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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】センサデバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240618BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20240618BHJP
   G01K 1/08 20210101ALI20240618BHJP
   G01L 19/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01N27/04 B
G01N27/22 A
G01K1/08 C
G01L19/06 Z
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094042
(22)【出願日】2022-06-10
(65)【公開番号】P2022191183
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】21305817.5
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517220508
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ センサーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】エミリアン デュリュプ
(72)【発明者】
【氏名】デミアン アンドリュー
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219441(JP,A)
【文献】特開平06-207921(JP,A)
【文献】特開2005-249722(JP,A)
【文献】特開2005-017285(JP,A)
【文献】特開2005-069719(JP,A)
【文献】特開2016-061593(JP,A)
【文献】特開2015-045546(JP,A)
【文献】特開2015-102372(JP,A)
【文献】特開2015-161600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサデバイス(10、40)を製造する方法であって、
ウエハを設けるステップと、
複数の検知層(2、32、42)を、設けられた前記ウエハ上に形成するステップと、
検知電極(3、33、43)を前記ウエハ上におよび/または前記ウエハ内に形成するステップと、
連続カバー層(34)を前記複数の検知層(2、32、42)の各々の上に形成するステップであって、前記連続カバー層(34)は多孔質材料を含むか、もしくはそれから構成される、ステップと、
前記ウエハをダイシングして、複数の中間センサデバイス(10、40)を得るステップであって、前記中間センサデバイス(10、40)の各々は、前記複数の検知層(2、32、42)のうちの1つと、前記ダイシングによって前記連続カバー層(34)から形成された個々のカバー層(4、44)とを含む、ステップと
を含む、方法であって、
前記中間センサデバイス(10、40)の各々において、前記ウエハは基板(1、31、41)を構成し、前記検知層(2、32、42)のうちの1つは、前記基板(1、31、41)の方を向く第1の面と、前記第1の面とは反対の側であって、かつ、前記基板(1、31、41)から離れる方を向く第2の面とを備え、前記検知電極(3、33、43)は、前記第2の面に設けられる、方法。
【請求項2】
前記中間センサデバイス(10、40)の各々は、少なくとも2つの検知電極(3、33、43)を備え、
前記検知層(2、32、42)のうちの1つおよび/または前記基板(1、31、41)は、前記少なくとも2つの検知電極(3、33、43)の間を連続して延びている、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象(measurand)、例えば、環境の絶対湿度または相対湿度を検知するためのセンサデバイスに関し、詳細には検知動作に使用されるセンサデバイスの検知層の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
センサの重要性はますます高まっており、日常生活の至る所に存在するようになっている。例えば、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)は、サイズおよびコストの削減と共にセンサの性能向上に対する需要に応える魅力的な選択肢である。例えば、温度センサおよび湿度センサ、またはそれらの組合せが、暖房、換気、空調、およびフロントガラスワイパの動作を自動制御するために車両に設置されるフロントガラス検知デバイスを含む、多種多様な用途に使用されることが知られている。
【0003】
当技術分野において、誘電体基板と、誘電体基板に形成された2つの電極と、水の吸収および/または吸着のための検知層とを備える湿度センサデバイスが知られている。センサによって検出される水の量が環境中の水の気体分と熱平衡状態にあると仮定して、水の吸収および/または吸着によって生じるキャパシタンス、電気伝導率、電気抵抗率、またはインピーダンスの変動を測定し、環境の(相対)湿度の決定に使用することができる。
【0004】
センサデバイスの検知層は、有機ポリマー材料から形成することができる。しかしながら、有機材料は、耐用期間中に劣化し、例えば、センサデバイスの製造プロセスまたは特定の用途における現場での動作中に生じる比較的高い温度の影響を受ける。加えて、従来のポリマー湿度センサデバイスの応答時間は比較的遅い(数秒程度)。したがって、最近では、例えば、検知層として機能する無機誘電体層を含む完全無機湿度センサデバイスが提案されている。
【0005】
いずれの場合にも、検知層または検知層を含む検知セルは、例えば、湿度(または任意の他の測定対象)を測定する空気中に存在する汚染物質から保護されなければならない。埃、花粉(polls)、油滴、または水(蒸気)粒子とは異なる他の物質の形の汚染物質は、センサデバイスの検知電極の短絡を生じさせることさえある。
【0006】
当技術分野において、埃/流体/ミストセンサ保護には、パッケージ後ステップにおいてパッケージ済みデバイスの上に一体に接着されるポリテトラフルオルエチレン(PTFE)膜が含まれる。しかしながら、PTFE膜の取付けは、比較的面倒なパッケージ後製造プロセスであり、加えて、過酷な動作環境におけるPTFE膜保護の保護品質および信頼性が満たされていないことが判明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の観点から、本発明の目的は、過酷な環境において信頼性が高くかつ恒久的な検知動作を可能にし、かつ比較的容易に製造することができるセンサデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に記載のセンサデバイスを提供することによって、上記の目的に対処する。センサデバイスは、基板と、基板上に(例えば、基板に直接)形成された(formed over (for example, directly on) the substrate)検知層と、検知電極(少なくとも1つが、基板上、特に、検知層上に形成されていてよい)とを備える。検知層は、測定対象(例えば、温度、圧力、または湿度)に応じて変動する物理的および/または化学的特性(例えば、検知電極間の電気伝導率またはキャパシタンス)を有する。さらに、センサデバイスは、検知層を汚染物質から保護するために検知層を少なくとも部分的に被覆する(特に、検知層に接触するか否かにかかわらず)カバー層(保護層)を備える。
カバー層は、機械的攻撃からの保護を提供することもできる。本発明によれば、カバー層は多孔質材料を含むか、もしくはそれから構成され、かつ/または、カバー層は複数の開口部(ビア)を含む。開口部は、カバー層の厚さ方向にカバー層を完全に貫通している。例えば、開口部は厚さ方向に平行に、または厚さ方向に対してある有限角(有限の角度、finite angle)で延びている。開口部は、カバー層の形成後にカバー層に形成されてよい。
【0009】
カバー層は、検知層を少なくとも部分的に囲むキャビティを形成してもよく、カバー層は、基板に部分的に形成されまたは取り付けられていてもよい。
【0010】
カバー層は、周囲の媒体中に存在する汚染物質、例えば空気中に存在する埃、花粉、油滴などによる汚染から、検知層(および実際の配置に応じて検知電極)を確実に保護する。カバー層は、汚染物質に対する高効率微粒子フィルタ(HEPF)であり、容易かつ比較的安価に製造することができ、基板上に容易に形成することができる。
【0011】
このように提供される構成を、大量生産の半導体製造プロセスによって容易に製造することができる。このような構成は、小型のサイズで製造することができ、その耐用期間中の経年による深刻な劣化を大きく受けることはない。このデバイスは、例えば最高約300℃、または最高1000℃、またはそれ以上の比較的高い温度で製造および動作することができる。さらに、このような構成に基づいて、1秒未満の応答時間を実現することができる。
【0012】
提供されるセンサデバイスを、高温(数100℃~数1000℃)および高圧(例えば、数10atm以上)を特徴とする過酷な環境における遠隔検知のための独立型デバイスとして使用できることに留意されたい。
【0013】
特定の実施形態によれば、カバー層は、5%超、特に60%または70%超の多孔率を有する多孔質材料を含むか、またはそれから構成される。測定対象が緩やかに変動する用途の場合、原則として、5%未満の多孔率も適切であると考えられる。例えば、多孔質材料は、平均直径が5nm~200μm、300μm、または400μm、特に100nm~300nmの細孔を含む。多孔質材料は、容易で安価に製造することができ、かつ長期にわたるフィルタ特性を確実に提供する、セラミック材料、例えば焼結セラミック材料であってよい。カバー層に使用されるセラミック材料は、耐高温性のために、適切には炭化ケイ素であってよく、またはそれを含んでよい。
多孔質カバー層のための他の適切な材料には、上記の多孔率および/または細孔の直径サイズを呈する固体発泡材料、例えば金属発泡体が含まれる。このような発泡材料は、耐久性および軽量性の両方に関して有利であり得る。
【0014】
実施形態によれば、カバー層は、検知層と環境との間の流体接触を可能にする開口部を含む。開口部を含むカバー層は、多孔質材料または非多孔質材料(例えば、誘電体もしくは金属材料またはそれらの組合せを含むか、またはそれから構成される)であってよく、あるいはそれを含んでよい。開口部は、平均直径が、例えば5nm~200μm、特に100nm~300nmのナノサイズまたはマイクロサイズのビアであってよい。開口部の少なくとも一部は、カバー層の厚さ方向に平行に、カバー層を完全に貫通していてよい。開口部は、カバー層が形成された後にカバー層に形成された貫通孔であってよい。
【0015】
上記の実施形態のすべてにおいて、カバー層の厚さは、100nm~10000μm、特に200μm~600μmまたは5000~10000μmであってよい。
【0016】
上記の多孔率、細孔および/または開口部の直径、ならびにカバー層の厚さは、センサデバイスの応答時間を短く保つと共に、汚染物質の効果的なフィルタリングに関して有利であり得る。この文脈において、汚染を防止するために、細孔および開口部のサイズを、実際の用途に合わせて、特に汚染物質の粒径に合わせて調整できることを理解されたい。
【0017】
カバー層が開口部を含む実施形態において、開口部の側壁を、何らかの金属材料により被覆してもよい。これにより、環境から来る汚染物質に対する保護を向上させ得る静電フィルタ特性を提供することができる。
【0018】
基板は、半導体バルク基板、ガラス(および、特にホウケイ酸塩)、セラミック、または特定用途向け集積回路(ASIC)、または特定用途向け標準製品(ASSP)であってよく、またはそれを含んでよい。半導体バルク基板は、(ポリ)シリコンから形成されてよく、またはそれを含んでよい。ASICまたはASSPを採用した小型の設計を実現することができる。ASIC、ASSP、または耐熱取得回路を使用する場合、特に高温用途が想定されるときには、一部の個別のエレクトロニクスを遠隔で提供してもよいことに留意されたい。
【0019】
検知層は、例えば、明確な水の吸着/吸収率を呈する無機誘電体層であってよく、検知電極のうちの少なくとも1つが無機層にまたは無機層上に(on or over the inorganic layer)形成されていてよい。実際には、センサデバイスに有機材料がまったく含まれていなくてよい。これにより、有機検知層または他の有機成分を含むセンサデバイスと比較して、経年特性を改善することができる。無機誘電体層は、窒化物材料、特にSiまたは炭化ケイ素から形成されてよく、またはそれを含んでよい。
【0020】
例えば、抵抗センサの場合、検知電極である1対の櫛形電極を無機誘電体層上に形成してもよい。1対の櫛形電極の電極を、無機誘電体層に平行な同じ水平面に配置してもよい。これらの電極は、同じ層から形成されてよく、やはり同じ層から形成され得る電極端子で終端してもよい。原則として、検知電極、例えば櫛形電極は、貴金属、特に金、白金から形成されてよく、またはそれを含んでよい。電極の製造に適した代替材料には、アルミニウムおよび銅が含まれる。基板に対する安定した電極の接着を保証する接着層(例えば、クロムから形成される)を配置してもよい。
【0021】
センサデバイスは、検知層の電気抵抗、検知層の電気(表面)伝導率、検知層のインピーダンス、検知電極および検知層によって形成されるキャパシタの容量、ならびに検知層を流れる電流のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている検知回路を備えることができる。特に、センサデバイスは、温度、圧力、相対湿度もしくは絶対湿度、またはそれらの測定対象の組合せを検知するように構成されてよい。
【0022】
例えば、湿度センサデバイスの場合、適切な回路によって、検知層、例えば、上記の無機誘電体層により吸収/吸着された水の量を求めることができ、環境の温度が既知であると仮定して、求められた水の量に基づいて、環境の湿度または相対湿度を求めることができる。環境の温度は、湿度センサデバイスに含まれ得る温度センサ(湿度温度複合センサ)、または上記のカバー層と同様のカバー層も含み得る追加の温度センサによって求めることができる。前述したように、本発明のセンサデバイス自体は、温度センサデバイスまたは圧力センサデバイスであってよい。さらに、複合センサデバイスのいくつかの検知素子、例えば圧力、湿度、温度などを検知するための検知素子を、同じ保護層によって被覆してもよい。
【0023】
上記の目的はまた、センサデバイスを製造する方法であって、
(半導体)ウエハを設けるステップと、
(例えば、連続検知層を形成し、これをパターニングすることによって)複数の検知層を、設けられたウエハ上に(over the provided wafer)形成するステップと、
(例えば、連続電極層を形成し、これをパターニングすることによって)検知電極をウエハ上におよび/またはウエハ内に(over and/or in the wafer)形成するステップと、
連続カバー層を複数の検知層の各々の上に形成するステップであって、連続カバー層は多孔質材料を含むか、もしくはそれから構成され、かつ/または、連続カバー層は複数の開口部を含む、ステップと、
ウエハをダイシングして、複数の中間センサデバイスを得るステップであって、中間センサデバイスの各々は、複数の検知層のうちの1つと、ダイシングによって連続カバー層から形成された個々のカバー層とを含む、ステップと
を含む方法を提供することによって対処される。
【0024】
あるいは、連続カバー層を形成するステップが省略され、個々のダイへのウエハダイシング後に、個々のカバー層が形成される。しかしながら、ウエハスケールアセンブリの文脈における連続カバー層の形成を含む方法は、大量生産において有利であり得る。したがって、完成ウエハ、例えばASICウエハ上への連続カバー層のウエハスケール(ウエハボンディング)アセンブリが、好ましいとされ得る。連続カバー層を、ダイシングおよびパッケージングの前にクリーンルームでウエハに取り付けることができると有利である。
【0025】
連続カバー層および個々のカバー層は、同じ材料から形成されてもよく、提供されるセンサデバイスの実施形態に関して上記と同じ特性を呈することができる。特に、センサデバイス、特に(相対)湿度センサデバイス、温度センサデバイス、または圧力センサデバイスを、上記の方法によって得ることができる。前述した本発明のセンサデバイスのすべての実施形態を、提供される方法によって得ることができる。
【0026】
本発明のさらなる特徴および利点について、図面を参照しながら説明する。説明において、本発明の好ましい実施形態を例示するための添付図面を参照する。このような実施形態は、本発明の完全な範囲を表すものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による多孔質カバー層を備えるセンサデバイスの例示的な実施形態を示す図である。
図2】実施形態によるセンサデバイスの製造プロセスのフローチャートである。
図3図1に示すセンサデバイスを得ることができるダイシング前ウエハ構成を示す図である。
図4】本発明による、複数の開口部を含むカバー層を備えるセンサデバイスの例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、例えば、物体または環境の(相対)湿度、温度、または圧力を検知するのに適したセンサデバイスを提供する。本発明によれば、センサデバイスは、多孔質材料を含むか、もしくはそれから構成され、かつ/または複数の開口部を含むカバー層を備える。カバー層は、汚染物質からの保護を提供する。提供されるセンサデバイスは、大量生産の半導体製造技術によって比較的容易に製造することができ、特に、比較的高い温度および化学的に過酷な環境に耐える。
【0029】
図1は、本発明によるセンサデバイス10の実施形態を例示的に示す。センサデバイス10は、空気または別の媒体/物体の相対湿度および/または温度または圧力を検知するように構成されてよい。図1に示す実施形態によれば、センサデバイス10は基板1を備える。基板1は、半導体バルク基板、例えば(ポリ)シリコン基板、またはASICもしくはASSPであってよい。
【0030】
さらに、センサデバイス10は、検知層2と、検知層2を含み、かつ例えば、プリント回路基板にワイヤ接続されているセンサセルとを備え、検知層2は、基板1にまたは基板1上に形成されている。湿度センサデバイスの場合、検知層2は(例えば、水を吸着および/または吸収するための)吸着および/または吸収層であってよい。例えば、検知層2は無機誘電体層である。無機誘電体層は、窒化物層、例えばSi層であってよい。いずれの場合にも、検知層2は、測定対象の変動に応じて変動する検出可能な特性を呈する。
【0031】
検知電極3が、検知層2にまたは検知層2上に形成されている。すべての検知電極3を、同じ材料から形成することができる。例えば、検知電極3は、耐薬品性および耐久性を与えるために、貴金属、特に金から形成されてよく、またはそれを含んでよい。検知電極3と同じ材料から形成することができる電極端子(図1には示さず)を介して、電圧を印加することができる。例えば、1対の櫛形電極が、検知層2上の同じ水平面に形成される。本発明は特定の電極構成に限定されないことに明確に留意されたい。無機誘電体層2上に1対の櫛形電極を形成することを、検知層2に形成された接着層(図1には示さず)によって容易にすることができ、接着層は、例えばCrから形成されるか、またはCrを含む。
【0032】
例えば、(例えば、櫛形)電極3間で検知層2を流れる電流、または(例えば、櫛形)電極3間で検知層2が呈する電気抵抗もしくは電気(表面)伝導率を、検知層2における水の吸着を生じさせる相対湿度の関数として、または別の測定対象の関数として求めることができる。
【0033】
検知層2(および検知電極3)は、カバー層4によって、環境による汚染物質(例えば、空気中に存在する埃、花粉、油滴など)から保護される。このカバー層4は、基板1に形成されまたは取り付けられ、(検知層3に接触することなく)検知層3を囲むキャビティを形成する。
【0034】
実施形態によれば、カバー層4は、多孔質材料、例えば多孔質セラミック材料、特に焼結セラミック材料を含むか、またはそれから構成される。例えば、焼結セラミック材料を形成するための焼結プロセスは、1500℃超の温度で、または焼結助剤の使用量に応じて1200℃未満の温度で行うことができる。特定の実施形態によれば、カバー層4に使用されるセラミック材料は、2500℃超の分解温度を呈する炭化ケイ素であるか、またはそれを含む。代替実施形態によれば、多孔質材料は、固体発泡材料、例えば金属発泡体である。
【0035】
さらに、多孔質材料は、5%または50%超、特に60%または70%超の多孔率を有することができる。例えば、多孔質材料は、平均直径が5nm~200μm、特に100nm~300nmの細孔を含む。カバー層4の厚さは、100nm~10000μm、特に200μm~600μmまたは5000~10000μmであってよい。これにより、カバー層4は、センサデバイス10によって提供される応答時間を短く(例えば、1秒未満に)保つと共に、汚染物質の効果的なフィルタリングを可能にする。
【0036】
センサデバイス10を、基板1の下面に形成されたはんだバンプ6によって電子機器/回路5に接触させることができる。
【0037】
次に、図2を参照しながら、本発明の実施形態によるセンサデバイスの製造プロセスについて説明する。例えば、図2に示すプロセスフローにより、図1に示すセンサデバイス10を製造することができる。
【0038】
図2に示すように、ウエハ、例えばASICウエハが設けられ21、例えば無機誘電体層、例えばSiの形の検知層が、ウエハ上に形成され、例えば成長し、パターニングされる22。検知層は、ウエハ上に形成されたセンサセルの一部であってよい。検知層の形成およびパターニング22後に、接着層、例えばCr層が、パターニングされた検知層上に形成され23、電極層、例えばAu層が、接着層上に形成されパターニングされる24。電極層の形成は、蒸着を含むことができ、パターニングは、フォトレジスト(ポジティブまたはネガティブ)の形成と、それに続くフォトリソグラフィ処理および反応性イオンエッチングまたはウェットエッチングを含むことができる。
【0039】
図2に示すフローチャートのステップ25では、カバー層がウエハにまたはウエハ上に、かつ少なくとも部分的に検知層上に形成される。カバー層は、多孔質材料、例えば炭化ケイ素および特に焼結セラミック材料のような、例えば多孔質セラミック材料を含むか、またはそれから構成される。例えば、焼結セラミック材料を形成するための焼結プロセスは、1500℃超の温度で、または焼結助剤の使用量に応じて1200℃未満の温度で行うことができる。あるいは、多孔質カバー層は、発泡材料、例えば金属発泡体を含んでよく、またはそれから構成されてよい。
【0040】
さらに、カバー層に使用される多孔質材料は、5%または50%超、特に60%または70%超の多孔率を有することができる。例えば、多孔質材料は、平均直径が5nm~200μm、特に100nm~300nmの細孔を含む。カバー層の厚さは、100nm~10000μm、特に200μm~600μmまたは5000~10000μmであってよい。カバー層は、検知層および電極を汚染物質から保護するために形成され、機械的保護を提供することもできる。
【0041】
図2のステップ25の完了後に得られる典型的なダイシング前ウエハ構成30を図3に示す。ウエハ31に複数の検知層32が形成され、複数の検知層上に複数の検知電極33が形成されている。複数の検知層32の各々は、ウエハ31上に連続的に形成された多孔質(例えば、セラミックまたは固体発泡体の)カバー層34によって保護されている。図3に示すダイシング領域Dでダイシングすることによって、個々の(中間)センサデバイス用の個々のダイを形成することができる。
【0042】
したがって、図2のステップ25の後に得られるダイシング前ウエハ構成、例えば図3に示す構成は、個々のカバー層を含む個々のダイを形成するためにダイシング/切断される(図2のステップ26参照)。代替実施形態によれば、ダイシング前ウエハ構成において連続カバー層は形成されず、代わりに、ウエハのダイシング後に個々のカバー層がダイに取り付けられることに留意されたい。適切なワイヤによるプリント回路基板へのワイヤボンディングのために、電極端子を使用することができる。プリント回路基板は、検知されたデータを処理し、図2に示す製造プロセスから得られたセンサデバイスを制御するための測定および制御回路を含むことができる。プリント回路基板は、自動較正および信号処理を行う任意のオンチップ回路を含むことができる。
【0043】
前述した製造プロセスフローにおいて、大量生産品の製造プロセス全体に関与する比較的高い温度によって損傷を受けやすい有機材料を含む必要はない。この態様は、設けられたカバー層と組み合わせて、比較的高温(例えば、最高で数1000℃)および化学的反応性の環境において、得られたセンサデバイスの現場での動作を可能にする。
【0044】
図4は、本発明のセンサデバイス40の代替実施形態を示す。このセンサデバイス40は、図2および図3を参照して前述したものと同一または同様の方法によって製造することができる。センサデバイス40は、基板41と、検知層42と、検知電極43とを備える。基板41、検知層42、および検知電極43は、図1に示す本発明のセンサデバイス10の実施形態の基板1、検知層2、および検知電極3と同一または同様であってよい。
【0045】
図4に示すセンサデバイス40は、図1に示す実施形態とは異なり、垂直な開口部Oを呈するカバー層44を備える。開口部は、平均直径が5nm~200μm、特に100nm~300nmのナノサイズのビアであってよい。開口部Oは、センサデバイス40の環境からその内部への流体連通を可能にするが、そのサイズにより、汚染物質がセンサデバイス40に入って検知層42に不都合に接触することを防止する。開口部Oは、図1を参照して説明したカバー層4の多孔質材料の細孔の役割を引き継ぐ。
【0046】
カバー層44は、非多孔質誘電体および/または金属材料から形成されてよく、またはそれを含んでよい。原則として、カバー層44は、前述したような多孔質材料から形成されてよく、またはそれを含んでよく、開口部Oは、流体連通を強化するために追加的に設けられている。いずれの場合にも、開口部Oは、カバー層44の形成後に、例えばエッチングにより形成することができる。図4に示すように、開口部/ビアOは、カバー層44の厚さ方向に平行に延びていてよい。あるいは、開口部/ビアOの少なくとも一部が、カバー層44の厚さ方向に対してある有限角で延びていてもよい。
【0047】
実施形態によれば、開口部Oの表面は、何らかの金属材料によって被覆されている。これにより、カバー層44の全体的なフィルタリング/保護効率に関して有利であることが証明され得る静電フィルタリング特性を提供することができる。
【0048】
前述したすべての実施形態は、限定を意図したものではなく、本発明の特徴および利点を例示する例として機能する。前述した特徴の一部または全部を、異なる方法で組み合わせてもよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
10、40 湿度センサデバイス
1、31、41 基板
2、32、42 検知層
3、33、43 検知電極
4、44 カバー層
5、45 電子機器/回路
6、46 はんだバンプ
30 ダイシング前ウエハ構成
34 連続カバー層
O 開口部
図1
図2
図3
図4