して、前記電磁気追跡システムの1回目の較正を定式化することと、
前記CT画像内の前記フレームの2回目の較正を定式化することと、
前記1回目及び2回目の較正を組み合わせて、前記共通の基準フレーム内の前記用具の前記遠位端部を整合することと、
を含む、実施態様4に記載の方法。
【0037】
(6) 前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び方向を指定することが、オペレータから、前記CT画像に対する前記位置及び方向を示す入力を受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び方向を指定することが、前記通路を通る前記医療用具の経路に沿った、さまざまな個々の位置に、複数のバーチャルカメラを配置することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記仮想内視鏡画像を作成及び表示することが、前記バーチャルカメラの前記さまざまな個々の位置に対応するさまざまな視点から、複数の仮想内視鏡画像を同時作成及び表示することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記仮想内視鏡画像を作成及び表示することは、前記医療用具が前記指定位置に接近したときだけ、前記仮想内視鏡画像を作成して表示し始めることを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記仮想内視鏡画像を作成及び表示することが、前記追跡座標によって示されている前記通路内の前記医療用具の移動に応答して、前記仮想内視鏡画像の視野特性を変更することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0038】
(11) 前記視野特性を変更することは、前記通路を介して前記医療用具が移動するにつれて、前記少なくとも1つのバーチャルカメラの視野内に前記医療用具が維持されるよう、前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び前記方向のうちの少なくとも1つを変更することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び方向を指定することが、前記身体内の前記通路を介して前記医療用具によってアクセスされることになる開口部を有するチャンバ内に、バーチャルカメラを配置することを含み、前記仮想内視鏡画像を作成及び表示することが、前記開口部を介して前記通路内の前記医療用具を可視化することを含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 患者の身体内の通路内を移動するよう構成されている、医療用具と、
前記身体内部の前記医療用具の座標を追跡するよう構成されている、位置検知システムと、
表示スクリーンと、
共通の基準フレーム内で前記位置検知システムと前記身体の少なくとも一部の三次元(3D)コンピュータ断層撮影(CT)画像とを整合し、前記共通の基準フレーム内の少なくとも1つのバーチャルカメラの位置及び方向を特定し、前記指定位置及び方向からの、前記身体内の前記通路の、前記3D CT画像に基づく仮想内視鏡画像を、前記追跡座標にしたがった前記仮想内視鏡画像中に位置している前記医療用具の動画による表示を含めて、作成して、前記表示スクリーン上に表示するよう構成されている、プロセッサと、
を備えた、医療装置。
(14) 前記身体の前記一部が、前記患者の頭部を含み、前記通路が鼻腔を含む、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記医療用具が、前記鼻腔に挿入されるガイドワイヤを含む、実施態様14に記載の装置。
【0039】
(16) 前記位置検知システムが、前記身体の前記一部の周囲に配置されている1つ又は複数の磁場発生器、及び前記医療用具の遠位端部にある磁場センサーを含む、電磁気追跡システムを含む、実施態様13に記載の装置。
(17) 前記身体の前記一部に固定されており、かつ上に前記1つ又は複数の磁場発生器がマウントされているフレームを備え、前記プロセッサが、前記フレームに対して前記電磁気追跡システムの1回目の較正を定式化すること、前記CT画像内の前記フレームの2回目の較正を定式化すること、並びに前記1回目及び2回目の較正を組み合わせて、前記共通の基準フレーム内の前記用具の前記遠位端部を整合することによって、前記位置検出システム及び前記3D CT画像を整合するよう構成されている、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記プロセッサが、前記装置のオペレータから、前記CT画像に対する前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び方向を示す入力を受信するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
(19) 前記プロセッサが、前記通路を通る前記医療用具の経路に沿った、さまざまな個々の位置に、複数のバーチャルカメラを配置するよう構成されている、実施態様13に記載の装置。
(20) 前記プロセッサが、前記バーチャルカメラの前記さまざまな個々の位置に対応するさまざまな視点から、複数の仮想内視鏡画像を同時に作成して、前記表示スクリーン上に表示するよう構成されている、実施態様19に記載の装置。
【0040】
(21) 前記プロセッサは、前記医療用具が前記特定された位置に接近したときだけ、前記仮想内視鏡画像を作成して表示し始めるよう構成されている、実施態様13に記載の装置。
(22) 前記プロセッサが、前記追跡座標によって示されている前記通路内の前記医療用具の移動に応答して、前記仮想内視鏡画像の視野特性を変更するよう構成されている、実施態様13に記載の装置。
(23) 前記視野特性を変更することは、前記通路を介して前記医療用具が移動するにつれて、前記少なくとも1つのバーチャルカメラの視野内に前記医療用具が維持されるよう、前記少なくとも1つのバーチャルカメラの前記位置及び前記方向のうちの少なくとも1つを変更することを含む、実施態様22に記載の装置。
(24) 前記プロセッサが、前記身体内の前記通路を介して前記医療用具によってアクセスされることになる開口部を有するチャンバ内に、バーチャルカメラを配置するよう、及び前記開口部を介して前記通路内の前記医療用具を可視化するよう前記仮想内視鏡画像を作成して表示するよう構成されている、実施態様13に記載の装置。