(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240618BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B32B27/32 D
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020061856
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】丹生 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】芋田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-053071(JP,A)
【文献】特開平08-108506(JP,A)
【文献】特開平08-108507(JP,A)
【文献】特開2020-040258(JP,A)
【文献】特開2000-318104(JP,A)
【文献】特開平05-200956(JP,A)
【文献】特開平10-193541(JP,A)
【文献】特開2005-088344(JP,A)
【文献】特開昭63-148144(JP,A)
【文献】特開昭49-041476(JP,A)
【文献】特開2004-160987(JP,A)
【文献】特開平06-055714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102975446(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド層とポリオレフィン層とが積層されている2層共押出積層フィルムにおいて、
前記2層共押出積層フィルムは、2軸延伸されており、
前記ポリアミド層は、前記ポリオレフィン層の厚みの1.5~5%の厚みを有している
と共に、
突き刺し強度(JIS Z-1707)が7.2N以上の範囲にあることを特徴とする2層共押出積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン層を形成しているポリオレフィンがエチレン系樹脂である請求項1に記載の2層共押出積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミド層を形成しているポリアミドが、ナイロン6である請求項1または2に記載の2層共押出積層フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド層の厚みが2~15μmの範囲にある請求項1~3の何れかに記載の2層共押出積層フィルム。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の2層共押出積層フィルムからなり、前記ポリオレフィン層が内側に位置している袋状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン層の上にポリアミド層が積層された2層構造の共押出積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィンは、非常に安価であり、成形性や透明性も良好であり、衛生性や耐薬品性も良好であり、さらにはヒートシール性も良好であることから、フィルムとしてパウチなどの包装材用途に広く使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリオレフィンフィルムは、耐衝撃強度や突き刺し強度等の強度特性や酸素バリア性などに乏しく、このため、包装用フィルムとしては、これらの特性を改善するために、他の樹脂と積層して使用される場合が多い。
例えば、特許文献1には、最内層のヒートシール樹脂層(ポリオレフィン層)に、ポリアミド樹脂層(最外層)が、アモルファスナイロン樹脂層やエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂などの中間層を介して積層されている包装用複合フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、ポリエチレンのシーラント重合体層の上に複数のポリアミド層が接着樹脂層を介して設けられている共押出積層フィルムが開示されている。
これら特許文献1,2に開示されている技術は、何れもポリオレフィンの層にポリアミドの層を積層して多層化することにより、ポリオレフィンの物性改善を図っている。
【0004】
ところで、最近では、環境対策の観点から材料のモノマテリアル化が望まれており、特に包装の分野では、プラスチックを多量に消費するため、モノマテリアル化によりリサイクル性を向上させることが強く望まれている。
【0005】
他の樹脂の層、例えばポリアミドの層をポリオレフィンの層に積層させることによりポリオレフィンの物性改善を図る従来の技術は、ポリオレフィン以外の材料を多量に使用するため、このようなモノマテリアル化の要求に答えるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-238217号公報
【文献】特開平8-118570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、ポリオレフィン層とポリアミド層との2層共押出積層フィルムであって、少ないポリアミドの使用量でポリオレフィンの物性改善が図られている2層共押出積層フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の2層共押出積層フィルムにより作製された袋状容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ポリアミド層とポリオレフィン層とが積層されている2層共押出積層フィルムにおいて、
前記2層共押出積層フィルムは、2軸延伸されており、
前記ポリアミド層は、前記ポリオレフィン層の厚みの1.5~5%の厚みを有していると共に、
突き刺し強度(JIS Z-1707)が7.2N以上の範囲にあることを特徴とする2層共押出積層フィルムが提供される。
【0009】
本発明の2層共押出積層フィルムでは、
(1)前記ポリオレフィン層を形成しているポリオレフィンがエチレン系樹脂であること、
(2)前記ポリアミド層を形成しているポリアミドが、ナイロン6であること、
(3)前記ポリアミド層の厚みが2~15μmの範囲にあること、
が好適である。
【0010】
本発明によれば、また、上記の2層共押出積層フィルムからなり、前記ポリオレフィン層が内側に位置している袋状容器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の2層共押出積層フィルムは、ポリオレフィン層とポリアミド層との2層構造を有するものであるが、ポリアミド層の厚みがポリオレフィン層に比して非常に薄く(ポリオレフィン層の厚みの1.5~5%)、同時に、この2層フィルムは延伸されている。即ち、ポリアミド層の厚みがポリオレフィン層に比して極めて薄いため、ポリアミドの使用量が少なく、例えば、このフィルムの製造に使用する全樹脂量(ポリオレフィンとポリアミドとの合計量)の5%以下と著しく少ない量に、ポリアミド量を設定することができる。しかも、2層共押出積層フィルムは、ポリオレフィン層及びポリアミド層の何れも二軸延伸されている。このため、ポリアミド層の厚みが非常に薄いにもかかわらず、ポリオレフィン層の物性改善(例えば高強度化)が図られている。
このように、本発明によれば、ポリアミドによりポリオレフィンの物性改善を図りながら、ポリアミドの使用量が少ないため、モノマテリアル化によるリサイクル適正も向上している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の2層共押出積層フィルムの層構造を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の2層共押出積層フィルムは、ポリオレフィンとポリアミドとの2層共押出を行い、次いで2軸延伸を行うことにより得られるものであり、
図1に示されているように、ポリオレフィン層1とポリアミド層3との2層構造を有する。
【0014】
ポリオレフィン層1;
ポリオレフィン層1は、ヒートシール樹脂層としても機能するものであり、フィルムの作製に使用される公知のオレフィン系樹脂から形成される。
このようなオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などを挙げることができる。
また、かかるポリオレフィンは、フィルムを形成するに足る分子量を有していればよい。
本発明においては、ポリアミド層による高強度化が顕著に発現するという観点から、このポリオレフィンは、エチレン系樹脂、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンを主体とするエチレンとα-オレフィンとの共重合体であることが好適である。
【0015】
かかるポリオレフィン層1の厚みt1は特に制限されず、用途に応じて適宜の厚みに設定することができる。例えば、ポリオレフィン層1のヒートシール性(熱融着性)を利用し、ポリオレフィン層1を内面側にしてのヒートシールにより袋状容器を成形する場合には、ポリオレフィン層の厚みt1は、30~250μm、特に50~150μmの範囲にあることが好適である。
【0016】
ポリアミド層3;
ポリアミド層3は、ポリオレフィン層1の強度等の物性改善を目的として積層されているものである。
このようなポリアミド層3の形成に使用されるポリアミドとしては、特に制限されず、種々のものを例示することができるが、一般的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体、芳香族ナイロン(例えばポリメタキシリレンアジパミド)等が好適に使用される。特に強度の改善という観点からは、ナイロン6が最も好適である。後述する2軸延伸により高度に配向結晶化され、著しい高強度化を実現できるからである。
【0017】
上記のポリアミドもフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、例えば、濃硫酸中1.0g/dlの濃度で且つ30℃の温度で測定した相対粘度(ηrel)が1.1以上、特に1.5以上であることが好適である。
【0018】
ところで、本発明においては、かかるポリアミド層3の厚みt2は、前述したポリオレフィン層1の厚みt1の1.5~5%、好ましくは3~5%の範囲でなければならない。これにより、リサイクルに適用し得る程度のモノマテリアル化を実現しながら、ポリオレフィン層1の物性改善、特に高強度化を図ることができる。例えば、ポリエチレンの単層フィルムは、このフィルムの突き刺し強度(JIS Z-1707)は、高くとも4.5N程度に過ぎないが、本発明では、そのような延伸ポリプロピレンフィルムの上にポリアミド層3が延伸された形態で設けられているため、フィルムの突き刺し強度を7.2N以上、特に9.0N以上に向上させることができ、同一厚みでの延伸ポリエチレンフィルムと比較して、160%以上、特に200%以上も突き刺し強度の向上が達成される。
【0019】
即ち、本発明の2層共押出積層フィルムでは、ポリエチレン層1をヒートシール層として利用し、ヒートシールにより他の基材と接合した場合、あるいはこのフィルム同士を接合して袋状容器と接合した場合にも、その高い強度は失われることがない。熱溶融によってポリオレフィンの延伸による配向結晶が破壊された場合にも、ポリエチレン層1の上層に存在している延伸されたポリアミド層3によって強度が保持されているからである。
【0020】
2層共押出積層フィルムの製造;
上述した層構造の積層フィルムは、ポリオレフィンとポリアミドとの共押出により2層フィルムを作製したのち、縦方向及び横方向に延伸する2軸延伸に供することにより製造される。
【0021】
共押出しによる製膜は、いわゆる押し出し機先端に取り付けられたTダイからの押出による行うこともできるし、インフレーション成形による製膜によっても行うことができる。これらの成膜方法は、製膜後、そのまま2軸延伸を行うことも可能である。
【0022】
また、この共押出により得られるフィルムにおけるポリアミド層及びポリオレフィン層の厚みは、ポリアミド層の厚み/ポリオレフィン層の厚みが、前述したt2/t1を満足する範囲となるように設定しておく。各層の厚み比がこの範囲外となるように設定されていると、ポリアミド層による高強度化を実現することが困難となったり或いはモノマテリアル化が不満足となってしまう。
【0023】
さらに、2軸延伸は、上記の共押出によるフィルムの高強度化を図るために必要な処理であり、それ自体公知の手段で行われる。具体的には、共押出により得られたフィルムを、ポリオレフィン及びポリアミドのガラス転移点以上融点未満の温度で、縦方向及び横方向に延伸することにより行われる。延伸倍率は、過延伸によりフィルムが破断しない程度であれば特に制限されないが、一般には、縦横ともに2倍以上、特に2.5~4倍程度するのがよい。これにより、ポリオレフィン層1及びポリアミド層3が配向結晶化され、高強度化を実現することができる。
【0024】
このようにして得られる本発明の2層共押出積層フィルムは、延伸されたポリアミド層3により高い強度が確保されており、このような高い強度は、ポリオレフィン層1を利用してのヒートシールによっても損なわれない。また、ポリアミド層3の存在により、酸素に対するバリア性も向上している。さらに、ポリアミド層3が、ポリオレフィン層1の厚みに比して非常に薄いため(ポリオレフィン層の1.5~5%、特に3~5%)、モノマテリアル化の要求を満足しており、このフィルムはリサイクル適正に非常に優れている。
【0025】
特に本発明の2層共押出積層フィルムは、ポリオレフィン層1同士が対面するように重ね合わせてのヒートシール(3方シール、四方シール等)により形成された包装袋として、各種物質を収容して使用に供される。このような包装袋は、ポリオレフィン層1の配向結晶が破壊されているにもかかわらず、9.0N以上の突き刺し強度(JIS Z-1707)を示す。
【実施例】
【0026】
本発明の優れた効果を、次の実験例で示す。フィルムの突き刺し強度は以下の方法により測定した。
【0027】
[突き刺し強度]
フィルムの突き刺し強度は、JIS Z-1707(1997)に準拠して測定した。測定数n=3として平均値を測定値とした。
【0028】
<実施例1~11>
ポリオレフィン層樹脂として、密度0.91g/cm3の低密度ポリエチレン樹脂、ポリアミド層樹脂として、密度1.14g/cm3のナイロン6を、それぞれ2台の押出機に投入し、Tダイから溶融多層共押出しし、2層共押出積層フィルムを得た。延伸倍率は縦横それぞれ2.5倍とした。得られたフィルムの断面の厚みを顕微鏡で測定し、厚み比率を算出した。これらを突き刺し強度の結果とともに、表1に示す。
【0029】
<比較例1~4>
ポリオレフィン樹脂層単層にする以外は実施例5~8と同様にしてフィルムを作成した。評価結果は表1に示す。
【0030】
【0031】
<実施例12>
実施例1で作成した2層共押出積層フィルムを用い、一辺が開口した包装体(130mm×213mm)を作成した。具体的には、実施例1で作成した2層共押出積層フィルムを2枚用意し、ポリオレフィン層が互いに対向するように重ねた。次に、シール部に対応するポリアミド層の表面に180℃に設定されたシールバーをあてた。シール部は、内容物を充填するための一辺を残して形成した。これにより包装袋を得た。その後、開口した残りの一辺から内容物として水300gを充填し、該一辺を同様に180℃でヒートシールすることで、内容物が充填された包装袋を作成した。該内容品が充填された包装袋を床面と水平となる姿勢で高さ100cmから5回落下させても、破袋の発生はなかった。
以上の実施例から、ポリオレフィンとポリアミドを2層共押出積層フィルムとすることにより、モノマテリアルの観点からリサイクル性に優れるとともに、包装袋としたときにも十分な強度を備えたフィルムとなっていることが分かる。
【符号の説明】
【0032】
1:ポリオレフィン層
3:ポリアミド層