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特許7505121内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプ
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  • 特許-内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプ 図1
  • 特許-内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/04 20060101AFI20240617BHJP
   F02M 59/02 20060101ALI20240617BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F02M55/04
F02M59/02
F02M61/16 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023518273
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2021073827
(87)【国際公開番号】W WO2022063521
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】102020211798.5
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナー コルンハース
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴェーア
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173587(JP,A)
【文献】特開2019-173638(JP,A)
【文献】特開2019-15186(JP,A)
【文献】特開2019-15244(JP,A)
【文献】特開2017-25924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射システム(10)用の高圧燃料ポンプ(22)であって、
ポンプハウジング(40)と、
前記ポンプハウジング(40)に組み付けられていて、該ポンプハウジング(40)と共に低圧室(44)を画定するポンプカバー(42)と
を備え、
前記ポンプハウジング(40)に孔(58)が形成されており、該孔(58)内に圧力制限弁(56)が配置されている、
高圧燃料ポンプ(22)において、
前記孔(58)は、通路(72)を介して前記低圧室(44)に流れ接続されており、
前記通路(72)は、前記低圧室(44)に向けられた端部に、前記孔(58)に向けられた端部と等しい、またはそれよりも大きな横断面積を有し、
前記通路(72)の前記横断面積は、前記通路(72)の中心長手方向軸線(76)に沿って前記低圧室(44)に向かって円錐形に増加していることを特徴とする、高圧燃料ポンプ(22)。
【請求項2】
内燃機関の燃料噴射システム(10)用の高圧燃料ポンプ(22)であって、
ポンプハウジング(40)と、
前記ポンプハウジング(40)に組み付けられていて、該ポンプハウジング(40)と共に低圧室(44)を画定するポンプカバー(42)と
を備え、
前記ポンプハウジング(40)に孔(58)が形成されており、該孔(58)内に圧力制限弁(56)が配置されている、
高圧燃料ポンプ(22)において、
前記孔(58)は、通路(72)を介して前記低圧室(44)に流れ接続されており、
前記通路(72)は、前記低圧室(44)に向けられた端部に、前記孔(58)に向けられた端部と等しい、またはそれよりも大きな横断面積を有し、
前記通路(72)は、軸線方向の第1の通路区分(80)と軸線方向の第2の通路区分(82)とを有し、該第2の通路区分(82)は、前記低圧室(44)に臨んでいて、前記第1の通路区分(80)よりも大きな横断面積を有することを特徴とする、高圧燃料ポンプ(22)。
【請求項3】
前記通路(72)の中心長手方向軸線(76)および前記低圧室(44)の中心長手方向軸線(77)および/または前記ポンプハウジング(40)の中心長手方向軸線(78)が、互いに平行に配置されている、または互いに合致していることを特徴とする、請求項1または2記載の高圧燃料ポンプ(22)。
【請求項4】
ピストン(36)が内部で移動する圧送室(50)が設けられており、該圧送室(50)と、前記圧力制限弁(56)が内部に配置された前記孔(58)とを互いに分離する壁(84)が、通路なしに形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の高圧燃料ポンプ(22)。
【請求項5】
前記圧力制限弁(56)用の前記孔(58)の中心長手方向軸線(86)が、前記ポンプハウジング(40)の中心長手方向軸線(78)に対して直交する方向に向けられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の高圧燃料ポンプ(22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の前提部に記載した、内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプに関する。
【0002】
このような高圧燃料ポンプは、例えば独国特許出願公開第102018211237号明細書に基づき公知である。この公知の高圧燃料ポンプは、ポンプハウジングと、このポンプハウジングに組み付けられていて、低圧室を有するポンプカバーとを有している。ポンプハウジングに形成された孔内には、圧力制限弁が配置されている。孔は、ピストンが内部で移動する圧送室に流れ接続されている。また、独国特許出願公開第10327411号明細書に基づき、別の燃料ポンプも公知である。このような公知の高圧燃料ポンプでは、圧力制限弁に許容できないほどの摩耗およびキャビテーション壊食が生じてしまう。
【0003】
発明の開示
本発明の根底にある問題は、請求項1の特徴を有する高圧燃料ポンプによって解決される。本発明の有利な改良形態は、従属請求項に記載してある。
【0004】
本発明によれば、内燃機関の燃料噴射システム用の高圧燃料ポンプであって、ポンプハウジングと、このポンプハウジングに組み付けられていて、このポンプハウジングと共に低圧室を画定する(場合により破壊しないとポンプハウジングから解離することができない)ポンプカバーとを有する高圧燃料ポンプが提案される。ポンプハウジングには、孔が形成されており、この孔内に圧力制限弁が配置されている。孔は、通路を介して低圧室に流れ接続されており、通路は、低圧室に向けられた端部に、圧力制限弁を備えた孔に向けられた端部と等しい、またはそれよりも大きな横断面積を有している。
【0005】
こうして、高圧燃料ポンプの低圧室もしくは低圧室内に配置された低圧ダンパへの圧力制限弁の接続が達成される。この接続によって、圧力制限弁のばねに対する圧力脈動/体積流を減じることができ、ひいては、圧力制限弁における摩耗およびキャビテーション壊食を減じることができることが達成される。さらに、圧送室内の蒸気と弁本体の「呼吸」とによるキャビテーション壊食を回避することができる。さらに、故障の際に高圧システムに全圧送を生じさせる動圧を減じることができ、ポンプの体積効率を高めることができる。通路横断面積の可能な先細りによって、場合により音響的な利点を得ることができる。これによって、孔の固有周波数を変更することができるからである。
【0006】
従来の高圧燃料ポンプでは、圧送室内での交互の増圧/減圧に基づくばね受けの軸線方向および半径方向の運動と弁本体の「呼吸」とによって、摩耗が生じてしまうことが認められている。さらに、(ばね受けの運動に基づく)弁の開放と、吸入段階で圧送室内に発生する蒸気とによって、キャビテーション壊食が生じてしまうことが認められた。ばね受けの運動は、圧送室内での圧力脈動/体積流に基づくばねの軸線方向および半径方向の振動によって生じてしまう。これらの点は、提案された高圧燃料ポンプによって回避することができる。
【0007】
本発明の高圧燃料ポンプは、特にピストンポンプである。このようなポンプは、圧送室と、この圧送室内に配置されていて、往復駆動することができるピストンとを有している。孔を低圧室に流れ接続する通路は、ポンプハウジングの、低圧室をポンプハウジングに向かって画定していて、低圧室を孔から分離している壁に形成されている。通路は、中心長手方向に沿って、特に直線状に延在していてもよい。孔は、高圧燃料ポンプの出口(つまり、高圧側)に流れ接続されている。この出口には、例えば接続フランジが設けられていてもよい。圧力制限弁に対して並列して、流出弁が配置されていてもよい。
【0008】
圧力制限弁は複数の機能を有することができる。1つには、圧力制限弁によって、レール内の圧力が(例えば圧力過昇時または高温停止時に)規定の値を上回らないようにすることができる。これによって、該当する構成要素に対する許容可能な負荷が超過されないことが確保される。レール内の圧力が最大限に許容可能な値を下回っている限り、レール内の圧力損失を阻止するために、圧力制限弁は、低圧システムもしくは圧送室に対して密封されていなければならない。圧力制限弁は、弁本体、ボール、ばね受けおよび/またはばねを有していてもよい。
【0009】
一改良形態によれば、通路の中心長手方向軸線および低圧室の中心長手方向軸線および/またはポンプハウジングの中心長手方向軸線が、互いに平行に配置されていてもよい、または互いに合致していてもよい。これによって、通路をポンプハウジングもしくは低圧室に関して中心に配置することを達成することができる。このことは、低圧ダンパへの圧力制限弁の良好な接続に貢献している。圧力制限弁に対する圧力脈動と圧力制限弁のばねの運動とをさらに減じることができる。
【0010】
一改良形態によれば、通路の横断面積は、通路の中心長手方向軸線に沿って低圧室に向かって円錐形に増加していてもよい。これによって、音響的な利点を得ることができる。これによって、孔の固有周波数を変更することができるからである。
【0011】
一改良形態によれば、通路は、軸線方向の第1の通路区分と軸線方向の第2の通路区分とを有し、この第2の通路区分は、低圧室に臨んでいて、第1の通路区分よりも大きな横断面積を有してもよい。これによっても、振動の励起を減衰することができるため、音響的な利点を得ることができる。言い換えると、通路は、低圧室に向かって拡幅されているかもしくは大きい方の横断面積(例えば大きい方の直径)が低圧室に臨んでいる段付けられた通路、例えば段付き孔として形成されている。
【0012】
一改良形態によれば、ピストンが内部で移動する圧送室が設けられており、この圧送室と、圧力制限弁が内部に配置された孔とを互いに分離する壁が、通路なしに形成されていてもよい。このことは、低圧室もしくは低圧室内に配置された低圧ダンパへの圧力制限弁の良好な接続に貢献している。壁のため、圧送室から孔への直接的な流れ接続は存在していない。
【0013】
一改良形態によれば、圧力制限弁用の孔の中心長手方向軸線が、ポンプハウジングの中心長手方向軸線に対して直交する方向に向けられていてもよい。このことは、高圧燃料ポンプのコンパクトな構成に貢献している。小さな構造高さを達成することができるからである。
【0014】
以下に、本発明の可能な実施形態を添付の図面を参照しながら説明する。図面では、同一または機能的に同一の要素に同じ符号が付してある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】内燃機関用の燃料システムの概略図である。
図2】高圧燃料ポンプの一実施形態の縦断面図である。
【0016】
図1には、内燃機関用の燃料噴射システム10が概略図で示してある。燃料は、燃料タンク12から吸込み管路14を介してプレフィードポンプ16によって低圧管路18内に供給され、そこから燃料高圧ポンプ22の低圧ポート20(入口20)に供給される。
【0017】
燃料、例えばガソリンは、燃料高圧ポンプ22内で高い圧力へと圧縮され、高圧ポート24(出口24)を通って高圧レール25と高圧インジェクタ26とを介して内燃機関の燃焼室28に供給される。そこで燃料は、吸気管30を介して供給された空気と混合され、例えば、点火プラグにより発生させられた火花によって点火可能となる。
【0018】
任意選択的には、燃料高圧ポンプ22の低圧ポート20を介して供給された燃料の一部が、圧縮されずに燃料高圧ポンプ22を通流した後、別の低圧ポート32を通って再び燃料高圧ポンプ22外に案内され、低圧インジェクタ34を介して吸気管30内に案内されてもよい。そこで燃料の当該部分が、供給された空気と混合され、その後、混合物が燃焼室28内に到達してもよい。
【0019】
燃料高圧ポンプ22はピストンポンプとして形成されている。この場合、ピストン36は、例えばカムディスク38によって駆動されてもよい(運動方向は図面において鉛直方向に向けられている)。
【0020】
以下に、燃料高圧ポンプ22を図2を参照しながら詳しく説明する。
【0021】
燃料高圧ポンプ22はポンプハウジング40を有している。このポンプハウジング40に接してまたはポンプハウジング40内には、燃料高圧ポンプ22の構成要素が配置されている。ポンプハウジング40には、特に破壊しないと解離することができないようにポンプカバー42が組み付けられている。このポンプカバー42はポンプハウジング40に結合、例えば溶接されていてもよい。ポンプカバー42は、ポンプハウジング40と共に低圧室44を画定している。この低圧室44内には、低圧ダンパ45が配置されている。
【0022】
ポンプハウジング40の側方では、入口20に接続管片(流入管片)が組み付けられている(図2には示さず)。入口20もしくは入口側の接続管片は、接続通路(図示せず)を介して低圧室44に流れ接続されている。この低圧室44は、別の接続通路(図示せず)を介して、ピストン36が内部に配置された圧送室50に流れ接続されている。これによって、燃料を低圧室44から圧送室50内に案内することができる。
【0023】
ポンプハウジング40の側方では、出口24に接続管片52(流出管片52)が取り付けられている。出口24には、さらに、流出弁54と圧力制限弁56とが設けられている。この圧力制限弁56は、ポンプハウジング40に形成された孔58内に配置されている。流出弁54は、ポンプハウジング40に形成された孔60内に配置されている。
【0024】
孔58,60は、本例では互いに平行な方向に向けられていて、出口24もしくは接続管片52に流れ接続されている。流出弁54は、貫通路62を介してさらに圧送室50に流れ接続されている。圧力制限弁56は、特に複数の構成要素から成っていて、例えば、弁本体64、ボール66、ばね受け68および/またはばね70を有していてもよい(図2の拡大部分図参照)。
【0025】
圧力制限弁56が内部に配置された孔58は、通路72を介して低圧室44に流れ接続されている。通路72は、ポンプハウジング40の壁74に形成されている。この壁74は、低圧室44をポンプハウジング40に向かって画定していて、低圧室44を孔58から分離している。
【0026】
通路72は、中心長手方向軸線76に沿って、特に直線状に延在している。通路72は、低圧室44に向けられた端部に、圧力制限弁56を備えた孔58に向けられた端部と等しい、またはそれよりも大きな横断面積を有している。
【0027】
本例では、通路72の中心長手方向軸線76および低圧室44の中心長手方向軸線77および/またはポンプハウジング40の中心長手方向軸線78は、互いに平行に配置されている、または互いに合致している。
【0028】
本例では、通路72は、軸線方向の第1の通路区分80と軸線方向の第2の通路区分82とを有している。この第2の通路区分82は低圧室44に臨んでいて、第1の通路区分80よりも大きな横断面積を有している。本例では、通路72は、段付けられた通路として段付き孔の形態で形成されている。この段付き孔は、低圧室44に向かって拡幅されている(第1の通路区分80における直径が第2の通路区分82における直径よりも小さい)。図示していない実施形態では、通路72の横断面積は、通路72の中心長手方向軸線76に沿って低圧室44に向かって円錐形に増加していてもよい。
【0029】
ピストン36が内部で移動する圧送室50は、圧力制限弁56が内部に配置された孔58から壁84によって分離されている。この壁84は通路なしに形成されている。言い換えると、圧送室50と孔58との間には、壁84によって直接的な流れ接続路が存在していない。
【0030】
圧力制限弁56用の孔58の中心長手方向軸線86は、ポンプハウジング40の中心長手方向軸線78に対して直交する方向に向けられている。
【0031】
ピストン36の上昇運動によって、圧送室50内に存在する媒体(燃料)が押し退けられ、圧送室50から離れる方向に開放する流出弁54と、出口24もしくは接続管片52とを介して、例えば高圧レール25に圧送される。圧力制限弁56は、燃料システム10の高圧領域における許容できないほど高い圧力を予防するために、流出弁54に対して逆並列接続されている(逆向きの開放方向)。
図1
図2