(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】同時複製を伴うリピータ機器を用いて送信側機器と受信側機器の間で無線通信するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/15 20060101AFI20240618BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240618BHJP
【FI】
H04B7/15
H04W16/26
(21)【出願番号】P 2021544580
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020052060
(87)【国際公開番号】W WO2020157075
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】523231071
【氏名又は名称】ウナビズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ユベール,ロイク
(72)【発明者】
【氏名】マンスゥイ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】シャルボス,ニコラ
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-196985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0062803(US,A1)
【文献】特表2014-514809(JP,A)
【文献】特表2006-510326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0098592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04W 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表上でリピータ機器(40)を用いて複数の送信側機器(20)と少なくとも1つの受信側機器(30)の間で無線通信するための方法(50)であって、前記送信側機器は、前記リピータ機器が受信したメッセージを前記送信側機器のある周波数帯で伝送し、前記リピータ機器は、前記周波数帯で前記少なくとも1つの前記受信側機器に前記受信したメッセージを再伝送する方法において、
-前記リピータ機器(40)により、前記送信側機器が伝送し、かつ収集窓の間に前記リピータ機器が受信したメッセージを収集するステップ(51)と、
-前記リピータ機器により、前記収集窓の間に受信した前記メッセージを前記少なくとも1つの受信側機器に再伝送するステップ(52)であって、非同時に受信した少なくとも2つのメッセージを前記少なくとも1つの受信側機器に同時に再伝送するように、前記収集窓の間に受信した前記メッセージを再伝送するステップと
を含
み、前記同時に再伝送することは、同時に再伝送される前記少なくとも2つのメッセージ間の時間の重なりが、前記少なくとも2つのメッセージの中の最も短いメッセージの継続期間に等しい継続期間を有する、または前記メッセージが同じ継続期間を有する場合には、前記時間の重なりが、前記メッセージの継続期間に等しいことを意味する、ことを特徴とする方法(50)。
【請求項2】
前記収集窓の間に受信した前記メッセージをすべて同時に再伝送する、請求項1に記載の方法(50)。
【請求項3】
前記収集窓の間に受信した前記メッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が所定の最大電力よりもより大きくなるとすぐに、前記収集窓を中断する、請求項2に記載の方法(50)。
【請求項4】
前記収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な
全瞬時電力が所定の最大電力よりも大きくなるとき、前記収集窓の間に受信した前記メッセージの一部だけを同時に再伝送する、請求項1に記載の方法(50)。
【請求項5】
前記収集窓の間に受信した前記メッセージをメッセージサイズの降順でソートし、続けて最も長いメッセージでグループを形成し、各前記グループ内のメッセージ数を、前記グループの前記メッセージをすべて同時に再伝送するために必要な前記全瞬時電力が所定の最大電力よりも小さくなるように制限する、請求項4に記載の方法(50)。
【請求項6】
-前記リピータ機器(40)により、前記収集窓の間に受信した前記メッセージの受信の瞬間を測定するステップ(511)と、
-前記リピータ機器(40)により前記メッセージの前記受信の瞬間に従って、前記メッセージの前記再伝送中に使用する、前記メッセージの物理的性質のそれぞれの値を決定するステップ(512)と、
-前記メッセージの前記受信の瞬間に従って決定された前記物理的性質の前記値を使用して、前記リピータ機器(40)が前記メッセージを再伝送するステップ(52)と
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(50)。
【請求項7】
前記再伝送されたメッセージの前記物理的性質の前記値と前記物理的性質の事前に決定された基準値との間の差が、基準の瞬間と前記リピータ機器による前記メッセージの前記受信の瞬間との間の時間の差を表すように、前記再伝送されたメッセージの前記物理的性質の前記値を決定する、請求項6に記載の方法(50)。
【請求項8】
前記リピータ機器(40)により、前記物理的性質の前記基準値を使用して基準メッセージ(Mr)を形成および伝送するステップを含む、請求項7に記載の方法(50)。
【請求項9】
-前記少なくとも1つの受信側機器(30)により、前記リピータ機器(40)から受信した前記メッセージの前記物理的性質の前記値を測定するステップ(53)と、
-前記少なくとも1つの受信側機器(30)により、前記少なくとも1つの受信側機器が受信した前記メッセージの前記物理的性質の前記測定値に従って、前記リピータ機器(40)が再伝送した前記メッセージにタイムスタンプを押すステップ(54)と
を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法(50)。
【請求項10】
前記受信側機器(40)による前記メッセージの前記受信の瞬間に従って前記メッセージを再伝送するために使用する前記値が決定される前記物理的性質は、前記メッセージの周波数に、または前記メッセージの電力に、または前記メッセージの位相に対応する、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法(50)。
【請求項11】
地表上で、送信側機器(20)がある周波数帯で伝送したメッセージを受信し、受信したメッセージを前記周波数帯で少なくとも1つの受信側機器(30)に再伝送するように適合されたリピータ機器(40)であって、
-前記送信側機器が伝送し、収集窓の間に前記リピータ機器が受信したメッセージを収集し、
-前記収集窓の間に受信した前記メッセージを少なくとも1つの受信側機器に再伝送し、前記収集窓の間に受信した前記メッセージは、非同時に受信した少なくとも2つの前記メッセージを前記少なくとも1つの受信側機器に同時に再伝送するように再伝送され
、前記同時に再伝送することは、再伝送される前記少なくとも2つのメッセージ間の時間の重なりが、前記少なくとも2つのメッセージの中の最も短いメッセージの継続期間に等しい継続期間を有する、または前記メッセージが同じ継続期間を有する場合には、前記時間の重なりが、前記メッセージの継続期間に等しいことを意味する
ように構成された手段を含むことを特徴するリピータ機器(40)。
【請求項12】
前記収集窓の間に受信した前記メッセージをすべて同時に再伝送する、請求項11に記載のリピータ機器(40)。
【請求項13】
前記収集窓の間に受信した前記メッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が所定の最大電力よりも大きくなるとすぐに、前記収集窓を中断する、請求項12に記載のリピータ機器(40)。
【請求項14】
前記収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な
全瞬時電力が所定の最大電力よりも大きくなるとき、前記収集窓の間に受信した前記メッセージの一部だけを同時に再伝送する、請求項11に記載のリピータ機器(40)。
【請求項15】
前記収集窓の間に受信した前記メッセージをメッセージサイズの降順でソートし、続けて最も長いメッセージでグループを形成し、各前記グループ内のメッセージ数を、前記グループの前記メッセージをすべて同時に再伝送するために必要な前記全瞬時電力が所定の最大電力よりも小さくなるように制限する、請求項14に記載のリピータ機器(40)。
【請求項16】
-前記収集窓の間に受信した前記メッセージの受信の瞬間を測定し、
-前記メッセージの前記受信の瞬間に従って、前記メッセージの再伝送中に使用する、前記メッセージの物理的性質のそれぞれの値を決定し、
-前記メッセージの前記受信の瞬間に従って決定された前記物理的性質の前記値を使用して前記メッセージを再伝送する
ように構成された手段を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載のリピータ機器(40)。
【請求項17】
前記再伝送されたメッセージの前記物理的性質の前記値と前記物理的性質の事前に決定された基準値との間の差が、基準の瞬間と前記リピータ機器による前記メッセージの前記受信の瞬間との間の時間の差を表すように、前記再伝送されるメッセージの前記物理的性質の前記値を決定するように構成される、請求項16に記載のリピータ機器(40)。
【請求項18】
前記物理的性質の前記基準値を使用して基準メッセージ(Mr)を形成および伝送するように構成された手段を含む、請求項17に記載のリピータ機器(40)。
【請求項19】
前記
リピータ機器(40)による前記メッセージの前記受信の瞬間に従って、前記メッセージを再伝送するために使用する前記値が決定される前記物理的性質は、前記メッセージの周波数に、または前記メッセージの電力に、または前記メッセージの位相に対応する、請求項16~18のいずれか一項に記載のリピータ機器(40)。
【請求項20】
少なくとも1つの受信側機器(30)と、請求項16~19のいずれか一項に記載の少なくとも1つのリピータ機器(40)とを含む無線通信システム(10)であって、前記少なくとも1つの受信側機器(30)は、
-前記リピータ機器(40)から受信したメッセージの物理的性質の値を測定し、
-前記少なくとも1つの受信側機器が受信した前記メッセージの前記物理的性質の前記測定値に従って、前記リピータ機器(40)が伝送した前記メッセージにタイムスタンプを押す
ように構成された手段を含むことを特徴とする無線通信システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル通信の分野に関し、より詳細にはリピータ機器を用いて送信側機器と受信側機器の間で無線通信するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
慣習的に、たとえば端末と、複数の基地局を含む無線アクセスネットワークとを含む無線通信システムの範囲を拡大するためにリピータ機器を使用することができる。これは、場合によってはさまざまな理由のため、端末が基地局の範囲外に配置され、その結果、これらの端末が伝送するメッセージを無線アクセスネットワークが受信することができないことが発生することがあるためである。
【0003】
そのような場合、たとえば前記端末と前記無線アクセスネットワークの基地局の間に置かれたリピータ機器を提供することが可能であり、その結果、端末が送信するメッセージを受信するようにリピータ機器を適合させ、その結果、リピータ機器が伝送するメッセージを受信するように無線アクセスネットワークを適合させる。そのような場合、リピータ機器は、前記端末からこれまで受信したメッセージを無線アクセスネットワークに再伝送し、その結果、端末は、前記リピータ機器を用いて前記無線アクセスネットワークとメッセージを交換することができる。
【0004】
しかしながら、設備の任意の品目による周波数帯の時間的占有を制限する必要がある規制上の制約を受ける周波数帯でメッセージを交換する場合、リピータ機器を使用することにより複雑になることが判明することがある。リピータ機器の範囲内に配置された端末数が多い場合、前記リピータ機器が再伝送するメッセージ数もまた多くなり、効力のある規制上の制約と両立しない再伝送のために周波数帯の時間的占有を必要とすることがあることが理解されよう。
【0005】
そのような規制上の制約は、詳細には、事前に行政上の許可なしに使用することができるいわゆる空き周波数帯に対応するISM(Industrial、Scientific、and Medical、産業科学医療)帯のために存在する。このため、ISM帯は、M2M(Machine-to-Machine、機械同士の)タイプの用途またはIoT(Internet of Things)タイプの用途に特に有利である。これらの用途では、再伝送すべきメッセージを送信しがちな端末数は、非常に多いことが判明することがあり、したがって、ISM帯でのリピータ機器の使用と両立しないことが判明することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、受信し、再伝送すべきメッセージ数が多いときを含みリピータ機器による周波数帯の時間的占有を制限して、たとえば、前記周波数帯に適用可能な規制上の制約に適合させることができるようにする解決手段を提案することにより、従来技術の解決手段の制限事項のすべてまたは一部を、詳細には上記で開示した制限事項を救済することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、第1の様態によれば、本発明は、地表上のリピータ機器を用いて複数の送信側機器と少なくとも1つの受信側機器の間で無線通信するための方法に関し、前記送信側機器は、前記リピータ機器が受信する前記送信側機器の周波数帯でメッセージを伝送し、前記リピータ機器は、前記周波数帯で前記少なくとも1つの受信側機器に受信メッセージを再伝送する。無線通信方法は、
-リピータ機器により、送信側機器が送信し、かつ収集窓の間に前記リピータ機器が受信したメッセージを収集するステップと、
-前記リピータ機器により、前記収集窓の間に受信した前記メッセージを少なくとも1つの受信側機器に再伝送するステップであって、非同時に受信した少なくとも2つのメッセージを前記少なくとも1つの受信側機器に同時に再伝送するように、収集窓の間に受信した前記メッセージを再伝送するステップと
を含む。
【0008】
したがって、メッセージを受信した直後にメッセージを再伝送するのではなく、リピータ機器は、送信側機器が送信したメッセージを収集窓の継続期間全体を通して収集することにより活動を始める。前記収集窓の期間に受信したメッセージを収集した後、非同時に受信した少なくとも2つのメッセージをリピータ機器が同時に再伝送するように、前記受信したメッセージを再伝送する。
【0009】
「2つのメッセージを同時に再伝送する」は、再伝送された前記2つのメッセージが、前記2つのメッセージの間で全体的な時間の重なりがあることを意味する。「全体的な時間の重なり」は、同時に伝送された2つのメッセージ間の時間の重なりが、同時に再伝送された前記2つのメッセージの中の最も短いメッセージの継続期間に等しい継続期間を有する、または前記2つのメッセージが同じ継続期間を有する場合には継続期間が前記2つのメッセージの継続期間に等しいことを意味する。他方、「非同時に受信した2つのメッセージ」は、受信した2つのメッセージがそれらの間で時間の重なりがまったくない(たとえば、2つのメッセージを順々に受信した)、または2つのメッセージの間に部分的な時間の重なりがある,すなわち、2つのメッセージ間の時間の重なりは全体ではないことを意味する。
【0010】
リピータ機器が非同時に受信したメッセージを同時に再伝送するので、メッセージを再伝送するためにリピータ機器が使用する周波数帯の時間的占有は、メッセージ間の時間の重なりが大きいので、リピータ機器が各メッセージを受信した直後に各メッセージを再伝送するために有する時間的占有よりも非常に小さい。
【0011】
好ましくは、リピータ機器が再伝送する各メッセージを、少なくとも1つの他のメッセージと共に同時に再伝送する。さらにより優先的には、収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送する。再伝送されるその他のメッセージの各々と共に最も長いメッセージを同時に再伝送する場合、(厳密には数が3つよりも多くの)複数のメッセージを同時に再伝送する、すなわち、再伝送される前記その他のメッセージの各々と全体的な時間の重なりがある前記最も長いメッセージを再伝送する。したがって、複数のメッセージを同時に再伝送するときの時間的占有は、同時に再伝送される前記メッセージの中で最も長いメッセージの継続期間に等しい。
【0012】
特定の実施形態では、無線通信方法は、分離して、またはすべての技術的に可能な組合せに従って取り上げる、以下の特徴のうち1つまたは複数をさらに含んでよい。
【0013】
特定の実施形態では、収集窓の間に複数のメッセージを受信したとき、同時に再伝送される前記メッセージの全瞬時電力が所定の最大電力よりも小さい限り、前記メッセージを同時に再伝送する。
【0014】
特定の実施形態では、収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が所定の最大電力よりも大きくなるとすぐに、収集窓を中断する。
【0015】
特定の実施形態では、収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が所定の最大電力よりも大きくなるとき、収集窓の間に受信した前記メッセージの一部だけを同時に再伝送する。
【0016】
これは、効力のある規制上の制約が、詳細にはISM帯に関する制約が、無線信号を再伝送するときに超えるべきではない最大電力を課すことがあるためである。その結果、同時に再伝送される前記メッセージの全瞬時電力が、再伝送中に前記最大電力よりも小さいままである限り、受信したメッセージを同時に再伝送することができる。収集窓の間に受信したメッセージ数が多い場合、規制上の観点から、各メッセージの伝送電力を過度に低減しなければ、これらのメッセージをすべて同時に再伝送することは不可能であることがある。この場合たとえば、同じグループ内のメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が最大電力よりも小さくなるように、メッセージのグループを形成することが可能である。したがって、同じグループ内のメッセージは、すべて同時に再伝送され、リピータ機器は、何よりもまず第1のグループのメッセージを再伝送し、次いで第2のグループのメッセージを再伝送し、異なるグループに属するメッセージ間の時間の重なりはない。
【0017】
特定の実施形態では、収集窓の間に受信したメッセージをメッセージサイズの降順でソートし、続けて最も長いメッセージでグループを形成し、グループのメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が所定の最大電力よりも小さくなるように、各グループ内のメッセージ数を制限する。
【0018】
特定の実施形態では、リピータ機器が同時に再伝送するメッセージを、周波数帯内の異なるそれぞれの周波数で再伝送する。
【0019】
そのような対策により、リピータ機器が同時に再伝送するメッセージ間の干渉を制限することが可能になる。より一般的な言い方では、同時に再伝送されるメッセージを多重化できるようにする、当業者に公知の任意の技法を使用してよい。詳細には他の例によれば、リピータ機器が受信したメッセージを同時に再伝送するために符号分割多元接続(code division multiple access、CDMA)を使用することもまた可能である。
【0020】
特定の実施形態では、周波数帯内の異なるそれぞれの周波数でメッセージを受信しているとき、前記メッセージを受信した前記周波数に従って決定される異なるそれぞれの周波数でメッセージを再伝送する。
【0021】
特定の実施形態では、メッセージを同時に再伝送する周波数は、収集窓の間に前記メッセージを受信した周波数と同一である。
【0022】
特定の実施形態では、無線通信方法は、
-リピータ機器により、収集窓の間に受信したメッセージの受信の瞬間を測定するステップと、
-リピータ機器により前記メッセージの受信の瞬間に従って、前記メッセージの再伝送中に使用する、メッセージの物理的性質のそれぞれの値を決定するステップと、
-リピータ機器により、前記メッセージの受信の瞬間に従って決定された物理的性質の値を使用してメッセージを再伝送するステップと
を含む。
【0023】
これは、いくつかの用途では、リピータ機器がメッセージを受信した瞬間を推定可能であることが必要であることがあるためである。たとえば、既知のそれぞれの地球物理学上の位置を有する複数の受信側機器および/またはリピータ機器による同じメッセージの受信の瞬間により、前記メッセージを送信した送信側機器の地球物理学上の位置を推定可能になる。しかしながら、メッセージは、何よりもまず収集窓の期間中に収集され、次いでリピータ機器により同時に再伝送されるので、再伝送されたメッセージを受信する受信側機器は、リピータ機器による前記メッセージの受信の瞬間を決定することができない。
【0024】
有利には、リピータ機器によるメッセージのそれぞれの受信の瞬間に従って、再伝送されるメッセージの事前に決定された物理的性質の値を決定することができる。したがって、再伝送されたメッセージを受信する受信側機器は、リピータ機器から受信したメッセージに関して測定された前記物理的性質の値から、リピータ機器によるメッセージの受信の瞬間を推定することができる。
【0025】
物理的性質は、メッセージの受信の瞬間とは異なる。受信の瞬間は、物理的性質を用いて符号化され、それによって、メッセージ内の補足フィールドを使用する必要なしに、それによってメッセージの伝送のサイズおよび継続期間を増大させる必要なしに伝達される。
【0026】
特定の実施形態では、再伝送されるメッセージの物理的性質の値と前記物理的性質の事前に決定された基準値との間の差が、基準の瞬間とリピータ機器による前記メッセージの受信の瞬間の間の時間差を表すように、再伝送されるメッセージの物理的性質の値を決定する。
【0027】
特定の実施形態では、無線通信方法は、リピータ機器により、物理的性質の基準値を使用して基準メッセージを形成および伝送するステップを含む。
【0028】
特定の実施形態では、無線通信方法は、
-少なくとも1つの受信側機器により、リピータ機器から受信したメッセージの物理的性質の値を測定するステップと、
-少なくとも1つの受信側機器により、前記少なくとも1つの受信側機器が受信した前記メッセージの物理的性質の測定値に従って、リピータ機器が再伝送したメッセージにタイムスタンプを押すステップと
を含む。
【0029】
特定の実施形態では、リピータ機器による前記メッセージの受信の瞬間に従って、メッセージを再伝送するために使用する値が決定される物理的性質は、前記メッセージの周波数に、または前記メッセージの電力に、または前記メッセージの位相に対応する。
【0030】
第2の様態によれば、本発明は、ある周波数帯で送信側機器が伝送したメッセージを地表で受信し、かつ少なくとも1つの受信側機器に宛てた受信メッセージを前記周波数帯で再伝送するように適合されたリピータ機器に関する。前記リピータ機器は、
-送信側機器が伝送し、かつ収集窓の間に前記リピータ機器が受信したメッセージを収集し、
-前記収集窓の間に受信した前記メッセージを少なくとも1つの受信側機器に再伝送し、収集窓の間に受信した前記メッセージは、非同時に受信した少なくとも2つのメッセージを前記少なくとも1つの受信側機器に同時に再伝送するように再伝送される
ように構成された手段を含む。
【0031】
特定の実施形態では、リピータ機器は、分離して、またはすべての技術的に可能な組合せに従って取り上げる、以下の特徴の1つまたは複数をさらに含んでよい。
【0032】
特定の実施形態では、リピータ機器が同時に再伝送するメッセージは、周波数帯内の異なるそれぞれの周波数で再伝送される。
【0033】
特定の実施形態では、周波数帯内の異なるそれぞれの周波数でメッセージを受信しているとき、前記リピータ機器は、メッセージを受信した周波数に従って前記メッセージを再伝送する周波数を決定するように構成される。
【0034】
特定の実施形態ではリピータ機器は、
-収集窓の間に受信したメッセージの受信の瞬間を測定し、
-前記メッセージの受信の瞬間に従って、前記メッセージの再伝送中に使用する、メッセージの物理的性質のそれぞれの値を決定し、
-前記メッセージの受信の瞬間に従って決定された物理的性質の値を使用してメッセージを再伝送する
ように構成された手段を含む。
【0035】
特定の実施形態では、リピータ機器は、再伝送されるメッセージの物理的性質の値と前記物理的性質の事前に決定された基準値との間の差が、基準の瞬間とリピータ機器による前記メッセージの受信の瞬間の間の時間差を表すように、再伝送されるメッセージの物理的性質の値を決定するように構成される。
【0036】
特定の実施形態では、リピータ機器は、物理的性質の基準値を使用して基準メッセージを形成および伝送するように構成された手段を含む。
【0037】
特定の実施形態では、リピータ機器による前記メッセージの受信の瞬間に従って、メッセージを再伝送するために使用する値が決定される物理的性質は、前記メッセージの周波数に、または前記メッセージの電力に、または前記メッセージの位相に対応する。
【0038】
第3の様態によれば、本発明は、少なくとも1つの受信側機器と、本発明の実施形態の任意の1つによる少なくとも1つのリピータ機器とを含む無線通信システムに関し、少なくとも1つの受信側機器は、
-リピータ機器から受信したメッセージの物理的性質の値を測定し、
-前記少なくとも1つの受信側機器が受信した前記メッセージの物理的性質の測定値に従って、リピータ機器が再伝送したメッセージにタイムスタンプを押す
ように構成された手段を含む。
【0039】
本発明は、限定しない例によって、図面を参照して行われる以下の記述を読むことによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】無線通信システムの実施形態の例の図式表現である。
【
図2】リピータ機器の実施形態の例の図式表現である。
【
図3】無線通信方法の主要なステップを例示する図である。
【
図4】
図3の無線通信方法の動作を例示するスペクトログラムである。
【
図5】無線通信方法の好ましい実施形態を例示する図である。
【
図6】
図5の無線通信方法の第1の変形形態の動作を例示するスペクトログラムである。
【
図7】
図5の無線通信方法の第2の変形形態の動作を例示するスペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
これらの図では、図ごとに同一である参照番号は、同一または類似の要素を指定する。明確にするために、図示する要素は、逆の言及がない限り縮尺どおりではない。
【0042】
図1は、複数の端末20と、複数の基地局31を含むアクセスネットワーク30とを含む無線通信システム10を概略的に示す。
【0043】
端末20、およびアクセスネットワークの基地局31は、無線信号の形でメッセージを交換する。「無線信号」は、従来の電波スペクトル(数ヘルツから数100ギガヘルツまで)の中に周波数がある、ケーブル以外の手段を介して伝播する電磁波を意味する。
【0044】
端末20は、たとえば、所定の周波数帯でアクセスネットワーク30にアップリンク上でメッセージを伝送するように適合される。アップリンク上で使用する周波数は、好ましくはたとえば1ギガヘルツ以下の周波数を有するISM帯である。各基地局31は、その範囲内に位置する端末20からメッセージを受信するように適合される。このように受信した各メッセージを任意選択で、各メッセージを受信した基地局31の識別子、前記受信メッセージの周波数などのような他の情報と共に、たとえばアクセスネットワーク30のサーバ32に伝送する。サーバ32は、たとえば基地局31が受信したメッセージをすべて処理する。
【0045】
さらに、アクセスネットワーク30はまた、基地局31を用いて、適用可能な場合にはメッセージを受信するように適合された端末20に宛てたメッセージをダウンリンク上で伝送するように適合されてよい。所定の周波数帯でダウンリンクを介してメッセージを送信する。ダウンリンク上で使用する周波数帯は、アップリンク上で使用する周波数帯とは別個のものであってよい、またはアップリンク上とダウンリンク上の両方で同じ周波数帯を使用してよい。
【0046】
図1に例示するように、いくつかの端末20は、アクセスネットワーク30の範囲外に配置される、すなわち、前記アクセスネットワーク30のサービスエリアZcの外側に配置される。これらの端末20がアクセスネットワーク30とメッセージを交換できるようにするために、無線通信システム10は、サービスエリアZc内に存在するリピータ機器40を含む。
【0047】
好ましくは、リピータ機器40は、地表上に位置する。「地表上に位置する」は、リピータ機器40が25キロメートル以下の高度に配置されることを意味する。詳細には、リピータ機器40は、地球軌道内の衛星の中に設置されない。好ましくは、基地局31のすべてまたは一部、および端末20のすべてまたは一部もまた、地表上に位置する。
【0048】
本明細書の残りの部分では、限定することなく、アップリンク上に、すなわち、端末20が伝送するメッセージを受信し、かつアクセスネットワーク30にメッセージを再伝送するために、リピータ機器40を実装する事例を採用する。
【0049】
しかしながら、他の例によれば、ダウンリンク上に、すなわち、基地局31が送信するメッセージを受信し、かつ端末20にメッセージを再伝送するためにリピータ機器40を実装することも排除しない。一般的な言い方では、リピータ機器40をアップリンクおよび/またはダウンリンク上に実装してよい。
【0050】
リピータ機器40は、多少複雑な処理動作を実装してよい。リピータ機器40に関して特定のタイプを選択することは、本発明の変形実装形態を構成するにすぎない。
【0051】
リピータ機器40は、アップリンクの周波数帯で、(
図1ではサービスエリアZrにより表現される)自身の範囲内に配置された端末20からメッセージを受信するように適合される。前記メッセージを受信したアップリンクの周波数帯でアクセスネットワーク30に受信メッセージを再伝送する。リピータ機器40が配置された範囲内にある少なくとも1つの基地局31は、再伝送されたメッセージを受信する。
【0052】
好ましくは、端末20が伝送したメッセージと同じ通信プロトコルに従って、リピータ機器40が再伝送するメッセージを形成する。その結果、基地局31は、その範囲内に配置された端末20から受信したメッセージと同じ手法で、したがって、基地局31の範囲の外側に配置された端末20から直接メッセージを受信したかのように、リピータ機器40が再伝送したメッセージを受信する。換言すれば、アップリンク上で再伝送される各メッセージが、端末20が伝送したメッセージであれ、リピータ機器40が再伝送したメッセージであれ、アップリンク上で再伝送される各メッセージを受信するために使用するのは、基地局31の同じ受信モジュールである。
【0053】
図2は、リピータ機器40の実施形態の限定しない例を概略的に示す。
図2により例示するように、リピータ機器40は、受信モジュール41、伝送モジュール42、および処理回路43を含む。
【0054】
受信モジュール41は、アップリンクを介して伝送されるメッセージを受信するように適合され、伝送モジュール42は、アップリンク上でメッセージを伝送(再伝送)するように適合される。受信モジュール41および伝送モジュール42は、詳細には当業者に公知の設備(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサ、アナログフィルタなど)を含むそれぞれの無線回路を含む。
【0055】
処理回路43は、受信モジュール41が受信した後に、および伝送モジュール42が伝送(再伝送)する前に、必要な処理動作を実装するように適合され、詳細には、前記受信モジュール41および前記伝送モジュール42を用いて、以下で記述する無線通信方法50のリピータ機器40に関係があるステップを実装するように適合される。処理回路43は、たとえば1つまたは複数のプロセッサ、および実行すべき1組のプログラムコード命令の形でコンピュータプログラム製品を中に記憶する記憶手段(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスクなど)を含む。代わりにまたは追加で、処理回路43は、1つまたは複数のプログラム可能論理回路(FPGA、PLDなど)、および/または1つまたは複数の専用集積回路(ASICなど)、および/または1組のディスクリート電子部品などを含む。
【0056】
換言すれば、処理回路43、受信モジュール41、および伝送モジュール42は、ソフトウェアにより構成された手段(特有のコンピュータプログラム製品)、および/または本明細書で以後記述する無線通信方法50のリピータ機器40に関係があるステップを実装するためのハードウェア(FPGA、PLD、ASIC、ディスクリート電子部品、無線回路など)に対応する。
【0057】
本明細書の残りの部分では、限定することなく、端末20がアップリンク上でアクセスネットワーク30にメッセージを時間で非同期に伝送する事例を採用する。「時間で非同期に伝送する」は、端末20が、自身がアクセスネットワーク30の基地局31と調整することなく、いつ伝送するかを自律的に決定することを意味する。したがって、基地局31は、自身に先験的に既知ではない任意の瞬間にメッセージを受信できるように構成される。
【0058】
図3は、リピータ機器40を用いて端末20とアクセスネットワーク30の間で無線通信するための方法50の主要なステップを概略的に示す。
【0059】
図3により例示するように、無線通信方法50は、
-リピータ機器40により、アップリンクの周波数帯で端末20が伝送し、かつ収集窓の間に前記リピータ機器40が受信したメッセージを収集するステップ51と、
-前記リピータ機器40によりアップリンクの周波数帯で、前記収集窓の間に受信した前記メッセージをアクセスネットワーク30の少なくとも1つの基地局31に再伝送するステップ52であって、リピータ機器40が非同時に受信した少なくとも2つのメッセージを前記リピータ機器40が同時に再伝送するように、収集窓の間に受信した前記メッセージを再伝送するステップと
を含む。
【0060】
したがって、リピータ機器40は、受信した各メッセージをただちに再伝送するのではなく、収集窓の継続期間全体を通して、端末20が伝送したメッセージを収集することから始める。
【0061】
収集窓の継続期間は、リピータ機器40が同時に受信しなかった少なくとも2つのメッセージを収集できるようにしなければならない。その結果、収集窓の継続期間は、有利には端末20が伝送したメッセージの基準継続期間よりも少なくとも2倍長い。すべてのメッセージが同じ継続期間を有する場合、基準継続期間は、各メッセージの継続期間に対応する。メッセージがすべて同じ継続期間を有するわけではない場合、基準継続期間は、端末20が伝送したメッセージが継続することができる最小継続期間に対応する。
【0062】
好ましい実施形態では、収集窓の継続期間は、メッセージの基準継続期間より少なくとも5倍長い、または前記基準継続期間よりもさらには少なくとも10倍長い。
【0063】
収集窓の継続期間は、静的であっても、動的であってもよい。静的継続期間の場合、収集窓の継続期間は、経時的に変わらず、たとえばメッセージの基準継続期間の5倍または10倍に固定される。動的継続期間の場合、収集窓の継続期間は、経時的に変わってよい。詳細には、再伝送すべきメッセージの所定の最大数をリピータ機器40が受信するとすぐに、または収集窓内で受信したメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が所定のしきい値よりも大きくなるとすぐに、収集窓を中断することが可能である。そのような場合、収集窓の継続期間は、先験的に既知ではなく、場合によって所定の最大継続期間を超えないことを条件とする。
【0064】
収集窓の継続期間中にメッセージを収集した後、リピータ機器40は、受信したメッセージを再伝送する。より詳細には、リピータ機器40は、自身が同時に受信しなかった少なくとも2つのメッセージを同時に再伝送する。好ましい実施形態では、リピータ機器40は、再伝送のために必要とされる時間的占有を最小にするために、受信したメッセージをすべて同時に再伝送してよい。
【0065】
いくつかの事例では、収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送することが困難であることが判明することがある。詳細には、受信したメッセージ数が多い場合、これらのメッセージをすべて同時に再伝送するには、たとえば規制上の制約による所定の最大電力よりも大きな、過大に大きな全瞬時電力を必要とする可能性がある。そのような場合、リピータ機器40は、たとえばすでに示したように、再伝送すべきメッセージの所定の最大数をリピータ機器40が受信するとすぐに、収集窓を中断してよい。適用可能な場合、再伝送すべきメッセージの前記最大数は、これらのメッセージを同時に再伝送するための全瞬時電力が、許可された最大電力を超えないことを確実にするように選択される。
【0066】
別の例によれば、前記同時に再伝送されるメッセージの全瞬時電力が、許可された最大電力よりも小さい限り、前記メッセージを同時に再伝送する。収集窓の間に受信したメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が、許可された最大電力よりも大きくなる場合、収集窓の間に受信した前記メッセージの一部だけを同時に再伝送する。この場合たとえば、同じグループのメッセージをすべて同時に再伝送するために必要な全瞬時電力が最大電力よりも小さくなるように、メッセージのグループを形成することが可能である。
【0067】
たとえば、収集窓の間に受信したメッセージをメッセージサイズの降順にソートして、続けて最大長のメッセージでグループを形成することは有利であり、グループのメッセージをすべて伝送するために必要な全瞬時電力が、たとえば許可された最大電力に対応する所定のしきい値よりも小さくなるように、各グループ内のメッセージ数を制限する。そのような配列は、リピータ機器が、許可された最大電力に適合しながらメッセージを再伝送するために使用する周波数帯の時間的占有を実際に最適化可能にする。
【0068】
本明細書の残りの部分では、限定することなく、収集窓の間に受信したメッセージをすべてリピータ機器40が同時に再伝送する事例を採用する。
【0069】
図4は、アップリンク上で端末20がメッセージを伝送し、リピータ機器40がメッセージを再伝送するために使用する周波数帯での無線信号のスペクトログラムを、すなわち周波数/時間表現を概略的に示す。
【0070】
図4により例示する例では、限定することなく、アップリンクの周波数帯内の異なるそれぞれの周波数で端末20がメッセージを伝送する事例を採用する。たとえば、端末20は、自身のメッセージをアップリンク上の周波数で非同期に伝送してよい。「周波数で非同期に伝送する」とは、端末20がアクセスネットワーク30の基地局31と調整することなく、どの周波数で伝送するかに関して自律的に決定することを意味する。したがって、基地局31(およびリピータ機器40)は、前記基地局31(および前記リピータ機器40)に先験的に既知ではない、アップリンク上の周波数帯内の任意の周波数でメッセージを受信することができるように構成される。
【0071】
たとえば、端末20が伝送し、リピータ機器40が再伝送するメッセージは、超狭帯域にあってよい。「超狭帯域」すなわちUNB(ultra-narrow band)は、端末20が伝送し、リピータ機器40が再伝送するメッセージの瞬時周波数スペクトルが、2キロヘルツ未満、またはさらには1キロヘルツ未満の周波数幅を有することを意味する。そのような配列は、所与の周波数帯で多数のメッセージを周波数多重することが可能であり、さらにこれらのメッセージを周波数で非同期に伝送する場合にメッセージ間の衝突を制限することが可能であるという点で特に有利である。
【0072】
他の例によれば、同じ周波数でメッセージのすべてまたは一部を伝送することも排除しないことに留意されたい。適用可能な場合、たとえば符号分割多元接続(CDMA)を使用してアップリンク上でメッセージを多重化する。
【0073】
図4に例示する例では、限定することとなく、メッセージがすべて同じ継続期間を有する事例を採用する。しかしながら、すでに示したように、本発明はまた、メッセージが同じ継続期間をすべて有するわけではない事例に適用可能である。
【0074】
図4により例示するように、リピータ機器40は、
図4で瞬間t0から始まり継続期間がΔTであると考えられる収集窓の間に、
-アップリンクの周波数帯内の周波数F1で瞬間t1(t1>t0)に第1のメッセージM1を、
-アップリンクの周波数帯内の周波数F2で瞬間t2(t2>t1)に第2のメッセージM2を、
-アップリンクの周波数帯内の周波数F3で瞬間t3(t3>t2)に第3のメッセージM3を、
-アップリンクの周波数帯内の周波数F4で瞬間t4(t4>t3)に第4のメッセージM4を
受信する。
【0075】
図4により例示する例では、受信したメッセージは、互いに時間の重なりがまったくなく、例外は、部分的に時間の重なりがあるメッセージM2およびM3である。
【0076】
収集窓の期間ΔTの間にメッセージM1~M4を収集した後、リピータ機器40は、たとえばベクトル変調器を用いて異なるそれぞれの周波数で瞬間t5(t5≧t0+ΔT)にメッセージM1~M4を同時に再伝送する。
【0077】
図4により例示する限定しない例では、リピータ機器40は、前記メッセージを受信した周波数で各メッセージを再伝送する。したがって、メッセージM1を周波数F1で再伝送し、メッセージM2を周波数F2で再伝送するなどである。そのような配列は、たとえば、端末20が自身のメッセージを伝送する周波数をアクセスネットワーク30が先験的に知っている場合、すなわち、端末20がメッセージを周波数で非同期に伝送しない場合、有利である。
【0078】
他方では詳細には、たとえば端末20がメッセージを周波数で非同期に伝送するので、端末20が自身のメッセージを伝送する周波数をアクセスネットワーク30が先験的に知らない場合、リピータ機器40が前記メッセージを受信した周波数と異なる周波数でメッセージを再伝送することが可能である。
【0079】
再伝送周波数は、たとえばアップリンクの周波数帯内で受信周波数に従って決定される。たとえば、リピータ機器40は、所定の周波数オフセットΔFを適用することができる。適用可能な場合、メッセージM1を周波数(F1+ΔF)で再伝送し、メッセージM2を周波数(F2+ΔF)で再伝送するなどである。
【0080】
しかしながら、他の例によれば、アップリンクの周波数帯内で受信周波数とは独立に再伝送周波数を決定することも排除しない。
【0081】
図5は、無線通信方法50の好ましい実施形態の主要なステップを概略的に示し、メッセージの再伝送周波数は、リピータ機器40による前記メッセージの受信の瞬間に従って決定される。
図5により例示するように、収集ステップ51は、
-リピータ機器40により、収集窓の間に受信したメッセージの受信の瞬間を測定するステップ511と、
-リピータ機器40により、前記メッセージの受信の瞬間に従ってメッセージを再伝送しなければならない周波数を決定するステップ512と
を含む。
【0082】
次に、再伝送するステップ52の間、前記メッセージの受信の瞬間に従って決定された周波数で、リピータ機器40は、メッセージを再伝送する。
【0083】
決定するステップ512の間、異なる瞬間に受信した2つのメッセージを異なる周波数で再伝送するように再伝送周波数を決定する。好ましくは、再伝送周波数を決定するために使用する機能は、アップリンクの周波数帯内部の周波数が収集窓の中の単一の受信の瞬間だけに対応するようなものである。任意選択で、アップリンクの周波数帯内部の複数の周波数は、収集窓の中の同じ受信の瞬間に対応してよい。これは、2つの異なる周波数で同じ瞬間に2つのメッセージを受信する場合、同じ周波数で2つのメッセージを同時に再伝送することができないためである(場合によっては符号分割多元接続の場合を除く)。したがって、収集窓の中の同じ受信の瞬間と複数の可能な周波数を関連づけることにより、これら2つのメッセージを同時に受信した瞬間を両方とも表す異なるそれぞれの周波数でこれら2つのメッセージを再伝送することができる。
【0084】
本明細書の残りの部分では、限定することなく、収集窓の間の各受信の瞬間が、アップリンクの周波数帯内部の単一周波数に対応し、かつ前記周波数帯内部の各周波数が、前記収集窓の中の単一の受信の瞬間に対応する事例を採用する。
【0085】
好ましい実施形態では、メッセージ再伝送周波数と事前に決定された基準周波数の間の周波数の差が、基準の瞬間とリピータ機器40による前記メッセージの受信の瞬間との間の時間の差を表すようにメッセージの再伝送の周波数を決定する。基準の瞬間は、たとえば収集窓の開始の瞬間t0、前記収集窓の終了の瞬間(t0+ΔT)、収集窓の中の所定の瞬間、メッセージの再伝送の瞬間t5などである。基準周波数は、たとえばアップリンクの周波数帯の最小周波数Fmin、アップリンクの周波数帯の最大周波数Fmax、アップリンクの周波数帯の中の所定の周波数などである。
【0086】
本明細書の残りの部分では、限定することなく、基準の瞬間が、収集窓の開始の瞬間t0に対応し、かつ基準周波数が、アップリンクの周波数帯の最小周波数Fminに対応する事例を採用する。たとえば、周波数の差は時間の差に比例する。瞬間tmに受信したメッセージMmについては、再伝送の周波数F’mを決定する周波数の差ΔFmは、たとえば次式に従って決定される。
ΔFm=(Fmax-Fmin)×(tm-t0)/ΔT (式1)
【0087】
図6は、アップリンクの周波数帯内の無線信号のスペクトログラムを、すなわち、周波数/時間表現を概略的に示す。
図4のように、リピータ機器40は、それぞれの周波数F1~F4(
図6では図を明確にするために参照していない)でそれぞれの瞬間t1~t4に4つのメッセージM1~M4を受信する。リピータ機器40は、次に周波数差ΔF1~ΔF4を適用することにより得たそれぞれの周波数F’1~F’4でメッセージM1~M4を同時に再伝送する。周波数差を計算するための前式を適用することにより、再伝送周波数F’1~F’4に関して次式を得る。
F’1=Fmin+(Fmax-Fmin)×(t1-t0)/ΔT (式2)
F’2=Fmin+(Fmax-Fmin)×(t2-t0)/ΔT (式3)
F’3=Fmin+(Fmax-Fmin)×(t3-t0)/ΔT (式4)
F’4=Fmin+(Fmax-Fmin)×(t4-t0)/ΔT (式5)
【0088】
図5により例示するように、無線通信方法50は、アクセスネットワーク30がリピータ機器40によるメッセージの受信の瞬間を決定するように構成される場合、
-アクセスネットワーク30により、リピータ機器40が再伝送したメッセージの受信周波数を測定するステップ53と、
-アクセスネットワーク30により、前記メッセージの受信周波数に従って、リピータ機器40が再伝送したメッセージにタイムスタンプを押すステップ54と
をさらに含んでよい。
【0089】
アクセスネットワーク30の少なくとも1つの基地局31は、リピータ機器40が再伝送したメッセージを受信する。基地局31により前記メッセージの受信周波数を測定することにより、リピータ機器40によるこれらのメッセージの再伝送周波数の推定値を得る。アクセスネットワーク30の公知の機能を適用することによりメッセージの受信の瞬間からリピータ機器40によるメッセージの再伝送の周波数を決定するので、それによって、アクセスネットワーク30は、リピータ機器40が再伝送したメッセージの受信周波数の測定から、これらの受信の瞬間を推定することができることが理解されよう。
【0090】
基準周波数での周波数差が受信の瞬間と基準の瞬間の間の時間の差を表す上述の場合、リピータ機器40によるメッセージの受信の瞬間を決定するためにいくつかの可能性を想定することができる。
【0091】
詳細には基準の瞬間は、アクセスネットワーク30に既知ではない場合、たとえば、リピータ機器40が形成および伝送する基準メッセージの中に示されてよい。代わりに限定することなく、アクセスネットワーク30は、再伝送されたメッセージを基地局31が受信した瞬間trから基準の瞬間を推定してよい。たとえば、基準の瞬間が収集窓の開始の瞬間t0に対応する場合、アクセスネットワークが収集窓の継続期間ΔTを知っていることを考慮すると、
-リピータ機器40とアクセスネットワーク30の間の伝播時間は無視でき、
-収集窓の終了の瞬間(t0+ΔT)とリピータ機器40によるメッセージの再伝送の瞬間t5の間に経過した時間は無視できる
と仮定することにより、基準の瞬間を(tr-ΔT)に等しいと推定してよい。
【0092】
リピータ機器40はまた、たとえば収集窓の継続期間ΔT、収集窓の終了の瞬間とメッセージの再伝送の瞬間の間に経過した時間などのような、アクセスネットワーク30が基準時間を推定可能になる情報を基準メッセージの中に含んでよい。
【0093】
基準周波数は、アクセスネットワーク30に既知ではない場合、たとえばリピータ機器40が形成および伝送する基準メッセージの中に示されてよい。代わりに、リピータ機器40は、適用可能な場合にはアップリンクの周波数帯に属する基準周波数で直接伝送される(基準の瞬間を推定するために有用な情報を含んでよい)基準メッセージを形成してよい。
図7は、
図6と同じ要素を再現して、さらにはこの例ではアップリンクの周波数帯の最小周波数Fminに対応する基準周波数で、再伝送されたメッセージと同時に伝送される基準メッセージMrを示すスペクトログラムを概略的に示す。基準周波数で基準メッセージMrをそのように伝送することは、それによりアクセスネットワーク30が、周波数を発生させるときにリピータ機器40により導入されるどんな誤差も推定可能になるという点で有利である。基準メッセージの受信周波数を測定することにより、かつこの受信周波数をアクセスネットワーク30が発生させたような基準周波数と比較することにより、リピータ機器40、および基準メッセージを受信した基地局31を、周波数で同期させることが可能である。周波数でのそのような同期により、リピータ機器40が適用した周波数差をより高い精度で推定することが可能になり、したがって、リピータ機器40によるメッセージの受信の瞬間をより高い精度で推定することが可能になる。
【0094】
リピータ機器40によるメッセージの受信の瞬間に従って再伝送周波数を決定する事例でこれまで記述したことを、再伝送されるメッセージの他の物理的性質に拡張することができることに留意されたい。
【0095】
詳細には、リピータ機器40が受信したメッセージの受信の瞬間を前記リピータ機器40による前記メッセージの再伝送の電力で符号化することが可能である。適用可能な場合、リピータ機器40は、たとえば収集窓の間に受信したメッセージの受信の瞬間を測定し、前記メッセージの受信の瞬間に従って前記メッセージの再伝送電力を決定してよい。たとえば、メッセージの再伝送電力と事前に決定された基準電力の間の電力の差が、基準の瞬間とリピータ機器40による前記メッセージの受信の瞬間との間の時間の差を表すようにメッセージの再伝送電力を決定する。適用可能な場合、基準電力は、たとえば前記リピータ機器40が形成した基準メッセージの伝送電力である。アクセスネットワーク30としては、たとえば再伝送されたメッセージの受信電力および基準メッセージの受信電力(これらは、伝播損失の範囲内で再伝送電力および基準電力を表す)を測定し、これまでに記述した手法に類似する手法で、前記再伝送されたメッセージの受信電力および基準メッセージの受信電力に従って、リピータ機器40が再伝送したメッセージにタイムスタンプを押してよい。
【0096】
リピータ機器40による前記メッセージの受信の瞬間を符号化するために、再伝送周波数または再伝送電力以外の再伝送の物理的性質を考慮することもまた可能である。詳細には、再伝送されたメッセージの位相で、リピータ機器40による前記メッセージの受信の瞬間を符号化することもまた可能である。たとえば、メッセージの再伝送位相と事前に決定された基準位相の間の位相差が、基準の瞬間とリピータ機器40による前記メッセージの受信の瞬間との間の時間の差を表すようにメッセージの再伝送位相を決定する。適用可能な場合には、基準位相は、たとえば前記リピータ機器40が形成した基準メッセージの伝送初期位相である。アクセスネットワーク30では、たとえば、再伝送されたメッセージの受信位相および基準メッセージの受信位相(これらは、伝播により導入された任意の位相差の範囲内で再伝送位相および基準位相を表す)を測定し、これまで記述した手法に類似する手法で、前記再伝送されたメッセージの受信位相および基準メッセージの受信位相に従って、リピータ機器40が再伝送したメッセージにタイムスタンプを押してよい。
【0097】
任意選択でリピータ機器40が伝送する基準メッセージは、任意の適合した形態をとってよいことに留意されたい。詳細には、基準メッセージは、いくつかの実施形態では、詳細には基準メッセージを基準周波数で、および/または基準電力を用いて伝送するとき、非変調搬送周波数(すなわち、正弦波信号)の形をとってよい。
【0098】
より一般的には、上記で考慮した実施形態および実装形態は、限定しない例として記述されたこと、およびその結果として他の変形形態を考慮することができることに留意されたい。
【0099】
詳細には、本発明について記述する際、端末20と無線通信システム10のアクセスネットワーク30との間のアップリンク上のリピータ機器40について考察してきた。しかしながら、本発明はまた、アクセスネットワーク30と端末20の間のダウンリンクに適用可能である、またはさらにまたアクセスネットワーク30タイプのインフラストラクチュアなしに端末20間の交換の例を可能にする,特定の目的のためのタイプの無線通信システム10で適用可能である。したがって、本発明は、伝送している機器から受信したメッセージを少なくとも1つの受信側機器に再伝送するリピータ機器40に拡張することができる。これまで記述したアップリンク上では、伝送している機器は、端末20および/または他のリピータ機器に対応し、一方では、受信側機器は、基地局31および/または他のリピータ機器に対応する。これまで記述したダウンリンク上では、送信側機器は、基地局31および/または他のリピータ機器に対応し、一方では、受信側機器は、端末20および/または他のリピータ機器に対応する。
【0100】
さらに、本発明について記述する際、収集窓の間に非同時に受信した少なくとも2つのメッセージをリピータ機器40が同時に再伝送する事例について主に考察してきた。より一般的には、再伝送中のメッセージ間の時間の重なりを、これらの同じメッセージを収集窓の間に受信したときの、これらの同じメッセージ間の時間の重なりと比較して増大させるように、受信したメッセージの再伝送の瞬間を決定することを前提に、少なくとも2つのメッセージを必ずしも同時に再伝送しないことを想定することもまた可能である。