(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】釣り仕掛け処理具
(51)【国際特許分類】
A01K 97/00 20060101AFI20240618BHJP
A01K 97/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A01K97/00 M
A01K97/00 Z
A01K97/06 501
(21)【出願番号】P 2024024546
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724002667
【氏名又は名称】高島 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】高島 悠佑
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-45985(JP,A)
【文献】特開2003-299429(JP,A)
【文献】特開2002-34415(JP,A)
【文献】登録実用新案第3020414(JP,U)
【文献】実開平7-11173(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/00-97/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取部を備え、釣り仕掛けを巻き取るスプールと、
前記スプールを回転可能に支持する回転軸と、
前記回転軸に連結され、回転操作により前記スプールを回転させるハンドルと、
前記スプールの巻取部よりも径方向外側かつ前記スプールの周方向のいずれかの位置に切断部を備え、前記スプールに巻き取られる釣り仕掛けから釣り針を切り取る針分離用カッターと、
前記スプールおよび前記針分離用カッターより下方に配設され、切り取られた前記釣り針を回収する容器と、
を備えることを特徴とする、釣り仕掛け処理具。
【請求項2】
さらに、前記スプールと前記容器とを連結する支柱と、を備え、
前記支柱は、前記容器との連結部分の支柱調節ねじを緊緩することで、支柱と容器とを連結する軸を中心に回動することができることを特徴とする、請求項1に記載の釣り仕掛け処理具。
【請求項3】
前記容器が磁石を備えることを特徴とする、請求項1に記載の釣り仕掛け処理具。
【請求項4】
前記容器が、容器本体と、前記容器本体に嵌合する容器底部とを備え、前記容器底部が着脱可能であることを特徴とする、請求項1に記載の釣り仕掛け処理具。
【請求項5】
さらに、前記切断部は、前記スプールの周方向手前側にある釣り糸の導入口から前記スプールの周方向奥側に行くにつれて狭くなることを特徴とする、請求項1に記載の釣り仕掛け処理具。
【請求項6】
さらに、前記巻取部よりも大径のガイドを前記巻取部の両側に備え、前記ガイドが、巻き取られている釣り糸を切断する刃物を入れるための切込を少なくとも1箇所に備えることを特徴とする、請求項1に記載の釣り仕掛け処理具。
【請求項7】
前記容器はさらに、スプールに巻き付いた釣り糸を切断する糸除去用カッターを備え、
前記糸除去用カッターは、前記スプールの径方向に摺動可能な摺動刃部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の釣り仕掛け処理具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り仕掛け処理具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣りの仕掛けは、釣り針と釣り糸とを備え、これらが大部分を占める。使用後廃棄するに際し、釣り針は燃えないゴミであっても、釣り針に結ばれている釣り糸(ライン)は燃えるごみとして扱う自治体が多い。ごみ回収業者等がけがをする恐れがあるため、釣り針の処分には特に注意が必要である。このため、糸と針は適切に処分する必要がある。
しかしながら、針と糸とをハサミ等で切断し、分離するのは手間がかかるし、危険物である針を一時的にストックする必要もあることから、使用後の仕掛けが適切に分別されるとは限らない。
また近年、釣り場におけるコマセ(釣り餌)や仕掛け(釣り針・糸)の放置が問題となっている。これも上記のように、仕掛けの処理が面倒であることが原因で生じる問題と考えられる。
【0003】
特許文献1には、釣り針を容易に処理することができる発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明によると、複数の枝針が着いた釣り仕掛けから針を連続的に切断分離することはできない。また、切断された釣り針の回収を前提としていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、釣りの仕掛けにおける針と糸の分離が困難な点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、釣りの仕掛けにおける糸と針を簡単に分離でき、針と糸を一時的に別々に保管できる容器を備えることを最も主要な特徴とする。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、例えば以下の手段を採用している。
すなわち、巻取部を備え、釣り仕掛けを巻き取るスプールと、
前記スプールを回転可能に支持する回転軸と、
前記回転軸に連結され、回転操作により前記スプールを回転させるハンドルと、
前記スプールの巻取部よりも径方向外側かつ前記スプールの周方向のいずれかの位置に切断部を備え、前記スプールに巻き取られる釣り仕掛けから釣り針を切り取る針分離用カッターと、
前記スプールおよび前記針分離用カッターより下方に配設され、切り取られた前記釣り針を回収する容器と、
を備えることを特徴とする、釣り仕掛け処理具を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の釣り仕掛け処理具は、釣り針を糸から連続的に分離回収できる。したがって、サビキ仕掛けのように複数の針が付いた仕掛けも効率よく針と糸を分離回収できるという利点がある。また、本発明の釣り仕掛け処理具は釣り糸ワインダーとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】釣り仕掛け処理具1の使用方法を示す図(正面図・縦断面図)である。
【
図3】スプール10とハンドル20を示す図である。
【
図5】針分離用カッター50を上から見た図(上面図)である。
【
図6】回収した釣り針を取り出す方法を示す図である。
【
図7】回収した釣り針を廃棄する様子を示す図である。
【
図9】糸除去用カッター60を備える釣り仕掛け処理具1を示す図である。
【
図11】支柱30を有しない釣り仕掛け処理具1を示す図である。
【
図12】釣り仕掛け処理具1の試作品の写真(背面から撮影)である。
【
図13】針分離用カッター50に釣り仕掛けを引っ掛けている試作品の写真(右側面から撮影)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、同一又は対応する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。
また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
以下、円筒形状を有するものなど、回転するものについては、その回転軸に沿う方向を軸方向と表記する。また、回転軸に垂直に交わる平面において、回転軸から離間する方向を径方向と表記し、回転に沿う方向を周方向と表記する。
【0013】
(実施形態の概要)
本実施形態の釣り仕掛け処理具1の概要について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は本実施形態の釣り仕掛け処理具1の斜視図である。
図1に示すように、釣り仕掛け処理具1は、スプール10、スプール10を回転させるためのハンドル20、釣り仕掛けの釣り針を釣り糸から切断分離するための針分離用カッター50、および切断分離した釣り針を回収するための容器40備える。
図2は、本実施形態の釣り仕掛け処理具1の使用方法を示す図(正面図・縦断面図)である。
スプール10の引掛部131に釣り仕掛けの一端を引っ掛け(
図2(a))、ユーザがハンドル20を回転させると、スプール10がハンドル20とともに回転する(
図2(b))。釣り仕掛けの釣り針と釣り糸は針分離用カッター50によって切断分離され(
図2(c))、釣り針は容器40に、釣り糸はスプール10に巻き取られる(
図2(d))。これにより、ユーザは釣り仕掛けから釣り針のみを効率的に回収することができる。
【0014】
(用語の定義)
ここで、いくつか用語の定義を行う。
「釣り仕掛け」は、釣り糸と、前記釣り糸に結ばれている釣り針と、を備える。釣り仕掛けは先に釣り針を有する複数のエダスを備えていてもよい。エダスは、釣り仕掛けの途中から分岐する釣り糸を意味する。
なお、釣り糸は正確には道糸とハリスがあり、以下の実施形態において釣り糸はハリスを意味するが、ここでは特に区別しない。
「スプール」は、糸巻きである。本実施形態において、釣り糸を巻き取るボビン形状の部品を意味する。本実施形態の説明の都合上、釣り糸を巻きつける部分を巻取部、釣り糸がはみ出さないようガイドとなる部分をガイドと称する。巻取部は円筒形部材であり、ガイドは左記円筒形部材のいわゆるフランジ部分である。
【0015】
(実施形態の詳細)
以下、本実施形態の釣り仕掛け処理具1について、詳細を説明する。
【0016】
(第一の実施形態)
<釣り仕掛け処理具1>
釣り仕掛け処理具1は、釣り針と釣り糸とを有する釣り仕掛けから、釣り針を分離して回収する装置である。
図1に示すように、本実施形態の釣り仕掛け処理具1は、容器底部42が容器本体41から分離可能な容器40と、容器40の上部に支柱30を介して回転可能に支持されたスプール10と、スプール10を回転させるためのハンドル20と、釣り針を釣り糸から切断するため容器40内に取り付けられた針分離用カッター50とを有する。以下各部について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
<スプール10>
スプール10は、釣り針を切断分離処理する釣り仕掛けを巻き取るための糸巻きである。
図3は、スプール10とハンドル20を示す図である。
図3(a)はスプール10を、
図3(b)はハンドル20を示す。また、
図3(c)はスプール10とハンドル20が結合した状態を示す。
図3(a)に示すように、スプール10は、軸穴部11、巻取部12、およびガイド13を同軸状に備える。
【0018】
軸穴部11は、後述するハンドル20の回転軸21と嵌合する穴を備える。
巻取部12は、スプール10の回転により釣り糸を巻き取る部分である。本実施形態の巻取部12は、略円柱形状を備える。
ガイド13は、巻取部12よりも大径の円盤形状を備え、巻取部12を両側から挟むように一対有する。ガイド13は巻取部12に巻き取った糸を軸方向外側に逸脱させないように糸を巻き取るためのガイドである。ガイド13は、巻取部12のフランジ部分と言える。
ガイド13は、引掛部131と切込132とを備える。引掛部131は、スプール10を回転させる前に、釣り仕掛けの仕掛け末端を引っ掛ける部分(例えば、爪のような突起又は切り欠き)である。切込132は、巻き取った釣り糸をハサミで切断するための切込である。詳細は後述する。
【0019】
なお本実施形態において、持ち運び性能を考慮し、スプール10は外径が9cm以下のものを使用している。
【0020】
<ハンドル20>
ハンドル20は、スプール10を回転させるためのハンドルである。
図3(b)に示すように、ハンドル20は、回転軸21および把持部22を備える。
回転軸21は、スプール10を支持し、回転させる軸部材である。
本実施形態の回転軸21は、上述の軸穴部11と嵌合し、スプール10を回転させる。
把持部22は、スプール10を回転させるために、ユーザが把持する部分である。ユーザが把持部22を回転操作することで回転軸21が回転し、回転軸21に回転可能に支持されているスプール10が回転する。
【0021】
本実施形態において、回転軸21の一端側に把持部22が装着されており、回転軸21と把持部22が一体となっている。
【0022】
また本実施形態において、ハンドル20の形状は釣りのリールに用いられる手回しのシングルハンドルと同じ形状である。
【0023】
<支柱30>
支柱30は、後述する容器40とスプール10と連結し、スプール10を支持するための部品である。
図1に示すように、本実施形態において、支柱30の一端は容器40の上部に取り付けられており、支柱30の他端は容器40の上方に延びてハンドルの回転軸を回転可能に支持している。
本実施形態において、支柱30の一端側には支柱調節ねじ31を通すためのねじ穴が開いており、他端側には回転軸21を貫通させるための穴が開いている。
【0024】
支柱調節ねじ31は、支柱30と容器40を連結するとともに、支柱30の角度を調節するためのねじである。
支柱30は、容器40との連結部分の支柱調節ねじ31を緊緩することで、支柱と容器とを連結する軸を中心に回動することができる。
【0025】
図4は、支柱調節ねじ31の機能を示す図である。
図4(a)や(d)の白抜き矢印に示すように、ユーザが支柱調節ねじ31を反時計まわりに回すことで、支柱30と容器40の連結部を緩ませることができる。逆に、当該連結部を時計まわりに回すと連結部を固定することができる。これにより、ユーザは支柱30の角度を変更することができる。
【0026】
図4(a)に示すように、ユーザは支柱調節ねじ31を緩め、スプール10を正面視右側(点線矢印方向)にずらすことができる。
図4(b)や(c)に示すように、スプール10をずらすことで、ユーザは針分離用カッター50に直接、釣り針付きの釣り糸を引っ掛け、切断することができる。
図4(d)に示すように、ユーザは支柱調節ねじ31を緩め、スプール10を正面視←側(点線矢印方向)にずらし、元の位置に戻すことができる。
【0027】
支柱30により、ユーザはスプール10を容器40の上部で回動させることができる。
これにより、ユーザは必要に応じて支柱の位置を変更できる。また、支柱調節ねじ31により支柱の位置をずらすことで、浮き仕掛けのような、仕掛け糸の端に針が付いている仕掛けでも針を回収できるという利点がある。
【0028】
このほか、釣り針がひとつだけのときや、切断できなかった釣り糸がある場合などに有用である。
また、本実施形態の釣り仕掛け処理具1のように、針分離用カッター50がスプール10に隠れているようなときに特に有用である。
【0029】
<容器40>
図1に戻り、容器40は、後述する針分離用カッター50が切断分離する釣り針を回収する容器である。容器40から、ユーザは回収した釣り針を容易に取り出すことができる。
【0030】
本実施形態において、容器40は容器本体41と容器底部42とを備える(後述の
図6参照)。容器底部42は、その底部分に磁石43を備える。また、容器40はその内側上部に後述する針分離用カッター50を備える。
また容器本体41は容器底部42と嵌合し、容器底部42は容器本体41から着脱可能である。
【0031】
本実施形態において、容器40は釣り針の回収容器としての役割のほか、(支柱30がある場合は支柱30を通じて)スプール10の回転軸を支える(軸支する)ことにより、スプール10を支える役割を有する。
【0032】
本実施形態において、容器本体41は支柱30と連結している。
また、容器本体41と容器底部42は嵌合する。つまり、容器本体41と容器底部42は分離可能なように入れ子式になっており、ユーザは容器底部42を取り外すことができる。
【0033】
磁石43は、金属の釣り針を磁力でひきつけて保持するためのものである。
釣り針を吸着するために、本実施形態では例えばマグネットシートなどの薄い磁石43が容器40の底部に取り付けられている。
容器底部42の取り外しや磁石43による釣り針回収の詳細については後述する。
【0034】
図1に示すように、容器40は、スプール10および前記針分離用カッター50よりも下方に配設される。これはスプール10近傍の針分離用カッター50により切断分離され、重力により落下する釣り針を回収するためである。
【0035】
ここで下方とは、容器40の少なくとも一部がスプール10または針分離用カッター50より下にあればよいことを意味し、容器40の全体がスプール10や針分離用カッター50の全体より下になければならないことを意味するものではない。
例えば、後述する第三の実施形態(
図11参照)では、スプール10と容器40の高さ的な位置は重複しているが、スプール10が容器40の上方に突出している。逆に言うと、容器40がスプール10の下方にある。
【0036】
なお本実施形態において、容器40の素材は中の状態がわかるように透明プラスチックからできている。
【0037】
<針分離用カッター50>
針分離用カッター50は、釣り針と釣り糸とを有する釣り仕掛けから、釣り針を切断分離するための部位である。
【0038】
図1や
図2に示すように、本実施形態の針分離用カッター50は、容器40の内部に配設される。
しかしながら、これに限られるものではなく、スプール10近傍で釣り針を切断分離できる場所であればよい。ただし、切断分離する釣り針を容器40で回収するため、容器40の釣り針回収部分である容器底部42よりは上に配設されている。
【0039】
図5は、針分離用カッター50を上から見た図(上面図)である。
図5(a)はスプール10を装着している状態、
図5(b)はスプール10を外した状態を示す。
図5(a)および(b)に示すように、針分離用カッター50はスプール10の下に配設されている。
また
図5(b)に示すように、針分離用カッター50は糸導入部51と切断部52とを備える。
図5を用いて、針分離用カッター50の構造について説明する。
【0040】
図5(a)および
図5(b)に示すように、本実施形態の針分離用カッター50は容器40内部であって、スプール10より下側に配設されている。
【0041】
本実施形態における針分離用カッター50の形状は平板状であり、糸導入部51から切断部52に至る縁部分が(例えばカミソリのような)刃部となっている。
【0042】
図5(b)に示すように、針分離用カッター50の一端(糸導入部51)は広く開口しているが、開口から奥(
図5(b)上側、スプール10の周方向奥側)に向かって徐々に幅が狭くなり、他端(切断部52)では糸の太さと同程度になっている。切断部52は略V字状であるともいえる。
釣り針が結ばれている釣り糸は、
図5(b)の下から上に向かって侵入する。(紙面垂直方向に延びる)釣り糸は、糸導入部51から切断部52に至り、切断される。
【0043】
また
図2に示すように、針分離用カッター50は底面に対して斜め(正面視で右肩上がり)に傾斜する態様で容器40内に取り付けられている。つまり、針分離用カッター50の一端(糸導入部51)側は他端(切断部52)側よりも高い位置に固定されている。
このような構造により、針分離用カッター50は釣り糸からより確実に釣り針を切断できるようになっている。
【0044】
平板状の針分離用カッター50が水平面となす角度を傾斜角とする。この場合、針分離用カッター50がスプール10の下側に配設されている釣り仕掛け処理具1において、傾斜角は0度から60度であることが効率的な釣り糸切断のため好ましく、20度から40度であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態において、針分離用カッター50はスプール10より下側に配設されているが、配設場所はこれに限られない。
つまり、スプール10に巻き取られる釣り仕掛けから釣り針を切り取ることができるのであれば、切断部52はスプール10の周方向のいずれかの位置に配設されていればよい。具体的な位置については後述の変形例で説明する。
また当然、切断部52はスプール10の巻取部12よりも径方向外側にある。遠心力により巻取部12の径方向外側に離れた釣り針近傍の釣り糸を、切断部52が切断するためである。作用及び使用方法は後述する。
【0046】
本実施形態の針分離用カッター50は金属であるが、セラミックなどほかの素材でもよい。
【0047】
針分離用カッター50について小括すると、針分離用カッター50は、スプール10の巻取部12よりも径方向外側かつ前記スプール10の周方向のいずれかの位置に切断部52を備え、スプール10に巻き取られる釣り仕掛けから釣り針を切り取る。
さらに、切断部52は、スプール10の周方向手前側にある釣り糸の導入口(糸導入部51)からスプール10の周方向奥側(切断部52側)に行くにつれて狭くなる。
これにより、エダスのように枝分かれし、複数の釣り針を有するような釣り仕掛けであっても、少ない労力で連続的かつ効率的に釣り針を切断分離することができる。
【0048】
2.作用及び使用方法
図2を参照して釣り仕掛け処理具1を使用して仕掛けを処理する方法を説明する。
まず、仕掛けの端(スナップやサルカンがついている部分)をスプール10にある細い引掛部131に引っ掛ける(
図2(a))。
ユーザがハンドル20を
図2の灰色矢印方向に回すことで、釣り糸がスプール10に巻き付く(
図2(b))。
さらに回すことで、仕掛けの針部分が少し飛び出た状態で容器40内に入る。そして、容器40内にある針分離用カッター50の隙間(切断部52)に釣り針と釣り糸の結び目が引っ掛かる(
図2(c))。
隙間に針が引っ掛かった状態で、ユーザがハンドル20を回すことで、釣り糸が引っ張られると同時に釣り針と釣り糸の結び目が針分離用カッター50の刃に擦れて釣り糸が切れる(
図2(d))。
分離された釣り針は、容器40の底の磁石43にくっつく。
【0049】
スプール10の回転により、釣り針が外周方向(径方向外側)への力(遠心力)を受ける一方で、釣り糸は一端が引掛部131に固定されてスプール10の巻取部に巻き取られるため巻取部周辺に維持される。
これにより、スプール10の巻取部よりも径方向外側かつスプール10の周方向のいずれかの位置(本実施形態ではスプール10の下側)に切断部52を備える針分離用カッター50に釣り糸が切断され、当該釣り糸に結ばれていた釣り針を容器40に回収することができる。
【0050】
次に、容器40の底にたまった釣り針の取り出し方について、
図6および
図7を参照しながら説明する。
【0051】
図6は、回収した釣り針を取り出す方法を示す図である。
図6(a)、
図6(b)ともに、釣り仕掛け処理具1を横に倒した状態の正面図である。
入れ子式となっている容器40の底部を引っ張ることで、容器本体41から容器底部42を分離することができる。
図6(b)に示すように、取り出した容器底部42は凸部を3箇所に備える。
この凸部と容器本体41にある3箇所の凹部が嵌合するため、使用(釣り針の切断分離)時は容器本体41と容器底部42が一体となり、使用後は容器底部42を取り外すことが可能となる。
【0052】
図7は、回収した釣り針を廃棄する様子を示す図である。
容器底部42を取り外すことで、
図7に示すように切断分離した釣り針を廃棄することができる。
【0053】
図8は釣り糸の処理方法を示す図である。
釣り仕掛け処理具1の使用により、スプール10にたまる釣り糸の処理方法について、
図8を参照して説明する。
【0054】
本実施形態のスプール10には1cm弱の隙間(切込132)があり、ユーザそこにハサミをいれて、巻き付いた糸を切り取ったり、容器底に落下させて回収したりすることができる。
【0055】
つまり、本実施形態の釣り仕掛け処理具1のガイド13は巻き取られている釣り糸を切断する刃物を入れるための切込132を少なくとも1箇所に備える。
ここでいう刃物とは例えば、
図8に図示するハサミである。
【0056】
(第二の実施形態)
図9は、糸除去用カッター60を備える釣り仕掛け処理具1を示す図である。
第一の実施形態において、釣り仕掛け処理具1の使用によりスプール10の巻取部12に残る釣り糸はハサミで処理した。
図9に示すように、本実施形態の釣り仕掛け処理具1は、容器40の上部角端に糸除去用カッター60を備え、当該糸除去用カッター60により釣り糸を切断する。
【0057】
図10は、糸除去用カッター60を示す図である。
糸除去用カッター60は、摺動刃部61がシリンダ62内に入っており、シリンダ62の外に設けたねじロック63を緊緩することで摺動刃部61の出し入れを可能にする。
またシリンダ62の先端には、容器40の上部角端に取り付けるための取付部64が配設されている(
図9参照)。
【0058】
図9(a)に示すように、糸除去用カッター60を操作に際し、ユーザはねじロック63を緩め、白抜き矢印方向にスライドする。ユーザは、スプール10の巻取部12に接する位置まで摺動刃部61の先端を突出させることができる。
【0059】
ここで、摺動刃部61の幅は、スプール10の巻取部12の幅(軸方向の長さであり、一方のガイド13と他方のガイド13との間の幅)よりも小さい。摺動刃部61を摺動させる際に、ガイド13に引っ掛からないようにするためである。
【0060】
仕掛けから針を取り外した後に、摺動刃部61をシリンダ62から突出させ、ユーザがハンドル20を回転させることで糸を切断することができる。ユーザがさらにハンドル20を回転させると、分断した糸を容器40の底に落下させることができる。
【0061】
小括すると、本実施形態の釣り仕掛け処理具1は、スプール10に巻き付いた釣り糸を切断する糸除去用カッター60を備え、当該糸除去用カッター60は、スプール10の径方向に摺動可能な摺動刃部61を備える。
本実施形態において、糸除去用カッター60は、容器40に配設されている。
【0062】
この糸除去用カッター60を設けることで、ハサミを使用することなく、針と糸を分離回収することが可能となる。
【0063】
(第三の実施形態)
図11は、支柱30を有しない釣り仕掛け処理具1を示す図である。
容器40上部に穴をあけ、その穴にスプール10の回転軸(回転軸21)を貫設することで、スプール10と容器40を連結している。
支柱30を省略することで、釣り仕掛け処理具1をより小型化することができるという利点がある。
【0064】
以上のような構成により、本実施形態の釣り仕掛け処理具1は、以下のような利点がある。
第一に、釣り仕掛け処理具1の引掛部131に釣り仕掛けの端を引っ掛け、ハンドル20を回すだけで、釣り針を糸から連続的に分離回収することができる。したがって、サビキ仕掛けの様に複数の針が付いた仕掛けも効率よく釣り針と釣り糸とを分離回収できる。
上記のような構成により、釣り仕掛けが複数のエダスを有する場合であっても、ユーザは連続的かつ効率的に釣り針を処理できるという利点がある。
第二に、切断後の針は、入れ子式容器の底部の磁石43に吸着されているので、容器本体から容器底部42を抜き出すことで、磁石43に着いた針を容易に回収することができる。
第三に、釣り仕掛け処理具1の使用により巻取部12に残存する釣り糸は、スプール10部分の切込132にユーザがハサミやカッターなどの刃を入れることで切断することができ、廃棄することができる。
第四に、第二の実施形態の糸除去用カッター60により、釣り針回収後、糸除去用カッター60の刃を押し出してハンドル20を回すだけで、糸巻部12に残る釣り糸を切断し容器40の容器底部42から回収することができる。これにより、ハサミを使用する釣り糸除去は不要となる。
【0065】
図12は、釣り仕掛け処理具1の試作品の写真(背面から撮影)である。この釣り仕掛け処理具1は主に樹脂(プラスチック素材)で構成されており、軽量である。
【0066】
図13は、針分離用カッター50に釣り仕掛けを引っ掛けている試作品の写真(右側面から撮影)である。スプール10を回転させることにより釣り仕掛けが写真手前から奥側に引っ張られ、略V字形状に切断部52を有する針分離用カッター50により釣り糸が切断される。
【0067】
(付加価値のある使用法)
第一~第三の実施形態では、釣り仕掛け処理具1を用いた釣り針を仕掛けから分離して回収する本来の目的で使用したが、本発明の釣り仕掛け処理具1は次のような便利な使い方もできる。
すなわち、釣り人は、通常、釣り糸(道糸)が巻かれたリールを使用して釣りを行うが、リール糸は釣り対象魚の種類によって太さや強度を適宜変更することが要求される。このため、複数のリールを持っていない人にとっては、道糸の取り換えが必要となり、リールから一旦道糸をスプールやボビンに巻き取ってから、所望の太さの道糸をリールに再度巻き付ける必要がある。
このような操作のために釣り糸ワインダーという装置が市販されている。本発明の釣り仕掛け処理具1は、このような釣り糸ワインダーとして使用することができる。
すなわち、道糸の先端にスプール13の切り込み132に取り付けて、ハンドルを回転させるだけで簡単にリールの道糸を回収することができる。別のスプールに巻かれた新しい道糸をリールに巻き付ける際にも、釣り仕掛け処理具1を使える。すなわち、別のスプールをハンドルの20の回転軸21に装着して、道糸の一端をリールのボビンに取り付けて巻き取ればよい。
【0068】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0069】
例えば上述の実施形態において、ハンドル20が回転軸21を備えていたが、これに限られず、ハンドル20ではなくスプール10が回転軸を備えていてもよい。
つまり、ハンドル20はスプール10の回転軸に連結され、回転操作によりスプール10を回転させるものであればよい。
【0070】
また、ハンドル20またはスプール10のいずれが回転軸21を備えている場合でも、回転軸21と、ハンドル20は同軸または直接連結されていなくてもよい。
例えば、回転軸21に主ギア(歯車)を設け、その主ギアと噛み合う従ギアをハンドルの軸側(把持部22と逆側)に設けてもよい。
この場合、回転軸21とハンドルの軸側は同軸ではなくオフセット(偏心)した配置となり、支柱30(または容器40)に回転軸21とハンドルの軸側をそれぞれ回転可能とする軸受けを設ければよい。
このように回転軸21とハンドル20とギアを介して連結させるメリットとして、一つには容器に対するハンドルの設置位置の自由度を上げることができる。もう一つは、主ギアに対する従ギアのギア比を適宜変更することにより、例えば、釣り針を仕掛けから分離する際に要する力(トルク)を高くしたり、あるいは上述の釣り糸ワインダーとして使用する際の巻き取り速度を高くしたりすることが可能となる。
【0071】
上記実施形態では、回転軸21は、スプール10の軸穴部11と嵌合していたが、上述の釣り糸ワインダーとして使用するなど、スプール10を容器40から容易に着脱可能にする目的で、回転軸21とスプール10の軸穴部11とが容易に着脱できるようにしてもよい。
例えば、回転軸21の外周をゴムのような弾性材料から形成するとともに、軸穴部11に挿入し易くするために先細りの形状にすることができる。
こうすることで、ユーザは、釣り仕掛け処理具1のスプール10を、自身の所有するスプールに簡単に付け替えることができる。
【0072】
上述の実施形態において、容器40は切断分離した釣り糸を回収する機能と、スプール10を保持する機能とを備えているが、これらの機能は分離していてもよい。
例えば、切断分離した釣り糸を回収する回収部と、スプール10を支持する本体部(筐体部)とを別に設けていてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態ではスプール10の正面視下側に針分離用カッター50が配設されていたが、針分離用カッター50の位置はこれに限られない。
例えば、スプール10の側面側(正面視右側や左側)に針分離用カッター50が配設されていてもよい。
針分離用カッター50はスプール10の巻取部よりも径方向外側であって前記回転軸と平行する位置に切断部を備えていれば、スプール10の周方向を回転する糸を切断できるからである。
【0074】
本実施形態において、針分離用カッター50の切断部52は略V字状だったが、これに限られない。市販のカッターナイフのように、切断部は直線状であってもよい。
ただし、切断部52が略V字状である方が、釣り針を切断する効率は向上する。
【0075】
また、糸除去用カッター60の配設位置も同様である。巻き取られた釣り糸の切断ができる位置であれば、その配設箇所は容器40の上部角端に限られない。
【0076】
また、上述の実施形態の釣り仕掛け処理具1は、スプール10を正面視時計まわりに回すものであったが、正面視反時計まわりに回すことが可能なものであってもよい。
この場合、針分離用カッター50の向きが反対(左向き)になる。
【0077】
上述した実施形態を含む発明は、換言すると以下の特徴を備える。下記は本願出願時における特許請求の範囲と対応する。ただし、出願後における特許請求の範囲の補正により、当該補正後の特許請求の範囲の記載とは異なる場合がある。
(1)第1の態様では、巻取部を備え、釣り仕掛けを巻き取るスプールと、前記スプールを回転可能に支持する回転軸と、前記回転軸に連結され、回転操作により前記スプールを回転させるハンドルと、前記スプールの巻取部よりも径方向外側かつ前記スプールの周方向のいずれかの位置に切断部を備え、前記スプールに巻き取られる釣り仕掛けから釣り針を切り取る針分離用カッターと、前記スプールおよび前記針分離用カッターより下方に配設され、切り取られた前記釣り針を回収する容器と、を備えることを特徴とする、釣り仕掛け処理具を提供する。
(2)第2の態様では、さらに、前記スプールと前記容器とを連結する支柱を備え、
前記支柱は前記容器との連結部分に緊緩可能な支柱調節ねじを軸に支柱の回動rすることができることを特徴とする、第1の態様に記載の釣り仕掛け処理具を提供する。
この場合、スプール10を移動させることができるため、針分離用カッター50がスプール10に隠れている場合に、針分離用カッター50を露出させ、直接釣り針が付いた釣り糸を切断することができる。
(3)第3の態様では、前記容器が磁石を備えることを特徴とする、第1の態様に記載の釣り仕掛け処理具を提供する。
この場合、金属の釣り針を一か所に集めることができるため、廃棄を容易にするという利点がある。
(4)第4の態様では、前記容器が、容器本体と、前記容器本体に嵌合する容器底部とを備え、前記容器底部が着脱可能であることを特徴とする、第1の態様に記載の釣り仕掛け処理具を提供する。
この場合、回収している釣り針が釣り仕掛け処理具から取り出しやすくなり、容易に廃棄できるという利点がある。
(5)第5の態様では、さらに、前記切断部は、前記スプールの周方向手前側にある釣り糸の導入口から前記スプールの周方向奥側に行くにつれて狭くなることを特徴とする、第1の態様に記載の釣り仕掛け処理具を提供する。
この場合、釣り針が上手く切断できず、釣り針が釣り糸に結ばれたまま巻取部周辺に残存することを低減できるという利点がある。
(6)第6の態様では、さらに、前記巻取部よりも大径のガイドを前記巻取部の両側に備え、前記ガイドが、巻き取られている釣り糸を切断する刃物を入れるための切込を少なくとも1箇所に備えることを特徴とする、第1の態様に記載の釣り仕掛け処理具を提供する。
この場合、スプールが巻き取った釣り糸を容易に切断し、廃棄することができるという利点がある。
(7)第7の態様では、前記容器はさらに、スプールに巻き付いた釣り糸を切断する糸除去用カッターを備え、前記糸除去用カッターは、前記スプールの径方向に摺動可能な摺動刃部を備えることを特徴とする、第1の態様に記載の釣り仕掛け処理具を提供する。
この場合、ハサミなどを別途用意しなくても、スプールが巻き取った釣り糸を切断し、廃棄することができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の釣り仕掛け処理具は、海洋ごみ回収業の分野に応用し得る。また、本発明の釣り仕掛け処理具は、釣り糸ワインダーとして使用することができるために、付加価値の高い製品に具現化できる。
【符号の説明】
【0079】
1 釣り仕掛け処理具
10 スプール
11 軸穴部
12 巻取部
13 ガイド
131 引掛部
132 切込
20 ハンドル
21 回転軸
22 把持部
30 支柱
31 支柱調節ねじ
40 容器
41 容器本体
42 容器底部
43 磁石
50 針分離用カッター
51 糸導入部
52 切断部
60 糸除去用カッター
61 摺動刃部
62 シリンダ
63 ねじロック
64 取付部
【要約】
【課題】釣りの仕掛けにおける針と糸の分離を容易にする。
【解決手段】釣り仕掛け処理具1は、スプール10、スプール10を回転させるためのハンドル20、釣り仕掛けの釣り針を釣り糸から切断分離するための針分離用カッター50、および切断分離した釣り針を回収するための容器40備える。スプール10に釣り仕掛けの一端を引っ掛けて回転させると、釣り針が針分離用カッター50によって切断分離され、容器40に回収される。つまり、ユーザは釣り仕掛けから釣り針のみを効率的に回収することができる。
【選択図】
図1