IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

特許7505247原稿送り装置、原稿読取装置及び画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】原稿送り装置、原稿読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240618BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240618BHJP
   B65H 31/26 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
G03G15/00 107
B65H31/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020081868
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021177586
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】米本 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡田 誠司
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003129(JP,A)
【文献】特開2017-193392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B65H 31/26
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が積載される給紙トレイと、
前記給紙トレイから繰り出した前記原稿を読取位置を経由する搬送路に沿って搬送する搬送機構と、
前記給紙トレイの下方に設けられ、前記搬送路から排出された前記原稿が積載される排出トレイと、
前記搬送路から排出される前記原稿の上面に接触して前記原稿を押さえる原稿押さえ部材と、
前記給紙トレイに設けられ、前記原稿押さえ部材を支持し、前記原稿押さえ部材を前記原稿の排出方向又はその逆方向に移動させる操作に応じた前記原稿押さえ部材の移動を許容し、且つ、排出される前記原稿が前記原稿押さえ部材に及ぼす力に抵抗して前記原稿押さえ部材の移動を規制する支持機構と、
前記原稿押さえ部材に連結され、前記原稿押さえ部材を前記排出方向又はその逆方向に移動させる操作が可能な操作部材と、を備えることを特徴とする原稿送り装置。
【請求項2】
前記支持機構は、互いに異なるサイズの前記原稿に対応する複数箇所において、それ以外の箇所よりも前記操作に対する抵抗が大きいことを特徴とする請求項1に記載の原稿送り装置。
【請求項3】
前記操作部材は、前記給紙トレイの上面又は側面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿送り装置。
【請求項4】
前記操作部材は、前記給紙トレイのユーザー操作側に設けられていることを特徴とする請求項に記載の原稿送り装置。
【請求項5】
前記操作部材は、前記給紙トレイから突出しないように設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の原稿送り装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿送り装置を備え、
前記読取位置において前記原稿を読み取って画像データを生成することを特徴とする原稿読取装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿送り装置と、
前記読取位置において前記原稿を読み取って画像データを生成する原稿読取装置と、
生成された前記画像データを用いてシートに画像を形成する作像装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読取位置に送る原稿送り装置、原稿送り装置を備える原稿読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿読取装置の読取位置に原稿を送る原稿送り装置が知られている。原稿送り装置は、読取位置を経由する搬送路に沿って原稿を搬送し、排出トレイに原稿を排出する。ところが、原稿が無造作に排出されると、原稿の位置と姿勢にばらつきが生じて原稿が取り出しにくくなる。また、取り出した原稿の端を揃える手間が増えてしまう。そこで、従来、排出される原稿の位置と姿勢のばらつきを抑制する技術が検討されている。例えば、特許文献1では、排出される原稿の上面に接触して原稿を押さえる原稿押さえ部材を備える原稿送り装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-20783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案された原稿押さえ部材は、原稿の上面との間に摩擦抵抗を生じさせるため、排出動作に対しては負荷となる。この負荷が過剰になることを防止するには、原稿押さえ部材が原稿の排出方向下流側の端部付近に接触し適切な位置で原稿が停止することが望ましい。しかし、特定のサイズの原稿を想定した位置に原稿押さえ部材が設けられた場合、そのサイズよりも排出方向の長さが短い原稿に対しては原稿押さえ部材が機能しない。一方、そのサイズよりも長い原稿の場合には、排出動作に対する負荷が増えるのに加え、先に排出された原稿に後から排出される原稿が擦り付けられる時間が長くなるため、先に排出された原稿が摩擦力によって押し出されてしまうことが考えられる。原稿が押し出されるのを防ぐために原稿押さえ部材の押圧力を強めると、後から排出される原稿が進路を塞がれて滞留してしまう。一方、原稿押さえ部材の押圧力を弱めると、原稿の位置と姿勢のばらつきを抑制する効果が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、原稿の排出方向の長さにかかわらず、排出動作に対する負荷が過剰になることなく、排出される原稿の位置と姿勢のばらつきを抑制することのできる原稿送り装置、原稿読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る原稿送り装置は、原稿が積載される給紙トレイと、前記給紙トレイから繰り出した前記原稿を読取位置を経由する搬送路に沿って搬送する搬送機構と、前記給紙トレイの下方に設けられ、前記搬送路から排出された前記原稿が積載される排出トレイと、前記搬送路から排出される前記原稿の上面に接触して前記原稿を押さえる原稿押さえ部材と、前記給紙トレイに設けられ、前記原稿押さえ部材を支持し、前記原稿押さえ部材を前記原稿の排出方向又はその逆方向に移動させる操作に応じた前記原稿押さえ部材の移動を許容し、且つ、排出される前記原稿が前記原稿押さえ部材に及ぼす力に抵抗して前記原稿押さえ部材の移動を規制する支持機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る原稿送り装置において、前記支持機構は、互いに異なるサイズの前記原稿に対応する複数箇所において、それ以外の箇所よりも前記操作に対する抵抗が大きくてもよい。
【0008】
本発明に係る原稿送り装置において、前記原稿押さえ部材に連結され、前記原稿押さえ部材を前記排出方向又はその逆方向に移動させる操作が可能な操作部材を備えていてもよい。
【0009】
本発明に係る原稿送り装置において、前記操作部材は、前記給紙トレイの上面又は側面に設けられていてもよい。
【0010】
本発明に係る原稿送り装置において、前記操作部材は、前記給紙トレイのユーザー操作側に設けられていてもよい。
【0011】
本発明に係る原稿送り装置において、前記操作部材は、前記給紙トレイから突出しないように設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る原稿読取装置は、前記のいずれかの原稿送り装置を備え、前記読取位置において前記原稿を読み取って画像データを生成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記のいずれかの原稿送り装置と、前記読取位置において前記原稿を読み取って画像データを生成する原稿読取装置と、生成された前記画像データを用いてシートに画像を形成する作像装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原稿の排出方向の長さにかかわらず、排出動作に対する負荷が過剰になることなく、排出される原稿の位置と姿勢のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る複合機の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る複合機の内部構成を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る原稿送り装置の正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る原稿送り装置の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る原稿送り装置の断面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る給紙トレイの平面図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る給紙トレイの正面図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る上層部を取り外した給紙トレイの平面図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る上層部を取り外した給紙トレイの正面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る上層部を取り外した給紙トレイの斜視図である。
図9A】本発明の一実施形態に係る上層部を取り外した給紙トレイの平面図である。
図9B】本発明の一実施形態に係る上層部を取り外した給紙トレイの正面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る上層部を取り外した給紙トレイの斜視図である。
図11A】本発明の一実施形態に係る原稿送り装置の断面図である。
図11B】本発明の一実施形態に係る原稿送り装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る複合機100(画像形成装置の一例)について説明する。複合機100は、プリンター1とイメージスキャナー15(原稿読取装置の一例)と原稿送り装置13とを備える。
【0017】
最初に、複合機100の全体の構成について説明する。図1は、複合機100の斜視図である。図2は、複合機100の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、図2における紙面手前側を複合機100の正面側(前側)とし、左右の向きは複合機100を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0018】
プリンター1は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3の下部には、シートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、電子写真方式にてトナー像を形成する作像装置6と、トナー像をシートSに定着する定着装置7が設けられている。本体ハウジング3の上部には、トナー像が定着されたシートSを排出する排出ローラー対8と、排出されたシートSが積載される積載トレイ9が設けられている。積載トレイ9の上方には、イメージスキャナー15と原稿送り装置13が設けられている。作像装置6は、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写ローラー及びクリーニング装置を備える。現像装置には、現像装置にトナーを供給するトナーコンテナが接続されている。
【0019】
本体ハウジング3の内部には、給紙ローラー5から作像装置6、定着装置7を経て排出ローラー対8に至る搬送路10が設けられている。搬送路10には、シートSを搬送する複数の搬送ローラー対17が設けられている。作像装置6よりも搬送方向上流側には、レジストローラー対18が設けられている。
【0020】
複合機100の各部は、制御部2によって制御される。制御部2は、プロセッサーとソフトウェアとによって実現されてもよいし、集積回路等のハードウェアによって実現されてもよい。プロセッサーは、メモリーに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリーは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。メモリーには、複合機100の各部の制御に用いられる制御プログラムが記憶される。
【0021】
イメージスキャナー15の前側には、操作パネル11が設けられている。操作パネル11は、表示パネルと、表示パネルの表示面に重ねて設けられたタッチパネルと、表示パネルに隣接するキーパッドと、を備える。制御部2は、プリンター1及びイメージスキャナー15の操作メニューを表す画面を表示パネルに表示させ、タッチパネル及びキーパッドで検知された操作に応じて複合機100の各部を制御する。
【0022】
外部のコンピューター等から複合機100に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー対18がシートSの斜行を補正し、レジストローラー対18が所定のタイミングで作像装置6にシートSを送り出す。作像装置6においては、帯電装置が感光体ドラムを所定の電位に帯電させ、露光装置が感光体ドラムに静電潜像を書き込み、現像装置がトナーコンテナから供給されたトナーを用いて静電潜像を現像することでトナー像を形成し、転写ローラーがトナー像をシートSに転写する。続いて、定着装置7がトナー像を加熱してシートSに定着させ、排出ローラー対8が積載トレイ9にシートSを排出する。クリーニング装置は、感光体ドラムに残留したトナーを除去する。
【0023】
次に、イメージスキャナー15について説明する。イメージスキャナー15は、光源と反射鏡を備える第1キャリッジ81と、2つの反射鏡を備える第2キャリッジ82と、光を結像させるレンズ83と、結像した光を画像データに変換する撮像素子84と、原稿Gが載せ置かれるコンタクトガラス85と、を備える。
【0024】
ユーザーがコンタクトガラス85の上面に原稿Gを置いてイメージスキャナー15に読み取りの指示を与えると、光源が原稿Gに光を照射し、第1キャリッジ81が速度Vで右方に移動するのと連動して第2キャリッジ82が速度V/2で右方に移動する。原稿Gで反射された反射光は、第1キャリッジ81の反射鏡と第2キャリッジ82の反射鏡で反射されてレンズ83に導かれ、撮像素子84に結像される。撮像素子84は、反射光を画像データに変換し、プリンター1の制御部2に出力する。
【0025】
次に、原稿送り装置13について説明する。図3は、原稿送り装置13の正面図である。図4は、原稿送り装置13の斜視図である。図5は、原稿送り装置13の断面図である。図6Aは、給紙トレイ43の平面図である。図6Bは、給紙トレイ43の正面図である。図7Aは、上層部43Uを取り外した給紙トレイ43の平面図である。図7Bは、上層部43Uを取り外した給紙トレイ43の正面図である。図8は、上層部43Uを取り外した給紙トレイ43の斜視図である。図9Aは、上層部43Uを取り外した給紙トレイ43の平面図である。図9Bは、上層部43Uを取り外した給紙トレイ43の正面図である。図10は、上層部43Uを取り外した給紙トレイ43の斜視図である。図6A乃至8は、操作部材25が第1ポジションに位置する状態を示している。図9A乃至10は、操作部材25が第3ポジションに位置する状態を示している。
【0026】
原稿送り装置13は、原稿Gが積載される給紙トレイ43と、給紙トレイ43から1枚ずつ原稿Gを繰り出す繰出ローラー51と、繰り出された原稿Gを読取位置62を経由する搬送路61に沿って搬送する搬送機構35と、給紙トレイ43の下方に設けられ、搬送路61から排出された原稿Gが積載される排出トレイ44と、を備える。
【0027】
[本体部]
本体部31(図3乃至5参照)は、扁平な形状に形成された底部40と、前後方向(原稿Gの搬送方向と交差する原稿Gの幅方向)に互いに対向する第1壁部41と第2壁部42とを有する。本体部31の後縁部は、イメージスキャナー15のコンタクトガラス85(図1参照)の後方にヒンジ結合されており、本体部31は、コンタクトガラス85上の原稿Gを押さえる押さえ板の機能を兼ね備える。第1壁部41は、底部40の前縁部の中央部から左側に設けられ、第2壁部42は、底部40の後縁部の全体にわたって設けられている。
【0028】
[給紙トレイ]
給紙トレイ43は、底部40の上方に設けられている。図5乃至8に示されるように、給紙トレイ43は、上部が開口した箱状の下層部43Loと、下層部43Loの上方に設けられた板状の上層部43Uと、下層部43Loの右方に設けられた延長部43Eと、を備える。下層部43Loは、底部43Bと、底部43Bの前端部、後端部、右端部にそれぞれ設けられた第1壁部431、第2壁部432、第3壁部433と、と備える。上層部43Uの前後の縁部の右端部には、前後方向に突出した揺動軸43Aが設けられている(図5参照)。下層部43Loの第1壁部431と第2壁部432の右端部には、揺動軸43Aを支持する支持穴43Hが設けられている(図8参照)。上層部43Uは、揺動軸43Aを中心として揺動可能である。
【0029】
延長部43Eの後面と下層部43Loの後面は、左右方向に連続した面をなしている。延長部43Eの前面は、下層部43Loの前面よりも後方に位置している。そのため、延長部43Eの前後方向の幅は、下層部43Loの前後方向の幅よりも狭い。上層部43Uの上面と延長部43Eの上面は、左側が低くなるように傾斜した連続的な傾斜面を形成している。上層部43Uは、前後方向にスライド可能な1対のカーソル45を備え、1対のカーソル45によって原稿Gの前後方向の位置決めがなされる。
【0030】
[昇降機構]
第1壁部41及び第2壁部42には、給紙トレイ43の上層部43Uを昇降させる昇降機構が設けられている(図示省略)。昇降機構は、例えば、上層部43Uの下面に接触する偏心カムと、モーターと、モーターの駆動力を偏心カムに伝達するギア列と、を備える。偏心カムの回転により上層部43Uが揺動軸43Aを中心として揺動(昇降)する。制御部2は、給紙トレイ43に積載された原稿Gが繰出ローラー51に押し当てられるように、昇降機構を制御する。
【0031】
[排出トレイ]
排出トレイ44は、底部40の上面(給紙トレイ43の下方)に設けられている(図3乃至5参照)。排出トレイ44の左側の部分には、左側が低くなるように傾斜した傾斜面が設けられている。
【0032】
[繰出機構]
繰出機構34(図5参照)は、第1壁部41と第2壁部42との間の空間に設けられている。繰出機構34は、下部が開口した箱形のホルダー53を備え、ホルダー53の内部に、繰出ローラー51と、繰出ローラー51の左方に設けられた従動ローラー55と、従動ローラー55の左方に設けられた駆動ローラー52と、駆動ローラー52と従動ローラー55とに巻き掛けられたゴム製のベルト56と、ベルト56の下側の部分の下面に押し当てられた補助ローラー57と、を備える。
【0033】
繰出ローラー51、従動ローラー55、駆動ローラー52及び補助ローラー57は、前後方向を軸方向として配置されている。繰出ローラー51は、芯金と、ゴム等で形成された弾性層と、を備える(図示省略)。従動ローラー55、駆動ローラー52及び補助ローラー57は、樹脂等で形成されている。駆動ローラー52の駆動軸54の前後両端部は、第1壁部41と第2壁部42に支持され、モーター等の駆動源(図示省略)に接続されている。ホルダー53は、駆動軸54に支持され、駆動軸54を中心として揺動可能である。駆動軸54の駆動力は、ギア列やタイミングベルト等の伝達機構(図示省略)により繰出ローラー51に伝達される。
【0034】
[搬送機構]
搬送機構35は、繰出機構34から読取位置62を経由して読取位置62の右上方に至る概ねU字形に湾曲した形状に形成された搬送路61と、搬送路61に配置された複数の搬送ローラー対63と、を備える。読取位置62は、ホームポジションに位置する第1キャリッジ81(図2参照)の反射鏡に対向する位置である。読取位置62には、シェーディング板49が設けられており、シェーディング板49とコンタクトガラス85との間には、原稿Gを通過させる間隙が設けられている。イメージスキャナー15は、読取位置62を通過する原稿Gを読み取る。
【0035】
搬送路61は、原稿Gを通過させる間隙を空けて互いに対向する板状の部材により形成されている。搬送ローラー対63は、駆動ローラーと従動ローラーとを備え、駆動ローラーがモーター等の駆動源(図示省略)に接続されている。搬送機構35の上方には、開閉可能な板状のカバー部32が設けられている。カバー部32の左下端部は、本体部31の底部40の左端部にヒンジ結合されている。
【0036】
次に、原稿押さえ部材21と支持機構23について詳細に説明する。原稿送り装置13は、搬送路61から排出される原稿Gの上面に接触して原稿Gを押さえる原稿押さえ部材21と、給紙トレイ43に設けられ、原稿押さえ部材21を支持し、原稿押さえ部材21を原稿Gの排出方向又はその逆方向に移動させる操作に応じて原稿押さえ部材21の移動を許容し、且つ、排出される原稿Gが原稿押さえ部材21に及ぼす力に抵抗して原稿押さえ部材21の移動を規制する支持機構23と、を備える。
【0037】
[原稿押さえ部材]
原稿押さえ部材21は、棒状の部材であり、その上端部が支持機構23によって支持されている。原稿押さえ部材21は、その下端部が上端部よりも原稿Gの排出方向(図5のY方向)下流側に位置した姿勢で支持されている。原稿押さえ部材21は、揺動軸23Aを中心として揺動可能であり、排出トレイ44に原稿Gがない場合には、重力により、下端部を排出トレイ44に接触させた状態で静止している。原稿押さえ部材21は、排出トレイ44に原稿Gが排出される場合には、重力により原稿Gの上面に接触して原稿Gを押さえる。
【0038】
[支持機構]
支持機構23は、揺動軸23Aと、ホルダー23Hと、連結部材23Cと、操作部材25と、スリット43Sと、を備える。原稿押さえ部材21は、前後方向を軸方向とする揺動軸23Aを介して、ホルダー23Hに連結されており、揺動軸23Aを中心としてホルダー23Hに対して揺動可能である。下層部43Loの底部43Bの前後方向の概ね中央には、左右方向を長手方向とするスリット43Sが設けられている(図5、7A参照)。スリット43Sは、ホルダー23Hの前後方向の厚みに対応する幅を有し、スリット43Sにホルダー23Hの上部が挿入されている。スリット43Sの後方には、ホルダー23Hと原稿押さえ部材21を保護する保護部が設けられている。
【0039】
ホルダー23Hの上端は、板状の連結部材23Cに結合されている。連結部材23Cは、左右方向を長手方向とする第1部分23C1と、第1部分23C1の右端部から前方に形成された第2部分23C2と、を備える。第1部分23C1の前後方向の幅は、スリット43Sの幅よりも広い。連結部材23Cは、下層部43Loの底部43Bの上面に接触している。
【0040】
給紙トレイ43の延長部43Eの上面には、凹部43Vが設けられている。凹部43Vの前後方向の位置は、スリット43Sよりも前側である。換言すれば、凹部43Vは、給紙トレイ43のユーザー操作側に設けられている。凹部43Vには、互いに異なるサイズの原稿Gに対応する操作部材25の位置を示す目印43Mが表示されている。この例では、A4横送り及びA5縦送りに対応する第1ポジション、B5横送り及びB6縦送りに対応する第2ポジション、A5横送り及びA6縦送りに対応する第3ポジションに対応する目印43Mが表示されている。目印43Mは、例えばステッカーの貼付、射出成形によるレリーフ等の形態で設けられる。なお、横送りとは、長辺が搬送方向と交差する姿勢で原稿Gを搬送することを指し、縦送りとは、短辺が搬送方向と交差する姿勢で原稿Gを搬送することを指す。
【0041】
[操作部材]
操作部材25は、原稿押さえ部材21に連結され、原稿押さえ部材21を排出方向又はその逆方向に移動させる操作が可能である。操作部材25は、左右方向を長手方向とする棒状の部材であり、その右端部の上部には、把持部25Gが設けられている。把持部25Gの上端は、延長部43Eの上面と同じ位置又は上面よりも低い位置に位置する。換言すれば、操作部材25は、給紙トレイ43から突出しないように設けられている。第3壁部433には、第3壁部433から凹部43Vにわたって左右方向に貫通する貫通穴43Tが設けられている。操作部材25は貫通穴43Tに挿入され、操作部材25の左端部が連結部材23Cの第2部分23C2に結合され、操作部材25の右端部が凹部43Vの内部に位置する。操作部材25は、貫通穴43Tに沿って移動可能であり、ホルダー23Hは操作部材25に連動してスリット43Sに沿って移動可能である。ユーザーが把持部25Gをつかんで操作部材25を左右方向に移動させると、操作部材25に連動して原稿押さえ部材21も左右方向(排出方向及びその逆方向)に移動する。
【0042】
支持機構23は、原稿押さえ部材21を原稿Gの排出方向又はその逆方向に移動させる操作に応じて原稿押さえ部材21の移動を許容し、且つ、排出される原稿Gが原稿押さえ部材21に及ぼす力に抵抗して原稿押さえ部材21の移動を規制する。例えば、操作部材25は、第3壁部433の貫通穴43Tの内部に設けられた板ばね(図示省略)により、凹部43Vの底面に押し当てられている。そのため、操作部材25と凹部43Vの底面との間には、摩擦抵抗が生じる。この摩擦抵抗は、ユーザーが把持部25Gをつかんで操作部材25を移動させるときの力よりも小さく、且つ、排出される原稿Gが原稿押さえ部材21に及ぼす排出方向の力よりも大きい。従って、操作部材25及び原稿押さえ部材21はユーザーの操作に応じて移動するが、排出される原稿Gが原稿押さえ部材21に接触しても原稿押さえ部材21は移動しない。なお、排出される原稿Gが原稿押さえ部材21に及ぼす排出方向の力とは、例えば、原稿Gの先端が原稿押さえ部材21に接触したときの原稿Gが原稿押さえ部材21を排出方向に押す力や、原稿押さえ部材21が原稿Gの上面に接触した状態で原稿Gが排出されるときの原稿Gが原稿押さえ部材21を排出方向に引きずる力などである。
【0043】
支持機構23は、互いに異なるサイズの原稿Gに対応する複数箇所において、それ以外の箇所よりも原稿押さえ部材21を移動させる操作に対する抵抗が大きい。例えば、凹部43Vの底面の第1ポジション、第2ポジション、第3ポジションに対応する箇所には、前後方向を長手方向とする深さ1mm程度の溝が設けられており、操作部材25の把持部25Gの底面には、高さ1mm程度の1つの突起が設けられている(図示省略)。突起が溝に嵌ると、突起が溝以外の場所に接触している場合よりも原稿押さえ部材21を移動させる操作に対する抵抗が大きくなるから、把持部25Gを第1ポジション、第2ポジション、第3ポジションのいずれかに留まらせることが可能となる。この構成によっても、排出される原稿Gが原稿押さえ部材21に及ぼす力に抵抗して原稿押さえ部材21の移動を規制することができる。
【0044】
次に、原稿押さえ部材21の動作について説明する。図11A、11Bは、原稿送り装置13の断面図である。
【0045】
原稿押さえ部材21が第1ポジションに位置する状態(図7A乃至8、11A)でA4横送り又はA5縦送りが行われた場合、原稿押さえ部材21が原稿Gの排出方向下流側の端部付近に接触した時点で原稿Gが停止する。よって、排出動作に対する負荷を増加させずに、排出される原稿Gの位置と姿勢のばらつきを抑制することができる。
【0046】
一方、原稿押さえ部材21が第3ポジションに位置する状態(図9A乃至10、11B)でA5横送り又はA6縦送りが行われた場合、原稿押さえ部材21が原稿Gの排出方向下流側の端部付近に接触した時点で原稿Gが停止する。よって、排出動作に対する負荷を増加させずに、排出される原稿Gの位置と姿勢のばらつきを抑制することができる。
【0047】
また、図示は省略するが、操作部材25を第2ポジションに位置する状態でB5横送り又はB6縦送りが行われた場合、原稿押さえ部材21が原稿Gの排出方向下流側の端部付近に接触した時点で原稿Gが停止する。よって、排出動作に対する負荷を増加させずに、排出される原稿Gの位置と姿勢のばらつきを抑制することができる。
【0048】
以上説明した本実施形態に係る原稿送り装置13によれば、原稿Gの排出方向の長さにかかわらず、排出動作に対する負荷が過剰になることなく、排出される原稿Gの位置と姿勢のばらつきを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る原稿送り装置13によれば、支持機構23は、互いに異なるサイズの原稿Gに対応する複数箇所において、それ以外の箇所よりも原稿押さえ部材21を移動させる操作に対する抵抗が大きいから、原稿Gのサイズに対応する位置に容易に原稿押さえ部材21を移動させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る原稿送り装置13によれば、操作部材25を備えるから、原稿押さえ部材21を容易に移動させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る原稿送り装置13によれば、操作部材25が、給紙トレイ43の上面に設けられているから、原稿押さえ部材21を容易に移動させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る原稿送り装置13によれば、操作部材25が、給紙トレイ43のユーザー操作側に設けられているから、原稿押さえ部材21を容易に移動させることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る原稿送り装置13によれば、操作部材25が、給紙トレイ43から突出していないから、操作部材25に誤って触れることで原稿押さえ部材21の位置がずれることを防ぐことができる。
【0054】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0055】
上記実施形態では、支持機構23が、互いに異なるサイズの原稿Gに対応する複数箇所において、それ以外の箇所よりも操作に対する抵抗が大きい例が示されたが、複数個所とそれ以外の箇所とで操作に対する抵抗が同等であってもよい。
【0056】
上記実施形態では、原稿送り装置13が操作部材25を備える例が示されたが、原稿送り装置13が操作部材25を備えていなくてもよい。この場合、ユーザーが原稿押さえ部材21又はホルダー23Hをつかむことで原稿押さえ部材21の移動が可能である。なお、この場合、連結部材23Cの第2部分23C2は不要である。
【0057】
上記実施形態では、操作部材25が給紙トレイ43の上面に設けられている例が示されたが、操作部材25が給紙トレイ43の側面に設けられていてもよい。
【0058】
上記実施形態では、操作部材25が給紙トレイ43のユーザー操作側に設けられている例が示されたが、操作部材25が給紙トレイ43のユーザー操作側の反対側に設けられていてもよい。
【0059】
上記実施形態では、操作部材25が給紙トレイ43から突出していない例が示されたが、操作部材25が給紙トレイ43から突出していてもよい。
【0060】
上記実施形態では、貫通穴43Tに設けられた板ばねにより、操作部材25と凹部43Vの底面との間に摩擦抵抗を生じさせることで原稿押さえ部材21の移動を規制する例が示されたが、板ばねを設けずに、操作部材25と貫通穴43Tとの摩擦抵抗、ホルダー23Hとスリット43Sとの摩擦抵抗などによって原稿押さえ部材21の移動を規制するように構成されていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、操作部材25に把持部25Gが設けられている例が示されたが、把持部25Gを設けずに、操作部材25の上面に滑り止めの凹凸を設け、凹凸に指を押し付けて操作部材25を移動させるように構成されていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、原稿押さえ部材21が重力により原稿Gの上面に接触して原稿Gを押さえる例が示されたが、原稿押さえ部材21を下方に付勢するばね等の部材により原稿Gを押さえるように構成されていてもよい。
【0063】
上記実施形態では、凹部43Vの底面の第1ポジション、第2ポジション、第3ポジションに対応する箇所に溝が設けられ、操作部材25の把持部25Gの底面に突起が設けられている例が示されたが、凹部43Vの底面に突起が設けられ、把持部25Gの底面に溝が設けられていてもよい。また、溝と突起は他の部分に設けられていてもよい。例えば、給紙トレイ43の下層部43Loの上面の連結部材23Cに対向する部分に溝が設けられ、連結部材23Cの底面に突起が設けられていてもよい。あるいは、スリット43Sの側面に溝が設けられ、ホルダー23Hの側面に突起が設けられていてもよい。
【0064】
上記実施形態では、ユーザーが操作部材25を操作することで原稿押さえ部材21を移動させる例が示されたが、操作部材25を設けずに、原稿Gのサイズに応じて原稿送り装置13が原稿押さえ部材21を移動させるように構成されていてもよい。例えば、原稿押さえ部材21を左右方向に移動させる駆動部と、原稿Gのサイズを検知するセンサーと、が給紙トレイ43に設けられる(図示省略)。駆動部は、例えば、ラックアンドピニオン、ボールねじ、ソレノイドアクチュエーター等である。制御部2は、センサーで検知された原稿Gのサイズに応じた位置にホルダー23Hを移動させるように駆動部を制御する。この構成によれば、原稿押さえ部材21を移動させる操作を行わなくても、原稿Gのサイズに応じて原稿押さえ部材21を移動させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 プリンター(画像形成装置)
13 原稿送り装置
15 イメージスキャナー(原稿読取装置)
21 原稿押さえ部材
23 支持機構
25 操作部材
35 搬送機構
43 給紙トレイ
44 排出トレイ
61 搬送路
62 読取位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B