IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図1
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図2
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図3
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図4
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図5
  • 特許-ゴルフクラブヘッド 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20240618BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240618BHJP
【FI】
A63B53/04 F
A63B102:32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020076216
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021171233
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】島原 佑樹
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-004995(JP,A)
【文献】特開2013-169413(JP,A)
【文献】特開2011-234749(JP,A)
【文献】特開2019-217195(JP,A)
【文献】特許第5240388(JP,B1)
【文献】実開平03-005457(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0024868(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打撃するためのフェースを有するゴルフクラブヘッドであって、
前記フェースには、互いに平行に延びる複数のスコアラインと、隣接する前記スコアラインの間の領域であるスコアライン間領域とが設けられており、
前記スコアライン間領域には、前記スコアラインよりも小さい幅を有する細溝が設けられており、
前記細溝は、前記スコアラインと交差する方向に延びる複数の第1細溝と、前記第1細溝と交差する向きに延びる複数の第2細溝とを含み、
前記第1細溝は、それぞれ、少なくとも一方の端部が前記スコアラインのいずれかに連通しており、
前記第2細溝は、同一直線上に、前記第2細溝が離間部を介して並ぶ少なくとも1つの第2細溝列を形成するように配置されており、
前記第2細溝列のそれぞれの前記第2細溝は、少なくとも2つの前記第1細溝と交差しており、
前記第2細溝列において、隣接する前記第2細溝の間には、前記第1細溝の少なくとも一つが位置しており、
前記スコアライン間領域には、前記第2細溝列が上下方向に複数配置されており、
上下方向で隣接する前記第2細溝列において、一方の第2細溝列の前記各離間部は、他方の第2細溝列の前記各離間部とは、前記スコアラインと平行な方向において、互いに重複しないように位置ずれしている、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記第1細溝の両方の端部が前記スコアラインに連通している、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1細溝の深さは、前記第2細溝の深さよりも大きい、請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1細溝のそれぞれは、前記第2細溝の少なくとも一つと連通している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第2細溝は、両端が、前記第1細溝と連通することなく終端している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記第1細溝が、レーザーミーリングで加工された溝である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第2細溝が、レーザーミーリングで加工された溝である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第1細溝は、前記スコアラインと直交する方向に延びている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記第2細溝は、前記スコアラインと平行に延びている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドは、ボールを打撃するためのフェースを有する。フェースには、互いに平行に延びる複数のスコアラインが形成されている。スコアラインは、ボールとの摩擦を高め、打球にスピンを与えるのに役立つ。
【0003】
下記特許文献1では、フェースに、スコアラインと、スコアラインよりも幅の小さい補助溝とが形成されたゴルフクラブヘッドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-35704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフプレー中には、様々なライが存在する。例えば、ボール打撃時、ボールとフェースとの間に芝や水が介在するような状況がある。このような状況では、フェースとボールとの間から水や芝等の異物を除去し、打球へのスピン性能を十分に発現させる必要がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ボールに対するスピン性能を向上することができるゴルフクラブヘッドを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボールを打撃するためのフェースを有するゴルフクラブヘッドであって、前記フェースには、互いに平行に延びる複数のスコアラインと、隣接する前記スコアラインの間の領域であるスコアライン間領域とが設けられており、前記スコアライン間領域には、前記スコアラインよりも小さい幅を有する細溝が設けられており、前記細溝は、前記スコアラインと交差する方向に延びる複数の第1細溝と、前記第1細溝と交差する向きに延びる複数の第2細溝とを含み、前記第1細溝は、それぞれ、少なくとも一方の端部が前記スコアラインのいずれかに連通しており、前記第2細溝は、同一直線上に、前記第2細溝が離間部を介して並ぶ少なくとも1つの第2細溝列を形成するように配置されており、前記第2細溝列のそれぞれの前記第2細溝は、少なくとも2つの前記第1細溝と交差しており、前記第2細溝列において、隣接する前記第2細溝の間には、前記第1細溝の少なくとも一つが位置している、ゴルフクラブヘッドである。
【0008】
本発明の他の態様では、前記第1細溝の両方の端部が前記スコアラインに連通しても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記第1細溝の深さは、前記第2細溝の深さよりも大きくても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記スコアライン間領域には、前記第2細溝列が上下方向に複数配置されても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、上下方向で隣接する前記第2細溝列において、一方の第2細溝列の前記各離間部は、他方の第2細溝列の前記各離間部とは、前記スコアラインと平行な方向において、互いに重複しないように位置ずれしても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記第1細溝のそれぞれは、前記第2細溝の少なくとも一つと連通しても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、上下方向で隣接する前記第2細溝列において、一方の第2細溝列の前記各離間部は、他方の第2細溝列の前記各離間部とは、前記スコアラインと平行な方向において、互いに重複するように配されても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記第1細溝の少なくとも一つは、前記第2細溝のいずれにも連通していなくても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、前記第2細溝は、両端が、前記第1細溝と連通することなく終端しても良い。
【0016】
本発明の他の態様では、前記第1細溝が、レーザーミーリングで加工された溝であっても良い。
【0017】
本発明の他の態様では、前記第2細溝が、レーザーミーリングで加工された溝であっても良い。
【0018】
本発明の他の態様では、前記第1細溝は、前記スコアラインと直交する方向に延びても良い。
【0019】
本発明の他の態様では、前記第2細溝は、前記スコアラインと平行に延びても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴルフクラブヘッドは、上記の構成を採用したことにより、ボールに対するスピン性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
図2図1のフェースの正面部分拡大図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】他の実施形態のフェースの正面部分拡大図である。
図6】ゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図面は、発明の内容の理解のために、部分的に誇張され、又は、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれていることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」という場合がある。)1の正面図を示す。図1に示されるように、ヘッド1は、ボールを打撃するためのフェース2を有する。本実施形態のヘッド1は、アイアン型のゴルフクラブヘッドとして構成されているが、ウッド型やハイブリッド型でも良い。
【0024】
[基準状態等の定義]
図1には、ヘッド1の基準状態が示されている。本明細書において、ヘッド1の基準状態とは、図6に示されるように、ヘッド1のフェース2に形成されたスコアライン10と水平面HPとが平行とされた状態で、ヘッド1が水平面HP上に置かれた状態をいう。基準状態では、シャフト軸中心線CLが基準垂直面VP内に配される。基準垂直面VPは、水平面HPに対して垂直な平面である。したがって、基準状態では、スコアライン10は水平面HP及び基準垂直面VPの両方に平行とされる。 特に言及されていない場合、ヘッド1は、基準状態に置かれているものとする。なお、図6において、αはライ角、βはロフト角をそれぞれ示す。
【0025】
また、基準状態において、ヘッド1の方向については、次のように定められる。まず、スコアライン10に沿った方向は、ヘッド1のトウ・ヒール方向とされる。また、ヘッド1の基準垂直面VPと直交する方向は、ヘッド1の前後方向とされる。この場合、フェース2の側が前側(前方)、その反対の側が後側(後方)である。さらに、水平面HPと直交する方向がヘッド1の上下方向とされる。
【0026】
[ヘッドの基本構成]
図1に示されるように、ヘッド1は、例えば、フェース2、トップ3、ソール4、トウ5及びホーゼル6を含んでおり、例えば、金属材料で形成されている。
【0027】
フェース2は、ボールを打撃するための単一の平面を構成している。フェース2には、ボールとの摩擦等を高めるために、複数本のスコアライン10(すなわち、溝)が設けられている。スコアライン10の構成は、後で詳しく説明される。
【0028】
トップ3は、フェース2の上縁から後方にのびているヘッド1の上面部分である。ソール4は、フェース2の下縁から後方にのびているヘッド1の底面部分である。トウ5は、ホーゼル6から最も離れた部分である。ホーゼル6は、シャフト(図示省略)の一端を固着するシャフト差込孔7を備える。このシャフト差込孔7の中心線は、シャフト軸中心線CLとして利用される。
【0029】
[フェースのスコアライン等]
図2は、図1のフェース2の正面部分拡大図(すなわち、フェース2を、その法線方向から見た正面図の部分拡大図)を示す。また、図3及び図4は、それぞれ、図2のIII-III線及びIV-IV線の断面図を示す。図2ないし4に示されるように、フェース2には、互いに平行に延びる複数のスコアライン10と、隣接するスコアライン10の間の領域であるスコアライン間領域20とが設けられている。
【0030】
[スコアライン]
本実施形態では、フェース2の上下方向のほぼ全域に、スコアライン10が間隔を空けて配されている。図3に示されるように、各スコアライン10は、溝底10aと、一対の溝壁10bとを有する。溝底10aは、例えば、フェース2と略平行な面として形成されている。一対の溝壁10bは、例えば、溝底10aからフェース2に向かって溝幅が広がる向きに傾斜している。一対の溝壁10bは、例えば、平面で構成されており、溝中心線に対して互いに対称形状に構成されている。
【0031】
スコアライン10の幅W0は、特に限定されないが、ボールに対する摩擦力を適正に発生させるために、例えば、0.50mm以上とされる。また、ゴルフ規則に適合させるために、スコアライン10の幅W0は、例えば、0.90mm以下とされても良く、とりわけ0.85mm以下とされても良い。なお、スコアライン10の溝壁10bとフェース2とが交差するコーナ部は、面取りが施されても良い。面取りが設けられている場合、スコアライン10の溝の幅W0は、R&Aの内規「30度測定法」に基づいて特定される。
【0032】
スコアライン10の深さd0は、特に限定されないが、ボールに対する摩擦力を適正に発生させるために、例えば、0.200mm以上とされる。また、ゴルフ規則に適合させるために、スコアライン10の深さd0は、0.508mm以下とされても良く、とりわけ、0.500mm以下とされても良い。
【0033】
[スコアライン間領域]
隣接するスコアライン10、10の間には、スコアライン間領域20が設けられる。本実施形態では、フェース2に、複数のスコアライン間領域20が画定される。複数のスコアライン間領域20のうち、少なくとも1つのスコアライン間領域20(本実施形態では、複数のスコアライン間領域20)には、スコアライン10よりも小さい幅を有する細溝(第1細溝11、第2細溝12)が設けられる。
【0034】
[第1細溝]
スコアライン間領域20には、第1細溝11が複数設けられている。それぞれの第1細溝11は、スコアライン10と交差する方向に延びている。この実施形態では、第1細溝11は、スコアライン10とほぼ直交する方向(例えば、少なくとも、スコアライン10に対して90°±5°の角度範囲を含む。)に延びている。他の態様では、第1細溝11は、スコアライン10に対して、例えば、90°±30°程度の角度で延びても良い。また、第1細溝11は、例えば、トウ・ヒール方向に、実質的に一定の間隔P1で複数配置されている。
【0035】
第1細溝11は、少なくとも一方の端部11aがスコアライン10のいずれかに連通している。したがって、スコアライン10に連通する第1細溝11は、フェース2のスコアライン間領域20において、フェース2とボールとの間の水を、容積がより大きなスコアライン10へと排出することができる。したがって、本実施形態のヘッド1は、フェース2の表面で優れた排水作用を発揮し、例えば、雨天時等においても、スピン性能の低下が抑制される。本実施形態では、第1細溝11の両方の端部11aがスコアライン10に連通しているので、上記排水作用がより一層向上する。
【0036】
[第2細溝]
スコアライン間領域20には、さらに、複数の第2細溝12が設けられる。それぞれの第2細溝12は、第1細溝11と交差する向きに延びる。この実施形態では、第2細溝12は、スコアライン10とほぼ平行な方向(例えば、少なくとも、スコアライン10に対して0°±5°の角度範囲を含む。)に延びている。したがって、第2細溝12は、第1細溝11と実質的に直角で交差している。他の態様では、第2細溝12は、スコアライン10に対して、例えば、0°±30°程度の角度で延びても良い。
【0037】
また、第2細溝12は、少なくとも一つの第2細溝列30を形成するように配置される。第2細溝列30は、同一直線上に、第2細溝12が離間部32を介して複数配置された細溝列である。例えば、図2において、トウ・ヒール方向に延びる直線(この直線は、フェース2には実際には現れない仮想の直線)L1上に、離間部32を介して3つの第2細溝12が示されている。
【0038】
離間部32は、直線L1上において、第2細溝12の端部12a、12a間の領域を意味し、該領域は、その少なくとも一部にフェース2の平面の部分(すなわち、溝の無い部分)を含む。本実施形態では、各第2細溝12の端部12aは、第1細溝11と連通せずに終端したものが示される。
【0039】
好ましい態様では、スコアライン間領域20に、第2細溝列30が上下方向に複数配置されても良い。この実施形態では、例えば、トウ・ヒール方向に延びる直線L1~L4に対応する4つの第2細溝列30が形成された例が示されている。また、複数の第2細溝列30は、例えば、上下方向に一定の間隔P2で配置されるのが望ましい。
【0040】
各第2細溝列30において、それぞれの第2細溝12は、少なくとも2つの第1細溝11と交差するように延びている。第2細溝12は、好ましくは3つ以上の第1細溝11と交差するように形成されている。したがって、各第2細溝12は、トウ・ヒール方向に所定の長さを有する。また、本実施形態では、第1細溝11と第2細溝12とが交差する部分には、フェース2の平面視において、ほぼ直角をなす4つの角34が形成される。
【0041】
以上のように構成された第2細溝12は、スコアライン間領域20において、ボールとフェース2との間に介在する芝を、その溝エッジを利用して切断することができる。また、第1細溝11と第2細溝12との交差部分に形成される角34も、ボールとフェース2との間の芝を切断する働きをする。したがって、本実施形態のヘッド1は、ボールとフェース2との間に介在する芝を細かく分断し、フェース2とボールとが直接接触する面積を増加させ、ひいては、スピン性能を向上させることができる。これは、例えば、ラフ等からのショットにおいて、スピン性能の低下を抑制するのに役立つ。
【0042】
さらに、各第2細溝列30において、隣接する第2細溝12,12の間、すなわち、離間部32には、第1細溝11の少なくとも一つ、好ましくは複数(この例では2つ)が位置している。換言すると、離間部32に位置する第1細溝11は、離間部32を構成する2つの第2細溝12とは交差しない。したがって、このような第1細溝11は、離間部32において第2細溝12と交差(連通)しないことで、上下方向の排水作用がより一層高められる。一般に、ボール打撃時、ボールはロフト角があるフェース2を上方向へと微小距離移動する。したがって、フェース2の上下方向の排水作用を向上させることは、フェース2とボールとの間の直接接触面積を増大させ、打球のスピン性能の向上により有利に働く。
【0043】
本実施形態では、上下方向で隣接する第2細溝列30において、一方(例えば、上側)の第2細溝列30の各離間部32は、他方(例えば、下側)の第2細溝列30の各離間部32と、トウ・ヒール方向において、互いに重複しないように位置ずれしている。これにより、スコアライン間領域20において、離間部32及び第2細溝12が、それぞれ上下方向で千鳥状に配置される。また、スコアライン間領域20において、第1細溝11のそれぞれは、第2細溝12の少なくとも一つ、好ましくは複数と連通するように構成されている。
【0044】
このような構成では、スコアライン間領域20において、排水作用が高い離間部32と、芝を切断する効果が高い第2細溝12とが離散的に配置される。したがって、この実施形態では、スコアライン間領域20の広範囲で、高い排水作用及び芝切断作用がバランス良く発揮される点で望ましい。
【0045】
[細溝の幅、深さ等]
図3及び図4に示されるように、第1細溝11及び第2細溝12のそれぞれの幅W1及びW2は、スコアライン10の幅W0よりも小さければ特に限定されないが、例えば、0.10mm以上、より好ましくは0.12mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上である。また、前記幅W1及びW2は、0.30mm以下とされても良く、より好ましくは0.25mm未満、さらに好ましくは0.22mm以下である。第1細溝11の幅W1と第2細溝12の幅W2とは、同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0046】
幅W1、W2を互いに異ならせる場合、例えば、W1>W2、又は、W1<W2のいずれの態様でも良い。例えば、第1細溝11の溝容積を増加させて排水能力を高める観点から、前者の態様が採用されても良い。また、幅W1を相対的に小さくして、スコアライン間領域20への第1細溝11の配設密度を高める観点より、後者の態様が採用されても良い。
【0047】
第1細溝11及び第2細溝12のそれぞれの深さd1及びd2は、例えば、0.010mm以上、より好ましくは0.012mm以上、さらに好ましくは0.015mm以上である。
また、前記深さd1及びd2は、0.030mm以下とされても良く、より好ましくは0.025mm未満、さらに好ましくは0.022mm以下である。
【0048】
第1細溝11の深さd1と第2細溝12の深さd2とは、同一であっても良いし、異なっていても良い。深さd1、d2を互いに異ならせる場合、例えば、d1>d2、又は、d1<d2のいずれの態様であっても良い。好ましくは、第1細溝11の溝容積を増加させて排水能力を高める観点より、前者の態様が望ましい。
【0049】
隣接する第1細溝11のトウ・ヒール方向の間隔P1(隣接する第1細溝11の溝中心線間の距離)は、隣接する第2細溝12の上下方向の間隔P2よりも小さいことが望ましい。これにより、スコアライン間領域20において、第1細溝11が第2細溝12よりも密に配置され、フェース2の上下方向での排水作用がさらに向上する。したがって、ヘッド1のスピン性能がより一層向上する。
【0050】
第1細溝11及び/又は第2細溝12は、様々な方法で形成され得る。本実施形態の第1細溝11及び第2細溝12は、レーザーミーリングで加工された溝である。レーザーミーリング加工では、レーザービームをフェース2に照射して所定の方向に移動させることで、フェース2の一部を溶融させ、溝が形成される。レーザーミーリングは、レーザー出力等を調節することにより、第1細溝11及び/又は第2細溝12を、正確な寸法で能率的に加工することができる。
【0051】
レーザーミーリングにおいて、溶融した金属は、アシストガス等によってフェース2の表面から除去され得るが、その一部が溝内に残る場合がある。例えば、レーザーミーリングおいて、第1細溝11を加工した後、第2細溝12を加工すると、第2細溝12の加工時の溶融金属の一部が第1細溝11の溝縁部に部分的に流れ込む場合がある。この場合、第1細溝11の溝容積や溝の連続性が低下し、排水性能が悪化するおそれがある。したがって、第1細溝11及び第2細溝12がレーザーミーリング加工溝である場合には、第1細溝11の排水性能の悪化を抑制するために、第2細溝12が先に加工され、その後に、第1細溝11が加工されることが望ましい。
【0052】
なお、本実施形態のヘッド1では、第2細溝12が、離間部32を有する第2細溝列30として配置され、離間部32には少なくとも1本の第1細溝11が位置している。したがって、少なくとも離間部32に位置する第1細溝11には、離間部32において、第2細溝12の溶融金属の影響を受けることがないため、優れた排水性能を発揮することが確保される。
【0053】
第1細溝11及び第2細溝12は、スコアライン10の形成後に加工されることが望ましいが、スコアライン10の形成前に加工されても良い。
【0054】
他の形態では、第1細溝11及び/又は第2細溝12は、例えば、NC加工やプレス加工にて形成されても良い。
【0055】
[他の実施形態]
図5は、他の実施形態として、フェース2の正面部分拡大図を示す。図5の実施形態では、上下方向で隣接する第2細溝列30において、一方の第2細溝列30の各離間部32は、他方の第2細溝列30の各離間部32とは、スコアライン10と平行な方向(すなわち、トウ・ヒール方向)において、互いに重複するように配されている。
【0056】
図5の実施形態では、各離間部32は、それぞれトウ・ヒール方向において、同一の長さを有するものが、トウ・ヒール方向の位置を揃えて上下に配置されている。換言すると、図5の実施形態では、それぞれの第2細溝12の端部12aは、上下に延びる同一の直線上にある。
【0057】
また、図5の実施形態では、第1細溝11の少なくとも一つ(この実施形態では、複数)は、各離間部32を貫通しており、各離間部32を構成する第2細溝12のいずれにも連通していない。
【0058】
このような実施形態では、図2の実施形態に比べて、第2細溝12のいずれにも連通していない第1細溝11が多数形成されるため、芝切断性能を維持しながら、より優れた排水性能を発揮することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。また、本明細書において開示された実施形態は、それぞれ単独で実施可能である他、それぞれの特徴点を相互に含むように組み合わされて実施されても良い。さらに、本発明にはその均等物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 ヘッド
2 フェース
10 スコアライン
11 第1細溝
11a 第1細溝の端部
12 第2細溝
12a 第2細溝の端部
20 スコアライン間領域
30 第2細溝列
32 離間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6