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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】コロイダルシリカ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
C01B33/141
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023565549
(86)(22)【出願日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2023026412
【審査請求日】2023-10-25
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000238164
【氏名又は名称】扶桑化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 楠子
(72)【発明者】
【氏名】塚本 聖哉
(72)【発明者】
【氏名】中野 智陽
(72)【発明者】
【氏名】小澤 秀太
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-054684(JP,A)
【文献】国際公開第2023/119549(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/141
C09K 3/14
H01L 21/304
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカの製造方法であって、
水とシリカ粒子から成るシリカゾルを、常圧下、水の沸点で、シリカゾル1m3当たりの撹拌動力を0.01kW/m3~0.40kW/m3とする条件下で、撹拌し、加熱処理する工程を含み、
前記加熱処理時の前記シリカゾルのpHは、pH9.0~pH10.5であり、
前記加熱処理の時間は、11時間~35時間である、
コロイダルシリカの製造方法。
【請求項2】
前記シリカゾルは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液A 1kgに対する前記溶液Bに含まれるアルコキシシランの添加速度を、0.8mol/時/kg~2.50mol/時/kgとする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである、
請求項1に記載のコロイダルシリカの製造方法。
【請求項3】
前記シリカゾルは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液Bに含まれるアルコキシシラン濃度を、60質量%~98質量%とする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである、
請求項1に記載のコロイダルシリカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の少ないコロイダルシリカに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造におけるCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的物理的研磨)プロセスでは、研磨面上への微粒子の残存が、度々問題と成る。研磨面上への微粒子の残存は、半導体製造における歩留まりの悪化を招く。
【0003】
半導体の微細化が進むにつれて、研磨面上に残存する微粒子量を一層少なくする事が求められており、これに伴いCMPスラリー中に含まれる微粒子量も少なくする事が求められている。
【0004】
CMPスラリー用の砥粒原料として、コロイダルシリカが用いられる。コロイダルシリカ中には、通常、主粒子よりも小さな微粒子がわずかに含有されており、当該微粒子は前記研磨面上への残存という問題の原因と成る。
【0005】
従来、微粒子の少ないコロイダルシリカの製造方法が開示されている(特許文献1及び2)。特許文献1は、アルコキシシラン又はその縮合物の加水分解及び縮合反応において、反応開始後最初に電気伝導度が極大となる時点から5分後から、反応終了まで電気伝導度の値が90%以上変化しない反応条件に調整する事で、微粒子の少ないシリカゾルを得る事を開示する。特許文献2は、テトラアルコキシシランの加水分解及び縮合反応において、加水分解反応及び縮合反応の反応開始から反応終了まで反応系内の水の濃度変化を3質量%以内にする事で、微粒子の少ないシリカゾルを得る事を開示する。
【0006】
また、製造されたコロイダルシリカを、加熱蒸留に依り、有機溶媒濃度が1質量%未満と成る様に溶媒置換処理する方法(特許文献3)、中性酸化剤を添加する方法(特許文献4)、限外濾過膜を用いて限外濾過する事で微粒子を低減する方法(特許文献5)が開示されている。特許文献3は、ゾル-ゲル法に依り製造されたコロイダルシリカ中の残留有機溶媒濃度が1質量%未満と成る様に、コロイダルシリカと共存している有機溶媒を留去する事で、体積平均粒子径の40%以下の粒径を有する微小粒子の個数分布割合が10%以下であるコロイダルシリカを得る事を開示する。特許文献4は、ゾル-ゲル法のシリカゾルに中性酸化剤(過酸化水素を含む)を添加する事で、中間生成物(未反応物)の少ないシリカゾルを得る事を開示する。特許文献5は、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させ得られたシリカゾルを、分画分子量5,000~80,000の限外濾過膜を用いて限外濾過する事で、中間生成物を除去する事を開示する。
【0007】
これら従来技術を用いても、先端テクノロジーノードの半導体CMPプロセスの要求を十分に満たす水準まで微粒子量が低減されたコロイダルシリカは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-164351号公報
【文献】特開2022-109711号公報
【文献】国際公開番号WO2016/117560A1
【文献】特開2020-75830号公報
【文献】特開2021-116208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、微粒子の少ないコロイダルシリカを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者等は、鋭意検討を進めた結果、コロイダルシリカの製造工程中に特定の加熱処理を含む事で、微粒子の含有量が少ないコロイダルシリカを製造する事が出来る技術を開発した。
【0011】
本発明は、次のコロイダルシリカ、及びコロイダルシリカの製造方法を包含する。
【0012】
項1.
コロイダルシリカの製造方法であって、
水とシリカ粒子から成るシリカゾルを、常圧下、水の沸点で加熱処理する工程
を含む、コロイダルシリカの製造方法。
【0013】
項2.
前記加熱処理時の前記シリカゾルのpHは、pH9.0~pH10.5であり、
前記加熱処理の時間は、11時間~35時間であり、
前記加熱処理は、シリカゾル 1m3当たりの撹拌動力を0.01kW/m3~0.40kW/m3とする条件下で、前記シリカゾルを撹拌する、
前記項1に記載のコロイダルシリカの製造方法。
【0014】
項3.
前記シリカゾルは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液A 1kgに対する前記溶液Bに含まれるアルコキシシランの添加速度を、0.8mol/時/kg~2.50mol/時/kgとする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである、
前記項1又は2に記載のコロイダルシリカの製造方法。
【0015】
項4.
前記シリカゾルは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液Bに含まれるアルコキシシラン濃度を、60質量%~98質量%とする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである、
前記項1又は2に記載のコロイダルシリカの製造方法。
【0016】
項5.
コロイダルシリカであって、
下記の通りに定義された微粒子含有量パラメータ1が15.0以下である、コロイダルシリカ。
【0017】
微粒子含有量パラメータ1の定義
(i)コロイダルシリカに、電気抵抗率18.2MΩ以上の超純水(以下、「超純水」と記す)を加えて、シリカ濃度2質量%(wt%)と成る様に、希釈する(希釈液)。
【0018】
(ii)希釈液9.1gを、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製、遠沈管(型番:S303922A)に取り分け、遠心用ローターS58A、遠心機CS100FNXを用いて、遠心回転速度50,000rpm、遠心温度5℃、遠心時間60分の条件で遠心する(全て、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製)。
【0019】
(iii)遠心後、遠沈管から上澄み液2mLを採取し、この遠心後上澄み液2mLと、扶桑化学工業株式会社製の超高純度コロイダルシリカPL-3を超純水で10倍希釈したシリカゾルとを、下記の質量比で混合する(混合液)。
【0020】
遠心後上澄み液:PL-3の10倍希釈液=9:1(質量比)
(iv)得られた混合液の粒度分布を走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置に依り測定する。
【0021】
(v)得られた粒度分布の測定値から、下記の式(1)を用いて算出した値をコロイダルシリカの微粒子含有量パラメータ1と定義する。
【0022】
式(1)微粒子含有量パラメータ1=
(15nm以下の粒子の総検出個数)÷(25nm以上の粒子の総検出個数)
本発明のコロイダルシリカは、微粒子の含有量が少ない。本発明のコロイダルシリカを砥粒として用いてCMPを実施すると、従来のコロイダルシリカを砥粒として用いた場合と比べて、研磨面上の残存微粒子量が著しく低減され、且つ研磨面の表面粗さを低減させる事が可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、微粒子の少ないコロイダルシリカを提供する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明を表す実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解出来る説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0026】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」の何れも包含する概念である。
【0027】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、「A以上、B以下」を意味する。
【0028】
本明細書において、一般に、部、%等の表示を使用する。
【0029】
本明細書において、特に断りがない限り、質量部又は質量%(wt%)を表す。
【0030】
[1]コロイダルシリカの製造方法
本発明は、コロイダルシリカの製造方法を包含する。
【0031】
本発明のコロイダルシリカの製造方法は、水とシリカ粒子から成るシリカゾルを、常圧下、水の沸点で加熱処理する工程を含む。
【0032】
加熱処理時のシリカゾルのpHは、好ましくは、pH9.0~pH10.5である。
【0033】
加熱処理の時間は、好ましくは、11時間~35時間である。
【0034】
加熱処理は、好ましくは、シリカゾル 1m3当たりの撹拌動力を0.01kW/m3~0.40kW/m3とする条件下で、シリカゾルを撹拌する。
【0035】
シリカゾル(水とシリカ粒子から成るシリカゾル)は、好ましくは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液A 1kgに対して、前記溶液Bに含まれるアルコキシシランの添加速度を、0.8mol/時/kg~2.50mol/時/kgとする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである。
【0036】
mol/時/kgは、溶液A 1kgに対して、1時間あたりに添加するアルコキシシランの質量をシリカの物質量に換算した値を示す。
【0037】
シリカゾル(水とシリカ粒子から成るシリカゾル)は、好ましくは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液Bに含まれるアルコキシシラン濃度を、60質量%~98質量%とする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである。
【0038】
本発明のコロイダルシリカは、微粒子の含有量が少ない。本発明の製造方法に依り得られるコロイダルシリカを砥粒として用いてCMPを実施すると、研磨面上の残存微粒子量が著しく低減され、且つ研磨面の表面粗さを低減させる事が可能である。
【0039】
本発明のコロイダルシリカの製造方法では、好ましくは、(i)アルコキシド法でシリカ粒子を合成し(粒子合成)、(ii)加熱蒸留で粒子濃度を濃縮し(加熱濃縮)、(iii)加熱蒸留で溶媒を水に置換し(加熱水置換)、(iv)加熱処理で微粒子を減らすという(加熱処理)、一連の操作を経る事に依り、微粒子の少ないコロイダルシリカを製造する事が出来る。
【0040】
(1)シリカ粒子の合成工程
本発明のコロイダルシリカの製造方法では、シリカ粒子は、好ましくは、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事に依り、シリカゾルを得る(アルコキシド法に依る粒子合成工程)。
【0041】
3液法(シリカ粒子の合成方法)
シリカ粒子の合成は、好ましくは、3液法であり、水、アルカリ触媒、及びアルコールを含む溶液Aに、アルコキシシラン(テトラアルコキシシラン)を含む溶液B、並びに、水を含む溶液Cを添加し、アルコキシシラン(テトラアルコキシシラン)を加水分解反応、及び縮合反応させる事に依り、シリカ粒子を合成する。シリカ粒子の合成を、好ましくは、3液法を採る事に依り、加水分解反応、及び縮合反応の制御性に優れる。
【0042】
溶液A(3液法)
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、溶液Aの水濃度(質量%、wt%)は、好ましくは、3wt%~25wt%であり、より好ましくは3wt%~23wt%であり、更に好ましくは、3wt%~20wt%であり、最も好ましくは、3wt%~18wt%である。溶液Aの水濃度を、好ましくは、3wt%~25wt%に調整する事に依り、加水分解反応に依り生成するケイ酸の反応液中での溶解性に優れる。
【0043】
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、溶液Aのアルカリ触媒濃度(質量%、wt%)は、好ましくは、0.1wt%~3.0wt%であり、より好ましくは、0.2wt%~2.5wt%であり、更に好ましくは、0.3wt%~2.0wt%であり、最も好ましくは、0.5wt%~1.6wt%である。溶液Aのアルカリ触媒濃度を、好ましくは、0.1wt%~3.0wt%に調整する事に依り、シリカ粒子の凝集を抑制し、分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。
【0044】
アルカリ触媒は、好ましくは、金属不純物の混入を回避する点で、金属成分を含まない有機塩基触媒であり、より好ましくは、窒素を含有する有機塩基触媒である。
【0045】
アルカリ触媒は、好ましくは、アンモニアである。
【0046】
有機系塩基触媒は、好ましくは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラメチルグアニジン、3-エトキシプロピルアミン(3-EOPA)、ジプロピルアミン、トリエチルアミン等である。
【0047】
触媒作用に優れると共に、揮発性が高く、後工程で容易に除去する事が出来る点から、好ましくは、アンモニアを用いる。
【0048】
シリカ粒子の真比重を高くする観点から、反応温度を高くしても揮発し難い様に、沸点が90℃以上の有機系塩基触媒を選択する事が好ましく、好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、3-エトキシプロピルアミン等を用いる。
【0049】
アルカリ触媒は、これらのアルカリ触媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0050】
アルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等である。
【0051】
アルコールは、これらのアルコールを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0052】
溶液B(3液法)
シリカゾルは、好ましくは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液Bに含まれるアルコキシシラン濃度(質量%、wt%)を、60質量%~98質量%とする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである。
【0053】
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、溶液Bのアルコキシシラン濃度は、好ましくは、60wt%~98wt%であり、より好ましくは、65wt%~98wt%であり、更に好ましくは、68wt%~98wt%であり、最も好ましくは、70wt%~95wt%である。溶液Bのアルコキシシラン濃度を、好ましくは、60wt%~98wt%に調整する事に依り、用いる溶媒量を低減する事が出来、シリカ粒子の生産性に優れる。
【0054】
シリカゾルは、好ましくは、
(a)水及びアルカリ触媒を含む溶液Aに、アルコキシシランを含む溶液Bを添加し、
(b)前記溶液A 1kgに対して、前記溶液Bに含まれるアルコキシシランの添加速度を、0.8mol/時/kg~2.50mol/時/kgとする条件下で、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合する事で得られるシリカゾルである。
【0055】
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、溶液Bのアルコキシシランの添加速度(mol/時/kg)は、好ましくは、0.8mol/時/kg~2.5mol/時/kgであり、より好ましくは、1.1mol/時/kg~2.4mol/時/kgである。溶液Bのアルコキシシランの添加速度を、好ましくは、0.8mol/時/kg~2.5mol/時/kgに調整する事に依り、反応時間が短縮され、生産性に優れる。
【0056】
mol/時/kgは、溶液A 1kgに対して、1時間あたりに添加するアルコキシシランの質量をシリカの物質量に換算した値を示す。
【0057】
アルコキシシランは、好ましくは、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等テトラC1-8アルコキシシランを用いる。アルコキシシランは、より好ましくは、テトラC1-4アルコキシシランを用い、更に好ましくは、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン等を用いる。
【0058】
アルコキシシランは、これらのアルコキシシランを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0059】
アルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等である。
【0060】
アルコールは、これらのアルコールを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0061】
溶液C(3液法)
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、溶液Cのアルカリ触媒濃度(質量%、wt%)は、好ましくは、0wt%~9wt%であり、より好ましくは、0wt%~8wt%であり、更に好ましくは、0wt%~7wt%であり、最も好ましくは、0wt%~6wt%である。溶液Cのアルカリ触媒濃度を、好ましくは、0wt%~9wt%に調整する事に依り、反応が過度に遅く進行せず、制御性に優れる。
【0062】
アルカリ触媒は、好ましくは、アンモニアである。
【0063】
有機系塩基触媒は、好ましくは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラメチルグアニジン、3-エトキシプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミン等である。
【0064】
触媒作用に優れると共に、揮発性が高く、後工程で容易に除去する事が出来る点から、好ましくは、アンモニアを用いる。
【0065】
シリカ粒子の真比重を高くする観点から、反応温度を高くしても揮発し難い様に、沸点が90℃以上の有機系塩基触媒を選択する事が好ましく、好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、3-エトキシプロピルアミン等を用いる。
【0066】
アルカリ触媒は、これらのアルカリ触媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0067】
加水分解反応、及び縮合反応
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、加水分解反応、及び縮合反応の反応開始から反応終了までの反応系内の水の濃度の最大値(質量%、wt%)は、好ましくは、28wt%以下であり、より好ましくは、25wt%以下であり、更に好ましくは、20wt%以下であり、最も好ましくは、18wt%以下である。加水分解反応、及び縮合反応の反応開始から反応終了までの反応系内の水の濃度の最大値を、好ましくは、28wt%以下に調整する事に依り、反応溶液中でのアルコキシシラン(テトラアルコキシシラン等)の溶解性が良好と成り、シリカ粒子の微粒子の発生を抑制する事が出来る。
【0068】
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、加水分解反応、及び縮合反応の反応開始から反応終了までの反応系内の水の濃度変化(質量%、wt%)は、好ましくは、15wt%以下であり、より好ましくは、13wt%以下であり、更に好ましくは、11wt%以下であり、最も好ましくは、8wt%以下である。加水分解反応、及び縮合反応の反応開始から反応終了までの反応系内の水の濃度変化を、好ましくは、15wt%以下に調整する事に依り、反応に依り生成するケイ酸の溶解性が保持され、シリカ粒子の微粒子の発生を抑制する事が出来る。
【0069】
シリカ粒子の合成において、3液法を採用し、反応温度(℃)は、好ましくは、10℃~80℃であり、より好ましくは、12℃~70℃であり、更に好ましくは、15℃~60℃であり、最も好ましくは、18℃~55℃である。シリカ粒子の合成の反応温度を、好ましくは、10℃~80℃に調整する事に依り、反応が過度に遅く進行せず、制御性に優れる。
【0070】
本発明のコロイダルシリカの製造方法では、アルコキシシランを加水分解、及び脱水縮合し、シリカゾルを得る製造方法(アルコキシド法に依るシリカ粒子の合成方法)に加えて、ケイ酸ソーダをイオン交換し、活性ケイ酸を調製後、塩基性条件下で、ケイ酸種を縮合し、シリカゾルを得る製造方法を用いても良い。
【0071】
(2)加熱濃縮工程
本発明のコロイダルシリカの製造方法では、好ましくは、加熱濃縮工程を含み、加熱蒸留で粒子濃度を濃縮する。コロイダルシリカの製造方法では、加熱濃縮工程を含む事に依り、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0072】
加熱濃縮工程では、Pv値(単位体積当たりの撹拌動力)は、好ましくは、0.01kW/m3~0.40kW/m3であり、より好ましくは、0.01kW/m3~0.30kW/m3であり、更に好ましくは、0.01kW/m3~0.20kW/m3であり、最も好ましくは、0.01kW/m3~0.10kW/m3である。加熱濃縮処理のPv値を、好ましくは、0.40kW/m3以下に調整する事に依り、シリカ粒子の濃度温度を均一化し、Pv値を一定値以下にする事で、シリカ粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0073】
加熱濃縮工程の加熱濃縮時間(分、min)は、好ましくは、60分~600分である。加熱濃縮工程の加熱濃縮時間を、好ましくは、60分~600分に調整する事に依り、シリカ粒子の平均二次粒子径、会合度を大きく変化させる事無く、シリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0074】
(3)加熱水置換工程(水とシリカ粒子から成るシリカゾルの製造)
加熱処理に供するコロイダルシリカは、好ましくは、加熱蒸留する事に依り、シリカ粒子の濃度を濃縮し、溶媒を水に置換したものである。下記の条件で加熱濃縮及び加熱水置換する事で、加熱処理を行う前の時点から15 nm以下の微粒子含有量を低減できる。下記の条件で加熱濃縮及び加熱水置換する事に依り得られた微粒子含有量の少ないコロイダルシリカを上記の条件で加熱処理する事で、微粒子含有量がより一層低減されたコロイダルシリカが得られる。
【0075】
本発明のコロイダルシリカの製造方法では、好ましくは、加熱水置換工程を含み、加熱蒸留で溶媒を水に置換する。コロイダルシリカの製造方法では、加熱水置換工程を含む事に依り、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0076】
加熱水置換工程では、Pv値(単位体積あたりの撹拌動力)は、好ましくは、0.01kW/m3~0.40kW/m3であり、より好ましくは、0.01kW/m3~0.30kW/m3であり、更に好ましくは、0.01kW/m3~0.20kW/m3であり、最も好ましくは、0.01kW/m3~0.10kW/m3である。加熱水置換処理のPv値を、好ましくは、0.40kW/m3以下に調整する事に依り、シリカゾルの濃度温度を均一化し、Pv値を一定値以下にする事で、シリカ粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0077】
加熱水置換工程の加熱水置換時間(分、min)は、好ましくは、60分~600分である。加熱水置換工程の加熱水置換時間を、好ましくは、60分~600分に調整する事に依り、シリカ粒子の平均二次粒子径、会合度を大きく変化させる事無く、シリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0078】
加熱水置換工程では、加熱水置換後のメタノール濃度(ppm)は、好ましくは、10,000ppm以下であり、より好ましくは、5,000ppm以下であり、更に好ましくは、1,000ppm以下であり、最も好ましくは、500ppm以下である。加熱水置換後のメタノール濃度を、好ましくは、10,000ppm以下に調整する事に依り、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0079】
(4)加熱処理工程(コロイダルシリカの製造方法)
加熱処理に供するコロイダルシリカは、好ましくは、加熱蒸留する事に依り、シリカ粒子の濃度を濃縮し、溶媒を水に置換したものである。加熱濃縮、及び加熱水置換する事に依り、加熱処理を行う前の時点から、15nm以下のシリカ粒子の微粒子含有量を低減する事が出来る。加熱濃縮、及び加熱水置換する事に依り得られたシリカ粒子の微粒子含有量の少ないコロイダルシリカを、加熱処理する事に依り、微粒子含有量がより一層低減されたコロイダルシリカを得る事が出来る。
【0080】
本発明のコロイダルシリカの製造方法は、水とシリカ粒子から成るシリカゾルを、常圧下、水の沸点で加熱処理する工程を含む。本発明のコロイダルシリカの製造方法では、加熱処理を行う事に依り、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の微粒子を低減させる事が出来る。
【0081】
加熱処理工程では、加熱温度は、水の沸点で加熱還流する。加熱温度を、水の沸点で加熱還流する事に依り、シリカ粒子の平均二次粒子径、会合度を大きく変化させる事無く、シリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0082】
加熱処理工程では、加熱時の圧力は、常圧で行う。加熱時の圧力を、常圧で行う事に依り、シリカ粒子の平均二次粒子径、会合度を大きく変化させる事無く、シリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0083】
加熱処理時のシリカゾルのpHは、好ましくは、pH9.0~pH10.5である。
【0084】
シリカゾルのpHは、好ましくは、3-エトキシプロピルアミン(3-EOPA)、アンモニア、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等を用いて、pH9.0~pH10.5に調整する。
【0085】
加熱処理時のシリカゾルのpH最小値は、好ましくは、9.0以上であり、より好ましくは、9.2以上であり、更に好ましくは、9.4以上であり、最も好ましくは、9.5以上である。加熱処理時のシリカゾルのpH最小値を、好ましくは、9.0以上に調整する事に依り、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0086】
加熱処理時のシリカゾルのpH最大値は、好ましくは、10.5以下であり、より好ましくは、10.3以下であり、更に好ましくは、10.1以下であり、最も好ましくは、10.0以下である。加熱処理時のシリカゾルのpH最大値を、好ましくは、10.5以下に調整する事に依り、シリカ粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0087】
加熱処理は、好ましくは、シリカゾル1m3当たりの撹拌動力(Pv値)を0.01kW/m3~0.40kW/m3とする条件下で、シリカゾルを撹拌する。
【0088】
加熱処理工程では、Pv値(単位体積あたりの撹拌動力)は、好ましくは、0.01kW/m3~0.40kW/m3であり、より好ましくは0.01kW/m3~0.30kW/m3であり、更に好ましくは0.01kW/m3~0.20kW/m3であり、最も好ましくは0.01kW/m3~0.10kW/m3である。加熱処理時のPv値を、好ましくは、0.40kW/m3以下に調整する事に依り、シリカゾルの濃度温度を均一化し、Pv値を一定値以下にする事で、シリカ粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0089】
加熱処理の時間は、好ましくは、11時間~35時間である。加熱処理工程では、加熱時間(時間、hr)は、好ましくは11hr~35hrであり、より好ましくは、12hr~30hrであり、更に好ましくは、14hr~28hrであり、最も好ましくは、15hr~25hrである。加熱処理の時間を、好ましくは、11時間~35時間に調整する事に依り、シリカ粒子の平均二次粒子径、会合度を大きく変化させる事無く、シリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0090】
加熱処理工程では、加熱時のシリカゾルの濃度(質量%、wt%)は、好ましくは、2wt%~50wt%であり、より好ましくは4wt%~45wt%であり、更に好ましくは6wt%~40wt%であり、最も好ましくは8wt%~35wt%である。加熱処理時のシリカゾルの濃度を、好ましくは、2wt%~50wt%に調整する事に依り、シリカ粒子の平均二次粒子径、会合度を大きく変化させる事無く、シリカ粒子の微粒子を低減する事が出来る。
【0091】
[2]コロイダルシリカ
本発明は、コロイダルシリカを包含する。
【0092】
本発明のコロイダルシリカは、下記の通りに定義された微粒子含有量パラメータ1が15.0以下である。
【0093】
微粒子含有量パラメータ1の定義
(i)コロイダルシリカに、電気抵抗率18.2MΩ以上の超純水(以下、「超純水」と記す)を加えて、シリカ濃度2質量%(wt%)と成る様に、希釈する(希釈液)。
【0094】
(ii)希釈液9.1gを、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製、遠沈管(型番:S303922A)に取り分け、遠心用ローターS58A、遠心機CS100FNXを用いて、遠心回転速度50,000rpm、遠心温度5℃、遠心時間60分の条件で遠心する(全て、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製)。
【0095】
(iii)遠心後、遠沈管から上澄み液2mLを採取し、この遠心後上澄み液2mLと、扶桑化学工業株式会社製の超高純度コロイダルシリカPL-3を超純水で10倍希釈したシリカゾルとを、下記の質量比で混合する(混合液)。
【0096】
遠心後上澄み液:PL-3の10倍希釈液=9:1(質量比)
【0097】
(iv)得られた混合液の粒度分布を走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置に依り測定する。
【0098】
(v)得られた粒度分布の測定値から、下記の式(1)を用いて算出した値をコロイダルシリカの微粒子含有量パラメータ1と定義する。
【0099】
式(1)微粒子含有量パラメータ1=
(15nm以下の粒子の総検出個数)÷(25nm以上の粒子の総検出個数)
本発明のコロイダルシリカは、(i)平均二次粒子径が20nm~250nmであり、(ii)微粒子含有量パラメータ1が15.0以下である。
【0100】
本発明のコロイダルシリカは、微粒子の含有量が少ない。本発明の製造方法に依り得られるコロイダルシリカを砥粒として用いてCMPを実施すると、研磨面上の残存微粒子量が著しく低減され、且つ研磨面の表面粗さを低減させる事が可能である。
【0101】
コロイダルシリカのシリカ濃度(質量%、wt%)は、好ましくは、2wt%~55wt%であり、より好ましくは、2wt%~50wt%であり、更に好ましくは、2wt%~45wt%であり、最も好ましくは、3wt%~40wt%である。コロイダルシリカのシリカ濃度を、好ましくは、2wt%~55wt%に調整する事に依り、研磨レートに優れる。
【0102】
[3]コロイダルシリカの物性評価方法
本発明では、シリカ粒子の各物性を次の通り評価する。
【0103】
(1-1)微粒子含有量パラメータ1の測定方法
(i)測定対象のコロイダルシリカサンプルに、電気抵抗率18.2MΩ以上の超純水(以下、「超純水」と記す)を加えて、シリカ濃度2質量%(wt%)と成る様に、希釈する(希釈液)。
【0104】
(ii)希釈液9.1gを、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製、遠沈管(型番:S303922A)に取り分け、遠心用ローターS58A、遠心機CS100FNXを用いて、遠心回転速度50,000rpm、遠心温度5℃、遠心時間60分の条件で遠心する(全て、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製)。
【0105】
(iii)遠心後、遠沈管から上澄み液2mLを採取し、この遠心後上澄み液2mLと、扶桑化学工業株式会社製の超高純度コロイダルシリカPL-3を超純水で10倍希釈したシリカゾルとを、下記の質量比で混合する。
【0106】
遠心後上澄み液:PL-3の10倍希釈液=9:1(質量比)
得られた混合液を測定サンプル1とする。
【0107】
(iv)測定サンプル1の粒度分布を走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置に依り測定する。走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置は、例えばKANOMAX社製、Liquid Nanoparticle Sizer System Model9310(LNS)があり、LNSを用いて下記の(1-2)粒度分布測定条件で測定する。
【0108】
(v)得られた粒度分布の測定値から、下記の式を用いて、コロイダルシリカサンプルの微粒子含有量パラメータ1を計算する。
【0109】
式(1)微粒子含有量パラメータ1=
(15nm以下の粒子の総検出個数)÷(25nm以上の粒子の総検出個数)
【0110】
(1-2)粒度分布測定条件
(i)測定に使用する空気は、コンプレッサーに依り生成した圧縮空気を、エアフィルター(CKD製、FCS500-88-P90)に依り、精製した乾燥空気を用いる。
【0111】
(ii)LNS装置中に、超純水、及び上記乾燥空気を供給した状態で、24時間以上の測定前事前運転を実施する。
【0112】
(iii)超純水を用いて、測定装置内を洗浄する。超純水のパーティクル濃度を表1に示す条件で測定し、総検出粒子数が5.0E+11(#/mL)未満と成った時点で、洗浄終了とする。
【0113】
(iv)表1に示す測定条件で、標準粒子として、KANOMAX社製、LNS Volumetric Standardの測定を行う。
【0114】
(v)超純水を用いて、測定装置内を洗浄する。超純水のパーティクル濃度を表1に示す条件で測定し、総検出粒子数が1.0E+11(#/mL)未満と成った時点で洗浄終了とする。
【0115】
(vi)表1に示す測定条件で測定サンプル1の測定を行う。
【0116】
コロイダルシリカは、上述の測定方法に依り測定された微粒子含有量パラメータ1が15.0以下である。
【0117】
コロイダルシリカは、上述の測定方法に依り測定された微粒子含有量パラメータ1が15.0以下であり、好ましくは、12.0以下であり、より好ましくは、10.0以下であり、更に好ましくは、8.0以下である。微粒子含有量パラメータ1を、15.0以下に調整する事に依り、研磨面上の残存微粒子量を低減する事が出来る。
【0118】
(2-1)微粒子含有量パラメータ2(%)の測定方法
(i)測定対象のコロイダルシリカサンプルに、電気抵抗率18.2MΩ以上の超純水(以下、「超純水」と記す)を加えて、希釈後のシリカ濃度0.1質量%(wt%)と成る様に、希釈する。得られた希釈液を測定サンプル2とする。
【0119】
(ii)測定サンプル2の粒度分布を走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置に依り測定する。走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置は、例えばKANOMAX社製、Liquid Nanoparticle Sizer System Model9310(LNS)があり、LNSを用いて下記の(2-2)粒度分布測定条件で測定する。
【0120】
(iii)得られた粒度分布の測定値から、下記の式を用いて、コロイダルシリカサンプルの微粒子含有量パラメータ2を計算する。
【0121】
式(3)微粒子含有量パラメータ2=
(15nm以下の粒子の総検出個数)÷(全粒子の総検出個数)×100 [%]
【0122】
(2-2)粒度分布測定条件
(i)測定に使用する空気は、コンプレッサーに依り生成した圧縮空気を、エアフィルター(CKD製、FCS500-88-P90)に依り、精製した乾燥空気を用いる。
【0123】
(ii)LNS装置中に、超純水、及び上記乾燥空気を供給した状態で、24時間以上の測定前事前運転を実施する。
【0124】
(iii)超純水を用いて、測定装置内を洗浄する。超純水のパーティクル濃度を表1に示す条件で測定し、総検出粒子数が5.0E+11(#/mL)未満と成った時点で、洗浄終了とする。
【0125】
(iv)表1(LNS測定条件)に示す測定条件で、標準粒子として、KANOMAX社製、LNS Volumetric Standardの測定を行う。
【0126】
(v)超純水を用いて、測定装置内を洗浄する。超純水のパーティクル濃度を表1に示す条件で測定し、総検出粒子数が1.0E+11(#/mL)未満と成った時点で洗浄終了とする。
【0127】
(vi)表1に示す測定条件で測定サンプル2の測定を行う。
【0128】
コロイダルシリカは、上述の測定方法に依り測定された微粒子含有量パラメータ2が8.0%以下である。
【0129】
コロイダルシリカは、上述の測定方法に依り測定された微粒子含有量パラメータ2が8.0%以下であり、好ましくは、7.0%以下であり、より好ましくは、6.0%以下であり、更に好ましくは、5.0%以下である。微粒子含有量パラメータ2を、8.0%以下に調整する事に依り、研磨面上の残存微粒子量を低減する事が出来る。
【0130】
【表1】
【0131】
(3)SEMで評価した微粒子量の割合(%)
(i)メタノール7.5 mL、水1.5 mL、0.01M HCl 1 mL、20%のコロイダルシリカ5μLを混合した分散液を試料台に落とし、乾燥させる。この試料台を走査型電子顕微鏡(SEM)にセットし、SEM画像を撮影する。
【0132】
(ii)走査型電子顕微鏡で撮影した1,000個のシリカ粒子の画像を、画像解析ソフト(三谷商事株式会社「WinRoof2018」)で、夫々楕円近似し、楕円短軸を計測した。
【0133】
(iii)上述したSEMの画像解析による楕円短軸の個数頻度分布において、楕円短軸がその平均値の25%以下にとなる粒子を微粒子と定義し、微粒子の個数割合を計算する。
【0134】
コロイダルシリカのSEMで評価した微粒子量の割合は、好ましくは0.1%以下である。コロイダルシリカのSEMで評価した微粒子量の割合が0.1%以下に調整する事に依り、研磨面上の残存微粒子量を低減する事が出来る。
【0135】
(4)平均一次粒子径(nm)
コロイダルシリカをホットプレートの上で予備乾燥後、800℃1時間熱処理して測定用サンプルを調製する。調製した測定用サンプルを用いて、BET比表面積を測定する。シリカの真比重を2.2として、2727/BET比表面積(m2/g)の値を換算して、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の平均一次粒子径(nm)とする。
【0136】
コロイダルシリカの平均一次粒子径は、好ましくは、5nm~130nmであり、より好ましくは、10nm~120nmであり、更に好ましくは、12nm~110nmであり、最も好ましくは、14nm~100nmである。コロイダルシリカの平均一次粒子径を、好ましくは、5nm~130nmに調整する事に依り、研磨した時の研磨面粗さを低減する事が出来る。
【0137】
(5)平均二次粒子径(nm)
コロイダルシリカに、0.3質量%クエン酸水溶液を加えて、シリカ濃度として1.0質量%(wt%)と成る様に希釈する(希釈液)。
【0138】
希釈液を測定用サンプルとする。測定用サンプルを用いて、動的光散乱法(大塚電子株式会社製、ELSZ-2000)に依り、平均二次粒子径を測定する。
【0139】
コロイダルシリカの平均二次粒子径(nm)は、好ましくは、20nm~250nmであり、より好ましくは、24nm~200nmであり、更に好ましくは、27nm~170nmであり、最も好ましくは、30nm~140nmである。コロイダルシリカの平均二次粒子径を、好ましくは、20nm~250nmに調整する事に依り、研磨面粗さを低減する事が出来る。
【0140】
(6)会合比
コロイダルシリカ中のシリカ粒子の会合比は、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の平均二次粒子径/平均一次粒子径を算出する事に依り得られる値である。
【0141】
コロイダルシリカ中のシリカ粒子の会合比は、好ましくは、1.0以上であり、より好ましくは、1.1以上であり、更に好ましくは、1.2以上であり、最も好ましくは、1.3以上である。コロイダルシリカの会合比の下限を1.0以上に調整する事に依り、コロイダルシリカを用いて研磨した時の研磨速度がより向上する。
【0142】
また、コロイダルシリカの会合比は、好ましくは、4.0以下であり、より好ましくは、3.5以下であり、更に好ましくは、3.0以下であり、最も好ましくは、2.9以下である。コロイダルシリカの会合比の上限を4.0以下に調整する事に依り、コロイダルシリカを用いて研磨した時の研磨面粗さを低減する事が出来る。
【0143】
(7)シリカ濃度(質量%(wt%))
コロイダルシリカをホットプレートの上で予備乾燥後、800℃1時間熱処理してその残量より算出した。
【0144】
コロイダルシリカのシリカ濃度は、好ましくは2wt%~55wt%であり、より好ましくは、2wt%~50wt%であり、更に好ましくは、2wt%~45wt%であり、最も好ましくは、3wt%~40wt%である。コロイダルシリカのシリカ濃度を2wt%~55wt%に調整する事に依り、コロイダルシリカを研磨した際の研磨速度がより向上する。
【0145】
(8)シラノール基密度(個/nm 2
コロイダルシリカのシラノール基密度はシアーズ法により求める事が出来る。シアーズ法はG.W.Sears,Jr.,“Determination of Specific Surface Area of Colloidal Silica by Titration with Sodium Hydroxide”, Analytical Chemistry, 28(12), 1981(1956).の記載を参照して実施した。測定には1質量%(wt%)シリカ分散液を使用し、0.1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行い、下記式に基づき、シラノール基密度を算出する。
【0146】
ρ=(a×f×6022)÷(c×S)
上記式中、ρ:シラノール基密度(個/nm2)、a:pH4-9の0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(mL)、f:0.1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液のファクター、c:シリカ粒子の質量(g)、S:BET比表面積(m2/g)をそれぞれ表す。
【0147】
コロイダルシリカ中のシリカ粒子のシラノール基密度は、好ましくは、1.5個/nm2以上であり、より好ましくは、1.6個/nm2以上であり、更に好ましくは、1.8個/nm2以上であり、最も好ましくは2.0個/nm2以上である。シラノール基密度の下限を1.5個/nm2以上に調整する事に依り、被研磨物の傷の発生がより一層低減される。
【0148】
また、シラノール基密度は、好ましくは、10.0個/nm2以下であり、より好ましくは、9.5個/nm2以下であり、更に好ましくは、9.0個/nm2以下であり、最も好ましくは、8.8個/nm2以下である。シラノール基密度の上限を10.0個/nm2以下に調整する事に依り、コロイダルシリカの研磨性がより一層向上する。
【0149】
(9)真比重
本明細書において、真比重は、コロイダルシリカを150℃のホットプレート上で乾固後、300℃炉内で1時間保持した後、エタノールを用いた液相置換法で測定する事が出来る。
【0150】
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の真比重は、好ましくは、1.0以上であり、より好ましくは、1.2以上であり、更に好ましくは、1.4以上であり、最も好ましくは、1.5以上である。真比重の下限を1.0以上に調整する事に依り、本発明のコロイダルシリカの研磨性がより一層向上する。
【0151】
また、真比重は好ましくは、3.0以下であり、より好ましくは、2.8以下であり、更に好ましくは、2.5以下であり、最も好ましくは、2.3以下である。真比重の上限を3.0以下に調整する事に依り、被研磨物の傷の発生がより一層低減される。
【0152】
(10)金属不純物含有量(ppm)
金属不純物の含有量は、原子吸光測定装置を用いて測定した。コロイダルシリカ中のナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、銅、亜鉛、鉛、銀、マンガン、コバルトの含有量の和を金属不純物の含有量とした。
【0153】
コロイダルシリカに含まれる金属不純物の含有量は、好ましくは、1 ppm以下である。コロイダルシリカに含まれる金属不純物の含有量を1 ppm以下に調整する事に依り、CMPスラリー用途としてより好適である。
【0154】
(11)研磨面粗さ RMS(nm)
コロイダルシリカに、超純水を加えて、シリカ濃度として3.0質量%(wt%)と成る様に希釈し、研磨用組成物とする。
【0155】
得られた研磨用組成物を用いて、酸化ケイ素膜が表面に成膜されている3cm四方のシリコンウェーハを、以下の条件で研磨する。
【0156】
研磨機:株式会社ナノファクター製、NF-300CMP
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製、IC1000TMPad
スラリー供給速度:50 mL/min
ヘッド回転速度:32 rpm
プラテン回転速度:32 rpm
研磨圧:4 psi
研磨時間:2 min
研磨後のウェーハに関して、原子間力顕微鏡を用いて、下記の条件で被研磨面の表面粗さを評価する。
【0157】
原子間力顕微鏡:株式会社島津製作所製SPM-9700HT
カンチレバー:OLYMPUS製、MICRO CANTILEVER OMCL-AC240TS-R3
観察モード:ダイナミック
走査範囲:3.0 μm四方
走査速度:1.00 Hz
観察視野数:研磨後のウェーハ1枚当たり、5視野を観察する。
【0158】
表面粗さの算出方法:5視野の二乗平均平方根粗さの平均値を研磨面粗さ RMSとした。
【0159】
研磨面粗さ RMS(nm)は、好ましくは、3.00nm以下である。
【0160】
(12)研磨面上の残存微粒子数(個/μm 2
コロイダルシリカに、超純水を加えて、シリカ濃度として3.0質量%(wt%)と成る様に希釈し、研磨用組成物とする。
【0161】
得られた研磨用組成物を用いて、酸化ケイ素膜が表面に成膜されている3cm四方のシリコンウェーハを以下の条件で研磨する。
【0162】
研磨機:株式会社ナノファクター製、NF-300CMP
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製、IC1000TMPad
スラリー供給速度:50 mL/min
ヘッド回転速度:32 rpm
プラテン回転速度:32 rpm
研磨圧:4 psi
研磨時間:2 min
研磨後のシリコンウェーハを、洗浄乾燥装置MAT ZAB-8S1Mに内蔵しているスクラブ部で、PVA製ロールブラシを接触させるスクラブ洗浄を以下の条件で行う事に依り洗浄する。シリコンウェーハを固定する為、枠をガラスエポキシ樹脂、ウェーハ固定部分をポリウレタンで出来た治具を使用している。
【0163】
ブラシ:AION社製、AION SCL BRUSH ROLLER 48(40/26)×224 mm
スクラブ洗浄時間:1 min
ブラシ回転速度:200 rpm
シリコンウェーハ固定部のスピン回転速度:50 rpm
スクラブ洗浄後、超純水で、研磨基板上側に750 mL/minで、1分間流し、更に、上記装置に内蔵しているスピンドライ装置で、1800 rpm、20秒間処理する。
【0164】
乾燥後のシリコンウェーハに関して、研磨面上の残存微粒子数を、株式会社島津製作所製、SPM-9700HTを用いて計測する。
【0165】
研磨面上の残存微粒子数(個/μm2)は、好ましくは、3個/μm2以下である。
【0166】
[4]研磨用組成物
本発明は、本発明のコロイダルシリカを含む研磨用組成物を包含する。
【0167】
研磨用組成物は、CMP用途に有用である。
【0168】
研磨用組成物は、コロイダルシリカを含む、更に添加剤を含んでも良い。添加剤は、例えば、希釈剤、酸化剤、pH調整剤、防食剤、安定化剤、界面活性剤等を用いる。
【0169】
研磨用組成物中のコロイダルシリカの含有量(質量%、wt%、シリカ濃度)は、好ましくは、0.01wt%~20wt%であり、より好ましくは、0.1wt%~15wt%であり、更に好ましくは、1wt%~10wt%であり、特に好ましくは、2wt%~5wt%である。
【0170】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る事は勿論である。
【実施例
【0171】
本発明を、実施例を示して具体的に説明する。
【0172】
但し、本発明は実施例に限定されない。
【0173】
[1]コロイダルシリカの製造
(1)実施例1(加熱処理有り)
加熱水置換されたシリカゾルの調製
メタノール976gに、水97g、及び29質量%アンモニア水58gを混合した溶液Aに対して、メタノール190g、テトラメトキシシラン(TMOS)506gを混合した溶液B、及び純水119gの溶液C(pH=7.85)を、75分掛けて、等速で添加した。
【0174】
反応液の調整において、混合前の各液の温度を35℃に保ち、反応液の温度を、前記溶液Aに対する前記溶液Bの添加開始時(合成開始時)の初期反応温度35℃から、添加終了時(合成終了時)の終了反応温度24.5℃まで低下する様に、温度を調節しながら、前記溶液Aに対して、前記溶液B、及び前記溶液Cの全量を等速で添加した。
【0175】
反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換した。加熱水置換後のメタノール濃度は301ppmであった。
【0176】
コロイダルシリカの製造(加熱処理)
上記で得られた加熱水置換されたシリカゾル100質量部に対して、3-エトキシプロピルアミン(3-EOPA)を0.65質量部添加し、pHを9.9に調整し、シリカゾルを撹拌した条件下で、常圧条件下において100℃で加熱した。シリカゾルが100℃になった時点を加熱処理開始とし、加熱処理開始から0.5時間毎にサンプリングを行い、pH測定を行った。
【0177】
加熱処理開始から0.5時間経過後、pHが9.6に成っていた為、3-EOPAを0.2質量部再添加し、pHを9.9に調整した。加熱処理開始から加熱終了まで上記の操作を1.5時間毎におこなった。加熱処理開始から加熱処理終了までに、3-EOPAを2.2質量部添加した。
【0178】
上記加熱処理を16時間行い、コロイダルシリカを得た。
【0179】
メタノール濃度の測定
ガスクロマトグラフ(Thermo社製、FocusGC)、オートサンプラー(Thermo社製、AS3000、又は同等性能以上の装置)、エアコンプレッサー(0.4MPa以上の圧縮空気が供給できるもの)を用いた。10μLシリンジに1μLサンプルを抜き取り、オートサンプラーにシリンジをセットし測定を行った。
【0180】
(2)実施例2(加熱処理有り)
加熱水置換されたシリカゾルの調製
純水7.7g、メタノール96.8g、及び29質量%アンモニア水4.5gを混合した溶液Aに、TMOS 100g、及びメタノール17.7gを混合した溶液B、並びに純水31.7g、及び29質量%アンモニア水4.7gを混合した溶液Cを、液温を36℃に保ちつつ、217分掛けて、等速で添加した。
【0181】
添加終了後、反応液の温度を36℃に保ったまま、更に反応液を30分間撹拌した。
【0182】
反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換した。加熱水置換後のメタノール濃度は212ppmであった。
【0183】
コロイダルシリカの製造(加熱処理)
上記で得られた加熱水置換されたシリカゾル100質量部に対して、3-EOPAを0.6質量部添加し、pHを9.8に調整し、シリカゾルを撹拌した条件下で、常圧条件下において100℃で加熱した。シリカゾルが100℃になった時点を加熱処理開始とし、加熱処理開始から0.5時間毎にサンプリングを行い、pH測定を行った。
【0184】
加熱処理開始から0.5時間経過後、pHが9.6に成っていた為、3-EOPAを0.12質量部再添加し、pHを9.8に調整した。加熱処理開始から加熱終了まで上記の操作を1.0時間毎におこなった。加熱処理開始から加熱処理終了までに、3-EOPAを2.76質量部添加した。
【0185】
上記加熱処理を23.0時間行い、コロイダルシリカを得た。
【0186】
(3)実施例3(加熱処理有り、平均粒径が小さい実施例)
加熱水置換されたシリカゾルの調製
純水463.1g、26質量%アンモニア水104.8g、メタノール4255.0gを混合した溶液Aに、TMOS 3,044.4g、メタノール229.4gを混合した溶液B、並びに純水643.2g、及び26質量%アンモニア水104.8gを混合した溶液Cを、液温を50℃に保ちつつ、150分掛けて、等速で添加した。
【0187】
反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換した。加熱水置換後のメタノール濃度は198ppmであった。
【0188】
コロイダルシリカの製造(加熱処理)
上記で得られた加熱水置換されたシリカゾル100質量部に対して、3-EOPAを0.65質量部添加し、pHを9.9に調整し、シリカゾルを撹拌した条件下で、常圧条件下において100℃で加熱した。シリカゾルが100℃になった時点を加熱処理開始とし、加熱処理開始から0.5時間毎にサンプリングを行い、pH測定を行った。
【0189】
加熱処理開始から0.5時間経過後、pHが9.6に成っていた為、3-EOPAを0.2質量部再添加し、pHを9.9に調整した。加熱処理開始から加熱終了まで上記の操作を1.0時間毎におこなった。加熱処理開始から加熱処理終了までに、3-EOPAを3.2質量部添加した。
【0190】
上記加熱処理を24.5時間行い、コロイダルシリカを得た。
【0191】
(4)実施例4(加熱処理有り、平均粒径が大きい実施例)
加熱水置換されたシリカゾルの調製
純水1546.6g、26質量%アンモニア水340.6g、メタノール8,363.2gを混合した溶液Aに、TMOS 6,088.0g、メタノール350.0gを混合した溶液B、並びに純水1,186.2g、及び26質量%アンモニア水340.6gを混合した溶液Cを、液温を20℃に保ちつつ、100分掛けて、等速で添加した。
【0192】
反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換した。加熱水置換後のメタノール濃度は196ppmであった。
【0193】
コロイダルシリカの製造(加熱処理)
上記で得られた加熱水置換されたシリカゾル100質量部に対して、3-EOPAを0.65質量部添加し、pHを9.9に調整し、シリカゾルを撹拌した条件下で、常圧条件下において100℃で加熱した。シリカゾルが100℃になった時点を加熱処理開始とし、加熱処理開始から0.25時間毎にサンプリングを行い、pH測定を行った。
【0194】
加熱処理開始から0.25時間経過後、pHが9.7に成っていた為、3-EOPAを0.15質量部再添加し、pHを9.9に調整した。加熱処理開始から加熱処理終了まで上記の操作を1.0時間毎に行った。加熱処理開始から加熱処理終了までに、3-EOPAを3.0質量部添加した。
【0195】
上記加熱処理を20.0時間行い、コロイダルシリカを得た。
【0196】
(5)実施例5(加熱処理有り、加熱時のシリカ濃度が低い実施例)
加熱水置換されたシリカゾルの調製
実施例1で得られた反応液を撹拌条件下で加熱水置換した。加熱水置換後のメタノール濃度は387 ppmであった。
【0197】
コロイダルシリカの製造(加熱処理)
上記で得られた加熱水置換されたシリカゾル100質量部に対して、3-EOPAを0.65質量部添加し、pHを9.9に調整し、シリカゾルを撹拌した条件下で、常圧条件下において100℃で加熱した。シリカゾルが100℃になった時点を加熱処理開始とし、加熱処理開始から0.5時間毎にサンプリングを行い、pH測定を行った。
【0198】
加熱処理開始から0.5時間経過後、pHが9.6に成っていた為、3-EOPAを0.2質量部再添加し、pHを9.9に調整した。加熱処理開始から加熱処理終了まで上記の操作を1.5時間毎に行った。加熱処理開始から加熱処理終了までに、3-EOPAを2.4質量部添加した。
【0199】
上記加熱処理を18.0時間行い、コロイダルシリカを得た。
【0200】
(6)実施例6(加熱処理有り、加熱時のシリカ濃度が高い実施例)
加熱水置換されたシリカゾルの調製
実施例1で得られた反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換した。加熱水置換後のメタノール濃度は184 ppmであった。
【0201】
コロイダルシリカの製造(加熱処理)
上記で得られた加熱水置換されたシリカゾル100質量部に対して、3-EOPAを0.65質量部添加し、pHを9.9に調整し、シリカゾルを撹拌した条件下で、常圧条件下において100℃で加熱した。シリカゾルが100℃になった時点を加熱処理開始とし、加熱処理開始から0.5時間毎にサンプリングを行い、pH測定を行った。
【0202】
加熱から0.5時間経過後、pHが9.6に成っていた為、3-EOPAを0.2質量部再添加し、pHを9.9に調整した。加熱処理開始から加熱処理終了まで上記の操作を1.5時間毎に行った。加熱処理開始から加熱処理終了までに、3-EOPAを2.0質量部添加した。
【0203】
上記加熱処理を15.5時間行い、コロイダルシリカを得た。
【0204】
(7)比較例1(加熱処理無し)
従来技術(特許文献1:特開2020-164351号公報、及び特許文献3:国際公開番号WO2016/117560A1)を模擬した例である。
【0205】
メタノール976gに、水97g、及び29質量%アンモニア水58gを混合した溶液Aに対して、メタノール190g、テトラメトキシシラン(TMOS)506gを混合した溶液B、及び純水119gである溶液C(pH=7.85)を、75分掛けて、等速で添加した。
【0206】
反応液の調整において、混合前の各液の温度を35℃に保ち、反応液の温度を、前記溶液Aに対する前記溶液Bの添加開始時(合成開始時)の初期反応温度35℃から、添加終了時(合成終了時)の終了反応温度24.5℃まで低下する様に温度を調節しながら、前記溶液Aに対して、前記溶液B、及び前記溶液Cの全量を等速で添加した。
【0207】
反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換し、コロイダルシリカを得た。
【0208】
(8)比較例2(加熱処理無し)
従来技術(特許文献2:特開2022-109711号公報、及び特許文献3)を模擬した例である。
【0209】
純水7.7g、メタノール96.8g、及び29質量%アンモニア水4.5gを混合した溶液Aに、テトラメトキシシラン100g、及びメタノール17.7gを混合した溶液B、並びに純水31.7g、及び29質量%アンモニア水4.7gを混合した溶液Cを、液温を36℃に保ちつつ、217分掛けて、等速で添加した。
【0210】
添加終了後、反応液の温度を36℃に保ったまま、更に反応液を30分間撹拌した。
【0211】
反応液を撹拌条件下で加熱濃縮及び加熱水置換し、コロイダルシリカを得た。
【0212】
(9)比較例3(加熱処理無し)
従来技術(特許文献2~3、及び特許文献4:特開2020-75830号公報)を模擬した例である。
【0213】
比較例2で得られたコロイダルシリカに、テトラアルコキシシランのシリカ換算含有量100gに対して過酸化水素が0.5gと成る様に、35質量%の過酸化水素を添加し、コロイダルシリカを得た。
【0214】
(10)比較例4(加熱処理無し)
従来技術(特許文献2~4、及び特許文献5:特開2021-116208号公報)を模擬した例である。
【0215】
比較例3で得られたコロイダルシリカ120gを、旭化成社製ペンシル型モジュール(PX-02001)には分画分子量80,000の限外濾過膜(旭化成社製ラボモジュール AOP-0013)を用いて、ポンプにはMasterflex社製L/S Easy-Load Pump Heads for Precision Tubing, Avantor(MFLX07514-10)、及びMasterflex社製L/S Analog Modular Drive Replacement Controllers, Avantor(MFLX07559-04)を用いて、チューブにはMasterflex社製シリコン過水分解用チューブ(96400-25)を用いて、限外ろ過を行い、コロイダルシリカを得た。
【0216】
限外濾過膜を透過した液量は63.6g、その透過率は53%であった。
【0217】
(11)比較例5(加熱処理無し、長時間の限外ろ過の例)
従来技術(特許文献2~5)を模擬した例である。
【0218】
比較例4で得られたコロイダルシリカ40gを、旭化成社製ペンシル型モジュール(PX-02001)には分画分子量80,000の限外濾過膜(旭化成社製ラボモジュール AOP-0013)を用いて、ポンプにはMasterflex社製L/S Easy-Load Pump Heads for Precision Tubing, Avantor(MFLX07514-10)、及びMasterflex社製L/S Analog Modular Drive Replacement Controllers, Avantor(MFLX07559-04)を用いて、チューブにはMasterflex社製シリコン過水分解用チューブ(96400-25)を用いて、限外ろ過を行い、コロイダルシリカを得た。
【0219】
限外濾過の際中、コロイダルシリカに超純水を添加し、コロイダルシリカの液量を一定に維持した。
【0220】
限外濾過膜を透過した液量は220.5g、限外濾過に要した時間は152分であった。
【0221】
【表2】
【0222】
【表3】
【0223】
[2]評価結果
実施例1~6は、水とシリカ粒子から成るシリカゾルを、常圧下、水の沸点で加熱処理する工程を含むコロイダルシリカの製造方法に依り製造したコロイダルシリカである。
【0224】
実施例1~6のコロイダルシリカは、(i)平均二次粒子径が20nm~250nmであり、(ii)微粒子含有量パラメータ1が15.0以下であった。
【0225】
実施例のコロイダルシリカは、微粒子の含有量を少なく抑える事が出来た。
【0226】
比較例1~5は、加熱処理する工程を含まないコロイダルシリカの製造方法に依り製造したコロイダルシリカである。
【0227】
比較例1~5は、従来技術を模擬した例である。
【0228】
比較例1は、特許文献1、及び3を模擬した例であり、15nm以下の微粒子を、効果的に低減する事は出来なかった。
【0229】
比較例2は、特許文献2、及び3を模擬した例であり、15nm以下の微粒子を、効果的に低減する事は出来なかった。
【0230】
比較例3は、特許文献2~4を模擬した例であり、15nm以下の微粒子を、効果的に低減する事は出来なかった。
【0231】
比較例4は、特許文献2~5を模擬した例であり、15nm以下の微粒子を、効果的に低減する事は出来なかった。
【0232】
比較例5は、特許文献2~5を模擬し、微粒子量の低減を企図して、限外濾過を長時間行った例であり、粒子の凝集に因る平均二次粒子径の増大が確認された。
【0233】
[3]産業上の利用可能性
本発明のコロイダルシリカの製造方法は、水とシリカ粒子から成るシリカゾルを、常圧下、水の沸点で加熱処理する工程を含む。
【0234】
本発明のコロイダルシリカは、(i)の平均二次粒子径が20nm~250nmであり、(ii)下記の通りに定義された微粒子含有量パラメータ1が15.0以下である。
【0235】
微粒子含有量パラメータ1の定義
(i)コロイダルシリカに、電気抵抗率18.2MΩ以上の超純水(以下、「超純水」と記す)を加えて、シリカ濃度2質量%(wt%)と成る様に、希釈する(希釈液)。
【0236】
(ii)希釈液9.1gを、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製、遠沈管(型番:S303922A)に取り分け、遠心用ローターS58A、遠心機CS100FNXを用いて、遠心回転速度50,000rpm、遠心温度5℃、遠心時間60分の条件で遠心する(全て、エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製)。
【0237】
(iii)遠心後、遠沈管から上澄み液2mLを採取し、この遠心後上澄み液2mLと、扶桑化学工業株式会社製の超高純度コロイダルシリカPL-3を超純水で10倍希釈したシリカゾルとを、下記の質量比で混合する(混合液)。
【0238】
遠心後上澄み液:PL-3の10倍希釈液=9:1(質量比)
(iv)得られた混合液の粒度分布を走査式電気移動度径計測法に基づく粒度分布測定装置により測定する。
【0239】
(v)得られた粒度分布の測定値から、下記の式(1)を用いて算出した値をコロイダルシリカの微粒子含有量パラメータ1と定義する。
【0240】
式(1)微粒子含有量パラメータ1=
(15nm以下の粒子の総検出個数)÷(25nm以上の粒子の総検出個数)
本発明のコロイダルシリカは、微粒子の含有量が少ない。
【0241】
本発明のコロイダルシリカを砥粒として用いてCMPを実施すると、従来のコロイダルシリカを砥粒として用いた場合と比べて、研磨面上の残存微粒子量が著しく低減され、且つ研磨面の表面粗さを低減させる事が可能である。
【要約】
本発明は、微粒子の少ないコロイダルシリカを提供する。
コロイダルシリカの製造方法。