(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/33 20180101AFI20240618BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20240618BHJP
F21S 45/70 20180101ALI20240618BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240618BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20240618BHJP
F21W 102/18 20180101ALN20240618BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240618BHJP
【FI】
F21S41/33
F21S41/148
F21S45/70
F21W102:155
F21W102:20
F21W102:18
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020006300
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮前 篤
(72)【発明者】
【氏名】清水 典子
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-160310(JP,A)
【文献】特開2019-212625(JP,A)
【文献】特開2016-207275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/141
F21S 41/147
F21S 41/30
F21S 41/32
F21S 41/33
F21S 45/70
F21S 41/30
F21V 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型の光源と、
前記光源の下方に配置され、当該光源から下方へ放射される放射光を所定の配光パターンとして車両前方に照射するリフレクタと、を備える車両用灯具であって、
前記リフレクタの反射面が車幅方向に並ぶ複数のセグメントに分割されているとともに、上方から見て前記光源の発光部の光軸と交差する少なくとも一つのセグメントが、カットオフ配光パターンを形成するためのカットオフ配光セグメントとされ、
前記カットオフ配光セグメントの対向車線側に隣接する対向車線側セグメントが、前記カットオフ配光セグメントよりも車両前方に配置されている一方、前記カットオフ配光セグメントを間に挟んで前記対向車線側セグメントとは反対側に隣接するセグメントは、前記カットオフ配光セグメントよりも車両後方に配置されて
おり、
前記カットオフ配光セグメントの対向車線側の側縁部には、凹の加工アールが形成され、
前記凹の加工アールによって反射される前記光源からの放射光は、自車線側に向かうことを特徴とする、車両用灯具。
【請求項2】
前記光源の発光部は長方形状とされ、その各辺が、上方から見て車両前後方向に対し傾斜するように配置されている、
請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの放射光をリフレクタにより反射させ、所定の配光パターンとして車両前方に照射するようにした車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用灯具においては、対向車の運転手を幻惑しないようにロービーム(すれ違い用)の配光パターンが設定されている。この配光パターンは一例を
図4に示すように、車両前方の仮想の鉛直スクリーン上において、水平線Hと垂直線Vとが交差する点の近傍から自車の走行車線側(図の左側であって以下、自車線側ともいう)に向かって斜め上向きに延びる斜めカットオフラインCL1を有しており、これにより対向車線側(図の右側)へのグレアを抑制しながら、自車線側は遠方まで照らせるようになっている。
【0003】
また、車両用灯具としては、いわゆるリフレクタタイプの灯具ユニットを備えたものが知られている(例えば特許文献1、2を参照)。これは、半導体型の光源と、この光源の下方に配置され、当該光源から下方へ放射される光を所定の配光パターンとして車両前方に照射するリフレクタと、を備えている。そして、このリフレクタの反射面に、前記したロービームの配光パターンにおける斜めカットオフラインCL1を形成するための領域が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-026587号公報
【文献】特開2010-198857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来技術のような灯具ユニットにおいて、リフレクタの反射面を左右方向に並ぶ複数のセグメントに分割する場合がある。この場合、斜めカットオフライン付近の光の光度を高めるために、斜めカットオフラインを形成するための領域を含むセグメントを、光源に近い、例えば光源の直下のセグメントとするのが好ましい(以下、カットオフ配光セグメントと呼ぶ)。
【0006】
一例として
図6に示すように、上方から見て光源2の直下に位置するセグメントs1がカットオフ配光セグメントとされ、このセグメントs1が車両前後方向の前方(図において上方)寄りに配置されて、その右左にそれぞれ隣接するセグメントs2,s3は一段、後方(図において下方)に配置される。こうすることで、隣接するセグメント間の段差を繋ぐ側面部tにおいて放射光が反射し、グレアが発生することを回避できる。
【0007】
しかしながら、そうして前方寄りにカットオフ配光セグメントs1を配置していても、その側縁部において反射される光が左右に広がってしまい、対向車線側へのグレアが発生することが分かった。これは、製造工程でリフレクタの反射面を形成する際に、
図7に模式的に示すようにカットオフ配光セグメントs1の側縁部に凸の意図しない曲部(加工アール)Rが成形上、現れてしまうことに起因する。
【0008】
すなわち、カットオフ配光セグメントs1の対向車線側(図の右側)の側縁部に形成された凸の加工アールRに光源2からの放射光L1が反射されると、破線で示す設計時の反射光路よりも外側に広がってしまい、実線で示すように、より対向車線側に反射されるようになる。この結果、上述した
図4に仮想線(二点鎖線)で示すように、車両前方への配光パターンにおいて斜めカットオフラインCL1の右側、すなわち対向車線側にグレアGが発生するのである。
【0009】
かかる問題点を考慮して本発明の目的は、半導体型の光源の下方にリフレクタを備えた車両用灯具において、そのリフレクタの反射面の形状に工夫を凝らし、カットオフ配光セグメントの側縁部の加工アールに起因する対向車線側へのグレアを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明の一つの側面は、半導体型の光源と、この光源の下方に配置され、当該光源から下方へ放射される放射光を所定の配光パターンとして車両前方に照射するリフレクタと、を備える車両用灯具を対象とする。そして、前記リフレクタの反射面を車幅方向に並ぶ複数のセグメントに分割し、上方から見て前記光源の発光部の光軸と交差する少なくとも一つのセグメントを、カットオフ配光パターンを形成するためのカットオフ配光セグメントとする。
【0011】
その上で、前記カットオフ配光セグメントの対向車線側に隣接する対向車線側セグメントを、前記カットオフ配光セグメントよりも車両前方に配置する一方、前記カットオフ配光セグメントを間に挟んで前記対向車線側セグメントとは反対側に隣接するセグメントは、前記カットオフ配光セグメントよりも車両後方に配置したものである。
【0012】
かかる構成により、まず、光源から下方への放射光がリフレクタの反射面において車両前方に向かって反射され、水平若しくは少し下向きに照射される。これにより
図4を参照して上述した所定の配光パターンが形成される。また、光源からの放射光のうち、近い位置に配置されるカットオフ配光セグメントにより反射されたものが、前記の配光パターンにおける斜めカットオフライン付近に照射されるので、十分な光の光度が得られる。
【0013】
さらに、対向車線側セグメントs2がカットオフ配光セグメントs1よりも車両前方に位置することから、
図8に模式的に示すように、カットオフ配光セグメントs1の対向車線側の側縁部には凹の加工アールRが形成される。そして、この凹の加工アールRによって光源2からの放射光L1が反射されるとき、その反射光路は実線で示すように、設計時の反射光路(破線で示す)よりも図において左側、つまり、自車線側に向かうようになる。
【0014】
よって、
図4を参照して上述した配光パターンにおいて、斜めカットオフラインCL1の右側(対向車線側)にグレアGが発生することを抑制できる。なお、カットオフ配光セグメントs1の対向車線側と反対側の側縁部には凸の加工アールが形成されるが、この凸の加工アールによって光源2からの放射光L1は、より自車線側に反射されることになるので、対向車線側へのグレアの発生を招くことはない。
【0015】
好ましくは前記リフレクタの反射面において、前記カットオフ配光セグメントと前記対向車線側セグメントとの間を繋ぐ側面部を、上方から見て車両前後方向に対し15度以下の傾斜角度を有するものとする。こうすると、上述したように凹の加工アールによって反射される光の一部が対向車線側へ向かおうとしても、この反射光を側面部によって遮ることができる。
【0016】
また、好ましくは前記光源の発光部を長方形状とし、その各辺が、上方から見て車両前後方向に対し傾斜するように配置してもよい。こうすると、リフレクタの反射面へ上方から投影される発光部の長方形状の像が傾斜し、反射されて車両前方へ投影される照射光の像も傾斜するようになるから、この像によって好適な角度の斜めカットオフラインを形成し易い。
【発明の効果】
【0017】
一つの側面では本発明によれば、リフレクタの反射面において光源の下方に位置するカットオフ配光セグメントに対して、その対向車線側に隣接する対向車線側セグメントを車両前方に配置し、一方、反対側に隣接するセグメントは車両後方に配置することにより、カットオフ配光セグメントの側縁部の加工アールから自車線側に向かって光が反射されるようになって、対向車線側へのグレアを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の車両用灯具を備えた車両の一例を示す平面図である。
【
図2】一実施形態の車両用灯具のロービームのリフレクタを拡大して示す正面図である。
【
図3】灯具ユニットの構成を説明するための
図2のiii-iii線における断面図である。
【
図4】灯具ユニットの配光パターンの一例を示す説明図である。
【
図5】上方から見てリフレクタの反射面の構造を示す説明図である。
【
図6】従来までの灯具ユニットのリフレクタの反射面の構造を示す説明図である。
【
図7】凸の加工アールによる光の反射について模式的に示す説明図である。
【
図8】凹の加工アールによる光の反射について模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。以下、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両に乗車する運転者から見た方向を示す。また、「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。また、車両外側とは、車両の左右方向の中心を通る車両の前後軸に対して、車両の左右方向で外側を指し、車両内側とは、車両の左右方向で当該前後軸に近い側を指す。
【0020】
[車両用灯具の全体的な構成]
図1は、本実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。図示のように本実施形態の車両用灯具は、車両102の前側の左右のそれぞれに設けられる前照灯101L、101Rであるが、以下では車両用灯具と記載することもある。この車両用灯具は、車両前側に開口したハウジング(図示せず)と、開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)とを備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に複数の灯具ユニット1(
図3を参照)等が配置されている。
【0021】
一例として左右の前照灯101L、101Rは、詳細は図示しないが、ロービーム及びハイビームのそれぞれの灯具ユニット1が車幅方向に並んで設けられており、
図2に示すようにロービームの2つのリフレクタ3Lとハイビームのリフレクタ(図示せず)とが一体化され、リフレクタアセンブリ30として形成されている。このリフレクタアセンブリ30は、右側の前照灯101Rのものであって、図示しないハイビームのリフレクタは、ロービームのリフレクタ3Lよりも車両外側に位置している。
【0022】
なお、上述したハイビーム及びロービームのリフレクタの左右の配置は逆であってもよい。また、特に言及しない限り左側の前照灯101Lについても同様の構成であってよい。例えば左側の前照灯101Lにおいて灯具ユニット1の配置は、右側の前照灯101Rに対して左右対称であってよい。
【0023】
以下では、主に
図3を参照して、右側の前照灯101Rにおけるロービームの灯具ユニット1の構造について詳細に説明する。その他の灯具ユニットも概略構造は同じなので、特に言及する必要がなければ便宜上、灯具ユニット1、リフレクタ3などと表記し、区別せずに説明する。なお、
図3は、
図2のiii-iii線における断面図である。
【0024】
図3に表れているように灯具ユニット1は、リフレクタタイプのもので、半導体型の光源2と、この光源2の下方に配置され、当該光源2から下方へ放射される放射光L1を所定の配光パターンとして車両前方に照射するリフレクタ3と、を備えている。なお、ロービームの灯具ユニット1の配光パターンについて具体的には、
図4を参照して後述する。
【0025】
光源2は、例えばLED、OLED(有機EL)などの自発光半導体を備えた半導体型の光源であって、発光部20と基板21とによって構成されている。発光部20は、発光チップ(LEDチップ)を基板21の下面のほぼ中央に実装され、下方に向けて発光する。なお、発光部20は、発光チップ(LEDチップ)を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)からなる場合もある。
【0026】
発光部20は一例として長方形状とされ、複数個の正方形の発光チップを配列して構成されている。なお、発光部20においては、1個の長方形の発光チップ、又は1個の正方形の発光チップを使用してもよい。また、発光部20においては、発光チップを1列又は複数列に配置して使用してもよい。
【0027】
リフレクタ3は、回転放物面の一部の形状、すなわち、回転放物面の上部を除いた下部からなる形状であり、その内面には、反射面300が設けられている。この反射面300は、下側に向いている発光部20の発光面と対向するパラボラ系の自由曲面からなる。なお、この反射面300の基準焦点は、光源2の発光面の中心又はその近傍に位置づけられている。
【0028】
また、
図2に表れているようにリフレクタ3の反射面300は、左右方向に並ぶ複数のセグメントに分割されている。ロービームのリフレクタ3では、左右の中央付近にあるセグメント31、言い換えると光源2の直下にあるセグメント31(上方から見て光源2の発光部20の光軸と交差するセグメント)が、斜めカットオフ配光パターンを形成するために用いられる(以下、カットオフ配光セグメントと呼ぶ)。
【0029】
より具体的に、本実施形態では、リフレクタ3の左右中央部に1個のカットオフ配光セグメント31が設けられ、その左側に3個の、また、右側には4個の配光セグメント(カットオフ配光セグメント31に隣接するもののみ、符号32、33を付す)が設けられている。そして、カットオフ配光セグメント31が形成するカットオフ配光パターンと、その他の配光セグメントが形成する配光パターンとが重なり合うことで、以下に説明するようにロービームの配光パターンが形成される。
【0030】
[ロービームの配光パターン]
すなわち、一般的に車両のロービームにおいては、対向車の運転手を幻惑しないように、カットオフラインを有する配光パターンが設定されている。
図4は、車両前方における灯具ユニット1の光軸に垂直な仮想の平面(鉛直スクリーン)上の照度の分布(断面照度)を、灯具ユニット1の配光パターンとして模式的に示したものである。なお、
図4において、ラインVはスクリーン上での鉛直基準線を示し、ラインHは水平基準線を示す。
【0031】
図4に実線で表れているように、カットオフ配光セグメント31からの照射光は、鉛直スクリーン上において水平線Hと垂直線Vとが交差する近傍(エルボー点)から自車線側(図の左側)に向かって水平線Hよりも斜め上向きに延びる斜めカットオフラインCL1を形成する。また、エルボー点から略水平線Hに沿って対向車線側(図の右側)に水平に延びる水平カットオフラインCL2は、以下に述べるように他の配光セグメントからの照射光が形成する。
【0032】
一例として本実施形態では、カットオフ配光セグメント31に隣接する2つの配光セグメント32、33からの照射光が、水平カットオフラインCL2の形成に寄与している。すなわち、自車線側(図の左側)の斜めカットオフラインCL1を含む中央寄りの配光パターンP1が、カットオフ配光セグメント31と、これに隣接する2つの配光セグメント32、33からの照射光によって形成されている。
【0033】
この配光パターンP1の光の光度を高めることで、自車線側を遠方まで照らし、良好な前方視認性が得られるようになる。そのために本実施形態では、上述したように光源2の直下に位置し、光源2に近いセグメント31をカットオフ配光セグメント31としている。そして、このカットオフ配光セグメント31で反射された光源2(発光部20)の像が、斜めカットオフラインCL1の付近に投射される。
【0034】
すなわち、
図4においては斜めカットオフラインCL1の付近の長方形の領域Aが、光源2の像を表している。本実施形態では光源2の発光部20を長方形状とし、
図5に示すように上方から見て、左右両側の各辺が車両前後方向に対し例えば75度の傾斜角度を有するように配置している。こうすると、光源2からの放射光L1は、発光部20の形状を表す傾斜した長方形の像として反射面300に投影される。
【0035】
そして、反射面300で反射された放射光L2が車両前方に向かって照射されると、水平線Hに対し約15度傾斜した前記長方形の領域Aを形成する。つまり、本実施形態では光源2の発光部20を傾斜させることで、リフレクタ3の反射面300へ上方から投影される発光部20の像も傾斜し、反射されて車両前方へ投影される照射光の像も傾斜することになり、この像によって水平線Hから適度に傾斜した斜めカットオフラインCL1を形成し易い。
【0036】
さらに、前記配光パターンP1の外側には、前記3つのセグメント31~33を除いたその他の配光セグメントからの照射光が、
図4に破線で示す配光パターンP2として重ね合わされ、これによりロービームの配光パターンが形成される。このように2つの配光パターンP1,P2を重ね合わせることにより、外側に向かって徐々に光の光度が低下する好適な分布が得られる。
【0037】
なお、
図4に表れているようにロービームの配光パターンの上方には、水平線Hよりも上側においてエルボー点から自車線側及び対向車線側の両方に延びる配光パターンP3が形成される(オーバーヘッドパターン)。これは、車道の側方に設けられた案内板や道路標識等を運転者が視認し易いように、強すぎない適度の光量で照射するためのものである。
【0038】
[リフレクタの反射面の詳細構造]
ところで、前記のようにロービームの灯具ユニット1においては、
図5に表れているように、リフレクタ3の反射面300における光源2の直下のセグメント31を、カットオフ配光セグメント31としている。この場合に従来一般的には、
図6に示すように、カットオフ配光セグメントs1の右左にそれぞれ隣接するセグメントs2,s3を一段、後方に配置することで、隣接するセグメント間の段差を繋ぐ側面部tにおいて光が反射しないようにしている。
【0039】
しかしながら、そのように前寄りに配置したカットオフ配光セグメントs1の側縁部には製造工程で反射面300を形成する際に、
図7に模式的に示すように意図しない凸の曲部(加工アール)Rが形成されてしまう。
図7は対向車線側(図の右側)の側縁部に形成された凸の加工アールRを示しており、ここにおいて光源2からの放射光L1が反射されると、破線で示す設計時の反射光路よりも外側に広がって、実線で示すように対向車線側に向かうようになる。
【0040】
こうして対向車線側に向かう光によって、上述の
図4には仮想線(二点鎖線)で示すが、斜めカットオフラインCL1の付近の長方形の領域Aが対向車線側(図の右側)にずれたようになって、水平線Hよりも上にグレアGが発生する。つまり、従来の反射面の構造では、製造工程で必ず形成されてしまう側縁部の凸の加工アールRによって、対向車線側へのグレアの問題が発生することになる。
【0041】
この点に着目して本実施形態では、前記の
図5に表れているように、カットオフ配光セグメント31の対向車線側に隣接するセグメント32(以下、対向車線側セグメント32と呼ぶ)を、カットオフ配光セグメント31よりも車両前方に配置している。また、カットオフ配光セグメント31と対向車線側セグメント32との間を繋ぐ側面部34は、車両前方に向かって対向車線側セグメント32に近づくように傾斜させている。
【0042】
この側面部34の傾斜角度θは、上方から見て車両前後方向に対し例えば1~15度くらいに設定されていればよく、5~7度くらいが好ましい。なお、カットオフ配光セグメント31を間に挟んで、対向車線側セグメント32とは反対側に隣接するセグメント33(以下、自車線側セグメント33と呼ぶ)は、カットオフ配光セグメント31よりも車両後方に配置している。
【0043】
このような配置によって本実施形態では、上述した対向車線側へのグレアの発生を抑制することができる。
図6と対比して説明するために
図8に模式的に示すように、対向車線側セグメント32(s2)がカットオフ配光セグメント31(s1)よりも車両前方に位置する場合、このカットオフ配光セグメント31(s1)の対向車線側の側縁部には凹の加工アールRが形成される。
【0044】
そして、その凹の加工アールRによって光源2からの放射光L1が反射されるとき、反射光路は
図8に実線で示すように、設計時の反射光路(破線で示す)よりも図において左側、つまり、自車線側に向かうようになる。しかも、仮に対向車線側(図の右側)に少し光が反射されたとしても、この光は対向車線側セグメント32との間の側面部34によって遮られる。
【0045】
よって、製造工程で形成されてしまうカットオフ配光セグメント31の側縁部の凸の加工アールによって、
図4を参照して上述したように斜めカットオフラインCL1の右側(対向車線側)にグレアGが発生することを抑制できる。なお、図示はしないが、カットオフ配光セグメント31の自車線側の側縁部には凸の加工アールが形成されるが、この凸の加工アールによって光源2からの放射光L1は、より自車線側に反射されるようになるので、問題はない。
【0046】
[実施形態の車両用灯具が奏する効果]
以上、説明したように本実施形態に係る車両の前照灯101Rでは、ロービームのリフレクタ3の反射面300を左右方向に並ぶ複数のセグメントに分割し、光源2の直下にあるセグメント31をカットオフ配光セグメント31としている。このことで、車両前方に向かって照射される光の配光パターンの中に形成される斜めカットオフラインCL1付近の光の光度を高めることができる。
【0047】
そして、本実施形態によれば、前記カットオフ配光セグメント31の対向車線側に隣接する対向車線側セグメント32を、カットオフ配光セグメント31よりも車両前方に配置する一方、反対側に隣接する自車線側セグメント33は車両後方に配置することで、カットオフ配光セグメント31の側縁部の加工アールにおいて反射された放射光が対向車線側に向かい、グレアが発生することを抑制できる。
【0048】
[他の実施形態]
以上、本発明の望ましい実施形態について詳述したが、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、光源2の直下に位置する1つのカットオフ配光セグメント31よりも車両前方に対向車線側セグメント32を配置し、車両後方に自車線側セグメント33を配置している。
【0049】
本発明は、前記の構成に限ることなく、例えば光源2が、上方から見て2つのカットオフ配光セグメント31に跨るように配置されている場合、そのうちの対向車線側のカットオフ配光セグメント31の対向車線側に隣接する対向車線側セグメント32を車両前方に配置し、自線側のカットオフ配光セグメント31の自車線側に隣接する自車線側セグメント33車両後方に配置すればよい。また、前記2つのカットオフ配光セグメント31については、対向車線側のものを自車線側のものよりも車両前方に配置すればよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、長方形状の光源2(発光部20)の各辺が、上方から見て車両前後方向に対し傾斜するように配置しているが、これに限らず、光源2(発光部20)の左右両側の辺が車両前後方向に沿うように配置してもよい。このようにしても、リフレクタ3の反射面300の角度を適切に設定すれば、配光パターンにおいて水平線Hから適度に傾斜した斜めカットオフラインCL1を形成できる。
【0051】
また、上述した実施形態では、
図5に示したように、カットオフ配光セグメント31と対向車線側セグメント32との間の側面部34を、車両前後方向に対し例えば1~15度くらいの角度θで傾斜させているが、この傾斜角度θは15度以上であってもよい。
【0052】
さらに、上述した実施形態では、車両の通行区分がいわゆる左側通行であることを想定して、自車線側を左側、対向車線側を右側としているが、これにも限定されず、法規上、いわゆる右側通行の国や領域においては自車線側を右側、対向車線側を左側とすればよい。言い替えると右ハンドルの車両において自車線側は左側、対向車線側は右側になり、左ハンドルの車両において自車線側は右側、対向車線側は左側になる。
【符号の説明】
【0053】
1 灯具ユニット
2 半導体型の光源
20 発光部
3 リフレクタ
31(s1) カットオフ配光セグメント
32(s2) 対向車線側セグメント
33(s3) 自車線側セグメント
300 リフレクタの反射面
101L 前照灯
101R 前照灯(車両用灯具)
102 車両
L1 光源からの放射光
θ 側面部の傾斜角度