(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】樹脂成形器、モータコアの製造装置、樹脂成形方法及びモータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/395 20190101AFI20240617BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240617BHJP
H02K 15/12 20060101ALI20240617BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20240617BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20240617BHJP
B29C 48/32 20190101ALI20240617BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240617BHJP
B29C 48/475 20190101ALI20240617BHJP
B29C 48/86 20190101ALI20240617BHJP
B29C 48/80 20190101ALI20240617BHJP
B29C 48/255 20190101ALI20240617BHJP
【FI】
B29C48/395
H02K15/02 K
H02K15/12 E
B29C43/36
B29C43/18
B29C48/32
B29C48/25
B29C48/475
B29C48/86
B29C48/80
B29C48/255
(21)【出願番号】P 2024516463
(86)(22)【出願日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2023044479
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2022198170
(32)【優先日】2022-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】古谷 拓実
(72)【発明者】
【氏名】木下 淳
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-044620(JP,A)
【文献】特開2020-052169(JP,A)
【文献】特開2019-044105(JP,A)
【文献】特開2000-065109(JP,A)
【文献】特表2020-528204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C48/00-48/96
B29C43/36
B29C43/18
H02K15/02
H02K15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向上流側に供給された熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物を前記搬送方向に沿って搬送可能な押出搬送路と、
前記押出搬送路内に前記押出搬送路の内壁面との間に所定の間隔を空けて前記搬送方向に沿って延在するスクリュー本体と、前記スクリュー本体の外周面に形成されたフィンと、を備え
、且つ前記スクリュー本体の先端部は、前記フィンが設けられていない閉塞ブロックで構成されている
、スクリューと、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱可能な成形器側加熱機と、
前記粉状の樹脂組成物を搬送方向に沿って混錬しつつ搬送して樹脂混練体を生成するために、前記スクリューを回転させる回転装置と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口から搬出される前記樹脂混練体で構成された環状の樹脂材を受ける治具と、
前記スクリュー本体を搬送方向に沿って移動させる移動装置と、を備える、
樹脂成形器。
【請求項2】
前記押出搬送路の前記搬出口から搬出される前記樹脂混練体を切断可能な切断装置をさらに備える、
請求項1に記載の樹脂成形器。
【請求項3】
前記治具は、前記搬出口に連結可能な環状の孔部を備える、
請求項1に記載の樹脂成形器。
【請求項4】
前記環状の孔部の前記搬送方向下流側の端部を閉塞可能な蓋体をさらに備える、
請求項3に記載の樹脂成形器。
【請求項5】
前記環状の孔部に収容された環状の樹脂材を、前記環状の孔部の一方の端部側から加圧可能なプレス装置をさらに備える、
請求項3に記載の樹脂成形器。
【請求項6】
前記環状の孔部の内側内壁面及び外側内壁面の少なくとも一方には、前記搬送方向に交差する方向に隆起した前記搬送方向に沿って延びる複数の突条が形成されている、
請求項3に記載の樹脂成形器。
【請求項7】
前記押出搬送路の前記搬出口に連通可能な円環状の第1の開口部と、前記第1の開口部とは外径及び内径の少なくとも一方が異なる円環状の第2の開口部と、前記第1の開口部と前記第2の開口部とを繋ぐ連通路と、を備える径変更治具をさらに備える、
請求項1に記載の樹脂成形器。
【請求項8】
搬送方向上流側に供給された熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物を前記搬送方向に沿って搬送可能な押出搬送路と、
前記押出搬送路内に前記押出搬送路の内壁面との間に所定の間隔を空けて前記搬送方向に沿って延在するスクリュー本体と、前記スクリュー本体の外周面に形成されたフィンと、を備えるスクリューと、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱可能な成形器側加熱機と、
前記粉状の樹脂組成物を搬送方向に沿って混錬しつつ搬送して樹脂混練体を生成するために、前記スクリューを回転させる回転装置と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口から搬出される前記樹脂混練体で構成された環状の樹脂材を受ける治具であって、前記搬出口に連結可能な環状の孔部を備える、前記治具と、
前記環状の孔部の前記搬送方向下流側の端部を閉塞可能な蓋体と、を備える、
樹脂成形器。
【請求項9】
環状の樹脂材を成形可能な樹脂成形器と、
所定の間隔を空けて環状に配設された複数の樹脂充填部を含むモータコアを保持可能な金型と、
前記金型に形成され端部が前記複数の樹脂充填部のそれぞれに連通可能な樹脂充填路に連通し、且つ内部に前記環状の樹脂材を収容可能な環状のチャンバと、
前記環状のチャンバ内を移動可能なプランジャと、
前記金型内及び前記環状のチャンバの外側周囲に配設された製造装置側加熱機と、を備え、
前記樹脂成形器は、
搬送方向上流側に供給された熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物を前記搬送方向に沿って搬送可能な押出搬送路と、
前記押出搬送路内に前記押出搬送路の内壁面との間に所定の間隔を空けて前記搬送方向に沿って延在するスクリュー本体と、前記スクリュー本体の外周面に形成されたフィンと、を備えるスクリューと、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱可能な成形器側加熱機と、
前記粉状の樹脂組成物を搬送方向に沿って混錬しつつ搬送して樹脂混練体を生成するために、前記スクリューを回転させる回転装置と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口から搬出される前記樹脂混練体で構成された環状の樹脂材を受ける治具と、を備える、
モータコアの製造装置。
【請求項10】
前記環状のチャンバは、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を支持する前記治具と、を収容可能である、
請求項9に記載のモータコアの製造装置。
【請求項11】
前記治具は、前記搬出口に連結可能な環状の孔部を備え、
前記環状のチャンバは、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を前記環状の孔部内に収容した前記治具と、先端部が前記治具の前記環状の孔部の一方の端部側から嵌入された押出リングの少なくとも一部と、を収容可能であり、
前記押出リングは、前記プランジャの一部として機能する、
請求項9に記載のモータコアの製造装置。
【請求項12】
前記環状のチャンバの内側内壁面及び外側内壁面の少なくとも一方には、前記金型に配設された前記モータコアの前記樹脂充填部が配設されない位置に、前記搬送方向に交差する方向に隆起した前記搬送方向に沿って延びる複数の突条が形成されている、
請求項9に記載のモータコアの製造装置。
【請求項13】
搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、
前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口に、環状の孔部を備える治具の前記環状の孔部の一端を連結させる工程と、
前記樹脂混練体を、前記搬出口から前記環状の孔部内へ供給する工程と、
前記環状の孔部内に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記押出搬送路の前記搬出口と前記環状の孔部との間で前記樹脂混練体を切断して環状の樹脂材を成形する工程と、を備える、
樹脂成形方法。
【請求項14】
前記環状の孔部内の前記環状の樹脂材を、前記搬送方向に沿った方向に加圧して圧縮する工程をさらに備える、
請求項13に記載の樹脂成形方法。
【請求項15】
前記環状の孔部内の前記環状の樹脂材を、前記搬送方向に沿った方向に加圧して前記治具の外部に押し出す工程をさらに備える、
請求項13に記載の樹脂成形方法。
【請求項16】
搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、
前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口を閉塞する工程と、
前記スクリュー先端と前記押出搬送路との間で規定される環状の空間に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記搬出口を開放すると共に、前記スクリューを、その先端部をその周囲の前記樹脂混練体と共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出するように移動させる工程と、
前記スクリューと共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出された樹脂混練体を前記搬出口に近接する位置で切断して環状の樹脂材を成形する工程と、を備える、
樹脂成形方法。
【請求項17】
搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、
前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口に、環状の孔部を備える治具の前記環状の孔部の一端を連結させる工程と、
前記樹脂混練体を、前記搬出口から前記環状の孔部内へ供給する工程と、
前記環状の孔部内に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記押出搬送路の前記搬出口と前記環状の孔部との間で前記樹脂混練体を切断して環状の樹脂材を成形する工程と、
環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程と、
前記環状のチャンバに連通した樹脂充填路が形成された金型内に、所定の間隔を空けて環状に配設された複数の樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路の端部が前記複数の樹脂充填部に連通するように保持する工程と、
前記環状のチャンバ内の前記環状の樹脂材を加熱して軟化させる工程と、
前記環状のチャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記環状のチャンバ内において軟化された前記環状の樹脂材からなる軟化樹脂を前記複数の樹脂充填部内へ充填する工程と、
前記複数の樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を備える、
モータコアの製造方法。
【請求項18】
前記環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程は、前記環状のチャンバ内に、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を内部に収容した前記治具とを投入する工程を含む、
請求項17に記載のモータコアの製造方法。
【請求項19】
前記環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程は、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を内部に収容した前記治具と、先端部が前記治具の前記環状の孔部の一方の端部側から嵌入された押出リングとを投入する工程を含み、
前記押出リングは、前記プランジャの一部として前記軟化樹脂を前記複数の樹脂充填部内へ充填するために動作する、
請求項17に記載のモータコアの製造方法。
【請求項20】
搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、
前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、
前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、
前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口を閉塞する工程と、
前記スクリュー先端と前記押出搬送路との間で規定される環状の空間に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記搬出口を開放すると共に、前記スクリューを、その先端部をその周囲の前記樹脂混練体と共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出するように移動させる工程と、
前記スクリューと共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出された樹脂混練体を前記搬出口に近接する位置で切断して環状の樹脂材を成形する工程と、
環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程と、
前記環状のチャンバに連通した樹脂充填路が形成された金型内に、所定の間隔を空けて環状に配設された複数の樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路の端部が前記複数の樹脂充填部に連通するように保持する工程と、
前記環状のチャンバ内の前記環状の樹脂材を加熱して軟化させる工程と、
前記環状のチャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記環状のチャンバ内において軟化された前記環状の樹脂材からなる軟化樹脂を前記複数の樹脂充填部内へ充填する工程と、
前記複数の樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を備える、
モータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂成形器、モータコアの製造装置、樹脂成形方法及びモータコアの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機には、モータコア、例えばロータコアに所定の間隔を空けて円環状に配設された複数個のスロット内に永久磁石をそれぞれ取り付けたものがある。モータコアに永久磁石を取り付ける方法として、スロット内に永久磁石を挿入した後、周囲に樹脂を充填し硬化させる方法が知られている。
【0003】
特開2019-134566号公報には、ロータコアの磁石挿入穴内に充填剤としての樹脂を充填する際に、タブレット型の樹脂を充填剤供給部(「ポット」と呼ばれることもある)に投入して加熱し、充填前に軟化・溶融させて、充填を行うものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載されるモータ等に用いられるモータコアのように、モータコア自体が大型である場合には、スロットの大型化やスロット数の増加、また積層高さが高くなる等に伴い、樹脂の充填量も増大する。モータコアへの樹脂の充填量が多くなると、それに比例してポットに投入される樹脂材も大きくする必要がある。樹脂材を加熱する加熱手段は、ポットの周囲に配設されるのが一般的であるが、特開2019-134566号公報のもののように樹脂材がタブレット型(換言すると、中実の円柱状)であると、樹脂材が大きくなることによって加熱手段からの距離に大きな差が生じ得る。結果、特に樹脂材の表面部と中心部との間に温度差が生じやすくなり、樹脂材全体の加熱を均一に行うことが難しくなる。樹脂材の不均一な加熱は、樹脂材の硬化反応のバラツキの原因となる。
【0005】
本開示は、上述した課題に鑑み、樹脂材を均一に加熱することが可能な樹脂成形器及び樹脂成形方法、並びにこれらを用いたモータコアの製造装置及びモータコアの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る樹脂成形器は、搬送方向上流側に供給された熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物を前記搬送方向に沿って搬送可能な押出搬送路と、前記押出搬送路内に前記押出搬送路の内壁面との間に所定の間隔を空けて前記搬送方向に沿って延在するスクリュー本体と、前記スクリュー本体の外周面に形成されたフィンと、を備えるスクリューと、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱可能な成形器側加熱機と、前記粉状の樹脂組成物を搬送方向に沿って混錬しつつ搬送して樹脂混練体を生成するために、前記スクリューを回転させる回転装置と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口から搬出される前記樹脂混練体で構成された環状の樹脂材を受ける治具と、を含むものである。
【0007】
上記のような樹脂成形器においては、均一に加熱することが可能な環状の樹脂材を成形することができる。さらにまた、樹脂材が環状であることで、タブレット型の樹脂材を用いた場合に比べて短時間で所定温度まで加熱することができる。
【0008】
本開示の第2の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第1の態様に係る樹脂成形器において、前記押出搬送路の前記搬出口から搬出される前記樹脂混練体を切断可能な切断装置をさらに含む。
【0009】
上記のような樹脂成形器においては、樹脂混練体を任意の位置で切断分離でき、環状の樹脂材の量を自由に調整することが可能となる。
【0010】
本開示の第3の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第1又は第2の態様に係る樹脂成形器において、前記治具は、前記搬出口に連結可能な環状の孔部を含む。
【0011】
上記のような樹脂成形器においては、搬出口から搬出される樹脂混練体を治具内で環状の形状を確実に保ったまま受けることができる。
【0012】
本開示の第4の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第3の態様に係る樹脂成形器において、前記環状の孔部の前記搬送方向下流側の端部を閉塞可能な蓋体をさらに含む。
【0013】
上記のような樹脂成形器においては、治具内に樹脂混練体を供給する際に、供給された樹脂混練体が治具の外部に漏れることを防止できる。また、治具内に供給される樹脂混練体をこの蓋体に押し付けて供給を継続することで、樹脂混練体を加圧・圧縮することもできる。
【0014】
本開示の第5の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第3又は第4の態様に係る樹脂成形器において、前記環状の孔部に収容された環状の樹脂材を、前記環状の孔部の一方の端部側から加圧可能なプレス装置をさらに含む。
【0015】
上記のような樹脂成形器においては、治具内の環状の樹脂材を圧縮することで環状の樹脂材の密度を向上でき、これによって環状の樹脂材の保形性を向上させると共に樹脂材中の空隙を減らすことができる。
【0016】
本開示の第6の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第3乃至第5のいずれかの態様に係る樹脂成形器において、前記環状の孔部の内側内壁面及び外側内壁面の少なくとも一方には、前記搬送方向に交差する方向に隆起した前記搬送方向に沿って延びる複数の突条が形成されている。
【0017】
上記のような樹脂成形器においては、突条により充填が必要な箇所の付近に樹脂材を多く配置した樹脂材の成形が可能となる。
【0018】
本開示の第7の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第1乃至第6のいずれかの態様に係る樹脂成形器において、前記押出搬送路の前記搬出口に連通可能な円環状の第1の開口部と、前記第1の開口部とは外径及び内径の少なくとも一方が異なる円環状の第2の開口部と、前記第1の開口部と前記第2の開口部とを繋ぐ連通路と、を備える径変更治具をさらに含む。
【0019】
上記のような樹脂成形器においては、樹脂混練体の外径及び内径を調整することができ、成形する環状の樹脂材のサイズ等を押出搬送路の内径等に制約されることなく変更することができるようになる。
【0020】
本開示の第8の態様に係る樹脂成形器は、上記本開示の第1、第2及び第7のいずれかの態様に係る樹脂成形器において、前記スクリュー本体の先端部は、前記フィンが設けられていない閉塞ブロックで構成され、前記スクリュー本体を搬送方向に沿って移動させる移動装置をさらに含む。
【0021】
上記のような樹脂成形器においては、スクリューの先端部分で環状の樹脂の成形の大部分を完了させることができ、治具の形状の自由度が高くなる。
【0022】
本開示の第9の態様に係るモータコアの製造装置は、環状の樹脂材を成形可能な樹脂成形器と、所定の間隔を空けて環状に配設された複数の樹脂充填部を含むモータコアを保持可能な金型と、前記金型に形成され端部が前記複数の樹脂充填部のそれぞれに連通可能な樹脂充填路に連通し、且つ内部に前記環状の樹脂材を収容可能な環状のチャンバと、前記環状のチャンバ内を移動可能なプランジャと、前記金型内及び前記環状のチャンバの外側周囲に配設された製造装置側加熱機と、を含み、前記樹脂成形器は、搬送方向上流側に供給された熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物を前記搬送方向に沿って搬送可能な押出搬送路と、前記押出搬送路内に前記押出搬送路の内壁面との間に所定の間隔を空けて前記搬送方向に沿って延在するスクリュー本体と、前記スクリュー本体の外周面に形成されたフィンと、を備えるスクリューと、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱可能な成形器側加熱機と、前記粉状の樹脂組成物を搬送方向に沿って混錬しつつ搬送して樹脂混練体を生成するために、前記スクリューを回転させる回転装置と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口から搬出される前記樹脂混練体で構成された環状の樹脂材を受ける治具と、を含む。
【0023】
上記のようなモータコアの製造装置においては、材料となる粉状の樹脂組成物を環状に成形した後、この環状の樹脂材をチャンバ内で加熱するようにしたことで、製造装置側加熱機から遠い位置となる中央部分には樹脂がなくなり、チャンバ内の樹脂の加熱を均一に行うことができる。また、環状に配設された樹脂充填部に対して、環状のチャンバから樹脂を充填するため、樹脂充填部とチャンバとの間をつなぐ樹脂充填路を短くすることができる。さらに、環状の樹脂材の径を調整することによって、樹脂充填路を短く維持したまま樹脂を充填するモータコアの品種変更(例えば、大型化・小型化、コア自体は同径だが樹脂充填位置が変更されたもの、等)にも対応することができる。さらにまた、樹脂成形器を使用して環状の樹脂材を成形することで、均等に予熱することもできる。また、チャンバ内での樹脂の均一な加熱が実現できるため、成型前の高周波予熱を不要とする、あるいは短縮することができる。さらにまた、樹脂材が環状であることで、タブレット型の樹脂材を用いた場合に比べて短時間で所定温度まで加熱することができる。
【0024】
本開示の第10の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第9の態様に係るモータコアの製造装置において、前記環状のチャンバは、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を支持する前記治具と、を収容可能である。
【0025】
上記のようなモータコアの製造装置においては、成形された環状の樹脂材を治具から押し出す必要がなくなり、製造プロセスを簡略化することができる。
【0026】
本開示の第11の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第9の態様に係るモータコアの製造装置において、前記治具は、前記搬出口に連結可能な環状の孔部を含み、前記環状のチャンバは、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を前記環状の孔部内に収容した前記治具と、先端部が前記治具の前記環状の孔部の一方の端部側から嵌入された押出リングの少なくとも一部と、を収容可能であり、前記押出リングは、前記プランジャの一部として機能する。
【0027】
上記のようなモータコアの製造装置においては、成形された環状の樹脂材を治具から押し出す必要がなくなり、製造プロセスを簡略化することができる。また、押出リングを用いて軟化した樹脂を樹脂充填部へ移動させるため、プランジャの形状を樹脂の形状に合わせて変更する必要がなくなる。
【0028】
本開示の第12の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第9乃至第11のいずれかの態様に係るモータコアの製造装置において、前記環状のチャンバの内側内壁面及び外側内壁面の少なくとも一方には、前記金型に配設された前記モータコアの前記樹脂充填部が配設されない位置に、前記搬送方向に交差する方向に隆起した前記搬送方向に沿って延びる複数の突条が形成されている。
【0029】
上記のようなモータコアの製造装置においては、突条により充填が必要な箇所の付近に樹脂材を多く配置した樹脂材の成形が可能となる。また、突条をモータコアの樹脂充填部及び樹脂充填路の配置を考慮して配設すれば、チャンバ内で硬化する樹脂の量を少なくすることができ、より多くの樹脂材をスロット部内へ充填することができる。
【0030】
本開示の第13の態様に係る樹脂成形方法は、搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口に、環状の孔部を備える治具の前記環状の孔部の一端を連結させる工程と、前記樹脂混練体を、前記搬出口から前記環状の孔部内へ供給する工程と、前記環状の孔部内に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記押出搬送路の前記搬出口と前記環状の孔部との間で前記樹脂混練体を切断して環状の樹脂材を成形する工程と、を含む。
【0031】
上記のような樹脂成形方法においては、均一に加熱することが可能な環状の樹脂材を成形することができる。また、環状の樹脂材が成形される過程で、この環状の樹脂材を均等に予熱することもできる。さらに、チャンバ内での樹脂の均一な加熱が実現できるため、成型前の高周波予熱を不要とする、あるいは短縮することができる。
【0032】
本開示の第14の態様に係る樹脂成形方法は、上記本開示の第13の態様に係る樹脂成形方法において、前記環状の孔部内の前記環状の樹脂材を、前記搬送方向に沿った方向に加圧して圧縮する工程をさらに含む。
【0033】
上記のような樹脂成形方法においては、治具内の環状の樹脂材を圧縮することで、環状の樹脂材の密度を向上でき、これによって環状の樹脂材の保形性を向上させると共に樹脂材中の空隙を減らすことができる。
【0034】
本開示の第15の態様に係る樹脂成形方法は、上記本開示の第13又は第14の態様に係る樹脂成形方法において、前記環状の孔部内の前記環状の樹脂材を、前記搬送方向に沿った方向に加圧して前記治具の外部に押し出す工程をさらに含む。
【0035】
上記のような樹脂成形方法においては、環状の樹脂材を単体で得ることができる。
【0036】
本開示の第16の態様に係る樹脂成形方法は、搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口を閉塞する工程と、前記スクリュー先端と前記押出搬送路との間で規定される環状の空間に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記搬出口を開放すると共に、前記スクリューを、その先端部をその周囲の前記樹脂混練体と共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出するように移動させる工程と、前記スクリューと共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出された樹脂混練体を前記搬出口に近接する位置で切断して環状の樹脂を成形する工程と、を含む。
【0037】
上記のような樹脂成形方法においては、均一に加熱することが可能な環状の樹脂材を成形することができる。また、環状の樹脂材が成形される過程で、この環状の樹脂材を均等に予熱することもできる。さらに、チャンバ内での樹脂の均一な加熱が実現できるため、成型前の高周波予熱を不要とする、あるいは短縮することができる。さらにまた、樹脂材が環状であることで、タブレット型の樹脂材を用いた場合に比べて短時間で所定温度まで加熱することができる。
【0038】
本開示の第17の態様に係るモータコアの製造方法は、搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口に、環状の孔部を備える治具の前記環状の孔部の一端を連結させる工程と、前記樹脂混練体を、前記搬出口から前記環状の孔部内へ供給する工程と、前記環状の孔部内に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記押出搬送路の前記搬出口と前記環状の孔部との間で前記樹脂混練体を切断して環状の樹脂材を成形する工程と、環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程と、前記環状のチャンバに連通した樹脂充填路が形成された金型内に、所定の間隔を空けて環状に配設された複数の樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路の端部が前記複数の樹脂充填部に連通するように保持する工程と、前記環状のチャンバ内の前記環状の樹脂材を加熱して軟化させる工程と、前記環状のチャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記環状のチャンバ内において軟化された前記環状の樹脂材からなる軟化樹脂を前記複数の樹脂充填部内へ充填する工程と、前記複数の樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を含む。
【0039】
上記のようなモータコアの製造方法においては、材料となる樹脂材を環状に成形した後、この環状の樹脂材をチャンバ内で加熱するようにしたことで、製造装置側加熱機から遠い位置となる中央部分には樹脂がなくなり、チャンバ内の樹脂の加熱を均一に行うことができる。また、環状に配設された樹脂充填部に対して、環状のチャンバから樹脂を充填するため、樹脂充填部とチャンバとの間をつなぐ樹脂充填路を短くすることができる。これに関連して、従来工法より多くの樹脂材料をスロット部内へ充填することができる。
【0040】
本開示の第18の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第17の態様に係るモータコアの製造方法において、前記環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程は、前記環状のチャンバ内に、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を内部に収容した前記治具とを投入する工程を含む。
【0041】
上記のようなモータコアの製造方法においては、成形された環状の樹脂材を治具から押し出す必要がなくなり、製造プロセスを簡略化することができる。
【0042】
本開示の第19の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第17の態様に係るモータコアの製造方法において、前記環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程は、前記環状の樹脂材と、前記環状の樹脂材を内部に収容した前記治具と、先端部が前記治具の前記環状の孔部の一方の端部側から嵌入された押出リングとを投入する工程を含み、前記押出リングは、前記プランジャの一部として前記軟化樹脂を前記複数の樹脂充填部内へ充填するために動作する。
【0043】
上記のようなモータコアの製造方法においては、成形された環状の樹脂材を治具から押し出す必要がなくなり、製造プロセスを簡略化することができる。また、押出リングを用いて軟化した樹脂を樹脂充填部へ移動させるため、プランジャの形状を樹脂の形状に合わせて変更する必要がなくなる。
【0044】
本開示の第20の態様に係るモータコアの製造方法は、搬送方向上流側から押出搬送路内への熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物の供給を開始する工程と、前記押出搬送路内に前記搬送方向に沿って延在するスクリューを回転させて前記粉状の樹脂組成物を混錬しつつ搬送する工程と、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体を生成するために、前記押出搬送路内を加熱する工程と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口を閉塞する工程と、前記スクリュー先端と前記押出搬送路との間で規定される環状の空間に所定量の前記樹脂混練体が供給されたときに、前記搬出口を開放すると共に、前記スクリューを、その先端部をその周囲の前記樹脂混練体と共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出するように移動させる工程と、前記スクリューと共に前記搬出口から前記押出搬送路外へ搬出された樹脂混練体を前記搬出口に近接する位置で切断して環状の樹脂を成形する工程と、環状のチャンバ内に成形された前記環状の樹脂材を投入する工程と、前記環状のチャンバに連通した樹脂充填路が形成された金型内に、所定の間隔を空けて環状に配設された複数の樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路の端部が前記複数の樹脂充填部に連通するように保持する工程と、前記環状のチャンバ内の前記環状の樹脂材を加熱して軟化させる工程と、前記環状のチャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記環状のチャンバ内において軟化された前記環状の樹脂材からなる軟化樹脂を前記複数の樹脂充填部内へ充填する工程と、前記複数の樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を含む。
【0045】
上記のようなモータコアの製造方法においては、材料となる樹脂材を環状に成形した後、この環状の樹脂材をチャンバ内で加熱するようにしたことで、製造装置側加熱機から遠い位置となる中央部分には樹脂がなくなり、チャンバ内の樹脂の加熱を均一に行うことができる。また、環状に配設された樹脂充填部に対して、環状のチャンバから樹脂を充填するため、樹脂充填部とチャンバとの間をつなぐ樹脂充填路を短くすることができる。これに関連して、従来工法より多くの樹脂材料をスロット部内へ充填することができる。
【発明の効果】
【0046】
本開示の樹脂成形器及び樹脂成形方法によれば、樹脂材を均一に加熱することが可能な樹脂を提供することができる。また、本開示のモータコアの製造装置及びモータコアの製造方法によれば、樹脂材を均一に加熱された樹脂を用いてモータコアを安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る樹脂成形器の一例を示した概略説明図である。
【
図2A】
図1に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図2B】
図1に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図3A】
図1に示す治具内の樹脂材を圧縮する及び押し出す動作の一例を示した動作説明図である。
【
図3B】
図1に示す治具内の樹脂材を圧縮する及び押し出す動作の一例を示した動作説明図である。
【
図3C】
図1に示す治具内の樹脂材を圧縮する及び押し出す動作の一例を示した動作説明図である。
【
図3D】
図1に示す治具内の樹脂材を圧縮する及び押し出す動作の一例を示した動作説明図である。
【
図4】
図1に示す樹脂成形器に径変更治具を適用した状態を示した説明図である。
【
図5】本開示の一実施の形態に係る樹脂成形方法の一例を示したフローチャートである。
【
図6】本開示の一実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略説明図である。
【
図7A】
図6に示すモータコアの製造装置に使用されるロータコアの一例を示した概略斜視図である。
【
図7B】
図6に示すモータコアの製造装置に使用される環状の樹脂材の一例を示した概略斜視図である。
【
図8】本開示の一実施の形態に係るモータコアの製造方法の一例を示したフローチャートである。
【
図9】
図6に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図10】
図6に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図11】
図6に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図12】
図6に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図13A】チャンバ内に投入可能な投入部材の一例を示した概略断面図である。
【
図13B】チャンバ内に投入可能な投入部材の他の一例を示した概略断面図である。
【
図14】
図13Aに示す投入部材を投入可能な一変形例に係るモータコアの製造装置の、
図9に対応する状態を示した図である。
【
図15】
図13Bに示す投入部材を投入可能な他の変形例に係るモータコアの製造装置の、
図9に対応する状態を示した図である。
【
図16A】第1の投入部材の変形例を説明するための説明図である。
【
図16B】第1の投入部材の変形例を説明するための説明図である。
【
図17】
図6に示すモータコアの製造装置のさらに他の変形例に係るモータコアの製造装置の、
図9に対応する状態を示した図である。
【
図18】
図17に示すモータコアの製造装置の下型を下降させた状態を示した図である。
【
図19】本開示の一実施の形態の変形例に係る樹脂成形器の一例を示した概略説明図である。
【
図20A】
図19に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図20B】
図19に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図20C】
図19に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図21】本開示の一実施の形態の変形例に係る樹脂成形方法の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
この出願は、日本国で2022年12月12日に出願された特願2022-198170号に基づいており、その内容は本出願の内容としてその一部を形成する。
また、本開示は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本願のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実例は、本開示の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本開示の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0049】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中の互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。さらに、一の図面中に互いに同一又は相当する部材が複数個含まれている場合には、図を見易くするために、そのうちのいくつかにのみ符号を付している場合がある。
【0050】
<樹脂成形器>
図1は、本開示の一実施の形態に係る樹脂成形器の一例を示した概略説明図である。本実施の形態に係る樹脂成形器100は、後述するモータコアの製造装置において用いることが可能な、環状の樹脂材Pを成形することが可能な成形器であってよい。この樹脂成形器100は、
図1に示すように、主に押出機101と、治具130とを含む。以下の説明においては、その理解を容易にするために、
図1中に示したX方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を高さ方向(あるいは上下方向)として説明を行うことがある。
【0051】
押出機(「エクストルーダ」と呼ばれることもある)101は、一方向、例えば上下方向に延在し、搬送方向上流側、すなわち上方に供給される粉状の樹脂組成物P1を混練しつつ搬送方向下流側、すなわち下方へ搬送するためのものであってよい。この押出機101は、上下方向に延在し、その内部を粉状の樹脂組成物P1が搬送される押出搬送路の一例としてのバレル110と、粉状の樹脂組成物P1を加熱可能な成形器側加熱機の一例としてのバレルヒータ115と、バレル110内に搬送方向に沿って延在するスクリュー120と、スクリュー120を回転させる回転装置の一例としてのモータ125と、を少なくとも含む。
【0052】
バレル110は、搬送方向上流側に供給された粉状の樹脂組成物P1を混練しつつ搬送方向下流側に搬送する搬送路を構成するものであってよい。本実施の形態に係るバレル110は、その一端部が閉塞し他端部が開放した円筒状の部材で構成することができる。バレル110の搬送方向上流側の一端部には、粉状の樹脂組成物P1が供給される供給口111が形成され、搬送方向下流側の他端部には、搬出口112が形成されていてよい。供給口111には、樹脂組成物供給路113が連結され、この樹脂組成物供給路113には樹脂組成物供給源114が連結していてよい。なお、本実施の形態では、バレル110内の搬送方向が上下方向に延在したものを例示したが、バレル110の延在方向はこれに限定されず、例えば搬送方向が斜め下方に延在していても、左右方向あるいは前後方向に延在していてもよい。
【0053】
供給口111からバレル110内に供給される粉状の樹脂組成物P1には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂あるいはシアネート樹脂といった熱硬化性樹脂材を主に含むものを用いることができる。また、この粉状の樹脂組成物P1には、熱硬化性の樹脂組成物に加えて、硬化剤や充填剤等が添加されていてよい。
【0054】
また、ここでいう粉状の樹脂組成物P1とは、粒状、あるいは顆粒状といった、比較的小さな粒子(比較的大きな樹脂ブロックを粉砕・破砕して得られる小片のような粒子をも含む)で形成された樹脂組成物を指すものとする。なお、供給口111から供給される樹脂組成物は、全てが粉状である必要はない。具体的には、例えばその少なくとも一部がペースト状や粘土状となっているものであってもよい。
【0055】
バレルヒータ115は、バレル110内を搬送される粉状の樹脂組成物P1を加熱することが可能なものであってよい。このバレルヒータ115は、周知のヒータ、例えば赤外線ヒータやシーズヒータで構成することができ、例えばバレル110内の搬送路の実質的に全長を包囲するように、バレル110内部に配設されていてよい。
【0056】
このバレルヒータ115は、バレル110内を搬送される粉状の樹脂組成物P1を、その少なくとも一部を溶融させ、樹脂組成物を構成する粒子同士が溶着する程度の温度に加熱するものであってよい。より好ましくは、バレルヒータ115によって加熱される粉状の樹脂組成物P1をその溶融温度以上で且つ軟化温度より低い所定の温度まで加熱させるものであってよい。これに関連して、押出機101は、バレル110内を搬送される粉状の樹脂組成物P1の温度、あるいはバレル110内の室温を検出する温度センサをさらに含んでいてよい。
【0057】
スクリュー120は、バレル110内に、供給口111から供給された粉状の樹脂組成物P1を、混練しつつ搬出口112に向かって搬送するものであってよい。このスクリュー120は、バレル110の内壁面との間に所定の間隔を空けた状態で、搬送方向に沿って延在するスクリュー本体121と、スクリュー本体121の外周面に形成されたフィン122と、を含む。
【0058】
スクリュー本体121は、例えばバレル110の内径よりも小さな外径を備える円柱体で構成することができ、基端部にはモータ125が取り付けられ、先端部は搬出口112近傍に配設されていてよい。また、このスクリュー本体121の先端部には、フィン122が設けられていない閉塞ブロック123が形成されているとよい。この閉塞ブロック123は、搬出口112と実質的に同一位置まで延在する円柱体で形成されており、搬出口112から搬出される樹脂混練体P2が円環状となるのを補助する機能を有していてよい。
【0059】
フィン122は、スクリュー本体121の外周面から、その軸方向に交差する方向に立設する突条で構成することができる。加えて、このフィン122は、スクリュー本体121の外周面にスパイラル状に形成された1乃至複数本の突条とすることができる。フィン122の高さ方向の先端部分が、バレル110の内周面に接触する又は僅かな隙間を空けて対向するようにその高さが調整されているとよい。スクリュー120が回転すると、このフィン122がバレル110の内壁面とスクリュー本体121との間に供給された粉状の樹脂組成物P1を搬送方向に押圧しつつ混錬する。
【0060】
スクリュー本体121の基端部に接続されたモータ125は、スクリュー120を任意の回転速度で回転させることで、バレル110内の粉状の樹脂組成物P1を混錬しつつ搬送させて、樹脂混練体P2を形成することができるものであってよい。このモータ125は、さらに、スクリュー120の回転速度を制御することで、バレル110内の樹脂材の供給量を制御することができる。換言すると、搬出口112から搬出される樹脂混練体P2の供給量は、モータ125の回転数を制御することにより精度よく調整することが可能である。
【0061】
上述した構成を備える押出機101によれば、バレル110の供給口111に供給された粉状の樹脂組成物P1を、スクリュー120及びバレルヒータ115を動作させることで加熱・混練しつつ搬送することができる。バレル110内を搬送された粉状の樹脂組成物P1は、バレルヒータ115からの熱及びスクリュー120による混練作用によって混錬され、粒子同士が溶着した樹脂混練体P2として、搬出口112から搬出される。
【0062】
加えて、上述した押出機101では、バレル110が円筒状に形成され、且つバレル110内に配設されるスクリュー本体121及び閉塞ブロック123が、バレル110と同軸状に延びる円柱体で形成されている。そのため、この押出機101から搬出される樹脂混練体P2は、バレル110の内径と略同一の外径を有し、且つスクリュー本体121本体の外径と略同一の内径を有する円環形状となる。押出機101の搬出口112から樹脂混練体P2が円環状に搬出されることにより、本実施の形態に係る樹脂成形器100は、任意の外径及び内径を有する環状の樹脂材Pを簡単に成形することが可能となる。
【0063】
治具130は、バレル110の搬出口112から搬出される樹脂混練体P2で構成された環状の樹脂材Pを受けるものである。本実施の形態において、治具130は、上述した押出機101から供給される樹脂混練体P2を環状の樹脂材Pに成形することが可能な治具であってよい。これに関連して、この治具130は、バレル110の搬出口112に連結可能な環状の孔部131を含む。
【0064】
環状の孔部131は、一方の端部が搬出口112に連結可能な搬入口132である、円筒状の空間で構成することができる。この環状の孔部131は、搬出口112から搬出される樹脂混練体P2を収容するために、その外径をバレル110の内径と実質的に同一、もしくはそれ以上とし、その内径をスクリュー本体121及び閉塞ブロック123の外径と実質的に同一、もしくはそれ以下としておくとよい。加えて、環状の孔部131に収容された樹脂混練体P2が、環状の樹脂材Pを形成するため、環状の孔部131の内径及び外径は、後述するモータコアの製造装置1のチャンバ30の形状に合わせて調整されていてもとよい。したがって、バレル110の内径とスクリュー本体121及び閉塞ブロック123の内径も、モータコアの製造装置1のチャンバ30の形状に合わせて設定されているとよい。
【0065】
治具130は、搬入口132が形成された面の反対側の面に設けられ、環状の孔部131の搬送方向下流側の端部133を閉塞する蓋体135をさらに含んでいてよい。蓋体135は、
図1に示すような治具130の下面の全体を覆うものであってもよいし、環状の孔部131と同様の環状とし環状の孔部131の下側に圧入されることで閉鎖するものであってもよい。この蓋体135により、搬入口132から搬入された樹脂混練体P2が、搬入口132とは反対側に位置する端部133から治具130外に出ないようにすることができる。
【0066】
また、この蓋体135を設けることで、環状の孔部131に搬入された樹脂混練体P2が蓋体135に接触した状態でさらに樹脂混練体P2の搬入を継続することにより、環状の孔部131内の樹脂混練体P2を加圧して圧縮することができる。したがって、環状の孔部131内に収容される樹脂混練体P2の量や形状を安定させることができる。なお、上述した圧縮動作を行う必要がなく、また環状の孔部131内へ供給された樹脂混練体P2が、後に環状の孔部131から脱落する恐れがない場合には、蓋体135を省略することもできる。
【0067】
図2は、
図1に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図であって、
図2Aは治具130へ樹脂混練体P2が充填された状態を示し、
図2Bはカッターにより樹脂混練体が切断された状態を示したものである。本実施の形態に係る樹脂成形器100は、上述した構成に加えて、バレル110の搬出口112から搬出される樹脂混練体P2を切断する切断装置の一例としてのカッター140を含んでいてよい。このカッター140は、搬出口112と搬入口132の間に挿入可能に配設されているとよい。
【0068】
カッター140を任意のタイミング、例えば環状の孔部131内に所望の量の樹脂混練体P2が充填されたタイミング(例えば、
図2Aに示す状態)で動作させると、搬出口112と搬入口132の間の位置で樹脂混練体P2を切断することができる(
図2B参照)。また、樹脂混練体P2を切断した後、カッター140を搬出口112と搬入口132の間の位置に保持しておくと、治具130の交換等に際して樹脂混練体P2が意図せず搬出されることを抑制できる。
【0069】
本実施の形態においては、カッター140を用いて樹脂混練体P2を切断するものを例示したが、本開示のものは、樹脂混練体P2を任意の位置で分離できればこのような構成には限定されない。具体的には、例えばバレル110と治具130とを水平方向に相対移動させることで、搬出口112及び搬入口132の端部のせん断力により樹脂混練体P2を切断するようにしてもよい。なお、以下では、カッター140によって押出機101から分離された環状の樹脂混練体P2を、「環状の樹脂材P」と呼ぶこととする。
【0070】
図3は、
図1に示す治具内の樹脂材を圧縮する及び押し出す動作の一例を示した動作説明図である。詳しくは、
図3Aはプレス装置の動作前の状態を示し、
図3Bは
図3Aの状態からプレス装置を動作させて樹脂混練体を圧縮した状態を示し、
図3Cは
図3Bの状態の治具から蓋体を取り外した状態を示し、
図3Dは
図3Cに示す状態から環状の樹脂材を治具外へ押し出した状態を示したものである。本実施の形態に係る樹脂成形器100は、
図3に示すように、上述した構成に加えて、環状の孔部131に収容された環状の樹脂材Pを、環状の孔部131の一方の端部側から加圧可能なプレス装置150をさらに含んでいてよい。
【0071】
プレス装置150は、環状の孔部131の延在方向、例えば上下方向に動作可能なプレス装置本体151と、プレス装置本体151の一端部に取り付けられて、環状の孔部131内に挿入可能な環状の押出リング152と、を含んでいてよい。プレス装置本体151には、上下動可能な周知のプレス機、例えば機械式プレス機のスライドを採用することができる。また、押出リング152は、環状の孔部131の外径及び内径に合わせた形状の部材で構成することができる。より好ましくは、この押出リング152は、プレス装置150の動作時に環状の孔部131の搬入口132から環状の孔部131内へ実質的に隙間なく嵌入される形状とするとよい。
【0072】
プレス装置150を用いて環状の孔部131内の環状の樹脂材Pを圧縮する場合は、先ず、蓋体135を含む治具130をプレス装置150の下に配置する(
図3A参照)。次いで、プレス装置150を下方向に動作させて押出リング152を搬入口132から環状の孔部131内に嵌入し、環状の孔部131内の環状の樹脂材Pを上方から圧縮する(
図3B参照)。当該圧縮を行うと、環状の樹脂材Pの密度が上がるため、環状の樹脂材Pの保形性が向上し且つ環状の樹脂材P中の空隙を減らすことができる。また、保形性の向上に伴って環状の樹脂材Pのハンドリングが容易になる。
【0073】
また、プレス装置150をさらに動作させると、環状の樹脂材Pを治具130から押し出すことができる。この場合には、先ず、治具130から蓋体135を取り外した後(
図3C参照)、治具130を図示しない支持手段で支持し、プレス装置150をさらに下方向に動作させれば、環状の樹脂材Pと治具130とを分離することができる(
図3D参照)。本実施の形態においては、環状の樹脂材Pを治具130から分離して利用する場合を例示するが、治具130内に収容されたまま後述するモータコアの製造装置において利用することもできる。詳細については後述する。
【0074】
また、本実施の形態に係る樹脂成形器100は、上述した各種構成要素を制御するための成形器側制御装置160を含んでいてよい。この成形器側制御装置160は、上述した樹脂成形器100の各構成要素に電気的に接続されてその動作を制御することで、任意の成形工程を実現することが可能な装置であってよい。この成形器側制御装置160は、例えば
図1中に点線で示すように、各構成要素に有線又は無線通信を介して通信可能に接続されていてよい。この成形器側制御装置160は、シーケンサ(Programmable Logic Controller、PLC)や周知のコンピュータを用いて実現することができる。また、成形器側制御装置160は、上述したコンピュータ等のうちの1つのみから又は複数を組み合わせて構成され得る。
【0075】
この成形器側制御装置160は、上述した各構成要素を動作させることにより、後述する本実施の形態に係る樹脂成形方法を実現することができる。これに関連して、本実施の形態に係る樹脂成形方法は、成形器側制御装置160を構成するコンピュータに、所定の動作を実行させるための指令を含むソフトウェア等のプログラムの形態で、このプログラムが格納された非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体の形態で、あるいはネットワーク等を介して提供されるアプリケーションプログラムの形態で、提供され得るものである。本実施の形態に係る樹脂成形方法の詳細については後述する。
【0076】
上述した一実施の形態に係る樹脂成形器100においては、搬出口112と搬入口132の内径及び外径が概ね一致するように調整したものを例示した。他方、環状の樹脂材Pが用いられるモータコアの製造装置1において樹脂が充填されるモータコア、例えばロータコア2のサイズは種々変更され得る。したがって、樹脂成形器100で成形される環状の樹脂材の外径及び内径も容易に変更できると好ましい。そこで以下には、本実施の形態に係る樹脂成形器100に、樹脂の径を変更するための構成の一例を採用したものを説示する。
【0077】
図4は、
図1に示す樹脂成形器に径変更治具を適用した状態を示した説明図である。本実施の形態に係る樹脂成形器100は、
図4に示すように、搬出口112から搬出される樹脂混練体P2の径を変更するための径変更治具170を含むことができる。この径変更治具170は、バレル110の搬出口112に連通可能な円環状の第1の開口部171と、この第1の開口部171とは外径及び内径の少なくとも一方が異なる円環状の第2の開口部172と、第1の開口部171と第2の開口部172との間を繋ぐ連通路173と、を含んでいてよい。第2の開口部172は、環状の孔部131の搬入口132に連通可能となっていてよい。
【0078】
径変更治具170は、第1の開口部171と第2の開口部172の内径及び外径が異なっている。そのため、外径及び内径の異なる搬出口112と搬入口132との間を連結することができる。このような径変更治具170を用いることにより、1つの押出機101を用いて、異なる外径及び内径を有する環状の樹脂材Pを簡単に成形することが可能となる。径変更治具170は、押出機101のアタッチメントの形態で提供すると好ましい。これに関連して、径変更治具170は、第1の開口部171及び第2の開口部172の形状が異なる複数種類の径変更治具170を準備しておき、成形する環状の樹脂材P及びそれに用いられる治具130に合わせて選択的に押出機101に取り付けて使用するとよい。
【0079】
樹脂成形器100で成形される環状の樹脂材Pの形状は、例えば上述した径変更治具170を用いることで、バレル110の搬出口112の形状に関わらず変更することができる。当該変更は、径変更治具170を用いる以外にも実施可能である。例えば、はじめにバレル110の搬出口112の外径及び内径に対して環状の孔部の外径及び内径の少なくとも一方が大きな治具を準備する。次いで、この治具の環状の孔部内に樹脂混練体P2を搬入し切断した後、プレス装置150で圧縮するようにすれば、環状の孔部131内の環状の樹脂材Pが環状の孔部131内で径方向に広がり、その形状が変更できる。
【0080】
以上説明した通り、本実施の形態に係る樹脂成形器100によれば、材料としての粉状の樹脂組成物P1から、所望のサイズの環状の樹脂材Pを成形することが可能となる。ここで成形された環状の樹脂材Pは、中央部分に貫通穴H(
図7B参照)が形成されているため、溶融・軟化する際に部分的な温度差が生じにくく、均一な加熱を実現することができる。
【0081】
次に、本実施の形態に係る樹脂成形方法について説明する。以下の樹脂成形方法の説明に際しては、上述した樹脂成形器100を用いて環状の樹脂材Pを製造する場合を例示的に説明するが、当該方法は、樹脂成形器100以外の装置を用いて実現することもできる。
【0082】
<樹脂成形方法>
図5は、本開示の一実施の形態に係る樹脂成形方法の一例を示したフローチャートである。本実施の形態に係る樹脂成形方法は、少なくとも、搬送方向上流側からバレル110内への粉状の樹脂組成物P1の供給を開始する工程(後述する工程S03に対応)と、バレル110内に搬送方向に沿って延在するスクリュー120を回転させて粉状の樹脂組成物P1を混錬しつつ搬送する工程と、バレル110内を搬送される粉状の樹脂組成物P1の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体P2を生成するために、バレル110内を加熱する工程(後述する工程S01に対応)と、バレル110の搬送方向下流側に設けられた搬出口112に、環状の孔部131を備える治具130の環状の孔部131の一端を連結させる工程(後述する工程S04に対応)と、樹脂混練体P2を、搬出口112から環状の孔部131内へ供給する工程(後述する工程S05等に対応)と、環状の孔部131内に所定量の樹脂混練体P2が供給されたとき(後述する工程S06に対応)に、バレル110の搬出口112と環状の孔部131との間で樹脂混練体P2を切断して環状の樹脂材Pを成形する工程(後述する工程S07乃至S09に対応)と、を含む。以下、詳細に説明する。
【0083】
本実施の形態に係る樹脂成形方法をさらに詳しく説明すると、はじめに、バレルヒータ115を動作させてバレル110内の加熱を開始する(工程S01)。次いで、モータ125を動作させてスクリュー120の回転動作を開始し(工程S02)、合わせて樹脂組成物供給源114を動作させて、バレル110の供給口111への粉状の樹脂組成物P1の供給を開始する(工程S03)。上述したスクリュー120の回転動作とバレルヒータ115からの熱により、供給口111に供給された粉状の樹脂組成物P1は、搬送されつつ混錬され、且つその少なくとも一部が溶融されて、樹脂混練体P2が生成される。
【0084】
また、治具130内に樹脂混練体P2を搬入するために、バレル110と治具130とを連結する(工程S04)。より詳細には、バレル110の搬出口112と治具130の搬入口132とを連結する(
図2A参照)。このような連結動作を円滑に行うために、治具130は、図示しないコンベア、シリンダ、多軸ロボット等の搬送手段を用いて、連続的にバレル110へ連結できるようになっているとよい。なお、上述した工程S01乃至工程S04は、その順序を適宜変更することができる。
【0085】
上述した工程S01~S04が完了した後、所定時間が経過すると、スクリュー120の回転に伴って搬送された樹脂混練体P2が搬出口112から搬出され、樹脂混練体P2の、治具130の環状の孔部131内への供給が開始される(工程S05)。そして、環状の孔部131内への樹脂混練体P2の供給量が所定の供給量に到達すると(工程S06でYes)、
図2Bに示すように、搬出口112と搬入口132との間にカッター140を挿入して、樹脂混練体P2を切断する(工程S07)。この工程S07により、環状の孔部131内に、環状の樹脂材Pが生成できる。
【0086】
また、上記切断により内部に環状の樹脂材Pが収容された治具130は、例えば図示しない搬送手段を用いてプレス装置150に対向する位置まで移動された後(
図3A参照)、環状の樹脂材Pの圧縮動作を開始することができる(工程S08)。この圧縮動作は、プレス装置150の押出リング152を治具130の搬入口132から環状の孔部131内へ嵌入することにより実施できる(
図3B参照)。当該圧縮動作により、環状の樹脂材Pが環状の孔部131から押し出されないよう、治具130の一方の面には蓋体135が取り付けられているとよい。
【0087】
さらに、工程S08により圧縮された環状の樹脂材Pは、プレス装置150をさらに動作させることで、治具130内から取り出すことができる。具体的には、先ず、治具130の蓋体135を取り外す(
図3C参照)。次いで、プレス装置150の押出リング152を環状の孔部131内へさらに押し込んで、環状の孔部131内の環状の樹脂材Pを搬入口132とは反対側の端部133から押し出す(工程S09)ことで、取り出すことができる(
図3D参照)。治具130から押し出された環状の樹脂材Pは、後述するモータコアの製造装置1に供給され、ロータコア2のスロット部4への永久磁石3の取り付けに利用され得る。
【0088】
上述した通り、本実施の形態に係る樹脂成形方法によれば、モータコアの製造装置において均一な加熱が可能な環状の樹脂材を成形することができる。
【0089】
次に、上述した樹脂成形器100及び樹脂成形方法を利用したモータコアの製造装置1及びモータコアの製造方法について説明する。
【0090】
<モータコアの製造装置>
図6は、本開示の一実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略説明図である。本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、モータコア、例えばインナーロータ型のロータコア2に形成されたスロット部4に永久磁石3を取り付けるための装置であってよい。そして、この永久磁石3の取り付けを樹脂モールドによって実現するものであってよい。なお、本実施の形態においては、モータコアとしてロータコア2を例示しているが、本開示はこれに限定されない。具体的には、当該モータコアの製造装置1を、例えばモータコアとしてのステータコアのコイルが巻き回された部分等を樹脂モールドするため、またはかしめのない積層コアの軸方向に設けられた貫通孔等に樹脂を充填して積層コアを一体に固定するために利用することもできる。
【0091】
図7A及び
図7Bは、
図6に示すモータコアの製造装置に使用されるロータコア及び環状の樹脂材の一例をそれぞれ示した概略斜視図である。ロータコア2は、
図7Aに示すように、薄い電磁鋼板が複数枚積層されて構成された略円筒状の磁性体で構成することができる。ロータコア2の軸心部分には、モータとして組み立てられた際に回転軸を構成するシャフトが挿入される貫通穴5が設けられていてよい。また、ロータコア2には、この貫通穴5を包囲するように、ロータコア2の軸心方向に沿って延びる複数(
図7Aにおいては4個)のスロット部4が環状に配設されていてよい。このスロット部4は、永久磁石3(
図6参照)が挿入可能な形状、例えばロータコア2の肉厚方向に貫通する直方体状あるいは円弧状の貫通穴で構成することができるが、その具体的形状は特に限定されない。同様に、その数についても任意で変更可能であり、
図7Aに示す4個より多い、例えば10~40個程度とすることもできる。
【0092】
ロータコア2のスロット部4は、その内部に永久磁石3が挿入され固定されるものである。永久磁石3は、例えばスロット部4よりも僅かに小さな直方体あるいは平面視円弧状のブロック体で構成することができる。また、この永久磁石3は、スロット部4に挿入される時点で着磁されているか否かを問わない。さらに、この永久磁石3は、積層方向、又は積層方向に直交する方向に分割されているかどうかは問わない。スロット部4に永久磁石3を挿入すると、永久磁石3の外周面とスロット部4の内周面との間に、少なくとも部分的にギャップが形成される。このスロット部4に形成されるギャップが、樹脂充填部の一例としての充填空間6として機能し得る。この複数の充填空間6は、ロータコア2が下型22上に載置されたとき、それぞれが樹脂充填路25の端部に連通し得るものである。
【0093】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、上述した樹脂成形器100を含む。これに関連して、モータコアの製造装置1で用いられる環状の樹脂材Pは、上述した樹脂成形器100により成形された、熱硬化性樹脂を主に含む環状の樹脂材Pである。環状の樹脂材Pは、
図7Bに示すように、所定の肉厚を有する環状、好ましくは円環状に成形された樹脂成形体で構成することができる。言い換えれば、本実施の形態に係る環状の樹脂材Pは、その中央部に貫通穴Hを有するドーナツ状に成形された樹脂成形体であるといえる。この環状の樹脂材Pの詳細な寸法等は、後述するチャンバ30及び樹脂充填路25の形状や、充填空間6の容量等に合わせて、樹脂成形器100の各構成要素を調整することにより調整されていてよい。
【0094】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、環状の樹脂材を成形する樹脂成形器100に加えて、
図6に示すように、少なくとも、ロータコア2を保持可能な金型20と、環状の樹脂材Pを収容可能な環状のチャンバ30と、チャンバ30内を移動可能なプランジャの一例としての環状プランジャ35と、金型20及びチャンバ30の周囲に配設された製造装置側加熱機40と、を含む。また、上述した各構成要素は、製造装置本体10内に収容され、あるいは製造装置本体10の適所に取り付けられ得る。
【0095】
製造装置本体10は、基台11と、基台11の表面に複数本(例えば4本)立設された支柱12と、この支柱12の先端部分に支持された天板13とを含むものであってよい。天板13は、その下側の面に後述する金型20の上型21が固定されていてよく、図示しないアクチュエータを用いて、支柱12及びこの上型21と共に上下方向に昇降可能であってよい。天板13の昇降動作は、主に金型20にロータコア2を保持する、あるいは金型20からロータコア2を取り外して搬出する際に実施され得る。
【0096】
金型20は、ロータコア2を保持するための部材である。具体的には、この金型20は、ロータコア2の上部、詳しくはその上面に当接して支持する上型21と、ロータコア2の下部、詳しくは下面に当接して支持する下型22とを含むものとすることができる。
【0097】
下型22の内部には、下型22上に載置されたロータコア2の複数の充填空間6へ軟化した樹脂を供給するための樹脂充填路25が設けられていてよい。樹脂充填路25の経路構造は、ロータコア2の充填空間6の数や形状、チャンバ30の形状等に合わせて変更するとよいが、好ましくは、充填空間6とチャンバ30との間を最短距離でつなぐ構造とするとよい。
【0098】
スロット部4に樹脂が充填されるロータコア2は、しばしば他の形状のものに変更され得るため、下型22は、異なる構造の樹脂充填路25を有するものを予め複数個準備しておき、金型20内に保持されるロータコア2に合わせて適宜交換して使用するとよい。また、下型22は、チャンバ30内への環状の樹脂材Pの投入や樹脂充填路25のクリーニング等を行うために、下型22を昇降させることが可能なリフタ26をさらに含んでいてよい。
【0099】
また、上型21は、上述した通り天板13と共に上下方向に移動可能であってよい。そして、この上型21が下型22上にロータコア2が載置された際に下降し、所定の押圧力でロータコア2の上面(もしくは下面)を押圧することで、ロータコア2を上型21と下型22の間に挟むように保持することができる。上型21及び下型22のロータコア2に当接する面は、充填空間6への樹脂の充填時に、充填された樹脂がロータコア2外に漏れ出すことがないよう、その形状や素材等が調整され得る。具体的には、上型21及び下型22にてロータコア2を挟んだ際に、その接触面が密閉状態となるように調整され得る。
【0100】
本実施の形態においては、上述の通り上型21を天板13と共に上下に移動させる構造を採用しているが、上型21と下型22の上下方向位置を相対的に変更可能な構造であれば、他の構造を採用することができる。具体的には、例えば上型21を上下方向に移動させることに代えて、下型22を上下方向に移動させる、あるいは上型21と下型22の両方を上下方向に移動させる構造を採用してもよい。
【0101】
本実施の形態においては、ロータコア2のスロット部4として、上下方向に開口し且つ前後及び左右方向に実質的に隙間を有しない直方体形状のものを例示している。そのため、上型21及び下型22は、略平坦な当接面を有するものを採用しているが、上型21及び下型22の当接面の形状は、保持するロータコア2の形状に合わせて適宜変更することができる。例えば、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1をインナーロータ型のステータコアの樹脂モールドに用いる場合には、上型21及び下型22として、ステータコアの中央に形成される空間に挿入される突起を含むものを採用するとよい。
【0102】
チャンバ(「ポット」と呼ばれることもある)30は、充填空間6に充填される環状の樹脂材Pが投入され得る環状の空間を形成している。換言すると、チャンバ30は、基台11上に設けられた支持台31の内部に形成された、上下方向に延在する略円筒状の空間から構成されている。そして、このチャンバ30は、下型22に形成された樹脂充填路25に連通している。なお、本実施の形態では、チャンバ30の形状として、平面視円環状の空間で形成されたものを例示しているが、投入される環状の樹脂材Pの形状等に合わせて適宜変更することができる。
【0103】
環状プランジャ35は、環状の空間からなるチャンバ30内の樹脂を、樹脂充填路25に向けて搬送するための部材であってよい。したがって、この環状プランジャ35は、少なくともその上部に位置する押圧面37が環状であればよく、この押圧面37は、環状プランジャ35の底部を封鎖するように配設され得る。この場合、押圧面37はチャンバ30の底面としても機能する。また、環状プランジャ35の押圧面37とは反対側の面には、図示しないアクチュエータに連結された昇降アーム36が取り付けられていてよい。アクチュエータの動作が昇降アーム36を介して環状プランジャ35に伝達されることにより、押圧面37はチャンバ30内を昇降する。
【0104】
製造装置側加熱機40は、周知のヒータ等で構成することができ、製造装置本体10内の適所を加熱するものであってよい。本実施の形態に係る製造装置側加熱機40は、金型20内に配設された金型ヒータ41と、環状のチャンバ30の外側周囲に配設されたチャンバ外周ヒータ42とを少なくとも含む。
【0105】
金型ヒータ41は、上型21内及び下型22内の少なくとも一方に配設されているとよい。また、チャンバ外周ヒータ42は、環状のチャンバ30の外側の壁面に近接する位置に、例えばチャンバ30の周囲を包囲するように配設されているとよい。金型ヒータ41及びチャンバ外周ヒータ42、あるいは後述するチャンバ内周ヒータ43には、バレルヒータ115と同様に、周知のヒータ、具体的には赤外線ヒータやシーズヒータを採用することができる。
【0106】
チャンバ30内に環状の樹脂材Pを投入した後、チャンバ外周ヒータ42を動作させると、環状の樹脂材Pの加熱を行うことができる。ここで、環状の樹脂材Pには貫通穴Hが形成されているため、樹脂全体がチャンバ外周ヒータ42から比較的近い距離に配設される。これにより、チャンバ30内で環状の樹脂材Pを加熱して軟化させる際に、熱源(例えばチャンバ外周ヒータ42)に対する距離の違いによって生じ得る部分的な温度差を小さく抑えることが可能となっている。
【0107】
また、製造装置側加熱機40は、上述した金型ヒータ41及びチャンバ外周ヒータ42に加えて、環状のチャンバ30の内側周囲に配設されたチャンバ内周ヒータ43を含むこともできる。本実施の形態に係るチャンバ内周ヒータ43は、下型22の下面中央部に形成されチャンバ30の内側の壁面を形成する柱状の突出部22Aに設けられているものを例示している。突出部22Aに設けられるチャンバ内周ヒータ43は、環状のチャンバ30の中心部分に、チャンバ30の内側の壁面に沿って配設されているとよい。本実施の形態においては、樹脂としてタブレット状の樹脂ではなく環状の樹脂材Pを採用しているため、樹脂の内側周囲にも加熱機を設置することができるものである。このチャンバ内周ヒータ43を設けることで、チャンバ外周ヒータ42から比較的離れた位置にある環状の樹脂材Pの内側部分の加熱を補助することができる。したがって、樹脂材の均一な加熱をより確実に実行することができるようになる。なお、本実施の形態に係る製造装置側加熱機40は、上述した各種のヒータに限定されない。例えば、環状プランジャ35の押圧面37に隣接する位置に別途ヒータを設けることも可能である。
【0108】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、さらに、上述した各構成要素を制御するための製造装置側制御装置50を含んでいてよい。この製造装置側制御装置50は、上述した各構成要素に電気的に接続されてその動作を制御することで、任意の製造工程を実現することが可能な装置であってよい。この製造装置側制御装置50は、例えば
図6中に点線で示すように、各構成要素に有線又は無線通信を介して通信可能に接続されていてよい。この製造装置側制御装置50は、成形器側制御装置160と同様に、シーケンサや周知のコンピュータを用いて実現することができる。また、製造装置側制御装置50は、上述したコンピュータ等のうちの1つのみから又は複数を組み合わせて構成され得る。
【0109】
この製造装置側制御装置50は、上述した各構成要素を動作させることにより、後述する本実施の形態に係るモータコアの製造方法を実現することができる。これに関連して、本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、製造装置側制御装置50を構成するコンピュータに、所定の動作を実行させるための指令を含むソフトウェア等のプログラムの形態で、このプログラムが格納された非一時的な記録媒体の形態で、あるいはネットワーク等を介して提供されるアプリケーションプログラムの形態で、提供され得るものである。本実施の形態に係るモータコアの製造方法の詳細については後述する。
【0110】
上述した構成を備えるモータコアの製造装置1において、樹脂を充填するロータコア2の複数の充填空間6が所定の間隔を空けて環状に配設されていること、及びチャンバ30が環状であることは、特に留意すべき事項である。本実施の形態のもののように、充填空間6の配置とチャンバ30の外径が概ね一致していると、チャンバ30と充填空間6との間をつなぐ樹脂充填路25の長さは、例えば従来のチャンバが装置中央に位置しているものに比べて短くなる。したがって、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1によれば、従来のものに比して、樹脂充填路25の通過に要する時間を短縮することができ、従来工法より多くの樹脂材をスロット部4内へ充填することができる。
【0111】
以上説明した通り、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1によれば、チャンバ30及びチャンバ30に投入される環状の樹脂材Pをいずれも環状としたことで、樹脂材を加熱する際に温度差が生じにくくなり、均一に加熱することができる。チャンバ30内で加熱され軟化された樹脂は、加熱時の温度差が抑制されているため、硬化反応も均一に進行させることができる。そのため、意に反して硬化反応が進むことに起因する樹脂充填路25の詰まりや流動性の低下を抑制することができる。また、樹脂成形器100を使用して環状の樹脂材Pを成形することで、均等に予熱することもできる。さらに、チャンバ30内での樹脂の均一な加熱が実現できるため、成型前の高周波予熱を不要とする、あるいは短縮することができる。
【0112】
また、チャンバ30の形状を充填空間6の配置に合わせて環状としたことで、樹脂充填路25の長さを短くすることができ、樹脂充填路25内で樹脂の硬化反応が進んでしまうことを抑制することができる。これにより、スロット部4内に十分に樹脂を充填することができるようになる。
【0113】
上記に関連して、チャンバ30の外径及び内径は、充填空間6の配置を考慮して設定するとよい。好ましくは、チャンバの外径及び内径は、チャンバ30と充填空間6との間の距離ができるだけ短くなるように調整されているとよい。チャンバ30と充填空間6との間の距離が短ければ、チャンバ30と充填空間6との間をつなぐ樹脂充填路25も短くすることができる。
【0114】
次に、本実施の形態に係るモータコアの製造方法について説明する。以下のモータコアの製造方法の説明に際しては、上述したモータコアの製造装置1を用いて、ロータコア2を製造する場合を例示的に説明するが、モータコアの製造装置1以外の装置を用いて実現することもできる。
【0115】
<モータコアの製造方法>
図8は、
図1に示すモータコアの製造装置で実施される製造プロセスの一例を示したフローチャートである。また、
図9乃至
図12は、
図6に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。以下には、主に
図8乃至
図12を参照して本実施の形態に係るモータコアの製造方法の説明を行う。なお、本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、
図8に示す一連の製造プロセスに加えて、上述した本実施の形態に係る樹脂成形方法を含むものとする。したがって、本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、
図5に示した樹脂成形方法を実施した後、
図8に示す製造プロセスを実施するものとする。なお、
図9乃至
図12は、図を見やすくするために、一連の動作に関連の低い部材やそれらの符号を一部省略して示している。
【0116】
本実施の形態に係るモータコアの製造方法を実施する際には、先ず、
図5に示した一連の工程を実施することにより、環状の樹脂材Pを成形する。環状の樹脂材Pが成形されると、
図9に示すように、リフタ26を動作させて下型22を上昇させ、これにより露出したチャンバ30内に成形された環状の樹脂材Pを投入する(工程S11)。チャンバ30内に投入された環状の樹脂材Pは、環状プランジャ35の押圧面37上に載置される。チャンバ30に投入される環状の樹脂材Pのサイズは、後に保持されるロータコア2の充填空間6及び樹脂充填路25のサイズを考慮して調整されていてよい。
【0117】
上記工程S11の前に、チャンバ30の予熱を行っておくと好ましい。チャンバ30の予熱は、例えばチャンバ外周ヒータ42及びチャンバ内周ヒータ43の少なくとも一方を動作させることで実現できる。
【0118】
次に、チャンバ30内に環状の樹脂材Pが投入される前又は後に、もしくは環状の樹脂材Pの投入と並行して、永久磁石3とこの永久磁石3を取り付けるロータコア2を準備し、ロータコア2のスロット部4内に永久磁石3を挿入する(工程S12)。そして、金型20及びロータコア2の予熱を行う(工程S13)。金型20の予熱は、例えば金型ヒータ41を用いて行うことができる。ロータコア2の予熱は、図示しない公知の加熱手段等を用いて金型20の予熱とは別個に行われてもよいが、下型22上に載置された状態で金型ヒータ41を動作させれば、金型20の予熱と同時に行うこともできる。金型20とロータコア2を同時に予熱する際は、工程S13の前に後述する工程S14を実施するとよい。金型20及びロータコア2の予熱温度は、例えば100~180℃程度とすることができる。なお、当該予熱は金型20及びロータコア2のいずれか一方のみに対して行ってもよい。
【0119】
さらに、工程S12と工程S13の順序は変更することができる。その場合は、ロータコア2と金型20の予熱の後にロータコア2のスロット部4内に、別途予熱された、あるいは予熱されていない永久磁石3を挿入することとなる。
【0120】
金型20及びロータコア2の予熱が完了すると、
図10に示すように、リフタ26を動作させて下型22を下降させた後、下型22上にロータコア2を載置し、次いで上型21を下方向に移動させることで、金型20内にロータコア2を保持する(工程S14)。このとき、上型21は所定の圧力でロータコア2の上面を押圧するように調整されており、それによって上型21とロータコア2の上面、及び下型22とロータコア2の下面をそれぞれ密着させることができる。
【0121】
上述した工程S11の後の適切なタイミングで、チャンバ外周ヒータ42及びチャンバ内周ヒータ43を動作させ、環状の樹脂材Pを加熱する(工程S15)。チャンバ30内での加熱は、環状の樹脂材Pの粘度を低下させ、軟化した樹脂(以下、「軟化樹脂」という)P3とするためのものである。この加熱に用いられるチャンバ外周ヒータ42及びチャンバ内周ヒータ43は、環状の樹脂材Pに部分的な温度差が発生しないように制御されると好ましい。当該加熱により、環状の樹脂材Pは溶解してその粘度が低下し、流動性の高い軟化樹脂P3に変化させることができる。
【0122】
環状の樹脂材Pが軟化樹脂P3に変化すると、次に、
図11に示すように、環状プランジャ35を上昇させて軟化樹脂P3を押し上げることで、各スロット部4内の充填空間6へ軟化樹脂P3の充填を行う(工程S16)。環状プランジャ35の押圧面37に押し上げられた軟化樹脂P3は、チャンバ30から樹脂充填路25を通過し、各充填空間6に流入する。なお、工程S16における充填空間6への軟化樹脂P3の充填を円滑に実行するために、例えば上型21の適所に充填空間6内の空気を抜くための空気穴(図示省略)を設けてもよい。
【0123】
充填空間6への軟化樹脂P3の充填が完了すると、金型ヒータ41を動作させて充填空間6内の軟化樹脂P3を工程S15での加熱よりも高温で加熱することにより、軟化樹脂P3を硬化させる(工程S17)。軟化樹脂P3を硬化する際は、金型ヒータ41により軟化樹脂P3の温度をその粘度が大きく上昇する温度範囲で数分程度加熱するとよい。軟化樹脂P3が当該加熱によって硬化樹脂P4に変化することで、永久磁石3はロータコア2のスロット部4内に樹脂モールドで固定される。なお、この工程S17における加熱時間は、環状の樹脂材Pに用いられている樹脂材の種類等に合わせて適宜調整され得る。
【0124】
上述した一連の樹脂モールドプロセスが完了すると、上型21を上昇させ、樹脂モールドされたロータコア2をロボットアーム等の図示しない搬送手段を用いて装置外へ搬出する(工程S18)。搬出されたロータコア2は、例えばシャフトの取り付け等のために別の装置へ移送され得る。そして、このロータコア2の搬出が完了すると、製造装置1のクリーニングを行う(工程S19)。製造装置1のクリーニングは、
図12に示すように、リフタ26を動作させて樹脂充填路25内で硬化した硬化樹脂P4を除去することを含む。加えて、ブラシ等のクリーニング用の部材を用いて、金型20表面やチャンバ30内等をクリーニングすることを含み得る。
【0125】
以上説明した通り、本実施の形態に係るモータコアの製造方法によれば、チャンバ30及びチャンバ30に投入した環状の樹脂材Pがいずれも環状であるため、チャンバ30内における樹脂材の加熱時に温度差が生じにくく、均一に加熱することができる。また、チャンバ30の形状が充填空間6の配置に合致しているため、両者をつなぐ樹脂充填路25の長さを短くすることができ、樹脂充填路25内で樹脂の硬化反応が進んでしまうことを抑制することができる。
【0126】
なお、上述した本実施の形態では、下型22に樹脂充填路25を設け、下方から軟化樹脂P3を充填空間6へ充填する態様を例示したが、充填方向はこれに限定されるものではない。例えば、下型22に代えて上型21に樹脂充填路を設け、上方から軟化した樹脂を充填する態様としてもよいし、下型22と上型21の両方に樹脂充填路を設け、下方と上方の両方から樹脂を充填する態様としてもよい。
【0127】
<変形例>
上述した樹脂成形器100及び樹脂成形方法においては、プレス装置150を用いて治具130から環状の樹脂材Pを押し出し、環状の樹脂材P単体としてモータコアの製造装置1及びモータコアの製造方法に利用するものを例示したが、本開示はこれに限定されない。そこで、以下には上述した一実施の形態の変形例として、環状の樹脂材P単体ではなく、環状の樹脂材Pと他の部材で構成された投入部材60、70を用いたモータコアの製造装置1A及びモータコアの製造方法を説明する。
【0128】
図13は、チャンバ内に投入可能な投入部材の例を示した概略断面図である。
図13に示す投入部材60、70のうち、第1の投入部材60は、
図13Aに示すように、環状の樹脂材Pと、この環状の樹脂材Pを支持する治具、より詳しくは、環状の樹脂材Pを環状の孔部131内に収容した、樹脂成形器100の一構成要素としての治具130とで構成されたものであってよい。この第1の投入部材60は、換言すると、治具130から環状の樹脂材Pを押し出す前の状態のもの(
図3C参照)といえる。
【0129】
図14は、
図13Aに示す投入部材を投入可能な一変形例に係るモータコアの製造装置の、
図9に対応する状態を示した図である。本変形例に係るモータコアの製造装置1Aは、チャンバ30A部分の構成以外は上述した一実施の形態に係るモータコアの製造装置1と同様の構成を含んでいてよい。したがって、以下には、上述したモータコアの製造装置1と異なる構成を中心に説明を行い、モータコアの製造装置1と同様の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0130】
本変形例に係るモータコアの製造装置1Aのチャンバ30Aは、
図14に示すように、その外径が上述したモータコアの製造装置1のチャンバ30よりも大きく調整された、円筒状の空間で構成されていてよい。そして、この筒状のチャンバ30Aは、内部に上述した第1の投入部材60が投入可能な大きさに調整されていてよい。
【0131】
本変形例に係るモータコアの製造装置1Aを用いてモータコアを製造するプロセスは、環状の樹脂材Pに代えて第1の投入部材60をチャンバ30Aに投入する点以外は、上述した一実施の形態に係るモータコアの製造方法と同一であって良い。
【0132】
本変形例に係るモータコアの製造装置1A及びモータコアの製造方法によれば、環状の樹脂材Pを成形するプロセスのうち、環状の樹脂材Pを治具130外に押し出す工程(工程S09)を省略することができる。したがって、一連の製造プロセスを簡略化することができる。
【0133】
他方、
図13に示す投入部材60、70のうち、第2の投入部材70は、第1の投入部材70と同様に、環状の樹脂材Pと、環状の樹脂材Pを内部に収容した治具、より詳しくは樹脂成形器100の一構成要素としての治具130とを含む。そして、この第2の投入部材70は、上述した2つの構成要素に加えて、先端部が治具130の環状の孔部131の一方の端部側から嵌入された押出リング、すなわちプレス装置150の一部としての押出リング152とを含んでいてよい。この第2の投入部材70は、換言すると、治具130から環状の樹脂材Pを押し出す前の状態において、押出リング152をプレス装置本体151から分離させた一体としたもの(
図3C参照)といえる。
【0134】
図15は、
図13Bに示す投入部材を投入可能な他の変形例に係るモータコアの製造装置の、
図9に対応する状態を示した図である。本変形例に係るモータコアの製造装置1Bは、チャンバ30B及びプランジャ35Aの構成以外は上述した一実施の形態に係るモータコアの製造装置1と同様の構成を含んでいてよい。したがって、以下には、上述したモータコアの製造装置1と異なる構成を中心に説明を行い、モータコアの製造装置1と同様の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略するものとする。
【0135】
本変形例に係るモータコアの製造装置1Bのチャンバ30Bは、
図15に示すように、その外径が上述したモータコアの製造装置1のチャンバ30よりも大きく調整された、円筒状の空間で構成されていてよい。そして、この筒状のチャンバ30Bは、内部に上述した第2の投入部材70が投入可能な大きさに調整されていてよい。なお、チャンバ30B内に投入される第2の投入部材70は、押出リング152が下方向に位置するように投入されるとよい。
【0136】
本変形例に係るモータコアの製造装置1Bのプランジャ35Aは、
図15に示すように、上述した一実施の形態に係るモータコアの製造装置1の環状プランジャ35に比べて、上下方向の長さが短く調整されている。これは、本変形例に係るモータコアの製造装置1Bのプランジャ35Aは、押出リング152を押し上げるように動作することで、チャンバ30B内で軟化された軟化樹脂P3を充填空間6へ充填するためである。換言すれば、本変形例においては、プランジャ35Aと押出リング152の2つによって環状プランジャの機能を実現しているものといえる。これに関連して、本変形例で示したプランジャ35Aは、押出リング152を押し上げることが可能であれば環状でなくてもよい。
【0137】
本変形例に係るモータコアの製造装置1Bを用いてモータコアを製造するプロセスは、環状の樹脂材Pに代えて第2の投入部材70をチャンバ30Bに投入する点、及びプランジャ35Aが押出リング152を押し上げることで軟化樹脂P3が充填空間6へ充填される点以外は、上述した一実施の形態に係るモータコアの製造方法と同一であって良い。
【0138】
本変形例に係るモータコアの製造装置1B及びモータコアの製造方法によれば、環状の樹脂材Pを成形するプロセスのうち、環状の樹脂材Pを治具130外に押し出す工程(工程S09)を省略することができる。加えて、押出リング152がプランジャの一部として機能するため、プランジャの形状を治具130に合わせて予め変更しておく必要がなくなる。
【0139】
なお、上述した各変形例に係るモータコアの製造装置1A、1Bにおいては、環状の樹脂材Pの貫通穴Hに対応する位置に治具130が配設しているため、チャンバ内周ヒータ43を配設することは構造上難しい。しかしながら、本開示のモータコアの製造装置では、樹脂材として環状の樹脂材Pを採用しているため、不均一な加熱は効果的に抑制されている。加えて、治具130の中央部分を、
図13等に示されているような円柱形状に代えて円筒形状とすれば、チャンバ内周ヒータ43を当該円筒の内部へ挿入することで配設可能とすることもできる。治具130の中央部分をこのように円筒形状とすると、投入部材のハンドリングも容易になる。
【0140】
上述した一実施の形態及び各変形例に係るモータコアの製造装置及びモータコアの製造方法においては、環状の樹脂材Pとして内周面及び外周面がいずれも円形であるものを例示したが、本開示はこれに限定されない。具体的には、ロータコア2の充填空間6の配置に合わせて内周面及び外周面の形状を変更することもできる。これに関連して、以下には、一変形例として例示した第1の投入部材60の更なる変形例を説明する。
【0141】
図16は、第1の投入部材の変形例を説明するための説明図であって、
図16Aはロータコアの一例を示した平面図であり、
図16Bは
図16Aに示したロータコアに充填される環状の樹脂材Pを含む第3の投入部材60Aを示した平面図である。本変形例に係る第3の投入部材60Aは、
図16Bに示すように、環状の樹脂材PAと、この環状の樹脂材PAを内部に収容した治具、より詳しくは樹脂成形器100の一構成要素として機能し得る治具130Aとで構成されている点は第1の投入部材60と同様である。しかしながら、この第3の投入部材60Aの治具130Aには、その環状の孔部131Aの内側内壁面及び外側内壁面に、搬送方向に交差する方向に隆起した搬送方向に沿って延びる複数の内側突条136及び外側突条137が形成されている。この複数の内側突条136及び外側突条137は、
図16Bに示すように、その両側面が曲面で形成されていると好ましい。そして、第3の投入部材60Aに含まれる環状の樹脂材PAは、円周方向に複数の括れが形成される。
【0142】
第3の投入部材60Aは、例えば
図16Aに示すような、環状に6つのスロット部4Aが配設されたロータコア2Aへの樹脂充填に用いるとよい。ここで、治具130Aに形成されている内側突条136及び外側突条137は、
図16Bに示すように、ロータコア2Aの樹脂充填部、すなわちスロット部4が配設されない位置に配置するようにその周方向位置が調整されるとよい。内側突条136及び外側突条137をこのように配置すると、治具130A内で硬化する樹脂の量を少なくすることできる。したがって、軟化樹脂P3の流路が短くなり、より多くの樹脂をスロット部4内に充填できる。なお、上記例では、治具130Aに内側突条136及び外側突条137の両方を設けた場合を例示したが、いずれか一方のみであってもよい。
【0143】
また、図示は省略するが、第3の投入部材60Aとして例示した内側突条136及び外側突条137と同様の突条を、チャンバの内側内壁面及び外側内壁面に形成してもよい。この場合には、チャンバ内で硬化する樹脂の量を少なくすることできる。したがって、軟化樹脂P3の流路が短くなり、より多くの樹脂をスロット部4内に充填できる。
【0144】
図17は、
図6に示すモータコアの製造装置のさらに他の変形例に係るモータコアの製造装置の、
図9に対応する状態を示した図である。また、
図18は、
図17に示すモータコアの製造装置の下型を下降させた状態を示した図である。本変形例に係るモータコアの製造装置1Cは、
図17及び
図18に示すように、チャンバ30の中央部分に、チャンバ30内に投入される環状の樹脂材Pの内周面を一時的に位置決め可能なガイド部材80を含むものである。なお、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1Cは、ガイド部材80を含む点以外は上述したモータコアの製造装置1と同様の構成を有しているものとする。
【0145】
ガイド部材80は、一端が環状プランジャ35の基部の中央に支持され、上方向に延在するコイルバネ82と、コイルバネ72の他端に取り付けられ、チャンバ30の中央部分を塞ぐブロック体81とで構成することができる。なお、コイルバネ82は、同様の機能を有する付勢手段に変更することができる。
【0146】
ブロック体81は、その直径が下型22の突出部22Aと実質的に等しい円柱状の部材で構成することができる。また、ブロック体81は、
図17に示すように下型22が上昇しているときはコイルバネ82の付勢力により上方に押し上げられて、チャンバ30の中央部分を塞ぐように配設される。このとき、ブロック体81の上面は、環状プランジャ35の押圧面37よりも高い位置に配設されているとよい。ブロック体81によってその中央部分が塞がれたチャンバ30内に環状の樹脂材Pを投入すると、環状の樹脂材Pはその内周面の位置がブロック体81によって位置決めされた状態で、チャンバ30内に配設される。
【0147】
チャンバ30内への環状の樹脂材Pの投入が完了した後、下型22を下降させると、ブロック体81は下型22の突出部22Aに押圧され、コイルバネ82の付勢力に抗して下降する。このとき、ブロック体81の直径と突出部22Aの直径とは、上述したように実質的に等しくなるように調整されているため、突出部22Aの環状の樹脂材Pの内周側への挿入動作はスムーズに実施できる。下型22の下降が完了したとき、ブロック体81の上面は、
図18に示すように、押圧面37よりも下方に移動するよう構成されているとよい。
【0148】
上述したガイド部材80を設けることにより、本変形例に係るモータコアの製造装置1Cにおいては、下型22の下降時に突出部22Aと環状の樹脂材Pとが接触することがなく、下型22の下降動作を環状の樹脂材Pを破損することなくスムーズに行うことができる。なお、ブロック体81の上面の外周囲は、環状の樹脂材Pの投入を円滑にするために面取り又はアール加工が施されているとよい。
【0149】
また、上述した一実施の形態に係る樹脂成形器100においては、環状の樹脂材Pを収容可能な環状の孔部131を備える治具130を用いたものを例示したが、本開示の樹脂成形器はこれに限定されない。そこで、以下には本実施の形態の変形例に係る樹脂成形器100A及び樹脂成形方法について、主に
図19乃至
図21を参酌して説明する。
【0150】
図19は、本開示の一実施の形態の変形例に係る樹脂成形器の一例を示した概略説明図である。本変形例に係る樹脂成形器100Aは、上述した一実施の形態に係る樹脂成形器100と同様に、環状の樹脂材Pを成形することが可能なものである。この樹脂成形器100Aは、
図19に示すように、主に押出機101Aと、治具130Aと、カッター140Aと、を含む。
【0151】
押出機101Aは、スクリュー本体121を搬送方向に沿って移動させる移動装置126をさらに備える点を除き、上述した一実施の形態に係る押出機101と同様の構成を備えるものであってよい。そこで、押出機101Aのうち、押出機101と同様の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、押出機101と異なる部分についてのみ説明する。
【0152】
移動装置126は、スクリュー本体121をバレル110の延在方向に沿ってスライド移動させることが可能なアクチュエータで構成することができる。この移動装置126を動作させると、スクリュー本体121の先端部、すなわち閉塞ブロック123部分を、バレル110の搬出口112から外部に突出させることができる。ここで、閉塞ブロック123の搬送方向に沿った長さは、成形する環状の樹脂材Pの軸方向長さと同様かそれ以上に調整されていると好ましい。
【0153】
治具130Aは、成形された環状の樹脂材Pを受けるものである。本変形例の治具130Aは、表面が平坦なプレート状の部材で構成することができる。加えて、本変形例の治具130Aは、バレル110の搬送方向下流側の端部に当接することで、搬出口112を選択的に閉塞することができるものであってよい。これに関連して、この治具130Aは、搬出口112を選択的に閉塞するために、搬出口112に近接する方向及び搬出口112から離間する方向に移動可能であってよい。本変形例の治具130Aは、上下方向に移動可能となっている。なお、本変形例では、治具130Aが、環状の樹脂材Pを受けるだけでなく、搬出口112を閉塞する機能をも有しているものを例示したが、搬出口112の閉塞を他の部材、例えば図示しない周知のシャッターで行うようにしてもよい。
【0154】
カッター140Aは、搬出口112に近接する位置に配置され、搬出口112からスクリュー本体121と共にバレル110の外部に搬出された樹脂混練体P2を、搬出口112に近接する位置で切断するものであってよい。本変形例のカッター140Aは、搬出口112の周囲を囲むように配設され、搬送方向に交差する方向、例えば水平方向に移動可能であるものとする。
【0155】
図20A乃至
図20Cは、
図19に示す樹脂成形器の動作状態の一例を示した動作説明図である。また、
図21は、本開示の一実施の形態に係る樹脂成形方法の一例を示したフローチャートである。次に、
図20及び
図21を主に参照して、本変形例に係る樹脂成形方法について説明する。なお、以下では、上述した樹脂成形器100Aを用いて本変形例に係る樹脂成形方法を実施した場合を例示的に説明する。
【0156】
本実施の形態に係る樹脂成形方法は、少なくとも、搬送方向上流側からバレル110内への粉状の樹脂組成物P1の供給を開始する工程(後述する工程S23に対応)と、バレル110内に搬送方向に沿って延在するスクリュー120を回転させて粉状の樹脂組成物P1を混錬しつつ搬送する工程と、バレル110内を搬送される粉状の樹脂組成物P1の少なくとも一部を溶融させて樹脂混練体P2を生成するために、バレル110内を加熱する工程(後述する工程S21に対応)と、バレル110の搬送方向下流側に設けられた搬出口112を閉塞する工程(後述する工程S24に対応)と、スクリュー120先端とバレル110の間に規定される環状の空間に所定量の樹脂混練体P2が供給されたとき(後述する工程S26に対応)に、搬出口112を開放すると共に、スクリュー120を、その先端部をその周囲の樹脂混練体P2と共に搬出口112からバレル110外へ搬出するように移動させる工程(後述する工程S27及びS28に対応)と、スクリュー120と共に搬出口112からバレル110外へ搬出された樹脂混練体P2を搬出口に近接する位置で切断して環状の樹脂材Pを成形する工程(後述する工程S29に対応)と、を含む。以下、詳細に説明する。
【0157】
本変形例に係る樹脂成形方法をさらに詳しく説明すると、はじめに、バレルヒータ115を動作させてバレル110内の加熱を開始する(工程S21)。次いで、モータ125を動作させてスクリュー120の回転動作を開始し(工程S22)、合わせて樹脂組成物供給源114を動作させて、バレル110の供給口111への粉状の樹脂組成物P1の供給を開始する(工程S23)。上述したスクリュー120の回転動作とバレルヒータ115からの熱により、供給口111に供給された粉状の樹脂組成物P1は、搬送されつつ混錬され、且つその少なくとも一部が溶融されて、樹脂混練体P2が生成される。
【0158】
また、治具130Aを動作させることでバレル110の搬出口112を閉塞する(工程S24)。搬出口112が閉塞された状態で上述した樹脂混練体P2の搬送が行われると、
図20Aに示すように、樹脂混練体P2は治具130Aによりその搬送が制限されることで、バレル110とスクリュー本体121との間に規定される環状の空間、すなわち閉塞ブロック123の周囲に留まることになる。閉塞ブロック123の周囲に一定量の樹脂混練体P2が留まっている状態で、新たな樹脂混練体P2の搬送が継続されると、閉塞ブロック123の周囲にある樹脂混練体P2は圧縮され、バレル110と閉塞ブロック123の間の空間の形状に合わせて円環状に圧縮成形される(工程S25)。なお、上述した工程S21乃至S24を実行する順序は上記に限定されず、適宜変更することができる。
【0159】
次に、閉塞ブロック123の周囲に供給される樹脂混練体P2の量が所定の供給量に到達すると(工程S26でYes)、樹脂混練体P2から環状の樹脂材Pを分離成形するための一連の工程を開始する。具体的には、先ず治具130Aを動作させてバレル110の搬出口112を開放する(工程S27)。なお、このときのバレル110内の樹脂混練体P2は、その一部がフィン122等に支持されていることでスクリュー本体121の周囲に保持された状態を維持している。
【0160】
次いで、移動装置126を動作させて、スクリュー本体121の先端を搬出口112の外に突出させる。具体的には、
図20Bに示すように、移動装置126を動作させて、スクリュー本体121の閉塞ブロック123部分と、閉塞ブロック123の周囲に保持されている樹脂混練体P2とを搬出口112からバレル110の外へ搬出するように移動させる(工程S28)。
【0161】
次に、上述の工程により閉塞ブロック123と共に搬出口112外に搬出された樹脂混練体P2を、
図20Cに示すように、搬出口112に近接する位置に配設されたカッター140Aを動作させて切断する(工程S29)。なお、本変形例では、成形したい環状の樹脂材Pの軸方向長さに合わせて閉塞ブロック123の搬送方向長さが調整されているため、カッター140Aの切断位置を実質的に搬出口112の端部と同じ位置としているが、カッター140Aによる切断位置を調整すれば、環状の樹脂材Pの軸方向長さを調整することもできる。
【0162】
カッター140Aにより切断された樹脂混練体P2は、スクリュー本体121の周囲に保持された樹脂混練体P2と分離して、環状の樹脂材Pとして搬出される。搬出された環状の樹脂材Pは、治具130Aにより受けることができる。上述した工程により、環状の樹脂材Pの成形が完了する。なお、治具130A上の環状の樹脂材Pは、モータコアの製造装置等へ搬送され得る。
【0163】
以上説明した通り、本変形例に係る樹脂成形器100A及び樹脂成形方法においても、上述した本実施の形態に係る樹脂成形器100及び樹脂成形方法と同様の効果を奏することができる。また、治具130Aの構造の自由度が高いため、成形された後の環状の樹脂材Pの取り扱いが容易である。
【0164】
また、上述した本変形例に係る樹脂成形器100A及び樹脂成形方法は、モータコアの製造装置及びモータコアの製造方法の一部としても機能し得る。なお、この場合のモータコアの製造装置の構成は、樹脂成形器100Aに対応する部分以外は一実施の形態あるいは変形例として上に例示したモータコアの製造装置1、1A~1Cと同様であってよい。また、この場合のモータコアの製造方法の工程も、上述した樹脂成形のための工程を除き、一実施の形態あるいは変形例として上に例示したモータコアの製造方法と同様であってよい。したがって、本変形例に係る樹脂成形器100A及び樹脂成形方法を含むモータコアの製造装置及びモータコアの製造方法については、ここでは詳細な説明を省略する。
【0165】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【0166】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願及び特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0167】
本開示の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「~を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本開示をよりよく説明することだけを意図し、本開示の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本開示の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0168】
本明細書中では、本開示を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本開示の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本開示が実施されることを予定している。したがって本開示は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本開示に包含される。
【要約】
本開示の樹脂成形器は、搬送方向上流側に供給された熱硬化性樹脂を含む粉状の樹脂組成物を前記搬送方向に沿って搬送可能な押出搬送路と、前記押出搬送路内に前記押出搬送路の内壁面との間に所定の間隔を空けて前記搬送方向に沿って延在するスクリュー本体と、前記スクリュー本体の外周面に形成されたフィンと、を備えるスクリューと、前記押出搬送路内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱可能な成形器側加熱機と、前記粉状の樹脂組成物を搬送方向に沿って混錬しつつ搬送して樹脂混練体を生成するために、前記スクリューを回転させる回転装置と、前記押出搬送路の前記搬送方向下流側に設けられた搬出口から搬出される前記樹脂混練体で構成された環状の樹脂材を受ける治具と、を含む。