(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】フィルムヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/86 20060101AFI20240618BHJP
B60J 1/20 20060101ALI20240618BHJP
G01S 7/40 20060101ALI20240618BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H05B3/86
B60J1/20 C
G01S7/40 147
H05B3/20 316
(21)【出願番号】P 2020069085
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩太郎
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-140690(JP,U)
【文献】特開2019-096617(JP,A)
【文献】特開2017-215243(JP,A)
【文献】特開2003-170739(JP,A)
【文献】特開2004-189155(JP,A)
【文献】国際公開第2021/206022(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
H05B 3/86
B60J 1/20
G01S 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムヒータであって、
電気絶縁性を有するとともに電波送受信部(4)から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている第1非導電部(311)と、電気絶縁性を有するとともに前記振動方向と交差する方向に延びている第2非導電部(312)と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部(35)とを含む透明導電体(30)と、
前記発熱部に接続されている第1電極(41)と、
前記発熱部に接続されている第2電極(42)と、
前記発熱部に接続されている第3電極(43)と、
を備え、
前記発熱部は、前記第1非導電部に隣接する第1導電部(361)と、前記第2非導電部に隣接する第2導電部(362)とを含み、
前記第1電極と前記第2電極とによって前記発熱部が通電されて前記第1電極から前記第3電極を経由して前記第2電極に向かう電流が流れ、
前記第1導電部は、前記第1電極から前記第3電極に向かう電流が前記第1導電部に流れることにより発熱し、
前記第2導電部は、前記第3電極から前記第2電極に向かう電流が前記第2導電部に流れることにより発熱するフィルムヒータ。
【請求項2】
前記第1導電部は、前記第1非導電部が延びている方向に延びており、
前記第2導電部は、前記第2非導電部が延びている方向に延びており、
前記第1電極から前記第3電極に向かう電流は、前記第1非導電部が延びている方向に沿う方向に流れ、
前記第3電極から前記第2電極に向かう電流は、前記第2非導電部が延びている方向に沿う方向に流れる請求項1に記載のフィルムヒータ。
【請求項3】
前記第1電極は、前記発熱部のうち前記第1導電部の一端側(351)に接続されており、
前記第2電極は、前記発熱部のうち前記第2導電部の一端側(352)に接続されており、
前記第3電極は、前記発熱部のうち前記第1導電部の他端側(353)と、前記発熱部のうち前記第2導電部の他端側(354)とに接続されている請求項1または2に記載のフィルムヒータ。
【請求項4】
電気絶縁性を有するとともに前記第1電極と前記第2電極との間に配置される第1電極間非導電部(511)と、
電気絶縁性を有するとともに前記第2電極と前記第3電極との間に配置される第2電極間非導電部(512)と、
電気絶縁性を有するとともに前記第3電極と前記第1電極との間に配置される第3電極間非導電部(513)と、
をさらに備え、
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極、前記第1電極間非導電部、前記第2電極間非導電部および前記第3電極間非導電部は、前記発熱部の外周に沿う方向に延びる同一線上に配置されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載のフィルムヒータ。
【請求項5】
前記第1電極と前記第3電極とに接続されることにより前記第1電極から前記第1導電部に流れる電流を減少させる、または、前記第2電極と前記第3電極とに接続されることにより前記第3電極から前記第2導電部に流れる電流を減少させる分流部(75)をさらに備える請求項1ないし3のいずれか1つに記載のフィルムヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、ミリ波透過性を有するエンブレムに用いられるヒータが知られている。このヒータは、通電されることにより発熱する線状の発熱部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、特許文献1に記載されているようなエンブレム内の温度分布のバラつきを小さくするために、発熱部の形状を線状ではなく面状にすることがある。しかし、発熱部が面状である場合、発熱部が線状である場合と比較して、発熱部の導電部が大きくなる。これにより、面状の発熱部を備えるエンブレムでは、線状の発熱部を備えるエンブレムと比較してミリ波等の電波が吸収されやすくなる。このため、面状の発熱部を備えるエンブレムに向かって送信される電波の減衰は、線状の発熱部を備えるエンブレムに向かって送信される電波と比較して大きくなる。したがって、特許文献1に記載されているようなエンブレムに面状の発熱部を適用すると、エンブレムに向かって送信される電波は、エンブレムを適切に透過しないことがある。
【0005】
本開示は、電波の減衰を抑制するフィルムヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、フィルムヒータであって、電気絶縁性を有するとともに電波送受信部(4)から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている第1非導電部(311)と、電気絶縁性を有するとともに振動方向と交差する方向に延びている第2非導電部(312)と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部(35)とを含む透明導電体(30)と、発熱部に接続されている第1電極(41)と、発熱部に接続されている第2電極(42)と、発熱部に接続されている第3電極(43)と、を備え、発熱部は、第1非導電部に隣接する第1導電部(361)と、第2非導電部に隣接する第2導電部(362)とを含み、第1電極と第2電極とによって発熱部が通電されて第1電極から第3電極を経由して第2電極に向かう電流が流れ、第1導電部は、第1電極から第3電極に向かう電流が第1導電部に流れることにより発熱し、第2導電部は、第3電極から第2電極に向かう電流が第2導電部に流れることにより発熱するフィルムヒータである。
【0007】
第1非導電部および第2非導電部は、電気絶縁性を有するため、電波送受信部から送信される電波を吸収しにくい。これにより、電波の減衰が抑制される。また、第1非導電部および第2非導電部は、電波送受信部から送信される電波に含まれる電界の振動方向に交差する方向に延びている。これにより、電界の振動方向における第1導電部の長さは、第1非導電部がこの電波に含まれる電界の振動方向と平行である場合と比較して、小さくなる。また、電界の振動方向における第2導電部の長さは、第2非導電部がこの電波に含まれる電界の振動方向と平行である場合と比較して、小さくなる。このため、発熱部のうち、電波に含まれる電界の作用によって誘電分極する部分が小さくなる。したがって、電波に含まれる電界の作用による発熱部の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、電波の減衰が抑制される。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のフィルムヒータが用いられるエンブレムが取り付けられた車両の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態のフィルムヒータ20は、車両1のエンブレム5に用いられる。まず、この車両1について説明する。
【0012】
車両1は、
図1および
図2に示すように、フロントグリル2、ヘッドライト3、電波送受信部4およびエンブレム5を備える。なお、以下では、説明のために、車両1の前方に対して上側を、単に、上側と適宜記載する。また、車両1の前方に対して下側を、単に、下側と適宜記載する。さらに、車両1の前方に対して左側を、単に、左側と適宜記載する。また、車両1の前方に対して右側を、単に、右側と適宜記載する。
【0013】
フロントグリル2は、車両1のうち前側に配置されている。また、フロントグリル2は、2つのヘッドライト3の間に配置されている。さらに、フロントグリル2は、車両1の外部の空気を車両1のエンジンルームに導入する。
【0014】
電波送受信部4は、
図2に示すように、車両1の前方の図示しない物体に電波を送信する。この送信された電波は、後述のエンブレム5を透過して車両1の前方の物体で反射する。また、この物体で反射された電波は、エンブレム5を透過する。そして、電波送受信部4は、この物体で反射された電波を受信する。さらに、電波送受信部4は、この送受信した電波から得られる情報に基づいて、車両1の前方の物体の相対速度および相対位置に応じた信号を出力する。なお、
図2において、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rは、2点鎖線で模式的に示されている。
【0015】
また、電波送受信部4により送信される電波は、例えば、ミリ波である。ミリ波とは、波長が1~10mm、周波数が30~300GHzの電波である。さらに、ここでは、電波送受信部4から送信される電波の進行方向は、車両1の前方に一致する。また、電波に含まれる電界の振動方向は、電波の進行方向に直交する。このため、ここでは、この電波に含まれる電界の振動方向は、車両1の左右方向に一致する。さらに、この電波に含まれる磁界の振動方向は、電波の進行方向とこの電波に含まれる電界の振動方向とに直交する。このため、ここでは、電波に含まれる磁界の振動方向は、車両1の上下方向に一致する。なお、電波の進行方向、電波に含まれる電界の振動方向および電波に含まれる磁界の振動方向は、例えば、電波送受信部4が配置される向き等によって決定される。
【0016】
エンブレム5は、
図1に示すように、ここでは、フロントグリル2に配置されている。また、エンブレム5は、
図2に示すように、車両1の外部から電波送受信部4が見えないように、電波送受信部4に対して車両1の前側に配置されている。これにより、車両1の見栄えが向上する。
【0017】
以上のように、車両1は構成されている。
【0018】
次に、この車両1に用いられるエンブレム5について説明する。
【0019】
エンブレム5は、
図2および
図3に示すように、基材10、図示しない意匠層およびフィルムヒータ20を備える。
【0020】
基材10は、楕円板状に樹脂で形成されている。この基材10に用いられる樹脂は、例えば、誘電正接が比較的小さいAESである。なお、誘電正接とは、誘電体内での電気エネルギー損失の度合いを表す指標値である。この誘電正接が小さいほど、ミリ波等の電波が吸収されにくく熱エネルギーに変換されにくい。また、AESとは、アクリロニトリルーエチレンースチレンの共重合体である。
【0021】
図示しない意匠層は、基材10に形成されている。この意匠層により、車両1の見栄えが向上する。
【0022】
フィルムヒータ20は、基材10に配置されている。また、フィルムヒータ20の厚さは、例えば、100~500μmである。具体的には、フィルムヒータ20は、
図3に示すように、透明導電膜30、第1電極41、第2電極42、第3電極43、電極間非導電部50、第1リード線61、第2リード線62および透明絶縁膜70を備える。
【0023】
透明導電膜30は、透明導電体に対応しており、基板に対応する形状、ここでは、楕円状に形成されている。また、透明導電膜30は、ITOまたはカーボンナノチューブ等によって形成されている。このため、透明導電膜30は、透明であるとともに、導電性を有する。具体的には、透明導電膜30は、第1スリット311、第2スリット312および発熱部35を有する。なお、ITOは、酸化インジウムスズの略称である。
【0024】
第1スリット311は、第1非導電部に対応しており、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とこの電波に含まれる電界の振動方向とに交差する方向に延びている。具体的には、第1スリット311は、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とその電波に含まれる電界の振動方向とに直交する方向、ここでは、車両1の上下方向に延びている。また、第1スリット311は、この電波に含まれる磁界の振動方向に平行に延びている。さらに、複数の第1スリット311は、この電波に含まれる電界の振動方向、ここでは、車両1の左右方向に等間隔に並列している。これにより、互いに隣り合う第1スリット311同士の間には、後述する発熱部35の第1導電部361が形成されている。また、これらの第1スリット311には、例えば、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、第1スリット311は、電気絶縁性を有する。さらに、第1スリット311の幅、ここでは、車両1の左右方向における第1スリット311の長さは、例えば、25μm以上である。また、ここでは、透明導電膜30が楕円状であるため、車両1の上下方向における透明導電膜30の長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の左方向に向かって小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数の第1スリット311のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の左方向に向かうに伴い、小さくなっている。
【0025】
また、複数の第1スリット311のうち中心Oに最も近い第1スリット311は、車両1の左右方向に後述の第2スリット312と対向する。さらに、この中心Oに最も近い第1スリット311は、車両1の上下方向において、後述の第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されている。これにより、後述の第1導電部361と第2導電部362とが導通しないようになっている。
【0026】
第2スリット312は、第2非導電部に対応しており、後述の発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第1スリット311と対称に形成されている。このため、第2スリット312の数および形状は、第1スリット311の数および形状と同じになっている。したがって、第2スリット312は、第1スリット311と同様に、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とその電波に含まれる電界の振動方向とに直交する方向、ここでは、第1スリット311と平行する方向に延びている。また、第2スリット312は、この電波に含まれる磁界の振動方向に平行に延びている。さらに、複数の第2スリット312は、この電波に含まれる電界の振動方向、ここでは、車両1の左右方向に等間隔に並列している。これにより、互いに隣り合う第2スリット312同士の間には、後述する発熱部35の第2導電部362が形成されている。また、これらの第2スリット312には、例えば、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、第2スリット312は、電気絶縁性を有する。さらに、第2スリット312の幅、ここでは、車両1の左右方向における第2スリット312の長さは、例えば、25μm以上である。また、ここでは、透明導電膜30が楕円状であるため、車両1の上下方向における透明導電膜30の長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の右方向に向かって小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数の第2スリット312のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の右方向に向かうに伴い、小さくなっている。
【0027】
また、複数の第2スリット312のうち中心Oに最も近い第2スリット312は、車両1の左右方向に第1スリット311と対向する。さらに、この中心Oに最も近い第2スリット312は、車両1の上下方向において、後述の第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されている。これにより、後述の第1導電部361と第2導電部362とが導通しないようになっている。なお、ここでは、車両1の左右方向に互いに対向する第1スリット311および第2スリット312の両方が後述の第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されている。これに限定されないで、車両1の左右方向に互いに対向する第1スリット311と第2スリット312とのうちどちらか一方のみが後述の第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されてもよい。
【0028】
発熱部35は、面状に形成されており、発熱部35に電流が流れることにより熱を発生させる。具体的には、発熱部35は、左下外縁部351、右下外縁部352、左上外縁部353、右上外縁部354、複数の第1導電部361および複数の第2導電部362を含む。
【0029】
左下外縁部351は、発熱部35のうち、車両1の左右方向に延びる水平中心線Ohに対して下側かつ車両1の上下方向に延びる鉛直中心線Ovに対して左側の外縁周辺部である。
【0030】
右下外縁部352は、発熱部35のうち、車両1の左右方向に延びる水平中心線Ohに対して下側かつ車両1の上下方向に延びる鉛直中心線Ovに対して右側の外縁周辺部である。
【0031】
左上外縁部353は、発熱部35のうち、車両1の左右方向に延びる水平中心線Ohに対して上側かつ車両1の上下方向に延びる鉛直中心線Ovに対して左側の外縁周辺部である。
【0032】
右上外縁部354は、発熱部35のうち、車両1の左右方向に延びる水平中心線Ohに対して上側かつ車両1の上下方向に延びる鉛直中心線Ovに対して右側の外縁周辺部である。
【0033】
第1導電部361は、左下外縁部351と左上外縁部353とに接続されている。複数の第1導電部361は、第1スリット311によって発熱部35の内部が分割されることにより形成されており、第1スリット311に隣接する。このため、第1導電部361は、第1スリット311が延びている方向に延びている。具体的には、第1導電部361は、電波送受信部4から送信される電波の進行方向とこの電波に含まれる電界の振動方向とに直交する方向、ここでは、車両1の上下方向に延びている。さらに、第1導電部361は、この電波に含まれる磁界の振動方向に平行に延びている。また、複数の第1導電部361は、第1スリット311の並列方向に並列している。さらに、第1導電部361の幅、ここでは、車両1の左右方向における第1導電部361の長さは、例えば、25μm以上、500μm以下である。また、複数の第1導電部361のそれぞれの幅は、ここでは、等しくなっている。さらに、ここでは、上記したように、車両1の上下方向における複数の第1スリット311のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の左方向に向かうに伴い、小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数の第1導電部361のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の左方向に向かうに伴い、小さくなっている。
【0034】
第2導電部362は、右下外縁部352と右上外縁部354とに接続されている。複数の第2導電部362は、第2スリット312によって発熱部35の内部が分割されることにより形成されており、第2スリット312に隣接する。また、ここでは、第2スリット312が発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第1スリット311と対称に形成されている。このため、第2導電部362は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第1導電部361と対称に形成されている。このため、第2導電部362の数および形状は、第1導電部361の数および形状と同じになっている。したがって、第2導電部362は、第1導電部361と平行する方向に延びている。また、複数の第2導電部362は、第1導電部361との並列方向に第1導電部361と同じ間隔で並列している。さらに、第2導電部362の幅、ここでは、車両1の左右方向における第2導電部362の長さは、例えば、25μm以上、500μm以下である。また、複数の第2導電部362のそれぞれの幅は、ここでは、等しくなっている。さらに、ここでは、上記したように、車両1の上下方向における複数の第2スリット312のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の右方向に向かうに伴い、小さくなっている。これに対応して、車両1の上下方向における複数の第2導電部362のそれぞれの長さは、透明導電膜30の中心Oから車両1の右方向に向かうに伴い、小さくなっている。
【0035】
第1電極41は、ここでは、正極である。また、第1電極41は、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。さらに、第1電極41は、
図3に示すように、発熱部35の左下外縁部351に接続されている。
【0036】
第2電極42は、ここでは、負極である。また、第2電極42は、
図2に示すように、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。さらに、第2電極42は、
図3に示すように、発熱部35の右下外縁部352に接続されている。また、第2電極42は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して第1電極41と対称となるように形成されている。
【0037】
第3電極43は、第1電極41からの電流を第2電極42に向かって流す中継部になっている。また、第3電極43は、
図2に示すように、電波送受信部4から送信される電波の照射範囲Rの外側に配置されている。さらに、第3電極43は、発熱部35の左上外縁部353と右上外縁部354とに接続されている。これにより、第3電極43は、第1電極41とで第1導電部361を挟むように発熱部35と接続されており、第2電極42とで第2導電部362を挟むように発熱部35と接続されている。また、これにより、左下外縁部351、右下外縁部352、左上外縁部353および右上外縁部354を通り発熱部35の外周に沿う方向に延びる同一線上に、第1電極41、第2電極42および第3電極43は、配置されている。また、第3電極43は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して対称な形状となるように形成されている。
【0038】
電極間非導電部50は、第1電極41と第2電極42との間、第2電極42と第3電極43との間および第3電極43と第1電極41との間に配置されており、電気絶縁性を有する。また、ここでは、電極間非導電部50は、第1電極41、第2電極42および第3電極43とともに、上記した同一線上に配置されている。具体的には、電極間非導電部50は、第1隙間511、第2隙間512および第3隙間513を有する。
【0039】
第1隙間511は、第1電極間非導電部に対応しており、第1電極41のうち右側の端部と第2電極42のうち左側の端部との間に配置されている。この第1隙間511には、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、電極間非導電部50は、電気絶縁性を有する。これにより、第1電極41と第2電極42とが導通して短絡することが抑制される。
【0040】
第2隙間512は、第2電極間非導電部に対応しており、第2電極42のうち右側の端部と第3電極43のうち右側の端部との間に配置されている。この第2隙間512には、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、電極間非導電部50は、電気絶縁性を有する。これにより、第2電極42と第3電極43とが導通して短絡することが抑制される。
【0041】
第3隙間513は、第3電極間非導電部に対応しており、第3電極43のうち左側の端部と第1電極41のうち左側の端部との間に配置されている。この第3隙間513には、電気絶縁性を有する空気等が入っているため、電極間非導電部50は、電気絶縁性を有する。これにより、第1電極41と第2電極42とが導通して短絡することが抑制される。
【0042】
第1リード線61は、第1電極41のうち右側の端部に接続されている。また、第1リード線61は、第1電極41のうち右側の端部から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0043】
第2リード線62は、第2電極42のうち左側の端部に接続されている。また、第2リード線62は、第2電極42のうち左側の端部から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。さらに、第2リード線62は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第1リード線61と対称となるように形成されている。
【0044】
透明絶縁膜70は、例えば、
図2に示すように、透明導電膜30、第1電極41および第2電極42を覆うように形成されており、電気絶縁性を有する。この透明絶縁膜70は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂で形成されている。
【0045】
以上のように、エンブレム5は構成されている。このエンブレム5では、フィルムヒータ20により加熱されつつ、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0046】
次に、このフィルムヒータ20による加熱について説明する。
【0047】
ここでは、第1電極41は、正極であって、第2電極42が負極である。このため、図示しない電源がフィルムヒータ20に電力を供給すると、図示しない電源から第1リード線61および第1電極41を経由して、発熱部35の左下外縁部351に電流が流れる。
【0048】
また、発熱部35において、この左下外縁部351は、並列する複数の第1導電部361のそれぞれに接続されている。これにより、この左下外縁部351を流れる電流は、複数の第1導電部361のそれぞれに流れる。さらに、それぞれの第1導電部361は、第1スリット311が延びている方向に延びており、左上外縁部353に接続されている。このため、それぞれの第1導電部361を流れる電流は、第1スリット311が延びている方向に沿って流れて、左上外縁部353に流れる。
【0049】
さらに、この左上外縁部353は、第3電極43に接続されている。また、この第3電極43は、この左上外縁部353に接続されていることに加えて、発熱部35の右上外縁部354にも接続されている。このため、この左上外縁部353を流れる電流は、第3電極43を経由して、右上外縁部354に流れる。
【0050】
また、発熱部35において、この右上外縁部354は、並列する複数の第2導電部362のそれぞれに接続されている。これにより、この右上外縁部354を流れる電流は、複数の第2導電部362のそれぞれに流れる。さらに、それぞれの第2導電部362は、第2スリット312が延びている方向に延びており、右下外縁部352に接続されている。このため、それぞれの第2導電部362を流れる電流は、第2スリット312が延びている方向に沿って流れて、右下外縁部352に流れる。また、右下外縁部352を流れる電流は、第2電極42を経由して第2リード線62に流れる。
【0051】
よって、ここでは、第1電極41、発熱部35の第1導電部361、第3電極43、発熱部35の第2導電部362および第2電極42を流れる電流の回路は、直列回路になっている。
【0052】
また、上記のように、それぞれの第1導電部361および第2導電部362に電流が流れることにより、面状の発熱部35全体で熱が発生する。これにより、フィルムヒータ20内の温度分布のバラつきを比較的小さくできるため、フィルムヒータ20は、エンブレム5内の温度分布のバラつきを低減させることができる。このため、エンブレム5は、エンブレム5に付着する雪や雨等の水を均一に除去することができる。
【0053】
このように、フィルムヒータ20によって熱が発生する。また、このフィルムヒータ20では、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。以下では、この電波の減衰の抑制について説明する。
【0054】
フィルムヒータ20の透明導電膜30は、第1スリット311、第2スリット312および発熱部35を有する。第1スリット311および第2スリット312は、電気絶縁性を有するため、電波送受信部4から送信される電波を吸収しにくい。これにより、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。なお、このミリ波等の電波を透過する領域を大きくできるという点から、第1スリット311は、車両1の上下方向における第1電極41から第3電極43までの長さとなるように延びていることが好ましい。また、第2スリット312は、車両1の上下方向における第2電極42から第3電極43までの長さとなるように延びていることが好ましい。
【0055】
また、第1スリット311および第2スリット312は、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に交差する方向に延びている。これにより、電界の振動方向における第1導電部361の長さは、第1スリット311がこの電波に含まれる電界の振動方向と平行である場合と比較して、小さくなる。また、電界の振動方向における第2導電部362の長さは、第2スリット312がこの電波に含まれる電界の振動方向と平行である場合と比較して、小さくなる。このため、発熱部35のうち、電波に含まれる電界の作用によって誘電分極する部分が小さくなる。したがって、電波に含まれる電界の作用による発熱部35の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、ミリ波等の電波の減衰が抑制される。
【0056】
また、このフィルムヒータ20は、以下に説明するような効果も奏する。
【0057】
[1]第3電極43は、第1電極41と第2電極42とで発熱部35を挟むように、発熱部35と接続されている。具体的には、第1電極41は、
図3に示すように、発熱部35のうち第1導電部361の一端側である左下外縁部351に接続されている。第2電極42は、発熱部35のうち第2導電部362の一端側である右下外縁部352に接続されている。第3電極43は、発熱部35のうち第1導電部361の他端側である左上外縁部353と、発熱部35のうち第2導電部362の他端側である右上外縁部354とに接続されている。これにより、第1電極41、第2電極42および第3電極43を一重にできるため、フィルムヒータ20およびそのフィルムヒータ20が取り付けられるエンブレム5の見栄えが向上する。
【0058】
また、第1電極41、第2電極42、第3電極43ならびに電極間非導電部50の第1隙間511、第2隙間512および第3隙間513は、発熱部35の外周に沿う方向に延びる同一線上に配置されている。これにより、上記と同様に、これにより、第1電極41、第2電極42および第3電極43を一重にできるため、フィルムヒータ20およびそのフィルムヒータ20が取り付けられるエンブレム5の見栄えが向上する。
【0059】
[2]電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向に直交する方向に延びる発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第1スリット311は、第2スリット312と対称に形成されている。第1スリット311の位置および形状は、対応する第2スリット312の位置および形状と同じになっている。これにより、第1導電部361の位置および形状は、対応する第2導電部362の位置および形状と同じになっている。このため、第1導電部361の電気抵抗と第2導電部362の電気抵抗との差を小さくできるため、第1導電部361の発熱量と第2導電部362の発熱量との差を小さくすることができる。また、第1導電部361の表面積と第2導電部362の表面積との差も小さくできる。したがって、第1導電部361と第2導電部362との発熱密度の差を小さくすることができる。なお、発熱密度とは、ここでは、単位表面積あたりの発熱量である。
【0060】
[3]また、第1電極41は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第2電極42と対称に形成されている。さらに、第1リード線61は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、第2リード線62と対称に形成されている。これにより、第1電極41および第1リード線61の合成抵抗と第2電極42および第2リード線62の合成抵抗との差を小さくすることができる。このため、フィルムヒータ20の電極設計がしやすくなるため、開発工数を低減させることができる。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1リード線61および第2リード線62の形態が異なる。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0062】
第1リード線61は、
図4に示すように、第1迂回部611および第1リード部612を有する。
【0063】
第1迂回部611は、第1電極41のうち左側の端部に接続されている。また、第1迂回部611は、第1電極41のうち左側の端部から車両1の右方向に延びていることにより、発熱部35の鉛直中心線Ovを通る。
【0064】
第1リード部612は、第1迂回部611のうち右側の端部に接続されている。これにより、第1リード部612は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して右側に配置されている。また、第1リード部612は、第1迂回部611のうち右側の端部から車両1の下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0065】
第2リード線62は、第2迂回部621および第2リード部622を有する。
【0066】
第2迂回部621は、第2電極42のうち右側の端部に接続されている。また、第2迂回部621は、第1リード線61と第2リード線62とが導通して短絡しないように、第2電極42のうち右側の端部から車両1の左方向に延びている。
【0067】
第2リード部622は、第2迂回部621のうち左側の端部に接続されている。また、第2リード部622は、第2迂回部621のうち左側の端部から車両1の下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0068】
このように、第2実施形態は構成されている。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、第2実施形態では、第1リード線61が発熱部35の鉛直中心線Ovに対して第2リード線62と非対称である。このため、第1実施形態と比較して、上記[3]に記載した効果を奏しない。
【0069】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1スリット311、第2スリット312、第1導電部361、第2導電部362、第1電極41、第2電極42、第1リード線61および第2リード線62の形態が異なる。また、フィルムヒータ20は、分流部75をさらに備える。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0070】
第1スリット311は、
図5に示すように、上記と同様に、透明導電膜30のうち鉛直中心線Ovに対して左側に形成されている。また、ここでは、第1スリット311は、透明導電膜30のうち鉛直中心線Ovに対して左側に形成されていることに加えて、透明導電膜30のうち鉛直中心線Ovに対して右側の一部にも形成されている。
【0071】
第2スリット312は、第1スリット311は、透明導電膜30のうち鉛直中心線Ovに対して右側の一部のみに形成されている。
【0072】
発熱部35の第1導電部361は、上記と同様に、発熱部35のうち左側に形成されている。このため、第1導電部361のうち鉛直中心線Ovに対して左側は、左下外縁部351と左上外縁部353とに接続されている。また、発熱部35の第1導電部361は、第1スリット311に対応する位置に形成されるため、ここでは、透明導電膜30のうち鉛直中心線Ovに対して右側の一部にも形成されている。このため、第1導電部361のうち鉛直中心線Ovに対して右側は、右下外縁部352の一部と右上外縁部354の一部とに接続されている。
【0073】
発熱部35の第2導電部362は、第2スリット312に対応する位置に形成されるため、透明導電膜30のうち鉛直中心線Ovに対して右側の一部のみに形成されている。このため、電流が流れる方向と直交する断面において、複数の第2導電部362の断面積の和は、複数の第1導電部361の断面積の和よりも小さくなっている。したがって、複数の第2導電部362による合成抵抗は、複数の第1導電部361による合成抵抗よりも大きくなっている。
【0074】
第1電極41は、上記と同様に、正極であって、発熱部35の左下外縁部351に接続されている。また、ここでは、第1電極41は、発熱部35の左下外縁部351に接続されていることに加えて、発熱部35の右下外縁部352の一部にも接続されている。また、ここでは、車両1の左右方向に第2スリット312と対向する第1スリット311のみが、車両1の上下方向において、第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されている。なお、これに限定されないで、車両1の左右方向に第1スリット311と対向する第2スリット312のみが、車両1の上下方向において、第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されてもよい。また、車両1の左右方向に互いに対向する第1スリット311および第2スリット312の両方が、車両1の上下方向において、第3電極43に隣接しつつ、第1隙間511に接続されてもよい。
【0075】
第2電極42は、負極であって、発熱部35の右下外縁部352の一部に接続されている。このため、第2電極42の長さは、第1電極41の長さよりも短くなっている。
【0076】
第1リード線61は、第1電極41のうち右側の端部に接続されている。また、ここでは、第1電極41のうち右側の端部が発熱部35の右下外縁部352に接続されているため、第1リード線61は、発熱部35の鉛直中心線Ovに対して、右側に配置されている。また、第1リード線61は、第1電極41のうち右側の端部から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0077】
第2リード線62は、第2電極42のうち左側の端部に接続されている。また、第2リード線62は、第2電極42のうち左側の端部から下方に延びており、図示しない電源に接続されている。
【0078】
分流部75は、第2電極42と第3電極43とに接続されている。分流部75は、第3電極43から第2導電部362を流れる電流を減少させるために、第3電極43を流れる電流を分流させる。このため、分流部75は、電気抵抗が第2電極42および第3電極43の電気抵抗よりも比較的高い抵抗体になっている。
【0079】
以上のように、第3実施形態は構成されている。
【0080】
次に、この第3実施形態による加熱について説明する。
【0081】
ここでは、第1電極41は、正極であって、第2電極42が負極である。このため、図示しない電源がフィルムヒータ20に電力を供給すると、図示しない電源から第1リード線61を経由して、第1電極41に電流が流れる。
【0082】
また、第1電極41を流れる電流は、上記と同様に、発熱部35の左下外縁部351に流れる。また、この左下外縁部351は、並列する複数の第1導電部361のそれぞれに接続されている。これにより、この左下外縁部351を流れる電流は、複数の第1導電部361のそれぞれに流れる。さらに、これらの第1導電部361、ここでは、発熱部35の第1導電部361の左側は、左上外縁部353に接続されている。また、左上外縁部353は、第3電極43に接続されている。このため、これらの第1導電部361のそれぞれを流れる電流は、この左上外縁部353を経由して、第3電極43に流れる。
【0083】
さらに、ここでは、第1電極41が発熱部35の右下外縁部352の一部にも接続されているため、第1電極41を流れる電流は、この右下外縁部352の一部にも流れる。この右下外縁部352の一部は、並列する複数の第1導電部361のそれぞれに接続されている。これにより、この右下外縁部352の一部を流れる電流は、複数の第1導電部361のそれぞれに流れる。さらに、これらの第1導電部361、ここでは、発熱部35の第1導電部361の右側は、右上外縁部354に接続されている。また、右上外縁部354は、第3電極43に接続されている。このため、これらの第1導電部361のそれぞれを流れる電流は、この右上外縁部354を経由して、第3電極43に流れる。
【0084】
第3電極43は、分流部75と発熱部35の右上外縁部354とに接続されている。このため、第3電極43を流れる電流は、分流部75およびこの右上外縁部354に流れる。分流部75を流れる電流は、第2電極42を経由して第2リード線62に流れる。また、この右上外縁部354は、並列する複数の第2導電部362のそれぞれに接続されている。これにより、この右上外縁部354を流れる電流は、複数の第2導電部362のそれぞれに流れる。さらに、複数の第2導電部362を流れる電流は、上記と同様に、発熱部35の右下外縁部352および第2電極42を経由して第2リード線62に流れる。
【0085】
このように、それぞれの第1導電部361および第2導電部362に電流が流れることにより、面状の発熱部35全体で熱が発生する。第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第3実施形態では、第1電極41が発熱部35の鉛直中心線Ovに対して第2電極42と非対称である。さらに、第1リード線61が発熱部35の鉛直中心線Ovに対して第2リード線62と非対称である。このため、第3実施形態では、第1実施形態と比較して、上記[3]に記載した効果を奏しない。しかし、第3実施形態では、以下に説明するような効果を奏する。
【0086】
ここで、上記したように、第3実施形態では、電流が流れる方向と直交する断面において、複数の第2導電部362の断面積の和は、複数の第1導電部361の断面積の和よりも小さくなっている。これにより、複数の第2導電部362による合成抵抗は、複数の第1導電部361による合成抵抗よりも大きくなっている。このため、複数の第2導電部362のそれぞれに流れる電流の和と複数の第1導電部361のそれぞれに流れる電流の和とが同じである場合、複数の第2導電部362のそれぞれの発熱量の和は、複数の第1導電部361のそれぞれの発熱量の和よりも大きくなる。したがって、この場合、発熱部35のうち第2導電部362側の発熱密度は、発熱部35のうち第1導電部361側の発熱密度よりも大きくなる。
【0087】
しかし、第3実施形態では、第3電極43を流れる電流の一部が分流部75に流れるため、複数の第2導電部362を流れる電流は、分流部75がない場合と比較して小さくなる。これにより、複数の第2導電部362のそれぞれの発熱量の和を小さくできるため、発熱部35のうち第2導電部362側の発熱密度を小さくすることができる。このため、発熱部35のうち第2導電部362側の発熱密度と発熱部35のうち第1導電部361側の発熱密度との差を小さくすることができる。
【0088】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0089】
上記実施形態では、エンブレム5は、車両1のフロントグリル2に配置されている。これに対して、エンブレム5は、車両1のフロントグリル2に配置されることに限定されないで、例えば、車両1のボディに配置されてもよい。
【0090】
上記実施形態では、エンブレム5の基材10は、楕円板状に形成されている。これに対して、基材10は、楕円板状に形成されることに限定されないで、例えば、基材10は、円板状や多角形の板状に形成されてもよい。
【0091】
上記実施形態では、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向は、車両1の左右方向に一致している。これに対して、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向は、車両1の左右方向に一致することに限定されない。例えば、電波送受信部4から送信される電波に含まれる電界の振動方向は、車両1の上下方向に一致してもよい。
【0092】
上記実施形態では、フィルムヒータ20は、エンブレム5に配置されている。これに対して、フィルムヒータ20は、エンブレム5に配置されることに限定されない。例えば、車両1のフロントガラス付近の車室内やヘッドライト3等に電波送受信機が配置される場合には、フィルムヒータ20は、フロントガラスやヘッドライト3に配置されてもよい。
【0093】
上記実施形態では、フィルムヒータ20の第1電極41は、正極であって、かつ、第2電極42が負極である。これに対して、第1電極41が正極であってかつ第2電極42が負極であることに限定されない。第1電極41は、負極であって、かつ、第2電極42が正極であってもよい。
【0094】
上記実施形態では、第1スリット311および第2スリット312には、電気絶縁性を有する空気等が入っている。これに対して、第1スリット311および第2スリット312には、空気等の気体が入っていることに限定されない。例えば、第1スリット311および第2スリット312には、電気絶縁性を有する樹脂等の固体が埋められてもよい。
【0095】
上記実施形態では、電極間非導電部50の第1隙間511、第2隙間512および第3隙間513には、電気絶縁性を有する空気等が入っている。これに対して、電極間非導電部50の第1隙間511、第2隙間512および第3隙間513には、空気等の気体が入っていることに限定されない。上記と同様に、電極間非導電部50の第1隙間511、第2隙間512および第3隙間513には、電気絶縁性を有する樹脂等の固体が埋められてもよい。
【0096】
上記実施形態では、透明導電膜30は、複数の第1スリット311および第2スリット312を含む。これに対して、第1スリット311および第2スリット312の数は、複数であることに限定されない。第1スリット311の数は、1つであってもよい。また、第2スリット312の数は、1つであってもよい。
【0097】
上記実施形態では、第1スリット311は、第2スリット312と平行に延びている。これに対して、第1スリット311は、第2スリット312と平行に延びていることに限定されない。第1スリット311が延びている方向と第2スリット312が延びている方向とは、異なっていてもよい。
【0098】
上記第3実施形態では、分流部75は、第2電極42と第3電極43とに接続されている。これに対して、分流部75は、第2電極42と第3電極43とに接続されていることに限定されない。例えば、第1電極41は、正極であって、発熱部35の左下外縁部351の一部に接続されている。また、第2電極42は、負極であって、発熱部35の右下外縁部352に加えて、左下外縁部351の一部にも接続されている。この場合、分流部75は、第1電極41と第3電極43とに接続される。これにより、第1電極41を流れる電流の一部が分流部75に流れるため、複数の第1導電部361を流れる電流は、分流部75がない場合と比較して小さくなる。このため、複数の第1導電部361のそれぞれの発熱量の和を小さくできるため、発熱部35のうち第1導電部361側の発熱密度を小さくすることができる。したがって、上記と同様に、発熱部35のうち第2導電部362側の発熱密度と発熱部35のうち第1導電部361側の発熱密度との差を小さくすることができる。
【0099】
また、複数の分流部75が備えられてよい。この場合、例えば、少なくとも1つの分流部75が第1電極41と第3電極43とに接続され、残りの分流部75が第2電極42と第3電極43とに接続されてもよい。これにより、第1導電部361を流れる電流および第2導電部362を流れる電流の両方を調整することができる。
【0100】
上記実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【0101】
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、フィルムヒータは、電気絶縁性を有するとともに電波送受信部から送信される電波に含まれる電界の振動方向と交差する方向に延びている第1非導電部と、電気絶縁性を有するとともに振動方向と交差する方向に延びている第2非導電部と、通電されることにより発熱するとともに光を透過する発熱部とを含む透明導電体と、発熱部に接続されている第1電極と、発熱部に接続されている第2電極と、発熱部に接続されている第3電極と、を備え、発熱部は、第1非導電部に隣接する第1導電部と、第2非導電部に隣接する第2導電部と、を含み、第1電極と第2電極とによって発熱部が通電されて第1電極から第3電極を経由して第2電極に向かう電流が流れ、第1導電部は、第1電極から第3電極に向かう電流が第1導電部に流れることにより発熱し、第2導電部は、第3電極から第2電極に向かう電流が第2導電部に流れることにより発熱する。
【0102】
第1非導電部および第2非導電部は、電気絶縁性を有するため、電波送受信部から送信される電波を吸収しにくい。これにより、電波の減衰が抑制される。また、第1非導電部および第2非導電部は、電波送受信部から送信される電波に含まれる電界の振動方向に交差する方向に延びている。これにより、電界の振動方向における第1導電部の長さは、第1非導電部がこの電波に含まれる電界の振動方向と平行である場合と比較して、小さくなる。また、電界の振動方向における第2導電部の長さは、第2非導電部がこの電波に含まれる電界の振動方向と平行である場合と比較して、小さくなる。このため、発熱部のうち、電波に含まれる電界の作用によって誘電分極する部分が小さくなる。したがって、電波に含まれる電界の作用による発熱部の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、電波の減衰が抑制される。
【0103】
また、第2の観点によれば、第1導電部は、第1非導電部が延びている方向に延びており、第2導電部は、第2非導電部が延びている方向に延びており、第1電極から第3電極に向かう電流は、第1非導電部が延びている方向に沿う方向に流れ、第3電極から第2電極に向かう電流は、第2非導電部が延びている方向に沿う方向に流れる。これにより、上記と同様に、電波に含まれる電界の作用による発熱部の誘電分極によって、電波のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変換されることが抑制される。よって、電波の減衰が抑制される。
【0104】
また、第3の観点によれば、第1電極は、発熱部のうち第1導電部の一端側に接続されており、第2電極は、発熱部のうち第2導電部の一端側に接続されており、第3電極は、発熱部のうち第1導電部の他端側と、発熱部のうち第2導電部の他端側とに接続されている。これにより、第1電極、第2電極および第3電極を一重にできるため、フィルムヒータの見栄えが向上する。
【0105】
また、第4の観点によれば、電気絶縁性を有するとともに第1電極と第2電極との間に配置される第1電極間非導電部と、電気絶縁性を有するとともに第2電極と第3電極との間に配置される第2電極間非導電部と、気絶縁性を有するとともに第3電極と第1電極との間に配置される第3電極間非導電部と、をさらに備え、第1電極、第2電極、第3電極、第1電極間非導電部、第2電極間非導電部および第3電極間非導電部は、発熱部の外周に沿う方向に延びる同一線上に配置されている。これにより、第1電極、第2電極および第3電極を一重にできるため、フィルムヒータの見栄えが向上する。
【0106】
また、第5の観点によれば、フィルムヒータは、第1電極と第3電極とに接続されることにより第1電極から第1導電部に流れる電流を減少させる、または、第2電極と第3電極とに接続されることにより第3電極から第2導電部に流れる電流を減少させる分流部をさらに備える。これにより、発熱部のうち第1導電部側の発熱密度と発熱部のうち第2導電部側の発熱密度との差を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0107】
30 透明導電体
311 第1非導電部
312 第2非導電部
35 発熱部
361 第1導電部
362 第1導電部
41 第1電極
42 第2電極
43 第3電極