(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】キャップ構造
(51)【国際特許分類】
B65D 55/02 20060101AFI20240618BHJP
B65D 41/34 20060101ALI20240618BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B65D55/02
B65D41/34 112
B65D41/04 300
(21)【出願番号】P 2019223657
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01757528(EP,A2)
【文献】特開昭60-034347(JP,A)
【文献】特開2013-252874(JP,A)
【文献】特開2006-248562(JP,A)
【文献】特開2004-189271(JP,A)
【文献】特開2013-249122(JP,A)
【文献】特開2002-308303(JP,A)
【文献】特表2018-538209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 55/02
B65D 41/34
B65D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトに螺合可能なキャップ本体と、このキャップ本体の下方に位置している環状の不正開封防止バンドとを備え、前記キャップ本体と不正開封防止バンドとが破断可能なブリッジを介して連結されていて、開栓方向に回転するキャップ本体に対して前記不正開封防止バンドを開栓方向に非回転にすることにより前記ブリッジが破断して、キャップ本体が不正開封防止バンドから分離するキャップ構造において、
前記キャップ本体の下部に形成された下開きの凹部と、前記不正開封防止バンドの上部に上方に向けて凸にして形成されて前記下開きの凹部の凹み部分に入り込む上凸の突起とからなる第一バンド送り手段と、
前記不正開封防止バンドの上部に形成された上開きの凹部と、前記キャップ本体の下部に下方に向けて凸にして形成されて前記上開きの凹部の凹み部分に入り込む下凸の突起とからなる第二バンド送り手段とを備え、
前記第一バンド送り手段における下開きの凹部と上凸の突起とのそれぞれの閉栓方向での上流側となる辺部が、互いにキャップ高さ方向に沿っていて相対する起立部分として形成され、
前記第二バンド送り方向における上開きの凹部と下凸の突起とのそれぞれの閉栓方向での下流側となる辺部が、互いにキャップ高さ方向に沿っていて相対する起立部分として形成され、
前記第一バンド送り手段に対して閉栓方向の下流側での近接した位置に、前記第二バンド送り手段が配置されていて、
前記第一バンド送り手段と第二バンド送り手段とは、スパウトへのキャップ初期取付におけるキャップ本体が閉栓方向へ回転して降下するときに、
第一バンド送り手段の下開きの凹部の閉栓方向での上流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分が、上凸の突起の閉栓方向での上流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分に当接して、下開きの凹部と上凸の突起とが係合するとともに
、第二バンド送り手段の下凸の突起の閉栓方向での下流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分が、上開きの凹部の閉栓方向での下流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分に当接して、上開きの凹部と下凸の突起とが係合して、キャップ本体に前記ブリッジを介して連結されている不正開封防止バンドが、前記キャップ本体に対して開栓方向へ相対回転するのを規制するものであり、
不正開封防止バンドから分離したキャップ本体がスパウトに再取付されて閉栓方向へ回転して降下するときに、
前記第二バンド送り手段の下凸の突起の閉栓方向での下流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分が、前記第一バンド送り手段の上凸の突起の閉栓方向での上流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分に当接した状態で、前記第二バンド送り手段の下凸の突起が、第一バンド送り手段の上凸の突起に係合して、不正開封防止バンドを下方に押し下げることを特徴とするキャップ構造。
【請求項2】
上記第一バンド送り手段とこの第一バンド送り手段に近接する上記第二バンド送り手段とを一つの組とし、前記組がキャップの周方向の複数個所に配置されている請求項1に記載のキャップ構造。
【請求項3】
上記第一バンド送り手段とこの第一バンド送り手段に近接する上記第二バンド送り手段とを一つの組とし、前記組を二つ備えていて、この二つの組がキャップ径方向に対向する位置に配置されており、
一方の組における第一バンド送り手段と第二バンド送り手段とのキャップの周方向での配設ピッチと、もう一方の組における第一バンド送り手段と第二バンド送り手段とのキャップの周方向での配設ピッチとが異なっていて、
キャップ本体が螺合するスパウトのねじ部は二条ねじである請求項1または2に記載のキャップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器の口部であるスパウトにキャップを螺合させてスパウトを閉じるキャップ構造、特に不正開封防止バンドを備えるキャップ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からPETボトルに代表される飲料容器の口部には、いたずらなどによる不正開封を抑止するための機能を備えたキャップが取り付けられていて、口部の外ネジに螺合する内ネジを有するキャップ本体と、このキャップ本体の周壁の下部に環状の不正開封防止バンドとからなるものが多く利用されている。
【0003】
不正開封防止バンドはバンドの内側に複数の係止爪を備え、この係止爪それぞれは開栓方向に向けて延びていて、バンド内面に伏す変形が可能とされている。そして、前記係止爪は、口部の外ネジ部分の下方となる部分に外方に向けて突設された係止用凸体に係止するものである。
【0004】
飲料容器の口部や容器が有するスパウトにキャップを最初に取り付ける場合、機械を用いて(例えば、内容物充填機のキャッピング装置)キャップを口部やスパウトにセットして閉栓方向に回転させて取り付けるようにしている。このキャップの初期取付の閉栓方向の回転に際しては、キャップ本体と共に不正開封防止バンドが閉栓方向に回転し、前記係止爪が、口部やスパウト側の係止用凸体を乗り越えるように移動し、前記係止用凸体に対して係止することがない。
【0005】
容器を最初に開封するために、螺着したキャップを手操作により開栓方向に回転させると、キャップ本体とともに不正開封防止バンドが開栓方向に回転しかけるが、口部やスパウト側の係止突起にバンド側の係止爪が係止して、不正開封防止バンド自体の開栓方向への回転が規制されるようにしている。
【0006】
キャップ本体は開栓方向へ回転して上昇すると、開栓方向への回転が規制されて開栓方向に非回転となる不正開封防止バンドと前記キャップ本体との間を繋ぐブリッジが分断され、口部やスパウト側に不正開封防止バンドが残る仕組みとなっていた。
【0007】
そして、再度キャップ本体を口部やスパウトに再取付して戻したときには、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間が開いて、開封済であることを目視にて確認し易いようにしている。また、キャップ本体を口部に戻しても、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間が開く点を知ることで、いたずらなどでの不正開封を抑止する効果を奏する。
【0008】
近年において、手持ちできる小容器が有するスパウトについても不正開封を防止するために、上述したキャップ本体と不正開封防止バンドとが上記ブリッジで連結されたキャップが取り付けられるようになってきている。
【0009】
小容器に対応するスパウトは口径が小さいため、キャップも小型のものが用いられる。そして、小型のキャップ本体と小型の不正開封防止バンドとを破断可能なブリッジで連結する形態である。
【0010】
このような小型のキャップを含めて不正開封防止の目的で用いられるキャップは、キャッピング装置にてスパウトに機械取付する場合、不正開封防止バンドの係止爪がスパウト側の係止用凸体を乗り越えるときの抵抗によって、不正開封防止バンドがキャップ本体より遅れて回転したり回転しない状態となり易く、ブリッジが機械取付時に破断する可能性が高くなり易い。
【0011】
そのため、機械取付のキャッピング時にブリッジが破断しないする必要がある。一方、キャップを取り付けて封止された容器商品を開封する際には、ブリッジが破断してキャップ本体と不正開封防止バンドとが分離されるようにする必要もある。
【0012】
このようにキャッピング時にブリッジが破断する可能性を抑えつつ、開封の操作でキャップ本体を開栓方向に回すときにブリッジが破断されるようにするための工夫としてバンド送り手段がある。例えば特許文献1、2に示さていて、キャップ本体の周壁の下部に下開きの凹部を形成するとともに、不正開封防止バンドの上部に上方に向けて凸にした突起を形成して、前記下開きの凹部の凹みの空間に上凸の前記突起が入り込むようにしたバンド送り手段を、キャップに設けた構造が提案されている。
【0013】
上記バンド送り手段を有するキャップ構造では、キャップ初期取付(キャッピング)でキャップ本体が閉栓方向に回転する際、下開きの凹部の閉栓方向の上流側の辺部と上凸の突起の閉栓方向の上流側の辺部とが当接するようにして前記下開きの凹部と上凸の突起とが係止し合う。そして、キャップ本体が閉栓方向に回転して降下する動きに伴なって不正開封防止バンドも閉栓方向に回転して、ブリッジに破断を生じさせずにキャップの取付(初期閉栓)が行なえる。
【0014】
上記キャップ構造では、下開きの凹部と上凸の突起とが確実に係止し合うようにするために、下開きの凹部の閉栓方向の上流側の辺部と上凸の突起の閉栓方向の上流側の辺部とは、共にキャップ高さ方向に沿った起立部分として形成されている。
【0015】
上記キャップ構造において、上述したように開封するためにキャップを開栓方向に回転操作すれば、開栓方向に回転して上昇するキャップ本体に伴なって不正開封防止バンドが開栓方向に移動しかけるが、スパウト側の係止用凸体に係止爪が係止して、不正開封防止バンドの開栓方向への回転が規制される。そして、開栓方向に回転して上昇するキャップ本体と非回転の不正開封防止バンドとの間のブリッジが破断される。
【0016】
バンド送り手段では、キャップ本体の開栓方向への動きが損なわれないように設けられている。すなわち、特許文献1の
図4や特許文献2の
図2に示されているように下開きの凹部の閉栓方向の下流側の辺部と上凸の突起の閉栓方向の下流側の辺部とは、共にキャップ本体の回転と上昇とが伴う動きの方向に沿う傾斜部分として形成されている。そのため、開封の操作において、キャップ本体を開栓方向に回す操作をすれば、ブリッジが切れる。
【0017】
そして、上記下開きの凹部の閉栓方向の下流側の辺部と、上凸の突起の閉栓方向の下流側の辺部との傾斜は、キャップ本体がねじに案内されて回転しながら上昇する方向の傾斜(ねじのリード角)より大(仰角が大)とされて、開栓方向に移動する凹部(キャップ本体)が、移動しない突起(不正開封防止バンド)を下方に向けて押すようになり、ブリッジの破断がより確実に行なわれるようにする仕組みとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1や特許文献2に示された技術では、同一のバンド送り手段をキャップの周方向に二つにして近接配置した構造としていて、キャッピング時にはブリッジの破断を抑え、また、開封するときにはブリッジが適正に破断されるようにしているものである。
【0020】
しかしながら、上記した従来の技術はキャッピング時にブリッジが破断したいようにする点に重きを置かれており、いたずら目的で開封してキャップ本体を取り外して、そのキャップ本体を再びスパウトに取り付ける行為を抑止する効果は期待できない。
【0021】
即ち、開封後のキャップ本体が閉栓方向に回転して降下していく過程で、下開きの凹部における閉栓方向の下流側の近傍位置に上凸の突起の頂部が接触し、その状態でキャップ本体側が不正開封防止バンドを押し下げながら閉栓方向に回転する。そして、下開きの凹部の傾斜部分が上凸の突起の頂部の位置に差し掛かると、不正開封防止バンドが前記押し下げの力に反発して少し上昇するとともに、前記傾斜部分に案内される形で前記突起が凹部の凹み部分に収まるようになってしまう。
【0022】
そのため、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間に広い隙間が生じ難くなってしまい、開封後にキャップ本体をスパウトに螺着して封止した状態であることを、目視では簡単に確認できないという不具合が生じる。このようにキャップ本体と不正開封防止バンドとの間に、開封した後の再封である証拠となる広い隙間を形成できないため、不正開封を抑止する効果は期待できない。
【0023】
そこで本発明は上記事情に鑑み、開封後にキャップ本体を取り付けて再封したときには、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間が開くようにすることを課題として、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間の隙間の大きさによって開封済であることが確認し易く、不正開封を抑止する効果が高いキャップ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、スパウトに螺合可能なキャップ本体と、このキャップ本体の下方に位置している環状の不正開封防止バンドとを備え、前記キャップ本体と不正開封防止バンドとが破断可能なブリッジを介して連結されていて、開栓方向に回転するキャップ本体に対して前記不正開封防止バンドを開栓方向に非回転にすることにより前記ブリッジが破断して、キャップ本体が不正開封防止バンドから分離するキャップ構造において、
前記キャップ本体の下部に形成された下開きの凹部と、前記不正開封防止バンドの上部に上方に向けて凸にして形成されて前記下開きの凹部の凹み部分に入り込む上凸の突起とからなる第一バンド送り手段と、
前記不正開封防止バンドの上部に形成された上開きの凹部と、前記キャップ本体の下部に下方に向けて凸にして形成されて前記上開きの凹部の凹み部分に入り込む下凸の突起とからなる第二バンド送り手段とを備え、
前記第一バンド送り手段における下開きの凹部と上凸の突起とのそれぞれの閉栓方向での上流側となる辺部が、互いにキャップ高さ方向に沿っていて相対する起立部分として形成され、
前記第二バンド送り方向における上開きの凹部と下凸の突起とのそれぞれの閉栓方向での下流側となる辺部が、互いにキャップ高さ方向に沿っていて相対する起立部分として形成され、
前記第一バンド送り手段に対して閉栓方向の下流側での近接した位置に、前記第二バンド送り手段が配置されていて、
前記第一バンド送り手段と第二バンド送り手段とは、スパウトへのキャップ初期取付におけるキャップ本体が閉栓方向へ回転して降下するときに、第一バンド送り手段の下開きの凹部の閉栓方向での上流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分が、上凸の突起の閉栓方向での上流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分に当接して、下開きの凹部と上凸の突起とが係合するとともに、第二バンド送り手段の下凸の突起の閉栓方向での下流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分が、上開きの凹部の閉栓方向での下流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分に当接して、上開きの凹部と下凸の突起とが係合して、キャップ本体に前記ブリッジを介して連結されている不正開封防止バンドが、前記キャップ本体に対して開栓方向へ相対回転するのを規制するものであり、
不正開封防止バンドから分離したキャップ本体がスパウトに再取付されて閉栓方向へ回転して降下するときに、前記第二バンド送り手段の下凸の突起の閉栓方向での下流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分が、前記第一バンド送り手段の上凸の突起の閉栓方向での上流側となる辺部であってキャップ高さ方向に沿っている前記起立部分に当接した状態で、前記第二バンド送り手段の下凸の突起が、第一バンド送り手段の上凸の突起に係合して、不正開封防止バンドを下方に押し下げることを特徴とするキャップ構造を提供して、上記課題を解消するものである。
【0025】
(請求項2の発明)
そして、本発明は、上記第一バンド送り手段とこの第一バンド送り手段に近接する上記第二バンド送り手段とを一つの組とし、前記組がキャップの周方向の複数個所に配置されているものとすることが可能である。
【0026】
(請求項3の発明)
また、本発明は、
上記第一バンド送り手段とこの第一バンド送り手段に近接する上記第二バンド送り手段とを一つの組とし、前記組を二つ備えていて、この二つの組がキャップ径方向に対向する位置に配置されており、
一方の組における第一バンド送り手段と第二バンド送り手段とのキャップの周方向での配設ピッチと、もう一方の組における第一バンド送り手段と第二バンド送り手段とのキャップの周方向での配設ピッチとが異なっていて、
キャップ本体が螺合するスパウトのねじ部は二条ねじであるものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、キャップ初期取付での機械取付するときには、第一バンド送り手段と第二バンド送り手段との働きによってブリッジの破断を防止することができる。
【0028】
また、開封してスパウトから一旦取り外したキャップ本体を再度スパウトに螺着して、そのキャップ本体が閉栓方向に回転しながら降下するときには、第一バンド送り手段に対して閉栓方向の下流側に位置する第二バンド送り手段の下凸の突起が、第一バンド送り手段の上凸の突起に係合することで、前記第二バンド送り手段の下凸の突起自体が、第二バンド送り手段での上開きの凹部の位置に移ることがなくなる。そして、第一バンド送り手段の上凸の突起に係合している第二バンド送り手段の前記下凸の突起は、キャップ本体の降下によって不正開封防止バンドを押し下げるようになる。
【0029】
上述した第二バンド送り手段の下凸の突起が不正開封防止バンドを押し下げることで、再封操作してスパウトに取り付けられたキャップ本体と不正開封防止バンドとの間が、未開封時での間隔(隙間が無い状態、または僅かながら隙間が存在する状態)に比べて大きく開くようになり、目視にてその大きな開きを確認し、開封済のものであることを簡単に判別できるようになるという効果を奏する。
【0030】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明によれば、開封後のキャップ本体をスパウトに取り付けたときに生じるキャップ本体と不正開封防止バンドとの間の大きな開きが、キャップ周方向に亘って形成され易くなり、開封済であるか否かの判別がより一層簡単になるという効果を奏する。
【0031】
(請求項3の発明の効果)
請求項3の発明によれば、一方の組の第一バンド送り手段と第二バンド送り手段との配設ピッチと、他方の組での前記配設ピットとが相違し、キャップが螺着するスパウトのねじ部が二条ねじとされている。
【0032】
そのため、仮に、再封(開封後の閉栓)する際、取り外した時点とは半回転分ずれた状態でキャップ本体が取り付けられて、さらに、キャップ本体側の第二バンド送り手段の下凸の突起が第一バンド手段の上凸の突起の頂部に対応位置し、その頂部から第二バンド送り手段の凹部側に向けて移動するようになっても、各組での凹部と突起とが対応位置しないようになる。
そして、各組での凹部と突起とが対応せず、凹部の凹み部分に突起が入り込まないようになることで、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間に、未開封時とは異なる広さの隙間が形成される。
【0033】
このように開封済のキャップ本体で再封ときに、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間に、未開封時とは異なる広さの隙間が形成され易くなり、開封済であるか否かの判別がより一層簡単になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明のキャップ構造における実施の形態のスパウトにキャップが取り付けられた状態を示すもので、(a)は上方から見た状態を示す説明図、(b)は側方から見た状態を示す説明図、(c)は下方から見た状態を示す説明図である。
【
図2】実施の形態におけるスパウトを示すもので、(a)は
図1の(b)におけるキャップを不図示にした側方から見た状態を示す説明図、(b)は他方の側方から見た状態を示す説明図、(c)は立断面を示す説明図である。
【
図3】キャップ本体を下から見た状態で示す説明図である。
【
図4】不正開封防止バンドを示すもので、(a)は一方の側方から見た状態を示す説明図、(b)は上方から見た状態を示す説明図、(c)は他方の側方から見た状態を示す説明図である。
【
図5】スパウトにキャップを取り付けた立断面を示す説明図である。
【
図6】スパウトにキャップを取り付けて係止用凸体と係止爪とを係止用凸体位置で下方から見た状態を概略的に示す説明図である。
【
図7】第一バンド送り手段と第二送り手段との近接配置を示す説明図である。
【
図9】不正開封防止バンドを下方から見た状態で示す説明図である。
【
図10】下凸の突起と上凸の突起との係止を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
つぎに本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は合成樹脂製のキャップで、
図1に示すように合成樹脂製のスパウト2に螺着するものである。
図2はキャップ1を初期取付する前のスパウト2を表していて、
図1におけるキャップ1を不図示にして一方の側方から見た状態と、他方から見た状態と、立断面とが表されている。
【0036】
(スパウト)
スパウト2は、
図2に示されているように収容容器への取付部分3と筒口部分4とを一体に有していて、筒口部分4から取付部分3にかけて収容物を通す通路が貫通している。筒口部分4の外周には、キャップ1をねじ付けるための外ねじ5が設けられている。前記外ねじ5は二条ねじであり、キャップ1を筒口部分4に被せ付ける際、キャップ1の周方向の角度(筒口部の周方向の角度)が180度で異なる二つの取付位置それぞれからねじ付けることができるようにしている。
【0037】
(キャップ)
上記キャップ1は、内ねじを有して筒口部分に螺合可能なキャップ本体6と、キャップ本体6の周壁7の下端の下方に位置している環状の不正開封防止バンド8とを備えている。キャップ本体6とこのキャップ本体6の下方に位置する不正開封防止バンド8とは、ブリッジ9を介して連結されている。ブリッジ9自体は、周壁7の下端面から不正開封防止バンド8の上端面に渡された柱状体とされていて、
図3と
図4とに示すようにキャップ1の周方向の四箇所に位置する。そして、キャップ本体6が必要時に不正開封防止バンド8から分離できるように破断可能に形成している。
【0038】
(タンパーエビデント要素)
キャップ1とこのキャップ1を螺着したスパウト2とで、タンパーエビデント要素を有するキャップ構造が構成がされている。まず、スパウト2には、上記外ねじ5より下方となる高さ位置であって、螺着したキャップ1の不正開封防止バンド8が対応する高さ位置での筒口部分4に四方に外方に向けて突出する係止用凸体10が突設している。
図5、
図6参照
【0039】
また、
図6、
図9に示すように上記不正開封防止バンド8の内面には、不正開封防止バンド8の周方向に間隔をおいて複数の係止爪11が設けられている。係止爪11それぞれは開栓方向Yに向けて延びて、バンド内面に伏す変形が可能な可撓性を備えている。また、前記係止爪11それぞれは、開封操作時にキャップ本体6を開栓方向Yに向けて回転させるときに、上記係止用凸体10に係止する。
【0040】
開栓操作に際してキャップ本体6と共に不正開封防止バンド8は開栓方向Yに回転しかけるが、上述したように係止用凸体10に係止して停止する。開栓方向Yに回転するキャップ本体6に対し、不正開封防止バンド8は開栓方向Yへは非回転の状態となり、これによってブリッジ9が破断する。
【0041】
キャップ本体6を開栓方向Yに回転させ続けることで、キャップ本体6が上昇しながら不正開封防止バンド8から分離し、スパウト2から取り外すことができる。そして、開封によって取り外したキャップ本体6を再びスパウト2の筒口部分4の上部に置いて、閉栓方向Xに回転させることでキャップ本体6による再封が行なえる。
【0042】
ブリッジ9自体は既に破断されているので、ブリッジ9の破断痕が開封痕となるが、本実施の形態におけるキャップ構造では、開封後の再封において、キャップ本体6と不正開封防止バンド8との間に形成される広い隙間も、確認し易い開封痕となるようにしている。
【0043】
(ブリッジ破断防止)
本実施の形態のキャップ構造では、キャップ初期取付でブリッジ9を破断させないようにするために、
図7と
図8に示されているように第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13をキャップ周方向に近接した状態で配置している。そして、この近接し合う第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13とを組として、二つの組を有しており、この二つの組を、キャップ径方向に対向する位置に配置している。
【0044】
(第一バンド送り手段)
一つの組とする第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13との内、第一バンド送り手段12は、キャップ本体6の周壁7の下部に形成された下開きの凹部14と、不正開封防止バンド8の上部に上方に向けて凸にして形成した突起15とからなるものである。そして、この第一バンド送り手段12では、下開きの凹部14の凹みの空間に上凸の前記突起15が入り込むように設けられている(開封前の状態)。
【0045】
(第二バンド送り手段)
図7に示すように上記第一バンド送り手段12に対し、送り手段非配置部分16を介在させた状態で閉栓方向Xの下流側での近接した位置に、第二バンド送り手段13が配置されている。
【0046】
第二バンド送り手段13は第一バンド送り手段12での凹部と突起との配置が上下逆であって、図示されているように不正開封防止バンド8の上端面を凹陥させてこの不正開封防止バンド8の上部に形成された上開きの凹部17と、キャップ本体6の下部に下方に向けて凸にして形成された下凸の突起18とからなるものである。そして、第二バンド送り手段13では、第一バンド送り手段12と同様に前記上開きの凹部17の凹み部分に下凸の突起18が入り込むように設けられている(開封前の状態)。
【0047】
(凹部と突起の起立部分)
第一バンド送り手段12において、下開きの凹部14と上凸の突起15とのそれぞれの閉栓方向Xでの上流側となる辺部が、互いにキャップ高さ方向に沿っていて相対する起立部分19として形成されている。同じく、第二バンド送り手段13において、上開きの凹部17と下凸の突起18とのそれぞれの閉栓方向Xでの下流側となる辺部も、互いにキャップ高さ方向に沿っていて相対する起立部分19として形成されている。
【0048】
以上のように第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13とが共に上記起立部分19を有している。そのため、キャッピングに際して、キャップ本体6が閉栓方向に回転するときに、第一バンド送り手段12の下開きの凹部14の起立部分19が、周方向で相対する上凸の突起15の起立部分19に当接し、閉栓方向Xに向けて押すようになる。また、第二バンド送り手段13の下凸の突起18の起立部分19が、周方向で相対する上開きの凹部17の起立部分19に当接し、閉栓方向Xに向けて押すようになる。
【0049】
キャッピング時では上述のようにしてキャップ本体6の閉栓方向Xの回転に伴ないながら不正開封防止バンド8も閉栓方向Xに向けて回転するため、ブリッジ9は破断しない。
【0050】
(凹部と突起の傾斜部分)
第一バンド送り手段12において、上記凹部14と上記突起15とのそれぞれの閉栓方向Xでの下流側となる辺部は、共に近接していて平行に傾斜している。そして、キャップ本体6の回転と上昇とが伴う動きの方向に沿う傾斜部分20として形成されている。また、第二バンド送り手段13においても、上記凹部17と上記突起18とのそれぞれの閉栓方向Xでの上流側となる辺部は、共に近接していて平行に傾斜している。そして、キャップ本体6の回転と上昇とが伴う動きの方向に沿う傾斜部分20として形成されている。
【0051】
スパウト2に取り付けられたキャップ1を開封操作してキャップ本体6を開栓方向Yに向けて回転させれば、第一バンド送り手段12のキャップ本体6側の傾斜部分20が、不正開封防止バンド8側の傾斜部分20に摺接し、第二バンド送り手段13のキャップ本体6側の傾斜部分20が、不正開封防止バンド8側の傾斜部分20に摺接して、開栓方向Yの回転と上昇とを伴なう方向へ案内される。そのため、第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13とにおいて凹部と突起との接触が生じるが、支承なく開栓操作が行なえる。
【0052】
(リード角
図8)
上記傾斜部分20の傾斜は、キャップ本体6の回転と上昇とが伴う動きの方向に沿うものであるが、スパウト2の外ねじ5やキャップ本体6の内ねじ21の傾斜とは同じではない。キャップ本体6の断面を示す
図8に基づいて説明すれば、傾斜部分20の傾斜角22は、前記内ねじ21のリード角23より大とされている。
【0053】
そして、傾斜部分20の傾斜角22がリード角23より大であることから、キャップ本体6が開封操作時に開栓方向Yに回転して上昇する際、第一バンド送り手段12の下開きの凹部14の傾斜部分20が、移動しない不正開封防止バンド8における第一バンド送り手段12の上凸の突起15を下方に向けて押す。また、第二バンド送り手段13の下凸の突起18の傾斜部分20が、前記不正開封防止バンド8における第二バンド送り手段13の上開きの凹部17を下方に向けて押して、キャップ本体6が開栓方向Yに移動する。
【0054】
以上のようにしてキャップ本体6は不正開封防止バンド8が押し下げながら開栓方向Yに向けて回転して上昇するため、上記ブリッジ9の破断がより確実に行なわれるようになる。
【0055】
(再封時の隙間形成)
上述したように開封操作時に、キャップ本体6は、非回転の状態で停止した位置にある不正開封防止バンド8を押し下げしながら開栓方向Yに回転し上昇する。この時、不正開封防止バンド8での第一バンド送り手段12における上凸の突起15は押し下げられ、この上凸の突起15が押し下げられて空いた部分を、キャップ本体6の第二バンド送り手段13の下凸の突起18が通過するように設けられている。
【0056】
一旦、スパウト2から取り外したキャップ本体6は、収容物を注出した後などにスパウト2の筒口部分にあてがい、閉栓方向に回すことで再封することができる。上記不正開封防止バンド8は、開封操作でのキャップ本体6からの押し下げ力に反発して、キャップ本体6の上昇移動に伴なって上昇して開封前状態での位置に戻ったり、また、手操作などによって開封前状態での位置に戻ることができるものである(非回転状態は維持)。
【0057】
そして、上記不正開封防止バンド8が元の位置に復帰した状態でも、上述したようにキャップ本体6はスパウト2の筒口部分4に被せ付けて螺着することで再封することができる。
【0058】
このとき、閉栓方向Xに回転して降下するキャップ本体6側の第二バンド送り手段13の下凸の突起18は、不正開封防止バンド8の第一バンド送り手段12の上凸の突起15が存在する位置に向けて移動することとなる。そして、前記下凸の突起18は前記上凸の突起15に対して閉栓方向Xの上流側から係止する。この係止は、下凸の突起18における起立部分19が上凸の突起15の起立部分19とが当接し合う状態となる。
図10
【0059】
そして、キャップ本体6を閉栓方向Xに向けて回転させ降下させても、下凸の突起18が上凸の突起15に係止する状態が解除されず、キャップ本体6側の前記下凸の突起18が不正開封防止バンド8を下方に向けて押し下げるように移動する。
【0060】
そのため、キャップ本体6が最下点に到達したときにも、下凸の突起18が上凸の突起18の閉栓方向Xの上流側に位置して不正開封防止バンド8を押し下げた状態が維持され、キャップ本体6と不正開封防止バンド8との間に、未開封時に比べて格段に広い隙間を形成する。そして、この隙間が開封痕となる。
【0061】
本実施の形態では第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13とを一つの組とし、上述したようにこの組を二つ有していて、上述したようにキャップ径方向に対向するようにして配置されている。そして、開封操作におけるブリッジの破断、キャッピングにおける機械取付でのブリッジ破断を防止する仕組み、さらには再封時にキャップ本体6と不正開封防止バンド8との間に大きな隙間を形成して、これを開封痕とし、開封されたものであることを目視にて容易に判断できるようにした構成を一方の組について説明したが、他方の組についても同様である。
【0062】
(配設ピッチ)
キャップ径方向に対向するようにして配置されている上記二組それぞれにおいて、第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13は上述したように送り手段非配置部分16を間に配置した状態で近接配置されている。そして、二つの組では、前記送り手段非配置部分16のキャップ周方向での長さが異なっている。
【0063】
二つの組の送り手段非配置部分16の長さを異ならせることで、本実施の形態では、
図3に示すように一方の組における第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13とのキャップの周方向での配設ピッチAと、もう一方の組における第一バンド送り手段12と第二バンド送り手段13とのキャップの周方向での配設ピッチBとが異なるように設けられている。
【0064】
そのため、例えば、一方の組のキャップ本体6側の下開きの凹部14と下凸の突起18とは、キャップ本体6が180度回転した状態で、他方の組の不正開封防止バンド8側の上凸の突起15と上開きの凹部17とに対応しないものとなる。
【0065】
そして、上述したようにスパウト2の筒口部分4に設けられている外ねじ5は二条ねじとして構成されていることから、取り外したキャップ本体6を再封に際して筒口部分4に当てがうときに、取り外したときの状態とはキャップ周方向で180度異なる角度で筒口部分4に被せ付けることも可能である。
【0066】
この場合、一方の組のキャップ本体6側の下開きの凹部14と下凸の突起18と、他方の組の不正開封防止バンド8側の上凸の突起15と上開きの凹部17とは、配設ピッチの相違により対応せず、キャップ本体6によって不正開封防止バンド8が押し下げられた状態となり、この両者の間に広い隙間が形成される。
【0067】
勿論、容器を再封するに正規の者が閉栓操作する場合に、適正に再封されるものであるので、広い隙間が形成されたとしても収容物の保存性などについては何ら問題とはならない。
一方、イタズラ目的に再封を試みる際にキャップ本体6の周方向に取付位置を180度で変わってしまうと、上記配設ピッチが相違しているため、キャップ本体6と不正開封防止バンド8との間に広い隙間が生じる。そのため、開封済であることが確認し易く不正開封を抑止することができる。
【0068】
キャップ1の材質は、熱可塑性樹脂(PP:ポリプロピレン樹脂、PE:ポリエチレン樹脂など)を採用することができる。キャップ1の製造については、射出成形によって後工程がなく一体で製造することが望ましいが、後加工(スコアーカットなど)にて上記突起や凹部、ブリッジを形成しても良い。キャップ1の使用用途は、トイレタリー関連の商品でのキャップばかりでなく、いたずら防止機能を付与したい包装容器(飲料キャップなどの食品包装容器)にも使用可能である。キャップの形状についても、スパウトに螺着させる本発明のキャップ構造を実施するものであれば、いずれのサイズ、形状も限定されない。
【符号の説明】
【0069】
1…キャップ
2…スパウト
5…外ねじ
6…キャップ本体
8…不正開封防止バンド
9…ブリッジ
12…第一バンド送り手段
13…第二バンド送り手段
14…下開きの凹部
15…上凸の突起
16…送り手段非配置部分
17…上開きの凹部
18…下凸の突起
19…起立部分
20…傾斜部分
X…閉栓方向
Y…開栓方向
A…一方の組の配設ピッチ
B…他方の組の配設ピッチ