(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】車両の側部車体構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/78 20160101AFI20240618BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20240618BHJP
B60J 10/24 20160101ALI20240618BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B60J10/78
B60J10/84
B60J10/24
B60J5/04 Z
(21)【出願番号】P 2020083759
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-03-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会における発表/公開日:令和1年10月23日~11月4日 集会名「第46回東京モーターショー2019」 集会における発表/公開日:令和1年11月25日~12月13日 集会名「2019 MAZDA EUROPEAN TECHNOLOGY & DESIGN FORUM」
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】毛留 良太
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-052826(JP,A)
【文献】特表2014-504993(JP,A)
【文献】特開2001-058516(JP,A)
【文献】特開2014-125001(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00 - 10/90
B60R 13/06
B60J 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部が開閉し後部にドアヒンジを備えるリヤドアと、
上記リヤドアの後方に位置する窓部材と、
上記リヤドアの車幅方向内側に位置して上記リヤドアと対向する側面部を有する車体部材と、
上記リヤドアの閉時に当該リヤドアの後端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第1仮想線と、
上記窓部材の前端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第2仮想線と、
上記第1仮想線と上記第2仮想線と上記側面部とで形成される隙間部と、
上記窓部材の前端縁部に固定されて上記隙間部に位置し、弾性体で形成されるシール部材と、を備える車両の側部車体構造であって、
上記窓部材の上記前端縁部に固定されたエンドキャップを備え、
該エンドキャップは、
上記窓部材の前端から車両後方へ延びるとともに、上記窓部材の上記前端縁部における車幅方向内側の面に固定する車幅方向内辺部と、
該車幅方向内辺部の車両前方に位置するとともに、上記車幅方向内辺部に対して車幅方向内側へ向けて突出する突出部とを一体的に備え、
上記シール部材は、
上記エンドキャップの上記車幅方向内辺部における車幅方向内側の面に接着剤を介して固定する基部と、
上記隙間部に位置する断面環状の中空形状体である中空部とで一体形成され、
上記シール部材の上記中空部は、
上記基部の前端部から車両前方に延びる軸圧縮部と、
該軸圧縮部の前端部から車幅方向内側へ向けて湾曲形成された湾曲部と、
該湾曲部の車幅方向内側端部から車幅方向内側に延びて上記リヤドアの閉時に当該リヤドアと当接する面を有する当接面部と、
該当接面部の車幅方向内側端部
を上記軸圧縮部の後端部
及び上記基部の前端部に連結し、上記リヤドアの閉時に、上記側面部と接するように設けられる連結部と
で断面環状の中空形状体に一体形成され、
上記シール部材の上記基部は、
車幅方向外側の面に車幅方向内側へ向けて凹設され、上記エンドキャップの上記突出部が嵌合する凹部を備えたことを特徴とする
車両の側部車体構造。
【請求項2】
上記リヤドア
の後端部は、上記軸圧縮部と車両正面視で重複する領域において
、車両前後方向と直交する面を有する
とともに、上記シール部材の上記中空部を押圧する押圧面部が備えられる
請求項1に記載の車両の側部車体構造。
【請求項3】
上記押圧面部は車両正面視で上記湾曲部と重複するように設けられる
請求項2に記載の車両の側部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観音開き構造のリヤドアにおいて、当該リヤドア後端部と、該リヤドアの後部に位置する窓部材と、上記リヤドアの車幅方向内側に位置して当該リヤドアと対向する車体部材の側面部との間の隙間部をシールするような車両の側部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部が開閉し、前部にドアヒンジ(フロントドアヒンジ)を備える一般的なリヤドアでは、シール部材に対して車幅方向外側から車幅方向内側に荷重が入るが、観音開き構造のリヤドア、すなわち、前部が開閉し、後部にドアヒンジを備えるリヤドアにおいては、シール部材に対して車両後ろ方向への荷重が入ることになる。
【0003】
このため、上記リヤドアと、リヤドア後方の窓部材と、リヤドアの車幅方向内側に位置する車体部材と、で形成される隙間部を備える構造において、当該隙間部に設けられるシール部材のリヤドア開閉による耐久強度を保持しつつ、上記隙間部をシールすることが要請されている。
【0004】
ところで、特許文献1には、フロントドアの前方に位置する透明固定窓部材(いわゆる三角窓部材)に樹脂部材を取付け、この樹脂部材の後方リップ部でフロントドアとの間を封止する構造が開示されている。
【0005】
上記特許文献1に開示された構造を観音開き構造のドアに採用した場合、上述のフロントドアの前端と上記後方リップ部とが面接触ではなく、線接触となる関係上、上記樹脂部材(シール部材)の耐久強度が保持できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、リヤドア開閉によるシール部材の耐久強度を保持しつつ、隙間部を確実にシールすることができる車両の側部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両の側部車体構造は、前部が開閉し後部にドアヒンジを備えるリヤドアと、上記リヤドアの後方に位置する窓部材と、上記リヤドアの車幅方向内側に位置して上記リヤドアと対向する側面部を有する車体部材と、上記リヤドアの閉時に当該リヤドアの後端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第1仮想線と、上記窓部材の前端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第2仮想線と、上記第1仮想線と上記第2仮想線と上記側面部とで形成される隙間部と、上記窓部材の前端縁部に固定されて上記隙間部に位置し、弾性体で形成されるシール部材と、を備える車両の側部車体構造であって、上記窓部材の上記前端縁部に固定されたエンドキャップを備え、該エンドキャップは、上記窓部材の前端から車両後方へ延びるとともに、上記窓部材の上記前端縁部における車幅方向内側の面に固定する車幅方向内辺部と、該車幅方向内辺部の車両前方に位置するとともに、上記車幅方向内辺部に対して車幅方向内側へ向けて突出する突出部とを一体的に備え、上記シール部材は、上記エンドキャップの上記車幅方向内辺部における車幅方向内側の面に接着剤を介して固定する基部と、上記隙間部に位置する断面環状の中空形状体である中空部とで一体形成され、上記シール部材の上記中空部は、上記基部の前端部から車両前方に延びる軸圧縮部と、該軸圧縮部の前端部から車幅方向内側へ向けて湾曲形成された湾曲部と、該湾曲部の車幅方向内側端部から車幅方向内側に延びて上記リヤドアの閉時に当該リヤドアと当接する面を有する当接面部と、該当接面部の車幅方向内側端部を上記軸圧縮部の後端部及び上記基部の前端部に連結し、上記リヤドアの閉時に、上記側面部と接するように設けられる連結部とで断面環状の中空形状体に一体形成され、上記シール部材の上記基部は、車幅方向外側の面に車幅方向内側へ向けて凹設され、上記エンドキャップの上記突出部が嵌合する凹部を備えたものである。
【0009】
上記構成によれば、リヤドア閉時に、上記シール部材に入力される後ろ方向の荷重を、上記当接面部が面で受けることにより、当接部位の応力が抑制されて、シール部材の耐久強度を向上させることができる。
【0010】
また、リヤドア閉時に、リヤドアと窓部材とで軸圧縮部を挟み込んで圧縮し、上記連結部が車幅方向内側の側面部に向けて弾性変形し、上記隙間部を構成する側面部を押圧することで、当該隙間部を確実にシールすることができる。
【0011】
要するに、リヤドア開閉によるシール部材の耐久強度の確保と、隙間部の確実なシール性確保と、の両立を図ることができる。
【0012】
さらにこの発明は、上記当接面部と上記軸圧縮部との間に、湾曲形成された湾曲部が設けられるものである。
【0013】
上記構成によれば、リヤドア閉時に、リヤドア後端部が上記湾曲部に面で当たる、つまり、これら両者が面接触することで、シール部材に対する応力集中度合が抑制される。
【0014】
また、上記湾曲部により、製品ばらつきに対するロバスト性(robustness)を確保することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記リヤドアの後端部は、上記軸圧縮部と車両正面視で重複する領域において、車両前後方向と直交する面を有するとともに、上記シール部材の上記中空部を押圧する押圧面部が備えられるものである。
【0016】
上記構成によれば、上記押圧面部が面で上記軸圧縮部と当たることにより、シール部材に対する応力集中をより一層抑制することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記押圧面部は車両正面視で上記湾曲部と重複するように設けられるものである。
【0018】
上記構成によれば、上記押圧面部は上記湾曲部と車両正面視で重複するので、リヤドア閉時には、押圧面部から湾曲部に荷重が入り、この湾曲部から上記軸圧縮部と上記当接面部とに入力を分散して、応力の集中を回避することができ、これにより、シール部材の耐久強度をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、リヤドア開閉によるシール部材の耐久強度を保持しつつ、隙間部を確実にシールすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】シール部材にリヤドア閉時の荷重が入っていない状態で示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
リヤドア開閉によるシール部材の耐久強度を保持しつつ、隙間部を確実にシールするという目的を、前部が開閉し後部にドアヒンジを備えるリヤドアと、上記リヤドアの後方に位置する窓部材と、上記リヤドアの車幅方向内側に位置して上記リヤドアと対向する側面部を有する車体部材と、上記リヤドアの閉時に当該リヤドアの後端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第1仮想線と、上記窓部材の前端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第2仮想線と、上記第1仮想線と上記第2仮想線と上記側面部とで形成される隙間部と、上記窓部材の前端縁部に固定されて上記隙間部に位置し、弾性体で形成されるシール部材と、を備える車両の側部車体構造であって、上記シール部材は、車両前後方向に延びる軸圧縮部と、該軸圧縮部の前端部から車幅方向内側に延びて上記リヤドアの閉時に当該リヤドアと当接する面を有する当接面部と、該当接面部の車幅方向内側端部と上記軸圧縮部の後端部とを連結し、上記リヤドアの閉時に、上記側面部と接するように設けられる連結部と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0022】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の側部車体構造を示し、
図1は当該車両の側部車体構造を示す側面図、
図2は
図1の矢印A―A線に沿う要部の断面図、
図3はシール部材にリヤドア閉時の荷重が入っていない状態で示す説明図、
図4はリヤドア開放時の断面図、
図5はリヤドア閉時の断面図である。
図1において、車両上部の車幅方向端部をフロントピラーの上端からリヤピラー10の前端にかけて車両前後方向に延びるルーフサイドレール11を設けると共に、車両下部の車幅方向端部をヒンジピラーの下端からリヤホイールアーチ部12の前側下部にかけて車両前後方向に延びるサイドシル13を設けている。
上述のルーフサイドレール11は、ルーフサイドレールアウタとルーフサイドレールインナとを接合固定して、車両前後方向に延びるルーフサイド閉断面を備えた車体強度部材である。
また、上述のリヤピラー10は、リヤピラーアウタとリヤピラーインナとを接合固定して、車両前部が高く車両後部が低くなる前高後低状の傾斜方向に延びるリヤピラー閉断面を備えた車体強度部材である。
さらに、上述のサイドシル13は、サイドシルアウタとサイドシルインナとを接合固定して、車両前後方向に延びるサイドシル閉断面を備えた車体強度部材である。
【0023】
図1に示すように、上述のルーフサイドレール11の車両前後方向中間部と、上述のサイドシル13の車両前後方向中間部と、を車両上下方向に延びて連結するセンタピラー14を設けている。このセンタピラー14は、センタピラーアウタとセンタピラーインナとを接合固定して、車両上下方向に延びるセンタピラー閉断面を備えた車体強度部材である。
【0024】
図1に示すリヤホイールアーチ部12の前側において、
図2に示すように、ルーフサイドレール11の後部とサイドシル13の後部とを車両上下方向に連結するクオータピラー15を設けている。このクオータピラー15は、クオータピラーアウタ16とクオータピラーインナ17とを接合固定して、車両上下方向に延びるクオータピラー閉断面18を備えた車体強度部材である。
【0025】
図1に示すように、ルーフサイドレール11と、フロントピラーと、ヒンジピラーと、サイドシル13と、センタピラー14と、で囲繞されたフロントドア開口19を設けている。このフロントドア開口19はフロントドア(図示せず)により開閉される。
【0026】
上述のフロントドアは、その後部が開閉し前部にフロントドアヒンジを備えるサイドドアである。
【0027】
図1に示すように、ルーフサイドレール11と、センタピラー14と、サイドシル13と、クオータピラー15(
図2参照)と、で囲繞されたリヤドア開口20を設けている。このリヤドア開口20はリヤドア21により開閉される。
【0028】
上述のリヤドア21は、その前部が開閉し、後部にリヤドアヒンジ22,23を備えるサイドドアである。上述のリヤドアヒンジ22,23およびフロントドアヒンジ(図示せず)は、車体側ヒンジブラケットと、ドア側ヒンジブラケットと、をヒンジピンで枢支連結したものである。
【0029】
上述のフロントドア(図示せず)と上述のリヤドア21とで、観音開き構造のドアが構成されている。
【0030】
ここで、上述のリヤドア21は、ドアアウタパネルとドアインナパネルとを有するドア本体24と、このドア本体24のベルトライン部(BL)上方に位置するサッシュ部25(
図2参照)と、当該サッシュ部25の車幅方向外側に位置するリヤドアウインドガラス26と、を備えている。
【0031】
図2に示すように、上述のサッシュ部25は、アウタパネル27とインナパネル28とを接合して、これら両パネル27,28間に車両上下方向に延びる閉断面29を形成している。
【0032】
また、同図に示すように、上述のリヤドアウインドガラス26は、接着剤30を用いてサッシュ部25のアウタパネル27に固定されている。
【0033】
さらに、
図2に示すように、上述のリヤドアウインドガラス26の後端部に固定したポリ塩化ビニル製のエンドキャップ31の車幅方向内側面と、サッシュ部25のアウタパネル27における車幅方向外側面との間には、スポンジ等から成る遮音部材32が介設されている。
【0034】
図1に示すように、リヤドア21の後方には、窓部材としてのクオータウインドガラス33が位置している。詳しくは、リヤドア21におけるリヤドアウインドガラス26の後方に上記クオータウインドガラス33が位置するものである。
【0035】
図2に示すように、上述のクオータピラー15は、クオータピラーアウタ16とクオータピラーインナ17とを接合した車両前側の接合フランジ部15aと、クオータピラーアウタ16とクオータピラーインナ17とを接合した車両後側の接合フランジ部15bと、を有している。
【0036】
そして、上述のクオータウインドガラス33の前部は、上記車両後側の接合フランジ部15bに対して、接着剤34を用いて、固定されたものである。また、当該クオータウインドガラス33の前端部には、ポリ塩化ビニル製のエンドキャップ35が固定されている。
【0037】
クオータピラー15を構成するクオータピラーアウタ16およびクオータピラーインナ17は、前側の傾斜壁部16a,17aと、側面部16b,17bと、後側の傾斜壁部16c,17cと、を備えている。
【0038】
前側の傾斜壁部16a,17aは、車両前側の接合フランジ部15aの後端から上記側面部16b,17bの前端に向けて車幅方向外方かつ後方に延びている。
【0039】
側面部16b,17bは前側の傾斜壁部16a,17aの後端から後側の傾斜壁部16c,17cの前端に向けて車両前後方向に延びている。
【0040】
後側の傾斜壁部16c,17cは側面部16b,17bの後端から車両後側の接合フランジ部15bの前端に向けて車幅方向外方かつ後方に延びている。
【0041】
上述のクオータピラー15は、リヤドア21の後部と、クオータウインドガラス33の前部との車幅方向内側に位置して上記リヤドア21と対向する側面部16b(詳しくは、後述する隙間部Gと対向する側面部16b)を有する車体部材である。
【0042】
図2の拡大図を
図3に示すように、リヤドア21と、クオータウインドガラス33と、リヤドア21の車幅方向内側に位置する車体部材としてのクオータピラー15と、でリヤドア閉時に隙間部Gが形成される。
【0043】
詳しくは、上記隙間部Gは、第1仮想線αと第2仮想線βとクオータピラー15の側面部16bとで形成される。ここで、上述の第1仮想線αは、
図3に示すように、リヤドア21の閉時に、エンドキャップ31を含むリヤドア21の後端と、上記側面部16bと、を車幅方向に沿って連結する仮想ラインである。
【0044】
また、上述の第2仮想線βは、
図3に示すように、エンドキャップ35を含むクオータウインドガラス33(窓部材)の前端と、上記側面部16bと、を車幅方向に沿って連結する仮想ラインである。
【0045】
図3に示すように、リヤドア21閉時に上述の隙間部Gをシールする目的で、シール部材40を設けている。
【0046】
すなわち、エンドキャップ35を介して窓部材としてのクオータウインドガラス33の前端縁部に固定されて上述の隙間部Gに位置し、弾性体で形成されるシール部材40を設け、このシール部材40にて上記隙間部Gを封止すべく構成している。
【0047】
図3に示すように、上述のシール部材40は、接着剤36を介してエンドキャップ35の車幅方向内辺部35aに接着固定される基部40Bと、この基部40Bの車両前方側に一体形成されて上記隙間部Gに位置する中空部40A(詳しくは、中空シール部)と、を備えている。
【0048】
図3に示すように、シール部材40を固定するエンドキャップ35には、その前辺部35bから車幅方向内辺部35aの車幅方向の内側位置よりもさらに車幅方向内側へ突出する突出部35cが一体形成されている。
【0049】
上記シール部材40における基部40Bの前部車幅方向外側には、上記突出部35cを嵌合する凹部41が形成されており、この凹部41内に上記突出部35cを嵌入させている。
【0050】
これにより、リヤドア21閉時にシール部材40の中空部40Aに入力される後ろ向き荷重(
図5に矢印で示す荷重方向LO参照)を、上記突出部35cにて受止め、基部40Bの剥離を防止すべく構成している。
【0051】
図3に示すように、上記シール部材40の中空部40Aは、軸圧縮部42と、当接面部43と、連結部44と、を備えている。
【0052】
上述の軸圧縮部42は基部40Bの延長線上において車両前後方向に延びている。
【0053】
また、上述の当接面部43は、上記軸圧縮部42の前端部から車幅方向内側に延びて、リヤドア21の閉時に当該リヤドア21の後端部と当接する面を有するものである。
【0054】
さらに、上述の連結部44は、上記当接面部43の車幅方向内側端部と上記軸圧縮部42の後端部とを連結し、リヤドア21の閉時に、クオータピラー15の側面部16bと接するように設けられている。
【0055】
そして、上述の軸圧縮部42と、当接面部43と、連結部44と、後述する湾曲部45と、を平面視で環状形状に一体連結して、上記中空部40Aを形成したものである。
【0056】
ここで、上述の連結部44はシール部材40に荷重が入力されていない状態下(
図3参照)において、当接面部43の車幅方向内端部から後方に延びる内辺部44aと、軸圧縮部42の後端部から車幅方向内方に延びる後辺部44bと、上記内辺部44aと上記後辺部44bとを連結する湾曲片部44cと、を備えている。
【0057】
そして、上記荷重の非入力時には、少なくとも上記内辺部44aが側面部16bに当接するように形成されている。なお、上記湾曲片部44cに代えて、内辺部44aと後辺部44bとを、コーナ部が角張った形状の連結辺部で連結する構成を採用してもよい。
【0058】
このように、上記シール部材40が、上述の軸圧縮部42、当接面部43、連結部44を備えることで、
図4に示す開放状態のリヤドア21が
図5に示すように閉成された時、シール部材40に入力される後ろ方向の荷重(
図5に矢印で示す荷重方向LO参照)を、上記当接面部43が面で受け、当接部位の応力が抑制される。これにより、シール部材40の耐久強度を向上させるように構成している。
【0059】
また、リヤドア21の閉時には、
図5に示すように、リヤドア21とクオータウインドガラス33とで、詳しくは、リヤドア21側のエンドキャップ31後端部とクオータウインドガラス33側のエンドキャップ35前端部とで、軸圧縮部42を挟み込んで圧縮する。上記連結部44はクオータピラー15の側面部16bに向けて弾性変形し、上記隙間部Gを形成する側面部16bを押圧して、当該隙間部Gを確実にシールするように構成している。
【0060】
図3に示すように、上述のシール部材40における当接面部43と軸圧縮部42との間には、前外方向に湾曲形成された湾曲部45が設けられている。
【0061】
これにより、リヤドア21の閉時に、当該リヤドア21の後端部(詳しくは、エンドキャップ31の後端部)が上記湾曲部45に面で当たる。つまり、これら両者21,45、詳しくは、両者31,45が面接触して、シール部材40に対する応力集中度合を抑制するように構成している。
【0062】
図3、
図5に示すように、上述のリヤドア21は、シール部材40の軸圧縮部42と車両正面視で重複する領域において、当該リヤドア21の後端部に車両前後方向と直交する面(すなわち、車幅方向に沿う面)を有する押圧面部50が備えられている。
【0063】
この実施例においては、
図3、
図5に示すように、リヤドアウインドガラス26の後端部に一体的に設けたエンドキャップ31が、当該リヤドアウインドガラス26の車幅方向内側に位置する車幅方向内辺部31aと、この車幅方向内辺部31aの後端において車幅方向に延びる後辺部31bと、を有し、該後辺部31bの背面を押圧面部50に成している。
【0064】
このように、リヤドア21が上記軸圧縮部42と車両正面視でオーバラップする領域において車幅方向に延びる押圧面部50を備えることで、リヤドア21閉時に上記押圧面部50が軸圧縮部42に面当たりし、これにより、シール部材40に対する応力集中をより一層抑制するように構成している。
【0065】
さらに、
図3、
図5に示すように、上述の押圧面部50は車両正面視でシール部材40の上記湾曲部45と重複するように設けられている。これにより、
図5に示すリヤドア21の閉時には、押圧面部50から湾曲部45に荷重が入り、当該湾曲部45から上述の軸圧縮部42と当接面部43とに入力を分散して、応力の集中を回避し、以て、シール部材40の耐久強度をさらに向上させるように構成している。
【0066】
ところで、
図2に示すように、リヤドア21のサッシュ部25において、そのインナパネル28と、クオータピラー15の車両前側の傾斜壁部16aとの間は、上記インナパネル28にクリップ61を用いて固定した第2シール部材60でシールされている。
【0067】
図2に示すように、この第2シール部材60は、基底部62と、中空シール部63と、この中空シール部63を2つの室に仕切るブリッジ64と、シールリップ部65と、を弾性体で一体形成したものである。
【0068】
また、
図2に示すように、リヤドア21のサッシュ部25において、インナパネル28の車幅方向の最内端部と、クオータピラー15の車両前側の接合フランジ部15aとの間は、当該接合フランジ部15aに嵌着したウエザストリップ70でシールされている。
【0069】
図2に示すように、このウエザストリップ70は、接合フランジ部15aに嵌着する略U字状の嵌着部71と、該嵌着部71に埋設された芯金72と、嵌着部71の前部から車幅方向内方かつ後方に斜めに延びるシールリップ部73と、嵌着部71の車幅方向外側面から外方に膨出する中空シール部74と、を備えている。
【0070】
図2に示すように、上述のシール部材40に加えて、第2シール部材60およびウエザストリップ70を用いることで、リヤドア21閉時に、当該リヤドア21の後部と車体部材であるクオータピラー15の前部との間が適切にシールされるものである。
【0071】
なお、
図1において、80はリヤフェンダパネルである。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示す。
【0072】
このように、上記実施例の車両の側部車体構造は、前部が開閉し後部にドアヒンジ(リヤドアヒンジ22,23参照)を備えるリヤドア21と、上記リヤドア21の後方に位置する窓部材(クオータウインドガラス33参照)と、上記リヤドア21の車幅方向内側に位置して上記リヤドア21と対向する側面部16bを有する車体部材(クオータピラー15)と、上記リヤドア21の閉時に当該リヤドア21の後端と上記側面部16bとを車幅方向に沿って連結する第1仮想線αと、上記窓部材(クオータウインドガラス33)の前端と上記側面部16bとを車幅方向に沿って連結する第2仮想線βと、上記第1仮想線αと上記第2仮想線βと上記側面部16bとで形成される隙間部Gと、上記窓部材(クオータウインドガラス33)の前端縁部に固定されて上記隙間部Gに位置し、弾性体で形成されるシール部材40と、を備える車両の側部車体構造であって、上記シール部材40は、車両前後方向に延びる軸圧縮部42と、該軸圧縮部42の前端部から車幅方向内側に延びて上記リヤドア21の閉時に当該リヤドア21と当接する面を有する当接面部43と、該当接面部43の車幅方向内側端部と上記軸圧縮部42の後端部とを連結し、上記リヤドア21の閉時に、上記側面部16bと接するように設けられる連結部44と、を備えたものである(
図1~
図3参照)。
【0073】
この構成によれば、リヤドア21閉時に、上記シール部材40に入力される後ろ方向の荷重を、上記当接面部43が面で受けることにより、当接部位の応力が抑制されて、シール部材40の耐久強度を向上させることができる。
【0074】
また、リヤドア21閉時に、リヤドア21と窓部材(クオータウインドガラス33)とで軸圧縮部42を挟み込んで圧縮し、上記連結部44が車幅方向内側の側面部16bに向けて弾性変形し、上記隙間部Gを構成する側面部16bを押圧することで、当該隙間部Gを確実にシールすることができる。
【0075】
要するに、リヤドア21開閉によるシール部材40の耐久強度の確保と、隙間部Gの確実なシール性確保と、の両立を図ることができる。
【0076】
また、この発明の一実施形態においては、上記当接面部43と上記軸圧縮部42との間には、湾曲形成された湾曲部45が設けられるものである(
図3参照)。
【0077】
この構成によれば、リヤドア21閉時に、リヤドア21後端部が上記湾曲部45に面で当たる、つまり、これら両者21,45が面接触することで、シール部材40に対する応力集中度合が抑制される。
【0078】
また、上記湾曲部45により、製品ばらつきに対するロバスト性(robustness)を確保することができる。
【0079】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記リヤドア21は、上記軸圧縮部42と車両正面視で重複する領域において、当該リヤドア21の後端部に車両前後方向と直交する面を有する押圧面部50が備えられるものである(
図3参照)。
【0080】
この構成によれば、上記押圧面部50が面で上記軸圧縮部42と当たることにより、シール部材40に対する応力集中をより一層抑制することができる。
【0081】
さらにまた、この発明の一実施形態においては、上記押圧面部50は車両正面視で上記湾曲部45と重複するように設けられるものである(
図3参照)。
【0082】
この構成によれば、上記押圧面部50は上記湾曲部45と車両正面視で重複するので、リヤドア21閉時には、押圧面部50から湾曲部45に荷重が入り、この湾曲部45から上記軸圧縮部42と上記当接面部43とに入力を分散して、応力の集中を回避することができ、これにより、シール部材40の耐久強度をさらに向上させることができる。
【0083】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車体部材は、実施例のクオータピラー15に対応し、
以下同様に、
ドアヒンジは、リヤドアヒンジ22,23に対応し、
窓部材は、クオータウインドガラス33に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0084】
例えば、上記実施例においては、センタピラー14を備えた車両の側部車体構造を例示したが、上記構成の車両の側部車体構造はセンタピラーレスの車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明は、前部が開閉し後部にドアヒンジを備えるリヤドアと、上記リヤドアの後方に位置する窓部材と、上記リヤドアの車幅方向内側に位置して上記リヤドアと対向する側面部を有する車体部材と、上記リヤドアの閉時に当該リヤドアの後端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第1仮想線と、上記窓部材の前端と上記側面部とを車幅方向に沿って連結する第2仮想線と、上記第1仮想線と上記第2仮想線と上記側面部とで形成される隙間部と、上記窓部材の前端縁部に固定されて上記隙間部に位置し、弾性体で形成されるシール部材と、を備える車両の側部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0086】
15…クオータピラー(車体部材)
16b…側面部
21…リヤドア
22,23…リヤドアヒンジ(ドアヒンジ)
33…クオータウインドガラス(窓部材)
40…シール部材
42…軸圧縮部
43…当接面部
44…連結部
45…湾曲部
50…押圧面部
α…第1仮想線
β…第2仮想線
G…隙間部