(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】LAG3に結合する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240618BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240618BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240618BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240618BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240618BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240618BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240618BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 U
A61K31/713
A61P35/00
A61P37/06
A61P17/06
(21)【出願番号】P 2022574129
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 CN2020120614
(87)【国際公開番号】W WO2021243919
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】202010509498.X
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519439209
【氏名又は名称】ベイジン マブワークス バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フ、ウェンキ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ジアンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リ、フェン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-500006(JP,A)
【文献】国際公開第2016/028672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LAG3に結合し、VH CDR1領域、VH CDR2領域、およびVH CDR3領域を含む重鎖可変領域と、VL CDR1領域、VL CDR2領域、およびVL CDR3領域を含む軽鎖可変領域とを含み、前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域、前記VH CDR3領域、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域、および前記VL CDR3領域は、(1)それぞれ、配列番号1、2、3、5、6および7、
または、(2)それぞれ、配列番号1、2、4、5、6および8、
に記載されるアミノ酸配列を含む、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域が、配列番号9、10、11、12、13、
または14に記載されるか、または、これらと少なくと
も90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域が、配列番号15、16、17、18、19、
または20に記載されるか、または、これらと少なくと
も90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域が、(1)それぞれ、配列番号9および15、(2)それぞれ、配列番号10および16、(3)それぞれ、配列番号11および17、(4)それぞれ、配列番号11および19(5)それぞれ、配列番号12および17、(6)それぞれ、配列番号12および19、(7)それぞれ、配列番号13および18、(8)それぞれ、配列番号13および20、
または、(9)それぞれ、配列番号14および20、に記載されるか、または、これらと少なくと
も90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記重鎖可変領域に連結された配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域、および/または前記軽鎖可変領域に連結された配列番号36に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、請求項1から5のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分をエンコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項7に記載の核酸分子、または請求項8に記載の発現ベクター、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
さらに、抗癌剤、抗感染症剤、または抗炎症剤を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
固形腫瘍の治療に使用するための、請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
前記固形腫瘍が、結腸腺癌、乳癌、腎細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、または胃癌である、請求項12に記載の使用のための抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
自己免疫疾患の治療に使用するための、請求項1から6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
前記自己免疫疾患がプラーク乾癬である、請求項14に記載の使用のための抗体またはその抗原結合部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願および参照による組込み]
本出願は、2020年6月5日に出願された中国特許出願第202010509498.X号に基づく優先権を主張する。
【0002】
上記の出願、および本明細書に引用された、またはその出願手続き中に引用されたすべての文献(「出願引用文献」)、および本明細書に引用または参照されたすべての文献(ここに引用されたすべての文献資料、特許、公開特許出願を含むがこれに限定されない)(「本明細書での引用文献」)、および本明細書での引用文献において引用または参照されたすべての文献は、本明細書に言及された、または本明細書に参照により組み込まれる文献中の任意の製品に関する任意の製造元の指示、説明、製品仕様、製品シートと共に、ここで本明細書に参照により組み込まれて、本発明の実施で利用できるものである。より具体的には、参照されたすべての文献は、個々の文献が参照によって組み込まれるように具体的かつ個々に示された場合と同程度まで、参照によって組み込まれる。本開示で言及されたGenbank配列は、本開示の最も早い有効出願日のGenbank配列とすることにより、参照により組み込まれる。
【0003】
本出願における文献の引用または特定は、そのような文献が本開示の従来技術として利用可能であることを承認するものではない。
【0004】
本開示は、ヒトLAG3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分、その調製および使用、特に、癌、感染症、および自己免疫疾患などの炎症性疾患などのLAG3と関連するヒト疾患の治療におけるその使用に関するものである。
【背景技術】
【0005】
免疫反応とは、免疫細胞上の刺激性分子または抑制分子が活性化または不活性化され、反応を適切または最適なレベルに維持する複雑なプロセスである。例えば、場合により、PD-1やCTLA-4などの抑制性受容体をアップレギュレートして共刺激性受容体の活性バランスをとり、免疫細胞活性化を制限し、これにより自己免疫または自己炎症を防止している。しかしながら、そのような抑制メカニズムが腫瘍細胞によって操作され、免疫攻撃からそれらを保護して、癌の発生や進行につながる場合がある。病原体感染時、特に慢性感染時には、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)も高いレベルで発現し、免疫抑制につながり、敗血症、ハンセン病、後天性免疫不全症候群(AIDS)などを含む疾患を発症する(Bunn PA, Jr.(1998) Seminars in Oncology,25(2 suppl 6):1-3)。PD-1やCTLA-4を標的とする抗体は、クリニックの癌治療薬として承認されているが、多くの癌患者は応答しない(Topalian SL等(2012) The New England Journal of Medicine 366:2443-2454)。したがって、LAG3やT細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有-3(TIM3)などの追加の抑制性受容体に関心が集まっている(Anderson AC等、(2016) Immunity 44:989-1004)。
【0006】
LAG3は、CD223としても知られており、CD4と構造的に類似したI型膜貫通タンパク質である。活性化T細胞やNK細胞で初めて発見され、T細胞活性化や機能、NK細胞の増殖を制御する負の制御的役割を果たすことが示唆された(Turnis ME等(2015) European journal of immunology 45:1892-1905)。具体的には、細胞表面で二量体化したLAG3分子はMHCクラスII分子と安定的に結合し、LAG3-MHC II相互作用により、抗原依存性のCD4+およびCD8+T細胞刺激のダウンレギュレーションを介して免疫反応を減衰させる場合がある。例えば、メラノーマ細胞上のMHCクラスII分子と浸潤T細胞上のLAG3との結合は、MHC II陰性の腫瘍細胞株では見られないT細胞の疲弊を促進し得る(Hemon P等(2011) Journal of immunology 186: 5173-5183)。過剰なLAG3分子は、リソソーム区画で分解されるか、またはメタロプロテアーゼADAM10およびADAM17によってT細胞表面から切断されて免疫抑制を減衰させると考えられる(Clayton KL等、(2015) Journal of virology 89: 3723-3736、 Bae J等、(2014) Journal of immunology 193: 3101-3112、 Woo SR等、(2010) European journal of immunology 40: 1768-1777)。
【0007】
また、LAG3はGalectin-3またはLSECtinと結合し、それぞれ腫瘍微小環境内でのCD8+T細胞の抑制や抗原特異的エフェクターT細胞によるIFNγ生成抑制につながる場合がある(Kouo T等、(2015) Cancer Immunol Res.3: 412-423、 Xu F等、(2014) Cancer research 74: 3418-3428)。
【0008】
LAG3は、休止状態の制御性T細胞(Treg)では低いレベルで、活性化Tregでは高いレベルで構成的に発現している。LAG3の発現はTregの分化と最大限の抑制活性に必要であり(Huang CT等、(2004) Immunity 21: 503-513)、Treg上のLAG3へのMHCクラスII結合は、DC活性化と成熟を阻害することが示されている(Liang B等、(2008) Journal of immunology 180:5916-5926)。
【0009】
上記のように、LAG3は一般的に免疫系を抑制し、免疫反応をダウンレギュレートする。LAG3の発現は、感染の重症度と強い相関があることが分かっており、腫瘍浸潤T細胞におけるLAG3レベルの高さは、腫瘍細胞による逃避機構に寄与していると考えられる(Richter K等、(2010) International immunology 22: 13-23)。別の態様では、LAG3の機能不全は、自己免疫疾患の発現または増悪につながる場合がある。
【0010】
MK-4280(Merck、ヒト化IgG4抗体)やBMS-986016(Relatlimab、Bristol-Myers Squibbm、完全ヒトIgG4抗体)などの拮抗する抗LAG3抗体は、単独または抗PD-1/抗PD-L1との組み合わせにおいて、乳癌、腎細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、および胃癌などを含む固形癌の治療のために開発され、臨床試験されている。また、拮抗する抗LAG3抗体は、自己免疫疾患を有する患者病巣のLAG3+免疫細胞を標的とし、除去する場合がある。例えば、GSK2831781(グラクソ・スミスクライン)は現在、プラーク乾癬の患者を対象に臨床試験が行われている(Andrews LP等、(2017) Immunological Reviews.276(1):80-96)。
【0011】
LAG3の免疫系制御における役割を考慮して、向上した薬物特性を持つ抗LAG3抗体の必要性が残されている。
【0012】
本出願における文献の引用または特定は、そのような文献が本発明の従来技術として利用可能であることを承認するものではない。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、LAG3(例えば、ヒトLAG3、およびサルLAG3)に結合する単離モノクローナル抗体、例えば、マウス、ヒト、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。本開示の抗体またはその抗原結合部分は、BMS-986016などの従来技術の抗体と比較して、ヒト/サルLAG3に対する同等の結合活性/親和性、LAG3-MHC II相互作用に対する同等またはそれ以上の阻害活性、T細胞活性化促進効果、および同等またはそれ以上のin vivo抗癌効果を有している。
【0014】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、LAG3タンパク質の検出、LAG3関連疾患の治療などを含む、様々な用途に使用することが可能である。
【0015】
したがって、1つの態様において、本開示は、VH CDR1領域、VH CDR2領域およびVH CDR3領域を含み得る重鎖可変領域を有するLAG3と結合する単離モノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体)、またはその抗原結合部分に関連し、ここで、VH CDR1領域、VH CDR2領域およびVH CDR3領域は、(1)それぞれ、配列番号1、2および3、(2)それぞれ、配列番号1、2および4、または(3)それぞれ、配列番号21、22および23に記載されたアミノ酸配列を含むか、または少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、および/または軽鎖可変領域がVL CDR1領域、VL CDR2領域およびVL CDR3領域から構成され得、ここで、VL CDR1領域、VL CDR2領域.およびVL CDR3領域は、(1)それぞれ、配列番号5、6および7、(2)それぞれ、配列番号5、6および8、または(3)それぞれ、配列番号24、25および26に記載されるアミノ酸配列を含み得、または、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0016】
特定の実施形態では、本開示の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分は、VH CDR1領域、VH CDR2領域、VH CDR3領域、VL CDR1領域、VL CDR2領域、およびVL CDR3領域を含んでいてよく、これらは、(1)それぞれ、配列番号1、2、3、5、6および7、(2)それぞれ、配列番号1、2、4、5、6および8、または(3)それぞれ、配列番号18、19、20、21、22および23に記載されるか、または、これらと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでよい。
【0017】
本開示の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分は、配列番号9、10、11、12、13、14、27、28、29または30に記載されるか、または、これらと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する、アミノ酸配列を含み得る重鎖可変領域から構成されてもよい。
【0018】
本開示の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分は、配列番号15、16、17、18、19、20、31、32、33または34に記載されるか、または、これらと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する、アミノ酸配列を含み得る軽鎖可変領域から構成されてもよい。
【0019】
特定の実施形態では、本開示の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分は、(1)それぞれ、配列番号9および15、(2)それぞれ、配列番号10および16、(3)それぞれ、配列番号11および17、(4)それぞれ、配列番号11および19、(5)それぞれ、配列番号12および17、(6)それぞれ、配列番号12および19、(7)それぞれ、配列番号13および18、(8)それぞれ、配列番号13および20、(9)それぞれ、配列番号14および20、(10)それぞれ、配列番号27および31、(11)それぞれ、配列番号28および32、(12)それぞれ、配列番号29および33、(13)それぞれ、配列番号29および34、(14)それぞれ、配列番号30および33、または(15)それぞれ、配列番号30および34、に記載されるか、または、これらと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る重鎖可変領域および軽鎖可変領域から構成されてよい。
【0020】
本開示の単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分は、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をさらに含んでいてもよい。重鎖定常領域は、IgG4重鎖定常領域であってよく、例えば、ヒトIgG4重鎖定常領域、または、より具体的には配列番号35に記載のアミノ酸配列を有するS228P変異を有するヒトIgG4重鎖定常領域、またはその断片などであってよい。軽鎖定常領域は、例えば、配列番号36に記載のアミノ酸配列を有するヒトカッパ軽鎖定常領域、またはその断片などの、カッパ軽鎖定常領域であってもよい。IgG4重鎖定常領域におけるS228P変異は、IgG4アイソタイプ抗体の構造的安定性を強化するのに役立ち得る。重鎖定常領域のN末端は、重鎖可変領域のC末端に連結されていてもよく、軽鎖定常領域のN末端は、軽鎖可変領域のC末端に連結されていてもよい。
【0021】
特定の実施形態では、重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域などのIgG1重鎖定常領域であってもよく、軽鎖定常領域は、ヒトカッパ軽鎖定常領域などのカッパ軽鎖定常領域であってもよい。
【0022】
特定の実施形態における本開示の抗体は、ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖および2つの軽鎖から構成されるか、またはそれらを含んでく、各重鎖は、上記の重鎖定常領域、重鎖可変領域またはVH CDR配列から構成されてよく、各軽鎖は、上記の軽鎖定常領域、軽鎖可変領域、またはVL CDR配列からから構成されてよく、重鎖可変領域のC末端は重鎖定常領域のN末端に結合し、軽鎖可変領域のC末端は軽鎖定常領域のN末端に結合し、抗体はLAG3に結合する。本開示の抗体は、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG4アイソタイプの完全長抗体であり得る。本開示の抗体はカッパ定常領域を含み得る。他の実施形態における本開示の抗体またはその抗原結合部分は、単鎖抗体であってもよいし、または、FabまたはF(ab′)2断片などの抗体断片から構成されてもよい。
【0023】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、ヒトおよびサルのLAG3に特異的に結合し、LAG3-MHC II相互作用を阻害し、T細胞活性化を促進し、in vivoの抗癌効果を提供し得る。また、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、in vivoでの抗炎症作用を提供し、自己免疫疾患などの炎症性疾患の治療または軽減に使用し得る。
【0024】
本開示はまた、細胞毒素または抗癌剤などの治療剤に連結された、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含む免疫コンジュゲートを提供する。本開示はまた、前述の抗体、またはその抗原結合部分とは異なる結合特異性を有する第2の機能部分(例えば、第2の抗体)に連結された、本開示の抗体、またはその抗原結合部分を含む二重特異性分子を提供する。別の態様では、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)の一部とすることができる。本開示は、さらに、T細胞およびNK細胞などの、上記のCARまたはTCRを有する免疫細胞を提供する。
【0025】
本開示の抗体、またはその抗原結合部分、免疫コンジュゲート、二重特異性分子、または免疫細胞、および薬学的に許容される担体を含む組成物も提供される。
【0026】
本開示の抗体またはその抗原結合部分をエンコードする核酸分子並びに、そのような核酸を含む発現ベクターおよびそのような発現ベクターを含む宿主細胞もまた、本開示に包含される。発現ベクターを含む宿主細胞を用いて抗LAG3抗体またはその抗原結合部分を調製する方法も提供され、(i)宿主細胞において抗体またはその抗原結合部分を発現させる段階、および(ii)宿主細胞またはその細胞培養物から抗体または抗原結合部分を単離する段階を含む。
【0027】
別の態様では、本開示は、対象における免疫反応を強化するための方法であって、本開示の抗体、またはその抗原結合部分の治療上有効な量を対象に投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、本開示の組成物、または二重特異性分子を投与することを含む。免疫反応増強に用いられる抗体またはその抗原結合部分は、IgG4アイソタイプであってもよい。
【0028】
別の態様では、本開示は、腫瘍の進行を治療または低減を必要とする対象のための方法であって、本開示の抗体、またはその抗原結合部分の治療上有効な量を対象に投与することを含む、方法を提供する。癌は、結腸腺癌、乳癌、腎細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、および胃癌を含むが、これらに限定されない固形腫瘍であってもよい。癌治療に用いられる抗体またはその抗原結合部分は、IgG4アイソタイプであってもよい。特定の実施形態では、方法は、本開示の組成物、発現ベクター、二重特異性分子、または免疫コンジュゲートを投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗STAT3抗体、抗ROR1抗体、抗TIM3抗体、および/または抗CTLA-4抗体などの少なくとも1つの追加の抗癌抗体またはその抗原結合部分をさらに投与され得る。さらに別の実施形態では、対象は、サイトカイン(例えば、IL-2および/またはIL-21)、または共刺激抗体(例えば、抗CD137抗体および/または抗GITR抗体)をさらに投与されてもよい。別の実施形態では、対象は、細胞傷害性剤であってよい化学療法剤をさらに投与されてもよい。本開示の抗体またはその抗原結合部分は、例えば、マウス、ヒト、キメラまたはヒト化抗体またはその抗原結合部分であってもよい。
【0029】
別の態様では、本開示は、感染症を治療または緩和を必要とする対象のための方法であって、本開示の抗体、またはその抗原結合部分の治療上有効な量を対象に投与することを含む、方法を提供する。感染症は、ウイルス、細菌、真菌、またはマイコプラズマ感染によって引き起こされる疾患であってもよい。感染症治療に用いられる抗体またはその抗原結合部分は、IgG4アイソタイプであってもよい。特定の実施形態では、方法は、本開示の組成物、発現ベクター、二重特異性分子、または免疫コンジュゲートを投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、または抗マイコプラズマ剤などの少なくとも1つの抗感染剤でさらに投与されてもよい。
【0030】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象における自己免疫疾患を治療または緩和するための方法であって、本開示の抗体、またはその抗原結合部分の治療上有効な量を対象に投与することを含む、方法を提供する。自己免疫疾患の治療のための抗体またはその抗原結合部分は、IgG1アイソタイプであってもよく、IgG1重鎖定常領域は、強化された抗体依存性細胞毒性(ADCC)および/または強化された補体依存性細胞傷害(CDC)を誘発するようにさらに設計されてもよい。特定の実施形態では、方法は、本開示の組成物、発現ベクター、二重特異性分子、または免疫細胞を投与することを含んでいる。特定の実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合部分、組成物、発現ベクター、二重特異性分子、または免疫細胞は、病巣部またはその周辺に投与され得る。特定の実施形態では、対象は、プラーク乾癬治療のために、IL-2阻害剤、IL-17阻害剤(例えば、TaltzR Ixekizumab、bimekizumab)、および/または抗IL-23阻害剤などの少なくとも1つの抗炎症剤をさらに投与されてもよい。
【0031】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および例から明らかであるが、これは限定として解釈されるべきでない。本出願全体において引用されるすべての参考文献、GenBankエントリー、特許および特許出願公開の内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0032】
したがって、本発明の目的は、従来公知の製品、製品の製造方法、または製品の使用方法を本発明に包含しないことであり、したがって、出願人は、従来公知の製品、プロセス、または方法の免責事項を開示する権利を留保し、本明細書に開示する。さらに、本発明は、USPTO(35U.S.C.§112,第1段落)またはEPO(EPC第83条)の記載要件および実施可能要件を満たさない製品、プロセス、または製品の製造方法または製品の使用方法を本発明の範囲に包含する意図するものではないことに留意し、したがって、出願人は、過去に記載した製品、製品の製造方法または製品の使用方法の免責事項を開示し、本明細書に権利を留保する。技術分野に適合していることが、本発明の実施において利点であり得る。EPC53(c)、EPC規則28(b)および(c)。本出願の系統、または他の系統、または第三者の先行出願における出願人の許諾特許の対象である実施形態を明示的に否認するすべての権利は、明示的に留保される。本明細書のいかなる内容も、約束と解釈されるものではない。
【0033】
本開示、特に請求項および/または段落において、「含む」、「構成する」、「有する」等の用語は、米国特許法において帰属する意味を有することができ、例えば、それらは、「含む」、「含まれる」、「含んでいる」などを意味し、「本質的に構成する」、「本質的に含む」などの用語は、米国特許法に帰属する意味を有し、例えば、それらは、明示的に記載されていない要素を許容するが、従来技術に見出される要素または本発明の基本特性または新規特性に影響を与える要素を除外することに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の詳細な説明は、例として与えられるが、記載された特定の実施形態にのみ専ら本発明を限定することを意図されていなく、添付図面と併せて最もよく理解され得る。
【0035】
【
図1】Daudi細胞上のMHCIIへのLAG3結合に対するマウス抗LAG3抗体の阻害効果を示す。
【0036】
【
図2】IFN-γ分泌によって測定される、APCを媒介したT細胞活性化におけるマウス抗LAG3抗体の役割を示す。
【0037】
【
図3】キメラ101F4抗体(101F4-CM)およびキメラ134G10抗体(134G10-CM)のHEK293A/ヒトLAG3(A)、HEK293A/アカゲザルLAG3(B)およびHEK293A/マウスLAG3(C)への結合活性を示す。
【0038】
【
図4】HEK293A/ヒトLAG3(A)、HEK293A/アカゲザルLAG3(B)、HEK293A/マウスLAG3(C)に対するキメラ抗体およびヒト化101F4抗体の結合活性、並びにHEK293A/ヒトLAG3(D)、HEK293A/アカゲザルLAG3(E)、HEK293A/マウスLAG3(F)に対するキメラ抗体およびヒト化134G10抗体の結合活性を示す。
【0039】
【
図5】ヒト化101F4(A)および134G10(B)抗体のDaudi細胞上のMHCIIへのLAG3結合を阻害する活性を示す。
【0040】
【
図6】ヒト化134G10(A)および101F4(B)抗体と抗PD-1抗体との組み合わせが、IFN-γ分泌により測定されるT細胞活性化を用量依存的に誘導することを示す。
【0041】
【
図7】ヒト化抗体101F4H2L2および101F4H2L2-8のヒトLAG3(A)、HEK293A/ヒトLAG3(B)、HEK293A/アカゲザルLAG3(C)、HEK293A/マウスLAG3(D)および活性化ヒトPBMC(E)への結合活性を示す。
【0042】
【
図8】キメラ抗体101F4-CM(A)、ヒト化抗体101F4H2L2(B)および101F4H2L2-8(C)、キメラ抗体134G10-CM(D)およびヒト化抗体134G10H2L3(E)のヒトLAG3に対する結合親和性を示す。
【0043】
【
図9】ヒト化抗体101F4H2L2(A)、101F4H2L2-8(B)、134G10H2L3(C)のサルLAG3に対する結合親和性を示す。
【0044】
【
図10】ヒト化抗体101F4H2L2および101F4H2L2-8(A)、101F4H2L3-8および101F4H3L3-8(B)が、抗PD-1抗体と組み合わせて、T細胞活性化を促進したことを示す。
【0045】
【
図11】ヒトLAG3を有するトランスジェニックマウスにおいて、溶媒(PBS)、ヒト化抗体101F4H2L2、101F4H2L2-8、134G10H2L3、またはポジティブコントロールで治療した群からの平均腫瘍体積変化(A)および25日目(B)の平均腫瘍重量、および溶媒(C)、101F4H2L2(D)、101F4H2L2-8(E)、ポジティブコントロール(F)および134G10H2L3(G)で治療した群からの個々のマウスにおける腫瘍体積変化を示す。
【0046】
【
図12】ヒトLAG3およびPD-1を有するトランスジェニックマウスにおいて、溶媒、ヒト化抗体134G10H2L3、101F4H2L2-8、またはポジティブコントロールで治療した群からの平均腫瘍体積変化(A)、および溶媒(B)、ポジティブコントロール(C)、101F4H2L2-8(D)、および134G10H2L3(E)で治療した群からの個々のマウスでの腫瘍体積変化を示す。
【0047】
【
図13】ヒトLAG3を導入したトランスジェニックマウスの末梢血中のCD45+CD3+CD8+T細胞の増殖に対する抗LAG3抗体のin vivo効果を示す。
【0048】
【
図14】溶媒(PBS)、ヒト化抗体134G10H2L3、抗PD-1抗体、または134G10H2L3と抗PD-1抗体との組み合わせで治療した群における平均腫瘍体積変化(A)、および溶媒(PBS)、ヒト化抗体101F4H2L2-8、抗PD-1抗体、または101F4H2L2-8と抗PD-1抗体との組み合わせで治療した群における平均腫瘍体積変化(B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示がより容易に理解され得ることを保証するべく、特定の用語をまず定義する。追加の定義は、詳細な説明全体を通して記載される。
【0050】
「LAG3」とは、リンパ球活性化遺伝子3を指す。「LAG3」という用語は、変異型、アイソフォーム、ホモログ、オーソログ、パラログを含む。例えば、ヒトのLAG3タンパク質に特異的な抗体は、特定の場合、ヒト以外の種、例えばサルなどからのLAG3タンパク質と交差反応を示し得る。他の実施形態では、ヒトLAG3タンパク質に特異的な抗体は、ヒトLAG3タンパク質に完全に特異的であり得、他の種または他のタイプのものに対して交差反応性を示さないか、または特定の他の種からのLAG3と交差反応を示すが他のすべての種とは交差反応性を示さない場合がある。
【0051】
用語「ヒトLAG3」は、ヒト由来のアミノ酸配列を有するLAG3タンパク質を指し、例えば、Genbankアクセッション番号がNP_002277.4であるヒトLAG3のアミノ酸配列、または配列番号37に記載のヌクレオチド配列によりエンコードされるものなどを指す。用語「サルまたはアカゲザルLAG3」は、サル由来のアミノ酸配列を有するサルLAG3タンパク質を指し、例えば、Genbankアクセッション番号がXP_001108923.1であるサルLAG3のアミノ酸配列、または配列番号38に記載されるヌクレオチド配列によってエンコードされるものなどを指す。用語「マウスLAG3」は、マウス由来のアミノ酸配列を有するLAG3タンパク質を指し、Genbankアクセッション番号がNP_032505.1であるマウスLAG3のアミノ酸配列、または配列番号39に記載のヌクレオチド配列によりエンコードされるものなどを指す。
【0052】
本明細書でいう「抗体」には、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMの全抗体並びにその抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)またはそれらの単鎖が含まれる。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメインCLを含む。VHおよびVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に細分化でき、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存的な領域が点在する。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置された3つのCDRと4つのFRで構成されている:FR1,CDR1,FR2,CDR2,FR3,CDR3,FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々なセル(例えば、エフェクター細胞)、および、古典的補体経路の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介できる。
【0053】
本明細書で使用する抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、LAG3タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1または複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行され得ることが示された。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab')2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインから成るFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから成るFv断片、(v)VHドメインから成るdAb断片(Ward等、(1989) Nature 341:544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、および、(viii)単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域であるナノボディを含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってエンコードされているが、これらは、組換え法を用いて、VLおよびVH領域がペアになって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作ることが可能な合成リンカーによって結合することができる(単鎖Fv(scFv)として知られている、例えば、Bird等、(1988) Science 242:423-426 およびHuston等、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.米国85:5879-5883を参照)。そのような単鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に知られている従来技術を使用して取得され、断片は、インタクト抗体と同一の方式で、有用性に関してスクリーニングされる。
【0054】
本明細書で使用する「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、LAG3タンパク質を特異的に結合する単離抗体は、LAG3タンパク質以外の抗原を特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトのLAG3タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種のLAG3タンパク質など、他の抗原に対して交差反応性を有する場合がある。さらに、単離抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まないことがあり得る。
【0055】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から取得された抗体を指す。すなわち、天然に発生する可能性がある変異、および/または、少量存在し得る翻訳後改変(例えば、異性化、アミド化)を除き、集団を構成する個々の抗体は同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して指向性がある、特異性の高い抗体である。ポリクローナル抗体製剤が典型的に異なる決定基(エピトープ)に対して指向性がある異なる抗体を含むのと対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向性がある。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の免疫グロブリンに汚染されていないハイブリドーマ培養液で合成されるという利点がある。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られるという抗体の特性を示すものであり、特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈されるものではない。例えば、本発明による使用するモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ技術、ヒト免疫グロブリン座またはヒト免疫グロブリン配列をエンコードする遺伝子の一部またはすべてを有する動物でヒトまたはヒト様抗体を製造する技術などを含む様々な技法により製造することができる。
【0056】
本明細書で使用する場合、「マウス抗体」という用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がマウス生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域も、マウス生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。本開示のマウス抗体は、マウス生殖細胞系免疫グロブリン配列によってエンコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroのランダムまたは部位特異的変異誘発、または、in vivoの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用する場合、「マウス抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来するCDR配列がマウスのフレームワーク配列に移植された抗体を含むことが意図されていない。
【0057】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト起源からの遺伝物質をヒトの遺伝物質と組み合わせることによって作られる抗体を指す。またはより一般的には、キメラ抗体とは、ある種の遺伝物質と別の種の遺伝物質を有する抗体のことである。
【0058】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒトにおいて天然に産生される抗体バリアントとの類似性を増加させるように改変されたタンパク質配列を有する非ヒト種の抗体を指す。
【0059】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と交換可能に使用される。
【0060】
本明細書で使用する「ヒトLAG3に特異的に結合する」抗体は、ヒトLAG3タンパク質(および場合により1または複数の非ヒト種由来のLAG3タンパク質)に結合するが、非LAG3タンパク質には実質的に結合しない抗体を指すことが意図される。好ましくは、抗体はヒトLAG3タンパク質と「高い親和性」、すなわちKDが5.0×10-8Mまたはそれ以下、より好ましくは1.0×10-8Mまたはそれ以下、より好ましくは5.0×10-9Mまたはそれ以下で結合することである。
【0061】
本明細書で使用する場合、タンパク質または細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質または細胞に結合しない、または、高い親和性で結合しない、すなわち、1.0×10-6M以上、より好ましくは1.0×10-5M以上、より好ましくは1.0×10-4M以上、より好ましくは1.0×10-3M以上、さらにより好ましくは1.0×10-2M以上のKDでタンパク質または細胞に結合することを意味する。
【0062】
IgG抗体に対する「高い親和性」という用語は、標的抗原に対して、1.0×10-6M以下、より好ましくは5.0×10-8M以下、さらにより好ましくは1.0×10-8M以下、さらにより好ましくは5.0×10-9M以下、さらにより好ましくは1.0×10-9M以下のKDを有する抗体を指す。しかしながら、「高い親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対して変動し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高い親和性」結合は、10-6M以下、より好ましくは10-7M以下、さらにより好ましくは10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、「Kassoc」または「Ka」という用語は、特定の抗体‐抗原相互作用の会合速度を指すことを意図し、本明細書で使用する場合、「Kdis」または「Kd」という用語は、特定の抗体‐抗原相互作用の解離速度を指すことを意図する。本明細書で使用する場合、「KD」という用語は、Kaに対するKdの比(すなわち、Kd/Ka)から取得される解離定数を指すことを意図し、モル濃度(M)で表現される。抗体のKD値は、本技術分野において十分に確立された方法を使用して決定され得る。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用する、好ましくは、BiacoreTM(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを使用することによるものである。
【0064】
半数効果濃度としても知られる「EC50」という用語は、指定された曝露時間後のベースラインと最大値との間の中間の応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0065】
本明細書で使用する「抗体依存性細胞毒性」、「抗体依存細胞媒介細胞傷害性」または「ADCC」という用語は、抗LAG3抗体などの抗体によって膜表面抗原が結合された腫瘍細胞または免疫細胞などの標的細胞を免疫系のエフェクター細胞が活発に溶解させる、細胞媒介性免疫防御メカニズムを指す。
【0066】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」とは、一般的に、IgGおよびIgM抗体が表面抗原と結合すると古典的補体系を誘発し、膜侵襲複合体の形成と標的細胞の溶解を誘導するエフェクター機能を指す。本開示の抗体は、LAG3に結合することにより、癌細胞に対してCDCを誘導する。
【0067】
「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類など、哺乳類および非哺乳類を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの哺乳類が好ましい。
【0068】
「治療上有効な量」という用語は、疾患または状態(癌など)に関連する症状を予防または緩和する、および/または疾患または状態の重症度を軽減するのに十分な、本開示の抗体またはその抗原結合部分の量を意味する。治療上有効な量は、治療される病状の文脈に沿うものと理解され、実際の有効量は、当業者によって容易に識別される。
【0069】
拮抗型LAG3抗体」とは、LAG3がMHC IIなどのリガンドに結合することによって誘導されるLAG3シグナルを阻害または抑制しうる抗LAG3抗体を指す。拮抗するLAG抗体は、T細胞活性化を促進し得、サイトカインを放出させ、免疫反応を高める。
【0070】
本開示の様々な態様が、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
【0071】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、BMS-986016などの従来技術の抗体と比較して、ヒト/サルLAG3に対する同等の結合活性/親和性、およびLAG3-MHC II相互作用に対する同等またはそれ以上の阻害活性を有している。
【0072】
より重要なことは、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、BMS-986016などの従来技術の抗体よりも高いT細胞活性化促進効果、およびBMS-986016およびMK-4280などの従来技術の抗体と比較して同等またはさらに高いin vivo抗癌効果を有し得ることである。
【0073】
好ましくは、本開示の抗体はモノクローナル抗体である。追加的または代替的に、抗体は例えば、マウス、キメラ、または、ヒト化モノクローナル抗体であり得る。
【0074】
本開示の例示的な抗体は、下記および以下の例に記載されるように構造的および化学的に特徴付けられるモノクローナル抗体である。
【0075】
表1における重鎖可変領域CDRおよび軽鎖可変領域CDRは、Kabatナンバリングシステムによって定義された。しかしながら、本技術分野において周知のように、CDR領域は、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいて、Chothia、IMGT、AbM、またはContactナンバリングシステム/方法など、他のシステムによっても決定できる。
【0076】
重鎖/軽鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列のSEQ ID番号を表1に列挙するが、一部の抗体では同一のVHまたはVL配列を共有する。
【0077】
本開示の例示的な抗体は、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域を含んでもよい。重鎖定常領域は、治療する疾患/病状に応じて、IgG4またはIgG1重鎖定常領域としてもよい。IgG4重鎖定常領域は、例えば、配列番号35に記載のアミノ酸配列を有する、例えば、S228P変異を有するヒトIgG4重鎖定常領域であってよい。IgG4定常領域におけるS228P変異は、IgG4アイソタイプ抗体の構造的安定性を高めるのに役立ち得る。軽鎖定常領域は、例えば、配列番号36のアミノ酸配列を有する、ヒトカッパ定常領域などのカッパ定常領域であってもよい。
【0078】
ヒトLAG3に結合する他の抗LAG3抗体のVHおよびVL配列(またはCDR配列)は、本開示の抗LAG3抗体のVHおよびVL配列(またはCDR配列)と「組み合わされる」ことが可能である。好ましくは、VHおよびVL鎖(またはそのような鎖の中のCDR)が組み合わされるとき、特定のVH/VLペアからのVH配列は、構造的に同様のVH配列と置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のVH/VLペアからのVL配列は、構造的に同様のVL配列と置き換えられる。
【0079】
したがって、1つの実施形態において、本開示の抗体、またはその抗原結合部分は、以下のものを含んでいる。
(a)上記表1に列挙したアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および
(b)上記表1に列挙したアミノ酸配列を含む、または別の抗LAG3抗体のVLであって、抗体がヒトLAG3と特異的に結合する、軽鎖可変領域。
【0080】
[表1:重鎖/軽鎖可変領域およびCDRのアミノ酸配列ID番号]
【表1】
【0081】
別の実施形態では、本開示の抗体、またはその抗原結合部分は、以下を含む。
(a)上記表1に列挙した重鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3領域および、
(b)上記表1に列挙した軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3領域、または別の抗LAG3抗体のCDRであって、その抗体がヒトLAG3を特異的に結合するもの。
【0082】
さらに別の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、ヒトLAG3と結合する他の抗体のCDRと結合する抗LAG3抗体の重鎖可変CDR2領域、例えば、重鎖可変領域からのCDR1および/またはCDR3、および/または異なる抗LAG3抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2、および/またはCDR3を組み合わせたものを含んでいる。
【0083】
加えて、本技術分野において、CDR1および/またはCDR2ドメインから独立のCDR3ドメインは単独で、類似の抗原に対する抗体の結合特異性を決定できること、ならびに、同一のCDR3配列に基づいて同じ結合特異性を有する複数の抗体を予測通りに生成できることが周知である。例えば、Klimka等、British J.of Cancer 83(2):252-260 (2000)、Beiboer等、J. Mol. Biol. 296:833-849 (2000)、Rader等、Proc. Natl.Acad. Sci. 米国. 95:8910-8915 (1998)、 Barbas等, J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162 (1994)、Barbas等、Proc. Natl.Acad. Sci. 米国. 92:2529-2533 (1995)、 Ditzel等, J. Immunol. 157:739-749 (1996)、 Berezov等、BIAjournal 8: Scientific Review 8 (2001)、 Igarashi等、J. Biochem (Tokyo) 117:452-7 (1995)、 Bourgeois等、J. Virol 72:807-10 (1998)、 Levi等、Proc. Natl.Acad. Sci. 米国. 90:4374-8 (1993)、 Polymenis and Stoller, J. Immunol. 152:5218-5329(1994)およびXuおよびDavis、Immunity 13:37-45(2000)を参照。また、米国特許第6,951,646号、第6,914,128号、第6,090,382号、第6,818,216号、第6,156,313号、第6,827,925号、第5,833,943号、第5,762,905号および第5,760,185号を参照。これらの参考文献の各々は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0084】
したがって、別の実施形態では、本開示の抗体は、抗LAG3抗体の重鎖可変領域のCDR2と、抗LAG3抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域の少なくともCDR3、または別の抗LAG3抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR3を含み、この抗体はヒトLAG3に特異的に結合することができる。これらの抗体は、好ましくは、(a)LAG3との結合を競合し、(b)機能特性を保持し、(c)同一のエピトープに結合し、および/または(d)本開示の抗LAG3抗体と同様の結合親和性を有する。さらに別の実施形態では、抗体は、抗LAG3抗体の軽鎖可変領域のCDR2、または別の抗LAG3抗体の軽鎖可変領域のCDR2をさらに含んでよく、ここで、抗体はヒトLAG3に特異的に結合することが可能である。別の実施形態では、本開示の抗体は、抗LAG3抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR1、または別の抗LAG3抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR1を含み得、ここで、抗体はヒトLAG3に特異的に結合することが可能である。
【0085】
別の実施形態では、本開示の抗LAG3抗体のものとは1または複数の保存的改変によって異なるCDR1、CDR2およびCDR3配列の重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む本開示の抗体が提供される。本技術分野において、抗原結合を除去しない特定の保存的配列修飾が行われ得ることが理解される。例えば、Brummell等、(1993) Biochem 32:1180-8、de Wildt等、(1997) Prot. Eng. 10:835-41、Komissarov等、(1997) J. Biol. Chem. 272:26864-26870、Hall等、(1992) J. Immunol. 149:1605-12、 Kelley and O'Connell (1993) Biochem.32:6862-35、 Adib-Conquy 等、(1998) Int. Immunol.10:341-6およびBeers等、(2000) Clin. Can. Res.6:2835-43を参照。
【0086】
したがって、1つの実施形態において、抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、および/またはCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域から構成され、ここで、
(a)重鎖可変領域CDR1配列は、上記の表1に列挙された配列、および/またはその保存的改変体から構成され、および/または
(b)重鎖可変領域CDR2配列は、上記の表1に列挙された配列、および/またはその保存的改変体から構成され、および/または
(c)重鎖可変領域CDR3配列は、上記の表1に列挙された配列、およびその保存的改変体から構成され、および/または
(d)軽鎖可変領域CDR1、および/またはCDR2、および/またはCDR3配列は、上記の表1に列挙された配列、および/またはその保存的改変体から構成され、および、
(e)抗体は、ヒトLAG3と特異的に結合する。
【0087】
本開示の抗体は、ヒトLAG3に対する高い親和性結合など、上記した以下の機能特性のうちの1または複数を有する。
【0088】
様々な実施形態において、抗体は例えば、マウス、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体であり得る。
【0089】
本明細書で使用する場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響しない、または、それを変更しないアミノ酸修飾を指すことを意図する。そのような保存的改変はアミノ酸置換、追加および欠失を含む。部位指向性変異誘発およびPCR媒介性変異誘発など、本技術分野において知られている標準的な技法によって、本開示の抗体に改変が導入され得る。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが本技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本開示の抗体のCDR領域における1または複数のアミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基に置き換えられ得、変更された抗体は、本明細書において記載された機能的アッセイを使用して、保持された機能(すなわち、上に記載された機能)について試験され得る。
【0090】
本開示の抗LAG3抗体のVH/VL配列の1または複数を有する抗体を出発材料として用い、改変型抗体を設計して、本開示の抗体を調製することができる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)、例えば、1または複数のCDR領域、および/または、1または複数のフレームワーク領域における1または複数の残基を改変することによって設計され得る。追加的または代替的に、例えば抗体のエフェクター機能を変更するために、抗体は、定常領域内の残基を改変することによって設計され得る。
【0091】
特定の実施形態において、抗体の可変領域を操作するために、CDR移植が使用され得る。抗体は、主に6の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通じて標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列より、個々の抗体間の多様性が高い。CDR配列は、ほとんどの抗体-抗原相互作用を担っているため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された特定の天然に発生する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に発生する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann等、(1998) Nature 332:323-327、Jones等、(1986) Nature 321:522-525、Queen等、(1989) Proc. Natl.Acad.を参照。また、米国 86:10029-10033、米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照)。
【0092】
したがって、本開示の別の実施形態は、上記の本開示の配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、および/または、上記の本開示の配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離モノクローナル抗体、または、その抗原結合部分に関連する。これらの抗体は本開示のモノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含むが、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0093】
そのようなフレームワーク配列は、公共のDNAデータベース、または、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公開文献から取得できる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネット上でwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで利用可能)、並びに、Kabat等、(1991)、前掲のTomlinson等、(1992) J.Mol.Biol.227:776-798、およびCox等、(1994) Eur.J.Immunol.24:827-836で入手可能である。これらの各々の内容は、参照することにより本明細書に明示的に組み込まれる。別の例として、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列はGenbankデータベースで入手可能である。例えば、HCo7 HuMAbマウスにおいて見られる以下の重鎖生殖系列配列は、添付のGenbankアクセッション番号1-69(NG--0010109、NT--024637&BC070333)、3-33(NG--0010109&NT--024637)および3-7(NG--0010109&NT--024637)において利用可能である。別の例として、HCo12 HuMAbマウスにおいて見られる以下の重鎖生殖系列配列は、添付のGenbankアクセッション番号1-69(NG--0010109、NT--024637&BC070333)、5-51(NG--0010109 &NT--024637)、4-34(NG--0010109&NT--024637)、3-30.3(CAJ556644)&3-23(AJ406678)において利用可能である。
【0094】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知の、Gapped BLAST(上記Altschul等、(1997))と呼ばれる配列類似性検索方法の1つを使用して、まとめられたタンパク質配列データベースと比較される。
【0095】
本開示の抗体において使用される好ましいフレームワーク配列は、本開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と同様の構造である。VH CDR1、CDR2、およびCDR3配列は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同一配列を有するフレームワーク領域に移植され得るか(フレームワーク配列は生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子に由来する)、または、CDR配列は、生殖系列配列と比較して1または複数の変異を含むフレームワーク領域に移植され得る。例えば、特定の例において、抗体の抗原結合能力を維持または強化するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが分かった(例えば、米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照されたい)。
【0096】
別の種類の可変領域修飾は、VHおよび/またはVL CDR1、CDR2、および/またはCDR3領域におけるアミノ酸残基を変異させ、これによって、目的の抗体の1または複数の結合特性(例えば親和性)を改善することである。変異を導入するために、部位指向性変異誘発またはPCR媒介性変異誘発が実行され得、抗体結合に対する作用、または、他の目的の機能特性が、本技術分野において知られているように、in vitroまたはin vivoアッセイで評価され得る。好ましくは、保存的改変(本技術分野において知られている)が導入される。変異は、アミノ酸置換、追加、または欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4または5より多くない残基が変更される。
【0097】
したがって、別の実施形態では、本開示は、以下のものを含む重鎖可変領域を含む単離抗LAG3モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。(a)本開示の配列から構成されるVH CDR1領域、または1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または追加を有するアミノ酸配列、(b)本開示の配列から構成されるVH CDR2領域、または1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または追加を有するアミノ酸配列、(c)本開示の配列から構成されるVH CDR3領域、または1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または追加をを有するアミノ酸配列、(d)本開示の配列から構成されるVL CDR1領域、または1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または追加を有するアミノ酸配列、(e)本開示の配列から構成されるVL CDR2領域、または1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または追加を有するアミノ酸配列、および(f)本開示の配列から構成されるVL CDR3領域、または1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または追加を有するアミノ酸配列。
【0098】
本開示の操作された抗体は、例えば、抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に改変が行われたものを含む。典型的には、そのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を減少させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1または複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異」させることである。より具体的には、体細胞変異を経験した抗体は、抗体の由来元である生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体の由来元である生殖系列配列と比較することによって特定され得る。
【0099】
別の種類のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去するために、フレームワーク領域内、または、さらには1または複数のCDR領域内の1または複数の残基を変異させ、これによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下することを伴う。このアプローチは、「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許出願公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
【0100】
フレームワークまたはCDR領域内で行われる改変に加えて、または代替して、本開示の抗体は、典型的には、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または、抗原依存性細胞毒性など、抗体の1または複数の機能的特性を変更するために、Fc領域内の改変を含むように設計され得る。さらに、本開示の抗体は、化学的に改変され得る(例えば、1または複数の化学的部分が抗体に付着され得る)か、または、そのグリコシル化を変更するために改変され得、これにより、同様に抗体の1または複数の機能的特性が再度変更される。
【0101】
1つの実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変更されるように、例えば、増加または減少するように改変される。この方法は、米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の組み立てを促進するために、または、抗体の安定性を増加または減少させるために変更される。
【0102】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるために、変異される。より具体的には、ネイティブのFcヒンジドメインのスタフィロコッカスタンパク質A(SpA)結合と比べて弱いSpA結合を抗体が有するように、1または複数のアミノ酸変異が、Fcヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に導入される。この方法は、米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0103】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化は改変される。例えば、グリコシル化された抗体が作られ得る(すなわち、抗体はグリコシル化を有しない)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるために変更され得る。そのような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1または複数の部位を変更することによって実現され得る。例えば、1または複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらす1または複数のアミノ酸置換が行われ得、これによって、当該部位のグリコシル化が除去される結果となる。そのようなアグリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性が増加し得る。例えば、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号を参照されたい。
【0104】
追加的または代替的に、フコシル残基の量が低減された低フコシル化抗体、または、二分GlcNac構造を増加させた抗体など、グリコシル化の種類が変更された抗体が作られ得る。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが実証された。そのような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機構を変更した宿主細胞において、抗体を発現させることによって実現され得る。グリコシル化機構を変更した細胞が本技術分野において説明され、本開示の組換え抗体を発現させるための宿主細胞として使用され得、これによって、グリコシル化が変更された抗体が産生される。例えば、細胞株Ms704、Ms705、およびMs709は、Ms704、Ms705、およびMs709細胞株において発現する抗体がそれらの炭水化物上にフコースが欠如するように、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)‐フコシルトランスフェラーゼ)が欠如する。Ms704、Ms705、およびMs709 FUT8‐/‐細胞株が、2つの置換ベクトルを使用して、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的破壊によって作成された(米国特許出願公開第20040110704号およびYamane‐Ohnuki等、(2004) Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照)。別の例として、EP1,176,195は、フコシルトランスフェラーゼをエンコードする、機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株を記載し、したがって、そのような細胞株において発現する抗体は、α-1,6結合関連酵素を低減または除去することによって低フコシル化を示す。EP1,176,195はまた、抗体のFc領域に結合するN‐アセチルグルコサミンにフコースを追加するための酵素活性が低い、または、酵素活性を有さない細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)を記載する。PCT公開WO03/035835は、Asn(297)-結合した炭水化物にフコースを結合する能力が低下し、結果として、その宿主細胞で発現した抗体の低フコシル化も生じる変異型CHO細胞株、Lec13細胞を記載している(Shields等、(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照されたい)。改変されたグリコシル化プロファイルを有する抗体はまた、PCT公開WO06/089231に記載されるように、ニワトリの卵において産生され得る。代替的に、改変されたグリコシル化プロファイルを有する抗体が、アオウキクサなどの植物細胞において産生さ得る。植物系で抗体を生成する方法は、2006年8月11日に出願されたAlston & Bird LLP代理人整理番号第040989/314911に対応する米国特許出願に開示されている。PCT公開WO 99/54342は、工学的細胞株で発現するように設計された抗体が、結果として、抗体のADCC活性の増加をもたらす増加した二分GlcNac構造を示すように、糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ III(GnTIII))を発現するように設計された細胞株を記載している((Umana等、(1999) Nat.Biotech.17:176-180もまた参照)。代替的に、フコシダーゼ酵素を用いて抗体のフコース残基を切断してもよい。例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino等、(1975) Biochem.14:5516-23)。
【0105】
本開示によって想定される本明細書の抗体の別の改変はPEG化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血中)半減期を増加させるためにPEG化され得る。抗体をPEG化するために、抗体またはその断片は典型的には、1または複数のPEG群が抗体または抗体断片に取り付けられる条件下において、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応される。好ましくは、PEG化は、反応性PEG分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実行される。本明細書で使用する場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1-C10)アルコキシまたはアリールオキシ‐ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール‐マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの任意の形態を包含することが意図される。特定の実施形態において、PEG化される抗体は、アグリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化するための方法が本技術分野において知られ、本開示の抗体に適用され得る。例えば、EPO 154 316およびEP 0 401 384を参照されたい。
【0106】
本開示の抗体は、その異なるクラスを検出および/または区別するための様々な物理的特性を特徴とし得る。
【0107】
例えば、抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれにおける1または複数のグリコシル化部位を含み得る。そのようなグリコシル化部位は、変更された抗原結合に起因して、結果として、抗体の免疫原性の増加、または、抗体のpKの変更をもたらし得る(Marshall等(1972) Annu Rev Biochem 41:673-702、 Gala and Morrison (2004) J Immunol 172:5489-94、 Wallick等(1988) J Exp Med 168:1099-109、 Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R、 Parekh等(1985) Nature 316:452-7、 Mimura等(2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N‐X‐S/T配列を含むモチーフにおいて発生することが知られている。いくつかの例では、可変領域グリコシル化を含まない抗LAG3抗体であることが好ましい。これは、可変領域においてグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択すること、または、グリコシル化領域内の残基を変異させることのいずれによって達成され得る。
【0108】
好ましい実施形態において、抗体はアスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N‐GまたはD‐G配列で発生し、結果として、ポリペプチド鎖にねじれを導入して安定性を減少させる(イソアスパラギン酸作用)イソアスパラギン酸残基の作成をもたらし得る。
【0109】
各抗体は、一般的に6~9.5のpH範囲に収まる固有の等電点(pI)を有する。IgG1抗体のpIは典型的には、7-9.5のpH範囲に収まり、IgG4抗体のpIは、典型的には、6~8のpH範囲に収まる。正常範囲外のpIを有する抗体は、in vivo条件下において、いくつかのアンフォールディングおよび不安定性を有し得ると推測される。したがって、抗LAG3抗体は、正常範囲に収まるPI値を含むことが好ましい。これは、正常範囲におけるpIを有する抗体を選択すること、または、荷電表面残基を変異させることのいずれかによって達成できる。
【0110】
別の態様において、本開示は、本開示の抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域またはCDRをエンコードする核酸分子を提供する。核酸は、全細胞が、細胞可溶化物において、または、部分的に精製された、または実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、標準的な技法によって、他の細胞成分または他の混入物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質などから精製されるとき、「単離」される、または、「実質的に純粋に精製される」。本開示の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでもよく、または含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0111】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技法を使用して取得され得る。ハイブリドーマ(例えば、下でさらに説明される、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体については、ハイブリドーマによって作られる抗体の軽鎖および重鎖をエンコードするcDNAは、標準的なPCR増幅またはcDNAクローン技法によって取得され得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから(例えば、ファージディスプレイ技法を使用して)取得される抗体については、そのような抗体をエンコードする核酸は、遺伝子ライブラリから回収され得る。
【0112】
本開示の好ましい核酸分子には、LAG3モノクローナル抗体のVHおよびVL配列またはCDRをエンコードするものが含まれる。VHおよびVLセグメントをエンコードするDNA断片が取得されると、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技法によってさらに操作され得る。これらの操作において、VLまたはVHをエンコードするDNA断片は、抗体定常領域またはフレキシブルリンカーなどの、別のタンパク質をエンコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。この文脈において使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNA断片によってエンコードされるアミノ酸配列がインフレームに留まるように、2つのDNA断片が結合されることを意味するように意図される。
【0113】
VH領域をエンコードする単離DNAは、VHをエンコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2、およびCH3)をエンコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術分野において知られ、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって取得され得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgD定常領域であり得るが、もっとも好ましくは、IgG1またはIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子については、VHをエンコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをエンコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0114】
VL領域をエンコードする単離DNAは、VLをエンコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをエンコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術分野において知られ、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅によって取得され得る。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0115】
scFv遺伝子を作成するために、VHおよびVLをエンコードするDNA断片は、VHおよびVL配列が連続した単鎖タンパク質として発現され得るように、フレキシブルリンカーをエンコードする別の断片、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をエンコードするものと作動可能に連結され、VLおよびVH領域がフレキシブルリンカーによって結合される(例えば、Bird等、(1988) Science 242:423-426、Huston等、(1988) Proc.Natl.Acad. Sci.米国 85:5879-5883、McCafferty等、(1990) Nature 348:552-554を参照)。
【0116】
本開示のモノクローナル抗体(mAb)は、Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495の周知の体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技法を使用して産生され得る。モノクローナル抗体を産生するための他の実施形態は、Bリンパ球のウイルスまたは発癌性の形質転換、および、ファージディスプレイ技法を含む。キメラまたはヒト化抗体も本技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,816,567号、第5,225,539号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号および第6,180,370号を参照し、これらの内容は特に参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0117】
本開示の抗体はまた、本技術分野において周知のように、例えば、組換えDNA技法および遺伝子トランスフェクション法(例えば、Morrison, S. (1985) Science 229:1202)の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマによって産生され得る。1つの実施形態において、標準的な分子生物学技法によって取得される部分的または完全長軽鎖および重鎖をエンコードするDNAは、1または複数の発現ベクターに挿入される。したがって、遺伝子は、転写および翻訳調節配列に作動可能に連結される。この文脈において、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を制御する意図される機能を担うように、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味するように意図される。
【0118】
「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサ、および、抗体遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような制御配列は、例えば、Goeddelに記載される(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990))。哺乳類宿主細胞発現のための好ましい制御配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルスに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサ、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)およびポリオーマなど、哺乳類細胞において高いレベルのタンパク質発現を指令するウイルス性要素を含む。代替的に、ユビキチンプロモーターまたはβグロブリンプロモーターなど、非ウイルス性制御配列が使用され得る。さらに、追加で、異なるソースからの配列から構成される制御エレメント、例えば、SV40初期プロモーターとヒトT細胞白血病ウイルス1型の長尺反復からの配列を含むSRαプロモーターシステムなど(Takebe等、(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472)。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選択される。
【0119】
抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、同一、または別個の発現ベクターに挿入され得る。好ましい実施形態において、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作成するために可変領域が使用される。それらは、所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にエンコードしている発現ベクターに挿入される。したがって、VHセグメントは、ベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントは、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結される。追加的または代替的に、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをエンコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームに連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド、または、異種混合のシグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0120】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本開示の組み換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起源)および選択可能マーカ遺伝子など、追加の配列を保有し得る。選択可能マーカ遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照)。例えば、選択可能マーカ遺伝子は典型的には、ベクターが導入された宿主細胞に対して、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。好ましい選択可能マーカ遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅と共に、dhfr宿主細胞において使用)およびneo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0121】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をエンコードする発現ベクターが、標準的な技法によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態は、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するために一般に使用される幅広い多種多様の技法、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。本開示の抗体を原核生物または真核生物のいずれの宿主細胞において発現することも理論上可能であるが、真核細胞(哺乳類宿主細胞がもっとも好ましい)における抗体の発現がもっとも好ましい。なぜなら、そのような真核細胞、特に哺乳類細胞は、原核細胞と比較して、適切に折り畳まれた、免疫活性抗体を組み立てて分泌する可能性が高いからである。
【0122】
本開示の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(dhfr-CHO細胞を含む、UrlaubおよびChasin、(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.米国 77:4216-4220に記載されており、例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601-621に記載されているDHFR選択可能マーカと共に使用される)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、SP2細胞を含む。特にNSO骨髄腫細胞で使用するために、別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に開示されたGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をエンコードする組み換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入した場合、宿主細胞における抗体の発現、または、より好ましくは宿主細胞を培養する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。 抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収することができる。
【0123】
本開示の抗体は、抗体-薬物複合体(ADC)などの免疫複合体を形成するために、治療剤に結合させることができる。適切な治療薬としては、細胞毒素、アルキル化剤、DNA小溝結合剤、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核輸送阻害剤、プロテアソーム阻害薬、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および有糸分裂阻害剤を含む。ADCにおいて、抗体と治療薬は、好ましくは、ペプチジルリンカー、ジスルフィドリンカー、またはヒドラゾンリンカーなどのような切断可能なリンカーを介して結合される。より好ましくは、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、SerまたはGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号、第6,989,452号、および第7,129,261号、PCT公開WO02/096910、WO07/038,658、WO07/051,081、WO07/059,404、WO08/083,312、およびWO08/103,693、米国特許公開20060024317、20060004081、および20060247295に記載のように調製でき、これらの本開示は参照によって本明細書に組み込まれるものとする。
【0124】
別の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成するために、少なくとも1つの他の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)に連結された1または複数の本開示の抗体を含む二重特異性分子を特徴とする。したがって、本明細書で使用する場合、[二重特異性分子]は、3またはそれ以上の特異性を有する分子を含む。
【0125】
一実施形態において、二重特異性分子は、抗Fc結合特異性および抗LAG3結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。3つ目の特異性は、PD-1またはCTLA-4に対するもので、免疫反応を強化することができる。代替的に、第3の特異性は、抗強化因子(EF)、例えば、細胞毒性活性に伴う表面タンパク質に結合し、これによって標的細胞に対する免疫反応を増加させる分子に対するものであってもよい。例えば、抗増強因子は、細胞傷害性T細胞(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、LAG3、またはICAM-1を介して)または他の免疫細胞と結合し、結果として、標的細胞に対する免疫反応の増加をもたらすことができる。
【0126】
二重特異性分子には多くの異なるフォーマットおよびサイズがあり得る。サイズスペクトルの一端では、二重特異性分子は、従来の抗体フォーマットを保持するが、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、異なる特異性を各々が有する2つの結合アームを有する。他の極端な例は、2つの単鎖抗体断片(scFv)をペプチド鎖で連結した構造を含む二重特異性分子、いわゆるBs(scFv)2構造である。中サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結される2つの異なるF(ab)断片を含む。これらのフォーマットおよび他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子工学、体細胞ハイブリダイゼーション、または化学的方法によって調製され得る。例えば、前掲のKufer等、Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9(6),635-644(1998)、およびvan Spriel等、Immunology Today,21(8),391-397 (2000)、および本明細書に引用された参考文献を参照されたい。
[キメラ抗原受容体]
【0127】
本開示は、抗LAG3 scFvを含むキメラ抗原受容体をさらに提供し、抗LAG3 scFvは、本開示の重鎖/軽鎖可変領域および/またはCDRを含む。
【0128】
本開示のキメラ抗原受容体は、(a)抗LAG3 scFvを含む細胞外抗原結合ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、および(c)シグナル伝達ドメインおよび/またはコスティミュレーションドメインを含む細胞内ドメインから構成されてもよい。
【0129】
別の態様では、本開示は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された、1または複数の抗体またはその抗原結合部分、抗体またはその抗原結合部分をエンコードする1または複数の核酸、1または複数の免疫コンジュゲート、CARを保有する1または複数の免疫細胞、および/または1または複数の本開示の二重特異性分子を含む、医薬組成物を提供する。組成物は、任意に、1または複数の追加の薬学的活性成分、例えば、抗癌抗体、抗感染抗体、抗炎症抗体、または免疫反応を高めるための抗体などの別の抗体または薬物など、または抗癌剤、抗感染剤、抗炎症剤、またはコスト調節剤などの別の非抗体治療剤を含有してもよい。本開示の医薬組成物はまた、例えば、抗癌剤、抗感染剤、抗炎症剤、またはコスティミュレーション剤との併用療法で投与することができる。
【0130】
医薬組成物は任意の数の賦形剤を含むことができる。使用できる賦形剤として、担体、表面活性剤、増粘剤、または乳化剤、固体結合剤、分散助剤、または懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、着香剤、コーティング、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存料、等張剤、およびそれらの組み合わせが含まれる。適切な賦形剤の選択および使用は、The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams & Wilkins 2003)の、Gennaro,ed.,Remingtonに教示されており、これらの本開示は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0131】
医薬組成物は、好ましくは(例えば注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与に好適である。投与経路に応じて、活性成分を物質でコーティングして、酸の作用およびそれを不活性化し得る他の自然条件から保護することができる。本明細書で使用する「非経口投与」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を含むが、これらに限定されない。代替的に、本開示の抗体は、局所、表皮または粘膜の投与経路などの非経口経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下または局所的に投与することができる。
【0132】
医薬組成物は、無菌水溶液または分散系の形態であり得る。また、それらはマイクロエマルション、リポソーム、または、高い薬物濃度に好適な他の順序構造で製剤化され得る。
【0133】
単回投与形態を生成するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象、および、特定の投与方法に応じて変動し、一般的に、治療効果を生じさせる組成物の量である。一般的に、この量の範囲は、薬学的に許容される担体と組み合わされた、100%中、約0.01%から約99%の活性成分、好ましくは、約0.1%から約70%、もっとも好ましくは、約1%から約30%の活性成分である。
【0134】
最適な所望の反応(例えば治療反応)を提供するように投与量が調節される。例えば、単回ボーラスを投与でき、いくつかの分割された用量を経時的に投与でき、または、治療状況の緊急事態による指示に応じて用量を比例して低減または増加させることができる。投与を容易にするために、および、投与量を統一するために、単位用量形態で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書で使用する単位用量形態とは、治療される対象のための単位投与量として好適な物理的な不連続単位を指す。各単位は、必要な医薬担体に伴い所望の治療効果を生じさせるために算出された活性成分の所定量を含む。抗体は代替的に、徐放性製剤として投与できる。この場合、必要な投与頻度が少ない。
【0135】
抗体の投与については、投与量は、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、より一般的には、0.01~5mg/kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、または10mg/kg体重、または、1~10mg/kgの範囲であり得る。例示的な治療計画は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1か月に1回、3か月に1回、または、3~6か月に1回の投与を伴う。本開示の抗LAG3抗体の好ましい投与量は、静脈内投与による1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、抗体は以下の投与スケジュールの1つを使用して与えられる。(i)4週間ごとに6投与量、次に3ヶ月ごと、(ii)3週間ごと、(iii)3mg/kg体重を1回、次に3週間ごとに1mg/kg体重。いくつかの方法において、約1-1000μg/ml(いくつかの方法において、約25-300μg/ml)の血漿抗体濃度を達成するように、投与量が調節される。
【0136】
本開示の抗LAG3抗体またはその抗原結合部分の「治療上有効な投与量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の減少、疾患無症状期間の頻度と期間の増加、または疾患苦悩による障害または障害の防止の結果をもたらす。例えば、担癌の対象を治療する場合、「治療上有効な投与量」は好ましくは、未治療の対象と比べて、腫瘍増殖を少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、なおさらに好ましくは少なくとも約80%抑制する。治療上有効な量の治療抗体は、腫瘍の大きさを減少させ、または、そうでない場合、典型的には人または他の哺乳類である対象の症状を緩和することができる。自己免疫疾患を有する対象の治療のために、「治療上有効な投与量」は、好ましくは、未治療の対象と比べて、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、なおさらに好ましくは少なくとも約80%炎症を緩和し、または完全に炎症を除去する。
【0137】
医薬組成物、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤であり得る。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などが使用され得る。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク,1978を参照されたい。
【0138】
治療用組成物は、(1)無針皮下注射装置(例えば、米国特許第5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824、および4,596,556号)、(2)マイクロ注入ポンプ(米国特許第4,487,603号)、(3)経皮装置(米国特許第4,486,194号)、(4)注入機器(米国特許第4,447,233および4,447,224号)、(5)浸透圧装置(米国特許第4,439,196および4,475,196号)などの医療機器を介して投与され得る。これらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0139】
特定の実施形態において、本開示のモノクローナル抗体は、in vivoの適切な分散を保証するために製剤化され得る。例えば、本開示の治療抗体が血液脳関門を超えることを保証するために、それらは、特定の細胞または臓器への選択的輸送を強化する標的化部分を追加的に含み得るリポソームにおいて製剤化され得る。例えば、米国特許第4,522,811号、5,374,548号、5,416,016号、および5,399,331号、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685、Umezawa等、(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038、Bloeman等、(1995)FEBS Lett.357:140、M.Owais等、(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180、Briscoe等、(1995)Am.J.Physiol.1233:134、Schreier等、(1994)J.Biol.Chem.269:9090、KeinanenおよびLaukkanen(1994)FEBS Lett.346:123、およびKillionおよびFidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0140】
本開示の医薬組成物は、多数のin vitroおよびin vivo用途があり、例えば、癌、炎症性疾患、または感染症疾患、またはより一般的には癌または感染症疾患の患者における免疫反応増強、または自己免疫疾患などの炎症性疾患の患者の病巣における免疫細胞減少を含む、治療および/または防止での有用性を有する。医薬組成物は、人間の被験者に、例えば、in vivoで、腫瘍増殖を抑制するため、病原体を減少または除去するため、または自己免疫性炎症を緩和するために投与することができる。
【0141】
癌細胞の増殖および生存を抑制する本開示の医薬組成物の能力を考慮すると、本開示は、腫瘍の成長が対象において抑制されるように本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要としている対象における腫瘍細胞の成長を抑制するための方法を提供する。本開示の医薬組成物によって治療できる腫瘍の非限定的な例としては、結腸腺癌、乳癌、腎細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、および胃癌(元および/または転移性)が含まれるが、これらに限定されない。加えて、本開示の医薬組成物は、本開示の組成物によって成長が抑制され得る難治性または再発性の悪性腫瘍にも適用され得る。
【0142】
本開示の医薬組成物は、病原体を低下または除去するために使用されてもよい。したがって、本開示は、それを必要とする対象において、ウイルス、細菌、真菌、またはマイコプラズマによって引き起こされる、感染症を治療するための方法を提供し、本開示の医薬組成物を対象に投与することを含んでいる。
【0143】
本開示の医薬組成物は、炎症性疾患を治療または緩和するために使用され得る。したがって、本開示は、それを必要とする対象における自己免疫疾患を治療するための方法を提供し、特に病巣部またはその周辺に、本開示の医薬組成物を対象に投与することを含んでいる。自己免疫疾患は、プラーク乾癬の場合がある。
【0144】
本開示のこれらの方法および他の方法は下でさらに詳細に説明される。
【0145】
別の態様では、本開示は、本開示の医薬組成物を、対象における腫瘍増殖の抑制に有効な1または複数の追加の抗体または非抗体剤と共投与する併用療法の方法を提供する。1つの実施形態において、本開示は、本開示の医薬組成物と、抗TIM3抗体、抗抗PD-L1抗体、および抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体などの1または複数の追加の抗体を対象に投与することを含む、対象における腫瘍増殖を抑制するための方法を提供する。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、標準的な癌治療とさらに併用されてもよい。例えば、LAG3シグナル遮断は、CTLA-4および/またはPD‐1阻害、さらに化学療法レジームとも組み合わせることができる。例えば、化学療法剤は、本開示の医薬組成物と共に投与することができ、これは細胞傷害性剤であってもよい。例えば、エピルビシン、オキサリプラチン、5-FUは抗LAG3療法を受けている患者に投与される。抗LAG3療法と併用し得る他の治療法としては、インターロイキン2(IL-2)の投与、放射線、手術、またはホルモン遮断などが含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
別の態様では、本開示は、本開示の医薬組成物が、細菌、ウイルス、真菌、および/またはマイコプラズマなどの病原体を低減または除去するのに有効な1または複数の追加の抗体または非抗体剤と共投与される併用療法の方法を提供する。例えば、本開示の医薬組成物は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、または抗マイコプラズマ剤などの抗感染剤とともに投与されてもよい。
【0147】
別の態様では、本開示は、本開示の医薬組成物を、プラーク乾癬などの自己免疫疾患を治療または緩和するのに有効な1または複数の追加の抗体または非抗体剤と共投与する併用療法の方法が提供される。例えば、本開示の医薬組成物は、プラーク乾癬治療のためのIL-2阻害剤、IL-17阻害剤(例えば、TaltzR Ixekizumab、bimekizumab)、および/または抗IL-23阻害剤などの自己免疫疾患の治療剤と共に投与されてもよい。
【0148】
本明細書において説明される治療剤の組み合わせは、薬学的に許容される担体における単一の組成物として同時に投与され得るか、または、薬学的に許容される担体における各薬剤と共に別個の組成物として同時に投与され得る。別の実施形態において、治療剤の組み合わせは、順次に投与され得る。
【0149】
さらに、併用療法の1より多くの用量が順次に投与される場合、連続投与の順序は、投与の各時点において、逆になり得、または、同じ順序に維持され得、連続投与は、同時投与、または、それらの任意の組み合わせと組み合わされ得る。
【0150】
本開示は以下の例においてさらに図示されるが、これは、さらなる限定として解釈されるべきでない。本出願全体において引用される、すべての図面およびすべての参考文献、Genbank配列、特許および特許出願公開の内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
[例]
[実施例1 ヒト、サルまたはマウスLAG3を安定的に発現するHEK293A細胞株の構築]
【0151】
ヒト、サルまたはマウスのLAG3タンパク質を安定的に過剰発現する細胞株を、HEK293A細胞(Cobioer,NJ,中国)を用いて構築した。簡潔に説明すると、ヒト、サルまたはマウスのLAG3 cDNA配列(それぞれ、配列番号、37,38,39)を合成し、次に、制限部位EcoRIとXhoIの間でpLV-EGFP(2A)-Puroベクター(北京 Inovogen、中国)にサブクローニングした。レンチウイルスは、リポフェクタミン(登録商標)3000キット(Thermo Fisher Scientific,米国)の説明書にしたがって、pLV-EGFP(2A)-Puro-LAG3、psPAXおよびpMD2.Gプラスミドを共導入してHEK-293T細胞(Cobioer、NJ、中国)に生成させた。共導入後3日目に、10%FBS(Cat#:FND500,Excell)を添加した細胞培養液(DMEM,Cat#:SH30022.01,Gibco)からレンチウイルスを採取した。次に、このHEK293A細胞にレンチウイルスを感染させ、ヒト、サルまたはマウスLAG3に安定的に発現するHEK293A細胞株、すなわちHEK293A/ヒトLAG3細胞、HEK293A/rh LAG3細胞およびHEK293A/マウスLAG3細胞をそれぞれ生成した。トランスフェクトしたHEK293A細胞を、0.2μg/mlのピューロマイシン(Cat#:A11138-03,Gibco)を含む培地(DMEM+10%FBS)で7日間培養した。ヒトLAG3およびサルLAG3タンパク質の発現は、市販の抗LAG3抗体(PE-anti-human LAG3,Biolegend,米国,Cat#:369205)を用いてFACSにより確認した。同様に、市販の抗マウスLAG3抗体(PE-anti-mouse LAG3,Biolegend,米国,Cat#:125207)を用いて、マウスLAG3タンパク質の発現をFACSにより確認した。
[実施例2 ヒトLAG3に対するモノクローナルマウス抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の生成]
【0152】
マウス抗ヒトLAG3モノクローナル抗体(mAbs)は、従来のハイブリドーマ融合技術を用い、いくつかの改変を加えて生成した。
[免疫化]
【0153】
13匹のBALB/cマウス(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.Ltd,北京,中国)に、下の表2の方式にしたがって、リコンビナントヒトLAG3(ECD)-hFc(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H02H)とリコンビナントサルLAG3(ECD)-hFc(ACRO,中国,Cat#:LA3-C5252)を注射した。ヒトLAG3(ECD)-hFcおよびサルLAG3(ECD)-hFcタンパク質は、等体積のComplete Freund´s Adjuvant(SIGMA,米国,Cat#:F5881-10*10ML),Incomplete Freund´s Adjuvant(SIGMA,米国,Cat#:F5506-6*10ML)またはPBSを用いて超音波処理によって乳化させた。
【0154】
【0155】
各ブーストの1週間後、各マウスから50μlのマウス血清を採取し、組換えヒトLAG3(ECD)-his(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H08H),サルLAG3(ECD)-hFc(ACRO,中国,Cat#:LA3-C5252)およびマウスLAG3(ECD)-his(Sino Biological,中国,Cat#:53069-M08H)を用いたELISAによる力価測定に使用した。また、実施例1で調製したヒトLAG3、サルLAG3またはマウスLAG3を過剰発現させたHEK293Aを用いて、FACSにより力価測定を行った。
【0156】
最終ブースト後のELISAとFACS解析結果に基づいて、血清力価の高い10匹のマウスを選択し、ハイブリドーマ細胞株を生成した。ハイブリドーマ細胞株の生成
【0157】
ハイブリドーマ細胞株は、従来のハイブリドーマ融合技術を用い、軽微な変更を加えて生成した。
【0158】
最終追加免疫の4日後、マウスを犠牲にし、脾臓を採取して、PBSにおいて単個細胞浮遊液として調製した。脾臓細胞はDMEM培地(Hyclone,Cat#:SH30243.01B)で3回洗浄した。対数期における生存骨髄腫細胞SP2/0(ATCC、CRL-1581)を、ネズミ脾臓細胞と1:4の比で混合した。次に細胞を2回洗浄し、次にPEG(Sigma,Cat#:P7181)を用いて細胞融合を実行した。融合後の細胞をDMEM培地で3回洗浄し、10%FBSと1X HAT(Sigma,H0262)を添加した細胞成長培地(RPMI培地1640(Gibco,Cat#:C22400500CP))にて懸濁した。この細胞懸濁液を96ウェル細胞培養プレートに、1ウェルあたり200μl(5×104細胞/ウェル)ずつ平板培養し、37℃、加湿5%、CO2インキュベータで7日間インキュベートした。次に、成長培地を10%FBS+1X HTを添加した新鮮な成長培地に交換した。2~3日後、ハイブリドーマ細胞はELISAとFACSでスクリーニングされた。
[ELISAによるハイブリドーマ細胞株のスクリーニング]
【0159】
まず、High-throughput ELISA 結合アッセイを用いて、ヒトLAG3(ECD)-his(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H08H)に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングした。ヒトLAG3結合体を産生するクローンは、アカゲザルLAG3(ECD)-hFc(ACRO,中国,Cat#:LA3-C5252)およびマウスLAG3(ECD)-his(Sino Biological,中国,Cat#:53069-M08H)を用いてサルまたはマウスLAG3との交差反応能力についてさらに試験した。
【0160】
ELISAアッセイにより、211のハイブリドーマクローンがヒトとサルの両方のLAG3タンパク質に特異的結合することが特定された。FACSによるハイブリドーマ細胞株のスクリーニング
【0161】
さらに、実施例1で調製したHEK293A/ヒトLAG3細胞、HEK293A/rh LAG3細胞、HEK293A/マウスLAG3細胞を用いて、HEK293A細胞上に発現したヒト、アカゲザル、またはマウスのLAG3タンパク質に対する結合能力を211個のハイブリドーマクローンについてスクリーニングを行った。
【0162】
FACSスクリーニングに基づいて、HEK293A/human LAG3細胞およびHEK293A/rh LAG3細胞のいずれに対しても高い結合能を示す78個の陽性クローンが得られた。
[Anti-LAG3 抗体を産生するハイブリドーマクローンのサブクローニング]
【0163】
78のハイブリドーマクローンが2回のサブクローニングを受けた。サブクローニングの間、各親クローンからの複数のサブクローン(n>3)が選択され、上記のように、ELISAおよびFACSアッセイによって確認された。このプロセスを通じて選択されたサブクローンは、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞として定義された。最終的に、ヒトとサルの両方のLAG3に高い結合能を持つ47個のサブクローン(各親クローンから1個のサブクローン)を得ることができた。
[実施例3 マウス抗LAG3抗体によるDaudi細胞上のMHC IIへのヒトLAG3結合の抑制]
【0164】
LAG-3のMHCクラスII分子への結合を抑制するクローン能力を試験するために、ヒトFc(hLAG-3-hIg、Sino Biological,中国,Cat#:16498-H02H)と結合したヒトLAG-3細胞外ドメインなどを含むLAG-3融合タンパク質上で、in vitro結合アッセイが実行され、ヒトMHCクラスII分子を発現するDaudi細胞が培養された。
【0165】
簡潔に説明すると、47個のハイブリドーマ細胞から各々採取した細胞培養液100μlに、10μg/mlのhLAG-3-hIg融合タンパク質を添加した。2×105Daudi細胞を添加する前に、混合物を室温で20分間インキュベートした。混合物をさらに4℃で30分間インキュベートした。細胞をペレット化し(5分、300xg)、1×PBSバッファ(137mM NaCl,2.7mM KCl,10mM Na2HPO4,2mM KH2PO4,pH7.4)で2回洗浄し、組換えPE標識F(ab´)2抗hIgG Fc(1:200,Life Technologies,米国,Cat#:H10104)とともに4℃で30分インキュベートした。細胞はPBSで1回洗浄し、FACS caliburフローサイトメーター(BD Bioscience)でLAG-3-hIgの結合を試験した。ブランクウェルにはhLAG-3-hIgを添加しないで、ネガティブコントロールとしてhLAG-3-hIg with Hel(LifeTein,米国,Cat#:LT12031)を用いた。ポジティブコントロールとして、参照抗体BMS-986016(BMSと呼ばれる、ヒトIgG4(S228P)/カッパ定常領域を持つEP2320940B1に開示されたアミノ酸配列を用いて調製)+hLAG-3-hIgが使用された。
【0166】
その結果を
図1にまとめたが、BMSはDaudi細胞上のMHC II複合体へのLAG3融合タンパク質の結合を完全に阻害できることを示す。試験したマウス抗hLAG3抗体のうち、LAG3-MHC II結合を完全に阻害したものは全部で12クローンであった。
[実施例4 マウス抗LAG3モノクローナル抗体の精製とアイソタイプの決定]
【0167】
LAG3-MHCII阻害活性を有する12個のクローンを選択し、さらなる特性評価を行った。まず、モノクローナルマウス抗体の精製を行った。簡潔に説明すると、1%HT(Gibco、Cat#:11067-030)が添加された100mlの新鮮な無血清培地(Gibco、米国、Cat#:12045-076)を各々が有するT175細胞培養フラスコにおいて各サブクローンのハイブリドーマ細胞を培養させた。37℃の5%CO2を有するインキュベータに細胞培養液を10日間維持した。細胞培養液を採取し、次に3500rpmで5分間遠心分離し、次に0.22μm膜を用いた濾過を行い、細胞残屑を除去した。次に、前平衡タンパク質A親和性カラム(GE、米国、Cat#:17040501)を使用してモノクローナルマウス抗体を精製し、溶出緩衝液(20mMクエン酸、pH3.0~pH3.5)で溶出した。次に、抗体をPBS緩衝液(pH7.0)で維持し、NanoDrop器具を使用して、その濃度を決定した。
【0168】
精製された各抗体のアイソタイプは、製造元のマニュアルにしたがって、Rapid Isotyping Kit with Kappa and Lambda-Mouse(Thermal、米国、Cat#:26179)およびMouse Monoclonal Antibody Isotyping Reagents(Sigma、米国、Cat#:IS02-1KT)を使用することによって決定された。
【0169】
101F4を含むほとんどのクローンはIgG1/kappa抗体を産生し、134G10はIgG2a/kappa抗体を産生した。134G10および101F4の発現力価はそれぞれ、8.6mg/Lおよび3.4mg/Lであった。
[実施例5 ヒトおよびサルのLAG3に結合した精製マウス抗LAG3モノクローナル抗体]
【0170】
精製されたマウス抗LAG3モノクローナル抗体は、まずELISAアッセイにより、リコンビナントヒト、サル、マウスLAG3タンパク質との結合能を試験した。
【0171】
ELISAプレートに500ng/ml human LAG3(ECD)-his(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H08H)50μlを4℃にて一晩コーティングした。ウェルを200μlの阻害緩衝液(1%BSA、1%ヤギ血清、0.05% Tween(登録商標)20を含むPBS)で室温で2時間阻害して、次に、連続希釈した抗LAG3抗体(40μg/mlから開始)を各ウェルに100μl加え、室温で1時間インキュベートした。プレートをPBST(PBS+0.05%Tween(登録商標)20)で3回洗浄し、5000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG-HRP(Sigma,米国,Cat#:A9309-1ml)を加え、室温で1時間インキュベートした。新たに調製したUltra-TMB(BD、米国、Cat#:555214)を用いて、プレートを室温で5分間開発した。SpectraMaxR i3X(登録商標)(Molecular Devies、米国)で450nmの吸光度を読んだ。
【0172】
さらに、サルまたはマウスのLAG3に対する12種類のLAG3 mAbsの種間交差反応性を直接ELISA法で試験した。簡潔に説明すると、50μlの500ng/mlのサルLAG3(ECD)-hFc(ACRO,中国,Cat#:LA3-C5252)またはマウスLAG3-his(Sino Biological,中国,Cat#:53069-M08H)を96ウェルELISAプレート上にコーティングし、次に、100μlずつ連続希釈した抗LAG3抗体(40μg/mlから開始)とインキュベートを行った。次に、HRPを結合したヤギ抗マウスIgG(Sigma,米国,Cat#:A9309-1ml)を添加した。ポジティブコントロールとしてBMS-986016を使用した。
【0173】
代表的な2つの抗体と参照抗体のEC50値を表3にまとめた。データによると、本開示の12種類の抗体すべてがヒトおよびサルのLAG3に結合したが、いずれもマウスのLAG3とは交差反応がないことが示された。
【0174】
[表3:代表的なマウス抗LAG3抗体とヒト、サル、またはマウスLAG3との結合能]
【表3】
[実施例6 HEK293A細胞上に発現させたヒトおよびサルLAG3タンパク質に結合させたマウス抗LAG3モノクローナル抗体]
【0175】
HEK293A細胞上に発現したヒト、サルおよびマウスのLAG3タンパク質に対する抗LAG3抗体の結合能を決定するために、実施例1で生成したヒト、サルおよびマウスのLAG3をそれぞれ安定的に過剰発現させたHEK293A細胞を用いてFACSによる細胞ベースの結合アッセイを実行した。簡潔に説明すると、50μlのPBS緩衝液に入れた105個のHEK293A細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種し、次に50μlの連続希釈した抗LAG3抗体(5倍希釈、40μg/mlから開始)を添加した。4℃で1時間インキュベートした後に、プレートをPBSTで3回洗浄した。次に、500倍に希釈したAPC結合したヤギ抗マウスIgG(BioLegend,米国,Cat#:405308)をプレートに添加した。4℃で1時間インキュベートした後に、プレートをPBSで3回洗浄し、次に、FACSマシン(BD)を使用して細胞蛍光を観察した。
【0176】
101F4、134G10および参照抗体のEC50値を以下の表4にまとめた。データによると、本開示のマウス抗LAG3モノクローナル抗体は、すべてがヒトおよびサルのLAG3に対して高い結合能を示したが、マウスLAG3には結合しないことが示された。
【0177】
[表4:マウス抗LAG3抗体とヒト、サル、マウスLAG3との結合活性]
【表4】
[実施例7 エピトープビニング]
【0178】
エピトープビニングのために、競合ELISAアッセイを実行した。簡潔に説明すると、96ウェルプレートに5μg/mlのBMSを1ウェルあたり50μlでコーティングし、4℃で一晩静置した。200μlの阻害緩衝液(1%BSA、1%ヤギ血清および0.05%のTween(登録商標)20を含むPBS)を用いて、ウェルを室温で2時間阻害した。Human LAG3(ECD)-his(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H08H),0.5μg/ml,1ウェルあたり50μlをプレートに加え、さらに室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートをPBSTで3回洗浄した後、100μlの1μg/mL抗LAG3抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。ELISAプレートをPBSTで3回洗浄し、次に1:20000に希釈した抗マウスFc-HRP(Sigma,米国,Cat#:A9309-1MC)を加え、室温で1時間インキュベートした。プレートはPBSで3回洗浄し、新たに調製したUltra-TMB(Huzhou Yingchuang,中国,Cat#:TMB-S-003)で5分間、室温で開発した。SpectraMaxマイクロプレートリーダ(Molecular Devices、米国、SpectraMaxR i3X)で450nmの吸光度を測定した(OD450)。
【0179】
101F4を含む5つのマウス抗体は、参照抗体であるBMSと抗原結合において競合し、これらの抗体とBMSは同一または類似のエピトープに結合することが示された。134G10を含む残りの抗体は、抗原結合において参照抗体と競合せず、これらの抗体はBMSと比較して異なるエピトープに結合していることが示された。
[実施例8 精製マウス抗LAG3抗体は、ヒトLAG3とDaudi細胞上のMHC IIとの結合を抑制した。]
【0180】
MHC II分子へのLAG3結合を阻害するマウス抗LAG3抗体の能力を、実施例3に記載したようにFACSによって試験した。
【0181】
簡潔に説明すると、PBSで連続希釈したマウス抗LAG3抗体50μl(5倍希釈、最高濃度40μg/ml)を、10μg/mlのhLAG-3-hIg融合タンパク質(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H02H)50μlとともに室温で20分間インキュベートした。次に、混合物を加え、100μlのPBSバッファ中で2×105のDaudi細胞とともに4℃で30分間インキュベートした。細胞をペレット化(3分間、400xg)し、1×PBSバッファで2回洗浄し、リペレット化した後、リコンビナントPE標識F(ab´)2抗hIgG Fc(1:200,Life Technologies,米国,Cat#:H10104)を加え、4℃、30分でインキュベートし、1×PBSで1回洗浄した。LAG-3-mIg結合の解析は、FACSフローサイトメーター(BD Bioscience社製)を用いて行った。ポジティブコントロールとしてBMSを使用した。
【0182】
データによると、本開示の抗体はすべてがLAG3のMHC II分子への結合を阻害することが示された。101F4、134G10および参照抗体のEC50値は以下の表5にまとめられており、134G10のEC50はBMSのそれより低い値であった。
【0183】
[表5:LAG3-MHCII相互作用に対するマウス抗LAG3抗体の阻害能力]
【表5】
[実施例9 マウス抗LAG3抗体によるT細胞活性化促進効果]
【0184】
APCを媒介するT細胞活性化に対するマウス抗LAG3抗体の役割を、混合リンパ球反応(MLR)アッセイによって検討した。
【0185】
簡潔に説明すると、健康なヒトドナーの血液試料からPBMCを密度勾配遠心分離によって採取して、RPMI1640培地に再懸濁させた。
PBMCを37℃インキュベータで2時間培養し、容器壁に付着した細胞を単離単球として採取した。単球は、10%FBS添加RPMI1640培地中で、100ng/mlの組換えヒトGM-CSF(R&D、米国、Cat#:7954-GM)と100ng/mlの組換えヒトIL-4(R&D、米国、Cat#:6507-IL)とともにプレート培養された。3日後、培養培地の半分を新鮮培地に交換した。培養6日目に、培養培地を、100ng/mlの組換えヒトGM-CSF、100ng/mlの組換えヒトIL-4、10ng/mlのrhTNF-α(R&D,米国,Cat#210-TA-100)、1000U/mlのrhIL-6(R&D、米国、Cat#7270-IL-025)、1μg/mlのPGE2(TOCRIS,米国,Cat#363-24-6)および10ng/mlのIL-1β(R&D、米国、Cat#210-LB-025)を含む新鮮培地で置き換えた。この細胞をさらに2日間培養して、樹状細胞(DC)を取得した。
【0186】
別の健康なヒトドナーの血液試料からPBMCを密度勾配遠心分離によって集め、次にRPMI1640培地に再懸濁させた。CD4+T細胞は、Invitrogen Dynabeads Untouched Human CD4+ T cells isolation kit(Thermal Fisher Scientific,米国,Cat#:11346D)を用いて、製造元の指示にしたがってPBMCから分離された。
【0187】
96ウェルU底プレート中の100μl/ウェル完全培地(90%DMEM+10%FBS)中に、最初のドナーからのDCは2.5×104細胞/ウェルで播種し、2番目のドナーからのCD4+T細胞は5×104細胞/ウェルで播種した。抗LAG3抗体(最終濃度100μg/ml)、またはコントロール抗体Hel(LifeTein,米国,Cat#:LT12031)を1ウェルあたり50μlを細胞に添加し、さらにプレートを72時間培養した。培養上清中のIFN-γ濃度は、IFN-γ定量キット(R&D、米国、Cat#:SIF50)を用いたELISA法により、製造元のプロトコルにしたがって決定した。アッセイは3連で行われた。ブランクウェルには単離したCD4+T細胞のみを入れ、DC+CD4+T細胞およびHelをネガティブコントロールとして使用した。DC+CD4+T細胞および100μg/mlのBMSをポジティブコントロールとして使用した。
【0188】
図2に示すように、101F4および134G10を含む6つの抗体は、Hel制御と比較して、T細胞による強化IFN-γの分泌を促進し、最も高いIFN-γレベルが、マウス抗LAG3抗体101F4および134G10で治療したウェルで検出された。
[実施例10 101F4および134G10抗体のキメラ抗体の発現と精製]
【0189】
さらに、101F4および134G10抗体について検討した。2つの候補の重鎖/軽鎖可変領域配列を、文献(Juste等、(2006)、Anal Biochem.1、349(1):159-61)に記載されているように、退化プライマーのセットを用いた標準的なPCR法を用いてハイブリドーマ細胞からクローニングし、次に、シーケンシングした。配列ID番号と配列を表1および表6にまとめた。重鎖可変領域+ヒトIgG4定常領域(変異S228Pあり)をエンコードする配列、または軽鎖可変領域+ヒトカッパ定常領域(それぞれ配列番号35および36に記載の重鎖定常領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列)をエンコードする配列を、XhoIおよびBamHI制限部位間でpCDNA3.1(Invitrogen,Carlsbad,米国)に挿入して、発現ベクターを構築した。ここで、重鎖可変領域のC末端をヒトIgG4定常領域のN末端に連結し、軽鎖可変領域のC末端をヒトカッパ定常領域のN末端に連結した。
【0190】
発現ベクターは、HEK-293F細胞(Cobioer、NJ、中国)にトランスフェクトされたPEIである。具体的には、HEK-293F細胞をFree StyleTM(登録商標)293発現培地(Gibco,Cat#:12338-018)で培養し、ポリエチレンイミン(PEI)を用いて発現ベクターをDNAでトランスフェクトさせた。PEIの比率は1:3、細胞培地1mmあたり1.5μgのDNAを導入した。トランスフェクトされたHEK-293F細胞を、120RPMで振とうしながら、5%CO2下で、37℃でインキュベータにおいて培養した。10-12日後、培養上清を採取し、実施例4に記載したようにして上清からモノクローナル抗体を精製した。本明細書では、キメラ抗体を「XX-CM」とも呼ぶ。
[実施例11 HEK293A細胞上に発現させたヒトおよびサルLAG3タンパク質に結合したキメラ抗LAG3モノクローナル抗体101F4-CMおよび134G10-CMの生成]
【0191】
キメラ抗LAG3抗体101F4-CMおよび134G10-CMを、実施例6に記載のプロトコルに従い、HEK293A/ヒトLAG3細胞、HEK293A/rh LAG3細胞およびHEK293A/マウスLAG3細胞への結合能力をそれぞれ特性評価した。
【0192】
図3に示すように、2つのキメラ抗体は、ヒトLAG3(
図3のA)およびサルLAG3(
図3のB)の両方に対して高い結合能を有するが、マウスLAG3(
図3のC)には結合しなかった。
[実施例12 例示的な抗LAG3抗体のヒト化]
【0193】
上記の特性評価とアッセイに基づき、101F4と134G10はヒト化され、さらに検討された。マウス101F4および134G10抗体のヒト化は、米国特許第5,225,539(本明細書に参照として組み込まれる)および以下に記載のように、十分に確立されたCDR-移植方法を用いて実行された。
【0194】
マウス101F4、134G10抗体のヒト化用アクセプターフレームワークを選択するために、101F4、134G10の軽鎖、重鎖可変領域配列をNCBIウェブサイトのヒト免疫グロブリン遺伝子データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)とブラストさせた。101F4および134G10と最も相同性が高いヒト生殖細胞系のIGVHおよびIGVKをヒト化のためのアクセプターとして選択した。101F4では、ヒト重鎖アクセプターはIGHV1-24*01が選択され、ヒト軽鎖アクセプターはIGKV1-33*01が選択された。134G10では、ヒト重鎖アクセプターはIGHV3-21*01が選択され、ヒト軽鎖アクセプターはIGKV4-1*01が選択された。
【0195】
CDRループ構造を支援する重要な役割を果たしていると考えられるフレームワーク残基を特定するべく、101F4と134G10の可変ドメインについ3次元構造のシミュレートを行い、これに基づいてヒト化抗体における逆突然変異を設計した。
【0196】
上記の構造モデリングに基づき、101F4の重鎖について5つの潜在的な逆突然変異(M70L、E72A、V24A、V68A、T98G)が特定され、101F4の軽鎖について4つの逆突然変異(T69Q、F71Y、M4I、Y36F)が特定された。そして、134G10の重鎖には2つの潜在的な逆突然変異(G44RとS49G)が特定され、134G10の軽鎖には3つの逆突然変異(D9S、G106A、S69T)が特定された。
【0197】
表1に示すように、101F4と134G10の両方について、3つのヒト化重鎖可変領域と3つのヒト化軽鎖可変領域が設計され、それぞれ合計5つのヒト化抗体が生成された。ヒト化抗体の配列と配列ID番号を表1および表6にまとめた。
【0198】
重鎖可変領域+ヒトIgG4定常領域をエンコードする配列(変異S228Pあり)、および軽鎖可変領域+ヒトカッパ定常領域をエンコードする配列(それぞれ、配列番号35および36に記載される重鎖定常領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列)を化学的に合成した後、EcoR I / Xho IおよびCla I / Hind III制限部位を用いてGS発現ベクター(Invitrogen、米国)にそれぞれサブクローニングし、重鎖可変領域のC末端をヒトIgG4定常領域のN末端に連結し(突然変異S228Pあり)、軽鎖可変領域のC末端をヒトカッパ定常領域のN末端に連結した。すべての発現構築をDNA配列によって確認した。EXPiCHO発現系(Invitrogen,米国)に重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターをトランスフェクトし、実施例10に記載のプロトコルに従い、5個のヒト化101F4抗体と5個のヒト化134G10抗体を一時的に発現させた。ヒト化抗体は、実施例4に記載したように精製した。
[実施例13 ヒト化101F4および134G10抗体の特性評価]
【0199】
ヒト化101F4および134G10抗体を、実施例6に記載のプロトコルに従い、HEK293A/ヒトLAG3細胞、HEK293A/rh LAG3細胞、およびHEK293A/マウスLAG3細胞への結合の能力について特性評価した。結果を
図4に示す。
【0200】
これらのヒト化抗体は、実施例8のプロトコルにしたがって、Daudi細胞上に発現したMHC IIへのヒトLAG3の結合を阻害する能力についても試験された。そのデータを
図5に示した。
【0201】
キメラおよびヒト化101F4および134G10抗体のT細胞応答を刺激する能力は、実施例9のプロトコルに従い、いくつかの改変を加えて、MLRアッセイによって決定した。簡潔に説明すると、1人の健康なヒトのドナーの血液試料からPBMCを密度勾配遠心分離によって集め、RPMI1640培地に再懸濁させた。PBMCを37℃のインキュベータで2時間培養し、容器壁に付着した細胞を単離単球として採取した。単球は、10%FBS添加RPMI1640培地中で、100ng/ml組換えヒトGM-CSF(R&D、米国、Cat#:7954-GM)および100ng/ml組換えヒトIL-4(R&D、米国、Cat#:6507-IL)とともに24ウェルプレート中で培養された。3日後、培地の半分を新鮮培地に交換した。培養6日目に、培養培地を、100ng/mlの組換えヒトGM-CSF、100ng/mlの組換えヒトIL-4、10ng/mlのrhTNF-α(R&D,米国,Cat#210-TA-100)、1000U/mlのrhIL-6(R&D、米国、Cat#7270-IL-025)、1μg/mlのPGE2(TOCRIS、米国、Cat#363-24-6)および、10ng/mlのIL-1β(R&D,米国,Cat#210-LB-025)を含む新鮮培地で置き換えた。この細胞をさらに2日間培養してDCを生成した。次に、別の健康なヒトドナーの血液試料からPBMCを密度勾配遠心分離によって採取し、次にRPMI1640培地に再懸濁した。CD4+T細胞は、Invitrogen Dynabeads Untouched Human CD4+ T cells isolation kit(Thermal Fisher Scientific,米国,Cat#:11346D)を用いて、製造元の指示にしたがってPBMCから分離された。最初のドナーからのDCは2.5×104細胞/ウェルで播種され、2番目のドナーからのCD4+T細胞は5×104細胞/ウェルで、96ウェルU底プレートに100μlの完全培地(90%DMEM+10%FBS)中に播種された。抗ヒトPD-1抗体(ニボルマブ、α-PD 1とも呼ばれ、米国特許第8,008,449号明細書に開示されたアミノ酸配列を用いて調製されたものであって、ヒトIgG4/カッパ定常領域を有する、1ウェルあたり100μl、最終濃度100μg/ml)を細胞に添加し、さらにプレートを5日間培養した。細胞をPBSで3回洗浄し、次にα-PD 1(1μg/ml)を含む完全培地100μlと、抗LAG3抗体(100μg/ml、20μg/ml、または4μg/mlの濃度)またはコントロール抗体Hel(LifeTein、米国、Cat#:LT12031)を含む完全培地を100μl添加した。このプレートをさらに72時間培養した。IFN-γ濃度は、IFN-γレベル判定キット(R&D、米国、Cat#:SIF50)を用いて、製造元のプロトコルにしたがってELISA法により決定した。アッセイは3連で行われた。ポジティブコントロールとしてBMSを使用した。
【0202】
図4に示すように、ヒト化134G10抗体は対応するキメラ抗体と同様の結合活性を示し、ヒト化101F4抗体間では結合活性の差が存在した。
【0203】
図5に示すように、すべてのヒト化101F4抗体および134G10抗体は、MHC IIへのLAG3結合に対して、それぞれのキメラ抗体と同様の阻害能力を有しており、BMSのそれと比較して同等またはそれ以上の阻害能力を有していた。
【0204】
図6に示すように、すべてのヒト化101F4抗体および134G10抗体は、αPD-1前処理したT細胞活性化を促進し、IFN-γ値はBMS群と同等またはそれより高かった。101F4H2L2および134G10H2L3抗体は、最も優れたT細胞応答促進効果を示した。
[実施例14 ファージディスプレイによるヒト化抗体101F4H2L2の親和性成熟]
【0205】
本明細書における抗体の結合活性/親和性をさらに改善させるため、親和性成熟のためにファージディスプレイ技法により101F4H2L2を選択した。簡潔に説明すると、101F4H2L2の重鎖および軽鎖CDRにおいて、結合活性/親和性に重要と思われる残基を特定するために、3次元構造モデリング・シミュレーションを実行した。特定されたCDR残基は、特別に設計されたプライマーと部位指向性変異誘発の標準プロトコルを用いたPCRにより、重鎖/軽鎖変異導入に使用された。次に、ファージディスプレイライブラリーを構築し、hLAG3-hFc結合アガロースビーズを用いてバイオパニングを受けた。3回のスクリーニングと濃縮の後、高結合員を選択し、採取し、次に細菌細胞に感染させるために使用した。細菌のコロニーを持ち上げ、96ウェルプレート上で培養させた。細胞ベースのELISAを実行し、後にシーケンシングされた高結合員を特定した。重鎖および軽鎖のCDRの良性変異を特定し、次にそれを用いて新しいファージディスプレイライブラリーを構築し、さらに3回のバイオパニングを受けた。最も結合力の高い101F4H2L2-8が特定されたが、これは親クローン101F4H2L2と比較して、VH CDR3領域に3つの変異、VL CDR3領域に1つの変異を含んでいた。次に、全長のIgG4(S228P)/kappa抗体としてHEK293F細胞で発現させた。
【0206】
101F4H2L2および101F4H2L2-8のヒトLAG3への結合活性を、実施例5のプロトコルにしたがって、ELISA法により試験した。ヒトLAG3、rhLAG3またはマウスLAG3を発現するHEK293細胞に対するこれら2つの抗体の結合活性を、実施例6に記載のプロトコルに従いFACSで試験した。さらに、活性化したヒトPBMCに対する2つの抗体の結合活性をFACSで調査した。簡潔に説明すると、ヒトPBMCを密度勾配遠心分離で採取し、次に完全培地(RPMI培地+10%FBS+ヒトIL-2 (20 IU/ml, R&D,Cat#:202-IL)+ DynabeadsTM Human T-Activator CD3/CD28(Gibco,Cat#:11132D))に37℃、5%CO2の加湿インキュベータ下で2日間再懸濁させて活性化T細胞を取得した。次に、細胞を採取し、実施例6に記載したようにFACSで試験した。
【0207】
その結果を
図7に示したが、101F4H2L2-8は、101F4H2L2と比較して、遊離および細胞表面発現ヒトおよびサルLAG3タンパク質に対する結合活性が著しく向上していることが示唆された。
[実施例15 ヒトおよびサルのLAG3に対する例示的なキメラまたはヒト化抗LAG3抗体のSPRによる結合親和性]
【0208】
キメラ抗体とヒト化抗体は、BIAcoreTM8K器具(GE Life Sciences)を用いて、ヒトとサルのLAG3タンパク質に対する結合親和性を試験した。簡潔に説明すると、ヒトLAG3(ECD)-hisタンパク質(Sino Biological,中国,Cat#:16498-H02H)、または、サルLAG3(ECD)-mFcタンパク質(ACRO,中国,Cat#:LA3-C52A0)をCM5バイオセンサーチップ(GE Life Sciences,Cat#:BR-1005-30)に100-200応答単位(RU)で結合し、反応しなかった群は1Mエタノールで阻害をした。0.3μMから10μMの濃度範囲で連続希釈した抗体をSPRランニングバッファ(HBS-EPバッファ、pH7.4、GE Life Sciences、米国、Cat#:BR-1006-69)に30μL/分で注射した。結合容量は、空白制御のRUを減算して算出した。1対1のラングミュア結合モデル(BIA Evaluation Software、GE Life Sciences)を使用して会合速度(ka)および解離速度(Kd)を算出した。平衡解離定数KDは、kd/ka比として算出した。
【0209】
BIAcore
TMで測定したそれらのキメラ抗体またはヒト化抗体のヒトLAG3に対する結合親和性曲線を
図8に示すが、101F4-CM、101F4H2L2、101F4H2L2-8、134G10-CM、および134G10H2L3に対するKa値はそれぞれ、4.03E+05、9.60E+05、1.04E+05、9.39E+04、1.66E+05であり、これらの抗体のK
d値はそれぞれ、3.35E-04、3.98E-01、2.14E-04、6.92E-05、4.35E-05であり、これらの抗体のK
D値はそれぞれ、8.33E-10、4.14E-07、2.05E-09、7.37E-10、2.62E-10である。親和性成熟化した抗体101F4H2L2-8は、親抗体101F4H2L2と比較して、ヒトLAG3に対して著しく高い結合親和性を有していた。
【0210】
BIAcore
TMで測定した抗体101F4H2L2、101F4H2L2-8および134G10H2L3のサルLAG3への結合親和性曲線を
図9に示すが、101F4H2L2、101F4H2L2-8および134G10H2L3に対するKa値はそれぞれ、3.94E+06、1.62E+05、および1.23E+07であり、101F4H2L2、101F4H2L2-8および134G10H2L3のK
d値はそれぞれ、1.92E-03、1.59E-04および2.46E-06であり、101F4H2L2、101F4H2L2-8および134G10H2L3のK
D値はそれぞれ、4.88E-10、9.80E-10および2.01E-13である。データによると、101F4H2L2-8のサルLAG3に対する結合親和性はヒトLAG3に対するものと同等であり、134G10H2L3のサルLAG3に対する結合親和性はヒトLAG3に対するものより高いことが示された。
[実施例16 親和性成熟化抗体によるT細胞活性化促進効果]
【0211】
ヒト化抗体101F4H2L2および101F4H2L2-8(親和性成熟あり)のT細胞応答を刺激する能力を、実施例13のプロトコルにしたがって、MLRアッセイにより決定した。ポジティブコントロールとしてBMSを使用した。
【0212】
実施例14の親和性成熟データに基づき、101F4H2L3に対して上記のようにVH CDR3領域に3つのアミノ酸変異とVL CDR3領域に1つのアミノ酸変異を有する101F4H2L3-8を構築し、101F4H3L3に対して上記のようにVH CDR3領域に3つのアミノ酸変異とVL CDR3領域に1つのアミノ酸変異を有する101F4H3L3-8を構築した。101F4H2L3-8および101F4H3L3-8を、実施例10に記載したように全長、IgG4(S228P)/カッパ抗体として調製し、実施例4に記載したように精製し、実施例13に記載したようにT細胞活性化促進に対するそれらの能力について試験した。ポジティブコントロールとしてBMSを使用した。
【0213】
図10に示すように、親和性成熟の有無にかかわらず、すべてのヒト化抗体は抗PD-1前処理T細胞活性化を促進し、抗体101F4H2L2、101F4H2L2-8、101F4H2L3-8および101F4H3L3-8はBMSと比較して同等またはそれ以上の促進能力を示した。101F4H2L2-8は最も高い促進活性を示し、特に高濃度では101F4H2L2よりもIFN-γの分泌をより多く誘導した。
[実施例17 ヒト化抗体はin vivoで抗癌効果を発揮した。]
【0214】
ヒトIgG4(S228P)/カッパ定常領域を有する抗LAG3抗体101F4H2L2、101F4H2L2-8および134G10H2L3のin vivo抗癌活性を、ヒトLAG3(GemPharmatech Co.Ltd,中国)をトランスジェニックマウスのMC38マウス結腸腺癌に移植することにより確立した動物モデルにおいて検討した。ポジティブコントロールとして、抗LAG3抗体MK-4280(ヒトIgG4(S228P)/カッパ定常領域とWO2016/028672Alに開示されたアミノ酸配列を用いて調製)を用いた。
【0215】
マウスは1×106個のMC38細胞を片方の脇腹に皮下注射し、0日目に1群に10匹のマウスで5群にランダムに振り分けた。次に、これらの動物に、101F4H2L2(10mg/kg)、101F4H2L2-8(10mg/kg)、134G10H2L3(10mg/kg)、MK-4280(10mg/kg)およびPBSをそれぞれ0、4、7、11、14および18日目に、i.p.投与した。
【0216】
101F4H2L2-8および134G10H2L3のin vivo抗癌効果は、さらにヒトPD-1×LAG3ダブルノックインマウス(GemPharmatech Co.Ltd、中国)で試験した。ヒトIgG4(S228P)/カッパ定常領域を有するBMS-986016をポジティブコントロールとして使用した。簡潔に説明すると、マウスに1×106個のMC38細胞を片方の脇腹に皮下注射し、0日目に1群に10匹のマウスで4群にランダムに振り分けた。次に、これらの動物に101F4H2L2-8(10mg/kg)、134G10H2L3(10mg/kg)、BMS(10mg/kg)およびPBSをそれぞれ0、4、7、11、14および18日目にi.p.投与した。
【0217】
腫瘍の大きさとマウス体重を経時的に測定した。腫瘍の大きさ(幅と長さ)をキャリパーで計測し、TV=(長さ×幅
2)/2という式で腫瘍体積を算出した。腫瘍体積の変化を
図11および
図12に示し、群間の腫瘍体積の差を一元配置分散解析により解析した。
【0218】
25日目にマウスを犠牲にした。腫瘍を分離して重量を測定し、コラゲナーゼを含むハンクス緩衝液に配置した。次に、腫瘍を小さい片に切断し、コラゲナーゼを有するHanks緩衝液において、穏やかに振とうしながら37℃で30分間インキュベートした。次に、コラゲナーゼを不活性化して免疫細胞の生存を維持するために10mlのRPMI1640+10%のFBSを各試料に添加した。試料を70μmの細胞フィルタ膜(Corning、Cat#:352350)に通し、新しい管に配置した。試料をペレット化し、PBSF緩衝液(PBS+2%FBS)に1*107 cells/mlの密度で再懸濁させた。試料をPBSF緩衝液で2回洗浄後、1μg/ml抗CD45(Brilliant Violet 785TM anti-mouse CD45抗体、 Biolegend、米国、Cat#:103149)、1μg/ml抗CD8(APC anti-mouse CD8a Antibpdy、Biolegend、米国、Cat#:100712)および1μg/ml抗CD3(FITC anti-mouse CD3抗体、Biolegend、米国、Cat#:100203)添加した。結果として生じる混合物を4℃で30分インキュベートした。細胞はPBSFバッファで2回洗浄し、FACSマシン(BD)で解析した。
【0219】
図11および
図12に示すように、抗体101F4H2L2-8および134G10H2L3は、ヒトLAG3を有するトランスジェニックマウスの腫瘍増殖を著しく抑制し、試験した抗体の中で最も優れた抗癌効果が認められた。
【0220】
図13に示すように、抗体101F4H2L2-8および134G10H2L3は、ヒトLAG3を導入したトランスジェニックマウスの腫瘍浸潤CD8
+T細胞を著しく増加させることがわかった。
[実施例18 ヒト化抗体による抗PD1抗体のin vivo抗癌活性の強化]
【0221】
ヒトLAG3(GemPharmatech Co.Ltd.、中国)を導入したトランスジェニックマウスにMC38マウス結腸腺癌を移植して確立した動物モデルを用いて、抗体101F4H2L2-8または134G10H2L3と抗PD-1抗体(InVivoMAb anti-mouse PD-1(CD279),Cat#BE0146、米国)の相乗効果(in vivo抗癌効果)を検討した。マウスは1×106個のMC38細胞を片方の脇腹に皮下注射し、0日目に1群に10匹のマウス、8群にランダムに振り分けた。4群の動物に101F4H2L2-8(10mg/kg)、抗PD-1抗体(1mg/kg)、101F4H2L2-8+抗PD-1(10mg/kg+1mg/kg)、PBSをそれぞれ0、4、7、11、14、18日目にi.p.投与した。残りの4群の動物には、0、4、7、11、14、18日目にそれぞれ134G10H2L3(10mg/kg)、抗PD-1抗体(2.5mg/kg)、134G10H2L3+抗PD-1(10mg/kg+2.5mg/kg)およびPBSをi.p.投与した。
【0222】
腫瘍の大きさとマウス体重は経時的に観察した。腫瘍の大きさ(幅と長さ)をキャリパーで計測し、TV=(長さ×幅2)/2という式で腫瘍体積を算出した。抗体投与群における腫瘍体積が3.5cm3に到達する前に実験を終了した。群間の腫瘍体積の差は一元配置分散解析で解析した。
【0223】
その結果を
図14に示す。データによると、各群のマウスに個体差はあるものの、101F4H2L2-8および134G10H2L3は、溶媒群と比較して明らかに腫瘍増殖を抑制することが確認された。抗LAG3抗体と抗PD-1抗体を組み合わせて使用した場合、単一抗体療法よりも優れた抗癌効果が得られた。
【0224】
いくつかの例示的な抗体の重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表6にまとめた。
【0225】
【0226】
このように、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明の思想または範囲から逸脱することなく、その多くの明白な変形が可能であるので、上記の段落によって定義された発明は、上記の説明に記載された特定の詳細に限定されないことが明らかに理解されるものと思われる。
[他の可能な項目]
[項目1]
LAG3に結合し、VH CDR1領域、VH CDR2領域、およびVH CDR3領域を含む重鎖可変領域と、VL CDR1領域、VL CDR2領域、およびVL CDR3領域を含む軽鎖可変領域とを含み、前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域、前記VH CDR3領域、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域、および前記VL CDR3領域は、(1)それぞれ、配列番号 1、2、3、5、6および7、(2)それぞれ、配列番号1、2、4、5、6および8、または、(3)それぞれ、配列番号21、22、23、24、25および26に記載されるアミノ酸配列を含む 、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
[項目2]
前記重鎖可変領域が、配列番号9、10、11、12、13、14、27、28、29または30に記載のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目3]
前記軽鎖可変領域が、配列番号15、16、17、18、19、20、31、32、33または34に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目4]
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域が、(1)それぞれ、配列番号9および15、(2)それぞれ、配列番号10および16、(3)それぞれ、配列番号11および17、(4)それぞれ、配列番号11および19(5)それぞれ、配列番号12および17、(6)それぞれ、配列番号12および19、(7)それぞれ、配列番号13および18、(8)それぞれ、配列番号13および20、(9)それぞれ、配列番号14および20、(10)それぞれ、配列番号27および31、(11)それぞれ、配列番号28および32、(12)それぞれ、配列番号29および33、(13)それぞれ、配列番号29および34、(14)それぞれ、配列番号30および33、または、(15)それぞれ、配列番号30および34に記載のアミノ酸配列を含む、項目2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目5]
前記重鎖可変領域に連結された重鎖定常領域であるヒトIgG1またはIgG4重鎖定常領域、および/または前記軽鎖可変領域に連結された軽鎖定常領域であるヒトカッパ軽鎖定常領域を有する、項目1から4のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目6]
前記重鎖定常領域が、配列番号35に記載のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖定常領域が、配列番号36に記載のアミノ酸配列を含む、項目5に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目7]
(a)ヒトLAG3と結合する、(b)サルLAG3と結合する、(c)マウスLAG3と結合しない、(d)LAG3-MHC II複合体相互作用を阻害する、(e)T細胞活性化を誘導する、および/または(f)in vivo抗癌効果を提供する、項目1から6のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目8]
マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、項目1から7のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目9]
項目1から8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分をエンコードする核酸分子。
[項目10]
項目1から8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
[項目11]
さらに、抗癌剤、抗感染症剤、または抗炎症剤を含む、項目10に記載の医薬組成物。
[項目12]
固形腫瘍の治療に使用するための、項目1から8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目13]
前記固形腫瘍が、結腸腺癌、乳癌、腎細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、または胃癌である、項目12に記載の使用のための抗体またはその抗原結合部分。
[項目14]
自己免疫疾患の治療に使用するための、項目1から8のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
[項目15]
前記自己免疫疾患がプラーク乾癬である、項目14に記載の使用のための抗体またはその抗原結合部分。
【配列表】